JP6153225B2 - 絶縁電線の製造方法 - Google Patents

絶縁電線の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6153225B2
JP6153225B2 JP2013236334A JP2013236334A JP6153225B2 JP 6153225 B2 JP6153225 B2 JP 6153225B2 JP 2013236334 A JP2013236334 A JP 2013236334A JP 2013236334 A JP2013236334 A JP 2013236334A JP 6153225 B2 JP6153225 B2 JP 6153225B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wire
conductor
extrusion
insulated wire
insulating layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013236334A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015095444A (ja
Inventor
雄貴 山本
雄貴 山本
秀昭 伊藤
秀昭 伊藤
孝之 佐伯
孝之 佐伯
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Wintec Inc
Original Assignee
Sumitomo Electric Wintec Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric Wintec Inc filed Critical Sumitomo Electric Wintec Inc
Priority to JP2013236334A priority Critical patent/JP6153225B2/ja
Publication of JP2015095444A publication Critical patent/JP2015095444A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6153225B2 publication Critical patent/JP6153225B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Insulated Conductors (AREA)
  • Coils Of Transformers For General Uses (AREA)

Description

本発明は、絶縁電線及びその製造方法に関する。
一般家庭用電気機器、自動車等の構成要素、例えばモータ、オルタネータ、イグニッション等に、絶縁電線を巻回してなるコイルが用いられている。このようなコイルを形成する絶縁電線は、導電性を有する金属製の導体と、これを被覆する樹脂製の絶縁層とから構成されるものが一般的である。
上記の絶縁電線の導体として、その導電性の高さから、主として銅又は銅合金が使用される。一方、アルミニウム又はアルミニウム合金は、軽量性に優れており、一部絶縁電線の導体として使用されている(特開2011−162826号公報参照)。
特開2011−162826号公報
上述のような従来のアルミニウム系導体を用いた絶縁電線は、一般的に絶縁破壊電圧が銅系導体を用いたものに比べて低い。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、アルミニウム又はアルミニウム合金を導体に用いつつ、絶縁特性に優れる絶縁電線を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線であって、グリセリン溶液中における上記絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値が0.17kV/μm以上である絶縁電線である。
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線の製造方法であって、素線材をコンフォーム押出して導体を成形する工程と、上記導体の周面に絶縁層を被覆する工程とを備える絶縁電線の製造方法である。
本発明の絶縁電線は、導体にアルミニウム又はアルミニウム合金を用いながら、高い絶縁特性を有する。また、本発明の絶縁電線の製造方法は、絶縁特性に優れる絶縁電線を容易かつ確実に製造することができる。
図1は、本発明の実施形態に用いるコンフォーム押出機の模式的構成図である。 図2は本発明の実施形態での絶縁層厚みと絶縁破壊電圧との相関を示すグラフである。 図3は、本発明の実施例及び比較例の絶縁電線の表面写真、絶縁破壊電圧、及び高電圧均一性試験の結果を示す図である。
