JP5364939B2 - 絶縁電線 - Google Patents

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Description

本発明は、モータや発電機のコイルに用いられる絶縁電線に関し、特に電線をプレスして扁平型電線とした後、コイルに用いることができる絶縁電線に関する。
発電機やモータ等の回転機を大型化することなく、高出力を得るためには、ステータのコア間に形成される空間(スロット)の断面積に対する、コイルを形成する絶縁電線の導体の断面積の総和の割合、すなわち占積率の向上が望まれる。近年、自動車用発電機や電装モータ等の分野では、小型化且つ高出力の要請に対応するため、電線を変形加工して占積率を向上させる等の方法が行なわれている。
このような状況下、機械的強度に優れた絶縁電線が検討されている。例えば、特開2007−270024号公報(特許文献1)では、特定構造を有する芳香族ジイソシアネート化合物を5〜60モル%含有するジイソシアネート成分と芳香族テトラカルボ酸二無水物を5〜40モル%を含有する酸成分とを反応させて得られるアミドイミド樹脂を、導体に直接又は下地層を介して被覆することが提案されている。
特開2007−270024号公報
近年の更なる占積率の向上のために、まず絶縁電線をプレスしてからコイルに用いられることが試みられるようになっている。従来からの汎用の絶縁電線では、圧縮変形加工により絶縁被膜に割れが発生したり、ひどい場合には導体の被膜が剥がれてしまって絶縁電線としての機能を損なわれてしまう、あるいはコイルに用いた場合にはモータの電気特性不良等の問題が発生するという問題があることがわかってきた。
上記特許文献1に開示されているアミドイミド樹脂の絶縁被膜は、従来の汎用電線の絶縁被膜に用いられてきたアミドイミド樹脂よりも高い破断伸びや破断強度を有しており、直径1mmの丸棒の外形に対応させて曲げた際にも絶縁被膜の割れや剥離がほとんど発生しないという、優れた耐加工性を有していることが開示されている。
しかしながら、近年の小型化且つ高出力化の要請に対応するためには、電線の外径を50%近くにまでプレスした扁平型の電線をコイルに用いるといった仕様も検討されるようになり、上記特許文献1においては、このような仕様についての検討まではなされていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コイルの作製にあたり、予め、絶縁電線の外径を50%程度にまでプレスした扁平型電線とするような仕様にも耐えることができる絶縁電線及びこれを用いて作製される扁平型電線及びコイルを提供することにある。
本発明者は、下地層及び絶縁被膜について、種々の樹脂について検討し、さらに種々の組合わせについて、プレス加工、プレス加工後の捲線加工性を検討した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明の絶縁電線は、導体;エポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂100質量部あたりメラミン化合物を10質量部超〜30質量部を含有する樹脂組成物の硬化体で構成される、前記導体を被覆する厚み1〜8μmの下地層;及び該下地層上に形成された、ポリイミド樹脂で構成される絶縁被膜を有する。
前記エポキシ樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましく、また、前記下地層の厚みは、1〜8μmであることが好ましい。
本発明の絶縁電線は、前記絶縁被膜上に、さらに上塗層が形成されていることが好ましく、前記上塗層が潤滑性アミドイミド樹脂で構成されていることがより好ましい。
本発明は、上記本発明の絶縁電線を用いた扁平型電線及びコイルも提供する。本発明の絶縁電線は、プレスして扁平型電線にされるための絶縁電線であって、前記扁平型電線の短径(a)が前記絶縁電線の外径(D)の45%から60%となるようにされる、扁平型電線用として好ましく用いられる。本発明の扁平型電線は、上記本発明の絶縁電線をプレスした扁平型電線であって、該扁平型電線の短径(a)は、前記絶縁電線の外径(D)の45〜60%(a=0.45D〜0.6D)となるようにプレスされたものである。
本発明のコイルは、上記本発明の絶縁電線を捲線したものであってもよいし、上記扁平型電線を捲線したコイルであってもよい。




本発明の絶縁電線は、耐加工性に優れた絶縁被覆層を有しており、しかも絶縁被膜が下地層を介して、導体に対して優れた密着性を有しているので、絶縁電線の外径を50%程度にまでプレスした扁平型電線、さらには捲線してコイルとするような仕様にも耐えることができる。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、今回、開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の絶縁電線は、導体;エポキシ樹脂の硬化体で構成される、前記導体を被覆する下地層;及び該下地層上に形成された、ポリイミド樹脂で構成される絶縁被膜を有する。
導体としては、銅線、アルミニウム線などの金属導体が用いられる。
