JP2006001862A - 3−シアノグルタル酸モノエステル類及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 下式(1)で示される光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類。
[式中、R1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チオフェン−2−イル基又はチオフェン−3−イル基を表す。該フェニル基及びナフチル基の水素原子は、それぞれ、アルキル基、トリアルキルシリルオキシ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。また、該ピリジル基の水素原子はアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。R2は炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
【選択図】 なし
Description
そして、特許文献2には、上述した酢酸エステル類の製造法として、3−シアノグルタル酸ジエステル類を、還元・環化してラセミの(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸エステル類を製造する方法が記載されている。
一方、カルボン酸の光学活性体の製造については、次の(i)及び(ii)の方法が知られている。
(i)イタコン酸に光学活性1−メチルベンジルアミンを付加させた後、環化させて、N−(1−メチルベンジル)−(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸エステル類を製造する方法(非特許文献1参照)
(ii)光学活性な1−メチルベンジルアミンと4−ブロモ−2−ブテン酸エステルから出発して、N−(1−メチルベンジル)−(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸エステル類を製造する方法(非特許文献2参照)
上記のように、(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸類の光学活性体を得るためには、得られた化合物におけるピロリジン環の窒素原子に結合する1−メチルベンジル基を脱離させることが必要である。しかしながら、上述した1−メチルベンジル基を脱離させる方法は、特許文献1、特許文献2、非特許文献1や非特許文献2には記載されていない。
すなわち、本発明の(イ)は、下式(1)で示される光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類を提供するものである。
[式中、R1は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チオフェン−2−イル基又はチオフェン−3−イル基を表す。該フェニル基及びナフチル基の水素原子は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、トリアルキルシリルオキシ基、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。また、該ピリジル基の水素原子は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。R2は炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
[式中、R1及びR2は、それぞれ上記と同じ定義である。]
また、本発明の(ロ)によれば、上記の3−シアノ−グルタル酸モノエステル類(1)を効率よく製造することができる。
さらに、本発明の(ハ)によれば、上記の光学活性な又はラセミ体の(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類(3)又はその塩が提供される。
本発明(イ)において、上式(1)におけるR1は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チオフェン−2−イル基又はチオフェン−3−イル基を表す。該フェニル基及びナフチル基の水素原子は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜12のトリアルキルシリルオキシ基、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子又は臭素原子)及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。また、該ピリジル基の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子)からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。R2は炭素数1〜4のアルキル基を表す。該炭素数1〜4のアルキル基の水素原子はフェニル基で置換されていてもよい。また、該フェニル基の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びニトロ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。
また、3−シアノグルタル酸ジエステル類(2)は、例えば下記反応式で示すように、3−tert−ブトキシカルボニル−3−シアノグルタル酸ジエステル類を酸の存在下に脱炭酸反応させることによっても製造することができる(Angewandte Chemie, 72,960 (1960)を参照)。
上記フェニル基やナフチル基における水素原子は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基やt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;炭素数3〜12のトリアルキルシリルオキシ基や水酸基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基やtert−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子や沃素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等で置換されていてもよい。
上記のピリジル基における水素原子は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基やt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基やtert−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;又はフッ素原子、塩素原子、臭素原子や沃素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
3−シアノグルタル酸ジメチル、3−シアノグルタル酸ジエチル、3−シアノグルタル酸ジn−プロピル、3−シアノグルタル酸ジn−ブチル、3−シアノグルタル酸ジi−プロピルや3−シアノグルタル酸ジi−ブチル等のジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジi−ブチル等のアルケニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジi−ブチル等のフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のメチルフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のi−プロピルフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のジアルキルフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のヒドロキシフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のアルコキシフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のトリアルコキシフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のクロロフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のジクロロ置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のトリフルオロ置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジi−ブチル等のピリジン−3−イル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジi−ブチル等のチオフェン−2−イル置換ジアルキルエステル類;
アルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化バリウムや水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。
上記の加水分解反応におけるジカルボン酸の副生を抑制する観点から、アルカリの使用量は、3−シアノグルタル酸ジエステル類(2)に対して等モル以下であることが好ましい。しかしながら、上記ジカルボン酸の副生を抑制する目的でアルカリの使用量を極端に減らすことは、3−シアノグルタル酸モノエステル類(1)の収率の低下をきたすので、好ましくない。
加水分解反応は、好ましくは溶媒の存在下に行われる。加水分解反応における溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノールや2−プロパノール等のアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドやN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;トルエンやベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラフラン、ジオキサンやポリエチレングリコール等のエーテル系溶媒;アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ピリジン、2−メチル−5−エチルピリジンやトリエチルアミン等のアミン系溶媒;又は上記溶媒の混合物が挙げられる。
微生物や動植物由来のリパーゼ、エステラーゼやプロテアーゼとしては、例えば、Achromobacter属、Alcaligenes属、Arthrobacter属、Aspergillus属、Bacillus属、Burkholderia属、Candida属、Chromobacterium属、Escherichia属、Geotrichuf属、Humicola属、Mucor属、Penicillium属、Phycomyces属、Pseudomonas属、Rhizopus属、Rhizomucor属、Saccharomyces属、Streptomyces属、Thermoanaerobium属やThermus属の酵素;又は、豚、牛、羊、ウサギ、ヒトや小麦等から由来する酵素が挙げられる。
好ましい酵素としては、例えば豚肝臓由来のリパーゼ(PLE);Alcalase 2.4L、Bacillus属由来のプロテアーゼ;好熱菌由来のエステラーゼ;Chromobacterium属由来のエステラーゼ;Arthrobacter属由来のエステラーゼ等が挙げられる。
(e)配列番号1で示される塩基配列。
(f)配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸が下記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸が下記のアミノ酸からなるB群から選ばれるアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(g)前記(f)からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、且つ前記(f)によりコードされるアミノ酸配列からなる酵素と同等な触媒機能を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(A群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びセリン
(B群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン及びアルギニン
配列番号1で示される塩基配列を有するDNAは、例えば、クロモバクテリウム(Chromobacterium)SC−YM−1株(FERM P−14009)等の微生物から通常の方法でDNAライブラリーを作製し、このDNAライブラリーを鋳型に用いてPCRを行うことによって得ることができる。
なお、配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において、160番目及び189番目のアミノ酸に同時に部位特異的変異を導入してもよい。
反応温度は、酵素の性質によって異なるが、おおむね0〜50℃の範囲である。好熱菌等のように高温を好む微生物又は微生物由来の酵素を使用するときには、50℃以上が好ましい場合もある。
加水分解反応は、通常は水の存在下に行われるが、有機溶媒を併用してもよい。このような有機溶媒の例としては、アルカリ加水分解の場合に例示した溶媒と同様の有機溶媒が挙げられる。水中での基質の安定性が良くない場合は、自然水解抑制の観点から、有機溶媒共存下に反応を行うことが望ましい。また、反応の進行に伴い水層のpH値が変化するのを防ぐため、リン酸等のバッファー中で反応を行ってもよく、水層のpHを一定に保つために反応中に酸又はアルカリを添加してもよい。
また、必要に応じて、水層をアルカリ性にすることにより、生成した3−シアノグルタル酸モノエステル類を水層に抽出し、未反応の3−シアノグルタル酸ジエステル類から分離することができる。
上記で得た分液後の水層を酸性にすることにより、光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類を有機層に抽出するか、又は結晶として単離することができる。得られた光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類は、晶析等の操作により更に精製してもよい。
上記の3−シアノグルタル酸モノエステル類は、3−シアノグルタル酸ジエステル類の場合と同様に特許文献2等に記載の条件によって還元・環化することによって、(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸類又はその塩に変換することができる(下記反応式参照)。
[3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチルの合成]
(3,4−ジクロロフェニル)アセトニトリル 15.9gの無水テトラハイドロフラン(100ml)溶液中に、窒素雰囲気下、1M ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドのテトラハイドロフラン溶液171mlを−78℃で滴下した。得られた混合物を徐々に室温まで昇温後、−78℃に冷却した。冷却後の混合物中に、ブロモ酢酸エチル(19.1ml)を−78℃で滴下した。滴下終了後、得られた混合物を徐々に室温まで昇温後、室温で14時間攪拌した。得られた反応混合物中に、飽和塩化アンモニウム水溶液(200ml)を加えた後、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、硫酸マグネシウムを濾別した。濾液を減圧下に濃縮し、濃赤褐色の油状物(34.2g)を得た。
上記の濃赤褐色の油状物34.2gを、(3,4−ジクロロフェニル)アセトニトリル 55.7gから上記と同様にして得た濃赤褐色の油状物107.2gと併せた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液はヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を使用した。また、上記溶出液の比率は容積比で3/1〜3/2の範囲とした)により精製し、淡黄色油状の3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチル60.1g(収率44%)を得た。
[Chromobacterium SC−YM−1(FERM P−14009)由来の酵素液の調製]
下記実施例で使用したChromobacterium SC−YM−1株由来のエステラーゼ遺伝子導入大腸菌E.coli JM105/pCC160S189Y363term株は、特開平7−213280号公報記載の方法に準じて調製した。上記E.coli JM105/pCC160S189Y363term株が産生するエステラーゼとは、前述した配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸がセリンに置換され、且つ189番目のアミノ酸がチロシンに置換される特異的変異が導入された耐熱性酵素である。
試験管に、L−Broth培地(SIGMA社製)10mlを入れて、滅菌した。ここにアンピシリンを50μg/mlとなるように加え、さらにE.coli JM105/pCC160S189Y363term株のグリセロールストック0.1mlを加え、30℃で16時間振盪培養した。
容積500mlのバッフル付三角フラスコにL−Broth培地(SIGMA社製)100mlを入れて滅菌した。滅菌後、アンピシリンを50μl/mlとなるように加えた後、上記の試験管で培養した培養液を1ml加え、30℃で攪拌下に培養した。培養開始から4時間後に、IPTG[イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド]を1mMとなるように加えた。12時間培養後の培養液を、酵素液とした。