[本発明の実施形態の説明]
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線であって、グリセリン溶液中における上記絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値が0.17kV/μm以上である絶縁電線である。
当該絶縁電線は、グリセリン溶液中における絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値が0.17kV/μm以上である。そのため、絶縁特性に優れるのでコイルに好適に用いられる。
なお、「グリセリン溶液中における絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値」とは、グリセリンと飽和食塩水とを17:3の質量割合で混合したグリセリン溶液中に絶縁電線1mを浸漬させ、絶縁電線の導体と上記グリセリン溶液との間に、50Hz又は60Hzの正弦波に近い波形を有する交流電圧を500V/sで昇圧して加えたときの絶縁破壊電圧を絶縁電線の長さ方向1m毎に連続して測定し、その絶縁破壊電圧の平均値(サンプル数10以上)を絶縁層の平均厚みで除した値を意味する。ここで絶縁破壊の検出電流は5mAである。
上記絶縁電線における3000Vの高電圧均一性試験における欠陥数の平均値としては3個/100m以下が好ましい。欠陥数の平均値が上記下限以下であることによって、絶縁電線が絶縁特性にさらに優れる。なお、「3000Vの高電圧均一性試験における欠陥数」とは、NEMA MW1000−2003 3.9.2に準じ、試験電圧を3000V、欠陥の検知電流を16μAとして測定した絶縁電線の長さ100m当たりの欠陥数をいう。
上記導体が、素線材のコンフォーム押出により成形されることが好ましい。このように素線材をコンフォーム押出することで、素線材が半溶融状態、又は流動状態となり、押出前の素線材周面の疵等の欠陥が修復される。そのため、押出後の線材を伸線した導体の周面に被覆される絶縁層の厚みを均一にできると共に、導体と絶縁層との密着性を高くすることができる。この結果、当該絶縁電線が絶縁特性に優れるようになる。
上記コンフォーム押出における下記式(1)の押出減面率としては50%以上95%以下が好ましい。
押出減面率=(A−B)/A×100 ・・・(1)
(上記式(1)中、Aは押出前の素線材の断面積である。Bは押出後の線材の断面積の合計である。)
押出減面率が上記下限未満であると、素線材が半溶融状態、又は流動状態になる量が少ないので、素線材周面の疵等の欠陥が修復され難いおそれがある。また、押出減面率が上記上限を超えると、押し出すのに必要なエネルギーが大きくなり、当該絶縁電線を安定的に製造する際、コストの上昇を招来するおそれがある。
上記コンフォーム押出の前に上記素線材の周面が洗浄されていることが好ましい。このように上記素線材の周面を洗浄することにより、素線材周面に付着した潤滑油等の有機物等が除去される。その結果、潤滑油等の有機物等がコンフォーム押出時に巻き込まれないため、導体の表面近傍に不純物が入り込むような欠陥が無くなるので、導体の品質が向上する。
上記導体の断面形状が略円形の場合の平均径としては100μm以上8mm以下が好ましく、上記導体の断面形状が略矩形の場合の一辺の長さとしては500μm以上8mm以下が好ましい。上記導体の断面形状が略円形の場合の平均径、及び上記導体の断面形状が略矩形の場合の一辺の長さを上記範囲内にすることによって、当該絶縁電線の絶縁特性向上効果を促進できる。
また、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線の製造方法であって、素線材をコンフォーム押出して導体を成形する工程と、絶縁電線の製造方法も含む。
当該絶縁電線の製造方法では、上記素線材がコンフォーム押出によって半溶融状態、又は流動状態となり、押出前の素線材周面の疵等の欠陥が修復されるので、押出後の線材周面の欠陥を低減できる。このことにより、押出後の線材を伸線した導体の周面に被覆される絶縁層の厚みが均一になると共に、導体と絶縁層との密着性が高くなる。その結果、当該絶縁電線が絶縁特性に優れる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係る絶縁電線及び絶縁電線の製造方法の実施形態について詳説する。
[絶縁電線]
当該絶縁電線は、導体と、この導体の周面を被覆する絶縁層とを備えている。
<導体>
導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする。アルミニウム合金としては、特に限定されるものではなく、絶縁電線に用いられる公知のアルミニウム合金を用いることができ、例えば高強度で耐熱性に優れるジルコニウム含有合金や鉄含有合金等を用いることができる。
