JP4844992B2 - 絶縁電線 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モーターや変圧器などのコイル用として好適な絶縁性能が良好で、耐加工性に優れた絶縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気絶縁物で被覆された絶縁電線は、各種の電気機器に組み込まれたコイルの用途に大量に使用されている。それはモーターや変圧器に代表される電気機器に特に多く使用されている。近年、これらの機器の小型化及び高性能化が進展し、絶縁電線を非常に狭い部分へ押しこんで使用する様な使い方が多く見られるようになった。具体的には、ステータースロット中に何本の電線が入れられるかで、そのモーターなどの回転機の性能が決定するといっても過言ではなく、その結果、ステータースロット断面積に対する全導体の断面積(各電線の導体断面積の合計)の比率(占積率)が近年非常に高くなってきている。ステータースロットの内部に、丸断面の絶縁電線を最密充填した場合、デッドスペースとなる空隙やあるいは絶縁皮膜の断面積が大きいと占積率を高くするには障害となる。このため、絶縁電線をコイル巻線加工する際には、丸断面の電線が変形するほど、ステータースロットへの電線の押し込みをおこない、少しでも占積率の向上を行おうとしているが、やはり絶縁皮膜の断面積を非常に小さくすることは、その電気的な性能(絶縁破壊特性など)を犠牲にする恐れがあるため、行われなかった。
【0003】
これに対して、占積率を向上させる手段として、ごく最近では導体の断面形状が四角型(正方形や長方形)に類似した平角線の絶縁電線を使用することが試みられている。平角線の使用は、占積率の向上には劇的な効果を示すが、平角導体上に絶縁皮膜を均一に塗布する事が難しく、特に断面積の小さい絶縁電線には絶縁皮膜の厚さの制御が難しいことから、あまり普及していない。
平角巻線に関しては、その製造方法や絶縁材料に関して幾つかの提案がなされている。たとえば、特開2000−260233号公報にはポリエステルイミド皮膜を平角導体に均一に付着させる方法が記載されており、材料面からのアプローチが提案されている。
また、丸導体を使用した従来の絶縁電線でも、皮膜の絶縁性能を向上させる試みが多く行われており、たとえば、絶縁皮膜にポリテトラフルオロエチレンなどの低誘電率の樹脂を用いることは、すでに知られている。しかしながら、これらの低誘電率の樹脂は熱可塑性であることと、さらにエナメル線のような皮膜を薄く形成することが困難であり、エナメル線分野に使用されることはなかった。
【0004】
また同様に、絶縁皮膜を形成させるためにワニス中に、金属酸化物(たとえば酸化チタンやシリカなど)の微粒子を添加する方法が従来行われており、その結果、絶縁破壊電圧の向上はみられないものの、高周波領域(たとえば1kHz以上)でのコロナの発生が低下することは知られている。このコロナの発生が押さえられたにもかかわらず、絶縁破壊電圧が向上しない原因は、ワニス中へ金属酸化物微粒子を添加する際に金属酸化物の微粒子の表面に酸素などの空気成分を巻き込んでしまい、その部分が誘電体となってしまうために絶縁破壊電圧の向上が見られないためと推定されている。
また、モーターやトランスのコイル巻を行う場合に必要な絶縁皮膜の特性として、皮膜の耐加工性能がある。これは、前述したコイル加工工程において、電線皮膜に損傷があると電気絶縁性能が低下してしまう事による。
【0005】
この耐加工性能を電線皮膜に付与する方法としては各種の方法が考えられている。例えば、絶縁皮膜に潤滑性を付与して摩擦係数を下げコイル加工時の外傷を少なくする方法や、絶縁皮膜と電気導体間の密着性を向上させてその皮膜が導体から剥離する事を防止して絶縁皮膜が元来有する電気絶縁性能を保持させる方法などである。
前者の潤滑性能を付与させる方法は、電線の表面にワックスなどの潤滑剤を塗布する方法や、絶縁皮膜中に潤滑剤を添加して電線の製造時にその潤滑剤を電線表面にブリードアウトさせて潤滑性能を付与させる方法等が旧来採られており、その実際に適用された例は多い。しかしながら、この潤滑性能を付与させる方法は、電線皮膜自体の機械強度を向上させる訳ではないので、外傷要因に対しては効果があるように見えるが、実際にはその効果には限界があった。
【0006】
導体と絶縁皮膜の密着性の向上については、従来から各種の方法が提案されている。そのための絶縁塗料の具体例として、1)ポリアミドイミド樹脂、アルコキシ変性アミノ樹脂、ベンゾトリアゾールからなる耐熱性塗料(特開平3−37283号公報)、2)ポリアミドイミド樹脂、トリアルキルアミンからなる塗料(特開平6−111632号公報)などが提案されている。これらの手法を用いた電線は、往復摩耗試験(電線に比較的低い荷重をかけ、ビーズ針で皮膜を擦る試験)においては効果が見られる。しかしながら、一方向摩耗試験(JIS C 3003に規定されている試験;電線に漸次荷重をかけながらピアノ線で皮膜を引っかく試験)では十分な効果が認められない。近年は後者の試験法が皮膜損傷試験として重要視されている。また、密着性向上の手法のみを採用した電線は、皮膜厚を薄くしていくと往復摩耗値が低下してしまい、密着性向上の手法を用いない従来の電線とほぼ同レベルになることが多かった。
