本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施の形態に係る液晶表示装置用積層体を概略的に示す断面図である。
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る液晶表示装置用積層体1は、液晶表示用光学フィルム2と、前記液晶表示用光学フィルム2の上に設けられたガラス割れ防止粘着剤層3と、前記ガラス割れ防止粘着剤層3の上に設けられたハードコートフィルム(表面層)4とを少なくとも有する構成である。但し、本発明は、図1(b)に示す液晶表示装置用積層体1’の様に、液晶表示用光学フィルム2と、ガラス割れ防止粘着剤層3の積層順序が入れ替わった構成も可能である。
前記ガラス割れ防止粘着剤層3は、20℃での動的貯蔵弾性率G’が1×107Pa以下であることが必要であり、好ましくは7×106〜1×103Paであるのがよい。前記G’が1×107Pa以下であると、外部衝撃を良好に吸収緩和して、液晶セルのガラス割れを効果的に防止することができる。但し、前記の動的貯蔵弾性率G’が1×107Paを超えると、外部衝撃緩和性に劣り、例えば0.5Jの外部衝撃力で液晶セルのガラス基板が割れてしまう。尚、1×103Pa未満であると、剛性が低下して柔らかくなり過ぎ、打ち抜きや裁断等の際の加工性が低下する場合がある。加工性が低下すると、例えば裁断面からガラス割れ防止粘着剤層3がはみ出す等の課題がある。
また、前記ガラス割れ防止粘着剤層3は、可視光に於ける光線透過率が60%以上という良好な透明性を有していることが好ましい。これにより、表示画面に於ける明度を増大させ、表示特性の向上が図れる。
また、このガラス割れ防止粘着剤層3は、0.1〜1mmの厚さを有していることが必要であり、好ましくは0.2〜0.8mmである。厚さが0.1mm未満であると、衝撃緩和能力が低下して、液晶セルのガラス割れ防止効果が損なわれ、安全性等の点で問題を生じやすい。また、厚さが1mmを超えると、視差の点より画像劣化等の表示特性低下の問題を生じやすい。
また、このガラス割れ防止粘着剤層3は、液晶セル又はハードコートフィルム4に直接貼り付け可能な適度の粘着性を有している。この粘着性の程度としては、90°剥離粘着力として通常0.5N/25mm幅以上、好ましくは1.0N/25mm幅以上である。更にまた、リワークのために、貼り付け後、容易に再剥離できる再剥離性を有していることが望ましい。この再剥離性の程度としては、80℃の雰囲気下で40日間放置後の90°剥離粘着力として、10N/25mm幅以下、好ましくは8N/25mm幅以下である。
ガラス割れ防止粘着剤層3は、前記した特性を備えている限り、その材料組成に特に限定はない。例えば、透明粘着剤として知られるアクリル系、ゴム系、ポリエステル系、シリコーン系等の各種の粘着剤を使用することができる。これらの粘着剤は、熱架橋タイプ、放射線(紫外線、電子線等)架橋タイプ等であってもよい。透明性及び耐久性の観点より、アクリル系粘着剤が最も好ましく用いられる。
前記アクリル系粘着剤は、透明性及び前記の動的貯蔵弾性率を有するアクリル系重合体を主剤とし、これに必要により適宜の添加剤を含ませることができる。また、無機フィラー等で複合化したものでもよい。前記のアクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに必要により、光学特性や耐熱性等の物性の改質を目的として、前記主成分と共重合可能な改質用単量体を加え、これらを常法により重合処理して得られるものである。その粘着性(再剥離性)や耐熱性の調整を目的として、必要により適宜の架橋処理が施される。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルには、アルキル基の炭素数が1〜18、好ましくは4〜12である直鎖状又は分岐状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。具体的には、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等があり、これらの1種又は2種以上が用いられる。
前記改質用単量体には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシ基含有単量体、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有単量体、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸基含有単量体がある。
また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N−置換)アミド系単量体、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系単量体、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系単量体等も、改質用単量体の例として挙げられる。
更に、他の改質用単量体として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系単量体、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステル系単量体、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系単量体等も用いられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと改質用単量体との使用割合は、主成分である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが60〜100重量%、好ましくは70〜100重量%であり、改質用単量体が40〜0重量%、好ましくは30〜0重量%となるようにするのがよい。この様な範囲で用いることにより、衝撃力緩和特性の良好なガラス割れ防止粘着剤を得ることができる。
アクリル系重合体は、公知の各種方法により、合成できる。例えば、前記の単量体の1種又は2種以上を、溶液重合方式、乳化重合方式、塊状重合方式、懸濁重合方式等により、重合処理することにより、合成できる。その際、必要に応じて、重合開始剤を使用できる。重合開始剤は、重合方式に応じて、熱重合開始剤や光重合開始剤等の適宜のものが用いられる。
前記光重合開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)−フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等のα−ケトール系化合物、ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物、2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物、1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
前記熱重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕等のアゾ系化合物等が挙げられる。
これらの重合開始剤の使用量は、単量体100重量部あたり、0.005〜5重量部の範囲内に於いて、その種類に応じて適宜選択される。光重合開始剤の場合は、通常0.005〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部とするのがよい。0.005重量部未満では光重合開始後に未反応単量体が多く残存して、接着界面に於いて気泡の発生等を生じる場合がある。その一方、1重量部を超えると光重合開始中にこの光重合開始剤が残存し、黄変等の原因となる場合がある。また、熱重合開始剤の場合は、前記と同様の理由により、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部とするのがよい。
重合反応に供するにあたり、前記重合開始剤とともに、衝撃力緩和部材の凝集力等を高めてせん断強さを増加させるための交叉結合剤(内部架橋剤)として、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個又はそれ以上有する多官能(メタ)アクリレートを、必要により添加してもよい。この様な多官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
この様な多官能(メタ)アクリレートの使用量は、単量体100重量部あたり、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部の範囲内で、2官能の場合は多めに、3官能やそれ以上の多官能の場合は少なめにするとよい。0.01重量部未満では重合後の架橋度が低くなり、接着界面で気泡が発生する場合がある。その一方、10重量部を超えると接着力の低下をきたし、膨れ等が発生する場合がある。
重合反応は、重合開始剤の種類に応じて、紫外線等の電磁放射線による光重合法によるか、熱重合法により行われる。加工性や接着物性等の観点から、光重合法によるのがとくに好ましい。この光重合法としては、窒素ガス等の不活性ガスで置換した酸素のない雰囲気中で行うか、又は紫外線透過性フィルムによる被覆で空気と遮断した状態で行うのが望ましい。
光重合法に於いて、紫外線は波長範囲が約180〜460nmの電磁放射線であるが、これより長波長又は短波長の電磁放射線であってもよい。紫外線の照射装置には、水銀アーク、炭素アーク、低圧水銀ランプ、中・高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブッラクライトランプ等の紫外線源を備えるものが用いられる。紫外線の強度としては、被照射体までの距離や電圧の調整により、適宜設定することができる。照射時間(生産性)との兼ね合いで、通常は0.5〜10J/cm2の積算光量とするのが望ましい。尚、ガラス割れ防止粘着剤層3の厚さが0.2mm以上の場合、その重合熱により粘着剤層がうねることがある。この様な場合には、光重合の際に液体窒素蒸気により冷却することで、粘着剤層のうねりを抑制することができる。
本発明のガラス割れ防止粘着剤層3には、前記したアクリル系粘着剤又はこれ以外の粘着剤であっても、必要により、透明性の良好な可塑剤を1種又は2種以上配合することができる。この可塑剤の配合量としては、アクリル系重合体等のベースポリマー100重量部あたり、通常5〜300重量部、好ましくは10〜200重量部とするのがよい。
