JP2012046619A - 絶縁電線及びそれを用いた電機コイル、モータ - Google Patents

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Abstract

【課題】コロナ放電開始電圧を高くできるとともに、耐熱性、機械的強度等の要求特性を満たすことのできる絶縁電線、及びこれに用いる樹脂材料を提供する。
【解決手段】導体及び該導体を被覆する単層又は多層の絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層は、ポリアミドイミド又はポリエステルイミド(A)と、イソシアネート変性ポリフェニレンエーテル(B)とをA:B=50:50〜95:5の割合(質量比)で混合した樹脂を塗布、焼き付けして形成された第1の樹脂を有する絶縁電線。前記イソシアネート変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルとジイソシアネート化合物とを反応して得られる。
【選択図】 図3

Description

本発明はコイル等に使用する絶縁電線に関し、より詳しくは、部分放電(コロナ放電)開始電圧の高い絶縁皮膜を有する絶縁電線、及びこの絶縁電線の絶縁層を形成する樹脂に関する。
適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で使用されるモータ等では、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁皮膜表面で部分放電(コロナ放電)が発生しやすくなる。コロナ放電の発生により局部的な温度上昇やオゾンやイオンの発生が引き起こされやすくなる。その結果絶縁電線の絶縁被膜に劣化が生じることで早期に絶縁破壊を起こし、電気機器の寿命が短くなるという問題があった。
モータ等のコイル用巻線として用いられる絶縁電線において、導体を被覆する絶縁層(絶縁皮膜)には、優れた絶縁性、導体に対する密着性、耐熱性、機械的強度等が求められている。さらに高電圧で使用される絶縁電線には上記の理由によりコロナ放電開始電圧の向上も求められている。
絶縁層中やコイルの線間に微小な空隙があると、その部分に電界集中しコロナ放電が発生しやすくなる。コロナ放電を防ぐため、特許文献1には、導体上に形成された絶縁層の外側に熱融着樹脂を塗布、焼付けした絶縁電線を捲線してコイルを形成した後、加熱して熱融着樹脂を溶解して線間の空気層を埋める、コイルの形成方法が開示されている。
コロナ放電の発生を防ぐための別の手法としては、導体上に形成された絶縁層の外側に、1kΩ〜1MΩの表面抵抗を有する導電層や半導電層を形成させた絶縁電線がある(特許文献2等)。絶縁層の外側にある導電層や半導電層によって、絶縁層表面に生じる静電位勾配が緩やかになりコロナ放電開始電圧を向上することができる。
また絶縁層を低誘電率化することでコロナ放電開始電圧を向上できる。ポリイミド樹脂やフッ素樹脂は低誘電率であり、これらの材料を絶縁層とすることでコロナ放電開始電圧が向上する。また特許文献3には、ポリエステルイミドとポリエーテルスルホンとの混合樹脂を絶縁層として使用した絶縁電線が開示されている。
特開平10−261321号公報 特開2004−254457号公報 特開2009−277369号公報
特許文献1のような熱融着樹脂を使用する方法では、コイル形成後に熱融着工程が必要で、製造コストが高くなる。また導電層や半導電層を使用する方法では、コロナ放電開始電圧は向上するものの、導電層、半導電層により絶縁電線の表面抵抗が小さくなることで交流通電時に電線の表面に流れる漏れ電流が大きくなり、絶縁電線の表面が発熱して劣化しやすくなる。また絶縁電線末端の導体露出部と導電層、半導電層とが短絡するおそれがあるため、絶縁電線末端では導電層、半導電層を剥離する工程が必要となる。
絶縁層の低誘電率化による方法はコロナ放電開始電圧の向上に有効であるが、絶縁層には低誘電率であるだけではなく、絶縁性、導体に対する密着性、耐熱性、機械的強度等が求められており使用用途によって求められる特性が変わってくる。また材料のコストも材料選定において重要な要素である。ポリイミド樹脂は低誘電率であり耐熱性、機械的強度等に優れているが、コストが高くポリイミドを絶縁層として使用した場合には絶縁電線が高価格となる。またフッ素樹脂は低誘電率ではあるが、柔らかく耐熱性や機械的強度に劣り絶縁層として使用する場合には用途が限られてしまう。特許文献3に記載の絶縁材料は誘電率、耐熱性、機械的特性のバランスが取れたものであるが、用途によっては特性が不十分な場合もある。
本発明者らは低誘電率材料であるポリフェニレンエーテルに着目し、誘電率の低いポリフェニレンエーテルとポリアミドイミド又はポリエステルイミドとを組み合わせたワニスを使用することで、機械特性、耐熱性と誘電率のバランスを取り、絶縁電線の絶縁層として使用可能であることを見出している。ポリフェニレンエーテルは可撓性(機械特性)が低く脆い材料であるが、可撓性に優れるポリアミドイミド又はポリエステルイミドと組み合わせることで絶縁電線の絶縁層として使用可能な特性を得ることができる。
