JP3490184B2 - 新規N−アルキルグリシンオキシダーゼ、その製造方法、この酵素を用いたNε−カルボキシメチルリジンの定量用試薬及びその定量方法 - Google Patents

新規N−アルキルグリシンオキシダーゼ、その製造方法、この酵素を用いたNε−カルボキシメチルリジンの定量用試薬及びその定量方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸素存在下でN−アル
キルグリシン類を酸化してアルキルアミン、グリオキシ
ル酸及び過酸化水素を生成する新規なN−アルキルグリ
シンオキシダーゼ、その製造方法、この酵素を用いた、
例えば糖尿病患者の血中や尿中などに含有されるNε−
カルボキシメチルリジン(記号Nε−は、カルボキシメ
チルリジンを構成するリジン残基のε位の炭素に、カル
ボキシメチル化されたアミノ基のNが結合されているこ
とを示す)の定量用試薬、及びその定量方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】糖尿病患者の体内では、非酵素的に糖化
タンパク質が生産されており、この糖化タンパク質は、
いくつかの過程を経て、アドヴァンスド グリケーショ
ン エンド プロダクツ(Advanced Glyc
ation End Products)(以下AGE
sということがある)と呼ばれる物質に代謝される。そ
してこのAGEsの蓄積が糖尿病の合併症を引き起こす
原因であると考えられている。Nε−カルボキシメチル
リジン(以下CMLということがある)は、前記糖化タ
ンパク質が、AGEsに代謝されずに酸化的開裂をうけ
て血中や尿中に排出されてくるものである。同じ血糖値
の糖尿病患者であれば糖化タンパク質は同程度生産され
ていると思われるが、CMLの血中や尿中への排出量が
多い患者の場合、合併症原因物質であるAGEsの量は
相対的に少なくなっており、合併症には進みにくいと考
えられる。したがって、そのCMLを定量することで糖
尿病患者が合併症を引き起こす可能性、すなわち予後を
判断することが可能になると思われ、CMLの定量値
は、糖尿病の診断及び治療の面から、非常に重要な診断
基準となり得る。
【0003】従来、CMLの定量方法として、例えば高
速液体クロマトグラフィーを利用したWeninger
らの方法(Nephron,1992,62,80−8
3)、ガスクロマトグラフィー(GC−MS)を使用す
るKnechtらの方法(DIABETES,199
1,40,190−196)などがある。
【0004】しかしながら、これらの方法はいずれも操
作が煩雑であったり、高価な機器を必要とするなどの欠
点を有し、また多数の検体を短時間で処理するには不向
きである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
従来のCMLの定量方法が有する欠点を克服し、該CM
Lを酵素法により、操作が簡単で、安価に、短時間でし
かも精度よく定量する新規な方法を提供すること、すな
わち、この酵素法に有効に用いられる新規な酵素、この
酵素を有効成分とするNε−カルボキシメチルリジンの
定量用試薬及びこの試薬を用いるNε−カルボキシメチ
ルリジンの新規な定量方法を提供することを目的として
なされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、土壌より分離
した微生物が、酸素存在下でN−アルキルグリシン類を
酸化し、アルキルアミン、グリオキシル酸及び過酸化水
素を生成する新規な酵素を生産すること、そしてこの酵
素を用いれば、Nε−カルボキシメチルリジンを酵素法
により精度よく定量しうることを見出し、この知見に基
づいて本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、理化学的性質が、 (1)作用:酸素存在下でN−アルキルグリシン類を酸
化してアルキルアミン、グリオキシル酸及び過酸化水素
を生成する、一般式
【化3】 (式中のRは、アルキル基又はその誘導体を意味する)
に示される反応を触媒する。 (2)基質特異性:ザルコシン、N−エチルグリシン、
N−カルボキシメチル−6−アミノカプロン酸、Nε−
カルボキシメチルリジンに特異的に作用する。 (3)至適pH及び安定pH範囲:至適pHはpH8.
