JP2018022636A - 絶縁電線および融着性絶縁電線、並びにこれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む絶縁層を備える絶縁電線を好適に融着させる。【解決手段】導体と、導体の外周に配置され、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなる絶縁層と、を備え、絶縁層は、表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上である、絶縁電線が提供される。【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁電線および融着性絶縁電線、並びにこれらの製造方法に関する。
回転電機や変圧器等の電気機器のコイルに使用される絶縁電線は、一般に、コイルの用途や形状に対応する断面形状に成形された導体の外周上に絶縁層が形成された構造を有している。
近年、電気機器は効率化のためにインバータ制御されるようになっている。それに伴い、電気機器のコイルにはインバータサージ電圧等の高い電圧が印加されることから、部分放電が発生しやすくなり、絶縁層が劣化したり損傷したりすることがある。そこで、絶縁層においては部分放電による劣化や損傷を抑制するため、部分放電開始電圧(PDIV)を高くする方法が検討されている。この方法としては、例えば、比誘電率が低い樹脂で絶縁層を形成する方法や、絶縁層の厚さを厚くする方法が挙げられる。
絶縁層を形成する方法としては、有機溶剤に樹脂を溶解させてなる絶縁塗料を導体の外周に塗布して焼き付ける焼付法、予め調合した樹脂組成物を導体の外周に押出被覆する押出法、およびこれらを併用する方法がある。絶縁層を厚く形成する場合、焼付法では塗布および焼付の回数が増えてコストが高く、また絶縁層の厚さが周方向でばらつくことがあるため、一般に押出法が用いられる。
押出法で用いる樹脂として種々のスーパーエンジニアリングプラスチックが検討されており、その中でも比誘電率が低いことからポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、PPS樹脂ともいう)が着目されている(例えば、特許文献1を参照)。PPS樹脂によれば、PDIVが高いうえに耐熱性や機械的特性など諸特性に優れる絶縁層を形成することができる。
特開2014−136738号公報
ところで、絶縁電線をコイルに加工するときには、絶縁電線のコイル形状を維持したり、コイル形状としたときに隣接する絶縁電線同士が擦れることによって絶縁層が摩耗や損傷することを抑制したりする目的で、絶縁電線をコイル状に加工した後に融着処理を施すことがある。
融着処理の方法としては、絶縁電線を巻回したコイルにエポキシや不飽和ポリエステルなどの熱硬化性の融着性樹脂を含有するワニスを塗布し焼き固める方法や、予め絶縁電線の絶縁層の外周上に融着性樹脂組成物からなる融着層を形成した融着性絶縁電線を巻回によりコイル状とした後に融着層間を融着させる方法がある。
しかしながら、特許文献1に示すようなPPS樹脂を含む絶縁層が設けられた絶縁電線では融着処理を施しても絶縁電線同士を十分に融着させることが困難である。PPS樹脂は絶縁性や耐熱性などに優れる反面、化学的に安定で融着性樹脂組成物(融着層)との化学的親和性が低い傾向にあり、PPS樹脂を含む絶縁層は融着層との密着力が弱くなるためである。そのため、特許文献1の絶縁電線では電気機器の信頼性が損なわれることがある。
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む絶縁層を備える絶縁電線を好適に融着させる技術を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置され、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなる絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上である、絶縁電線が提供される。
本発明の他の態様によれば、
導体の外周に、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層の表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上となるように前記絶縁層を表面改質する表面改質工程と、を有する絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明によれば、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む絶縁層を備える絶縁電線を好適に融着させることができる。
本発明の一実施形態に係る融着性絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。 本発明の他の実施形態に係る融着性絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。 ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む絶縁層のプラズマ処理前後での表面におけるFT−IRスペクトルを示す図である。 融着性絶縁電線を製造する製造装置の構成概略図である。 融着性絶縁電線の融着後の接着力を評価するための試験片の斜視図である。
