JPWO2013094499A1 - 光学活性なα−置換−β−アミノ酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、光学活性なα−置換−β−アミノ酸の製造方法に関する。
式(2)
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜10のアシル基、カルボキシル基又はカルボキサミド基を示す。R2は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数8〜20のアラルキルオキシカルボニル基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜10の環状エーテル基を示す。R3は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す。*は不斉中心を示す。)
で示される光学活性なα−置換−β−アミノ酸は、医薬原体化合物を製造するための製造用原料又は中間体化合物として有用である。
例えば、WO 00/61134には、抗菌剤の製造用原料である光学活性なα−シクロペンチルメチル−β−(N−ホルミル−N−ヒドロキシ)アミノ酸の製造方法が記載されている。
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜10のアシル基、カルボキシル基又はカルボキサミド基を示す。R2は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数8〜20のアラルキルオキシカルボニル基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜10の環状エーテル基を示す。R3は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す。*は不斉中心を示す。)
で示される光学活性なα−置換−β−アミノ酸は、医薬原体化合物を製造するための製造用原料又は中間体化合物として有用である。
例えば、WO 00/61134には、抗菌剤の製造用原料である光学活性なα−シクロペンチルメチル−β−(N−ホルミル−N−ヒドロキシ)アミノ酸の製造方法が記載されている。
本発明は、前記式(2)で示される光学活性なα−置換−β−アミノ酸の新規な製造方法を提供する。
即ち、本発明は以下の〔1〕〜〔12〕の発明を含む。
〔1〕式(2)で示される光学活性なα−置換−β−アミノ酸(以下、場合により「光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)」という)の製造方法であり、
式(1)
(式中、R4は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示す。R1、R2、R3及びXは上記と同じ意味である。)
で示されるα−置換−β−アミノ酸エステル(以下、場合により「α−置換−β−アミノ酸エステル(1)」という)の光学異性体混合物の−CO2R4基(以下、場合により「エステル部位」という)を不斉加水分解する能力を有する酵素、又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物を用いて、前記光学異性体混合物を不斉加水分解する工程を含む製造方法。
〔2〕R3が置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基である〔1〕記載の方法。
〔3〕R3がシクロペンチルメチル基である〔1〕記載の方法。
〔4〕R1が炭素数1〜10のアシル基である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕R1がホルミル基、アセチル基、プロピオニル基又はベンゾイル基である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕R1が水素原子である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕R2が炭素数7〜20のアラルキル基である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕R2がベンジル基である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕R4がメチル基又はエチル基である〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕酵素が、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、又はムコール(Mucor)属の微生物を起源とする加水分解酵素、或いは、該加水分解酵素を構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕酵素が、クロモバクテリウム・チョコレータム(Chromobacterium chocolatum)、又はムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)の微生物を起源とする加水分解酵素、或いは、該加水分解酵素を構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素であるである〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕酵素が、クロモバクテリウムSC−YM−1株(工業技術院 生命工学技術研究所 寄託番号:FERM BP−6703)由来のエステラーゼ又はリパーゼ、或いは、該エステラーゼ又はリパーゼを構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
即ち、本発明は以下の〔1〕〜〔12〕の発明を含む。
〔1〕式(2)で示される光学活性なα−置換−β−アミノ酸(以下、場合により「光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)」という)の製造方法であり、
式(1)
(式中、R4は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示す。R1、R2、R3及びXは上記と同じ意味である。)
で示されるα−置換−β−アミノ酸エステル(以下、場合により「α−置換−β−アミノ酸エステル(1)」という)の光学異性体混合物の−CO2R4基(以下、場合により「エステル部位」という)を不斉加水分解する能力を有する酵素、又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物を用いて、前記光学異性体混合物を不斉加水分解する工程を含む製造方法。
〔2〕R3が置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基である〔1〕記載の方法。
〔3〕R3がシクロペンチルメチル基である〔1〕記載の方法。
〔4〕R1が炭素数1〜10のアシル基である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕R1がホルミル基、アセチル基、プロピオニル基又はベンゾイル基である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕R1が水素原子である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕R2が炭素数7〜20のアラルキル基である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕R2がベンジル基である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕R4がメチル基又はエチル基である〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕酵素が、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、又はムコール(Mucor)属の微生物を起源とする加水分解酵素、或いは、該加水分解酵素を構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕酵素が、クロモバクテリウム・チョコレータム(Chromobacterium chocolatum)、又はムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)の微生物を起源とする加水分解酵素、或いは、該加水分解酵素を構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素であるである〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕酵素が、クロモバクテリウムSC−YM−1株(工業技術院 生命工学技術研究所 寄託番号:FERM BP−6703)由来のエステラーゼ又はリパーゼ、或いは、該エステラーゼ又はリパーゼを構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の方法。
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
まず、本製造方法は、前記α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物を用いる。
式(1)におけるR1は、水素原子、炭素数1〜10のアシル基、カルボキシル基(−COOH)又はカルボキサミド基(−CONH2)を示す。該アシル基としては例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基及びベンゾイル基が挙げられ、これらは直鎖、分岐鎖及び環状のいずれでもよい。これらの中でも水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基及びベンゾイル基が好ましく、ホルミル基、アセチル基及びプロピオニル基が特に好ましい。また、これらアシル基は置換基を有するアルキルカルボニル基又は置換基を有するアリールカルボニル基であってもよく、該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜9のアラルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。該置換基を有するアシル基としては例えば、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、メトキシアセチル基、3−クロロプロピオニル基、トルオイル基、トリフルオロメチルベンゾイル基、クロロベンゾイル基、フルオロベンゾイル基、メトキシベンゾイル基、シアノベンゾイル基、ニトロベンゾイル基などが挙げられる。R1が水素原子又はホルミル基であるα−置換−β−アミノ酸エステル誘導体からは、WO 00/61134記載の光学活性なα−シクロペンチルメチル−β−(N−ホルミル−N−ヒドロキシ)アミノ酸のような医薬原体化合物の製造用原料又は中間体化合物を容易に得ることができる。
式(1)におけるR2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数8〜20のアラルキルオキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素数4〜10の環状エーテル基を示す。
該アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基及びデシル基などが挙げられ、これらは直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよい。これらの中でも、該アルキル基は、メチル基、tert−ブチル基が好ましい。
該アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基及びビフェニル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基が好ましい。
該アラルキル基としては例えば、ベンジル基、パラメトキシベンジル基及びナフチルメチル基などが挙げられ、これらの中でも、ベンジル基が好ましい。
該アシル基としては例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基及びベンゾイル基などが挙げられ、これらの中でも、アセチル基及びピバロイル基が好ましい。
該アルコキシカルボニル基としては例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基及びデシルオキシカルボニル基などが挙げられ、これらは直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよい。これらの中でも、tert−ブトキシカルボニル基が好ましい。
該アリールオキシカルボニル基としては例えば、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、アントラセニルオキシカルボニル基及びビフェニルオキシカルボニル基などが挙げられ、これらの中でも、フェノキシカルボニル基が好ましい。
該アラルキルオキシカルボニル基としては例えば、ベンジルオキシカルボニル基、ナフチルメトキシカルボニル基などが挙げられ、これらの中でも、ベンジルオキシカルボニル基が好ましい。
該環状エーテル基は環状エーテル化合物から水素原子を1個取り去ってなる基であり、環状エーテル化合物から取り去る水素原子は、環状エーテル化合物の2位にある水素原子が特に好ましい。かかる環状エーテル基の具体例は、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−2−イル基及び1,4−ジオキサン−2−イル基であるが、これらの中でも、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基が好ましい。
また、これらアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基及び環状エーテル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜11のアラルキルオキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。また、アリール基、アラルキル基、アリールオキシカルボニル基及びアラルキルオキシカルボニル基などの芳香環を有する基は、その芳香環に炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有することもある。
以上、R2について、その具体例を挙げて説明したが、これらの中でも、R2は炭素数7〜20のアラルキル基であると好ましく、ベンジル基又はパラメトキシベンジル基であると一層好ましく、ベンジル基であると特に好ましい。
前記式(1)におけるR3は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基、或いはそれらの組み合わせのいずれでもよい。R3の炭化水素基はその炭素数が1〜7であると好ましく、3〜6であるとより好ましい。該脂肪族炭化水素基は典型的にはアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基及びイコシル基などが挙げられ、これらは直鎖でも分岐鎖でもよい。該脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基などが挙げられる。該芳香族炭化水素基としては典型的にはアリール基であり、該アリール基の具体例はR2のアリール基で例示したものと同じである。また、R3の炭化水素基も置換基を有していてもよく、該置換基としては、R2のアルキル基やアリール基などの置換基として例示したものと同じである。置換基を有していてもよい炭化水素基はその炭素数が1〜10であると好ましく、3〜7であるとより好ましい。
