JP5987242B2 - 熱電変換素子および熱電変換方法 - Google Patents

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Description

本発明は、磁性体を用いた熱電変換素子及び熱電変換方法に関する。
近年、持続可能な社会に向けた環境・エネルギー問題への取り組みが活発化する中で、熱電変換素子への期待が高まっている。
これは、熱は体温、太陽光、エンジン、工業排熱など様々な媒体から得ることができる最も一般的なエネルギー源であるためである。
そのため、低炭素社会におけるエネルギー利用の高効率化や、ユビキタス端末・センサ等への給電といった用途において、熱電変換素子は今後ますます重要となることが予想される。
熱電変換で発電するには、様々な熱源によって生成される温度差(温度勾配)を適切に利用する必要がある。従来一般的に用いられているのは、熱源面に対して垂直方向(面直方向)の温度勾配である。例えば、高温熱源面に熱電モジュールを貼り付ける場合、高温熱源に接する高温側と、その反対の低温側(空冷や水冷されている側)との間で温度差が生じることで、発電が可能となる。
しかし、今後身の回りの熱をより無駄なく発電に利用するためには、前述の面直方向だけでなく、熱源の面内方向の温度勾配をも有効活用することが不可欠である。実際、建築物やIT機器では、様々な場面で不均一な面内温度分布が生じる。例えばディスプレイでは、煙突効果のために上部が下部に比べ高い温度をもつようになる。また、サーバなどでも発熱が場所によって不均一になる。従って、このように身近なアンビエント熱エネルギーを可能な限り無駄なく有効に利用するためには、面直方向と同時に面内方向の温度勾配をも電力に変換できる、面直・面内両用の熱電変換素子が求められる。
しかしながら、ゼーベック係数の異なる2つの熱電材料の対からなる熱電対ベースの従来型熱電変換素子では、熱電対が配置された方向によって熱電変換可能な温度勾配方向が規定されている。すなわち、熱電対構造に対して平行な方向の温度勾配しか熱起電力に変換されないことから、熱電発電に利用できる温度勾配は一方向に限られていた。従って、熱電対ベースの従来型熱電変換素子では、熱源の面直・面内両方の温度勾配を同時に電力に変換することは不可能であった。
一方、近年、磁性材料に温度勾配を印加して、スピン角運動量の流れを生じさせるスピンゼーベック効果という新しい効果が発見された。特許文献1、非特許文献1、2には、このスピンゼーベック効果に基づく熱電変換素子が記載されており、スピンゼーベック効果によって生じた角運動量の流れ(スピン流)を、逆スピンホール効果によって電流(起電力)として取り出す構造が示されている(特許文献1、非特許文献1、2)。
例えば特許文献1に記載されている熱電変換素子は、スパッタ法により成膜した強磁性体膜と電極とで構成されている。強磁性体膜面に平行な方向の温度勾配を与えると、スピンゼーベック効果によって、温度勾配に沿った方向にスピン流が誘起される。この誘起されたスピン流は、磁性体に接する電極における逆スピンホール効果によって、電流として外部に取り出すことができる。これにより、熱から電力を取り出す温度差発電が可能となる。
また、非特許文献1、2に記載されている熱電変換素子では、磁性体と電極により熱電変換素子が形成されている。非特許文献1では、特許文献1と同じく、磁性体膜面に平行な温度勾配(面内温度勾配)を印加した配置による熱電変換が報告されている。また、非特許文献2では、厚さ1mmの磁性体膜面に垂直な温度勾配(面直温度勾配)を印加した配置によって熱電変換が実証されている。
従来の熱電変換素子が2種類の熱電材料の対(熱電対)を並べることで構成されているのに対し、スピンゼーベック効果では、磁性体中の上向きスピンチャネルと下向きスピンチャネルが2つの異なる熱電チャネル対に相当する。すなわち、磁性体材料中に熱電対の機能が埋め込まれているものと考えることができる。従って、原理的には任意の温度勾配方向に対してスピン流の生成が可能となる。
特開2009−130070号公報
Uchida et al.,"Spin Seebeck insulator",Nature Materials,2010,vol.9,p.894. Uchida et al.,"Observation of longitudinal spin−Seebeck effect in magnetic insulators",Applied Physics Letters,2010,vol.97,p172505.
特許文献1、および非特許文献1、2のような、スピンゼーベック効果を利用した熱電変換素子は、低コストで大面積化が容易であり、薄膜熱電変換が可能であるという点では優れた構造である。
しかし、面内温度勾配と面直温度勾配の両方を同時に電力に高効率変換できる熱電変換素子は未だに実現されていない。特許文献1、非特許文献1、2に開示されている熱電変換素子はいずれも、面内あるいは面直いずれか一方の温度勾配を電力に変換することに特化して、磁性体、基板、および電極などの、材料、形状、配置、およびその熱伝導特性(例えば熱伝導率)などが選択されている。面内、面直両方の温度勾配を同時に効率よく電力に変換する熱電変換素子を実現するためには、磁性体、基板、電極などの、材料、形状、配置、およびその熱伝導特性などを詳細に検討し、どのような素子構造が効果的であるかを見出すことが課題であり、いまだ未解決であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、面内温度勾配と面直温度勾配の両方を同時に電力に変換できる熱電変換素子を提供することにある。
前述した目的を達成するために、本発明の第1の態様は、基板に設けられ、膜面に平行な成分を有する所定の方向に磁化可能な磁性体により構成される磁性体膜と、前記磁性体膜に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有し、前記所定の方向に沿って配列された複数の電極と、を有し、前記磁性体膜表面に垂直な温度勾配を、前記電極のいずれかの表面内の電位差として出力可能に、かつ前記磁性体膜表面に平行な温度勾配を、前記電極のいずれかの表面内の電位差として出力可能に構成したことを特徴とする熱電変換素子である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の熱電変換素子の前記磁性体膜に温度勾配を印加することにより、前記磁性体膜から前記電極に向けて流れるスピン流を生成し、前記電極における逆スピンホール効果により、前記所定の方向と垂直方向に電流を生じさせることを特徴とする熱電変換方法である。
本発明によれば、面内温度勾配と面直温度勾配の両方を同時に電力に変換できる熱電変換素子を提供することができる。
図1は、第1の実施形態に係る熱電変換素子1を示す斜視図である。
図2は、熱電変換素子1の面直方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図3は、図2のD1−D1断面図である。
図4は、熱電変換素子1の面内方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図5は、図4のD2−D2断面図である。
図6は、第2の実施形態に係る熱電変換素子1aを示す斜視図および基板4aの部分拡大図である。
図7は、熱電変換素子1aの面直方向に温度勾配が印加された場合の熱伝導特性を示す断面図である。
図8は、熱電変換素子1aの面内方向に温度勾配が印加された場合の熱伝導特性を示す断面図である。
図9は、第3の実施形態に係る熱電変換素子1bを示す斜視図である。
図10は、図9の正面図である。
図11は、図9の裏面図である。
図12は、熱電変換素子1bの面直方向に温度勾配が印加された場合の熱伝導特性を示す断面図である。
図13は、熱電変換素子1bの面内方向に温度勾配が印加された場合の熱伝導特性を示す断面図である。
