JPWO2012108276A1 - 熱電変換素子、熱電変換素子の製造方法および熱電変換方法 - Google Patents

熱電変換素子、熱電変換素子の製造方法および熱電変換方法 Download PDF

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Abstract

本発明の課題は、低コストで生産性が高く、変換効率に優れた熱電変換素子を提供することにある。本発明の熱電変換素子は、基板4と、基板4に設けられ、一定の磁化方向Aを有し、多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3を有しており、磁性体膜2に温度勾配を印加すると、磁性体膜2から電極3に向けて流れるスピン流が生成され、電極3における逆スピンホール効果により、磁性体膜2の磁化方向Aと垂直方向に電流Iが生じるように構成した。

Description

本発明は、磁性体を用いた熱電変換素子、熱電変換素子の製造方法及び熱電変換方法に関する。
近年、持続可能な社会に向けた環境・エネルギー問題への取り組みが活発化する中で、熱電変換素子への期待が高まっている。
これは、熱は体温、太陽光、エンジン、工業排熱など様々な媒体から得ることができる最も一般的なエネルギー源であるためである。
そのため、低炭素社会におけるエネルギー利用の高効率化や、ユビキタス端末・センサ等への給電といった用途において、熱電変換素子は今後ますます重要となることが予想される。
熱電変換素子の構造としては、従来はBiTeなどの熱電半導体の焼結体を加工・接合して熱電対モジュール構造を組み立てるバルク型熱電変換素子が一般的だったが、最近ではスパッタなどで基板上に熱電半導体薄膜を成膜してモジュールを作製する薄膜型熱電素子の開発も進み、注目されている。
このような薄膜型熱電変換素子の利点としては、(1)小型・軽量であること、(2)スパッタや塗布・印刷などで大面積一括成膜が可能で、生産性が高いこと、(3)安価な基板を用いることで低コスト化が可能であること、(4)柔軟性の高い基板を用いることにより、フレキシブルな熱電変換素子が実現可能であること、などが挙げられる。
ここで、薄膜型熱電変換素子は、これまで、塗布や印刷により製造されていた。例えば、特許文献1では、粉末化したBiTeをバインダーと混合してペースト化したものを、スクリーン印刷法などにより基板上に塗布して熱電素子パターンを形成している。また、特許文献2では、熱電半導体材料、電極材料を含むインクをインクジェット法によりパターン印刷して熱電素子を形成している。さらに、特許文献3では、熱電材料として有機半導体を用い、印刷プロセスにより熱電素子を形成している。
しかしながら、上記した薄膜型熱電素子は、薄膜であるがゆえに、薄膜表面/裏面間での温度差生成・保持が困難であるという問題があった。即ち、多くの発電用途では、熱電材料を有する薄膜面に垂直な方向に温度差(温度勾配)を印加して熱電変換を行うが、熱電半導体薄膜の膜厚が薄くなればなるほど、熱遮断(熱抵抗)が不十分になることから、熱電半導体薄膜の表面と裏面の間の温度差を保つことが難しくなったり、温度差のほとんどが熱電半導体薄膜の表面と裏面ではなく基板の表面と裏面の間に生じたりするため、効率的な発電ができなくなる。
この熱遮断特性を向上するためには、(1)熱電半導体膜の膜厚を厚くする(例えば数10μm以上にする)か、(2)熱電半導体の熱伝導率を小さくするか、のいずれかの手法が考えられる。
しかしながら、(1)の場合、膜厚を厚くすればするほど、熱電対構造を塗布・印刷プロセス等でパターニング・作製するのが困難となり、生産性が悪化するため、高変換効率化と低コスト生産性の間でトレードオフが生じる。
また、(2)の場合は、熱伝導率の小さい材料ほど、電気伝導率も小さい傾向があるため、従来の熱電発電には電気伝導率の高い熱電材料が必要とされることを考えると、電気伝導率と熱伝導率の間には、やはりトレードオフが生じるため、熱伝導率の低減には限界がある。
一方、近年では、磁性材料に温度勾配を印加すると、電子スピンの流れが生じるスピンゼーベック効果が発見されている。
特許文献4、非特許文献1、2にはスピンゼーベック効果に基づく熱電変換素子が開示されており、スピンゼーベック効果によって生じた角運動量の流れ(スピン流)を、逆スピンホール効果によって電流(起電力)として取り出す構造が示されている。
例えば特許文献4に記載されている熱電変換素子は、スパッタ法により成膜した強磁性金属膜と金属電極とで構成されている。この構成によれば、強磁性金属膜面に平行な方向の温度勾配を与えると、スピンゼーベック効果によって、温度勾配に沿った方向にスピン流が誘起される。この誘起されたスピン流は、強磁性金属に接する金属電極における逆スピンホール効果によって、電流として外部に取り出すことができる。これにより、熱から電力を取り出す温度差発電が可能となる。
また、非特許文献1、2に記載されている熱電変換素子では、磁性絶縁体と金属電極により熱電変換素子が形成されている。
具体的には、非特許文献1では、特許文献4と同じく、磁性絶縁体膜面に平行な温度勾配(面内温度勾配)配置による熱電変換が報告されている。
また、非特許文献2では、厚さ1mmの磁性絶縁体板面に垂直な温度勾配(面直温度勾配)配置によって熱電変換が実証されている。
このスピンゼーベック効果を利用すれば、熱電対モジュール構造を用いた従来型の熱電変換素子と異なり、複雑な熱電対構造が不要なため、上記の構造パターニングに関する課題は解決され、低コストで大面積化が容易な薄膜熱電変換素子が得られる可能性がある。
さらにスピンゼーベック効果を利用した熱電変換素子では、電気伝導部分(電極)と熱伝導部分(磁性体)とを独立に設計することができることから、電気伝導率が大きく(オーミック損失が小さく)熱伝導率が小さい(表面と裏面の間の温度差を保つことが可能な)構造を達成することが原理的に可能となる。
例えば、非特許文献1、2のように磁性体として絶縁材料を用いれば、電子による熱伝導を完全に抑制できることから、薄膜材料を用いても十分な熱遮断を達成可能な高性能熱電変換素子の実現が期待される。
なお、特許文献5には、磁性体誘電層上に2つの金属電極を設け、一方の電極中で信号電流により誘起されたスピン流と磁性体誘電層中のスピンを交換してスピン波スピン流を発生させて磁性体誘電層中を伝播させ、他方の電極と磁性体誘電層界面でスピン波スピン流―純スピン波の交換を行うことにより、他方の電極に信号電力を生じさせて、2つの電極間で信号電流の輸送を行う構造が開示されている(特許文献5)。
特許第4457705号明細書 特開2010−40998号公報 特開2010−199276号公報 特開2009−130070号公報 特開2009−295824号公報
Uchida et al.,"Spin Seebeck insulator",Nature Materials,2010,vol.9,p.894. Uchida et al.,"Observation of longitudinal spin−Seebeck effect in magnetic insulators",Applied Physics Letters,2010,vol.97,p172505.
