JP3866357B2 - 熱安定性耐溶媒性エステル分解酵素 - Google Patents

熱安定性耐溶媒性エステル分解酵素 Download PDF

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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、熱安定で耐溶媒性のエステル分解酵素に関する。また本願発明は、熱安定で耐溶媒性のエステル分解酵素の産生方法およびこのエステル分解酵素を産生する微生物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、生理作用を有する多くの化合物は、その光学異性体の混合物として使用されている。しかし、望ましい活性は、一方の光学異性体のみに存在する場合が多い。さらに、他方の光学異性体が、所望の活性を有さずかえって生体に対して毒性を有する場合があることも知られている。従って、有効かつ安全な医薬または生理活性化合物を提供するためには、光学純度の高い化合物の製造方法を開発することが強く要望されている。
【0003】
(S)-2-ベンジルコハク酸は、血糖低下作用およびインスリン分泌作用を有する糖尿病の治療剤の合成中間体として有用な化合物である(特開平5-310693号公報)。この化合物を製造するための効率的かつ工業的な製法が望まれており、現在までにいくつかの試みがなされている。例えば、ラセミ体の2-ベンジルコハク酸を光学活性な1-フェニルエチルアミンで光学分割し、(S)-2-ベンジルコハク酸を生産する方法(Arkiv Kemi Mineral God, 26B,No.11 (1948))や、2-ベンジリデンコハク酸からの不斉合成方法(Tetrahedron Letters, 32, 3671-3672 (1991))などが報告されている。
【0004】
また、酵素を利用する方法として、ラセミ体の2-ベンジルコハク酸ジエチルに、α-キモトリプシンを作用させ不斉加水分解することによる(S)-2-ベンジルコハク酸を製造する方法(Journal of the American Chemical Society,3495-3502 (1968))などが報告されている。
【0005】
しかし、これらの方法は、低光学純度、または合成工程の煩雑さから大量生産が容易でないなどの問題を含むものであった。
【0006】
このような観点から、光学活性2-ベンジルコハク酸を極めて高い光学純度で効率よく製造する方法およびその方法において使用される酵素が強く要望されている。
【0007】
さらに、光学異性体の分離反応においては、各種有機溶媒中に高濃度に溶解させた出発物質を、比較的高温で反応させる場合もあるので、熱安定で耐溶媒性の酵素が望まれる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は上記の問題を解決するためのものである。本願発明の目的は、光学異性体選択性を有する熱安定で耐溶媒性のエステル分解酵素を産生する微生物を単離すること、および微生物を培養することにより熱安定で耐溶媒性のエステル分解酵素を産生することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願発明によれば、以下の性質:
(1)pH7、50℃、1時間の処理で95%以上活性が残存する;
(2)pH7、50%トルエン中、50℃、1時間の処理で90%以上活性が残存する;
(3)ゲル濾過での分子量が約105,000である;
(4)エステル分解活性を有する;
を有するエステル分解酵素が提供される。
好ましい実施態様においては、前記のエステル分解酵素は、(R,S)-2-ベンジルコハク酸ジメチルを光学選択的に加水分解し得る能力を有する。
【0010】
好ましい実施態様においては、前記のエステル分解酵素は、(R、S)-2-ベンジルコハク酸ジメトキシエチルを光学選択的に加水分解し得る能力を有する。
【0011】
好ましい実施態様においては、前記のエステル分解酵素は、p-ニトロフェニルブチレートに対する基質特異性を有する。
好ましい実施態様においては、前記のエステル分解酵素は、Bacillus brevis 042-24株によって産生される。
また本願発明によれば、Bacillus brevis 042-24株を培養する工程を含む、前記のエステル分解酵素の製造方法が提供される。
さらに本願発明によれば、前記のエステル分解酵素を産生する、Bacillus brevis 042-24株が提供される。
なおさらに本願発明によれば、(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルと、前記のエステル分解酵素とを反応させる工程;および
生成した光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルと光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のモノエステルとを分離する工程、
を包含する、方法が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本明細書で用いられる用語「エステル分解酵素」は、エステルを加水分解する酵素をいう。従って、エステル分解酵素には、リパーゼ、エステラーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ、プロテアーゼなどの酵素が包含される。
【0013】
