JPWO2013047253A1 - 熱電変換素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
熱電変換素子は、熱電変換素子本体と、熱電変換素子本体の表面上に設けられたスペーサ層とを具備する。熱電変換素子本体は、少なくとも一つの面内方向の磁化を有する磁性体層と、磁性体層上に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層とを備える。スペーサ層は、熱伝導率が相対的に低い材料で設けられた低熱伝導層と、低熱伝導層内に分散され、熱伝導率が相対的に高い材料である複数の高熱伝導体とを備える。低熱伝導層と比較して、記複数の高熱伝導体にフォノンが多く伝導する。
Description
本発明は、スピンゼーベック効果及び逆スピンホール効果を利用した熱電変換素子に関する。
近年、持続可能な社会に向けた環境・エネルギー問題への取り組みが活発化している。そのような中で、熱電変換素子への期待が高まっている。熱は体温、太陽光、エンジン、工業排熱など様々な媒体から得ることができる最も一般的なエネルギー源であるからある。そのため、低炭素社会におけるエネルギー利用の高効率化や、ユビキタス端末・センサ等への給電といった用途において、熱電変換素子は今後ますます重要となることが予想される。
一方、最近、「スピントロニクス(spintronics)」と呼ばれる電子技術が脚光を浴びている。従来のエレクトロニクスは、電子の1つの性質である「電荷」だけを利用してきたが、スピントロニクスは、それに加えて、電子の他の性質である「スピン」をも積極的に利用する。特に、電子のスピン角運動量の流れである「スピン流(spin current)」は重要な概念である。スピン流のエネルギー散逸は少ないため、スピン流を利用することによって高効率な情報伝達を実現できる可能性がある。従って、スピン流の生成、検出、制御は重要なテーマである。
例えば、電流が流れるとスピン流が生成される現象が知られている。これは、「スピンホール効果(spin−Hall effect)」と呼ばれている。また、その逆の現象として、スピン流が流れると起電力が発生することも知られている。これは、「逆スピンホール効果(inverse spin−Hall effect)」と呼ばれている。逆スピンホール効果を利用することによって、スピン流を検出することができる。尚、スピンホール効果も逆スピンホール効果も、「スピン軌道相互作用(spin orbit coupling)」が大きな物質(例:Pt、Au)において特に有意に発現する。
また、それに関連して、磁性体における「スピンゼーベック効果(spin−Seebeck effect)」の存在が明らかになっている。スピンゼーベック効果とは、磁化を有する磁性体に温度勾配が印加されると、温度勾配と平行方向にスピン流が誘起される現象である。すなわち、スピンゼーベック効果により、熱がスピン流に変換される(熱スピン流変換)。なお、温度勾配によって誘起されたスピン流は、上述の逆スピンホール効果を利用して電界(電流、電圧)に変換することが可能である。つまり、スピンゼーベック効果と逆スピンホール効果を併せて利用することによって、温度勾配を電気に変換する「熱電変換」が可能となる。
特許文献1(特開2009−130070号公報)、非特許文献1(Nature Materials,vol.9,p.894(2010))及び非特許文献2(Applied Physics Letters,vol.97,p172505(2010))にはスピンゼーベック効果に基づく熱電変換素子が開示されている。スピンゼーベック効果によって生じた角運動量の流れ(スピン流)を、逆スピンホール効果によって電流(起電力)として取り出す構造が示されている。
図1A及び図1Bは、特許文献1に開示されている熱電変換素子の構成を示す斜視図である。耐熱性繊維フィルム161とSiO2膜162の積層体の上に熱スピン流変換部163が形成されている。熱スピン流変換部163は、Ta膜164、PdPtMn膜165及びNiFe膜166の積層構造を有している。Ta膜164は、基板と磁性層との接合効果と磁性層の酸化防止効果とを有するバッファー層で、PdPtMn膜165はNiFe膜166の磁化方向を固定する反強磁性のピン層である。NiFe膜166は、長手方向に面内方向の磁化を有している。更に、NiFe膜166上にはPt電極167が形成されており、そのPt電極167の両端は端子1681、1682にそれぞれ接続されている。また、この熱電変換素子は、耐熱性繊維フィルム161が内側になるようにロールケーキ状に巻き回して小型化する。
このように構成された熱電変換素子において、NiFe膜166が、スピンゼーベック効果によって温度勾配からスピン流を生成する役割を果たし、Pt電極167が、逆スピンホール効果によってスピン流から起電力を生成する役割を果たす。具体的には、NiFe膜166のPt電極167を設けていない側を熱源に近づけて面内方向に温度勾配が印加されると、スピンゼーベック効果により、その温度勾配と平行な方向にスピン流が発生する。すると、NiFe膜166からPt電極167にスピン流が流れ込む、あるいは、Pt電極167からNiFe膜166にスピン流が流れ出す。Pt電極167では、逆スピンホール効果により、そのスピン流方向とNiFe磁化方向とに直交する方向に起電力が生成される。その起電力は、Pt電極167の両端に設けられた端子1681、端子1682から取り出すことができる。
また、非特許文献1において、熱電変換素子は、膜厚3.9μmの磁性絶縁体(イットリウム鉄ガーネット(YIG、Y3Fe5O12))と膜厚15nmの金属電極(Pt電極)とで構成されている。この場合、特許文献4と同様に、熱電変換素子に、磁性絶縁体膜面に平行な方向の温度勾配(面内温度勾配)を与えることにより熱電変換が実証されている。この構成の素子は、一般に横型のスピン流熱電変換素子と呼ばれる。
また、非特許文献2において、熱電変換素子は、厚さ1mmの磁性絶縁体板(イットリウム鉄ガーネット(YIG、Y3Fe5O12))と膜厚15nmの金属電極(Pt電極)とで構成されている。この場合、熱電変換素子に、磁性絶縁体板面に垂直な方向の温度勾配(面直温度勾配)を与えることによって熱電変換が実証されている。この構成の素子は、一般に縦型のスピン流熱電変換素子と呼ばれる。
関連する技術として、特許文献2(特開2009−295824号公報)には、磁性体誘電層上に2つの金属電極を設けたスピントロニクスデバイスが開示されている。このスピンとロニクスデバイスは、一方の電極中で信号電流により誘起されたスピン流と磁性体誘電層中のスピンとを交換してスピン波スピン流を発生させ、そのスピン波スピン流を磁性体誘電層中に伝播させ、他方の電極と磁性体誘電層との界面でスピン波スピン流−純スピン波の交換を行うことにより、他方の電極に信号電力を生じさせて、2つの電極間で信号電流の輸送を行う。すなわち、磁性誘電体層と金属電極との界面でスピン波スピン流−純スピン流の変換を行う。更に、特許文献3(特開2010−245419号公報)には、マイクロ波発振素子が開示されている。このマイクロ波発振素子は、金属層から強磁性体層へ純スピン流を注入してマイクロ波発振を励起する。
K.Uchida et al.,"Spin Seebeck insulator",Nature Materials,vol.9,p.894(2010).
K.Uchida et al.,"Observation of longitudinal spin−Seebeck effect in magnetic insulators",Applied Physics Letters,vol.97,p172505(2010).
J.Xiao,et al.,"Theory of magnon−driven spin Seebeck effect",Physical Review B 81,214418(2010).
H.Adachi,et al.,"Gigantic enhancement of spin Seebeck effect by phonon drag",Applied Physics Letters,vol.97,p252506(2010).
しかし、発明者は、上記の各熱電変換素子に関して、今回初めて以下の事実を発見した。
スピンゼーベック効果及びスピンホール効果を用いた熱電変換素子において、磁性体層と金属電極との積層体を一層分用いた場合、熱電変換素子で発電を行っていても、熱源と接触していない側から熱が逃げてしまうと考えられる。特に、積層体の膜厚を薄くした場合に、その影響は顕著となる。したがって、そのような逃げてしまう熱を有効に利用して効率的な熱電変換を行うことが必要である。
スピンゼーベック効果及びスピンホール効果を用いた熱電変換素子において、磁性体層と金属電極との積層体を一層分用いた場合、熱電変換素子で発電を行っていても、熱源と接触していない側から熱が逃げてしまうと考えられる。特に、積層体の膜厚を薄くした場合に、その影響は顕著となる。したがって、そのような逃げてしまう熱を有効に利用して効率的な熱電変換を行うことが必要である。
一般的に、熱電変換素子では、熱を有効に利用するためには、素子全体の熱抵抗を高め、素子に出来るだけ大きな温度差をつける方が有利である。そのためには、素子全体の熱伝導率を低くする必要がある。例えば、縦型のスピン流熱電変換素子の場合、素子の温度勾配方向の厚さを厚くする等の方法が考えられる。しかし、スピンゼーベック効果及びスピンホール効果を用いた熱電変換素子の場合、スピン流を発生するための磁性体層及びスピン軌道相互作用を有する電極の特性としては、それぞれスピン流の生成効率及び逆スピンホール効果を高めることなどが優先する。それらのために温度勾配方向の厚さは制限される傾向にある。すなわち、スピン流を用いた熱電変換素子では、温度勾配方向の厚さを自由に設定できない。その結果、スピン流の生成効率及び逆スピンホール効果の向上と同時に低熱伝導率を達成することは、材料設計の点で自由度が非常に小さく難しい。発生する熱に応じてより大きな出力を得ることが可能な技術が望まれている。
従って、本発明の目的は、発生する熱に応じて効率的な熱電変換を行うことが可能な熱電変換装置及び熱電変換方法を提供することにある。
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
本発明の第1の観点における熱電変換素子は、熱電変換素子本体と、熱電変換素子本体の表面上に設けられたスペーサ層とを具備している。熱電変換素子本体は、少なくとも一つの面内方向の磁化を有する磁性体層と、磁性体層上に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層とを備えている。スペーサ層は、熱伝導率が相対的に低い材料で設けられた低熱伝導層と、低熱伝導層内に分散され、熱伝導率が相対的に高い材料である複数の高熱伝導体とを備えている。低熱伝導層と比較して、複数の高熱伝導体にフォノンが多く伝導する。
本発明の第2の観点における熱電変換素子の製造方法は、基板上に熱電変換素子本体を形成する工程と、熱電変換素子本体上にスペーサ層を形成する工程とを具備している。熱電変換素子を形成する工程は、基板上に、少なくとも一つの面内方向の磁化を有する磁性体層及びスピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層のうちの一方である第1層を形成する工程と、第1層上に、磁性体層及び起電体層のうちの他方である第2層を形成する工程とを備えている。スペーサ層を形成する工程は、熱伝導率が相対的に低い材料で設けられ、熱伝導率が相対的に高い材料である複数の高熱伝導体が分散された低熱伝導層を熱電変換素子本体上に形成する工程を備えている。低熱伝導層と比較して、複数の高熱伝導体にフォノンが多く伝導する。複数の高熱伝導体は、低熱伝導層内に配向せずに分散されている。
