JP2799622B2 - ホスホリパーゼdおよびその製造法 - Google Patents

ホスホリパーゼdおよびその製造法

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、水中または各種有機溶媒を含有する反応系
において、高いホスファチジル基転移活性を有するホス
ホリパーゼDおよびその製造法に関するものである。
ホスホリパーゼDは、大豆や卵黄等に含まれるホスフ
ァチジルコリンやホスファチジルエタノールアミン等の
リン脂質と各種アルコール性水酸基を有する化合物か
ら、乳化剤、分散剤、農薬、医薬、工業用試薬等に有用
な、リン脂質誘導体を製造するのに使われる。また血清
中に含まれるリン脂質の定量用試薬にも利用される。
従来の技術 ホスホリパーゼ(EC3.1.4.4)は、グリセロリン脂質
のホスファチジル基と塩基との間のエステル結合を加水
分解してホスファチジン酸および塩基を遊離させる酵素
があるが、その起源によっては加水分解反応以外に、グ
リセロール、セリン、エタノール等のアルコール性水酸
基を有する化合物の共存下でグリセロリン脂質のホスフ
ァチジル基を上記アルコール性水酸基を有する化合物に
転移させ、新たなリン酸エステルの生成する反応(ホス
ファチジル基転移反応)を生起させる。
この酵素は、キャベツ、ニンジン、ホウレンソウ、綿
実等の植物体からの抽出あるいはストレプトマイセス
属、ミクロノスポラ属、ノルカディオプシス属、アクチ
ノマデューラ属、ノカルディア属等の微生物を用いた発
酵法により製造できる(特公昭52−39918号、特公昭58
−52633号、特開昭58−63388号、特開昭58−67183号、
特開昭60−164483号)。また市販品では、植物起源のも
のとしてキャベツ、ピーナッツ、微生物起源のものとし
てStreptomyces chromofuscus等がある。
しかしながら、これら従来の製造法により得られるホ
スホリパーゼDはホスファチジル基転移活性が低く、ま
た加水分解反応も速やかに進行し、ホスファチジン酸が
生成するため、効率よく転移反応を行わせることができ
ないという問題点があった。
最近、ホスホリパーゼDの微生物利用製造法で、酵素
の安定性、生産性などに関しては改良が試みられている
例もあるが、高いホスファチジル基転移活性を有するホ
スホリパーゼDの製造法の開発については未だ満足でき
るものが無いのが現状である。
発明が解決しようとする問題点 本発明は、ホスファチジル基転移活性を有する従来の
ホスホリパーゼDが上述のような欠点を持つことに鑑
み、高いホスファチジル基転移活性を示し、反応生成物
中にホスファチジン酸が全く無いかあるいは簡単な精製
操作で除去できる程度しか生成しないホスホリパーゼD
とその効率良い製造法を提供しようとするものである。
問題を解決するための手段 本発明者らは、自然界中の土壌より広く微生物を分離
し、多数のホスホリパーゼD生産菌を得た。更に、それ
らの生産するホスホリパーゼDについて精査し、高いホ
スファチジル基転移活性を示すホスホリパーゼDを生産
する菌株を探索した。その結果、神奈川県横浜市で採取
した土壌から分離されたストレプトマイセス属に属する
菌株(ストレプトマイセス属S−170株と称する)がす
ぐれた性能を有することを知り本発明を完成するに至っ
た。
すなわち本発明は上記ストレプトマイセス属S−170
株を用いるホスホリパーゼDの製造法およびそれにより
得られる高いホスファチジル基転移活性を有するホスホ
リパーゼDを提供するものである。
本発明の製造において使われるストレプトマイセス属
S−170株は、次のような菌学的性質を示す。
細胞壁成分 a.アミノ酸:LL−ジアミノピメリン酸を含有する。