この様な可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘブチル、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチルベンジル、フタル酸ジオクチル、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸系化合物、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブトキシエチル等のアジピン酸系化合物、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル等のセバシン酸系化合物、リン酸トリエチレン、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルフェニル等のリン酸系化合物、ジオクチルセバケート、メチルアセチルリシノレート等の脂肪酸系化合物、ジイソデシル−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート等のエポキシ系化合物、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリn−オクチル、トリメリット酸トリイソデシル等のトリメリット酸系化合物、その他、オレイン酸ブチル、塩素化パラフィン、ポリオキシアルキレングリコールとしてポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール、またポリブテンやポリイソブチレン等が挙げられる。
ガラス割れ防止粘着剤層3には、透明性を損なわない範囲で、必要により、近赤外線(800〜1,100nm)やネオン光(570〜590nm)の吸収特性を有する顔料や染料等の色素、色調のための色素、粘着付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、天然物や合成物の樹脂類、アクリル系のオリゴマー、ガラス繊維やガラスビーズ等の添加剤を配合してもよい。また、微粒子を含有させて光拡散性を示すガラス割れ防止粘着剤層としてもよい。
また、ガラス割れ防止粘着剤層3は、透明性の樹脂やゴム成分からなる高分子中に有機層状粘土鉱物を分散した複合材料としてもよい。前記高分子は、有機層状粘土鉱物を分散可能で、かつフィルム成形可能なものであればよく、特に限定されない。20℃での動的貯蔵弾性率G’が6×106 Pa以下(実用的には1×105 〜1×103 Pa)となる高分子を用いると、外部衝撃を良好に緩和して液晶セルのガラス基板の割れを効果的に防止することができる。
この様な高分子の例としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、天然ゴム、ブチルゴム等のゴム系等が挙げられる。この様な材料の中でも、耐熱性、耐湿信頼性、透明性、加工性、有機層状粘土鉱物との親和性等の面で、アクリル系高分子がとくに有用である。
前記ガラス割れ防止粘着剤層3の少なくとも一方の面には、下塗り層(図示しない)が設けられていてもよい。下塗り層は、例えば液晶表示装置用積層体と液晶セルとの貼り合わせに寄与するものである。また、下塗り層は透明性を有する。透明性は、可視光域に対して、例えば90%以上の光線透過率を示すことが好ましい。これにより、明度を増大させることができ、良好な表示特性を維持できる。
下塗り層の形成材料としては、例えば、ウレタン(ポリイソシアネート)系、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、メラミン系、オレフィン系、ポリスチレン系、エポキシ系、フェノール系、イソシアヌレート系、ポリ酢酸ビニル系の粘着剤等が挙げられる。これらの粘着剤のうち、本発明はアクリル系粘着剤が好ましい。ガラス割れ防止粘着剤層との密着性が良好である。前記形成材料には、架橋硬化させる為の架橋剤や、帯電防止剤等の機能性添加剤を添加して、他の機能を付与することもできる。
下塗り層の積層方法としては、下塗り層の形成材料の種類に応じて、従来公知の積層方法を適宜に選択し得る。例えば、押出しラミネートや製膜によるドライラミネート等の方法、コーティング後に乾燥・固化させる方法等が採用できる。
下塗り層は、3〜50μmの厚みを有することが好ましく、10〜30μmの厚みを有することがより好ましい。当該数値範囲内であると、ガラス割れ防止粘着剤層との良好な密着性を確保することができる。また、下塗り層の20℃に於ける動的貯蔵弾性率は、1×104〜1×106Paが好ましく、3×104〜8×105Paがより好ましい。当該数値範囲内であると、ガラス割れ防止粘着剤層との良好な密着性を確保することができる。
また、下塗り層は、液晶セル又はハードコートフィルム4に直接貼り付け可能な適度の粘着性を有している。この粘着性の程度としては、90°剥離粘着力として通常5.00N/25mm幅以上、好ましくは8.00N/25mm幅以上である。更にまた、リワークをする場合には、貼り付け後、容易に再剥離できる再剥離性を有していることが望ましい。この再剥離性の程度としては、80℃の雰囲気下で40日間放置後の90°剥離粘着力として、20N/25mm幅以下、好ましくは15N/25mm幅以下である。
前記液晶表示用光学フィルム2は、前記したガラス割れ防止粘着剤層3の一面側に積層されてなるものであり、図2(a)に示すように、偏光子21とその両側に位置する保護フィルム22、22とからなる偏光板により構成されている。
偏光子21としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系けん化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素及び/又は二色性染料を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等が挙げられる。フィルムからなる偏光子21の厚さは、一般的に5〜80μmであるが、これに特に限定されない。
保護フィルム22、22としては、透明性、機械強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性に優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチル(メタ)アクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリルニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等からなるフィルムが挙げられる。
また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルフォン系ポリマー、ポリエーテルスルフォン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又はこれらポリマーのブレンド物等からなるフィルムも用いられる。
これらの中でも、セルロース系ポリマーが好ましい。保護フィルムの厚さは、とくに限定はないが、一般的に500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。とくに5〜200μmとするのが好ましい。保護フィルム22、22のうち、露出表面側の保護フィルム22には、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、拡散処理、アンチグレア処理、反射防止及びアンチグレア処理、帯電防止処理、汚染防止処理等の適宜の処理を施してもよい。また、別のフィルムに前記同様の処理を施し、これを露出表面側の保護フィルム22に貼り合わせてもよい。
ハードコート処理は、光学フィルム表面の傷つき防止等を目的としたものであり、硬度やすべり特性に優れるアクリル系、シリコーン系等の紫外線硬化型樹脂による硬化被膜をフィルム表面に設けることにより達成できる。また、反射防止処理は、光学フィルム表面での外光の反射防止を目的としたものであり、公知の反射防止層の形成等により達成することができる。
更に、アンチグレア処理は、光学フィルム表面で外光が反射して光学フィルム透過光の視認を阻害するのを防止することを目的としており、サンドブラストやエンボス加工等によるフィルム表面の疎面化方式、透明微粒子の添加等によるフィルム表面への微細凹凸構造の付与方式等により、達成できる。この様なアンチグレア処理は、光学フィルム透過光を拡散して視覚等を拡大するための拡散層(視覚拡大機能等)の形成を兼ねるものであってもよい。
微細凹凸構造の付与方式に於ける透明微粒子には、平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等の無機系微粒子や、その他、有機系微粒子が用いられる。透明微粒子は、微細凹凸構造を形成する樹脂100重量部あたり、2〜50重量部、好ましくは5〜25重量部の割合で用いられる。
液晶表示用光学フィルム2を構成する偏光板に於いて、偏光子21とその両側の保護フィルム22、22とは、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系プロエステル等の適宜の接着剤を用いて、貼り付けられている。尚、図2(a)では、偏光子21の両側に保護フィルム22、22を設けた場合を示したが、保護フィルム22を偏光子21の何れか一方の面にのみ貼り付けてもよい。
図2(a)では光学層として偏光子21だけを用いた偏光板の例を示しているが、液晶表示用光学フィルム2は、この偏光板に更に他の光学層を積層した積層体からなるものであってもよい。図2(b)は、この例を示している。同図(b)に示す液晶表示用光学フィルム2’は、偏光子21と保護フィルム22、22とからなる偏光板に更に位相差板23を積層して、楕円偏光板や円偏光板を構成した例である。同一番号を付した構成要素は、図2(a)に示した液晶表示用光学フィルム2の場合と同様であり、その説明を省略する。
偏光板に位相差板を積層した楕円偏光板や円偏光板は、直線偏光を楕円偏光や円偏光に変えたり、楕円偏光や円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。とくに直線偏光を円偏光に又はその逆に変える位相差板には、1/4波長板(λ/4板)が用いられる。1/2波長板は、通常直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。楕円偏光板は、STN型液晶表示装置の複屈折で生じた着色を補償して、着色のない白黒表示する場合等に有効に用いられる。また3次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償でき、好ましい。円偏光板は、画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合等に有効に用いられ、反射防止の機能も有する。
位相差板23の材料構成についてとくに限定はない。公知の高分子素材を1軸又は2軸延伸処理した複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムで支持したもの等が用いられる。位相差板23の厚さもとくに限定はないが、2〜150μmが一般的である。位相差板23は、波長板や液晶層の複屈折による着色の視覚等の補償を目的とし、この使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したもの等であってもよい。また、液晶セルに対して2枚の偏光板が設けられることがあるが、この場合は、両偏光板との間の任意位置に前記位相差板23を1枚又は複数枚設けることができる。
