JP4765358B2 - 光学活性なn−保護−プロパルギルグリシンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、農薬や抗生物質等を製造する際の中間体化合物として有用な光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンの製造方法に関する。
下記特許文献1の20〜22頁には、2−[{(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル}アミノ]−4−ペンチン酸メチルエステルを、リン酸緩衝液中でα−キモトリプシンを用いて不斉加水分解し、後処理後、鏡像異性体過剰率が88%e.e.である2−(S)−[{(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル}アミノ]−4−ペンチン酸メチルエステルを得たこと、及び、該2−(S)−[{(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル}アミノ]−4−ペンチン酸メチルエステルをエーテル系溶媒から結晶化し、鏡像異性体過剰率が99%e.e.である2−(S)−[{(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル}アミノ]−4−ペンチン酸メチルエステルを得たことが記載されている。
特表平9−512012号公報
しかしながら、特許文献1記載の方法では、得られる目的化合物の光学純度が不十分であり、光学純度の良好な目的化合物を得るために、さらに再結晶する必要があった。
本発明者は、N−保護−プロパルギルグリシンエステルを基質として用いて光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンを製造する際に、より光学純度が高い光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンを収率良く製造するべく鋭意検討した結果、N−保護−プロパルギルグリシンエステルの鏡像異性体混合物におけるエステル基を特定の酵素により不斉加水分解した後、不斉加水分解生成物である光学活性なカルボン酸を不斉加水分解反応液中の未反応のN−保護−プロパルギルグリシンエステルから分離すると、上記課題を解決できることを見出した。
また、本発明者は、N−保護−プロパルギルグリシンエステルを基質として用いて光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンを製造する際に、N−保護−プロパルギルグリシンエステルの鏡像異性体混合物におけるエステル基を特定の酵素により不斉加水分解した後、不斉加水分解生成物である光学活性なカルボン酸を不斉加水分解反応液中の未反応のN−保護−プロパルギルグリシンエステルから分離した後、残存した未反応のN−保護−プロパルギルグリシンエステルを加水分解すると、上述した光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンエステルの鏡像体に対応するN−保護−プロパルギルグリシンが得られることを見出した。
さらに、本発明者は、N−保護−プロパルギルグリシンエステルを基質とし、且つ特定の酵素を用いると、所望の鏡像体が直接得られることを見出した。
すなわち、本発明は、下式(2)で示される光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンの製造方法であって、下式(1)で示されるN−保護−プロパルギルグリシンエステルにおけるR−O−CO−基を、下記の不斉加水分解酵素、又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物を用いて不斉加水分解することを特徴とする(S)N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法を提供するものである。
Figure 0004765358
Figure 0004765358
[式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びR3は水素原子又はアミノ基の保護基を表すが、R及びR3の両方が水素原子であることはない。*印を付した炭素原子は不斉炭素原子を表す。]
[不斉加水分解酵素]
フミコラ(Humicola)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、サーモマイセス(Thermomyces)属、リゾプス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida)属、バークホリデリア(Burkholderia)属及びストレプトマイセス(Streptomyces)属からなる群より選ばれる微生物を起源とする加水分解酵素
また、本発明は、上式(2)で示される光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンの製造方法であって、上式(1)で示されるN−保護−プロパルギルグリシンエステルにおけるR−O−CO−基を上述した不斉加水分解酵素又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物を用いて、式(1)で示されるN−保護−プロパルギルグリシンエステル中の(S)−N−保護−プロパルギルグリシエステルを不斉加水分解した後、不斉加水分解反応液における未反応の(R)−N−保護−プロパルギルグリシンエステルを前記不斉加水分解反応生成物である(S)−N−保護−プロパルギルグリシンから分離した後、上記未反応の(R)−N−保護−プロパルギルグリシンエステルを加水分解することを特徴とする(R)−N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、上記の式(2)で示される光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンの製造方法であって、上記の式(1)で示されるN−保護−プロパルギルグリシンエステルにおけるR−O−CO−基を、キラザイムE−3,lyo(好熱性微生物由来)[ロシュ・ダイアグノステックス(Roche Diagnostics)社製]を用いて不斉加水分解することを特徴とする(R)−N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法を提供するものである。
