JP2014103045A - 絶縁電線及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】絶縁被覆の導体への密着性が高く、コイルに加工される際に被覆浮きや割れが抑制される絶縁電線及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導体と、導体の外周に形成され、ポリフェニレンサルファイドまたは芳香族ポリエーテルケトンを主成分として含む樹脂組成物からなる絶縁被覆と、を備え、絶縁被覆は、導体が樹脂組成物の融点以上で予め加熱された状態で形成されている、絶縁電線である。
【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁電線及びその製造方法に関し、特に回転電機や変圧器などのコイルに用いられる絶縁電線及びその製造方法に関する。
回転電機や変圧器などの電気機器はコイルを備える。コイルにはエナメル被覆絶縁電線(絶縁電線)が用いられており、コイルは絶縁電線をコアに巻き付けることにより形成される。絶縁電線は、コイルの用途・形状に合致した断面形状(例えば、略円形状や略矩形状)を有する導体の外周に単層または複数層の絶縁被覆を備えた構造となっている。絶縁被覆は、樹脂を有機溶剤に溶解させた絶縁塗料を導体上に塗布して焼付ける方法や、予め調合した樹脂組成物を導体上に押出被覆する方法などにより形成される。
近年、電気機器には小型化が要求されており、電気機器におけるコイルは小型化される傾向にある。コイルを小型化する場合、小径のコアに対して絶縁電線を高い張力で高密度に巻き付け、絶縁電線の占積率を向上させる。例えば、略矩形状の断面を有する導体(以下、平角導体ともいう)を備える絶縁電線を用いる場合、小径のコアに対して、伸長させた絶縁電線をエッジワイズに曲げて巻き付けることにより、絶縁電線の占積率を向上させてコイルを小型化することができる。このように、コイルを小型化する場合、絶縁電線には過酷な加工ストレスが加わるため、その絶縁被覆には過酷な加工ストレスに耐えられるような高い機械的特性が要求される。
また、電気機器には高出力化が要求されており、電気機器におけるコイルは高電圧で駆動されるとともにインバータ駆動化される傾向にある。つまり、コイルの絶縁電線には高電圧駆動とインバータサージの重畳により高い電圧がかかる傾向にある。絶縁電線において電圧が高くなると、部分放電の発生が高まるため、絶縁被覆には高い部分放電開始電圧が要求される。
これらの要求に対応する絶縁被覆としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS樹脂)や芳香族ポリエーテルケトンなどからなるものが知られている。これらの樹脂は高い部分放電開始電圧を示すとともに、優れた機械的特性を示すことが知られている。ただし、これらの樹脂からなる絶縁被覆は、導体との密着性が低いため、他の樹脂からなる樹脂層を介して導体上に形成される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特許文献1では、導体に、少なくとも1層のエナメル焼き付け層と、PPS樹脂などからなる少なくとも1層の絶縁被覆とを順次形成した耐インバータサージ絶縁ワイヤが提案されている。特許文献1によれば、導体とPPS樹脂からなる絶縁被覆との間にエナメル焼き付け層を介在させることによって、導体と絶縁被覆との接着強度を下げることなく、高い部分放電開始電圧(900Vp程度)を有する絶縁ワイヤを提供できるとされている。
また、特許文献2では、導体と導体を被覆する2層以上の絶縁被覆とを有し、2層以上の絶縁被覆のうちの最内層以外の1層がPPS樹脂からなる絶縁被覆である多層絶縁電線が提案されている。特許文献2によれば、耐熱性と耐薬品性に優れる多層絶縁電線を提供できるとされている。
このように、PPS樹脂などを含む絶縁被覆を導体上に形成する場合、絶縁被覆の導体への密着性を確保するため、導体と絶縁被覆との間に介在層(エナメル焼付け層など)を設けて多層構造としていた。
特許第4177295号公報 再公表2005−106898号公報
しかしながら、特許文献1及び2に示す絶縁電線は、多層構造であって構造が複雑であるため、製造工程が煩雑になりやすく、製造コストが増大しやすいといった問題があった。
この点、PPS樹脂などからなる絶縁被覆を導体に直接形成して絶縁電線を製造することもできるが、得られる絶縁電線では、絶縁被覆の導体への密着性が低い傾向がある。絶縁被覆の導体への密着性が低いと、絶縁電線をコイルに加工する際に、被覆浮きや、絶縁被覆の表面にクラックなどの割れが生じるおそれがある。特に、平角導体を用いた絶縁電線では、コイルに加工する際にエッジワイズに曲げて加工されるため、被覆浮きや割れが生じやすい。
