JPWO2011040541A1 - 光学積層体及び光学積層体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このように、従来は塗膜全体を均一かつ充分に硬化させることを目的として、種々の研究が行われていた。
しかしながら、通常の紫外線硬化は、波長360nm付近の紫外線強度の高いものを照射することによって行うため、これら特許文献5〜8に記載の発明では、塗膜全体を充分に硬化させることができる一方で、基材に近い部分の塗膜も硬度が高くなり、シワやムラ等の問題を充分に解決できなかった。
更に、特許文献7に記載の発明では、塗膜の硬化のための設備が高価であり、製造コストが高くなり、また、基材として薄膜のTACフィルムを用いた場合、該TACフィルムの強度を劣化させてしまうという問題もあった。
15N/mm2/μm ≦ Y1/X1 ≦ 26N/mm2/μm 式(1)
上記ハードコート層内の樹脂の重合率の変化は、光透過性基材と反対側表面から上記光透過性基材側面への厚さをX2(μm)とし、前記厚さX2(μm)における樹脂の重合率をY2%とした場合に、式(2)で表されることが好ましい。
Y2=A*X2+B において、 −1.3≦A≦−0.2、かつ、50≦B≦75 式(2)
上記紫外線吸収剤は、少なくとも1種が重量平均分子量500〜5万であり、ハードコート層の膜厚(μm)と上記ハードコート層中の上記紫外線吸収剤の濃度(質量%)との積が4〜150(μm・質量%)であることが好ましい。
上記ハードコート層用組成物は、乾燥膜厚200μmの塗膜とし、照射強度10mW/cm2、照射量150mJ/cm2で紫外線を照射した場合に発熱量が450J/g以下であることが好ましい。
上記紫外線照射は、ランプ電力が100〜1000W/cmであり、照射量が15〜1000mJ/cm2であることが好ましい。
上記ハードコート層の膜厚は、0.5〜20μmであり、上記光透過性基材の厚さは、20〜80μmであることが好ましい。
上述の光学積層体は、80℃、90%RHの環境下で100時間放置された後での380nmの透過率が15%以下であることが好ましい。
上述の光学積層体は、縦10cm×横10cmの正方形のシートとし、上記シートの横方向の一辺の中点から4mm離間した上記横方向の一辺上の二点を保持して吊り下げた場合に、上記シートの横方向の二辺の中点を結んだ直線と、上記シートの縦方向の二辺の中点を結んだ直線との最短距離が、30mm以下であることが好ましい。
以下に、本発明を詳細に説明する。
すなわち、本発明の光学積層体において、光透過性基材上に形成されている上記ハードコート層は、層内で厚さ方向に弾性率が連続的に変化しており、上記光透過性基材と反対側表面(以下、上面ともいう)付近の弾性率に比べて上記光透過性基材側面(以下、下面ともいう)付近での弾性率が小さいものである。弾性率が小さい下面付近では、ハードコート層形成時の重合収縮による歪みを吸収してカール等の変形を防止することができるとともに、光学積層体表面に加わる力を吸収する作用により耐擦傷性を向上させることができる。一方、上面付近では、弾性率が大きいため、高い硬度(鉛筆硬度)を保持することができる。第一の本発明の光学積層体はこのような特定のハードコート層を有するため、カール等の変形が起こりにくく、かつ、鉛筆硬度が高いものとすることができるのである。本発明では弾性率について、マルテンス硬さを指標として用いた。
また、第一の本発明の光学積層体は、紫外線吸収剤を含む特定の成分からなり、上述の特性を示すハードコート層を有するため、熱や湿度、光に対する耐久性にも優れる。更には、画像表示画面の外光による耐久性劣化を防止することができる。
更に、第一の本発明の光学積層体は、一層で上面と下面とで弾性率が連続的に変化するハードコート層を有するため、製造工程が簡便となり、製造コストを削減することができるものである。
第一の本発明の光学積層体において、上記ハードコート層は、下面の弾性率と上面の弾性率とに差があり、上面の弾性率が下面の弾性率よりも大きく、上面の方が下面よりも硬くなっている。
上記マルテンス硬さ(A)が、230N/mm2未満であると、鉛筆硬度が不充分となり、320N/mm2を超えると、カールやシワなどの変形が起こりやすくなる。上記マルテンス硬さ(A)は、280N/mm2〜320N/mm2であることが硬度が良好になり、より好ましい。
上記マルテンス硬さ(B)が、160N/mm2未満であると、鉛筆硬度が弱くなり、250N/mm2を超えると、カールやシワ等による変形を防止することが困難となる。上記マルテンス硬さ(B)は、185N/mm2〜230N/mm2であることが硬度にとってより好ましい。上記マルテンス硬さ(A)の値は、上記マルテンス硬さ(B)の値より大きい。
なお、上記マルテンス硬さ(A)及び(B)は、フィッシャー社製超微小硬さ試験システム「フィッシャースコープ・ピコデンターHM500 2007年製」を用いて、ハードコート層への押し込み強さを変えて、表面から所定の深さまで押し込んで、表面近傍硬さ(表面から約0.5μm深さ部分)と、光透過性基材界面近傍硬さ(上記光透過性基材界面から0.5μm部分、例えば、ハードコート層の膜厚が4.5μmの場合、表面から約4μm深さ部分)とを測定して得られた値である。