図14は、熱電変換素子1bの基板4bの作成の手順を示す図である。
図15は、熱電変換素子1bの基板4bの作成の手順を示す図である。
図16は、熱電変換素子1bの基板4bの作成の手順を示す図である。
図17は、第4の実施形態に係る熱電変換素子1cを示す斜視図である。
図18は、熱電変換素子1cの面直方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図19は、図18のD3−D3断面図である。
図20は、熱電変換素子1cの面内方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図21は、図20のD4−D4断面図である。
図22は、第5の実施形態に係る熱電変換素子1dを示す斜視図である。
図23は、熱電変換素子1dの面直方向(z方向)に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図24は、熱電変換素子1dの面内方向(y方向)に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図25は、熱電変換素子1dの面直方向(z方向)に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成性を示す斜視図である。
図26は、熱電変換素子1dの面内方向(x方向)に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図27は、第6の実施形態に係る熱電変換素子1eを示す斜視図である。
図28は、熱電変換素子1eの面直方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図29は、熱電変換素子1eの面内方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図30は、熱電変換素子1eの面直方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図31は、熱電変換素子1eの面内方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図32は、第6の実施形態の変形例である熱電変換素子1fを示す斜視図である。
図33は、熱電変換素子1fの面直方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図34は、熱電変換素子1fの面内方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図35は、第7の実施形態に係る熱電変換素子1gを示す斜視図である。
図36は、熱電変換素子1gの面直方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図37は、熱電変換素子1gの面内方向に温度勾配が印加された場合の熱起電力の生成を示す斜視図である。
図38は、第8の実施形態に係る熱電変換素子1hを示す斜視図である。
図39は、第9の実施形態に係る熱電変換素子1iを示す斜視図である。
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について図1〜図5を参照して詳細に説明する。
最初に、図1を参照して第1の実施形態に係る熱電変換素子1の概略構成について説明する。
図1に示すように、熱電変換素子1は基板4に保持され、温度勾配によりスピン流を発生する磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、逆スピンホール効果を用いてスピン流から熱起電力を取り出すための電極3、3a、3bを有している。なお、磁性体膜2と電極3、3a、3bで発電部を構成している。また、図1における電極3、3a、3bと磁性体膜2の位置関係は、上下逆でも構わない。
電極3(中央電極)は後述するように、面直方向のスピン流を起電力として取り出す電極であり、磁性体膜2の上部中心に設けられている。
電極3a、3b(端部電極)は後述するように、面内方向のスピン流を起電力として取り出す電極であり、互いに対向するように、かつ電極3を挟み込むようにして磁性体膜2の前後端部に配置されている。
ここで、発明者らは、スピンゼーベック効果に基づいて電極配置を詳細に検討した結果、面内方向の温度勾配によって発現するスピン流から可能な限り大きな電力に変換するためには、磁性体の端部に、電極3a、3bを配置することが効果的であることを見出した。さらに、面直方向の温度勾配から電力を得るための電極3は、面積が広いほど得られる電力が大きいが、磁性体膜2の表面のどの位置に配置しても得られる電力が同じであることを見出した。これらの検討の結果、図1のように、電極3a、3bを磁性体膜2の両端に配置し、配置自由度の高い電極3は、電極3a、3bの間に配置した。さらに、図1のように、面直温度勾配から電力を得るための電極3は、大きな電力を得るために、電極3a、3bよりも平面上の面積を広く構成することが好ましい。
また、熱電変換素子1は、電極3上の二点に、熱起電力を取り出すための端子7、9が、電極3a上の二点に、端子7a、9aが、電極3b上の二点に、端子7b、9bがそれぞれ取り付け可能に形成されており、これらの端子で熱起電力出力手段を形成している。
さらに、熱電変換素子1は、必要に応じて、磁性体膜2に温度勾配を与えるための温度勾配印加手段11を有している。
また、熱電変換素子1は、必要に応じて、磁性体膜2を所定の方向(ここでは図1のA方向)に磁化するための磁化手段13を有している。
次に、熱電変換素子1の各要素について、詳細に説明する。
基板4は、磁性体膜2および電極3、3a、3bを支持することができるものであれば材料・構造を問わない。例えば、Si、ガラス、アルミナ、サファイア、ガドリニウムガリウムガーネット(GGG)、ポリイミドなどの材料の基板を用いることができる。また、形状は必ずしも平板状である必要はなく、湾曲や凹凸を有する構造でもよく、さらには建築物などを直接基板4として用いることもできる。また、例えば熱源の上に乗せるといったように、磁性体膜2を熱源に固定できるような構造や状況(即ち、熱源が基板4を兼用できるような構造や状況)であれば、基板4は必ずしも別途必要ではなく、熱源自体を熱電変換素子1を支える基体(基板4)として用いることもできる。
磁性体膜2は、少なくとも1つの磁化方向Aに磁化可能な多結晶磁性体を有している。第1の実施形態では、膜面に平行な一方向に磁化を有しているものとする(磁化方向Aは少なくとも、膜面に平行な成分を有している)。磁性体膜2は、熱伝導率の小さな材料ほど効率よく熱電効果を奏するため、磁性絶縁体であることが好ましい。このような材料としては、例えば、ガーネットフェライト(イットリウム鉄ガーネット等)、スピネルフェライトなどの酸化物磁性材料を適用することができる。
なお、磁性体膜2として、ガーネットフェライトのイットリウムサイトをBi等で一部不純物置換した材料を有してもよい。このようにイットリウムサイトを不純物置換することにより、磁性体膜2と電極3との間のエネルギー準位間の整合が向上すると考えられるため、界面でのスピン流の取り出し効率を増大させ、熱電変換効率を向上させることができる可能性がある。
なお、具体的な組成としては、Bi3−xFe12(0.5≦x≦1.5)で表されるBiをドープしたイットリウム鉄ガーネットが挙げられる。
また、ドープする元素は、磁性体膜2と電極3との間のエネルギー準位間の整合が向上させられるものであればBiに限らず、他の不純物でもよい。
ここで、磁性体膜2の形成方法としては、後述するように、液相エピタキシャル成長(LPE)や、スパッタ、レーザーアブレーション(PLD)、有機金属堆積法(MOD法)、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法(AD法)などの方法が挙げられる。また、引き上げ成長法や焼結などによるバルク磁性体を用いてもよい。