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、絶縁被覆の導体への密着性が高く、コイルに加工される際に被覆浮きや割れが抑制される絶縁電線及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第1の態様によれば、
導体と、前記導体の外周に形成され、ポリフェニレンサルファイドまたは芳香族ポリエーテルケトンを主成分として含む樹脂組成物からなる絶縁被覆と、を備え、前記絶縁被覆は、前記導体が前記樹脂組成物の融点以上で予め加熱された状態で形成されている、絶縁電線が提供される。
本発明の第2の態様によれば、
前記絶縁被覆は、前記導体が前記樹脂組成物の融点以上発泡開始温度以下で予め加熱された状態で形成されている、第1の態様の絶縁電線が提供される。
本発明の第3の態様によれば、
導体と、前記導体の外周に形成され、ポリフェニレンサルファイドまたは芳香族ポリエーテルケトンを主成分として含む樹脂組成物からなる絶縁被覆と、を備える絶縁電線の製造方法であって、前記導体を前記樹脂組成物の融点以上で加熱する加熱工程と、加熱された前記導体の外周に前記樹脂組成物を押出被覆して絶縁被覆を形成する絶縁被覆工程と、を備える、絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明の第4の態様によれば、
前記加熱工程は、通電加熱により前記導体を加熱する、第3の態様の絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明の第5の態様によれば、
前記加熱工程は、不活性ガス雰囲気中で前記導体を加熱する、第3の態様または第4の態様の絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明によれば、絶縁被覆の導体への密着性が高く、コイルに加工される際に被覆浮きや割れが抑制される絶縁電線を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る絶縁電線の構造を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る絶縁電線の断面図である。 従来の絶縁電線の断面図である。 本発明の一実施形態に係る絶縁電線の製造方法で用いる製造装置の一例を示す概略図である。
上述したように、ポリフェニレンサルファイド(PPS樹脂)などからなる絶縁被覆を導体に直接形成して、絶縁電線を製造する場合、得られる絶縁電線では、絶縁被覆の導体への密着性が不十分となる。このような絶縁電線をコイルに加工すると、被覆浮きや割れが生じる。特に、略矩形状の断面を有する導体(以下、平角導体ともいう)を用いた絶縁電線では、エッジワイズに曲げてコイルに加工されるため、被覆浮きや割れが生じやすい。
絶縁被覆の導体への密着性を改善する方法としては、絶縁被覆を形成した後に絶縁電線を改めて加熱する方法が考えられる。この方法によれば、絶縁被覆を再溶融させて樹脂と導体との接触を確保した上で硬化させることにより、絶縁被覆の導体への密着性を向上させることができる。ただし、この方法では再溶融により絶縁被覆のコーナー部が薄くなり、絶縁被覆の均一性が損なわれるおそれがある。
そこで、本発明者らは、PPS樹脂などからなる絶縁被覆の導体への密着性が低い要因について鋭意検討を行った。そして、密着性が低い要因は、導体に絶縁被覆を形成するときの導体と溶融した樹脂との温度差であることを見出した。具体的には、導体に絶縁被覆を形成する場合、加熱により溶融した樹脂を導体の外周に押出して形成するが、加熱により溶融している高温の樹脂と常温の導体との間では温度差がある。この温度差のため、押出される樹脂は、導体と接触した瞬間に導体により冷却されて硬化し始め、導体と密着した状態で硬化することが困難となる。この結果、樹脂が硬化して形成される絶縁被覆は、導体との密着性が低い。
本発明者らは、樹脂と導体との温度差に着目し、その温度差をなくすように絶縁被覆を形成することで、絶縁被覆の導体への密着性を向上させることができる、という着想に至った。つまり、予め加熱された導体に樹脂組成物を押出被覆し、絶縁被覆を形成することにより、樹脂と導体との温度差に起因する絶縁被覆の導体への密着性の低下を抑制できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて成されたものである。
〈本発明の一実施形態〉
