JPWO2012169099A1 - カビの検出方法、pcr用反応液、及びカビ検出用担体 - Google Patents
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Abstract
Description
このようなカビの検査では、一般的に、環境中から試料を採取して前培養し、次いで菌種ごとに最適な培地で20日程度の培養を行った後に、形態的特徴を観察することで、カビを同定する形態観察法(培養法)が行われている(特許文献1参照)。
ここで、特許文献2〜4では、各種カビの遺伝子におけるITS(Internal Transcribed Spacer)領域を増幅対象領域として、同定が行われている。このようなITS領域にもとづくカビの同定では、カビの種類が増加するにしたがって、偽陽性反応も増加し、検査精度が低下してしまうという問題があった。
しかしながら、β−チューブリン遺伝子のみを増幅対象領域とすると、ITS領域のみを増幅対象領域とする場合と同様に、偽陽性反応が生じる場合があるという問題があった。
また、PCR及び配列解析による方法でも、菌種ごとに個別に培養するため、14日程度の比較的長い検査期間が必要となり、また菌種ごとに個別に解析することが必要であることから、多検体処理が要求される場合に適するものではないという問題があった。
また、複数種類のカビを分離培養することなく、同じ培地で同時に培養すると共に、これらを混合して一括してゲノムDNAを抽出し、DNAチップにより各カビを特異的に検出可能にするカビの検査方法の提供を目的とする。
このように増幅の標的領域として、ITS領域、及び、β−チューブリン遺伝子を併用すれば、これらのいずれか一方のみを標的領域として用いた場合に比較して、偽陽性反応を低減させることができる。このため、広範囲のカビをより精度高く検出することが可能となる。
プライマーセットの濃度比をこのようにすれば、これらのプライマーセットを含有するPCR用反応液を用いてPCR反応を行うことにより、ITS領域とβ−チューブリン遺伝子の両方を共に効率的に増幅することができる。このため、これらを同時に検出することで、カビの検査をより高い精度で行うことが可能となる。なお、β−チューブリン遺伝子を増幅させるためのプライマーセット、及び、ITS領域を増幅させるためのプライマーセットの濃度比を、1:0.5〜1:0.25とすれば、これら両方の増幅効率を最も効率的にすることができるため、より好ましい。
PCR用反応液をこのようにすれば、各種カビにおけるITS領域とβ−チューブリン遺伝子の両方を増幅させることができる。このため、これら両方の増幅産物にもとづきカビの有無を判定することができ、より広範囲のカビを精度高く検出することが可能となる。
PCR用反応液をこのようにすれば、配列番号1〜4に示す塩基配列からなるプライマーを含むPCR用反応液を用いただけでは、効率的に増幅できないクラドスポリウム属菌のDNA断片を増幅することができ、当該菌を適切に検出することが可能となる。
カビ検出用担体をこのようにすれば、ITS領域とβ−チューブリン遺伝子を同時に増幅して得られた増幅産物を、このカビ検出用担体に滴下することで、プローブの塩基配列と相補的に結合するDNAを有するカビを検出することができる。このカビ検出用担体には、カビの種類毎に、ITS領域から選択された塩基配列を有するプローブ、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された塩基配列を有するプローブの両方が固定化されているため、これらの両方にもとづきカビの存否確認を行うことができる。そして、ITS領域とβ−チューブリン遺伝子の両方に検出があった場合にカビが存在すると判定することで、偽陽性にもとづいて存在するとの判定が行われることを低減することができ、より高い精度のカビ検出を行うことが可能となる。
本発明のカビの検査方法をこのような方法にすれば、カビを菌種ごとに個別に分けることなく、混在したまま培養しても、培養された菌種を特異的に検出することができる。すなわち、培養された複数種類のカビが混合された状態で、それぞれのカビのゲノムDNAの抽出をまとめて行っても、DNAチップにより、各カビを検出することができる。
具体的には、例えば検出対象カビの特定領域を増幅するためのプライマーセットを含むPCR反応液を用いて、PCR法によりゲノムDNAの特定領域を増幅する。このプライマーセットによる増幅領域から予め選択されたプローブをDNAチップに固定化しておく。このとき、プライマーセット及びプローブは、検出対象カビの特定領域ごとに予め作成しておく必要がある。そして、PCR法により得られた増幅産物を当該DNAチップに滴下し、プローブに結合した増幅産物を検出することで、混合物に含まれる各種カビをそれぞれ特異的に検出することが可能である。
本発明のカビの検査方法をこのような方法にすれば、通常は個別に培養される、異なる湿度環境を要求するカビを所定の一の培地で同時に培養することができる。そして、これらの混合物からそれぞれのカビを特異的に検出することができる。このため、カビの性質等を考慮することなく、一括して同時に培養して検出を行うことができ、カビの検査の簡易化を図ることが可能となる。
このような水分活性値、糖濃度の固形培地によれば、好乾性カビ、耐乾性カビ、及び好湿性カビのいずれをも好適に培養することができ、あらゆるカビを一括して同時に培養し、その検出を行うことが可能となる。
このような温度範囲であれば、好乾性カビ、耐乾性カビ、及び好湿性カビのいずれをも十分に繁殖させることが可能となる。
本発明のカビの検査方法をこのような方法にすれば、同時に培養された複数種類のカビからまとめてゲノムDNAを抽出することが可能となる。
本発明のカビの検査方法をこのような方法にすれば、環境中におけるカビを採取して培養し、これらを簡易に同時に検出することが可能となる。