下地層は、エポキシ樹脂の硬化体、すなわちエポキシ樹脂および硬化剤を含有する樹脂組成物の硬化体で構成されている。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールとエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、フェノールエポキシ樹脂とビスフェノールとを付加重合反応させることによって得られるエポキシ樹脂などが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、ビスフェノールとエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂が好ましく、分子量が大きいフェノキシ樹脂がより好ましい。
ビスフェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4,5,6−ジベンゾ−1,2−オキサホスファン−2−オキサイドヒドロキノンなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独又は2種以上混合して用いることができる。エピハロヒドリンの好適な代表例としては、エピクロロヒドリンが挙げられる。
好適なビスフェノールとエピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとから製造されるビスフェノールA変性フェノキシ樹脂、ビスフェノールSとエピハロヒドリンとから製造されるビスフェノールS変性フェノキシ樹脂などが挙げられる。これらのフェノキシ樹脂は、いずれも商業的に入手しうる化合物であり、具体的には、東都化成(株)製、品番YP−50、YP50S、YP−55、YP−70、YPS007A30Aなどが挙げられるが、本発明はかかる例示に限定されるものではない。
本発明に用いられるエポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、耐熱性及び密着性を高める観点から、好ましくは30000〜100000、より好ましくは5000〜80000である。
硬化剤としては、例えば、メラミン化合物、イソシアネートなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
上記メラミン化合物としては、例えば、メチルメラミン、ブチル化メラミン、メチロール化メラミン、ブチロール化メラミンなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上混合して用いることができる。
上記イソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルへキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロへキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロへキサンジイソシアネート、イソプロピデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、1、3−ジイソシアナトメリルシクロへキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−ビス(イソシナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(イソシナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどの炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物などが挙げられ、これらは、それぞれ単独又は2種以上混合して用いることができる。
このような硬化剤は、エポキシ樹脂100質量部あたり硬化剤5〜30質量部の割合で用いることが好ましい。
下地層は、通常、上記エポキシ樹脂及び硬化剤を含有する樹脂組成物を導体表面に塗布し、乾燥、硬化することにより形成される。エポキシ樹脂硬化のための乾燥、硬化温度は、常温〜300℃であり、好ましくは200〜300℃である。
下地層用樹脂組成物には、必要に応じて、有機溶剤が含有されていてもよい。有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒をはじめ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロへキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチルなどのエステル類;ジエチルエステル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素化合物;ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素化合物;クレゾール、クロルフェノールなどのフェノール類;ピリジンなどの第三級アミンなどが挙げられ、これらの有機溶媒は、それぞれ単独で又は2種以上混合して用いることができる。