なお、磁性体膜2として保磁力を有する磁性材料を用いれば、一旦外部磁場などで磁化方向を初期化しておけば、ゼロ磁場の下でも動作可能な素子が得られる。
電極3、3a、3bは、逆スピンホール効果を用いて熱起電力を取り出すために、スピン軌道相互作用を有する材料を有している。このような材料としては、例えばスピン軌道相互作用の比較的大きなAuやPt、Pdなどの金属、またはこれらの金属を有する合金が挙げられる。なお、逆スピンホール効果を強めるために、上記した金属・合金にFeやCuなどの不純物を添加した材料を電極3、3a、3bの材料として用いてもよい。
電極3、3a、3bは、スパッタ、蒸着、メッキ法、スクリーン印刷法などで磁性体膜2上に成膜することにより形成される。電極の厚さは、少なくとも電極材料のスピン拡散長以上に設定するのが好ましい。具体的には、例えばAuであれば50nm以上、Ptであれば10nm以上に設定するのが望ましい。
端子7、9、7a、9a、7b、9bは、端子間の電位差を熱起電力として取り出すことができるものであれば、構造、形状、位置は特に問われないが、電位差がなるべく大きくなるようにするため、図1に示すように、磁性体膜2の、磁化方向Aに垂直(端子7、9を結ぶ線分、端子7a、9aを結ぶ線分、および端子7b、9bを結ぶ線分が磁化方向Aに垂直)な両端二箇所に設けるのが望ましい。
温度勾配印加手段11は磁性体膜2に温度勾配を与えることが可能なものであれば何でもよく、各種ヒータ、あるいは体温、太陽光、エンジン、工業排熱等の熱を磁性体膜2に伝達する熱伝導体等を用いることができる。
なお、熱源が、熱を直接磁性体膜に伝えるものである場合は、温度勾配印加手段11は必ずしも必須ではない。
磁化手段13は磁性体膜2を磁化方向Aに磁化するための装置であり、磁性体膜2の磁化を保持できるものであれば、構造、材料、種類は問わない。具体的には、例えばコイル等による磁場発生装置のほか、磁石などを近接させて利用することもできる。また、別の強磁性体膜や反強磁性体膜を磁性体膜2に近接して配置し、磁気的相互作用などの手段で磁性体膜2の磁化を保持することもできる。
次に、熱電変換素子1の動作について、図1〜図5を参照して説明する。
まず、図1の熱電変換素子1において、磁性体膜2に磁化手段13を用いて磁場を印加し、磁性体膜2を磁化方向Aに磁化した後、温度勾配印加手段11等を用いて温度勾配を印加する。
すると、磁性体膜2におけるスピンゼーベック効果により、この温度勾配方向に角運動(スピン流)が誘起される。熱電対構造によって熱起電力を生成可能な温度勾配方向が限定される従来熱電モジュールと異なり、磁性体におけるスピンゼーベック効果の場合はそのような構造異方性が無いため、任意の方向の温度勾配によってスピン流を生成可能である。
この任意の方向の温度勾配によって生成されたスピン流を起電力として取り出すために、第1の実施形態では電極3が磁性体膜2の上部中心に、電極3a、3bが磁性体膜2の図面前後端部にそれぞれ配置されている。これらの電極により、磁性体中の任意の方向のスピン流を起電力として取り出すことができる。
この磁性体膜2において生成されたスピン流は、近接する電極3、3a、3bへと流れ込み、この電極3、3a、3bにおける逆スピンホール効果によって電流へと変換される。
この電流は、端子7、9間、端子7a、9a間、端子7b、9b間のいずれかに電位差を生じさせるため、当該電位差を端子7、9、端子7a、9a、および端子7b、9bから熱起電力として取り出すことができる。
具体的な動作例として、熱電変換素子1の素子面に垂直な方向成分(面直方向)を有する温度勾配が印加された場合、磁性体膜2においてこの面直方向にスピン流が生成され、図2および図3に示すように、主に電極3へと流れる。その後、この電極3における逆スピンホール効果によって、このスピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流に変換され、端子7、9間の電位差を熱起電力V11として取り出すことができる。
一方、素子面に平行な方向(面内方向)に温度勾配が印加された場合は、図4および図5に示すように、磁性体膜2においてこの面内方向にスピン流が生成され、主に電極3a、3bへと流れる。この電極3a、3bにおける逆スピンホール効果によって、スピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流に変換され、端子7a、9a間、端子7b、9b間の電位差を熱起電力V12、V13として取り出すことができる。電極3aと電極3bとでは、磁性体膜2との界面においてスピン流の流れる向きが異なるため、互いに反平行の向きに起電力が生じる。
なお、図2、図3および図4、図5では面直温度勾配と面内温度勾配の場合をそれぞれ示したが、これらの中間の場合、すなわち、図1のyz面内において、磁性体膜2に対する温度勾配方向の傾きθが0°<θ<90°となるような斜め方向の温度勾配に対しても、熱起電力を高効率に取り出すことができる。この場合、斜めの温度勾配ベクトルを面直方向(θ=90°)の成分と面内方向(θ=0°)の成分とに分解すると、面直成分については電極3において、面内成分については電極3a、3bにおいて、それぞれ同時に熱起電力が生成される。
このような電極配置により、熱電変換素子1は、面直・面内のいずれの温度勾配に対しても発電可能である。
このように、第1の実施形態によれば、熱電変換素子1は、基板4と、基板4に設けられ、所定の方向に磁化可能な多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3、3a、3bとを有し、磁性体膜2の面直温度勾配を電極3の表面内の電位差として出力可能に、かつ磁性体膜2の面内温度勾配を電極3a、3bの表面内の電位差として出力可能に構成されている。
そのため、熱電変換素子1は、面内温度勾配と面直温度勾配の両方を同時に電力に変換できる。
次に、第2の実施形態について図6〜8を参照して詳細に説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態において、基板4aとして、フィラー15を含むことにより、熱伝導異方性を有する材料としたものを用いたものである。
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
図6に示すように、熱電変換素子1aの基板4aは、板状の基板担体6と、基板担体6中に一方向に配向したフィラー15が複数充填された構造を有している。
基板担体6としては、例えばエポキシや有機系の樹脂といった、フィラー15よりも熱伝導率の小さい材料が用いられ、フィラー15には例えばカーボンファイバやアルミナ、窒化ホウ素といった、基板担体6よりも熱伝導率の大きな材料が用いられる。このような構造により、基板4においてはフィラー15が配向した方向の熱伝導率が、配向した方向に垂直な方向の熱伝導率よりも大きくなり、熱伝導異方性が生じる。
図6では、フィラー15は基板4a内で面直方向に配向しており、面直方向の熱伝導率が、面内方向の熱伝導率よりも高くなるように構成されている。
このような熱伝導異方性を有する基板4aを用いると、熱伝導異方性を有しない基板を用いた場合に比べて高効率な熱電変換が可能となる。これは、ある与えられた熱源に対して熱電変換性能を最大化するには、スピンゼーベック効果を発現する磁性体膜2部分でできるだけ大きな温度差を保持することが必要とされるが、異方性を有する基板4を用いれば、この条件が面直・面内のいずれの方向においても同時に達成されるためである。
この理由を、図7および図8を参照して具体的に説明する。
まず図7に示すように、熱電変換素子1の面直方向に温度勾配が生じた場合を考える。この場合、磁性体膜2、基板4のそれぞれに直列に温度差が印加されることになるが、基板4は面直方向の熱伝導率が、面内方向の熱伝導率よりも高い(熱抵抗が小さい)ことから、実効的に磁性体膜2の部分に大きな温度差(図7の複数の白矢印参照)が印加される。これにより、面直方向の温度勾配に対して大きな熱起電力を生成することができる。
