JP2014072250A - 熱電変換素子及びその製造方法 - Google Patents
熱電変換素子及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2014072250A JP2014072250A JP2012215163A JP2012215163A JP2014072250A JP 2014072250 A JP2014072250 A JP 2014072250A JP 2012215163 A JP2012215163 A JP 2012215163A JP 2012215163 A JP2012215163 A JP 2012215163A JP 2014072250 A JP2014072250 A JP 2014072250A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- spin
- layer
- magnetic
- electromotive
- thermoelectric conversion
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Hall/Mr Elements (AREA)
Abstract
【課題】スピン流を利用した熱電変換素子においてスピン注入効率を向上させること。
【解決手段】熱電変換素子は、面内方向の磁化成分を有する磁性体層と、スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層と、スピン注入層と、を備える。スピン注入層は、磁性体層と起電体層との間に設けられ、磁性体層と起電体層の両方に磁気的に結合する。スピン注入層の単位体積当たりの磁気モーメントは、磁性体層の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい。
【選択図】図2
【解決手段】熱電変換素子は、面内方向の磁化成分を有する磁性体層と、スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層と、スピン注入層と、を備える。スピン注入層は、磁性体層と起電体層との間に設けられ、磁性体層と起電体層の両方に磁気的に結合する。スピン注入層の単位体積当たりの磁気モーメントは、磁性体層の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい。
【選択図】図2
Description
本発明は、スピンゼーベック効果及び逆スピンホール効果を利用した熱電変換素子、及びその製造方法に関する。
近年、「スピントロニクス(spintronics)」と呼ばれる電子技術が脚光を浴びている。従来のエレクトロニクスは、電子の1つの性質である「電荷」だけを利用してきたが、スピントロニクスは、それに加えて、電子の他の性質である「スピン」をも積極的に利用する。特に、電子のスピン角運動量の流れである「スピン流(spin-current)」は重要な概念である。スピン流のエネルギー散逸は少ないため、スピン流を利用することによって高効率な情報伝達を実現できる可能性がある。従って、スピン流の生成、検出、制御は重要なテーマである。
例えば、電流が流れるとスピン流が生成される現象が知られている。これは、「スピンホール効果(spin-Hall
effect)」と呼ばれている。また、その逆の現象として、スピン流が流れると起電力が発生することも知られている。これは、「逆スピンホール効果(inverse spin-Hall effect)」と呼ばれている。逆スピンホール効果を利用することによって、スピン流を検出することができる。尚、スピンホール効果も逆スピンホール効果も、「スピン軌道相互作用(spin orbit coupling)」が大きな物質(例:Pt、Pd)において有意に発現する。
effect)」と呼ばれている。また、その逆の現象として、スピン流が流れると起電力が発生することも知られている。これは、「逆スピンホール効果(inverse spin-Hall effect)」と呼ばれている。逆スピンホール効果を利用することによって、スピン流を検出することができる。尚、スピンホール効果も逆スピンホール効果も、「スピン軌道相互作用(spin orbit coupling)」が大きな物質(例:Pt、Pd)において有意に発現する。
また最近の研究により、磁性体における「スピンゼーベック効果(spin-Seebeck effect)」の存在も明らかになっている。スピンゼーベック効果とは、磁性体に温度勾配が印加されると、温度勾配と平行方向にスピン流が誘起される現象である(例えば、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2を参照)。すなわち、スピンゼーベック効果により、熱がスピン流に変換される(熱スピン流変換)。特許文献1では、強磁性金属であるNiFe膜におけるスピンゼーベック効果が報告されている。非特許文献1、2では、イットリウム鉄ガーネット(YIG、Y3Fe5O12)といった磁性絶縁体と金属膜とを用いて観測したスピンゼーベック効果が報告されている。