すなわち、第二の本発明の光学積層体は、光透過性基材上に少なくともハードコート層が形成されている光学積層体であって、上記ハードコート層は、多官能(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂、紫外線吸収剤及び光重合開始剤を含むハードコート層用組成物を紫外線照射により硬化させてなるものであり、かつ、上記ハードコート層の厚さに対する弾性率の関係が、上記光透過性基材と反対側表面から上記光透過性基材側面への厚さをX1(μm)とし、上記ハードコート層の上記光透過性基材と反対側表面におけるマルテンス硬さ(A)と、上記ハードコート層の上記光透過性基材側面におけるマルテンス硬さ(B)との差(A−B)をY1(N/mm2)とした場合に、式(1)で表されることを特徴とする。
15N/mm2/μm ≦ Y1/X1 ≦ 26N/mm2/μm 式(1)
また、上記式(1)において、
0.5μm ≦ X1 ≦ (膜厚−0.5)μm
を満たすことが好ましい。
なお、以下の発明において、第一の本発明の光学積層体と第二の本発明の光学積層体とを特に区別しない場合、「本発明の光学積層体」として説明する。
なかでも、光学積層体の硬度(鉛筆硬度)を高めることができる点で、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)等、分子量当たりの官能基数の多いものであることが好ましい。
これらの樹脂は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」を包含する。また、本明細書において、「樹脂」とは、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等、反応性を有するもの全てを意味する。
上記紫外線吸収剤の重量平均分子量が500未満であると、紫外線吸収剤が溶け出したり、揮発したりするおそれがある。5万を超えると、紫外線硬化型樹脂との相容性が悪くなったり、粘度が上昇して加工性が低下したりするおそれがある。上記重量平均分子量は、550〜3万であることがより好ましく、600〜3万であることが更に好ましい。すなわちこの分子量を選定することで、画像表示画面の外光による耐久性劣化を防止する機能が高くなり、上記画像表示画面の寿命を長くすることができる。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(ポリスチレン換算)により得られる値である。
また、RUVA−93(大塚化学社製)のCH2=C(CH3)COOHCH2CH2をCH2=C(CH3)COOHCH2CH(OH)CH2Oとした化合物を作製し、上記共重合性単官能モノマーとの付加重合を行い所定の分子量としたものも挙げることができる。
上記付加重合する場合、共重合をしてもよく、共重合させるための共重合性単官能モノマーとしては、メチルメタクリレート、スチレン、酢酸ビニル等を挙げることができるが、メチルメタクリレート及びスチレンが好ましい。また上記共重合の場合、上記共重合性単官能モノマーは、紫外線吸収剤全体の75質量%以下であることが好ましい。75質量%を超えると、ハードコート層用組成物に多量の紫外線吸収剤の添加を要するため、ハードコート層の上面を高硬度に保つのが困難となるおそれがある。
上記紫外線吸収剤の含有量は、10〜100μm・質量%であることがより好ましい。
上記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類(例えば、商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノプロパン−1−オン)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし又は2種以上を併用してもよい。また、これらと、表面硬化の良い点で商品名イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)ベンジル〕−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン)とを併用することが好ましい。表面硬化の高い開始剤を使用することにより、耐擦傷性や表面硬度を高める事が出来る。この他、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1や2−ジメチルアミノ−2−(4メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンも併用可能である。
上記光安定化剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。上記光安定化剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製TINUVIN123、144、152、292、日立化成工業社製FA712HM、FA711MM等を挙げることができる。
上記光安定化剤の含有量は、ハードコート層中0.05〜8質量%であることが好ましい。