次に、図8のように、熱電変換素子1の面内方向に温度勾配が生じた場合は、磁性体膜2、基板4aのそれぞれに並列に温度差が印加されることになる。ここで、基板4aの面内方向の熱伝導率は面直方向よりも小さい(熱抵抗が大きい)ことから、基板4aの面内方向には熱流が流れにくく(図8の点線で示す矢印参照)、結果として磁性体膜2の両端間に大きな温度差を保持することが可能となる。これにより、面内方向の温度勾配に対しても大きな熱起電力を生成することができる。
このような構成により、面直・面内のいずれの温度勾配に対しても高効率な熱電発電が可能な熱電デバイスが構成できる。なお、ここでは基板4として、基板担体6中に、配向したフィラー15を充填した構造を採用したが、熱伝導異方性を生じさせる方法はこれに限られない。例えば、ヒートパイプなど、熱伝導特性の高い構造などを基板担体6に面直方向に埋め込んだ場合でも、同様の効果を得ることができる。
また、ここでは基板4aの面直熱伝導率が面内熱伝導率に比べて大きければ効果があるが、特に磁性体膜2に大きな温度差を保持するためには、基板4aの面直熱伝導率が磁性体膜2の垂直熱伝導率よりも高く、基板4aの水平熱伝導率が磁性体膜2の水平熱伝導率よりも低いことがより好ましい。
なお、必要に応じて、電極3、3a、3bの間や、その上部に保護層を設けてもよい。この場合、保護層についても、面直方向の熱伝導率が、面内方向の熱伝導率よりも高くなるように構成されていることが好ましい。
このように、第2の実施形態によれば、熱電変換素子1aは、基板4aと、基板4aに設けられ、所定の方向に磁化可能な多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3、3a、3bとを有し、磁性体膜2の面直温度勾配を電極3の表面内の電位差として、出力可能に、かつ磁性体膜2の面内温度勾配を電極3a、3bの表面内の電位差として出力可能に構成されている。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、第2の実施形態によれば、熱電変換素子1aは、基板4aが基板担体6と、基板担体6中に一方向に配向したフィラー15が複数充填された構造を有しており、熱伝導異方性を有する。
そのため、第1の実施形態と比較して、高効率な熱電変換が可能となる。
次に、第3の実施形態について図9〜図16を参照して説明する。
第3の実施形態は、第2の実施形態と同様に、基板に熱伝導異方性を持たせたものであるが、第2の実施形態とは異なり、材料ではなく形状によって基板に熱伝導異方性を持たせている。
なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
図9〜図11に示すように、第3の実施形態に係る熱電変換素子1bは、基板4bの少なくとも片面側に、面内方向の熱伝導をブロックするための細長いスリット17が設けられている。図9ではスリット17は面直方向に平行に形成されている。
このような構造により、基板4bは、基板4aと同様に面直方向の熱伝導特性の方が、スリット17に垂直な面内方向の熱伝導特性よりも高くなっており、熱伝導異方性を有している。
このように、熱伝導異方性は、基板の形状を工夫することによっても生じさせることができる。
熱伝導異方性を有する基板4bを用いると、第2の実施形態同様、面直・面内方向のいずれに対しても高効率な熱電変換が可能となる。
即ち、図12に示すように、熱電変換素子1の面直方向(図12の複数の白矢印の方向)に温度勾配を印加すると、基板4は面直方向に対しては比較的高い熱伝導特性を有する(熱抵抗が小さい)ことから、実効的に磁性体膜2の部分に大きな温度差が印加される。これにより、面直方向の温度勾配に対して大きな熱起電力を生成することができる。
一方、図13に示すように、熱電変換素子1の面内方向に温度勾配を印加すると、基板4bの面内方向の熱伝導は、スリット17によってブロックされ、基板4bの面内方向には熱流が流れにくくなるため(図13の点線の矢印参照)、結果として磁性体膜2の両端間に大きな温度差を保持することが可能となる。これにより、面内方向の温度勾配に対しても大きな熱起電力を生成することができる。
なお、ここではスリット17として、線状の細長い切れ込みの配列構造を採用したが、スリット17はこの形状に限られない。例えば格子状の切れ込みや、複数の穴を形成した構造でもよく、面直方向と面内方向とで熱伝導異方性を生成する構造であれば、パターン形状などの詳細は問わない。また、機械的強度を高めるために、スリット17に、基板4bよりも小さな熱伝導率を有する材料を埋め込んでもよい。
また、スリット17の形成方法としては、例えばインプリント法が挙げられる。
具体的には、まずスリット17の形成前に基板4bを必要に応じてあらかじめ加熱、超音波照射、紫外線照射等で加工しやすいようにしておき、図14に示すスリット17を反転した凸形状23を有するテンプレート21を基板4bに押し付け、図15に示すようにスリット17を成形する。その後、図16に示すように、テンプレート21を基板4bから引き離すことで、熱伝導特性に異方性を有する基板4bが作製される。
このように、第3の実施形態によれば、熱電変換素子1bは、基板4bと、基板4bに設けられ、所定の方向に磁化可能な多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3、3a、3bとを有し、磁性体膜2の面直温度勾配を電極3の表面内の電位差として、出力可能に、かつ磁性体膜2の面内温度勾配を電極3a、3bの表面内の電位差として出力可能に構成されている。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、第3の実施形態によれば、熱電変換素子1aは、基板4bの少なくとも片面側に、熱伝導をブロックするためのスリット17が設けられており、熱伝導異方性を有する。
そのため、第1の実施形態と比較して、高効率な熱電変換が可能となる。
次に、第4の実施形態について、図17〜図21を参照して説明する。
第4の実施形態は、第1の実施形態において、磁性体膜2の両面に電極を設けたものである。
なお、第4の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
図18に示すように、第4の実施形態に係る熱電変換素子1cは、基板4と磁性体膜2の間に電極33、33a、33bが設けられている。
電極33、33a、33bはそれぞれ電極3、3a、3bに対応した形状をしており、平面上の位置関係も電極3、3a、3bに対応するように設けられている。
具体的には、電極33、33a、33bは磁性体膜2を挟んで電極3、3a、3bとそれぞれ対向するように基板4上に形成されている。
電極33の両端には電極3と同様に端子37、39が取り付け可能に形成されており、同様に、電極33aの両端には端子37a、39aが、電極33bの両端には端子37b、39bがそれぞれ取り付け可能に形成されている。
また、電極33と電極33aの間、および電極33と電極33bの間にはスペーサ20が設けられている。
スペーサ20は、電極−電極間を電気的・磁気的に隔離するためのものであり、例えばSiOなどの非磁性絶縁体を用いることができる。また、スペーサ20として、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、PETやPENのようなポリエステルを用いれば、印刷プロセスで形成することもできる。
なお、スペーサ20は熱電変換に直接関わらない部分であるため、薄いほど望ましい。
また、面内・面直熱電変換の最適化の観点からは、スペーサ20は、垂直方向の熱伝導特性が水平方向の熱伝導特性よりも高いものがより好ましい。特に、磁性体膜2に比べて、垂直方向の熱伝導度が高く、水平方向の熱伝導度が低いほうが、さらに好ましい。