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。
〔融着性絶縁電線の構成〕
本発明に係る融着性絶縁電線の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る融着性絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。図2は、本発明の他の実施形態に係る融着性絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
図1に示すように、融着性絶縁電線1は、導体11の外周に絶縁層12が設けられた絶縁電線10の外周を被覆するように融着層13を備えて構成されている。
(導体)
導体11としては、導電性の高い金属からなる金属線、例えば、低酸素銅や無酸素銅からなる銅線、アルミニウム線などを用いることができる。図1では、導体11が略矩形断面を有する平角線の場合を示すが、導体11としては平角線に限定されず、例えば図2に示すような円形断面を有する丸線を用いることもできる。また、導体11としては、複数の丸線を撚り合わせて形成された撚り線を用いることもできる。なお、導体11は表面に錫やニッケル等の金属メッキが施されていてもよい。
(絶縁層)
導体11の外周には、導体11を被覆するように絶縁層12が設けられている。絶縁層12は、詳細を後述するように、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)を含む樹脂組成物を溶融させ導体11の外周上に押し出して被覆し、所定の表面処理を施すことにより形成されている。表面処理により、絶縁層12は、表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上となるように構成されている。
ここで、絶縁層12の表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sについて図3を用いて説明する。
本発明者らは、PPS樹脂を含む絶縁層12と融着層13との密着性を高め、絶縁電線10同士を十分に融着させる方法について検討を行った。その検討の過程で、PPS樹脂を含む絶縁層12に所定の表面処理を施して表面改質したところ、絶縁層12の融着層13との密着性が向上することを見出した。なお、図3では、表面処理の方法としてプラズマ処理を用いた場合を示す。
絶縁層12の表面改質前後での化学構造の違いを解析すべく、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)によりGeプリズムを用いてATR(Attenuated Total Reflection、全反射吸収)法で測定したところ、図3に示すようなFT−IRスペクトルが得られた。図3は、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む絶縁層のプラズマ処理前後での表面におけるFT−IRスペクトルを示す図である。図3において、横軸は照射した赤外線の波長[cm−1]を、縦軸は吸光度を、それぞれ示し、細線がプラズマ処理前のFT−IRスペクトルを、太線がプラズマ処理後のFT−IRスペクトルを、それぞれ示す。
図3に示すように、絶縁層12のプラズマ処理前後でのスペクトルを比べると、プラズマ処理後は、プラズマ処理前と比べて、−OH基の分子構造の吸収帯である波長3000〜3200cm−1と、−SO基および−SO基の分子構造の吸収帯である波長1000〜1200cm−1とで吸光度が増加することが確認された。このことから、絶縁層12を表面改質することにより、絶縁層12を形成するPPS樹脂には−OH基や−SO基、−SO基などの活性な官能基が導入され、融着性樹脂との化学的相互作用が向上するため、絶縁層12と融着層13との密着性が向上するものと推測された。
そこで、本発明者らは、絶縁層12について、表面処理前後でそれぞれ元素分析を行い、絶縁層12の表面における酸素濃度と、絶縁層12の融着層13への密着性との相関について検討を行った。具体的には、エネルギー分散型X線分析(EDX: Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)により、絶縁層12について、プラズマ処理前およびプラズマ処理後それぞれの状態で元素分析を行い、酸素濃度として、PPS樹脂が有する硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sを求めた。その結果、質量濃度比O/Sが大きくなると、融着層13との密着性が大きくなることが分かった。そして、絶縁層12において、融着層13と接触する表面における質量濃度比O/Sが0.2未満では、絶縁層12と融着層13との密着性が不十分であるが、質量濃度比O/Sが0.2以上となるように絶縁層12を表面改質することにより、絶縁層12と融着層13との密着性を向上させ、絶縁電線10を好適に融着できる。なお、質量濃度比O/Sの上限値は、特に限定されないが、0.5以下であるとよい。
