JPWO2017122793A1 - 区画貫通構造 - Google Patents

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Abstract

コンクリート(5)における区画貫通孔(38)の形成用に配置されたスリーブ(10)と、スリーブ(10)を貫通する配管または配線(5)とを備えた区画貫通構造において、スリーブ(10)は熱膨張性の耐火性樹脂材料を含有する中空のスリーブ本体(12)を備え、スリーブ本体(12)と配管または配線(5)との間のクリアランスCとスリーブ本体(12)の膨張倍率および残渣硬さとについて、下記一般式Sを定義した際に、Sが0〜500の範囲である。S=1/[{(膨張倍率)×(残渣硬さ)}/(クリアランス)2](残渣硬さの単位はkgf/cm2、クリアランスの単位はmmである)

Description

(関連出願の相互参照)
本願は、2016年1月13日に出願した特願2016−004742号明細書の優先権の利益を主張するものであり、当該明細書はその全体が参照により本明細書中に援用される。
(技術分野)
本発明は区画貫通構造に関する。
建物の各階のコンクリート打設床において、配管または配線を階上から階下またはその逆に通すためには区画貫通構造を形成する必要がある。具体的には、配管または配線を通すための区画貫通孔をコンクリートを形成するが、従来、例えば特許文献1または2に記載されているように、コンクリート打設前にボイドまたはスリーブと呼ばれる管を床下地に設置垂直に立てて固定し、スリーブの周囲にコンクリートを流し込んでコンクリート床を造り、養生し、スリーブの内部に区画形成される空洞を区画貫通孔とし、配管または配線を通していた。そして、スリーブは通常、紙、樹脂または金属で出来ているため、通常は養生後に引き抜き作業が必要であった。このようにして形成された区画貫通構造に耐火性を与えるためには配管または配線後に耐火性の装置を別途設置する必要があり、施工が煩雑であった。
特許文献3ではポリ塩化ビニルから形成された貫通スリーブを用いており、火災時に配管と層間貫通スリーブの間の空間を塞ぐために配管と貫通スリーブとの間に発泡材を別途設置しており、やはり施工が煩雑であった。
特開平6-257281 特開平9-125670 韓国特許第10-1571389
本発明の目的は、耐火性と作業性に優れ、かつ区画貫通構造の施工が容易な区画貫通構造を提供することにある。
本発明の一態様によれば、コンクリートにおける区画貫通孔の形成用に配置されたスリーブと、該スリーブを貫通する配管または配線とを備えた区画貫通構造であって、
前記スリーブは熱膨張性の耐火性樹脂材料を含有する中空のスリーブ本体を備え、
スリーブ本体と配管または配線との間のクリアランスと
スリーブ本体の膨張倍率および残渣硬さとについて、
下記一般式Sを定義した際に、Sが0〜500の範囲である区画貫通構造が提供される。
S=1/[{(膨張倍率)×(残渣硬さ)}/(クリアランス)2]
(残渣硬さの単位はkgf/cm2、クリアランスの単位はmmである)
一実施形態において、上記スリーブは熱膨張性の耐火性樹脂材料を含有する中空のスリーブ本体を備え、スリーブ本体と配管または配線との間のクリアランスが10mm以上であり、スリーブ本体の膨張倍率が20倍以上かつスリーブ本体の残渣硬さが0.2kgf/cm2以上である。
別の実施形態において、上記熱膨張性の耐火性樹脂材料は熱膨張性黒鉛を含む。
別の実施形態において、上記スリーブ本体の膨張倍率が30倍以上かつスリーブ本体の残渣硬さが0.7kgf/cm2以上である。
別の実施形態において、上記スリーブの外側周囲にコンクリートが打設されている。
別の実施形態において、上記スリーブが床下地または壁下地に設置されている。
本発明によれば、スリーブ本体が耐火性樹脂材料を含有し、膨張倍率が20倍以上かつスリーブ本体の残渣硬さが0.5kgf/cm2以上であるため、スリーブと配管の間のクリアランスが18mm以上であっても区画貫通構造の耐火性が保持され、作業者による作業性にも優れている。また、スリーブ本体自体が耐火性樹脂材料を含有するため、スリーブを設置すると同時に区画貫通構造に耐火性を付与することができ、耐火性の装置または部材を別途設置しなくてもよいため、区画貫通構造の施工性にも優れている。
スリーブ、配管、床下地の略斜視図である。 図1のスリーブを底面から見た略斜視図である。 (a)〜(d)図1のスリーブを用いた本発明の第1実施形態の区画貫通構造の施工方法の略断面図である。 図3(c)を蓋部材を省略した状態で下方から見た区画貫通構造の略底面図。 本発明の第2実施形態の区画貫通構造で用いられるスリーブを示す正面図である。 (a)〜(d)図5のスリーブを用いた本発明の第2実施形態の区画貫通構造の施工方法の略断面図である。 スリーブの別例の正面図。 スリーブの別例の正面図。
本発明の第一実施形態の区画貫通構造を図1〜4を参照しながら説明する。