[ラセミ体の3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸モノエチル・Na塩の合成]
3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチル2.00gのエタノール(6ml)溶液中に、10%水酸化ナトリウム水溶液2.12gを1℃で約2時間かけて滴下し、同温度で23時間保温した。析出した固体を濾別し、20mlのアセトンで洗浄した後、減圧乾燥して0.34gの白色固体を得た。高速液体クロマトグラフ(HPLC)による分析の結果、92%が3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸・2Na塩であった。
一方、上記で得た濾液と洗液を併せた濾洗液中にアセトン16.2gを0℃で滴下し、滴下終了後、同温度で1時間保温した。生じた結晶を濾過し、約20mlのアセトンで洗浄後、濾上物を減圧下に乾燥して、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸モノエチル・Na塩の1.02g(収率52%)を得た。
[光学活性な3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸モノエチルの合成]
0.1mlの3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチルのメチル−t−ブチルエーテル溶液[32.4%(w/v)]を、6mlの0.1Mリン酸バッファー溶液(pH7.0)とChromobacterium SC−YM−1(FERM P−14009)由来の酵素液(100mg)の混合物中に加えた後、38℃で約20時間攪拌した。得られた反応混合物をHPLCで分析した。分析結果は、次のとおりであった。
3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチル 1.6%
3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸モノエチル 93.9%
3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸 2.9%
実施例2で用いた酵素液の代わりに下表1記載の酵素又は酵素液を用いても、反応が進行する。
また、本発明(ロ)によれば、上記光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類が提供される。
さらに、本発明の(ハ)によれば、上記の光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類を還元・環化することによって、(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類又はその塩が提供され、該(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類又はその塩は医薬品の前駆体化合物として有用である。
Claims (11)
- 下式(1)で示される光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類。
[式中、R1は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チオフェン−2−イル基又はチオフェン−3−イル基を表す。該フェニル基及びナフチル基の水素原子は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜12のトリアルキルシリルオキシ基、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。また、該ピリジル基の水素原子は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。R2は炭素数1〜4のアルキル基を表す。該炭素数1〜4のアルキル基の水素原子はフェニル基で置換されていてもよい。また、該フェニル基の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びニトロ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。] - 式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を酵素の存在下に加水分解することを特徴とする請求項2記載の式(1)で示される光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。
- 式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を不斉加水分解する能力を有する酵素が、Arthrobacter 属由来の酵素、Bacillus 属由来の酵素又は豚由来の酵素である請求項4に記載の光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。
- 式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を不斉加水分解する能力を有する酵素が、Chromobacterium 属由来の酵素である請求項4に記載の光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。
- 式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を不斉加水分解する能力を有する酵素が、Chromobacterium SC-YM-1(工業技術院 生命工学技術研究所 寄託番号 FERM P−14009)由来の酵素である請求項6に記載の光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。
- 式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を不斉加水分解する能力を有する酵素が、下記(e)、(f)又は(g)のいずれかのDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるものである請求項3〜7のいずれかに記載の光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。
(e)配列番号1で示される塩基配列。
(f)配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸が下記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸が下記のアミノ酸からなるB群から選ばれるアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(g)前記(f)からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、且つ前記(f)によりコードされるアミノ酸配列からなる酵素と同等な触媒機能を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(A群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びセリン
(B群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン及びアルギニン - 式(1)で示される3−シアノグルタル酸モノエステル類として、光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類を用いることを特徴とする請求項9記載の光学活性な(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類又はその塩の製造方法。
- 式(1)で示される3−シアノグルタル酸モノエステル類として、請求項2〜8のいずれかに記載の製造方法により得た光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステルを、還元・環化させることを特徴とする請求項10記載の光学活性な(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類又はその塩の製造方法。
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- 2004-06-16 JP JP2004178149A patent/JP2006001862A/ja active Pending
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