絶縁層12を形成するPPS樹脂は、例えばp−フェニレンサルファイドからなる繰り返し単位を含み、電気特性、耐熱性、機械特性だけでなく、耐溶剤性や耐油性などにも優れるポリマである。PPS樹脂は、絶縁層12の耐熱性の観点からは、p−フェニレンサルファイドからなる繰り返し単位を85%以上含むことが好ましく、90%以上含むことがより好ましい。なお、PPS樹脂は、p−フェニレンサルファイドからなる繰り返し単位以外に、スルフォキシド基やエーテル基を含んでもよく、またベンゼン環に置換基を含んでもよい。さらに、分子鎖にチオエーテル基やエーテル基などを介して分岐構造や架橋構造を有していてもよい。例えば、PPS樹脂の市販品としては、東レ株式会社製の「トレリナT1881」などを用いることができる。
また、絶縁層12を形成する樹脂組成物は、PPS樹脂以外の成分を含んでもよく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、シリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂を含むことができる。この中でも、絶縁層12の耐熱性を高く維持しつつ、絶縁層12の導体11との密着性を向上できることから、シリコーン樹脂(例えばシリコーンゴム)を用いることが好ましい。
PPS樹脂とシリコーン樹脂との混合比率は、特に限定されないが、質量比で90:10〜98:2であることが好ましい。このような比率とすれば、PPS樹脂が本来有する特性を損なうことなく、シリコーン樹脂により絶縁層12の導体11との密着性を向上させることができる。
また、絶縁層12を形成する樹脂組成物は、樹脂以外の添加剤を含んでもよく、例えば、無機フィラーなどの充填剤を含んでもよい。これらの配合量は本発明の効果を損ねない範囲で適宜変更することができる。
絶縁層12の厚さは、絶縁電線10に求められる絶縁性などに応じて適宜変更することができ、特に限定されないが、高い部分放電開始電圧(PDIV)を得る観点からは160μm以上であることが好ましい。一方、絶縁層12の厚さが過度に大きくなると、融着性絶縁電線1をコイル加工したときに導体11の曲げ変形に対して絶縁層12が追従しにくくなり、絶縁層12が導体11から剥離することがある。そのため、導体11との密着性の観点からは、絶縁層12の厚さは240μm以下であることが好ましい。すなわち、絶縁層12の厚さを160μm以上240μm以下とすることにより、PDIVを高くできるとともに導体11との高い密着性を実現することができる。なお、絶縁層12の厚さは、後述の実施例で示すように周方向での平均値を示す。
絶縁層12は、化学的、機械的および熱的な性能を向上させる観点からは結晶化度が高いことが好ましく、例えば95%以上100%以下であることが好ましい。このような結晶化度とすることにより、絶縁層12において絶縁性や耐摩耗性、耐薬品性、耐油性などの諸特性を向上させることができる。
なお、結晶化度は以下のように定義される。すなわち、示差走査熱量測定により昇温させながら測定した結晶化時の結晶化熱をHc、示差走査熱量測定による融解熱をHmとしたとき、結晶化度αは下記式(1)で示される。
結晶化度α=(1−Hc/Hm)×100・・・(1)
(融着層)
絶縁層12の外周には、絶縁層12を被覆するように融着層13が設けられている。融着層13は、融着性樹脂組成物からなり、融着性絶縁電線1を巻回してコイル状に加工したときに隣接する融着性絶縁電線1同士を融着させて固着させるものである。融着層13は、表面改質によりO/S比が0.2以上となる絶縁層12上に設けられており、絶縁層12との密着性が高くなるように形成されている。
融着層13を形成する融着性樹脂組成物は、加熱により融着性を示す樹脂、例えば、熱可塑性樹脂を含む。このような熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が室温(例えば25℃)以上で、融点が155℃以上、絶縁層12を形成する熱可塑性樹脂(PPS樹脂)の融点以下であるものが好ましい。融着層13を形成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度を室温以上とすることで、融着層13の室温環境での変形を抑制することができる。また、熱可塑性樹脂の融点を155℃以上PPS樹脂の融点以下とすることで、PPS樹脂を含む絶縁層12の周囲に溶融させた熱可塑性樹脂を押出被覆して融着層13を形成するときに、溶融した熱可塑性樹脂の熱によって絶縁層12が溶融変形することを抑制することができる。このような樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などを用いることができる。なお、融着性樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合、融着層13は押出により形成するとよい。