また、前記下地層用樹脂組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲で、必要に応じて、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、炭化チタン、タングステンカーバイド、窒化ホウ素、窒化ケイ素などのフィラー;絶縁塗料硬化性や流動性を改善するために、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラヘキシルチタネートなどのチタン系ナフテン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛などの亜鉛系化合物;酸化防止剤;硬化性改善剤;レベリング剤;接着助剤などの添加剤を含有させることができる。
下地層の厚みとしては、絶縁被膜と導体との密着性を高める役割観点から、好ましくは1.0〜10μm、より好ましくは4〜8μmである。
以上のような構成を有する下地層は、導体に対してだけでなく、絶縁被膜を構成するポリイミド樹脂に対して優れた接着性を発揮することができるとともに、機械的強度にも優れるため、絶縁電線の耐加工性を向上することができる。
絶縁被膜としては、ポリイミド樹脂が用いられる。ポリイミド樹脂は、下地層を構成するエポキシ樹脂に対して優れた接着性を示し、また機械的強度にも優れている。従って、エポキシ樹脂で構成される下地層との組合わせにおいて、ポリイミド樹脂が本来有する高強度な特性を発揮でき、外径を1/2以下とするような過酷なプレス加工、さらにはプレス加工後に行なわれる捲線加工による割れを防止できる。
ポリイミド樹脂は、酸成分としてテトラカルボン酸又はその無水物を用い、アミン成分としてジアミン化合物を用いて、両者の無水の条件下、極性有機溶媒の中で、0〜100℃で重縮合させることによって得られるポリイミド前駆体を脱水閉環させることによって製造することができる。
絶縁被膜の形成方法としては、例えば、ポリイミド樹脂に、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、上記下地層用組成物で列挙したような添加剤を含有させてなる樹脂組成物を、有機溶媒に溶解させてなる絶縁被膜用塗液を、下地層上に塗布することによって形成できる。あるいは、絶縁被膜用塗液中に、下地層が形成された電線を浸漬後、乾燥することによって形成してもよい。
絶縁被膜の厚みは、導体を保護する観点から、1〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。絶縁被膜が分厚くなりすぎると、絶縁電線の外径が大きくなり、ひいては絶縁電線を捲線したコイルの占積率が低下する傾向にあるからである。
さらに絶縁被膜を上塗層で被覆してもよい。特に、潤滑性を有する樹脂で被覆することは、コイル巻きや占積率を挙げるための圧縮加工時に電線間の摩擦を低減することができるので、好ましい。上塗層を構成する樹脂としては、潤滑性を有するものであればよく、例えば、流動パラフィン、固形プラフィン等のパラフィン類、各種ワックス、ポリエチレン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の潤滑剤をバインダー樹脂で結着したものなどを挙げることができる。好ましくは、パラフィン又はワックスを添加することで潤滑性を付与したアミドイミド樹脂が用いられる。
上塗層の厚みは、特に限定しないが、コイルとされた場合に、周囲の電線との摩擦、摩耗を低減するのに必要十分な厚みであればよく、具体的には0.5〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜5μmである。
本発明の絶縁電線は、さらに表面に潤滑油を塗布することにより、表面に潤滑性を付与してもよい。
以上のような構成を有する本発明の絶縁電線は、密着性に優れた下地層を有し、耐破断性に優れた絶縁被膜を有しているので、過酷なプレス加工、さらにはプレス加工後のコイル加工にも用いることができる。具体的には、絶縁電線の外径(D)をプレスして、前記外径の1/2以下の厚みを有する平板状又は短径が前記外径の1/2以下とした断面楕円状に加工変形しても、絶縁被覆を保持することができる。
従って、以上のような構成を有する本発明の絶縁電線は、プレスにより扁平型とした電線として好適に用いることができる。具体的には、該扁平型電線の短径(a)は、前記絶縁電線の外径(D)の45〜60%(a=0.45D〜0.6D)となるようにプレスされている扁平型電線として好適に用いることができる。
また、本発明の絶縁電線は、そのまま捲線加工によりコイルとしてもよいし、まず扁平型電線としてからコイルに用いてもよい。本発明の絶縁電線は、下地層を介して絶縁被膜の導体密着性に優れているので、前記絶縁電線の外径(D)の45〜60%(a=0.45D〜0.6D)となるようなプレス加工した扁平型電線の状態であっても、コイル作製に供することができる。
本発明の絶縁電請求項及び/又は扁平型電線を用いたコイルは、巻芯に巻付けたものであってもよいし、コアレスであってもよい。
本発明を実施するための最良の形態を実施例により説明する。実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
〔測定評価方法〕
はじめに、本実施例で行なった評価方法について説明する。
(1)耐扁平加工性A