本発明に於いて、液晶表示用光学フィルム2は、前記した偏光板に位相差板23を積層して楕円偏光板や円偏光板としたもののほか、偏光板に別の光学層として、反射板、半透過反射板、視覚補償フィルム、輝度向上フィルム等の液晶表示装置用の光学層を1層又は2層以上積層したものであってもよい。例えば、偏光板に反射板を積層した反射型偏光板、偏光板に半透過反射板を積層した半透過型偏光板、偏光板に視覚補償フィルムを積層した広視野角偏光板、偏光板に輝度向上フィルムを積層したもの、更にはこれらを組み合わせたもの、また前記の反射型偏光板や半透過型偏光板に更に位相差板を組み合わせた反射型円偏光板や半透過型楕円偏光板等が挙げられる。偏光板に反射層を積層した反射型偏光板は、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプのもので、バックライトの光源の内蔵を省け、液晶表示装置の薄膜化をはかりやすい等の利点を有する。
この様な反射型偏光板は、偏光板の片面に保護フィルムを介して金属からなる反射層を付設する方式で作製することができるが、作製方法についてはとくに限定はなく、公知技術を広く使用できる。例えば、別のフィルムに反射層を設けた反射シートを用いる方式等であってもよい。反射層は通常金属からなり、その反射面が保護フィルムや偏光子等で被覆した状態で使用するのが、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続、別の保護フィルムの付設回避等の観点より、とくに望ましい。
偏光板に半透過反射板を積層した半透過型偏光板は、前記に於いて反射層で光を反射しかつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置を比較的明るい雰囲気下で使用する場合には、視認側から入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気では、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置を形成することができる。
視覚補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明に見えるように視野角を広げるためのものである。視覚補償位相差板には、位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基村に液晶ポリマー等の配向層を設けたもの等がある。
通常の位相差板では、面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるが、視覚補償フィルムとして用いる位相差板には、面方向に2軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムや、面方向に1軸に延伸され、厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような2方向延伸フィルム等が用いられる。傾斜配向フィルムはとくに限定はなく、公知技術のものを使用できる。また、視認に広い視野角を達成する点等により、液晶ポリマーの配向層、とくにディスコティク液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学異方性層をトリアセチルセルロースフィルムに支持した光学補償位相差板が好ましく用いられる。
偏光板に輝度向上フィルムを積層したものは、通常液晶セルの裏側サイドに設けられる。輝度向上フィルムは、液晶表示装置等のバックライトや裏側からの反射等により自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光又は所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板に積層したものは、mバックライトの光源から光を入射させて、所定偏光状態の透過光を得るとともに、所定偏光状態以外の光は透過せずに反射させる。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後方側に設けた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量をはかるとともに、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示装置等に利用しうる光量の増大をはかることにより輝度を向上させるものである。輝度向上フィルムと反射層等との間に拡散板を設けてもよい。
輝度向上フィルムにより反射した偏光状態の光は反射層に向かうが、設置した拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。即ち、拡散板は偏光を元の自然光に戻す。この非偏光状態、つまり、自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに最入射することを繰り返す。この様に輝度向上フィルムと反射層等との間に偏光を元の自然光状態に戻す拡散板を設けることにより、表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを低減し、均一で明るい画面を得ることができる。この様に、拡散板を設けることで、初回の入射光は反射の繰り返し回数がほどよく増加し、拡散板機能と相まって均一の明るい表示画面が得られる。
輝度向上フィルムとしては、とくに限定はない。誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレスティック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すもの等、適宜のものを使用することができる。所定偏光軸の直線偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率良く透過させることができる。コレスティック液晶層のように、円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介して直線偏光化して偏光板に入射させるようにするのが好ましい。尚、その位相差板としては1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
可視広域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば、波長550nmの単色光に対して1/4波長板として機能する位相差板とは異なる位相差特性を示す位相差板、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式等により、得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムとの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。また、コレスティック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて、広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
液晶表示用光学フィルム2を、図2(b)に示すように偏光板に位相差板23を積層した積層体(楕円偏光板や円偏光板)とする場合、またこれ以外の前記した各種の積層体とする場合、各光学層同士の積層には、適宜の粘着剤(接着剤)が用いられる。その材質や組成、厚さ等はとくに限定されないが、透明性や耐久性等の観点より、アクリル系粘着剤が好ましい。また、必要により、本発明の前記したガラス割れ防止粘着剤を使用してもよい。
前記ハードコートフィルム4は、図3(a)に示すように、透明なフィルム基材41の片面にハードコート層42を有する構成である。尚、図3には示していないが、ハードコートフィルム4はハードコート層のみからなる態様でもよい。また、ハードコート層42はフィルム基材41の両面に設けることも可能である。更に、図3では、ハードコート層42が単層の場合を例示しているが、本発明のハードコート層を有するものであれば、これらは2層以上であってもよい。
前記フィルム基材41は、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下)であれば特に制限はない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。また、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。更に、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルム等も挙げられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本実施の形態に係るハードコートフィルム4を保護フィルムとして偏光板に使用する場合には、フィルム基材41としては、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等が好適である。また、フィルム基材41は、後述の偏光子自体であってもよい。この様な構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、偏光板を一層薄層化することができる。尚、フィルム基材41が偏光子である場合には、ハードコート層42が従来の保護層としての役割を果たすことになる。また、ハードコートフィルムとしては、液晶セル表面に装着されるカバープレートとしての機能を兼ねることになる。
フィルム基材41の厚さについては適宜に決定しうるが、一般には強度や取り扱い性等の作業性、薄層性等の点を考慮し、10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。更に、フィルム基材41の屈折率としては特に制限されず、通常1.30〜1.80程度、特に1.40〜1.70であることが好ましい。
前記ハードコート層42は、ウレタンアクリレート(A)、ポリオール(メタ)アクリレート(B)及び水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマー(C)を形成材料として構成される。
前記ウレタンアクリレート(A)としては、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステル、ポリオール、ジイソシアネートを構成成分として含有するものが用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルとポリオールから、水酸基を少なくとも1つ有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを作成し、これをジイソシアネートと反応させることによって製造したものが用いられる。(メタ)アクリル酸はアクリル酸及び/又はメタクリル酸であり、本発明に於いて(メタ)は同様の意味である。これら各構成成分は、1種でもよく、又は2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸のエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記ポリオールは、水酸基を少なくとも2つ有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリジメチロールプロパン、グリセリン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類等が挙げられる。