図1には、コンクリートにおける区画貫通孔の形成用にコンクリートの打設前に配置される、スリーブ10が示されている。スリーブ10はボイドとも称される。スリーブ10は中空略円筒形のスリーブ本体12を備えている。本実施形態では、スリーブ本体12の断面積はスリーブ本体12の長手方向に沿ってほぼ一定である。スリーブ本体12の内周面14により開口部19が形成され、区画貫通孔38(図3(b)参照)として作用する。開口部19の大きさ(スリーブ本体12の内径)は配管または配線8の外径よりも大きく、配管または配線8を挿通できる寸法である。スリーブ10の材料については後述する。
スリーブ本体12の下端13bには、1つまたは複数(図では4つ)の取付部17が設けられている。取付部17はスリーブ本体12と一体成形されている。取付部17は、図1ではそれぞれスリーブ10の軸Aに関して約90°離間した4つの取付部で示され、各取付部17は、床下地2に対してスリーブ10を固定するための孔18を有する。通常有底矩形の型枠4は、コンクリート5(図3(b)参照)を収容するためのものであり、型枠4内にはコンクリート5の補強用の鉄筋Rが収容される。コンクリート5および鉄筋Rは床下地2を構成する。
孔18にはスリーブ10を型枠4、鉄筋R、またはコンクリート5等に固定するために針金等の金属線、ボルト、ビス、釘等の固定用部材が通され得るが、本実施形態では、スリーブ10は、金属線等を取付部17の孔18に通し、該金属線の両端を鉄筋R(図1参照)に結び付けることにより、鉄筋Rに対して固定される。なお、任意選択で、固定用部材をスリーブ10から取り外せるように、孔18に固定用部材を外しやすくするためのグリースを付けておいたり、取付部17に作業者が手で力を加えると取付部17の部分が折れて取り外せるようになっていてもよい。
またスリーブ10は、スリーブ本体12の外側面に、スリーブ本体12から突出して延びるリブを備えており、リブは、スリーブ10の軸Aに対して略平行に延びる複数の(図1では3つ)リブ12aと、スリーブ10の軸Aに対して略垂直な方向に環状(円周上)に延びる複数(図1では3つ)のリブ12bとを備えている。リブ12a,12bはスリーブ本体12と一体成形されている。リブ12a,12bは、スリーブ10の周囲にコンクリートを流し込んだときにコンクリートから受ける力に対してスリーブ10が耐えられるようスリーブ10を補強する役割を果たす。
図2を参照すると、本実施形態では、複数のリブ12bのうち、最下部のリブ12bは、スリーブ本体12の下端13bよりもわずかに高い位置(例えば3mm〜20mm)に設けられており、最下部のリブ12bの下面よりも下方のスリーブ本体12の部分と、最下部のリブ12bと、(さらにはスリーブ本体12の下端13bから突出する取付部17と)の間には空間12cが形成される。
図1を戻って参照すると、スリーブ10には、内部に孔31を有する環状の蓋部材30が取り付けられる。蓋部材30は金属から形成されてもよいし、非耐火性または耐火性の樹脂組成物の成形体であってもよい。例えば、蓋部材30は可塑剤を含むかまたは含まない塩化ビニル樹脂か、またはゴム等の樹脂組成物から形成され得る。また、美観を与えるように蓋部材30にはコーティング等の仕上層がさらに施されてもよい。例えば蓋部材30は、スリーブ10を構成する耐火性樹脂組成物と同一のまたは異なる、弾性を有するブチルゴム等の樹脂成分を含む耐火性樹脂組成物から形成される。特定の実施形態では、蓋部材30はスリーブ10とは異なる組成の樹脂組成物の成形体であり、スリーブ10とは視覚的に区別できるよう(例えば赤、黄、橙、青、緑などの色の着色等により)構成される。また、夜間でも視覚的に区別できるように蛍光色であってもよい。蓋部材30は蓋本体32と、本体32よりも径が小さい脚部34とを有する。
蓋部材30はスリーブ10の一端部に取り付けられ、蓋部材30の内径は配管または配線8の外径よりも大きく、蓋部材30の孔31に配管または配線8が収容される。蓋本体32の外径はスリーブ10(およびスリーブ本体12)の外径よりも大きく、脚部34の外径はスリーブ10(およびスリーブ本体12)の内径よりも小さい。このため、蓋本体12がスリーブ10(およびスリーブ本体12)の上端13aの上に配置され、脚部34がスリーブ10と配管または配線8の間に挟まれるように配置される。また、蓋部材30は本体32と小さい脚部34とを通る蓋部材30を分断する切れ目33を有するため、切れ目33の位置で蓋部材30の両端部を把持して蓋部材30を拡径し、配管または配線8の周囲に巻き付けることにより、配管または配線8を区画貫通孔38に通して設置した後でも蓋部材30をスリーブ10と配管または配線8の間に配置することができる。本実施形態では、切れ目33が折れ曲り、切れ目33の互いに対向する接触面が湾曲しているため、切れ目33を合わせたときの係合力が強化され、蓋部材30をスリーブ10に装着した後で、外力により蓋部材30がスリーブ10から外れるのを防ぐことができる。
スリーブ10は熱膨張性の耐火性樹脂材料から形成されている。耐火性樹脂材料は、樹脂成分に熱膨張性層状無機物と無機充填材とを含む樹脂組成物である。スリーブ10は、樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法で成形することにより得ることができる。
本実施形態では、スリーブ10のスリーブ本体12、リブ12a,12b、ならびに取付部17が同じ熱膨張性の耐火性樹脂材料から一体成形されている。