一方、樹脂の分子構造の観点から分子中に剛直な構造を多く導入して皮膜強度を向上させ、皮膜の加工傷を減少させる方法も提案されており、特開平6−196025号公報には引張強度、引張弾性率を規定した絶縁皮膜を有する絶縁電線が記載されている。このような電線は一方向摩耗試験では著しい効果が見られ、また、薄肉化してもコイル加工時の皮膜の損傷を防ぐことが可能である。しかしながら、このような絶縁電線は、伸長後の可とう性および熱履歴を受けた後の可とう性のレベルが従来の電線に比較して低く、特に厳しい曲げ加工を受けたときに可とう性が十分でないので、皮膜に亀裂、割れが発生する恐れがあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、絶縁性能と耐加工性に優れ、特に、絶縁皮膜の厚さが薄くても従来の絶縁皮膜が厚い場合と同等以上の優れた絶縁性能を有し、モーターや変圧器などのコイル用として好適な絶縁電線を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の絶縁電線の絶縁皮膜が絶縁破壊を起こす理由を調査した結果、絶縁破壊に対して耐性のある材料、すなわち固体誘電率が低くかつ絶縁破壊電圧が高い絶縁皮膜材料として特定のシラン変性ポリアミドイミド樹脂を塗布焼付けした絶縁皮膜が、その絶縁皮膜を有してなる絶縁電線の絶縁性能と耐加工性能の向上に大きく寄与することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
(1)シラン変性ポリアミドイミド樹脂を導体上に直接あるいは他の絶縁層を介して塗布焼き付けた絶縁電線であって、
前記シラン変性ポリアミドイミド樹脂が、カルボキシル基および/または酸無水物基を末端に有するポリアミドイミド樹脂に、グリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物を反応させてなることを特徴とする絶縁電線。
(2)前記グリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物が、グリシドールとアルコキシシラン部分縮合物との脱アルコール反応によって得られるものであることを特徴とする(1)記載の絶縁電線。
(3)前記シラン変性ポリアミドイミド樹脂はケイ素含有量が1〜15質量%であることを特徴とする(1)または(2)項記載の絶縁電線。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において絶縁皮膜を形成するために用いられるシラン変性ポリアミドイミド樹脂のベース樹脂となるポリアミドイミド樹脂としては、その末端にカルボキシル基および/または酸無水物基を有するものであれば特に制限はなく、常法により、例えば極性溶媒中でトリカルボン酸無水物とジイソシアネート類を直接反応させて得たもの、あるいは、極性溶媒中でトリカルボン酸無水物にジアミン類を先に反応させて、まずイミド結合を導入し、ついでジイソシアネート類でアミド化して得たものなどを用いることができる。
【0010】
このポリアミドイミド樹脂の調製に用いるトリカルボン酸無水物としては、通常、トリメリット酸無水物が好ましく用いられる。この場合、トリカルボン酸無水物の一部量をテトラカルボン酸無水物に置き換えて反応させてもよい。このときのテトラカルボン酸無水物としては例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などを用いることができる。また、トリカルボン酸無水物の一部量を他の酸または酸無水物、例えばトリメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸などに置き換えてもよい。一方、トリカルボン酸無水物と反応させるジイソシアネート類としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類が挙げられ、ジアミン類としてはm−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等の芳香族ジアミン類が挙げられる。また、イミド化にはN,N’−ジメチルホルムアミドを用いてもよい。また、極性溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられるが、好ましくはN−メチル−2−ピロリドンを用いることができる。