本願発明において、エステル分解酵素の熱安定性とは、40℃、より好ましくは45℃、最も好ましくは50℃での1時間の処理で失活しないことをいう。また本願発明のエステル分解酵素は、耐溶媒性である。耐溶媒性とは、(例えば、pH7、50%トルエン中、50℃、1時間の処理で90%以上活性が残存する) をいう。さらに本願発明のエステル分解酵素は、約105,000の分子量を有する。分子量は、ポリアクリルアミド電気泳動またはゲル濾過によって測定され得る。
【0014】
エステル分解酵素の活性は、例えば酵素を基質としてのp-ニトロフェニルブチレートと反応させ、生成するp-ニトロフェノールを比色的に定量することにより測定し得る。
本願発明のエステル分解酵素には、光学異性体選択性を有するエステル分解酵素が含まれる。特に好ましくは、(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルを光学選択的に加水分解し得る能力を有する酵素が挙げられる。
【0015】
本願発明の酵素の起源は限定しないが、微生物由来の酵素が、入手が容易であるので、好適に使用され得る。微生物としては、好ましくは、Bacillus brevisに分類される細菌が挙げられる。
【0016】
微生物の単離は、土壌などの自然界から得た微生物または各種の既に分離されている微生物のエステル分解酵素についてのスクリーニング、およびそれに続く微生物の産生するエステル分解酵素の特徴付けにより行われる。
【0017】
スクリーニングは、ノイゲンHC(第一工業製薬製)で乳化したトリブチリンを含む寒天培地に種々の微生物を加え、この寒天培地上で微生物を生育させた場合、クリアーゾーンを形成するか否かにより簡便に実施される。酵素の特徴付けは例えば、熱安定性、pH安定性、対溶媒性、基質特異性、光学異性体選択性などについて行われる。
【0018】
また本願発明のエステル分解酵素をコードする遺伝子を単離し、その遺伝子を発現させて、エステル分解酵素を産生し得る。エステル分解酵素をコードする遺伝子の単離は、例えば本願発明のエステル分解酵素産生株であるBacillus brevis 042-24株から調製したゲノムDNAを挿入したライブラリーを作製し、精製したタンパク質のアミノ酸配列情報をもとに設計した標識プローブを用いたスクリーニング、または発現する活性を指標にしたスクリーニングなどにより実施し得る。エステル分解酵素遺伝子の発現は、例えば単離したDNAフラグメントを汎用多コピーベクター、または強力なプロモーターを含む発現ベクターなどに挿入した後、適合性の微生物に導入し、導入された微生物を培養することにより実施し得る。発現に使用される宿主としては、一般に組換えDNA技術で使用される宿主が使用可能であるが、産生株と同じグラム陽性細菌(例えばBacillus subtilis)を使用すれば、効率の良い分泌生産が期待される。
【0019】
微生物(形質転換体を含む)を用いて本願発明の酵素を得る場合、本願発明で使用される微生物の培養は、公知の方法に準じて行い得る。通常用いられる固体培地、液体培地のいずれも使用可能であるが、産生酵素の回収効率を考慮すると、液体培地が好ましい。また、上記微生物の培養培地に使用される炭素源としては、微生物が資化できる任意の炭素源が用いられ得る。例えば、デンプン、デキストリン、スクロースまたはグルコースなどが、工業的に安価に利用できることから好ましい、また、窒素源としては、酵母エキス、カゼイン、コーンスチープリカー、ペプトン、肉エキスなどの天然窒素源や硫安、塩安、尿素などの無機窒素化合物が用いられ得る。
【0020】
さらに、微生物の良好な生育および酵素生産を考慮すると、炭素源の濃度は1〜20%、窒素源の濃度は0.2〜10%、培養時間は16〜48時間程度が好ましい。通気撹拌あるいは振盪培養のいずれの培養形態も適用可能である。
【0021】
このようにして培養した後、培養物を遠心分離または濾過することによって、微生物細胞を含まない上清が得られる。この上清から通常の手段、例えば、限外濾過による濃縮、塩析または溶媒沈澱による沈澱により、熱安定性および耐溶媒性エステル分解酵素を含む画分が得られる。この画分に更に沈澱、濾過、透析または遠心分離などの処理を行って、粗酵素が得られる。更にこの粗酵素を、凍結乾燥、等電点沈澱、電気泳動、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、晶出などの通常の酵素の精製手段を適宜組み合わせることによって、比活性の向上した粗酵素および精製酵素が得られる。
【0022】
本明細書において「2-ベンジルコハク酸またはその誘導体」とは、一般式:
【0023】
【化4】
【0024】
により示される化合物を意味する。ここで、R3は、水素原子またはハロゲン原子であるか、あるいは水酸基またはハロゲン原子で置換されているかまたは置換されていない炭素数1〜20の、直鎖、分枝、あるいは環状の飽和または不飽和炭化水素基である。R3は、好ましくは水素原子またはトリフロロメチル基であるが、これに限定されない。
【0025】
本明細書中において「(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステル」とは、(R)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルおよび(S)-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルのラセミ混合物を意味する。ラセミ混合物は、必ずしも(R)体と(S)体の混合比が1:1でなくてもよい。
【0026】
