JP4028034B2 - 多層絶縁電線及びそれを用いた変圧器 - Google Patents

多層絶縁電線及びそれを用いた変圧器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁層が2層以上の押出被覆層からなる多層絶縁電線とそれを用いた変圧器に関し、更に詳しくは、絶縁層が、半田浴に浸漬すると短時間で除去されて導体に半田を付着させることができる、優れた半田付け性とともに、耐熱性が優れ、電気・電子機器などに組み込む変圧器の巻線やリード線として有用な多層絶縁電線とそれを用いた変圧器に関する。
【0002】
【従来の技術】
変圧器の構造は、IEC規格(International Electrotechnical Communication Standard)Pub.950 などによって規定されている。即ち、これらの規格では、巻線において一次巻線と二次巻線の間には少なくとも3層の絶縁層(導体を被覆するエナメル皮膜は絶縁層と認定しない)が形成されていること又は絶縁層の厚みは0.4mm以上であること、一次巻線と二次巻線の沿面距離は、印加電圧によっても異なるが、5mm以上であること、また一次側と二次側に3000Vを印加した時に1分以上耐えること、などが規定されている。
このような規格のもとで、現在、主流の座を占めている変圧器としては、図2の断面図に例示するような構造が採用されている。フェライトコア1上のボビン2の周面両側端に沿面距離を確保するための絶縁バリヤ3が配置された状態でエナメル被覆された一次巻線4が巻回されたのち、この一次巻線4の上に、絶縁テープ5を少なくとも3層巻回し更にこの絶縁テープの上に沿面距離を確保するための絶縁バリヤ3を配置したのち、同じくエナメル被覆された二次巻線6が巻回された構造である。
【0003】
ところで、近年、図2に示した断面構造のトランスに代わり、図1で示したように、絶縁バリヤ3や絶縁テープ層5を含まない構造の変圧器が登場しはじめている。この変圧器は図2の構造の変圧器に比べて、全体を小型化することができ、また、絶縁テープの巻回し作業を省略できるなどの利点を備えている。
図1で示した変圧器を製造する場合、用いる1次巻線4及び2次巻線6では、いずれか一方もしくは両方の導体4a(6a)の外周に少なくとも3層の絶縁層4b(6b),4c(6c),4d(6d)が形成されていることが前記したIEC規格との関係で必要になる。
【0004】
このような巻線として導体の外周に絶縁テープを巻回して1層目の絶縁層を形成し、更にその上に、絶縁テープを巻回して2層目の絶縁層、3層目の絶縁層を順次形成して互いに層間剥離する3層構造の絶縁層を形成するものが知られている。また、ポリウレタンによるエナメル被覆がなされた導体の外周にフッ素樹脂を順次押出被覆して、全体として3層構造の押出し被覆層を絶縁層とする巻線が知られている(実願平3−56112号公報)。
【0005】
しかしながら、前記の絶縁テープ巻の場合は、巻回する作業が不可避である為、生産性は著しく低く、その為電線コストは非常に高いものになっている。
また、前記のフッ素樹脂押出しの場合は、絶縁層はフッ素系樹脂で形成されているので、耐熱性は良好であるという利点を備えているが、樹脂のコストが高く、さらに高剪断速度で引っ張ると外観状態が悪化するという性質があるために製造スピードを上げることも困難で、絶縁テープ巻と同様に電線コストが高いものになってしまう。更には、この絶縁層の場合は半田浴に浸漬しても除去することができないため、例えば絶縁電線を端子に接続するときに行う端末加工に際しては、端末の絶縁層を信頼性の低い機械的な手段で剥離しその上さらに半田付け又は圧着接続しなければならないという問題がある。
【0006】
一方、ポリエチレンテレフタレートをベース樹脂とし、これにエチレン−メタアクリル酸共重合体のカルボキシル基の一部を金属塩にしたアイオノマーを混合した混和物で複数の押出し絶縁層を形成し、絶縁層の最上層としてナイロンを被覆した多層絶縁電線が実用化されており、これは電線コスト(材料コストと生産性)、半田付け性(絶縁電線と端子が直接接続できること)、及びコイル加工性(絶縁電線をボビンに巻回する時に絶縁電線相互の擦れ、ガイドノズルとの擦れなどにより絶縁層が破れてコイルの電気特性が損われてしまうようなことがないこと)が優れている(米国特許第5,606,152号明細書、特開平6−223634号公報)。