【0011】
このようにして得たポリアミドイミド樹脂(ベース樹脂)溶液に、グリシドールとアルコキシシラン部分縮合物の脱アルコール反応物であるグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物を添加し、前記ポリアミドイミド樹脂とグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物とを反応させることにより、シラン変性ポリアミドイミド樹脂を得ることができる。このシラン変性ポリアミドイミド樹脂の調製の方法としては後述の方法を代表的な例として挙げることができる。
【0012】
本発明に用いられるアルコキシシラン部分縮合物は通常知られているいずれのものでも良い。本発明におけるアルコキシシラン部分縮合物は、例えば、少なくとも2個のアルコキシシラン化合物が、脱アルキルエーテル反応によって縮合して生成した線状縮合物(例えばメトキシオルガノシロキサン)であり、縮合するアルコキシシラン化合物は互いに同じでも異なっていてもよい。アルコキシシラン部分縮合物のアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは1〜4のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブチルオキシなどがあげられる。具体例を挙げれば、メトキシポリオルガノシロキサン、エトキシポリオルガノシロキサンなどの縮合物が挙げられる。テトラメトキシシランの部分縮合物であるメトキシオルガノシロキサンの市販品の代表的な例として多摩化学工業(株)製の「Mシリケート51」(商品名)が挙げられる。
【0013】
このアルコキシシラン部分縮合物の1分子中におけるケイ素(Si)の平均個数は2〜100であることが好ましい。Siの平均個数が2未満であると、グリシドールとの反応の際、溶媒として用いるアルコールとともに反応せずに系外へ溜出するアルコキシシランの量が多くなりすぎる場合がある。また、Siの平均個数が100を越えると、グリシドールとの反応性が悪くなり、目的とするグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物が得られにくい場合がある。入手の容易性を考慮すると、1分子あたりのSiの平均個数は3〜20がさらに好ましい。
【0014】
これらのアルコキシシラン部分縮合物とグリシドールの脱アルコール反応はたとえば以下のような方法を用いることができる。テトラメトキシシラン部分縮合物(1分子中のSiの平均個数4)1モルに対してグリシドールを2モル添加し、バルク条件で120℃程度まで加熱することにより、アルコールの生成が見られる。このアルコールを系外へ溜去しながら反応を継続することによりグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物であるメトキシテトラオルガノシロキサン−ジグリシジルエーテルを得ることができる。この反応にて生成したグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物は、1分子中にグリシジル基を2個含むものである。このとき、反応触媒として有機錫系の触媒を用いると反応が早く進行するため好ましい。
【0015】
得られたグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物をポリアミドイミド樹脂に反応させるには、例えば、以下の方法により行うことができる。ポリアミドイミド樹脂を25質量%にてN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶液200gと前述の方法にて作成したメトキシテトラオルガノシロキサン−ジグリシジルエーテル5.17gとを適当な加熱可能な容器にて混合しながら95℃に昇温させた。95℃にて4時間反応させ、その後N−メチル−2−ピロリドンを5.17g加えて冷却し、不揮発分25%のシラン変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得ることができる。この場合、ケイ素含有量は4.29質量%となる。
【0016】
本発明での、シラン変性ポリアミドイミド樹脂中のケイ素の含有量は1質量%以上15質量%以下が好ましい。ケイ素含有量が少なすぎると、そのシラン変性ポリアミドイミド樹脂を塗布焼付けて絶縁電線としたときの効果、特に電線の耐傷性向上がほとんど得られず、従来の絶縁皮膜と同等にしかならない場合がある。また、このケイ素の含有量が多すぎると、焼き付けにより得られる絶縁電線の外観が良好ではなく、表面に微細な荒れが生じるために電線としての電気特性に悪影響を及ぼす場合がある。この点を考慮してそのケイ素含有量を適宜定める。