作製した絶縁電線(外径D)を、短径(a)が0.5Dとなるようにプレスして、扁平型電線を得る。得られた扁平型電線を、径1.4mmの丸棒の外形に沿ってU字形に曲げ、被覆層(上塗層、絶縁被膜、下地層)の剥がれ、割れの有無を目視で観察した。
(2)耐扁平加工性B
作製した絶縁電線(外径D)を、短径(a)が0.45Dとなるようにプレスして、扁平型電線を得る。得られた扁平型電線を、径1.5mm、1.60mm、1.80mmの丸棒の外形に沿ってU字形に曲げ、被覆層の剥がれ、割れの有無を目視で観察した。以上の作業をサンプル数10個について行ない、割れ、剥がれが生じた部分を計数し、剥がれ、割れが発生した割合(不良率%)を算出した。不良率が低いほど、耐扁平加工性に優れていることを示す。
(3)密着性
作製した絶縁電線(外径D)を、表1に示す割合(%)だけプレスして扁平型電線を得る(プレス0%の場合には外径Dの断面円形電線のままであり、プレス40%の場合には短径a=0.6Dの扁平型電線となる)。得られた扁平型電線の被覆層に、その長手方向に沿って長さ2cm程度の2本の切れ込みを0.5mm間隔でいれ、2本の切れ込みの間の絶縁被膜の一端をピンセットでめくって、引張試験機を用いて絶縁被膜と導体の180°剥離試験を行ない、被膜の密着力(g/mm)を測定した。プレス加工により、すでに被覆層が剥がれていた場合には、引き剥がし力0g/mmとした。また、剥離試験後、下地層が残存している状態を「良好」とした。
(3)急伸切断後の密着性
JIS C3003「8.1a)急激伸張」に準じて、作製した絶縁電線を急激伸張することにより切断し、切断部分において被覆が剥がれたことにより露出した導体長さ(2カ所測定したときの平均値:導体露出平均(mm))を測定した。測定値が小さいほど、急伸切断面においても、被覆層が剥がれていないことを示し、密着性に優れていることを示している。
〔被覆用樹脂組成物の調製〕
(1)フェノキシ樹脂組成物(EP)
エポキシ樹脂としてビスフェノールSフェノキシ樹脂〔東部化成(株)、製品名:YPS−007A−30A、フェノキシ樹脂をクレゾール/シクロヘキサノンに溶解させた溶液(固形分量:30質量%)〕を用い、このビスフェノールSフェノキシ樹脂の固形分量100質量部に対してメラミン化合物(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:サイメル370)20質量部の割合で両者を均一な組成となるように、室温で混合することにより調製した。
(2)エステルイミド樹脂組成物(EI)
市販のポリエステルイミド(日立化成工業(株)製、商品名:Isomid40SM−45)を用いた。
(3)密着エステルイミド樹脂組成物(密着EI)
EH402−45No.3(大日精化(株)製)を用いた。
(4)密着アミドイミド樹脂組成物(密着AI)
H1400A−25(日立化成工業(株)製)を用いた。
(5)汎用アミドイミド樹脂組成物(AI)
温度計、冷却管、塩化カルシウム充填管、攪拌器および窒素吹き込み管が取付けられた1L容のフラスコ内に、窒素吹き込み管から毎分150mLの窒素ガスを流しながら、無水トリメリット酸176.9g、トリメリット酸1.95g及びメチレンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製、商品名:コノネートPH)232.2gを投入した。
次に、フラスコ内に溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン536gを添加し、攪拌器で攪拌しながら、80℃で3時間加熱した後、約4時間かけて系内の温度を120℃まで昇温し、同温度で3時間加熱した。その後、加熱を止め、フラスコ内にキシレン134g添加して内容液を希釈した後、放冷し、不揮発分含量が35質量%である汎用アミドイミド樹脂(AI)を得た。
(6)潤滑性アミドイミド樹脂組成物(潤滑AI)
上記で調製した汎用アミドイミド樹脂(AI)の固形分量100質量部に対して、ポリエチレンワックス1.5質量部の割合で、AIとポリエチレンワックスとを混合することにより、潤滑性アミドイミド樹脂(潤滑AI)を得た。
(7)高伸アミドイミド樹脂組成物(高伸AI)
HI−401D−24(日立化成工業(株)製)を用いた。
(8)ポリイミド樹脂組成物(PI)
UイミドワニスタイプBH(ユニチカ(株)製)を用いた。
〔電線の作製〕
絶縁電線No.1〜8:
表1に示す樹脂組成物を用いて、径1.350mmの銅線を、下地層(厚み0.006mm)、絶縁被膜(厚み0.022mm)、上塗層(厚み0.002mm)の順で被覆することにより、外径D=1.410mmの絶縁電線No.1を作製した。下地層としてフェノキシ樹脂の硬化体(300〜400℃に設定した炉の中を数秒間で通過させることにより焼き付け)を用いた絶縁電線No.1が、本発明の実施例に該当する。
作製した電線No.1を、上記評価方法に従って、耐扁平加工性A、B、密着性、急伸切断後密着性を測定した。結果を表1に示す。
尚、絶縁電線No.2は現在の汎用品で、下地層(厚み0.005mm)、絶縁被膜(厚み0.0225mm)、上塗層(厚み0.002mm)となっており、外径D=1.409mmとなっている。
Figure 0005364939
