JP4426664B2 - ホスホリパーゼdおよびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大豆、卵黄、魚介類に含まれているホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質と各種水酸基をもつ化合物とから、乳化剤、農薬、医薬、食品、工業用試薬等に有用なリン脂質誘導体を製造するのに用いられるホスホリパーゼD、その製造方法及びホスホリパーゼDを産生する新規微生物に関するものである。
【従来の技術】
ホスホリパーゼD(EC3.1.4.4)は、グリセロリン脂質のホスファチジル基と塩基との間のエステル結合を加水分解してホスファチジン酸および塩基を遊離させる酵素である。この酵素は、その起源によっては加水分解反応以外に、グリセロール、セリン、エタノール、フェノール等のアルコール性およびフェノール性水酸基を有する化合物の共存下でグリセロリン脂質のホスファチジル基を上記水酸基を有する化合物に転移させ、新たなリン酸エステルを生成する反応(ホスファチジル基転移反応)を生起させる作用を有する。
【0002】
この酵素は、キャベツ、ニンジン、ホウレンソウ、綿実等の植物体からの抽出あるいはストレプトマイセス属、ミクロノスポラ属、ノカルディオプシス属、アクチノマデューラ属又はノカルディア属等の微生物を用いた発酵法により製造できることが知られている。例えば、特公昭52−39918号公報、特公昭58−52633号公報、特公平1−12474号公報、特公平8−8866号公報、特開昭58−63388号公報、特開昭58−67183号公報、特開昭60−164483号公報、特開平4−166083号公報、アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural Biological Chemistry)51巻、9号、2515−2524頁(1987年)、アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural Biological Chemistry)54巻、5号、1189−1193頁(1990年)、バイオサイエンス・バイオテクノロジー・バイオケミストリー(Bioscience Biotechnology Biochemistry)57巻、11号、1946−1948頁(1993年)およびバイオキミカ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)1255巻、273−279頁(1995年)を参照されたい。しかしながら、これら従来の製造法により得られるホスホリパーゼDは、それぞれ基質特異性、反応性などが異なっており、新規な特性を有するホスホリパーゼDの提供が望まれている。
又、従来の製造方法によると、ホスホリパーゼD産生能を有する菌株を用いた発酵法により作られる培養液中に占める夾雑タンパク質の生成量が多く、従って培養液中のホスホリパーゼDの純度が低いといった問題がある。そのため食品等の製造に用いる際には夾雑タンパク質を取り除き、ホスホリパーゼDを濃縮する工程を設ける必要の有る場合があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、新規な特性を有するホスホリパーゼDを提供することを目的とする。
本発明は、又、ホスホリパーゼDを高純度で得ることができる製造法を提供することを目的とする。
本発明は、又、上記ホスホリパーゼDを産生する新規微生物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ホスファチジル基転移活性を示すホスホリパーゼDを生産する能力を有する多数の微生物について、ホスホリパーゼDの生産効率が高く、特にその培養物中にホスホリパーゼDの占める割合が高く、夾雑タンパク質の生産量が低い菌株を探索する実験を繰り返した結果、岡山県上房郡賀陽町吉川地区で採取した土壌から分離した新菌株ストレプトマイセス・エスピー(Streptomyces.sp.)TH−2が優れた性能を有し、これにより上記課題を有効に解決できるとの知見に基づいてなされたのである。
