JPWO2013150991A1 - 絶縁電線及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明の絶縁電線は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線であって、剥離試験における上記絶縁層剥離までの平均捻り回数が50回以上であることを特徴とする。グリセリン溶液中における上記絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値が0.15kV/μm以上であるとよい。上記導体周面の炭素濃度が10質量%以下であるとよい。上記導体周面が炭素低減処理されているとよい。上記炭素低減処理が液体を用いた洗浄処理であるとよい。絶縁層が、導体の周面に積層され、フェノキシ樹脂を主成分として含有するプライマー層と、ビフェニル含有ポリアミドイミド樹脂を主成分として含有するビフェニル含有ポリアミドイミド層とを有するとよい。
Description
本発明は、絶縁電線及びその製造方法に関する。
一般家庭用電気機器、自動車等の構成要素、例えばモータ、オルタネータ、イグニッション等に、絶縁電線を巻回してなるコイルが用いられている。このようなコイルを形成する絶縁電線は、導電性を有する金属製の導体と、これを被覆する樹脂製の絶縁層とから構成されるものが一般的である。
上記の絶縁電線の導体として、その導電性の高さから、主として銅又は銅合金が使用される。一方、アルミニウム又はアルミニウム合金は、銅系導体よりも導電性がやや劣るものの、軽量性に優れており、一部絶縁電線の導体として使用されている(特開2011−162826号公報参照)。
しかしながら、アルミニウム系導体を用いた絶縁電線は、一般的に導体と絶縁層との密着力が銅系導体を用いたものに比べて低く、そのため、耐摩耗性(耐傷性)や絶縁特性が劣っている。そのため、従来のアルミニウムを導体に用いた絶縁電線においては、使用範囲やコイルへの加工条件等の制限が十分に取り払われていない。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、アルミニウム又はアルミニウム合金を導体に用いつつ、密着性、耐傷性及び絶縁特性に優れる絶縁電線を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線であって、
剥離試験における上記絶縁層剥離までの平均捻り回数が50回以上であることを特徴とする。
アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線であって、
剥離試験における上記絶縁層剥離までの平均捻り回数が50回以上であることを特徴とする。
当該絶縁電線は、絶縁層の剥離までの平均捻り回数が上記下限以上であるため、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いたアルミニウム導体と絶縁層とが剥離しにくく、高い密着力を有する。このアルミニウム導体と絶縁層との高い密着性に起因して、当該絶縁電線は、耐傷性及び絶縁特性に優れる。
グリセリン溶液中における上記絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値としては0.15kV/μm以上が好ましい。このように単位厚み当たりの絶縁破壊電圧を上記下限以上とすることによって、絶縁層を過度に厚くすることなく、高い絶縁特性を発揮することができる。
上記導体周面の炭素濃度としては10質量%以下が好ましい。このように導体周面の炭素濃度を上記下限以上とすることで、導体周面と絶縁層との密着を阻害する伸線潤滑剤成分(油分、界面活性剤、pH調整剤等)が減少するため、導体周面と絶縁層との密着力を効果的に向上させることができる。
上記導体周面が炭素低減処理されているとよい。このように導体周面に対して炭素低減処理を施すことで、伸線潤滑剤成分が低減され、上述の導体周面と絶縁層との高い密着力が達成される。
上記炭素低減処理としては液体を用いた洗浄処理が好ましい。洗浄を導体に対して行うことによって、導体周面に付着した伸線潤滑剤成分を効果的に低減することができ、導体周面と絶縁層との密着力をさらに向上させることができる。
上記絶縁層が、導体の周面に積層され、フェノキシ樹脂を主成分として含有するプライマー層と、ビフェニル含有ポリアミドイミド樹脂を主成分として含有するビフェニル含有ポリアミドイミド層とを有することが好ましい。フェノキシ樹脂を主成分とするプライマー層を形成することで、導体と絶縁層との密着力を向上させ、耐傷性も向上させることができる。さらに、上記プライマー層に加えて、ビフェニル含有ポリアミドイミド樹脂を主成分として含有するビフェニル含有ポリアミドイミド層を形成することで、絶縁層の機械強度を向上させることができ、耐傷性をさらに向上させることができる。上記プライマー層の平均厚みとしては0.5μm以上5μm以下が好ましい。上記プライマー層の平均厚みが5μmを超えても密着力の低下は見られないが、フェノキシ樹脂を主成分とするプライマー層は一般に熱軟化温度が低いため、機械特性や熱軟化特性が低下する可能性がある。このように絶縁層が上記プライマー層とビフェニル含有ポリアミドイミド層とを有し、プライマー層の平均厚みを上記範囲内とすることで、導体と絶縁層との密着力をさらに向上させることができるとともに、絶縁層の強度を向上させることができる。
上記ビフェニル含有ポリアミドイミド樹脂が、上記ビフェニル含有ポリアミドイミド樹脂を形成するイソシアネート成分が、アミドイミド原料としてビフェニル含有ジイソシアネート化合物を含むとよい。このようにビフェニル含有ジイソシアネート化合物を用いてビフェニル含有ポリアミドイミド樹脂を合成することで、容易かつ確実にビフェニル含有ポリアミドイミド層を有する絶縁層の強度を向上させることができる。
上記絶縁層が、他の樹脂層をさらに有し、上記他の樹脂層が、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はポリイミド樹脂を主成分として含有するとよい。絶縁層がこのような他の樹脂層を有することで、当該絶縁電線の絶縁層の機能を維持しつつ、コストを低減することができる。
上記絶縁層の周面に、潤滑剤を含有したポリアミドイミド樹脂を主成分とする表面潤滑層をさらに備えてもよい。このような表面潤滑層をさらに備えることで、当該絶縁電線の摩擦係数を低減することができる。その結果、コイル形状によってはコイル作製時の傷発生が抑制され、コイル作製時の捲き線性も良好となる。
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線の製造方法であって、
上記導体を得る工程、
上記導体周面に対して炭素低減処理を行う工程、及び
上記導体の周面に絶縁層を被覆する工程
を有することを特徴とする。
アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線の製造方法であって、
上記導体を得る工程、
上記導体周面に対して炭素低減処理を行う工程、及び
上記導体の周面に絶縁層を被覆する工程
を有することを特徴とする。
上記製造方法は、炭素低減処理によって導体周面と絶縁層との密着を阻害する伸線潤滑剤成分が低減されるため、導体周面と絶縁層との密着力を向上させることができる。その結果、得られる絶縁電線は、密着性、耐傷性及び絶縁特性に優れる。
ここで、「剥離試験における絶縁層剥離までの平均捻り回数」とは、JIS−C3216−3の5.4に規定の「剥離試験」に準拠して測定した値の平均値(サンプル数3)である。ただし、公称導体径が1mm未満の場合、試験荷重(張力)は10Nとしている。「グリセリン溶液中における上記絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値」とは、グリセリンと飽和食塩水とを17:3の質量割合で混合したグリセリン溶液中に絶縁電線の一部を浸漬させ、電圧を印加し1V/secの速度で昇圧させたときに、絶縁層が破壊される電圧の平均値(サンプル数10)を絶縁層の平均厚みで除した値である。「炭素濃度」とは、エネルギー分散型X線分析法(EDX)を用いて計測される値である。
以上説明したように、本発明の絶縁電線は、導体にアルミニウム又はアルミニウム合金を用いながら、高い耐傷性及び絶縁特性を有する。また、本発明の絶縁電線の製造方法は、密着性、耐傷性及び絶縁特性に優れる絶縁電線を容易かつ確実に製造することができる。
以下、本発明の絶縁電線の実施形態を詳説する。
当該絶縁電線は、線状の導体と、この導体の周面に被覆する絶縁層とを備えている。
<導体>
当該導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする。アルミニウム合金としては、特に限定されるものではなく、絶縁電線に用いられる公知のアルミニウム合金を用いることができ、例えば高強度で耐熱性に優れるジルコニウム含有合金や鉄含有合金等を用いることができる。
当該導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする。アルミニウム合金としては、特に限定されるものではなく、絶縁電線に用いられる公知のアルミニウム合金を用いることができ、例えば高強度で耐熱性に優れるジルコニウム含有合金や鉄含有合金等を用いることができる。
導体の断面形状は、特に限定されず、円形、方形、矩形等の種々の形状を採用することができる。また、導体の断面の大きさも、特に限定されない。丸線の場合は径が100μm〜5mmのもの、平角線の場合は一辺の長さが500μm〜5mmのものが一般に使用される。
当該導体は、絶縁層を積層する前に周面の炭素を低減する処理が行われる。この炭素低減処理によって、例えば伸線工程時に付着した潤滑剤等の有機物を除去し、導体と絶縁層との密着を阻害する炭素成分を低減することができる。
