JP4190589B2 - 絶縁電線 - Google Patents
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Description
本発明は、厳しい巻線加工が伴うモータ、特にステータモータ又は発電機のステータ用途として好適な絶縁電線に関する。
背景技術
自動車用の発電機(例えばオルターネータ)やモータ、あるいは冷凍機のコンプレッサーモータなどは、近年、小型化や高密度化が進んでいる一方で高性能・高出力化が益々求められるようになっている。そのため、これらの発電機やモータのステータ側に使用される絶縁電線は、コア鉄心のスロットの中により多くの本数あるいはより太いサイズの導体(電線)を挿入することが必要になっている。すなわち、この目的を達成するためにその占積率(スロット空間にしめる電線の割合)は以前にも増して大きくするように、その要求が厳しくなっている。その結果、絶縁電線の断面形状が大きく変形するほどの加工が一般に絶縁電線に加えられているが、このような加工によれば絶縁電線は外的な損傷をうけやすく、その信頼性が著しく低下してしまっていた。このため、導体が変形してしまうほどの外的加工に対しても絶縁皮膜が破壊されない、耐外傷性の強い絶縁電線を開発することが必要とされていた。
一方、電気絶縁物で被覆された絶縁電線は各種の電気機器に組み込まれたコイルの用途に大量に使用されている。近年、この絶縁電線のコイル巻線加工工程における高速化、合理化が進められ、コイル巻き作業も従来の手巻きから自動コイル巻線機による加工に移行されている。また、コイルのステータスロット内への挿入も自動化されている。
しかし、この自動コイル巻線加工を行う場合、絶縁電線に大きな張力が加わるので皮膜のストレスが大きく、必然的に絶縁電線は損傷を受けやすくなる。また、コイルのステータスロット内への挿入時も、従来手で押し込んでいたものが機械によって押し込まれるようになったため、電線にはより大きな圧力がかかるようになってきた。このような環境のもとでは、電線同士、あるいは電線と電線接触物の間での擦れがより生じやすくなっており、コイルの絶縁不良が起こりやすくなる。
また、コイルにおけるステータスロット内の絶縁電線の占積率をできるかぎり大きくすることが結果として機器全体の小型化、コスト低下につながることから、電線外径の細径化が要望されている。近年、この細径化の中で、さらに機器のパワーアップを意図して導体径の据え置きないしは増大が求められ、絶縁皮膜の薄肉化が必要となってきた。
しかし絶縁皮膜の薄肉化は、コイル巻きやコイルのステータスロット内への挿入の自動化の場合、皮膜損傷の頻度を増大させ、コイルの絶縁不良の発生率を高めることになってしまう。
上記の問題の解決には、(1)絶縁電線の表面の摩擦係数を小さくし、絶縁電線同士、あるいは電線と他の物体との接触による損傷を減少させ、あるいは回避し、外傷の発生を抑える方法、(2)絶縁皮膜と導体との密着性を向上させ、絶縁皮膜をより剥がれにくいものとする方法、(3)絶縁皮膜の強度を向上させ、絶縁皮膜の破断に対する力を強くする方法、等が考えられてきた。摩擦係数が低いほどコイル巻き加工が容易になり、皮膜強度が強いほどコイル巻き作業及びコイルのステータスロット内への挿入作業(以下、これらの作業を合わせてコイル加工という)の際の損傷が少なくなる。
これらの従来から行われている手段として、まず(1)の絶縁電線の表面の摩擦係数を小さくする方法については、特開昭55−80208号公報、特開昭56−15511号公報、特開昭58−186107号公報、特開昭61−269808号公報なとで、絶縁電線表面にワックス、油、界面活性剤、固体潤滑剤などを塗布することが、また、特開昭62−200605号公報などでは、水に乳化可能なろうと水に乳化可能で加熱により固化する樹脂からなる減摩剤を塗布焼付けして使用することが、さらに特開昭63−119109号公報、特開昭63−29412号公報などでは、絶縁塗料自体にポリエチレン微粉末、フッ素樹脂微粉末を添加し潤滑化を図ること等が提案されている。以上の方法は、絶縁電線の表面潤滑性を向上させ、結果として電線の表面すべりによって外傷から絶縁層を保護しようと考えられたものである。
また、(2)の絶縁皮膜と導体の密着性を向上させる方法については、特開昭56−143266号公報、特開昭58−42672号公報などにおいて、樹脂塗料中に導体との密着性を改善する添加剤を配合することによって、絶縁電線の耐加工性、耐摩耗性向上を図り、耐外傷性を改良することが示唆されている。
さらに、(3)の皮膜自体の強度を向上させる方法については、特開平5−225830号公報、特開平6−196025号公報等に、上記(1)、(2)も考慮し、さらにはビトリレンジイソシアネートとトリメリット酸無水物の重縮合により得られる絶縁塗料が皮膜強度を向上させると記載されている。この方法では、樹脂の分子構造の観点から分子中に剛直な構造を多く導入して皮膜強度を向上させ、皮膜の加工傷を減少させることが提案されている。このような電線は、近年皮膜損傷試験として重要視されている一方向摩耗試験(JIS C 3003に規定されている試験;電線に漸次荷重をかけながらピアノ線で皮膜を引っかく試験)に大きな効果が見られ、また、薄肉化してもコイル加工時の皮膜の損傷を防ぐことが可能である。しかしながら、このような絶縁電線は、伸長後の可とう性及び熱履歴を受けた後の可とう性のレベルが従来の電線に比較して低く、特に厳しい曲げ加工を受けたときに可とう性が十分でないので、皮膜に亀裂、割れが発生する恐れがあった。
さらには、前記の(1)、(2)においては単独あるいは組み合わせても最近の耐外傷性の要求水準を満足するものではなかった。また(1)、(2)及び(3)を考慮した絶縁電線においても、ますます厳しさを増している巻線加工とコイルの挿入作業において十分な耐外傷性を示すものではなく、さらなる改良が望まれていた。
また従来、前記(3)の高強度の絶縁皮膜を用いた絶縁電線においては、導体として約120〜140MPa程度の0.2%耐力を有する高硬度のものが用いられていた。このような高強度の皮膜と高硬度の導体からなる絶縁電線はコイル巻き作業時の損傷の発生は少ないものの、コイルのステータスロット内への挿入作業の際には絶縁皮膜に損傷を生ずる場合があり、さらなる改良が強く求められていた。
本発明の目的は、絶縁皮膜が薄肉であっても、厳しい条件でのコイル加工時、特にコイルのステータスロット内への挿入作業の際にも皮膜損傷が防止できる耐傷性に優れる絶縁電線を提供することにある。
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
図1は、衝撃落下試験装置の概略説明図を示す。
図2は、図1に示した装置に用いる刃先部の模式図を示す。
発明の開示
本発明者らは、前記従来の絶縁電線における問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、前記(3)の方法においてもなお耐外傷性が不十分である原因を、絶縁皮膜の強度向上だけでは得られる耐外傷性に限界があったことに見い出した。さらに本発明者らは、絶縁電線の耐外傷性をさらに向上させるためには、絶縁皮膜の強度に加えて導体の柔軟性を所定のものとすることが重要であり、すなわち絶縁皮膜を形成する樹脂の分子構造中に剛直な構造を導入して高強度(強靭性)のものとするとともに導体として所定の柔軟性を有するものを用い、これらの相乗効果によって、絶縁電線に外傷を生ずるような力(衝撃)を緩和し、もって耐外傷性を飛躍的に向上させることができることを見い出し、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)樹脂の分子構造中に下記式(I)
(式中、R1は、水素、アルキル基、水酸基、ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる1種を表わし、R2は、水素、アルキル基、水酸基、ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる1種を表わす。)
で示される構造を有するポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなる樹脂組成物、及び/又は樹脂の分子構造中に下記式(II)
(式中、R3は、水素、アルキル基、水酸基、ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる1種を表わし、R4は、水素、アルキル基、水酸基、ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる1種を表わす。)
で示される構造を有するポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなる樹脂組成物を導体上に直接あるいは他の絶縁層を介して塗布焼付けして形成した少なくとも1層の絶縁層を有してなり、かつ、0.2%耐力が93〜105MPaであることを特徴とする絶縁電線、
(2)絶縁層の一部もしくは全部に、式(I)で示される構造を有するモノマー成分から誘導される繰返し単位及び/又は式(II)で示される構造を有するモノマー成分から誘導される繰返し単位を全繰返し単位中の20モル%〜60モル%含んでなることを特徴とする(1)項記載の絶縁電線、
(3)絶縁層の一部もしくは全部に、式(I)で示される構造を有するモノマー成分から誘導される繰返し単位及び/又は式(II)で示される構造を有するモノマー成分から誘導される繰返し単位を全繰返し単位中の40モル%〜55モル%含んでなることを特徴とする(1)項記載の絶縁電線、