また、本発明によれば、複数種類のカビを同じ培地で同時に培養すると共に、これらを混合して一括してゲノムDNAを抽出し、DNAチップにより各カビを特異的に検出することが可能となる。
本実施形態のカビの検出方法は、カビのDNAにおける標的領域を含むDNA断片を増幅させ、増幅産物の有無を確認する工程を含むカビの検出方法であって、標的領域として、ITS領域、及び、β−チューブリン遺伝子を用いることを特徴とする。
PCR法では、標的領域を増幅させるためのプライマーセットを含有するPCR反応液を用いて、カビのDNAにおける特定領域を増幅する。PCR装置としては、一般的なサーマルサイクラーなどを用いることができ、例えば以下のような反応条件で、PCRを行うことができる。
(a)95℃ 10分、(b)95℃(DNA変性工程) 30秒、(c)56℃(アニーリング工程) 30秒、(d)72℃(DNA合成工程) 60秒((b)〜(d)を40サイクル)、(e)72℃ 10分
電気泳動による方法は、例えばMultiNA(R)(株式会社島津製作所製)を用いて、マイクロキャピラリー電気泳動により、PCRの増幅産物を泳動させ、バンドの位置にもとづきその大きさを確認することで、正しい増幅産物が得られているか否かを判定することができる。
また、標識は蛍光に限定されず、その他のものを用いても良い。
ITS領域は、RNAに転写後にスプライシングされる部分である。このため、コーディング領域に比べると保存性が低く、変化に富んでいるが、カビ種間の類似性が高く、偽陽性反応が生じる場合が比較的多い。このため、DNAチップに数多くの種類のカビのプローブを固定化してカビの識別に用いる場合には、そのプローブとしてITS領域から選択されたもののみを使用すると、検出精度の低下を招くおそれがある。
そこで、ITS領域とβ−チューブリン遺伝子の両方を標的領域として用いて、広範囲の種類のカビを対象として検証したところ、これらの領域を組み合わせて用いることにより、偽陽性反応を適切に低減できることが明らかとなった。
本実施形態のカビの検出方法では、このように標的領域として、ITS領域とβ−チューブリン遺伝子の両方を用いることで、広範囲の種類のカビを精度高く検出することを可能としている。
本実施形態のPCR用反応液は、上述したカビの検出方法において、標的領域を含むDNA断片の増幅をPCR法により行う場合に使用される。このPCR用反応液としては、例えば以下の組成からなるものを使用することが好ましい。すなわち、核酸合成基質(dNTPmixture(dCTP、dATP、dTTP、dGTP))、プライマーセット、核酸合成酵素(Nova Taq polymeraseなど)、標識成分(Cy5−dCTPなど)、試料のゲノムDNA、緩衝液、及び残りの容量分として水を含むPCR反応液を好適に使用することが可能である。なお、緩衝液としては、例えばAmpdirect(R)(株式会社島津製作所製)を用いることができる。
したがって、β−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセットとITS領域増幅用プライマーセットの濃度をPCR用反応液において同じにすると、β−チューブリン遺伝子の増幅産物が十分に得られず、検出精度が低くなるという問題があった。
これに対して、PCR用反応液におけるITS領域増幅用プライマーセットの濃度を下げすぎると、今度はITS領域の増幅効率が低くなってしまう。
このため、β−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセットとITS領域増幅用プライマーセットの濃度比として、最適な条件を探す必要があった。
ここで、上述したITS領域増幅用プライマーセット及びβ−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセットを用いた場合、クラドスポリウム属菌のβ−チューブリン遺伝子については、PCRにより増幅産物は得られるものの、β−チューブリン遺伝子に相補的な配列から選択されたプローブと当該増幅産物とによるハイブリダイゼーションは十分に行われず、クラドスポリウム属菌は適切に検出することができなかった。
すなわち、このクラドスポリウム属菌を特異的に増幅させるためのフォワードプライマーは、β−チューブリン遺伝子を増幅するためのものであり、配列番号4に示されるリバースプライマーと対になって、クラドスポリウム属菌のβ−チューブリン遺伝子を増幅させることができる。
また、PCR用反応液におけるクラドスポリウム属菌特異的フォワードプライマーの終濃度を0.25μM〜0.5μMにすれば、クラドスポリウム属菌を一層好適に検出することが可能である。特に、この終濃度を0.25μMにすれば、他の菌種の検出に与える影響をほぼ最小にできるため、さらに好ましい。
本実施形態のカビ検出用担体は、一又は二以上のカビの種類毎に、ITS領域から選択された塩基配列を有するプローブ、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された塩基配列を有するプローブを固定化したことを特徴とし、DNAチップなどを用いて構成することができる。
このように、カビの種類毎にITS領域の増幅産物と結合するプローブと、β−チューブリン遺伝子の増幅産物と結合するプローブの両方を備えたものとし、これら両方のプローブにおいて蛍光が検出されるカビを陽性と判定することで、偽陽性反応にもとづく判定の誤りを適切に排除することが可能となっている。
すなわち、ユーロチウム属菌(Eurotium sp.)を検出するためのプローブとして、ITS領域から選択された配列番号6又は7に示す塩基配列を有するプローブの少なくともいずれか、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号8に示す塩基配列を有するプローブを用いることができる。