ポリフェニレンエーテルの分子量と可撓性は相関しており、分子量が高くなるほど引張強度や伸びが大きくなり可撓性に優れる。そのため充分な可撓性を得るためにはより高分子量のポリフェニレンエーテルを使用する必要がある。しかしポリフェニレンエーテルは溶剤に溶けにくい材料であり、高分子量になるほど溶解性が低下する。分子量の低いポリフェニレンエーテルは溶解性に優れるが、分子量の低いポリフェニレンエーテルでは、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドと混合した場合でも充分な可撓性が得られない。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、低誘電率で溶剤への溶解性と可撓性とを両立可能である樹脂材料を提供することを課題とする。
また本発明は上記の樹脂材料を用いて形成された樹脂層を有し、コロナ放電開始電圧を高くできるとともに、耐熱性、機械的強度等の要求特性を満たすことのできる絶縁電線を提供することを課題とする。
本発明は、ポリフェニレンエーテルとジイソシアネート化合物とを反応して得られ、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルである(請求項1)。
Figure 2012046619
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有することもある全炭素数1〜20の炭化水素基であり、Xはジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基である。)
ポリフェニレンエーテルは下記一般式(2)で示されるものであり、分子の両末端に水酸基を有していると好ましい。
Figure 2012046619
(式中、R〜R12はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有することもある全炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
ジイソシアネート化合物のイソシアネート基とポリフェニレンエーテルの末端水酸基とがウレタン結合することで、ポリフェニレンエーテルが高分子量化する。そのため引張強度、伸びが向上し可撓性に優れた材料となる。また分子中にウレタン結合が導入されることで溶剤への溶解性が向上し、可撓性と溶剤への溶解性とを両立可能となる。また、ポリアミドイミド、ポリエステルイミドとの相溶性も向上する。
ポリフェニレンエーテルの分子量は100以上5,000以下が好ましい(請求項2)。ポリフェニレンエーテルの分子量が5,000を超えると溶剤に溶けにくくなり良好に反応させることが困難となる。また分子量が大きくなると反応後のイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル中に導入されるウレタン結合の量が相対的に少なくなり、溶剤への溶解性向上効果が少なくなる。
イソシアネート変性ポリフェニレンエーテルの分子量は5,000以上20,000以下が好ましい(請求項3)。分子量が5,000未満であると可撓性が低下する。また20,000を超えると溶剤への溶解性が不十分となる。
請求項4に記載の発明は、導体及び該導体を被覆する単層又は多層の絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層は、ポリアミドイミド又はポリエステルイミド(A)と、上記のイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル(B)とを、A:B=50:50〜95:5の割合(質量比)で混合した樹脂を塗布、焼付けして形成された第1の樹脂層を有する絶縁電線である。上記のイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルは低誘電率であると共に溶剤への溶解性、可撓性に優れている。これを耐熱性及び機械的特性(可撓性)に優れるポリアミドイミド又はポリエステルイミドと組み合わせた樹脂から形成された絶縁層を有するため、コロナ放電開始電圧が高く、耐熱性、機械的特性等に優れた絶縁電線が得られる。
絶縁層は単層であっても多層であっても良い。絶縁層が単層である場合は、上記のポリアミドイミド又はポリエステルイミド(A)とイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル(B)とを混合した樹脂を塗布、焼き付けして形成された第1の樹脂層のみが絶縁層となる。絶縁層が多層である場合は、前記第1の樹脂層以外に他の樹脂層を設ける。第2の樹脂層としてポリアミドイミドを主体とする樹脂を更に有すると耐熱性が向上して好ましい(請求項5)。第2の樹脂層は第1の樹脂層の下層にあっても上層にあっても良いが、密着性に優れたポリアミドイミドを用い、この高密着性ポリアミドイミド樹脂からなる層を導体と密着させた構成とすると、絶縁皮膜の導体との密着性が向上して好ましい。