本発明の方法によれば、光学純度の高い(S)−N−保護−プロパルギルグリシンが得られる。また、本発明の別の方法によれば、光学純度の高い(R)−N−保護−プロパルギルグリシンが得られる。さらに、本発明の方法によれば、(R)−N−保護−プロパルギルグリシンが一段の反応で得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、N−保護−プロパルギルグリシンエステル(1)[以下、これらを基質ということもある]は、例えば、Tetrahedron Letters,40,5841−5844(1999)に記載の方法に準じて、グリシンエステル塩酸塩をSchiff塩基とした後にアルキル化し、次いで得られたイミン化合物を加水分解し、得られたプロパルギルグリシンエステルにおけるアミノ基を常法により保護することによって製造することができる。また、本発明における基質は、Helvetica Chimica Acta,59(6),2181−2183,(1976)に記載の方法に準じて、N−保護−α−アミノマロン酸ジエステルを臭化プロパルギルでアルキル化した後に、常法に従って加水分解し、引き続いて脱炭酸反応させることにより製造することもできる。
上記の基質は、上記方法とは異なる方法で製造されたものであってもよい。本発明において、前記の基質は2種類の鏡像異性体の混合物として存在する。
上記の基質におけるRは炭素数1〜4のアルキル基を示す。該アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基等が挙げられる。
上記の基質におけるR及びR3は水素原子又はアミノ基の保護基を表すが、R及びR3の両方が水素原子であることはない。
上記のアミノ基の保護基としては、例えば、以下のものが挙げられる。
式 R−OCO−で示される保護基{式中、Rはアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。}、及び式 R−CH−で示される保護基{式中、Rはアリール基を表す。}。
上述した保護基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
tert−ブトキシカルボニル基のようなアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基やp−ニトロベンジルオキシカルボニル基のようなアリールアルキルオキシカルボニル基;アリルオキシカルボニル基や9−フルオレニルメトキシカルボニル基のようなアリルオキシ若しくはアルコキシカルボニル基;アセチル基やベンゾイル基のようなアシル基;ベンジル基のような置換アルキル基等。
アミノ基の保護基としては、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ベンゾイル基又はベンジル基が好ましい。
上記の基質の具体例としては、以下のものが挙げられる。
N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシンメチルエステル、N−ベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンメチルエステル、N−p−メトキシベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンメチルエステル、N−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンメチルエステル、N−アリルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンメチルエステル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル−プロパルギルグリシンメチルエステル、N−アセチル−プロパルギルグリシンメチルエステル、N−ベンジル−プロパルギルグリシンメチルエステル、N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシンエチルエステル、N−ベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンエチルエステル、N−p−メトキシベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンエチルエステル、N−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンエチルエステル、N−アリルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンエチルエステル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル−プロパルギルグリシンエチルエステル、N−アセチル−プロパルギルグリシンエチルエステル、N−ベンジル−プロパルギルグリシンエチルエステル、N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−プロピルエステル、N−ベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−プロピルエステル、N−p−メトキシベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−プロピルエステル、N−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−プロピルエステル、N−アリルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−プロピルエステル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−プロピルエステル、N−アセチル−プロパルギルグリシン−n−プロピルエステル、N−ベンジル−プロパルギルグリシン−n−プロピルエステル、N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソプロピルエステル、N−ベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソプロピルエステル、N−p−メトキシベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソプロピルエステル、N−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソプロピルエステル、N−アリルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソプロピルエステル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソプロピルエステル、N−アセチル−プロパルギルグリシンイソプロピルエステル、N−ベンジル−プロパルギルグリシンイソプロピルエステル、N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−ブチルエステル、N−ベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−ブチルエステル、N−p−メトキシベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−ブチルエステル、N−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−ブチルエステル、N−アリルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−ブチルエステル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル−プロパルギルグリシン−n−ブチルエステル、N−アセチル−プロパルギルグリシン−n−ブチルエステル、N−ベンジル−プロパルギルグリシン−n−ブチルエステル、N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソブチルエステル、N−ベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソブチルエステル、N−p−メトキシベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソブチルエステル、N−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソブチルエステル、N−アリルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソブチルエステル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル−プロパルギルグリシンイソブチルエステル、N−アセチル−プロパルギルグリシンイソブチルエステル、N−ベンジル−プロパルギルグリシン−イソブチルエステル、N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン−sec−ブチルエステル、N−ベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−sec−ブチルエステル、N−p−メトキシベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−sec−ブチルエステル、N−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−sec−ブチルエステル、N−アリルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−sec−ブチルエステル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル−プロパルギルグリシン−sec−ブチルエステル、N−アセチル−プロパルギルグリシン−sec−ブチルエステル、N−ベンジル−プロパルギルグリシン−sec−ブチルエステル、N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン−tert−ブチルエステル、N−ベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−tert−ブチルエステル、N−p−メトキシベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−tert−ブチルエステル、N−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−tert−ブチルエステル、N−アリルオキシカルボニル−プロパルギルグリシン−tert−ブチルエステル、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル−プロパルギルグリシン−tert−ブチルエステル、N−アセチル−プロパルギルグリシン−tert−ブチルエステルやN−ベンジル−プロパルギルグリシン−tert−ブチルエステル等。
上述した基質に対して不斉加水分解能を有し、光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンを生成させる酵素としては、例えば、フミコラ属、シュードモナス属、サーモマイセス属、リゾプス属、アスペルギルス属、ペニシリウム属、キャンディダ属、バークホリデリア属やストレプトマイセス属の微生物を起源とする加水分解酵素を挙げることができる。
上記のサーモマイセス属の微生物を起源とする加水分解酵素としては、例えば、サーモマイセス・ランギノーサ(Thermomyces lanuginosa)由来の酵素(エステラーゼ、プロテアーゼ又はリパーゼ)を挙げることができる。
上記のリゾプス属の微生物を起源とする加水分解酵素としては、例えば、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来の酵素(エステラーゼ、プロテアーゼ又はリパーゼ)を挙げることができる。
上記のアスペルギルス属の微生物を起源とする加水分解酵素としては、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)由来の酵素(エステラーゼ、プロテアーゼ又はリパーゼ)を挙げることができる。