尚、温度勾配によって誘起されたスピン流は、上述の逆スピンホール効果を利用して電界(電流、電圧)に変換することが可能である。つまり、スピンゼーベック効果と逆スピンホール効果を併せて利用することによって、温度勾配を電気に変換する「熱電変換」が可能となる。
図1は、特許文献1に開示されている熱電変換素子の構成を示している。サファイア基板101の上に熱スピン流変換部102が形成されている。熱スピン流変換部102は、Ta膜103、PdPtMn膜104及びNiFe膜105の積層構造を有している。NiFe膜105は、面内方向の磁化を有している。更に、NiFe膜105上にはPt膜106が形成されており、そのPt膜106の両端は端子107−1、107−2にそれぞれ接続されている。
このように構成された熱電変換素子において、NiFe膜105が、スピンゼーベック効果によって温度勾配からスピン流を生成する役割を果たし、Pt膜106が、逆スピンホール効果によってスピン流から起電力を生成する役割を果たす。具体的には、NiFe膜105の面内方向に温度勾配が印加されると、スピンゼーベック効果により、その温度勾配と平行な方向にスピン流が発生する。すると、NiFe膜105からPt膜106にスピン流が流れ込む、あるいは、Pt膜106からNiFe膜105にスピン流が流れ出す。Pt膜106では、逆スピンホール効果により、スピン流方向とNiFe磁化方向とに直交する方向に起電力が生成される。その起電力は、Pt膜106の両端に設けられた端子107−1、107−2から取り出すことができる。
上記のような熱電変換素子において得られる起電力の大きさは、次の3つのパラメータに依存する:(1)磁性体膜で発生するスピン流の大きさ、(2)スピン注入効率、すなわち、磁性体膜と金属膜との界面におけるスピン流の注入効率、及び(3)起電力変換効率、すなわち、金属膜における逆スピンホール効果によるスピン流から起電力への変換効率。従って、より出力の大きいスピン流熱電変換素子を得るためには、これら3つのパラメータを同時に向上させることが重要である。
これら3つのパラメータのうちスピン注入効率の向上に関連する技術として、次のものが知られている。
非特許文献3には、磁性体膜であるYIG膜と金属膜であるAu膜との界面で生じるスピン流について強磁性共鳴(FMR)法を用いて調べた結果が示されている。それによれば、スピン拡散長(35nm)よりも薄いAu膜をYIG膜とFe薄膜で挟んだYIG/Au/Fe/Au構造の場合に、大きなスピン流が得られる。
非特許文献4にも、YIG/Au/Fe/Au多層構造が示されている。この多層構造を作製する際に、Arイオンスパッタによって界面の清浄化が行われる。それにより、多層構造を持たない単なるYIG/Auの界面の場合と比較して、最大5倍のスピン流を得ることが可能となる。
非特許文献5は、YIG/Fe/Ag構造の場合に、YIGとAgの界面の単位面積当たりの磁気モーメント密度に依存してスピンミキシングコンダクタンス(スピン注入効率に寄与するパラメータ)が最大65%増大するという第一原理計算の結果を開示している。この結果は、界面の鉄原子密度がスピンミキシングコンダクタンスの増減に関与することを示唆する結果である。その一方で、非特許文献4は、同じYIG/Fe/Au構造において、Fe膜の厚さが1原子層程度に薄い場合にはスピン注入効率に変化はないが、1原子層よりも厚くなる場合には逆にスピン流の障壁になる実験結果を開示している。
Uchida et al., "SpinSeebeck insulator", Nature Materials, 2010, vol. 9,p.894.
Uchida et al., "Observationof longitudinal spin-Seebeck effect in magnetic insulators", Applied Physics Letters, 2010, vol.97, p172505.
Heinrich et al., "SpinPumping at the Magnetic insulator (YIG)/Normal Metal(Au) Interfaces", Physical Review Letters, 2011, vol. 107, p066604.
Burrowes et al., "Enhancementspin pumping at yttrium iron garnet/Au interfaces",Applied Physics Letters, 2012, vol. 100, p092403.
Jia et al., "Spintransfer torque on magnetic insulators", EurophysicsLetters, 2011, vol. 96, p17005.
