JP4762474B2 - 多層絶縁電線及びそれを用いた変圧器 - Google Patents

多層絶縁電線及びそれを用いた変圧器 Download PDF

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    • H01F27/32Insulating of coils, windings, or parts thereof
    • H01F27/323Insulation between winding turns, between winding layers

Description

技術分野
本発明は、絶縁層が2層以上の押出被覆層からなる多層絶縁電線とそれを用いた変圧器に関し、更に詳しくは、コイル加工時に他の部材に悪影響を及ぼしにくい、低温度・短時間においても良好な半田付け性を有し、かつ、耐熱性、高周波特性、耐巻線加工性及び耐溶剤性に優れ、電気・電子機器などに組み込む変圧器の巻線やリード線として有用な多層絶縁電線とそれを用いた変圧器に関する。

背景技術
変圧器の構造は、IEC規格(International Electrotechnical Communication Standard)Pub.60950などによって規定されている。即ち、これらの規格では、巻線において一次巻線と二次巻線の間には少なくとも3層の絶縁層(導体を被覆するエナメル皮膜は絶縁層と認定しない)が形成されていること又は絶縁層の厚みは0.4mm以上であること、一次巻線と二次巻線の沿面距離は、印加電圧によっても異なるが、5mm以上であること、また一次側と二次側に3000Vを印加した時に1分以上耐えること、などが規定されている。
このような規格のもとで、従来、主流の座を占めていた変圧器としては、図2の断面図に例示するような構造が採用されていた。フェライトコア1上のボビン2の周面両側端に沿面距離を確保するための絶縁バリヤ3が配置された状態でエナメル被覆された一次巻線4が巻回されたのち、この一次巻線4の上に、絶縁テープ5を少なくとも3層巻回し更にこの絶縁テープの上に沿面距離を確保するための絶縁バリヤ3を配置したのち、同じくエナメル被覆された二次巻線6が巻回された構造である。
しかし、近年、図2に示した断面構造のトランスに代わり、図1で示したように、絶縁バリア3や絶縁テープ層5を含まない構造の変圧器が急速に市場に浸透しはじめている。この変圧器は図2の構造の変圧器に比べて、全体を小型化することができ、また、絶縁テープの巻回し作業を省略できるなどの利点を備えている。
図1で示した変圧器を製造する場合、用いる1次巻線4及び2次巻線6では、いずれが一方もしくは両方の導体4a(6a)の外周に少なくとも3層の絶縁層4b(6b),4c(6c),4d(6d)が形成されていることが前記したIEC規格との関係で必要になる。
このような巻線として導体の外周に絶縁テープを巻回して1層目の絶縁層を形成し、更にその上に、絶縁テープを巻回して2層目の絶縁層、3層目の絶縁層を順次形成して互いに層間剥離する3層構造の絶縁層を形成するものが知られている。また、ポリウレタンによるエナメル被覆がなされた導体の外周にフッ素樹脂を順次押出被覆して、全体として3層構造の押出し被覆層を絶縁層とする巻線が知られている(実開平3−56112号公報)。
しかしながら、前記の絶縁テープ巻の場合は、巻回する作業が不可避である為、生産性は著しく低く、その為電線コストは非常に高いものになっている。
また、前記のフッ素樹脂押出しの場合は、絶縁層はフッ素系樹脂で形成されているので、耐熱性及び高周波特性は良好であるという利点を備えているが、樹脂のコストが高く、さらに高剪断速度で引っ張ると外観状態が悪化するという性質があるために製造スピードを上げることも困難で、絶縁テープ巻と同様に電線コストが高いものになってしまう。さらには、この絶縁層の場合は半田浴に浸漬しても除去することができないため、例えば絶縁電線を端子に接続するときに行う端末加工に際しては、端末の絶縁層を信頼性の低い機械的な手段で剥離しその上さらに半田付け又は圧着接続しなければならないという問題がある。
一方、ポリエチレンテレフタレートをベース樹脂とし、これにエチレン−メタアクリル酸共重合体のカルボキシル基の一部を金属塩にしたアイオノマーを混合した混和物で複数の押出し絶縁層を形成し、絶縁層の最上層として脂肪族ナイロンを被覆した多層絶縁電線が実用化されており、これは電線コスト(材料コストと生産性)、半田付け性(絶縁電線と端子が直接接続できること)、及びコイル加工性(絶縁電線をボビンに巻回する時に絶縁電線相互の擦れ、ガイドノズルとの擦れなどにより絶縁層が破れてコイルの電気特性が損われてしまうようなことがないこと)が優れている(特開平6−223634号公報)。
しかし、近年、これら変圧器に使用されるボビンには耐熱性の低い樹脂材料がリサイクルの点から使われはじめており、従来の多層絶縁電線をこのような変圧器に用いた場合、コイル加工時に必要な温度・時間では他の部材に悪影響を及ぼすという問題が生じることがあり、低温度・短時間で半田付け性を有する多層絶縁電線のニーズが増大してきている。
したがって本発明は、コイル加工時に他の部材に悪影響を及ぼしにくい、低温度・短時間においても良好な半田付け性を有し、かつ、耐熱性、高周波特性、耐巻線加工性及び耐溶剤性に優れる多層絶縁電線を提供することを目的とする。さらに本発明は、このような半田付け性、耐熱性、耐巻線加工性及び耐溶剤性に優れた絶縁電線を巻回して比較的低温度、短時間で製造しうる変圧器を提供することを目的とする。
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面とともに考慮することにより、下記の記載からより明らかになるであろう。