防眩剤を含むことにより、ハードコート層に防眩性を付与することができる。
上記防眩剤としては、金属酸化物及び有機樹脂ビーズを挙げることができる。
上記金属酸化物としては、シリカが好ましい。上記シリカとしては、特に限定されず、結晶性、ゾル状、ゲル状のいずれの状態であってもよいし、不定形、球形であってもよい。
また、上記金属酸化物と上記有機樹脂ビーズを併用してもよい。
上記防眩剤の含有量は、1.0〜12.0質量%であることが好ましく、2.5〜8.5質量%であることがより好ましい。
上記添加物としては、ポリマー、熱重合モノマー、熱重合開始剤、レベリング剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防汚剤、スリップ剤、屈折率調整剤、分散剤等を挙げることができる。これらは公知のものを使用することができる。
上記発熱量が450J/gを超えると、光透過性基材に熱ダメージを与えるおそれがある。上記発熱量は、350J/g以下であることがより好ましい。
上記紫外線吸収剤を適用することにより、発熱量を上記範囲に抑制することができる。
上記塗膜を形成する方法としては、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコーター法、コンマコーター法、スリットリバース法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。なかでも、ロール形状で形成することができる、ダイコート法、スリットリバース法、コンマコーター法等が好ましい。
上記紫外線源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができるが、特に360nm付近の紫外線の強い光を使用するのが通常である。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
上記紫外線の照射は、酸素を除去しながら行うことが好ましい。
上記ランプ電力が100W/cm未満であると、ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤により、光透過性基材近傍では紫外線強度の低下による硬化不足が生じ、表面でも充分な反応点が生じないため充分な表面架橋密度を得ることができないおそれがある。加えて、生産速度が非常に低くなる。また、上記ランプ電力が1000W/cmを超えると、充分な架橋密度を得ることはできるが、急激な発熱による熱ダメージが発生し、上述のハードコート層を形成することができないおそれがある。
上記ランプ電力は、150〜350W/cmであることがより好ましい。
上記照射量が15mJ/cm2未満であると、硬化が不十分であるおそれがある。上記照射量が1000mJ/cm2を超えると、光学積層体に発熱によるカールやダメージのおそれがある。上記照射量は、30〜300mJ/cm2であることがより好ましい。
上記紫外線の照射の方法としては、ジワジワ時間をかけて照射するのではなく、一気に照射することが好ましい。このことにより通常は、光学積層体のカール、ダメージがひどくなるが、紫外線吸収剤、表面硬化の高い光重合開始剤を使用することにより、ハードコート層の最表面は弾性率が高いものの、内部にかけて連続的に弾性率が適度に低下する為、表面の硬度を確保し、かつ、カール、ダメージを抑制できる。
このようなハードコート層が得られるのは以下の理由と考えられる。すなわち、紫外線吸収剤を含むハードコート層用組成物を塗布して形成した塗膜に、ハードコート層の上面(光透過性基材と反対側表面)から上述の条件で紫外線を照射させると、上記紫外線吸収剤による紫外線の吸収が起こる。そうすると、上記塗膜内では、上面近傍での紫外線照射量に比べて、下面(光透過性基材側面)近傍での紫外線照射量が小さくなる。このように、上記塗膜の上面から下面への厚さ方向に徐々に塗膜内に到達する紫外線強度が減少するように制御することができる。この結果、上面近傍では紫外線強度が強く多官能(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂の重合開始点の数が多くなるため、重合が急激に起こってポリマー鎖は短いが架橋密度が上がり、所望の弾性率を有する高硬度の層となる。一方、上記塗膜内部では、下面に近づくにつれて紫外線強度が低下するので、多官能(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂の重合開始点の数が減り、重合がじわじわ進み徐々に架橋が抑えられ、架橋密度は低いがポリマー鎖が長くなり下面では上述の所望の弾性率を有し、硬度は低いが靱性の高い層となる。このようにして、上述した特定の弾性特性を有するハードコート層を形成することができると考えられる。
このようなハードコート層を有する本発明の光学積層体は、カール等のシートの変形が起こりにくく、高い鉛筆硬度を保持し、かつ、熱、湿度や光に対する耐久性にも優れるものである。また、本発明の光学積層体を画像表示装置に設置した場合、画像表示画面の外光による耐久性劣化を好適に防止することができる。
