JP6355304B2 - はんだ付け可能な絶縁電線及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明に係る絶縁電線10は、図1に示すように、はんだ付け可能な導電性の芯材1と、芯材1上に設けられた熱硬化性樹脂層2と、熱硬化性樹脂層2上に設けられた1層又は2層以上の熱可塑性樹脂層(例えば3a,3b,3c)で構成された絶縁層3とを有している。そして、熱硬化性樹脂層2が、熱天秤を用いて測定した加熱減量曲線において、310℃〜460℃の温度領域内での質量減少領域(第2の質量減少領域又は高温域質量減少領域ともいう。)を有し、その質量減少領域が、少なくとも50℃の温度幅内で、100℃幅あたり40質量%以下の割合で質量が減少することを特徴とする。
芯材1は、絶縁電線10の中心導体であり、はんだ付け可能でかつ導電性を有している。この芯材1は、はんだ付け可能な導体であればよく、通常、銅又は銅合金を好ましく用いることができるが、錫めっき等のめっきを施した銅又は銅合金であってもよい。また、銅や銅合金以外のはんだ付け可能な金属又は合金であってもよい。また、導体自体がはんだ付け性を有しない場合は、導体上にはんだ付け可能な金属がめっき等で設けられていればよい。めっき等で設けられるはんだ付け可能な金属としては、錫、はんだ、ニッケル、金、銀、銅、パラジウム、又はそれらの1種若しくは2種以上の合金を挙げることができる。
熱硬化性樹脂層2は、図1に示すように、芯材1と絶縁層3(1層又は2層以上の熱可塑性樹脂層)との間に設けられている。この熱硬化性樹脂層2は、図2及び図3に示すように、熱天秤を用いて測定した加熱減量曲線において、310℃〜460℃の温度領域内での第2の質量減少領域(高温域質量減少領域)を有し、その第2の質量減少領域は、少なくとも50℃の温度幅内で、100℃幅あたり40質量%以下の割合で質量が減少する領域である。
熱硬化性樹脂層2の作用について、図2〜図4を参照して詳しく説明する。図2は、熱硬化性樹脂層2の加熱減量曲線を熱天秤を用いて測定したグラフである。このグラフは、A〜Eの5つの領域を有している。
絶縁層3は、熱硬化性樹脂層2上に設けられた絶縁性の層であり、図1、図5及び図6に示すように、1層又は2層以上の熱可塑性樹脂層で構成されている。こうした絶縁層3を有する絶縁電線10は、高い絶縁性を実現し、例えばIEC60950等の安全規格を満たす絶縁電線として認証されており、絶縁トランスやIHヒータ等のコイル用線材として用いることができる。絶縁電線10をトランス用のコイルに用いた場合には、この絶縁層3により、一次側と二次側を確実に絶縁することができる。
上記した実施形態の絶縁電線10は、図5及び図6に示すように、芯材1上に熱硬化性樹脂層2が形成され、その熱硬化性樹脂層2上に三層の熱可塑性樹脂層3a,3b,3cが順次設けられている。しかし、本発明に係る絶縁電線10は、図1に示すように、芯材1と絶縁層3との間に熱硬化性樹脂層2が設けられていればよいので、結果として図1に示す形態と同じ形態になれば、絶縁層3の芯材側の表面に設けられたもの(例えばテープ状の熱可塑性樹脂層3aの芯材側の面に熱硬化性樹脂層2を設けたもの)を芯材1に巻き付けて形成したものであってもよい。
芯材1として直径0.29mmの銅線を準備した。その芯材1上にポリウレタン樹脂塗料(商品名:TPU F2−NC、東特塗料株式会社製)を塗布して厚さ5μmの熱硬化性樹脂層2を形成した。さらにその熱硬化性樹脂層2上に、熱可塑性樹脂テープ(ポリフェニレンサルファイド:PPS、軟化点(融点):282℃)を第1層目の熱可塑性樹脂層3aとして1/2ラップで巻き、次いで同じ熱可塑性樹脂テープを第2層目及び第3層目の熱可塑性樹脂層3b,3cとして順次1/2ラップで巻いた。こうして実施例1の絶縁電線10Aを作製した。この絶縁電線10Aの外径は0.545mmであり、熱硬化性樹脂層2であるポリウレタン層の厚さaと絶縁層3の厚さbとの比[a:b]は1:24.5であった。
直径0.3mmの銅線上に厚さ5μmのポリウレタン層が形成された融着層付きポリウレタン銅線(商品名:LL−UEW、コーセル株式会社製)を準備した。そのポリウレタン銅線上に、実施例1と同じ熱可塑性樹脂テープ(ポリフェニレンサルファイド:PPS、軟化点(融点):282℃)を第1層目の熱可塑性樹脂層3aとして1/2ラップで巻き、次いで同じ熱可塑性樹脂テープを第2層目及び第3層目の熱可塑性樹脂層3b,3cとして順次1/2ラップで巻いた。こうして実施例2の絶縁電線10Aを作製した。この絶縁電線の外径は0.535mmであり、熱硬化性樹脂層2であるポリウレタン層の厚さaと絶縁層3の厚さbとの比[a:b]は1:22.5であった。