前記ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族又は脂環族の各種のジイソシアネート類を使用することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等、更にはこれらの水添物等が挙げられる。
前記ウレタンアクリレート(A)の添加量については、少なすぎると得られるハードコート層の柔軟性や密着性が低下し、多すぎると硬化後のハードコート層の硬度が低下する。この為、ハードコート形成材料の全樹脂成分(A〜C成分の合計量、又は添加樹脂材料等がある場合にはそれを含めた合計量)に対しウレタンアクリレート(A)は15重量%〜55重量%が好ましく、25重量%〜45重量%であるのがより好ましい。ウレタンアクリレート(A)の添加量をハードコート形成材料の全樹脂成分に対し55重量%を超えて添加するとハードコート性能が低下して好ましくない場合がある。また、15重量%未満の配合では柔軟性や密着性が向上せず、好ましくない場合がある。
前記ポリオール(メタ)アクリレート(B)の構成成分としては、例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの重合物からなるモノマー成分を含むものが特に好ましい。更に、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとを含む混合成分も特に好ましい。
ポリオール(メタ)アクリレート(B)の配合量は、ウレタンアクリレート(A)に対し70重量%〜180重量%の割合であることが好ましく、100重量%〜150重量%の割合であることがより好ましい。ポリオール(メタ)アクリレート(B)の配合量がウレタンアクリレート(A)に対し180重量%を超える割合にすると、ハードコート層の硬化収縮が大きくなり、その結果、ハードコートフィルムのカールが大きくなったり、屈曲性が低下して好ましくない場合がある。また、70重量%未満の割合では、ハードコート性、即ち硬度や耐擦傷性が低下して好ましくない場合がある。尚、耐擦傷性に関しては、実用上の観点から0〜0.7の範囲内とすることが好ましく、0〜0.5の範囲内とすることがより好ましい。ポリオール(メタ)アクリレート(B)の配合量を前記範囲内とすることにより、耐擦傷性を前記範囲内に設定することができる。ここで、前記耐擦傷性の算出については、後述の実施例に於いて説明する。
前記(メタ)アクリルポリマー(C)としては、水酸基を2個以上含むアルキル基を有するものが用いられる。より具体的には、例えば2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルポリマーや、2−ヒドロキシエチル基及び2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルポリマーが挙げられる。
水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマー(C)の添加量としては、ウレタンアクリレート(A)に対し、25重量%〜110重量%の割合であることが好ましく、45重量%〜85重量%の割合であることがより好ましい。配合量が110重量%を超える場合には、塗工性が低下し好ましくない場合がある。また、配合量が25%未満の場合には、カールの発生が著しく増大し好ましくない場合がある。
尚、本発明に於いては、この(メタ)アクリルポリマー(C)を含有することによりハードコート層42の硬化収縮を抑制し、その結果カールの発生を防止するものである。ハードコートフィルム等の製造上の観点からは、カールの発生を少なくとも30mm以内に抑制するのが好ましく、その範囲内にカールの発生を抑制することにより作業性及び生産効率を一層向上させることができる。
ハードコート層42には、無機微粒子又は有機微粒子が配合されていてもよい。前記無機微粒子としては特に限定されず、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等が挙げられる。また、有機微粒子としては特に限定されず、例えば、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、更にポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリ弗化エチレン樹脂粉末等が挙げられる。
微粒子の形状は特に制限されず、ビーズ状の球形であってもよく、粉末等の不定型のものであってもよい。これら微粒子は1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。微粒子の平均粒子径は1〜30μm、好ましくは2〜20μmである。また、微粒子には、屈折率制御や、導電性付与の目的で、金属酸化物の超微粒子等を分散、含浸してもよい。
無機微粒子又は有機微粒子の配合量としては特に限定されず、適宜設定し得る。例えば、防眩効果を付与する場合には、ハードコート形成材料100重量部に対して2〜60重量部とするのが好適である。また、単なるブロッキング防止性を付与する場合には、ハードコート形成材料100重量部に対して1〜50重量部が好適である。
前記無機微粒子又は有機微粒子の粒径は、100nm以下であることが好ましい。粒径が100nm以下の超微粒子は、その配合量に応じハードコート層42の見かけの屈折率を調整する機能を有する。フィルム基材41の屈折率とハードコート層42の屈折率は近似していることが好ましい。フィルム基材41の屈折率とハードコート層42の屈折率の差が大きいと、ハードコートフィルム4に入射した外光の反射光が虹色の色相を呈する干渉縞と呼ばれる現象が発生し、表示品位を劣化させることがある。ハードコートフィルム4を備えた表示装置の使用される環境であるオフィスの蛍光灯として、ものがはっきり見えるということを特徴とした特定の波長の発光強度が強い三波長蛍光灯が非常に増加してきており、この三波長蛍光灯下では更に干渉縞が顕著に現れることが判っている。
フィルム基材41の屈折率とハードコート層42の屈折率差をdとすると、dは0.04以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。フィルム基材41として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合、粒径が100nm以下の超微粒子に酸化チタンをハードコート形成材料の全樹脂成分に対し約35%程度配合することで、ポリエチレンテレフタレートフィルムの屈折率約1.64に対しdを0.02以下に制御することができ、干渉縞の発生を抑制することができる。
フィルム基材41として、トリアセチルセルロースフィルムを用いる場合、粒径が100nm以下の超微粒子に酸化ケイ素をハードコート形成材料の全樹脂成分に対し約40%程度配合することで、トリアセチルセルロースフィルムの屈折率約1.48に対しdを前記同様に0.02以下に制御することができ、干渉縞の発生を抑制することができる。
前記ハードコート層42の厚みは、15〜25μmにすることが好ましく、より好ましくは18〜23μmである。厚みの下限値を15μmとしても、ハードコート層42はポリオール(メタ)アクリレート(B)を含有するので、硬度を一定以上(例えば、鉛筆硬度で4H以上)に維持することができる。また、硬度を一層大きくする為に、厚みの上限値を25μmとしても、ハードコート層42はウレタンアクリレート(A)及び水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマー(C)を含有するので、カールや割れ等の発生を十分に防止することができる。尚、厚みが15μm未満の場合、ハードコート層の硬度が低下する場合がある。その一方、厚みが25μmを超える場合、ハードコート層自体にクラックが発生したり、ハードコート層の硬化収縮によりハードコートフィルムがハードコート面側にカールし、実用上問題となる場合がある。
ハードコート層42に対しては、その外表面を微細凹凸構造にして防眩性を付与することができる。表面に微細凹凸構造を形成する方法としては特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。例えば、ハードコート層42に微粒子を分散含有させて微細凹凸構造を付与する方法等が挙げられる。
前記ハードコート層42の外表面を凹凸状にし防眩性を付与した場合、その厚みは15〜35μmにすることが好ましく、より好ましくは20〜30μmである。厚みの下限値を15μmとしても、ハードコート層42はポリオール(メタ)アクリレート(B)を含有するので、硬度を一定以上(例えば、鉛筆硬度で4H以上)に維持することができる。また、硬度を一層大きくする為に、厚みの上限値を35μmとしても、ハードコート層42が硬化収縮しない微粒子を含有する場合には、カールや割れ等の発生を十分に防止することができる。尚、厚みが15μm未満の場合、ハードコート層42の硬度が低下する場合がある。その一方、厚みが35μmを超える場合、ハードコート層42自体にクラックが発生したり、ハードコート層42の硬化収縮によりハードコートフィルムがハードコート面側にカールし、実用上問題となる場合がある。尚、外表面が凹凸状の場合のハードコート層42の厚みとは、凸となった部分までを含む最大厚みを意味する。
ハードコート形成材料の希釈溶媒としては特に限定されず、種々のものを採用することができる。具体的には、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シク口ヘキサノール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酢酸エチルは全希釈溶媒に対し20重量%以上であることが好ましく、より好ましくは25重量%以上、特に好ましくは30重量%〜70重量%の範囲である。これにより、フィルム基材41としてトリアセチルセルロースを用いる場合には、特に密着性に優れたハードコート層42を形成することが可能になる。酢酸エチルの含有量が全希釈溶媒に対し70重量%を超えると、揮発速度が速いため、塗工ムラや乾燥ムラが生じやすくなり、20重量%未満の場合は、基材との密着性が低下することとなり好ましくない場合がある。
ハードコート形成材料には、各種レベリング剤を添加することができる。レベリング剤としては、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤を適宜使用することができるが、より好ましくはシリコーン系のレベリング剤であり。シリコーン系のレベリング剤としては、反応性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。これらのシリコーン系のレベリング剤のうち、反応性シリコーンが特に好ましい。反応性シリコーンを添加することにより、表面に滑り性が付与され耐擦傷性が持続する。更に、低屈折率層としてシロキサン成分を含有するものを用いた場合、反応性シリコーンとしてヒドロキシル基を有するものを用いると密着性が向上する。