さらには、耐熱性を向上させるために前記のポリエチレンテレフタレートをベース樹脂とするものから、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)をベース樹脂にするものに変えたものも提案している。
しかし、これらのものは、耐熱性は、IEC950規格の2.9.4.4項の付属書U(電線)と1.5.3項の付属書C(トランス)に準拠した試験方法において耐熱E種に合格するが、近年の耐熱性に対する要求水準の高まりに対応できるものではなく、また耐熱B種には不合格となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この様な問題を解決するために、本発明は、耐熱性、半田付け性及びコイル加工性に優れ、工業的生産にも好適な多層絶縁電線を提供することを目的とする。
さらに本発明は、このような耐熱性と半田付け性、コイル加工性に優れた絶縁電線を巻回してなる、電気特性に優れ、信頼性の高い変圧器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は次の多層絶縁電線及びこれを用いた変圧器によって達成された。
すなわち本発明は、
(1)導体と前記導体を被覆する2層以上の半田付け可能な押出絶縁層を有してなる多層絶縁電線であって、前記絶縁層の少なくとも1層が、ポリエーテルスルホン樹脂(A)100重量部に対して、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂(B)を10重量部以上配合した樹脂混和物より形成されていることを特徴とする多層絶縁電線、
(2)前記樹脂(B)がポリカーボネート樹脂であることを特徴とする(1)項記載の多層絶縁電線、
(3)前記樹脂(A)が下記式で表わされる繰返し単位を有してなるポリエーテルスルホン樹脂であることを特徴とする(1)又は(2)項記載の多層絶縁電線、
【0009】
【化2】
Figure 0004028034
【0010】
(式中、nは正の整数を示す。)
)前記樹脂混和物が樹脂(A)100重量部に対して、樹脂(B)が10〜70重量部配合されていることを特徴とする(1)〜()項のいずれか1つに記載の多層絶縁電線、
)導体を140℃を越えない温度に予熱するか、又は予熱しないで、この上に前記絶縁層を被覆してなることを特徴とする(1)〜()項のいずれか1つに記載の多層絶縁電線、
)前記絶縁層において、前記の樹脂混和物により形成された少なくとも1層以外の絶縁層が熱可塑性ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂で形成されていることを特徴とする(1)〜()項のいずれか1つに記載の多層絶縁電線、
)前記絶縁層の最上層がポリアミド樹脂よりなることを特徴とする(1)〜()項のいずれか1つに記載の多層絶縁電線、及び
)前記(1)〜()項のいずれか1つに記載の多層絶縁電線を用いてなることを特徴とする変圧器
を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の多層絶縁電線において絶縁層は2層以上からなり、好ましくは3層からなる。この絶縁層のうち前記の樹脂(A)と(B)の混和物よりなる絶縁層は少なくとも1層であり、耐熱性を重視する場合は全層がこの混和物からなることが好ましい。また、コイル加工性を重視する場合は絶縁層の最上層を潤滑性の良い樹脂層で形成し、それ以外の層をこの樹脂(A)と(B)の混和物よりなる層とすることが好ましい。
前記樹脂(A)は耐熱性が高い樹脂であり、この樹脂としてポリエーテルスルホン樹脂を公知のものから選んで使用できる。
このポリエーテルスルホン樹脂は、下記一般式(1)で表わされるものが好ましく用いられる。
【0012】
【化3】
Figure 0004028034
【0013】
[式中、R1 は単結合又は−R2 −O−(R2 はフェニレン基、ビフェニリレン基、
【0014】
【化4】
Figure 0004028034
【0015】
(R3 は−C(CH32 −、−CH2 −などのアルキレン基を示す)であり、R2 の基はさらに置換基を有していてもよい。)を示す。nは正の整数を示す。]
【0016】
この樹脂の製造方法自体は公知であり、一例としてジクロルジフェニルスルホン、ビスフェノールS及び炭酸カリウムを高沸点溶媒中で反応して製造する方法があげられる。市販の樹脂としてはビクトレックスPES(住友化学社製、商品名)、レーデルA・レーデルR・UDEL(Amoco社製、商品名)等がある