特許文献4、および非特許文献1、2のような、スピンゼーベック効果を利用した熱電変換素子は、低コストで大面積化が容易であり、薄膜熱電変換が可能であるという点では優れた構造である。
一方で、スピンゼーベック効果を利用した従来の熱電変換素子では、熱伝導部分である磁性体として、特許文献4では強磁性体金属が用いられ、非特許文献1、2では単結晶のガーネット(磁性絶縁体)が用いられていた。
しかしながら、伝導電子が熱を運ぶ金属や、結晶性が良くフォノン伝導が良好な単結晶絶縁体の場合、小さな熱伝導率を得ることが難しいことから、素子表面と裏面の間の温度差を保つことが困難で、熱電変換の高性能化という点ではなお改良の余地がある。
例えば、非特許文献1のような単結晶薄膜を用いた場合、薄膜面に垂直な温度勾配(面直温度勾配)配置では熱遮断が不十分となることから、実用的な高効率熱電発電は困難だった。加えて単結晶を得るためには液相エピタキシャル成長(LPE)やレーザーアブレーション(PLD)などでの成膜が必要となるため、大面積・フレキシブル基板への成膜や、高速の厚膜化・多層化といった、低コストで生産性の高い素子作製プロセス適用を考えると改良の余地がある。
また、非特許文献2のように厚い板状のバルク磁性体を用いれば、実用的な面直温度勾配での熱電発電も可能となるが、製造プロセスの非効率性や高い原材料費などのために、やはり低コスト・大面積素子の実現のためにはさらなる改良の余地がある。
一方、特許文献5の構造は熱電変換素子ではないため、当然ながら熱電変換素子におけるコスト、生産性、高性能化に関する諸問題およびその解決手段については何ら記載されていない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで生産性が高く、変換効率に優れた熱電変換素子を提供することにある。
前述した目的を達成するために、本発明の第1の態様は、基板と、前記基板に設けられ、一定の磁化方向を有し、多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜と、前記磁性体膜に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極と、を有することを特徴とする熱電変換素子である。
本発明の第2の態様は、基板に対して、磁性体を含む溶液を塗布し、加熱により前記磁性体を焼結し、前記磁性体上に電極を成膜することにより第1の態様に記載の熱電変換素子を製造することを特徴とする、熱電変換素子の製造方法である。
本発明の第3の態様は、基板に対して、エアロゾルデポジション法を用いて磁性体を含む粒子を吹き付けることにより磁性体膜を形成し、前記磁性体膜上に電極を成膜することにより第1の態様に記載の熱電変換素子を製造することを特徴とする、熱電変換素子の製造方法である。
本発明の第4の態様は、第1の態様に記載の熱電変換素子の前記磁性体膜に温度勾配を印加することにより、前記磁性体膜から前記電極に向けて流れるスピン流を生成し、前記電極における逆スピンホール効果により、前記磁性体膜の磁化方向と垂直方向に電流を生じさせることを特徴とする熱電変換方法である。
本発明の第5の態様は、第1の態様に記載の熱電変換素子の前記基板の、前記磁性体膜が設けられた面側を低温側とし、他方の面側を高温側として温度差を印加することを特徴とする、熱電変換方法である。
本発明によれば、低コストで生産性が高く、変換効率に優れた熱電変換素子を提供することができる。
図1は熱電変換素子1を示す斜視図である。
図2は熱電変換素子1の断面図である。
図3はマグノン拡散長λ=10μm、基板厚D=1mm、素子上下間の温度差ΔT=10K、基板4の熱伝導率κsubと磁性体膜2の熱伝導率κfilmが等しい(κfilm=κsub)とした場合の、熱電変換素子1における格子‐マグノン温度差ΔTmpの磁性体膜厚t依存性の具体的な計算例である。
図4は図3において、マグノン拡散長λ=50μmとした場合のΔTmpの磁性体膜厚依存性の具体的な計算例である。
図5は熱電変換素子1において、基板4の熱伝導率κsubと磁性体膜2の熱伝導率κfilmが等しい(κfilm=κsub)場合の、格子―マグノン温度差ΔTmpの基板厚Dに対する依存性を示す図である。
図6は熱電変換素子1において、格子―マグノン温度差ΔTmpの、磁性体膜2に対する基板4の熱伝導率比「κsub/κfilm」に対する依存性を示す図である。
図7は熱電変換素子1aを示す斜視図である。
図8は熱電変換素子1bを示す斜視図である。
図9は実施例1の試料の斜視図および断面のTEM(透過型電子顕微鏡)像を模した図である。
図10は実施例1の試料における、磁場と熱起電力の関係を示す図であって、熱電変換素子1の上下にΔT=1K、2K、3Kの温度差(温度勾配)を印加した場合、および温度差を印加しなかった場合(ΔT=0K)の図である。
図11は実施例1の試料における、温度差ΔTと熱起電力の関係を示す図である。
図12は実施例1の試料について、磁性体のスピンコート成膜時の回転数を変えることにより、膜厚を変化させた場合の熱起電力の膜厚依存性を示す図である。
図13は実施例1の試料について、MOD溶液(有機金属分解溶液)を1回、2回もしくは3回重ね塗りして作製した試料の、外部磁場と熱起電力の関係を示す図であって、図中の「step」は重ね塗りした回数を示している。
図14は実施例1の試料について、MOD溶液(有機金属分解溶液)を1回、2回もしくは3回重ね塗りして作製した試料の、膜厚と熱起電力の関係を示す図である。
図15は磁性体膜2としてYIG(YFe12)に対して異なる量のビスマス(Bi)不純物をドープした(YサイトをBiで置換した)ものを用いた熱電変換素子の概略図である。
図16は磁性体膜2としてYIG(YFe12)に対して異なる量のビスマス(Bi)不純物をドープした(YサイトをBiで置換した)ものを用いた熱電変換素子における熱起電力の不純物のドープ量依存性を示す図であって、不純物をドープしなかった場合を示す図である。
図17は磁性体膜2としてYIG(YFe12)に対して異なる量のビスマス(Bi)不純物をドープした(YサイトをBiで置換した)ものを用いた熱電変換素子における熱起電力の不純物のドープ量依存性を示す図であって、組成がBi0.52.5Fe12となるように不純物をドープした場合を示す図である。
図18は磁性体膜2としてYIG(YFe12)に対して異なる量のビスマス(Bi)不純物をドープした(YサイトをBiで置換した)ものを用いた熱電変換素子における熱起電力の不純物のドープ量依存性を示す図であって、組成がBiYFe12となるように不純物をドープした場合を示す図である。
図19は磁性体膜2としてYIG(YFe12)に不純物としてBiを、組成が(BiYFe12)となるように添加した場合の熱電変換素子の外部磁場と熱起電力の関係を示す図である。
図20は磁性体膜2としてYIG(YFe12)に不純物としてCeを、組成が(CeYFe12)となるように添加した場合の熱電変換素子の外部磁場と熱起電力の関係を示す図である。
図21は磁性体膜2としてYIG(YFe12)に不純物としてLaを、組成が(LaYFe12)となるように添加した場合の熱電変換素子の外部磁場と熱起電力の関係を示す図である。
図22は熱電変換素子1におけるスピン流のフォノンドラッグ効果について説明するための図である。
図23はAD法(エアロゾルデポジション法)に用いられる装置100の概略図である。
図24はAD法によって作製したBi:YIG膜表面のSEM像を模した図であって、微粒子を垂直入射した場合の像を模した図である。
図25はAD法(エアロゾルデポジション法)に用いられる装置100の概略図である。
図26はAD法によって作製したBi:YIG膜表面のSEM像を模した図であって、微粒子を垂直位置から25度傾けた状態(図25に示す状態)で入射した場合の像を模した図である。
図27はPt膜/AD法で作製したBi:YIG膜/GGG基板の積層体を示す斜視図である。
図28は図27に示す試料の温度勾配を変化させた場合の、外部磁場と熱起電力の関係を示す図である。
図29はPt膜/AD法で作製したBi:YIG膜/ガラス基板の積層体を示す斜視図である。
図30は図29に示す試料の外部磁場と熱起電力の関係を示す図である。
図31は実施例3の熱電変換素子1aを示す図である。
図32は実施例3の熱電変換素子1aの磁場と熱起電力の関係を示す図である。
図33は実施例4の熱電変換素子1aを示す図である。
図34は実施例4の熱電変換素子1aの磁場と熱起電力の関係を示す図である。
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について図1〜図6を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、熱電変換素子1は基板4と、基板4に保持され、温度勾配によりスピン流を発生する磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、逆スピンホール効果を用いてスピン流から熱起電力を取り出すための電極3を有している。
また、熱電変換素子1は、電極3上の二点に、熱起電力を取り出すための端子7、9を取付可能に形成されており、端子7、9で熱起電力出力部を形成している。
さらに、熱電変換素子1は、必要に応じて、磁性体膜2に温度勾配を与えるための温度勾配印加部11を有している。