発明の開示
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、導体と前記導体を被覆する2層以上の半田付け可能な押出絶縁層を有してなる多層絶縁電線において、導体側から1層目の絶縁層に熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂を使用すること、および、最外絶縁層に熱可塑性ポリアミド樹脂を使用することにより、低温度・短時間で半田付けが可能であり、かつ、耐巻線加工性及び耐溶剤性に優れた多層絶縁電線およびこれを用いて比較的低温度、短時間で製造しうる変圧器が得られることを見いだした。
本発明はこの知見に基づくものである。
すなわち本発明は、
(1) 導体と前記導体を被覆する2層以上の押出絶縁層とを有し、前記絶縁層が半田浴へ浸漬することで除去できる多層絶縁電線であって、導体側から1層目の絶縁層が熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂からなり、最外絶縁層が熱可塑性ポリアミド樹脂である
ことを特徴とする多層絶縁電線、
(2)前記熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂が(A)または(B)であることを特徴とする(1)項に記載の多層絶縁電線:
(A)芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、
脂肪族ポリエーテル、芳香族ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとする
熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂。
(B)芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、
炭素数2〜4の脂肪族α,ωージオールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを
主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、
イソフタル酸および/またはフタル酸のような折れ曲がり構造を有する芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、
炭素数6〜12の脂肪族α,ωージオールを主たるグリコール成分とするポリエステルをソフトセグメントとする
熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂、
(3)前記熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂がポリチレンテレフタレートエラストマーであることを特徴とする(1)項に記載の多層絶縁電線、
(4)前記熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂のハードセグメントが40重量%以上であることを特徴とする(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の多層絶縁電線、及び
(5)(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の多層絶縁電線を巻線又はリード線として用いことを特徴とする変圧器
を提供するものである。