前記反応性シリコーンのレベリング剤としては、例えば、シロキサン結合と、アクリレート基及びヒドロキシル基とを有するものが例示できる。より具体的には、
(1)(ジメチルシロキサン/メチル):(3−アクリロイル−2−ヒドロキシプロポキシプロピルシロキサン/メチル):(2−アクリロイル−3−ヒドロキシプロポキシプロピルシロキサン)=0.8:0.16:0.04のモル比の共重合物
(2)ジメチルシロキサン:ヒドロキシプロピルシロキサン:6−イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸:脂肪族ポリエステル=6.3:1.0:2.2:1.0のモル比の共重合物
(3)ジメチルシロキサン:末端がアクリレートのメチルポリエチレングリコールプロピルエーテルシロキサン:末端がヒドロキシル基のメチルポリエチレングリコールプロピルエーテルシロキサン=0.88:0.07:0.05のモル比の共重合物等が挙げられる。
レベリング剤の配合量は、ハードコート形成材料の全樹脂成分100重量部に対して、5重量部以下、更には0.01〜5重量部の範囲とするのが好ましい。
ハードコート形成材料の硬化手段に紫外線を用いる場合に於いて、前記レベリング剤をハードコート形成材料に配向しておくと、予備乾燥及び溶媒乾燥時に当該レベリング剤が空気界面にブリードしてくるので、酸素による紫外線硬化型樹脂の硬化阻害を防ぐことができ、最表面に於いても十分な硬度を有するハードコート層42を得ることができる。また、シリコーン系のレベリング剤はハードコート層42表面へのブリードにより滑り性が付与されるために耐擦傷性を向上することもできる。
前記ハードコート層42の形成材料には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤等が添加されていてもよい。これらの添加剤は単独で使用してもよく、また2種類以上併用してもよい。
本実施の形態に係るハードコート形成材料には、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、その他チオキサント系化合物等が使用できる。
前記ハードコート層42を形成するには、ウレタンアクリレート(A)、ポリオール(メタ)アクリレート(B)及び水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマー(C)を少なくとも含むハードコート形成材料をフィルム基材41上に塗工し、その後硬化させる。ハードコート形成材料は、塗工にあたり、溶媒に溶解した溶液として塗工することができる。ハードコート形成材料を溶液として塗工した場合には、乾燥後に硬化する。
前記ハードコート形成材料をフィルム基材41上に塗工する方法としては、公知のファンテンコート、ダイコート、スピンコート、スプレーコート、グラビアコート、ロールコート、バーコート等の塗工法を用いることができる。
前記ハードコート形成材料の硬化手段は特に制限されないが、電離放射線硬化が好ましい。その手段には各種活性エネルギーを用いることができるが、紫外線が好適である。エネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素等の線源が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算光量として、50〜5000mJ/cm2が好ましい。照射量が、50mJ/cm2未満の場合は、硬化が不十分となるため、ハードコート層の硬度が低下する場合がある。また5000mJ/cm2を超えると、ハードコート層が着色して透明性が低下する場合がある。
前記ハードコート層42上には、図3(b)に示すように、反射防止層43を設けて、反射防止ハードコートフィルム4’とすることができる。図3(b)は、本実施の形態に係る反射防止ハードコートフィルム4’の概略を示す断面模式図である。光は物体に当たるとその界面での反射、内部での吸収、散乱といった現象を繰り返して物体の背面に透過していく。画像表示装置にハードコートフィルムを装着した際、画像の視認性を低下させる要因のひとつに空気とハードコート層界面での光の反射が挙げられる。反射防止層43は、その表面反射を低減させるものである。尚、図3(b)には示していないが、ハードコート層42及び反射防止層43はフィルム基材41の両面に設けることも可能である。また、図2では、ハードコート層42及び反射防止層43をそれぞれ1層ずつ設けた場合を例示しているが、本発明のハードコート層を有するものであれば、反射防止層43は2層以上であってもよい。
反射防止層43としては、厚み及び屈折率を厳密に制御した光学薄膜(反射防止層)をハードコート層42表面に積層したものが挙げられる。これは、光の干渉効果を利用した入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることで反射防止機能を発現させる方法である。
光の干渉効果に基づく反射防止層43の設計に於いて、その干渉効果を向上させる手段としては、反射防止層43とハードコート層42の屈折率差を大きくする方法がある。一般的に、基材上に2〜5層の光学薄膜(前記厚み及び屈折率を厳密に制御した薄膜)を積層する多層反射防止層では、屈折率の異なる成分を所定の厚さだけ複数層形成することで、反射防止層43の光学設計に自由度が増し、より反射防止効果を向上させ、分光反射特性も可視光領域でフラットにすることが可能になってくる。光学薄膜の各層の厚み精度が要求される為、一般的にはドライ方式である真空蒸着、スパッタリング、CVD等で各層の形成が行われている。
前記ハードコート形成材料に於いては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられるが、反射防止機能をより大きく発現させる為には、酸化チタン層と酸化ケイ素層との積層体を用いることが好ましい。前記積層体は、ハードコート層上に屈折率の高い酸化チタン層(屈折率:約1.8)が形成され、該酸化チタン層上に屈折率の低い酸化ケイ素層(屈折率:約1.45)が形成された2層積層体、更に、この2層積層体上に、酸化チタン層及び酸化ケイ素層がこの順序で形成された4層積層体が好ましい。この様な2層積層体又は4層積層体の反射防止層を設けることにより、可視光線の波長領域(380〜780nm)の反射を均一に低減させることが可能である。
また、フィルム基材41上に単層の光学薄膜を積層することによっても反射防止効果を発現させることが可能である。反射防止層43を単層にする設計に於いても、反射防止機能を最大限引き出す為には、反射防止層43とハードコート層42の屈折率差を大きくする必要がある。前記反射防止層43の膜厚をd、屈折率をn、入射光の波長をλとすると、反射防止層43の膜厚とその屈折率との間でnd=λ/4なる関係式が成立する。反射防止層43は、その屈折率がフィルム基材41の屈折率よりも小さい様な低屈折率層である場合は、前記関係式が成立する条件では反射率が最小となる。例えば、反射防止層43の屈折率が1.45である場合は、可視光線中の550nmの波長の入射光に対して、反射率を最小にする反射防止層43の膜厚は95nmとなる。
反射防止機能を発現させる可視光線の波長領域は、380〜780nmであり、特に視感度が高い波長領域は450〜650nmの範囲であり、その中心波長である550nmの反射率を最小にする設計を行なうことが一般的に行われている。
単層で反射防止層43を設計する場合、その厚み精度は、多層反射防止層の厚み精度ほど厳密ではなく、設計厚みに対し±10%の範囲、つまり設計波長が95nmの場合は、86nm〜105nmの範囲であれば問題なく使用できる。このことより、一般的に単層の反射防止層43の形成には、ウェット方式であるファンテンコート、ダイコート、スピンコート、スプレーコート、グラビアコート、ロールコート、バーコート等の塗工法が採用される。
単層で反射防止層43を形成する材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン、チタンテトラエトキシド等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料等が挙げられる。また、それぞれの材料は、表面の防汚性付与するためフッ素基含有化合物を用いることができる。耐擦傷性の面からは、無機成分含有量が多い低屈折率層材料が優れる傾向にあり、特にゾル−ゲル系材料が好ましい。ゾル−ゲル系材料は部分縮合して用いることができる。
前記フッ素基を含有するゾル−ゲル系材料としては、パーフルオロアルキルアルコキシシランを例示できる。パーフルオロアルキルアルコキシシランとしては、例えば、一般式:CF3(CF2)nCH2CH2Si(OR)3(式中、Rは、炭素数1〜5個のアルキル基を示し、nは0〜12の整数を示す)で表される化合物が挙げられる。具体的には、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのなかでも前記nが2〜6の化合物が好ましい。
低屈折率層(反射防止層)として、特開2004−167827号公報に記載のエチレングリコール換算による数平均分子量が500〜10000であるシロキサンオリゴマーと、ポリスチレン換算による数平均分子量が5000以上であって、フルオロアルキル構造及びポリシロキサン構造を有するフッ素化合物とを含有するハードコート形成材料から構成されるものを好ましく用いることができる。
低屈折率層(反射防止層)には、膜強度を改善する為に無機のゾルを添加することができる。無機のゾルとしては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化マグネシウム等が挙げられるが、シリカゾルが特に好ましい。無機のゾルの添加量は、低屈折率形成材料の全固形分100重量部に対し10〜80重量部の範囲内で、適宜設定することができる。無機のゾルの粒径としては、2〜50nmの範囲内のものが好ましく、5〜30nmの範囲内のものがより好ましい。
前記反射防止層43の形成材料には、中空で球状の酸化ケイ素超微粒子が含まれているのが好ましい。中空で球状の酸化ケイ素超微粒子は、平均粒子径が5〜300nm程度であることが好ましく、該超微粒子は細孔を有する外殻の内部に空洞が形成されてなる中空球状であり、該空洞内に該微粒子調製時の溶媒及び/又は気体を包含してなる。前記空洞を形成するための前駆体物質が該空洞内に残存してなることが好ましい。前記外殻の厚さは1〜50nm程度の範囲にあり、且つ平均粒子径の1/50〜1/5程度の範囲にあることが好ましい。前記外殻が複数の被覆層からなることが好ましい。前記細孔が閉塞され、前記空洞が前記外殻により密封されてなることが好ましい。反射防止層43中に於いて、多孔質又は空洞が維持されており、反射防止層43の屈折率を低減させることが可能なため、好ましく用いることができる。