また、熱電変換素子1は、必要に応じて、磁性体膜2を磁化するための磁化部13を有している。
基板4は、磁性体膜2および電極3を支持することができるものであれば材料・構造を問わない。例えば、Si、ガラス、アルミナ、サファイア、ガドリニウムガリウムガーネット(GGG)、ポリイミドなどの材料の基板を用いることができる。また、形状は必ずしも板状である必要はなく、湾曲や凹凸を有する構造でもよく、さらには建築物などを直接基板4として用いることもできる。
磁性体膜2は、少なくとも1つの磁化方向Aを有する多結晶磁性体を有している。第1の実施形態では、膜面に平行な一方向に磁化を有しているものとする(磁化方向は少なくとも、膜面に平行な成分を有している)。磁性体膜2は、熱伝導率の小さな材料ほど効率よく熱電効果を奏するため、磁性絶縁体であることが好ましい。このような材料としては、例えば、ガーネットフェライト(イットリウム鉄フェライト)、スピネルフェライトなどの酸化物磁性材料を適用することができる。
なお、磁性体膜2として、ガーネットフェライトのイットリウムサイトをBi等で一部不純物置換した材料を有してもよい。このようにイットリウムサイトを不純物置換することにより、磁性体膜2と電極3との間のエネルギー準位間の整合が向上すると考えられるため、界面でのスピン流の取り出し効率を増大させ、熱電変換効率を向上させることができる可能性がある。
なお、具体的な組成としては、Bi3−xFe12(0.5≦x≦1.5)で表されるBiをドープしたイットリウム鉄ガーネットが挙げられる。
また、ドープする元素は、磁性体膜2と電極3との間のエネルギー準位間の整合が向上させられるものであればBiに限らず、他の不純物でもよい。
ここで、磁性体膜2の形成方法としては、後述するように、スパッタ、有機金属分解法(MOD法)、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法(AD法)等を用いて基板4上に磁性体膜2を成膜する方法が挙げられるが、中でもAD法を用いて成膜するのが望ましい。
これは、AD法では、微粒子の衝突エネルギーによって多結晶膜形成・稠密化が行われることから、他の成膜方法に比べて基板を選ばず、金属膜上への成膜も可能であるためである。
また、スパッタ、MOD法などの成膜方法で成膜可能な膜厚は、通常、最大1μm程度であるのに対し、AD法を用いれば10μm以上の厚膜の高速成膜が可能であり、後述する特性厚t程度の膜厚が短時間で形成でき、加えてノズルの2次元スキャンによる高速大面積化が可能となることから、低コスト・大面積の熱電変換素子を実現できるためである。
電極3は、逆スピンホール効果を用いて熱起電力を取り出すために、スピン軌道相互作用を有する材料を有している。このような材料としては、例えばスピン軌道相互作用の比較的大きなAuやPt、Pdなどの金属、またはこれらの金属を有する合金が挙げられる。なお、逆スピンホール効果を強めるために、上記した金属・合金にFeやCuなどの不純物を添加した材料を電極3の材料として用いてもよい。例えばCuなどの一般的な金属膜材料に、Au、Pt、Pd、Irなどの材料を0.5〜10%程度ドープするだけでも、同様の効果を得ることができる。
電極3は、スパッタ、蒸着、メッキ法、スクリーン印刷法などで磁性体膜2上に成膜することにより形成される。電極の厚さは、少なくとも電極材料のスピン拡散長以上に設定するのが好ましい。具体的には、例えばAuであれば50nm以上、Ptであれば10nm以上に設定するのが望ましい。
端子7、9は、端子間の電位差を熱起電力として取り出すことができるものであれば、構造、形状、位置は特に問われないが、電位差がなるべく大きくなるようにするため、図1に示すように、磁性体膜2の、磁化方向Aに垂直(端子7、9を結ぶ線分が磁化方向Aに垂直)な両端二箇所に設けるのが望ましい。
温度勾配印加部11は磁性体膜2に温度勾配を与えることが可能なものであれば何でもよく、各種ヒータ、あるいは体温、太陽光、エンジン、工業排熱等の熱を磁性体膜2に伝達する熱伝導体等を用いることができる。図1では、温度勾配印加部11は、磁性体膜2の膜方向に垂直な方向に温度勾配を与える構成となっている(即ち、磁性体膜2の膜方向に垂直な成分を有する温度勾配を与える)。
なお、熱源が、熱を直接磁性体膜に伝えるものである場合は、温度勾配印加部11は必ずしも必須ではない。
磁化部13は磁性体膜2を磁化方向Aに磁化するための装置であり、磁性体膜2の磁化を保持できるものであれば、構造、材料、種類は問わない。具体的には、例えばコイル等による磁場発生装置のほか、磁石などを近接させて利用することもできる。また、別の強磁性体膜や反強磁性体膜を磁性体膜2に近接して配置し、磁気的相互作用などを用いて磁性体膜2の磁化を保持することもできる。
次に、熱電変換素子1の動作について、簡単に説明する。
まず、図1の熱電変換素子1において、磁性体膜2に磁化部13を用いて磁場を印加し、磁性体膜2を磁化方向Aに磁化した後、温度勾配印加部11を用いて磁性体膜2の膜面に対して垂直方向(図1のB方向)に温度勾配が生じるように、温度勾配を印加する。
すると、磁性体膜2におけるスピンゼーベック効果により、この温度勾配方向に角運動量の流れ(スピン流)が誘起される。
この磁性体膜2において生成されたスピン流は、近接する電極3へと流れ込み、この電極3における逆スピンホール効果によって、磁性体膜2の磁化方向Aに対して垂直方向の電流Iへと変換される。
この電流Iは、端子7、9間に電位差を生じさせるため、当該電位差を端子7、9から熱起電力として取り出すことができる。
即ち、熱電変換素子1は、磁性体膜2に印加される温度差(温度勾配)から熱起電力を生成する。
ここで、磁性体膜2および基板4の厚さは、以下に説明するように、熱電変換素子1の変換効率を左右する値であるため、以下に示す値であることが望ましい。
まず、磁性体膜2の厚さについて説明する。
図2のような配置の熱電変換素子1に対して、上下(表裏)に一定の温度差(温度勾配)を印加した場合の熱起電力(温度勾配によって生じる電極3の端子7、9の出力電圧)Vは、磁性体膜2の膜厚tに対して、ある特性厚までは概ね線形に増大する。
すなわち、磁性体膜2の膜厚tが増加するに従って、熱起電力Vもそれに比例して増加する。
しかし、磁性体膜2の膜厚tがある特性厚tを超えて大きくなると、この線形関係が成り立たなくなり、熱起電力Vは膜厚tに対して飽和する。
具体的には、スピンゼーベック効果の理論(参考文献:Physical Review B 81,214418)を参照すると、熱電変換素子1の出力電圧Vは、以下の式(1)に示すように、磁性体膜2/電極3界面における格子温度Tphonon(通常の意味での温度)とマグノン温度Tmagnon(磁化の熱揺らぎを記述する有効温度)の差ΔTmpに比例する。
この界面での格子―マグノン温度差ΔTmpは、近似的に以下の式(2)で記述される。ここで、tは磁性体膜2の膜厚、Dは基板4の膜厚である。電極3の膜厚はt、Dに比べて十分小さいものとしてここでは無視している。κfilm、κsubはそれぞれ磁性体膜2、基板4の熱伝導率を示す。λは磁性体膜2におけるマグノン拡散長(磁気励起が拡散する長さスケール)である。単結晶の磁性絶縁体ではλが1mmを超えるような長いものもあるが、多結晶の場合は結晶性にも依存し、単結晶に比べてλは短くなると考えられる。また、ΔTは熱電変換素子1の上下に印加される温度差、つまり、基板4の下面(磁性体膜2が成膜されていない面)と、電極3の上面(磁性体膜2と接している面)との間に印加される温度差を表す。
図3に、マグノン拡散長λ=10μm、基板厚D=1mm、素子上下間の温度差ΔT=10K、熱伝導率κfilm=κsubとした場合の、格子‐マグノン温度差ΔTmpの磁性体膜厚t依存性の具体的な計算例を示す。tが小さい領域ではΔTmpはtに比例するが、tがλ=10μmを越えると徐々にΔTmpの増加が小さくなり、t=3λ=30μm近傍で飽和する。熱起電力VはこのΔTmpに比例することから、これ以上磁性体膜厚を大きくしても熱起電力(出力電圧)は増加しないことになる。
同様に、図4に、マグノン拡散長λ=50μmの場合のΔTmpのt依存性を示す。基板厚などその他の条件は図3と同様としている。この場合も、tがλ=50μmを越えると徐々にΔTmpの増加が小さくなり、t=3λ=150μm近傍で飽和し、それ以上熱起電力(出力電圧)Vが増加しなくなる。
そのため、この場合、前記特性厚t、すなわち「素子上下に印加される温度差が一定の下で、熱起電力が飽和する磁性体膜厚tを、t=3λとして定義することができる。
ただし、他のエネルギー緩和要因が存在したり、フォノンなどの別自由度が関与したりする素子構造などでは、熱起電力が飽和する特性厚tはマグノン拡散長λだけでは決まらない場合もある。
以上をまとめると、磁性体膜2の膜厚tは、高効率化および低コスト化の観点から、磁性体膜厚の増加に対して出力電圧Vが飽和する特性厚t程度に設定するのが好ましい。
ただし、大面積成膜時など、磁性体の膜厚揺らぎによる素子性能バラつきを抑えることが重要になる用途においては、熱起電力がほとんど飽和してしまうような厚めの磁性体膜厚領域で素子を設計するのが好ましい。この観点から言うと、磁性体膜厚tを、熱起電力Vが略飽和するt以上で設定するのが望ましい。