式(1)におけるR3は、上述のとおり、脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の組み合わせ、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせ、又は脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせでありうる。脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の組み合わせとしては典型的には、シクロアルキル基とアルカンジイル基との組み合わせが挙げられる。具体的には、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロヘキシルブチル基、シクロオクチルメチル基、シクロオクチルエチル基、シクロオクチルプロピル基及びシクロオクチルブチル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせとしては典型的には、アラルキル基であり、ベンジル基及びナフチルメチル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせとしては、フェニルシクロペンチル基、フェニルシクロヘキシル基、ナフチルシクロペンチル基及びナフチルシクロヘキシル基などである。
以上、R3について、その具体例を挙げて説明したが、これらの中でも、R3は脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の組み合わせであると好ましく、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基であるとさらに好ましく、シクロペンチルメチル基であると特に好ましい。
式(1)におけるR4は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基であり、該アルキル基は直鎖でも、分岐鎖でもよい。また、該アルキル基の具体例はその炭素数が1〜10の範囲で、R3のアルキル基で説明したものと同じである。かかるR4のアルキル基は、その炭素数が1〜4であるとさらに好ましく、メチル基、エチル基であると特に好ましい。なお、R4が任意に有する置換基は、R3が任意に有する置換基として例示したものと同じである。
式(1)におけるXは、酸素原子又は硫黄原子を示し、酸素原子であると好ましい。
ここで、好適なα−置換−β−アミノ酸エステル(1)の具体例を、式(1)におけるR1〜R4の組み合わせで表1に示す。
表1に挙げたα−置換−β−アミノ酸エステルの中でも、(1−1)、(1−2)、(1−9)、(1−10)、(1−17)、(1−18)、(1−25)、(1−26)、(1−33)、(1−34)が好ましく、(1−9)、(1−10)、(1−17)、(1−18)、(1−25)、(1−26)が特に好ましく、Xが酸素原子であるとさらに好ましい。
α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物は公知の製造方法により得ることができる。例えば、この製造方法は、ARKICOV 2010(iX)196〜205頁などに記載されている。
本製造方法に用いられるα−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物は、ラセミ体であってもよく、一方の光学異性体が過剰に含まれた異性体混合物であってもよい。これらのラセミ体や異性体混合物は新たに調製されたものでもよく、該ラセミ体を光学分割して調製される、どちらかの光学異性体が過剰に含まれている異性体混合物でもよい。
α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物のエステル部位(−CO2R4基)を不斉加水分解する能力を有する酵素としては、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、又はムコール(Mucor)属の微生物を起源とする加水分解酵素、さらに好ましくは、クロモバクテリウム・チョコレータム(Chromobacterium chocolatum)、又はムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)の微生物を起源とする加水分解酵素を挙げることができる。
α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物のエステル部位を不斉加水分解する能力を有する酵素として、さらに具体的には、クロモバクテリウムSC−YM−1株(工業技術院 生命工学技術研究所 寄託番号 FERM BP−6703)由来のエステラーゼ又はリパーゼ、もしくは市販酵素としてキラザイムL−9[Mucor miehei由来、CHIRAZYME L−9(商品名)]を挙げることができる。
これらのα−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物のエステル部位を不斉加水分解する能力を有する酵素(以下、場合により「本酵素」という)としては、これらの微生物から突然変異剤もしくは紫外線照射などの処理により誘導された突然変異体由来の酵素であっても、これらの微生物が有する本酵素をコードする遺伝子が導入され、形質転換された組換え微生物により産生される酵素であっても、あるいは遺伝子工学的手法により本酵素のアミノ酸配列中の特定のアミノ酸が1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素であってもよく、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物のエステル部位を選択的に加水分解する能力を有していれば本発明製造方法に使用することができる。
本酵素をコードする遺伝子が導入され形質転換された組換え微生物を作製する方法としては、例えばJ.Sambrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリングハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年などに記載の通常の遺伝子工学的手法に準じた方法を挙げることができる。さらに具体的には、日本特許第3875283号に記載の方法に準じた方法を挙げることができる。このようにして作製することのできる組換え微生物によって産生される本酵素の例としては、クロモバクテリウムSC−YM−1株(FERM BP−6703)由来のエステラーゼ(日本特許第3875283号)を挙げることができる。
また、遺伝子工学的手法による変異型酵素の作製方法としては、例えば、OlfertLandtら(Gene 96 125−128 1990)の方法を挙げることができる。さらに具体的には、特開2000−78988号公報、又は日本特許第3486942号記載の方法に準じた方法を挙げることができる。このようにして作製することのできる変異型酵素の例としては、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼから作製される変異型エステラーゼ又はリパーゼなどを挙げることができる。
本製造方法に用いる本酵素は、クロモバクテリウム属の微生物を起源とする加水分解酵素を構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素であってもよい。該変異型酵素を作成するには、遺伝子学的手法、具体的には、遺伝子の部位特異的変異導入技術を用いる。
上述したクロモバクテリウムSC−YM−1株由来の本酵素の特に好ましい例としては、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)のいずれかのDNAによってコードされるアミノ酸配列からなる酵素を挙げることができる。
(a)配列番号1で示される塩基配列。
(b)配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸が下記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸が下記のB群から選ばれるアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(c)前記(b)からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、且つ前記(b)によりコードされるアミノ酸配列からなる酵素と同等な触媒機能を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(A群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びセリン
(B群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、
フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン及びアルギニン
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、その325番目のアミノ酸がイソロイシンで置換されているアミノ酸配列。
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、その240番目のアミノ酸がアラニンで置換されておりかつ288番目のアミノ酸がアラニンで置換されているアミノ酸配列。
(f)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、その43番目のアミノ酸がセリンで置換されているアミノ酸配列。
上述したChromobacteriumSC−YM−1由来の酵素のさらに好ましい例としては、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ160A189Y363term、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ160S189F363term、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ160A189F363term、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼV325I、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼT240AV288A、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼN43SA363termを挙げることができる。
当該部位特異的変異導入技術について簡単に説明する。まず、変異型酵素をコードする遺伝子(以下、場合により「遺伝子1」という)を取得する。この遺伝子1を取得するには、クロモバクテリウム属の微生物を起源とする加水分解酵素をコードする野生型遺伝子(以下、場合により「野生型遺伝子1」という)を取得するとよい。野生型遺伝子とは、例えば、J.Sambrook、E.F.Fritsch、T.Maniatis著;モレキュラー クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年などに記載された通常の遺伝子工学的手法に準じて、クロモバクテリウムSC−YM−1株から取得することができる。即ち、クロモバクテリウムSC−YM−1株を例えば、LB培地(トリプトン1.0%、酵母エキス0.5%、NaCl 0.5%)を用いて培養し、得られた菌体を超音波破砕などの方法によって破壊して、プロテアーゼ処理などを行った後、ゲノムDNAを抽出する。得られたゲノムDNAを適当な制限酵素で切断し、例えば、ファージベクターであるλgt11、あるいはプラスミドベクターであるpUC19などにリガーゼを用いて挿入することによりゲノムDNAライブラリーを作製する。これを例えば、野生型酵素のアミノ酸配列の一部に対応する合成DNAプローブを用いたハイブリダイゼーション法、野生型酵素の活性を測定する方法などのスクリーニング法によりスクリーニングし、野生型遺伝子1を含有するクローンを取得することができる。
野生型遺伝子1に部位特異的変異を導入することによって、遺伝子1を調製することができる。部位特異的変異導入法としては、例えば、OlfertLandtら(Gene 96 125−128 1990)、Smithら(Genetic Engineering 31 Setlow,J.andHollaender,A Plenum:New York)、Vlasukら(Experimental Manipulation of Gene Expression,Inouye,M.:Academic Press,New York)、Hos.N.Huntら(Gene 77 51 1989)が提案している方法などが挙げられる。例えば、Olfert Landtら(Gene 96 125−128 1990)の方法を用いて、クロモバクテリウム属の微生物を起源とする加水分解酵素のアミノ酸配列において、特定のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列をコードする遺伝子1を調製するには、まず、野生型遺伝子1が組み込まれたプラスミドDNAを、例えばJ.sambrook、E.F.Fritsch、T.Maniatis著;モレキュラー クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年などに記載された方法に準じて調製する。次いで、得られたプラスミドDNAを鋳型にして、例えば、特定のアミノ酸が置換されている塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを片側のプライマーとして用い、PCR法によるDNA断片の増幅を行うとよい。ここで、PCR反応の条件としては、例えば、94℃にて5分間保温した後、94℃にて1分間、次いで50℃にて2分間、さらに75℃にて3分間保温する処理を20サイクル行い、最後に75℃で8分間保温する。このようにして増幅されたDNA断片を、例えば制限酵素BstPI及びXbaIで消化し、同様の制限酵素消化を行った野生型遺伝子1を含むプラスミドDNAとライゲーション反応を行うことにより、目的とする遺伝子1を得ることができる。
このようにして調製された遺伝子1を用いて、通常の遺伝子工学的方法に準じ、変異型酵素を製造し、取得することができる。具体的には、例えば、遺伝子1を宿主微生物細胞中で発現させることのできるプラスミドを調製し、これを宿主微生物細胞に導入して宿主微生物細胞を形質転換し、該形質転換体微生物を培養すればよい。上記のようなプラスミドとしては、宿主微生物細胞中で複製可能であって、宿主からの単離・精製が容易であり、プロモーターおよび検出可能なマーカーをもつ発現ベクターに、遺伝子1が導入されたプラスミドを好ましく挙げることができる。該発現ベクターには市販の各種ベクターを用いることができ、例えば、大腸菌での発現には、lac,trp,tacなどのプロモーターを含む発現ベクター(ファルマシアバイオテクなどから購入できる)を用いることができる。
宿主微生物細胞としては、真核生物又は原核生物のいずれも用いることができ、例えば大腸菌などを挙げることができる。該宿主微生物細胞に、通常の遺伝子工学的方法により前記のプラスミドを導入し宿主微生物細胞を形質転換することができる。このようにして得られる遺伝子1を含有するプラスミドを保有する微生物の培養は通常の方法によって行うことができる。例えば、宿主微生物細胞が大腸菌である場合は、適当な炭素源、窒素源及びビタミンなどの微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、液体培養のいずれでも可能であるが、好ましくは、通気撹拌培養方法を挙げることができる。この培養菌体からの変異型酵素の採取は、蛋白質の通常の単離・精製の方法、すなわちすでに説明した培養液からの酵素の精製方法として例示した方法を挙げることができる。
本発明においては、配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸が上記A群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸がグリシン以外のアミノ酸に置換されるように変異プライマーを調製し、PCR法による増幅を行えばよい。好ましくは、160番目のアミノ酸が上記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸が上記のB群から選ばれるアミノ酸に置換されるような特異的変異を導入することが好ましい。