上記のペニシリウム属の微生物を起源とする加水分解酵素としては、例えば、ペニシリシム・シトリナム(Penicillium citrinum)由来の酵素(エステラーゼ、プロテアーゼ又はリパーゼ)を挙げることができる。
上記のキャンディダ属の微生物を起源とする加水分解酵素としては、例えば、キャンディダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来の酵素(エステラーゼ、プロテアーゼ又はリパーゼ)を挙げることができる。
上記のバークホリデリア属の微生物を起源とする加水分解酵素としては、例えば、バークホリデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)由来の酵素(エステラーゼ、プロテアーゼ又はリパーゼ)を挙げることができる。
上記のストレプトマイセス属の微生物を起源とする加水分解酵素としては、例えば、ストレプトマイセス・カスピトサス(Streptomyces caespitosus)由来の酵素(エステラーゼ、プロテアーゼ又はリパーゼ)を挙げることができる。
上述した基質に対して不斉加水分解能を有し、光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンを生成する酵素として、例えば、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びバシラス・リケンフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のα-アミラーゼ、もしくは市販酵素としてキラザイム(CHIRAZYME)E-3,lyo(好熱性微生物由来)(ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)社製)を挙げることができる。
上述した基質に対して不斉加水分解能を有し、光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンを生成させる酵素として、具体的には、以下のものが挙げられる。
[天野エンザイム(Amano enzyme)社製の市販酵素]
リパーゼCE「アマノ」5(Thermomyces lanuginosa由来);リパーゼN「アマノ」、ニューラーゼF(以上、Rhizopus niveus由来);リパーゼA「アマノ」6(Aspergillus niger由来);リパーゼCE(Humicola sp.由来);プロテアーゼA「アマノ」、プロテアーゼM「アマノ」(以上、Aspergillus oryzae由来);プロテアーゼB「アマノ」(Penicillium citrinum由来);プロテアーゼP「アマノ」、アシラーゼ(以上、Aspergillus melleus由来);CHE「アマノ」2(Pseudomonas sp.由来)
[ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics社製の市販酵素)]
キラザイムL-1,lyo(Burkholderia cepacia由来);キラザイムL-6,lyo(Pseudomonas sp.由来)、キラザイムL-2,c-f.,C2, lyo(Candida antarctica由来)
[ノボザイム社製の市販酵素]
ターマミル(Bacillus licheniformis由来)、バン(Bacillus subtilis由来)
上述した基質に対して不斉加水分解能を有し、光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンを生成する酵素は、上記の微生物から突然変異剤若しくは紫外線等の処理により誘導された突然変異体由来の酵素であってもよく、これらの微生物が有する本酵素をコードする遺伝子が導入されて形質転換された組換え微生物により産生される酵素であってもよく、遺伝子工学的手法により上記本酵素のアミノ酸配列中における特定のアミノ酸が1個乃至数個、欠失、付加又は置換されてなる変異型酵素であってもよい。
本酵素をコードする遺伝子が導入され形質転換された組換え微生物を作製する方法としては、例えばJ.Sambrook、E.F.Fritsch、T.Maniatis著;モレキュラー クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コールドスプリングハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)発行(1989年)等に記載の通常の遺伝子工学的手法に準じた方法を挙げることができる。
遺伝子工学的手法による変異型酵素の作製方法としては、例えばOlfert Landt(Gene 96 125-128 1990)らの方法を挙げられ、具体的には特開2000−78988号公報や特開平7−213280号公報に記載の方法に準じた方法が挙げられる。
酵素を産生する微生物は、通常の方法によって液体培養することができる。培地としては、通常、微生物培養に使用される炭素源、窒素源や無機物等を適宜含む各種の培地を使用することができる。
例えば、炭素源としては、グルコース、グリセリン、有機酸や糖蜜等を挙げることができる。窒素源としては、ペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、大豆粉、コーンスティープリカー、綿実粉、乾燥酵母、カザミノ酸、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムや尿素等を挙げることができる。
無機物としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、コバルトや亜鉛等の金属の塩酸塩、上記金属の硫酸塩及び前記金属のリン酸塩等が挙げられる。より具体的には、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化コバルト、硫酸亜鉛、リン酸カリウムやリン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、上記微生物の不斉水解能を高めるために、適宜、オリーブ油若しくはトリブチリン等のトリグリセリド、又は上述した基質を培地に添加してもよい。
培養は、通常、好気的雰囲気で行うのがよく、振とう培養又は通気撹拌培養が好ましい。培養温度は、通常、約20〜約40℃の範囲、好ましくは25〜35℃の範囲である。pHは6〜8の範囲が好ましい。培養時間は、条件によって異なるが、1〜7日間の範囲が好ましい。