当該導体周面の炭素濃度の上限としては、10質量%が好ましく、7質量%がより好ましく、5質量%が特に好ましい。導体周面の炭素濃度が上記上限を超える場合、絶縁層との密着性が低下するおそれがある。また上記炭素濃度と同様の理由で、導体周面におけるアルミニウムの質量に対する炭素の質量比としては、0.1以下が好ましく、0.06以下がさらに好ましい。導体周面における炭素濃度やアルミニウムの質量比を上記上限以下とすると、導体と絶縁層の密着力が改善されるため、当該絶縁電線の耐傷性や可撓性も改善され、コイルへの加工性を向上させることができる。
<絶縁層>
絶縁層は、導体を被覆するように導体の周面に積層される。絶縁層は、単層でも2層以上の多層構造でもよい。多層構造として、特性の異なる絶縁材(樹脂)を組み合わせると、内層、外層等で異なる特性を付与できる。
絶縁層は、導体を被覆するように導体の周面に積層される。絶縁層は、単層でも2層以上の多層構造でもよい。多層構造として、特性の異なる絶縁材(樹脂)を組み合わせると、内層、外層等で異なる特性を付与できる。
当該絶縁電線の絶縁層は、例えば導体の周面に積層され、記絶縁層が、導体の周面に積層され、フェノキシ樹脂等の柔軟な成分を主成分として含有するプライマー層を有することが好ましい。さらに、上記プライマー層に加えて、ビフェニル含有ポリアミドイミド樹脂を主成分として含有するビフェニル含有ポリアミドイミド層を有することが好ましい。
[プライマー層]
プライマー層は、フェノキシ樹脂やポリアミドイミド等の柔軟な成分を主成分として含有し、フェノキシ樹脂ワニス、及びこれに硬化剤を含有させたワニス(以上プライマー層用ワニス)を熱処理することで形成される。
プライマー層は、フェノキシ樹脂やポリアミドイミド等の柔軟な成分を主成分として含有し、フェノキシ樹脂ワニス、及びこれに硬化剤を含有させたワニス(以上プライマー層用ワニス)を熱処理することで形成される。
(フェノキシ樹脂)
プライマー層用ワニスの主成分として用いられるフェノキシ樹脂とは、ビスフェノール系化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂のうち、分子量が大きい樹脂をいい、通常、重量平均分子量(GPCによる測定)として30000〜10万、好ましくは50000〜80000のエポキシ樹脂が該当する。
プライマー層用ワニスの主成分として用いられるフェノキシ樹脂とは、ビスフェノール系化合物とエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂のうち、分子量が大きい樹脂をいい、通常、重量平均分子量(GPCによる測定)として30000〜10万、好ましくは50000〜80000のエポキシ樹脂が該当する。
上記ビスフェノール系化合物としては、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン(以下、「ビスフェノールS」という)、ビスフェノールF、又はこれらの組み合わせが用いられる。使用したビスフェノール系化合物の種類に応じて、ビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂)、ビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂(ビスフェノールF型フェノキシ樹脂)、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂の耐熱性を高めるために、ビスフェノール系化合物の一部に、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン(以下、「ビスフェノールS」という)を用いたビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂などが得られる。これらのビスフェノール型フェノキシ樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
以上のようなビスフェノール型フェノキシ樹脂としては、市販品を用いてもよい。ビスフェノールA型フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、東都化成株式会社製、品番YP−50、YP50S、YP−55、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート、大日本インキ化学工業株式会社製のエピクロン、ユニオンカーバイト株式会社製のPKHC、PKHH、PKHJなどが挙げられる。ビスフェノールS型フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、東都化成株式会社製、品番YPS007A30Aなどが挙げられる。ビスフェノールF型フェノキシ樹脂の市販品としては、東都化成株式会社製のFX−316、ジャパンエポキシレジン株式会社の4010P、4110、4210などが挙げられる。さらに、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂とビスフェノールF型フェノキシ樹脂の混合品、若しくは共重合品の市販品としては、東都化成株式会社製のYP70、ZX−1356−2、ジャパンエポキシレジン株式会社の4250、4275などが挙げられる。
上記のようなビスフェノール型フェノキシ樹脂の他、例えば、ジヒドロキシビフェニルの水酸基とエピクロロヒドリンを反応させて、高分子量化することにより得られ、分子内にビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂を用いることもできる。
(硬化剤)
フェノキシ樹脂は、骨格中に、反応性に富むエポキシ基や水酸基を有しているので、これらと反応して架橋構造を形成できる硬化剤を共存させることで、被膜強度及び密着性に優れた絶縁層を得ることができるプライマー層が形成される。硬化剤としては、メラミン化合物、イソシアネート化合物などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
フェノキシ樹脂は、骨格中に、反応性に富むエポキシ基や水酸基を有しているので、これらと反応して架橋構造を形成できる硬化剤を共存させることで、被膜強度及び密着性に優れた絶縁層を得ることができるプライマー層が形成される。硬化剤としては、メラミン化合物、イソシアネート化合物などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
上記メラミン化合物としては、例えば、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、メチロール化メラミン、ブチロール化メラミンなどが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、又は2種以上を混合して用いてもよい。
上記イソシアネート化合物としては、イソシアネート基をブロック剤で保護したブロックイソシアネートが好ましく用いられる。ブロックイソシアネート化合物は、常温で安定であるが、その解離温度以上に加熱すると、遊離のイソシアネート基を再生するものである。イソシアネートの解離温度は、ブロック剤の種類によるが、好ましくは80〜160℃、より好ましくは90〜130℃である。
上記イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルへキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロへキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロへキサンジイソシアネート、イソプロピデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメリルシクロへキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−ビス(イソシナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどの炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物などが挙げられる。
これらのイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックするブロック剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、ブチルセロソルブ類などが挙げられる。
以上のようなブロックイソシアネートとして、市販品を用いてもよく、例えば、住化バイエルウレタン株式会社製のCT stable、BL−3175、TPLS−2759、BL−4165、日本ポリウレタン工業株式会社製のMS−50などを用いることができる。
以上のような硬化剤は、密着性を高める観点から、フェノキシ樹脂100質量部あたり3〜60質量部、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部の割合で用いる。
(プライマー層用ワニス)
プライマー層用ワニスは、上記フェノキシ樹脂等の柔軟な成分、あるいは、これに硬化剤を含有し、更に、本発明の目的が阻害されない範囲で、必要に応じて、エポキシ樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の他の樹脂;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、炭化チタン、タングステンカーバイド、窒化ホウ素、窒化ケイ素などのフィラー;ワニスの硬化性や流動性を改善するために、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラヘキシルチタネートなどのチタン系ナフテン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛などの亜鉛系化合物;酸化防止剤;防食剤;密着性向上剤;硬化性改善剤;レベリング剤;接着助剤などの添加剤を含有した樹脂組成物を、有機溶剤に溶解して調製される。