樹脂成分としては、公知の樹脂成分を広く使用でき、例えば、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂等の合成樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂および/またはゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂および/またはゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を有しているものが好ましい。この様な性質を有する樹脂成分は無機充填材を高充填することが可能であり、得られる樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる。より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムおよびポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものである。かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより数値が大きいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層が得るのに十分であり、また粒度が20メッシュより小さいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
無機充填材は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填材としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
また、無機充填材としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填材は単独で用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
無機充填材の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填材は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
無機充填材のうち、水酸化アルミニウムの具体例としては、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
さらに、熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、および、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
Figure 2017122793
化学式(1)中、R1およびR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を10〜350重量部および前記無機充填材を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱膨張性層状無機物および前記無機充填材の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。耐火性樹脂材料は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度がある材料である。
前記樹脂組成物における熱膨張性層状無機物および無機充填材の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物はさらに可塑剤を含有してもよい。
前記可塑剤は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、
ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、
エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、
アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤、
トリー2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、
トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、リン酸と陸レジル(TCP)等の燐酸エステル可塑剤、
鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。なお、可塑剤には上記のリン化合物は含まれない。
前記可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
前記可塑剤の添加量は、少なくなると押出成形性が低下する傾向があり、多くなると得られた成形体が柔らかくなり過ぎる傾向がある。このため可塑剤の添加量は、限定されないが、前記樹脂成分100重量部に対して、可塑剤の添加量は20〜200重量部の範囲であることが好ましい。
