JP5805336B1 - 絶縁電線及びそれを用いたコイル並びに絶縁電線の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電源トランス用スイッチングコイル等に用いられ、コイルの小形化や占積率の向上を実現できる絶縁電線及びそれを用いた電子部品を安価に提供する。【解決手段】素線1の構成金属と錯体を形成してなる化合物皮膜2で被覆された化合物皮膜被覆素線3と、化合物皮膜被覆素線3を複数本撚り合わせた撚り線4の外周に被覆された絶縁層5とを有する絶縁電線10によって上記課題を解決する。その化合物皮膜2が、構成金属と錯体を形成するイミダゾール化合物であることが好ましく、化合物皮膜2及び絶縁層5が、はんだ付け温度で分解する材料で構成されていることが好ましい。また、こうした絶縁電線10を用いてなる電子部品20により上記課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁電線及びそれを用いた電子部品に関し、さらに詳しくは、電源トランス用スイッチングコイル等に用いられ、コイルの小形化や占積率の向上を低コストで実現できる絶縁電線及びそれを用いた電子部品に関する。
チョークコイル、トランス、インダクタンス等の電子部品には、複数の絶縁被覆銅線を撚り合わせたリッツ線や、そのリッツ線をさらに絶縁被覆した絶縁電線等が用いられている。これらの絶縁電線は、数十kHz〜数百kHzの高周波領域における表皮効果による交流抵抗の上昇を抑える目的で、撚り合わせる素線1本ずつがエナメル皮膜等で絶縁されている。
例えば特許文献1には、高周波領域における電気的特性の向上を可能とするリッツ線が提案されている。この技術は、エナメル線が複数本撚り合わされたリッツ線において、撚り合わされたエナメル線の外側にはんだ付け性紫外線硬化型樹脂層が設けられており、その結果、従来に比べエナメル皮膜厚を薄くして仕上外径を小さくすることができるようになるというものである。また、特許文献2には、占積率に優れしかも部分放電や電磁振動劣化を低減できる新規なリッツ線が提案されている。この技術は、導体の上にエナメル絶縁被覆を有するエナメル線を、7本撚合せ、円形ダイスを通すことによりエナメル線に損傷を与えない程度に圧延し外径を圧縮した後、自己融着層を塗布焼付して得るというものである。
また、リッツ線の端末処理方法として、一般的に、はんだ付けが行われているが、エナメル塗料の種類によりそのままはんだ付けが可能である場合や、薬品や機械加工により素線の表面皮膜を除去してからはんだ付けする場合がある。また、リッツ線をさらに絶縁被覆した絶縁電線においては、絶縁被覆をストリッパー等で除去した後に、そのまま又は表面被覆を除去した後にはんだ付けすることがある。
特開平5−250926号公報 特開平6−119825号公報
特許文献1で提案された技術は、リッツ線の外側に紫外線硬化型樹脂で薄く絶縁被覆するというものであり、また、特許文献2で提案された技術は、撚り合わせるエナメル線を圧延したものであり、いずれも、各素線に設けられた絶縁皮膜は、数μm程度の厚さになっている。例えば特許文献1に記載の導体径0.3mmφ2種ポリウレタンエナメル線は、皮膜厚さが10μm〜18μmであり、仮に3種である場合は、皮膜厚さが7〜13μm程度となる。そのため、リッツ線の外側に特許文献1に記載のような紫外線硬化型樹脂で薄く絶縁被覆した場合であっても、仕上がり外径は、リッツ線を構成する素線のエナメル皮膜厚さに大きく影響されるものとなる。そのようなリッツ線を使用したコイルは、エナメル皮膜厚さの分だけ占積率が低いものとなってしまう。
また、前述のリッツ線をそのままはんだ付けする場合は、絶縁皮膜の焼けカスや酸化物が異物として端末に付着して接続不良を発生させる問題や、裸線と比較してはんだ付け条件が高温かつ長時間になるので、はんだ食われによる導体の細りを起因としたコイルの品質、歩留りが低下してしまう問題があり、絶縁皮膜を除去してからはんだ付けする場合は、工数の増加や皮膜除去時の断線等の問題があった。また、前述のリッツ線は、素線の1本1本にエナメル塗布と高温乾燥とを繰り返してエナメル皮膜を施したエナメル線を複数本撚り合わせて得ているため、製造工程が多く、結果として単線の絶縁電線等と比較して大幅に高価なものになっていた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電源トランス用スイッチングコイル等に用いられ、コイルの小形化や占積率の向上を実現でき、更にはんだ付けが容易に行うことが可能な絶縁電線及びそれを用いた電子部品を安価に提供することにある。