以下、本発明の一実施形態に係る絶縁電線について図を参照しながら説明をする。図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線の構造を示す概略図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線の断面図である。
(1)絶縁電線
本実施形態に係る絶縁電線1は、平角導体10と、平角導体10の外周に形成され、ポリフェニレンサルファイド(PPS樹脂)または芳香族ポリエーテルケトンを主成分として例えば80質量部以上100質量部以下の含有量で含む樹脂組成物からなる絶縁被覆11と、を備え、絶縁被覆11は、平角導体10が樹脂組成物の融点以上で予め加熱された状態で形成されている。
平角導体10は、特に限定されず、例えば低酸素銅や無酸素銅等からなる銅線、銅合金線の他、銀等の他の金属線などが用いられる。また、平角導体10の導体径は、特に限定されず、用途に応じて最適な数値が適宜選択される。
絶縁被覆11は、平角導体10の外周に形成されており、PPS樹脂または芳香族ポリエーテルケトンを主成分として例えば80質量部以上100質量部以下の含有量で含む樹脂組成物からなる。絶縁被覆11は、加熱により溶融した樹脂組成物が平角導体10に押出されて形成されている。
本実施形態において、絶縁被覆11は、平角導体10に押出される樹脂組成物の温度と導体の温度との温度差をなくすように、平角導体10が樹脂組成物の融点以上で予め加熱された状態で形成されている。このため、押出される樹脂組成物は、平角導体10と接触した瞬間に硬化することなく、溶融した状態で維持されて、平角導体10と十分に密着した状態で硬化する。これにより、絶縁被覆11は平角導体10との密着性が高く、被覆浮きが抑制されることとなる。
一方、絶縁被覆11が形成されるときに平角導体10の温度が常温であると、すなわち平角導体10の温度が樹脂組成物と比較して低いと、押出される樹脂組成物は、平角導体10と接触した瞬間に硬化し始め、平角導体10と十分に密着しないまま硬化して絶縁被覆11となる。この場合、図3に示すように、絶縁被覆11の平角導体10への密着性が低く、被覆浮きが生じる場合がある。
絶縁被覆11は、平角導体10が樹脂組成物の融点以上で予め加熱された状態で形成されているが、平角導体10の加熱される温度(以下、予備加熱温度ともいう)が高すぎると樹脂組成物が発泡し、形成される絶縁被覆11は押出外観が低下したり、変色したりする場合がある。よって、絶縁被覆11は、平角導体10が樹脂組成物の融点以上発泡開始温度以下で予め加熱された状態で形成されていることが好ましい。これによれば、絶縁被覆11は平角導体10との密着性が高く、良好な押出外観を有するとともに変色が抑制されることになる。
絶縁被覆11を構成する樹脂組成物は、PPS樹脂または芳香族ポリエーテルケトンを含む。PPS樹脂や芳香族ポリエーテルケトンは結晶性の熱可塑性樹脂であり、高い部分放電開始電圧を示すとともに優れた機械的特性や耐熱性を有する。芳香族ポリエーテルケトンとしては、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンなどが挙げられるが、入手容易性からポリエーテルエーテルケトン(PEEK樹脂)が好ましい。
樹脂組成物にPPS樹脂が含まれる場合、平角導体10の予備加熱温度は、PPS樹脂の融点以上、すなわち280℃以上となる。PPS樹脂は300℃を超えると押出外観が低下し、350℃を超えると著しく発泡して変色する。このため、樹脂組成物にPPS樹脂が含まれる場合、平角導体10の予備加熱温度を280℃以上、好ましくは280℃以上300℃以下とする。
樹脂組成物に芳香族ポリエーテルケトンとして例えばPEEK樹脂が含まれる場合、平角導体10の予備加熱温度は、PEEK樹脂の融点以上、すなわち340℃以上となる。PEEK樹脂は360℃を超えると押出外観が低下し、著しく発泡して変色するため、樹脂組成物にPPS樹脂が含まれる場合、平角導体10の予備加熱温度を340℃以上、好ましくは340℃以上360℃以下とする。
樹脂組成物は、絶縁被覆11の諸特性(機械的特性、絶縁性、導体との密着性など)を向上させるため、上記PPS樹脂または芳香族ポリエーテルケトン以外の他の樹脂を含有してもよい。他の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、オレフィン系共重合樹脂、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなど、またはこれらを複数組み合わせたものが挙げられる。