0〜10.0であり、安定pH範囲は、30℃、10分
間処理で、pH7.5〜9.5である。 (4)分子量:約45,000(ゲルろ過法)。である
新規なN−アルキルグリシンオキシダーゼであり、また
本発明は、クラドスポリウム属に属し、酸素存在下でN
−アルキルグリシン類を酸化してアルキルアミン、グリ
オキシル酸及び過酸化水素を生成する、一般式
【化4】 (式中のRは、アルキル基又はその誘導体を意味する)
に示される反応を触媒する作用を有するN−アルキルグ
リシンオキシダーゼを生産する能力を有する菌株を培地
に培養し、その培養物から該N−アルキルグリシンオキ
シダーゼを採取することを特徴とするN−アルキルグリ
シンオキシダーゼの製造方法であり、さらに本発明は、
(ア)前記(1)〜(4)の理化学的性質を有するN−
アルキルグリシンオキシダーゼ、及び(イ)酸化反応に
より消費される酸素量又は生成する過酸化水素量を測定
するための試薬を含むNε−カルボキシメチルリジンの
定量用試薬であり、さらにまた本発明は、Nε−カルボ
キシメチルリジン含有試料に、前記(1)〜(4)の理
化学的性質を有するN−アルキルグリシンオキシダーゼ
を作用させ、酸化反応により消費される酸素量又は生成
する過酸化水素量を測定することを特徴とするNε−カ
ルボキシメチルリジンの定量方法である。
【0008】以下、本発明について詳細に説明する。ま
ず、本発明の新規な酵素、N−アルキルグリシンオキシ
ダーゼ(以下「本酵素」ということもある)の理化学的
性質は下記のとおりである。 (1) 作用:N−アルキルグリシン類の一種であるザ
ルコシン(Rが、−CH3)1.25μmol及び本酵
素0.5単位(U)を含有する50mMリン酸緩衝液
(pH8.0)0.25mlを反応系として用い、12
0単位のカタラーゼ存在下で5℃で24時間反応を行
い、反応後におけるザルコシン含有量及びメチルアミン
含有量をアミノ酸分析にて、またグリオキシル酸を高速
液体クロマトグラフィーにて測定した。その結果、ザル
コシンは反応後に完全に消失し、メチルアミン1.17
μmolとグリオキシル酸1.07μmolが検出され
た。また前記ザルコシンの代わりに、N−アルキルグリ
シン類の一種であるCML(Rが、−CH2−CH2−C
2−CH2−CH(NH2)−COOH)0.96μm
olを基質として用いた以外は前記と同様に反応させて
分析したところ、CML0.19μmolが反応せずに
残り、(CML 0.77μmolに対して)リジンが
0.75μmol、グリオキシル酸が0.72μmol
検出された。同様にして、本酵素は、酸素存在下で、N
−アルキルグリシン類の一種であるN−エチルグリシ
ン、N−カルボキシメチル−6−アミノカプロン酸(R
が、それぞれ−CH2−CH3 −CH2−CH2−CH2
−CH2−CH2−COOH)を酸化してそれぞれのアル
キルアミン(R−NH2のRは、前記と同じ)、グリオ
キシル酸及び過酸化水素を生成する反応を触媒するもの
である。すなわち、本酵素は、一般式
【化5】 (式中のRは、アルキル基又はその誘導体を意味する)
で示される反応を触媒するものである。
【0009】(2)基質特異性:本酵素の各種基質に対
する相対活性を調べた結果の一例を表1に示す。表1か
ら、ザルコシン、N−エチルグリシン、N−カルボキシ
メチル−6−アミノカプロン酸、Nε−カルボキシメチ
ルリジン(CML)に特異的に作用し、グリシン、グリ
シルグリシン、イミノ二酢酸、フルクトシルグリシンに
は作用しないことがわかる。
【0010】
【表1】
【0011】(3)至適pH及び安定pH範囲:至適p
Hは、図1に示すごとく、100mM MES−水酸化
ナトリウム緩衝液(pH5.5〜7.0)(□の記
号)、100mM HEPES−水酸化ナトリウム緩衝
液(pH6.5〜8.0)(●の記号)、100mM
TAPS−水酸化ナトリウム緩衝液(pH7.7〜9.
0)(×の記号)、100mMグリシルグリシン−水酸
化ナトリウム(pH7.5〜10.0)(▲の記号)及
び100mM CAPS−水酸化ナトリウム(pH9.
5〜11.0)(△の記号)を用いて各pHにおける本
酵素の活性測定を行って求めた。その結果は図1に示す
とおりであり、本酵素の至適pHは8.0〜10.0、
特にpH9.0近辺である。また、安定pH範囲は、図
2に示すごとく、100mM MES−水酸化ナトリウ
ム緩衝液(pH5.5〜6.0)(○の記号)、100
mM HEPES−水酸化ナトリウム緩衝液(pH6.
5〜7.5)(●の記号)、100mM TAPS−水
酸化ナトリウム緩衝液(pH8.5〜9.0)(×の記
号)、100mMグリシルグリシン−水酸化ナトリウム
(7.5〜10.0)(▲の記号)及び100mM C
APS−水酸化ナトリウム(10.0〜11.0)(□
の記号)を用いてpH5.5〜11.0において30℃
で10分間それぞれ処理したのち、本酵素の残存活性を
測定して求めた。その結果は図2に示すとおりであり、
本酵素の安定pH範囲はpH7.5〜9.5である。
【0012】(4)分子量:Sephadex G−2
00(ファルマシア社製)によるゲルろ過法で、分子量
は約45,000である。なお、SDS−ポリアクリル
アミドゲル電気泳動法による分子量は約52,000で
ある。
【0013】(5)力価の測定方法: 1)酵素反応により生成する過酸化水素の測定法 酵素の力価の測定は下記の方法で行い、1分間に1μm
olの過酸化水素を生成する酵素量を1Uとする。 A.試薬の調製; 基質溶液 N−アルキルグリシン2.0mmolを100mMリン
酸緩衝液(pH8.0)10mlに溶解して調製する。 発色試薬 ペルオキシダーゼ70U、2.4−ジクロロフェノール
サルフォネート1.0mmol及び4−アミノアンチピ
リン5.0mgを100mMリン酸緩衝液(pH8.