導体の断面形状は、特に限定されず、略円形、略方形、略矩形等の種々の形状を採用することができる。また、導体の断面の大きさも、特に限定されない。断面形状が略円形(丸線)の場合の平均径の下限としては、100μmが好ましく、200μmがより好ましい。一方、上記平均径の上限としては、8mmが好ましく、5mmがより好ましい。また、断面形状が略矩形(平角線)の場合の一辺の長さの下限としては、500μmが好ましく、1mmがより好ましい。一方、上記一辺の長さの上限としては、8mmが好ましく、5mmがより好ましい。
<絶縁層>
絶縁層は、導体を被覆するように導体の周面に積層される。絶縁層は、単層でも2層以上の多層構造でもよい。多層構造として、特性の異なる絶縁材(樹脂)を組み合わせると、内層、外層等で異なる特性を付与できる。
絶縁層の材質としては、特に限定されないが、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステル、フェノキシ樹脂等を用いることができる。絶縁層が多層構造の場合、例えば最内層の主成分として低コストであるポリエステルイミドを用い、最外層の主成分として耐熱性が高く、耐加水分解性に優れたポリアミドイミドを用いることができる。また、最外層に用いるポリアミドイミドを高潤滑タイプとし、この最外層とポリエステルイミドを主成分とする最内層との間に汎用のポリアミドイミドを主成分とする中間層を設けることもできる。このような層構成とすると、コスト性及び潤滑性に優れた絶縁層が得られる。なお、高潤滑タイプのポリアミドイミドとしては、例えばポリアミドイミドに潤滑剤のポリエチレンワックスを混合し調製したものを挙げることができる。このポリエチレンワックスの混合量は、例えばポリアミドイミドの固形分100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下とすることができる。また、高潤滑性の樹脂を用いる代わりに、最外層の周面に潤滑油や減摩剤等の外部潤滑剤を塗布した絶縁層を使用することもできる。
絶縁層の平均厚みとしては、特に限定されないが、例えば20μm以上100μm以下とすることができる。特に、上述のように高潤滑ポリアミドイミドを主成分とする最外層、汎用ポリアミドイミドを主成分とする中間層、及びポリエステルイミドを主成分とする最内層の三層で絶縁層を構成する場合、最外層の厚みを1μm以上10μm以下、中間層の厚みを1μm以上20μm以下、最内層の厚みを5μm以上40μm以下とすることが好ましい。各層の平均厚みを上記範囲とすることで、上述の各層の効果を有効に発揮させることができる。
また、絶縁層は導体に接するプライマー層を有していてもよい。このプライマー層としては、フェノキシ樹脂を硬化させたもの及びそれを含有するものを好適に用いることができる。このようなプライマー層を設けることによって、絶縁層の密着性を向上させることができる。
<絶縁電線>
当該絶縁電線のグリセリン溶液中における上記絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値の下限としては、0.17kV/μmであり、0.20kV/μmがより好ましく、0.23kV/μmがさらに好ましい。一方、絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値の上限としては、0.5kV/μmが好ましく、0.3kV/μmがさらに好ましい。絶縁破壊電圧が上記下限未満の場合、高電圧下で使用される機器に当該絶縁電線を用いることができないおそれがある。また、絶縁破壊電圧が上記上限を超える場合、当該絶縁電線を安定的に製造する際、コストの上昇を招来するおそれがある。
当該絶縁電線の3000Vの高電圧均一性試験における欠陥数の平均値の上限としては、3個/100mが好ましく、1.5個/100mがより好ましく、0.9個/100mがさらに好ましい。欠陥数の平均値が上記上限を超える場合、高電圧下で使用される機器に当該絶縁電線を用いることができないおそれがある。一方、3000Vの高電圧均一性試験における欠陥数の平均値の下限としては、0個/100mである。
[絶縁電線の製造方法]
当該絶縁電線は、例えば以下の工程を有する製造方法により容易かつ確実に製造することができる。
(1)素線材を得る素線材製造工程
(2)上記素線材を洗浄する洗浄工程
(3)洗浄された上記素線材をコンフォーム押出して導体を成形する導体成形工程
(4)上記導体成形工程後に、上記導体の周面に絶縁層を被覆する被覆工程
<(1)素線材製造工程>
素線材製造工程においては、まず、導体の原料となるアルミニウム又はアルミニウム合金を鋳造及び押し出して素線材を得る。この素線材を得た後に、素線材を伸線する伸線加工を行ってから次の洗浄工程に移行してもよいし、伸線加工を行わずに次の洗浄工程に移行してもよい。