b.脂肪酸組成:イソC15:0、アンテイソC15:0、イソC
16:0、イソC17:0、アンテイソC17:0が主である。
ミコール酸の生成:なし 胞子鎖(spore chain)の形態:螺旋状が主であ
る。
色調 a.気菌糸:灰色 b.可溶性色素の生産:なし 窒素源利用性: DL−α−アミノ−酪酸 − L−フェニルアラニン + L−システィン − L−ヒスチジン + L−バリン − L−ヒドロキシプロリン + 炭素源の利用性: スクロール + ラフィノース + アドニトール − マンニトール − キシリトール + L−ラムノース − メソ−イノシトール + 各種物質に対する性質: キサンチン 分解する アルブチン 分解する ペクチン 分解しない エラスチン 分解しない 脂肪分解活性 あり レシチナーゼ活性 なし 硝酸の還元 なし 硫化水素の生成 なし 生育阻害: 45℃培養 + アジ化ナトリウム(0.01%W/V) − NaCl(7%W/V) − フェノール(0.1%W/V) ± ネオマイシン(50μg/ml) + リファンピシリン(50μg/ml) + オレアンドマイシン(100μg/ml) + ペニシリンG(10i.u.) − 他の微生物に対する抗生: Bacillus subtilis NCIB 3610 − Micrococcus luteus NCIB 169 + Candida albicans CBS 562 − Saccharomyces cerevisiae CBS 1171 + Streptomyces murinus ISP 5091 + Aspergillus niger LIV 131 + この菌株がストレプトマイセス属に属することは、上
述の性質をBergey's Manual第8版、第657〜650頁、Pro
ceedings of the 1st International Conference on Cu
lture Collections、第457〜458頁等の各記載と照合す
ることにより確認された。また、上述〜の性質はS.
T.Williamsらの数値分類法[J.Gen.Microbiol.129,1815
(1983)]に従い試験したが、その結果によればWillco
x probability 0.943でストレプトマイセス・アンチバ
イオティカス(streptomyces antibioticus)に分類さ
れるものである。
ストレプトマイセス属S−170株は、工業技術院微生
物工業技術研究所に寄託されており、その寄託番号は、
11422号である。
本発明のホスホリパーゼDを製造するための上記スト
レプトマイセス属S−170株の培養は放射菌一般の培養
に通常採用される方法に従って行うことができる。すな
わち、倍地には炭素源として、例えばブドウ糖,果糖,
デンプン,糖蜜,グリセリン等を単独で、または組み合
わせて適宜用いることができる。また窒素源として、例
えば硫酸アンモニウム,塩化アンモニウム,尿素,ペプ
トン,肉エキス,酵母エキス,コーンスチープリカー,
脱脂大豆粉,大豆蛋白質等を用いることができる。倍地
には、ほかにリン酸,マグネシウム,カリウム,鉄,ア
ルミニムウ,カルシウム等の塩類や、各種ビタミン類,
消泡剤等,菌の生育やホスホリパーゼDの生産促進に有
効な物質を適宜添加することができる。好ましい倍地pH
は5〜8で、特に好ましくは6〜7である。培養法とし
ては通常液体培養で行うが、工業的には深部撹拌通気培
養で行うのが有利である。培養温度は、菌が生育し、ホ
スホリパーゼDを生産する温度範囲で適宜変更できる
が、特に好ましいのは25〜35℃である。培養時間は条件
により異なるが、ホスホリパーゼDの生産が最大になる
まで培養すればよい。液体培養では通常1〜5日程度で