一方で、材料節約(すなわち低コスト化)の観点から考えると、図3および図4の計算結果から出力が完全に飽和する膜厚を考慮して、磁性体膜厚tは5t以下が好ましい。
以上より、高効率変換が重要になる発電用途を考慮すると、潜在変換性能を達成するために、磁性体膜2の膜厚tは、t/5以上、5t以下であることが好ましい。
次に、基板4の厚さについて説明する。
磁性体膜2/電極3界面での格子‐マグノン温度差ΔTmp(およびΔTmpに比例する熱起電力V)は、磁性体膜2だけではなく、基板4のパラメータにも依存する。以下では一例として、マグノン拡散長λ=50μm(特性厚t=150μm)、磁性体膜厚t=50μm、素子上下間の温度差ΔT=10K、という条件において、熱電変換素子1の格子‐マグノン温度差ΔTmpの基板パラメータ依存性を考えてみる。
まず、基板4の熱伝導率κsubと磁性体膜2の熱伝導率κfilmが等しい(κfilm=κsub)場合の、格子―マグノン温度差Δmpの基板厚Dに対する依存性を図5に示す。この図が示すように、素子上下間の温度差ΔTが一定という条件の下では、基板4の厚さDを薄くするほど、磁性体膜2部分に掛かる温度差(すなわち、磁性体膜2における温度勾配)が大きくなる結果、磁性体膜2/電極3界面での格子―マグノン温度差ΔTmpは大きくなる。即ち、基板4の厚さDが薄いほど、得られる熱起電力Vは大きくなる。
次に、同じマグノン拡散長λ=50μm(特性厚t=150μm)、磁性体膜厚t=50μm、素子上下間の温度差ΔT=10K、という条件で、今度は基板厚をD=0.5mmと固定した場合に、基板4の熱伝導率κsubが与える影響を考える。図6に、格子―マグノン温度差ΔTmpの、「磁性体膜2に対する基板4の熱伝導率比κsub/κfilm」に対する依存性を示す。この図が示すように、素子上下間の温度差ΔTが一定という条件の下では、基板4の熱伝導率κsubを大きくするほど、磁性体膜2部分に掛かる温度差(すなわち、磁性体膜2における温度勾配)が大きくなる結果、磁性体膜2/電極3界面での格子―マグノン温度差ΔTmpは大きくなる。即ち、基板4の熱伝導率κsubが磁性体膜2の熱伝導率κfilmに比べて大きいほど、得られる熱起電力Vは大きくなる。
以上より、基板4の厚さDは、大きな熱起電力を得るという観点からは極力薄いのが望ましく、また基板4の熱伝導率κsubは磁性体膜2の熱伝導率κfilmに比べて大きいのが望ましい。
ただし、実際の熱電発電において、基板4の厚さDが極端に薄かったり、あるいは基板4の熱伝導率κsubが極端に大きかったりすると、素子上下間の温度差ΔTを維持するのが難しくなる場合がある。また、用途によっては素子の信頼性を確保するためにも、基板の厚さはある程度厚くしておく必要が生じる。従って、熱起電力と温度差ΔTのバランスや必要な強度などを考えてこれらの基板パラメータを適切に設計する必要がある。
なお、図6によると、基板4の熱伝導率κsubが一定の下では、磁性体膜2の熱伝導率κfilmを小さくするほど、大きな熱起電力Vが得られる。本発明では磁性体膜2を多結晶絶縁体で形成しており、作製方法によって、その結晶性を制御することも可能である。従って、フォノン伝導を抑制するような結晶性の最適化を行うことにより、熱電変換のさらなる高出力化を達成することができる。
このように、第1の実施形態によれば、熱電変換素子1は、基板4と、基板4に設けられ、一定の磁化方向Aを有し、多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3と、を有し、磁性体膜2に温度勾配を印加すると、磁性体膜2から電極3に向けて流れるスピン流が生成され、電極3における逆スピンホール効果により、磁性体膜2の磁化方向Aと垂直方向に電流Iが生じるように構成されている。
そのため、高効率・低コストを併せ持つ熱電変換素子が実現できる。
具体的には、磁性体膜2は多結晶の磁性絶縁体薄膜であるため、塗布や印刷プロセスで生産効率の高い低コスト・大面積成膜が可能になる。また、多結晶の磁性絶縁体であれば、金属・半導体や単結晶絶縁体と異なり、電子による熱伝導とフォノンによる熱伝導の両方を大幅に抑制できることから、薄膜であっても高い熱遮断特性、即ち、熱を逃がしにくく、熱電変換素子の表面・裏面間の温度差を保ちやすい特性を有する。
次に、本発明の第2の実施形態について図7を参照して詳細に説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態において、磁性体膜12として、保持力を有する材料を用いたものである。
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
図7に示すように、熱電変換素子1aは基板4と、基板4に保持された、磁性体膜12と、磁性体膜12に設けられた電極3を有している。
磁性体膜12は、磁化方向C(ここでは、膜厚方向に垂直な方向)に保磁力を有する材料であり、あらかじめ、磁化部13(図1参照)等を用いて磁場を印加することにより、磁化方向Cに磁化しておく。
このように、磁性体膜12として、あらかじめ磁化された材料を用いることにより、磁性体膜12は磁化方向Cに自発磁化を保持することから、外部から磁場を印加しないゼロ磁場の環境でも、磁性体膜12の自発磁化によって熱起電力を生成可能となる。
また、一度自発磁化された後は磁化部13(図1参照)は不要となる。
なお、磁性体膜12の具体的な材料としては、ガーネットフェライトの鉄サイトを一部不純物置換して保磁力を増強した材料が挙げられる。
このように、第2の実施形態によれば、熱電変換素子1aは、基板4と、基板4に設けられ、一定の磁化方向Cを有し、多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜12と、磁性体膜12に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3と、を有し、磁性体膜12に温度勾配を印加すると、磁性体膜12から電極3に向けて流れるスピン流が生成され、電極3における逆スピンホール効果により、磁性体膜12の磁化方向Cと垂直方向に電流Iが生じるように構成されている。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、第2の実施形態によれば、磁性体膜12が、磁化方向Cに保磁力を有している。
そのため、第1の実施形態と比べて、熱電変換時の外部磁場の印加が不要となり、熱電変換素子をより、小型化、低コスト化できる。
次に、本発明の第3の実施形態について図8を参照して詳細に説明する。
第3の実施形態は、第1の実施形態において、磁性体膜2と電極3を複数積層したものである。
なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
図8に示すように、熱電変換素子1bは基板4と、基板4に保持された、磁性体膜2と電極3が交互に複数積層された発電部5を有している。
このように、磁性体膜2と電極3を交互に積層することにより、積層した電極3のそれぞれから、熱起電力Vを取り出すことができる。また、これら複数の電極3を直列接続して熱起電力Vを加算することで、全体として大きな熱起電力Vtotalを得ることができる。
なお、磁性体膜2は、第2の実施形態の磁性体膜12のような、保磁力を有する材料で形成してもよい。この場合は、熱電変換素子1bは、磁性体膜12の自発磁化によって、外部磁場がない環境でも発電可能である。
また、必要に応じて、前記積層構造の途中にスペーサー層を挟んでも良い。スペーサー層としては、例えばSiO層などの非磁性絶縁体を用いることができる。また、スペーサー層として、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、PET(PolyEthylene Terephthalate)やPEN(PolyEthylene Naphthalate)のようなポリエステルを用いれば、印刷プロセスで形成することもできる。
ここで、このような多層化した熱電変換素子は、例えば、特開2003−92435号公報記載の熱電対をベースとした従来型の熱電変換素子においても知られていたが、第3の実施形態に係る熱電変換素子1bは、その目的・効果が、従来のものとは本質的に異なる。
具体的には、従来の多層熱電変換素子では、最適動作温度の異なる複数の熱電材料を積層することで、高温域から低温域まで広い温度領域での発電を可能にするという、「利便性向上」や「性能最適化」が主な目的だった。逆に言うと、熱電材料の発電性能があまり温度に依存しない場合や、使用する温度領域が限定されている場合などでは、多層化はさほど有効ではなかった。すなわち、熱電モジュールの厚さや印加される温度差が同一の場合、厚い単層の熱電材料を用いてモジュール化しても、薄い熱電材料を複数枚積層してモジュール化しても、熱電変換効率に大きな差はなかった。
それに対し、本発明の熱電変換素子の場合、磁性体膜2が一定以上厚くなると熱起電力が飽和するという「特性厚t」が存在することから、特性厚t以上の厚い単層の磁性体膜2と電極3から素子を形成するよりも、特性厚t以下の薄い磁性体膜2と電極3とを複数枚積層して熱電変換素子1bを形成したほうが、全体として大きな熱電変換性能が得られることになる。