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFを主成分とした樹脂やエポキシ変性フェノキシ樹脂を用いることができる。例えば、フェノキシ樹脂の市販品としては、新日鉄住金化学株式会社製の「YP−70」や「ZX−1356−2」等の、ビスフェノールAエポキシとビスフェノールFエポキシからなる共重合体、もしくは、新日鉄住金化学株式会社製の「YP−50」及び「FX−316」等の、ビスフェノールAフェノキシ樹脂およびビスフェノールFフェノキシ樹脂を用いることができる。
ポリエステル樹脂の市販品としては、例えば、東レ株式会社製の「トレコン1401X06」等のポリブチレンテレフタラートや、ポリエチレンテレフタラートなどを用いることができる。
ポリアミド樹脂としては、例えば。各種共重合ポリアミド、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロンなどを用いることができる。
〔融着性絶縁電線の製造方法〕
次に、上述した融着性絶縁電線1の製造方法について図4を用いて説明する。図4は、融着性絶縁電線を製造する製造装置の構成概略図である。本実施形態の融着性絶縁電線1の製造方法は、準備工程S10と、予備加熱工程S20と、絶縁層形成工程S30と、表面改質工程S40と、搬送工程S50と、融着層形成工程S60とを有する。
(準備工程S10)
まず、図1に示すような断面が略矩形状の導体11(以下、単に平角導体11ともいう)を準備する。
(予備加熱工程S20)
続いて、平角導体11と絶縁層12との密着性を高めるために、絶縁層12を形成する前に平角導体11を予備加熱する。具体的には、送出機101から送り出した平角導体11を予備加熱炉102に導入し、平角導体11を予備加熱する。これにより、後述の絶縁層形成工程S30にて、溶融する樹脂組成物を平角導体11の外周上に押し出す際に、樹脂組成物が平角導体11により冷却されてしまうことを抑制でき、形成される絶縁層12の密着性を高めることが可能となる。
平角導体11を予備加熱する温度は、PPS樹脂の融点以上とするとよい。具体的には、280℃以上とすることが好ましく、300℃以上320℃以下とすることがより好ましい。このような温度で平角導体11を予備加熱することにより、平角導体11と絶縁層12との密着性を高めることができる。
予備加熱炉102では、平角導体11を不活性ガス雰囲気下で加熱することが好ましい。予備加熱炉102では、平角導体11が高温環境下に曝されて表面が酸化することで、絶縁層12の密着性が低下するおそれがあるが、予備加熱炉102内を不活性ガス雰囲気とすることで、平角導体11の酸化、そして、酸化被膜の形成に伴う絶縁層12の密着性の低下を抑制することができる。不活性ガスとしては、例えば、低コストな汎用気体である窒素ガスや、熱伝導性に優れたヘリウムガスなど、公知のガスを用いることができる。
(絶縁層形成工程S30)
続いて、絶縁層形成工程S30を行う。絶縁層形成工程S30は、押出被覆工程S31および冷却工程S32を有する。
具体的には、押出被覆工程S31として、加熱された平角導体11を第1の押出機103に導入し、平角導体11の外周にPPS樹脂を含む樹脂組成物を所定の厚さで押し出して被覆させる。なお、第1の押出機での押出温度は、PPS樹脂の融点である280℃以上、好ましくは300℃以上320℃以下とするとよい。
続いて、冷却工程S32として、PPS樹脂を含む樹脂組成物で被覆された平角導体11を第1の冷却装置104に導入して冷却することにより、PPS樹脂の結晶化を促進させ、所望の結晶化度を有する絶縁層12を形成する。
冷却工程S32では、絶縁層12の結晶化度が95%以上となるように冷却することが好ましい。このような結晶化度とするには、例えば、PPS樹脂を含む樹脂組成物を、PPS樹脂の融点(例えば280℃)未満の温度で、かつPPS樹脂が結晶化する温度(例えば200℃)まで冷却した後、PPS樹脂の結晶化温度(例えば200℃)を維持するように冷却するとよい。これにより、PPS樹脂の結晶化を促し、得られる絶縁層12におけるPPS樹脂の結晶化度を高め、例えば95%以上とすることができる。なお、冷却方法としては、水槽で水冷する等、公知の方法を用いることができる。
(表面改質工程S40)
続いて、表面改質工程S40として、絶縁層12が形成された平角導体11を表面処理装置105に導入し、絶縁層12に表面処理を施す。これにより、絶縁層12の表面に−OH基や−SO基、−SO基などの活性な官能基を導入し、絶縁層12の表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sを0.2以上となるように表面改質する。これにより、絶縁電線10を得る。
表面改質工程S40では、表面処理として、例えばプラズマ処理を行う。このプラズマ処理としては、大気圧下で行う大気圧プラズマ処理が好ましい。表面処理条件は、絶縁層12の表面における質量濃度比O/Sを0.2以上とするような条件であれば特に限定されない。表面処理としてプラズマ処理を行う場合、絶縁層12表面に吹き付けるガスとしては例えば窒素や空気などを用いることができるが、窒素が好ましい。窒素を供給する場合、空気を供給する場合と比べて絶縁層12の表面に活性な官能基を効率的に導入することができ、質量濃度比O/Sを大きくしやすいためである。また、プラズマ処理の時間は0.2秒〜0.6秒とするとよい。また、表面改質工程S40では、絶縁層12の表面から少なくとも20μmまでの深さの範囲において、質量濃度比O/Sが0.2以上となるような条件で表面処理を行うとよい。