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
次に、図3(a)〜(d)を参照しながら、スリーブ10を用いた区画貫通構造の施工方法について説明する。
図3(a)に示すように、スリーブ10を床下地2に固定する。スリーブ10の床下地2への固定は、例えばボルト36をスリーブ10の下端10bの取付部17の孔18を通って床下地2の中までねじ込むことによりなされる。型枠4の底部のスリーブ10に対応する位置には、配管または配線8(図3(c)参照)を挿通するための穴を空けておく。
次に、図3(b)に示すように、コンクリート5を床下地2へ流し込む。この図ではコンクリート5の厚みすなわち高さHは、スリーブ本体12の下端13bからスリーブ本体12の上端13aまでの距離に等しい。このようにして、スリーブ10の内側の開口部19を残し、スリーブ10の外側周囲にコンクリート5が打設され、区画貫通構造100が完成する。スリーブ10の内側の開口部19は区画貫通孔38として作用する。ここで、スリーブ本体12に設けられた最下部のリブ12bは、スリーブ本体12の下端13bよりもわずかに高い位置に設けられているため、スリーブ10の周囲にコンクリート5を打設した時、最下部のリブ12bの下面よりも下方のスリーブ本体12の部分と、最下部のリブ12bと、(さらにはスリーブ本体12の下端13bから突出する取付部17と)により形成された空間12c(図2参照)にコンクリート5が進入し、スリーブ10はコンクリート5中に、より堅固に固定される。
次に、図3(c)に示すように、コンクリート5を貫通するように、区画貫通孔38を通って1または複数の配管または配線8を施す。配管には、水道管、冷媒管、熱媒管、ガス管、吸排気管等の各種配管が含まれる。配線には、電力用ケーブル、通信用ケーブル等の各種ケーブル等の各種配線が含まれる。さらに、スリーブ本体の上端13aに、複数の配管または配線8の周囲を多い、かつ区画貫通孔38を塞ぐように、蓋部材30を装着する。
例えば図3(c)において、区画貫通構造100の階下において矢印の方向から火災が発生した場合、図3(d)に示すように、スリーブ10が火災の熱により膨張し、スリーブ10と配管または配線8との間の隙間を埋め、火の進路を塞ぐ。このようにして、スリーブ10は、コンクリート5の打設を容易にするのみならず、耐火性を発揮し、区画貫通構造100に耐火性を付与する。このように、スリーブ10はコンクリートの養生後に引き抜く必要もなく、スリーブ10の設置と同時に耐火材が設置されていることを確認できる。
この実施形態では蓋部材30が、配管または配線8の外周面に接し、かつスリーブ10と配管または配線8との間の隙間の間を閉塞しているため、区画貫通構造100に耐火性をさらに付与している。また、図3(c),(d)の区画貫通構造100を上から見たときに、蓋部材30がスリーブ10の上をカバーして配管または配線8の周囲でスリーブ10と配管または配線8との間の隙間を塞いでいるため、目隠しの役割を果たし、区画貫通孔38の中が見えず、視覚的にも美観が保たれる。また、蓋部材30でスリーブ10と配管または配線8との間の隙間を閉塞すれば、床下からの音を低減することも可能である。
図4は図3(c)を蓋部材30を省略した状態で下方から見た区画貫通構造の略底面図である。スリーブ10(およびスリーブ本体12)と、配管または配線8との間の隙間であるクリアランスCが10mm以上である。ここで、「スリーブ本体と配管または配線との間のクリアランスが10mm以上である」とは、配管または配線8の周方向の少なくとも一か所において、クリアランスが10mm以上である箇所があれば良いとの意味であり、スリーブ本体と配管または配線との間のクリアランスCが10mm未満である別の箇所が同時に存在してもよい。一実施形態では、スリーブ本体12内における配管または配線8の全周において、スリーブ本体12と配管または配線8との間のクリアランスCが10mm以上である。クリアランスCの上限は特に限定されないが、例えば90mm以下である。一実施形態では、スリーブ本体12と配管または配線8との間のクリアランスCが、配管または配線8の周方向の少なくとも一か所において10mm以上、90mm以下である。別の実施形態では、スリーブ本体12と配管または配線8との間のクリアランスCが、配管または配線8の中心に関して対向する(すなわち配管または配線8の中心に関して約180°の角度をなす)2か所において10mm以上、90mm以下である。
また、スリーブ本体12の厚みTは特に限定されず、例えば0.5mm〜50mmである。区画貫通孔をより効果的に閉塞し、かつ残渣硬さを保持するために、スリーブの厚みTのクリアランスCに対する比(スリーブの厚みT:クリアランスC)が5:1〜1:180であることが好ましい。
本発明において、下記の一般式Sを定義すると、Sは0〜500の範囲、すなわち0以上、500以下である。
S=1/[(膨張倍率)×(残渣硬さ)}/(クリアランス)2
ここで、残渣硬さの単位はkgf/cm2、クリアランスの単位はmmである。