ある。
培養物中に生成したホスホリパーゼDは、液体培養で
は主として培養液中に存在するので培養終了液から固形
物を濾別し、ホスホリパーゼDを採取する。
濾液からさらにホスホリパーゼDを濃縮するにあたっ
ては、各種酵素の分離精製に通常採用される方法を適宜
組み合わせて使用できる。例えば塩析、有機溶媒沈殿、
透析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、吸着
クロマトグラフィー、ゲル濾過、凍結乾燥、等電点電気
泳動等の方法を、後述する本発明のホスホリパーゼDの
理化学的性質を考慮した条件下で採用すればよい。
ストレプトマイセス層S−170株の生産する本発明の
ホスホリパーゼDは、次のような理化学的性質を有する
ものである。
(a)作用 加水分解反応 下記一般式[I] (但し、式中R1,R2はアシル基またはアルキル基、Xは
水酸基を含有する塩基の水酸基1個を除いた後に残る有
機基を示す)で表わされるリン脂質を加水分解し、ホス
ファチジン酸と塩基とを遊離させる。
ホスファチジル基転移反応 上記一般式[I]で表されるリン脂質のホスファチジ
ル基を下記一般式[II] R3−OH ………[II] (但し、R3はアルコール性水酸基に結合した有機基を示
す)で表されるグリセロール、セリン、エタノール等の
アルコール性水酸基を有する化合物の共存下、アルコー
ル性水酸基にホスファチジル基を転移させ、下記一般式
[III] (但し、R1,R2,R3は前記と同様の基を示す)で表される
リン脂質誘導体を生成する。
(b)基質特異性 ホスファチジルコリンに対する加水分解活性を100と
した場合の相対活性は、リゾホスファチジルコリンに対
し2.3、スフィンゴミエリンに対しては0.9である。
(c)至適pH:約5.5 (d)pH安定性:pH4〜8で安定 (e)至適温度:55〜65℃ (f)熱安定性 pH5.5において50℃、30分間の熱処理で全く失活せ
ず、70℃、30分間でも約50%の活性が残存する。
(g)種々の物質の影響 濃度1mMの種々の物質を共存させた場合、加水分解活
性は塩化セチルピリジニウムのとき若干阻害されるが、
CaCl2,FeCl3,FeSO4,BaCl2,MnCl2,MgCl2,CuCl2,ZnCl2,Sn
Cl2,AlCl3,CoCl2,CdCl2,LiCl,KCl,NaCl,コール酸ナトリ
ウム,デオキシコール酸ナトリウム,エチエンジアミン
四酢酸・二ナトリウムのときは阻害されない。
(h)分子量 6.4万(SDS・PAGE法による)。
(i)等電点 pH6.4〜6.5(等電点電気泳動法による)。
なお、ホスホリパーゼDの酵素活性は基質であるリン
脂質に作用してリン酸と塩基との間のエステル結合を分
解したときに生じる塩基を定量することによって求め
る。この明細書に記載した酵素活性は、ホスンファチジ
ルコリンを基質として用いる下記の方法により測定され
たものであって、1分間に1μmolのコリンを遊離する
酵素活性1ユニット(U)としている。
[ホスファチジルコリン分解活性測定法] ホスファチジルコリン0.5gに対してジエチルエーテル
1ml、蒸留水10mlを添加し、超音波処理によって得られ
たエマルジョン100μlと、0.1M塩化カルシウム溶液50
μl,0.1Mトリス−マレンイン酸−水酸化ナトリウム緩衝
液(pH5.5)100μl、7.5%W/VトリトンX−100水溶液1
50μlとの混合液に酵素溶液100μlを加え、37℃で10
分間反応させる。その後、0.05Mエチレンジアミン四酢
酸・二ナトリウムを含む1.0Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.