尚、配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目及び189番目のアミノ酸に同時に部位特異的変異を導入してもよい。
また、配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において325番目のアミノ酸がイソロイシンに置換された変異プライマー、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、その240番目のアミノ酸がアラニンで置換されかつ288番目のアミノ酸がアラニンで置換された変異プライマー、又は配列番号1で示されるアミノ酸配列において、その43番目のアミノ酸がセリンで置換された変異プライマーを調製し、PCR法による増幅を行えばよい。
次に、ムコール(Mucor)属の微生物を起源とする加水分解酵素について説明する。該ムコール属の微生物を起源とする加水分解酵素の中でも、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)の微生物を起源とする加水分解酵素が好ましい。また、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)の微生物を起源とする加水分解酵素としては市販の酵素を用いることもできる。かかる市販の酵素としては、キラザイム(CHIRAZYME)L−9[Roche Diagnostics社製]などがある。市販の酵素は容易に入手可能であることから、より簡便に本製造方法を実施できる点で好ましい。なお、これらムコール属の微生物を起源とする加水分解酵素においても、該加水分解酵素を構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素を調製してから、該変異型酵素を本製造方法に用いることもできる。この場合の変異型酵素を調製においても、クロモバクテリウム属の微生物を起源とする加水分解酵素から変異型酵素を調製する方法として説明した部位特異的変異導入技術を用いることができる。
本酵素を産生する微生物は、いずれも通常の方法によって液体培養することができる。培地としては、通常の微生物培養に使用される炭素源、窒素源、無機物等を適宜含む各種の培地を使用することができる。例えば、炭素源としては、グルコース、グリセリン、澱粉、デキストリン、有機酸、糖蜜など、窒素源としては、油脂類、ポリペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーンスティープリカー、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素など、無機物としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛、銅等の塩類、硫酸塩類、酢酸塩類、炭酸塩類及びリン酸塩類、具体的には、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素一カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどを使用することができる。また、上記微生物の有するα−置換−β−アミノ酸エステル(1)の不斉水解能を高めるために、オリーブ油またはトリブチリン等のトリグリセリドあるいはα−置換−β−アミノ酸エステル(1)を適宜培地に添加してもよい。
培養は、通常、好気的に行うのが好ましく、振とう培養又は通気撹拌培養が適する。培養温度は、通常、20〜40℃、好ましくは、25〜35℃で、pHは6〜8が好ましい。培養時間は、種々の条件によって異なるが、1〜7日間が好ましい。
また、必要に応じて固体培養法も、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の不斉水解能を有する微生物菌体が得られる方法であれば適宜採用することができる。
本酵素を、上記のようにして培養された微生物培養物から精製するには、通常一般の酵素の精製において使用される方法に従って行えばよい。例えば、まず超音波処理、ダイノミル処理あるいはフレンチプレス処理などの方法により微生物培養物中の菌体の破砕を行う。得られた破砕液から遠心分離などにより不溶物を除去した後、通常酵素の精製に使用される陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、疎水カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーなどをひとつまたは複数適当に組み合わせることによって目的の酵素を精製することができる。これらカラムクロマトグラフィーに使用する担体の一例として、DEAE−Sepharose fastflow(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)やButyl−Toyopearl650S(東洋曹達工業株式会社製)などを挙げることができる。
本酵素は、精製酵素、粗酵素、微生物培養物、菌体、およびそれらの処理物など、種々の形態で用いることができる。ここで処理物とは、例えば、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、菌体摩砕物、菌体の自己消化物、菌体の超音波処理物、菌体抽出物、または菌体のアルカリ処理物等をいう。さらに、上記のような種々の純度あるいは形態の酵素を、例えば、シリカゲルやセラミックス等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等への吸着法、ポリアクリルアミド法、含硫多糖ゲル法(例えばカラギーナンゲル法)、アルギン酸ゲル法、寒天ゲル法などの公知方法により固定化して用いてもよい。
続いて、前記加水分解酵素及びその変異型酵素からなる群より選ばれる酵素、該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物(以下、ここでいう酵素、培養液及び処理物を総じて、「本酵素等」という)を用いる本製造方法について説明する。
かかる本酵素等の使用量は反応時間の遅延や不斉加水分解の選択性の低下が起こらないように適宜選択される。例えば精製酵素、粗酵素、または市販品酵素を用いる場合、その使用量は、本酵素等中に含まれる酵素の重量換算で、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物に対して通常は0.001〜2重量倍、好ましくは0.002〜0.5重量倍であり、微生物培養物、菌体、又はそれらの処理物を用いる場合、その使用量は、本酵素等中に含まれる酵素の重量換算で、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物に対して通常は0.01〜200重量倍、好ましくは0.1〜50重量倍である。
不斉加水分解反応に用いられる水は、緩衝水溶液であってもよい。緩衝水溶液としては、例えばリン酸ナトリウム水溶液、リン酸カリウム水溶液などといったリン酸アルカリ金属塩水溶液などの無機酸塩の緩衝水溶液、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム水溶液などといった酢酸アルカリ金属塩などの有機酸塩の緩衝水溶液などが挙げられる。かかる水又は緩衝水溶液の使用量はα−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物の重量に対して通常0.5重量倍以上であればよく、場合によっては溶媒量用いられる程度の量でもよいが、通常は200重量倍以下である。
不斉加水分解反応は、疎水性有機溶媒、親水性有機溶媒などの有機溶媒中で行われてもよい。疎水性有機溶媒としては、例えばtert−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどの炭化水素などが用いられ、親水性有機溶媒としては、例えばtert−ブチルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール、テトラヒドロフランなどのエーテル、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、アセトンなどのケトン、アセトニトリルなどのニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミドなどがそれぞれ挙げられる。これらの疎水性有機溶媒や親水性有機溶媒はそれぞれ単独または2種以上を組み合わせて用いられ、疎水性有機溶媒と親水性有機溶媒とを組み合わせて用いてもよい。また、本製造方法には、水又は緩衝水溶液と、疎水性有機溶媒と、親水性有機溶媒とを混合して用いてもよい。
かかる有機溶媒を用いる場合、その使用量は通常α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物の重量に対して200重量倍以下、好ましくは0.1〜100重量倍の範囲内である。
不斉加水分解反応は、例えば水、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物及び本酵素等を混合する方法により行われ、有機溶媒を用いる場合には該有機溶媒、水、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物および本酵素等を混合すればよい。
反応系のpHは本酵素等による不斉加水分解が選択性よく進行する値が適宜選択され、特に限定されないが、通常はpH4〜10、好ましくはpH6〜8の範囲である。反応中、酸又は塩基を加えることによりpHを適宜選択された範囲内に調整してもよい。かかる酸としては、例えば塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸及びその塩、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸などの有機酸及びその塩が挙げられ、かかる塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウムなどのリン酸塩、ジエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピリジンなどの有機塩基、アンモニアが使用される。かかる塩基は単独もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。これらは、本製造方法に用いた本酵素等の種類などに応じ、また、添加した酸又は塩基の作用により、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の加水分解が生じないように選ばれる。かかる酸又は塩基は通常水溶液として用いられるが、反応に有機溶媒を使用する場合は有機溶媒もしくは有機溶媒と水との混合溶液として用いてもよい。かかる有機溶媒は反応で使用するものと同じものを使用することができる。また、酸又は塩基を溶解する水は緩衝水溶液に置き換えてもよい。さらに、酸又塩基は固体もしくは溶液に懸濁させた状態で用いてもよい。
反応温度は、本酵素等による不斉加水分解が選択性よく進行する温度が適宜選択され、特に限定されないが、高すぎると、本酵素等中の本酵素の安定性が低下する傾向にあり、また低すぎると反応速度が低下する傾向にある。一方、温度が低いほど選択性は向上する傾向にある。反応温度は、通常−10〜65℃の範囲内であり、好ましくは−5〜50℃の範囲内である。
反応時間は、通常1〜100時間の範囲内から選ばれ、好ましくは1〜50時間の範囲内から選ばれる。本製造方法の反応系における反応液を適宜サンプリングし、HPLC、GCなどの適当な分析手段により、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の消失の度合い、又はα−置換−β−アミノ酸(2)の生成の度合いを求め、反応時間を定めることもできる。
かくして光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)の溶液が得られるが、通常、反応で使用した酵素や緩衝剤あるいは加水分解反応により生じたカルボン酸などと分離するためにさらに後処理操作を行う。
かかる後処理として例えば、反応溶液中の溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて、α−置換−β−アミノ酸(2)を分離精製する方法、同様に溶媒を留去した後、蒸留によりα−置換−β−アミノ酸(2)を分離精製する方法、分液操作によりα−置換−β−アミノ酸(2)を分離精製する方法などが挙げられる。
分液操作によりα−置換−β−アミノ酸(2)を分離精製する際に、反応時に水と疎水性有機溶媒のいずれにも溶解する有機溶媒を用いた場合これを留去により除去してから用いてもよい。また、溶液に不溶酵素や固定化担体などが存在する場合はこれらをろ過により除去してもよい。
本製造方法の反応終了後の反応液には、不斉加水分解反応の生成物であるα−置換−β−アミノ酸(2)と、残存するα−置換−β−アミノ酸エステル(1)とが含まれる。この両者を分離するには、例えば、水/疎水性有機溶媒による抽出操作を行い、残存α−置換−β−アミノ酸エステル(1)を有機層(疎水性有機溶媒層)に、α−置換−β−アミノ酸(2)を水層にそれぞれ分配させ、該有機層と該水層とを分液するといった方法が採用される。
目的物である光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)と、本酵素等や緩衝剤やその他の水溶性成分と分離するには疎水性有機溶媒を用いて有機層に光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)を抽出し水層と分液すればよい。
かかる疎水性有機溶媒としては例えばtert−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル;トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどの炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのエステルなどが挙げられる。反応時にこれらの疎水性有機溶媒を使用した場合は、反応終了後の反応液が有機層と水層とに分離するときには、そのまま分液操作を行なうこともできる。また、反応時に疎水性有機溶媒を用いなかった場合や、疎水性有機溶媒又は水の使用量が少ないために反応液が容易に有機層と水層とに分液されない場合には、あるいは水の使用量が少ないために容易には分液できない場合には、疎水性有機溶媒または水などを適宜加えた後に分液すればよい。疎水性有機溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、通常α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体の重量を基準に対して0.1〜200重量倍、好ましくは0.2〜100重量倍である。
かかる目的物の抽出時のpHは通常2〜10の範囲内、好ましくは4〜8の範囲内である。なお、pHに調整するために酸又は塩基を適宜使用することもできる。ここで用いる酸又は塩基の具体例は、本製造方法の反応系のpH調整用として例示したものと同じである。水層からの目的物の抽出が不十分な場合、同じ抽出、分液操作を複数回繰り返してもよい。また、同様に有機層からの水溶性成分の除去が不十分な場合も、同じ抽出、分液操作を複数回繰り返してもよい。
上記の抽出により、不斉加水分解物であるカルボン酸と分離された残存エステルは、油層中の有機溶媒を留去することにより単離することができる。得られた光学活性α−置換−β−アミノ酸エステル(1)は、ラセミ化の処理に供することによって、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物として再利用することができる。
上記の油層中の有機溶媒を留去することにより、単離された未反応α−置換−β−アミノ酸エステル(1)は、カラムクロマトグラフィー等によって、さらに精製されてもよい。
上記の抽出により、不斉加水分解物である光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)は、分液後の水層に含まれており、これは、水を留去すること、あるいは中和処理後に有機溶媒を用いて抽出すること等によって、容易に水層から取り出すことができる。分離された光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)は、油層中の有機溶媒を留去することにより単離することができる。