(4)絶縁層の最外層の表面が、静摩擦係数0.1以下の潤滑性を有するものであることを特徴とする(1)、(2)、又は(3)項記載の絶縁電線、
(5)ワックスおよび熱硬化性樹脂を含有し、ワックスと熱硬化性樹脂との合計固形分100重量部に対して、ロジン系樹脂及び/又はマレイン酸系樹脂を3〜20重量部含んでなる潤滑塗料を塗布焼付けした潤滑層を前記絶縁層の最外層の表面に有することを特徴とする(4)項記載の絶縁電線、及び
(6)モータ又は発電機のステータに使用されることを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)項記載の絶縁電線
を提供するものである。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明について説明する。
本発明の絶縁電線は、導体上に直接または他の絶縁層を介して形成された絶縁層を有してなり、前記絶縁層の少なくとも1層は前記式(I)及び/または式(II)に示した化学構造をその分子中に持つポリアミドイミド樹脂あるいはポリイミド樹脂を含んでなる。
前記式(I)中、R1とR2は同一でも異なっていてもよく、水素、アルキル基(好ましくは1〜5の炭素原子を有するアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ブチルである。)、水酸基、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子である。)、またはアルコキシ基(好ましくは1〜5の炭素原子を有するアルコキシ基であり、例えばメチルオキシ、エチルオキシ、ブチルオキシである。)を表わす。
また前記式(II)中、R3とR4は同一でも異なっていてもよく、水素、アルキル基、水酸基、ハロゲン原子、又はアルコキシ基を表わし、それらの具体例や好ましい範囲は式(I)中のR1及びR2で説明したのと同義である。
本発明において絶縁層を形成するために用いられるポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂は、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類、テトラカルボン酸類もしくはそれらの酸無水物あるいは酸二無水物、ジイソシアネート類、またはジアミン類のうち、少なくとも1種が前記式(I)及び/または式(II)の構造を分子中に有するものを原料とし、その他のジカルボン酸類、トリカルボン酸類、テトラカルボン酸類もしくはそれらの酸無水物あるいは酸二無水物、ジイソシアネート類、またはジアミン類を混合して合成原料として用いることにより製造することができる。
前記式(I)に示した構造を持つジカルボン酸の具体例としては、例えば4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジエチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジメチルオキシ−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジエチルオキシ−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジメチル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジエチル−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジクロロ−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジメチルオキシ−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジエチルオキシ−3,3’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジエチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジクロロ−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジメチルオキシ−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ジエチルオキシ−4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上混合して用いられる。これらの内、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジカルボン酸が好ましく、4,4’−ビフェニルジカルボン酸が特に好ましい。