(1)上記課題を解決するための本発明に係る絶縁電線は、素線の構成金属と錯体を形成してなる化合物皮膜で被覆された化合物皮膜被覆素線と、該化合物皮膜被覆素線を複数本撚り合わせた撚り線の外周に被覆された絶縁層とを有することを特徴とする。
この発明によれば、素線の構成金属と錯体を形成してなる化合物皮膜で被覆された化合物皮膜被覆素線を有するので、被覆された化合物皮膜の厚さは薄く、その化合物皮膜で被覆された化合物皮膜被覆素線を撚り合わせた撚り線の外周に絶縁層を被覆してなる絶縁電線の外径を小さくすることができる。その結果、この絶縁電線を用いることにより、コイルの小形化を実現することができるとともに、単位体積当たりの絶縁電線の占有率を高めることができる。また、化合物皮膜の形成は、化合物溶液と素線とを接触させ、乾燥させることにより行うことができるので、従来のエナメル皮膜と比べて簡易な装置で形成することができ、短時間に極めて効率的に撚り線を作製することができる。このため、それを用いた絶縁電線を安価に提供することができる。
本発明に係る絶縁電線において、前記化合物皮膜が、前記構成金属と錯体を形成するイミダゾール化合物であることが好ましい。
本発明に係る絶縁電線において、前記化合物皮膜が、はんだ付け温度で分解する材料で構成されていることが好ましい。
本発明に係る絶縁電線において、前記絶縁層が、絶縁性塗布皮膜、絶縁性押出樹脂、又は絶縁性テープであることが好ましい。
(2)上記課題を解決することができる本発明に係る電子部品は、上記本発明に係る絶縁電線を用いて形成してなることを特徴とする。
この発明によれば、厚さの薄い化合物皮膜で被覆された化合物皮膜被覆素線を有する絶縁電線を用いるので、絶縁電線の外径を小さくすることができ、コイルの小形化を実現することができるとともに、単位体積当たりの絶縁電線の占有率を高めることができる。
本発明に係る絶縁電線によれば、素線の構成金属と錯体を形成してなる化合物皮膜で被覆された化合物皮膜被覆素線を有するので、被覆された化合物皮膜の厚さは薄く、その化合物皮膜で被覆された化合物皮膜被覆素線を撚り合わせた撚り線の外周に絶縁層を被覆してなる絶縁電線の外径を小さくすることができる。また、端末処理の際にはんだ付けを容易に行うことができる。また、絶縁電線を安価に提供することができる。
本発明に係る電子部品によれば、上記した絶縁電線を用いてコイル(電子部品)を構成したので、コイルの小形化を安価で実現することができるとともに、単位体積当たりの絶縁電線の占有率を高めることができる。
本発明に係る絶縁電線の一例を示す断面構成図である。 図1の絶縁電線の説明図である。 本発明に係る電子部品の例を示す断面構成図(A)(B)である。
以下、本発明に係る絶縁電線及びそれを用いた電子部品について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は図示の実施形態に限定されるものではない。
[絶縁電線]
本発明に係る絶縁電線10は、図1及び図2に示すように、素線1の構成金属と錯体を形成してなる化合物皮膜2で被覆された化合物皮膜被覆素線3と、その化合物皮膜被覆素線3を複数本撚り合わせた撚り線4の外周に被覆された絶縁層5とを有する。
この絶縁電線10では、化合物皮膜2の厚さはその性質上薄くなり、得られた絶縁電線10の外径を小さくすることができる。その結果、この絶縁電線10を用いることにより、コイルの小形化を低コストで実現することができるとともに、単位体積当たりの絶縁電線10の占有率を高めることができる。
以下、各構成について説明する。本願において、絶縁層5が単層又は積層であっても、まとめて「絶縁層5」ということがある。
(素線)
素線1は、撚り線4を構成する導体である。好ましくははんだ付け可能な導電性の導体であることが好ましい。素線1の材質としては、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅クラッドアルミニウム等の複合材料、それらに他の金属がめっきされためっき材料であってもよい。