なお、表面処理装置105としてプラズマ処理装置を用いる場合には、大気圧プラズマ照射ノズルが配置されるが、その配置は特に限定されない。例えば、2つの大気圧プラズマ照射ノズルを、絶縁層12が形成された平角導体11を挟むようにして配置してもよく、また例えば、複数の大気圧プラズマ照射ノズルを平角導体11に沿って配置してもよい。
(搬送工程S50)
続いて、搬送工程S50として、表面改質した絶縁層12上に融着層13を形成するため、絶縁電線10を第2の押出機106まで搬送し導入する。
搬送工程S50では、表面改質により活性化した絶縁層12が失活しないように、表面改質工程S40から後述の融着層形成工程S60までの経過時間が短くなるように搬送することが好ましい。具体的には、経過時間を10秒以下とすることが好ましい。すなわち、表面改質工程S40の後、融着層形成工程S60を10秒以内に行うように絶縁電線10を搬送することが好ましい。表面改質による効果は時間の経過とともに失活するため、表面改質してから融着層13の形成までの時間が長くなると、表面改質による効果が低下するおそれがある。そうなると、絶縁層12表面での質量濃度比O/Sを0.2以上に維持しにくくなり、融着層13を形成しても絶縁層12との間で十分な密着性を確保できないおそれがある。これに対して、経過時間が10秒以下となるように搬送することで、絶縁層12と融着層13との密着性を高く維持することができる。
なお、本実施形態のように融着性絶縁電線1を連続的に製造する場合、搬送速度を速くすることで経過時間を短縮するとよい。搬送速度を上げると、絶縁層12表面の単位面積あたりの表面処理量が減り、質量濃度比O/Sが小さくなる傾向があるが、このような場合、例えばプラズマ照射機を増設するなどして表面処理面積を増やして処理するとよい。
(融着層形成工程S60)
続いて、融着層形成工程S60として、第2の押出機106において絶縁層12の外周に融着性樹脂組成物を押し出して被覆する。融着性樹脂組成物の押出温度としては、融着性を有する熱可塑性樹脂の融点以上の温度とするとよい。その後、第2の冷却装置107に導入して融着性樹脂組成物を室温まで冷却し、融着層13を形成する。本実施形態では、絶縁層12表面の質量濃度比O/Sを0.2以上として活性化させているので、絶縁層12上に融着層14を密着性よく形成することができる。これにより、本実施形態の融着性絶縁電線1を得る。
最終的に、融着性絶縁電線1を引取機108を通じて巻取機109にてボビンで巻き取る。このようにして融着性絶縁電線1を製造することができる。
〔コイルおよびその製造方法〕
次に、上述した融着性絶縁電線1を用いて製造されるコイルについて説明する。
コイルは、例えば、融着性絶縁電線1を所定形状のコイル状に巻回した後、加熱することで、融着性絶縁電線1の表面にある融着層13を溶融させ、隣接する融着性絶縁電線1同士を接着して固化させることにより製造することができる。
融着性絶縁電線1を用いて製造されるコイルは、融着層13と絶縁層12との密着性が高く、隣接する絶縁電線10同士が好適に融着されている。そのため、コイルは、コイル形状を長期にわたって維持することができ、絶縁性の信頼性に優れたものとなる。
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
本実施形態の融着性絶縁電線1では、PPS樹脂を含む絶縁層12の融着層13と接する表面にプラズマ処理を施すことにより、PPS樹脂に−OH基や−SO基、−SO基などの活性な官能基を導入し、絶縁層12の表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上、好ましくは0.2以上0.5以下となるようにしている。これにより、PPS樹脂を含む絶縁層12と融着層13との間で高い密着性を実現することができる。したがって、本実施形態の融着性絶縁電線1によれば、コイルに加工したときに、PPS樹脂により高い部分放電開始電圧(PDIV)を実現するとともに、コイル形状を維持して高い信頼性を得ることができる。
また、融着性絶縁電線1において、絶縁層12の厚さを160μm〜240μmとすることが好ましい。このような厚さとすることにより、高いPDIVを実現できるとともに、融着性絶縁電線1に曲げ加工を施してコイルに作製するときに、導体11の曲げ変形に対して絶縁層12の追従性を維持し、絶縁層12の導体11への密着性を高く維持することができる。
また、絶縁層12を形成する樹脂組成物がシリコーンゴムを含み、PPS樹脂とシリコーンゴムとを質量比で90:10〜98:2の範囲内で含有することが好ましい。シリコーンゴムを上記比率で配合することにより、PPS樹脂が本来有する特性を損なうことなく、絶縁層12の導体11との密着性を向上させることができる。
また、絶縁層12は結晶化度が95%以上であることが好ましい。結晶化度を95%以上とすることにより、絶縁層12において絶縁性や耐摩耗性、耐薬品性、耐油性などの諸特性を向上させることができる。