伸線加工では、任意の断面形状及び平均径を有する素線材を成形する。伸線加工の方法としては、例えば複数の伸線ダイスを備えた伸線装置によって、この伸線ダイスに潤滑剤を塗布した素線材を挿通させることで所望の断面形状及び平均径に徐々に近づける方法を用いることができる。この伸線ダイスは、線引きダイス、ローラダイス等を用いることができる。また、潤滑剤としては、油性成分を含油する水溶性及び非水溶性のものを使用可能である。
<(2)洗浄工程>
洗浄工程においては、素線材の周面に付着した潤滑油等の有機物等を洗浄により除去する。洗浄方法としては、特に制限されず、例えば浸漬洗浄、スプレー洗浄、スチーム洗浄、ブラッシング洗浄、電解洗浄、超音波洗浄等を用いることができる。この洗浄方法で用いる洗浄剤としては、例えば水、石油系溶剤、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、極性基含有溶剤(ケトン、アルコール等)等の溶剤、これらからなるエマルジョン、これらに界面活性剤等を溶解させた液等の中性液体;無機酸(塩酸、硝酸、硫酸、クロム酸等)水溶液、有機酸(ギ酸、酢酸等)水溶液等の酸性液体;無機アルカリ(水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)水溶液、有機アルカリ(エタノールアミン等)水溶液等のアルカリ性液体などを挙げることができる。これらの洗浄方法は、組み合わせて行ってもよく、特にアルカリ洗浄をした後に超音波洗浄と水洗浄とを行うことが好ましい。これらの洗浄をすることにより有機物等が十分に除去される。その結果、潤滑油等の有機物等がコンフォーム押出時に巻き込まれないため、導体の表面近傍に不純物が入り込むような欠陥が無くなるので、導体の品質が向上する。
<(3)導体成形工程>
導体成形工程においては、洗浄された素線材を用い、コンフォーム押出及び伸線加工により導体を成形する。
(コンフォーム押出)
コンフォーム押出においては、素線材をコンフォーム押出機によって押し出す。コンフォーム押出に用いられるコンフォーム押出機の例を図1示す。コンフォーム押出機F1は、素線材1を係合する溝を外周面に有する駆動型の回転ホイールF2と、回転ホイールF2の溝に係合する突起部F3を有する固定シュー部材F4と、押し出される素線材1を任意の断面形状及び平均径に成形するダイスF5とを備えている。素線材1は、回転ホイールF2との摩擦力によって固定シュー部材F4内に引き込まれて突起部F3に当接し、固定シュー部材F4内に溜まる。固定シュー部材F4内に溜まった素線材1は、素線材1と回転ホイール2との摩擦熱と、素線材1が突起部3と当接して塑性変形することによる発熱とによって半溶融状態、又は流動状態となり、ダイスF5から押し出される。押し出された線材は水冷等によって冷却されリール等に巻き取られる。このとき、固定シュー部材F4内の圧力が高くなりすぎて素線材1に疵が生じるのを防ぐために、素線材1の一部は、回転ホイールF2の溝と突起部F3との隙間Pから素材屑として排出される。このコンフォーム押出によって、素線材1が半溶融状態、又は流動状態となるので、押出前の素線材1周面の疵等の欠陥が修復される。
コンフォーム押出における押出減面率の下限としては、50%が好ましく、60%がより好ましく、70%がさらに好ましい。押出減面率が上記下限未満であると、素線材1の半溶融状態、又は流動状態になる量が少ないので、素線材1周面の疵等の欠陥が修復されにくいおそれがある。また、押出減面率の上限としては、95%が好ましく、90%がより好ましく、85%がさらに好ましい。押出減面率が上記上限を超えると、押し出すのに必要なエネルギーが大きくなり、当該絶縁電線を安定的に製造する際、コストの上昇を招来するおそれがある。なお、押出減面率は下記式(1)で表される。
押出減面率=(A−B)/A×100 ・・・(1)
(上記式(1)中、Aは押出前の素線材の断面積である。Bは押出後の線材の断面積の合計である。)
(伸線加工)
伸線加工においては、上記コンフォーム押出で押し出した線材を、上記素線材製造工程において説明した伸線加工と同様の方法によって導体に伸線加工する。この伸線加工において、線材の断面積の減面率(伸線減面率)は下記式(2)で表される。
伸線減面率=(C−D)/C×100 ・・・(2)
(上記式(2)中、Cは伸線前の線材の断面積である。Dは伸線された導体の断面積である。)
この伸線減面率の上限としては、95%が好ましく、91%がより好ましい。伸線減面率が上記上限を超えると、伸線加工中に導体周面に疵等の欠陥が生じるおそれがある。また、伸線減面率の下限としては、0%超である。
<(4)被覆工程>
被覆工程においては、上記伸線された導体に絶縁層を積層して絶縁電線を得る。具体的には、絶縁層の形成樹脂を有機溶媒に溶かした塗料(ワニス)を導体の周面に塗布し、焼付けることで絶縁層を形成する。