上記樹脂の重合率(A)が50%未満であると、鉛筆硬度が不充分となることがあり、75%を超えると、カールやダメージが生じることがある。上記樹脂の重合率(A)は、55〜65%であることがより好ましい。
上記樹脂の重合率(B)が40%未満であると、鉛筆硬度が低くなることがあり、65%を超えると、カールやシワ等が発生してしまうことがある。上記樹脂の重合率(B)は、45〜60%であることがより好ましい。
上記樹脂の重合率(A)は、上記樹脂の重合率(B)よりも大きい値である。
上記ハードコート層は、上記樹脂の重合率(A)と樹脂の重合率(B)とに差があり、樹脂の重合率(A)の方が樹脂の重合率(B)よりも大きいものであり、光透過性基材側面の方が該光透過性基材と反対側表面よりも硬くなっている。
重合率=〔未反応物の1636cm−1/1730cm−1のピーク比〕−〔sampleの1636cm−1/1730cm−1のピーク比〕/〔未反応物の1636cm−1/1730cm−1のピーク比〕−〔完全硬化の1636cm−1/1730cm−1のピーク比〕*100(%)
ここで、1636cm−1は、(C=Cのピーク)を示し、1736cm−1は、(C=Oのピーク)を示す。
完全硬化の定義は、ハードコート層の紫外線硬化物で、DSCにて窒素雰囲気にて昇温させた際、150℃を基準として水平方向に直線を引いた際発熱ピークが350℃まで見られないものとする。
重合率を求める際、ウルトラミクロトームにて垂直方向に断面を作成しAFMにてRa50nm以下(3μm角、タッピングモード、測定点1024ポイント、測定後の解析データを補正しない)の面で測定する。
Y2=A*X2+B において、 −1.3≦A≦−0.2、かつ、50≦B≦75 式(2)
上記式(2)において、Aが−1.3未満であると、本発明の光学積層体にカール等のダメージが起こりやすく、−0.2を超えると、上記ハードコート層が柔らかくなりすぎ、硬度が不充分となることがある。
上記式(2)におけるAは、−1.2≦A≦−0.5であることがより好ましい。
上記膜厚は、Lica製レーザー顕微鏡にて観察し、測定した値である。
また、マルテンス硬さを測る際の表面からの厚さは、押し込み深さによって測定される。
上記光透過性基材を形成する材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィン(COP)、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、又は、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、シクロオレフィン及びポリプロピレンを挙げることができる。
本発明では、光透過性基材としてポリエチレンテレフタレートを好適に使用できる。基材自体、又は、光学積層体を設置する偏光板、カラーフィルター、液晶分子等の紫外線による劣化を防ぐために、紫外線吸収剤を添加する場合、例えば、トリアセチルセルロース基材では流延法により形成されるため、基材自体に紫外線吸収剤を添加することは容易である。しかし、ポリエチレンテレフタレート基材では押出法により形成されるため、通常の紫外線吸収剤では耐熱性が無く揮発しやすい等の理由で添加することが難しく、このため、紫外線吸収性を有するポリエチレンテレフタレート基材は高価なものとなっていた。本発明では、ハードコート層が特定の紫外線吸収剤を含むので、紫外線吸収剤を添加することが困難な基材であっても、上述の基材自体等の紫外線による劣化等を防止することができる。
上記光透過性基材は、その上にハードコート層等を形成するのに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤又はプライマー等の塗料の塗布を予め行ってもよい。
上記プライマー層は、ポリエチレンテレフタレートと上記ハードコートの双方との密着性が高く、両方の屈折率の間にあるものが好ましい。
上記透過率は、市販の装置、例えば島津製作所社製「分光光度計UV−2450」を使用して測定することができる。
具体的には、本発明の光学積層体は、縦10cm×横10cmの正方形のシートとし、上記シートの横方向の一辺の中点から4mm離間した上記横方向の一辺上の二点を保持して吊り下げた場合に、上記シートの横方向の二辺の中点を結んだ直線と、上記シートの縦方向の二辺の中点を結んだ直線との最短距離が、30mm以下であることが好ましい。上記最短距離は、10mm以下であることがより好ましい。
なお、カールの度合いは、光学積層体を水平に静置して測定すると、重合収縮により生じるカールが、光透過性基材及びハードコート層等の材料自身の重さによる影響により変化してしまう。このため、シートの一辺の中央を保持して光学積層体を垂直に吊るし、光学積層体の中央部に対する左右辺の反りを測定することにより、歪みによる本来のカールの度合いを評価することができる。
また、上記ハードコート層用組成物は、乾燥膜厚200μmの塗膜とし150mJ/cm2で紫外線を照射した場合に発熱量が450J/g以下である。
このため、上述したように本発明の光学積層体は、上記ハードコート層の膜厚(μm)と上記ハードコート層中の紫外線吸収剤の濃度(質量%)との積が4〜150(μm・質量%)であることが好ましい。