本発明の第2の観点における熱電変換素子の製造方法は、基板上に熱電変換素子本体を形成する工程と、熱電変換素子本体上にスペーサ層を形成する工程とを具備している。熱電変換素子を形成する工程は、基板上に、少なくとも一つの面内方向の磁化を有する磁性体層及びスピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層のうちの一方である第1層を形成する工程と、第1層上に、磁性体層及び起電体層のうちの他方である第2層を形成する工程とを備えている。スペーサ層を形成する工程は、熱伝導率が相対的に低い材料で設けられ、熱伝導率が相対的に高い材料である複数の高熱伝導体が分散された低熱伝導層を熱電変換素子本体上に形成する工程を備えている。低熱伝導層と比較して、複数の高熱伝導体にフォノンが多く伝導する。複数の高熱伝導体は、低熱伝導層内に、熱電変換素子本体の面に垂直な方向全体に配向して分散されている。
本発明により、発生する熱に応じて効率的な熱電変換を行うことが可能な熱電変換装置及び熱電変換方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る熱電変換素子及びその製造方法について、添付図面を参照して説明する。
1.基本動作原理
まず、スピンゼーベック効果の原理及びスピンゼーベック効果を発現させるための基本構造について説明する。図2A〜図2Bは、スピンゼーベック効果の原理及びスピンゼーベック効果を発現させるための基本構造を示す模式図である。
まず、スピンゼーベック効果の原理及びスピンゼーベック効果を発現させるための基本構造について説明する。図2A〜図2Bは、スピンゼーベック効果の原理及びスピンゼーベック効果を発現させるための基本構造を示す模式図である。
図2Aに示すように、基本構造は、支持体上に成膜した磁化Mを有する磁性体層と、その上部に配置された金属膜とを備えている。このような基本素子に対して面直方向(z方向)の温度勾配を印加した場合、金属膜と磁性体層との間の界面にスピン流が誘起される。このスピン流を、金属膜における逆スピンホール効果によって電気的な起電力に変換することで、「温度勾配から熱起電力を生成する熱電変換」が可能となる。
非特許文献3(Jiang Xiao,et al.,“Theory of magnon−driven spin Seebeck effect”,Physical Review B 81,214418(2010))には、微視的なスピンゼーベック理論が開示されている。それによると、金属膜と磁性体層との界面において誘起されるスピン流Jsは、この界面における格子温度Tpとマグノン温度Tmとの間の温度差ΔTmp=Tp−Tmによって駆動されることが分かっている。ここで、格子温度Tpとは、熱による格子振動(フォノン)の大きさを表すパラメータ(通常の意味での「温度」)である。また、マグノン温度Tmとは、スピンの熱運動の激しさを表すパラメータに相当する。これらによれば、スピン流Jsは以下のようにΔTmpに比例する(ezは面直方向(z方向)の単位ベクトル)。
Js∝ΔTmpez=(Tp−Tm)ez …(1)
Js∝ΔTmpez=(Tp−Tm)ez …(1)
図2Aに示すように、基本構造全体が一様な温度にある場合、マグノン系はフォノン系と熱平衡状態にある。そのため、格子温度Tpとマグノン温度Tmとは常に等しく(ΔTmp=0)、スピン流は駆動されない。したがって、金属膜において起電力は生じない。
これに対し、図2Bに示すように、例えば、基本構造の下部面(金属膜側)を一様に加熱し、基本構造の上面と底面との間に温度差ΔTを印加した場合を考える。このとき磁性体層の中において、格子温度(通常の「温度」)は、熱伝導率等で決まる温度勾配を示す。一方、マグノン温度(スピンの熱運動を表す)は、(a)強磁性体やフェリ磁性体中では多くのスピンが相互作用して協調運動する、(b)マグノン運動は環境(熱浴)との相互作用が小さい(熱浴に対して非平衡のまま伝播可能)、という2つの理由から、格子温度とは異なる非平衡的な温度分布を持つ。特に、マグノンと環境との相互作用が小さい状況では、マグノンはフォノン散乱をほとんど受けず(熱浴と非平衡の状態で)磁性体中を移動できる。そのため、単純近似の下では、マグノン温度は磁性体層全体の温度分布を平均した一定値を持つと考えてよい。
この結果、図2Bの金属膜と磁性体層との界面では、格子温度Tpは、下部(金属膜)側の加熱に伴って大きく上昇する。一方、マグノン温度Tmは、非局所的な空間平均をとり、大きく上昇しない。以上のことから、界面で大きな格子−マグノン温度差ΔTmp=Tp−Tmが生じることになる。従って、この温度差ΔTmpを駆動源として、磁性体層から金属膜へと界面スピン流Jsがポンピングされる。以上が、先に述べたスピンゼーベック効果の微視的な駆動メカニズムである。
この熱駆動されたスピン流Jsが、金属膜におけるスピンホール効果によって電場信号EISHEに変換されることで、金属膜の端部間には起電力信号Vが生じる。ここで、電場EISHEとスピン流Jsと磁化Mとの関係は、以下の式で与えられる。
EISHE=(θSHρ)Js×M/|M| …(2)
ここで、θSHはスピンホール角(電流−スピン流間の変換効率に相当)、ρは金属膜のシート抵抗を表す。EISHE、Js及びMはベクトルである。この式が示すように、熱誘起された電場EISHEは、スピン流Jsと磁化Mの両方に垂直な方向に生じる。従って、金属膜面において生じる熱起電力Vも、スピン流及び温度勾配の方向(z方向)と磁化方向(x方向)にそれぞれ垂直な方向(y方向)において、大きな値を有する。
EISHE=(θSHρ)Js×M/|M| …(2)
ここで、θSHはスピンホール角(電流−スピン流間の変換効率に相当)、ρは金属膜のシート抵抗を表す。EISHE、Js及びMはベクトルである。この式が示すように、熱誘起された電場EISHEは、スピン流Jsと磁化Mの両方に垂直な方向に生じる。従って、金属膜面において生じる熱起電力Vも、スピン流及び温度勾配の方向(z方向)と磁化方向(x方向)にそれぞれ垂直な方向(y方向)において、大きな値を有する。
2.スピン流のフォノンドラッグ効果による熱電効果の増大
最近になって、磁性体や金属におけるスピン流が、周囲の物体のフォノンエネルギーによって駆動もしくは増強される「フォノンドラッグ効果」が見出された(非特許文献4)。発明者らは、この効果を適切に利用することで、熱電変換機能を極めて薄い金属/磁性体積層膜で実現する構造を設計した。図3は、フォノンドラッグ効果での基本構造の状況を示す模式図である。金属膜と磁性体層との間におけるスピンゼーベック効果に加えて、磁性体層と基板中のフォノンとの相互作用を通して熱電効果が増強される「フォノンドラッグ効果」の寄与が強く示唆される。
最近になって、磁性体や金属におけるスピン流が、周囲の物体のフォノンエネルギーによって駆動もしくは増強される「フォノンドラッグ効果」が見出された(非特許文献4)。発明者らは、この効果を適切に利用することで、熱電変換機能を極めて薄い金属/磁性体積層膜で実現する構造を設計した。図3は、フォノンドラッグ効果での基本構造の状況を示す模式図である。金属膜と磁性体層との間におけるスピンゼーベック効果に加えて、磁性体層と基板中のフォノンとの相互作用を通して熱電効果が増強される「フォノンドラッグ効果」の寄与が強く示唆される。
ここでいうフォノンドラッグとは、電極膜/磁性体膜構造におけるスピン流が、支持体を含めた素子全体のフォノンと非局所的に相互作用する現象を指す。非特許文献4(Applied Physics Letters,vol.97,p252506(2010))には、磁性体膜面に平行な方向の温度勾配(面内温度勾配)を与えた場合におけるフォノンドラッグ効果が開示されている。このフォノンドラッグ過程を考慮すると、図3の右側に示すように極めて薄い磁性体層におけるスピン流が、フォノンとの非局所相互作用を介して、これより遥かに厚い基板中の温度分布を感じることができるために、実効的な熱電効果が大きく増大する。すなわち、薄い磁性体層に印加される温度差ΔTMAGだけでなく、厚い支持体に印加される温度差ΔTSもスピン流の熱駆動に寄与する結果、より大きな熱起電力が金属電極中に生成されると考えられる。
このようなフォノンドラッグ効果については、基本的な原理実証については上述のように報告されている。しかし、この効果を用いて効率的に熱電変換を実行する熱電変換デバイスについては、これまで具体的な提案が無かった。本発明の各実施の形態では、上記スピンゼーベック効果及び逆スピンホール効果に加えて、更に上記フォノンドラッグ効果を適用した、効率的な熱電変換素子及びその製造方法について以下に詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
3.熱電変換素子の構成
次に、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子の構成について説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子の構成を示す斜視図である。図4に示すように、熱電変換素子1は、スペーサ層5と、スペーサ層5上に接して設けられた熱電変換素子本体10とを具備している。熱電変換素子本体10は、スピンゼーベック効果及びスピンホール効果を用いた熱電変換素子である。なお、熱電変換素子1は、基板(図示されず)と接していても良い。
3.熱電変換素子の構成
次に、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子の構成について説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子の構成を示す斜視図である。図4に示すように、熱電変換素子1は、スペーサ層5と、スペーサ層5上に接して設けられた熱電変換素子本体10とを具備している。熱電変換素子本体10は、スピンゼーベック効果及びスピンホール効果を用いた熱電変換素子である。なお、熱電変換素子1は、基板(図示されず)と接していても良い。
スペーサ層5は、熱電変換素子本体10に上述のフォノンドラッグ効果を効果的に発現させる。スペーサ層5は、そのようなフォノンドラッグ効果を効果的に発現させる材料で形成されている。スペーサ層5は、膜面に垂直な方向(面直方向)の温度差を保持しながら、フォノンをよく伝導させる材料が好ましい。言い換えると、スペーサ層5は、熱伝導性が低く、フォノン伝導性が高い材料性の高い材料であることが好ましい。温度差を保持することは、伝導させるフォノンのエネルギー分散を大きく保つことを示している。
本実施の形態では、熱電変換素子本体10の熱抵抗を高めることが困難であることに鑑み、上記特性を有するスペーサ層5を熱電変換素子本体10に接して設けている。そのスペーサ層5によって、熱電変換素子1として面直方向に大きな温度差を保持することができる。加えて、スペーサ層5から、熱電変換に寄与するフォノンを供給することができる。それらにより熱電変換素子本体10に対してフォノンドラッグ効果を発現させることができ、熱電変換素子本体10の熱抵抗を高めたのと同様の効果を得ることができる。すなわち、熱を有効に利用して効率的な熱電変換を行うことが可能となる。以下、スペーサ層5について詳細に説明する。
スペーサ層5は、低フォノン伝導材料11と高フォノン伝導材料12とを備え、両者が組み合わされた構造を有している。ただし、高フォノン伝導材料12及び低フォノン伝導材料11とは、励起されたフォノンが材料中で弾性的に進むことが出来る平均の距離によって性質付けられる材料である。すなわち、高フォノン伝導材料12及び低フォノン伝導材料11の材料中のフォノンの平均自由行程をそれぞれΛph2及びΛph1としたときに、Λph2>>Λph1の相対的な関係を有する二種類の材料を指す。このとき、低フォノン伝導材料11と高フォノン伝導材料12とは化合物を形成しているのではない。高フォノン伝導材料12は、低フォノン伝導材料11中に分散して存在している。言い換えれば、スペーサ層5は、高フォノン伝導材料12と、それを支持する母材(マトリクス)としての低フォノン伝導材料11とから構成されている。
スペーサ層5では、スペーサ層5に対して垂直な方向(面直方向;z方向)へ一定の熱流がある条件の下で、スペーサ層5の両面により大きな温度差が発生するように、平均熱伝導率を低くする必要がある。平均熱伝導率を低くする方法として、ここでは、フォノンの平均自由行程と熱伝導率との間には比例関係があることに基づいて、スペーサ層5の大部分を低フォノン伝導材料11が占め、その一部に高フォノン伝導材料12を用いる構成とする。この図4の例では、低フォノン伝導材料11中に、熱電変換素子本体10の面に対して垂直な方向(面直方向;z方向)へ伸びるロッド状又はフィルム状の複数の高フォノン伝導材料12が分散されている。