本発明の方法は、(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルに、微生物由来のエステル加水分解活性を有する酵素を作用させて、(R)または(S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルのいずれか一方を光学選択的に加水分解することにより、(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルを2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルと2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のモノエステルとの混合物に変換し、これらの化合物の化学的特性または物理的特性の差異を利用してそれぞれを分取することに基づく。
【0027】
本発明に用いられる酵素反応基質は、一般式:
【0028】
【化5】
【0029】
により示される2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルである。ここで、R1、R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、またはアルコキシル基で置換されているかまたは置換されていない直鎖、分枝、あるいは環状の飽和または不飽和炭化水素基であり、R3は、水素原子またはハロゲン原子であるか、あるいはハロゲン原子、水酸基、またはアルコキシル基で置換されているかまたは置換されていない直鎖、分枝、あるいは環状の飽和または不飽和炭化水素基である。R1からR3の炭素数は、1〜20、好ましくは1〜9、より好ましくは1〜4である。R3は、好ましくは、水素原子またはトリフロロメチル基であるが、これに限定されない。
【0030】
本発明の酵素反応基質となる(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルは、用いる酵素の基質特異性、酵素反応溶媒への溶解性、酵素反応後の分離の容易性などから適宜選択される。2-ベンジルコハク酸ジメチル、2-ベンジルコハク酸ジエチル、あるいは2-ベンジルコハク酸ジメトキシエチルが特に好ましく用いられ得、これらは公知のエステル化の方法により2-ベンジルコハク酸から容易に合成し得る。例えば、(R,S)-2-ベンジルコハク酸に、メタノールあるいは、エタノール、メトキシエタノールなどを硫酸などの酸の存在下で反応させることにより得られる。(R,S)-2-ベンジルコハク酸は、当該分野で公知の方法により製造し得、例えば、2-ベンジル-2-エトキシカルボニルコハク酸ジエチルをけん化し、脱炭酸することにより合成する方法(Liebigs Annahlen, 256, 95 (1890))により製造し得る。他の(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルも上記と同様の方法により製造し得る。
【0031】
本発明に用いられる微生物由来の酵素は、(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルを光学選択的に加水分解し、光学活性な2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルおよび光学活性な2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のモノエステルを産生する能力を有するものであればいずれであっても使用し得る。好ましくは、(R)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルを光学選択的に(R)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のモノエステルに加水分解する酵素が用いられるが、これに限定されない。
【0032】
さらに、上記の酵素の活性を含有する精製酵素、微生物菌体、微生物菌体培養液、および微生物菌体の処理物なども使用され得る。
【0033】
本発明の酵素反応は、(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルを含む水または緩衝液に、前記酵素剤、または微生物および培養物より採取したエステル分解酵素を添加し、撹拌することにより行う。
【0034】
酵素反応は、pHを調整して行い得る。酵素反応のための至適なpHを保持するために、例えばリン酸緩衝液などの緩衝液が使用され得る。反応液のpHは、5〜9、好ましくは6〜8である。
【0035】
用いる酵素の量は特に限定されないが、(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルに対し、0.1〜10g/基質mol程度が好ましい範囲である。
【0036】
反応温度は、10℃〜50℃、好ましくは20℃〜40℃である。反応時間は、用いる酵素の量、反応温度、反応pH等で変動するが、通常1〜24時間程度である。
【0037】
反応終了後、生成した光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のモノエステルと光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルとを、溶媒抽出法、カラムクロマトグラフ法など通常用いられる分離操作で分取する。溶媒抽出法では、n-ヘキサンやヘプタン、酢酸エチル、シクロヘキサン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテルを用いる場合、光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルを反応液から98%以上の回収率で回収することが可能である。