【0021】
本発明において耐熱性の樹脂(A)と樹脂(B)を混合することにより、樹脂組成物は半田付け性が付与される。
この樹脂(B)として用いられる前記のポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂は特に限定するものではない。ポリカーボネート樹脂は、例えば2価アルコールとホスゲン等を原料として公知の方法により製造されるものが使用できる。市販の樹脂としてはレキサン(GEプラスチック社製、商品名)、パンライト(帝人化成社製、商品名)、ユーピロン(三菱瓦斯化学社製、商品名)等がある。本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、公知のものを用いることができる。例えば一般式(3)で表わされるものがある。
【0022】
【化7】
Figure 0004028034
【0023】
[式中、R7 は置換基を有していてもよい、フェニレン基、ビフェニリレン基、
【0024】
【化8】
Figure 0004028034
【0025】
(式中、R8は好ましくは炭素数1〜7のアルキレン基であり、好ましくは、メチレン、エチレン、プロピレン(特に好ましくはイソプロピリデン)である)又はナフチレン基を示し、これらの基が置換基を有する場合の置換基としてはアルキル基(メチル、エチルなど)などがあげられる。sは正の整数である。]
また、ポリアリレート樹脂は、界面重合法で製造されており、アルカリ水溶液に溶解したビスフェノールAとハロゲン化炭化水素などの有機溶媒に溶解したテレ/イソ混合フタル酸クロリドとを常温で反応させ合成する。市販の樹脂としてUポリマー(ユニチカ社製、商品名)等がある
【0027】
また、本発明において耐熱性を有する樹脂(A)と配合するポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂(B)は、該耐熱樹脂(A)との混練り時や絶縁電線としての半田付け時に樹脂の一部分が分解しフラックス作用を示す成分(カルボン酸類、アミン類、アルコール類、アルデヒド類等)を発生すると推定される。本発明において、樹脂(A)100重量部に対する樹脂(B)の配合量は10重量部以上である。樹脂(A)100重量部に対して樹脂(B)が10重量部未満では耐熱性は高いが、半田付け性が得られない。樹脂(B)の配合量の上限は、要求する耐熱性のレベルを考慮して定められるが、好ましくは、100重量部以下である。高い半田付け性を維持して、特に高い耐熱性のレベルを実現する場合には、樹脂(B)の使用量は70重量部以下とするのが好ましく、この両特性のバランスが特に良く好適な範囲は樹脂(B)20〜50重量部となる。特に注目したいことは、耐熱樹脂のポリエーテルスルホン樹脂は全く半田付け性を示さず、またポリカーボネート樹脂及びポリアリレート樹脂もそれ自体の半田付け性は実用的でないレベルであるということであり、両樹脂を配合して初めて、半田付け性が実用レベルまでに改善できる
【0028】
前記樹脂混和物は、通常の2軸押出機、ニーダー、コニーダーなどの混練り機で溶融配合することができる。配合樹脂の混練り温度は直接半田付け性に影響を与えることが判明しており、直接半田付け性は混和時の混練り機の温度設定を高く設定した方が良い特性が得られる。320℃以上、特に360℃以上の温度設定が好ましい。
前記樹脂混和物には、直接半田付け性、耐熱性を損なわない範囲で、他の耐熱性熱可塑性樹脂を添加することができる。添加できる耐熱性熱可塑性樹脂はそれ自体が半田付け性が良好なものが好ましく、例として、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂などが挙げられる。
前記樹脂混和物には、直接半田付け性、耐熱性を損なわない範囲で、通常使用される添加剤、無機充填剤、加工助剤、着色剤などを添加することができる。
【0029】
さらに多層絶縁電線の絶縁層の構成として該樹脂混合物を2層以上組合せて押出し被覆した方が耐熱性の確保と半田付け性のバランスが良く、好ましい。
また、該樹脂混和物以外の絶縁層として形成できる半田付け性を有する熱可塑性樹脂としては、ポリアミドを主成分とする樹脂、ポリエステルを主成分とする樹脂が使用でき、具体的にはポリアミド樹脂としてはナイロン12、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6等が使用できる。