プライマー層用ワニスは、上記フェノキシ樹脂等の柔軟な成分、あるいは、これに硬化剤を含有し、更に、本発明の目的が阻害されない範囲で、必要に応じて、エポキシ樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の他の樹脂;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、炭化チタン、タングステンカーバイド、窒化ホウ素、窒化ケイ素などのフィラー;ワニスの硬化性や流動性を改善するために、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラヘキシルチタネートなどのチタン系ナフテン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛などの亜鉛系化合物;酸化防止剤;防食剤;密着性向上剤;硬化性改善剤;レベリング剤;接着助剤などの添加剤を含有した樹脂組成物を、有機溶剤に溶解して調製される。
上記有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒をはじめ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロへキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチルなどのエステル類;ジエチルエステル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素化合物;ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素化合物;クレゾール、クロルフェノールなどのフェノール類;ピリジンなどの第三級アミンなどが挙げられ、これらの有機溶媒は、それぞれ単独で又は2種以上混合して用いることができる。
以上のような組成を有するプライマー層用ワニスを、アルミニウム導体に直接塗布した後、焼付けることによりプライマー層を形成できる。焼付温度としては、フェノキシ樹脂が硬化剤と反応して熱硬化できる温度であることが好ましく、通常、200〜600℃程度である。また、ワニスの塗布、焼付は、1回だけであってもよいし、2回以上行ってもよい。
以上のようにして形成されるプライマー層の平均厚みとしては、0.5μm以上5μm以下が好ましく、1μm以上3μm以下がより好ましい。プライマー層の平均厚みが上記下限未満の場合、プライマー層形成の効果が得られにくいおそれがある。また、巻線製造上も周方向や長手方向の最小厚みに対する最大厚みの比が大きくなり、各種特性のバラツキの要因となる可能性がある。一方、プライマー層の平均厚みが上記上限を超えても密着力の低下は見られないが、フェノキシ樹脂等の柔軟なプライマーは一般に熱軟化温度が低いため、機械特性や熱軟化特性が低下する可能性がある。また、コスト的に不利となるおそれがある。
[ビフェニル含有ポリアミドイミド層]
ビフェニル含有ポリアミドイミド層とは、アミドイミド原料であるイソシアネート化合物の一部として、ビフェニル含有ジイソシアネートを用いたポリアミドイミドワニスを用いて形成される硬化物層をいい、形成されたポリアミドイミド層中にも当該ビフェニル含有ジイソシアネート由来のビフェニル基が含有されていることから、ビフェニル含有化合物を原料として使用しないポリアミドイミドワニス(汎用ポリアミドイミドワニス)の硬化物と比べて強度がアップしている。
ビフェニル含有ポリアミドイミド層とは、アミドイミド原料であるイソシアネート化合物の一部として、ビフェニル含有ジイソシアネートを用いたポリアミドイミドワニスを用いて形成される硬化物層をいい、形成されたポリアミドイミド層中にも当該ビフェニル含有ジイソシアネート由来のビフェニル基が含有されていることから、ビフェニル含有化合物を原料として使用しないポリアミドイミドワニス(汎用ポリアミドイミドワニス)の硬化物と比べて強度がアップしている。
ここで、アミドイミド原料としては、イソシアネート化合物及びカルボン酸、あるいはアミン化合物と酸との反応生成物であるイミドジカルボン酸をイソシアネートと反応させることによりポリアミドイミドを合成する場合には、さらにアミン化合物が用いられる。ビフェニル含有ポリアミドイミド層用ワニスでは、原料に用いるイソシアネート化合物の一部に、ビフェニル含有ジイソシアネートを使用するところに特徴がある。
上記ビフェニル含有ジイソシアネート化合物としては、代表的には3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネートが好ましく用いられ、その他、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジクロロビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジクロロビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジブロモビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジブロモビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジエトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,3′−ジエトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネートなどが挙げられる。
ビフェニル含有ジイソシアネート化合物以外のイソシアネート化合物としては、通常のポリアミドイミドワニスに用いられるようなジイソシアネート化合物を用いることができ、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4′−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4′−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートなどが好ましく用いられる。
さらに、ビフェニル含有ポリアミドイミド層の架橋密度を上げるために、多官能のポリイソシアネート化合物を、アミドイミド原料としてのイソシアネート化合物の一部として用いることができる。多官能ポリイソシアネートとしては、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジフェニルエーテルトリイソシアネート、ジイソシアネート化合物の3量体であるポリイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社の商品名デスモジュールL、デスモジュールAP等)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどが挙げられる。
原料として使用するイソシアネート化合物のうち、上記ビフェニル含有ジイソシアネート化合物の含有割合は、10〜80モル%とすることが好ましい。10モル%未満では、得られるビフェニル含有ポリアミドイミド膜の強度アップ効果が不十分となる。
カルボン酸としては、トリメリット酸無水物、トリメリット酸クロライド、又はトリメリット酸の誘導体のうちの三塩基酸等の無水物;テトラカルボン酸無水物や二塩基酸、例えば、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、テレフタル酸、イソフタル酸、スルホテレフタル酸、ジクエン酸、2,5−チオフェンジカルボン酸、4,5−フェナントレンジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4′−ジカルボン酸、フタルジイミドジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、アジピン酸等のジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸を用いることができる。これらは単独で使用できる他、2種類以上を併用することもできる。
イソシアネート基又はカルボキシル基を3個以上含む多官能ポリイソシアネート又は多官能カルボン酸は、ポリアミドイミド膜の架橋密度を上げることができるので、耐熱性の観点から好ましいが、ビフェニル含有ポリアミドイミド層用ワニスでは、多官能ポリイソシアネート及び多官能カルボン酸の含有量は、イソシアネート成分および酸成分の総量に対する、上記ポリイソシアネート化合物及び/又はポリカルボン酸化合物の合計の含有割合が0.5〜8モル%、好ましくは0.5〜3モル%となるようにすることが好ましい。0.5モル%未満では、十分な架橋構造が得られず、8モル%を超えると、架橋密度が高すぎて、絶縁層の可撓性が劣る傾向にある。
以上のように、ポリイソシアネート化合物及び/又はポリカルボン酸化合物を上記の割合で含有する、略等モル量のイソシアネート成分および酸成分を、適当な有機溶媒中で0〜180℃の温度で1〜24時間、より具体的には、まず140℃未満の温度で一定時間、加熱した後、昇温してさらに一定時間、加熱して反応させると、イソシアネート成分と酸成分との共重合体であるポリアミドイミドが、有機溶媒中に溶解又は分散したポリアミドイミド系ワニスが得られる。
アミン成分と酸成分とを反応させてイミドジカルボン酸を得、このイミドジカルボン酸とイソシアネート成分とを反応させてなるポリアミドイミドワニスの場合、アミドイミド原料として上記に列挙した酸、ジイソシアネート化合物の他、アミン成分が含まれる。この場合、アミン成分、酸成分、イソシアネート成分の総量に対する、上記ポリカルボン酸化合物、ポリイソシアネート化合物の合計の含有割合が0.5〜8モル%となるように、ポリカルボン酸及び/又はポリイソシアネートが含有される。