また、上記基質の不斉加水分解能を有する微生物菌体が得られる方法であれば、固体培養法を採用することもできる。
上述した酵素を、上記のようにして培養された微生物培養物から精製する方法としては、酵素の精製において一般に採用されている方法を採用することができる。
例えば、先ず、超音波処理、ダイノミル処理又はフレンチプレス処理等の方法により、微生物培養物中の菌体を破砕する。次に、得られた破砕液から遠心分離等により不溶物を除去した後、通常酵素の精製に使用される陽イオン交換カラムクロマトグラフィー、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、疎水カラムクロマトグラフィー及びゲル濾過カラムクロマトグラフィー等の一つ又は二つ以上の手段を適宜組合せることによって、目的とする酵素を精製することができる。
これらのカラムクロマトグラフィーに使用する担体の一例としては、DEAE−Sepharose fastflow(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)や、Butyl−Toyopearl650S(東ソー株式会社製)等を挙げることができる。
酵素は、精製酵素、粗酵素、微生物培養物、菌体、及びこれらを処理したもの等の種々の形態で用いることができる。上記の処理したものとしては、例えば、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、菌体摩砕物、菌体の自己消化物、菌体の超音波処理物、菌体抽出物や菌体のアルカリ処理物等が挙げられる。さらに、上記のような種々の純度又は形態の酵素を、例えば、シリカゲルやセラミックス等の無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等への吸着法、ポリアクリルアミド法、カラギーナンゲル法のような含硫黄多糖ゲル法、アルギン酸ゲル法や寒天ゲル法等の公知の方法により固定化して用いてもよい。
酵素の使用量は反応時間の遅延や選択性の低下が起こらないように適宜選択される。
例えば精製酵素や粗酵素を用いる場合、その使用量は上記の基質に対して、通常、0.001〜2重量倍の範囲、好ましくは0.002〜0.5重量倍の範囲である。
また、微生物培養物、菌体及びそれらの処理物を用いる場合の使用量は、前記基質に対して、通常は0.01〜200重量倍の範囲であり、好ましくは0.1〜50重量倍の範囲である。
不斉加水分解反応に用いられる水は、緩衝水溶液であってもよい。緩衝水溶液としては、例えばリン酸ナトリウム水溶液やリン酸カリウム水溶液等のようなリン酸アルカリ金属塩水溶液等の無機酸塩の緩衝水溶液、酢酸ナトリウム水溶液や酢酸カリウム水溶液等のような酢酸アルカリ金属塩等の有機酸塩の緩衝水溶液が挙げられる。
水の使用量は、基質に対して、通常は0.5〜200重量倍の範囲である。
本発明における不斉加水分解反応は、疎水性有機溶媒や親水性有機溶媒等の有機溶媒の存在下に行ってもよい。疎水性有機溶媒としては、例えばtert−ブチルメチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の脂肪族エーテル類;トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンやイソオクタン等の炭化水素類等が挙げられる。また、親水性有機溶媒としては、例えばtert−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノールやn−ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等の脂環式エーテル類;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類;アセトン等のケトン類;アセトニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等が挙げられる。
これらの疎水性有機溶媒や親水性有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、疎水性有機溶媒と親水性有機溶媒とを混合して用いてもよい。
上記の有機溶媒を用いる場合、その使用量は、基質に対して通常は200重量倍以下であり、好ましくは0.1〜100重量倍の範囲である。
不斉加水分解反応は、例えば、水、基質及び酵素を混合する方法により行われる。また、有機溶媒を用いる場合には、該有機溶媒、水、基質及び酵素を混合すればよい。
不斉加水分解反応におけるpHは、酵素の種類にもよるが、通常は4〜10の範囲、好ましくは6〜8の範囲である。反応中に、塩基を加えることにより、pHを上記範囲内に調整してもよい。
上記の塩基としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウムやリン酸水素二カリウム等のリン酸塩、トリエチルアミンやピリジン等の有機塩基、又はアンモニア等が挙げられる。
前記の塩基は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。塩基は通常は水溶液として添加されるが、有機溶媒と水の混合物の溶液として添加してもよい。上記の有機溶媒としては、例えば不斉加水分解反応で使用した溶媒と同じものを使用してもよい。
また、塩基は固体として添加してもよく、懸濁液として添加してもよい。
不斉加水分解における反応温度は、高すぎると酵素の安定性が低下する傾向にあり、低すぎると反応速度が低下する傾向にある。反応温度は、通常は5〜65℃程度の範囲であり、好ましくは20〜50℃程度の範囲である。
かくして式(2)で示される光学活性なN−保護−プロパルギルグリシン[以下、不斉加水分解物であるカルボン酸ということもある]、及び不斉加水分解されずに残存した光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンエステル[以下、残存エステルということもある]を含む反応液が得られる。
反応液中のこれらの化合物を分離するために、又は反応で使用した酵素や緩衝剤とこれらの化合物を分離するために、さらに後処理操作を行ってもよい。