また、融着性絶縁電線1において、PPS樹脂を含む樹脂組成物で絶縁層12を形成することにより、溶融させた樹脂組成物を所望の厚さで押出成形できるので、絶縁層12の厚さを均一に形成することができる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上述の実施形態では、表面改質工程S40にて、絶縁層12にプラズマを照射して表面処理を施す場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、絶縁層12に紫外線を照射し、表面処理を施すようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、融着層13を、融着性樹脂として熱可塑性樹脂を含む融着性樹脂組成物を押し出して形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、融着性樹脂組成物を含む塗料を、表面改質された絶縁層12の外周に塗布し焼き付けることで融着層13を形成してもよい。この場合、融着性樹脂としては、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を用いるとよい。
また、上述の実施形態では、コイルを製造する際、融着層13を備える融着性絶縁電線1を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記表面改質工程S40で得られる絶縁電線10を巻回して、巻回された絶縁電線10に粘着性樹脂組成物を含む塗料を塗布し、これを焼き付けて固化させることにより、隣接する絶縁電線10の間を融着層で融着させてコイルを製造するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、導体11の表面に直接、絶縁層12を設ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、導体11と絶縁層12との間に、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂およびポリエステルイミド樹脂から選択される樹脂を含む中間層を1層もしくは複数層、設けてもよい。中間層の厚さとしては、例えば20μm〜60μmとするとよい。
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
<融着性絶縁電線の作製>
(実施例1)
実施例1では、図4に示す製造装置100を用いて図1に示す構造を有する融着性絶縁電線を作製した。
実施例1では、平角銅線を予備加熱炉に導入して窒素雰囲気中で約300℃に予備加熱した。その後、加熱された平角銅線を第1の押出機に導入し、表1に示すように、PPS樹脂を95質量部とシリコーンゴムを5質量部とを混練してなる樹脂組成物を平角銅線の外周に平均厚さが0.16mm(160μm)となるように押出被覆した。その後、第1の冷却装置にて、押出被覆した樹脂組成物をPPS樹脂の結晶化温度である約200℃まで冷却した。そして、樹脂組成物で押出被覆された平角銅線を第1の冷却装置からプラズマ処理装置まで搬送する間にPPS樹脂の結晶化を促進させ、平均厚さ160μmの絶縁層を形成した。それから、プラズマ処理装置にて、絶縁層の表面に対してプラズマ処理を0.23秒間施し、絶縁層を表面改質し、絶縁電線を得た。その後、10秒以内に第2の押出機に導入し、表面改質した絶縁層の表面に、フェノキシ樹脂を99質量部と硬化剤を1質量部とを混合した融着性樹脂組成物を平均厚さ0.04mm(40μm)で押出被覆し、第2の冷却装置にて冷却することで、厚さ40μmの融着層を形成した。これにより、実施例1の融着性絶縁電線を得た。なお、本実施例では、平角銅線として、断面が矩形であって、長辺が約3.2mm、短辺が約1.5mmのものを用いた。作製条件を下記表1に示す。
(実施例2)
実施例2では、表1に示すように、絶縁層の厚さを0.24mm(240μm)に、プラズマ処理時間を0.55秒にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に融着性絶縁電線を作製した。
(実施例3)
実施例3では、表1に示すように、エポキシ樹脂を100質量部含む塗料を絶縁層の表面に塗布して焼付することにより、平均厚さが0.02mm(200μm)の融着層を形成した以外は、実施例1と同様に融着性絶縁電線を作製した。
(実施例4)
実施例4では、表1に示すように、絶縁層の厚さを0.35mm(350μm)に変更した以外は、実施例1と同様に融着性絶縁電線を作製した。
(比較例1)
比較例1では、プラズマ処理を施さない以外は、実施例1と同様に融着性絶縁電線を作製した。
(比較例2)
比較例2では、プラズマ処理を施さない以外は、実施例3と同様に融着性絶縁電線を作製した。
(比較例3,4)
比較例3,4では、絶縁層を、PPS樹脂を含む樹脂組成物を押し出す代わりに、ポリアミドイミド樹脂を100質量部含む塗料を塗布・焼付により形成した以外は、実施例3と同様に融着性絶縁電線を作製した。
<評価方法>
実施例1〜4、および比較例1〜4の融着性絶縁電線を以下の方法により評価した。
(質量濃度比O/S)