中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の平均粒子径は5〜300nm程度にある。平均粒子径が5nm未満では球状微粒子に於ける外殻の体積割合が増加し、空洞の容積の割合が低下する傾向があり、他方、平均粒子径が300nmを超えると安定した分散液が得にくくなり、また、該超微粒子を含有する反射防止層の透明性が低下し易いからである。中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の好ましい平均粒子径は10〜200nmの範囲である。尚、前記平均粒子径は動的光散乱法によって求めることができる。
中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の製造方法は、例えば、下記工程(a)〜工程(c)を有する。中空で球状の酸化ケイ素超微粒子は、分散液として得られる。この様な中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の製造方法としては、例えば、特開2000−233611号公報に開示されたシリカ系微粒子の製造方法が好適に採用される。即ち、
(a)珪酸塩の水溶液及び/又は酸性珪酸液と、アルカリ可溶の無機化合物水溶液とを、pH10以上のアルカリ水溶液、又は必要に応じて種粒子が分散したpH10以上のアルカリ水溶液中に同時に添加し、酸化ケイ素をSiO2で表し、酸化ケイ素以外の無機化合物をMOxで表したときのモル比(MOx/SiO2)が0.3〜1.0の範囲にある核粒子分散液を調製する工程。
(b)前記核粒子分散液に酸化ケイ素源を添加して、核粒子に第1酸化ケイ素被覆層を形成する工程。
(c)前記分散液に酸を加え、前記核粒子を構成する元素の一部又は全部を除去する工程。
本発明の中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の平均粒子径は5〜300nmの範囲にある。平均粒子径が5nm未満では球状微粒子に於ける外殻の体積割合が増加し、空洞の容積の割合が低下するからであり、他方、平均粒子径が300nmを越えると安定した分散液が得にくくなり、また、該超微粒子を含有する反射防止層の透明性が低下し易いからである。中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の好ましい平均粒子径は10〜200nmの範囲である。尚、前記平均粒子径は動的光散乱法によって求めることができる。
前記の中空で球状の酸化ケイ素超微粒子分散液は各種マトリクス成分と混合することにより、反射防止形成用塗工液を作成することができる。各種マトリクス成分とは、ハードコート層の表面に被膜を形成し得る成分をいい、基材との密着性や硬度、塗工性等の条件に適合する樹脂等から選択して用いることができ、例えば、従来から用いられているポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂、これら樹脂の混合物、更にはこれら樹脂の共重合体や変性体等の有機樹脂が挙げられる。また、前記の単層で反射防止層43を形成する材料として例示した加水分解性有機珪素化合物等をマトリクス成分として用いることができる。
マトリクス成分として有機樹脂を用いる場合には、例えば、前記中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の分散媒としての水をアルコール等の有機溶媒で置換した有機溶媒分散液、必要に応じて前記超微粒子を公知のカップリング剤で処理した後、有機溶媒に分散させた有機溶媒分散液とマトリクスとを適当な有機溶剤で希釈して、反射防止形成用塗工液とすることができる。
一方、マトリクス成分として加水分解性有機珪素化合物を用いる場合には、例えば、アルコキシシランとアルコールの混合液に、水及び触媒としての酸又はアルカリを加えることにより、アルコキシシランの部分加水分解物を得、これに前記分散液を混合し、必要に応じて有機溶剤で希釈して、塗布液とすることができる。
塗工液中の、前記酸化ケイ素超微粒子とマトリクス成分の重量割合は、酸化ケイ素超微粒子:マトリクス=1:99〜9:1の範囲が好ましい。前記重量割合が9:1を超えると反射防止層の強度が不足して実用性に欠ける場合がある。一方、前記重量割合が1:99未満では前記酸化ケイ素超微粒子の添加効果が現れにくい場合がある。
前記ハードコート層42の表面に形成される反射防止層43の屈折率は、酸化ケイ素超微粒子とマトリクス成分等の混合比率及び使用するマトリクスの屈折率によっても異なるが、1.2〜1.42と低屈折率となる。尚、本発明の酸化ケイ素超微粒子自体の屈折率は、1.2〜1.38である。
ハードコートフィルムのハードコート層42上に反射防止層43を設けた反射防止ハードコートフィルムは、鉛筆硬度の点で好ましい。超微粒子を含有するハードコート層42表面は微小凹凸を形成しており、それが鉛筆の滑りに影響する(鉛筆が引っかかりやすく力が伝わり易くなっている)。反射防止層43を設けた場合には、凹凸が滑らかになり、通常は、ハードコート層の鉛筆硬度の3H程度のものは、4Hの鉛筆硬度とすることができる。
この様な中空で球状の酸化ケイ素超微粒子の製造方法としては、例えば特開2000−233611号公報に開示されたシリカ系微粒子の製造方法が好適に採用される。
低屈折率層を形成させる際の乾燥及び硬化の温度は特に制限されず、通常60〜150℃、好ましくは70〜130℃に於いて、通常1分から30分、生産性を考えた場合には、1分から10分程度がより好ましい。また、乾燥及び硬化後、更に加熱処理を行うことでより高硬度の反射防止ハードコートフィルムが得られる。加熱処理の温度は特に制限されず、通常40〜130℃、好ましくは50〜100℃に於いて通常1分から100時間、耐擦傷性を一層向上させるためには10時間以上行うことがより好ましい。尚、温度、時間は前記範囲に制限されず、適宜に調整できる。加熱は、ホットプレート、オーブン、ベルト炉等による方法が適宜に採用される。
反射防止層43は画像表示装置の最表面に装着される頻度が高い為、外部環境からの汚染を受けやすい。特に、身近に於いては指紋や手垢、汗や整髪料等の汚染物が付着しやすく、その付着で表面反射率が変化したり付着物が白く浮きでて見えて表示内容が不鮮明になる等、単なる透明板等の場合に比べて汚染が目立ちやすくなる。この様な場合は、前記付着防止性、易除去性に関する機能を付与する為に、フッ素基含有のシラン系化合物やフッ素基含有の有機化合物等を反射防止層43上に積層することができる。
フィルム基材41、又はフィルム基材41上に塗工を行ったハードコート層42に各種表面処理を行うことによって、フィルム基材41とハードコート層42、フィルム基材41と偏光子又はハードコート層42と反射防止層43の接着性を向上させることができる。その表面処理としては、低圧プラズマ処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。また、トリアセチルセルロースをフィルム基材として用いた場合の表面処理として好ましく用いられるアルカリ鹸化処理を具体的に説明する。セルロースエステルフィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1N〜3.0Nであることが好ましく、0.5N〜2.0Nであることが更に好ましい。アルカリ溶液温度は、25℃〜90℃の範囲が好ましく、40℃〜70℃が更に好ましい。その後、水洗処理、乾燥処理を行い、表面処理を施したトリアセチルセルロースを得ることができる。
また、フィルム基材41の裏面(ハードコート層42の形成面とは反対側の面)に、カールの発生を防止することを目的として、次に述べる溶剤処理を行ってもよい。溶剤処理は、フィルム基材41を溶解させ得る溶剤又は膨潤させ得る溶剤を含む組成物を、従来公知の方法により塗布して行われる。その様な溶剤を塗布することにより、フィルム基材41の裏面側に丸まろうとする性質を付与し、これにより、ハードコート層42を備えたフィルム基材41が、ハードコート層42の形成面側にカールしようとする力を相殺してカールの発生を防止するものである。
前記溶剤としては、溶解させる溶剤及び/又は膨潤させる溶剤の混合物の他に、更に溶解させない溶剤を含む場合もある。これらをフィルム基材41のカール度合や樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
カール防止機能を更に向上させる場合は、用いる溶剤組成を溶解させ得る溶剤及び/又は膨潤させ得る溶剤の混合比率を大きくし、溶解させない溶剤の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させ得る溶剤及び/又は膨潤させ得る溶剤):(溶解させない溶剤)=10:0〜1:9で用いられる。この様な混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解又は膨潤させる溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム等がある。溶解させない溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール等が挙げられる。
これらの溶剤組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター又は押し出しコーター等を用いて、フィルム基材41の表面にウェット膜厚(乾燥前の膜厚)が1〜100μm、より好ましくは5〜30μmとなる様に塗布する。
この様にして塗布した各溶剤は乾燥後に飛散してもよく、また微量残存していてもよいが、好ましくは塗布面に溶媒が残存していない状態が良い。
また、フィルム基材41の裏面(ハードコート層42の形成面とは反対側の面)に、カールの発生を防止することを目的として、次に述べる透明樹脂層を設けてもよい。前記透明樹脂層としては、例えば熱可塑性樹脂、放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、その他の反応型樹脂を主成分とする層が挙げられる。これらの内でも特に熱可塑性樹脂を主成分とする層が好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体あるいは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/又はアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂の内、例えばジアセチルセルロース等を用いたセルロース系樹脂層が、透明樹脂層としては特に好ましい。
尚、本実施の形態に於いては、表面層としてハードコートフィルム4を例にして説明したが、本発明は鉛筆硬度が4H以上のものであればこれに限定されるものではない。例えば、ハードコートフィルム4の他に、金属蒸着膜付きフィルム等の鉛筆硬度が4H以上のものを例示することができる。