一実施形態では、Sは0よりも大きく、500以下である。別の実施形態では、Sは25以上500以下である。別の実施形態では、Sは0以上、400以下である。別の実施形態では、Sは0よりも大きく、400以下である。別の実施形態では、Sは25以上400以下である。
このようなSの範囲を満たすことで、スリーブ本体12の残渣の形状保持性と、区画貫通構造の耐火性とを両立させることができる。
一実施形態では、区画貫通構造は上記のSの範囲を満たし、スリーブ本体12の膨張倍率は20倍以上であり、かつスリーブ本体12の残渣硬さが0.2kgf/cm2以上である。
一実施形態では、区画貫通構造は上記のSの範囲を満たし、スリーブ本体12の膨張倍率が20倍以上、60倍以下である。別の実施形態では、区画貫通構造は上記のSの範囲を満たし、スリーブ本体12の残渣硬さが0.5kgf/cm2以上、2以下である。別の実施形態では、区画貫通構造は上記のSの範囲を満たし、スリーブ本体12の膨張倍率が20倍以上、60倍以下であり、かつ残渣硬さが0.5kgf/cm2以上、2以下である。また別の実施形態では、区画貫通構造は上記のSの範囲を満たし、スリーブ本体12の膨張倍率が30倍以上であり、かつスリーブ本体12の残渣硬さが0.7kgf/cm2以上であり、上限値は特に限定されないが、例えば膨張倍率が60倍以下、残渣硬さが2以下である。
スリーブ本体12の膨張倍率が20倍以上であると、スリーブ本体と配管または配線との間のクリアランスが10mm以上であっても、火災による加熱時にスリーブ本体12が、スリーブ10と配管または配線8との間の空間を閉塞するのに十分な程度に膨張でき、区画貫通構造において火炎の貫通を防止することができる。残渣硬さが0.2kgf/cm2以上であると、加熱により膨張したスリーブ本体12の膨張層の強度が維持され、区画貫通構造において火炎の貫通を防止する効果が保たれる。
一般に、膨張倍率が大きいと残渣硬さが小さくなり、膨張倍率が小さい場合には残渣硬さは大きくなるが、本発明の範囲内の膨張倍率および残渣硬さを、熱膨張性の耐火性樹脂材料の各成分およびその配合を変更することにより適宜設定できることが当業者には理解される。
本明細書において「膨張倍率」とは、スリーブ本体12を構成する熱膨張性の耐火性樹脂材料を長さ100mm、幅100mm、厚さ2.0mmの寸法に切断した試験片を作製し、この試験片を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後で、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)として算出した値を指す。
本明細書において「残渣硬さ」とは、膨張倍率を測定した後の試験片を、圧縮試験機(カトーテック社製、「フィンガーフイリングテスター」)に供給し、0.25cm2の圧子で0.1cm/秒の速度で圧縮して測定した破断点応力を指す。
膨張倍率および残渣硬さは、スリーブ本体12を構成する熱膨張性の耐火性樹脂材料を所定の寸法にし、自由な状態、すなわち他の部材による干渉を受けない状態で膨張、加熱して測定しているが、区画貫通構造において配線または配管やコンクリートの圧力がかかっている状態の膨張倍率および残渣硬さと挙動は同様であるため、上記の方法で測定された膨張倍率および残渣硬さは、区画貫通構造における耐火性能を適切に評価することができる。
次に、本発明の第二実施形態の区画貫通構造について、図5〜6を参照しながら説明する。第二実施形態の区画貫通構造が、第一実施形態の区画貫通構造と相違する点は、スリーブ1が、第1スリーブとしての、熱膨張性の耐火樹脂材料から構成されるスリーブ本体12を有するスリーブ10と、非熱膨張性である第2スリーブ20とから構成されるスリーブアセンブリである点である。以下、第二実施形態ではスリーブ10を第1スリーブ10と称する。
第1スリーブ10のスリーブ本体12を構成する熱膨張性の耐火樹脂材料としては、前述の第一実施形態と同様のもの、つまり樹脂成分および熱膨張性層状無機物を含む樹脂組成物を使用することができる。また、第2スリーブ20は、非熱膨張性の樹脂成分から構成され、第2スリーブ20を構成する樹脂成分は、スリーブ本体12を構成する樹脂成分と同一または異なる樹脂を使用することができる。第1スリーブ10と第2スリーブ20の相違する点は、第2スリーブ20が実質的に熱膨張性層状無機物を含有しないため、非熱膨張性である点である。
図5に示すように、第2実施形態の第2スリーブ20は、中空略円筒形のスリーブ本体22と、スリーブ本体22と段差部25を介して連続する中空略円筒形の拡径部26とを備えている。本実施形態では、スリーブ本体22、段差部25、および拡径部26は同じ非熱膨張性の材料から連続的に一体形成されており、第2スリーブ20は上端20aから下端20bまで連続している。
第二実施形態のスリーブ10は、第一実施形態のリブ12a,bの代わりに、スリーブ本体12の周囲に装着された環状部材19aおよび環状突部19bとを備えている。環状部材19aはスリーブ本体12の側面の一端(図では下端13a)から突出し、環状突部19bはスリーブ本体12の端部から離間した位置に設けられ、スリーブ本体12の側面から突出する。