ジアミン化合物としては、とくに構造中に芳香族環を有する芳香族ジアミンが好適に使用される。芳香族ジアミンとしては、例えば4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフエニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、4,4′−〔ビス(4−アミノフェノキシ)〕ビフェニル、4,4′−〔ビス(4−アミノフェノキシ)〕ジフェニルエーテル、4,4′−〔ビス(4−アミノフェノキシ)〕ジフェニルスルホン、4,4′−〔ビス(4−アミノフェノキシ)〕ジフェニルメタン、4,4′−〔ビス(4−アミノフェノキシ)〕ジフェニルプロパン、4,4′−〔ビス(4−アミノフェノキシ)〕ジフェニルヘキサフルオロプロパン等、従来公知の種々のジアミン化合物が挙げられる。
このほか、ベンジジン、3−メチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチル−3,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチル−3,3′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジエトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジブロモ−4,4′−ジアミノビフェニル等を混合して用いることもできる。
以上のようなアミン成分と酸成分とを略化学量論量、有機溶媒中で反応させてイミドジカルボン酸を生成させ、これを、略化学量論量のイソシアネート成分と共重合させることで、ビフェニル含有ポリアミドイミド樹脂を製造することができる。より詳細には、酸成分およびその略1/2倍モル量のアミン成分を、適当な有機溶媒中で0〜150℃の温度で1〜24時間反応させると、アミン成分と酸成分との反応生成物であるイミドジカルボン酸が、反応液中に生成する。つぎにこの反応液に、イミドジカルボン酸と略等モル量のイソシアネート成分を添加して、0〜150℃の温度で1〜24時間反応させると、ビフェニル含有ポリアミドイミドが、有機溶媒中に溶解又は分散したビフェニル含有ポリアミドイミドワニスが得られる。
なお、ビフェニル含有ポリアミドイミドワニスにおいても、必要に応じて、プライマー層用ワニスで挙げたような各種添加剤を含有してもよい。また、有機溶剤としては、プライマー層用ワニスで挙げたような有機溶剤を用いることができる。
以上のようなビフェニル含有ポリアミドイミド層を形成するポリアミドイミド系ワニスとしては、例えば、特許第3497525号に開示されているようなポリアミドイミド系ワニスを用いることができる。
ビフェニル含有ポリアミドイミド層は、以上のようなポリアミドイミドワニスの硬化物からなり、プライマー層上に形成されてもよいし、プライマー層上に他の樹脂層を介して、かかる他の樹脂層上に形成されてもよい。ビフェニル含有ポリアミドイミドワニスを塗布、焼付することにより、ビフェニル含有ポリアミドイミド層が形成される。焼付温度は、通常、200〜600℃程度である。また、ワニスの塗布、焼付は、1回だけであってもよいし、複数回行ってもよい。
ビフェニル含有ポリアミドイミド層の厚みは、少なくとも0.5μmあればよく、他の樹脂層の有無、絶縁電線サイズとの関係で、最大でも50μm程度の範囲で適宜選択される。
[他の樹脂層]
当該絶縁電線の絶縁層は、上記プライマー層及びビフェニル含有ポリアミドイミド層以外の他の樹脂層を有していてもよい。
当該絶縁電線の絶縁層は、上記プライマー層及びビフェニル含有ポリアミドイミド層以外の他の樹脂層を有していてもよい。
絶縁層をプライマー層とビフェニル含有ポリアミドイミド層と他の樹脂層との3層以上の構造とする場合、他の樹脂層は、プライマー層とビフェニル含有ポリアミドイミド層との間に介在するようにしてもよいし、プライマー層上にビフェニル含有ポリアミドイミド層が形成され、このビフェニル含有ポリアミドイミド層上に他の樹脂層を形成してもよいし、さらに2つの他の樹脂層の間にビフェニル含有ポリアミドイミド層が介層されている構造の絶縁層としてもよい。
他の樹脂層の形成に用いられるワニスとしては、特に限定されず、従来より絶縁電線の被膜として用いられている汎用タイプのポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂などを主成分とするワニスを用いることができる。これらのワニスを、従来公知の方法で、塗布、焼付することにより、ワニスの種類に応じて、汎用タイプのポリアミドイミド層、ポリエステルイミド層、ポリイミド層、ポリエステル層、ポリアミド層、エポキシ樹脂層などの樹脂層が形成される。
他の樹脂層を含む場合、絶縁層における他の樹脂層の厚み割合は、絶縁層の厚みに対して0〜80%程度とすることが好ましく、0〜50%程度とすることがより好ましい。80%を超えると、ビフェニル含有ポリアミドイミド層の割合が低下するため、その効果(機械的強度の向上)が得られにくくなる。
[表面潤滑層]
当該絶縁電線は、さらに絶縁層周面に、巻線の摩擦低減の観点から、潤滑性を有する被膜(表面潤滑層)を有していてもよい。表面潤滑層を構成する樹脂としては、潤滑性を有するものであればよく、例えば、流動パラフィン、固形パラフィン等のパラフィン類、各種ワックス、ポリエチレン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の潤滑剤をバインダー樹脂で結着したものなどを挙げることができる。好ましくは、パラフィン又はワックスを添加することで潤滑性を付与したポリアミドイミド樹脂が用いられる。
当該絶縁電線は、さらに絶縁層周面に、巻線の摩擦低減の観点から、潤滑性を有する被膜(表面潤滑層)を有していてもよい。表面潤滑層を構成する樹脂としては、潤滑性を有するものであればよく、例えば、流動パラフィン、固形パラフィン等のパラフィン類、各種ワックス、ポリエチレン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の潤滑剤をバインダー樹脂で結着したものなどを挙げることができる。好ましくは、パラフィン又はワックスを添加することで潤滑性を付与したポリアミドイミド樹脂が用いられる。
表面潤滑層の厚みは、特に限定しないが、コイルとされた場合に、周囲の絶縁電線やコイル形成治具との摩擦、摩耗を低減するのに必要十分な厚みであればよく、具体的には0.5μm以上10μmが好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。
絶縁層全体の平均厚みとしては、特に限定されないが、例えば20μm以上100μm以下とすることができる。
<絶縁電線>
当該絶縁電線は、剥離強度試験における絶縁層剥離までの平均捻り回数が50回以上である。この絶縁層剥離までの平均捻り回数の下限としては、60回がさらに好ましい。剥離までの平均捻り回数が上記下限未満の場合、導体と絶縁層との密着性が十分ではないため、当該絶縁電線の耐傷性が得られない。
当該絶縁電線は、剥離強度試験における絶縁層剥離までの平均捻り回数が50回以上である。この絶縁層剥離までの平均捻り回数の下限としては、60回がさらに好ましい。剥離までの平均捻り回数が上記下限未満の場合、導体と絶縁層との密着性が十分ではないため、当該絶縁電線の耐傷性が得られない。
当該絶縁電線のグリセリン溶液中における上記絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値の下限としては、0.15kV/μmが好ましく、0.20kV/μmがさらに好ましい。一方、絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値の上限としては、0.27kV/μmが好ましい。絶縁破壊電圧が上記下限未満の場合、高電圧下で使用される機器に当該絶縁電線を用いることができないおそれがある。また、絶縁破壊電圧が上記上限を超える場合、当該絶縁電線を安定的に製造する際、コストの上昇を招来するおそれがある。
当該絶縁電線の引掻き削れ荷重の下限としては、3.5kgfが好ましく、4.0kgfがさらに好ましく、3.8kgfが特に好ましい。引掻き削れ荷重が上記下限未満の場合、コイルを加工する際に絶縁電線に傷が付いたり、絶縁層が剥がれたりすることで、絶縁性が低下してしまうおそれがある。なお、引掻き削れ荷重は、絶縁電線と直角にピアノ線を重ね、交点部分に荷重をかけた状態で絶縁電線を引き抜いた場合に絶縁層にピンホールが発生する時の荷重である。
<絶縁電線の製造方法>
当該絶縁電線は、以下の工程を有する製造方法により容易かつ確実に製造することができる。
(1)導体を得る導体製造工程
(2)上記導体周面に対して炭素低減処理を行う炭素低減工程
(3)上記導体の周面に絶縁層を被覆する被覆工程
当該絶縁電線は、以下の工程を有する製造方法により容易かつ確実に製造することができる。
(1)導体を得る導体製造工程
(2)上記導体周面に対して炭素低減処理を行う炭素低減工程
(3)上記導体の周面に絶縁層を被覆する被覆工程
<(1)導体製造工程>
導体製造工程においては、まず、導体の原料となるアルミニウム又はアルミニウム合金を鋳造及び圧延して圧延材を得る。次に、この圧延材に伸線加工を行って、任意の断面形状及び線径(短辺幅)を有する伸線材を形成する。伸線加工の方法としては、例えば複数の伸線ダイスを備えた伸線装置によって、この伸線ダイスに潤滑剤を塗布した圧延材を挿通させることで所望の断面形状及び線径(短辺幅)に徐々に近づける方法を用いることができる。この伸線ダイスは、線引きダイス、ローラダイス等を用いることができる。また、潤滑剤としては、油性成分を含油する水溶性及び非水溶性のものを使用可能である。なお、断面形状の加工は、軟化後に別途行うことも可能である。