以上の構成を有する液晶表示装置用積層体1は、図4に示すように、液晶表示装置に於ける液晶セル5の視認側に対して、ハードコートフィルム4が外側になる様にして貼り付けられる。この様に液晶セル5の視認側に液晶表示装置用積層体1を装着することで、液晶セル5が保護される。即ち、液晶表示装置用積層体1が備えるガラス割れ防止粘着剤層3により、従来では困難であった0.5J以上の外部衝撃力を受けても、液晶セル5に於けるガラス基板が割れるのを防止することができる。また、ハードコートフィルム4を備えることで耐擦傷性にも優れている。液晶表示装置用積層体1を液晶セルに貼り付ける方法についても特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。
尚、液晶セル5の裏面側にも、偏光子21とその両側の保護フィルム22、22とからなる偏光板に更に位相差板23を積層した積層体(楕円偏光板や円偏光板)からなる液晶表示用光学フィルム2が、所定の粘着剤層を介して、貼り付けられていてもよい。この様に液晶セル5の裏面側にも各種光学フィルムが装着されることがあるが、この装着のための粘着剤層には通常のアクリル系粘着剤等を使用してもよく、或いは前記したガラス割れ防止粘着剤層3と同様のものを使用してもよい。
本発明に係る液晶表示装置の製造は、従来公知の方法により行うことができる。即ち、液晶表示装置は、通常、液晶セルと液晶表示装置用積層体1と必要によりその照明システム等の構成部品を適宜組み立てて駆動回路に組み込む等することにより製造される。本発明の液晶表示装置用積層体1を用いる以外は、従来公知の方法により製造することができる。また、この製造に際し、必要により、拡散板、アンチグレア層、反射防止層、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライト等の適宜の部品を所望箇所に設けることができる。尚、前記液晶セルは、電極等を備えた一対のガラス基板で液晶層を挟持する構成の従来公知の液晶セルを意味し、特に限定されるものではない。また、液晶セルに使用するガラス基板も従来公知のものであれば、特に限定されるものではない。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。また、以下に於いて、部及び%は、重量基準を意味するものとする。
(偏光板の作製)
<偏光子>
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、5重量%(重量比、ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色した。次いで、このポリビニルアルコールフィルムを3重量%のホウ酸及び2重量%のコウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、更に4重量%のホウ酸及び3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で5.5倍まで延伸した。その後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬した。更に、40℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ25μmの偏光子を得た。
<接着剤>
アセトアセチル基変性したポリビニルアルコール樹脂100部(アセチル化度13%)に対してメチロールメラミン20部を含む水溶液を、濃度0.5重量%になるように調整し、これによりポリビニルアルコール系接着剤の水溶液を得た。
<偏光板の作製>
偏光子の両面に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、トリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム株式会社製、商品名:富士タックT−40UZ)をそれぞれ貼り合わせ、これにより偏光板としてのTEG1465DU(商品名、日東電工株式会社)を作製した。得られた偏光板の厚みは105μmであった。トリアセチルセルロースフィルムは、厚さが40μmであり、ケン化処理が施されているものを用いた。また、貼り合わせ条件は、70℃で10分間の乾燥とした。
また、他の偏光板としてのSEG5465DUの作製は、前記TEG1465DUに於いて、厚さ80μmのTACを使用して行った。
(光学補償板の作製)
日本ゼオン株式会社製ゼオノアフィルム(商品名)を用いて、下記表1に示す延伸条件にて一軸延伸をし、NZF−U260nm及びNZF−U90nmの二種類の光学補償板を作製した。
(実施例1)
<アクリル系粘着剤層>
ベースポリマーとして、ブチルアクリレート95部、アクリル酸5部、過酸化ベンゾイル0.2部を酢酸エチル300部に溶解し、撹拌下、約60℃6時間反応させて重量平均分子量200万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分20%)を調製した。このアクリル系ポリマー溶液に、イソシアネート系多官能性化合物(コロネートし、日本ポリウレタン社製)をポリマー固形分100部に対して0.5部を加え、粘着剤溶液を調製した。当該粘着剤溶液を、シリコン離型処理したPETフィルム(厚さ38μm)からなるセパレータ上にリバースロールコート法により塗布した。塗布は、乾燥後の塗布層の厚みが23μmとなるように行った。その後、塗布層上に同様のセパレータを付与して熱風循環式オーブンで乾燥し、セパレータで挟持されたアクリル系粘着剤層を作製した。
<ハードコート層/PETフィルム/アクリル系粘着剤層の作製>
ウレタンアクリレートとして、ペンタエリストール系アクリレート及び水添キシレンジイソシアネートから成るウレタンアクリレート100部と、ポリオール(メタ)アクリレートとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート49部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート41部及びペンタエリスリトールトリアクリレート24部と、水酸基を2個以上含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーとして2−ヒドロキシエチル基及び2,3−ジヒドロキシプロピル基を有する(メタ)アクリルポリマー59部と、全樹脂成分に対し重合開始剤(イルガキュア184)3部と、反応性レベリング剤0.5部とを、酢酸ブチルと酢酸エチルの混合割台が46:54(全溶媒に対する酢酸エチル比率54%)の混合溶媒により固形分濃度が50%となる様に希釈して、ハードコート層形成材料を調製した。尚、前記反応性レベリング剤は、ジメチルシロキサン:ヒドロキシプロピルシロキサン:6−イソシアネートヘキシルイソシアヌル酸:脂肪族ポリエステル=6.3:1.0:2.2:1.0のモル比で共重合させた共重合物である。
前記ハードコート層形成材料を、フィルム基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムA4300(商品名、東洋紡績株式会社製、厚さ250μm)上に、バーコーターを用いて塗工し、100℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、メタルハライドランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化処理して厚み20μmのハードコート層付きPETフィルム(ハードコートフィルム)を作製した。このときのハードコート層表面の鉛筆硬度は4Hであった。
次に、前記ハードコート層付きPETフィルム、及び前記セパレータ/アクリル系粘着剤層/セパレー夕を用いてハードコート層/PETフィルム/アクリル系粘着剤層/セパレータ構成のサンプルを作製した。即ち、セパレータ/アクリル系粘着剤層/セパレータの一方のセパレータを剥離し、前記ハードコート層付きPETフィルムのPETフィルム面にアクリル系粘着剤層が接触するようにアクリル系粘着剤層/セパレータをラミネータで貼り合わせた。
<ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層(下塗り層)の作製>
冷却管、窒素導入管、温度計、紫外線照射装置及び撹拌装置を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート100部、ヒドロキシブチルアクリレート19.62部、ならびに光重合開始剤としてイルガキュア184(商品名、チバスペシャルティ・ケミカルズ社製)0.05部及びイルガキュア651(商品名、チバスペシャルティ・ケミカルズ社製)0.05部を入れ、紫外線照射により重合処理して、重合率8重量%の重合体・単量体混合液を得た。この混合液100部に、更に0.2部のトリメチロールプロパントリアクリレート(内部架橋剤)、0.16部のイルガキュア184、及び0.01部のイルガキュア651を配合し、光重合性組成物とした。
次に、光重合性組成物を厚さ100μmのポリエステル系剥離フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名;PETセパMRV)上に塗布し、更にその上を前記のポリエステル系剥離フィルムよりも剥離力が小さく、厚さが75μmのポリエステル系剥離フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名;PETセパMRN)でラミネートし、紫外線ランプにて1.8J/cm2の紫外線を照射して光重合させた。その後、PETセパMRNを剥離して熱風オーブンにて150℃×50分の加熱による脱モノマー処理をした。更に、剥離したPETセパMRNに代えて、ポリエチレン系剥離フィルム(王子製紙社製、商品名;アルファン100−RL−02)でラミネートした。これにより、アルファン100−RL02及びPETセパMRVに挟まれたガラス割れ防止粘着剤層(厚さ400μm)を形成した。このガラス割れ防止粘着剤層は、後述の方法により20℃での動的貯蔵弾性率G’を求めたところ、4.5×104Paであった。
次に、前記アルファン100−RL02/ガラス割れ防止粘着剤層/PETセパMRVの積層物に於いて、アルファン100−RL02を剥離した。更に、ガラス割れ防止粘着剤層/PETセパMRVと、アクリル系粘着剤層/セパレータ(前記セパレータで挟持されたアクリル系粘着剤層を使用)とを、ガラス割れ防止粘着剤層とアクリル系粘着剤層とが貼り合わせ面となる様に、ラミネータで貼り合わせた。これにより、PETセパMRV/ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層/セパレータからなる積層物を得た。
<液晶表示用光学フィルム>
本実施例に係る液晶表示用光学フィルムとして、図5に示すように、 偏光板及び2枚の光学補償板がそれぞれ前記アクリル系粘着剤層を介して、積層されたものを用いた。尚、偏光板にはTEG1465DU(商品名、日東電工株式会社製)、光学補償板にはNZF−UF260nm(商品名、日東電工株式会社製、正面位相差260nm)及びNZF−UF90nm(商品名、日東電工株式会社製、正面位相差90nm)を用い、最外層のNZF−UF90nm/アクリル系粘着剤層のアクリル系粘着剤層(前記と同じアクリル系粘着剤)には厚さが38μmのポリエステル系剥離フィルムを貼り合わせた。
<液晶表示装置用積層体の貼り合わせ>