他の樹脂の含有量は、PPS樹脂または芳香族ポリエーテルケトンによる特性を損ねない程度であれば特に限定されない。例えば、合計が100質量部となるように、PPS樹脂または芳香族ポリエーテルケトン80質量部以上95質量部以下、他の樹脂5質量部以上20質量部以下とすることが好ましい。他の樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、絶縁被覆11の機械的特性及び部分放電開始電圧をさらに向上することができる。
なお、絶縁被覆11の厚さは特に限定されず、用途に応じて最適な数値が選択される。本実施形態において、絶縁被覆11は、PPS樹脂などの比誘電率の低い樹脂から構成されているため、厚さが薄くても高い部分放電開始電圧を示す。
(2)絶縁電線の製造方法
次に、上記絶縁電線の製造方法について、図4を参照しながら説明をする。図4は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線の製造方法で用いる製造装置の一例を示す概略図である。
本実施形態の絶縁電線1の製造方法は、平角導体10と、平角導体10の外周に形成され、ポリフェニレンサルファイドまたは芳香族ポリエーテルケトンを含む樹脂組成物からなる絶縁被覆11と、を備える絶縁電線1の製造方法であって、平角導体10を樹脂組成物の融点以上で加熱する加熱工程と、加熱された平角導体10の外周上に樹脂組成物を押出被覆して絶縁被覆11を形成する絶縁被覆形成工程と、を備える。
まず、図4に示すように、送出機20により平角導体10を所定の速度で送り出し、押出機50へ導入する。平角導体10が押出機50に導入される前に、平角導体10を加熱装置30により予め加熱する。このときの加熱温度は、押出す樹脂組成物の融点以上、好ましくは樹脂組成物の融点以上発泡開始温度以下とする。樹脂組成物がPPS樹脂を含有する場合、加熱温度は280℃以上、好ましくは280℃以上300℃以下とする。また樹脂組成物が芳香族ポリエーテルケトンとしてPEEK樹脂を含有する場合、加熱温度は340℃以上、好ましくは340℃以上360℃以下とする。
加熱装置30において平角導体10を予め加熱する方法としては通電加熱、熱風加熱、誘導加熱などがあるが、通電加熱が好ましい。熱風加熱は、平角導体10の表面放散熱抵抗(W/mm・℃)が比較的小さく、加熱効率が低いため、絶縁被覆形成工程における引取り速度を増加させる場合、加熱距離が増加する。この結果、例えば窒素雰囲気中で熱風加熱する場合、炉内全体を窒素置換する必要があり、生産性が劣ることがある。誘導加熱は、エネルギーロスが90%前後と高く、加熱効率が10%前後と非効率である。また、平角導体10の位置ずれなどにより加熱効率が変化するため、平角導体10の温度にバラつきが生じ、所定の温度に予熱できない場合がある。これに対して、通電加熱は、加熱効率が50%以上と高く、平角導体10を短時間で加熱できる。さらに、平角導体10の温度のバラつきも抑制することができる。
加熱装置30において平角導体10を予め加熱する場合、不活性ガス雰囲気中で加熱することが好ましい。平角導体10は加熱されて高温状態となると、露出した表面が酸化する傾向があり、平角導体10の表面に形成される絶縁被覆11の密着性が低下する場合がある。このため、不活性ガス雰囲気中で平角導体10を加熱することにより、平角導体10の酸化を抑制することができる。不活性ガスとしては特に限定されないが、低コストで汎用的な気体である窒素が好ましい。
なお、加熱された平角導体10を押出機50に導入する前に保温管40に挿通させてもよい。保温管40によれば、加熱された平角導体10の温度の低下を抑制することができる。
また、保温管40内を不活性ガスで置換し、平角導体10の表面の酸化を抑制するようにしてもよい。
次に、加熱された平角導体10を押出機50に導入する。押出機50において、加熱により溶融した樹脂組成物を平角導体10の外周に直接押出被覆する。押出被覆のとき、平角導体10は加熱されて樹脂組成物の融点以上となっており、溶融した樹脂組成物は平角導体10と接触して瞬間的に固化することなく、溶融して流動性が高い状態で維持されることとなる。このため樹脂分子が平角導体10の表面(金属表面)に入り込むことができる。
次に、樹脂組成物で被覆された平角導体10を水槽60に導入する。加熱により溶融した樹脂組成物を水槽60で冷却し、硬化させて絶縁被覆11とすることで、絶縁電線1を得る。絶縁被覆11は、樹脂組成物の樹脂分子が平角導体10の表面に入り込んだ状態で硬化しているため、いわゆるアンカー効果により平角導体10との密着性が高い。つまり、本実施形態の絶縁電線1によれば、コイルに加工する際に、絶縁被覆11の平角導体10への密着性の低さに起因して生じる被覆浮きや割れなどが抑制される。