導体製造工程においては、まず、導体の原料となるアルミニウム又はアルミニウム合金を鋳造及び圧延して圧延材を得る。次に、この圧延材に伸線加工を行って、任意の断面形状及び線径(短辺幅)を有する伸線材を形成する。伸線加工の方法としては、例えば複数の伸線ダイスを備えた伸線装置によって、この伸線ダイスに潤滑剤を塗布した圧延材を挿通させることで所望の断面形状及び線径(短辺幅)に徐々に近づける方法を用いることができる。この伸線ダイスは、線引きダイス、ローラダイス等を用いることができる。また、潤滑剤としては、油性成分を含油する水溶性及び非水溶性のものを使用可能である。なお、断面形状の加工は、軟化後に別途行うことも可能である。
伸線加工後、上記伸線材には加熱による軟化処理が行なわれる。軟化処理を行うことによって伸線材の結晶が再結晶化されるため、導体の靱性を向上させることができる。軟化処理における加熱温度としては、例えば250℃以上とすることができる。
軟化処理は、大気雰囲気下でも可能であるが、酸素含有量が少ない非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。このように非酸化性雰囲気下で軟化処理を行うことによって、軟化処理中(加熱中)の伸線材周面の酸化を抑制することができる。この非酸化性雰囲気としては、例えば真空雰囲気、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気、水素含有ガスや炭酸ガス含有ガス等の還元ガス雰囲気等を挙げることができる。
軟化処理は連続方式又はバッチ方式を用いることができる。連続方式としては、例えばパイプ炉等の加熱用容器内に伸線材を導入して熱伝導により加熱する炉式、伸線材に通電して抵抗熱によって加熱する直接通電方式、伸線材を高周波の電磁波によって加熱する間接通電方式等を挙げることができる。これらの中でも温度調節が容易な炉式が好ましい。バッチ方式としては、例えば箱型炉等の加熱用容器内に伸線材を封入して加熱する方式を挙げることができる。バッチ方式の加熱時間は0.5時間以上6時間以下とすることができる。また、バッチ方式においては、加熱後に50℃/sec以上の冷却速度で急冷することで、組織をより微細化することができる。
<(2)炭素低減工程>
炭素低減工程においては、上記導体製造工程で得られた導体の周面に炭素低減処理を施す。このように炭素低減処理を施すことで、伸線工程時に付着した潤滑剤等の有機物を除去し、導体と絶縁層との密着性を向上させることができる。
炭素低減工程においては、上記導体製造工程で得られた導体の周面に炭素低減処理を施す。このように炭素低減処理を施すことで、伸線工程時に付着した潤滑剤等の有機物を除去し、導体と絶縁層との密着性を向上させることができる。
上記炭素低減処理の具体的方法としては、例えば洗浄方法、分解方法、物理的除去方法等を挙げることができる。
上記洗浄方法としては、例えば浸漬洗浄、スプレー洗浄、スチーム洗浄、ブラッシング洗浄、電解洗浄、超音波洗浄、微細な泡によるマイクロバブリング等を用いることができる。この洗浄方法で用いる洗浄剤としては、例えば水、石油系溶剤、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、極性基含有溶剤(ケトン、アルコール等)等の溶剤、これらからなるエマルジョン、これらに界面活性剤等を溶解させた液等の中性液体;無機酸(塩酸、硝酸、硫酸、クロム酸等)水溶液、有機酸(ギ酸、酢酸等)水溶液等の酸性液体;無機アルカリ(水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)水溶液、有機アルカリ(エタノールアミン等)水溶液等のアルカリ性液体などを挙げることができる。
上記分解方法としては、例えば紫外線照射方法、プラズマ処理方法、焼成方法等を用いることができる。
上記物理的除去方法としては、例えばふき取り、ブラッシング、遠心分離、加振、空気洗浄等を用いることができる。
上記各種方法は、複数を組み合わせて用いることができる。但し、酸性液体又はアルカリ性液体を用いた電解洗浄は、特に径の小さいアルミニウム導体の場合、周面への不純物の析出により、周面の密着性の低下、電気特性の低下、線形変動等が発生し、量産適性が低下するおそれがある。また、アルミニウム導体の伸線工程では鉱物油を多く含む伸線潤滑剤が用いられるため、一度の洗浄では十分な効果を得ることが難しい。そこで、中性の液体を用いて複数回の洗浄を行うことが好ましい。例えば、界面活性剤を含む洗浄剤で導体を浸漬洗浄した後、水を用いた浸漬洗浄、水を用いた超音波洗浄、又はこれら両方をさらに行うことによって、伸線工程後にアルミニウム導体の周面に付着している鉱物油を多く含む潤滑剤を効果的に除去することができ、炭素除去効果を高めることができる。また、高温での洗浄や長時間の洗浄でも、炭素除去効果を高めることができる。これらの洗浄方法は絶縁電線の製造工程においてインラインで連続的に行うことができるため、絶縁電線の生産性の向上にも寄与する。
なお、洗浄に酸性液体又はアルカリ性液体を用いた場合は、洗浄のみならずアルミニウム導体の溶解による粗化を積極的に発生させてもよい。このアルミニウム導体の粗化により、アルミニウム導体と絶縁層との接触面積を大きくして密着性を向上させることができる。
<(3)被覆工程>
被覆工程においては、上記炭素低減処理がなされた導体に絶縁層を積層して絶縁電線を得る。具体的には、絶縁層の形成樹脂を有機溶媒に溶かした塗料(ワニス)を導体の周面に塗布し、焼付けることで絶縁層を形成する。
被覆工程においては、上記炭素低減処理がなされた導体に絶縁層を積層して絶縁電線を得る。具体的には、絶縁層の形成樹脂を有機溶媒に溶かした塗料(ワニス)を導体の周面に塗布し、焼付けることで絶縁層を形成する。
ワニスを導体周面に塗布する方法としては、例えばワニスを貯留したワニス槽と塗布ダイスとを備える塗布装置を用いた方法を挙げることができる。この塗布装置によれば、導体がワニス槽内を挿通することでワニスが導体周面に付着し、その後塗布ダイスを通過することでこのワニスがほぼ均一な厚みに塗布される。なお、ワニスにおける樹脂の含有量としては、10質量%以上50質量%以下が好ましい。
上記ワニスを加熱して焼付ける方法としては、例えば導体の走行方向に長い筒状の加熱炉を用い、導体を間接的に加熱する方法を用いることができる。この加熱方法は特に限定されないが、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等の公知の方法で行うことができる。このような加熱により、導体周面に塗布されたワニスに含まれる溶剤が気化し、導体周面が樹脂で被覆される。加熱温度は、絶縁層に用いる樹脂の種類により適宜選択される。
上記導体を上記塗布装置及び加熱炉内に複数回走行させることで、上記塗布及び焼付けが複数回繰り返されて樹脂被膜の厚みを増加させていくことができる。このとき、塗布ダイスの孔径は繰り返し回数にあわせて、必要に応じ、徐々に大きくなるように調整される。所定の厚みの樹脂被膜が得られた時点で、ワニスに含まれる樹脂成分を変更して被覆工程を継続することで、主成分の異なる複数の層からなる絶縁層を形成することができる。なお、各層ごとの塗布及び焼付けの繰り返し回数は適宜選択することができるが、2回から20回が適当である。
<コイル>
当該絶縁電線は、アルミニウム又はアルミニウム合金を導体として用いているため軽量性に優れ、さらに上述のように耐傷性及び絶縁特性に優れる。そのため、当該絶縁電線を巻回することで、多様な用途に好適に用いることが可能なコイルを得ることができる。
当該絶縁電線は、アルミニウム又はアルミニウム合金を導体として用いているため軽量性に優れ、さらに上述のように耐傷性及び絶縁特性に優れる。そのため、当該絶縁電線を巻回することで、多様な用途に好適に用いることが可能なコイルを得ることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例における各測定値は、以下の方法にて測定した値である。
[絶縁層剥離までの捻り回数(単位:回)]
JIS−C3216−3の5.4に規定の「剥離試験」に準拠し、絶縁層剥離までの捻り回数を計測し、10回の平均値を求めた。以下、1回の試験を説明すると、まずスクレーパを用いて絶縁電線の上下の被膜部分を導体が表出するように除去して試験片を作製する。次に、この試験片の一端を固定し、他端を一定荷重で一方向に捻り、残った側面部の絶縁層が浮き上がるまでの捻り回数を計測した。
JIS−C3216−3の5.4に規定の「剥離試験」に準拠し、絶縁層剥離までの捻り回数を計測し、10回の平均値を求めた。以下、1回の試験を説明すると、まずスクレーパを用いて絶縁電線の上下の被膜部分を導体が表出するように除去して試験片を作製する。次に、この試験片の一端を固定し、他端を一定荷重で一方向に捻り、残った側面部の絶縁層が浮き上がるまでの捻り回数を計測した。
[絶縁破壊電圧(単位:kV/μm)]
絶縁電線を二個撚りにした試験片(長さ120mm、撚り数18)を作製した。この試験片を、グリセリンと飽和食塩水とを17:3の質量割合で混合した試験液に一部を浸し、試験片の一端と試験液との間に交流電圧を印加した。交流電圧の電圧を1V/secの速度で昇圧させて短絡したときの電圧を絶縁破壊電圧として計測し、10個の試験片の絶縁破壊電圧の平均値を絶縁電線の絶縁層の平均厚みで除した値を算出した。
絶縁電線を二個撚りにした試験片(長さ120mm、撚り数18)を作製した。この試験片を、グリセリンと飽和食塩水とを17:3の質量割合で混合した試験液に一部を浸し、試験片の一端と試験液との間に交流電圧を印加した。交流電圧の電圧を1V/secの速度で昇圧させて短絡したときの電圧を絶縁破壊電圧として計測し、10個の試験片の絶縁破壊電圧の平均値を絶縁電線の絶縁層の平均厚みで除した値を算出した。
[引掻き削れ荷重(単位:kgf)]