上記画像表示装置は、LCD等の非自発光型画像表示装置であっても、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT等の自発光型画像表示装置であってもよい。
なお、文中、部又は%とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
下記材料を充分混合し、組成物として調製した。この組成物を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層用塗布液(1)〜(3)を調製した。
<ハードコート層用塗布液(1)(固形分45質量%)>
紫外線硬化型樹脂:
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 91.9質量部
セルロースアセテートプロピオネート(分子量50000) 1.2質量部
光重合開始剤:
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
4.8質量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
1.0質量部
イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
1.0質量部
シリコン系レベリング剤 0.1質量部
溶剤:
トルエン 97.6質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK) 24.4質量部
紫外線硬化型樹脂:
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 43.1質量部
ウレタンアクリレート(UV−1700B、日本合成化学社製)
50.0質量部
光重合開始剤:
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
4.8質量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
1.0質量部
イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
1.0質量部
シリコン系レベリング剤 0.1質量部
溶剤:
トルエン 97.6質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK) 24.4質量部
紫外線硬化型樹脂:
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 43.1質量部
ウレタンアクリレート(ビームセット371、荒川化学工業社製)
50.0質量部
光重合開始剤:
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
4.8質量部
イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
1.0質量部
イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
1.0質量部
シリコン系レベリング剤 0.1質量部
溶剤:
トルエン 97.6質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK) 24.4質量部
トルエン/メチルイソブチルケトン=70/30(重量比)の液に、下記の紫外線吸収剤を、それぞれ45質量%になるように溶解して紫外線吸収剤液を調製した。
a−1)TINUVIN479(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、分子量678)
a−2)構造式1の化合物(分子量736)
a−3)構造式2の化合物(分子量680)
a−4)構造式3の化合物65質量%とMMA(メチルメタクリレート)35質量%とで共重合して得た、重量平均分子量25000の化合物
a−5)PUVA−30M(RUVA−93:MMA=30:70、重量平均分子量10000)
a−6)構造式4の化合物65質量%とMMA35質量%とで共重合して得た、重量平均分子量20000の化合物
a−7)構造式5の化合物65質量%とMMA35質量%とで共重合して得た、重量平均分子量18000の化合物
a−8)2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン(分子量274)
a−9)2−(2’−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(分子量318)
a−10)RUVA−93(大塚化学社製、分子量323)
製造例1で得られたハードコート層用塗布液に、製造例2で得られた紫外線吸収剤液を所定量混合してハードコート層用組成物を調製した。得られたハードコート層用組成物を基材上に塗布し、70℃の熱風乾燥機にて1分乾燥後、窒素パージ下(酸素濃度200ppm以下)で、高圧水銀ランプにてランプ出力240W/cmのヒュージョン社製ランプを用いて、出力の量を調整して1回照射でトータルの照射量が所定量となるように紫外線を照射し、ハードコート層を有する光学積層体を調製した。