このように、本実施形態のカビ検出用担体は、各カビのITS領域とβ−チューブリン遺伝子の増幅産物にそれぞれ結合するプローブを固定化することで、偽陽性反応にもとづく判定ミスを低下させ、広範囲のカビを高い精度で検出することが可能になっている。
まず、本実施形態のカビの検出方法により得られたPCRの増幅産物に、緩衝液(3×SSC クエン酸−生理食塩水)に0.3%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を添加したものを混合して、本実施形態のカビ検出用担体に滴下する。
このカビ検出用担体を45℃で1時間静置した後、ハイブリダイズしなかったPCR産物を上記緩衝液を用いてカビ検出用担体から洗い流す。そして、これを標識検出装置にかけて蛍光強度を測定することで、カビの検出を行うことが可能である。
(1)カビの採取
まず、エアーサンプラーを用いて、食品製造現場や臨床現場、文化財の保護環境等における空気を採取する。次いで、採取した空気をエアーサンプラー用にストリップ形状にした専用培地などに吹き付けて培養する。
また、培養条件としては、23℃〜27℃の温度の暗所に、2日〜7日程度静置させることが好ましい。
なお、一般的にM40Y培地、MY10G培地、及びMY30G培地は、好乾性カビ用のものと考えられており、好湿性カビ培養には適さないと考えられてきた。
カビの細胞を破壊した試料から、ゲノムDNAを抽出する方法としては、CTAB法(Cetyl trimethyl ammonium bromide)やDNA抽出装置を用いる方法など、一般的な手法を用いることができる。
次に、各種カビのrDNAのITS1領域を増幅することができるプライマーセットをPCR反応液に加えて、PCR法により、上記試料中のカビのゲノムDNAにおける特定領域を増幅する。具体的には、フォワードプライマー及びリバースプライマーとして、それぞれ配列番号42,43に示される塩基配列のものを用いることができる。また、PCR装置としては、一般的なサーマルサイクラーなどを用いることができる。
(a)95℃ 10分、(b)95℃(DNA変性工程) 30秒、(c)56℃(アニーリング工程) 30秒、(d)72℃(DNA合成工程) 60秒((b)〜(d)を40サイクル)、(e)72℃ 10分
本実施形態のDNAチップは、検出対象のカビのDNAから選択されたプローブを固定化したものであれば良く、その他の点では特に限定されない。例えばスポット型DNAチップ、合成型DNAチップなどを用いることが可能である。
具体的には、本実施形態のカビの検査方法のPCR反応液に含まれるプライマーセットにより増幅される増幅領域と結合するプローブを予め合成し、DNAチップの基板上に固定化しておく。例えば、アスペルギルス ヴィトリコラ(Aspergillus vitricola)検出用のプローブとしては、配列番号44に示される塩基配列からなるものを用いることができる。また、アスペルギルス ペニシリオイデス(Aspergillus penicillioides)検出用のプローブとしては、配列番号45に示される塩基配列からなるものを用いることができる。さらに、ユーロチウム属菌(Eurotium sp.)検出用のプローブとしては、配列番号46に示される塩基配列からなるものを用いることができる。
まず、PCR増幅産物に所定の緩衝液を混合して、DNAチップに滴下する。
次に、DNAチップを45℃で1時間静置し、その後、所定の緩衝液によりハイブリダイズしなかったPCR産物をDNAチップから洗い流す。
そして、DNAチップを標識検出装置にかけて標識の検出を行い、検出対象カビが存在するか否かを判定する。なお、標識検出装置としては、例えば、蛍光スキャニング装置など一般的なものを用いることができる。なお、標識及びその検出方法は蛍光に限定されず、その他の方法を用いても良い。
このため、採取されたカビを分離培養する必要がなく、複数種類のカビを迅速に一括して簡易に検出することが可能である。
本発明のカビの検出方法において、マルチプレックスPCRを用いたDNAチップ解析により各種カビを検出するにあたり、ITS領域とβ−チューブリン遺伝子の両方を同時に増幅することを可能にする、PCR用反応液における各プライマーセットの濃度範囲を探るため、試験1を行った。
検出対象カビは、施設環境から採取した野生カビを使用した。すなわち、エアーサンプラーを用いて施設環境内の空気を採取し、これをサンプルA〜Dの各培地に吹き付けて培養した。培養は、25℃の暗所で、7日間静置させて行った。
次に、サンプルごとに、培地に生じた様々な種類のカビのコロニーの一部を個別に採取し、それぞれ25℃の暗所で7〜10日間分離培養を行い、各コロニーをDNA配列解析に供して、その菌種を確認した。その結果を図4に示す。なお、DNA配列解析は、タカラバイオ株式会社に委託して、DNAシーケンサーにより行った。以下においても同様である。
次いで、サンプルごとに、DNA抽出装置によりカビのゲノムDNAを抽出して、PCR法により、各カビのITS領域とβ−チューブリン遺伝子とを同時に増幅した。
1.Ampdirect(G/Crich) 4.0μl
2.Ampdirect(addition-4) 4.0μl
3.dNTPmix 1.0μl
4.Cy-5dCTP 0.2μl
5.ITS1-Fw primer(10μM) 1.0μl
6.ITS1-Rv primer(10μM) 1.0μl
7.BtF primer(10μM) 1.0μl
8.BtR primer(10μM) 1.0μl
9.Template DNA(サンプルA〜D毎にそれぞれ) 1.0μl
10.NovaTaq polymerase 0.2μl
11.水(全体が20.0μlになるまで加水)
primer(9μM) 0.9μl
primer(8μM) 0.8μl
primer(5μM) 0.5μl
primer(2.5μM) 0.25μl
primer(1.25μM) 0.125μl
primer(1μM) 0.1μl
primer(0.625μM) 0.0625μl
(i)0.5μM:0.5μM