本発明の1つの目的は、スピン流を利用した熱電変換素子においてスピン注入効率を向上させることができる技術を提供することにある。
本発明の1つの観点において、熱電変換素子が提供される。その熱電変換素子は、面内方向の磁化成分を有する磁性体層と、スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層と、スピン注入層と、を備える。スピン注入層は、磁性体層と起電体層との間に設けられ、磁性体層と起電体層の両方に磁気的に結合する。スピン注入層の単位体積当たりの磁気モーメントは、磁性体層の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい。
本発明の他の観点において、熱電変換素子の製造方法が提供される。その製造方法は、面内方向の磁化成分を有する磁性体層を形成するステップと、スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層を形成するステップと、スピン注入層を形成するステップと、を含む。スピン注入層は、磁性体層と起電体層との間に形成され、磁性体層と起電体層の両方に磁気的に結合する。スピン注入層の単位体積当たりの磁気モーメントは、磁性体層の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい。
本発明によれば、スピン流を利用した熱電変換素子においてスピン注入効率を向上させることが可能となる。
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
1.熱電変換素子の構成
1−1.基本構成
図2は、本発明の実施の形態に係るスピン流熱電変換素子1を概略的に示している。スピン流熱電変換素子1は、基本構成として、磁性体層2、起電体層3、及び電力取り出し端子5を備えている。
1−1.基本構成
図2は、本発明の実施の形態に係るスピン流熱電変換素子1を概略的に示している。スピン流熱電変換素子1は、基本構成として、磁性体層2、起電体層3、及び電力取り出し端子5を備えている。
磁性体層2は、面内方向の磁化成分を有している。また、磁性体層2は、スピンゼーベック効果を発現する材料により形成され、温度勾配の印加によりスピン流を生成する。磁性体層2の材料は、強磁性金属であってもよいし、磁性絶縁体であってもよい。強磁性金属としては、NiFe、CoFe、CoFeBなどが挙げられる。磁性絶縁体としては、イットリウム鉄ガーネット(YIG,Y3Fe5O12)、ビスマス(Bi)をドープしたYIG(Bi:YIG)、ランタン(La)を添加したYIG(LaY2Fe5O12)、イットリウムガリウム鉄ガーネット(Y3Fe5−xGaxO12)などが挙げられる。尚、電子による熱伝導を抑えるという観点から言えば、磁性絶縁体を用いることが望ましい。
起電体層3は、生成されたスピン流を起電力に変換する。この起電体層3は、逆スピンホール効果(スピン軌道相互作用)を発現する材料で形成される。より詳細には、起電体層3の材料は、スピン軌道相互作用の大きな金属材料を含有する。例えば、スピン軌道相互作用の比較的大きなAuやPt、Pd、Ir、その他d軌道やf軌道を有する遷移金属、またはそれらを含有する合金材料を用いる。また、Cuなどの一般的な金属膜材料に、Au、Pt、Pd、Irなどの材料を0.5〜10%程度ドープするだけでも、同様の効果を得ることができる。また、遷移金属の中でもW、Ta、Mo、Nb、Cr、V、Tiを用いると、Au、Pt、Pd、Irや、それらを含有する合金の場合とは逆符号の電圧を得ることが出来る。中でも、WやTaは、Pt、Pdよりも安価で、耐久性にも優れている上、Ptに次ぐスピン流-電流変換効率を発生する材料であるため効果的である。あるいは、起電体層3は、ITOなどの酸化物や、半導体であってもよい。尚、効率の観点から言えば、起電体層3の厚さを、材料に依存する「スピン拡散長(スピン緩和長)」程度に設定することが望ましい。例えば、起電体層3がPt膜である場合、その厚さを10〜30nm程度に設定することが好ましい。
電力取り出し端子5は、起電体層3で生成された起電力を取り出すために設けられている。
図3は、上記のような基本構成を有するスピン流熱電変換素子1における熱スピン流−起電力変換を説明する概略図である。磁性体層2は、x方向の磁化Mを有している。起電体層3は、磁性体層2上に形成されている。これら磁性体層2と起電体層3の積層構造に対して面直方向(z方向)の温度勾配が印加された場合を考える。この場合、磁性体層2のスピン同士の相互作用を介してスピン流が生じ、磁性体層2と起電体層3との界面において、起電体層3の伝導電子にスピン角運動量を受け渡す形でスピン注入が生じる。その結果、起電体層3には、電流を伴わない「純スピン流」が生じる。更に、起電体層3における逆スピンホール効果によって、純スピン流の一部が−y方向の電流(起電力)に変換される。