また、前記式(II)に示される構造を持つテトラカルボン酸類及びテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えば3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸及びその酸二無水物や、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸もしくはその酸二無水物が−OH、−CH3、−Clなどの官能基で置換された分子構造を持つ化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上混合して用いられる。これらの内、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジメチル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
前記式(I)で示される構造を有するジイソシアネート類の具体例としては、例えばビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3’−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジクロロビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジクロロビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジブロモビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジブロモビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート(4,4’−ビトリレンジイソシアネート(TODI))、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジエトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,3’−ジエトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上混合して使用される。これらの内、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネートが好ましく、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネートが特に好ましい。
前記式(I)で示される構造を有するジアミン類の具体例としては、例えばベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジヒドロキシベンジジンなどを挙げることができる。これらは単独で、または2種以上混合して用いることができる。これらの内、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジヒドロキシエチルベンジジンが好ましく、3,3’−ジメチルベンジジンが特に好ましい。
本発明において絶縁層を形成するために用いられるポリアミドイミド樹脂は、常法により、例えば、極性溶媒中で、トリカルボン酸無水物単独、もしくはトリカルボン酸無水物の一部をジカルボン酸及び/またはテトラカルボン酸二無水物に置き換えた混合物、もしくはジカルボン酸とテトラカルボン酸二無水物との混合物と、ジイソシアネート類とを直接反応させて得るか、あるいは、極性溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物2モルに対してジアミン類1モルを反応させて得られるイミド結合導入のオリゴマーと、ジカルボン酸類1モルに対してジイソシアネート類2モルを反応させて得られるアミド結合導入のオリゴマーとを反応させて得ることができる。
このポリアミドイミド樹脂の調製に用いる合成原料には前記式(I)及び/または(II)で示される構造を持つ酸成分、ジイソシアネート類、ジアミン類の少なくとも1種を用いるが、その他の合成原料として、例えば、トリメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びこれらの誘導体などの酸成分、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ジイソシアネート類、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等の芳香族ジアミン類などを併用することができる。