絶縁電線と直角にピアノ線を重ね、交点部分に荷重をかけた状態で絶縁電線を引き抜いた場合に絶縁層にピンホールが発生する時の荷重を計測した。荷重は2kgfから開始して0.5kgfずつ増加させた。また、ピンホールの発生は、JIS−C3216−5の7に規定の「ピンホール試験」に準拠し、適量の30g/Lのフェノールフタレインアルコール溶液を加えた2g/Lの食塩水に上記引掻き試験後の絶縁電線の一部を浸し、絶縁導線の一端と食塩水との間に12Vの直流電圧を1分間印加することで確認した。この印加試験において、ピンホールの発生個所周辺の食塩水はピンク色へ変色するため、この変色の確認によってピンホールの有無が確認できる。試験は8本の絶縁電線の試験体に対して行い、1本でもピンホールが認められた場合の荷重を引掻き削れ荷重とした。
絶縁電線と直角にピアノ線を重ね、交点部分に荷重をかけた状態で絶縁電線を引き抜いた場合に絶縁層にピンホールが発生する時の荷重を計測した。荷重は2kgfから開始して0.5kgfずつ増加させた。また、ピンホールの発生は、JIS−C3216−5の7に規定の「ピンホール試験」に準拠し、適量の30g/Lのフェノールフタレインアルコール溶液を加えた2g/Lの食塩水に上記引掻き試験後の絶縁電線の一部を浸し、絶縁導線の一端と食塩水との間に12Vの直流電圧を1分間印加することで確認した。この印加試験において、ピンホールの発生個所周辺の食塩水はピンク色へ変色するため、この変色の確認によってピンホールの有無が確認できる。試験は8本の絶縁電線の試験体に対して行い、1本でもピンホールが認められた場合の荷重を引掻き削れ荷重とした。
[導体周面の炭素濃度(単位:質量%)]
絶縁層を積層する前の導体周面の炭素濃度をエネルギー分散型X線分析法(EDX)によって計測した。計測条件は、加速電圧を5kV、エミッション電流を100〜120μA、分析エリアを0.4224mm×0.3300mm、フルスケールのカウント数(CPS)を約1000とした。
絶縁層を積層する前の導体周面の炭素濃度をエネルギー分散型X線分析法(EDX)によって計測した。計測条件は、加速電圧を5kV、エミッション電流を100〜120μA、分析エリアを0.4224mm×0.3300mm、フルスケールのカウント数(CPS)を約1000とした。
[導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比]
上記エネルギー分散型X線分析法によって導体周面のアルミニウム濃度を計測し、上記導体周面の炭素濃度をこのアルミニウム濃度で除して導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比を得た。
上記エネルギー分散型X線分析法によって導体周面のアルミニウム濃度を計測し、上記導体周面の炭素濃度をこのアルミニウム濃度で除して導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比を得た。
[樹脂の弾性率(単位:GPa)]
絶縁電線から樹脂部分のみを取り出し、動的粘弾性測定法(DMS)によって測定した。測定条件は、周波数1Hz、歪み5μmとし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で昇温させた場合の引っ張り応力から算出した貯蔵弾性率を弾性率とした。
絶縁電線から樹脂部分のみを取り出し、動的粘弾性測定法(DMS)によって測定した。測定条件は、周波数1Hz、歪み5μmとし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で昇温させた場合の引っ張り応力から算出した貯蔵弾性率を弾性率とした。
[実施例1]
アルミニウムを鋳造、延伸、伸線及び軟化し、断面が円形で直径1mmの導体を得た。この導体を、界面活性剤(共栄社化学株式会社製「エクセムライトDS−336」、表中洗浄剤A)を含む洗浄液を貯留した洗浄液貯留槽Aに浸漬させた後、蒸留水を貯留した蒸留水貯留槽Bに浸漬させ、さらに蒸留水を貯留した超音波槽C内にて超音波洗浄を行って導体周面の炭素を減少させた。この導体の周面炭素濃度は3.5質量%であり、導体周面のアルミニウムの質量に対する炭素の質量比は0.04であった。なお、伸線時の潤滑剤としてはファ−ベスト化成株式会社「スーパードロー450」を用いた。
アルミニウムを鋳造、延伸、伸線及び軟化し、断面が円形で直径1mmの導体を得た。この導体を、界面活性剤(共栄社化学株式会社製「エクセムライトDS−336」、表中洗浄剤A)を含む洗浄液を貯留した洗浄液貯留槽Aに浸漬させた後、蒸留水を貯留した蒸留水貯留槽Bに浸漬させ、さらに蒸留水を貯留した超音波槽C内にて超音波洗浄を行って導体周面の炭素を減少させた。この導体の周面炭素濃度は3.5質量%であり、導体周面のアルミニウムの質量に対する炭素の質量比は0.04であった。なお、伸線時の潤滑剤としてはファ−ベスト化成株式会社「スーパードロー450」を用いた。
上記炭素低減処理後、導体周面に樹脂ワニスを塗布し焼き付けることによって絶縁層を被覆し、実施例1の絶縁電線を得た。なお、絶縁層は、ポリエステルイミド(日立化成株式会社製「Isomid40SM−45」、表中「汎用EsI」)で形成された厚み29.5μmの最内層と、汎用ポリアミドイミド(表中「汎用AI」)で形成された厚み4.5μmの中間層と、高潤滑性ポリアミドイミド(表中「潤滑AI」)で形成された厚み4.5μmの最外層とから形成されてなる。この内、汎用EsIワニスを上記被覆工程にて焼き付けた樹脂の弾性率は50℃で1.9GPa、200℃で0.46GPaであった。
上記中間層に用いた汎用ポリアミドイミドは以下の方法で調製した。まず、温度計、冷却管、塩化カルシウム充填管、攪拌器及び窒素吹込み管が取り付けられた容量1Lのフラスコ内に、窒素吹込み管から毎分150mLの窒素ガスを流入させながら、無水トリメリット酸143.6g及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(三井武田ケミカル株式会社製「コスモネートPH」)193.8gを投入した。次に、このフラスコ内に溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン536gを添加し、攪拌器で攪拌しながら80℃で約3時間加熱した後、フラスコ内の温度を約4時間かけて120℃まで昇温し、この温度で約3時間加熱した。その後、加熱を停止し、フラスコ内にキシレン134gを添加して内容液を希釈した後、放冷し、汎用ポリアミドイミド樹脂ワニスを得た。
また、上記最外層に用いた高潤滑性ポリアミドイミドは以下の方法で調製した。上記方法で調製した汎用ポリアミドイミドに、汎用ポリアミドイミドの固形分100質量部に対してポリエチレンワックスを1.5質量部の割合で混合することにより、高潤滑性ポリアミドイミド樹脂ワニスを得た。
[実施例2]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を洗浄液貯留槽Aに浸漬させた後、蒸留水貯留槽Bでの浸漬洗浄は行わず、そのまま超音波槽C内にて超音波洗浄を行った。この導体の周面炭素濃度は4.5質量%であり、導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比は0.05であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例2の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を洗浄液貯留槽Aに浸漬させた後、蒸留水貯留槽Bでの浸漬洗浄は行わず、そのまま超音波槽C内にて超音波洗浄を行った。この導体の周面炭素濃度は4.5質量%であり、導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比は0.05であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例2の絶縁電線を得た。
[実施例3]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を洗浄液貯留槽Aに浸漬させた後、蒸留水貯留槽Bに浸漬させた。超音波槽Cにおける超音波洗浄は行わなかった。この導体の周面炭素濃度は6.3質量%であり、導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比は0.07であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例3の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を洗浄液貯留槽Aに浸漬させた後、蒸留水貯留槽Bに浸漬させた。超音波槽Cにおける超音波洗浄は行わなかった。この導体の周面炭素濃度は6.3質量%であり、導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比は0.07であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例3の絶縁電線を得た。
[実施例4]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、界面活性剤としてホートン株式会社製「Cerfa−Kleen5395」(表中洗浄剤B)を用いた以外は実施例1と同様の手順で導体周面を洗浄した。この導体の周面炭素濃度は4.5質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例4の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、界面活性剤としてホートン株式会社製「Cerfa−Kleen5395」(表中洗浄剤B)を用いた以外は実施例1と同様の手順で導体周面を洗浄した。この導体の周面炭素濃度は4.5質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例4の絶縁電線を得た。