このように、電極は磁性体膜2の片面のみではなく、両面に設けてもよく、これにより片面のみに電極を設ける場合と比べて、より効率的にスピン流から熱起電力を取り出すことができる。
例えば、図18および図19に示すように、熱電変換素子1cの素子面に垂直な方向に温度勾配が印加された場合、磁性体膜2において面直方向にスピン流が生成され、上部の電極3および下部の電極33へと流れる。その後、この電極3、33における逆スピンホール効果によって、このスピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流に変換され、それぞれ端子7、9間の電位差を熱起電力V11として、端子37、39間の電位差を熱起電力V21として取り出すことができる。電極3と電極33はスピン流の流れる向きが同じであるため、同じ向きに起電力が生じる。
一方、図20および図21に示すように、熱電変換素子1cの素子面に平行な方向(図面の前後方向)に温度勾配が印加された場合、磁性体膜2において面内方向にスピン流が生成され、主に電極3a、33a、および電極3b、33bへと流れる。この電極3a、33a、および電極3b、33bにおける逆スピンホール効果によって、このスピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流に変換され、端子7a、9a間の電位差を熱起電力V12として、端子7b、9b間の電位差を熱起電力V13として、端子37a、39a間の電位差を熱起電力V22として、端子37b、39b間の電位差をV23として取り出すことができる。
このように、第4の実施形態によれば、熱電変換素子1cは、基板4と、基板4に設けられ、所定の方向に磁化可能な多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3、3a、3bとを有し、磁性体膜2の面直温度勾配を電極3の表面内の電位差として、出力可能に、かつ磁性体膜2の面内温度勾配を電極3a、3bの表面内の電位差として出力可能に構成されている。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、第4の実施形態によれば、熱電変換素子1cは、磁性体膜2の両面に電極が設けられている。
そのため、第1の実施形態と比べて、より効率的にスピン流から熱起電力を取り出すことができる。
次に、第5の実施形態について、図22〜図26を参照して説明する。
第5の実施形態は、第1の実施形態において、磁性体膜2の左右端部に、さらに電極49、51(端部電極)を設けたものである。
なお、第5の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
図22に示すように、第5の実施形態に係る熱電変換素子1dは、磁性体膜2の左右端部に電極3を挟み込むようにして電極51、49が設けられている。電極49、51の両端にはそれぞれ端子49a、49bおよび端子51a、51bが取り付け可能に形成されている。
電極51、49は、電極3a、3bと対向面が交差(ここでは直交)するように設けられている。
なお、図22では電極3の上下端にも端子50、52が取り付け可能に形成されている。
このように、端部に設ける端部電極は一対のみではなく、2対設けてもよく、これにより、一対のみ設ける場合と比べて、面内温度勾配から効率よく熱起電力を取り出すことができる。
熱電変換素子1dに温度勾配を印加した場合の具体的な動作例を図23〜図26を参照して説明する。
なお、yz面内方向の温度勾配で熱電発電する際には磁化は−y方向に(図23および図24の白矢印A方向)、xz面内方向の温度勾配で熱電発電する際には磁化は−x方向に(図25および図26の白矢印C方向)、それぞれあらかじめ固定しておくものとする。
まず、磁化が−y方向に固定された配置において、図23に示すように、素子面に垂直な方向(図面のz方向)に温度勾配が印加されると、磁性体膜2において面直方向に生成されたスピン流は、主に電極3へと流れる。その後、この電極3における逆スピンホール効果によって、このスピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流に変換され、端子7、9間の電位差を熱起電力V11として取り出すことができる。
同様に、図24に示すように、素子面に平行な前後方向(図面のy方向)に温度勾配が印加された場合、磁性体膜2において面内方向に生成されたスピン流は、主に電極3a、3bへと流れる。この電極3a、3bにおける逆スピンホール効果によって、このスピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流に変換され、端子7a、9a間の電位差を熱起電力V12として、端子7b、9b間の電位差をV13として取り出すことができる。電極3aと電極3bとでは、磁性体膜2との界面においてスピン流の流れる向きが異なるため、互いに反平行の向きに起電力が生じる。
なお、図23と図24ではz方向温度勾配とy方向温度勾配の場合をそれぞれ示したが、これらの中間の場合、すなわち、yz面内の任意の温度勾配に対しても、複数の電極3、a、3bから熱起電力を高効率に取り出すことができる。
次に、図25に示すように、磁化が−x方向に固定された配置において、素子面に垂直な方向(図面のz方向)に温度勾配が印加された場合、磁性体膜2において面直方向に生成されたスピン流は、主に電極3へと流れる。その後、この電極3における逆スピンホール効果によって、このスピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流に変換され、端子50、52間の電位差を熱起電力V11として取り出すことができる。
一方、図26に示すように、素子面に平行な左右方向(図面のx方向)に温度勾配が印加された場合、磁性体膜2において面内方向に生成されたスピン流は、主に電極49、51へと流れる。そして、この電極49、51における逆スピンホール効果によって、このスピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流に変換され、端子51a、51b間の電位差を熱起電力V14として、端子49a、49b間の電位差を熱起電力V15として取り出すことができる。電極49と電極51とでは、磁性体膜2との界面においてスピン流の流れる向きが異なるため、互いに反平行の向きに起電力が生じる。
なお、図25と図26ではz方向温度勾配とx方向温度勾配の場合をそれぞれ示したが、これらの中間の場合、すなわち、xz面内の任意の温度勾配に対しても、複数の電極3、49、51から熱起電力を高効率に取り出すことができる。
また、図23〜図26では磁化が−yまたは−x方向に固定された場合の発電動作を説明したが、その中間の場合、すなわち、例えば磁化がxy面の45度方向に固定された場合は、x、y、zの3方向いずれの温度勾配に対しても、熱電変換が可能となる。
以上のように、印加される温度勾配方向に応じて複数の電極における熱起電力の総和が最大となるように、外部磁場などであらかじめ磁化の向きを最適化しておくことで、任意の温度勾配に対する高効率熱電変換が可能となる。また、磁性体膜2として保磁力を有する磁性材料を用いれば、一旦外部磁場などで磁化方向を初期化しておけば、ゼロ磁場の下でも動作可能であることから、用途に応じて最適初期化された熱電変換素子を提供することができる。
このように、第5の実施形態によれば、熱電変換素子1dは、基板4と、基板4に設けられ、所定の方向に磁化可能な多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3、3a、3bとを有し、磁性体膜2の面直温度勾配を電極3の表面内の電位差として、出力可能に、かつ磁性体膜2の面内温度勾配を電極3a、3bの表面内の電位差として出力可能に構成されている。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、第5の実施形態によれば、熱電変換素子1dは、磁性体膜2の左右端部にも、電極49、51が設けられている。