特に耐熱性と半田付け性のバランスをとるにはナイロン6,6、ナイロン4,6を使用することが好ましく、更に電線のコイル加工性を考慮するとこれらを最上層に形成させることが最も好ましい。
またポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるものでポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキサンジメタンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等を使用することができる。
次に、他の樹脂、添加剤等を耐熱性、半田付け性に支障のないかぎり該樹脂混和物または該ポリアミド系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂に配合添加してもかまわない。
また、導体上に該樹脂混和物を押出し被覆する時、導体の予備加熱を行わない方が、半田付け性が大きく改善される。予熱する場合でも温度は140℃以下の温度に設定するのが好ましい。
即ち、導体加熱しないことにより導体と該樹脂混和物被覆層の接着性が弱まること、そして、該樹脂混和被覆層が半田付け時に長手方向に、10〜30%の大きな熱収縮を生じることが相まって半田付け性が改善する。
本発明に用いられる導体としては、金属裸線(単線)、または金属裸線にエナメル被覆層や薄肉絶縁層を設けた絶縁電線、あるいは金属裸線の複数本またはエナメル絶縁電線もしくは薄肉絶縁電線の複数本を撚り合わせた多心撚り線を用いることができる。これらの撚り線の撚り線数は、高周波用途により随意選択できる。また、線心(素線)の数が多い場合(例えば19−、37−素線)、撚り線ではなくてもよい。撚り線ではない場合、例えば複数の素線を略平行に単に束ねるだけでもよいし、または束ねたものを非常に大きなピッチで撚っていてもよい。いずれの場合も断面が略円形となるようにすることが好ましい。ただし、薄肉絶縁材料はエステルイミド変性ポリウレタン樹脂、尿素変性ポリウレタン樹脂、ポリエステルイミド樹脂などのようにそれ自体半田付け性が良好な樹脂などである必要があり、例えば日立化成社製商品名WD−4305、東特塗料社製商品名TSF−200、TPU−7000、大日精化社製商品名FS−304などが使用できる。さらには導体に半田又は錫メッキすることも半田付け特性を改善する手段となる。
本発明の好ましい実施態様をあげると、耐熱多層絶縁電線は、1層目用の樹脂または樹脂混和物を導体外周に押出被覆して所望厚みの1層目の絶縁層を形成し、次いで、この1層目の絶縁層の外周に2層目用の樹脂または樹脂混和物を押出被覆して所望厚みの2層目の絶縁層を形成し、さらに、この2層目の絶縁層の外周に3層目用の樹脂または樹脂混和物を押出被覆して所望厚みの3層目の絶縁層を形成することにより製造される。このようにして形成される押出被覆絶縁層の全体の厚みは3層では60〜180μmの範囲内にあるようにすることが好ましい。このことは、絶縁層の全体の厚みが60μm以下では得られた耐熱多層絶縁電線の電気特性の低下が大きく、実用に不向きな場合があり、180μm以上では半田付け性の悪化が著しくなる場合があることによる。さらに好ましい範囲は70〜150μmである。また上記の3層の各層の厚みは20〜60μmに管理することが好ましい。
【0030】
本発明の多層絶縁電線においては、絶縁層として該樹脂混和物の層を少なくとも1層有し、残りの絶縁層が半田付け可能な熱可塑性樹脂を主成分とする層としうるもので、耐熱性と半田付け性の両特性を満足させることができる。その理由については、まだ定かではないが、次のように推定される。すなわち、該樹脂混和物が耐熱性の高いポリエーテルスルホン樹脂とそれより耐熱性の低いポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂であることが重要でこれらの樹脂混練り時に耐熱性の低い樹脂が一部熱分解することにより分子量が低下し、混和物の溶融粘度を低下させ、しかもフラックス作用を示す成分を生成する。このことによって、押出し被覆された場合、高耐熱性を有しているにも係わらず半田付け性を発現することができると考えられる。また、該樹脂混和物が第1層に被覆形成されている場合は、熱収縮性が大きいことから導体の予備加熱を行わず、密着性を低下させることにより、いっそう半田付け性レベルを改善できることが判明した。本発明の多層絶縁電線を使用した変圧器は、IEC950規格を満足するのはもちろんのこと、絶縁テープ巻していないので小型化が可能でしかも耐熱性及び高周波特性が高いので厳しい設計に対しても対応できる。