従って、第3の実施形態の熱電変換素子では、以下のような設計指針が好ましい。(1)最初に、用途に応じて必要とされる基板4及び発電部5の膜厚を設計する(熱電発電のための温度差を保つには、ある一定の最低素子膜厚が必要とされる。また、基板4の厚さなどは必要とされる信頼性・耐久性に応じて決定する。用途によっては基板4を可能な限りなく薄くしたり、基板4を用いずに形成したりしてもよい)。(2)次に、発電部5で必要とされる設計膜厚と、磁性体の特性厚tとを比較し、(2A)発電部5の設計膜厚が特性厚t以下の場合は、発電部5は単層の磁性体膜2と電極3により形成する。(2B)また、発電部5の設計膜厚が特性厚t以上の場合は、発電部5は複数の磁性体膜2と電極3との積層により形成する。(3)(2B)のように多層化する場合は、高効率化の観点から、1層あたりの磁性体膜2の膜厚は特性厚t以下とすることが好ましい。ただし、薄い磁性体膜を何枚も積層する場合は製造工程も増えることから、製造工程簡略化の観点を考慮すると、1層あたりの磁性体膜2の膜厚は前記特性厚t程度とすることが最も好ましい。
以上の設計により、特定の用途や発電条件の中で、最も効率の高い熱電変換が実現できる。
このように、第3の実施形態によれば、熱電変換素子1bは、基板4と、基板4に設けられ、一定の磁化方向Aを有し、多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3と、を有し、磁性体膜2に温度勾配を印加すると、磁性体膜2から電極3に向けて流れるスピン流が生成され、電極3における逆スピンホール効果により、磁性体膜2の磁化方向Aと垂直方向に電流Iが生じるように構成されている。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、第3の実施形態によれば、熱電変換素子1bは、磁性体膜12と電極3が交互に積層された発電部5を有している。
そのため、積層した電極3のそれぞれから、熱起電力Vを取り出すことができる。また、これら複数の電極3を直列接続して熱起電力Vを加算することで、全体として大きな熱起電力Vtotalを得ることができる。
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例1〕
第1の実施形態に係る熱電変換素子1を作製し、熱起電力を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
<試料の作製>
作製した熱電変換素子の一例を、図9に示した。まず、基板4としてサンゴバン株式会社製のガドリニウムガリウムガーネット(以降、「GGG」と標記する。組成はGdGa12)基板(111)面を用意した。なお、厚さは0.7mm、平面寸法は2mm×4mmの矩形とした。
次に、GGG基板上に、磁性体膜2として、Yサイトの一部をBiで置換したイットリウム鉄ガーネット(以降、「Bi:YIG」と標記する。組成はBiYFe12)膜を有機金属分解法(MOD法)により成膜した。
具体的には、モル比率が(Bi:Y:Fe=1:2:5)である(株)高純度化学研究所製のMOD溶液を用い(この溶液中では、金属原材料が酢酸エステルに3%の濃度で溶解されている)、まず、(1)この溶液をスピンコートにより、回転数1000rpmで30秒間、GGG基板上に塗布し、(2)150℃のホットプレートで5分間乾燥させた。その後、(3)電気炉中で550℃で5分間加熱して仮焼結させ、(4)最後に同じ電気炉中で720℃で14時間焼結させた。これにより、GGG基板上に膜厚約65nmのBi:YIG膜が形成された。
次に、Bi:YIG膜上に、電極3として、膜厚10nmのPt電極をスパッタにより成膜することにより熱電変換素子1が完成した。なお、電極3の端子7、9間の距離は4mmとした。
完成した熱電変換素子1の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した所、図9に示すように、GGG(111)面に格子整合するように、欠陥や結晶粒界の少ないBi:YIGの結晶膜が形成されていることが確認された。
<熱起電力評価>
次に、作製した試料に電磁石を用いて磁場Hを−120Oe〜+120Oe(1Oe=79.577A/m)の範囲で変化させながら加え、さらに熱電変換素子1の上下端のうち、一端側にCu製のヒートシンクを設けて低温側とし、他端側にヒータを設けて高温側としてΔT=1、2、3Kの温度差を印加し、電極3の端子7、9間の電圧(熱起電力)Vを測定した。
この熱電変換素子1のうち、磁場と熱起電力の関係を図10に、温度差ΔTと熱起電力の関係を図11に示す。
図10から明らかなように、磁場Hは、磁性体膜2の磁化を反転させる役割を果たしており、磁化が反転することで熱起電力Vの符号が反転することが分かった。
また、図11に示すように、ΔTに比例して熱起電力Vが大きくなる様子が分かった。
<スピンコート回転数制御による熱起電力の膜厚依存性評価>
次に、上記(1)のスピンコート塗布の際の回転数を1000〜5000rpmの範囲で変化させることで、磁性体膜2の膜厚tYIGを変化させ、素子の熱起電力の膜厚依存性を調べた。素子作製にあたっては、スピンコート後に150℃のホットプレートで5分間乾燥させた後、電気炉中で550℃で5分間加熱して仮焼結させ、最後に同じ電気炉中で720℃で4時間焼結させた。
熱起電力評価については、磁場Hを−120Oe〜+120Oe(1Oe=79.577A/m)の範囲で変化させながら、ΔT=3Kに固定した状態での熱起電力を測定し、熱起電力の(磁性体膜2の)膜厚依存性を測定した。横軸をBi:YIGの膜厚tYIGとして熱起電力をプロットした結果を図12に示す。磁性体膜2の膜厚tYIGに略比例して熱起電力Vが増加する様子が観測された。
<MOD溶液の重ね塗りによる熱起電力の膜厚依存性評価>
次に、スピンコート塗布の際の回転数を1000rpmとして、MOD溶液を複数回重ね塗りすることで、磁性体膜2の膜厚を変化させる実験を行った。具体的には、(1)スピンコートして(2)170℃で乾燥し、(3)550℃で仮焼結する、という(1)〜(3)の過程を、N回(N=1〜3)繰り返すことで、厚い膜を形成する。その後、最後に(4)680℃で14時間本焼結することで、Bi:YIG磁性体膜を形成した。
この素子の熱電変換特性の評価結果を図13および図14に示す。
図13は、1回、2回、3回重ね塗りを行った素子における熱起電力を、横軸を外部磁場Hとして示している。一方、図14では同じ熱起電力の測定結果を、横軸を膜厚としてプロットしている。これらの結果より、重ね塗りを行うことで膜厚は2倍、3倍と増加するが、これに比例して熱起電力も増加することが分かった。
図13および図14では重ね塗り回数Nが3回までの結果を示しているが、Nが3回以上の場合でも、同様の厚膜化による熱起電力増大効果が期待できる。
以上の一連の実験が示すように、磁性体膜厚t(tYIG)が特性厚t以下の範囲(t<t)では、塗布成膜時のスピンコート回転数の制御や重ね塗り等の手法によって、磁性体の厚膜化することで、熱電変換素子の高出力化を達成することができることが分かった。
<Bi不純物ドープ評価>
次に、図15に示す構造の熱電変換素子1を作製し、磁性体膜2に用いたBi:YIGのビスマス(Bi)不純物のドープ量と熱起電力の間の関係を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
まず、基板4として厚さ0.7mm、平面寸法2mm×6mmのGGG基板を用意し、基板4に、磁性体膜2として、YIG(YFe12)に対して異なる量のビスマス(Bi)不純物をドープした(YサイトをBiで置換した)Bi:YIGを成膜した。
具体的には、Bi3−xFe12においてx=0、x=0.5、x=1.0の三種類の組成となるようなBi:YIGを有機金属分解法(MOD法)により、720℃で14時間という焼結条件で160nm成膜した。
次に、電極3として、Pt電極をスパッタにより膜厚が10nmとなるように成膜し、試料が完成した。
次に、これらの試料に対し、磁場Hを−120Oe〜+120Oe(1Oe=79.577A/m)の範囲で変化させながら、ΔT=3Kに固定した状態での熱起電力を測定し、熱起電力の不純物のドープ量依存性を評価した。
結果を図16〜図18に示す。
図16〜図18より明らかなように、イットリウム(Y)のサイトをビスマス(Bi)で置換することで、熱電変換性能が大きく向上していた。これは、イットリウム(Y)サイトをビスマス(Bi)で置換することで、磁性体膜2と電極3(Pt)との間のエネルギー準位間の整合が向上し、磁性体膜2/電極3界面でのスピン流の取り出し効率が増大したためと考えられる。
以上の結果から、熱電変換の高効率化を達成するために、磁性体膜2としてBi不純物をドープしたYIG膜(Bi3−xFe12)を用いることが好ましいことが分かった。
なお、ドープ量xは、図16〜図18に示す結果からx≧0.5が望ましいが、Biドープ量を増加させ過ぎると磁性体膜が不安定化する恐れがあることから、0.5≦x≦1.5の範囲とすることが望ましい。
<Bi以外の不純物ドープ効果の評価>
上記の実験から、Biドープによる熱起電力の増強効果が確かめられたが、ここではBi以外の不純物をドープしたYIGによる熱電変換素子の評価も行った。具体的な手順は以下の通りである。