0)100mlに溶解して調製する。 B.測定法;発色試薬1.0mlを小試験管に分注し、
基質溶液0.1mlを加え、30℃で3分間保温した
後、酵素溶液0.15mlを添加し(基質・酵素混合
液)、30℃で30分反応させた後510nmにおける
吸光度を測定する。なお、対照液は、酵素液0.15m
lの代わりに水0.15mlを添加する以外は、前記と
同様にしたものである。このようにして前記酵素反応液
と対照液との吸光度の差より、生成した過酸化水素を測
定する。 2)酵素反応により消費される酸素の測定方法 酵素の力価の測定は下記の方法で行い、1分間に1μm
olの酸素吸収を引き起こす酵素量を1Uとする。10
0mMリン酸緩衝液(pH8.0)2.7mlをYSI
社製オキシゲンモニターの測定容器にとり、0.2M
CML0.3mlを加え30℃で3分間攪拌し、溶存酸
素と温度を平衡化し、これに酸素電極を差込み密閉した
後、酵素溶液10μlを注入し、酸素の変化量をモニタ
ーに接続した記録計で連続的に計測し、その初速度を測
定する。あらかじめ同様にして容器内の酸素濃度と計測
値の間で標準曲線を作成し、これを用いて前記の初速度
測定値から酸素濃度を求める。 3)酵素反応により生ずるグリオキシル酸の測定方法 酵素反応により生ずるグリオキシル酸を測定することに
より、酵素力価を測定することもできる。グリオキシル
酸の測定方法としては、例えばグリオキシル酸の還元性
を利用してフェリシアン塩をフェロシアンイオンに還元
させた後、第二鉄と反応させ、生じる青色(プルシアン
青)を比色定量するパーク−ジョンソン法(多糖生化学
I化学編、1969、共立出版株式会社)などが挙げら
れる。
【0014】本発明の酵素の主要な理化学的性質は前記
のとおりであるが、この酵素が新規なものである根拠を
次に示す。本酵素はザルコシンに作用することから、従
来のザルコシンオキシダーゼ(EC 1.5.3.1)
との類似が考えられる。しかしながら、前記したごと
く、本発明の酵素は、特にその作用及び基質特異性にお
いて、前記ザルコシンオキシダーゼとは全く異なるもの
であり、両者を比較するために示した表2から、至適p
H、至適温度、種々の基質に対する相対活性及びザルコ
シンを基質としたときの酵素反応生成物から見ても、両
者は全く異なるものであることがわかる。なお、表2に
おいて、ザルコシンオキシダーゼはキッコーマン社製を
使用した。また、相対活性は、本酵素の場合はpH8.
0、30℃で、そしてザルコシンオキシダーゼの場合は
pH8.0、37℃で測定し、それぞれザルコシンを基
質としたときの活性を100として表わした。
【0015】
【表2】
【0016】また、本発明者の一人が以前に提案したフ
ルクトシルアミンオキシダーゼ(特開平3−15578
0号公報参照)及びフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ
(特開昭61−268178号公報参照)も、N−アル
キルグリシン誘導体の一種であるフルクトシルグリシン
を酸化分解することができるが、これらの酵素は、その
反応によって、基質構造のグリシン部分をグリシンとし
て遊離させるものであり、グリオキシル酸として遊離さ
せる本酵素とは反応形式が異なるものである。さらに、
本酵素は、前記表1に示すごとく、フルクトシルグリシ
ンには全く作用しない。このようなことから、本酵素
は、フルクトシルアミンオキシダーゼ及びフルクトシル
アミノ酸オキシダーゼとも全く異なるものである。
【0017】また、「酵素ハンドブック」(朝倉書店、
1982)によれば、Nε−メチルリジンを基質とする
Nε−メチルリジンオキシダーゼ(EC 1.5.3.
4)が知られているが、本酵素は、前記表1に示すごと
く、Nε−メチルリジンに全く作用しないので、これと
も異なるものである。さらにまた、前記「酵素ハンドブ
ック」によれば、L−アミノ酸オキシダーゼ(EC
1.4.3.2)がNα−メチルアミノ酸(記号Nα−
は、メチルアミノ酸を構成するアミノ酸残基のα位の炭
素に、メチル化されたアミノ基のNが結合されているこ
とを示す)に作用してメチルアミンとケト酸を生成する
反応を触媒するとの記載があり、本酵素の反応形式に類
似しているようにも見える。しかしながら、L−アミノ
酸オキシダーゼはEC 1.4番に分類されるものであ
り、その好適な基質であるL−ロイシンに対して、本酵
素は全く作用しないこと、さらに、L−アミノ酸オキシ
ダーゼがN−カルボキシメチル−6−アミノカプロン酸
のごとき長いアルキル基のものには全く作用しないのに
対して、本酵素は、前記表1に示すごとく、よく作用す
ることなどから、本酵素は、L−アミノ酸オキシダーゼ
とも異なるものである。
【0018】すなわち、本発明の酵素は、酸素存在下で
N−アルキルグリシン類に特異的に作用し、アルキルア
ミンとグリオキシル酸及び過酸化水素を生成するという
特徴を持った、EC 1.5.3に分類されるのが相当
であるところの従来にない全く新規な酵素であり、この
基質特異性の特徴より、N−アルキルグリシンオキシダ
ーゼと命名した。
【0019】次に、本酵素のその他の理化学的性質の1
例を示す。 (6)作用適温の範囲:前記力価の測定法におけると同