【0031】
本発明の多層絶縁電線は、前記図1及び2で示したものを含むどのようなタイプの変圧器にも巻線として用いることができる。このような変圧器は1次巻線と2次巻線をコア上に層状に巻くのが普通であるが、1次巻線と2次巻線を交互に巻いた変圧器(特開平5−152139号)でもよい。また本発明の変圧器は、上記の多層絶縁電線を1次巻線及び2次巻線の両方に使用してもよいが、いずれか片方の使用でもよい。また、本発明の多層絶縁電線が2層からなる場合は、(たとえば1次巻線と2次巻線がいずれも2層絶縁電線、あるいは片方にエナメル線を用いて、もう片方に2層絶縁電線を使用する場合)、両巻線間に絶縁バリア層を少なくとも1層介在させ使用することができる。
【0032】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。
実施例1〜及び比較例1〜
導体として線径0.4mmの軟銅線および線径0.15mmの軟銅線に日立化成社製絶縁ワニスWD−4305を8μm厚に被覆した絶縁線心7本を撚り合わせた撚り線を用意した。表1、表2及び表3に示した各層の押出被覆用樹脂の配合(組成は重量部を示す)及び厚さで、導体上に順次押出し被覆して多層絶縁電線を製造した(表面処理:冷凍機油使用)。得られた多層絶縁電線につき、下記の仕様で各種の特性を測定した。
【0033】
◎はんだ付け性:
電線の末端約40mmの部分を温度450℃の溶融はんだに浸漬し、浸漬した30mmの部分にはんだが付着するまでの時間(秒)を測定。この時間が短い程、はんだ付け性に優れることを表す。数値はn=3の平均値。
◎耐熱性(1):
IEC規格950規格の2.9.4.4項の付属書U(電線)と1.5.3項の付属書C(トランス)に準拠した下記の試験方法で評価した。
直径6mmのマンドレルに多層絶縁電線を荷重118MPa(12kg/mm2)をかけながら10ターン巻付け、225℃(E種215℃)1時間加熱、更に175℃(E種165℃)72時間加熱し、さらに25℃95%の雰囲気に48時間保持し、その後すぐに3000V 1分間電圧を印加し短絡しなければB種合格と判定する。(判定はn=5にて評価。n=1でもNGになれば不合格となる)。
◎コイル加工性(静摩擦係数):
図3に静摩擦係数の測定方法を示す。7は多層絶縁電線を示し、8は荷重板でありその質量をWgとする。同じく9は滑車、10は荷重を示す。荷重板8が動き始めた時の荷重10の質量をFgとすると、求める静摩擦係数=F/Wである。
この数値が小さい程、表面のすべり性が良く、コイル加工性も良い。
【0034】
【表1】
Figure 0004028034
【0037】
1で示した結果から以下のことが明らかになった。実施例1は3層とも本発明で規定される範囲内の樹脂混和物で形成されている為良好な半田付け性、耐熱性を示している。実施例2〜4は3層目にポリアミド樹脂を使用している為、耐熱性及び半田付け性もよく、しかも静摩擦係数も小さくコイル加工性も良い。実施例5は導体に半田付け可能なエナメル撚り線を使用しているが単線と同様な良好な特性を有している。
【0038】
しかし比較例はポリエーテルスルホン樹脂のみが1層使用されている為、耐熱性は高いが半田付け性は示さない。比較例はポリカーボネート樹脂のみである為、耐熱性がほとんどなく、半田付け性も悪く、実用レベルにない。さらに比較例はフッ素樹脂のみである為、コイル加工性がよく耐熱性は高いが半田付け性を示さないことが判明した。比較例は本発明で規定する範囲をはずれており、該配合樹脂が少ない為に導体の余熱をしないにもかかわらず、耐熱性は良いにもかかわらず、半田付け性を示さない。また、電線外観も悪くなっている。
【0039】
実施例6〜8及び比較例5
に示すように、第1層〜第3層の絶縁層の樹脂混和物(組成は重量部を示す)について、ポリエーテルスルホン樹脂とポリカーボネート樹脂の比率を変更した以外は実施例1と全く同様にして多層絶縁電線を製造した。
また比較例5として、表に示すポリエチレンテレフタレートとアイオノマーとからなる樹脂混和物で第1層及び第2層を、ナイロンで第3層を形成した多層絶縁電線を製造した。