起電体層3に注入される純スピン流では、アップスピンによる流れとダウンスピンによる流れは、逆方向であるが、その絶対量は同じである。その一方で、スピン注入を担う磁性体層2はある程度の大きさの磁気モーメントを有しており、界面近傍の局在スピンは大きく偏極している。従って、実質的なスピン注入効率は、界面において量が少ない向きのスピンの量によって制限されてしまう。そのようなスピン注入効率の低下を抑制するために、本実施の形態に係るスピン流熱電変換素子1には、「スピン注入層4」が更に設けられている(図2参照)。
1−2.スピン注入層4
図2に示されるように、スピン注入層4は、磁性体層2から起電体層3へのスピン注入効率を向上させるためのインターフェースとして設けられている。そのために、スピン注入層4は、磁性体層2と起電体層3との間に形成されている。スピン注入層4は、典型的には、磁性体層2と起電体層3の両方に接触するように形成されるが、それに限られない。
図2に示されるように、スピン注入層4は、磁性体層2から起電体層3へのスピン注入効率を向上させるためのインターフェースとして設けられている。そのために、スピン注入層4は、磁性体層2と起電体層3との間に形成されている。スピン注入層4は、典型的には、磁性体層2と起電体層3の両方に接触するように形成されるが、それに限られない。
また、スピン注入層4は、磁性体層2と起電体層3の両方に磁気的に結合するように形成されている。ここで、磁気的に結合する状態とは、スピン角運動量の伝搬が生じる状態を意味する。スピン角運動量の伝搬は、次のような要因により生じる:(1)スピン偏極した伝導電子やホールの移動による伝搬、(2)純スピン流(スピンを持った伝導電子やホールの移動が介在するが、電流は伴わず、スピン流だけが流れる状態)による伝搬、(3)スピン同士の相互作用によって生じるスピン波やマグノンの伝搬、スピン密度波の伝搬等。よって、磁気的に結合している状態を実現するためには、スピン注入層4と磁性体層2、起電体層3とは必ずしも接触している必要はない。障壁を超えたスピンキャリアのトンネリングや、スピン−スピン相互作用が実現されさえすれば、スピン注入層4と磁性体層2、起電体層3とは多少離れていてもよい。
スピン注入層4の特性は、次の通りである。上述の通り、起電体層3に注入される純スピン流では、アップスピンによる流れとダウンスピンによる流れは、逆方向であるが、その絶対量は同じである。スピン注入を担う側において局在スピンが大きく偏極していると、実質的なスピン注入効率は、量が少ない向きのスピンの量によって制限されてしまう。そこで、例えば、アップスピンとダウンスピンが同量存在する「反強磁性体」をスピン注入層4として用いることが考えられる。これにより、起電体層3に対する純スピン流の注入効率の低下を抑制することが可能となる。
また、この原理によれば、スピン注入層4においてアップスピンとダウンスピンは必ずしも同量存在する必要はない。アップスピンとダウンスピンの量が非対称であり、正味の磁気モーメント(磁化)を有する「フェリ磁性体」を、スピン注入層4として用いることも可能である。但し、単純な磁性体層2/起電体層3の積層構造の場合と比較してスピン注入効率を向上させるためには、単位体積(単位胞)当たりの磁気モーメントは、スピン注入層4の方が磁性体層2よりも小さいことが望ましい。
但し、スピン注入層4に、ほとんどスピンを持たない非磁性体を用いることは好ましくない。磁性体層と同様にスピンを持った電子や原子核が存在する磁性体でありながらも、超交換相互作用などによって反平行にスピンが配向した結果、マクロな磁気モーメントだけが小さくなったフェリ磁性体や反強磁性体などの材料が好ましい。
さらに、非特許文献5などに開示されているスピン注入の原理を考慮すると、スピン流熱電変換素子の磁性体/起電体界面に接するスピンの絶対量、つまり向き(符号)を考慮しないスピンの量は、より多い方が好ましいと言える。従って、スピン注入層4についても同様に、スピンの絶対量が多い方が好ましいと言える。
よって、スピン注入層4のアップスピン密度とダウンスピン密度の少なくとも一方が、磁性体層2の対応するスピン密度よりも大きいことが好ましい。
スピン注入層4の材料の具体例としては、次のものが挙げられる:外殻にd軌道やf軌道を有する遷移金属や希土類元素、またはそれらを含有する合金材料、遷移金属や希土類元素を少なくとも一種類含む酸化物、炭化物、窒化物など。具体的には、マンガンやクロム、マンガンとイリジウムの合金(Mn80Ir20など)、フェライトと呼ばれるマンガン、鉄、コバルト、ニッケルを含む酸化物などを用いることが出来る。
尚、磁性体層2が強磁性金属である場合、スピン注入層4は絶縁性材料で形成されてもよい。この場合、起電体層3で発生した電流が磁性体層2に流れ込んで取り出し電力が低下してしまうことが防止される。すなわち、実質的な起電力変換効率の低下が防止され、好適である。
以上に説明されたように、本実施の形態に係るスピン流熱電変換素子1には、スピン注入層4が設けられている。スピン注入層4の単位体積当たりの磁気モーメントは、磁性体層2の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい。そのようなスピン注入層4として、反強磁性体を用いることもできるし、正味の磁気モーメントを有するフェリ磁性体を用いることもできる。このようにスピン注入層4を設けることによって、スピン注入効率が向上する。結果として、高出力、高効率のスピン流熱電変換素子1を実現することが可能となる。