発明を実施するための最良の形態
本発明においては、導体と前記導体を被覆する2層以上の半田付け可能な押出絶縁層とを有してなる多層絶縁電線であって、導体側から1層目の絶縁層に熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂を使用し、最外絶縁層に熱可型性ポリアミド樹脂を用いることにより、低温度・短時間にて半田付けができ、しかも耐熱性(A種)も実用上問題のないレベルを保持することが可能になる。
まず、前記熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂としては、下記(A)、(B)を挙げることができる。
(A)芳香族ポリエステルをハード成分(セグメント)とし、脂肪族ポリエーテル、芳香族ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルをソフト成分(セグメント)とする熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂。芳香族ポリエステルとしてはポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートを、脂肪族ポリエーテルとしてはポリテトラメチレンエーテルグリコールを、芳香族ポリエーテルとしてはポリテトラメチレンエーテルテレフタレートを、脂肪族ポリエステルとしてはポリラクトンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(B)また、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分(その酸が酸成分の好ましくは70モル%以上であることを意味する。以下同様。)とし、炭素数2〜4の脂肪族α,ω−ジオールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを主たるグリコール成分(そのジオールがグリコール成分の好ましくは70モル%以上であることを意味する。以下同様。)とする芳香族ポリエステルをハード成分とし、イソフタル酸および/またはフタル酸のような折れ曲がり構造を有する芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、炭素数6〜12の脂肪族α,ω−ジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルをソフト成分とする熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂。
ここで耐熱性(熱劣化・軟化温度)を考慮すると(B)の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂の方が好ましい。またさらにはハード成分比率として40重量%以上の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂が好ましい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート系エラストマー樹脂(PETエラストマー)、ポリブチレンテレフタレート系エラストマー樹脂(PBTエラストマー)等を挙げることができ、PBTエラストマー樹脂としては、市販のペルプレン(東洋紡社製、商品名)やヌーベラン(帝人社製、商品名)等を使用できる。
ここで使用できるポリエステル系エラストマー樹脂としては、特に熱軟化特性や耐熱性の関係で、融点が200℃以上であるポリエステルを変性したものが好ましく、さらには融点が220℃以上であるポリエステルを変性したものが特に好ましい。この場合はエラストマー化されていないポリエステル樹脂において見られる、結晶化の進行による電気特性の低下やクラックの発生を著しく抑制することができる。
また、得られる電線の規格、特性は問題にはならないが、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂として曲げ弾性率が100MPa以下のものを用いた電線はつぶれやすいので、高張力コイル加工巻きの際には注意が必要である。
前記熱可塑性ポリアミド樹脂については、ジアミンとジカルボン酸等を原料として公知の方法により製造されるものが使用できる。市販の樹脂として、アミラン(東レ社製、商品名)、ザイテル(デュポン社製、商品名)、マラニール(ユニチカ社製、商品名)等のナイロン6,6やユニチカナイロン46(ユニチカ社製、商品名)等のナイロン4,6、HTナイロン(東レ社製、商品名)等のナイロン6T/6,6を挙げることができる。
上記ポリアミドはポリエステルエラストマーとは違い、熱劣化により分解反応だけでなく同時に架橋反応も生じることから、皮膜の残存性が良く、保護層としての機能を発揮し、内層のポリエステルエラストマーの耐熱性の低下を抑制するという働きがある。本発明においては、上記ポリアミド樹脂が多層絶縁電線の最外層を形成する。
次に多層絶縁電線の表面処理剤として、公知の固形パラフィン、ワックス(脂肪酸、蝋)等を好ましく使用できるがその理由は、エナメル巻線に使用される冷凍機用オイルでは滑り性が悪く、コイル加工時に削れ粉が発生しやすい為であり、固形パラフィンやワックス等を公知の方法で塗布することにより粉発生等の問題が著しく向上するためである。
本発明に用いられる導体としては、金属裸線(単線)、または金属裸線にエナメル被覆層や薄肉絶縁層を設けた絶縁電線、あるいは金属裸線の複数本またはエナメル絶縁電線もしくは薄肉絶縁電線の複数本を撚り合わせた多心撚り線を用いることができる。これらの多心撚り線(いわゆるリッツ線)の撚り線数は、高周波用途により随意選択できる。また、線心(素線)の数が多い場合(例えば19−、37−素線)、撚り線ではなくてもよい。撚り線ではない場合、例えば複数の素線を略平行に単に束ねるだけでもよいし、または束ねたものを非常に大きなピッチで撚っていてもよい。いずれの場合も断面が略円形となるようにすることが好ましい。ただし、薄肉絶縁材料はポリウレタン樹脂、イミド変性ポリウレタン樹脂等のそれ自体半田付け性が良好な樹脂などである必要があり、例えば日立化成社製商品名WD−438、東特塗料社製商品名TPU−F1等が使用できる。さらには導体に半田又は錫メッキすることも半田付け特性を改善する手段となる。
本発明の好ましい実施態様をあげると、多層絶縁電線は、3層からなるもので押出被覆絶縁層の全体の厚みは3層では60〜180μmの範囲内にあるようにすることが好ましい。このことは、絶縁層の全体の厚みが薄すぎると得られた耐熱多層絶縁電線の電気特性の低下が大きく、実用に不向きな場合があり、厚すぎると半田付け性の悪化が著しくなる場合があることによる。さらに好ましい範囲は70〜150μmである。また上記の3層の各層の厚みは20〜60μmに管理することが好ましい。本発明において押出絶縁層を3層以上とする場合に、前記導体側から1層目の絶縁層と最外絶縁層以外の中間層としては特に制限はないが、前記導体側から1層目の絶縁層と同様の熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂からなる層とすることが好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂からなる層を2層以上有する場合、それらの樹脂の種類は同一でも異なっていてもよいが、同一種の樹脂を用いることが好ましい。
本発明の多層絶縁電線を使用した変圧器は、IEC60950規格を満足するのはもちろんのこと、絶縁テープ巻していないので小型化が可能でしかも高周波特性が高く、低温度・短時間で端末の半田付けができるので、高信頼性・厳しい設計に対しても対応できる。
本発明の多層絶縁電線は、前記図1及び2で示したものを含むどのようなタイプの変圧器にも巻線として用いることができる。このような変圧器は1次巻線と2次巻線をコア上に層状に巻くのが普通であるが、1次巻線と2次巻線を交互に巻いた変圧器でもよい。また本発明の変圧器は、上記の多層絶縁電線を1次巻線及び2次巻線の両方に使用してもよいが、いずれか片方の使用でもよい。また、本発明の多層絶縁電線が2層からなる場合は、(たとえば1次巻線と2次巻線がいずれも2層絶縁電線、あるいは片方にエナメル線を用いて、もう片方に2層絶縁電線を使用する場合)、両巻線間に絶縁バリア層を少なくとも1層介在させ使用することができる。
本発明の多層絶縁電線は、導体側から1層目の絶縁層に熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂を使用し、最外絶縁層に熱可塑性ポリアミド樹脂を用いることにより、低温度・短時間においても良好に半田付けができ、しかもA種耐熱性に合格するという優れた効果を奏する。
またこの多層絶縁電線を用いた本発明の変圧器は、ボビン等の部材に耐熱性の低い樹脂材料を使用した場合でも、これらの部材に悪影響を及ばさずに低温度・短時間で製造しうるという優れた効果を奏する。