合成時に使用する溶媒は、調製後の樹脂が溶解するものであればいずれでもよく、N,N’−ジメチルホルムアミドやN,N’−ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。好ましくはN−メチル−2−ピロリドンを用いることができる。
本発明に用いるポリアミドイミド樹脂の具体的な合成方法の例としては、酸成分として4,4’−ビフェニルジカルボン酸とトリメリット酸無水物の混合物を用い、ジイソシアネート成分として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いて、極性溶媒例えばN−メチル−2−ピロリドン中で反応を行うことにより、ポリアミドイミド樹脂絶縁塗料(樹脂組成物)を得る方法がもっとも簡便な方法として挙げられる。また、前記の例において使用する4,4’−ビフェニルジカルボン酸を3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に変更しても、同様にポリアミドイミド樹脂塗料を製造することができる。前者の場合はアミド成分がイミド成分より多くなり、後者の場合は前者の逆となる。
このようにして得たポリアミドイミド樹脂塗料を導体上に直接あるいは他の層を介して塗布、焼付けして、導体上に絶縁層を形成する。
本発明において絶縁層に用いられるポリイミド樹脂は、常法によって得ることができる。これは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン類を極性溶媒中で反応させることにより、ポリアミド酸樹脂溶液を得て、この溶液を電線とするときの加熱処理により脱水させてイミド化させる方法である。
その他の方法として、テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネート類を極性溶媒中で反応させて直接イミド化する方法が挙げられる。この場合、得られる樹脂溶液中のポリイミドは溶媒に溶解しにくいため、使用するモノマー成分に溶解しやすいものを選択する必要がある。例えばテトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸二無水物より3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を使用する方が、得られるポリイミドが溶媒に溶解しやすい。また、ジイソシアネート成分としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートより2,6−トリレンジイソシアネートの方が溶解しやすいポリイミドが得られる。
これらの場合、使用するテトラカルボン酸二無水物は単独であってもあるいは2種以上の混合物でもよい。また同様にジアミン類あるいはジイソシアネート類も単独で使用する以外に2種以上の混合物を使用してもよい。
なお本発明においてポリアミドイミド樹脂とポリイミド樹脂をどちらも含む絶縁層とする場合には、別々に調製したポリアミドイミド樹脂組成物とポリイミド樹脂組成物を塗布焼付け時に混合して単一の絶縁層を形成してもよく、あるいは、ポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂を両方とも含む単一の樹脂混合物をまず調製してこれを塗布焼付けすることにより絶縁層を形成してもよい。
また本発明の目的を損なわない範囲で、各絶縁層には、従来から絶縁皮膜中に添加できることが知られている各種の添加剤(例えば潤滑剤、無機微粉末、金属アルコキシレートなど)を添加することができる。
本発明においては、前記式(I)及び/または(II)で示される構造を持つ酸成分、ジイソシアネート類、ジアミン類の少なくとも1種を合成原料に用いてポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂を得て、これらの樹脂を用いることによって硬度の高い絶縁層を形成する。ここで、本発明においては、ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂中、これらの樹脂を形成する全ての酸成分、ジイソシアネート類及びジアミン類の全量の内、前記式(I)または(II)で示される構造を有するモノマー成分から誘導される繰返し単位を20〜60モル%の範囲とすることが好ましく、40〜55モル%の範囲とすることがさらに好ましい。
本発明で、前記式(I)及び/または(II)に示した分子構造を持つ樹脂を含む絶縁層を導体上の絶縁皮膜に用いる理由は、ベンゼン環を隣同士に持つ化学構造(ビフェニル構造)の物質を用いることにより絶縁層の破断強度が向上することによる。