0)200μlを添加し、直ちに100℃で5分間煮沸して完
全に反応を停止させる。室温まで冷却した後、コリン測
定用試薬(コリンオキシダーゼ100U、パーオキシダーゼ
100U、4−アミノアンチピリン50mg、フェノール25mg、
トリトンX−100 500mgをpH8.0の0.01Mトリス−塩酸緩
衝液100mlに溶解したもの)4mlを添加し、37℃で20分間
反応させた後、あらかじめ熱失活させた酵素を用いて同
様に反応させたものを対照とし、500nmの吸光度を測定
する。
実 施 例 次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、
本発明はそれによって制限されるものではない。
実施例 1 倍地として、ブドウ糖1.0%、アスパラギン0.05%、
リン酸二カリウム0.05%、酵母エキス0.7%、コーンス
チープリカー溶液(10%W/Vコーンスチープリカー懸濁
液をpH7.0に調整し不純物を濾別したもの)10%を含むp
H7.2のものを用意し、その100mlを500ml容の坂口フラス
コに入れ、蒸気滅菌後S−170株の前培養液5mlを植菌し
30℃で3日間振とう培養した。
培養終了後菌体を濾別し、酵素活性が3.8U/mlの培養
濾液100mlを得た。次いで、上記濾液に硫酸アンモニウ
ム61gを撹拌しながら徐々に加え、生成した沈殿を遠心
分離により集め、得られた沈殿を0.01M酢酸緩衝液(pH
4.5)に溶解し、同緩衝液に対して透析した。これを同
緩衝液で平衡化した陽イオン交換体CM−トヨパール650M
[東ソー(株)製]を加えて撹拌することによりホスホ
リパーゼDをCM−トヨパールに吸着させた。CM−トヨパ
ールを回収し、0.5M NaClを含む0.01M酢酸緩衝液(pH5.
5)により活性画分を溶出し、凍結乾燥して茶褐色のホ
スホリパーゼD 22mg、302Uを得た。培養濾液からのホス
ホリパーゼDの活性回収率は78%であった。
実施例 2 実施例1を用いた倍地51で、実施例1と同様の操作を
経てCM−トヨパールから活性画分を溶出した。
この溶出液に25%飽和となるように硫酸アンモニウム
を加え、同じく25%飽和とした0.02Mトリス−塩酸緩衝
液(pH7.5)で平衡化した疎水性クロマト用担体ブチル
−トヨパール650M[東ソー(株)製]のカラムに通液
し、ホスホリパーゼDを吸着させた。15〜25%飽和の0.
02Mトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)を、硫酸アンモニウム
濃度を段階的に落として通液することにより洗浄し、硫
酸アンモニウムを含まない緩衝液で活性画分を溶出し
た。
限外濾過膜(10 PM10)[アミコン社製]により0.01M
トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)に置換し、同緩衝液で平
衡化した陰イオン交換体DEAE−トヨパール650M[東ソー
(株)製]のカラムに通し、食塩濃度勾配(0〜0.3M)
により活性画分を溶出した。
コロジオンバッグ[ザルトリウス社製]により溶出液
を濃縮し、0.025Mトリス−塩酸緩衝体(pH7.5)で平衡
化したゲル濾過用担体トヨパールHW−55F[東ソー
(株)製]のカラムに通し、活性画分を回収した。
この溶出液を0.025Mイミダゾール−酢酸緩衝液(pH7.