後処理操作としては、例えば、反応液中の溶媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて分離精製する方法や、分液操作により分離精製する方法等が挙げられる。
分液操作により分離精製する際に、反応時に水と疎水性有機溶媒のいずれにも溶解する有機溶媒を用いた場合は、この水と疎水性有機溶媒のいずれにも溶解する溶媒を留去により除去した後、分液操作を行ってもよい。
また、不斉加水分解物であるカルボン酸及び残存エステルを含む液に不溶の酵素や固定化担体等が存在する場合は、これらの酵素や固定化担体を濾過により除去してもよい。
本発明において、不斉加水分解物であるカルボン酸と、残存エステルとを分離するには、反応混合物中に存在する残存エステルを、疎水性有機溶媒を用いて抽出後、水層と分液すればよい。上記の抽出に用いる疎水性有機溶媒としては、例えばtert−ブチルメチルエーテルやイソプロピルエーテル等の脂肪族エーテル類;トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンやイソオクタン等の炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンやオルトジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。
不斉加水分解反応時に上記例示の疎水性有機溶媒を使用した場合は、そのまま分液操作を行うこともできる。また、不斉加水分解反応時に疎水性有機溶媒を用いなかった場合や、疎水性有機溶媒又は水の使用量が少ないために容易に分液できない場合には、疎水性有機溶媒及び/又は水を適宜添加した後、静置して分液すればよい。
上記の疎水性有機溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、基質に対して、通常は0.1〜200重量倍の範囲であり、好ましくは0.2〜100重量倍の範囲である。
上述した抽出や分液操作時のpHは、通常は6〜12の範囲であり、好ましくは7〜10の範囲である。
不斉加水分解物であるカルボン酸と残存エステルを分離する際は、液のpHを上記範囲に調整するために、適宜、酸や塩基を使用することもできる。
上記の酸としては例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸やリン酸等の無機酸、該無機酸と金属との酸性塩、酢酸、クエン酸やメタンスルホン酸等の有機酸、及び該有機酸と金属との酸性塩等が挙げられる。また、上記の塩基としては反応時のpH調整に用いたものと同様の塩基を使用することもできる。
不斉加水分解物であるカルボン酸と残存エステルとの分離が不十分な場合は、上述した抽出や分液の操作を複数回繰り返してもよい。
上記の抽出により、不斉加水分解物であるカルボン酸と分離された残存エステルは、油層中の有機溶媒を留去することにより単離することができる。
上記の油層中の有機溶媒を留去することにより単離された残存エステルは、さらにカラムクロマトグラフィー等によって精製されてもよい。
上記操作により得られた残存エステルは、例えばアルカリの存在下に加水分解することによって、光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンに誘導することができる。この光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンは、さらにカラムクロマトグラフィーや再結晶等によって精製してもよい。
不斉加水分解物であるカルボン酸は、上記の抽出操作において水層に存在する。水層に存在するこのカルボン酸を酵素や緩衝剤等の水溶性成分と分離するには、疎水性有機溶媒を用いて有機層に抽出後、水層と分液すればよい。上記の抽出時に使用する疎水性有機溶媒としては、前述した残存エステルを抽出する際に用いた溶媒と同じ溶媒を用いることができる。該疎水性有機溶媒の使用量は、基質に対して、通常は0.1〜200重量倍程度の範囲であり、好ましくは0.2〜100重量倍程度の範囲である。
上記の不斉加水分解物であるカルボン酸の抽出時のpHは、通常は1〜7の範囲、好ましくは2〜5の範囲である。
抽出時の液性を上記pH範囲に調整するため、酸及び塩基を適宜使用することもできる。かかる酸及び塩基としては、上述した残存エステルと分離する際の分液操作時に用いた酸及び塩基と同じものを用いることができる。
不斉加水分解物であるカルボン酸の水層からの抽出量が少ない場合は、抽出操作と分液操作とを、複数回繰り返してもよい。
不斉加水分解物であるカルボン酸は、上述の方法で得た油層中の疎水性有機溶媒を留去することにより、単離することができる。このカルボン酸は、さらにカラムクロマトグラフィーや再結晶等によって精製されてもよい。
本発明によって得られる式(2)で示される光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンとしては、次の化合物が挙げられる。
N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシンの光学活性体、N−ベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンの光学活性体、N−p−メトキシベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンの光学活性体、N−p−ニトロベンジルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンの光学活性体、N−アリルオキシカルボニル−プロパルギルグリシンの光学活性体、N−9−フルオレニルメトキシカルボニル−プロパルギルグリシンの光学活性体、N−アセチル−プロパルギルグリシンの光学活性体やN−ベンジル−プロパルギルグリシンの光学活性体等。
本発明の方法によれば、特定の酵素を用いることによって、光学純度の良好な式(2)で示される光学活性N−保護−プロパルギルグリシンを製造することができる。
以下、実施例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実験例1〜19