ワニスを導体周面に塗布する方法としては、例えばワニスを貯留したワニス槽と塗布ダイスとを備える塗布装置を用いた方法を挙げることができる。この塗布装置によれば、導体がワニス槽内を挿通することでワニスが導体周面に付着し、その後塗布ダイスを通過することでこのワニスがほぼ均一な厚みに塗布される。なお、ワニスにおける樹脂の含有量としては、10質量%以上50質量%以下が好ましい。
上記ワニスを加熱して焼付ける方法としては、例えば導体の走行方向に長い筒状の加熱炉を用い、導体を間接的に加熱する方法を用いることができる。この加熱方法は特に限定されないが、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等の公知の方法で行うことができる。このような加熱により、導体周面に塗布されたワニスに含まれる溶剤が気化し、導体周面が樹脂で被覆される。加熱温度は、絶縁層に用いる樹脂の種類により適宜選択される。
上記導体を上記塗布装置及び加熱炉内に複数回走行させることで、上記塗布及び焼付けが複数回繰り返されて樹脂被膜の厚みを増加させていくことができる。このとき、塗布ダイスの孔径は繰り返し回数にあわせて徐々に大きくなるように調整される。所定の厚みの樹脂被膜が得られた時点で、ワニスに含まれる樹脂成分を変更して被覆工程を継続することで、主成分の異なる複数の層からなる絶縁層を形成することができる。なお、各層ごとの塗布及び焼付けの繰り返し回数は適宜選択することができるが、2回から20回が適当である。
[コイル]
当該絶縁電線は、アルミニウム又はアルミニウム合金を導体として用いているため軽量性に優れ、さらに上述のように絶縁特性に優れる。そのため、当該絶縁電線を巻回することで、多様な用途に好適に用いることが可能なコイルを得ることができる。
[利点]
当該絶縁電線は、コンフォーム押出によって素線材が半溶融状態、又は流動状態となり、押出前の素線材周面の疵等の欠陥が修復される。そのため、押出後の線材を伸線した導体の周面に被覆される絶縁層の厚みを均一にできると共に、導体と絶縁層との密着性を高くすることができる。この結果、当該絶縁電線が絶縁特性に優れるようになる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば素線材製造工程において、導体の原料となるアルミニウム又はアルミニウム合金を連続鋳造圧延して素線材を得てもよい。
また、素線材製造工程において、素線材を得た後に伸線加工を行わない場合等には、上記洗浄工程を省略してもよい。
また、導体成形工程における伸線加工後に、導体に加熱による軟化処理を行ってもよい。軟化処理を行うことによって導体の結晶が再結晶化されるため、導体の靱性を向上させることができる。軟化処理における加熱温度としては、例えば250℃以上とすることができる。
この軟化処理は、大気雰囲気下でも可能であるが、酸素含有量が少ない非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。このように非酸化性雰囲気下で軟化処理を行うことによって、軟化処理中(加熱中)の導体周面の酸化を抑制することができる。この非酸化性雰囲気としては、例えば真空雰囲気、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気、水素含有ガスや炭酸ガス含有ガス等の還元ガス雰囲気等を挙げることができる。
また、この軟化処理には連続方式又はバッチ方式を用いることができる。連続方式としては、例えばパイプ炉等の加熱用容器内に導体を導入して熱伝導により加熱する炉式、導体に通電して抵抗熱によって加熱する直接通電方式、導体を高周波の電磁波によって加熱する間接通電方式等を挙げることができる。これらの中でも温度調節が容易な炉式が好ましい。バッチ方式としては、例えば箱型炉等の加熱用容器内に導体を封入して加熱する方式を挙げることができる。バッチ方式の加熱時間は0.5時間以上6時間以下とすることができる。また、バッチ方式においては、加熱後に50℃/sec以上の冷却速度で急冷することで、組織をより微細化することができる。
さらに、素線材の平均径と、製造する導体の平均径とによっては、コンフォーム押出の後の伸線加工を省略してもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、実施例、比較例及び参考例の絶縁電線を製造し、それぞれの絶縁破壊電圧を測定した。
[実施例]
断面が略円形であり、平均径が9.5mmの純アルミニウム(アルミニウム含有率、99.70質量%以上)製の素線材を上記素線材製造工程によって作成し、その素線材から上記コンフォーム押出によって平均径が3.2mmの線材2本を作成した。このコンフォーム押出での押出減面率は77.3%であった。ついで、この平均径3.2mmの線材を上記伸線加工によって導体に伸線した。この導体の平均径は0.992mmであり、この伸線加工での伸線減面率は90.4%であった。そして、この導体の周面に上記被覆工程によって絶縁層を被覆し、No.1の絶縁電線を実施例として製造した。上記被覆工程では、絶縁層の厚さを35μmから約5μmきざみで55μmまで変化させて被覆した。この絶縁層は、最内層をポリエステルイミド樹脂、中間層をポリアミドイミド樹、最外層をポリアミドイミドに潤滑剤のポリエチレンワックスを混合し調製した高潤滑タイプのポリアミドイミド樹脂とした。なお、各層の厚さは、例えば絶縁層の厚さが39μmの場合、最内層が31.5μm、中間層が4μm、最外層が3.5μmであった。