本発明の絶縁電線において絶縁層の構成には特に制限はなく、前記特定のポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂のいずれか一方、または両方を含有する絶縁層を少なくとも1層設ければよい。例えば、単一層または複数層の絶縁層の全ての層において前記ポリアミドイミド樹脂及び/またはポリイミド樹脂を含んでもよく、あるいは、前記ポリアミドイミド樹脂及び/またはポリイミド樹脂を含んだ絶縁層とこれらの樹脂を含まない層とを両方とも設けた構成としてもよい。後者の場合、例えば、導体上に直接ポリエステル樹脂(アルコール成分:グリセリン等)、耐熱ポリエステル樹脂(アルコール成分:トリスヒドロキシルエチル−イソシアヌレート等)、ポリエステルイミド樹脂などを塗布焼付けして下層絶縁層を設け、さらにその上に前記ポリイミド樹脂及び/またはポリアミドイミド樹脂を塗布焼付けして上層絶縁層を設けてもよい。
本発明の絶縁電線は、0.2%耐力が105MPaを越えると厳しいコイル加工条件下での耐外傷性が劣ったものとなってしまうため、93〜105MPaの0.2%耐力を有するものとする。93MPa未満では絶縁電線が巻線加工時に柔軟すぎて絶縁電線の導体伸び(細り)が大きくなる問題を生じる場合がある。
本発明においては、絶縁電線の有する柔軟性の尺度として0.2%耐力の値を用いるが、この値は以下のようにして求めることができる。
(絶縁電線の柔軟性):標線長250mm、引張速度20mm/分として測定した絶縁電線のS−S(負荷−応力)カーブから0.2%伸長した時の応力を読みとって0.2%耐力とする。0.2%耐力の単位はMPaであり、この値が小さい程柔軟性が良いことを示す。
なお、このような高い柔軟性を有する絶縁電線を得るには、真空アニーラ炉においてバッチ式に焼鈍した導体に対し、低速、低張力で塗料焼付け炉において絶縁塗料を塗布焼付けすることにより製造できる可能性はあるが、生産性を考慮すると工業的に実施するには不適当である。そこで、本発明の絶縁電線を製造するに際して、好ましくは、最終焼鈍前加工率20〜50%の導体を縦型アニーラにおいて550℃以上で焼鈍し、かつ塗料焼付け工程における負荷により導体が硬化することを防ぐために焼付け炉中の導体移送路に駆動シーブを配置するなどの工夫をすることが工業的に製造するという点から好ましい。
なお、本発明の絶縁電線において、導体としては通常、銅またはその合金からなるものを用いるが、絶縁電線の示す柔軟性は、主として導体の柔軟性に依存するものであるため、導体自体の柔軟性として0.2%耐力の値で110MPa以下であることが好ましく、90〜110MPaであることがさらに好ましく、93〜105MPaであることが特に好ましい。
また、本発明においては絶縁皮膜の破断強度が13kg/mm2以上であることが好ましい。これに対して、従来の絶縁電線の皮膜が有していた破断強度は10kg/mm2以下であり、この場合、本発明で用いられるように柔軟な導体と組み合わせると耐外傷性が急激に低下することがある。
さらに、本発明では、絶縁層の最上層の表面を静摩擦係数0.1以下の潤滑性を有するものとすることが好ましい。このような潤滑性を付与する潤滑処理の方法としては、絶縁電線表面にワックス、油、界面活性剤、固体潤滑剤などを塗布すること、潤滑塗料を塗布焼付けして使用すること、絶縁塗料(樹脂組成物)自体にポリエチレン微粉末、フッ素樹脂微粉末等を添加し潤滑化を図ること等、公知の各種の手段を用いることができる。
中でも、潤滑塗料を絶縁電線表面に焼き付けて潤滑層を形成する方法は、安定した耐外傷性が得られるので好ましい。市販されている焼き付け型潤滑塗料は、ワックス(カルナバワックス、みつろう、キャデリラワックス、ライスワックス等の天然ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス等の合成ワックス)と熱硬化性樹脂(セラック樹脂、フェノール樹脂等)を主成分として含有するものであるが、絶縁電線への良好な含浸ワニス塗着性を得るためには、ワックスと熱硬化性樹脂を含有してなる従来公知の潤滑塗料に、さらにロジン系樹脂及び/又はマレイン酸系樹脂を、ワックスと熱硬化性樹脂の固形分合計量100重量部に対して3〜20重量部程度添加してなる潤滑塗料を用いるのが好ましい。
ロジン系樹脂及び/またはマレイン酸系樹脂としては、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂などをあげることができ、酸価80以上のものが好ましい。これらの樹脂を配合した潤滑塗料で潤滑層を形成することにより、潤滑層の焼き付け状態が調整され、得られる絶縁電線表面への含浸ワニスの塗着性が良好になる。なお、含浸ワニスはコイル巻きした絶縁電線の隙間を埋めて電線を一体化するための固着剤であり、含浸ワニスに絶縁電線(潤滑層)への良好な塗着性が求められるのはコイル巻きした絶縁電線を強固に一体化するためである。