4)に置換後、ポリバッファ交換体PBETM94[ファルマシ
ア・ファインケミカルス社製]のカラムに通し、同社製
ポリバッファ(pH5.0)を用いpH勾配により溶出した。
得られた活性画分のポリバッファの除去はトヨパールHW
−55Fのゲル濾過を行った。
かくしてSDS電気泳動で単一なホスホリパーゼD7486U
を得た。上記精製操作におけるホスホリパーゼDの活性
回収率は約39%で、得られた精製品の比活性は1437U/mg
タンパンであった。
次に、精製品について下記のような理化学的性質の試
験を行った。
至適pH 前述の酵素活性測定法における緩衝液を、他の種々の
緩衝液にかえて酵素活性を測定することにより、本酵素
のpH依存性を調べた。その結果は第1図のとおりであ
り、至適pHは5.5付近にある。
pH安定性 本酵素を0.1M濃度の種々のpHの緩衝液に溶解し、37℃
で2時間静置した。その後、各pHの試料に対して20倍容
の0.1Mトリス−マレイン酸−水酸化ナトリウム緩衝液
(pH5.5)を加え、酵素活性を測定した。結果は第2図
のとおりであり、本酵素はpH4〜8で安定であることが
わかる。
至適温度 前述の酵素活性測定法における酵素反応の温度を種々
に変更して酵素活性を測定することにより、本酵素の温
度依存性を調べた。その結果は第3図のとうりであり、
至適温度は55〜65℃にある。
熱安定性 本酵素を0.05Mトリス−マレイン酸−水酸化ナトリウ
ム緩衝液(pH5.5)中で、25〜75℃に30分間静置した
後、残存する酵素活性を測定した。その結果は第4図の
とうりであり、55℃まで安定であることがわかる。
種々の物質の影響 前述の酵素活性測定法において、塩化カルシム溶液を
他の金属塩等の各種の水溶液にかえて、酵素反応系中の
物質濃度が1mMになるようにして、酵素活性を測定し
た。各種物質無添加のときの活性と比較すると、CaCl2,
FeCl3,FeSO4,BaCl2,MnCl2,MgCl2,CuCl2,ZnCl2,SnCl2,Al
Cl3,CoCl2,CdCl2,LiCl,KCl,NaCl,コール酸ナトリウム,
デオキシコール酸ナトリウム,エチレンジアミン四酢酸
・二ナトリウムでは、活性の変化は認められなかった。
塩化セチルピリジニウムでは、若干の活性が阻害され
た。
分子量 濃縮ゲル4.5%T、分離ゲル10%TのSDS−ポリアクリ
ルアミドで電気泳動をおこなった。分子量マーカーとし
てAlbumin(bovine),Catalase,Ovalbumin,Glyceraldeh
yde−3−phosphate dehydrogenase,Lactate dehydro−
genaseも同時に泳動し、Coomassie Brilliant Blue G−
25により染色した。各分子量マーカーの移動度と分子量
の関係から算出した結果、本酵素の分子量は6.4万であ
った。
等電点 本酵素を、『蛋白質・酵素の基礎実験法』(南江堂)
III.3.7に従いゲル等電点電気泳動にかけ、泳動終了後
ディスクを等間隔に切断し、得られた切片の蒸留水によ
る抽出液について、pHおよび酵素活性を測定した。その
結果、本酵素の等電点はpH6.4〜6.5であった。
実施例 3 大豆性ホスファチジルエタノールアミン2.5mg、ジエ
チルエーテル170μl、グリセロール79mg、1M CaCl26.8
μl、0.8M酢酸緩衝液(pH5.6)17μl、実施例1で得
たホスホリパーゼD 1Uを含む0.1%牛血清アルブミン(B
SA)溶液83.5μlを混合し、室温で撹拌しながら12時間
反応した。ジエチルエーテル:エタノール(3:2)210μ
lを添加してよく混合し、上層中のリン脂質組成を日本
油化学協会編基準油脂分析試験法2.2.8.4a−86に従い分
析した。その結果は第1表のとおりで、96.2%のホスフ
ァチジルグリセロールを生成した。
また第1表には、キャベツ,Streptomyces chromofusc
us(S.C.),streptomyces hachijoensis(S.H.)を起源
とするホスホリパーゼDを同条件下で用いたときの分析
値も合わせて示した。
実施例 4 大豆製ホスファチジルコリン10g、ジエチルエーテル6
50ml、グリセロール620g、0.4M酢酸緩衝液(pH5.6)130
ml、実施例1で得たホスホリパーゼD4000U、蒸留水42ml
を混合し、撹拌しながら8時間反応した。ジエチルエー