すなわち、本発明は、至適pHが約5、至適温度が約40℃、分子量が約5.5万(SDS−PAGE法)、等電点がpH約8であることを特徴とするホスホリパーゼDを提供する。
本発明は、又、上記ホスホリパーゼDを産生するストレプトマイセス属のホスホリパーゼD生産菌を提供する。
本発明は、又、上記ホスホリパーゼD生産菌を培地で培養し、産生したホスホリパーゼDを回収することを特徴とするホスホリパーゼDの製造法を提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の至適pHが約5、至適温度が約40℃、分子量が約5.5万(SDS−PAGE法)、等電点がpH約8で、カルシウム又はマグネシウムイオン要求性のホスホリパーゼDを産生するストレプトマイセス属のホスホリパーゼD生産菌としては、ストレプトマイセス・エスピーTH−2株を用いるのが好ましい。この株は、工業技術院微生物工業技術研究所に平成11年3月24日付けで寄託されており、その寄託番号はFERM P−17329号である。その菌学的特徴を次に示す。
【0006】
▲2▼細胞壁のアミノ酸組成および糖組成
胞子壁タイプ I型
LL−ジアミノピメリン酸 +
meso−ジアミノピメリン酸 −
ジアミノ酪酸 −
グリシン +
アスパラギン酸 −
オルニチン −
リジン −
アラビノース*2 −
ガラクトース*2 −
主要キノン系 MK−9(H8)、−9(H6)、−9(H4)
【0007】
【0008】
この菌株が、ストレプトマイセス属のStreptomyces septatus に属し、新菌株であることは、Nonomura,H.: J.Ferment.Technol., 52, 78-92(1974)及びShirling.E.B. and Gotilleb.D.: Int.J.Syst.Bacteriol., 22, 265-394(1972) に基づいて決定した。
本発明のホスホリパーゼDを製造するための、上記ストレプトマイセス・エスピーTH−2の培養は、放線菌一般の培養に通常採用される方法に従って行うことができるが、特に好ましくは培地には炭素源として、例えばクエン酸、コハク酸、ブドウ糖、果糖等を単独で、または組み合わせて適宜行うことができる。また窒素源として、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素、硝酸ナトリウム、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸、脱脂大豆粉、大豆タンパク等を用いることができる。培地には、他に食塩、塩化カリウム、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、鉄塩、マンガン塩、各種ビタミン、その他、菌の生育やホスホリパーゼDの生産促進に有効な物質を適宜添加することができる。好ましい培地pHは5〜9、特に好ましくは6〜7である。培養法としては深部培養法が好ましいが、固体培養法を採用することもできる。培養は約20〜40℃で行うことができるが、好ましい培養温度は33〜35℃である。好ましい培養期間は温度、pH、培地によって異なるが、通常1〜6日程度であり、目的物であるホスホリパーゼDの生産量が最大に達した頃に培養を停止する。
【0009】
培養終了後、培溶液から菌体を遠心分離あるいはろ別し、その遠心上精あるいはろ液をホスホリパーゼD溶液として用いることができる。または、遠心上精あるいはろ液からさらにホスホリパーゼDを濃縮、採取するにあたっては、例えば塩析、有機溶媒沈殿、透析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、ゲルろ過、凍結乾燥、等電点電気泳動等の方法を、後述するホスホリパーゼDの理化学的性質を考慮した条件下で採用すればよい。
ストレプトマイセス・エスピーTH−2の生産するホスホリパーゼDは以下の理化学的性質を有するものである。
(a)作用
▲1▼加水分解反応
一般式(I)で示されるリン脂質を加水分解し、ホスファチジン酸と塩基とを遊離させる。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R1 及びR2 はアシル基またはアルキル基、Xは1つ以上の水酸基を含む塩基の水酸基1個を除いた後に残る有機基を表す。)
▲2▼ホスファチジル基転移反応