[実施例5]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、界面活性剤としてホートン株式会社製「Cerfa−Kleen5395」(表中洗浄剤B)を用いた以外は実施例3と同様の手順で導体周面を洗浄した。この導体の周面炭素濃度は9.6質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例5の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、界面活性剤としてホートン株式会社製「Cerfa−Kleen5395」(表中洗浄剤B)を用いた以外は実施例3と同様の手順で導体周面を洗浄した。この導体の周面炭素濃度は9.6質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例5の絶縁電線を得た。
[実施例6]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、界面活性剤としてJX日鉱日石エネルギー株式会社製「NSクリーン200」(表中洗浄剤C)を用いた以外は実施例3と同様の手順で導体周面を洗浄した。この導体の周面炭素濃度は4.3質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例6の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、界面活性剤としてJX日鉱日石エネルギー株式会社製「NSクリーン200」(表中洗浄剤C)を用いた以外は実施例3と同様の手順で導体周面を洗浄した。この導体の周面炭素濃度は4.3質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例6の絶縁電線を得た。
[実施例7]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を界面活性剤(JX日鉱日石エネルギー株式会社製「NSクリーン200」、表中洗浄剤C)を含む洗浄液を貯留した洗浄液貯留槽Aに浸漬させた。蒸留水貯留槽Bへの浸漬及び超音波槽Cでの超音波清浄は行わなかった。この導体の周面炭素濃度は4.4質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例7の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を界面活性剤(JX日鉱日石エネルギー株式会社製「NSクリーン200」、表中洗浄剤C)を含む洗浄液を貯留した洗浄液貯留槽Aに浸漬させた。蒸留水貯留槽Bへの浸漬及び超音波槽Cでの超音波清浄は行わなかった。この導体の周面炭素濃度は4.4質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例7の絶縁電線を得た。
[比較例1]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得たが、この導体に対して周面洗浄(炭素低減処理)を行わなかった。この導体の周面炭素濃度は13.0質量%であり、導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比は0.15であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例1の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得たが、この導体に対して周面洗浄(炭素低減処理)を行わなかった。この導体の周面炭素濃度は13.0質量%であり、導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比は0.15であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例1の絶縁電線を得た。
[比較例2]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を蒸留水貯留槽Bに浸漬させた。洗浄液貯留槽Aへの浸漬及び超音波槽Cでの超音波清浄は行わなかった。この導体の周面炭素濃度は12.9質量%であり、導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比は0.18であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例2の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を蒸留水貯留槽Bに浸漬させた。洗浄液貯留槽Aへの浸漬及び超音波槽Cでの超音波清浄は行わなかった。この導体の周面炭素濃度は12.9質量%であり、導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比は0.18であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例2の絶縁電線を得た。
[比較例3]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を洗浄液貯留槽Aに浸漬させた。蒸留水貯留槽Bへの浸漬及び超音波槽Cでの超音波清浄は行わなかった。この導体の周面炭素濃度は11.5質量%であり、導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比は0.13であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例3の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を洗浄液貯留槽Aに浸漬させた。蒸留水貯留槽Bへの浸漬及び超音波槽Cでの超音波清浄は行わなかった。この導体の周面炭素濃度は11.5質量%であり、導体周面のアルミニウムに対する炭素の質量比は0.13であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例3の絶縁電線を得た。
[比較例4]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を超音波槽C内にて超音波洗浄を行った。洗浄液貯留槽A及び蒸留水貯留槽Bへの浸漬は行わなかった。この導体の周面炭素濃度は12.5質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例4の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を超音波槽C内にて超音波洗浄を行った。洗浄液貯留槽A及び蒸留水貯留槽Bへの浸漬は行わなかった。この導体の周面炭素濃度は12.5質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例4の絶縁電線を得た。
[実施例8〜13]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を表2に示す温度の水蒸気で表2に示す時間処理して表面を洗浄した。これらの導体の周面炭素濃度はそれぞれ表2に示す値であった。これらの導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例8〜13の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を表2に示す温度の水蒸気で表2に示す時間処理して表面を洗浄した。これらの導体の周面炭素濃度はそれぞれ表2に示す値であった。これらの導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、実施例8〜13の絶縁電線を得た。
[比較例5]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体に26℃の水に4秒間浸漬し表面を洗浄した。この導体の周面炭素濃度は13.2質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例5の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体に26℃の水に4秒間浸漬し表面を洗浄した。この導体の周面炭素濃度は13.2質量%であった。この導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例5の絶縁電線を得た。
[比較例6、7]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体に10MPaの圧力で表2に示す温度の水を4秒間噴射して表面を洗浄した。これらの導体の周面炭素濃度はそれぞれ表2に示す値であった。これらの導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例6、7の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体に10MPaの圧力で表2に示す温度の水を4秒間噴射して表面を洗浄した。これらの導体の周面炭素濃度はそれぞれ表2に示す値であった。これらの導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例6、7の絶縁電線を得た。
[比較例8、9]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を表2に示す温度の水蒸気で表2に示す時間処理して表面を洗浄した。これらの導体の周面炭素濃度はそれぞれ表2に示す値であった。これらの導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例8、9の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を表2に示す温度の水蒸気で表2に示す時間処理して表面を洗浄した。これらの導体の周面炭素濃度はそれぞれ表2に示す値であった。これらの導体周面に実施例1と同様の絶縁層を積層し、比較例8、9の絶縁電線を得た。