また、絶縁層を構成する他の樹脂層として、最外層に表面潤滑層を有すると好ましい(請求項6)。表面潤滑層は潤滑性を有する樹脂からなる層であり、カルナバワックス、ミツロウ、モンタンワックス、マイクロクリスタンワックス等の各種ワックス、ポリエチレン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の潤滑剤をバインダー樹脂と混合した樹脂を塗布、焼き付けして形成できる。
請求項7に記載の発明は、上記の絶縁電線を捲線してなる電機コイルである。また請求項8に記載の発明は、該電機コイルを有するモータである。これらの電機コイル、モータは高いコロナ放電開始電圧を有し、高電圧が印加された場合でも絶縁皮膜の劣化が起こりにくいので、寿命を長くすることが可能である。
本発明によれば、低誘電率で溶剤への溶解性と可撓性とを両立可能であるイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルが得られる。また本発明の絶縁電線は、上記の変性ポリフェニレンエーテルを用いて形成された樹脂層を有することで、コロナ放電開始電圧を向上できると共に耐熱性、機械的強度等の要求特性を満たすことができる。
誘電率の測定方法を説明する模式図である。 コロナ放電開始電圧測定用の試験サンプルを説明する模式図である。 本発明の一例を示す断面模式図である。 本発明のコイルの一例を示す模式図である。 本発明のモータ構成部材の一例を示す模式図である。
ポリフェニレンエーテルとしては、下記式(3)で示されるものが好ましく使用できる。具体的にはSABICイノベーティブプラスチックス製のPPO(登録商標)樹脂等を使用できる。ポリフェニレンエーテルの分子量が100〜5,000程度のものを選択すると好ましい。
Figure 2012046619
ジイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−3、3’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4、4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニルー4,4’−ジイソシアネート、ナフタレンー1,5−ジイルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが使用できる。またヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ジイソシアネートも使用できる。それぞれの材料を単独で使用しても良いし2種以上を組み合わせても良い。
ポリフェニレンエーテルとジイソシアネート化合物とを混合し、有機溶媒中で加熱して反応させるとイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルが得られる。ポリフェニレンエーテルの合計量(当量)と、イソシアネート化合物の合計量(当量)を約1:1とすると反応が良好に進行して好ましい。
有機溶媒としては、ナフサ、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクタム等が使用できる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を組み合わせても良い。
有機溶媒の量は、ポリフェニレンエーテル及びジイソシアネート化合物を均一に分散させることができる量であれば良く特に制限されないが、通常これらの成分の合計量100質量部あたり40質量部〜100質量部使用する。有機溶媒量を少なくすると、できあがったイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルワニスの固形分量が多くなり、コスト低減に有効である。
ポリフェニレンエーテルとジイソシアネート化合物との反応は、例えば材料を混合した後有機溶媒を加え、60℃〜140℃程度の温度で数時間反応させて行う。窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で反応させることが好ましい。反応により、ポリフェニレンエーテルとジイソシアネート化合物とが重合してイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルが生成する。生成したイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルの分子量は、各成分の仕込み量、反応時間などを調整することによって制御できる。イソシアネート変性ポリフェニレンエーテルの分子量を5,000以上20,000以下とすると特性のバランスが取れ、好ましい。なおここでいう分子量は重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した値とする。
得られたイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル溶液は適当な濃度に希釈し、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドと混合して使用する。
ポリエステルイミドとしては、下記一般式(4)で示されるものが好ましく使用できる。
Figure 2012046619
式中、Rはトリカルボン酸無水物の残基等の3価の有機基、Rはジオールの残基等の2価の有機基、Rはジアミンの残基等の2価の有機基である。
ポリエステルイミドは、トリカルボン酸無水物、ジオール、及びジアミンを公知の方法で反応させて得られる。トリカルボン酸無水物としては、トリメリット酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物等を使用できる。これらの中ではトリメリット酸無水物が最も好ましい。
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール等が使用できる。またジアミンとしては4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が使用できる。
ポリエステルイミドの具体的な製品としては、日立化成(株)製の商品名ISOMID 40SM−45、40HA−45、東特塗料(株)製の商品名Neoheat8625H2、8625AY等を使用することもできる。
ポリアミドイミドは、ジイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と酸成分とを反応させて得られる。イソシアネート成分としてはジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−3、3’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4、4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが使用できる。
酸成分としては、トリメリット酸無水物(TMA)、1,2,5−トリメリット酸(1,2,5−ETM)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物(OPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’−(2,2’−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等が使用できる。イソシアネート成分、酸成分は1種類ずつ用いても良いし複数の種類を組み合わせても良い。
ポリアミドイミド又はポリエステルイミド(A)とイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル(B)とは、その固形分比率がA:B=50:50〜95:5の割合(質量比)となるように混合する。イソシアネート変性ポリフェニレンエーテル(B)の混合比率を上げると誘電率が下がり、耐コロナ放電特性を向上できるが、可撓性等の機械特性は低下するため、必要な特性を考慮し、ポリアミドイミド又はポリエステルイミド(A)とイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル(B)との混合比率を決めると良い。A:B=70:30〜80:20とすると特性のバランスが良く好ましい。なお混合した樹脂ワニス中に、顔料、染料、無機又は有機のフィラー、潤滑剤等の各種添加剤や反応性低分子、相溶化剤等を添加しても良い。さらに本発明の趣旨を損ねない範囲で他の樹脂を混合して使用することもできる。
ポリアミドイミド又はポリエステルイミド(A)とイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル(B)とを混合した樹脂ワニスを導体上に直接又は他の層を介して塗布、焼き付けして絶縁層を形成する。塗布、焼付けは通常の絶縁電線の製造と同様に行うことができる。例えば、導体に樹脂ワニスを塗布した後、設定温度を350〜500℃とした炉内を1パス当たり5〜10秒間通過させて焼付ける作業を数回繰り返して絶縁層を形成する。絶縁層の厚みは10μm〜100μmとする。
導体としては、銅や銅合金、アルミ等を使用できる。導体の大きさやその断面形状は特に限定されないが、丸線の場合は導体径が100μm〜5mmのものが、平角線の場合は一辺の長さが500μm〜5mmのものが一般に使用される。
絶縁層を多層にする場合は、ポリアミドイミド又はポリエステルイミド(A)とイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル(B)とを混合した樹脂ワニスからなる第1の樹脂層の形成前又は形成後に他の樹脂層を形成する。ポリアミドイミドを主体とする第2の樹脂層をさらに有すると好ましい。このポリアミドイミドとしては、前記のポリアミドイミドが使用できる。また前記のポリアミドイミドに密着性向上剤を添加した高密着性ポリアミドイミドからなる層を第2の樹脂層とし、導体上に直接形成すると、絶縁層全体の導体への密着力が向上して好ましい。