【0038】
分取した光学活性2-ベンジルコハク酸ジエステルを、酸、塩基等を用いる化学的加水分解法、過剰のメタノール中でのエステル交換反応、または任意の加水分解酵素を用いる酵素法により加水分解し、酸性条件下で結晶化し、さらにイソプロピルアルコール(25〜35Vol%)水で再結晶化することにより、容易に光学活性2-ベンジルコハク酸を得ることができる。
【0039】
一方、加水分解反応によって生成した光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のモノエステルは酵素反応液から光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルを溶媒抽出法で除去した後、水層を酸性条件にすることにより、n-ヘキサンやヘプタン、酢酸エチル、イソプロピルエーテル等の溶媒を用いて、98%以上の回収率で回収し得る。回収した光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のモノエステルを常法により再びエステル化し、光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルに変換した後、アルカリ性条件下で加熱することによりラセミ化するか、あるいは光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のモノエステルを加水分解し、アルカリ性条件下で加熱することによりラセミ化して、再び基質として利用できる。
【0040】
また、酵素反応を反応率20〜40%で停止させ、光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のモノエステルを上記の方法で溶媒抽出した後、上記のような加水分解法により加水分解し、酸性条件下で結晶化し、次いでイソプロピルアルコール(25〜35Vol%)水で再結晶化することにより、容易に光学活性(R)-2-ベンジルコハク酸を得ることができる。
【0041】
本願発明者らは、光学異性体選択性を有する熱安定で耐溶媒性のエステル分解酵素を産生する新規な微生物を分離し、その微生物を培養して培養上清から目的とする酵素を精製して、本願発明を完成するに至った。
【0042】
【実施例】
以下、実施例で本願発明をさらに詳しく説明する。微生物の単離、酵素の精製、酵素の特徴付けについて説明するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1:微生物の単離および同定)
兵庫県下で採取した土壌サンプルを滅菌水で希釈し、トリブチリン10 mg/mlおよびノイゲンHC5mg/mlを含むLB寒天培地上で培養した。エステル分解活性を有する微生物を、コロニーの周囲に形成されるクリアーゾーンを指標にして分離した。得られた微生物の菌学的性質を調べたところ、以下のとおりであった。
【0044】
上記の菌学的性質をBergey's Manual of Systematic Bacteriology第2巻第3節に従って検討したところ、属はBacillus、種はbrevisに分類される細菌と同定され、Bacillus brevis 042-24株と命名した。本菌株はFERM BP-5827の寄託番号で工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。
【0045】
(実施例2:酵素の精製)
p-ニトロフェニルブチレート(以下、pNPBと略記する)を基質とした酵素活性は以下のように測定した。1.5 mLの0.5 mM pNPB溶液に、0.5 mLの10mMリン酸緩衝液(pH 7.0)に溶解した酵素液を加え、37℃で10分間インキュベートした。反応液に2mLの1mM炭酸ナトリウム溶液2mLを加えた後、400 nmの吸光度を測定した。pH 7.0、37℃で1分間に1μmolのp-ニトロフェノールを生成する酵素活性を1単位とした。
【0046】
(1) 粗酵素剤の調製
可溶性澱粉1.0%、ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.5%、pH7.0を含む培地2Lに、前培養しておいたBacillus brevis 042-24株の培養液2mLを植菌し、30℃、24時間、500 rpmで培養した。培養液を遠心分離(8,000 rpm、20分)した後、培養上清をUF膜(ダイセル化学)で1/10に濃縮した。濃縮液に可溶性デンプンを1%になるように添加した後、凍結乾燥して、粗酵素剤を得た。
【0047】
(2) 塩析
粗酵素剤10 gを、300 mLの20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)に溶解した後、これに硫安を20%になるように添加して、4℃で30分間放置した。放置後、遠心分離(17,000 rpm、30分)により沈澱を分離し、この沈澱を30 mLの20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)に溶解した後、脱イオン水に対し一晩透析した。透析後、内液から不溶物を遠心分離(17,000 rpm、30分)およびメンブランフィルター(0.45μm)で除去した。
【0048】
(3) DEAE-Toyopearl pak 650Mカラムクロマトグラフィー