平均径を1.195mmとし、この伸線加工での伸線減面率を96.5%とした以外はNo.1と同様の手段で得た導体の周面に上記被覆工程によって上記No.1と同様に絶縁層を被覆し、No.2の絶縁電線を実施例として製造した。
[比較例]
断面が略円形の純アルミニウム(アルミニウム含有率、99.70質量%以上)製の2本の素線材を上記素線材製造工程によって作成し、それぞれの素線材にコンフォーム押出を行わずに伸線加工を行って導体を作成した。この2本の導体に上記No.1と同様の絶縁層を被覆し、No.3とNo.4の絶縁電線を比較例として製造した。このNo.3の導体の平均径は1.001mmであり、No.4の導体の平均径は1.000mmであった。
[参考例]
断面が略円形の銅製の導体を用い、No.1と同様の絶縁層を被覆し、No.5の絶縁電線を参考例として製造した。このNo.5の導体の平均径は0.991mmであった。
[絶縁破壊電圧の測定]
得られたNo.1からNo.5の絶縁電線のグリセリン溶液中における絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値を、35μmから55μmまでの各絶縁層の厚さ毎に測定した。絶縁破壊電圧の測定は、グリセリンと飽和食塩水とを17:3の質量割合で混合したグリセリン溶液中に絶縁電線を1mずつ浸漬させ、絶縁電線の導体と上記グリセリン溶液との間に、50Hz又は60Hzの正弦波に近い波形を有する交流電圧を500V/sで昇圧して加えたときの破壊電圧を測定した。ここで絶縁破壊の検出電流は5mAとした。この測定を、絶縁電線30mを1m毎に連続して合計30箇所で行った。30箇所の絶縁破壊電圧の平均値、最大値、及び最小値と、絶縁破壊電圧の平均値を絶縁層の厚みで除した絶縁層の厚み1μm当たり(単位厚み当たり)の絶縁破壊電圧とを算出した。
その測定結果の一例を表1に示す。No.1、3〜5の絶縁電線においては絶縁層の厚さが40μm付近の絶縁電線の測定結果を、No.2の絶縁電線においては絶縁層の厚さが45μm付近の絶縁電線の測定結果を示す。また、絶縁層厚みと絶縁破壊電圧平均値との関係を図2に示す。
[評価]
No.1、2の絶縁電線は、グリセリン溶液中における上記絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値が、No.3、4の絶縁電線よりも高い(表1参照)。さらに、No.1の絶縁電線は、上記絶縁破壊電圧の平均値が、絶縁特性が良好とされる銅製のNo.5の絶縁電線よりも高い。また、No.1、2の絶縁電線は、絶縁層の厚み35〜55μmの全ての範囲において、絶縁破壊電圧がNo.3、4の絶縁電線よりも高い(図2参照)。さらに、No.1の絶縁電線は、絶縁層の厚み35〜55μmの全ての範囲において、絶縁破壊電圧が銅製のNo.5の絶縁電線よりも高い。
次に、上記とは異なる実施例及び比較例を用いて絶縁電線の表面観察、絶縁破壊電圧の測定、及び高電圧均一性試験を行った。
[実施例]
上述したNo.1の絶縁電線で用いた導体の周面に、厚み46μmの絶縁層を被覆し、No.6の絶縁電線を実施例として製造した。
[比較例]
上述したNo.3の絶縁電線で用いた導体の周面に、No.6の絶縁電線と同様に厚み42μmの絶縁層を被覆し、No.7の絶縁電線を比較例として製造した。
[表面観察、絶縁破壊電圧の測定、及び高電圧均一性試験]
得られたNo.6及びNo.7の絶縁電線に対し、表面観察、絶縁破壊電圧の測定、及び高電圧均一性試験を行った。その結果を図3に示す。絶縁破壊電圧の測定は、上述したNo.1からNo.5の絶縁電線での測定と同一の方法で行った。絶縁破壊電圧の平均値と最小値を図3に示す。また、高電圧均一性試験は、NEMA MW1000−2003 3.9.2に準じ、試験電圧を3000V、欠陥の検知電流を16μAとし、この検知電流を超える電流が流れた回数を測定した。検知電流を超える電流が流れた回数を欠陥数とした。このようにして検出した絶縁電線100m当たりの欠陥数を図3に示す。
[評価]
表面観察において、No.6の絶縁電線の周面の欠陥は、No.7の絶縁電線の周面の欠陥よりも小さかった。また、No.6の絶縁電線は、No.7の絶縁電線と比べて絶縁破壊電圧が高く、欠陥数も少なかった。
本発明は、例えば高い絶縁特性が求められるコイルに好適に用いることができる。
1 素線材
F1 コンフォーム押出機
F2 回転ホイール
F3 突起部
F4 固定シュー部材
F5 ダイス
P 隙間