一の基質・酵素混合液を用い、種々の温度にて本酵素の
活性測定を行った。その結果は図3に示すとおりであ
り、本酵素の作用適温範囲は25℃〜35℃、特に30
℃近辺である。
【0020】(7)pH、温度などによる失活の条件:
本酵素は30℃で10分間の処理では、pH7.5〜
9.5で安定であり、図2からわかるように、それより
酸性側及びアルカリ性側では急速に失活し、pH6.0
以下及びpH11.0以上で完全に失活する。また、1
00mMリン酸緩衝液(pH8.0)を用いて、本酵素
を各温度で10分間処理した場合の熱安定性を調べた。
その結果は図4に示すとおりであり、本酵素は20℃ま
で安定であり、それを越えると失活し始め、50℃以上
で完全に失活する。
【0021】(8)阻害、活性化及び安定化:前記力価
の測定法におけると同一の基質・酵素混合液に、種々の
添加剤(金属塩及び金属キレート剤)を各2mMの濃度
になるように添加して酵素活性を測定した。その結果は
表3に示すとおりであり、本酵素はZnSO4、ヨード
酢酸、p−メルクリ安息香酸(pCMB)、ドデシル硫
酸ナトリウム(SDS)により強く阻害されるが、活性
化及び安定化に特別に寄与する添加物は見当らない。
【0022】
【表3】
【0023】(9)精製方法:本酵素の単離、精製は常
法にしたがって行うことができ、例えば硫安塩析法、有
機溶媒沈澱法、イオン交換体などによる吸着処理法、イ
オン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィ
ー、ゲルろ過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフ
ィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法
などが単独又は適宜組み合わせて用いられる。
【0024】(10)Km値:ラインウエーバー・バー
クのプロットから、Km値は7.26×10-4M(N−
エチルグリシンに対して)、1.46×10-3M(ザル
コシンに対して)、2.12×10-3M(N−カルボキ
シメチル−6−アミノカプロン酸に対して)、2.40
×10-3M(CMLに対して)である。 (11)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動:ア
クリルアミド4〜20%(W/V)の濃度勾配を有する
ポリアクリルアミドゲルを用い、常法によりSDS−ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動を行った結果、図5に示
すごとく単一のバンドが認められた。
【0025】次に、本発明の新規N−アルキルグリシン
オキシダーゼの製造方法について説明する。まず、使用
される微生物は、クラドスポリウム属に属し、N−アル
キルグリシンオキシダーゼ生産能を有する菌株であっ
て、その具体例としては、クラドスポリウム(Clad
osporium)sp.G−10が挙げられ、該菌株
の変種又は変異株も用いられる。このクラドスポリウム
sp.G−10は、本発明者らが千葉県内の土壌中よ
り分離した菌株であり、その菌学的性質は以下に示すと
おりである。なお、菌学的性質の同定のための実験は、
主として長谷川武治編著、「微生物の分類と同定」、東
京大学出版会(1975年)によって行った。また、分
類同定の基準としてエリス(M.B.Eliss)著の
「デマティアセウス・ハイフォミセテス(Demati
aceous Hyphomycetes)」(197
1年)を参考にした。
【0026】クラドスポリウム sp.G−10 の菌
学的性質 (A)各培地(pH6.0)における生育状態 (1)サブロー寒天培地(30℃生育) 生育は遅く、8日目で直径3.6cmに広がり、うすい
クリーム色の薄いコロニーを作った。中央部の直径1.
5cmではやや黒味を帯びたクリーム色であった。色素
の生成は見られず、ひだも観察されない。12日目で直
径5.5cmで他には変化は現れない。菌糸は薄い茶色
で隔壁を持ち、幅は3〜5μmで分岐性であり、所々で
コイル状に菌糸が巻き込み絡み合っている部分が観察さ
れる。また、剛毛や菌足は観察されない。分生子形成細
胞はシンポジオ型であり4〜5μm×3〜4μmの亜球
型の連鎖する分生子を持つ。分生子の連鎖は1〜7個で
あり分岐するときもあるが、表面はほぼ平滑で1細胞で
構成されている。また、分生子のとれた後には分離痕が
残っている。しかし、サブロー寒天培地では他のオート
ミール寒天培地やYpSs寒天培地に比べると分生子の
形成はかなり少ない。 (2)オートミール寒天培地 生育は遅く、8日目で直径3.3cmに広がり、緑がか
った黒色の厚いコロニーを作る。菌糸はほとんどが潜在
性で寒天中にもぐっており寒天培地表面には薄く菌糸が
広がっている。中央部の直径1.5cmではやや白っぽ
い気生菌糸が他のコロニーの部分より多く生えており、
周辺部では潜在菌糸のみで気生菌糸は観察されない。ま
た、色素の生成は見られず、ひだも観察されない。12
日目で直径5.5cmで他には変化は現れない。菌糸や
分生子の形状はサブロー培地と同様であるが、分生子形
成がほかの培地よりも多い。 (3)YpSs寒天培地 生育は遅く、8日目で3.7cmに広がり、白い気生菌