2.製造方法
次に、本実施の形態に係るスピン流熱電変換素子1の製造方法を説明する。
次に、本実施の形態に係るスピン流熱電変換素子1の製造方法を説明する。
磁性体層2の形成方法としては、スパッタ法、有機金属分解法(MOD法)、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法(AD法)、フェライトめっき法、液相エピタキシー法、固相エピタキシー法、気相エピタキシー法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、印刷法などが挙げられる。これらの場合、磁性体層2は何らかの支持体上に成膜される。その他、磁性体層2の形成方法としては、結晶引き上げ法、線引き炉を用いた磁性絶縁体ファイバ作製法、焼結法、溶融法等も可能である。これらの場合、バルク体の磁性体層2が形成される。
スピン注入層4の形成方法としては、スパッタ法、有機金属分解法(MOD法)、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法(AD法)、フェライトめっき法、液相エピタキシー法、固相エピタキシー法、気相エピタキシー法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、印刷法などが挙げられる。尚、磁気モーメントを磁性体層2よりも小さくすることができさえすれば、スピン注入層4の膜厚に関して特に制限はない。
起電体層3の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法、スピンコート法などが挙げられる。また、ナノコロイド溶液の塗布・焼結を用いることもできる。起電体層3の膜厚は、少なくともスピン拡散長(スピン流が起電体層3内に侵入する深さ)以上に設定することが好ましい。例えば、Auであれば50nm以上、Ptであれば10nm以上に設定することが好ましい。但し、コストの観点から、起電体層3を無駄に厚くする必要はない。
電力取り出し端子5は、適宜既存の実装技術を用いて形成することが出来る。電力取り出し端子5は少なくとも二つ存在する。それら電力取り出し端子5は、起電体層3において発生する起電力を最大限に取り出せるように配置することが好ましい。
磁性体層2、スピン注入層4、起電体層3、電力取り出し端子5を作製する順番は任意である。例えば、磁性体層2、スピン注入層4、起電体層3、電力取り出し端子5の順で作製することもできるし、その逆の順番で作製することが出来る。後述するように、場合によっては磁性体層2と起電体層3を続けて作製した後に、スピン注入層4を作製することも可能である。
3.具体例
次に、本実施の形態の具体例を、説明する。
次に、本実施の形態の具体例を、説明する。
3−1.第1の例
第1の例では、厚さ700μmのガドリニウムガリウムガーネット(GGG)の結晶性基板上に、スピン流熱電変換素子1を作製した。
第1の例では、厚さ700μmのガドリニウムガリウムガーネット(GGG)の結晶性基板上に、スピン流熱電変換素子1を作製した。
磁性体層2として、ビスマス置換イットリウム鉄ガーネット(Bi:YIG、組成はBiY2Fe5O12)膜を形成した。そのBi:YIG膜は、有機金属分解法(MOD法)により成膜した。溶液は高純度化学研究所(株)製のMOD溶液を用いた。この溶液中では、適切なモル比率(Bi:Y:Fe=1:2:5)からなる金属原材料が、カルボキシル化された状態で酢酸エステル中に3%の濃度で溶解されている。この溶液をスピンコート(回転数1000rpm、30s回転)でGGG基板上に塗布した。そして、150℃のホットプレートで5分間乾燥させた後、500℃で5分間の仮アニールを行った。最後に、電気炉中で700℃の高温かつ大気雰囲気下で14時間かけて本アニールを行った。これにより、石英ガラス基板上に膜厚約65nmの結晶性Bi:YIG膜が形成された。
スピン注入層4として、酸化ニッケル(NiO)膜を形成した。具体的には、アニソール溶媒の1%PMMA(Mw=495kDa)10mlに対し、0.1gのニケロセンを添加した溶液を、YIG膜上に3000rpmで1分間スピンコートした。その後、400度大気中で60分焼成処理を施した。これにより、厚さ約0.3〜0.5nmの酸化ニッケル薄膜が形成された。
起電体層3として、10nmのPt膜をスパッタ蒸着した。
その後、2x8mmの短冊状に基板を切断することにより、評価用素子を作製した。そして、その評価用素子を用いることによって、熱電変換性能の測定を行った。図4は、その測定結果を示している。ここでは、基板も含めた全体の厚み方向に7.9Kの温度差が印加された。また、スピンゼーベック信号を確認するために、外部磁場を印可し、素子の磁化反転に応じて出力電圧が反転する様子を測定した。そして、出力電圧が飽和したときの値を用いて、この素子のスピンゼーベック係数を算出した。その結果、スピン注入層4(NiO)がある場合のスピンゼーベック係数は、12.0μV/7.9K=1.52[μV/K]と算出された。比較例として、スピン注入層4(NiO)がない場合、スピンゼーベック係数は、6.0μV/7.9K=0.76[μV/K]と算出された。このように、本例によれば、ほぼ倍のスピンゼーベック係数を得ることが出来た。