このケイ素含有量は、樹脂の合成時点でのモル分比により概ね判断することができる。正確には、固体NMRを用いて29Siの共鳴スペクトルを用いる方法で求めることができる。この際、ポリジメチルシロキサン(−34ppm)を標準試料として用いることが一般的である。
【0017】
本発明の絶縁電線は、シラン変性ポリアミドイミド樹脂を導体上にそのまま塗布焼き付けする方法や、導体上に他の絶縁物を介して、シラン変性ポリアミドイミド樹脂を塗布焼き付けすることにより製造することができる。また、たとえばシラン変性ポリアミドイミド樹脂を絶縁物の中間層に使用することも可能であり、その場合は、下層に公知のポリアミドイミド樹脂を1層以上塗布し、その後シラン変性ポリアミドイミド樹脂を1層塗装したのち、さらにその上層にポリアミドイミド樹脂を塗装することが好ましい。
導体上に他の絶縁物を介してシラン変性ポリアミドイミド樹脂を塗装する場合の他の絶縁物については通常絶縁電線に使用されている材料ならば特に制限はなく、その一例としてポリエステル、耐熱変性ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を例示することができる。
またシラン変性ポリアミドイミド樹脂を導体上に塗装する場合、その樹脂自体に自己潤滑性を持たせることも可能である。自己潤滑の方法は公知の方法でよく、例えば、樹脂溶液中にポリエチレンワックスを添加する方法がもっとも一般的である。
【0018】
本発明においてシラン変性ポリアミドイミド樹脂層の厚さは単独で直接導体上に形成するか、あるいは他の絶縁層を介して設けるかなどにより異なり特に制限はないが、好ましくは0.001〜0.040mm、より好ましくは0.002〜0.012mmである。シラン変性ポリアミドイミド樹脂の塗布後の焼付処理は従来の塗布焼付処理と同様の条件で行うことができる。焼付処理温度は、通常400〜550℃であり、好ましくは480〜530℃である。またシラン変性ポリアミドイミド樹脂の塗布焼付処理としては、該樹脂を1回塗布後に1回当たりの焼付処理時間が通常15秒〜1分、好ましくは20秒〜25秒の処理を、通常6回以上、好ましくは15回もしくはそれ以上繰返す複数回塗布焼付処理として行うことが好ましい。このような複数回塗布焼付処理において、全塗布焼付時間は、通常1分30秒〜15分である。本発明で用いたシラン変性ポリアミドイミド樹脂それ自体は、荒川化学工業(株)の開発したものであり、同社の方法に従って合成したものである。本発明においては、シラン変性ポリアミドイミド樹脂を導体上に塗布焼付けすることにより、該樹脂のアルコキシシリル基から形成されるシリカ(SiO2 )部位、すなわちシロキサン結合の高次網目構造が絶縁皮膜中に形成される。このようなシリカ部位により、得られる絶縁皮膜は誘電率が低いものとなると考えられる。
【0019】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
(ポリアミドイミド樹脂の作成)
2リットル容の4つ口フラスコに撹拌機、冷却管、塩化カルシウム管を取りつけ、無水トリメリット酸192g(1モル)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート250g(1モル)、N−メチル−2−ピロリドン663gを仕込み、80℃で2時間、昇温して140℃で5時間反応させた。その後50℃まで冷却し、N,N’−ジメチルホルムアミド163gを加えた。これにより樹脂濃度30%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
【0021】
(グリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物の作成(1))
1リットル容の4つ口フラスコに撹拌機、冷却管、縮合管を取りつけ、グリシドール148.16g(2モル)、テトラメトキシシラン部分縮合物(Siの平均個数4)を474.10g(平均分子量として1モル)を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら90℃まで昇温した。90℃に昇温後、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.70gを添加し、そのまま反応させた。反応中の副生成物として生じたメタノールは分溜管を使用して除去し、メタノールの溜出が50gに達した時点で、室温まで冷却した。この間の反応時間は、90℃で4時間であった。室温まで冷却後、減圧によって残りのメタノールを除去し、メタノールの溜出量は合計で64.0gであった。その結果、558.26gのグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物(a)を得た。この縮合物(a)の「生成物1分子あたりの平均Si個数/生成物1分子あたりのオキシラン環(Si上のグリシジルオキシ基)の平均個数」は2であった。