(ii)0.5μM:0.45μM
(iii)0.5μM:0.40μM
(iv)0.5μM:0.25μM
(v)0.5μM:0.125μM
(vi)0.5μM:0.0625μM
(vii)0.5μM:0.050μM
(viii)0.5μM:0.03125μM
(a)95℃ 10分
(b)95℃ 30秒
(c)56℃ 30秒
(d)72℃ 60秒((b)〜(d)を40サイクル)
(e)72℃ 10分
<ITS領域から選択されたプローブ>
(1)ユーロチウム属菌 配列番号6,7
(2)アスペルギルス ペニシリオイデス種菌 配列番号9〜11
(3)アスペルギルス ヴィトリコラ種菌 配列番号13
(4)アスペルギルス リストリクティ節菌 配列番号16〜20
(5)アスペルギルス ニデュランテス節菌 配列番号22
(7)アスペルギルス フラヴィ節菌 配列番号26
(8)ペニシリウム属菌 配列番号28
(11)クラドスポリウム属菌 配列番号37
(12)カビ共通 配列番号40
(1)ユーロチウム属菌 配列番号8
(2)アスペルギルス ペニシリオイデス種菌 配列番号12
(3)アスペルギルス ヴィトリコラ種菌 配列番号15
(4)アスペルギルス リストリクティ節菌 配列番号21
(5)アスペルギルス ニデュランテス節菌 配列番号23
(7)アスペルギルス フラヴィ節菌 配列番号27
(8)ペニシリウム属菌 配列番号30
(12)カビ共通 配列番号41
このDNAチップを45℃で1時間静置し、上記緩衝液を用いてハイブリダイズしなかったPCR産物をDNAチップから洗い流した。
次いで、DNAチップを標識検出装置(GenePix4100A Molecular Devices社製)にかけて、各プローブにおける蛍光強度を測定し、プライマーセットの濃度比毎にITS領域用プローブにおける蛍光強度、及びβ−チューブリン遺伝子用プローブにおける蛍光強度の平均値を算出した。その結果を図5〜図8に示す。図5はサンプルA、図6はサンプルB、図7はサンプルC、図8はサンプルDを用いた場合の、プライマーセットの各種濃度比についての蛍光強度を示している。
DNAチップ解析における蛍光強度と、PCRによる増幅産物量との相関関係を確認するために試験2を行った。
具体的には、試験1のサンプルB,Cのそれぞれについて、β−チューブリン遺伝子用プライマーセットの終濃度とITS領域用プライマーセットの終濃度の比が、以下のような5種類のPCR用反応液を用いて、試験1と同様にPCRを行った。
(レーン1)0.5μM:0.5μM
(レーン2)0.5μM:0.25μM
(レーン3)0.5μM:0.125μM
(レーン4)0.5μM:0.0625μM
(レーン5)0.5μM:0.03125μM
同図に示されるように、サンプルBにおいて、β−チューブリン遺伝子については、レーン1のバンドが薄く、レーン2バンドがやや濃く、レーン3〜5のバンドが濃く表示されている。また、ITS領域については、レーン1,2のバンドが濃く、レーン3バンドがやや濃く、レーン4,5のバンドが薄く表示されている。この結果は、図6に示されるサンプルBのDNAチップ解析における蛍光強度と対応している。
以上のことから、DNAチップ解析における蛍光強度と、PCRによる増幅産物量との間には、相関関係があることが確認された。
ITS領域とβ−チューブリン遺伝子の両方を同時に検出可能なプライマーセット濃度を確認するため、試験1と別個のサンプルを用いて、同様の試験を再度行った。
検出対象カビは、試験1と同様に、施設環境から採取した野生カビをサンプルE〜Hの各培地に吹き付けて培養したものを使用した。このサンプルE〜Hの培地に生じた各種カビのコロニーを分離培養し、各コロニーをDNA配列解析に供して、その菌種を確認した。その結果を図4に示す。
このとき、プライマーには試験1と同様に、図2に示す配列番号1及び配列番号2の塩基配列からなるITS領域増幅用プライマーセットと、配列番号3及び配列番号4の塩基配列からなるβ−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセットを用いた。
1.Ampdirect(G/Crich) 4.0μl
2.Ampdirect(addition-4) 4.0μl
3.dNTPmix 1.0μl
4.Cy-5dCTP 0.2μl
5.ITS1-Fw primer(5μM) 0.5μl
6.ITS1-Rv primer(5μM) 0.5μl
7.BtF primer(10μM) 1.0μl
8.BtR primer(10μM) 1.0μl
9.Template DNA(サンプルE〜H毎にそれぞれ) 1.0μl
10.NovaTaq polymerase 0.2μl
11.水(全体が20.0μlになるまで加水)
ITS1-Fw primer(2.5μM) 2.5μM
ITS1-Rv primer(2.5μM) 2.5μM
このように、β−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセットとITS領域増幅用プライマーセットの終濃度比として、サンプル毎に、0.5μM:0.25μMと、0.5μM:0.125μMの2通りのPCR用反応液を作成し、それぞれについて試験を行った。PCRの反応条件は、試験1と同様である。
(1)ユーロチウム属菌 配列番号6
(2)アスペルギルス ペニシリオイデス種菌 配列番号9
(8)ペニシリウム属菌 配列番号29
(11)クラドスポリウム属菌 配列番号37
(12)カビ共通 配列番号40
(1)ユーロチウム属菌 配列番号8
(2)アスペルギルス ペニシリオイデス種菌 配列番号12
(4)アスペルギルス リストリクティ節菌 配列番号21
(12)カビ共通 配列番号41
したがって、これら両方の検出結果にもとづいてカビの存否を判定するためには、β−チューブリン遺伝子用プライマーセット終濃度とITS領域用プライマーセット終濃度の比を0.5μM:0.125μMとすることが最適であると考えられる。