かくして得られた光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)は、さらにカラムクロマトグラフィー、再結晶、再沈殿などの精製操作によってさらに精製してもよい。また、再結晶や再沈殿などの精製操作においては、光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)をさらに適当な塩基で塩とした後、この塩を再結晶や再沈殿で精製し、精製した塩を再び適当な方法により、光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)に戻すこともできる。
かくして得られた光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)の具体例を、式(2)におけるR1〜R3の組み合わせで表2に示す。
本発明において、本酵素として、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)のうちR体のエステル部位を選択的に加水分解する能力を有する酵素を用いれば、得られる光学活性なα−置換−β−アミノ酸(2)はR体に富み、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)のうちS体のエステル部位を選択的に加水分解する能力を有する酵素を用いれば、得られる光学活性なα−置換−β−アミノ酸(2)はS体に富む。また、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)のうちR体のエステル部位を選択的に加水分解する能力を有する酵素を用いてR体のα−置換−β−アミノ酸(2)を得た時には同時にS体のα−置換−β−アミノ酸エステル(1)が得られ、これは上述の抽出、分液操作等でR体のα−置換−β−アミノ酸(2)と分離し、単離することができる。
まず、本製造方法は、前記α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物を用いる。
式(1)におけるR1は、水素原子、炭素数1〜10のアシル基、カルボキシル基(−COOH)又はカルボキサミド基(−CONH2)を示す。該アシル基としては例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基及びベンゾイル基が挙げられ、これらは直鎖、分岐鎖及び環状のいずれでもよい。これらの中でも水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基及びベンゾイル基が好ましく、ホルミル基、アセチル基及びプロピオニル基が特に好ましい。また、これらアシル基は置換基を有するアルキルカルボニル基又は置換基を有するアリールカルボニル基であってもよく、該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜9のアラルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。該置換基を有するアシル基としては例えば、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、メトキシアセチル基、3−クロロプロピオニル基、トルオイル基、トリフルオロメチルベンゾイル基、クロロベンゾイル基、フルオロベンゾイル基、メトキシベンゾイル基、シアノベンゾイル基、ニトロベンゾイル基などが挙げられる。R1が水素原子又はホルミル基であるα−置換−β−アミノ酸エステル誘導体からは、WO 00/61134記載の光学活性なα−シクロペンチルメチル−β−(N−ホルミル−N−ヒドロキシ)アミノ酸のような医薬原体化合物の製造用原料又は中間体化合物を容易に得ることができる。
式(1)におけるR2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数8〜20のアラルキルオキシカルボニル基、または置換基を有していてもよい炭素数4〜10の環状エーテル基を示す。
該アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基及びデシル基などが挙げられ、これらは直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよい。これらの中でも、該アルキル基は、メチル基、tert−ブチル基が好ましい。
該アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基及びビフェニル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基が好ましい。
該アラルキル基としては例えば、ベンジル基、パラメトキシベンジル基及びナフチルメチル基などが挙げられ、これらの中でも、ベンジル基が好ましい。
該アシル基としては例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基及びベンゾイル基などが挙げられ、これらの中でも、アセチル基及びピバロイル基が好ましい。
該アルコキシカルボニル基としては例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基及びデシルオキシカルボニル基などが挙げられ、これらは直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよい。これらの中でも、tert−ブトキシカルボニル基が好ましい。
該アリールオキシカルボニル基としては例えば、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、アントラセニルオキシカルボニル基及びビフェニルオキシカルボニル基などが挙げられ、これらの中でも、フェノキシカルボニル基が好ましい。
該アラルキルオキシカルボニル基としては例えば、ベンジルオキシカルボニル基、ナフチルメトキシカルボニル基などが挙げられ、これらの中でも、ベンジルオキシカルボニル基が好ましい。
該環状エーテル基は環状エーテル化合物から水素原子を1個取り去ってなる基であり、環状エーテル化合物から取り去る水素原子は、環状エーテル化合物の2位にある水素原子が特に好ましい。かかる環状エーテル基の具体例は、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−2−イル基及び1,4−ジオキサン−2−イル基であるが、これらの中でも、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基が好ましい。
また、これらアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基及び環状エーテル基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数7〜11のアラルキルオキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。また、アリール基、アラルキル基、アリールオキシカルボニル基及びアラルキルオキシカルボニル基などの芳香環を有する基は、その芳香環に炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有することもある。
以上、R2について、その具体例を挙げて説明したが、これらの中でも、R2は炭素数7〜20のアラルキル基であると好ましく、ベンジル基又はパラメトキシベンジル基であると一層好ましく、ベンジル基であると特に好ましい。
前記式(1)におけるR3は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基、或いはそれらの組み合わせのいずれでもよい。R3の炭化水素基はその炭素数が1〜7であると好ましく、3〜6であるとより好ましい。該脂肪族炭化水素基は典型的にはアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基及びイコシル基などが挙げられ、これらは直鎖でも分岐鎖でもよい。該脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基などが挙げられる。該芳香族炭化水素基としては典型的にはアリール基であり、該アリール基の具体例はR2のアリール基で例示したものと同じである。また、R3の炭化水素基も置換基を有していてもよく、該置換基としては、R2のアルキル基やアリール基などの置換基として例示したものと同じである。置換基を有していてもよい炭化水素基はその炭素数が1〜10であると好ましく、3〜7であるとより好ましい。
式(1)におけるR3は、上述のとおり、脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の組み合わせ、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせ、又は脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせでありうる。脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の組み合わせとしては典型的には、シクロアルキル基とアルカンジイル基との組み合わせが挙げられる。具体的には、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロヘキシルブチル基、シクロオクチルメチル基、シクロオクチルエチル基、シクロオクチルプロピル基及びシクロオクチルブチル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせとしては典型的には、アラルキル基であり、ベンジル基及びナフチルメチル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせとしては、フェニルシクロペンチル基、フェニルシクロヘキシル基、ナフチルシクロペンチル基及びナフチルシクロヘキシル基などである。
以上、R3について、その具体例を挙げて説明したが、これらの中でも、R3は脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の組み合わせであると好ましく、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基であるとさらに好ましく、シクロペンチルメチル基であると特に好ましい。
式(1)におけるR4は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基であり、該アルキル基は直鎖でも、分岐鎖でもよい。また、該アルキル基の具体例はその炭素数が1〜10の範囲で、R3のアルキル基で説明したものと同じである。かかるR4のアルキル基は、その炭素数が1〜4であるとさらに好ましく、メチル基、エチル基であると特に好ましい。なお、R4が任意に有する置換基は、R3が任意に有する置換基として例示したものと同じである。
式(1)におけるXは、酸素原子又は硫黄原子を示し、酸素原子であると好ましい。
ここで、好適なα−置換−β−アミノ酸エステル(1)の具体例を、式(1)におけるR1〜R4の組み合わせで表1に示す。
α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物は公知の製造方法により得ることができる。例えば、この製造方法は、ARKICOV 2010(iX)196〜205頁などに記載されている。
本製造方法に用いられるα−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物は、ラセミ体であってもよく、一方の光学異性体が過剰に含まれた異性体混合物であってもよい。これらのラセミ体や異性体混合物は新たに調製されたものでもよく、該ラセミ体を光学分割して調製される、どちらかの光学異性体が過剰に含まれている異性体混合物でもよい。
α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物のエステル部位(−CO2R4基)を不斉加水分解する能力を有する酵素としては、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、又はムコール(Mucor)属の微生物を起源とする加水分解酵素、さらに好ましくは、クロモバクテリウム・チョコレータム(Chromobacterium chocolatum)、又はムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)の微生物を起源とする加水分解酵素を挙げることができる。
α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物のエステル部位を不斉加水分解する能力を有する酵素として、さらに具体的には、クロモバクテリウムSC−YM−1株(工業技術院 生命工学技術研究所 寄託番号 FERM BP−6703)由来のエステラーゼ又はリパーゼ、もしくは市販酵素としてキラザイムL−9[Mucor miehei由来、CHIRAZYME L−9(商品名)]を挙げることができる。
これらのα−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物のエステル部位を不斉加水分解する能力を有する酵素(以下、場合により「本酵素」という)としては、これらの微生物から突然変異剤もしくは紫外線照射などの処理により誘導された突然変異体由来の酵素であっても、これらの微生物が有する本酵素をコードする遺伝子が導入され、形質転換された組換え微生物により産生される酵素であっても、あるいは遺伝子工学的手法により本酵素のアミノ酸配列中の特定のアミノ酸が1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素であってもよく、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物のエステル部位を選択的に加水分解する能力を有していれば本発明製造方法に使用することができる。
本酵素をコードする遺伝子が導入され形質転換された組換え微生物を作製する方法としては、例えばJ.Sambrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis著;モレキュラー クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリングハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年などに記載の通常の遺伝子工学的手法に準じた方法を挙げることができる。さらに具体的には、日本特許第3875283号に記載の方法に準じた方法を挙げることができる。このようにして作製することのできる組換え微生物によって産生される本酵素の例としては、クロモバクテリウムSC−YM−1株(FERM BP−6703)由来のエステラーゼ(日本特許第3875283号)を挙げることができる。
また、遺伝子工学的手法による変異型酵素の作製方法としては、例えば、OlfertLandtら(Gene 96 125−128 1990)の方法を挙げることができる。さらに具体的には、特開2000−78988号公報、又は日本特許第3486942号記載の方法に準じた方法を挙げることができる。このようにして作製することのできる変異型酵素の例としては、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼから作製される変異型エステラーゼ又はリパーゼなどを挙げることができる。
本製造方法に用いる本酵素は、クロモバクテリウム属の微生物を起源とする加水分解酵素を構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素であってもよい。該変異型酵素を作成するには、遺伝子学的手法、具体的には、遺伝子の部位特異的変異導入技術を用いる。
上述したクロモバクテリウムSC−YM−1株由来の本酵素の特に好ましい例としては、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)のいずれかのDNAによってコードされるアミノ酸配列からなる酵素を挙げることができる。