実施例1において、ポリウレタン樹脂塗料の代わりに半田可能ポリエステル樹脂塗料(商品名:HG−4300E、日立化成工業株式会社製)で塗布して厚さ5μmの熱硬化性樹脂層2を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例3の絶縁電線10Aを作製した。この絶縁電線10Aの外径は0.545mmであり、熱硬化性樹脂層2であるポリエステル樹脂層の厚さaと絶縁層3の厚さbとの比[a:b]は1:24.5でった。
実施例1において、ポリウレタン樹脂塗料の代わりに半田可能ポリエステルイミド樹脂塗料(商品名:TSF500、東特塗料株式会社製)で塗布して厚さ5μmの熱硬化性樹脂層2を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例4の絶縁電線10Aを作製した。この絶縁電線10Aの外径は0.545mmであり、熱硬化性樹脂層2であるポリエステルイミド樹脂層の厚さaと絶縁層3の厚さbとの比[a:b]は1:24.5であった。
実施例1において、PPS製の熱可塑性樹脂テープの代わりにエチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)製の熱可塑性樹脂テープを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例5の絶縁電線10Aを作製した。この絶縁電線10Aの外径は0.545mmであり、熱硬化性樹脂層2であるポリエステル樹脂層の厚さaと絶縁層3の厚さbとの比[a:b]は1:24.5であった。
実施例1において、芯材1上に熱硬化性樹脂層2を形成した後、熱可塑性樹脂テープの代わりに第1層目の熱可塑性樹脂層3aを押出し成形し、次いで、その上に第2層目の熱可塑性樹脂層3bを押出し成形し、次いで、その上に第3層目の熱可塑性樹脂層3cを押出し成形した。押出樹脂は、(エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE))を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例6の絶縁電線10Bを作製した。この絶縁電線10Bの外径は0.550mmであり、熱硬化性樹脂層2であるポリウレタン樹脂層の厚さaと絶縁層3の厚さbとの比[a:b]は1:25であった。
芯材1として直径0.29mmの銅線を準備した。また、熱可塑性樹脂テープ(ポリフェニレンサルファイド:PPS、軟化点(融点):282℃)を第1層目の熱可塑性樹脂層3aとして準備した。その熱可塑性樹脂テープの片面に、ポリウレタン塗料(商品名:TPU F2−NC、東特塗料株式会社製)を塗布して厚さ5μmの熱硬化性樹脂層2を形成した。その熱可塑性樹脂テープ3aを、熱硬化性樹脂層2が芯材1側になるようにして芯材上に1/2ラップで巻いた。次いで、熱硬化性樹脂層2を設けていない上記熱可塑性樹脂テープを第2層目及び第3層目の熱可塑性樹脂層3b,3cとして順次1/2ラップで巻いた。こうして実施例7の絶縁電線10Bを作製した。この絶縁電線10Bの外径は0.545mmであり、熱硬化性樹脂層2であるポリウレタン層の厚さaと絶縁層3の厚さbとの比[a:b]は1:24.5であった。
実施例1において、熱硬化性樹脂層2を形成せずに銅線上に直接熱可塑性樹脂テープを巻いた。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1の絶縁電線を作製した。この絶縁電線の外径は0.535mmであった。
実施例1において、ポリウレタン樹脂塗料の代わりにポリエステル樹脂塗料(商品名:LITON 3300、東特塗料株式会社製)を塗布して厚さ5μmの熱硬化性樹脂層を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例2の絶縁電線を作製した。この絶縁電線の外径は0.545mmであり、熱硬化性樹脂層2の厚さaと絶縁層3の厚さbとの比[a:b]は1:24.5であった。