施設環境から採取したサンプルA〜Hに含まれる野生カビではない各種カビを対象とした場合にも、本発明のITS領域及びβ−チューブリン遺伝子を標的領域とするカビの検出方法により検出できるかを検証した。
検出対象カビとしては、以下の4種類の菌株1〜4を混合して使用した。
2.フザリウム ソラニ(Fusarium solani)菌株No.NBRC5232
3.スタキボトリス チャータラム(Stachybotrys chartarum)菌株No.NBRC5369
4.クラドスポリウム スフェロスパーマム(Cladsoporium sphaerospermum)菌株No.JCM11787
JCM:独立行政法人理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室(Japan Collection of Microorganisms)
NBRC:独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門(NITE Biological Resource Center)
このとき、試験3と同様に、β−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセットとITS領域増幅用プライマーセットの終濃度比として、0.5μM:0.25μMと、0.5μM:0.125μMの2通りのPCR用反応液を作成した。また、各PCR用反応液において、試料のDNAは、菌株1〜4をそれぞれ1.0μlずつ合計4.0μl含有させた。そして、それぞれのPCR用反応液により各カビのITS領域とβ−チューブリン遺伝子とを増幅した。
そして、PCRによる増幅産物をプローブにハイブリダイズさせ、プローブにおける蛍光強度を測定し、プライマーセットの濃度比毎に、ITS領域用プローブにおける蛍光強度、及びβ−チューブリン遺伝子用プローブにおける蛍光強度の平均値を算出した。その他の点については、試験1と同様にして行った。その結果を図15に示す。また、図16に、プライマーセットの濃度比毎及びプローブ毎の蛍光強度を示す。
(6)アスペルギルス フミガティ節菌 配列番号24
(9)スタキボトリス チャータラム種菌 配列番号33
(10)フザリウム ソラニ種菌 配列番号35
(11)クラドスポリウム属菌 配列番号37
(12)カビ共通 配列番号40
(6)アスペルギルス フミガティ節菌 配列番号25
(9)スタキボトリス チャータラム種菌 配列番号34
(10)フザリウム ソラニ種菌 配列番号36
(12)カビ共通 配列番号41
したがって、上記4種類の菌株1〜4についても、本発明のITS領域及びβ−チューブリン遺伝子を標的領域とするカビの検出方法により検出できることが確認された。
試験4では、上記の通り、β−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセット(配列番号3,4)を用いた場合に、クラドスポリウム スフェロスパーマムについては、β−チューブリン遺伝子用プローブにおいて蛍光が検出されなかった。
また、試験4において、DNAチップにはβ−チューブリン遺伝子に相補的に結合し得るプローブが固定化されており、当該プローブにおいて蛍光が検出されなかった理由は明らかではない。
また、PCR用反応液としては、β−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセットとITS領域増幅用プライマーセットの終濃度比が、0.5μM:0.25μMと0.5μM:0.125μMのものを作成し、かつそれぞれについてクラドスポリウム属菌専用のβ−チューブリン遺伝子増幅用フォワードプライマーが終濃度として0μM、0.5μM、0.25μM、0.125μMとなるように添加した8通りのPCR用反応液を作成した。
1.Ampdirect(G/Crich) 4.0μl
2.Ampdirect(addition-4) 4.0μl
3.dNTPmix 1.0μl
4.Cy-5dCTP 0.2μl
5.ITS1-Fw primer(5μM,2.5μM) 0.5μl,0.25μl
6.ITS1-Rv primer(5μM,2.5μM) 0.5μl,0.25μl
7.BtF primer(10μM) 1.0μl
8.BtR primer(10μM) 1.0μl
9.ClaS-beta2(0μM,10μM,5μM,2.5μM) 0μl,1.0μl,0.5μl,0.25μl
10.Template DNA(菌株1〜4各々1.0μl) 4.0μl
11.NovaTaq polymerase 0.2μl
12.水(全体が20.0μlになるまで加水)
試験5で用いたクラドスポリウム属菌専用フォワードプライマー(配列番号5)が、クラドスポリウム スフェロスパーマム特異的プローブ(配列番号39)以外のプローブにおける蛍光強度に与える影響について検証した。
検出対象カビとしては、試験4と同じ4種類の菌株1〜4を混合して使用した。
1.Ampdirect(G/Crich) 4.0μl
2.Ampdirect(addition-4) 4.0μl
3.dNTPmix 1.0μl
4.Cy-5dCTP 0.2μl
5.ITS1-Fw primer(2.5μM) 0.25μl
6.ITS1-Rv primer(2.5μM) 0.25μl
7.BtF primer(10μM) 1.0μl
8.BtR primer(10μM) 1.0μl
9.ClaS-beta2(0μM,10μM,5μM) 0μl,1.0μl,0.5μl
10.Template DNA(菌株1〜4各々1.0μl) 4.0μl
11.NovaTaq polymerase 0.2μl
12.水(全体が20.0μlになるまで加水)
そして、各プローブにおける蛍光強度を測定し、クラドスポリウム属菌専用のβ−チューブリン遺伝子増幅用フォワードプライマーの濃度毎に、ITS領域用プローブにおける蛍光強度、及びβ−チューブリン遺伝子用プローブにおける蛍光強度の平均値を算出した。その結果を図18に示す。