(a)配列番号1で示される塩基配列。
(b)配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸が下記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸が下記のB群から選ばれるアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(c)前記(b)からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、且つ前記(b)によりコードされるアミノ酸配列からなる酵素と同等な触媒機能を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(A群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びセリン
(B群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、
フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン及びアルギニン
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、その325番目のアミノ酸がイソロイシンで置換されているアミノ酸配列。
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、その240番目のアミノ酸がアラニンで置換されておりかつ288番目のアミノ酸がアラニンで置換されているアミノ酸配列。
(f)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、その43番目のアミノ酸がセリンで置換されているアミノ酸配列。
上述したChromobacteriumSC−YM−1由来の酵素のさらに好ましい例としては、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ160A189Y363term、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ160S189F363term、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ160A189F363term、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼV325I、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼT240AV288A、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼN43SA363termを挙げることができる。
当該部位特異的変異導入技術について簡単に説明する。まず、変異型酵素をコードする遺伝子(以下、場合により「遺伝子1」という)を取得する。この遺伝子1を取得するには、クロモバクテリウム属の微生物を起源とする加水分解酵素をコードする野生型遺伝子(以下、場合により「野生型遺伝子1」という)を取得するとよい。野生型遺伝子とは、例えば、J.Sambrook、E.F.Fritsch、T.Maniatis著;モレキュラー クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年などに記載された通常の遺伝子工学的手法に準じて、クロモバクテリウムSC−YM−1株から取得することができる。即ち、クロモバクテリウムSC−YM−1株を例えば、LB培地(トリプトン1.0%、酵母エキス0.5%、NaCl 0.5%)を用いて培養し、得られた菌体を超音波破砕などの方法によって破壊して、プロテアーゼ処理などを行った後、ゲノムDNAを抽出する。得られたゲノムDNAを適当な制限酵素で切断し、例えば、ファージベクターであるλgt11、あるいはプラスミドベクターであるpUC19などにリガーゼを用いて挿入することによりゲノムDNAライブラリーを作製する。これを例えば、野生型酵素のアミノ酸配列の一部に対応する合成DNAプローブを用いたハイブリダイゼーション法、野生型酵素の活性を測定する方法などのスクリーニング法によりスクリーニングし、野生型遺伝子1を含有するクローンを取得することができる。
野生型遺伝子1に部位特異的変異を導入することによって、遺伝子1を調製することができる。部位特異的変異導入法としては、例えば、OlfertLandtら(Gene 96 125−128 1990)、Smithら(Genetic Engineering 31 Setlow,J.andHollaender,A Plenum:New York)、Vlasukら(Experimental Manipulation of Gene Expression,Inouye,M.:Academic Press,New York)、Hos.N.Huntら(Gene 77 51 1989)が提案している方法などが挙げられる。例えば、Olfert Landtら(Gene 96 125−128 1990)の方法を用いて、クロモバクテリウム属の微生物を起源とする加水分解酵素のアミノ酸配列において、特定のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列をコードする遺伝子1を調製するには、まず、野生型遺伝子1が組み込まれたプラスミドDNAを、例えばJ.sambrook、E.F.Fritsch、T.Maniatis著;モレキュラー クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年などに記載された方法に準じて調製する。次いで、得られたプラスミドDNAを鋳型にして、例えば、特定のアミノ酸が置換されている塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを片側のプライマーとして用い、PCR法によるDNA断片の増幅を行うとよい。ここで、PCR反応の条件としては、例えば、94℃にて5分間保温した後、94℃にて1分間、次いで50℃にて2分間、さらに75℃にて3分間保温する処理を20サイクル行い、最後に75℃で8分間保温する。このようにして増幅されたDNA断片を、例えば制限酵素BstPI及びXbaIで消化し、同様の制限酵素消化を行った野生型遺伝子1を含むプラスミドDNAとライゲーション反応を行うことにより、目的とする遺伝子1を得ることができる。
このようにして調製された遺伝子1を用いて、通常の遺伝子工学的方法に準じ、変異型酵素を製造し、取得することができる。具体的には、例えば、遺伝子1を宿主微生物細胞中で発現させることのできるプラスミドを調製し、これを宿主微生物細胞に導入して宿主微生物細胞を形質転換し、該形質転換体微生物を培養すればよい。上記のようなプラスミドとしては、宿主微生物細胞中で複製可能であって、宿主からの単離・精製が容易であり、プロモーターおよび検出可能なマーカーをもつ発現ベクターに、遺伝子1が導入されたプラスミドを好ましく挙げることができる。該発現ベクターには市販の各種ベクターを用いることができ、例えば、大腸菌での発現には、lac,trp,tacなどのプロモーターを含む発現ベクター(ファルマシアバイオテクなどから購入できる)を用いることができる。
宿主微生物細胞としては、真核生物又は原核生物のいずれも用いることができ、例えば大腸菌などを挙げることができる。該宿主微生物細胞に、通常の遺伝子工学的方法により前記のプラスミドを導入し宿主微生物細胞を形質転換することができる。このようにして得られる遺伝子1を含有するプラスミドを保有する微生物の培養は通常の方法によって行うことができる。例えば、宿主微生物細胞が大腸菌である場合は、適当な炭素源、窒素源及びビタミンなどの微量栄養物を適宜含む培地中で培養を行う。培養方法としては、固体培養、液体培養のいずれでも可能であるが、好ましくは、通気撹拌培養方法を挙げることができる。この培養菌体からの変異型酵素の採取は、蛋白質の通常の単離・精製の方法、すなわちすでに説明した培養液からの酵素の精製方法として例示した方法を挙げることができる。
本発明においては、配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸が上記A群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸がグリシン以外のアミノ酸に置換されるように変異プライマーを調製し、PCR法による増幅を行えばよい。好ましくは、160番目のアミノ酸が上記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸が上記のB群から選ばれるアミノ酸に置換されるような特異的変異を導入することが好ましい。
尚、配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目及び189番目のアミノ酸に同時に部位特異的変異を導入してもよい。
また、配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において325番目のアミノ酸がイソロイシンに置換された変異プライマー、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、その240番目のアミノ酸がアラニンで置換されかつ288番目のアミノ酸がアラニンで置換された変異プライマー、又は配列番号1で示されるアミノ酸配列において、その43番目のアミノ酸がセリンで置換された変異プライマーを調製し、PCR法による増幅を行えばよい。
次に、ムコール(Mucor)属の微生物を起源とする加水分解酵素について説明する。該ムコール属の微生物を起源とする加水分解酵素の中でも、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)の微生物を起源とする加水分解酵素が好ましい。また、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)の微生物を起源とする加水分解酵素としては市販の酵素を用いることもできる。かかる市販の酵素としては、キラザイム(CHIRAZYME)L−9[Roche Diagnostics社製]などがある。市販の酵素は容易に入手可能であることから、より簡便に本製造方法を実施できる点で好ましい。なお、これらムコール属の微生物を起源とする加水分解酵素においても、該加水分解酵素を構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素を調製してから、該変異型酵素を本製造方法に用いることもできる。この場合の変異型酵素を調製においても、クロモバクテリウム属の微生物を起源とする加水分解酵素から変異型酵素を調製する方法として説明した部位特異的変異導入技術を用いることができる。
本酵素を産生する微生物は、いずれも通常の方法によって液体培養することができる。培地としては、通常の微生物培養に使用される炭素源、窒素源、無機物等を適宜含む各種の培地を使用することができる。例えば、炭素源としては、グルコース、グリセリン、澱粉、デキストリン、有機酸、糖蜜など、窒素源としては、油脂類、ポリペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーンスティープリカー、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素など、無機物としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、コバルト、亜鉛、銅等の塩類、硫酸塩類、酢酸塩類、炭酸塩類及びリン酸塩類、具体的には、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、硫酸銅、酢酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素一カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどを使用することができる。また、上記微生物の有するα−置換−β−アミノ酸エステル(1)の不斉水解能を高めるために、オリーブ油またはトリブチリン等のトリグリセリドあるいはα−置換−β−アミノ酸エステル(1)を適宜培地に添加してもよい。
培養は、通常、好気的に行うのが好ましく、振とう培養又は通気撹拌培養が適する。培養温度は、通常、20〜40℃、好ましくは、25〜35℃で、pHは6〜8が好ましい。培養時間は、種々の条件によって異なるが、1〜7日間が好ましい。
また、必要に応じて固体培養法も、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の不斉水解能を有する微生物菌体が得られる方法であれば適宜採用することができる。
本酵素を、上記のようにして培養された微生物培養物から精製するには、通常一般の酵素の精製において使用される方法に従って行えばよい。例えば、まず超音波処理、ダイノミル処理あるいはフレンチプレス処理などの方法により微生物培養物中の菌体の破砕を行う。得られた破砕液から遠心分離などにより不溶物を除去した後、通常酵素の精製に使用される陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、疎水カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーなどをひとつまたは複数適当に組み合わせることによって目的の酵素を精製することができる。これらカラムクロマトグラフィーに使用する担体の一例として、DEAE−Sepharose fastflow(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)やButyl−Toyopearl650S(東洋曹達工業株式会社製)などを挙げることができる。
本酵素は、精製酵素、粗酵素、微生物培養物、菌体、およびそれらの処理物など、種々の形態で用いることができる。ここで処理物とは、例えば、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、菌体摩砕物、菌体の自己消化物、菌体の超音波処理物、菌体抽出物、または菌体のアルカリ処理物等をいう。さらに、上記のような種々の純度あるいは形態の酵素を、例えば、シリカゲルやセラミックス等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等への吸着法、ポリアクリルアミド法、含硫多糖ゲル法(例えばカラギーナンゲル法)、アルギン酸ゲル法、寒天ゲル法などの公知方法により固定化して用いてもよい。
続いて、前記加水分解酵素及びその変異型酵素からなる群より選ばれる酵素、該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物(以下、ここでいう酵素、培養液及び処理物を総じて、「本酵素等」という)を用いる本製造方法について説明する。
かかる本酵素等の使用量は反応時間の遅延や不斉加水分解の選択性の低下が起こらないように適宜選択される。例えば精製酵素、粗酵素、または市販品酵素を用いる場合、その使用量は、本酵素等中に含まれる酵素の重量換算で、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物に対して通常は0.001〜2重量倍、好ましくは0.002〜0.5重量倍であり、微生物培養物、菌体、又はそれらの処理物を用いる場合、その使用量は、本酵素等中に含まれる酵素の重量換算で、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物に対して通常は0.01〜200重量倍、好ましくは0.1〜50重量倍である。
不斉加水分解反応に用いられる水は、緩衝水溶液であってもよい。緩衝水溶液としては、例えばリン酸ナトリウム水溶液、リン酸カリウム水溶液などといったリン酸アルカリ金属塩水溶液などの無機酸塩の緩衝水溶液、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸カリウム水溶液などといった酢酸アルカリ金属塩などの有機酸塩の緩衝水溶液などが挙げられる。かかる水又は緩衝水溶液の使用量はα−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物の重量に対して通常0.5重量倍以上であればよく、場合によっては溶媒量用いられる程度の量でもよいが、通常は200重量倍以下である。