上記一般式(I)で表されるリン脂質のホスファチジル基を下記一般式(II)で示される水酸基を有する化合物の共存下、
【化2】
R3 −OH
(但し、R3 はアルコール性またはフェノール性水酸基に結合した有機基を表す。)
一般式(II)で表される化合物の水酸基にホスファチジル基を転移させ、下記一般式(III)で示されるリン脂質誘導体を生成する。
【0012】
【化3】
【0013】
(但し、R1 、R2 及びR3 は前記と同様の基を表す。)
本発明の酵素の移転反応における反応性/加水分解における反応性の比が3倍以上であるのが好ましい。
(b)至適pH:約5.0
(c)pH安定性:pH4〜9で安定
(d)至適温度:約40℃
(e)熱安定性:
pH5.0およびリン脂質の非共存下において、60℃、10分間の熱処理でも全く失活しない。
(f)分子量:
5.5万(SDS−PAGE法による。)
(g)等電点:
pH8.0(等電点電気泳道法による。)
(h)N末端アミノ酸配列:
AspSerAlaAspGlyArgGlyAlaProHisLeuAspAlaValGluGlnGlnLeuArgGln(エドマン反応を用いた気相法N末端アミノ酸配列決定法による。)
(i)カルシウム又はマグネシウム要求性
カルシウムイオン(50マイクロモル/ml)共存下におけるジパルミトイルホスファチジルコリンの加水分解活性を100とした時の各種イオン存在下におけるホスホリパーゼDの活性を表−1に示す。
【0014】
【表1】
表−1
添加化合物 相対活性
なし 0
CaCl2 100
MgCl2 173
ZnCl2 0
CdCl2 0
MnCl2 11
FeCl2 3
CoCl2 28
EDTA 1
【0015】
なお、ホスホリパーゼDの加水分解活性は基質であるリン脂質に作用してリン酸と塩基との間のエステル結合を分解した際に生じる塩基を定量することによって求める。一般的には、ホスファチジルコリンを基質とした場合に生じるコリンをコリンオキシダーゼおよびペルオキシダーゼを組み合わせて定量することにより加水分解活性を決定することが通例である。しかし、本発明ではより簡便な方法であるホスファチジルパラニトロフェノールを基質とした場合に生ずるパラニトロフェノールを直接定量することにより加水分解活性を決めた。なお、このホスファチジルパラニトロフェノールを基質とした場合ではカルシウムあるいはマグネシウムを活性に必要とはしない。この明細書に記載した酵素活性は、アナリティカ・キミカ・アクタ(Analytica Chimica Acta)304巻、249−254項(1995年)記載の方法により合成されるホスファチジルパラニトロフェノールを基質として用いる下記の方法により測定されたものであって、1分間に1μmolのパラニトロフェノールを遊離する酵素活性を1ユニット(u)としている。
【0016】
加水分解活性測定法:,ホスファチジルパラニトロフェノール360mgに、ジエチルエーテル1ml加え溶解した後、100mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5),15ml、および10%トリトン×100を含む100mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5),15mlを添加し、60℃で溶液が透明になるまで加温する。これを減圧下でジエチルエーテルを留去し基質保存液(16mMホスファチジルパラニトロフェノール)とする。基質保存液を、100mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で2mMホスファチジルパラニトロフェノールとなるように希釈したものを基質溶液とし、あらかじめ37℃で加温する。基質溶液950μLに対してあらかじめ37℃で加温した酵素液50μLを添加後、混合しホスホリパーゼDの加水分解反応によって遊離してくるパラニトロフェノールを405nmの吸光度を測定することおよびパラニトロフェノールのミリモル分子吸光係数18.45から、1分間あたりのパラニトロフェノール生成量を換算し、酵素活性値を決定する。
【0017】