第1スリーブ10のスリーブ本体12を熱膨張性の耐火樹脂材料から形成することにより、第1スリーブ10とコンクリートの密着性が向上し、第1スリーブ10の燃焼残渣のコンクリートとの密着性が向上し、断熱層が崩壊しにくくなる。また、熱膨張性の耐火樹脂材料の出代が多いとスリーブアセンブリが外部衝撃に対して変形しやすくなるが、第2スリーブ20を金属等の非熱膨張性材料で形成することにより、外部衝撃に対する強度を増大させることができる。また熱膨張性の耐火樹脂材料の使用量を必要最小限に抑えることができ、適正な価格で貫通スリーブ1を提供できる。このように、熱膨張性のスリーブ本体12を有する第1スリーブ10と非熱膨張性の第2スリーブ20とを組み合わせてスリーブ1を構成することで、スリーブ1は区画貫通構造に耐火性を付与し、さらには外部衝撃に対する強度とコンクリートに対する密着性とを兼ね備える。また、スリーブ1を適正な価格で提供することができる。
一例において、図5に示されるように、第2スリーブ20のスリーブ本体22の内径は、第1スリーブ10のスリーブ本体12の内径と等しいかそれより小さい。この構成により、第1スリーブ10の第2スリーブ20内への移動(図5にて上方向への移動)は段差部25の周面、すなわち内周面25aにて規制される。また、第1スリーブ10を第2スリーブ20に嵌合した状態で第1スリーブ10が加熱により膨張したとき、第1スリーブ10のスリーブ本体12の上端13aが膨張して段差部25の内周面25aに接することにより第1スリーブ10の上方向への膨張が規制される。その結果、第1スリーブ10における第2スリーブ20から露出している部分における第1スリーブ10の軸方向に対して垂直な方向、特に軸方向に対して垂直かつ第1スリーブ10の内方への膨張が促進され、区画貫通孔38をより効果的に閉塞することができる。
本実施形態では、第1スリーブ10を第2スリーブ20に嵌合すると、第2スリーブ20の下端20bが第1スリーブ10の環状突部19bに接した位置で第1スリーブ10の第2スリーブ20への嵌入は停止する。
また一例において、図5に示されるように、第1スリーブ10のスリーブ本体22の外径は、第2スリーブ20のスリーブ本体22の内径よりも大きい。この構成により、第1スリーブ10の上端10aが第2スリーブ20の段差部25に当接するため、第1スリーブ10の第2スリーブ20内への移動(図5にて上方向への移動)は段差部25にてより確実に規制される。また、第1スリーブ10を第2スリーブ20に嵌合した状態で第1スリーブ10が加熱により膨張したとき、第1スリーブ10の上端10aが膨張して段差部25に当接することにより第1スリーブ10の上方向への膨張が規制される。その結果、第1スリーブ10における第2スリーブ20から露出している部分における第1スリーブ10の軸方向に対して垂直な方向、特に軸方向に対して垂直かつ第1スリーブ10の内方への膨張が促進され、区画貫通孔38をより効果的に閉塞することができる。
好ましくは、第1スリーブ10を第2スリーブ20に嵌合した状態で、第2スリーブ20の拡径部26の内周面29と第1スリーブ10のスリーブ本体12の外周面15が接触し、第1スリーブ10および第2スリーブ20を互いに固定する。この構成により、火災時の第1スリーブ10と第2スリーブ20の密着性が高められ、第1スリーブ10と第2スリーブ20の間の火の侵入が抑制され、耐火性が向上する。
また、第2スリーブ20の拡径部26の内周面29もしくは第1スリーブ10のスリーブ本体12の外周面15の少なくとも一方に環状突部19bを形成しておくとより好ましい。その結果、第2スリーブ20の拡径部26の内周面29と第1スリーブ10のスリーブ本体12の外周面15の接触抵抗が上がり、スリーブ10,20の脱落防止につながる。
スリーブ1の内周面、つまり第1スリーブ10のスリーブ本体12の内周面14と第2スリーブ20の内周面25が開口部37を形成し、区画貫通孔38(図6(B)参照)として作用する。開口部37の大きさは配管または配線8の外径よりも大きく、配管または配線8を挿通できる寸法である。
第二実施形態においても、図6(C),(D)に示すように、第2スリーブ20の上端20aに、複数の配管または配線8の周囲を覆い、かつ区画貫通孔38を塞ぐように、任意選択で蓋部材30を装着してもよい。蓋部材30には配管または配線8を挿通するための孔31が設けられている。蓋部材30は第2スリーブ20と配管または配線8との間のクリアランスを埋める固定枠の役割を果たす。スリーブ1と、スリーブ1内に配置された配管または配線8と、第2スリーブ20に装着された蓋部材30は耐火充填構造を構成する。好ましくは蓋部材30は、蓋部材30の孔31に配管または配線8を通した状態で第2スリーブ20に装着した場合に、上記クリアランスの面積の10〜100%を埋める。
次に、図6(A)〜(D)を参照しながら、スリーブ1を用いた区画貫通構造の施工方法について説明する。