塩析で得られた液を、20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)で平衡化したDEAE-Toyopearl pak 650Mのカラム(22×200 mm、東ソー(株))に供した。カラムを同緩衝液で洗浄後、流速3mL/分の塩勾配(0から1.0 M NaCl、20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0))で溶出された、番号45〜52の活性画分をプールした。
【0049】
(4) TSKgel G3000SWゲル濾過クロマトグラフィー
上記プールを、20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)で平衡化したTSKgel G3000SWのカラム(7.8×300 mm、東ソー(株))に供した。溶出は、同緩衝液により、流速0.8 mL/分で実施した。溶出された番号16〜21の活性画分をプールして精製酵素液とした。
【0050】
以上の精製結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
(実施例3: 精製酵素の特徴付け)
(1) 分子量
精製酵素を、300 mM NaClを含む20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)で平衡化したTSKgel G3000SWカラム(7.8×300 mm、東ソー(株))に供し、同緩衝液を用いて流速0.6 mL/分でゲル濾過を行った。同様に標準タンパク質(キモトリプシノーゲンA(分子量25,000)、オバルブミン(分子量43,000)、アルドラーゼ(分子量158,000)、カタラーゼ(分子量232,000)、フェリチン(分子量440,000))のゲル濾過を行い、流速パターンから分子量を求めた。図1に示すように、本酵素の分子量は約105,000であった。
【0053】
(2) 至適pHおよびpH安定性
至適pHを、各pHのBriton-Robinsonの広域緩衝液(pH2、3、4、5、6、7、8、9、10、11)を用いて、pNPBを基質として酵素活性を測定することにより求めた。図2Aに示す結果から、本酵素はpH8で最高の活性を示した。
【0054】
pH安定性を、精製酵素液0.1 mLに、各pHのBriton-Robinsonの広域緩衝液を加え、30℃で1時間処理した後、pNBPを基質として酵素活性を測定することにより求めた。図2Bに示す結果から、本酵素は、pH4以上で安定であり、pH11でもほぼ100%の活性を示した。
【0055】
(3) 至適温度、熱安定性および耐溶媒性
至適温度を、pH 7.0の条件下、各温度(20、30、35、40、45、50、55、60、70℃)でpNPBを基質として酵素活性を測定することにより求めた。図3Aに示す結果から、本酵素は、55℃で最高の活性を示した。
【0056】
熱安定性を、精製酵素液(pH 7.0)を各温度で1時間処理した後、10 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)で適当な濃度に希釈して、pNPBを基質として酵素活性を測定することにより求めた。図3Bに示す結果から、本酵素は、50℃まで安定であったが、60℃において完全に失活した。
【0057】
また耐溶媒性を、精製酵素液(pH 7.0)を、50%トルエン中、50℃で1時間処理した後、10 mMリン酸緩衝駅(pH 7.0)で適当な濃度に希釈して、pNPBを基質として酵素活性を測定することにより求めたところ、90%以上の活性が残存していた。
【0058】
(4) 金属イオンおよび酵素阻害剤の影響
酵素に対する金属イオンおよび酵素阻害剤の影響を、各種金属イオンまたは酵素阻害剤剤を反応液に濃度が2mMになるように添加して、pNPBを基質として酵素活性を測定することにより調べた。表2に、阻害剤無添加の場合の酵素活性に対する相対活性を示す。本酵素は、Cu2+、Cd2+、Ag+、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Al3+、Sn2+、Pb2+、Hg2+などの金属イオンおよびセリン酵素阻害剤であるPMSF、DFP、p-APMSFなどにより強い阻害を受けた。一方、K+およびSH基保護剤である2-メルカプトエタノール、DTTの添加は、酵素活性の増加を生じた。以上から、本酵素は、活性中心にセリンおよびSH基を有すると考えられる。
【0059】
【表2】
【0060】
(5) 基質特異性
本酵素の9種のp-ニトロフェノールの脂肪酸エステルに対する加水分解活性を測定した。表3の結果より、本酵素はpNPBに対して最も高い活性を示したが、より短いまたはより長い脂肪酸側鎖を有するエステルには低い活性を示した。また、p-ニトロフェニルラウレートより長いエステルに対しては、活性を示さなかった。
【0061】
また、本酵素は、Succinyl-Ala-Ala-Pro-Phe-p-nitroanilide(Sigma社製)のアミド結合にも高い加水分解活性を有した。
【0062】
【表3】
【0063】
(6)光学特異性
反応液中の2-ベンジルコハク酸のジエステル、2-ベンジルコハク酸のモノエステル、または2-ベンジルコハク酸の定量および光学純度の測定は、以下の分析条件により、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った。
【0064】
(HPLC分析条件)
カラム:キラルセルOD 0.46cmφ×25cm(ウオーターズ社製)