第2の樹脂層としては、ポリアミドイミドの他に、ポリエステルイミド、ポリイミド、ポリウレタン等を使用することができる。
さらに、絶縁層として、最外層に表面潤滑層を有すると加工性が向上して好ましい。また絶縁電線の外側に表面潤滑油を塗布しても良い。この場合はさらにインサート性や加工性が向上する。
図3は本発明の絶縁電線の一例を示す断面模式図である。導体1の外側に多層の絶縁層があり、導体側から第2の樹脂層2、第1の樹脂層3、表面潤滑層4となっている。第1の樹脂層はポリアミドイミド又はポリエステルイミドとイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルと混合した樹脂を塗布、焼付けして形成される。なお本発明の絶縁電線はこの形状に限定されるものではなく、導体の外側に第1の樹脂層のみを有する単層の絶縁電線や、第1の樹脂層の外側に第2の樹脂層を有する絶縁電線であっても良い。
図4(a)は本発明の電機コイルの一例を示す模式図であり、図4(b)は図4(a)のA−A’断面図である。磁性材料からなるコア13の外側に絶縁電線11を捲線して電機コイル12が形成される。コアと電機コイルからなる部材は、モータのロータやステータとして使用される。例えば、図5に示すように、コア13と電機コイル12とからなる分割ステータ14を複数組み合わせて環状に配置したステータ15を、モータの構成部材として使用する。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお本発明の範囲はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1〜3)
(イソシアネート変性ポリフェニレンエーテルの作製)
温度計、冷却管、塩化カルシウム充填管、攪拌器、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコ中に、前記窒素吹き込み管から毎分150mlの窒素ガスを流しながらポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス製のPPO(登録商標) MX90(分子量1,700)とナフサ(エクソン化学(株)製、ソルベッソ100)を、ポリフェニレンエーテルの濃度が66質量%となるように投入し、攪拌器で攪拌しながら130℃まで加熱してポリフェニレンエーテルを溶解した。温度を80℃まで下げた後、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を表1に示す割合で添加し、80℃で1時間加熱して反応させた。その後固形分濃度が25質量%となるようにクレゾールを添加してイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルワニスを得た。
(イソシアネート変性ポリフェニレンエーテルの評価)
得られたイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した。実施例1及び3に使用した、PPEとMDIとを100:10(質量比)で反応させたものの重量平均分子量は5,900、実施例2に使用した、PPEとMDIとを100:15(質量比)で反応させたものの重量平均分子量は17,500であった。
(ポリエステルイミドワニスの調整)
ポリエーテルイミドワニスとして、日立化成(株)製の商品名EL5−45Hを使用した。
(ポリアミドイミドワニスの作製)
温度計、冷却管、塩化カルシウム充填管、攪拌器、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコ中に、前記窒素吹き込み管から毎分150mlの窒素ガスを流しながら、TMA(トリメリット酸無水物、三菱瓦斯化学(株)製)108.6g、MDI(メチレンジイソシアネート、三井武田ケミカル(株)製、商品名コスモネートPH)141.5gを投入した。次いでN−メチルピロリドン637gを入れ、攪拌器で攪拌しながら80℃で3時間加熱した。さらに約3時間かけて反応系の温度を140℃まで昇温した後140℃で1時間加熱した。1時間経過した段階で加熱を止め、放冷して不揮発分25%のポリアミドイミド樹脂ワニスとした。
(絶縁電線の作製)
固形分比率が表1に示す割合となるように、イソシアネート変性ポリフェニレンエーテルワニス(変性PPO)とポリエステルイミドワニス(PEsI)又はポリアミドイミドワニス(PAI)とを混合した混合樹脂ワニスを作製した。導体径(直径)約1mmの導線の表面に混合樹脂ワニスを常法によって塗布、焼付けして絶縁層を形成し、実施例1〜3の絶縁電線を作製した。また比較例1としてポリエステルイミドワニスを単独で用い、比較例2〜4としてイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルワニスの代わりにポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス製のPPO(登録商標) MX90(分子量1,700)を固形分濃度30%となるようにクレゾールに溶解したワニスをポリエステルイミドワニス又はポリアミドイミドワニスと混合した混合樹脂ワニスを用いて実施例1〜3と同様に絶縁電線を作製した。導体径、仕上径、皮膜厚みを表1に示す。