[実施例14〜23]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、実施例1と同様の手順で導体周面を洗浄した。この導体周面に表3に示す構成の絶縁層を積層し、実施例14〜23の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、実施例1と同様の手順で導体周面を洗浄した。この導体周面に表3に示す構成の絶縁層を積層し、実施例14〜23の絶縁電線を得た。
[実施例24〜32]
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を、界面活性剤(共栄社化学株式会社製「エクセムライトDS−336」)を含む洗浄液を貯留した洗浄液貯留槽Aに浸漬させた後、蒸留水を貯留した蒸留水貯留槽Bに浸漬させ、さらに蒸留水を貯留した超音波槽C内にて超音波洗浄を行って導体周面を洗浄した。この導体の周面炭素濃度は3.4質量%であった。この導体周面に表3に示す構成の絶縁層を積層し、実施例24〜32の絶縁電線を得た。
実施例1と同様の工程によりアルミニウム導体を得、この導体を、界面活性剤(共栄社化学株式会社製「エクセムライトDS−336」)を含む洗浄液を貯留した洗浄液貯留槽Aに浸漬させた後、蒸留水を貯留した蒸留水貯留槽Bに浸漬させ、さらに蒸留水を貯留した超音波槽C内にて超音波洗浄を行って導体周面を洗浄した。この導体の周面炭素濃度は3.4質量%であった。この導体周面に表3に示す構成の絶縁層を積層し、実施例24〜32の絶縁電線を得た。
実施例14〜32(表3)で用いた絶縁層構成樹脂を以下に説明する。
表中の「フェノキシ1」とは、ビスフェノールA変性フェノキシ樹脂を意味し、次の手順でワニスを得た。東都化成株式会社の「YP−50」(JIS K7236に基づくエポキシ当量87600g/eq、GPCによる重量平均分子量60000〜80000、DSC法(10℃/min昇値)によるガラス転移点84℃)を、クレゾール/シクロヘキサノンに溶解させた溶液(固形分量:27質量%)を用いた。ビスフェノールA変性フェノキシ樹脂100質量部に対して、ブロックイソシアネートとしてMS50(日本ポリウレタン工業製)20質量部を混合して、プライマー層用ワニスとした。このワニスにおける固形分量は、27質量%である。この樹脂ワニスを上記被覆工程にて焼き付けた樹脂の弾性率は50℃で1.6GPa、200℃で0.017GPaであった。
表中の「フェノキシ2」とは、ビスフェノールA変性フェノキシ樹脂を意味し、次の手順でワニスを得た。東都化成株式会社の「YP−50」(JIS K7236に基づくエポキシ当量87600g/eq、GPCによる重量平均分子量60000〜80000、DSC法(10℃/min昇値)によるガラス転移点84℃)を、クレゾール/シクロヘキサノンに溶解させプライマー層用ワニスとした。このワニスにおける固形分量は、27質量%である。
表中の「フェノキシ3」とは、ビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合変性フェノキシ樹脂を意味し、次の手順でワニスを得た。東都化成株式会社の「ZX−1356−2」(GPCによる重量平均分子量60000〜80000、DSC法(10℃/min昇値)によるガラス転移点72℃)を、クレゾール/シクロヘキサノンに溶解させ、ビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合変性フェノキシ樹脂100質量部に対して、ブロックイソシアネートとしてMS50(日本ポリウレタン工業株式会社製)20質量部を混合して、プライマー層用ワニスとした。このワニスにおける固形分量は、27質量%である。この樹脂ワニスを上記被覆工程にて焼き付けた樹脂の弾性率は50℃で1.7GPa、200℃で0.015GPaであった。
表中の「高強度AI」とは、ビフェニル含有ポリアミドイミドを意味し、次の手順でワニスを得た。まず、温度計、冷却装置、塩化カルシウム充填管、攪拌器、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコ中に、上記窒素吹き込み管から毎分150mlの窒素ガスを流しながら、トリメリット酸無水物(TMA)108.6gと、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)29.9gと、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)113.1gとを投入した。TODIの全ジイソシアネート中に占る割合は、20モル%であった。次に、上記フラスコ中に、N−メチル−2−ピロリドン637gを入れ、攪拌器で攪拌しつつ、80℃で3時間、加熱し、さらに3時間かけて、140℃まで昇温した後、140℃で1時間加熱した。そして、1時間経過した段階で、加熱を止め、放冷して、濃度25質量%のビフェニル含有ポリアミドイミド層用ワニスを得た。
表中の「汎用PI」とは、汎用ポリイミドを意味し、次の手順でワニスを得た。まず、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)をN−メチルピロリドンに溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を加えて窒素雰囲気下、室温で1時間攪拌した。その後、60℃で20時間攪拌し、反応を終え、室温まで冷却してポリイミド樹脂ワニスを得た。ODAとPMDAとの配合比率(モル比)は、100:100とした。
表中の「柔軟AI」とは、Voltatex9100(デュポン株式会社製)のことを言う。この樹脂ワニスを上記被覆工程にて焼き付けた樹脂の弾性率は50℃で2.2GPa、200℃で0.025GPaであった。
[参考例]
アルミニウムの代わりに銅を使用することで銅導体を得た。伸線時の潤滑剤としては一般的な伸線潤滑剤を用いた。この導体の周面炭素濃度は表3に示すとおりであった。この導体周面に表3に示す構成の絶縁層を積層し、参考例の絶縁電線を得た。
アルミニウムの代わりに銅を使用することで銅導体を得た。伸線時の潤滑剤としては一般的な伸線潤滑剤を用いた。この導体の周面炭素濃度は表3に示すとおりであった。この導体周面に表3に示す構成の絶縁層を積層し、参考例の絶縁電線を得た。
得られた実施例1〜32、比較例1〜9及び参考例の各絶縁電線について、絶縁層剥離までの捻り回数、絶縁破壊電圧及び引掻き削れ荷重をそれぞれ計測した。計測結果について表1、表2及び表3に示す。
表1、表2及び表3の結果から示されるように、実施例1〜32の絶縁電線は、引掻き削れ荷重が高く、高い耐傷性を有し、銅導体を用いた参考例の絶縁電線と同等かそれ以上の性能を発揮した。また、絶縁破壊電圧が高いため、絶縁特性にも優れる。なお、比較例2は、炭素濃度低減処理(水での洗浄処理)を行っていない比較例1よりも捻り回数及び絶縁破壊電圧が劣っているように見えるが、比較例1と比較例2とのこれらの数値の差は測定誤差の範囲内であると考えられる。
以上のように、本発明の絶縁電線は、導体にアルミニウム又はアルミニウム合金を用いながら、高い密着性、耐傷性及び絶縁特性を有する。従って、当該絶縁電線は、例えばモータ、オルタネータ、イグニッション等に好適に用いることができる。
Claims (10)
- アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線であって、
剥離試験における上記絶縁層剥離までの平均捻り回数が50回以上であることを特徴とする絶縁電線。 - グリセリン溶液中における上記絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値が0.15kV/μm以上である請求項1に記載の絶縁電線。
- 上記導体周面の炭素濃度が10質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
- 上記導体周面が炭素低減処理されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の絶縁電線。
- 上記炭素低減処理が液体を用いた洗浄処理である請求項4に記載の絶縁電線。
- 上記絶縁層が、
導体の周面に積層され、フェノキシ樹脂を主成分として含有するプライマー層と、
ビフェニル含有ポリアミドイミド樹脂を主成分として含有するビフェニル含有ポリアミドイミド層と
を有し、
上記プライマー層の平均厚みが0.5μm以上5μm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の絶縁電線。 - 上記ビフェニル含有ポリアミドイミド樹脂を形成するイソシアネート成分が、アミドイミド原料としてビフェニル含有ジイソシアネート化合物を含む請求項6に記載の絶縁電線。
- 上記絶縁層が、他の樹脂層をさらに有し、
上記他の樹脂層が、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はポリイミド樹脂を主成分として含有する請求項6又は7に記載の絶縁電線。 - 上記絶縁層の周面に、潤滑剤を含有したポリアミドイミド樹脂を主成分とする表面潤滑層をさらに備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線の製造方法であって、
上記導体を得る工程、
上記導体周面に対して炭素低減処理を行う工程、及び
上記導体の周面に絶縁層を被覆する工程
を有することを特徴とする絶縁電線の製造方法。
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