表1中、下地層としてフェノキシ樹脂の硬化体、絶縁被膜にポリイミド樹脂を用いた絶縁電線No.1が、本発明の実施例に該当する。プレス加工しない絶縁電線の状態での密着性は良好であり、プレスにより扁平型電線とした場合であっても優れた密着性を示すことができた。具体的には、50%プレス加工の場合だけでなく、55%プレス加工の場合であっても、巻付け径1.6mmまで、割れの発生は認められなかった。
一方、下地層が密着エステルイミド樹脂で絶縁被膜が汎用アミドイミド樹脂である汎用の絶縁電線No.2では、50%プレス加工後、巻付径1.4mmに巻付けると被覆層に割れが発生し、扁平加工用電線に用いることはできない。
下地層が汎用エステルイミド樹脂であっても、絶縁被膜を高伸アミドイミド樹脂に変更することにより(No.4)、扁平加工しない状態の絶縁電線での密着性を向上させ、50%プレス加工後、巻付径1.4mmへの巻付けでの被覆層の割れ発生を防止できたが、55%プレス加工した扁平型電線では、巻付け径1.8mmでも不良発生を防止できなかった。
絶縁被膜を高伸アミドイミド樹脂として、下地層を密着エステルイミド樹脂(No.5)、フェノキシ樹脂(No.7)、ポリイミド樹脂(No.8)に変更した場合、下地層が密着エステルイミド樹脂、ポリイミド樹脂の場合には、絶縁電線の状態での密着性に関する顕著な改善は認められたが(No.5,8)、下地層がフェノキシ樹脂の場合、絶縁電線の状態での密着性に関する顕著な改善は認められなかった(No.7)。従って、No.7では、50%プレス加工後、巻付径1.4mmへの巻付けでの被覆層の割れ発生を防止できたが、55%プレス加工した扁平型電線では、巻付け径1.8mmでも不良発生を防止できなかった。一方、No.5,8では、絶縁電線の状態での密着性改善に伴い、55%プレス加工した扁平電線においても、巻き径1.8mmでは、不良発生がない(No.8)又は低く抑えることができた(No.5)が、巻付け径1.5mmでは不良品発生率が高くなり、実用できるものではなかった。これらのことから、絶縁被膜に破断伸びに優れた高伸アミドイミド樹脂を用いても、下地層を構成する樹脂により密着性の改善の程度が異なり、特にプレス加工、捲線といった外力が作用する状態での密着性の改善には不十分であった。そして、好適な組合わせと考えれる密着性エステルイミドを下地層に用いても、55%プレス加工といった厳しい仕様では実用に耐え得るものではなかった(No.5)。
さらに、下地層として、密着性が優れていると考えられるフェノキシ樹脂を用いた場合であっても、絶縁被膜としてアミドイミド樹脂(No.6)、高伸アミドイミド樹脂(No.7)との組合わせでは、絶縁電線での密着性の向上は、下地層が密着エステルイミド樹脂(No.5)、ポリイミド樹脂(No.8)の場合よりも劣っていた。このため、55%プレス加工した扁平型電線では、巻付け径1.6mmでの不良品発生率が高く、やはり実用に耐え得るものではなかった。
以上の結果から、下地層として、フェノキシ樹脂を用いても、ポリイミド樹脂で構成された絶縁被膜との組合わせでなければ、コイルに用いる扁平型電線として、不十分であることがわかる。
本発明の絶縁電線は、下地層、絶縁被膜といった被覆層が、導体に対して優れた密着性を有しており、径が45〜60%となるようなプレス加工後でもあっても、優れた密着性を保持している。従って、本発明の絶縁電線は、そのままでコイルに供してもよいし、扁平型電線としての状態でコイルに供することもできる。本発明の絶縁電線及び/又は扁平型電線を用いたコイルは、占積率の向上が求められている分野で使用されるコイルとして有用である。

Claims (8)

  1. 導体;
    エポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂100質量部あたりメラミン化合物を10質量部超〜30質量部を含有する樹脂組成物の硬化体で構成される、前記導体を被覆する厚み1〜8μmの下地層;及び
    該下地層上に形成された、ポリイミド樹脂で構成される絶縁被膜;
    を有する絶縁電線。
  2. 前記エポキシ樹脂は、フェノキシ樹脂である請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記絶縁被膜上に、さらに上塗層が形成されている請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. 前記上塗層は、潤滑性アミドイミド樹脂で構成されている請求項に記載の絶縁電線。
  5. プレスして扁平型電線にされるための絶縁電線であって、前記扁平型電線の短径(a)が前記絶縁電線の外径(D)の45%から60%となるようにされる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の絶縁電線をプレスした扁平型電線であって、
    該扁平型電線の短径(a)は、前記絶縁電線の外径(D)の45〜60%(a=0.45D〜0.6D)となるようにプレスされている扁平型電線。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁電線を捲線したコイル。
  8. 請求項6に記載の扁平型電線を捲線したコイル。
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