実施例
次に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜4及び比較例1〜4
導体として線径0.4mmの軟銅線を用意した。表1に示した各層の押出被覆用樹脂の配合(組成は重量部を示す)及び厚さで、導体上に第1層、第2層、第3層の順で順次押出し被覆して多層絶縁電線を製造した。
得られた多層絶縁電線について、下記の試験方法で各特性を測定、評価した。なお、各実施例及び比較例で用いた表1に示した樹脂は以下の通りである。
(ポリエステルエラストマー樹脂)
PBTエラストマー1:
ヌーベラン P4128AN(帝人社製、商品名)、融点222℃、ソフトゼグメント60重量%程度(曲げ弾性率 170MPa)
PBTエラストマー2:
ヌーベラン P4150AN(帝人社製、商品名)、融点225℃、ソフトゼグメント40重量%程度(曲げ弾性率 530MPa)
PBTエラストマー3:
ヌーベラン P4110AN(帝人社製、商品名)、融点210℃、ソフトゼグメント70重量%程度(曲げ弾性率 35MPa)
(ポリアミド樹脂)
ナイロン6,6:アミラン CM3001N(東レ社製、商品名)
ナイロン4,6:ナイロン4,6 F−5001(ユニチカ社製、商品名)
(その他の樹脂)
PET:TR8550(帝人社製、商品名)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート)
PBT:CN7000(帝人社製、商品名)、ポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート)
アイオノマー:ハイミラン 1855(三井ポリケミカル社製、商品名)、エチレン−メタクリル酸共重合体(アイオノマー)
FEP:テフロンFEP(デュポン社製、商品名)、フッ素樹脂
Figure 0004762474
Figure 0004762474
(試験方法)
(1)はんだ付け性:
電線の末端約40mmの部分を温度400℃の溶融はんだに浸漬し、浸漬した30mmの部分にはんだが付着するまでの時間(秒)を測定した。この時間が短い程、はんだ付け性に優れることを表す。
数値はn=3の平均値。
なお、400℃3秒と400℃1.5秒の差は本分野においては大きな意味を持つ。ちなみに400℃1.5秒=380〜390℃3秒であり半田付け温度10〜20℃程度の低下要素になる。
(2)絶縁破壊電圧:
JIS C 3003−1984 11.(2)の2個より法で測定した。
(3)耐熱性:
IEC規格60950の2.9.4.4項の付属書U(電線)と1.5.3項の付属書C(トランス)に準拠した下記の試験方法で評価した。条件はA種(105℃)クラスである。
直径6mmのマンドレルに多層絶縁電線を荷重118MPa(12kg/mm)をかけながら10ターン巻付け、200℃1時間加熱、更に175℃71時間加熱し、さらに25℃95%RHの雰囲気に48時間保持し、その後すぐに3000V 1分間電圧を印加し短絡しなければA種合格と判定した(判定はn=5にて評価し、n=1でもNGになれば不合格とした。)。
(4)高周波V−t特性:
JIS C 3003−1984 11.(2)の2個より法で試験片を作成し、印加電圧3.5kV、周波数100kHz、パルス長10μsで短絡するまでの寿命(時間)を測定した。
(5)コイル加工性(静摩擦係数):
図3に示した装置で静摩擦係数を測定した。7は多層絶縁電線を示し、8は荷重板でありその質量をW(g)とする。9は滑車、10は荷重を示す。荷重板8が動き始めた時の荷重10の質量をF(g)とすると、求める静摩擦係数=F/Wである。
この数値が小さい程、表面のすべり性が良く、コイル加工性(耐巻線加工性)も良い。
以上の結果から以下のことがわかる。
実施例1〜3はPBTエラストマーを1層目と2層目に使用し、ナイロン6,6またはナイロン4,6を3層目に使用しているので、特に半田付け時間が短く、他の特性も実用上、良好なレベルにあることがわかった。なお、電線の規格、特性上で問題はないが、実施例3は、熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂として曲げ弾性率が低いPBTエラストマー*3を用いたので、2kgf/mm以上の張力巻きでは線の変形が比較的大きかった。
また実施例4は全膜厚が150μmと厚めであることから、半田付け時間がやや長くなっているが、他の特性は実用上、良好なレベルにあり、問題なく使用できることがわかった。
なお、これらの各実施例、比較例で得られた多層絶縁電線は耐溶剤性に優れていた。
比較例1は3層目にナイロン6,6を使用しているが、1層目にはエラストマー化しないポリエステル樹脂を使用しており、各実施例に比較して半田付け時間が著しく長くなった。
比較例2は全層がエラストマー化していないPBTを使用したものであり、結晶化によるクラックの発生により、A種耐熱性に合格せず、半田付け性は3秒と著しく長くなった。
比較例3は全層、PBTエラストマーを使用しているので半田付け性は良好であるが、A種耐熱性に合格しなかった。
比較例4はフッ素樹脂を使用しているため、半田付けはできなかった。