まず、基板4として厚さ0.7mm、平面寸法2mm×6mmのGGG基板を用意し、基板4に、磁性体膜2として、YIG(YFe12)に対して3つの異なる不純物X(X=Bi、Ce、La)をドープしたX:YIGを成膜した。不純物XはYIGのイットリウム(Y)サイトを置き換えており、(XY)Fe12という組成を構成している。
具体的な成膜方法としては、上記と同様の方法で、X:YIGを有機金属分解法(MOD法)により、680℃で14時間という焼結条件で65nm成膜した。その後、電極3として、Pt電極をスパッタにより膜厚が10nmとなるように成膜し、試料を完成した。
次に、これらの試料に対し、磁場Hを−180Oe〜+180Oe(1Oe=79.577A/m)の範囲で変化させながら、ΔT=16.5Kに固定した状態での熱起電力を測定し、熱起電力の不純物のドープ量依存性を評価した。
結果を図19〜図21に示す。
図19〜図21より明らかなように、X=Biの場合が最も大きな熱起電力信号が観測されている一方で、X=Ce、Laの試料についても、図16の不純物ドープしないYIGに比べて大きな熱起電力が得られている。すなわち、YサイトをBi以外の不純物で置換した場合にも、明確な熱起電力増強効果が得られた。
この実験から、大きな熱起電力を得るためには不純物XでYサイト置換することが望ましく、特にXはBiであることが望ましいことが分かった。
以上、ここまで述べた実施例から、塗布・焼結という簡単なプロセスによる多結晶の磁性絶縁体薄膜で熱電変換素子が構成できることが示された。実施例1の熱電変換素子はさらなる大面積化も容易で、生産性の高い熱電変換素子実現が可能であることが分かった。
<スピン流のフォノンドラッグ効果による熱電効果の増大>
図9〜図11で示した実験では、素子の上面と底面の間にΔT=3Kの温度差を印加して熱起電力を測定しているが、厚さtGGG=0.7mmのGGG基板上の磁性絶縁体(Bi:YIG)層は膜厚tYIG=65nmと極めて薄いことから、スピン流が熱駆動される磁性絶縁体部分(Bi:YIGの膜厚部分)に印加される温度差ΔTYIGは、大きく見積もっても数mK程度と、極めて小さいことが推定される。それにもかかわらず、図10に示す実験結果では、μVオーダーの熱起電力が観測されている。この比較的大きな熱起電力を示す実験結果は、電極3/磁性体膜2におけるスピンゼーベック効果に加えて、基板中のフォノンとの相互作用を通して熱電効果が増強される「フォノンドラッグ効果」の寄与が強く示唆される。
ここで言うフォノンドラッグとは、電極/磁性体膜構造におけるスピン流が、基板を含めた素子全体のフォノンと非局所的に相互作用する現象を指す(参考文献:Applied Physics Letter 97,252506.)。このフォノンドラッグ過程を考慮すると、実施例1のように極めて薄い膜におけるスピン流が、前記フォノンとの非局所相互作用を介して、これより遥かに厚い基板中の温度分布を感じることができるために、実効的な熱電効果が大きく増大する。
すなわち、図22に示すように、薄い磁性絶縁体(Bi:YIGの膜厚部分)に印加される温度差ΔTYIGだけでなく、厚い基板に印加される温度差ΔTGGGもスピン流の熱駆動に寄与する結果、より大きな熱起電力が電極中に生成される。
このようなフォノンドラッグ効果については、基本的な原理実証については報告されていたが、この効果を用いた大面積・低コスト熱電デバイスの設計方法については、これまで具体的な提案が無かった。本発明の構造において、このフォノンドラッグ効果を利用すれば、低コストな非磁性基板上に100nm以下の薄い電極/磁性体膜構造を成膜するだけで熱電変換デバイスが実装できることから、バルク磁性体などを用いる場合に比べ、原材料コスト・製造コストを大幅に低減することができる可能性がある。加えて、実施例1のように塗布による磁性絶縁体膜の作製プロセスを採用することで、大面積で生産性の高いデバイス製造が可能となる。
非磁性基板材料の多くは、YIG等の磁性絶縁体結晶材料に比べて、体積当たりのコストを1/10以下で作成できることから、フォノンドラッグ効果を利用して低コスト熱電素子を設計するにあたっては、磁性体の厚さ(tYIG)は、電極と基板とを加えた全体の厚さの、1/10以下が望ましい。
ただし、磁性体の厚さ(tYIG)が薄すぎると、大きな熱電性能が得られないことが図12の実験結果から示唆されており、tYIGは少なくとも50nm以上が望ましい。
(望ましい発電方法)
上記のように、基板と磁性絶縁体膜等の積層構造によって構成される熱電変換素子を利用して実際に発電を行うにあたっては、素子の片方の面を高温側、他方の面を低温側として、素子に温度差を印加する。例えば、片面(高温側)を高い温度を有する熱源などに近接させて温度Tに設定し、もう一方の面(低温側)を必要に応じて空冷もしくは水冷することで温度Tに設定することで、温度差ΔT=T−Tを生成させる。
このとき、本発明による熱電変換素子においては、磁性絶縁体部(磁性体膜2)の温度がキュリー温度Tを超えると、スピンゼーベック効果が損なわれる結果、発電動作ができなくなる。従って図9の素子を用いて熱電発電を行う場合、磁性絶縁体から遠い側(図9では基板の下面側、即ち磁性体膜が形成されていない面側)を高温側、磁性絶縁体膜に近い側(図9では基板の上面側、即ち磁性体膜とが設けられた側)を低温側として利用することが望ましい。上記の温度差印加方法によって熱電発電動作を行うには、少なくとも低温側が磁性絶縁体のキュリー温度を超えないように、T<Tでなくてはならない。ただし、この条件を満たすように低温側を適切に冷却できれば、高温側はキュリー温度を超えてもよく、T<T<Tであっても構わない。このような温度差印加方法を利用することで、高温領域に本発明の素子を適用することが容易になる。
〔実施例2〕
実施例1では、MOD法を用いて磁性体膜2を成膜したが、この場合は結晶化のために高温焼結が必要であることから、基板4がプラスチックのような、焼結温度以下で分解しやすい材料を用いた場合、成膜が難しく、加えてスピンコートで成膜することから厚膜化や多層化が難しかった。そこで実施例2では、磁性体の高速厚膜成長が可能なエアロゾルデポジション法(AD法、詳細は表面科学Vol.25,No.10,pp635−641などを参照)を用いて磁性体膜2の成膜を試みた。
本実施例では、磁性体膜2として、Yサイトの一部をBiで置換したイットリウム鉄ガーネット(ここでの組成はBi0.52.5Fe12)膜を図23に示す装置100を用いて、AD法により基板4上に成膜した。
具体的には、まず、Bi:YIG原料として、共立マテリアル社製の平均直径約800nmのBi:YIG微粒子を用意し、このBi:YIG微粒子をエアロゾル発生容器に詰めておき、基板4は成膜チャンバ41内のホルダ43に固定した。
次に、この状態でロータリーポンプで成膜チャンバを100Pa程度まで減圧させると同時に、エアロゾル発生容器に酸素ガスを流入させることで、成膜チャンバとエアロゾル発生容器との間に圧力差を生じさせ、これによってBi:YIG微粒子を成膜チャンバ内へと引き込み、ノズル45を通して基板4上に吹き付けた。吹き付けられた微粒子は300m/s程度の速度で基板に衝突し、このときの衝突エネルギーによって微粒子が粉砕・再結合し、基板上にBi:YIG多結晶が形成された。基板表面を2次元的にスキャンすることで、基板上に均一なBi:YIG膜を膜厚5μmで成膜した。
本実施例では、原料微粒子の基板への入射角を変えて膜質を調べた結果、基板表面に対して斜めに微粒子を入射する「斜め入射方式」が、熱電変換素子を構成する上で、特に望ましいことが分かった。
基板表面に対して垂直に原料微粒子を入射する一般的な方式(図23)では、基板衝突時に微粒子が十分に破砕されない「未粉砕粒子」が膜中にそのまま取り込まれる結果、スピン流散乱源となる欠陥が増加する。また、図24に示すBi:YIG表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を模した図に示されるように、結晶粒同士の結合が弱く、稠密な膜ができないという問題も判明した。このような膜では、スピン流(マグノン)が伝播可能な特性長(tに相当)が大きく低下し、熱電変換性能が得られないことが材料評価や実験から分かった。
一方、ノズルを傾けて入射する「斜め入射方式」(図25)では、図26のSEM像を模した図に示されるように、稠密で欠陥の少ない良好な膜が得られることが確かめられた。本実施例では、垂直方向から25度傾けてノズル45を固定し、基板4に向かって斜め方向に原料の噴射・成膜を行った。このような斜め入射方式では、微粒子は膜面方向に運動量を持つために、エッチングの効果が現れ、付着力の低いと考えられる未粉砕粒子(スピン流散乱源)が除去され、比較的均質な破砕粒子によって稠密な膜が形成されるものと推定される。これによって、十分大きなマグノン伝播長(tに相当)を得ることができ、熱電変換性能が向上する。
このようなエッチング効果は、15度以上の傾き角の場合に大きな効果が現れる。ただし、傾き角度が40度より大きくなると、エッチング効果が成膜効果を上回る結果、有効な成膜が難しくなる。従って、斜め入射方式における傾き角度は15度以上、40度以下であることが望ましい。
そこで、以下に示す実験結果では、入射角度を25度とする斜め入射方式によってBi:YIG膜を形成し、熱電変換素子を構成した。
まず、熱電変換素子作製のため、磁性体膜2の成膜後は、Bi:YIG膜表面を、直径30nmのアルミナ微粒子からなるアルミナペーストを研磨剤として表面研磨した上で、この磁性体膜2上に電極3として10nm厚のPt電極をスパッタにより成膜した。