3−2.第2の例
第2の例では、厚さ450μmのシリコン基板上に20nmの熱酸化シリコンを形成した基板を用いた。磁性体層2及び起電体層3は、上記第1の例の場合と同様である。
第2の例では、厚さ450μmのシリコン基板上に20nmの熱酸化シリコンを形成した基板を用いた。磁性体層2及び起電体層3は、上記第1の例の場合と同様である。
スピン注入層4は、次の通りである。すなわち、塩化鉄あるいは塩化ニッケルの溶液を、YIG膜上に3000rpmで1分間スピンコートした。このときの塩化鉄あるいは塩化ニッケルの濃度は、表1に示される通りである。その後、酸素分圧50Pa、RF出力300Wで発生させた酸素プラズマ下で、5分間処理を施した。酸素プラズマ処理後の塩化鉄膜あるいは塩化ニッケル膜は、ほぼ酸化鉄あるいは酸化ニッケルに変わり、少量の塩素が不純物として表面に存在している状況であると予想される。酸化鉄あるいは酸化ニッケルの詳細な膜厚は不明であるが、恐らく1nm以下の非常に薄い膜であると思われる。
第1の例の場合と同様に、評価用素子を作製し、熱電変換性能の測定を行った。表1は、その測定結果を示している。本例のスピン注入層4を導入することによって、スピンゼーベック係数が増加することが確認された。その増加率は最大51%であった。
3−3.第3の例
第3の例では、上記第1の例と同様に、厚さ700μmのガドリニウムガリウムガーネット(GGG)の結晶性基板上に、厚さ65nmのBi:YIG膜が磁性体層2として形成された。
第3の例では、上記第1の例と同様に、厚さ700μmのガドリニウムガリウムガーネット(GGG)の結晶性基板上に、厚さ65nmのBi:YIG膜が磁性体層2として形成された。
次に、電子線加熱蒸着装置を用いることにより、スピン注入層4の前駆体として0.5nmのNi膜を蒸着し、続いて、起電体層3として10nmのPt膜を蒸着した。その後、600度に加熱した大気中で5分、焼成処理を行った。焼成処理を行ったあとのNi膜は、薄いPt膜を透過した酸素や、磁性体層2中にもともと存在する酸素と反応して、密な酸化ニッケル膜となったと考えられる。
その結果、スピン注入層4がない場合と比較して、1.5倍から2.5倍の出力電圧が得られることが確認された。
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
面内方向の磁化成分を有する磁性体層と、
スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層と、
前記磁性体層と前記起電体層との間に設けられ、前記磁性体層と前記起電体層の両方に磁気的に結合するスピン注入層と
を備え、
前記スピン注入層の単位体積当たりの磁気モーメントは、前記磁性体層の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい
熱電変換素子。
面内方向の磁化成分を有する磁性体層と、
スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層と、
前記磁性体層と前記起電体層との間に設けられ、前記磁性体層と前記起電体層の両方に磁気的に結合するスピン注入層と
を備え、
前記スピン注入層の単位体積当たりの磁気モーメントは、前記磁性体層の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい
熱電変換素子。
(付記2)
付記1に記載の熱電変換素子であって、
前記スピン注入層は、反強磁性体である
熱電変換素子。
付記1に記載の熱電変換素子であって、
前記スピン注入層は、反強磁性体である
熱電変換素子。
(付記3)
付記1に記載の熱電変換素子であって、
前記スピン注入層は、フェリ磁性体であり、
熱電変換素子。
付記1に記載の熱電変換素子であって、
前記スピン注入層は、フェリ磁性体であり、
熱電変換素子。
(付記4)
付記1乃至3のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
前記スピン注入層のアップスピン密度とダウンスピン密度の少なくとも一方が、前記磁性体層の対応するスピン密度よりも大きい
熱電変換素子。
付記1乃至3のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
前記スピン注入層のアップスピン密度とダウンスピン密度の少なくとも一方が、前記磁性体層の対応するスピン密度よりも大きい
熱電変換素子。
(付記5)
付記1乃至4のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
前記磁性体層は、強磁性金属であり、
前記スピン注入層は、絶縁体である
熱電変換素子。
付記1乃至4のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
前記磁性体層は、強磁性金属であり、
前記スピン注入層は、絶縁体である
熱電変換素子。
(付記6)
面内方向の磁化成分を有する磁性体層を形成するステップと、
スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層を形成するステップと、