素線自体がはんだ付け可能であってもよいし、導体自体がはんだ付けできない場合には、めっき等によってはんだ付け可能にしてもよい。めっき等で設けられるはんだ付け可能な金属としては、錫、はんだ、ニッケル、金、銀、銅、パラジウム、又はそれらの1種若しくは2種以上の合金を挙げることができる。
素線1の直径は特に限定されないが、例えば、0.03mm以上、0.5mm以下の程度とすることができる。このような素線1は、任意の太さの母材を熱間加工や冷間加工等して得ることができる。
(化合物皮膜)
化合物皮膜2は、素線1を構成する金属と錯体を形成してなる化合物の皮膜であり、素線1の外周に設けられている。そうした化合物は、素線1の構成金属と錯体を形成する性質を持つ化合物であればよい。この化合物皮膜2の抵抗値は従来のエナメル皮膜ほど高くはないが、数十kHz〜数百kHzの高周波領域における交流抵抗の上昇は、従来のエナメル皮膜を施した素線とほぼ同等の結果を得ることができる。
化合物としては、イミダゾール、アミン有機酸塩等を挙げることができる。なかでも、下記化学式1に示すイミダゾールを好ましく挙げることができる。このイミダゾールは、上市されているものから入手可能である。イミダゾールが、素線1を構成する例えば銅と反応することにより、下記化学式2,3に示す銅イミダゾール錯体が形成される。化合物皮膜2は、こうした銅イミダゾール錯体で形成された皮膜である。
Figure 0005805336
Figure 0005805336
Figure 0005805336
化合物皮膜2は、化合物が素線1を構成する例えば銅と反応して得られる層であり、厚さは、0.01μm以上、0.5μm以下であることが好ましい。この範囲内の厚さで化合物皮膜2が設けられているので、素線1の酸化を防止でき、はんだ濡れ性を優れたものとすることができる。さらに、最終的な絶縁電線10の直径を小さくするのに貢献できる。また、化合物皮膜2は、従来のエナメル皮膜のように厚くないので、はんだ付け時の焼けカスが非常に微量であり、はんだ接続部における焼けカスに起因する問題が発生しにくいという利点がある。なお、従来においては、エナメル皮膜がウレタン等の耐熱温度の低いものはそのままはんだ付けが可能であるが、その際にはんだカスが発生し、はんだ異物として付着し、接続不良を発生させる可能性があった。また、ポリイミド等の耐熱温度の高いものについては、はんだ付けする前に薬品や機械加工によりエナメル皮膜を除去してからはんだ付けする必要があり、加工工数が大幅に掛かってしまっていた。
また、化合物皮膜2は、こうした薄い厚さを有するので、薄い化合物皮膜2で被覆された化合物皮膜被覆素線3を撚り合わせた撚り線4の外周に後述する絶縁層5を被覆してなる絶縁電線10の外径を小さくすることができる。
化合物皮膜2は、はんだ付け温度で分解する材料で構成されていることが好ましい。このときのはんだ付け温度とは、200℃〜450℃の範囲内のいずれかの温度である。上記したイミダゾール、アミン有機酸塩は、いずれもはんだ付け温度で分解するので、最終的な端末処理時にはんだ付けでの端末処理を行うことができる。
化合物皮膜2の形成は、化合物溶液と素線1とを接触させ、乾燥させることにより行うことができる。接触手段としては、化合物溶液中に素線1を浸漬させてもよいし、素線1に化合物溶液を塗布又は吹き付ける等してもよい。乾燥は、化合物溶液を構成する溶媒(例えば水又は有機溶媒等)を除去するために行われる。こうした化合物皮膜2の形成工程は、従来のような焼き付け工程が不要となり、工数を下げることができる。また、前記した接触手段を施した後は、乾燥等をして化合物皮膜2を形成することができる。また、塗布等の接触手段を行いながら、直ぐ後に撚り合わせ工程を設けることもでき、この場合には、化合物皮膜2の形成と撚り線加工とを連続して行うことができるので、従来のエナメル皮膜と比べて簡易な装置で形成することができ、短時間に極めて効率的に撚り線4を作製することができる。このため、それを用いた絶縁電線10を安価に提供することができる。
(撚り線)
撚り線4は、化合物皮膜2で被覆された化合物皮膜被覆素線3を複数本撚り合わせたものである。撚り合わせとしては、集合撚りや同心撚り等を挙げることができ、撚り線に圧縮加工を施して更に外径を小さくしてもよい。撚りピッチ等については任意に設定され、特に限定されない。また、化合物皮膜被覆素線3の本数についても特に限定されず、要求される製品仕様やコイル仕様に応じて任意に設定される。