作製した熱電変換素子の素子構成を図27に、外部磁場と熱起電力を、図28に示す。ここでは基板4として、厚さ0.7mm、平面寸法3mm×6mmのGGG基板を用いて素子を作製した。この素子に対し、ΔT=5.5K、11.0K、16.5Kの温度差を印加することで、Pt電極における端子7と端子9との間(間隔4mm)に起電力が生成されることを、一連の実験から確認した。
また、図29に示すように、厚さ0.5mm、平面寸法3mm×6mmのガラス基板上にも、同様の熱電変換素子を実装し、外部磁場を印加した所、図30に示すように、ΔT=16.5Kの下で熱起電力が生成されることを確認した。図28の結果と図30の結果では、ヒステリシス特性などに大きな差が見られないことから、アモルファス材料などによる低コスト基板上であっても、AD法による磁性体膜の膜質は大きく低下しないことが示唆された。
以上の実験結果から、熱電変換素子において、スピン流伝播を阻害しない良好な磁性体膜を構成するには、原料微粒子の斜め入射成膜が有効であることが示された。なお、上記のように斜めに配置した一本のノズルで成膜する代わりに、成膜用ノズルとエッチング用ノズルを含む複数のノズルを同時に用い、それぞれから原料を噴射させることで磁性体膜を成膜してもよい。その場合、少なくとも1つのエッチング用ノズルは傾き角度を15度以上とすることが望ましい。
<実施例2に基づくフレキシブル熱電素子の形成>
上記したAD法を用いれば、高温アニールが不要であることから有機樹脂材料で構成されたフレキシブル基板上にも熱電素子を形成することができる。これにより、可とう性を有する熱電変換素子を構成することできる。
そこで、加とう性を有する基板を用いたフレキシブル素子の作製を試みた。まず、基板4として宇部興産株式会社製のポリイミド基板を用意した。
次に、磁性体膜2として、実施例1と同様に、Yサイトの一部をBiで置換したイットリウム鉄ガーネット(Bi:YIG、組成はBiYFe12)膜をAD法により基板4上に成膜した。
具体的には、まず、Bi:YIG原料として、共立マテリアル社製の直径500nmのBi:YIG微粒子を用意し、このBi:YIG微粒子をエアロゾル発生容器に詰めておき、ポリイミド基板は成膜チャンバ内のホルダに固定した。
次に、この状態でロータリーポンプで成膜チャンバを100Pa程度まで減圧させ、成膜チャンバとエアロゾル発生容器との間に圧力差を生じさせることで、Bi:YIG微粒子を成膜チャンバ内へと引き込み、前記の斜め入射方式に基づいて25度傾けたノズルを通して、ポリイミド基板上に吹き付けた。吹き付けられた微粒子は300m/s程度の速度で基板に衝突し、このときの衝突エネルギーによって粉砕・再結合し、基板上にBi:YIG多結晶が形成された。基板表面を2次元的にスキャンすることで、基板上に均一なBi:YIG膜を膜厚0.1mmで成膜した。
次に、磁性体膜2上に電極3としてAu電極を無電解金めっき法により形成した。具体的には、日立化成工業製の、亜硫酸金ナトリウムを金塩として含有する金メッキ液を用い、次亜リン酸塩を還元剤として金メッキ膜を50nm成膜した。
以上の手順により、ポリイミドを基板とした熱電変換素子1を作製できた。
このように、柔軟性の高いポリイミドなどのプラスチック基板を用いることで、フレキシブルなモジュールを構成することができ、様々な形状の熱源に設置可能な熱電変換素子を実現できた。
〔実施例3〕
第2の実施形態に係る熱電変換素子1aを作製し、熱起電力を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
<試料の作製>
まず、基板4として、NTTエレクトロニクス製のガドリニウムガリウムガーネット(GGG)基板(100)面を用意した。寸法は、厚さ0.7mm、平面寸法2mm×4mmとした。
次に、磁性体膜12として、Yサイトの一部をBiで置換し、Feサイトの一部をGaで置換したイットリウム鉄ガーネット(以降、Bi、Ga:YIG。組成はBiYFeGaO12)を有機金属分解法(MOD法)により基板4に成膜した。
具体的には、モル比率が(Bi:Y:Fe:Ga=1:2:4:1)である(株)高純度化学研究所製のMOD溶液を用い(この溶液には、金属原材料が酢酸エステルに3%の濃度で溶解されている)、この溶液をスピンコートにより、回転数1000rpmで30秒間、GGG基板上に塗布し、150℃のホットプレートで5分間乾燥させた後、電気炉中で720℃の高温で14時間焼結させた。これにより、磁性体膜12として、GGG基板上に膜厚約160nmのBi、Ga:YIG膜が形成された。
次に、磁性体膜12上に、電極3として、Pt電極10nmをスパッタにより成膜し、図31に示す構造の熱電変換素子1aが完成した。なお、電極3の端子7、9間の距離は4mmとした。
<熱起電力評価>
次に、作製した熱電変換素子1aに電磁石を用いて磁場Hを−120Oe〜+120Oe(1Oe=79.577A/m)の範囲で変化させながら加え、さらに熱電変換素子1の上下端のうち、一端側にCu製のヒートシンクを設けて低温側とし、多端側にヒータを設けて高温側としてΔT=3Kの温度差を印加し、電極3の端子7、9間の電圧(熱起電力)Vを測定した。
測定された磁場と熱起電力の関係を図32に示す。
図32に示すように、熱電変換素子1とは異なり、熱電変換素子1aの磁性体膜12(Bi、Ga:YIG)は保磁力を有するため、熱起電力Vの外部磁場H依存性はヒステリシスを有していた。すなわち、外部磁場によって一旦一方向に磁化した状態では、磁場H=0に戻しても有限な熱起電力を示すことが分かった。
この結果より、磁性体膜12をあらかじめ磁化しておけば、その後は磁場ゼロの環境でも、磁性体膜12の自発磁化により熱起電力を生成可能であることが分かった。
〔実施例4〕
実施例1において、基板4としてガラス基板を用いて熱電変換素子1aを作製し、熱起電力を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
<試料の作製>
まず、基板4としてオプトスター社製の石英ガラス基板(厚さ0.5mm、平面寸法2mm×4mm)を用意し、磁性体膜12として、Yサイトの一部をBiで置換したイットリウム鉄ガーネット(Bi:YIG)膜を有機金属分解法(MOD法)により成膜した。
具体的には、モル比率が(Bi:Y:Fe=1:2:5)である(株)高純度化学研究所製のMOD溶液を用い(この溶液には、金属原材料が酢酸エステルに3%の濃度で溶解されている)、この溶液をスピンコートにより、回転数1000rpmで30秒間、石英ガラス基板上に塗布し、150℃のホットプレートで5分間乾燥させた後、電気炉中で720℃の高温で18時間焼結させた。これにより、磁性体膜12として、GGG基板上に膜厚約160nmのBi:YIG膜が形成された。
次に、磁性体膜12上に、電極3として、Au電極50nmをスパッタにより成膜し、図33に示す構造の熱電変換素子1aが完成した。なお、電極3の端子7、9間の距離は4mmとした。
<熱起電力評価>
次に、作製した熱電変換素子1aに電磁石を用いて磁場Hを−120Oe〜+120Oe(1Oe=79.577A/m)の範囲で変化させながら加え、さらに熱電変換素子1aの上下端のうち、一端側にCu製のヒートシンクを設けて低温側とし、多端側にヒータを設けて高温側としてΔT=3Kの温度差を印加し、電極3の端子7、9間の電圧(熱起電力)Vを測定した。
測定された磁場と熱起電力の関係を図34に示す。
図34から明らかなように、実施例4の試料は、実施例1と同じBi:YIG膜を用いているにも関わらず、熱起電力Vの外部磁場H依存性はヒステリシスを示していた。すなわち、外部磁場によって一旦一方向に磁化した状態では、磁場H=0に戻しても有限な熱起電力を示す。すなわち、最初に初期化しておけば(熱起電力取り出し方向と略垂直方向に磁化させておけば)、その後は磁場ゼロの環境でも、磁性体膜12の自発磁化により熱起電力を生成することができる。
これは、実施例1のようにGGG基板上にBi:YIG膜を形成した場合と異なり、石英ガラス基板上にBi:YIG膜を形成しているため、Bi:YIG膜が保磁力を有したためと考えられる。
以上の結果から、石英ガラス基板上にBi:YIG膜を形成することにより、Bi:YIG膜が保磁力を有することが分かった。
また、このようなガラス基板上に形成した熱電変換素子の場合、低コスト・大面積化が容易になることから、窓などにおける室内外の温度差発電や、ディスプレイなどへの適用が可能となることが分かった。
〔実施例5〕
基板4としてポリイミドを用い、AD法を用いて磁性体膜12の成膜を行って熱電変換素子1aの作製を試みた。具体的な手順は以下の通りである。
まず、基板4として宇部興産株式会社製のポリイミド基板を用意し、磁性体膜12として、Yサイトの一部をBiで置換し、Feサイトの一部をGaで置換したイットリウム鉄ガーネット(Bi、Ga:YIG)膜をエアロゾルデポジション法により成膜した。
具体的には、まず、Bi、Ga:YIG原料として、共立マテリアル社製の直径500nmのBi、Ga:YIG微粒子を用意した。
次に、このBi、Ga:YIG微粒子をエアロゾル発生容器に詰めておき、ポリイミド基板を成膜チャンバ内のホルダに固定した。