PDA(Potato Dextrose Agar)培地とMY(Malt+Yeast)培地に糖などを添加して種々の水分活性値を示す培地組成からなる各種培地を作製し、好乾性カビ、耐乾性カビ、及び好湿性カビを培養して、それぞれの培養結果を評価した。
(1)PDA培地
PDA(DIFCO社製)に、グルコース(和光純薬工業株式会社)、及び/又は、シュークロース(和光純薬工業株式会社)を各種割合で添加し、1Lのイオン交換水に懸濁してオートクレーブで融解後、シャーレに分注して作製した。なお、シャーレ分注前に、細菌増殖を防止する目的で、クロラムフェニコール(和光純薬工業株式会社)を最終濃度50ppmとなるように加えた。MY培地についても同様である。
以下のMYに、シュークロース(和光純薬工業株式会社)、グルコース、寒天(和光純薬工業株式会社)、及びグリセリンの少なくともいずれかを各種割合で添加し、100mlのイオン交換水に懸濁し、オートクレーブで融解後、シャーレに分注して作製した。
MY:麦芽(Malt Extract,DIFCO社製)+酵母(Yeast Extract,DIFCO社製)
実際に培養に使用した培地の所定量について、ロトロニック水分活性測定装置(GSIクレオス社製)を使用して、その水分活性値を専用密閉容器内で測定した。
上記作製方法に従って作成した各種培地(図19の実施例1−10,参考例1−6)を用いて、好乾性カビ(Eurotium herbariorum)、耐乾性カビ(A.niger)、好湿性カビ(Fusarium sp.)を25℃で暗所にて72時間培養し、得られたコロニーの直径を測定した。培養後のコロニーの直径が10mm以上を○、10mm未満を×とした。その結果を図19に示す。
同図に示されている通り、実施例1−10の各種培地を用いた場合は、好乾性カビ、耐乾性カビ及び好湿性カビのいずれもが十分に繁殖していることがわかる。一方、参考例1−6の各種培地を用いた場合は、十分に繁殖していない菌種が存在していることがわかる。このため、複数の菌種を同時に培養するためには、水分活性値が1.0未満、0.90以上で、且つ、糖濃度5%〜50%の範囲とすることが好適であることがわかる。
図19に示す参考例1,2,4−6、及び実施例7の6種類の培地を用いて、各種のカビを25℃で暗所にて168時間培養し、得られたコロニーの直径を測定した。
2.アスペルギルス リストリクタス(A.restrictus,I-2-1)
3.ユーロチウム ヘルバリオルム(Eurotium herbariorum,イ2-1)
4.ワレミア セビ(Wallemia sebi,KSS-1127)
5.アスペルギルス フラバス(A.flavus,B-3-3)
6.アスペルギルス フミガタス(A.fumigatus,KSS-1126)
7.アスペルギルス ニガー(A.niger,A-1-1)
8.アスペルギルス バーシカラー(A.versicolor,イ3-1)
9.ペニシリウム グラブラム(Penicillium glabrum,B-4-3)
10.ペニシリウム ルグロサム(P.rugulosum,E-2-3)
11.クラドスポリウム サファエロスペルマ(Cladosporium.sphaerospermum,I-4-2)
12.クラドスポリウム クラドスポリオイデス(C.cladosporioides,A-2-1)
13.フザリウム属菌(Fusarium sp.,B5−3−C)
14.スタキボトリス属菌(Stachybotrys sp.,KSS-1125)
このように、実施例7の培地を用いれば、最適湿度についての性質が異なる複数のカビを、同じ培地で同時に培養可能であることが明らかとなった。
実施例7で使用したM40Y培地を用いて、各種温度で培養を行い、得られたコロニーの直径を測定した。供試菌種は、試験1と同様に好乾性カビ、耐乾性カビ、及び好湿性カビを含む14種類を用い、暗所にて168時間培養を行った。その結果を図21に示す。また、3,8,13の菌種について、図22にコロニーの写真を示す。
実施例7で使用したM40Y培地を用いて各種カビを培養し、得られたコロニーを混合して一括してゲノムDNAを抽出し、ITS1領域をPCR法により増幅して検出対象カビが増幅産物に含まれているか否かをDNAチップにより検査した。また、DNAチップによる検査結果を検証するために、DNA配列解析を行った。具体的には、以下のようにして行った。
さらに、検体ごとに、培地に生じた様々な種類のカビのコロニーを一括して採取して、φ0.5mmジルコニアビーズを入れたバイアル瓶に入れ、液体窒素に浸して試料を凍結した後、振盪装置を用いて、カビの細胞を破砕した。
具体的には、PCR反応液として、Ampdirect(R)(株式会社島津製作所製)を使用し、次の組成のものを20μl作成した。
1.Ampdirect addition(G/Crich) 4.0μl
2.Ampdirect(addition−4) 4.0μl
3.dNTPmixture 1.0μl
4.Cy5−dCTP 0.2μl
5.ITS1領域増幅用フォワードプライマー(10μM,配列番号42,シグマアルドリッチ社により合成) 1.0μl
6.ITS1領域増幅用リバースプライマー(10μM,配列番号43,シグマアルドリッチ社により合成) 1.0μl
7.試料のゲノムDNA 1.0μl
8.NovaTaq polymerase 0.2μl
9.水(全体が20.0μlになるまで加水)
1.95℃ 10分
2.95℃ 30秒
3.56℃ 30秒
4.72℃ 60秒(2〜4を40サイクル)
5.72℃ 10分
このDNAチップを45℃で1時間静置し、上記緩衝液を用いてハイブリダイズしなかったPCR産物をマイクロアレイから洗い流した。
次いで、DNAチップを標識検出装置(ジーンシリコン専用スキャナー BIOSHOT東洋鋼鈑株式会社製)にかけて、各プローブの蛍光強度を測定した。その結果を図23−25に示す。