下表1(表1において、実施例1〜19を実験例1〜19と読み替える。)に示した種々の酵素を、それぞれ下表2に示した量秤取した。次いで、上記の酵素中に、2M濃度のN−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン エチルエステルのtert−ブチルメチルエーテル溶液0.1mlを100mM濃度のリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)5mlに溶解させた溶液を加えた。得られた溶液を40℃で20時間攪拌した。その後、水6.4mlとアセトニトリル8.6mlを加えて、混合した。得られた均一溶液をHPLC〔カラム:CHIRALCEL OJ−RH、4.6mmφ×15cm(ダイセル社製)〕にて分析し、得られた光学活性N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン及びN−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン エチルエステルの収率と鏡像異性体過剰率とを求めた。結果を表2に示す
Figure 0004765358

Figure 0004765358
実施例20
リン酸水素二ナトリウム4.41gとリン酸二水素ナトリウム2.48gを水518gに溶解させて、pH7.0のリン酸緩衝液を作製した。このリン酸緩衝液に、ペニシリシム・シトリナム由来のプロテアーゼであるプロテアーゼB「アマノ」(天野エンザイム社製)0.42gとラセミのN−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン エチルエステルのtert−ブチルメチルエーテル溶液25.2g(40%溶液、純分10g、41mmol)を加えて、40℃で9時間攪拌した。反応終了後、tert−ブチルメチルエーテル76.7gを加えて10分間攪拌した。攪拌後、分液により油層と水層を分離した。得られた水層にtert−ブチルメチルエーテル76.7gを加えて更に抽出操作を行ない、その後分液して、油層と水層を分離した。得られた水層を元の重量の3分の1以下になるまで減圧濃縮した後、食塩を飽和濃度になるまで加えて溶解する。この水溶液に酢酸エチルの93.4gを加えて10分間攪拌後、分液により油層と水層を分離した。得られた水層に、酢酸エチルの93.4gを加えて更に抽出操作を行ない、その後分液して、油層と水層を分離した。得られた油層を併せた後、硫酸ナトリウムで乾燥した。次いで溶媒を留去して、無色固体の(S)−N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン4.0gを得た。
(S)−N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシンの収率は45%であった。また、鏡像異性体過剰率は99%ee以上であった。
実施例21
リン酸水素二ナトリウム3.97gとリン酸二水素ナトリウム2.24gを水466gに溶解させた。得られた溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7.0に調整したリン酸緩衝液を作製した。このリン酸緩衝液に、ペニシリシム・シトリナム由来のプロテアーゼであるプロテアーゼB「アマノ」(天野エンザイム社製)0.30gとラセミのN−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン エチルエステル15.0g(62mmol)を加えて、40℃で7.5時間攪拌した。反応中、液のpHが7.0を保つように5%水酸化ナトリウム水溶液を適時添加した。反応終了後、tert−ブチルメチルエーテル115gを加えて10分間攪拌した。攪拌後、分液により油層と水層を分離した。得られた水層にtert−ブチルメチルエーテル115gを加えて、更に抽出操作を行った。その後分液して、油層と水層を分離した。得られた水層を元の重量の3分の1以下になるまで減圧濃縮した後、食塩を飽和濃度になるまで加えて溶解する。得られた水溶液中に酢酸エチル140gを加えて10分間攪拌した後、分液により油層と水層を分離した。得られた水層中に酢酸エチル140gを加えて更に抽出操作を行なった後分液して、油層と水層を分離した。得られた油層を併せた後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後溶媒を留去して、無色固体の(S)−N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシン5.7gを得た。
(S)−N−tert−ブトキシカルボニル−プロパルギルグリシンの収率は43%であり、鏡像異性体過剰率は99%ee以上であった。
本発明により得られる光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンは、農薬や抗生物質等を製造する際の中間体化合物として有用である。

Claims (10)

  1. 下式(2)で示される光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンの製造方法であって、下式(1)で示されるN−保護−プロパルギルグリシンエステルにおけるR−O−CO−基を、下記の不斉加水分解酵素、又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物を用いて不斉加水分解することを特徴とする(S)−N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法。
    Figure 0004765358
    [式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びR3は水素原子又はアミノ基の保護基を表すが、R及びR3の両方が水素原子であることはない。*印を付した炭素原子は不斉炭素原子を表す。]
    [不斉加水分解酵素]