このような構成とする理由は以下のとおりである。図5は、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子のスペーサ層の平均自由行程を示す模式図である。この図において、スペーサ層5の上部(+z側)は低温(Cold)、下部(−z側)は高温(Hot)である。上部は熱電変換素子本体10であり、下部は熱源である。
単に平均熱伝導率を低くするだけなら、低フォノン伝導材料11だけでスペーサ層5を作製すればよい。しかし、その場合、スペーサ層5からスペーサ層5と磁性体層2との界面に到達するフォノンは、界面から概ねΛph1程度の範囲に限定される。そのようなフォノンが存在する範囲は、スペーサ層5の厚さより非常に薄くなる。そのため、この場合、スペーサ層5全体に生じた温度差に起因したフォノンドラッグ効果を期待できない。しかし、スペーサ層5の一部分にフォノンを弾性的に伝搬することができる高フォノン伝導材料12を用いれば、スペーサ層5からスペーサ層5と磁性体層2との界面に到達するフォノンは、高フォノン伝導材料12近傍だけではあるが、界面から概ねΛph2程度の範囲に広がる。そのため、スペーサ層5全体に生じた温度差に起因したフォノンドラッグ効果を得ることができる。
スペーサ層5は、熱電変換素子本体10にフォノンを効率的に伝導すべく、以下の特性を有していることが更に好ましい。高フォノン伝導材料12は、そのいくつかが、熱電変換素子本体10側(+z側)では、熱電変換素子本体10から低フォノン伝導材料11のフォノンの平均自由行程Λph1の距離の範囲に部分的に達していることが好ましい。また、高フォノン伝導材料12同士の距離は、少なくとも一部が、低フォノン伝導材料11のフォノンの平均自由行程Λph1の距離の範囲に存在することが好ましい。また、高フォノン伝導材料12は、そのいくつかが、スペーサ層5の下部(−z側の部分)では、スペーサ層5の下端面から低フォノン伝導材料11のフォノンの平均自由行程Λph1の距離の範囲に部分的に達していることが好ましい。
図4を参照して、更に、高フォノン伝導材料12は、そのいくつかが、熱電変換素子本体10側(+z側)では、熱電変換素子本体10に部分的に接していることがより好ましい。また、高フォノン伝導材料12同士は、少なくとも一部が、接していることが好ましい。また、高フォノン伝導材料12は、そのいくつかが、スペーサ層5の下部(−z側の部分)では、スペーサ層5の下端面に部分的に接していることが好ましい。更に好ましくは、高フォノン伝導材料12は、熱電変換素子本体10側(+z側)では熱電変換素子本体10に部分的に接し、スペーサ層5の下部(−z側の部分)ではスペーサ層5の下端面に接していることが好ましい。この図4の例では、高フォノン伝導材料12として、熱電変換素子本体10側(+z側)では熱電変換素子本体10に接し、スペーサ層5の下部(−z側の部分)ではスペーサ層5の下端面に接しているロッド状又はフィルム状の材料が示されている。
高フォノン伝導材料12、すなわち高フォノン伝導特性を持つ材料としては、高フォノン伝導ナノワイアや、ナノチューブのような高熱伝導率材料である。カーボンナノチューブ、窒化ホウ素ナノチューブ、種々の半導体ナノワイア及び金属ナノワイアが例示される。カーボンナノチューブ及び窒化ホウ素ナノチューブに関しては、単層構造を持つ物や多層構造を持つ物などを用いることができる。ただし、本実施の形態のスピン流を用いた熱電変換素子1においては、スペーサ層5の材料中にフォノン以外の熱輸送機構が少ないことが望ましい。そのため、フォノンと同じく熱を運ぶ自由電子が多く存在する良導電体よりも、半導体や絶縁体的な物質であることが好ましい。そのため、半導体的な単層カーボンナノチューブや窒化ホウ素ナノチューブを単離したものなどがより良い性能を得るための高フォノン伝導材料としてより好適である。また、金属ナノワイアや半導体ナノワイアは、合成が簡便で安価であることから、製造コストを含めて良い特性を得るための高フォノン伝導材料として適している。
低フォノン伝導材料11、すなわち低フォノン伝導特性をもつ材料としては、多孔質材料(母体+空気、多孔質シリカ、ジルコニアなど)、ナノ結晶の集合体、ポリマーなど低熱伝導率材料である。各種の炭素ポリマー材料及びシリコーン系ポリマー材料に例示される。また、これらの材料を母材として用い、さらに発砲形成することによってスペーサ層5内に空隙を設け、より熱伝導率を小さくする手法を用いることができる。その他に、ゾルゲル法などを用いて作製したセラミック材料を用いることができる。セラミック材料についても、多孔質構造を形成して熱伝導率を低くしたり、有機物質とセラミックのハイブリッド材料を用いて強度や可塑性などの機能性を向上したりすることができる。
このように、本実施の形態のスペーサ層5では、低フォノン伝導材料11中に、フォノンを弾性的に伝搬することができる高フォノン伝導材料12を分散的に混合している。そのため、平均熱伝導率を低くしてスペーサ層5全体に生じた温度差を保持しつつ、高フォノン伝導材料12によりフォノンを弾性的に伝搬させることができる。それにより、スペーサ層5全体に生じた温度差に起因したフォノンドラッグ効果を効率的に得ることができる。
基板は、熱電変換素子本体10におけるスペーサ層5と接する面と反対の面、又は、スペーサ層5における熱電変換素子本体10と接する面と反対の面、のいずれかに接していてもよい。基板は、例えば、熱電変換素子1を支持するために設けられる。その場合、基板は、熱電変換素子1を支持することができるものであれば材料・構造を問わない。例えば、Si、アルミニウム及び鉄のような金属(塗装されているものを含む)、ガラス、アルミナ、サファイア及びガドリニウムガリウムガーネット(GGG)のようなセラミックス、ポリイミドやポリエチレンのような樹脂の各材料の基板を用いることができる。また、形状は必ずしも板状である必要はなく、湾曲や凹凸を有する構造や変形可能な構造でもよい。なお、基板は、熱電変換素子本体10におけるスペーサ層5と接する面と反対の面に設けられる場合には、他のスペーサ層5であっても良い。また、スペーサ層5における熱電変換素子本体10と接する面と反対の面に設けられる場合には、他の熱電変換素子本体10であっても良い。
熱電変換素子本体10は、磁性体層2と電極3とを備えている。電極3上に起電力取り出し用の端子を備えていても良い。
熱電変換素子本体10の磁性体層2は、スペーサ層5上に直接的に設けられ、スペーサ層5に保持されている。ただし、直接的とは、スペーサ層5上に直接成膜されていることである。それにより、スペーサ層5と磁性体層2とが強固に密着(原子レベルで密着)していることにより、スペーサ層5と磁性体層2との間でフォノンの受け渡しが可能となる。すなわち、上述のフォノンドラッグの効果を得ることがでる。なお、磁性体層2とスペーサ層5との間に何らかの膜や基板が挿入されていても、その挿入膜や基板とスペーサ層5及び磁性体層2とが直接成膜され直接接触していれば、フォノンドラッグの効を同様に得られることは明らかである。したがって、ここでいう直接的ということには、上記挿入膜や基板が挿入されている場合を含んでいる。
磁性体層2は、温度勾配∇T(温度差ΔT)によりスピン流を発生する。磁性体層2は、少なくとも1つの磁化Mを有する磁性体を有している。その磁化方向は、少なくとも、膜面(xy面)に平行な成分を有している。本実施の形態では、膜面に平行な一方向(−y方向)に磁化を有しているものとする。この磁化は、単独で発現していても良いし、磁性体層2の磁化Mを固定する他の磁化固定層(図示されず)で固定されていても良い。
磁性体層2は、磁性体である。磁性体層2は、熱伝導率の小さな材料ほど効率よく熱電効果を奏するため、磁性絶縁体であることが好ましい。このような材料としては、例えば、ガーネットフェライト(イットリウム鉄フェライト)やスピネルフェライトなどの酸化物磁性材料を適用することができる。なお、磁性体層2として、ガーネットフェライトのイットリウムサイトをビスマス等で一部不純物置換した材料を含んでいてもよい。このようにイットリウムサイトを不純物置換することにより、磁性体層2と電極3との間のエネルギー準位間の整合が向上すると考えられる。そのため、界面でのスピン流の取り出し効率を増大させ、熱電変換効率を向上させることができる可能性がある。例えば、ガーネットフェライトとしてイットリウム鉄ガーネット(YIG)にビスマスを添加した材料である。
ここで、磁性体層2の形成方法としては、スパッタ法、有機金属分解法(MOD法)、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法(AD法)、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、メッキ法及び印刷法などのいずれかの方法を用いて成膜する方法が挙げられる。これらのうち、AD法を用いて成膜するのが特に好ましい。これは、AD法では、微粒子の衝突エネルギーによって多結晶膜形成・稠密化が行われることから、他の成膜方法に比べて基板を選ばず、金属膜上への成膜も可能であるためである。また、スパッタ法、MOD法などの成膜方法で成膜可能な膜厚は、通常、最大1μm程度であるのに対し、AD法を用いれば10μm以上の厚膜の高速成膜が可能である。そのため、後述する特性厚tc程度の膜厚の磁性体層2を短時間で形成できる。加えて、ノズルの2次元スキャンにより、高速かつ大面積の成膜が可能となる。それにより、低コスト・大面積の熱電変換素子を実現できる。
なお特性膜厚tcは、磁性体層2において、熱起電力の大きさが飽和する膜厚である。例えば、磁性体層2の膜厚が薄い場合、熱起電力の大きさは膜厚に比例して大きくなる。しかし、その膜厚がある膜厚以上になると、熱起電力の大きさは概ね飽和して、膜厚を増加しても増加しなくなる。そのある膜厚を特性膜厚tcという。磁性体層2が単結晶の場合、特性膜厚tcは数mmに及ぶ可能性がある。しかし、上記各成膜法で形成される磁性体層2は多結晶膜であるため、特性膜厚tcはたとえば数μm〜数10μm程度になると考えられる。したがって、磁性体層2の膜厚は、効率的な熱起電力の生成の観点から、少なくとも特性膜厚tcの80%以上であることが好ましい。上限は特に制限はないが、材料の無駄を考慮して、特性膜厚tcの150%程度が好ましい。
熱電変換素子本体10の電極3(起電体層ともいう)は、磁性体層2上に設けられている。電極3は、逆スピンホール効果を用いてスピン流から熱起電力を取り出すスピン流から熱起電力を取り出すために、電極3は磁性体層2上に直接的に設けられていることが好ましい。電極3は、逆スピンホール効果を用いて熱起電力を取り出すために、スピン軌道相互作用を有する材料を有している。このような材料としては、例えばスピン軌道相互作用の比較的大きなAu、Pt及びPdのような金属、又はこれら金属を含有する合金が挙げられる。なお、逆スピンホール効果を強めるために、上記した金属や合金にFe、Cu及びIrなどの少なくとも一つの不純物を添加した材料を電極3の材料として用いてもよい。例えば、Cuなどの一般的な金属膜材料に、Au、Pt、Pd及びIrなどの少なくとも一つの材料を0.5〜10%程度ドープした材料でも、同様の効果を得ることができる。
電極3の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法及びスピンコート法などのいずれかの方法で磁性体層2上に成膜する方法が挙げられる。電極3の膜厚は、少なくとも電極材料のスピン拡散長(磁性体層2のスピン流が電極3内に侵入する深さ)以上に設定するのが好ましい。具体的には、例えばAuであれば50nm以上、Ptであれば10nm以上に設定するのが好ましい。電極3の膜厚には特に制限はない。材料の無駄(コスト)などを考慮すれば、不必要に厚くする必要はなく、例えば100nmである。
熱電変換素子1の端子(図示されず)は、電極3上の二点に互いに離間して設けられている。端子は、端子間の電位差を熱起電力として取り出すことができるものであれば、構造、形状及び位置は特に制限はない。