実施例5において、ポリウレタン樹脂塗料(ポリウレタンの分子量50000、商品名:TPU F2−NC、東特塗料株式会社製)で形成した厚さ5μmの熱硬化性樹脂層2の代わりに、ポリエステル樹脂塗料(商品名:LITON3300、東特塗料株式会社製)を塗布して厚さ5μmの熱硬化性樹脂層2を形成した。それ以外は、実施例5と同様にして、比較例3の絶縁電線を作製した。この絶縁電線の外径は0.545mmであり、熱硬化性樹脂層2であるポリエステル樹脂層の厚さaと絶縁層3の厚さbとの比[a:b]は1:24.5であった。
実施例1において、ポリウレタン樹脂塗料の代わりにポリアミドイミド樹脂塗料(商品名:Neoheat AI−00C、東特塗料株式会社製)を塗布して厚さ5μmの熱硬化性樹脂層を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例4の絶縁電線を作製した。この絶縁電線の外径は0.545mmであり、熱硬化性樹脂層2の厚さaと絶縁層3の厚さbとの比[a:b]は1:24.5であった。
加熱減量曲線は、TG−DTA装置(型名:TG/DTA7300、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて測定した。図7は、実施例1の絶縁電線を構成する熱硬化性樹脂層2を測定した結果であり、図8は、実施例3の絶縁電線を構成する熱硬化性樹脂層2を測定した結果であり、図9は、実施例4の絶縁電線を構成する熱硬化性樹脂層2を測定した結果であり、図10は、比較例3の絶縁電線を構成する熱硬化性樹脂層2を測定した結果であり、図11は、比較例4の絶縁電線を構成する熱硬化性樹脂層2を測定した結果である。
はんだ付け評価は、実施例1〜7及び比較例1〜4の絶縁電線を用いて行った。はんだ付けは、絶縁電線10の片側の端部から16mmの長さを400℃の溶融はんだ(はんだ種類:千住金属工業株式会社製、M31)に所定の時間接触させてはんだ付けした。接触は、溶融はんだ槽に昇降させる移動浸漬法で行った。はんだ付け後の絶縁電線のはんだ付け部の外観(外観)を評価した。はんだ付け部分が、ムラがなく滑らかにはんだ付けされていた場合を「ランク4」とし、少しムラがあるが滑らかにはんだ付けされていた場合を「ランク3」とし、少しムラがありやや滑らかではないが実使用可能な程度にはんだ付けされていた場合を「ランク2」とし、ムラが顕著で滑らかではなく実使用できないもの又ははんだ付けできなかったものを「ランク1」として評価した。結果を表1に示した。
表1に示すように、実施例1,2の絶縁電線は、400℃の溶融はんだへの浸漬時間が1秒〜3秒の短時間であっても、外観が優れ、溶融はんだに接触させた部分(端部から16mm)に良好にはんだ付けすることができた。また、実施例3〜5の絶縁電線も、浸漬時間3秒ではんだ付けした結果、外観が優れ、溶融はんだに接触させた部分(端部から16mm)に良好にはんだ付けすることができた。一方、比較例1〜4の絶縁電線は、十分なはんだ付けができなかった。
2 熱硬化性樹脂層
3 絶縁層
3a 第1の熱可塑性樹脂層
3b 第2の熱可塑性樹脂層
3c 第3の熱可塑性樹脂層
10 絶縁電線
Claims (5)
- はんだ付け可能な導電性の芯材と、前記芯材上に設けられた熱硬化性樹脂層及び前記熱硬化性樹脂層上に設けられた1層又は2層以上の熱可塑性樹脂層からなる樹脂層とで構成され、はんだ付けする端末部の前記樹脂層を剥離しないでそのまま溶融はんだに接触させてはんだ付けする絶縁電線であって、
前記熱硬化性樹脂層がポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂からなり、該熱硬化性樹脂層から採取した測定試料を熱天秤を用いて測定した加熱減量曲線において、A〜Eの5つの領域を有し、該5つの領域は、実質的な減量が生じない初期段階のA領域と、C領域の質量減少領域とは重ならない230℃以上400℃未満の温度領域内で質量減少が生じるB領域と、310℃〜460℃の温度領域内で、少なくとも50℃の温度幅内で一定の傾斜角の直線又はほぼ直線を示して100℃幅あたり10〜15質量%の割合で質量が減少するC領域と、前記熱硬化性樹脂が炭化物としてガス化又は固体化する減量領域であるD領域と、主要成分が既に減量した後のE領域とで構成され、
前記熱可塑性樹脂層がポリフェニルサルファイド、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、フッ素化樹脂共重合体及びポリエーテルエーテルケトンから選ばれる耐熱性の熱可塑性樹脂であり、