また、ホスホリパーゼDの転移活性は、以下のようにして求めた。ホスファチジルパラニトロフェノールを1mlあたり16mgの割合で、ベンゼンに溶解し、基質溶液(20mMホスファチジルパラニトロフェノール)とする。1サンプルにつき、この基質溶液0.2mlに2Mエタノールを含む20mM酢酸バッファー(pH5.0)溶液0.1mlおよび20mg/mlの牛アルブミン溶液0.05mlを混合し、15分間超音波にて分散し、エマルジョン化する。これを37℃で5分間加温した後、酵素溶液0.05mlを加え、反応を開始する。これと平行して、酵素溶液のかわりにパラニトロフェノールを1.0、0.8、0.6、0.4、0.2、0.0μモル含む溶液を各々添加した系列をつくり検量線用試料とする。37℃、10分間反応を行った後、1N塩酸溶液0.1mlを加え反応を停止した後、1N水酸化ナトリウム溶液0.15mlおよびクロロホルム/メタノール=3/1溶液0.4mlを加え混合後、4℃で10分間遠心分離する。水相を0.02mlとり、0.1Mトリス−塩酸バッファー(pH8.0)0.18mlと混合し、マイクロプレートリーダー等の手段により405nmの吸光度を測定する。別途作成した検量線用試料の吸光度値から検量線を作成し、転移反応により遊離したパラニトロフェノール量を換算し、転移活性を決定する。なおこの反応での1ユニットは1分間あたり1マイクロモルのパラニトロフェノールを遊離させる酵素量と定義する。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、高いホスファチジル基転移活性を示す新規なホスホリパーゼDが提供される。又、本発明の製造法によれば、上述のように従来の製造法により得られるものと比較して、きわめて高い純度のホスホリパーゼDをきわめて容易に製造することができる。すなわち、従来報告されているホスホリパーゼDの生産菌株の培養物1Lあたりの総タンパク質に対するホスホリパーゼDの含有率は、例えばアグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural Biological Chemistry)51巻、9号、2515−2524項(1987年)記載の方法によれば、培養物1Lあたりの遠心上精のタンパク濃度が3157mg/Lであり、そのうちホスホリパーゼDの占める割合は、ホスホリパーゼD活性が5020u/Lであること及び精製されたホスホリパーゼDの比活性が688u/mgであることから換算すると、0.23%と見積もられる。アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agricaltural Biological Chemistry)54巻、5号、1189−1193項(1990年)記載の方法によれば、培養物1Lあたりの遠心上精のタンパク濃度が282mg/Lであり、そのうちホスホリパーゼDの占める割合は、ホスホリパーゼD活性が1962u/Lであること及び精製されたホスホリパーゼDの比活性が2390u/mgであることから換算すると、0.29%と見積もられる。バイオサイエンス・バイオテクノロジー・バイオケミストリー(Bioscience Biotechnology Biochemistry)57巻、11号、1946−1948項(1993年)記載の方法によれば、培養物1Lあたりの遠心上精のタンパク濃度が286mg/Lであり、そのうちホスホリパーゼDの占める割合は、ホスホリパーゼD活性が3200u/Lであること及び精製されたホスホリパーゼDの比活性が1436.8u/mgであることから換算すると、0.78%と見積もられる。また、バイオキミカ・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)1255巻、273−279項(1995年)に記載の2種の菌株を用いた方法によれば、培養物1Lあたりの遠心上精のタンパク濃度が5200mg/Lあるいは6600mg/Lであり、そのうちホスホリパーゼDの占める割合は、ホスホリパーゼD活性が1067u/Lあるいは1168u/Lであること及び精製されたホスホリパーゼDの比活性が41.72u/mgあるいは44.90u/mlであることから換算すると、0.49%あるいは0.39%となる。このように従来報告されているホスホリパーゼDの製造法は、いずれもその培養物中の総タンパク質に占めるホスホリパーゼDの含有率は1%未満といった低い水準のものであるから、最大で13%以上もの高い含有率を占める本発明の製造法によれば、高いホスファチジル基転移活性を示すホスホリパーゼDの製造能率の飛躍的な向上が可能になる。