糸が他の培地上よりも多く、薄茶色の密なコロニーを形
成する。菌糸はサブロー寒天培地上と同様に潜在菌糸が
かなり多く、寒天中によく生えている。色素の生成は見
られず、ひだも観察されない。12日目で直径5.5c
mに生育する。菌糸は、サブロー寒天培地と同様である
が、分生子の形成はサブロー寒天培地よりも多い傾向に
ある。
【0027】(B)生理的、生態的性質 pH5.0−9.0(至適pH6.0付近) 生育温度15℃−35℃(至適30℃付近)
【0028】(C)本菌株の分類学上の位置について 前記のごとき菌学的性質を有し、新規N−アルキルグリ
シンオキシダーゼ生産能を有する本菌株は、生育が遅
く、菌糸が潜在性であり、分生子形成細胞がシンポジオ
型であり、小さい分生子が連鎖しまた分離痕を持つこと
より、前述のエリス(M.B.Eliss)著の「デマ
ティアセウス・ハイフォミセテス(Dematiace
ous Hyphomycetes)」(1971年)
に記述のクラドスポリウム属に属する糸状菌であると判
定される。さらに本菌はコイル状の菌糸が特徴的である
ことよりクラドスポリウム属の一種であるクラドスポリ
ウム・ヴァリアビル(Cladosporium va
riabile)に近縁の菌株であると思われる。しか
し本菌株はクラドスポリウム・ヴァリアビルの特徴であ
るほうれんそうへの寄生性が認められないことよりクラ
ドスポリウム・ヴァリアビルとは異なる菌と認められ
る。以上の理由から、本菌株はクラドスポリウム(Cl
adosporium)に属する新種と認められ、Cl
adosporium sp.G−10と命名した。な
お、クラドスポリウム sp.G−10は、工業技術院
生命工学工業技術研究所に、FERM P−14887
として寄託されている。
【0029】なお、本発明におけるN−アルキルグリシ
ンオキシダーゼとしては、前記した作用、基質特異性な
どの主要な理化学的性質を有するものであればよく、そ
の他の理化学的性質が多少の相違を示すものであって
も、本発明の酵素として包含される。そして前記の微生
物は、このようなN−アルキルグリシンオキシダーゼを
得るための使用菌の一例であって、本発明においてはク
ラドスポリウム属に属し、N−アルキルグリシンオキシ
ダーゼ生産能を有するものであればすべて使用できる。
【0030】次に、N−アルキルグリシンオキシダーゼ
生産能を有する微生物を用いて、N−アルキルグリシン
オキシダーゼを製造するには、通常の固体培養法でもよ
いが、液体培養法が好ましい。そしてその培地として
は、炭素源、窒素源、無機物、その他の栄養素を程よく
含有するものであれば、合成培地又は天然培地のいずれ
でも使用できる。炭素源としては、資化可能な炭素化合
物であればよく、例えばマルトース、グルコース、デン
プン加水分解物、グリセリン、フラクトース、糖蜜など
が使用され、これらの糖類に、CML、ザルコシン、エ
チルグリシン、N−カルボキシメチル−6−アミノカプ
ロン酸を適量添加したものなどが挙げられる。また窒素
源としては、利用可能な窒素化合物であればよく、例え
ば酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリ
カー、大豆粉、アミノ酸、硫安、硝酸アンモニウムなど
が使用される。その他、食塩、塩化カリウム、硫酸マグ
ネシウム、塩化亜鉛、塩化マンガン、硫酸第一鉄、リン
酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、炭酸ナトリウム
などの種々の塩類、ビタミン類、消泡剤などが使用され
る。これらの栄養源はそれぞれ単独で用いることもで
き、また組み合わせて用いることもできる。
【0031】このようにして調製した液体培地を用いて
本酵素を製造するには、通気攪拌培養または振盪培養な
どにより好気的に培養するのが好ましい。その際に、培
地の初発pHを6程度に調整し、25〜35℃、好まし
くは30℃前後の温度で36〜96時間培養する。こう
することによって、培養物中に本酵素が生成蓄積する。
この培養物から本酵素を採取するには、通常の酵素採取
手段を用いることができる。
【0032】本酵素は、主に菌体内に存在する酵素であ
るため、培養物から、例えばろ過、遠心分離などの操作
により菌体を分離し、この菌体から本酵素を採取するの
が好ましい。この場合、常法、例えば超音波破砕機、フ
レンチプレス、ダイナミルなどの種々の破壊手段を用い
て菌体を破壊する方法、リゾチーム、ザイモリエイスな
どの細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方
法、トリトンX−100などの界面活性剤を用いて菌体
から酵素を抽出する方法などを単独又は組み合わせて採
用することができる。次いで、ろ過又は遠心分離などに
より不溶物を除き、本酵素の粗酵素液を得る。このよう
にして得られた粗酵素液から本酵素を必要により単離す
るには、前記精製方法が適用できる。
【0033】このようにして得られた本酵素はCMLの
定量に極めて有用であり、これを用いることによりCM
Lを酵素的に定量することができる。CMLを定量する
ための有利な系としては、例えば反応試薬として、0.