前記熱可塑性樹脂層がテープ巻き型又は押出し型である、ことを特徴とする絶縁電線。 - 前記熱硬化性樹脂層の厚さが1μm以上、10μm以下であって、前記熱硬化性樹脂層の厚さaと、前記熱可塑性樹脂層の厚さbとの比[a:b]が1:50以上、1:3以下である、請求項1に記載の絶縁電線。
- 前記熱硬化性樹脂層が、前記芯材上に熱硬化性樹脂層用組成物を塗布して形成された層、又は、前記熱可塑性樹脂層の芯材側の面に熱硬化性樹脂層用組成物を塗布して形成された層である、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
- はんだ付け可能な導電性の芯材と、前記芯材上に設けられた熱硬化性樹脂層及び前記熱硬化性樹脂層上に設けられた1層又は2層以上の熱可塑性樹脂層からなる樹脂層とで構成され、はんだ付けする端末部の前記樹脂層を剥離しないでそのまま溶融はんだに接触させてはんだ付けする絶縁電線の製造方法であって、
前記芯材上に熱硬化性樹脂層用組成物を塗布して前記熱硬化性樹脂層を設ける工程と、前記熱硬化性樹脂層上に1層又は2層以上の前記熱可塑性樹脂層を設ける工程とを有し、
前記熱硬化性樹脂層がポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂からなり、該熱硬化性樹脂層から採取した測定試料を熱天秤を用いて測定した加熱減量曲線において、A〜Eの5つの領域を有し、該5つの領域は、実質的な減量が生じない初期段階のA領域と、C領域の質量減少領域とは重ならない230℃以上400℃未満の温度領域内で質量減少が生じるB領域と、310℃〜460℃の温度領域内で、少なくとも50℃の温度幅内で一定の傾斜角の直線又はほぼ直線を示して100℃幅あたり10〜15質量%の割合で質量が減少するC領域と、前記熱硬化性樹脂が炭化物としてガス化又は固体化する減量領域であるD領域と、主要成分が既に減量した後のE領域とで構成され、
前記熱可塑性樹脂層がポリフェニルサルファイド、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、フッ素化樹脂共重合体及びポリエーテルエーテルケトンから選ばれる耐熱性の熱可塑性樹脂であり、
前記熱可塑性樹脂層がテープ巻き型又は押出し型である、ことを特徴とする絶縁電線の製造方法。 - はんだ付け可能な導電性の芯材と、前記芯材上に設けられた熱硬化性樹脂層及び前記熱硬化性樹脂層上に設けられた1層又は2層以上の熱可塑性樹脂層からなるテープ巻き型の樹脂層とで構成され、はんだ付けする端末部の前記樹脂層を剥離しないでそのまま溶融はんだに接触させてはんだ付けする絶縁電線の製造方法であって、
前記芯材を準備する工程と、
前記芯材上に設ける1層又は2層以上の熱可塑性樹脂層のうち、少なくとも前記芯材側の熱可塑性樹脂層の表面に熱硬化性樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記熱硬化性樹脂層が設けられた熱可塑性樹脂層のうち、前記熱硬化性樹脂層が設けられた側を前記芯材上に巻き付ける樹脂層巻き付け工程と、
巻き付けた前記熱可塑性樹脂層上に、必要に応じて2層目以降の熱可塑性樹脂層を設ける工程とを有し、
前記熱硬化性樹脂層がポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂からなり、該熱硬化性樹脂層から採取した測定試料を熱天秤を用いて測定した加熱減量曲線において、A〜Eの5つの領域を有し、該5つの領域は、実質的な減量が生じない初期段階のA領域と、C領域の質量減少領域とは重ならない230℃以上400℃未満の温度領域内で質量減少が生じるB領域と、310℃〜460℃の温度領域内で、少なくとも50℃の温度幅内で一定の傾斜角の直線又はほぼ直線を示して100℃幅あたり10〜15質量%の割合で質量が減少するC領域と、前記熱硬化性樹脂が炭化物としてガス化又は固体化する減量領域であるD領域と、主要成分が既に減量した後のE領域とで構成され、
前記熱可塑性樹脂層がポリフェニルサルファイド、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、フッ素化樹脂共重合体及びポリエーテルエーテルケトンから選ばれる耐熱性の熱可塑性樹脂である、ことを特徴とする絶縁電線の製造方法。
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