このような熱電変換素子1におけるスペーサ層5は、以下のような場合に特に有効である。図6は、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子におけるスペーサ層の効果を説明する模式図である。ここでは、太陽熱を用いた発電における変換効率向上を例に説明する。ただし、図6の左側(a)は、単純型積層熱電変換素子51である。単純型積層熱電変換素子51は、複数の熱電変換素子本体10を単純に積層している。積層型熱電変換素子51は、下部の熱浴22と、熱浴22上に連続的に積層された複数の熱電変換素子本体10と、複数の熱電変換素子本体10の上部に載置された熱浴21とを備えている。一方、図6の右側(b)は、スペーサ型積層熱電変換素子52である。積層熱電変換素子52は、スペーサ層5を介して複数の熱電変換素子本体10を積層している。すなわち、積層熱電変換素子52は上述された複数の熱電変換素子1を積層したということができる。積層熱電変換素子52は、下部の熱浴24と、熱浴24上に連続的に積層された複数の熱電変換素子1と、複数の熱電変換素子1の上部に載置された熱浴23を備えている。
ここでは、熱浴22及び熱浴24を水冷により50℃に保持しているとき(T1a=T1b)、太陽光からq=1.0kW/m2のエネルギーが共通に供給されている場合、上部の熱浴21の温度(T2a)及び熱浴23の温度(T2b)が何度になるかを考える。すなわち、上部の熱浴21と下部の熱浴22との温度差ΔT1、及び、上部の熱浴23と下部の熱浴24との温度差ΔT2を考える。更に、その時の各積層熱電変換素子の熱起電力V1、V2を考える。ただし、運用面を考慮して積層熱電変換素子の厚みを等しいと仮定する。すなわち、熱浴21と熱浴22との距離、及び、熱浴23と熱浴24との距離は等しい(L0=1cm)とする。
図6の左側(a)単純型積層熱電変換素子51の場合、温度差ΔT1は以下のように計算される。
熱電変換素子本体10の1層分の厚さをd=100μm(設定値)とし、熱電変換素子本体10の全体の厚さ(熱浴間の厚さ)をL0=1cm(設定値)とする。このとき、d、L0より、熱電変換素子本体10の層数は、N1(=L0/d)=100層となる。
また、熱電変換素子本体10の1層分の熱伝導率をλ=5W/mK(設定値)とする。このとき、L0、λより、熱電変換素子本体10の全体(100層)の熱透過率は、k1(=λ/L0)=500W/m2Kとなる。
以上から、太陽光からの熱流q=1.0kW/m2(設定値)のとき、q、k1より、熱電変換素子本体10の全体(100層)での温度差は、ΔT1(=q/k1)=2℃(K)となる。ことのき、上部の熱浴21は52℃となる。
熱電変換素子本体10の1層分の厚さをd=100μm(設定値)とし、熱電変換素子本体10の全体の厚さ(熱浴間の厚さ)をL0=1cm(設定値)とする。このとき、d、L0より、熱電変換素子本体10の層数は、N1(=L0/d)=100層となる。
また、熱電変換素子本体10の1層分の熱伝導率をλ=5W/mK(設定値)とする。このとき、L0、λより、熱電変換素子本体10の全体(100層)の熱透過率は、k1(=λ/L0)=500W/m2Kとなる。
以上から、太陽光からの熱流q=1.0kW/m2(設定値)のとき、q、k1より、熱電変換素子本体10の全体(100層)での温度差は、ΔT1(=q/k1)=2℃(K)となる。ことのき、上部の熱浴21は52℃となる。
更に、図6の左側(a)単純型積層熱電変換素子51の場合、熱起電力V1は、上記ΔT1を用いれば、以下のように計算される。
熱電変換素子本体10の1層分のスピンゼーベック係数をSS=1μV/K(設定値)とする。このとき、N1、ΔT1、SSより、熱電変換素子本体10の全体(100層)の熱起電力はV1=ΔT1/N1×SS×N1=2μVとなる。なお、この場合、スペーサ層5が無いので、フォノンドラッグの効果は無い。
熱電変換素子本体10の1層分のスピンゼーベック係数をSS=1μV/K(設定値)とする。このとき、N1、ΔT1、SSより、熱電変換素子本体10の全体(100層)の熱起電力はV1=ΔT1/N1×SS×N1=2μVとなる。なお、この場合、スペーサ層5が無いので、フォノンドラッグの効果は無い。
一方、図6の右側(b)スペーサ型積層熱電変換素子52の場合、温度差ΔT2は以下のように計算される。
熱電変換素子本体10の1層分の厚さをd=100μm(設定値)とし、スペーサ層5の1層分の厚さをds=400μm(設定値)とし、(熱電変換素子本体10+スペーサ層5)の全体の厚さ(熱浴間の厚さ)をL0=1cm(設定値)とする。このとき、d、ds、L0より、(熱電変換素子本体10+スペーサ層5)の層数は、N2(=L0/(d+ds))=20層となる。
また、熱電変換素子本体10の1層分の熱伝導率をλ=5W/mK(設定値)とし、スペーサ層5の1層分の熱伝導率をλs=0.1W/mK(設定値)とする。このとき、L0、λ、λsより、(熱電変換素子本体10+スペーサ層5)の全体(20層)の熱透過率は、k2=12.4W/m2Kとなる。
以上から、太陽光からの熱流q=1.0kW/m2(設定値)のとき、q、k2より、(熱電変換素子本体10+スペーサ層5)の全体(20層)での温度差は、ΔT2(=q/k2)=80.4℃(K)となる。このとき、熱電変換素子本体10からの寄与はΔT21=0.4℃(K)、スペーサ層5からの寄与はΔT22=80℃(K)である。ことのき、上部の熱浴21は130.4℃となる。
熱電変換素子本体10の1層分の厚さをd=100μm(設定値)とし、スペーサ層5の1層分の厚さをds=400μm(設定値)とし、(熱電変換素子本体10+スペーサ層5)の全体の厚さ(熱浴間の厚さ)をL0=1cm(設定値)とする。このとき、d、ds、L0より、(熱電変換素子本体10+スペーサ層5)の層数は、N2(=L0/(d+ds))=20層となる。
また、熱電変換素子本体10の1層分の熱伝導率をλ=5W/mK(設定値)とし、スペーサ層5の1層分の熱伝導率をλs=0.1W/mK(設定値)とする。このとき、L0、λ、λsより、(熱電変換素子本体10+スペーサ層5)の全体(20層)の熱透過率は、k2=12.4W/m2Kとなる。
以上から、太陽光からの熱流q=1.0kW/m2(設定値)のとき、q、k2より、(熱電変換素子本体10+スペーサ層5)の全体(20層)での温度差は、ΔT2(=q/k2)=80.4℃(K)となる。このとき、熱電変換素子本体10からの寄与はΔT21=0.4℃(K)、スペーサ層5からの寄与はΔT22=80℃(K)である。ことのき、上部の熱浴21は130.4℃となる。
更に、図6の右側(b)スペーサ型積層熱電変換素子52の場合、熱起電力V2は、上記ΔT2(ΔT21、ΔT22)を用いれば、以下のように計算される。
熱電変換素子本体10の1層分のスピンゼーベック係数をSS=1μV/K(設定値)とする。このとき、N2、ΔT21、SSより、熱電変換素子本体10の全体(20層)の熱起電力はV21=ΔT21/N2×SS×N2=0.4μVとなる。
一方、スペーサ層5の1層分のフォノンドラッグ係数をSSPD=1μV/K(設定値)とする。このとき、N2、ΔT22、SSPDより、スペーサ層5の全体(20層)の寄与による熱起電力はV22=ΔT22/N2×SSPD×N2=80μVとなる。
以上のことから、スペーサ型積層熱電変換素子52の場合、熱起電力はV2=V21+V22=80.4μVとなる。
熱電変換素子本体10の1層分のスピンゼーベック係数をSS=1μV/K(設定値)とする。このとき、N2、ΔT21、SSより、熱電変換素子本体10の全体(20層)の熱起電力はV21=ΔT21/N2×SS×N2=0.4μVとなる。
一方、スペーサ層5の1層分のフォノンドラッグ係数をSSPD=1μV/K(設定値)とする。このとき、N2、ΔT22、SSPDより、スペーサ層5の全体(20層)の寄与による熱起電力はV22=ΔT22/N2×SSPD×N2=80μVとなる。
以上のことから、スペーサ型積層熱電変換素子52の場合、熱起電力はV2=V21+V22=80.4μVとなる。
以上に示すように、図6の左側(a)単純型積層熱電変換素子51の場合、熱電変換素子本体10の数(N1)は100層と多い。しかし、熱透過率(k1)が高いためその温度差(ΔT1)は小さい(2℃)。その結果、熱起電力(V1)はそれほど大きくならない(2μV)。一方、図6の右側(b)スペーサ型積層熱電変換素子52の場合、スペーサ層5が入る分、熱電変換素子本体10(N2)は20層と少ない。そのため、そのままでは熱起電力は低下するとも考えられる。しかし、スペーサ層5は、フォノンドラッグ効果を発現させる。すなわち、熱電変換素子本体10の磁性体層や電極のスピンは、フォノンを介してスペーサ層5にかかる温度勾配を感じ、その温度勾配が逆スピンホール電圧に反映される。そのため、熱電変換素子本体10の本来の熱起電力(V21)だけでなく、フォノンドラッグの効果による熱起電力(V22)も付加される。加えて、スペーサ層5の熱伝導率は低いため、スペーサ層5の温度勾配(ΔT22)は熱電変換素子本体10のそれに比べて大きい(80℃)。その結果、トータルの熱起電力(V2)は非常に大きくなる(80.4μV)。
すなわち、スペーサ層5を設けることで、フォノンドラッグの効果(SSPD係数に反映)により、上述の熱電変換素子1の熱起電力を大きくすることができる。更に、複数の熱電変換素子1を積層することにより、より大きな熱起電力を得ることができる。特に、本実施の形態のスペーサ層5は、低フォノン伝導材料11中に、フォノンを弾性的に伝搬することができる高フォノン伝導材料12を混合している。そのため、平均熱伝導率を低くしてスペーサ層5全体に生じた温度差を保持しつつ、高フォノン伝導材料12によりフォノンを弾性的に伝搬させることができる。それにより、スペーサ層5全体に生じた温度差に起因したフォノンドラッグ効果を効率的に得ることができる。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子におけるスペーサ層の構成について説明する。図7A〜図7Cは、本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換素子におけるスペーサ層の構成例を示す模式図である。これらの図は、スペーサ層の例であり、上記特性を満足するのであれば、他の構成を有していてもよい。
図7Aを参照すると、スペーサ層5では、低フォノン伝導材料11の母材に繊維状の高フォノン伝導材料12が概ねランダムに分散されている。このとき、低フォノン伝導材料11の全体に亘って配向せずに分散されていることが好ましい。すなわち、スペーサ層5内で、高フォノン伝導材料12が概ね同じ密度で存在していることが好ましい。また、上下方向(z方向)にフォノンの流れを促進できれば、必ずしも上下方向だけに延伸している必要は無く、左右方向(x方向やy方向)にも延伸していてよい。その場合、例えば、各繊維状の高フォノン伝導材料12において、左右方向の成分と比較して、上下方向の成分が多ければよい。あるいは、経路は問わないが、一つ又は複数の高フォノン伝道材料12が、下部(−z側の部分)から上部(+z側の部分)に、フォノン平均自由行程Λの距離以内で、連続的につながっていればよい。スペーサ層5のその他の特性については、上述のとおりである。
図7Bを参照すると、スペーサ層5では、低フォノン伝導材料11の母材にフィルム状の高フォノン伝導材料12がxy面に概ね垂直に配置されている(垂直方向に配向している)。このとき、低フォノン伝導材料11の全体に亘って分散されていることが好ましい。すなわち、スペーサ層5内で、高フォノン伝導材料12が概ね同じ密度で存在していることが好ましい。ただし、高フォノン伝導材料12は平面的なフィルムでなくてもよく、曲面的なフィルムや曲面と平面とが混合したフィルムであってもよい。また、高フォノン伝導材料12は厚みが一定のフィルムでなくてもよく、厚みが位置により異なっていてもよい。更に、yz面に互いに平行に配置されていなくてもよく、xy面に概ね垂直であればこの配置に限定されるものではない。互いに平行でなくてもよいし、互いに交差していてもよいし、等間隔でなくてもよい。更に、上下方向(z方向)にフォノンの流れを促進できれば、高フォノン伝導材料12のいくつかがxy面に概ね垂直でなくてもよいし、一つの高フォノン伝導材料12の一部がxy面に概ね垂直でなくてもよい。スペーサ層5のその他の特性については、上述のとおりである。