移動相:ヘキサン・イソプロパノール・トリフルオロ酢酸(95:5:0.1)
流速 1mL/分
検出 UV 220nm
蒸留水1000mlに、2-ベンジルコハク酸ジメチル236g(1mol)を添加し、1N-KOHで反応液のpHを7に調整した後、実施例2で得られた精製酵素2gを加え、10N-KOHで反応液のpHを7に調整しながら、30℃で24時間撹拌した。
【0065】
反応終了後、反応液をロータリーエバポレーターで300mlまで濃縮し、酢酸エチル500mlを加え2-ベンジルコハク酸ジメチルを抽出した。この抽出液を、弱塩基性水で洗浄後、ロータリーエバポレーターで酢酸エチルを留去し、(S)-2-ベンジルコハク酸ジメチルを得た。1N-NaOHを加え、60℃で加水分解を行い、酸性条件下で結晶化させ、次いでイソプロピルアルコール(25〜35Vol%)水で再結晶化させることにより、光学純度99% e.e. の(S)-2-ベンジルコハク酸が79g得られた(収率38%)。
【0066】
上記と同様な酵素反応を行い、反応時間15時間、反応率40%で反応を停止させた。生成した(R)-2-ベンジルコハク酸モノメチルは(S)-2-ベンジルコハク酸ジメチルを抽出除去した後、酸性条件下で、酢酸エチルを用いて抽出した。次にロータリーエバポレーターで酢酸エチルを留去し、得られた(R)-2-ベンジルコハク酸モノメチルに1N-NaOHを加え、60℃で加水分解を行い、酸性条件下で結晶化させ、さらにイソプロピルアルコール(25〜35Vol%)水で再結晶化することにより、光学純度99% e.e. の光学活性(R)-2-ベンジルコハク酸62gを得た(収率28%)。
【0067】
また、上記と同様の方法により、(R,S)-2-ベンジルコハク酸ジメトキシエチルを反応させたところ、それぞれ光学純度99% e.e. の(S)-2-ベンジルコハク酸ジメトキシエチルおよび(R)-2-ベンジルコハク酸ジメトキシエチルが45%および40%の収率で得られた。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明方法によれば、 (R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルを光学選択的に加水分解し得る能力を有し、高い熱安定性および耐溶媒性を有する新規なエステル分解酵素を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ゲル濾過法による分子量の測定を示すグラフである。
【図2】Aは至適pHを示すグラフであり、BはpH安定性を示すグラフである。
【図3】Aは至適温度を示すグラフであり、Bは熱安定性を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 以下の性質:(1)pH7、50℃、1時間の処理で95%以上活性が残存する;
    (2)pH7、50%トルエン中、50℃、1時間の処理で90%以上活性が残存する;
    (3)ゲル濾過での分子量が105,000である;
    (4)(R,S) - - ベンジルコハク酸ジメチルのうち、 (R)- 2−ベンジルコハク酸ジメチルを選択的に加水分解し得る能力を有する;を有する、エステル分解酵素。
  2. (R、S)-2-ベンジルコハク酸ジメトキシエチルを光学選択的に加水分解し得る能力を有する、請求項に記載のエステル分解酵素。
  3. (R、S) - - ベンジルコハク酸ジメトキシエチルのうち、(R) - - ベンジルコハク酸ジメトキシエチルを光学選択的に加水分解し得る能力を有する、請求項1に記載のエステル分解酵素。
  4. p-ニトロフェニルブチレートに対する基質特異性を有する、請求項1に記載のエステル分解酵素。
  5. Bacillus brevis 042-24株によって産生される、請求項1に記載のエステル分解酵素。
  6. Bacillus brevis 042-24株を培養する工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のエステル分解酵素の製造方法。
  7. 請求項1に記載のエステル分解酵素を産生する、Bacillus brevis 042-24株。
  8. 光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体の製造方法であって、該方法は、以下の一般式:
    (ここで、R1、R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、またはアルコキシル基で置換されているかまたは置換されていない炭素数1〜20の、直鎖、分枝、あるいは環状の飽和または不飽和炭化水素基であり、R3は、水素原子またはハロゲン原子であるか、あるいはハロゲン原子、水酸基、またはアルコキシル基で置換されているかまたは置換されていない炭素数1〜20の、 直鎖、分枝、あるいは環状の飽和または不飽和炭化水素基である。)で表される(R,S)-2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルと、請求項1〜のいずれかに記載のエステル分解酵素とを反応させる工程;および生成した該光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のジエステルと該光学活性2-ベンジルコハク酸またはその誘導体のモノエステルとを分離する工程、を包含する、方法。
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