5〜20U/mlの本酵素及び10〜200mMの緩衝
剤を含有するpH8〜10の系、そして生成する過酸化
水素を測定するための試薬(後記に例示)及び10〜2
00mMの緩衝剤を含有するpH8〜10の系、又は
0.5〜20U/mlの本酵素及び10〜200mMの
緩衝剤を含有するpH8〜10の系、そして消費される
酸素を定量するための試薬及び10〜200mMの緩衝
剤を含有するpH8〜10の系などが挙げられる。そし
てこれらの系に用いられる緩衝剤としては、例えばリン
酸塩、HEPES−水酸化ナトリウム、グリシルグリシ
ン−水酸化ナトリウム、TAPS−水酸化ナトリウム、
CAPS−水酸化ナトリウムどが挙げられる。
【0034】このような系に、前記成分以外に、本発明
の目的をそこなわない範囲で、さらに必要に応じて慣用
の種々の添加成分、例えば溶解補助剤、安定化剤などと
して、界面活性剤(トリトンX−100、ブリッジ3
5、ツイーン80、コール酸塩など)、牛血清アルブミ
ン、糖類(グリセリン、乳糖、シュークロースなど)、
キレート剤(EDTAなど)などを添加することもでき
る。これらの添加成分は1種用いてもよいし、2種以上
を組み合わせて用いてもよく、また前記系調製の適当な
段階で加えることができる。
【0035】本発明の試薬は、乾燥物又は溶解した状態
で用いてもよいし、薄膜状の担体、例えばシート含浸性
の紙などに含浸させて用いてもよい。また使用酵素は、
常法により固定化させて反復使用してもよい。このよう
な本発明の試薬を用いることにより、各種の試料に含有
されるCMLを簡単な操作で精度よく定量することがで
きる。
【0036】次に、本発明におけるCMLの定量は、前
記のごとく、CML含有試料に本酵素を添加、作用させ
て消費する酸素又は生成する過酸化水素を測定すること
により行うのであるが、CML含有試料としては、CM
Lを含有するものであれば、いかなるものでもよく、例
えば血液、尿のような液体あるいは粉末試料、その他C
MLを定量すべき診断用試料などが挙げられる。そし
て、該試料は、そのままかあるいはろ過して定量に供し
てもよく、また例えば水、緩衝液などでCMLが適当な
濃度になるように抽出(濃縮)や希釈して定量に供して
もよい。また、正確な定量を妨害するアスコルビン酸、
ザルコシンあるいはエチルグリシンなどを、定量に際し
てあらかじめ又は同時にアスコルビン酸オキシダーゼ、
ザルコシンオキシダーゼなどで消去処理するのが好まし
い。そして、定量に際しては、これらの試料のpHは無
調整でもよいが、適当なpH調整剤、例えば塩酸、硫
酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどによ
り、pH8〜10に調整するのが望ましい。またCML
含有試料に作用させる本酵素の添加量は、該試料に含ま
れるCML含有量、酵素反応条件などにより適宜選択さ
れる。
【0037】次に、前記酵素反応により消費する酸素ま
たは生成する過酸化水素の含有量の測定方法は、特に制
限されず、いかなる方法を用いてもよい。過酸化水素の
測定方法としては、例えば生成した過酸化水素を酵素的
に比色定量する方法(堀内、Agric. Biol.
Chem., 53(2),361−368,198
9)、240nmにおける吸光度を測定する方法(Be
rgmeyer、メソッヅオブエンザイマティックアナ
リシス第3版(Methods of Emzymat
ic Analysis 3rd Edition,v
ol.III,273−,1984))などが挙げられ
る。また、酸素消費量に基づく定量法としては、反応開
始時の酸素量より反応終了時の酸素量を差し引いた値
(酸素消費量)を測定し、あらかじめ別に用意した酸素
消費量とCMLとの標準曲線よりCMLを定量するもの
で、酸素量の測定は常法、例えばワールブルグ検圧法
(実験化学講座(日本化学会編)第24巻(生物化学I
I)、丸善、1959)、酸素電極法(堀内ら、Agr
ic. Biol. Chem., 53(1),10
3−110,1989)などの方法が挙げられる。なお
酸素電極法により酸素消費量を測定する場合には、例え
ば前記の「力価の測定法」に記載した測定法と同様に操
作する。さらにまた、グリオキシル酸の測定方法として
は、例えばグリオキシル酸の還元性を利用してフェリシ
アン塩をフェロシアンイオンに還元させた後、第二鉄と
反応させ、生じる青色(プルシアン青)を比色定量する
パーク−ジョンソン法(多糖生化学I化学編、196
9、共立出版株式会社)などが挙げられる。
【0038】次に、本発明のCMLの定量方法の好適な
1例を示す。まず、CMLを含有する試料に、本酵素を
0.2〜50U/ml,好ましくは0.5〜20U/m
l及び緩衝剤を10〜200mMとなるように加え、p
H8.0〜9.5、温度25〜35℃で酵素反応させ
る。このときの反応時間は、CMLを酸化分解するに十
分な時間であればよく、1〜60分間、好ましくは2〜
40分間である。次いで、生成する過酸化水素を前記の
方法、例えばパーオキシダーゼを用いて2.4−ジクロ
ロフェノールスルフォネートと4−アミノアンチピリン
より生じる色素を測定する方法によって定量し、予め同
方法で定量して作成したCMLの検量線を用いて、試料
中のCMLの定量値を算出する。
【0039】
【発明の効果】本酵素は、Nε−カルボキシメチルリジ
ンに特異的に作用する新規な酵素であり、該酵素を用い
る本発明のNε−カルボキシメチルリジンの定量方法に