次に本発明を実施例により説明する。
【0019】
【実施例】
実施例1
培地として0.5%ブドウ糖、0.2%KH2 PO4 、0.05%MgSO4 ・7H2 O、0.5%ペプトン、0.5%酵母エキスを含むpH7.0のものを用意し、その100mlを500ml容の三角フラスコに入れ、120℃、15分滅菌後TH−2株前培養液3ml(上記組成の培地にて37℃125rpmで3ないし4日間培養したもの)をフラスコ1本につき殖菌し、計10本分をロータリーシェーカーにて34℃、125rpm、で通気攪拌培養を24時間行った。菌体外に分泌されたホスホリパーゼDの加水分解活性を測定したところ、180u/Lであり、その際のタンパク質濃度は120mg/Lであった。その培養物を遠心(6000rpm、30分、4℃)し、その上精を70%飽和硫酸アンモニウムによりホスホリパーゼD活性を含む画分を濃縮した。生成した沈殿を5mMトリス−マレイン酸−水酸化ナトリウム緩衝液(pH6.5)に溶解し、同緩衝液に対して透析した。その後、同じ緩衝液で平衡化したハイロードSP−セファロースHP26/10カラム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)に通し、不純物であるタンパク質および色素の大半を素通りさせた。吸着したホスホリパーゼDは塩化ナトリウム濃度を0Mから0.2Mまで変化させる直線濃度勾配法によりホスホリパーゼD画分を溶出した。得られたホスホリパーゼDは、電気泳動的に単一まで精製され、精製品の加水分解活性の比活性は11.14u/mgであった。
上記精製工程におけるホスホリパーゼDの収量は3.3mgであり、その回収率は約20%であった。上記精製工程で用いた培養物のタンパク濃度は120mg/Lであり、培養物中に含まれるホスホリパーゼD加水分解活性は180u/Lであることから、精製ホスホリパーゼDの比活性から換算すれば、培養物には16.15mg/Lの濃度でホスホリパーゼDが含まれ、培養物中の総タンパク質に占めるホスホリパーゼDは約13.46%と見積もられた。
【0020】
実施例2
培地として、0.5%ブドウ糖、0.5%クエン酸2ナトリウム、0.2%KH2 PO4 、0.05%MgSO4 ・7H2 O、0.5%ペプトン、0.5%酵母エキスを含むpH7.0のものを用意し、その100mlを500ml容の三角フラスコに入れ、120℃、15分滅菌後TH−2株前培養液3mlを殖菌し、ロータリーシェーカーにて34℃、125rpm、で通気攪拌培養を行った。経時的に菌体外に分泌されたホスホリパーゼD加水分解活性を測定したところ、96時間目に最大活性を示し、その値は380u/Lであった。また、その際のタンパク質濃度は450mg/Lであった。ホスホリパーゼDの加水分解の比活性が11.14u/mgであることから、培養物には34.1mg/Lの濃度でホスホリパーゼDが含まれ、培養物中の総タンパク質に占めるホスホリパーゼDは約7.6%と見積もられた。また、炭素源を0.5%ブドウ糖のみを用い、それ以外の組成は上記のもので同様な条件で培養した場合、経時的に菌体外に分泌されたホスホリパーゼD活性を測定したところ、48時間目に最大活性を示し、そのホスホリパーゼD加水分解活性は240u/Lであり、その際のタンパク質濃度は460mg/Lであった。ホスホリパーゼDの加水分解の比活性が11.14u/mgであることから、培養物には21.6mg/Lの濃度でホスホリパーゼDが含まれ、培養物中の総タンパク質に占めるホスホリパーゼDは約4.7%と見積もられた。
【0021】
実施例3
実施例1で得た精製ホスホリパーゼDを用いて、至適pHにおける、本酵素の加水分解反応および転移反応における1秒あたりのターンオーバーナンバー(kcat)およびKmを測定した。その結果、加水分解反応において、kcatは97.0sec-1であり、ホスファチジルパラニトロフェノールに対するKmは1.02mMであった。この値から加水分解反応における酵素の反応性を示す指標であるkcat/Km値は、95.4mM-1・sec-1となった。一方、転移反応において、kcatは244.0sec-1であり、ホスファチジルパラニトロフェノールに対するKmは0.68mMであった。この値から転移反応における酵素の反応性を示す指標であるkcat/Km値は、361.0mM-1・sec-1となった。また、この転移反応におけるエタノールに対するKmは141.2mMであった。加水分解および転移反応におけるkcat/Km値を比較すると、TH−2株由来の精製ホスホリパーゼDは加水分解における反応性と比べ約3.8倍転移における反応性が高いことが判明した。