スピン注入層を形成するステップと
を含み、
前記スピン注入層は、前記磁性体層と前記起電体層との間に形成され、前記磁性体層と前記起電体層の両方に磁気的に結合し、
前記スピン注入層の単位体積当たりの磁気モーメントは、前記磁性体層の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい
熱電変換素子の製造方法。
面内方向の磁化成分を有する磁性体層を形成するステップと、
スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層を形成するステップと、
スピン注入層を形成するステップと
を含み、
前記スピン注入層は、前記磁性体層と前記起電体層との間に形成され、前記磁性体層と前記起電体層の両方に磁気的に結合し、
前記スピン注入層の単位体積当たりの磁気モーメントは、前記磁性体層の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい
熱電変換素子の製造方法。
1 スピン流熱電変換素子
2 磁性体層
3 起電体層
4 スピン注入層
5 電力取り出し端子
2 磁性体層
3 起電体層
4 スピン注入層
5 電力取り出し端子
Claims (6)
- 面内方向の磁化成分を有する磁性体層と、
スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層と、
前記磁性体層と前記起電体層との間に設けられ、前記磁性体層と前記起電体層の両方に磁気的に結合するスピン注入層と
を備え、
前記スピン注入層の単位体積当たりの磁気モーメントは、前記磁性体層の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい
熱電変換素子。 - 請求項1に記載の熱電変換素子であって、
前記スピン注入層は、反強磁性体である
熱電変換素子。 - 請求項1に記載の熱電変換素子であって、
前記スピン注入層は、フェリ磁性体であり、
熱電変換素子。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
前記スピン注入層のアップスピン密度とダウンスピン密度の少なくとも一方が、前記磁性体層の対応するスピン密度よりも大きい
熱電変換素子。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱電変換素子であって、
前記磁性体層は、強磁性金属であり、
前記スピン注入層は、絶縁体である
熱電変換素子。 - 面内方向の磁化成分を有する磁性体層を形成するステップと、
スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層を形成するステップと、
スピン注入層を形成するステップと
を含み、
前記スピン注入層は、前記磁性体層と前記起電体層との間に形成され、前記磁性体層と前記起電体層の両方に磁気的に結合し、
前記スピン注入層の単位体積当たりの磁気モーメントは、前記磁性体層の単位体積当たりの磁気モーメントよりも小さい
熱電変換素子の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012215163A JP2014072250A (ja) | 2012-09-27 | 2012-09-27 | 熱電変換素子及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012215163A JP2014072250A (ja) | 2012-09-27 | 2012-09-27 | 熱電変換素子及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2014072250A true JP2014072250A (ja) | 2014-04-21 |
Family
ID=50747230
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012215163A Pending JP2014072250A (ja) | 2012-09-27 | 2012-09-27 | 熱電変換素子及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2014072250A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20160054993A (ko) * | 2014-11-07 | 2016-05-17 | 현대자동차주식회사 | 차량용 열전 발전 구조 |
JP2016103535A (ja) * | 2014-11-27 | 2016-06-02 | トヨタ自動車株式会社 | 熱電体 |
JP2017106295A (ja) * | 2015-12-04 | 2017-06-15 | マックス建材株式会社 | 瓦葺屋根及び金属瓦 |
JP2019087697A (ja) * | 2017-11-09 | 2019-06-06 | 株式会社日立製作所 | 熱電変換装置および熱輸送システム |