【0022】
(グリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物の作成(2))
前述の(1)と同様に、グリシドール74.08g(1モル)、テトラメトキシシラン部分縮合物(Siの平均個数10)369.07g(1/3モル)を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら90℃まで昇温した。90℃に昇温後、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.70gを添加し、そのまま反応させた。反応中の副生成物として生じたメタノールは分溜管を使用して除去し、メタノールの溜出が20gに達した時点で、室温まで冷却した。この間の反応時間は、90℃で6時間であった。室温まで冷却後、減圧によって残りのメタノールを除去し、メタノールの溜出量は合計で32.0gであった。その結果、411.15gのグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物(b)を得た。この縮合物(b)の「生成物1分子あたりの平均Si個数/生成物1分子あたりのオキシラン環の平均個数」は3であった。
【0023】
【表1】
【0024】
(シラン変性ポリアミドイミド樹脂の作成(1))
1リットル容の4つ口フラスコに撹拌機、冷却管を取り付け、ポリアミドイミド樹脂の作成の項で作成したポリアミドイミド樹脂溶液500gにグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物の作成(1)で作成したグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物(a)を5.17g添加し、95℃にて4時間攪拌した。これにより、シラン変性ポリアミドイミド樹脂(ケイ素含有量4.29%)(AI−1)を得た。
【0025】
(シラン変性ポリアミドイミド樹脂の作成(2))
1リットル容の4つ口フラスコに撹拌機、冷却管を取り付け、ポリアミドイミド樹脂の作成の項で作成したポリアミドイミド樹脂溶液500gにグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物の作成(1)で作成したグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物(a)を2.58g添加し、95℃にて4時間攪拌した。これにより、シラン変性ポリアミドイミド樹脂(ケイ素含有量2.15%)(AI−2)を得た。表2、3のケイ素含有量は仕込み時のシロキサンとポリアミドイミドの樹脂モル比から計算で求めた数値である。
【0026】
【表2】
【0027】
(シラン変性ポリアミドイミド樹脂の作成(3〜6))
1リットル容の4つ口フラスコに撹拌機、冷却管を取り付け、ポリアミドイミド樹脂の作成の項で作成したポリアミドイミド樹脂溶液500gにグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物の作成(2)で作成したグリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物(b)を添加し、95℃にて4時間攪拌した。これにより、シラン変性ポリアミドイミド樹脂(AI−3〜6)を得た。
【0028】
【表3】
【0029】
(実施例1〜7、比較例1)
以上の方法にて作成したシラン変性ポリアミドイミド樹脂を導体上に塗布焼き付けを行い、所望の絶縁電線を得た。絶縁電線の作成は以下のとおり行った。
絶縁電線の導体は直径1.0mmの銅線を用い、樹脂の焼き付けは炉長7mで雰囲気温度500℃の熱風循環方式の焼付け炉を用いて複数回塗布焼付けして、所定の皮膜厚さの絶縁皮膜を形成した。絶縁皮膜としては、実施例1〜5、比較例1では単一層の絶縁層とした。一方、実施例6、7では上下二層の絶縁層を設けた。なお、上下二層の絶縁層の厚さは、表5中に、皮膜厚さの後にカッコ書きで厚さの比として記載した。先に調製したシラン変性ポリアミドイミド樹脂塗料(AI−1〜AI−6)を絶縁層形成に用いた。さらに比較として使用した絶縁塗料は、ポリアミドイミド樹脂として日立化成(株)製HI−406およびHI−406A(いずれも商品名)をそれぞれ使用した。
【0030】
(実施例8)
任意の攪拌機のついたフラスコ中に、キシレン27gおよびポリエチレンワックス(三井化学製ポリエチレンワックス400P、商品名)を3g入れ、120℃にて1時間攪拌した。液が透明で均質となったら、攪拌しながら急激に冷却し、ポリエチレンワックスディスパージョン(30g)を作成した。