(誘電率の測定)
得られた各絶縁電線について、絶縁層の誘電率を測定した。測定は図1に示すように、絶縁電線の表面3カ所に銀ペーストを塗布した(塗布幅は両端2カ所が10mm、中央部分が100mmである)。導体と銀ペースト間の静電容量をLCRメータで測定し、測定した静電容量の値と被膜の厚みから誘電率を算出した。測定結果を表1に併せて示す。
(可撓性の評価)
得られた絶縁電線に0%(伸長無し)、10%、20%、30%の予備伸長を加えた後、JIS C3003 7.1に基づいて可撓性試験を行った。評価は、絶縁電線を1.0mmの丸棒に30ターン巻き付けて皮膜割れを生じたターン数を数えた。
(機械特性の評価)
得られた絶縁電線から導体を取り除いてチューブ状の絶縁層とし、引張試験機を用いてチャック間距離20mm、10mm/minで引張試験を行い、破断伸び、抗張力(破断強度)、引張弾性率、破断エネルギーを測定した。








Figure 2012046619
実施例1、2はポリエステルイミドとイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルとを質量比(固形分比)75:25で混合したワニスを用いた絶縁電線である。ポリエステルイミドのみを用いた比較例1の誘電率3.7と比べると、誘電率が低くなっていることがわかる。可撓性、引張特性は比較例1よりも劣るが、絶縁電線として使用可能である。実施例1と実施例2を比べると実施例2の方が可撓性、引張特性ともに良好である。実施例2はPPEとMDIとを反応させる際のMDI量を多く(PPE:MDI=100:15)したことにより、反応が良好に進み、より高分子のイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルが生成したためと思われる。
比較例2、比較例3は低分子量のPPEをポリエステルイミドと混合したものである。実施例1、2と同じ比率で混合した比較例3、PPE量をさらに少なくした比較例2ともに被膜が脆くなり、この被膜単独では絶縁電線としての使用は難しい。
実施例3はポリアミドイミドとイソシアネート変性ポリフェニレンエーテルとを質量比(固形分比)60:40で混合したものである。ポリアミドイミド単独の誘電率はポリフェニレンエーテル単独の誘電率より高いため、実施例1、2に比べて若干誘電率が高くなっているが、イソシアネート変性ポリフェニレンエーテルを混合することで誘電率が低下することがわかる。また可撓性、引張特性ともに良好である。これと比較すると、低分子量のPPEをポリアミドイミドと混合した比較例4は可撓性、引張特性が劣っている。
1 導体
2 第1の樹脂層
3 第2の樹脂層
4 表面潤滑層
11絶縁電線
12電機コイル
13コア
14分割ステータ
15ステータ

Claims (8)

  1. ポリフェニレンエーテルとジイソシアネート化合物とを反応して得られ、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル。
    Figure 2012046619
    (式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有することもある全炭素数1〜20の炭化水素基であり、Xはジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基である。
  2. 前記ポリフェニレンエーテルの分子量が100以上5,000以下である、請求項1に記載の変性ポリフェニレンエーテル。
  3. 前記イソシアネート変性ポリフェニレンエーテルの分子量が、5,000以上20,000以下である、請求項2又は3に記載のイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル。
  4. 導体及び該導体を被覆する単層又は多層の絶縁層を有する絶縁電線であって、前記絶縁層は、ポリアミドイミド又はポリエステルイミド(A)と、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイソシアネート変性ポリフェニレンエーテル(B)とを、A:B=50:50〜95:5の割合(質量比)で混合した樹脂を塗布、焼付けして形成された第1の樹脂層を有する、絶縁電線。
  5. 前記絶縁層が多層であり、ポリアミドイミドを主体とする第2の樹脂層をさらに有する、請求項4に記載の絶縁電線。
  6. 前記絶縁層が多層であり、最外層に表面潤滑層を有する、請求項4又は5に記載の絶縁電線。
  7. 請求項4〜6のいずれか1項に記載の絶縁電線を捲線してなる電機コイル。
  8. 請求項7記載の電機コイルを有するモータ。
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