【0022】
比較例1
電気泳動的に単一な純度をもつ、旭化成工業社製PLDP(ホスホリパーゼDP)を用いて、至適pHにおける、実施例3と同様な試験を行った。加水分解反応および転移反応における1秒あたりのターンオーバーナンバー(kcat)およびKmを測定した。その結果、加水分解反応において、kcatは60.9sec-1であり、ホスファチジルパラニトロフェノールに対するKmは0.42mMであった。この値から加水分解反応における酵素の反応性を示す指標であるkcat/Km値は、145.0mM-1・sec-1となった。一方、転移反応において、kcatは254.5sec-1であり、ホスファチジルパラニトロフェノールに対するKmは2.17mMであった。この値から転移反応における酵素の反応性を示す指標であるkcat/Km値は、117.5mM-1・sec-1となった。また、この転移反応におけるエタノールに対するKmは287.5mMであった。加水分解および転移反応におけるkcat/Km値を比較すると、PLDPは転移における反応性が、加水分解における反応性の約0.8倍となることが判明した。
Claims (3)
- 下記の理化学的性質を有することを特徴とするホスホリパーゼD。
(a)作用
(1)加水分解反応
一般式(I)で示されるリン脂質を加水分解し、ホスファチジン酸と塩基とを遊離させる。
式(I)
(式中、R1 及びR2 はアシル基またはアルキル基、Xは1つ以上の水酸基を含む塩基の水酸基1個を除いた後に残る有機基を表す。)
(2)ホスファチジル基転移反応
上記一般式(I)で表されるリン脂質のホスファチジル基を下記一般式(II)で示される水酸基を有する化合物の共存下、
R3 −OH (II)
(但し、R3 はアルコール性またはフェノール性水酸基に結合した有機基を表す。)
一般式(II)で表される化合物の水酸基にホスファチジル基を転移させ、下記一般式(III)で示されるリン脂質誘導体を生成する。
式(III)
(但し、R1 、R2 及びR3 は前記と同様の基を表す。)
(b)至適pH:5.0
(c)pH安定性:pH4〜9で安定
(d)至適温度:40℃
(e)熱安定性:pH5.0およびリン脂質の非共存下において、60℃、10分間の熱処理でも全く失活しない。
(f)分子量:5.5万(SDS−PAGE法による。)
(g)等電点:pH8.0(等電点電気泳動法による。)
(h)N末端アミノ酸配列:
AspSerAlaAspGlyArgGlyAlaProHisLeuAspAlaValGluGlnGlnLeuArgGln(エドマン反応を用いた気相法N末端アミノ酸配列決定法による。)
(i)カルシウム又はマグネシウム要求性
カルシウムイオン(50マイクロモル/ml)共存下におけるジパルミトイルホスファチジルコリンの加水分解活性を100とした時の各種イオン存在下におけるホスホリパーゼDの活性を以下に示す。
添加化合物 相対活性
なし 0
CaCl2 100
MgCl2 173
ZnCl2 0
CdCl2 0
MnCl2 11
FeCl2 3
CoCl2 28
EDTA 1 - 請求項1記載のホスホリパーゼDを産生するストレプトマイセス属のホスホリパーゼD生産菌であるストレプトマイセス・エスピーTH−2株(寄託番号FERM P−17329号)。
- 請求項1記載のホスホリパーゼD生産菌であるストレプトマイセス・エスピーTH−2株(寄託番号FERM P−17329号)を培地で培養し、産生したホスホリパーゼDを回収することを特徴とするホスホリパーゼDの製造法。
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1999
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