よれば、従来のNε−カルボキシメチルリジンの定量方
法に比較して操作が極めて簡便であり、1試料当りの測
定時間も著しく短縮され、また精度も極めて優れ、さら
に多数の試料を同時に測定できるので極めて有意義であ
る。
【0040】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定され
るものではない。
【0041】実施例1(本酵素の製造方法) グルコース0.1%(W/V)、ポリペプトン0.1%
(W/V)、酵母エキス0.2%(W/V)、KH2
4 0.15%(W/V)、MgSO4・7H2
0.05%(W/V)、KCl 0.05%(W/
V)、FeSO4・7H2O 0.002%(W/V)、
ZnCl2 0.002%、ザルコシン0.1%及び水
道水からなる培地(pH6.0)1000mlを5l容
コルベンに入れて、120℃で15分間殺菌した。クラ
ドスポリウム(Cladosporium)sp.G−
10(FERMP−14887)の保存スラントより1
白金耳接種し、これを30℃で約120時間静置培養し
た後、120rpmで24時間振盪培養して種培養液と
した。次いで、前記と同様の培地20lを含む30l容
タンクに前記種培養液1000ml(5l容コルベン1
本分)を接種し、回転数300rpm、通気量15l/
min、30℃で約96時間通気攪拌培養した。培養終
了後、培養液20lからブフナーロートを用いて菌体を
集め、25mMHEPES緩衝液(pH8.2)にて菌
体を洗浄したのち、菌体を同緩衝液約1lに懸濁した。
本酵素の精製は、以下に示す操作により行なった。
【0042】ステップ1(粗酵素液の調製):前記菌体
懸濁液に、ザイモリエイス100T(生化学工業社製)
9mgを添加、混合し、35℃で2時間放置したのち、
上清液をブフナーロートによりろ過し、12,000r
pmで遠心を行い集めた。 ステップ2(硫安分画):集めた前記上清液(約100
0ml)に、55%飽和になるように351.1gの硫
安を添加混合して、一晩5℃で放置した後、12,00
0rpmで遠心して上清を集めた。上清には70%飽和
になるように121gの硫安をさらに添加して一晩5℃
で放置した。これを12,000rpmで遠心処理して
沈澱物を集めた。 ステップ3(フェニル−セファロースカラムクロマトグ
ラフィー):硫安沈澱物は、0.5M硫安を含むHEP
ES緩衝液5mlで沈澱を溶解させ、あらかじめ0.5
M硫安を含むHEPES緩衝液(pH8)で平衡化した
フェニル−セファロースCL−4Bのカラム(2.5×
9cm)に本酵素を吸着させ、0.5M硫安を含むHE
PES緩衝液にて洗浄し、次に、0.5M〜0.4M硫
安を含有するHEPES緩衝液の逆直線濃度勾配法によ
り溶出させ、0.45M硫安を含有するHEPES緩衝
液にて溶出された活性画分をHEPES緩衝液に対して
透析した。 ステップ4(DEAE−セファロースカラムクロマトグ
ラフィー):前記透析液(55ml)をあらかじめ0.
1M塩化ナトリウムを含むHEPES緩衝液で平衡化し
たDEAE−セファロースのカラム(2.5×10c
m)に吸着させたのち、0.1M塩化ナトリウムを含有
するHEPES緩衝液にて洗浄し、次に、0.1M〜
0.2M塩化ナトリウムを含有するHEPES緩衝液の
直線濃度勾配法により溶出させ、約0.15M塩化ナト
リウムを含有するHEPES緩衝液にて溶出された活性
画分を限外濃縮した。 ステップ5(セファデックスG−200カラムクロマト
グラフィー):濃縮液(約1ml)をセファデックスG
−200のカラム(1.6×80cm)を用いて0.2
M塩化ナトリウムを含有するHEPES緩衝液にてゲル
ろ過を行い、溶出された活性画分10mlを採取した。
該画分は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
(図5)により均一と判断された本酵素の精製標品であ
り、全タンパク量が0.667mg、全活性が2.84
U、比活性が4.198U/mgのものであった。
【0043】実施例2(生成する過酸化水素を測定して
CMLを定量する方法) (1)CMLの定量用試薬の調製 精製水に以下の成分を以下の濃度又は単位で溶解するこ
とにより、試薬A及び試薬Bを調製した。 試薬A 成 分 濃度又は単位 HEPES−NaOH緩衝液(pH8.0) 100mM パーオキシダーゼ 0.7U/ml 2.4−ジクロロフェノールスルフォネート 0.015% 4−アミノアンチピリン 50mg/l 試薬B 成 分 濃度又は単位 HEPES−NaOH緩衝液(pH8) 50mM 本酵素 9.0U/ml
【0044】(2)CMLの定量方法 Nε−カルボキシメチルリジンを、0.2Mになるよう
に溶解した水溶液を希釈して種々の濃度(0、0.1、
0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.5、
2.0、2.5及び3.0mM)に調製したCML含有
試料各0.1mlに、前記試薬Aを1.0ml添加し、
30℃で5分間保温した。次いで、それぞれの保温液に
前記試薬Bを0.15ml添加し、30℃で30分間反
応させた。そして、日立社製分光光度計(U−200
0)により、反応を開始して30分間後の510nmに
おける吸光度を測定し、該吸光度増加量(△OD)の値
(y)を求めた。この値とCML含有量(x)との関係
から検量線を作成した。その検量線を図6に示す。該検
量線の式は、 y=4.42×10-1x+5.53×10-4(r=0.