最後に、得られた絶縁電線1を巻取機70により巻き取る。
[本実施形態に係る効果]
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
本実施形態の絶縁電線によれば、絶縁被覆は、平角導体が樹脂組成物の融点以上で予め加熱された状態で形成されている。これにより、絶縁電線は、絶縁被覆の平角導体への密着性が高い。このため、コイルに加工される際に伸長され、かつエッジワイズに曲げられるような過酷な加工ストレスが加わった場合であっても、被覆浮きや絶縁被覆の表面にクラックなどの割れが生じにくい。
また、本実施形態の絶縁電線によれば、PPS樹脂やPEEK樹脂を含む樹脂組成物からなる絶縁被覆が平角導体に直接形成されており、他の樹脂層を介在する必要がないため、細径化が可能となっている。
また、本実施形態の絶縁電線によれば、絶縁被覆は、平角導体が樹脂組成物の融点以上発泡開始温度以下で予め加熱された状態で形成されていることが好ましい。これにより、絶縁被覆は押出外観が良好であるばかりか、発泡による変色が抑制される。
本実施形態の製造方法によれば、平角導体を予め加熱する加熱工程を有している。これにより、PPS樹脂などからなる絶縁被覆の平角導体への密着性を向上し、平角導体に直接形成することができる。つまり、絶縁被覆と平角導体との間に介在層を設ける必要がないため、製造工程を簡略化し、製造コストを低減することができる。
また、本実施形態の製造方法では、通電加熱により平角導体を加熱することが好ましい。通電加熱によれば、平角導体を短時間で加熱できる上、平角導体の加熱温度のバラつきを抑制できるため、絶縁被覆の平角導体への密着性をさらに向上させることができる。
また、本実施形態の製造方法では、不活性ガス雰囲気中で平角導体を加熱することが好ましい。不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、平角導体の表面における酸化を抑制し、絶縁被覆の平角導体への密着性をさらに向上させることができる。
[その他の実施形態]
上記実施形態では、導体として、断面が略矩形状の平角導体を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明によれば、絶縁被覆を形成するときの導体の温度と樹脂の温度との温度差をなくすようにしており、導体の断面形状に限定されず、上述した効果を得ることができる。導体の断面形状としては、略円形状の断面を有する円形導体を用いることも可能である。
次に、本発明の実施例を説明する。本実施例では、絶縁電線を製造し、絶縁電線の加工性や外観により絶縁被覆を評価した。これらの実施例は、本発明に係る絶縁電線の一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
(1)材料
以下の実施例及び比較例において用いた材料は次のとおりである。
ベース樹脂として、次のものを用いた。
ポリフェニレンサルファイド:東レ製「トレリナ」(融点280℃)
ポリエーテルエーテルケトン:ダイセル・エボニック製「VESTAKEEP」(融点340℃)
ポリアミド:クラレ製「ジェネスタ」(融点306℃)
導体として、次のものを用いた。
銅線:平角導体(断面形状:約3mm×約2mm)
(1)絶縁電線の製造
上記材料を用いて絶縁電線を製造した。絶縁電線の製造においては、図4に示す製造装置により行った。
(実施例1,2)
送出機20により銅線を所定の速度で送り出すとともに、加熱装置30により銅線を窒素雰囲気下で通電加熱し、銅線を予備加熱した。予備加熱された銅線を保温管40に挿通させ、押出機50に導入した。押出機50において、ポリフェニレンサルファイドとポリアミドとを質量部比90:10で含む樹脂組成物を銅線の外周に押出被覆した。その後、樹脂組成物で被覆された銅線を水槽60に導入し、冷却することにより絶縁電線を製造した。なお、樹脂組成物の押出被覆においては、絶縁被覆の厚さが0.15mm以上0.20mm以下となるように行った。
実施例1,2では銅線の予備加熱温度を変更しており、実施例1では280℃、実施例2では300℃とした。
(実施例3,4)
実施例3,4では、芳香族ポリエーテルケトンとしてのポリエーテルエーテルケトンとポリアミドとを質量部比90:10で含む樹脂組成物を用いて、銅線の予備加熱温度を変更した以外は、実施例1,2と同様に絶縁電線を製造した。予備加熱温度を、実施例3では340℃、実施例4では360℃とした。実施例1〜4の絶縁電線の製造条件を以下の表1に示す。
Figure 2014103045
(比較例1,2)