テル800mlを添加して抽出し、エーテル相を3MNaCl、蒸
留水で洗浄した後、実施例3と同様にリン脂質組成を分
析した。その結果、反応生成物中の95.4%がホスファチ
ジルグリセロールであり、ホスファチジン酸は検出され
なかった。また、未反応のホスファチジルコリン0.2
%、不純物4.4%が存在した。
発明の効果 本発明のホスホリパーゼDは、上述のように従来の製
造法により得られるものと比較して、高いホスファチジ
ル基転移活性を有している。また本酵素によるホスファ
チジル基転移反応では、ホスファチジン酸はほとんど生
成せず、リン脂質誘導体を効率よく製造することができ
る。
本酵素を使用してホスファチジル基転移反応を行え
ば、目的のリン脂質誘導体を、従来よりはるかに高い収
率で製造でき、極めて簡易な精製操作で製品の純度を向
上させることができるという利点がある。
本発明に使用されるストレプトマイセス属S−170株
は、安価な倍地成分で十分量の本酵素を生成することが
でき、培養物から、本酵素を簡単に採取することができ
る。また、本酵素は特に精製を必要とせず、培養濾液そ
のままでもよいし、必要に応じて、単に濃縮するだけで
も使用できる。すなわち、低コストで、高いホスファチ
ジル基転移活性を有する本酵素を生産することが可能で
ある。
また、本酵素はpH、温度等に対する安定性が良好で、
工業的な利用に有利である。
以上のように、本発明は、ホスファチジル基転移反応
でリン脂質誘導体を従来より効率的に、しかも低コスト
で製造できるようにする優れたものである。
【図面の簡単な説明】
第1図:本発明の酵素のホスファチジルコリン分解活性
のpH依存性を示すグラフ。 第2図:本発明の酵素の安定性に及ぼすpHの影響を示す
グラフ。 第3図:本発明の酵素のホスファチジルコリン分解活性
の温度依存性を示すグラフ。 第4図:本発明の酵素の安定性に及ぼす温度の影響を示
すグラフ。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の理化学的性質を有するホスホリパー
    ゼD: (a)作用 加水分解反応 下記一般式[I] (但し、式中R1,R2はアシル基またはアルキル基、Xは
    水酸基を含有する塩基の水酸基1個を除いた後に残る有
    機基を示す)で表わされるリン脂質を加水分解し、ホス
    ファチジン酸と塩基とを遊離させる; ホスファチジル基転移反応 上記一般式[I]で表されるリン脂質のホスファチジル
    基を下記一般式[II] R3OH ………[II] (但し、R3はアルコール性水酸基に結合した有機基を示
    す)で表されるグリセロール、セリン、エタノール等の
    アルコール性水酸基を有する化合物の共存下、アルコー
    ル性水酸基にホスファチジル基を転移させ、下記一般式
    [III] (但し、R1,R2,R3は前記と同様の基を示す)で表される
    リン脂質誘導体を生成する; (b)基質特異性 ホスファチジルコリンに対する加水分解活性を100とし
    た場合の相対活性は、リゾホスファチジルコリンに対し
    2.3、スフィンゴミエリンに対しては0.9である; (c)至適pH:約5.5 (d)pH安定性:pH4〜8で安定 (e)至適温度:55〜65℃ (f)熱安定性 pH5.5において50℃、30分間の熱処理で全く失活せず、7
    0℃、30分間でも約50%の活性が残存する; (g)種々の物質の影響 濃度1mの種々の物質を共存させた場合、加水分解活性は
    塩化セチルピリジニウムのとき若干阻害されるが、CaCl
    2,FeCl3,FeSO4,BaCl2,MnCl2,MgCl2,CuCl2,ZnCl2,SnCl2,
    AlCl3,CoCl2,CdCl2,LiCl,KCl,NaCl,コール酸ナトリウ
    ム,デオキシコール酸ナトリウム,エチレンジアミン四
    酢酸・二ナトリウムのときは阻害されない; (h)分子量 6.4万(SDS・PAGE法による)。 (i)等電点 pH6.4〜6.5(等電点電気泳動法による)。
  2. 【請求項2】ストレプトマイセス属に属するS−170株
    を培養し、培養物からホスホリパーゼDを採取すること
    を特徴とするホスホリパーゼDの製造法。
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