次に、この状態でロータリーポンプで成膜チャンバを100Pa程度まで減圧させ、成膜チャンバとエアロゾル発生容器との間に圧力差を生じさせることで、Bi、Ga:YIG微粒子を成膜チャンバ内へと引き込み、ノズルを通してポリイミド基板上に吹き付けた。吹き付けられた微粒子は、基板との衝突エネルギーによって粉砕・再結合し、基板上にBi、Ga:YIG多結晶が形成された。基板表面を2次元的にスキャンすることで、基板上に均一なBi、Ga:YIG膜を膜厚0.1mmで成膜した。
次に、電極3として、Auを無電解金めっき法により磁性体膜12上に形成した。具体的には、日立化成工業製の、亜硫酸金ナトリウムを金塩として含有する金メッキ液を用い、次亜リン酸塩を還元剤として金メッキ膜を50nm成膜することにより、熱電変換素子1aを作製できた。
このように、柔軟性の高いポリイミドなどのプラスチック基板を用いることで、フレキシブルで、様々な形状の熱源に設置可能な熱電変換素子を実現できた。
加えて、AD法を用いたことにより、10μm以上の厚膜の高速成膜が可能となり、特性厚t程度の膜厚が短時間で形成できることから、高効率で生産性の高い熱電変換素子が実現できることが分かった。
〔実施例6〕
第3の実施形態に係る熱電変換素子1bの作製を試みた。具体的な手順は以下の通りである。
まず、基板4としてポリイミド基板を用い、磁性体膜2として、Yサイトの一部をBiで置換したイットリウム鉄ガーネットBi:YIG膜(組成はBiYFe12)をエアロゾルデポジション法を用いて成膜した。
具体的には、まず、Bi:YIG原料として、戸田工業株式会社製の直径300nmのBi:YIG微粒子を用意し、このBi:YIG微粒子をエアロゾル発生容器に詰めておき、ポリイミド基板は成膜チャンバ内のホルダに固定した。
次に、この状態でロータリーポンプで成膜チャンバを100Pa程度まで減圧させ、成膜チャンバとエアロゾル発生容器との間に圧力差を生じさせることで、Bi:YIG微粒子を成膜チャンバ内へと引き込み、ノズルを通してポリイミド基板上に吹き付けた。吹き付けられた微粒子は、基板との衝突エネルギーによって微粒子が粉砕・再結合し、基板上にBi:YIG多結晶が形成された。基板表面を2次元的にスキャンすることで、基板上に均一なBi:YIG膜を膜厚0.1mmで成膜した。
次に、電極3として、Auを無電解金めっき法により磁性体膜12上に形成した。具体的には、日立化成工業製の、亜硫酸金ナトリウムを金塩として含有する金メッキ液を用い、次亜リン酸塩を還元剤として金メッキ膜を50nm成膜した。
次に、磁性体膜2の成膜および電極3の形成を繰り返し行い、Au/Bi:YIGの4層積層構造の発電部5を作製した。
その結果、磁性体膜2と電極3の積層構造を有する熱電変換素子1bを作製することができた。
本発明の利用例として、端末・センサ等への給電用電源が挙げられる。
なお、上記した実施形態では、熱電変換素子1、1a、1bを温度勾配から電流・電圧を取り出す熱電発電に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、熱電変換素子1、1a、1bは、温度や(吸収膜などを近接配置することで)赤外線などを検知する熱センサなどにも用いることができる。また、これまでの説明した使い方とは逆に、外部から電極2に電流を流すことで温度勾配を生成するペルチェ素子としての利用も原理的には可能である。
また、上記した実施形態では、基板4上に磁性体膜2を成膜し、磁性体膜2上に電極3を成膜しているが、磁性体膜2と電極3の位置関係は上記の実施形態に限られない。例えば基板4の上に最初に電極2を成膜し、その上に磁性体膜2を成膜することでも、同様の機能を有する熱電変換素子を実装することができる。実装方法によっては、薄い電極を平坦な基板上に成膜するこちらのプロセスのほうが有利な場合もある。
また、本出願は、2010年2月9日に出願された日本国特許出願第2010−025797号および2011年9月5日に出願された日本国特許出願第2011−192874号からの優先権を基礎として、その利益を主張するものであり、その開示はここに全体として参考文献として取り込む。
1 熱電変換素子
1a 熱電変換素子
1b 熱電変換素子
2 磁性体膜
3 電極
4 基板
5 発電部
7 端子
9 端子
11 温度勾配印加部
13 磁化部

Claims (19)

  1. 基板と、
    前記基板に設けられ、一定の磁化方向を有し、多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜と、
    前記磁性体膜に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極と、
    を有することを特徴とする熱電変換素子。
  2. 前記磁性体膜に温度勾配を印加すると、前記磁性体膜から前記電極に向けて流れるスピン流が生成され、前記電極における逆スピンホール効果により、前記磁性体膜の磁化方向と垂直方向に電流が生じるように構成したことを特徴とする請求項1記載の熱電変換素子。
  3. 前記電極上の二点に設けられ、前記電流により生じた熱起電力を前記二点間の電位差として出力する熱起電力出力部を有することを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  4. 前記磁化方向は前記磁性体膜の膜面に平行な成分を有し、前記磁性体膜は、面方向に垂直な温度勾配が印加されると、前記電極に向けて流れるスピン流が生成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  5. 前記磁性体膜に温度勾配を印加する温度勾配印加部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  6. 前記磁性体膜の膜厚は、前記電流により生じた熱起電力が前記磁性体膜の膜厚増加に対して飽和する特性厚をtとした場合に、t/5以上、5t以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  7. 前記磁性体膜の膜厚は、前記基板の膜厚の1/10以下であることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  8. 前記磁性体膜を前記磁化方向に磁化する磁化部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  9. 前記磁性体膜は、前記磁化方向に自発磁化するような保持力を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  10. 前記磁性体膜が、イットリウム鉄ガーネットを有する材料により構成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  11. 前記磁性体膜が、イットリウム鉄ガーネットのイットリウムサイトを一部不純物置換した材料を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  12. 前記磁性体膜がBiをドープしたイットリウム鉄ガーネットを有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  13. 前記磁性体膜が組成式Bi3−xFe12(0.5≦x≦1.5)で表されるBiをドープしたイットリウム鉄ガーネットを有することを特徴とする請求項12に記載の熱電変換素子。
  14. 前記磁性体膜が、イットリウム鉄ガーネットの鉄サイトを一部不純物置換して保磁力を増強した材料より構成されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  15. 前記磁性体膜と前記電極は、交互に複数積層されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  16. 基板に対して、磁性体を含む溶液を塗布し、加熱により前記磁性体を焼結し、前記磁性体上に電極を成膜することにより請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱電変換素子を製造することを特徴とする、熱電変換素子の製造方法。
  17. 基板に対して、エアロゾルデポジション法を用いて磁性体を含む粒子を吹き付けることにより磁性体膜を形成し、前記磁性体膜上に電極を成膜することにより請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱電変換素子を製造することを特徴とする、熱電変換素子の製造方法。
  18. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱電変換素子の前記磁性体膜に温度勾配を印加することにより、前記磁性体膜から前記電極に向けて流れるスピン流を生成し、前記電極における逆スピンホール効果により、前記磁性体膜の磁化方向と垂直方向に電流を生じさせることを特徴とする熱電変換方法。
  19. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱電変換素子の前記基板の、前記磁性体膜が設けられた面側を低温側とし、他方の面側を高温側として温度差を印加することを特徴とする、熱電変換方法。
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