不斉加水分解反応は、疎水性有機溶媒、親水性有機溶媒などの有機溶媒中で行われてもよい。疎水性有機溶媒としては、例えばtert−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどの炭化水素などが用いられ、親水性有機溶媒としては、例えばtert−ブチルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール、テトラヒドロフランなどのエーテル、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、アセトンなどのケトン、アセトニトリルなどのニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミドなどがそれぞれ挙げられる。これらの疎水性有機溶媒や親水性有機溶媒はそれぞれ単独または2種以上を組み合わせて用いられ、疎水性有機溶媒と親水性有機溶媒とを組み合わせて用いてもよい。また、本製造方法には、水又は緩衝水溶液と、疎水性有機溶媒と、親水性有機溶媒とを混合して用いてもよい。
かかる有機溶媒を用いる場合、その使用量は通常α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物の重量に対して200重量倍以下、好ましくは0.1〜100重量倍の範囲内である。
不斉加水分解反応は、例えば水、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物及び本酵素等を混合する方法により行われ、有機溶媒を用いる場合には該有機溶媒、水、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物および本酵素等を混合すればよい。
反応系のpHは本酵素等による不斉加水分解が選択性よく進行する値が適宜選択され、特に限定されないが、通常はpH4〜10、好ましくはpH6〜8の範囲である。反応中、酸又は塩基を加えることによりpHを適宜選択された範囲内に調整してもよい。かかる酸としては、例えば塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸及びその塩、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸などの有機酸及びその塩が挙げられ、かかる塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウムなどのリン酸塩、ジエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピリジンなどの有機塩基、アンモニアが使用される。かかる塩基は単独もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。これらは、本製造方法に用いた本酵素等の種類などに応じ、また、添加した酸又は塩基の作用により、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の加水分解が生じないように選ばれる。かかる酸又は塩基は通常水溶液として用いられるが、反応に有機溶媒を使用する場合は有機溶媒もしくは有機溶媒と水との混合溶液として用いてもよい。かかる有機溶媒は反応で使用するものと同じものを使用することができる。また、酸又は塩基を溶解する水は緩衝水溶液に置き換えてもよい。さらに、酸又塩基は固体もしくは溶液に懸濁させた状態で用いてもよい。
反応温度は、本酵素等による不斉加水分解が選択性よく進行する温度が適宜選択され、特に限定されないが、高すぎると、本酵素等中の本酵素の安定性が低下する傾向にあり、また低すぎると反応速度が低下する傾向にある。一方、温度が低いほど選択性は向上する傾向にある。反応温度は、通常−10〜65℃の範囲内であり、好ましくは−5〜50℃の範囲内である。
反応時間は、通常1〜100時間の範囲内から選ばれ、好ましくは1〜50時間の範囲内から選ばれる。本製造方法の反応系における反応液を適宜サンプリングし、HPLC、GCなどの適当な分析手段により、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の消失の度合い、又はα−置換−β−アミノ酸(2)の生成の度合いを求め、反応時間を定めることもできる。
かくして光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)の溶液が得られるが、通常、反応で使用した酵素や緩衝剤あるいは加水分解反応により生じたカルボン酸などと分離するためにさらに後処理操作を行う。
かかる後処理として例えば、反応溶液中の溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて、α−置換−β−アミノ酸(2)を分離精製する方法、同様に溶媒を留去した後、蒸留によりα−置換−β−アミノ酸(2)を分離精製する方法、分液操作によりα−置換−β−アミノ酸(2)を分離精製する方法などが挙げられる。
分液操作によりα−置換−β−アミノ酸(2)を分離精製する際に、反応時に水と疎水性有機溶媒のいずれにも溶解する有機溶媒を用いた場合これを留去により除去してから用いてもよい。また、溶液に不溶酵素や固定化担体などが存在する場合はこれらをろ過により除去してもよい。
本製造方法の反応終了後の反応液には、不斉加水分解反応の生成物であるα−置換−β−アミノ酸(2)と、残存するα−置換−β−アミノ酸エステル(1)とが含まれる。この両者を分離するには、例えば、水/疎水性有機溶媒による抽出操作を行い、残存α−置換−β−アミノ酸エステル(1)を有機層(疎水性有機溶媒層)に、α−置換−β−アミノ酸(2)を水層にそれぞれ分配させ、該有機層と該水層とを分液するといった方法が採用される。
目的物である光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)と、本酵素等や緩衝剤やその他の水溶性成分と分離するには疎水性有機溶媒を用いて有機層に光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)を抽出し水層と分液すればよい。
かかる疎水性有機溶媒としては例えばtert−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル;トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどの炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのエステルなどが挙げられる。反応時にこれらの疎水性有機溶媒を使用した場合は、反応終了後の反応液が有機層と水層とに分離するときには、そのまま分液操作を行なうこともできる。また、反応時に疎水性有機溶媒を用いなかった場合や、疎水性有機溶媒又は水の使用量が少ないために反応液が容易に有機層と水層とに分液されない場合には、あるいは水の使用量が少ないために容易には分液できない場合には、疎水性有機溶媒または水などを適宜加えた後に分液すればよい。疎水性有機溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、通常α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体の重量を基準に対して0.1〜200重量倍、好ましくは0.2〜100重量倍である。
かかる目的物の抽出時のpHは通常2〜10の範囲内、好ましくは4〜8の範囲内である。なお、pHに調整するために酸又は塩基を適宜使用することもできる。ここで用いる酸又は塩基の具体例は、本製造方法の反応系のpH調整用として例示したものと同じである。水層からの目的物の抽出が不十分な場合、同じ抽出、分液操作を複数回繰り返してもよい。また、同様に有機層からの水溶性成分の除去が不十分な場合も、同じ抽出、分液操作を複数回繰り返してもよい。
上記の抽出により、不斉加水分解物であるカルボン酸と分離された残存エステルは、油層中の有機溶媒を留去することにより単離することができる。得られた光学活性α−置換−β−アミノ酸エステル(1)は、ラセミ化の処理に供することによって、α−置換−β−アミノ酸エステル(1)の光学異性体混合物として再利用することができる。
上記の油層中の有機溶媒を留去することにより、単離された未反応α−置換−β−アミノ酸エステル(1)は、カラムクロマトグラフィー等によって、さらに精製されてもよい。
上記の抽出により、不斉加水分解物である光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)は、分液後の水層に含まれており、これは、水を留去すること、あるいは中和処理後に有機溶媒を用いて抽出すること等によって、容易に水層から取り出すことができる。分離された光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)は、油層中の有機溶媒を留去することにより単離することができる。
かくして得られた光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)は、さらにカラムクロマトグラフィー、再結晶、再沈殿などの精製操作によってさらに精製してもよい。また、再結晶や再沈殿などの精製操作においては、光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)をさらに適当な塩基で塩とした後、この塩を再結晶や再沈殿で精製し、精製した塩を再び適当な方法により、光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)に戻すこともできる。
かくして得られた光学活性α−置換−β−アミノ酸(2)の具体例を、式(2)におけるR1〜R3の組み合わせで表2に示す。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜8
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸(2−5)の製造
表3に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分又は酵素のそれぞれを、表4に示した量で容器中に量り取り、そこに0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸メチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mg、tert−ブチルメチルエーテル1mLを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mL及びtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を高速液体クロマトグラフィー〔カラム:CHIRALPAK AD−H、4.6mmφ×25cm、5μm(ダイセル化学社製)〕にて光学純度を分析し、また、高速液体クロマトグラフィー〔カラム:Cadenza CD−18、4.6mmφ×15cm、3μm(Imtakt社製)〕にて化学純度を分析して、得られた光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の変換率及び鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表4に示す。
実施例9〜16
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸(2−5)の製造
表5に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分又は酵素のそれぞれを、表6に示した量を容器中に量り取り、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸メチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mgを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mLとtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を実施例1と同様に分析して、得られた光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の変換率および鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表6に示す。
実施例17
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸(2−5)の製造
0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)50.3gを容器中に量り取り、そこへ2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸メチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)400.0mg、tert−ブチルメチルエーテル7.4g、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼN43SA363termを生産する大腸菌組換え体のアルカリ処理物2.0gを加えた。この溶液を25℃で、158時間攪拌した後、実施例1と同様の方法で分析して変換率を求めたところ44.2%((R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の鏡像異性体過剰率:100.0%ee)であった。得られた反応液に3.4%リン酸水溶液10.6gを加えてpHを5.0とした。この溶液にtert−ブチルメチルエーテル8.0gを加えて、分液により油層と水層とに分離した。水層をtert−ブチルメチルエーテル8.0gで2回抽出、分液操作を行い、水層を除去した後、先に得られた油層と合一した。得られた混合溶液をセライトろ過して、tert−ブチルメチルエーテル2.0gで2回洗浄した後、分液により油層と水層とに分離した。油層にジイソプロピルエチルアミン250.5mg、水4.0g加えて分液により油層と水層とに分離した。次いで、水層をtert−ブチルメチルエーテル2.0gで洗浄し、油層を除去した。得られた水層に1N塩酸1.9g、tert−ブチルメチルエーテル8.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。油層を硫酸ナトリウムで脱水乾燥後、油層の有機溶媒を減圧下に留去させ、(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸134.6mgを油状物質として得た。得られた油状物質を実施例1と同様に分析して、得られた(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の収率および鏡像異性体過剰率を求めたところ、収率37.6%、鏡像異性体過剰率は100.0%eeであった。
実施例18
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸(2−5)の製造