絶縁層の表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sは、融着性絶縁電線の長手方向に垂直な断面において、絶縁層における、融着層との界面から20μmの深さの10μm四方の領域をEDXにより元素分析を行い、硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sを算出した。なお、X線出力は7kVとした。
(融着後の接着力)
まず、融着後の接着力を計測するための試験片を作製した。
具体的には、まず、融着性絶縁電線を40cmの長さに切断し、融着層の外表面をエチルアルコールで洗浄して油膜等を除去した。続いて、融着性絶縁電線を5%伸長して平坦にし、10cmの長さに切断して、4本のサンプルを準備した。この4本のサンプルを、JIS C 2103:2013の付属書JCに規定された常温での固着力(ストラッカ法)を参考にして、図5に示すように配置した。図5は、融着性絶縁電線の融着後の接着力を評価するための試験片の斜視図である。図5に示すように、4本のサンプル51を配置した後、各サンプル51がずれないように粘着テープで仮固定し、図5に示す上下方向から加圧しながら、150℃の温度で15分間加熱した。これにより、各サンプル51を融着させ、試験片50を作製した。
続いて、試験片50について、JIS C 2103:2013に記載された電気絶縁用ワニス試験方法を参考にして、融着後の接着力を計測した。
具体的には、図5に示す試験片50の両端をオートグラフのクランプでつかみ、5m/minの速度で引っ張り、各サンプル51の接着が破壊される最大引張強度を測定した。そして、図5に示す試験片の被覆接触面積(100mm×3.2mm×2)に対する最大引張強度から、絶縁層と融着層のせん断接着強度(最大引張強度/被覆接触面積)を得た。このときのせん断接着強度が1.5N/mm以上を○とし、1.5N/mm未満を×とした。
(電気絶縁性)
融着層を設ける前の絶縁電線を2本準備し、これらを長辺の絶縁層同士が長さ150mmに渡って隙間が無いように密着させて、試料を作製した。この試料の2本の導体間に50Hzの交流電流で電圧を10V/sで昇圧させながら50pCの部分放電が50回以上発生する電圧を測定し、1550V以上となるものを○、1550V未満となるものを×とした。
(絶縁層の厚さの均一さ)
融着性絶縁電線をエポキシ樹脂内に包埋し、融着性絶縁電線の長手方向に垂直な面で断面研磨し、融着性絶縁電線の長手方向に垂直な断面を得て、長辺中央2か所、短辺中央2か所、角部4か所の計8か所の絶縁層12の厚さを計測し、その平均値を算出した。前記8か所の厚さと平均値との差がすべて平均値の10%未満であれば○とし、1か所でも平均値の10%以上であれば×とした。
<評価結果>
評価結果を上記表1に示す。
実施例1〜4では、絶縁層の表面における質量濃度比O/Sが0.2以上であり、PPS樹脂を含む絶縁層の表面に活性な官能基を十分に導入できたことから、絶縁層と融着層との密着性が高く、融着後の接着力が良好であることが確認された。
また、実施例1〜4ではいずれも、絶縁層を、PPS樹脂を含む樹脂組成物を押し出して形成しているため、電気絶縁性および絶縁層の厚さの均一さも良好であることが確認された。
一方、比較例1,2では、PPS樹脂を含む絶縁層をプラズマ処理で表面改質しなかったため、絶縁層表面での質量濃度比O/Sが0.2未満と小さく、絶縁層と融着層との密着性が低いことが確認された。これは、PPS樹脂を含む絶縁層が化学的に安定で、融着層を形成するフェノキシ樹脂やエポキシ樹脂との化学的親和性が低いことによるものと考えられる。
比較例3では、PPS樹脂の代わりにポリアミドイミド樹脂で絶縁層を形成することにより、融着層と絶縁層との間で高い密着性を得られたが、電気絶縁性が不十分となることが確認された。これは、ポリアミドイミド樹脂の比誘電率がPPS樹脂に比べて高く、ポリアミドイミド樹脂を用いて、PPS樹脂で形成する場合と同じような厚さで絶縁層を形成すると、十分な電気絶縁性を得られないためと考えられる。
比較例4では、比較例3と同様にポリアミドイミド樹脂で絶縁層を形成するとともに、その厚さを0.16mmと比較例3よりも厚くしたが、絶縁層の厚さが周方向でばらつき、均一とならないことが確認された。また、絶縁層の厚さが不均一であることから、電気絶縁性も低くなることが確認された。
なお、比較例3および比較例4では、絶縁層にSを含まないポリアミドイミド樹脂を用いているため、質量濃度比O/Sは算出せず、「−」と表記した。
このように、PPS樹脂を含み、化学的に安定で他の物質との化学的親和性の低い絶縁層であっても、表面改質により当該絶縁層の表面における質量濃度比O/Sを0.2以上とすることで、融着性樹脂との化学的親和性を高め、絶縁層と融着層との密着性を向上できる。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
[付記1]
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置され、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなる絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上となるように形成されている、絶縁電線が提供される。
