以下に、本発明に係る駆動力制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る駆動力制御装置を適用した車両を示す概略構成図、図2は、本発明の実施形態1に係る駆動力制御装置を適用した車両が備えるエンジンの概略構成図、図3は、本発明の実施形態1に係る駆動力制御装置の概略構成図、図4は、本発明の実施形態1に係る駆動力制御装置のスロットル開度マップ、図5は、本発明の実施形態1に係る駆動力制御装置の最適燃費帯を説明する線図、図6は、本発明の実施形態1に係る駆動力制御装置のエンジン回転数マップ、図7は、本発明の実施形態1に係る駆動力制御装置の駆動力制御を説明するフローチャート、図8は、本発明の実施形態1に係る駆動力制御装置の駆動力制御の一例を説明するタイムチャートである。
なお、以下で説明する実施形態では、図1に示すように、本発明の駆動力制御装置100をECU51に組み込んで構成する場合で説明する。すなわち、以下で説明する実施形態では、駆動力制御装置100をECU51により兼用する場合で説明する。ただし、本発明の駆動力制御装置100は、ECU51とは別個に構成され、これをECU51に接続するようにして構成してもよい。
本実施形態に係る駆動力制御装置100は、図1に示すように、乗用車、トラックなどの車両1に搭載され、この車両1の駆動力を制御するものである。この駆動力制御装置100は、動力発生手段が発生させる動力がトルクコンバータを介して入力される変速機を搭載する車両に適用されるものである。
ここでまず、車両1は、図1に示すように、内燃機関としてのエンジン10を動力発生源として走行する。この実施形態において、エンジン10は、ガソリンを燃料とするレシプロ式の火花点火式内燃機関であるが、エンジン10はこれに限定されるものではない。エンジン10は、例えば、LPGやアルコールを燃料とする火花点火式内燃機関であってもよいし、いわゆるロータリー式の火花点火式内燃機関であってもよいし、ディーゼル機関であってもよい。また、車両1は、動力発生源として、エンジン10に加えて電動モータを備えるハイブリッド車両であってもよい。
車両1は、内燃機関としてのエンジン10と、トルクコンバータ2と、変速機3と、プロペラシャフト4と、デファレンシャルギヤ5と、後輪駆動軸6と、車輪(前輪)7F及び車輪(後輪)7Rと、制動装置8とを備える。
エンジン10は、動力発生手段であり、車両1に搭載され、駆動操作部材としてのアクセルペダル10aの操作に応じて車両1の各車輪7Rに駆動力を発生させるものである。エンジン10は、車両1の進行方向(図1中の矢印Y方向)前方に搭載されて、トルクコンバータ2、変速機3、プロペラシャフト4、デファレンシャルギヤ5、後輪駆動軸6を介して、左右の車輪7Rを駆動する。そして、左右の車輪7Fは、車両1の操舵輪となる。このように、車両1は、いわゆるFR(Front engine Rear drive)の駆動形式を採用する。なお、本実施形態に係る駆動力制御装置100は、駆動形式に関わらずエンジン10を備える種々の駆動形式の車両に適用できる。このエンジン10については、後述する図2で詳細に説明する。
トルクコンバータ2は、流体クラッチの一種であり、エンジン10の出力側に設けられ、エンジン10から出力された動力を、流体としての作動油を介して、あるいは、直接に伝達するものである。トルクコンバータ2は、例えば、ロックアップ機構を有するものがあり、エンジン10からの出力トルク(駆動力)を所定のトルク比で増加させて、あるいはそのままの出力トルクで、変速機3に伝達する。つまり、エンジン10が発生する動力は、トルクコンバータ2を介して変速機3に入力される。
変速機3は、エンジン10の出力側に設けられ、エンジン10の回転出力が伝達されこのエンジン10の出力回転速度を変速するものである。言い換えれば、変速機3は、エンジン10からの駆動力、すなわち出力トルクを車両1の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達するために、エンジン10の出力側に設けられている。
変速機3は、変速機3に入力される入力回転速度と変速機3から出力される出力回転速度との比である変速比を無段階(連続的)に制御する無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよいし、変速比を段階的(不連続)に制御する有段変速機(AT:Automatic Transmission)であってもよい。有段変速機には、例えば、複数の遊星歯車装置とクラッチとを組み合わせて構成される多段式の有段変速機などがある。無段変速機には、例えば、トロイダル式の無段変速機やベルト式の無段変速機などがある。トロイダル式の無段変速機は、入力側の回転部材である入力ディスクと出力側の回転部材である出力ディスクとの間に挟み込んだ伝達部材としてのパワーローラを介して各ディスクの間でトルクを伝達すると共に、パワーローラを傾転させて変速比を変化させるものである。ベルト式の無段変速機は、エンジン10からの駆動力が伝達される入力側の回転部材であるプライマリプーリ及びプライマリプーリに伝達された駆動力を変化させて出力する出力側の回転部材であるセカンダリプーリと、このプライマリプーリに伝達された駆動力をセカンダリプーリに伝達する伝達部材としてのベルトとにより構成され、ベルトとプーリとの接触半径を変化させて変速比を変化させるものである。なお、無段変速機には、この他にもハイブリッド車両に設けられ複数の遊星歯車装置などからなる無段式の変速機構などがある。本実施形態の変速機3は、特に断りの無い限り変速比を無段階(連続的)に制御する無段変速機であるものとして説明する。