(絶縁層)
絶縁層5は、撚り線4の外周に被覆され、例えば絶縁性塗布皮膜、絶縁性押出樹脂、絶縁性テープであることが好ましい。この絶縁層5は、はんだ付け温度で分解する材料で構成されていてもよく、その場合には、はんだ付けによって端末処理を行うことができる。
絶縁層5の構成材料としては、絶縁電線を構成する各種の樹脂を挙げることができる。例えば、はんだ付け可能な絶縁層を形成できる樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらのうち、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。また、はんだ付け性は可能ではないが、ポリフェニルサルファイド(PPS)、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ素化樹脂共重合体(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂:PFA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等を挙げることもできる。
絶縁層5は、絶縁性塗布皮膜、絶縁性押出樹脂、絶縁性テープであれば、単層であってもよいし積層であってもよい。絶縁層5を積層形態とする場合、前記した同一又は異なる熱硬化性樹脂層を2層以上設けてもよいし、熱硬化性樹脂層上に熱可塑性樹脂層を積層させてもよい。また、熱可塑性樹脂層はテープ巻きと押出しを組み合わせて積層してもよい。
絶縁層5の形成方法として、熱硬化性樹脂材料で絶縁層5を形成する場合の組成物は、熱硬化性樹脂材料のほか、架橋剤や溶剤が含まれる。また、必要に応じて各種の添加剤が含まれる。それらの架橋剤、溶剤及び添加剤は特に限定されない。絶縁層5は、形成用組成物を塗布して形成されたり、テープ巻きして形成されたり、押し出し成形によって形成される。
絶縁層5の厚さは、単層や積層にかかわらず特に限定されないが、通常は、20μm以上であることが好ましい。絶縁層5の厚さが20μm未満では、薄すぎて十分な絶縁性を確保することができないことがある。
[電子部品]
本発明に係る電子部品20は、図3(A)に示すように、上記した本発明に係る絶縁電線10を用いて形成してなる。この電子部品20は、外径の小さい絶縁電線10を用いるので、コイルの小形化を実現することができるとともに、単位体積当たりの絶縁電線の占有率を高めることができる。
図3はコイル(電子部品20)の断面図であり、(A)は本発明に係る絶縁電線10をボビン21に巻き付けたときの断面図であり、(B)は外径の大きい従来の絶縁電線22をボビン21に巻き付けたときの断面図である。図3(A)(B)に示すように、同一寸法のボビンに絶縁電線を同じ巻数で巻き付けたとき、本発明に係る絶縁電線10を巻いたときの巻き厚さaの方が、従来の絶縁電線22を巻いたときの巻き厚さbに比べて小さくなる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しくて説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
[実施例1]
素線1として直径0.1mmの銅線を21本準備した。21本の素線1を50m/分の速度でイミダゾール水溶液中に0.3秒間浸漬し、引き続いて130℃で乾燥して、厚さ0.1μmの化合物皮膜2が設けられた化合物皮膜被覆素線3を形成した。21本の化合物皮膜被覆素線3をそのまま、ピッチ18mmで撚り、直径約0.53mmの撚り線4を作製した。なお、イミダゾール水溶液としては、イミダゾール5質量%、酢酸10質量%、他添加剤0.5質量%程度含有させた水溶液を用いた。
次いで、撚り線4上に、PETテープを三層巻きつけて厚さ85μmの絶縁層5を形成した。こうして直径約0.70mmの絶縁電線10を作製した。
[実施例2]
実施例1において、21本の素線1を10m/分の速度でイミダゾール水溶液中に1.5秒間浸漬し、引き続いて130℃で乾燥して、厚さ0.5μmの化合物皮膜2が設けられた化合物皮膜被覆素線3を形成した。その他は、実施例1と同様にして、撚り線4及び絶縁電線10を作製した。
[比較例1]