0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)50.2gを容器中に量り取り、そこへ2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)400.0mg、tert−ブチルメチルエーテル7.4g、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ160A189Y363termを生産する大腸菌組換え体のアルカリ処理物2.0gを加えた。この溶液を25℃で、122時間攪拌した後、実施例1と同様の方法で分析して変換率を求めたところ49.4%((R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の鏡像異性体過剰率:95.6%ee)であった。得られた反応液に3.4%リン酸水溶液9.7gを加えてpHを5.0とした。この溶液にtert−ブチルメチルエーテル8.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。水層をtert−ブチルメチルエーテル8.0gで2回抽出、分液操作を行い、水層を除去した後、先に得られた油層と合一した。得られた混合溶液をセライトろ過して、tert−ブチルメチルエーテル2.0gで2回洗浄した後、分液により油層と水層とに分離した。油層に1N水酸化ナトリウム水溶液4.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。次いで、水層をtert−ブチルメチルエーテル4.0gで洗浄し、油層を除去した。得られた水層に1N塩酸3.9g、tert−ブチルメチルエーテル8.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。油層を15%食塩水0.8gで洗浄した後、硫酸ナトリウムで脱水乾燥し、油層の有機溶媒を減圧下に留去させ、(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸170.6mgを油状物質として得た。得られた油状物質を実施例1と同様に分析して、得られた(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の収率および鏡像異性体過剰率を求めたところ、収率35.8%、鏡像異性体過剰率は95.2%eeであった。
実施例19
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸(2−5)の製造法
2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)3.0gを容器中に量り取り、そこへ0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)14.2g、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼN43SA363termを生産する大腸菌組換え体のアルカリ処理物0.75gを加えて、25℃で、24時間攪拌した後、0.1Mリン酸カリウム緩衝液7.2g追加した。更に25℃で、53時間攪拌した後、0.1Mリン酸カリウム緩衝液24.4g追加した。更に25℃で、26時間攪拌した後、0.1Mリン酸カリウム緩衝液45.0g追加した。更に25℃で、80時間攪拌した後、0.1Mリン酸カリウム緩衝液120.0g追加した。更に25℃で、96時間攪拌した後、実施例1と同様の方法で分析して変換率を求めたところ46.3%((R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の鏡像異性体過剰率:99.8%ee)であった。得られた反応液に85%リン酸水溶液2.3gを加えてpHを5.0とした。この溶液にtert−ブチルメチルエーテル12.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。水層をtert−ブチルメチルエーテル12.0gで2回抽出、分液操作を行い、水層を除去した後、先に得られた油層と合一した。得られた混合溶液をセライトろ過して、tert−ブチルメチルエーテル1.5gで2回洗浄した後、分液により油層と水層とに分離した。油層にジイソプロピルエチルアミン1.74g、水15.0g加えて分液により油層と水層とに分離した。次いで、油層に水6.0gを加えて抽出し、油層を除去した後、先に得られた水層と合一した。得られた水層に35%塩酸0.4g、tert−ブチルメチルエーテル9.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。油層の有機溶媒を減圧下に留去させ、(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸1.12gを油状物質として得た。得られた油状物質を実施例1と同様に分析して、得られた(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の収率および鏡像異性体過剰率を求めたところ、収率39.7%、鏡像異性体過剰率は99.5%eeであった。
実施例20
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ)アミノ]プロパン酸(2−1)の製造法
0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)21.0gを容器中に量り取り、そこへ2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)300.0mg、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼN43SA363termを生産する大腸菌組換え体のアルカリ処理物75.0mgを加えた。この溶液を25℃で、96時間攪拌した後、85%リン酸水溶液0.24gを加えてpHを5.0とした。この溶液にtert−ブチルメチルエーテル6.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。水層をtert−ブチルメチルエーテル6.0gで2回抽出、分液操作を行い、水層を除去した後、先に得られた油層と合一した。得られた混合溶液をセライトろ過して、tert−ブチルメチルエーテル1.5gで2回洗浄した後、分液により油層と水層とに分離した。油層にジイソプロピルエチルアミン189.9mg、水3.0g加えて分液により油層と水層に分離した。次いで、水層をtert−ブチルメチルエーテル1.5gで洗浄し、油層を除去した。得られた水層に1N塩酸1.6g、tert−ブチルメチルエーテル6.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。油層を硫酸ナトリウムで脱水乾燥後、油層の有機溶媒を減圧下に留去させ、(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ)アミノ]プロパン酸17.7mgを油状物質として得た。得られた油状物質を実施例1と同様に分析して、得られた(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ)アミノ]プロパン酸の収率および鏡像異性体過剰率を求めたところ、収率5.8%、鏡像異性体過剰率は99.2%eeであった。
実施例21〜27
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−アセチル)アミノ]プロパン酸(2−9)の製造
表7に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分のそれぞれを、表8に示した量を容器中に量り取り、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−アセチル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mgを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mLとtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を実施例1と同様に分析して、得られた光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−アセチル)アミノ]プロパン酸の変換率および鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表8に示す。
実施例28〜34
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−プロピオニル)アミノ]プロパン酸(2−13)の製造
表9に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分のそれぞれを、表10に示した量を容器中に量り取り、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−プロピオニル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mgを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mLとtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を実施例1と同様に分析して、得られた光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−プロピオニル)アミノ]プロパン酸の変換率および鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表10に示す。
実施例35〜41
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ベンゾイル)アミノ]プロパン酸(2−17)の製造
表11に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分のそれぞれを、表12に示した量を容器中に量り取り、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ベンゾイル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mgを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mLとtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を実施例1と同様に分析して、得られた光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ベンゾイル)アミノ]プロパン酸の変換率および鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表12に示す。
実施例42〜43
光学活性2−ベンジル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の製造
表13に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分のそれぞれを、表14に示した量を容器中に量り取り、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−ベンジル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mgを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mLとtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を実施例1と同様に分析して、得られた光学活性2−ベンジル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の変換率および鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表14に示す。
変換率(%)=生成物量/(基質量+生成物量)×100
鏡像異性体過剰率(%ee)=(A−B)/(A+B)×100(A及びBは対応する鏡像異性体量を表わし、A>Bである)。
実施例1〜8
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸(2−5)の製造
表3に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分又は酵素のそれぞれを、表4に示した量で容器中に量り取り、そこに0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸メチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mg、tert−ブチルメチルエーテル1mLを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mL及びtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を高速液体クロマトグラフィー〔カラム:CHIRALPAK AD−H、4.6mmφ×25cm、5μm(ダイセル化学社製)〕にて光学純度を分析し、また、高速液体クロマトグラフィー〔カラム:Cadenza CD−18、4.6mmφ×15cm、3μm(Imtakt社製)〕にて化学純度を分析して、得られた光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の変換率及び鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表4に示す。
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸(2−5)の製造
表5に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分又は酵素のそれぞれを、表6に示した量を容器中に量り取り、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸メチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mgを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mLとtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を実施例1と同様に分析して、得られた光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の変換率および鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表6に示す。
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸(2−5)の製造
0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)50.3gを容器中に量り取り、そこへ2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸メチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)400.0mg、tert−ブチルメチルエーテル7.4g、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼN43SA363termを生産する大腸菌組換え体のアルカリ処理物2.0gを加えた。この溶液を25℃で、158時間攪拌した後、実施例1と同様の方法で分析して変換率を求めたところ44.2%((R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の鏡像異性体過剰率:100.0%ee)であった。得られた反応液に3.4%リン酸水溶液10.6gを加えてpHを5.0とした。この溶液にtert−ブチルメチルエーテル8.0gを加えて、分液により油層と水層とに分離した。水層をtert−ブチルメチルエーテル8.0gで2回抽出、分液操作を行い、水層を除去した後、先に得られた油層と合一した。得られた混合溶液をセライトろ過して、tert−ブチルメチルエーテル2.0gで2回洗浄した後、分液により油層と水層とに分離した。油層にジイソプロピルエチルアミン250.5mg、水4.0g加えて分液により油層と水層とに分離した。次いで、水層をtert−ブチルメチルエーテル2.0gで洗浄し、油層を除去した。得られた水層に1N塩酸1.9g、tert−ブチルメチルエーテル8.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。油層を硫酸ナトリウムで脱水乾燥後、油層の有機溶媒を減圧下に留去させ、(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸134.6mgを油状物質として得た。得られた油状物質を実施例1と同様に分析して、得られた(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の収率および鏡像異性体過剰率を求めたところ、収率37.6%、鏡像異性体過剰率は100.0%eeであった。