図6(A)に示すように、スリーブ1を床下地2に固定する。スリーブ1の床下地2への固定は、例えばボルト36を第1スリーブ10の下端10bの取付部17の孔17を通って床下地2の中までねじ込むことによりなされる。型枠4の底部のスリーブ1に対応する位置には、配管または配線8(図6(C)参照)を挿通するための穴を空けておく。次に、図6(B)に示すように、コンクリート5を床下地2へ流し込む。この図ではコンクリート5の厚みすなわち高さHは、第2スリーブ20の上端20aから第1スリーブ10の下端10bまでの距離に等しい。このようにして、スリーブ1の内側の開口部37を残し、スリーブ1の外側周囲にコンクリート5が打設され、区画貫通構造100が完成する。スリーブ10の開口部37は区画貫通孔38として作用する。
次に、図6(C)に示すように、コンクリート5を貫通するように、区画貫通孔38を通って1または複数の配管または配線8を施す。ここで、任意選択で、第2スリーブ20の上端20aに、複数の配管または配線8の周囲を覆い、かつ区画貫通孔38を塞ぐように、蓋部材30を装着してもよい。蓋部材30は区画貫通孔38のより多くの隙間を塞いでいることが好ましい。蓋部材30が、配管または配線8の外周面に接し、かつスリーブ10と配管または配線8との間の隙間の間を閉塞しているため、区画貫通構造100に耐火性をさらに付与する。また、図6(C)の区画貫通構造100を上から見たときに、蓋部材30がスリーブ1の上をカバーして配管または配線8の周囲でスリーブ1と配管または配線8との間の隙間を塞いでいるため、目隠しの役割を果たし、区画貫通孔38の中が見えず、視覚的にも美観が保たれる。
次に、図6(C)において、区画貫通構造100の階下において矢印の方向から火災が発生した場合、図6(D)に示すように、第1スリーブ10が火災の熱により膨張し、コンクリート5と配管または配線8との間の隙間を埋め、火の進路を塞ぐ。このようにして、スリーブ1は、コンクリート5の打設を容易にするのみならず、耐火性を発揮し、区画貫通構造100に耐火性を付与する。このように、スリーブ1の設置と同時に耐火材が設置されていることを確認できる。
上記の第二実施形態の区画貫通構造100においても、図4を参照しながら説明したように、下記の一般式Sを定義すると、Sは0〜500の範囲、すなわち0以上、500以下である。
S=1/[(膨張倍率)×(残渣硬さ)}/(クリアランス)2
ここで、残渣硬さの単位はkgf/cm2、クリアランスの単位はmmである。このようなSの範囲を満たすことで、スリーブ本体12の残渣の形状保持性と、区画貫通構造の耐火性とを両立させることができる。
なお、本発明の区画貫通構造に使用されるスリーブは、図1〜4に示した第一実施形態および図5,6に示した第二実施形態のスリーブ10の構成に限られず、以下の変形を含む種々の変形が可能であり、そのような変形物も本発明の範囲に包含される。
・床下地2に対してスリーブ10を固定するための取付部17は省略されてもよいし、図示した取付部17と異なる構造を有していてもよい。
・第一実施形態のリブ12a,12bは省略されてもよい。
・第二実施形態の環状部材19aおよび環状突部19bは省略されてもよい。
・第二実施形態では、第2スリーブ20が、スリーブ本体22と、スリーブ本体22と段差部25を介して連続する中空略円筒形の拡径部26とを備えていたが、図7に示すように、第2スリーブ20が、中空略円筒形のスリーブ本体22と、スリーブ本体22と段差部25を介して連続する中空略円筒形の縮径部26aとを備えていてもよい。この構成では、第2スリーブ20の縮径部26aが第1スリーブ10内に挿入される。
第二実施形態では、第2スリーブ20が、スリーブ本体22と、スリーブ本体22と段差部25を介して連続する中空略円筒形の拡径部26とを備えていたが、図8に示すように、第2スリーブ20のスリーブ本体22が拡径部26又は縮径部26aを備えず、端から端まで長さが一定であってもよい。この例では、第2スリーブ20のスリーブ本体22が全長にわたって径が一定であり、第2スリーブ20の内部に第1スリーブ10が挿入されている。
以下に図面を参照しつつ実施例により本発明を詳細に説明する。なお本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1〜2、比較例1〜2
熱膨張性黒鉛としてADT社製「ADT351」を用い、クリアランスが36mmの場合を実施例1、熱膨張性黒鉛として東ソ一社製「GREP−EG」(熱膨張開始温度220℃)を用いた場合を実施例2とし、実施例2と同じ組成でクリアランスが100mmの場合を比較例1、熱膨張性黒鉛として日本エアウォーター社製「MZ260」を使用した場合を比較例2とし、各熱膨張性黒鉛のアスペクト比と、各配合物の組成とを表1に示した。実施例1,2および比較例1,2のいずれとも、170〜190℃で表面が美麗な長尺異型成形体を射出成形でき、成形した後のスクリューおよび金型への配合物の付着もなく、成形性は良好であった。
(アスペクト比)
SEM 断面写真を用いて熱膨張性黒鉛の写真のスケール長さを測定し、換算してアスペクト比を算出した。
(膨張倍率)
得られた実施例1,2および比較例1,2の熱膨張性の耐火性樹脂材料の成形体から作製した試験片(長さ100mm、幅100mm、厚さ2.0mm)を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)を膨張倍率として算出した。