そのため、第1の実施形態と比較して面内温度勾配から効率よく熱起電力を取り出すことができる。
次に、第6の実施形態について、図27〜図34を参照して説明する。
第6の実施形態は、第1の実施形態において、短冊状の電極を複数設け、温度勾配の向きに応じて電極間を接続することにより熱起電力を得るようにしたものである。
なお、第6の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
まず、図27を参照して第6の実施形態に係る熱電変換素子1eの構造について説明する。
図27に示すように、熱電変換素子1eは、磁性体膜2の磁化方向Aに垂直な方向に長手方向を有し、互いに平行になるように配列された、短冊状の電極61a、61b、61c、61d、61eを有している。
電極61aの長手方向の両端には端子63a、65aが、電極61bの長手方向の両端には端子63b、65bが、電極61cの長手方向の両端には端子63c、65cがそれぞれ取り付け可能に形成されている。
また、電極61dの長手方向の両端には端子63d、65dが、電極61eの長手方向の両端には端子63e、65eがそれぞれ取り付け可能に形成されている。
次に、熱電変換素子1eに温度勾配を印加した場合の具体的な動作例を図28〜図31を参照して説明する。
まず、図28に示すように、熱電変換素子1eの素子面に垂直な方向(面直方向)に温度勾配が印加された場合、磁性体膜2において面直方向に生成されたスピン流は、電極61a、61b、61c、61d、61eへと流れる。各電極における逆スピンホール効果によって、スピン流が発生し、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流(起電力)へと変換され、熱起電力として取り出すことができる。
一方、図29に示すように、熱電変換素子1eの素子面に平行な方向(図面の前後方向)に温度勾配が印加された場合、磁性体膜2において面内方向に生成されたスピン流は、電極61a、61b、61d、61eへと流れる。そして、この電極における逆スピンホール効果によって、このスピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流(起電力)へと変換され、熱起電力として取り出すことができる。ただしこの場合、磁性体膜2においては図面の前後方向にスピン流が生じているために、各電極/磁性体膜2の界面においてスピン流が流れる方向(スピン流の符号)は、磁性体膜2の手前側にある電極61a、61bと、奥側にある電極61d、61eとでは、反対方向(逆符号)となる。従って、電極61a、61bと電極61d、61eとでは、熱起電力の発生する向きは逆方向(逆符号)となる。
また、これら複数の電極において生成された熱起電力は、電気的な直列接続によってそれぞれ加算することで、全体として大きな出力電圧を得ることもできる。図30および図31にはその一例として、接続線64によって電極を相互接続した構造を図示した。図30は面直温度勾配が印加された場合の接続線64による最適接続構造を、図31は面内温度勾配が印加された場合の接続線64による最適接続構造をそれぞれ示している。
図30および図31に示すように、面直温度勾配を利用する場合と、面内温度勾配を利用する場合とでは、熱起電力を有効に加算するための電極の接続形態が異なる。従って、接続線64による電極の直列接続形態は、温度勾配方向に応じて再構成可能であることが望ましい。
以上の構成により、第1の実施形態同様、面直・面内温度勾配での熱電発電機能が実現される。
ここで、図27のように、電極61a、61b、61c、61d、61eを短冊形状にした理由を説明する。
前述のように、高効率な熱電発電を行うには、印加される温度差を保持して継続的な発電を行うために、熱電変換素子としては、熱伝導の小さい(熱伝導経路の少ない)素子構造が望ましい。一方、面直方向の温度勾配からより大きな電力を取り出すためには、第1の実施形態の電極3のように電極の面積が広い方が望ましい。しかしながら、第1の実施形態のような広い面積の電極3を配置した構造で面内熱電発電を行う状況下では、特に電極3の膜厚・熱伝導率が大きい場合、電極3の面内に大きな熱流が流れる結果、素子全体としても面内方向の熱伝導が増加する(大きな熱伝導経路が生じる)。この場合、面内温度勾配に対する熱電発電効率が、面直方法に比べて低下する可能性がある。
これに対し、図27に示すような熱電変換素子1dでは、複数の短冊状の電極が互いに分離して配置されており、電極部分での大きな熱伝導経路は生じないことから、上記の問題が解決される。
さらに、複数の電極を図30および図31のように接続することで、電極の面積を実効的に広くすることと同等の効果が得られる。つまり、面内の熱伝導を押さえることと、面直温度勾配から大きな電力を得ることを両立できる。
なお、電極の個数は偶数が好ましい。これは、電極の個数が奇数の場合、面内温度勾配を印加したときに中央に配置された電極(図27の場合は電極61c)から電力を得られないためである。
また、図27では5つの電極を平行に配置した構造を図示したが、電極の数は最低2つあればよいため、図32に示す熱電変換素子1fのような、2つの電極(電極3a、3b)のみの構造でも、同様の効果が期待できる。
即ち、図33に示すように、熱電変換素子1fの素子面に垂直な方向に温度勾配が印加された場合、磁性体膜2において面直方向に生成されたスピン流は、電極3a、3bへと流れる。各電極における逆スピンホール効果によって、スピン流が発生し、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流(起電力)へと変換され、端子7a、9a間の電位差を熱起電力Vとして、端子7b、9b間の電位差を熱起電力V10として取り出すことができる。
また、図34に示すように、熱電変換素子1fの素子面に平行な方向(図面の前後方向)に温度勾配が印加された場合、磁性体膜2において面内方向に生成されたスピン流は、電極3a、3bへと流れる。そして、この電極3a、3bにおける逆スピンホール効果によって、このスピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流(起電力)へと変換され、端子7a、9a間の電位差を熱起電力Vとして、端子7b、9b間の電位差を熱起電力V10として取り出すことができる。ただしこの場合、磁性体膜2においては図面の前後方向にスピン流が生じているために、各電極/磁性体膜2の界面においてスピン流が流れる方向(スピン流の符号)は、磁性体膜2の手前側にある電極3aと、奥側にある電極3bとでは、反対方向(逆符号)となる。
このように、第6の実施形態によれば、熱電変換素子1eは、基板4と、基板4に設けられ、所定の方向に磁化可能な多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極61a、61b、61c、61d、61eとを有し、磁性体膜2の面直温度勾配および面内温度勾配を電極61a、61b、61c、61d、61eの表面内の電位差として出力可能に構成されている。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、第6の実施形態によれば、熱電変換素子1eは、磁性体膜2の磁化方向に垂直な方向に長手方向を有し、互いに平行に配列された、短冊状の電極61a、61b、61c、61d、61eを有している。
そのため、第1の実施形態と比較して、面内の熱伝導を抑えることと、面直温度勾配から大きな電力を得ることを両立でき、面直温度勾配および面内温度勾配のいずれに対しても高効率な熱電変換が可能である。
次に、第7の実施形態について、図35〜図37を参照して説明する。