実施例18
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸(2−5)の製造
0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)50.2gを容器中に量り取り、そこへ2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)400.0mg、tert−ブチルメチルエーテル7.4g、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼ160A189Y363termを生産する大腸菌組換え体のアルカリ処理物2.0gを加えた。この溶液を25℃で、122時間攪拌した後、実施例1と同様の方法で分析して変換率を求めたところ49.4%((R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の鏡像異性体過剰率:95.6%ee)であった。得られた反応液に3.4%リン酸水溶液9.7gを加えてpHを5.0とした。この溶液にtert−ブチルメチルエーテル8.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。水層をtert−ブチルメチルエーテル8.0gで2回抽出、分液操作を行い、水層を除去した後、先に得られた油層と合一した。得られた混合溶液をセライトろ過して、tert−ブチルメチルエーテル2.0gで2回洗浄した後、分液により油層と水層とに分離した。油層に1N水酸化ナトリウム水溶液4.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。次いで、水層をtert−ブチルメチルエーテル4.0gで洗浄し、油層を除去した。得られた水層に1N塩酸3.9g、tert−ブチルメチルエーテル8.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。油層を15%食塩水0.8gで洗浄した後、硫酸ナトリウムで脱水乾燥し、油層の有機溶媒を減圧下に留去させ、(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸170.6mgを油状物質として得た。得られた油状物質を実施例1と同様に分析して、得られた(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の収率および鏡像異性体過剰率を求めたところ、収率35.8%、鏡像異性体過剰率は95.2%eeであった。
実施例19
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸(2−5)の製造法
2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)3.0gを容器中に量り取り、そこへ0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)14.2g、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼN43SA363termを生産する大腸菌組換え体のアルカリ処理物0.75gを加えて、25℃で、24時間攪拌した後、0.1Mリン酸カリウム緩衝液7.2g追加した。更に25℃で、53時間攪拌した後、0.1Mリン酸カリウム緩衝液24.4g追加した。更に25℃で、26時間攪拌した後、0.1Mリン酸カリウム緩衝液45.0g追加した。更に25℃で、80時間攪拌した後、0.1Mリン酸カリウム緩衝液120.0g追加した。更に25℃で、96時間攪拌した後、実施例1と同様の方法で分析して変換率を求めたところ46.3%((R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の鏡像異性体過剰率:99.8%ee)であった。得られた反応液に85%リン酸水溶液2.3gを加えてpHを5.0とした。この溶液にtert−ブチルメチルエーテル12.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。水層をtert−ブチルメチルエーテル12.0gで2回抽出、分液操作を行い、水層を除去した後、先に得られた油層と合一した。得られた混合溶液をセライトろ過して、tert−ブチルメチルエーテル1.5gで2回洗浄した後、分液により油層と水層とに分離した。油層にジイソプロピルエチルアミン1.74g、水15.0g加えて分液により油層と水層とに分離した。次いで、油層に水6.0gを加えて抽出し、油層を除去した後、先に得られた水層と合一した。得られた水層に35%塩酸0.4g、tert−ブチルメチルエーテル9.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。油層の有機溶媒を減圧下に留去させ、(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸1.12gを油状物質として得た。得られた油状物質を実施例1と同様に分析して、得られた(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の収率および鏡像異性体過剰率を求めたところ、収率39.7%、鏡像異性体過剰率は99.5%eeであった。
実施例20
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ)アミノ]プロパン酸(2−1)の製造法
0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)21.0gを容器中に量り取り、そこへ2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)300.0mg、クロモバクテリウムSC−YM−1株由来のエステラーゼN43SA363termを生産する大腸菌組換え体のアルカリ処理物75.0mgを加えた。この溶液を25℃で、96時間攪拌した後、85%リン酸水溶液0.24gを加えてpHを5.0とした。この溶液にtert−ブチルメチルエーテル6.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。水層をtert−ブチルメチルエーテル6.0gで2回抽出、分液操作を行い、水層を除去した後、先に得られた油層と合一した。得られた混合溶液をセライトろ過して、tert−ブチルメチルエーテル1.5gで2回洗浄した後、分液により油層と水層とに分離した。油層にジイソプロピルエチルアミン189.9mg、水3.0g加えて分液により油層と水層に分離した。次いで、水層をtert−ブチルメチルエーテル1.5gで洗浄し、油層を除去した。得られた水層に1N塩酸1.6g、tert−ブチルメチルエーテル6.0gを加えて分液により油層と水層とに分離した。油層を硫酸ナトリウムで脱水乾燥後、油層の有機溶媒を減圧下に留去させ、(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ)アミノ]プロパン酸17.7mgを油状物質として得た。得られた油状物質を実施例1と同様に分析して、得られた(R)−2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ)アミノ]プロパン酸の収率および鏡像異性体過剰率を求めたところ、収率5.8%、鏡像異性体過剰率は99.2%eeであった。
実施例21〜27
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−アセチル)アミノ]プロパン酸(2−9)の製造
表7に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分のそれぞれを、表8に示した量を容器中に量り取り、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−アセチル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mgを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mLとtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を実施例1と同様に分析して、得られた光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−アセチル)アミノ]プロパン酸の変換率および鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表8に示す。
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−プロピオニル)アミノ]プロパン酸(2−13)の製造
表9に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分のそれぞれを、表10に示した量を容器中に量り取り、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−プロピオニル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mgを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mLとtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を実施例1と同様に分析して、得られた光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−プロピオニル)アミノ]プロパン酸の変換率および鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表10に示す。
光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ベンゾイル)アミノ]プロパン酸(2−17)の製造
表11に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分のそれぞれを、表12に示した量を容器中に量り取り、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ベンゾイル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mgを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mLとtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を実施例1と同様に分析して、得られた光学活性2−シクロペンチルメチル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ベンゾイル)アミノ]プロパン酸の変換率および鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表12に示す。
光学活性2−ベンジル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の製造
表13に示した種々の酵素を生産する大腸菌組換え体可溶性画分のそれぞれを、表14に示した量を容器中に量り取り、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mLと、2−ベンジル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸エチルエステルの光学異性体混合物(ラセミ体)40.0mgを加えた。この溶液を25℃で、48時間攪拌した後、3.4%リン酸水溶液1mLとtert−ブチルメチルエーテル10mLを添加して混合した。静置した後、tert−ブチルメチルエーテル層を実施例1と同様に分析して、得られた光学活性2−ベンジル−3−[(N−ベンジルオキシ−N−ホルミル)アミノ]プロパン酸の変換率および鏡像異性体過剰率を求めた。結果を表14に示す。
鏡像異性体過剰率(%ee)=(A−B)/(A+B)×100(A及びBは対応する鏡像異性体量を表わし、A>Bである)。
Claims (12)
- 式(2)
(式中、
R1は水素原子、炭素数1〜10のアシル基、カルボキシル基又はカルボキサミド基を示す。
R2は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアラルキル基、又は炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜15のアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数8〜20のアラルキルオキシカルボニル基又は置換基を有していてもよい炭素数4〜10の環状エーテル基を示す。
R3は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。
Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す。
*は不斉中心を示す。)
で示される光学活性なα−置換−β−アミノ酸の製造方法であり、
式(1)
(式中、
R4は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を示す。
R1、R2、R3及びXは上記と同じ意味である。)
で示されるα−置換−β−アミノ酸エステルの光学異性体混合物の−CO2R4基を不斉加水分解する能力を有する酵素、又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物を用いて、前記光学異性体混合物を不斉加水分解する工程を含む製造方法。 - R3が置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基体である請求項1に記載の方法。
- R3がシクロペンチルメチル基である請求項1に記載の方法。
- R1が炭素数1〜10のアシル基である請求項1に記載の方法。
- R1がホルミル基、アセチル基、プロピオニル基又はベンゾイル基である請求項1に記載の方法。
- R1が、水素原子である請求項1に記載の製造方法。
- R2が、炭素数7〜20のアラルキル基である請求項1に記載の方法。
- R2が、ベンジル基である請求項1に記載の方法。
- R4が、メチル基又はエチル基である請求項1に記載の製造方法。
- 酵素が、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、又はムコール(Mucor)属の微生物を起源とする加水分解酵素、或いは、該加水分解酵素を構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素である請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
- 酵素が、クロモバクテリウム・チョコレータム(Chromobacterium chocolatum)、又はムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)の微生物を起源とする加水分解酵素、或いは、該加水分解酵素を構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素であるである請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
- 酵素が、クロモバクテリウムSC−YM−1株(工業技術院 生命工学技術研究所寄託番号:FERM BP−6703)由来のエステラーゼ又はリパーゼ、或いは、該エステラーゼ又はリパーゼを構成するアミノ酸のうちの1個ないしは2個が、欠失、付加あるいは置換されてなる変異型酵素である請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
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