産業上の利用可能性
本発明の多層絶縁電線は、導体側から1層目の絶縁層に熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂を使用し、最外絶縁層に熱可塑性ポリアミド樹脂を用いることにより、低温度・短時間においても良好に半田付けができ、しかもA種耐熱性に合格するため、電気・電子機器などに組み込む変圧器の巻線やリード線として好適なものである。
またこの多層絶縁電線を用いた本発明の変圧器は、ボビン等の部材に耐熱性の低い樹脂材料を使用した場合でも、これらの部材に悪影響を及ばさずに低温度・短時間で製造しうるため、リサイクル性を考慮して比較的耐熱性の低い樹脂材料を用いた変圧器として好適なものである。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【図面の簡単な説明】
図1は、3層絶縁電線を巻線とする構造の変圧器の例を示す断面図である。
図2は、従来構造の変圧器の一例を示す断面図である。
図3は、静摩擦係数の測定方法を示す概略図である。

Claims (5)

  1. 導体と前記導体を被覆する2層以上の押出絶縁層とを有し
    前記絶縁層が半田浴へ浸漬することで除去できる多層絶縁電線であって、
    導体側から1層目の絶縁層が熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂からなり、
    最外絶縁層が熱可塑性ポリアミド樹脂である
    ことを特徴とする多層絶縁電線。
  2. 前記熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂が(A)または(B)であることを特徴とする請求項1記載の多層絶縁電線:
    (A)芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、
    脂肪族ポリエーテル、芳香族ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとする
    熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂。
    (B)芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、
    炭素数2〜4の脂肪族α,ωージオールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを
    主たるグリコール成分とする芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、
    イソフタル酸および/またはフタル酸のような折れ曲がり構造を有する芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、
    炭素数6〜12の脂肪族α,ωージオールを主たるグリコール成分とするポリエステルをソフトセグメントとする
    熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂。
  3. 前記熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂がポリチレンテレフタレートエラストマーであることを特徴とする請求項1記載の多層絶縁電線。
  4. 前記熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂のハードセグメントが40重量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層絶縁電線。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層絶縁電線を巻線又はリード線として用いことを特徴とする変圧器。
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