図7Cを参照すると、スペーサ層5では、低フォノン伝導材料11の母材にロッド状の高フォノン伝導材料12がxy面に概ね垂直に配置されている(垂直方向に配向している)。このとき、低フォノン伝導材料11の全体に亘って分散されていることが好ましい。すなわち、スペーサ層5内で、高フォノン伝導材料12が概ね同じ密度で存在していることが好ましい。ただし、高フォノン伝導材料12は真っ直ぐのロッドでなくてもよく、曲がったロッドや曲がったロッドと真っ直ぐのロッドとが混合していてもよい。また、高フォノン伝導材料12は断面が一定のロッドでなくてもよく、断面が位置により異なっていてもよい。更に、互いに等間隔に配置されてなくてもよく、分布に極端に斑がなければ等間隔である必要は無い。更に、上下方向(z方向)にフォノンの流れを促進できれば、高フォノン伝導材料12のいくつかがxy面に概ね垂直でなくてもよいし、一つの高フォノン伝導材料12の一部がxy面に概ね垂直でなくてもよい。スペーサ層5のその他の特性については、上述のとおりである。
4.熱電変換素子の動作
次に、熱電変換素子1の動作について図4を参照して説明する。なお、この動作は図6の積層熱電変換素子52においても同様である。
次に、熱電変換素子1の動作について図4を参照して説明する。なお、この動作は図6の積層熱電変換素子52においても同様である。
まず、熱電変換素子1において、磁性体層2に外部磁場Hを印加し、磁性体層2を所定の方向に磁化する(磁化M)。図4では、磁性体層2を−y方向に磁化している。その後、磁性体層2の膜面(xy面)に対して垂直方向(z方向)に温度勾配を印加する。図4では、−z方向に温度勾配∇T(スペーサ層5の側が高温の温度差ΔT)を印加している。そのようにすると、磁性体層2におけるスピンゼーベック効果により、この温度勾配∇Tに沿って、低温方向(+z方向)に角運動量の流れ(スピン流)が誘起される。この磁性体層2において生成されたスピン流は、スペーサ層5の特に高フォノン伝導材料12のフォノンや磁性体層2のフォノンと相互作用して増強されながら(フォノンドラッグ効果)、近接する電極3へと流れ込む。流れ込んだスピン流は、この電極3における逆スピンホール効果によって、磁性体層2の磁化Mの方向に対して垂直方向の電流Jsへと変換される。この電流Jsは、電極3のx方向の両端に設けられた二つの端子(図示されず)間に電位差Vを生じさせる。従って、当該電位差Vをその二つの端から熱起電力Eとして取り出すことができる。すなわち、熱電変換素子1は、磁性体層2に印加される温度差(温度勾配∇T)から熱起電力Eを生成する。
以上のようにして、本実施の形態に係る熱電変換素子1が動作する。
本実施の形態に係る熱電変換素子の構造において、スペーサ層5を設け、そのフォノンドラッグ効果を利用することにより、スペーサ層5に例えば100nm以下の薄い電極/磁性体層構造を成膜するだけで高起電力の熱電変換デバイスが実現できる。それにより、バルク磁性体などを用いる場合に比べ、原材料コスト・製造コストを大幅に低減することができる。
5.熱電変換素子の製造方法
次に、熱電変換素子1(図4)の製造方法の一例について説明する。なお、この製造方法は積層熱電変換素子52(図6)においても同様である。
次に、熱電変換素子1(図4)の製造方法の一例について説明する。なお、この製造方法は積層熱電変換素子52(図6)においても同様である。
まず、基板を準備し、スパッタ成膜装置のチャンバ内のフォルダに固定する。続いて、基板上にスパッタ法により白金(Pt)膜の電極3を形成する。次に、電極3付きの基板をエアロゾル成膜装置のチャンバ内のフォルダに固定する。続いて、電極3上にエアロゾルデポジション法によりイットリウム鉄ガーネット(YIG)膜の磁性体層2を形成する。次に、磁性体層2及び電極3付きの基板を塗布装置のチャンバ内のフォルダに固定する。続いて、磁性体層2上にスピンコート法により高フォノン伝導材料12を含む低フォノン伝導材料11を塗布し、熱処理してスペーサ層5を形成する。以上のようにして熱電変換素子1が製造される。なお、スペーサ層5の製造方法のバリエーションについては後述される。
積層熱電変換素子52(図6)の場合には、上記プロセスを繰り返す、又は、上記熱電変換素子1を複数個製造して接着などの方法で重ね合わせる。そのようにして、積層熱電変換素子52が製造される。
上記製造方法では、磁性体層2はエアロゾルデポジション法(AD法)で形成し、電極3はスパッタ法で形成し、スペーサ層5はスピンコート法で形成している。しかし、これは一例であり、本発明はこの例に限定されるものではなく、上述のような各種成膜方法を適用することができる。
6.作用効果
本実施の形態では、少なくとも以下のような作用効果を得ることができる。ただし、本明細書の記載と添付図面とから、その他の作用効果についても容易に確認することができる。
本実施の形態では、少なくとも以下のような作用効果を得ることができる。ただし、本明細書の記載と添付図面とから、その他の作用効果についても容易に確認することができる。
本実施の形態は、熱電変換素子本体10の熱抵抗を高めることが困難であることに鑑み、上記特性を有するスペーサ層5を熱電変換素子本体10に接して設けている。スペーサ層5では、低フォノン伝導材料11中に、フォノンを弾性的に伝搬することができる高フォノン伝導材料12を分散的に混合している。そのため、平均熱伝導率を低くしてスペーサ層5全体に生じた温度差を保持しつつ、高フォノン伝導材料12によりフォノンを弾性的に伝搬させることができる。それにより、スペーサ層5の特に高フォノン伝導材料12のフォノンや磁性体層2のフォノンと磁性体層2のスピン流とを相互作用させて、スペーサ層5全体に生じた温度差に起因したフォノンドラッグ効果を効率的に得ることができる。すなわち、フォノンドラッグ効果を効率的に発現させることができ、熱電変換素子本体10の熱抵抗を高めたのと同様の効果を得ることができる。すなわち、熱を有効に利用して効率的な熱電変換を行うことが可能となる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る熱電変換素子の構成について説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係る熱電変換素子の構成を示す断面図である。本実施の形態に係る熱電変換素子1aは、スペーサ層5aの構成が第1の実施の形態の熱電変換素子1のスペーサ層5と相違する。以下、第1の実施の形態と相違する点について主に説明する。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る熱電変換素子の構成について説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係る熱電変換素子の構成を示す断面図である。本実施の形態に係る熱電変換素子1aは、スペーサ層5aの構成が第1の実施の形態の熱電変換素子1のスペーサ層5と相違する。以下、第1の実施の形態と相違する点について主に説明する。
スペーサ層5aは、多層構造を有している。すなわち、スペーサ層5aは、高フォノン伝導材料12を含んだ低フォノン伝導材料11と、反射層13とを備えている。高フォノン伝導材料12を含んだ低フォノン伝導材料11は、第1の実施の形態に示したとおりである。反射層13は、高フォノン伝導材料12を伝導するフォノンのうち、下方(−z方向)に伝導してくるフォノンを反射する。すなわち、高フォノン伝導材料12を伝導するフォノンが下方(−z方向)に伝導することを防止する。下方(−z方向)に伝導してくるフォノンは必ずしも多くないが、その伝導を防止することで、フォノン伝導の効率をより高めることができる。それにより、フォノンドラッグをより効果的に利用することができる。
ここで、反射層13がフォノンを反射する原理について説明する。図9は、高フォノン伝導材料と反射層との界面を模式的に示す断面図である。フォノンが高フォノン伝導材料12と反射層13との界面B1を反射するためには、高フォノン伝導材料12の音響インピーダンスと反射層13の音響インピーダンスとが整合していないことが好ましいと考えられる。具体的には、以下のとおりである。高フォノン伝導材料12の音響インピーダンスをZ1、反射層13の音響インピーダンスをZ2とすれば、高フォノン伝導材料12からのフォノンを反射層13が反射するときの界面B1での反射率R01は下式で表される。
R01=|Z2−Z1|/(Z1+Z2) …(3)
このとき、音響インピーダンスが整合せず、反射率が透過率よりも相対的に大きいことが好ましい状態と考えられる。実験的又はシミュレーション的には、反射率(絶対値)が1/2より大きく1よりも小さい範囲であればフォノンの反射により好ましいと考えられる。この場合、反射層13の音響インピーダンスは、高フォノン伝導材料12の音響インピーダンスの3倍以上、もしくは1/3以下であることが好ましい。
R01=|Z2−Z1|/(Z1+Z2) …(3)
このとき、音響インピーダンスが整合せず、反射率が透過率よりも相対的に大きいことが好ましい状態と考えられる。実験的又はシミュレーション的には、反射率(絶対値)が1/2より大きく1よりも小さい範囲であればフォノンの反射により好ましいと考えられる。この場合、反射層13の音響インピーダンスは、高フォノン伝導材料12の音響インピーダンスの3倍以上、もしくは1/3以下であることが好ましい。
なお、熱源から又は高フォノン伝導材料12からのフォノンは反射層13を介して、低フォノン伝導材料11に伝導し、そこから再び高フォノン伝導材料に伝導する場合もある。
反射層13は、上記の反射率R01の条件を満足していれば、上述された低フォノン伝導材料で形成されてもよいし、高フォノン伝導材料で形成されていてもよい。すなわち、反射層13は、低フォノン伝導材料11又は高フォノン伝導材料12と同様の上述の材料を用いることができる。ただし、上記図9の内容を考慮して、低フォノン伝導材料11から下方(−z方向)に向かうフォノンを反射層13で反射させることを考えた場合、反射層13の音響インピーダンスは、低フォノン伝導材料11の音響インピーダンスよりも大きいことがより好ましいと考えられる。
反射層13を設ける効果は、特に熱電変換素子1aを積層した場合に顕著である。図10Aは、本発明の第2の実施の形態に係る熱電変換素子の他の構成を示す断面図である。この図では、熱電変換素子1aが積層されて、スペーサ型積層熱電変換素子52aを構成している。この場合、第1の実施の形態で示したスペーサ層5を有する積層熱電変換素子52の効果(図6)を得ると共に、上述された下方(−z方向)に向かうフォノンの流れを抑制する効果も得ることができる。それにより、フォノンドラッグをより効果的に利用することができる。
図10Bは、熱電変換素子を積層した場合での問題点を模式的に示す断面図である。この図では、第1の実施の形態の熱電変換素子1が積層された積層熱電変換素子52を示している。この場合、下側の熱電変換素子1における下から上へ向かう熱いフォノンのと、上側の熱電変換素子1における上から下へ向かう冷たいフォノンの流れとがキャンセルして、フォノンドラッグの効果を低減させてしまうおそれがある。しかし、上記の反射層3を付加した熱電変換素子1aを複数積層させた積層熱電変換素子52a(図10A)では、上述された下方(−z方向)に向かうフォノンの流れを抑制する効果あるので、フォノンのキャンセルが起こらず、フォノンドラッグをより効果的に利用することができる。
熱電変換素子1a(積層熱電変換素子52a)の動作は、反射層13が下方へ向かうフォノンを反射するほかは、第1の実施の形態と同様である。
熱電変換素子1a(積層熱電変換素子52a)の製造方法は、第1の実施の形態の製造方法において、高フォノン伝導材料12を含む低フォノン伝導材料11を形成後、その上にスピンコート法により反射層13を塗布し、熱処理することでスペーサ層5aを形成するほかは、第1の実施の形態と同様である。