第7の実施形態は、第6の実施形態において、磁性体膜2と電極3を積層したものである。
なお、第7の実施形態において、第6の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第6の実施形態と異なる部分について説明する。
図35に示すように、第7の実施形態に係る熱電変換素子1fは、磁性体膜2と電極3を交互に積層した構造を有している。なお、磁性体膜2の下面と電極3の上面の間にはスペーサ20が設けられている。
このような磁性体に対して温度勾配を印加すると、スピンゼーベック効果により、この温度勾配方向にスピン流が誘起される。
熱電変換素子1gにおいては、複数積層された磁性体膜2のそれぞれにおいて、温度勾配によるスピン流が生成される。このスピン流を起電力として取り出すために、本実施例では複数の電極3が、複数の磁性体膜2の上に互いに平行になるように配置されている。これらの電極により、磁性体中の任意の方向のスピン流を起電力として取り出すことができる。
熱電変換素子1fに温度勾配を印加した場合の具体的な動作例を図36および図37を用いて説明する。
まず、図36に示すように、熱電変換素子1gの素子面に垂直な方向(面直方向)に温度勾配が印加された場合、各磁性体膜2において面直方向生成されたスピン流は、それぞれ隣接する電極3へと流れる。この電極3における逆スピンホール効果によって、スピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流(起電力)へと変換され、熱起電力Vとして取り出すことができる。
一方、図37に示すように、熱電変換素子1gの素子面に平行な方向(面内方向)に温度勾配が印加された場合、各磁性体膜2において面内方向に生成されたスピン流は、それぞれ隣接する電極3へと流れる。この電極3における逆スピンホール効果によって、スピン流は、磁性体膜2の磁化方向に対して垂直方向の電流(起電力)へと変換され、熱起電力Vとして取り出すことができる。
このように、熱電変換素子は積層構造にすることもでき、複数積層された電極3によってそれぞれ熱起電力を取り出すことができるため、面直・面内のいずれの温度勾配に対しても、全体として大きな発電効率を有する熱電変換素子が実現できる。
このように、第7の実施形態によれば、熱電変換素子1gは、基板4と、基板4に設けられ、所定の方向に磁化可能な多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3とを有し、磁性体膜2の面直温度勾配を電極3の表面内の電位差として、出力可能に、かつ磁性体膜2の面内温度勾配を電極3の表面内の電位差として出力可能に構成されている。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、第7の実施形態によれば、熱電変換素子1gは、磁性体膜2と電極3を交互に積層した構造を有している。
そのため、単層の場合と比べて大きな熱起電力を得ることができる。
次に、第8の実施形態について、図38を参照して説明する。
第8の実施形態は、第1の実施形態において、端部電極を1つのみ設けたものである。
なお、第8の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
図38に示すように、第8の実施形態に係る熱電変換素子1hは、端部電極が1つのみ(電極3a)設けられている。
このように、端部電極は必ずしも対になっている必要はなく、磁性体膜2の一方の端部にのみ設けられていてもよい。
このように、第8の実施形態によれば、熱電変換素子1hは、基板4と、基板4に設けられ、所定の方向に磁化可能な多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3、3aとを有し、磁性体膜2の面直温度勾配を電極3の表面内の電位差として、出力可能に、かつ磁性体膜2の面内温度勾配を電極3、3aの表面内の電位差として出力可能に構成されている。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
次に、第9の実施形態について、図39を参照して説明する。
第9の実施形態は、第1の実施形態において、電極3a、3bを接続してを一体にしたものである。
なお、第9の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、主に第1の実施形態と異なる部分について説明する。
図39に示すように、第9の実施形態に係る熱電変換素子1iは、電極3a、3bが接続部3cで接続されて、コの字形の一体となった端部電極を構成している。
このように、端部電極は必ずしも対になって分離している必要はなく、繋がっていてもよい。
このように、第9の実施形態によれば、熱電変換素子1iは、基板4と、基板4に設けられ、所定の方向に磁化可能な多結晶の磁性絶縁体材料により構成される磁性体膜2と、磁性体膜2に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有する電極3、3a、3bとを有し、磁性体膜2の面直温度勾配を電極3の表面内の電位差として、出力可能に、かつ磁性体膜2の面内温度勾配を電極3a、3bの表面内の電位差として出力可能に構成されている。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例1〕
第1の実施形態に係る熱電変換素子1を作製した。具体的な手順は以下の通りである。
まず、基板4としてはサンゴバン株式会社製のガドリニウムガリウムガーネット(以降、GGG。組成はGdGa12)基板(111)面を用い、磁性体膜2としてはYサイトの一部をBiで置換したイットリウム鉄ガーネット(組成はBiYFe12であり、以下、Bi:YIGと表記する)膜を用いた。電極3、3a、3bにはPtを用いた。ここで、GGG基板は厚さ0.7mm、Bi:YIG膜の厚さは0.3mm、Pt電極の厚さは10nmとした。
Bi:YIG磁性体膜2は、エアロゾルデポジション法により成膜した。Bi:YIG原料には、直径300nmのBi:YIG微粒子を用いた。このBi:YIG微粒子をエアロゾル発生容器に詰めておき、GGG基板は成膜チャンバ内のホルダに固定した。この状態で成膜チャンバとエアロゾル発生容器との間に圧力差を生じさせることで、Bi:YIG微粒子が成膜チャンバ内へと引き込まれ、ノズルを通してGGG基板上に吹き付けた。このときの基板での衝突エネルギーによって微粒子が粉砕・再結合し、基板上にYIG多結晶が形成された。基板ステージを2次元的にスキャンすることで、基板上に均一なBi:YIG磁性体膜2を膜厚0.3mmで成膜した。
さらに、成膜後のBi:YIG磁性体膜2の表面を研磨後、このBi:YIG磁性体膜上にPt電極3、3a、3bを光リソグラフィとスパッタにより成膜し、熱電変換素子1が完成した。
〔実施例2〕
第2の実施形態に係る熱電変換素子1aを作製した。具体的な手順は以下の通りである。
基板4aとしては、エポキシ樹脂中に配向したカーボンファイバをフィラーとして含有する熱伝導異方性基板を用いた。カーボンファイバは基板に対して面直方向に配向しており、この方向に高い熱伝導率を有する。
磁性体膜2としてはYサイトの一部をBiで置換したイットリウム鉄ガーネット(BiYFe12)膜を用いた。電極3、3a、3bにはPtを用いた。ここで、基板4は厚さ0.3mm、Bi:YIG膜の厚さは0.1mm、Pt電極の厚さは10nmとした。
Bi:YIG磁性体膜2は、エアロゾルデポジション法により成膜した。Bi:YIG原料には、直径300nmのBi:YIG微粒子を用いた。このBi:YIG微粒子をエアロゾル発生容器に詰めておき、基板は成膜チャンバ内のホルダに固定した。この状態で成膜チャンバとエアロゾル発生容器との間に圧力差を生じさせることで、Bi:YIG微粒子が成膜チャンバ内へと引き込まれ、ノズルを通して基板上に吹き付けられた。このときの基板での衝突エネルギーによって微粒子が粉砕・再結合し、基板上にYIG多結晶が形成された。基板ステージを2次元的にスキャンすることで、基板上に均一なBi:YIG磁性体膜2を膜厚0.1mmで成膜した。