-
2012
- 2012-09-27 JP JP2012215163A patent/JP2014072250A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20160054993A (ko) * | 2014-11-07 | 2016-05-17 | 현대자동차주식회사 | 차량용 열전 발전 구조 |
KR101673693B1 (ko) | 2014-11-07 | 2016-11-07 | 현대자동차주식회사 | 차량용 열전 발전 구조 |
JP2016103535A (ja) * | 2014-11-27 | 2016-06-02 | トヨタ自動車株式会社 | 熱電体 |
JP2017106295A (ja) * | 2015-12-04 | 2017-06-15 | マックス建材株式会社 | 瓦葺屋根及び金属瓦 |
JP2019087697A (ja) * | 2017-11-09 | 2019-06-06 | 株式会社日立製作所 | 熱電変換装置および熱輸送システム |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5991589B2 (ja) | 熱電変換素子、熱電変換素子の製造方法および熱電変換方法 | |
JP5585314B2 (ja) | 熱電変換素子及び熱電変換装置 | |
JP6233320B2 (ja) | 熱電変換素子及びその製造方法 | |
Li et al. | Thermally stable voltage-controlled perpendicular magnetic anisotropy in Mo| CoFeB| MgO structures | |
WO2009151000A1 (ja) | 熱電変換素子 | |
JP6233311B2 (ja) | 熱電変換素子及びその製造方法 | |
JP2014072250A (ja) | 熱電変換素子及びその製造方法 | |
JP6066091B2 (ja) | 熱電変換素子及びその製造方法 | |
Roy et al. | Spin-transfer-torque switching in spin valve structures with perpendicular, canted, and in-plane magnetic anisotropies | |
Thota et al. | Finite-size scaling and exchange-bias in SrRuO3/LaNiO3/SrRuO3 trilayers | |
JP6349863B2 (ja) | スピン流熱電変換素子とその製造方法および熱電変換装置 | |
Jin et al. | Spin valve effect of the interfacial spin accumulation in yttrium iron garnet/platinum bilayers | |
Fang et al. | Observation of the Fluctuation Spin Hall Effect in a Low-Resistivity Antiferromagnet | |
Wu et al. | A separation of antiferromagnetic spin motion modes in the training effect of exchange biased Co/CoO film with in-plane anisotropy | |
Zhao et al. | Strong magnetoelectric coupling in Tb–Fe∕ Pb (Zr0. 52Ti0. 48) O3 thin-film heterostructure prepared by low energy cluster beam deposition | |
WO2018146713A1 (ja) | 熱電変換素子およびその製造方法 | |
WO2013047253A1 (ja) | 熱電変換素子及びその製造方法 | |
WO2017082266A1 (ja) | 熱電変換素子用起電膜及び熱電変換素子 | |
JP6172439B2 (ja) | スピン流熱電変換素子 | |
Hassen et al. | Room temperature magnetoresistance in CoFeB/SrTiO3/CoFeB magnetic tunnel junctions deposited by ion beam sputtering | |
JP6225167B2 (ja) | 保護層を中心に有するスピン注入デバイス | |
JP6519230B2 (ja) | 熱電変換素子とその製造方法 | |
JP6413466B2 (ja) | 熱電変換素子 | |
WO2023054583A1 (ja) | 熱電体、熱電発電素子、多層熱電体、多層熱電発電素子、熱電発電機、及び熱流センサ | |
Fang et al. | Observation of Fluctuation Spin Hall Effect in Antiferromagnet |