(残渣硬さ)
膨張倍率を測定した加熱後の試験片を圧縮試験機(カトーテック社製、「フィンガーフイリングテスター」)に供給し、0.25cm2の圧子で0.1cm/秒の速度で圧縮し、破断点応力を測定した。
(残渣の形状保持性)
上記残渣硬さは膨張後の残渣の硬さの指標になるが、測定が残渣の表面部分に限られるため、残渣全体の硬さの指標にならないことがあるので、残渣全体の硬さの指標として形状保持性を測定した。残渣の形状保持性は、膨張倍率を測定した試験片の両端部を手で持って持ち上げて、その際の残渣の崩れやすさを目視して測定した、試験片が崩れることなく持ち上げられた場合をPASSと評価し、試験片が崩壊して持ち上げられない場合をFAILと評価した。
(耐火試験)
表1に示した実施例1,実施例2,比較例1,比較例2の熱膨張性の耐火性樹脂材料から構成された成型スリーブ(内径150mm、高さ160mm、厚み5mm)を床下地に設置し、コンクリートをスリーブの周囲に打設した。スリーブ内に1本パイプ(PVC管)を配管し、スリーブ本体と配管との間のクリアランスが10mm以上となるように配置し、ISO834の加熱曲線に沿って水平炉内で2時間加熱した。床上の貫通パイプ温度が、初期温度+180℃未満且つ貫通して炎出がない場合をPASSと評価し、初期温度+180℃以上または床上パイプが貫通して炎出する場合をFAILと評価した。
実施例1〜2、比較例1〜2の膨張倍率、残渣硬さ、および残渣の形状保持性、耐火試験の測定結果は、表1に示す通りである。実施例1,2では、熱膨張材が十分に膨張し、膨張残渣がしっかり保持され耐火試験はPASSであったが、比較例1,2では残渣がしっかり保持されずFAILであった。比較例1,2では膨張残渣によって断熱構造が形成されず、床上パイプの温度が上昇してパイプに穴があき、炎出した。
Figure 2017122793
実施例3〜6
表2に示した配合の成分を含有する配合物を、実施例1〜2および比較例1〜2に関して上記に記載したのと同様に射出成型機に供給し、170〜190℃で筒状の熱膨張成形体である成型スリーブを成形した。
樹脂成分として、実施例3ではポリ塩化ビニル樹脂(重合度1000、「PVC」と言う)、実施例4ではエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(三井・デュポンポリケミカル製エバフレックスEV360、「EVA」と言う)、実施例5ではエチレン−プロピレン−ジエンゴム(三井化学社製三井EPT3092M、「EPDM」と言う)、実施例6ではビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル社製「E807」)およびジアミン系硬化剤(油化シェル社製「EKFL052」)を3:2の配合量で、他配合原料と供に混練、加熱硬化することにより得られるエポキシ樹脂を用いた。
実施例3〜6のいずれとも170〜190℃で表面が美麗な長尺異型成形体を射出成形でき、成形した後のスクリューおよび金型への配合物の付着もなく、成形性は良好であった。
また、実施例3〜6の成形体のいずれとも、実施例1,2と同様、比較的高い膨張倍率と高い残渣硬さが発現され、耐火性能がPASSであった。
Figure 2017122793

Claims (6)

  1. コンクリートにおける区画貫通孔の形成用に配置されたスリーブと、該スリーブを貫通する配管または配線とを備えた区画貫通構造であって、
    前記スリーブは熱膨張性の耐火性樹脂材料を含有する中空のスリーブ本体を備え、
    スリーブ本体と配管または配線との間のクリアランスと
    スリーブ本体の膨張倍率および残渣硬さとについて、
    下記一般式Sを定義した際に、Sが0〜500の範囲である区画貫通構造。
    S=1/[{(膨張倍率)×(残渣硬さ)}/(クリアランス)2]
    (残渣硬さの単位はkgf/cm2、クリアランスの単位はmmである)
  2. 前記スリーブは熱膨張性の耐火性樹脂材料を含有する中空のスリーブ本体を備え、
    スリーブ本体と配管または配線との間のクリアランスが10mm以上であり、
    スリーブ本体の膨張倍率が20倍以上かつスリーブ本体の残渣硬さが0.2kgf/cm2以上である請求項1に記載の区画貫通構造。
  3. 前記熱膨張性の耐火性樹脂材料は熱膨張性黒鉛を含む請求項1または2に記載の区画貫通構造。
  4. スリーブ本体の膨張倍率が30倍以上かつスリーブ本体の残渣硬さが0.7kgf/cm2以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の区画貫通構造。
  5. 前記スリーブの外側周囲にコンクリートが打設されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の区画貫通構造。
  6. 前記スリーブが床下地または壁下地に設置されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の区画貫通構造。
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