熱電変換素子1a(積層熱電変換素子52a)の作用効果は、反射層13が下方へ向かうフォノンを反射することによるフォノンドラッグをより効果的に利用することのほかは、第1の実施の形態と同様である。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成について説明する。図11は、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成を示す断面図である。本実施の形態に係る熱電変換素子1bは、スペーサ層5bの構成が第2の実施の形態の熱電変換素子1aのスペーサ層5aと相違する。以下、第2の実施の形態と相違する点について主に説明する。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成について説明する。図11は、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の構成を示す断面図である。本実施の形態に係る熱電変換素子1bは、スペーサ層5bの構成が第2の実施の形態の熱電変換素子1aのスペーサ層5aと相違する。以下、第2の実施の形態と相違する点について主に説明する。
スペーサ層5bは、多層構造を有している。すなわち、スペーサ層5bは、高フォノン伝導材料12を含んだ低フォノン伝導材料11と、反射層13と、透過層14とを備えている。高フォノン伝導材料12を含んだ低フォノン伝導材料11及び反射層13は、第2の実施の形態に示したとおりである。透過層14は、高フォノン伝導材料12を伝導するフォノンのうち、上方(+z方向)に伝導してくるフォノンを透過させる。すなわち、高フォノン伝導材料12を伝導するフォノンが反射されることを防止する。フォノンの反射を防止することで、フォノン伝導の効率をより高めることができる。それにより、フォノンドラッグをより効果的に利用することができる。なお、スペーサ層5bにおいて、反射層13は無くても良い。
ここで、透過層14がフォノンを透過させる原理について説明する。図12は、高フォノン伝導材料と透過層との界面を模式的に示す断面図である。フォノンが高フォノン伝導材料12と透過層14との界面B2を透過する(低反射となる)ためには、高フォノン伝導材料12の音響インピーダンスと透過層14の音響インピーダンスとが整合していることが好ましいと考えられる。具体的には、以下のとおりである。高フォノン伝導材料12の音響インピーダンスをZ3、透過層14の音響インピーダンスをZ4とすれば、高フォノン伝導材料12からのフォノンを透過層14が反射するときの界面B2での反射率R02は下式で表される。
R02=|Z3−Z4|/(Z3+Z4) …(4)
このとき、音響インピーダンスが整合して、反射率が透過率より相対的に小さいことが好ましい状態と考えられる。実験的又はシミュレーション的には、反射率(絶対値)が0より大きく1/2より小さい範囲であればフォノンの反射が小さくなりより好ましいと考えられる。この場合、透過層14の音響インピーダンスは、高フォノン伝導材料12の各々の音響インピーダンスの1/3以上3倍以下であることが好ましい。
R02=|Z3−Z4|/(Z3+Z4) …(4)
このとき、音響インピーダンスが整合して、反射率が透過率より相対的に小さいことが好ましい状態と考えられる。実験的又はシミュレーション的には、反射率(絶対値)が0より大きく1/2より小さい範囲であればフォノンの反射が小さくなりより好ましいと考えられる。この場合、透過層14の音響インピーダンスは、高フォノン伝導材料12の各々の音響インピーダンスの1/3以上3倍以下であることが好ましい。
透過層14は、上記の反射率R02の条件を満足していれば、上述された低フォノン伝導材料で形成されてもよいし、高フォノン伝導材料で形成されていてもよい。すなわち、透過層14は、低フォノン伝導材料11又は高フォノン伝導材料12と同様の上述の材料を用いることができる。ただし、上記図12の内容を考慮して、高フォノン伝導材料12から上方(+z方向)に向かうフォノンを透過層14で透過させることを考えると、透過層14の音響インピーダンスは、高フォノン伝導材料12の音響インピーダンスに近いことがより好ましいと考えられる。
さらに、透過層14の音響インピーダンスは、高フォノン伝導材料12と磁性体層2の音響インピーダンスの中間的な値であることが好ましい。
さらに、透過層14の音響インピーダンスは、高フォノン伝導材料12と磁性体層2の音響インピーダンスの中間的な値であることが好ましい。
透過層14を設ける効果は、特に熱電変換素子1bを積層した場合に顕著である。図13は、本発明の第3の実施の形態に係る熱電変換素子の他の構成を示す断面図である。この図では、熱電変換素子1bが積層されて、スペーサ型積層熱電変換素子52bを構成している。この場合、第2の実施の形態で示したスペーサ層5aを有する積層熱電変換素子52aの効果(図10A)を得ると共に、上述された上方(+z方向)に向かうフォノンの流れの反射を抑制する効果も得ることができる。それにより、フォノンドラッグをより効果的に利用することができる。
熱電変換素子1b(積層熱電変換素子52b)の動作は、透過層14が上方へ向かうフォノンの反射を抑制するほかは、第2の実施の形態と同様である。
熱電変換素子1b(積層熱電変換素子52b)の製造方法は、第2の実施の形態の製造方法において、高フォノン伝導材料12を含む低フォノン伝導材料11を形成前に、磁性体層2上にスピンコート法により透過層14を塗布し、熱処理するほかは、第2の実施の形態と同様である。
熱電変換素子1b(積層熱電変換素子52b)の作用効果は、透過層14が上方へ向かうフォノンの反射を抑制することによるフォノンドラッグをより効果的に利用することのほかは、第2の実施の形態と同様である。
以下、上記各実施の形態に関する実施例について説明する。
[実施例1]
図14は、本発明の実施例1の構成を示す斜視図である。
この熱電変換素子は、スペーサ型の積層熱電変換素子である。基板9上に設けられた熱電変換素子本体10(磁性体層2及び電極3)と、スペーサ層5(低フォノン伝導材料11及び高フォノン伝導材料12)とを備える熱電変換素子が積層されている。この図14のスペーサ層5は、カーボンナノチューブ混合樹脂であり、カーボンナノチューブ部分が高フォノン伝導材料12に相当し、樹脂部分が低フォノン伝導材料11に相当する。カーボンナノチューブは、実質的に特定の方向に配向せず、ランダム方向に分散している。この図14では4層の熱電変換素子本体10を積層しているが、その層数は何層であってもよい。また、この図14では熱電変換素子本体10を最上部としているが、スペーサ層5を最上部としてもよいし、基板9を最上部としてもよい。基板9は、その材料や温度勾配の向きにより、反射層13(スペーサ層5の一部)と見ることもできるし、透過層14(スペーサ層5の一部)と見ることもできるし、単なる支持部材と見ることもできる。
[実施例1]
図14は、本発明の実施例1の構成を示す斜視図である。
この熱電変換素子は、スペーサ型の積層熱電変換素子である。基板9上に設けられた熱電変換素子本体10(磁性体層2及び電極3)と、スペーサ層5(低フォノン伝導材料11及び高フォノン伝導材料12)とを備える熱電変換素子が積層されている。この図14のスペーサ層5は、カーボンナノチューブ混合樹脂であり、カーボンナノチューブ部分が高フォノン伝導材料12に相当し、樹脂部分が低フォノン伝導材料11に相当する。カーボンナノチューブは、実質的に特定の方向に配向せず、ランダム方向に分散している。この図14では4層の熱電変換素子本体10を積層しているが、その層数は何層であってもよい。また、この図14では熱電変換素子本体10を最上部としているが、スペーサ層5を最上部としてもよいし、基板9を最上部としてもよい。基板9は、その材料や温度勾配の向きにより、反射層13(スペーサ層5の一部)と見ることもできるし、透過層14(スペーサ層5の一部)と見ることもできるし、単なる支持部材と見ることもできる。
図15A〜図15Cは、本発明の実施例1の熱電変換素子の製造方法を示す斜視図である。この熱電変換素子は以下のように製造される。
(1)まず、基板9として5×5cm2、厚さ100μmの石英ガラスを準備する。次に、基板9上に、磁性体層2としてMOD法を用いて膜厚100nmのYIG膜を作製する。続いて、Pt膜上に、電極3としてスパッタ法を用いて膜厚10nmのPt膜を作製する。以上のようにして熱電変換素子本体10を作製する(図15A)。
(2)次に、NanoIntegris社製のバウダー状半導体カーボンナノチューブ1μgを、10mlのアニソールに入れ、10分間超音波分散を行った分散液を生成する。続いて、平均分子量45万Daのポリメチルメタクリレート(PMMA)を、10mlのアニソールに2重量%分散した樹脂溶液を生成する。その後、上記分散液と上記樹脂溶液とを混合し、良く攪拌する。それにより、スペーサ層5用のカーボンナノチューブ入りPMMA溶液を生成する。
(3)続いて、1層目の熱電変換素子本体10の電極3の表面に、カーボンナノチューブ入りPMMA溶液を塗布する。それにより、スペーサ層5を作製する(図15B)。
(4)次に、(1)と同様にして2層目の熱電変換素子本体10を作製し、スペーサ層5上に積層する(図15C)。その後、(3)と同様にして、2層目の熱電変換素子本体10の電極3の表面に、カーボンナノチューブ入りPMMA溶液を塗布して、スペーサ層5を作製する。これにより、アクリル樹脂の低フォノン伝導材料11とカーボンナノチューブの高フォノン伝導材料21とが混合したスペーサ層5が得られる。
(5)そして、(4)の工程を繰り返し、例えば、合計10層の積層を行った後、積層素子を並行板(絶縁体板)に挟み、窒素雰囲気中で200度の熱処理を20時間行う。それにより、厚さ500μmの積層熱電変換素子が作製される。
(6)更に、積層熱電変換素子の対向する側面を研磨し、各層の電極3を露出させる。そして、導電性ペーストを用いて各層を電気的に接続し、10層の並列型熱電変換素子を作製した。
(1)まず、基板9として5×5cm2、厚さ100μmの石英ガラスを準備する。次に、基板9上に、磁性体層2としてMOD法を用いて膜厚100nmのYIG膜を作製する。続いて、Pt膜上に、電極3としてスパッタ法を用いて膜厚10nmのPt膜を作製する。以上のようにして熱電変換素子本体10を作製する(図15A)。
(2)次に、NanoIntegris社製のバウダー状半導体カーボンナノチューブ1μgを、10mlのアニソールに入れ、10分間超音波分散を行った分散液を生成する。続いて、平均分子量45万Daのポリメチルメタクリレート(PMMA)を、10mlのアニソールに2重量%分散した樹脂溶液を生成する。その後、上記分散液と上記樹脂溶液とを混合し、良く攪拌する。それにより、スペーサ層5用のカーボンナノチューブ入りPMMA溶液を生成する。
(3)続いて、1層目の熱電変換素子本体10の電極3の表面に、カーボンナノチューブ入りPMMA溶液を塗布する。それにより、スペーサ層5を作製する(図15B)。
(4)次に、(1)と同様にして2層目の熱電変換素子本体10を作製し、スペーサ層5上に積層する(図15C)。その後、(3)と同様にして、2層目の熱電変換素子本体10の電極3の表面に、カーボンナノチューブ入りPMMA溶液を塗布して、スペーサ層5を作製する。これにより、アクリル樹脂の低フォノン伝導材料11とカーボンナノチューブの高フォノン伝導材料21とが混合したスペーサ層5が得られる。
(5)そして、(4)の工程を繰り返し、例えば、合計10層の積層を行った後、積層素子を並行板(絶縁体板)に挟み、窒素雰囲気中で200度の熱処理を20時間行う。それにより、厚さ500μmの積層熱電変換素子が作製される。
(6)更に、積層熱電変換素子の対向する側面を研磨し、各層の電極3を露出させる。そして、導電性ペーストを用いて各層を電気的に接続し、10層の並列型熱電変換素子を作製した。
上記製造方法において、スペーサ層5は他の方法でも製造することができる。図15D〜図15Fは、本発明の実施例1の熱電変換素子の製造方法の変形例を示す斜視図である。このスペーサ層5は以下のように製造される。
(1)まず、以下の手順で鉄混入シリカゾルの塗布液を作製する。
(i)TMOS(Tetramethoxysilane)3.6mlを取り、氷水で冷却する。
(ii)冷却されたTMOSを強く攪拌しながら、その中に脱イオン水74μlを徐々に加える。
(iii)得られた溶液に0.04NのHCl5μlを加え、それを冷却したまま15
分攪拌する。
(iv)得られた溶液(TMOSゾル)を超音波バスで15分攪拌する。
(v)1重量%の鉄アセチルアセトナート−メタノール溶液500μlを作製する。
(vi)平均分子量300のポリエチレングリコール(PEG)3.6と脱イオン水7.2mlとをよく混合しておく。