比較例1,2では、銅線の予備加熱温度を変更した以外は、実施例1,2と同様に絶縁電線を製造した。予備加熱温度を、比較例1では200℃、比較例2では250℃とした。
(比較例3,4)
比較例3,4では、銅線の予備加熱温度を変更した以外は、実施例3,4と同様に絶縁電線を製造した。予備加熱温度を、比較例3では250℃、比較例4では310℃とした。比較例1〜4の絶縁電線の製造条件を以下の表2に示す。
Figure 2014103045
(3)絶縁電線の評価
続いて、実施例1〜4及び比較例1〜4の絶縁電線について、加工性及び外観を評価した。それぞれの評価方法について以下に説明する。
(加工性)
絶縁電線の加工性は、JIS C3216−2に準拠したエッジワイズ曲げ試験により評価した。具体的には、試験長200mmの絶縁電線の両端を引っ張り、30%伸長後、導体幅の1倍径をもつ丸棒の外周に沿って、一平面内にあるように保ちながら、中央部をエッジワイズに180度曲げたときに、絶縁被覆に、被覆浮きおよび亀裂(クラック)が生じないものを「○」(合格)、絶縁被覆に、被覆浮きまたは亀裂が生じたものを「×」(不合格)とした。
(外観)
絶縁電線の外観は、絶縁被覆の表面における発泡の有無を確認し、発泡の発生がなく、滑らかな場合を「○」(合格)、発泡が確認される場合を「×」(不合格)とした。
(4)評価結果
実施例1〜4では、銅線を樹脂組成物の融点以上の温度に加熱した後に、樹脂組成物を押出被覆して絶縁被覆を形成したため、図2に示すように、銅線(平角導体10)と絶縁被覆11との密着性が高く、絶縁被覆11の剥がれや浮きが確認されなかった。実施例1〜4の絶縁電線を用いてコイルを製造する際に、絶縁電線を伸長し、かつエッジワイズに曲げるような過酷な加工ストレスを加えたが、その絶縁被覆の表面にはクラックなどの割れは確認されず、いずれにおいても加工性評価は「○」であった。
また、実施例1〜4では、銅線を樹脂組成物の発泡開始温度以下で加熱して絶縁被覆を形成したため、絶縁被覆の外観は滑らかで良好であり、また変色も確認されず、いずれにおいても外観評価は「○」であった。
これに対して、比較例1〜4では、銅線を予め加熱したものの、その加熱温度が樹脂組成物の融点未満であったため、図3に示すように、絶縁被覆の剥がれや浮きが確認された。比較例1〜4の絶縁電線を用いてコイルを製造したが、その絶縁被覆の表面にはクラックなどの割れが確認され、いずれにおいても加工性評価は「×」であった。
また、比較例1〜4では、銅線を樹脂組成物の発泡開始温度以下で加熱して絶縁被覆を形成したため、絶縁被覆の外観は滑らかで良好であり、また変色も確認されず、いずれにおいても外観評価は「○」であった。
以上に示すように、本発明の絶縁電線によれば、絶縁被覆は、導体が樹脂組成物の融点以上で予め加熱された状態で形成されており、絶縁被覆の導体への密着性が高い。これにより、本発明の絶縁電線は、コイルに加工される際に伸長され、かつエッジワイズに曲げられるような過酷な加工ストレスが加わった場合であっても、被覆浮きや絶縁被覆の表面にクラックなどの割れが生じにくい。
1 絶縁電線
10 導体(平角導体)
11 絶縁被覆
20 送出機
30 加熱装置
40 保温管
50 押出機
60 水槽
70 巻取機

Claims (5)

  1. 導体と、
    前記導体の外周に形成され、ポリフェニレンサルファイドまたは芳香族ポリエーテルケトンを主成分として含む樹脂組成物からなる絶縁被覆と、を備え、
    前記絶縁被覆は、前記導体が前記樹脂組成物の融点以上で予め加熱された状態で形成されている
    ことを特徴とする絶縁電線。
  2. 前記絶縁被覆は、前記導体が前記樹脂組成物の融点以上発泡開始温度以下で予め加熱された状態で形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 導体と、前記導体の外周に形成され、ポリフェニレンサルファイドまたは芳香族ポリエーテルケトンを主成分として含む樹脂組成物からなる絶縁被覆と、を備える絶縁電線の製造方法であって、
    前記導体を前記樹脂組成物の融点以上で加熱する加熱工程と、
    加熱された前記導体の外周に前記樹脂組成物を押出被覆して絶縁被覆を形成する絶縁被覆形成工程と、を備える
    ことを特徴とする絶縁電線の製造方法。
  4. 前記加熱工程は、通電加熱により前記導体を加熱する
    ことを特徴とする請求項3に記載の絶縁電線の製造方法。
  5. 前記加熱工程は、不活性ガス雰囲気中で前記導体を加熱する
    ことを特徴とする請求項3又は4に記載の絶縁電線の製造方法。
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