なお、本発明の絶縁電線は、モータや発電機、特にそれらのコイルに好適に用いることができるが、その中でも、コア鉄芯のスロットの中により多くの本数あるいはより太いサイズの導体(電線)を挿入することが必要なステータ用途に特に有用である。
耐傷性と薄肉化の双方の観点より、本発明の絶縁電線の絶縁皮膜厚は、全膜厚で20〜30μmとすることが好ましい。
本発明の絶縁電線は、近年の厳しい条件下での巻線加工が伴う発電機やモータの特にステータ用の絶縁電線として好適なものであり、極めて良好な耐外傷性を有することから工業的利用価値が大きいものである。
実施例
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例の絶縁電線において絶縁層に用いた各樹脂中の成分の組成(モル比)は表1にまとめて示した。
ポリアミドイミド樹脂系絶縁塗料及びポリイミド樹脂系絶縁塗料の調製
縮合管を取り付けた、不活性ガス導入が可能な3リットル容の3つ口フラスコに機械式の回転攪拌装置と加熱装置を取り付け、その中に溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン、脱水溶媒としてキシレンを8:2の割合(重量比)となるように入れ、攪拌しながら室温で、表1に記載した各多価カルボン酸及び多価イソシアネートを多価カルボン酸の各成分の合計と多価イソシアネートの各成分の合計が等モルとなるように添加し、全体の固形分が25%濃度となるように溶媒を調整して、系の温度を140℃まで昇温して反応させた。
反応はおよそ4時間行い、室温まで冷却してポリアミドイミド樹脂(AI−1〜AI−6)系またはポリイミド樹脂(PI−1、PI−2)系絶縁塗料を得た。
絶縁電線の作成と評価
絶縁電線は下記の条件にて作成し、評価した。
絶縁電線の導体は最終焼鈍前加工率25〜40%の直径1.0mmの銅線を用い、焼鈍は縦型の熱風循環方式のアニーラ(アニーラ温度500〜620℃)にて、導体の移送路に駆動ロールを設けまたは設けないで焼鈍し、絶縁塗料の焼付けは、駆動ロール付きの炉長7mで雰囲気温度500℃の熱風循環方式の焼付け炉を用いて複数回塗布焼付けして所定の皮膜厚さの絶縁皮膜を形成した。絶縁皮膜としては、実施例1〜7及び10、比較例1〜3では単一層の絶縁層とした。一方、実施例8〜10及び12、比較例4では上下二層の絶縁層を設けた。なお、上下二層の絶縁層の厚さは、表2中に、皮膜厚さの後にカッコ書きで厚さの比として記載した。先に調製したポリアミドイミド樹脂塗料(AI−1〜AI−6)、ポリイミド樹脂塗料(PI−1、PI−2)を絶縁層形成に用いた。さらに比較として使用した絶縁塗料は、前記式(I)又は(II)で示される構造を有さないものであり、ピロメリット酸二無水物(PMDA)成分を原料とするポリイミド樹脂系のものとしてI.S.T.社製(PyreML(商品名)、トリメリット酸無水物(TMA)成分を原料とするポリアミドイミド樹脂系のものとして日立化成(株)製HI−406A(商品名)をそれぞれ使用し、この他、ポリエステルとして東特塗料社製Liton 3300(商品名)を用いた。得られた絶縁電線には、パラフィンワックスを塗布するか又は焼付け型潤滑塗料を焼付ける表面処理を施し、表面での静摩擦係数を0.1以下とした。ここで、焼付け型潤滑塗料としては、市販の潤滑塗料 TEC9601(商品名、東芝ケミカル社製、カルナバワックスとセラック樹脂からなる)の全固形分100重量部に対し、ロジン変性マレイン酸樹脂(マルキード33(商品名、荒川化学工業(株)製)、酸価300)を10重量部添加して作製した潤滑塗料を用いた。
このように作成した各絶縁電線について以下に記載する方法で各性質を評価した。
(絶縁電線の柔軟性):標線長250mm、引張速度20mm/分として測定した絶縁電線のS−S(負荷−応力)カーブから0.2%伸長した時の応力を読みとって0.2%耐力とした。0.2%耐力の単位はMPaであり、この値が小さい程柔軟性が良いことを示す。
(一方向摩耗試験):JIS C3003の10項記載の試験を実施した。結果はN単位で表示し、数値が高いもの程、皮膜が剥離しづらいことを示す。