従来のエナメルリッツ線を作製した。素線1として直径0.1mmの銅線を21本準備した。21本の素線1それぞれを従来工法でエナメル塗布と360℃での加熱乾燥を5回繰り返してエナメル焼き付けし、厚さ3μmのエナメル層が設けられた化合物皮膜被覆素線3を形成し、ボビンにそれぞれ巻き取った。その後、21個のボビンから化合物皮膜被覆素線3を繰り出し、ピッチ18mmで撚り、直径約0.56mmリッツ線を作製した。なお、エナメル塗布材料は、ポリウレタン樹脂塗料(商品名:TPU
F2−NC、東特塗料株式会社製)を溶剤で希釈して用いた。
次いで、リッツ線上に、PETテープを三層巻きつけて厚さ85μmの絶縁層5を形成した。こうして直径約0.73mmの外径の大きい従来の絶縁電線22を作製した。
[高周波領域における交流抵抗の評価]
実施例1,2及び比較例1で作製した絶縁電線を用い、アジレント・テクノロジー社製のHP4284AプレシジョンLCRメータにて高周波領域における交流抵抗を評価した。その評価に際しては、絶縁電線を外径87mmのボビンに5ターン巻きつけてコイル形状にして測定した。結果を表1に示す。表1の結果より、実施例1,2の絶縁電線10は、比較例1と同等の結果が得られ、高周波領域における交流抵抗の上昇が抑えられる絶縁電線として使用できることを確認した。
Figure 0005805336
[はんだ付け評価]
実施例1,2及び比較例1で作製した撚り線4及びリッツ線を用いてはんだ付けを評価した。はんだ付けは、撚り線4及びリッツ線の片側の端部から10mmの長さを300℃、350℃、370℃、400℃、430℃に温度設定した溶融はんだ(はんだ種類:千住金属工業株式会社製、M31)にはんだが付くまでの時間接触させ、その時間を測定した。接触は、溶融はんだ槽に昇降させる移動浸漬法で行った。その結果を表2に示す。表2の結果より、実施例1,2の撚り線4は、比較例1のリッツ線よりも短時間ではんだ付けすることができた。また、実施例1,2の撚り線4は、エナメル層がないため、微量の焼けカスしか発生しないという利点があり、次の接続工程で問題を起こさない。
Figure 0005805336
[細径化]
実施例1,2の絶縁電線10は、直径約0.70mmであり、比較例1の絶縁電線22は、直径約0.73mmであった。実施例1,2の絶縁電線10は、高周波領域における交流抵抗が同程度の比較例1の絶縁電線22に比べ、4%の細径化を図ることができている。
1 素線
2 化合物皮膜
3 化合物皮膜被覆素線
4 撚り線
5 絶縁層
10 絶縁電線
20 電子部品
21 ボビン
22 外径の大きい従来の絶縁電線

Claims (7)

  1. 密接して巻き線し、コイルとするための絶縁電線であって、
    素線の構成金属と、前記金属と錯体を形成する化合物とから形成される化合物皮膜で被覆された化合物皮膜被覆素線と、該化合物皮膜被覆素線を複数本撚り合わせた撚り線の外周に被覆された絶縁層とを有することを特徴とする絶縁電線。
  2. 前記化合物皮膜が、前記構成金属と錯体を形成するイミダゾール化合物である、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記化合物皮膜が、はんだ付け温度で分解する材料で構成されている、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. 前記絶縁層が、絶縁性塗布皮膜、絶縁性押出樹脂又は絶縁性テープ、及びそれらの組み合わせにより形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁電線。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁電線を用いて形成してなることを特徴とするコイル
  6. 電源トランス用である、請求項5に記載のコイル。
  7. 密接して巻き線し、コイルとするための絶縁電線の製造方法であって、
    素線の構成金属と錯体を形成する化合物の溶液と、前記素線とを接触、乾燥させ、前記金属と前記化合物とから形成される化合物皮膜で化合物皮膜被覆素線を形成し、
    前記化合物皮膜被覆素線を複数本撚り合わせた撚り線を作製し、
    前記撚り線の外周に絶縁層を形成する、ことを特徴とする絶縁電線の製造方法
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