    サーモマイセス・ランギノーサ(Thermomyces lanuginosa)由来のリパーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のリパーゼ、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来のリパーゼ、アスペルギルス・オリザ(Aspergillus oryzae)由来のプロテアーゼ、ペニシリシム・シトリナム(Penicillium citrinum)由来のプロテアーゼ、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来のプロテアーゼ、CHE"AMANO(登録商標)"2(Pseudomonas sp.由来)[天野エンザイム(Amano enzyme)社製]、リパーゼCE(商標)(Humicola sp.由来)[天野エンザイム(Amano enzyme)社製]、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)由来のアシラーゼ、キラザイム(登録商標)L-6,lyo(Pseudomonas sp.由来)[ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics社製)]、ストレプトマイセス・カスピトサス(Streptomyces caespitosus)由来のプロテアーゼ、バシラス・リケンフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のα-アミラーゼ又はバシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)由来のα-アミラーゼ
  2. 請求項1記載の式(2)で示される光学活性なN−保護−プロパルギルグリシンの製造方法であって、請求項1記載の式(1)で示されるN−保護−プロパルギルグリシンエステルにおけるR−O−CO−基を下記の不斉加水分解酵素又は該酵素の産生能を有する微生物の培養物若しくはその処理物を用いて、式(1)で示されるN−保護−プロパルギルグリシンエステル中の(S)−N−保護−プロパルギルグリシンエステルを不斉加水分解した後、不斉加水分解反応液における未反応の(R)−N−保護−プロパルギルグリシンエステルを前記不斉加水分解反応生成物である(S)−N−保護−プロパルギルグリシンから分離した後、上記未反応の(R)−N−保護−プロパルギルグリシンエステルを加水分解することを特徴とする(R)−N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法。
    [不斉加水分解酵素]
    サーモマイセス・ランギノーサ(Thermomyces lanuginosa)由来のリパーゼ、アスペルギルス・オリザ(Aspergillus oryzae)由来のプロテアーゼ、ペニシリシム・シトリナム(Penicillium citrinum)由来のプロテアーゼ、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)由来のプロテアーゼ、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来のプロテアーゼ、リパーゼCE(商標)(Humicola sp.由来)[天野エンザイム(Amano enzyme)社製]、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)由来のアシラーゼ、キャンディダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼ、キラザイム(登録商標)E-3,lyo(好熱性微生物由来)[ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)社製]、ストレプトマイセス・カスピトサス(Streptomyces caespitosus)由来のプロテアーゼ、バシラス・リケンフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のα-アミラーゼ又はバシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)由来のα-アミラーゼ
  3. 式(1)及び(2)におけるR2がアミノ基の保護基を表し、該保護基が式 R−O−CO−で示される保護基{式中、Rはアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。}又は式 R−CH−で示される保護基{式中、Rはアリール基を表す。}を表し、且つR3が水素原子を表す請求項1に記載の(S)N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法。
  4. 式(1)及び(2)におけるR2がアミノ基の保護基を表し、該保護基が式 R−O−CO−で示される保護基{式中、Rはアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。}又は式 R−CH−で示される保護基{式中、Rはアリール基を表す。}を表し、且つR3が水素原子を表す請求項2に記載の(R)−N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法。
  5. 式(1)及び(2)におけるR2がtert−ブトキシカルボニル基を表し、且つR3が水素原子を表す請求項3に記載の(S)N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法。
  6. 式(1)及び(2)におけるR2がtert−ブトキシカルボニル基を表し、且つR3が水素原子を表す請求項4に記載の(R)−N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法。
  7. 式(1)におけるR1が、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基である請求項1、3又は5に記載の(S)−N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法。
  8. 式(1)におけるR1が、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基である請求項2、4又は6に記載の(R)−N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法。
  9. 式(1)におけるR1が、エチル基である請求項7に記載の(S)−N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法。
  10. 式(1)におけるR1が、エチル基である請求項8に記載の(R)−N−保護−プロパルギルグリシンの製造方法。
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