(衝撃落下試験):図1に概略説明図を示した衝撃落下試験装置を用いて試験した。試験用絶縁電線1の直径より浅いV溝を表面に設けた金属板2のV溝上に絶縁電線を固定し、その絶縁電線の長手方向に対して45°の角度から、幅12.5mm、先端角度55°、先端の曲率半径r=0.5mmの刃先部3をおもり4に取り付けた衝撃荷重5(刃先部3とおもり4の全体荷重100g、500g、1000g)を荷重の落下長L(実際の荷重の移動長)を370mmとして落下させ、絶縁電線に刃先部で衝撃を与えた。荷重5は、水平な台7上に置いた金属板2に固定した支柱6に沿って摺動落下させた。図2に、刃先部3の模式図を示す。落下衝撃の加わった電線の絶縁皮膜の破壊状況を電線の傷部分の漏れ電流試験にて評価した。漏れ電流試験の方法は、JIS C3003記載のピンホール試験方法に準じて電極の正負を逆にして実施し、検出には電流計を用いた。導体を正極、水側を負極とし、その間に12Vの電圧を印加して、漏れ電流の値を電流計から読みとった。その数値が大きいほど傷がつきやすいことを示す。
なお、耐外傷性の判断は衝撃落下試験、一方向摩耗試験の両方の結果から判断した。
各実施例1〜11、比較例1〜4での条件、用いた塗料の種類、および測定結果を表2にまとめて示す。
表2に示した結果から明らかな通り、実施例1〜11の本発明の絶縁電線はいずれも優れた耐外傷性を有することがわかる。
実施例7、8、11は多層構造で密着性の良い材料を下層に用いているため、特に優れた耐外傷性を有している。
また、実施例9は多層構造で汎用の材料を下層に用いているため、耐外傷性が他の実施例よりは若干劣るが、なお従来のもの(比較例)よりも著しく良いものである。
これに対して比較例1〜4では、0.2%耐力で示した絶縁電線の柔軟性、絶縁層に用いた樹脂の構造のいずれかまたは両方が本発明で規定した範囲から外れているため、耐外傷性が極めて悪いものであった。
以上の結果から、絶縁電線として所定の柔軟性(0.2%耐力)を有するものを用いることと、絶縁皮膜に高い強度を与えるために樹脂中へ特定の化学構造を導入することの両方について本発明の規定を満たすことによって、はじめて耐外傷性が著しく改良されることが明らかである。
産業上の利用可能性
本発明の絶縁電線は、近年の厳しい条件下で行われかつ加工後の電線に対する要求水準が高い巻線加工が伴う発電機やモータの特にステータ用の絶縁電線として好適なものである。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
Claims (6)
- 樹脂の分子構造中に下記式(I)
(式中、R1は、水素、アルキル基、水酸基、ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる1種を表わし、R2は、水素、アルキル基、水酸基、ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる1種を表わす。)
で示される構造を有するポリアミドイミド樹脂およびポリイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなる樹脂組成物、及び/又は樹脂の分子構造中に下記式(II)
(式中、R3は、水素、アルキル基、水酸基、ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる1種を表わし、R4は、水素、アルキル基、水酸基、ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる1種を表わす。)
で示される構造を有するポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでなる樹脂組成物を導体上に直接あるいは他の絶縁層を介して塗布焼付けして形成した少なくとも1層の絶縁層を有してなり、かつ、0.2%耐力が93〜105MPaであることを特徴とする絶縁電線。 - 絶縁層の一部もしくは全部に、式(I)で示される構造を有するモノマー成分から誘導される繰返し単位及び/又は式(II)で示される構造を有するモノマー成分から誘導される繰返し単位を全繰返し単位中の20モル%〜60モル%含んでなることを特徴とする請求の範囲第1項記載の絶縁電線。
- 絶縁層の一部もしくは全部に、式(I)で示される構造を有するモノマー成分から誘導される繰返し単位及び/又は式(II)で示される構造を有するモノマー成分から誘導される繰返し単位を全繰返し単位中の40モル%〜55モル%含んでなることを特徴とする請求の範囲第1項記載の絶縁電線。
- 絶縁層の最外層の表面が、静摩擦係数0.1以下の潤滑性を有するものであることを特徴とする請求の範囲第1、2、又は3項記載の絶縁電線。
- ワックスおよび熱硬化性樹脂を含有し、ワックスと熱硬化性樹脂との合計固形分100重量部に対して、ロジン系樹脂及び/又はマレイン酸系樹脂を3〜20重量部含んでなる潤滑塗料を塗布焼付けした潤滑層を前記絶縁層の最外層の表面に有することを特徴とする請求の範囲第4項記載の絶縁電線。
- モータ又は発電機のステータに使用されることを特徴とする請求項1、2、3、4、又は5記載の絶縁電線。
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