Claims (4)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とし、平均径1mm以下の断面略円形の導体及びこの導体の周面を被覆する絶縁層を備える絶縁電線の製造方法であって、
    素線材をコンフォーム押出及びその後の伸線加工により導体を成形する工程と、
    上記導体の周面に絶縁層を被覆する工程とを備え、
    製造された絶縁電線のグリセリン溶液中における上記絶縁層の単位厚み当たりの絶縁破壊電圧の平均値が0.23kV/μm以上であり、
    上記導体成型工程のコンフォーム押出における下記式(1)の押出減面率が50%以上95%以下であり、
    上記導体成形工程の伸線加工における下記式(2)の伸線減面率が91%以下である絶縁電線の製造方法
    押出減面率=(A−B)/A×100 ・・・(1)
    (上記式(1)中、Aは押し出し前の素線材の断面積である。Bは押し出し後の線材の断面積の合計である。)
    伸線減面率=(C−D)/C×100 ・・・(2)
    (上記式(2)中、Cは伸線前の線材の断面積である。Dは伸線された導体の断面積である。)
  2. 製造された絶縁電線の3000Vの高電圧均一性試験における欠陥数の平均値が3個/100m以下である請求項1に記載の絶縁電線の製造方法
  3. 上記コンフォーム押出の前に上記素線材の周面が洗浄されている請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線の製造方法
  4. 製造された絶縁電線の導体の平均径が100μm以上である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の絶縁電線の製造方法
JP2013236334A 2013-11-14 2013-11-14 絶縁電線の製造方法 Active JP6153225B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013236334A JP6153225B2 (ja) 2013-11-14 2013-11-14 絶縁電線の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013236334A JP6153225B2 (ja) 2013-11-14 2013-11-14 絶縁電線の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015095444A JP2015095444A (ja) 2015-05-18
JP6153225B2 true JP6153225B2 (ja) 2017-06-28