なお、それぞれ使用した基材、ハードコート層用塗布液、紫外線吸収剤及びその濃度、添加剤、ランプ出力、紫外線照射量、ハードコート層の膜厚は、表1に示すとおりである。
また、使用した具体的な基材、添加剤等について下記に示す。
基材:
T−80)富士写真フィルム社製TACフィルム「TD80UL」(80μm)
T−40)コニカ・ミノルタ社製TACフィルム「KC4UYW」(40μm)
P−38)東洋紡社製の屈折率1.55のプライマー付きポリエステルフィルム「A4300」(38μm)
防眩性付与剤(シリカ及び/又は有機樹脂ビーズ):
b−1)メタクリル酸メチル−スチレン系共重合架橋ビーズ(平均粒径3.5μm、屈折率1.555)
b−2)不定形シリカ(平均粒径3.0μm)
その他の添加剤:
x−1)上記塗布液の固形分に対し、チヌビン123を1.5部、イルガキュア819を2部添加する系(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)。
x−2)上記塗布液の固形分に対し、FA712HM(日立化成工業社製)を1.5部、イルガキュア819を2部添加する系。
島津製作所社製「分光光度計UV−2450」を使用して、光透過率(%)を測定した。
380nm透過率が15%以下であると、標準状態での基材や液晶層等の劣化を防止でき良好である。
(耐久透過率)
光学積層体を80℃、90%RH環境下に500時間放置した後に、380nmの透過率を測定した。耐久透過率も同様に15%以下であると、良好とする。
紫外線照射後のフィルムを直ぐに縦10cm×横10cmの正方形のシートに切り出し、25℃、50%RHの環境に1日置いた後、23℃、65%RHの環境下で上記シートの横方向の一辺の中点から4mm離間した上記横方向の一辺上の二点を保持して吊るしたときの、上記シートの横方向の二辺の中点を結んだ直線と、上記シートの縦方向の二辺の中点を結んだ直線との最短距離を測定し、下記の基準に基づいて評価した。
○:10mm以下
△:10mmを超えて30mm以下
×:30mmを超える
JIS K5600−5−4(1999)の鉛筆硬度試験方法に準じ、500g荷重にて評価した。
フィッシャー社製超微小硬さ試験システム「フィッシャースコープ・ピコデンターHM500 2007年製」を用いて、ハードコート膜厚が約4.5μmの場合、押し込み強さを変えてハードコート層表面近傍(3mN、表面から約0.5μm深さ部分)と、基材との界面近傍(80mN、表面から約4μm深さ部分)とを測定して、表面のマルテンス硬さ及び基材側面のマルテンス硬さの値を得た。また、ハードコート膜厚が約3μm、6μmの場合も、同様に、表面から約0.5μm深さまでの押込み強さの値と、(ハードコート膜厚−0.5)μmとなる表面からの深さまでの押し込み強さの値を測定して、表面のマルテンス硬さ及び基材側面のマルテンス硬さの値を得た。
ハードコート層内の表面及び基材側面の樹脂重合率について、ラマン分光(HORIBA製LabRAM HR−800)を用いて、測定波長633nm、20秒10回積算、ラインスキャン0.5μm間隔で測定し、下記の式により求めた。
重合率=〔(未反応物の1636cm−1/1730cm−1のピーク比)−(sampleの1636cm−1/1730cm−1のピーク比)〕/〔(未反応物の1636cm−1/1730cm−1のピーク比)−(完全硬化品の1636cm−1/1730cm−1のピーク比)〕*100(%)
ここで、1636cm−1は、(C=Cのピーク)を示し、1736cm−1は、(C=Oのピーク)を示す。
完全硬化品の定義は、ハードコート層の紫外線硬化物で、DSCにて窒素雰囲気にて昇温させた際、150℃を基準として水平方向に直線を引いた際発熱ピークが350℃まで見られないものとした。
重合率を求める際、ウルトラミクロトームにて垂直方向に光学積層体の断面を作成し、AFMにてRa50nm以下(3μm角、タッピングモード、測定点1024ポイント、測定後の解析データを補正しない)の面を測定した。
実施例18〜20、比較例11
実施例1、5及び6で使用したハードコート層用組成物において、紫外線吸収剤の量を0.27質量%とした以外は同じ組成のハードコート層用組成物A、B及びCをそれぞれ調製した。次に、得られたハードコート層用組成物Aを基材(T−40)上に、ハードコート層用組成物B及びCを基材(P−38)上に、それぞれ塗布して乾燥膜厚が200μmである塗膜を形成し、照射強度10mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射したときの上記塗膜の発熱量を測定した。
また、比較例3で使用したハードコート層用組成物を用いて、上記と同様にして基材P−38上に乾燥膜厚200μmの塗膜を形成し、上記塗膜の発熱量を測定した。これらの結果を表3に示す。
Claims (12)
- 光透過性基材上に少なくともハードコート層が形成されている光学積層体であって、
前記ハードコート層は、多官能(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂、紫外線吸収剤及び光重合開始剤を含むハードコート層用組成物を紫外線照射により硬化させてなるものであり、かつ、