この絶縁電線を次のように試験した。尚、耐熱性評価において耐熱性試験(2)を追加した理由は、耐熱性試験(1)では耐熱性の判定はB種又はE種の合否でしか判定できない為であり、実用品(比較例5)との耐熱性の相違を示す為に、エナメル線用の耐熱性簡易評価法によって比較したものである。
◎耐熱性(2):
押出被覆絶縁電線と裸銅線をJIS C3003に準拠して2個撚りし、その状態で温度200℃で168時間(7日間)の加熱処理を施したのち絶縁破壊電圧を測定した。この値が大きいほど耐熱性に優れていることを示し、また、劣化前の状態での絶縁破壊電圧に対する上記劣化後の絶縁破壊電圧の比、すなわち絶縁破壊電圧の劣化後残率(%)が50%以上であれば、IEC規格Pub.172耐熱性E種を概略、満足する判定となる。
半田付け性及び静摩擦係数の試験は実施例1と同様にして行った。その結果を表に示した。
【0040】
【表2】
Figure 0004028034
【0041】
実施例の結果と比較例の結果とを比べて明らかなように、本発明の絶縁電線は、現在実用されている、ポリエチレンテレフタレート樹脂とアイオノマーとの樹脂混和物の押出絶縁層2層の上に最外層としてのナイロン層を被覆したものに比べ、半田付け性及びコイル加工性が同等である上に、耐熱性が優れる。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の多層絶縁電線は、端末加工時には直接半田付けを行うことができ、しかも耐熱性レベルも十分満足するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】3層絶縁電線を巻線とする構造の変圧器の例を示す断面図である。
【図2】従来構造の変圧器の1例を示す断面図である。
【図3】静摩擦係数の測定方法を示す概略図である。
【符号の説明】
1 フェライトコア
2 ボビン
3 絶縁バリヤ
4 一次巻線
4a 導体
4b,4c,4d 絶縁層
5 絶縁テープ
6 二次巻線
6a 導体
6b,6c,6d 絶縁層
7 多層絶縁電線
8 荷重板
9 滑車
10 荷重

Claims (8)

  1. 導体と前記導体を被覆する2層以上の半田付け可能な押出絶縁層を有してなる多層絶縁電線であって、前記絶縁層の少なくとも1層が、ポリエーテルスルホン樹脂(A)100重量部に対して、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂(B)を10重量部以上配合した樹脂混和物より形成されていることを特徴とする多層絶縁電線。
  2. 前記樹脂(B)がポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1記載の多層絶縁電線。
  3. 前記樹脂(A)が下記式で表わされる繰返し単位を有してなるポリエーテルスルホン樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載の多層絶縁電線。
    Figure 0004028034
    (式中、nは正の整数を示す。)
  4. 前記樹脂混和物が樹脂(A)100重量部に対して、樹脂(B)が10〜70重量部配合されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載の多層絶縁電線。
  5. 導体を140℃を越えない温度に予熱するか、又は予熱しないで、この上に前記絶縁層を被覆してなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載の多層絶縁電線。
  6. 前記絶縁層において、前記の樹脂混和物により形成された少なくとも1層以外の絶縁層が熱可塑性ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載の多層絶縁電線。
  7. 前記絶縁層の最上層がポリアミド樹脂よりなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載の多層絶縁電線。
  8. 前記請求項1〜のいずれか1つに記載の多層絶縁電線を用いてなることを特徴とする変圧器。
JP22490397A 1996-08-22 1997-08-21 多層絶縁電線及びそれを用いた変圧器 Expired - Fee Related JP4028034B2 (ja)

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