先に調整したシラン変性ポリアミドイミド樹脂(AI−3)500g中に、このポリエチレンワックスディスパージョン(30g)を入れ、十分に攪拌してポリアミドイミド樹脂中にポリエチレンワックスが分散するようにして、自己潤滑ワニスを製造した。
この自己潤滑ワニスを用いて実施例6と同様にして絶縁電線とした。
【0031】
上記実施例1から8と比較例1について、得られた各種絶縁電線の耐傷性評価を、次のような試験法により評価した。
(一方向摩耗試験):JIS C3003の10項記載の試験を実施した。結果はN単位で表示し、数値が高いもの程、皮膜が剥離しづらいことを示す。
(衝撃落下試験):試験用絶縁電線の直径より浅いV溝を表面に設けた金属板のV溝上に絶縁電線を固定し、その絶縁電線の長手方向に対して直角となるように、先端角度55゜、先端の曲率r=0.5とした刃先で全体荷重が100g、500g、1000gの衝撃荷重を水平に対して45゜の角度から荷重の落下長(実際の荷重の移動長)を370mmとして落下させたときの、電線の絶縁皮膜の破壊状況を電線の傷部分の漏れ電流試験にて評価した。漏れ電流試験の方法は、JIS C3003記載のピンホール試験方法に準じて電極の正負を逆にして実施し、検出には電流計を用いた。導体を正極、水側を負極とし、その間に12Vの電圧を印加して、漏れ電流の値を電流計から読みとった。その数値が大きいほど傷がつきやすいことを示す。
なお、耐外傷性の判断は衝撃落下試験、一方向摩耗試験の両方の結果から判断した。
これらの結果を表4および表5に示した。
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
各実施例では、衝撃落下試験では、非常に高い皮膜破壊強度を示している。
これに対し、比較例1の電線の場合、本発明におけるシラン変性ポリアミドイミド樹脂層がないため、高荷重がかかった場合にかかる力を分散させることができず、一気に導体まで傷が進行してしまい、目的とする耐加工性の一指標である皮膜破壊強度を得ることができなかったと判断出来る。
【0035】
また絶縁性能の評価のため、上記実施例1から5と比較例1にて得られた各種絶縁電線の電気絶縁性能評価を、次のような試験法により評価した。
(絶縁破壊電圧):JIS C3003の記載の試験を実施した。結果はkV単位で表示し、数値が高いもの程、絶縁破壊電圧が高いことを意味する。また絶縁破壊電圧と形成された絶縁皮膜の厚さとの関係も両者の比として併せて示した。
(誘電率):形成された絶縁皮膜の誘電率を測定した。誘電率の測定には、LCRメーターを使用し、測定周波数を1kHzとした。また測定温度は、室温(25℃)および100℃とした。
結果を表6に示す。
【0036】
【表6】
【0037】
【発明の効果】
本発明の絶縁電線は高い耐加工性を有し、過酷なコイル巻線加工の条件下で高い負荷がかかっても絶縁皮膜の破壊が起こることが無くかつ皮膜の割れが生じにくいことから、絶縁不良を起こしにくい。さらに本発明の絶縁電線は高い絶縁破壊電圧を有し、皮膜厚さを薄くしても絶縁破壊しない優れた絶縁特性を有する。また、本発明の絶縁電線に用いられる絶縁皮膜は、誘電率としてポリイミドと同等程度の低い数値を有している。これらのことから、本発明の絶縁電線をトランスやモーターなどに使用した場合、高い占積率下で使用でき、さらにそのような環境下で絶縁不良を起こしにくい。このため本発明の絶縁電線によれば、信頼性の高いコイルが提供でき、コイルを用いる機器全体の小型化、低コスト化、信頼性向上に寄与するという優れた効果を奏する。
Claims (3)
- シラン変性ポリアミドイミド樹脂を導体上に直接あるいは他の絶縁層を介して塗布焼き付けた絶縁電線であって、
前記シラン変性ポリアミドイミド樹脂が、カルボキシル基および/または酸無水物基を末端に有するポリアミドイミド樹脂に、グリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物を反応させてなることを特徴とする絶縁電線。 - 前記グリシジルエーテル基含有アルコキシシラン部分縮合物が、グリシドールとアルコキシシラン部分縮合物との脱アルコール反応によって得られるものであることを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。
- 前記シラン変性ポリアミドイミド樹脂はケイ素含有量が1〜15質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁電線。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2001055781A JP4844992B2 (ja) | 2000-03-01 | 2001-02-28 | 絶縁電線 |
Applications Claiming Priority (4)
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