(vii)TMOSゾルを攪拌しながら、その中に鉄アセチルアセトナート−メタノール溶液を少しずつ加え、よく混合する。
(viii)TMOSゾルを攪拌しながら、更にその中にPEG水溶液を少しずつ加え、よく混合する。
(ix)混合した溶液を、0.45μmのテフロン(登録商標)製のフィルタでろ過する。
(x)濾過された溶液をアルカリ洗浄し、よく乾燥させたフラスコにいれ、真空エバポレータにセットする。
(xi)10.液温45℃、真空度を200mbarに維持し、35分脱気処理を行う。
(2)次に、(1)で得られた塗布液を、熱電変換素子本体10の電極3の表面にスピンコート法で塗布し、約30μmの厚さの膜(11a)を形成する(図15D)。
(3)続いて、400度のホットプレート上で5分間焼成する(図15E)。その結果、多孔質シリカ膜11a(孔11bを含む)が形成される。
(4)その後、真空アニール炉を用いて真空中で750度に昇温した状態で、飽和蒸気圧のメタノールを導入して1分間カーボンナノチューブの成長を行う。1分後、メタノール導入をやめ、真空中徐々に冷却する。これにより、電変換素子本体10の電極3の表面に、スペーサ層5として、高フォノン伝導材料12としてのカーボンナノチューブと低フォノン伝導材料11としての多孔質シリカ膜11a(孔11bを含む)の複合膜を作製する。この場合にも、カーボンナノチューブは、実質的に特定の方向に配向せず、ランダム方向に分散している。
(1)まず、以下の手順で鉄混入シリカゾルの塗布液を作製する。
(i)TMOS(Tetramethoxysilane)3.6mlを取り、氷水で冷却する。
(ii)冷却されたTMOSを強く攪拌しながら、その中に脱イオン水74μlを徐々に加える。
(iii)得られた溶液に0.04NのHCl5μlを加え、それを冷却したまま15
分攪拌する。
(iv)得られた溶液(TMOSゾル)を超音波バスで15分攪拌する。
(v)1重量%の鉄アセチルアセトナート−メタノール溶液500μlを作製する。
(vi)平均分子量300のポリエチレングリコール(PEG)3.6と脱イオン水7.2mlとをよく混合しておく。
(vii)TMOSゾルを攪拌しながら、その中に鉄アセチルアセトナート−メタノール溶液を少しずつ加え、よく混合する。
(viii)TMOSゾルを攪拌しながら、更にその中にPEG水溶液を少しずつ加え、よく混合する。
(ix)混合した溶液を、0.45μmのテフロン(登録商標)製のフィルタでろ過する。
(x)濾過された溶液をアルカリ洗浄し、よく乾燥させたフラスコにいれ、真空エバポレータにセットする。
(xi)10.液温45℃、真空度を200mbarに維持し、35分脱気処理を行う。
(2)次に、(1)で得られた塗布液を、熱電変換素子本体10の電極3の表面にスピンコート法で塗布し、約30μmの厚さの膜(11a)を形成する(図15D)。
(3)続いて、400度のホットプレート上で5分間焼成する(図15E)。その結果、多孔質シリカ膜11a(孔11bを含む)が形成される。
(4)その後、真空アニール炉を用いて真空中で750度に昇温した状態で、飽和蒸気圧のメタノールを導入して1分間カーボンナノチューブの成長を行う。1分後、メタノール導入をやめ、真空中徐々に冷却する。これにより、電変換素子本体10の電極3の表面に、スペーサ層5として、高フォノン伝導材料12としてのカーボンナノチューブと低フォノン伝導材料11としての多孔質シリカ膜11a(孔11bを含む)の複合膜を作製する。この場合にも、カーボンナノチューブは、実質的に特定の方向に配向せず、ランダム方向に分散している。
[実施例2]
図16は、本発明の実施例2の構成を示す斜視図である。
この熱電変換素子は、スペーサ型の積層熱電変換素子である。基板9上に設けられた熱電変換素子本体10(電極3及び磁性体層2)と、スペーサ層5(低フォノン伝導材料11及び高フォノン伝導材料12)とを備える熱電変換素子が積層されている。この図16の熱電変換素子は、電極3と磁性体層2との積層順番が逆である他は実施例1と同じである。製造方法も、電極3と磁性体層2との積層順番が逆である他は実施例1と同じである。
図16は、本発明の実施例2の構成を示す斜視図である。
この熱電変換素子は、スペーサ型の積層熱電変換素子である。基板9上に設けられた熱電変換素子本体10(電極3及び磁性体層2)と、スペーサ層5(低フォノン伝導材料11及び高フォノン伝導材料12)とを備える熱電変換素子が積層されている。この図16の熱電変換素子は、電極3と磁性体層2との積層順番が逆である他は実施例1と同じである。製造方法も、電極3と磁性体層2との積層順番が逆である他は実施例1と同じである。
[実施例3]
図17Aは、本発明の実施例3の構成を示す斜視図である。
この熱電変換素子は、スペーサ型の積層熱電変換素子である。基板9上に設けられた熱電変換素子本体10(電極3及び磁性体層2)と、スペーサ層5(低フォノン伝導材料11及び高フォノン伝導材料12)とを備える熱電変換素子が積層されている。この図17のスペーサ層5は、陽極酸化法を用いて形成されたポーラスアルミナ膜であり、アルミナ部分が高フォノン伝導材料12に相当し、空隙部分が低フォノン伝導材料11に相当する。アルミナ部分は熱電変換素子の膜面に垂直な方向に延伸していると見ることもできる。この図17の熱電変換素子は、スペーサ層5が異なる他は実施例2と同じである。
図17Aは、本発明の実施例3の構成を示す斜視図である。
この熱電変換素子は、スペーサ型の積層熱電変換素子である。基板9上に設けられた熱電変換素子本体10(電極3及び磁性体層2)と、スペーサ層5(低フォノン伝導材料11及び高フォノン伝導材料12)とを備える熱電変換素子が積層されている。この図17のスペーサ層5は、陽極酸化法を用いて形成されたポーラスアルミナ膜であり、アルミナ部分が高フォノン伝導材料12に相当し、空隙部分が低フォノン伝導材料11に相当する。アルミナ部分は熱電変換素子の膜面に垂直な方向に延伸していると見ることもできる。この図17の熱電変換素子は、スペーサ層5が異なる他は実施例2と同じである。
この熱電変換素子は、以下のように製造される。
(1)まず、基板9として5×5cm2、厚さ100μmの石英ガラスを準備する。次に、基板9上に、磁性体層2としてMOD法を用いて膜厚100nmのYIG膜を作製する。続いて、Pt膜上に、電極3としてスパッタ法を用いて膜厚10nmのPt膜を作製する。以上のようにして熱電変換素子本体10を作製する。
(2)次に、熱電変換素子本体10の電極3の表面に、厚さ5μmのアルミ膜を形成する。その後、陽極酸化法を用いて、アルミ膜からポーラスアルミナの膜を形成する。
(3)そして、(1)及び(2)の工程を繰り返し、ポーラスアルミナ膜付きの熱電変換素子を複数個形成する。その後、それら複数の熱電変換素子を接着性の樹脂30を用いて積層する。
(4)更に、積層素子を並行板(絶縁体板)に挟み、積層型の熱電変換素子を作製する。その後、積層熱電変換素子の対向する側面を研磨し、各層の電極3を露出させる。そして、導電性ペーストを用いて各層を電気的に接続し、並列型熱電変換素子を作製した。
(1)まず、基板9として5×5cm2、厚さ100μmの石英ガラスを準備する。次に、基板9上に、磁性体層2としてMOD法を用いて膜厚100nmのYIG膜を作製する。続いて、Pt膜上に、電極3としてスパッタ法を用いて膜厚10nmのPt膜を作製する。以上のようにして熱電変換素子本体10を作製する。
(2)次に、熱電変換素子本体10の電極3の表面に、厚さ5μmのアルミ膜を形成する。その後、陽極酸化法を用いて、アルミ膜からポーラスアルミナの膜を形成する。
(3)そして、(1)及び(2)の工程を繰り返し、ポーラスアルミナ膜付きの熱電変換素子を複数個形成する。その後、それら複数の熱電変換素子を接着性の樹脂30を用いて積層する。
(4)更に、積層素子を並行板(絶縁体板)に挟み、積層型の熱電変換素子を作製する。その後、積層熱電変換素子の対向する側面を研磨し、各層の電極3を露出させる。そして、導電性ペーストを用いて各層を電気的に接続し、並列型熱電変換素子を作製した。
なお、接着性の樹剤30は、その材料や温度勾配の向きにより、反射層13(スペーサ層5の一部)と見ることもできるし、透過層14(スペーサ層5の一部)と見ることもできるし、単なる接着部材と見ることもできる。
[実施例4]
実施例4は、ポーラスアルミナ膜を用いる実施例3の変形例である。図17Bは、本発明の実施例4の構成を示す斜視図である。
この熱電変換素子は、スペーサ型の積層熱電変換素子である。基板9上に設けられたスペーサ層5(低フォノン伝導材料11及び高フォノン伝導材料12)と、スペーサ層5上に設けられた熱電変換素子本体10(電極3及び磁性体層2)とを備えている。この図17Bのスペーサ層5は、陽極酸化法を用いて形成されたポーラスアルミナ膜(11)と、ポーラスアルミナ膜のポア中に埋め込まれたNiロッド(12)と、ポーラスアルミナ膜の表面及びNiロッドを覆うように形成されたNi薄膜(14)とを備えている。Niロッド及びNi薄膜は、ポーラスアルミナ膜に無電解メッキによって堆積した。アルミナ部分が低フォノン伝導材料12に相当し、Niロッド部分が高フォノン伝導材料11に相当し、Ni薄膜部分がフォノン透過層14に相当する。Niロッド部分は熱電変換素子本体の膜面に垂直な方向に延伸していると見ることもできる。この図17Bの熱電変換素子は、スペーサ層5が異なる他は実施例2と同じである(電極3と磁性体層2との積層順番が逆)。
実施例4は、ポーラスアルミナ膜を用いる実施例3の変形例である。図17Bは、本発明の実施例4の構成を示す斜視図である。
この熱電変換素子は、スペーサ型の積層熱電変換素子である。基板9上に設けられたスペーサ層5(低フォノン伝導材料11及び高フォノン伝導材料12)と、スペーサ層5上に設けられた熱電変換素子本体10(電極3及び磁性体層2)とを備えている。この図17Bのスペーサ層5は、陽極酸化法を用いて形成されたポーラスアルミナ膜(11)と、ポーラスアルミナ膜のポア中に埋め込まれたNiロッド(12)と、ポーラスアルミナ膜の表面及びNiロッドを覆うように形成されたNi薄膜(14)とを備えている。Niロッド及びNi薄膜は、ポーラスアルミナ膜に無電解メッキによって堆積した。アルミナ部分が低フォノン伝導材料12に相当し、Niロッド部分が高フォノン伝導材料11に相当し、Ni薄膜部分がフォノン透過層14に相当する。Niロッド部分は熱電変換素子本体の膜面に垂直な方向に延伸していると見ることもできる。この図17Bの熱電変換素子は、スペーサ層5が異なる他は実施例2と同じである(電極3と磁性体層2との積層順番が逆)。
この熱電変換素子は、以下のように製造される。
(1)まず、実施例3の方法を用いて、基板9として5×5cm2、厚さ100μmの石英ガラスを準備する。次に、基板9上に、厚さ5μmのアルミ膜を形成する。その後、陽極酸化法を用いて、アルミ膜からポーラスアルミナの膜を形成する。
(2)次に、ポーラスアルミナ膜表面に、無電解Niメッキ液を接触させて、メッキを行い、Ni製の高フォノン伝導材料12及び透過層14(Niロッド及びNi薄膜)を作製する。
(3)次に、Ni製の透過層14の表面に、磁性体層2としてMOD法を用いて膜厚100nmのYIG膜を作製する。続いて、磁性体層2上に、電極3としてスパッタ法を用いて膜厚10nmのPt膜を作製する。以上のようにして熱電変換素子本体10を作製する。
(4)そして、(1)から(3)の工程を繰り返し、ポーラスアルミナ膜付きの熱電変換素子を複数個形成する。その後、それら複数の熱電変換素子を接着性の樹脂30を用いて積層する。
(5)更に、積層素子を並行板(絶縁体板)に挟み、積層型の熱電変換素子を作製する。その後、積層熱電変換素子の対向する側面を研磨し、各層の電極3を露出させる。そして、導電性ペーストを用いて各層を電気的に接続し、並列型熱電変換素子を作製した。
(1)まず、実施例3の方法を用いて、基板9として5×5cm2、厚さ100μmの石英ガラスを準備する。次に、基板9上に、厚さ5μmのアルミ膜を形成する。その後、陽極酸化法を用いて、アルミ膜からポーラスアルミナの膜を形成する。
(2)次に、ポーラスアルミナ膜表面に、無電解Niメッキ液を接触させて、メッキを行い、Ni製の高フォノン伝導材料12及び透過層14(Niロッド及びNi薄膜)を作製する。