前記ハードコート層は、前記光透過性基材と反対側表面におけるマルテンス硬さ(A)が230N/mm2〜320N/mm2であり、前記光透過性基材側面におけるマルテンス硬さ(B)が160N/mm2〜250N/mm2であり、前記マルテンス硬さ(A)が前記マルテンス硬さ(B)より大きく、かつ、厚さ方向に弾性率が連続的に変化している
ことを特徴とする光学積層体。 - 光透過性基材上に少なくともハードコート層が形成されている光学積層体であって、
前記ハードコート層は、多官能(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂、紫外線吸収剤及び光重合開始剤を含むハードコート層用組成物を紫外線照射により硬化させてなるものであり、かつ、
前記ハードコート層の厚さに対する弾性率の関係が、前記光透過性基材と反対側表面から前記光透過性基材側面への厚さをX1(μm)とし、前記ハードコート層の前記光透過性基材と反対側表面におけるマルテンス硬さ(A)と、前記ハードコート層の前記光透過性基材側面におけるマルテンス硬さ(B)との差(A−B)をY1(N/mm2)とした場合に、式(1)で表される
ことを特徴とする光学積層体。
15N/mm2/μm ≦ Y1/X1 ≦ 26N/mm2/μm 式(1) - ハードコート層は、前記光透過性基材と反対側表面における樹脂の重合率(A)が50〜75%であり、前記光透過性基材側面における樹脂の重合率(B)が40〜65%であり、前記樹脂の重合率(A)が前記樹脂の重合率(B)より大きく、かつ、厚さ方向に前記樹脂の重合率が連続的に変化している請求項1又は2記載の光学積層体。
- ハードコート層内の樹脂の重合率の変化は、光透過性基材と反対側表面から前記光透過性基材側面への厚さをX2(μm)とし、前記厚さX2(μm)における樹脂の重合率をY2%とした場合に、式(2)で表される請求項3記載の光学積層体。
Y2=A*X2+B において、 −1.3≦A≦−0.2、かつ、50≦B≦75 式(2) - 紫外線吸収剤は、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系(メタ)アクリレートの付加重合物、及び/又は、ベンゼン環が4つ以上付加され、前記ベンゼン環の少なくとも1つがヒドロキシル基で置換されたトリアジン系化合物である請求項1、2、3又は4記載の光学積層体。
- 紫外線吸収剤は、少なくとも1種が重量平均分子量500〜5万であり、
ハードコート層の膜厚(μm)と前記ハードコート層中の前記紫外線吸収剤の濃度(質量%)との積が4〜150(μm・質量%)である請求項1、2、3、4又は5記載の光学積層体。 - ハードコート層用組成物は、乾燥膜厚200μmの塗膜とし、照射強度10mW/cm2、照射量150mJ/cm2で紫外線を照射した場合に、発熱量が450J/g以下である請求項6記載の光学積層体。
- 紫外線照射は、ランプ電力が100〜1000W/cmであり、照射量が15〜1000mJ/cm2である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の光学積層体。
- ハードコート層の膜厚は、0.5〜20μmであり、光透過性基材の厚さは、20〜80μmである請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の光学積層体。
- 80℃、90%RHの環境下で100時間放置された後での380nmの透過率が15%以下である請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の光学積層体。
- 縦10cm×横10cmの正方形のシートとし、前記シートの横方向の一辺の中点から 4mm離間した前記横方向の一辺上の二点を保持して吊り下げた場合に、
前記シートの横方向の二辺の中点を結んだ直線と、前記シートの縦方向の二辺の中点を結んだ直線との最短距離が、30mm以下である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の光学積層体。 - 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の光学積層体の製造方法であって、
多官能(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂、紫外線吸収剤及び光重合開始剤を含むハードコート層用組成物を光透過性基材上に塗布して塗膜を形成する工程、及び、
形成された前記塗膜にランプ電力が100〜1000W/cm、照射量15〜1000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート層を形成する工程を含み、
前記ハードコート層用組成物は、乾燥膜厚200μmの塗膜とし、照射量150mJ/cm2で紫外線を照射した場合に発熱量が450J/g以下である
ことを特徴とする光学積層体の製造方法。
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