前記PETセパMRV/ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層/セパレータからなる積層物に於いてセパレータを剥離し、TEG1465DUとアクリル系粘着剤層とが貼り合わせ面となる様に、液晶表示用光学フィルムと、PETセパMRV/ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層とを、ラミネータを用いて貼り合わせた。これにより、PETセパMRV/ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層/液晶表示用光学フィルム/セパレータからなる積層物を得た。
次に、前記PETセパMRV/ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層/液晶表示用光学フィルム/セパレータからなる積層物からPETセパMRVを剥離すると共に、ハードコート層/PETフィルム/アクリル系粘着剤層/セパレータの積層物からもセパレータを剥離した。更に、ガラス割れ防止粘着剤層とアクリル系粘着剤層とが貼り合わせ面となる様にして、ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層/液晶表示用光学フィルム/セパレータと、ハードコート層/PETフィルム/アクリル系粘着剤層とを、ラミネータを用いて貼り合わせた。これにより、ハードコート層/PETフィルム/アクリル系粘着剤層/ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層/液晶表示用光学フィルム/セパレータからなる液晶表示装置用積層体を得た。この液晶表示装置用積層体を100mm×100mmに切断した後、セパレータを剥離してガラス板(厚さ1.3mm、縦100mm×横100mmのソーダガラス)表面に、ラミネータを用いて貼り合わせ、図5に示す試料を作製した。
(実施例2)
実施例1で用いた厚さ250μmのPETフィルムに代えて、厚さ250μmのエポキシ樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、図6に示す試料を作製した。尚、エポキシ樹脂フィルムは、次の通りにして作製した。
即ち、樹脂成分として3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート50部及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量190)50部、硬化剤としてテトラ−n−ブチルホスホニウムo,o−ジエチルホスホジチエオエート0.95部を撹拌混合し、エポキシ樹脂組成物(樹脂液)を調製した。
次に、ウレタンアクリレート17部及び光重合開始剤(イルガキュア184(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部を、トルエン100部に溶解させ、得られた塗工液をガラス板上にワイヤーバーコート法にて塗布し、風乾した。その後、UV硬化装置を用いて、塗工液を硬化させた。光源には高圧水銀ランプを使用し、200mJ/cm2で1分間の照射条件で実施した。これにより、ガラス板上に膜厚2μmのハードコート層を形成した。続いて、シリコーン系シーリング剤を介して250μm間隔でハードコートが内側に位置するように貼り合わされた前記ハードコート付きガラス板2枚の間に前記エポキシ樹脂組成物を流し込んだ。これを120℃で1時間加熱してエポキシ樹脂組成物を硬化させてエポキシ樹脂硬化層を形成した後、ガラス板から剥離して厚み250μmのエポキシ樹脂フィルムを得た。
(実施例3)
<ハードコート層付きTACフィルム>
実施例1と同様にして調製したハードコート層形成材料を、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(偏光板SEG1465DUに於ける偏光子の保護フィルム)に、実施例1と同様にして塗工し、乾燥、硬化させて、厚さ20μmのハードコート層を有するハードコート層付きTACフィルムを得た。
<液晶表示用光学フィルム>
本実施例に係る液晶表示用光学フィルムとして、図7に示すように、 偏光板及び2枚の光学補償板がそれぞれ前記アクリル系粘着剤層を介して、積層されたものを用いた。尚、偏光板としてSEG1465DU、補償板としてNZF−UF260nm及NZF−UF90nmを用いた。また、最外層のNZF−UF90nm/アクリル系粘着剤に於けるアクリル系粘着剤には、厚さ38μmのポリエステル系剥離フィルムを貼り合わせた。
<液晶表示装置用積層体の貼り合わせ>
前記ハードコート層付きTACフィルムからTACフィルムを剥離した後、SEG5465DUが貼り合わせ面となる様にして、ハードコート層と液晶表示用光学フィルムとを貼り合わせた。これにより、ハードコート層付き光学フィルムを作製した。
次に、PETセパMRV/ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層/セパレータからなる積層物からPETセパMRVを剥離すると共に、前記ハードコート層付き光学フィルムからもセパレータを剥離した。
更に、ガラス割れ防止粘着剤層とアクリル系粘着剤層とが貼り合わせ面となる様にして、ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層/セパレータと、ハードコート層/液晶表示用光学フィルム/アクリル系粘着剤層とを、ラミネータを用いて貼り合わせた。これにより、ハードコート層/液晶表示用光学フィルム/ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層/セパレータからなる液晶表示装置用積層体を得た。この液晶表示装置用積層体を、実施例1と同様にして、ガラス板表面に、ラミネータを用いて貼り合わせ、図7に示す試料を作製した。
(実施例4)
本実施例に於いては、実施例3のTACフィルムの厚みを40μmに変更すると共に、偏光板としてSEG1465DUをTEG1465DUに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、図8に示す試料を作成した。
(実施例5)
本実施例に於いては、実施例1に於けるハードコート層/PETフィルム/アクリル系粘着剤層の積層物に代えて、ハードコート層/PETフィルムを用い、かつ、ガラス割れ防止粘着剤層/アクリル系粘着剤層の積層物に代えて、ガラス割れ防止粘着剤層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、図9に示す試料を作製した。
(実施例6)
本実施例に於いては、実施例1で用いたガラス割れ防止粘着剤層の厚みを400μmから120μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、図5に示す試料を作製した。
(実施例7)
本実施例に於いては、実施例1で用いたガラス割れ防止粘着剤層の厚みを400μmから800μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、図5に示す試料を作製した。
(比較例1)
本比較例に於いては、実施例1に於いて用いた鉛筆硬度4Hのハードコート層に代えて、次に述べるハードコート層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、図10に示す試料を作製した。
ウレタンアクリレート(商品名;ユニディック17−806、大日本インキ化学工業社製(酢酸ブチルで固形分濃度80%に調製されたもの))125部、及びこのウレタンアクリレートの固形分100部に対して光重合開始剤(商品名;イルガキュア184)5部を配合し、更に固形分濃度が40%になる様に水で希釈してハードコート層形成材料を調製した。
得られたハードコート層形成材料を、厚さ250μmのPETフィルム(A4300(商品名)、東洋紡績株式会社製)上に、バーコーターを用いて塗工し、100℃で1分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、メタルハライドランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射し、硬化処理をして、厚さ8μmのハードコート層付きPETフィルムを作製した。
(比較例2)
本比較例に於いては、実施例1で用いたガラス割れ防止粘着剤層の厚さを400μmから50μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、図11に示す試料を作製した。
(比較例3)
本比較例に於いては、実施例1で用いたガラス割れ防止粘着剤層の厚みを400μmから80μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。
(参考例1)
本実施例に於いては、実施例1のガラス割れ防止粘着剤層の厚みを400μmから1200μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして試料を作製した。
(評価方法)
<動的貯蔵弾性率G’>
ガラス割れ防止粘着剤層の動的貯蔵弾性率G’は、動的粘弾性装置(粘弾性スペクロメータ(レオメトリック・サイエンティフィック社製の「ARES装置」))を使用して、周波数1Hzにて温度分散測定を行い、20℃での動的(せん断)貯蔵弾性率G’を求めたものである。
<各層の厚み>
(株)ミツトヨ製のマイクロゲージ式厚み計にて測定を行った。例えば、ハードコート層の厚みは、透明なフィルム基材にハードコート層を設けたハードコートフィルムの厚みを測定し、このフィルム基材の厚みを差し引くことでハードコート層の厚みを算出した。
<鉛筆硬度試験>
ハードコートフィルム又はハードコート層をガラス板上に載せ、ハードコート層表面について、JIS K−5600−5−4記載の鉛筆硬度試験に従い試験を実施した。
<鋼球落下試験>
20mm厚の鉄板上に、液晶表示装置用積層体が上となる様にして水平に載置し、この液晶表示装置用積層体に、直径50mm、重量510gの鋼球を10cmの高さから落球させて、サンプルに貼り付けたガラス板が割れるがどうかを目視にて観察した。尚、前記鋼球を落下させたときの衝撃力を、鋼球重量(kgf)×高さ(m)×重力加速度(m/s2)=0.51×0.1×9.81により算出した。その結果、衝撃力は、約0.5Jであった。この鋼球落下試験にて、ガラス板にクラック及び破損が見られないものを○、ガラス板にクラック又は破損が見られるものを×と評価した。結果を下記表2に示す。
<信頼性試験>
85℃×1000h、60℃、90%RH×1000hそれぞれの条件下でサンプルを保存した後、サンプルの剥がれ及び発泡がないかを目視で確認した。サンプルに剥がれ及び発泡が見られないものを○、剥がれ又は発泡が見られるものを×と評価した。結果を下記表2に示す。
尚、参考例1に於いては、ガラス割れ防止粘着剤層の厚みが1200μmのものを例示しており、鉛筆硬度試験、鋼球落下試験及び信頼性試験の何れも良好な結果を示しているが、表示特性の低下及び液晶表示装置の厚肉化を招来する場合がある。