さらに、成膜後のBi:YIG磁性体膜2の表面を研磨後、このBi:YIG磁性体膜上にPt電極3、3a、3bを光リソグラフィとスパッタにより成膜し、熱電変換素子1aが完成した。
〔実施例3〕
第3の実施形態に係る熱電変換素子1bを作製した。具体的な手順は以下の通りである。
異方的な熱伝導特性を有する基板4bとしては、厚さ0.3mmのポリイミド基板の裏面に、幅0.1mm、深さ0.2mmの切れ込みを入れた構造の基板を採用した。
磁性体膜2としてはBi:YIG膜を用いた。電極3、3a、3bにはPtを用いた。ここで、Bi:YIG膜の厚さは0.1mm、Pt電極の厚さは10nmとした。
Bi:YIG磁性体膜2は、エアロゾルデポジション法により成膜した。Bi:YIG原料には、直径300nmのBi:YIG微粒子を用いた。このBi:YIG微粒子をエアロゾル発生容器に詰めておき、基板4bは成膜チャンバ内のホルダに固定した。この状態で成膜チャンバとエアロゾル発生容器との間に圧力差を生じさせることで、Bi:YIG微粒子が成膜チャンバ内へと引き込まれ、ノズルを通して基板4b上に吹き付けられた。このときの基板での衝突エネルギーによって微粒子が粉砕・再結合し、基板4b上にYIG多結晶が形成された。基板ステージを2次元的にスキャンすることで、基板4b上に均一なBi:YIG磁性体膜2を膜厚0.1mmで成膜した。
さらに、成膜後のBi:YIG磁性体膜2の表面を研磨後、このBi:YIG磁性体膜上にPt電極3、3a、3bを光リソグラフィとスパッタにより成膜した。
最後に、基板4bの裏面の加工を、図14に示すような、切れ込み作製用のテンプレート21を用いたインプリント法で行った。ここでは、まず基板をあらかじめ加熱しておき、テンプレート21を基板に押し付け、切れ込み7を生成した。最後に基板4bを冷却することで、熱伝導特性に異方性を有する基板4が作製された。
以上の手順により、熱電変換素子1bが完成した。
本発明の利用例として、端末・センサ等への給電用電源が挙げられる。
なお、上記した実施形態では、熱電変換素子を温度勾配から電流・電圧を取り出す熱電発電に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、熱電変換素子は、温度や(吸収膜などを近接配置することで)赤外線などを検知する熱センサなどにも用いることができる。また、これまでの説明した使い方とは逆に、外部から電極に電流を流すことで温度勾配を生成するペルチェ素子としての利用も原理的には可能である。
この出願は、2011年5月23日に出願された日本出願特願第2011−114301号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
1 熱電変換素子
1a 熱電変換素子
1b 熱電変換素子
1c 熱電変換素子
1d 熱電変換素子
1e 熱電変換素子
1f 熱電変換素子
1g 熱電変換素子
1h 熱電変換素子
1i 熱電変換素子
2 磁性体膜
3a 電極
3b 電極
3c 接続部
4 基板
4a 基板
4b 基板
6 基板担体
7 端子
7a 端子
7b 端子
11 温度勾配印加手段
13 磁化手段
15 フィラー
17 スリット
20 スペーサ
21 テンプレート
23 凸形状
33 電極
33a 電極
33b 電極
37 端子
37a 端子
37b 端子
49 電極
49a 端子
50 端子
51 電極
51a 端子
61a 電極
61b 電極
61c 電極
61d 電極
61e 電極
63a 端子
63b 端子
63c 端子
63d 端子
63e 端子
64 接続線

Claims (16)

  1. 基板に設けられ、膜面に平行な成分を有する所定の方向に磁化可能な磁性体により構成される磁性体膜と、
    前記磁性体膜に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を有し、前記所定の方向に沿って配列され、かつ前記所定の方向と直交する方向に延在する複数の電極と、
    を有し、
    前記磁性体膜表面に垂直な温度勾配を、前記電極のいずれかの表面内の電位差として出力可能に、かつ前記磁性体膜表面に平行な温度勾配を、前記電極のいずれかの表面内の電位差として出力可能に構成したことを特徴とする熱電変換素子。
  2. 前記磁性体膜に温度勾配を印加すると、前記磁性体膜から前記電極に向けて流れるスピン流が生成され、前記電極における逆スピンホール効果により、前記所定の方向と垂直方向に電流が生じるように構成したことを特徴とする請求項1記載の熱電変換素子。
  3. 前記電極の二点に設けられ、前記電流により生じた熱起電力を、前記電極の前記二点間の電位差として出力する熱起電力出力手段を有することを特徴とする請求項2に記載の熱電変換素子。
  4. 前記磁性体膜に温度勾配を印加する温度勾配印加手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  5. 前記複数の電極は、前記磁性体膜の端部に設けられ、前記磁性体膜表面に平行な温度勾配を電位差として出力可能な端部電極と、
    前記磁性体膜表面に垂直な温度勾配を電位差として出力可能な中央電極と、
    を有し、
    前記中央電極は、前記端部電極よりも平面上の面積が大きいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  6. 前記端部電極は、1以上の対になって設けられていることを特徴とする、請求項5記載の熱電変換素子。
  7. 前記複数の電極もしくは前記基板の少なくとも一方は、その表面に垂直な方向の熱伝導率が、表面に平行な方向の熱伝導率よりも大きいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  8. 前記基板は、熱伝導異方性を有するフィラーを含有することを特徴とする、請求項7に記載の熱電変換素子。
  9. 前記基板は、前記磁性体の前記所定の方向と交差するように設けられ、前記所定の方向に平行な方向の熱伝導をブロックする、スリットを有することを特徴とする、請求項7に記載の熱電変換素子。
  10. 複数の前記電極は、前記磁性体膜の両面に互いに対向するように設けられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  11. 複数の前記電極は、前記所定の方向に対して垂直になるような方向に長手方向を有する短冊状の電極を有し、前記短冊状の電極は、互いに平行になるように配置されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  12. 前記複数の電極は互いに直列接続されていることを特徴とする、請求項11に記載の熱電変換素子。
  13. 複数の前記電極は、前記温度勾配方向に応じて、加算された熱起電力の総和が最大になるように、接続可能に構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の熱電変換素子。
  14. 複数の磁性体膜と前記複数の電極は、積層されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  15. 前記磁性体膜は、保磁力を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項に記載の熱電変換素子の前記磁性体膜に温度勾配を印加することにより、前記磁性体膜から前記電極に向けて流れるスピン流を生成し、前記電極における逆スピンホール効果により、前記所定の方向と垂直方向に電流を生じさせることを特徴とする熱電変換方法。
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