このとき、プライマーセットは、配列番号42及び43に示される塩基配列からなるものを用いるとともに、核酸合成酵素には、TAKARA ExTaq ポリメラーゼを使用した。また、核酸増幅装置には、TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice(R) Gradient(タカラバイオ株式会社製)を使用し、その他は上記と同様にしてPCR反応を行った。
このPCR反応により得られた増幅産物と、配列番号47及び48に示される塩基配列からなるプライマーセットをシーケンス用プライマーとして、タカラバイオ株式会社に委託し、DNAシーケンサーによりITS1領域の配列解析を行った。その結果、図23−25に示すように、各検体から最大で4菌種が確認された。
なお、ITS配列解析により耐乾性カビ(Penicillium sp.)、及び好湿性カビ(Cladosporium sp.)が含まれていることが判明した検体No.3につき、Penicillium sp検出用プローブ及びCladosporium sp検出用プローブを固定化したDNAチップを用いて、上記と同様にして、標識検出装置により蛍光強度を測定したところ、これらの菌種(Penicillium sp.,Cladosporium sp.)の検出が確認された。
したがって、本発明のカビの検査方法により、複数種類のカビを同じ培地で同時に培養した場合に、各カビを特異的に検出できることが分かった。
例えば、上記の試験のPCR用反応液におけるITS領域増幅用プライマーセット及びβ−チューブリン遺伝子増幅用プライマーセット以外の成分については、適宜変更することができる。また、これらの増幅産物を用いて対象カビの検出を行う方法であれば、上記のようなDNAチップを用いて蛍光検出を行うのではなく、電気泳動による検出や、電流検出方式など他の検出方式のDNAチップにより増幅産物を検出することなどが可能である。
また、上記実施例では、培地としてM40Yなどを用いているがこれらに限定されるものではなく、水分活性値が1.0未満、0.90以上で、且つ、糖濃度5%〜50%の固形培地のその他の固形培地を用いるなど適宜変更することが可能である。
Claims (10)
- カビのDNAにおける標的領域を含むDNA断片を増幅させ、増幅産物の有無を確認する工程を含むカビの検出方法であって、
前記標的領域として、ITS領域、及び、β−チューブリン遺伝子を用いる
ことを特徴とするカビの検出方法。 - 前記標的領域の増幅を行うためのPCR用反応液において、β−チューブリン遺伝子を増幅させるためのプライマーセットとITS領域を増幅させるためのプライマーセットの濃度比が、1:0.9〜1:0.1である
ことを特徴とする請求項1記載のカビの検出方法。 - 前記標的領域の増幅を行うためのPCR用反応液において、ITS領域を増幅させるためのプライマーセットとして、配列番号1に示す塩基配列からなるフォワードプライマー及び配列番号2に示す塩基配列からなるリバースプライマーを備えたプライマーセットを用い、かつ、β−チューブリン遺伝子を増幅させるためのプライマーセットとして、配列番号3に示す塩基配列からなるフォワードプライマー及び配列番号4に示す塩基配列からなるリバースプライマーを備えたプライマーセットを用いる
ことを特徴とする請求項1又は2記載のカビの検出方法。 - 前記標的領域の増幅を行うための前記PCR用反応液に、クラドスポリウム属菌を特異的に増幅させるためのフォワードプライマーとして、配列番号5に示す塩基配列からなるプライマーを用いる
ことを特徴とする請求項3記載のカビの検出方法。 - 前記カビが、ユーロチウム属菌(Eurotium sp.)、アスペルギルス ペニシリオイデス種菌(Aspergillus penicillioides)、アスペルギルス ヴィトリコラ種菌(Aspergillus vitricola)、アスペルギルス リストリクティ節菌(Aspergillus Section Restricti)、アスペルギルス ニデュランテス節菌(Aspergillus Section Nidulantes)、アスペルギルス フミガティ節菌(Aspergillus Section Fumigati)、アスペルギルス フラヴィ節菌(Aspergillus Section Flavi)、ペニシリウム属菌(Penicillium sp.)、スタチボトリス チャルタラム種菌(Stachybotrys chartarum)、フザリウム ソラニ種菌(Fusarium solani)、クラドスポリウム属菌(Cladosporium sp.)の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカビの検出方法。 - カビのDNAにおける標的領域の増幅を行うために用いられるPCR用反応液であって、ITS領域を増幅させるためのプライマーセットとして、配列番号1に示す塩基配列からなるフォワードプライマー及び配列番号2に示す塩基配列からなるリバースプライマーを備えたプライマーセットと、β−チューブリン遺伝子を増幅させるためのプライマーセットとして、配列番号3に示す塩基配列からなるフォワードプライマー及び配列番号4に示す塩基配列からなるリバースプライマーを備えたプライマーセットと、を含む
ことを特徴とするPCR用反応液。 - クラドスポリウム属菌を特異的に増幅させるためのフォワードプライマーとして、配列番号5に示す塩基配列からなるプライマーをさらに含む
ことを特徴とする請求項6記載のPCR用反応液。 - 一又は二以上のカビの種類毎に、ITS領域から選択された塩基配列を有するプローブ、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された塩基配列を有するプローブを固定化した