Family

ID=53197694

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013236334A Active JP6153225B2 (ja) 2013-11-14 2013-11-14 絶縁電線の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6153225B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109799436B (zh) * 2019-03-12 2023-08-22 潘潮濒 电磁线耐压测试方法及测试装置、导电液
CN112712922B (zh) * 2020-12-30 2022-10-21 武汉市江华电线电缆有限责任公司 双层聚氯乙烯线绝缘线缆及其制备设备

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5928530A (ja) * 1982-08-09 1984-02-15 Fujikura Ltd エナメル線の製造方法
JPS60244419A (ja) * 1984-05-18 1985-12-04 Sumitomo Electric Ind Ltd 線状体の製造方法
JPS60257918A (ja) * 1984-06-01 1985-12-19 Sumitomo Electric Ind Ltd 線状体の製造法
JPH0615700B2 (ja) * 1986-03-19 1994-03-02 日本軽金属株式会社 アルミニウム細線
CN104246914B (zh) * 2012-04-02 2017-07-07 住友电气工业株式会社 绝缘电线及其制造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015095444A (ja) 2015-05-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5805336B1 (ja) 絶縁電線及びそれを用いたコイル並びに絶縁電線の製造方法
US9543058B2 (en) Insulated winding wire
US9773583B2 (en) Continously transposed conductor
JP6822252B2 (ja) コイル及びその製造方法
JP2014238927A (ja) 絶縁電線
US10199138B2 (en) Insulated winding wire
JP6153225B2 (ja) 絶縁電線の製造方法
JP2009099450A (ja) 酸化アルミニウム被膜絶縁アルミニウム電線の製造方法
CN111627618A (zh) 一种汽车油冷驱动电机用漆包线生产加工工艺
CN103515031B (zh) 双涂层自润滑聚氨酯漆包线的生产工艺
JP2014116204A (ja) 絶縁電線及びその製造方法
JP2015185504A (ja) エナメル線の製造方法
US2665243A (en) Method of providing aluminum with a flexible oxide coating
JP2015230773A (ja) 絶縁電線及びその製造方法
JP2021002459A (ja) 平角マグネット線およびコイル
JP7421058B2 (ja) 平角マグネット線被覆層形成用熱収縮チューブ、平角マグネット線およびその製造方法、コイル
JP2018147582A (ja) 絶縁電線及びその製造方法並びにコイル
JP7011773B2 (ja) エナメル線およびエナメル線の製造方法
JP6519231B2 (ja) 巻線及びその製造方法
JP6149767B2 (ja) 導体線加工ダイス及びそれを用いたエナメル線の製造装置及び製造方法
JP7301930B2 (ja) エナメル線
WO2023210058A1 (ja) 絶縁電線及びそれを用いたコイル並びに絶縁電線の製造方法
KR102369737B1 (ko) 중합체-코팅된 와이어
RU168140U1 (ru) Гибкий обмоточный провод
JP2017016956A (ja) 絶縁電線及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A625 Written request for application examination (by other person)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A625

Effective date: 20160629

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170118

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170207

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170404

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170502

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170526

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6153225

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250