[付記2]
付記1の絶縁電線において、好ましくは、
前記絶縁層を形成する前記樹脂組成物はシリコーンゴムを含み、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂と前記シリコーンゴムとを質量比で90:10〜98:2の範囲内で含有する。
[付記3]
付記1又は2の絶縁電線において、好ましくは、
前記絶縁層は、結晶化度が95%以上である。
[付記4]
付記1〜3のいずれかの絶縁電線において、好ましくは、
前記絶縁層の厚さは160μm以上240μm以下である。
[付記5]
本発明の他の態様によれば、
付記1〜4のいずれかの絶縁電線の前記絶縁層の外周に融着性樹脂組成物からなる融着層を備える、融着性絶縁電線が提供される。
[付記6]
本発明の他の態様によれば、
絶縁電線を巻回し、隣接する前記絶縁電線が融着性樹脂組成物からなる融着層で融着されるコイルであって、
前記絶縁電線は、
導体と、前記導体の外周に配置され、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなる絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、前記融着層と接する表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上である、コイルが提供される。
[付記7]
本発明の他の態様によれば、
導体の外周に、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層の表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上となるように前記絶縁層を表面改質する表面改質工程と、を有する絶縁電線の製造方法が提供される。
[付記8]
付記7の絶縁電線の製造方法において、好ましくは、
前記表面改質工程では、前記絶縁層の表面にプラズマおよび紫外線の少なくとも1つを照射する。
[付記9]
本発明の他の態様によれば、
付記7又は8に記載の絶縁電線の製造方法により絶縁電線を製造した後、表面改質された前記絶縁層の外周に、融着性樹脂組成物からなる融着層を形成する融着層形成工程を有する、融着性絶縁電線の製造方法が提供される。
[付記10]
付記9の融着性絶縁電線の製造方法において、好ましくは、
前記融着層形成工程を、前記表面改質工程の後、10秒以内に行う。
[付記11]
本発明の他の態様によれば、
導体の外周に、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層の表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上となるように前記絶縁層を表面改質し、絶縁電線を得る表面改質工程と、
表面改質された前記絶縁層の外周に、融着性樹脂組成物からなる融着層を形成して融着性絶縁電線を得る融着層形成工程と、
前記融着性絶縁電線を巻回する巻回工程と、
巻回により隣接する前記融着性絶縁電線を前記融着層で融着させる融着工程と、を有する、コイルの製造方法が提供される。
1 融着性絶縁電線
10 絶縁電線
11 導体
12 絶縁層
13 融着層

Claims (7)

  1. 導体と、
    前記導体の外周に配置され、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなる絶縁層と、を備え、
    前記絶縁層は、表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上である、絶縁電線。
  2. 前記絶縁層を形成する前記樹脂組成物はシリコーンゴムを含み、前記ポリフェニレンサルファイド樹脂と前記シリコーンゴムとを質量比で90:10〜98:2の範囲内で含有する、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記絶縁層は、結晶化度が95%以上である、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. 前記絶縁層の厚さは160μm以上240μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁電線。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁電線の前記絶縁層の外周に融着性樹脂組成物からなる融着層を備える、融着性絶縁電線。
  6. 導体の外周に、ポリフェニレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
    前記絶縁層の表面における硫黄Sに対する酸素Oの質量濃度比O/Sが0.2以上となるように前記絶縁層を表面改質する表面改質工程と、を有する絶縁電線の製造方法。
  7. 請求項6に記載の絶縁電線の製造方法により絶縁電線を製造した後、表面改質された前記絶縁層の外周に、融着性樹脂組成物からなる融着層を形成する融着層形成工程を有する、融着性絶縁電線の製造方法。
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