ことを特徴とするカビ検出用担体。 - ユーロチウム属菌(Eurotium sp.)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号6又は7に示す塩基配列を有するプローブの少なくともいずれか、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号8に示す塩基配列を有するプローブからなる第一のプローブ群、
アスペルギルス ペニシリオイデス種菌(Aspergillus penicillioides)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号9〜11に示す塩基配列を有するプローブの少なくともいずれか、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号12に示す塩基配列を有するプローブからなる第二のプローブ群、
アスペルギルス ヴィトリコラ種菌(Aspergillus vitricola)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号13又は14に示す塩基配列を有するプローブの少なくともいずれか、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号15に示す塩基配列を有するプローブからなる第三のプローブ群、
アスペルギルス リストリクティ節菌(Aspergillus Section Restricti)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号16〜20に示す塩基配列を有するプローブの少なくともいずれか、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号21に示す塩基配列を有するプローブからなる第四のプローブ群、
アスペルギルス ニデュランテス節菌(Aspergillus Section Nidulantes)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号22に示す塩基配列を有するプローブ、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号23に示す塩基配列を有するプローブからなる第五のプローブ群、
アスペルギルス フミガティ節菌(Aspergillus Section Fumigati)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号24に示す塩基配列を有するプローブ、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号25に示す塩基配列を有するプローブからなる第六のプローブ群、
アスペルギルス フラヴィ節菌(Aspergillus Section Flavi)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号26に示す塩基配列を有するプローブ、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号27に示す塩基配列を有するプローブからなる第七のプローブ群、
ペニシリウム属菌(Penicillium sp.)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号28又は29に示す塩基配列を有するプローブの少なくともいずれか、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号30〜32に示す塩基配列を有するプローブの少なくともいずれかからなる第八のプローブ群、
スタチボトリス チャルタラム種菌(Stachybotrys chartarum)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号33に示す塩基配列を有するプローブ、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号34に示す塩基配列を有するプローブからなる第九のプローブ群、
フザリウム ソラニ種菌(Fusarium solani)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号35に示す塩基配列を有するプローブ、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号36に示す塩基配列を有するプローブからなる第十のプローブ群、
クラドスポリウム属菌(Cladosporium sp.)を検出するための、ITS領域から選択された配列番号37に示す塩基配列を有するプローブ、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号38又は39に示す塩基配列を有するプローブの少なくともいずれかからなる第十一のプローブ群、及び、
カビ共通の、ITS領域から選択された配列番号40に示す塩基配列を有するプローブ、及び、β−チューブリン遺伝子から選択された配列番号41に示す塩基配列を有するプローブからなる第十二のプローブ群から選択された一又は二群以上のプローブを固定化した
ことを特徴とする請求項8記載のカビ検出用担体。 - 前記第一から第十二のプローブ群における少なくともいずれかのプローブが、以下の(1)〜(3)のいずれかであることを特徴とする請求項9記載のカビ検出用担体。
(1)配列番号に示す塩基配列において、1又は数個の塩基が欠損、置換又は付加されたプローブ。
(2)配列番号に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるプローブ。
(3)(1)又は(2)のプローブに対して相補的な塩基配列を有するプローブ。
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