989) となる。これから、△ODとNε−カルボキシメチルリ
ジン含有量との間には直線的な極めて高い相関があっ
て、検量線として有効であることがわかり、しかも試料
中のNε−カルボキシメチルリジンを迅速かつ正確に定
量できた。なお、前記Nε−カルボキシメチルリジン
は、まず、無水酢酸を蟻酸中のL−リジン蟻酸塩(L−
リジン塩酸塩(シグマ社製)を陰イオン交換樹脂ダウエ
ックス1−X8(米国ダウケミカル社製)で蟻酸塩に変
換したもの)に徐々に加えて攪拌した後、濃縮結晶化す
るというHofmannらの方法(J.Am.Che
m.Soc.82,3727−,1960参照)に従っ
てNα−フォルミルリジン(記号Nα−は、フォルミル
リジンを構成するリジン残基のα位の炭素に、フォルミ
ル化されたアミノ基のNが結合されていることを示す)
を得て、次に、該Nα−フォルミルリジンとヨード酢酸
(シグマ社製)を混合して室温で40時間放置した後、
陰イオン交換樹脂ダウエックス1−X8を用いてNα−
フォルミル−Nε−カルボキシメチル−L−リジンを分
離した後塩酸分解してNα−フォルミル基を除き、さら
に陽イオン交換樹脂ダウエックス50−X8(米国ダウ
ケミカル社製)でNε−カルボキシメチルリジンを分離
するというAhmedらの方法(JBC 261,48
89−,1986参照)に従って調製した。
【0045】実施例3(消費する酸素を測定してCML
を定量する方法) (1)CMLの定量用試薬の調製 精製水に以下の成分を以下の濃度又は単位で溶解するこ
とにより、試薬C及び試薬Dを調製した。 試薬C 成 分 濃度又は単位 HEPES−NaOH緩衝液(pH8) 100mM 試薬D 成 分 濃度又は単位 HEPES−NaOH緩衝液(pH8) 50mM 本酵素 45U/ml
【0046】(2)CMLの定量方法 実施例2に記載したと同様にして得たNε−カルボキシ
メチルリジンを、0.2Mになるように溶解した水溶液
を希釈して種々の濃度(0、0.4、0.6、1.0、
1.5、2.0、2.5及び3.0mM)に調製したC
ML含有試料各0.3mlに、前記試薬C 2.7ml
をオキシゲンモニター(YSI社製)の酸素測定容器に
添加し、30℃で5分間攪拌を続け溶存酸素量を平衡化
させた。酸素電極を差し込んで密閉した後、試薬D50
μlを加えて反応させた。反応経過はモニターに接続し
た記録計で全て記録し、10分後に酸素濃度の減少量
(y)を読み取った。この値とCML含有量(x)との
関係から検量線を作成した。その検量線を図7に示す。
該検量線の式は、 y=3.29x+8.83×10-2(r=0.999) となる。これから、酸素濃度変化量とNε−カルボキシ
メチルリジン含有量との間には直線的な極めて高い相関
があって、検量線として有効であることがわかり、しか
も試料中のNε−カルボキシメチルリジンを迅速かつ正
確に定量できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本酵素の至適pHを示すグラフ。
【図2】 本酵素の安定pH範囲を示すグラフ。
【図3】 本酵素の作用適温の範囲を示すグラフ。
【図4】 本酵素の熱安定性を示すグラフ。
【図5】 本酵素の電気泳動図。
【図6】 実施例2における検量線を示すグラフ。
【図7】 実施例3における検量線を示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 9/00 - 9/99 C12Q 1/26 REGISTRY(STN) CA(STN) BIOSIS/MEDLINE/WPID S(STN) JSTPlusファイル(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の理化学的性質を有するN−アルキ
    ルグリシンオキシダーゼ。 (1)作用:酸素存在下でN−アルキルグリシン類を酸
    化してアルキルアミン、グリオキシル酸及び過酸化水素
    を生成する、一般式 【化1】 (式中のRは、アルキル基又はその誘導体を意味する)
    に示される反応を触媒する。 (2)基質特異性:ザルコシン、N−エチルグリシン、
    N−カルボキシメチル−6−アミノカプロン酸、Nε−
    カルボキシメチルリジンに特異的に作用する。 (3)至適pH及び安定pH範囲:至適pHはpH8.
    0〜10.0であり、安定pH範囲は、30℃、10分
    間処理で、pH7.5〜9.5である。 (4)分子量:約45,000(ゲルろ過法)。
  2. 【請求項2】 クラドスポリウム属に属し、酸素存在下
    でN−アルキルグリシン類を酸化してアルキルアミン、
    グリオキシル酸及び過酸化水素を生成する、一般式 【化2】 (式中のRは、アルキル基又はその誘導体を意味する)
    に示される反応を触媒する作用を有するN−アルキルグ
    リシンオキシダーゼを生産する能力を有する菌株を培地
    に培養し、その培養物から該N−アルキルグリシンオキ
    シダーゼを採取することを特徴とするN−アルキルグリ
    シンオキシダーゼの製造方法。
  3. 【請求項3】 (ア)請求項1記載のN−アルキルグリ
    シンオキシダーゼ、及び(イ)酸化反応により消費され
    る酸素量又は生成する過酸化水素量を測定するための試
    薬を含むNε−カルボキシメチルリジンの定量用試薬。
  4. 【請求項4】 Nε−カルボキシメチルリジン含有試料
    に、請求項1記載のN−アルキルグリシンオキシダーゼ
    を作用させ、酸化反応により消費される酸素量又は生成
    する過酸化水素量を測定することを特徴とするNε−カ
    ルボキシメチルリジンの定量方法。
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