(3)次に、Ni製の透過層14の表面に、磁性体層2としてMOD法を用いて膜厚100nmのYIG膜を作製する。続いて、磁性体層2上に、電極3としてスパッタ法を用いて膜厚10nmのPt膜を作製する。以上のようにして熱電変換素子本体10を作製する。
(4)そして、(1)から(3)の工程を繰り返し、ポーラスアルミナ膜付きの熱電変換素子を複数個形成する。その後、それら複数の熱電変換素子を接着性の樹脂30を用いて積層する。
(5)更に、積層素子を並行板(絶縁体板)に挟み、積層型の熱電変換素子を作製する。その後、積層熱電変換素子の対向する側面を研磨し、各層の電極3を露出させる。そして、導電性ペーストを用いて各層を電気的に接続し、並列型熱電変換素子を作製した。
[実施例5]
図18は、本発明の実施例5の構成を示す斜視図である。
この熱電変換素子は、スペーサ型の積層熱電変換素子である。基板9上に設けられた熱電変換素子本体10(電極3及び磁性体層2)と、スペーサ層5(低フォノン伝導材料11及び高フォノン伝導材料12)とを備える熱電変換素子が積層されている。この図18のスペーサ層5は、カーボンナノチューブ付セルロース樹脂であり、カーボンナノチューブ部分が高フォノン伝導材料12に相当し、セルロース樹脂部分が低フォノン伝導材料11に相当する。カーボンナノチューブは、実質的に特定の方向に配向せず、ランダム方向に分散している。この図18の熱電変換素子は、スペーサ層5が異なる他は実施例2と同じである。
図18は、本発明の実施例5の構成を示す斜視図である。
この熱電変換素子は、スペーサ型の積層熱電変換素子である。基板9上に設けられた熱電変換素子本体10(電極3及び磁性体層2)と、スペーサ層5(低フォノン伝導材料11及び高フォノン伝導材料12)とを備える熱電変換素子が積層されている。この図18のスペーサ層5は、カーボンナノチューブ付セルロース樹脂であり、カーボンナノチューブ部分が高フォノン伝導材料12に相当し、セルロース樹脂部分が低フォノン伝導材料11に相当する。カーボンナノチューブは、実質的に特定の方向に配向せず、ランダム方向に分散している。この図18の熱電変換素子は、スペーサ層5が異なる他は実施例2と同じである。
この熱電変換素子は、以下のように製造される。
(1)まず、基板9として5×5cm2、厚さ100μmの石英ガラスを準備する。次に、基板9上に、磁性体層2としてMOD法を用いて膜厚100nmのYIG膜を作製する。続いて、Pt膜上に、電極3としてスパッタ法を用いて膜厚10nmのPt膜を作製する。以上のようにして熱電変換素子本体10を作製する。
(2)次に、フィルタなどに用いられる、厚さ400μmの多孔質セルロース樹脂を用意する。続いて、NanoIntegris社製の半導体カーボンナノチューブ水溶液を10倍に希釈した溶液を用意する。そして、セルロース樹脂をその溶液に浸して、超音波分散を行った後、セルロース樹脂を引き上げて、乾燥させる。
(3)続いて、1層目の熱電変換素子本体10の電極3の表面に、カーボンナノチューブ付セルロース樹脂を載置する。それにより、カーボンナノチューブ付セルロース樹脂付きの熱電変換素子を作製する。
もしくは、カーボンナノチューブ付セルロース樹脂は、多孔質セルロース樹脂を濾紙として用い、水溶液中の半導体カーボンナノチューブを濾過することで作製することが出来る。この場合、半導体カーボンナノチューブは、多孔質セルロース樹脂に液が浸透する方向に配向する傾向が生じ、さらに上流側の面に多く固定されるため、この面を熱電変換素子本体の電極や磁性体に接するように作製するなどの最適な構成を選ぶことができる。
(4)そして、(1)〜(3)の工程を繰り返し、カーボンナノチューブ付セルロース樹脂付きの熱電変換素子を複数個形成する。その後、それら複数の熱電変換素子を、接着剤などは用いずに積層し、プレス機を用いて密着させる。
(5)更に、積層素子を並行板(絶縁体板)に挟み、積層型の熱電変換素子を作製する。その後、積層熱電変換素子の対向する側面を研磨し、各層の電極3を露出させる。そして、導電性ペーストを用いて各層を電気的に接続し、並列型熱電変換素子を作製した。
(1)まず、基板9として5×5cm2、厚さ100μmの石英ガラスを準備する。次に、基板9上に、磁性体層2としてMOD法を用いて膜厚100nmのYIG膜を作製する。続いて、Pt膜上に、電極3としてスパッタ法を用いて膜厚10nmのPt膜を作製する。以上のようにして熱電変換素子本体10を作製する。
(2)次に、フィルタなどに用いられる、厚さ400μmの多孔質セルロース樹脂を用意する。続いて、NanoIntegris社製の半導体カーボンナノチューブ水溶液を10倍に希釈した溶液を用意する。そして、セルロース樹脂をその溶液に浸して、超音波分散を行った後、セルロース樹脂を引き上げて、乾燥させる。
(3)続いて、1層目の熱電変換素子本体10の電極3の表面に、カーボンナノチューブ付セルロース樹脂を載置する。それにより、カーボンナノチューブ付セルロース樹脂付きの熱電変換素子を作製する。
もしくは、カーボンナノチューブ付セルロース樹脂は、多孔質セルロース樹脂を濾紙として用い、水溶液中の半導体カーボンナノチューブを濾過することで作製することが出来る。この場合、半導体カーボンナノチューブは、多孔質セルロース樹脂に液が浸透する方向に配向する傾向が生じ、さらに上流側の面に多く固定されるため、この面を熱電変換素子本体の電極や磁性体に接するように作製するなどの最適な構成を選ぶことができる。
(4)そして、(1)〜(3)の工程を繰り返し、カーボンナノチューブ付セルロース樹脂付きの熱電変換素子を複数個形成する。その後、それら複数の熱電変換素子を、接着剤などは用いずに積層し、プレス機を用いて密着させる。
(5)更に、積層素子を並行板(絶縁体板)に挟み、積層型の熱電変換素子を作製する。その後、積層熱電変換素子の対向する側面を研磨し、各層の電極3を露出させる。そして、導電性ペーストを用いて各層を電気的に接続し、並列型熱電変換素子を作製した。
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施の形態に記載の技術や、各実施例に記載の技術は、技術的な矛盾が生じない限り、他の実施の形態や他の実施例に適用することが可能である。
この出願は、2011年9月27日に出願された特許出願番号2011−210464号の日本特許出願に基づいており、その出願による優先権の利益を主張し、その出願の開示は、引用することにより、そっくりそのままここに組み込まれている。
Claims (14)
- 熱電変換素子本体と、
前記熱電変換素子本体の表面上に設けられたスペーサ層と
を具備し、
前記熱電変換素子本体は、
少なくとも一つの面内方向の磁化を有する磁性体層と、
前記磁性体層上に設けられ、スピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層と
を備え、
前記スペーサ層は、
熱伝導率が相対的に低い材料で設けられた低熱伝導層と、
前記低熱伝導層内に分散され、熱伝導率が相対的に高い材料である複数の高熱伝導体と
を備え、
前記低熱伝導層と比較して、前記複数の高熱伝導体にフォノンが多く伝導する
熱電変換素子。 - 請求項1に記載の熱電変換素子において、
前記複数の高熱伝導体は、前記低熱伝導層内に配向せずに分散されている
熱電変換素子。 - 請求項2に記載の熱電変換素子において、
前記複数の高熱伝導体は、前記低熱伝導層内に配向せずに、前記低熱伝導層の全体に亘って分散されている
熱電変換素子。 - 請求項1に記載の熱電変換素子において、
前記複数の高熱伝導体は、前記低熱伝導層内に、前記熱電変換素子本体の面に垂直な方向に配向して全体に亘って分散されている
熱電変換素子。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱電変換素子において、
前記スペーサ層は、
前記低熱伝導層における前記熱電変換素子本体と接触する面とは反対側の面の上に設けられた反射層を更に備え、
前記反射層の音響インピーダンスは、前記複数の高熱伝導体各々の音響インピーダンスの3倍以上、もしくは1/3以下である
熱電変換素子。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱電変換素子において、
前記スペーサ層は、前記低熱伝導層と前記熱電変換素子本体との間に設けられた透過層を更に備え、
前記透過層の音響インピーダンスは、前記複数の高熱伝導体の各々の音響インピーダンスの1/3以上3倍以下である
熱電変換素子。 - 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱電変換素子において、
前記磁性体層の膜厚は、熱起電力の飽和する膜厚としての特性膜厚の80%以上、150%以下である
熱電変換素子。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱電変換素子において、
前記熱電変換素子本体は複数有り、
前記スペーサ層は複数有り、
前記複数の熱電変換素子本体の各々と、前記複数のスペーサ層の各々とは交互に積層されている
熱電変換素子。 - 基板上に熱電変換素子本体を形成する工程と、
前記熱電変換素子本体上にスペーサ層を形成する工程と
を具備し、
前記熱電変換素子を形成する工程は、
前記基板上に、少なくとも一つの面内方向の磁化を有する磁性体層及びスピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層のうちの一方である第1層を形成する工程と、
前記第1層上に、前記磁性体層及び前記起電体層のうちの他方である第2層を形成する工程と
を備え、
前記スペーサ層を形成する工程は、
熱伝導率が相対的に低い材料で設けられ、熱伝導率が相対的に高い材料である複数の高熱伝導体が分散された低熱伝導層を前記熱電変換素子本体上に形成する工程
を備え、
前記低熱伝導層と比較して、前記複数の高熱伝導体にフォノンが多く伝導し、
前記複数の高熱伝導体は、前記低熱伝導層内に配向せずに分散されている
熱電変換素子の製造方法。 - 基板上に熱電変換素子本体を形成する工程と、
前記熱電変換素子本体上にスペーサ層を形成する工程と
を具備し、
前記熱電変換素子を形成する工程は、
前記基板上に、少なくとも一つの面内方向の磁化を有する磁性体層及びスピン軌道相互作用を有する材料を含む起電体層のうちの一方である第1層を形成する工程と、
前記第1層上に、前記磁性体層及び前記起電体層のうちの他方である第2層を形成する工程と
を備え、
前記スペーサ層を形成する工程は、
熱伝導率が相対的に低い材料で設けられ、熱伝導率が相対的に高い材料である複数の高熱伝導体が分散された低熱伝導層を前記熱電変換素子本体上に形成する工程
を備え、
前記低熱伝導層と比較して、前記複数の高熱伝導体にフォノンが多く伝導し、
前記複数の高熱伝導体は、前記低熱伝導層内に、前記熱電変換素子本体の面に垂直な方向全体に配向して分散されている
熱電変換素子の製造方法。 - 請求項9又は10に記載の熱電変換素子の製造方法において、
前記スペーサ層を形成する工程は、
前記低熱伝導層における前記熱電変換素子本体と接触する面とは反対側の面の上に反射層を形成する工程を更に備え、
前記反射層の音響インピーダンスは、前記複数の高熱伝導体の音響インピーダンスの3倍以上、もしくは1/3以下である
熱電変換素子の製造方法。 - 請求項9乃至11のいずれか一項に記載の熱電変換素子の製造方法において、
前記スペーサ層を形成する工程は、
前記低熱伝導層と前記熱電変換素子本体との間に透過層を形成する工程を更に備え、
前記透過層の音響インピーダンスは、前記複数の高熱伝導体音響インピーダンスの1/3以上3倍以下である
熱電変換素子の製造方法。 - 請求項9乃至12のいずれか一項に記載の熱電変換素子の製造方法において、
前記磁性体層の膜厚は、熱起電力の飽和する膜厚としての特性膜厚の80%以上、150%以下である
熱電変換素子の製造方法。 - 請求項9乃至13のいずれか一項に記載の熱電変換素子の製造方法において、
前記熱電変換素子本体を形成する工程と前記スペーサ層を形成する工程とを複数回行い、前記熱電変換素子本体と、前記スペーサ層とが交互に積層されるように、前記熱電変換素子本体及び前記スペーサ層を複数個形成する工程を更に具備する
熱電変換素子の製造方法。
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