プロペラシャフト4は、変速機3から出力された動力を後側の車輪(後輪)7R側に伝達するものである。プロペラシャフト4は、デファレンシャルギヤ5を介して左右の後輪駆動軸6に連結されている。後輪駆動軸6には、左右の後輪となる車輪7Rが連結されている。車両1は、上記のように構成される動力伝達系統を介して、エンジン10の出力トルクが各車輪7Rに伝達される。
制動装置8は、ブレーキペダル8aの操作に応じて車両1の車輪7F、7Rに制動力を発生させるものである。各車輪7F、7Rには、制動装置8の油圧制動部8bがそれぞれ設けられている。また、制動装置8を構成するマスタシリンダ8cと、油圧制動部8bのホイールシリンダ8dとを接続する作動液の液圧系には、運転者によるブレーキペダル8aのブレーキ操作(制動操作)とは別にホイールシリンダ8d内の液圧を増減し、ブレーキパッドやブレーキロータなどからなる油圧制動部8bを介して各車輪7F、7Rに付与する制動力を制御するブレーキアクチュエータ8eが設けられている。車両1は、上記のように構成される制動装置8により車輪7F、7Rに制動力が発生する。
次に、図2に示すように、エンジン10は、後述する燃料噴射弁41によって燃料噴霧を燃焼室18に直接噴射する多気筒筒内噴射式のエンジンであり、シリンダボア13内に往復運動可能に設けられるピストン14が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルエンジンである。
このエンジン10は、シリンダブロック11上にシリンダヘッド12が締結されており、このシリンダブロック11に形成された複数のシリンダボア13にピストン14がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック11の下部にクランクケース15が締結され、このクランクケース15内にクランクシャフト16が回転自在に支持されており、各ピストン14はコネクティングロッド17を介してこのクランクシャフト16にそれぞれ連結されている。なお、このクランクケース15の底部には、エンジン10の各部に供給されるオイルが貯留されている。
燃焼室18は、シリンダブロック11におけるシリンダボア13の壁面とシリンダヘッド12の下面としての筒内天井部とピストン14の頂面により構成されており、この燃焼室18は、上部、すなわち、シリンダヘッド12の下面としての筒内天井部の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。燃焼室18は、燃料と空気との混合気が燃焼可能であり、この燃焼室18の上部である筒内天井部に吸気ポート19及び排気ポート20が対向して形成されており、この吸気ポート19及び排気ポート20に対して吸気弁21及び排気弁22の下端部がそれぞれ位置している。この吸気弁21及び排気弁22は、シリンダヘッド12に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート19及び排気ポート20を閉止する方向(図2にて上方)に付勢支持されている。また、シリンダヘッド12には、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転自在に支持されており、吸気カム25及び排気カム26が吸気弁21及び排気弁22の上端部に接触している。
なお、図示しないが、クランクシャフト16に固結されたクランクシャフトスプロケットと、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24にそれぞれ固結された各カムシャフトスプロケットとは、無端のタイミングチェーンが掛け回されており、クランクシャフト16と吸気カムシャフト23と排気カムシャフト24が連動可能となっている。
したがって、クランクシャフト16に同期して吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転すると、吸気カム25及び排気カム26が吸気弁21及び排気弁22を所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート19及び排気ポート20を開閉し、吸気ポート19と燃焼室18、燃焼室18と排気ポート20とをそれぞれ連通することができる。この場合、この吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24は、クランクシャフト16が2回転(720度)する間に1回転(360度)するように設定されている。そのため、エンジン10は、クランクシャフト16が2回転する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4行程を実行することとなり、このとき、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が1回転することとなる。
また、このエンジン10の動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁21及び排気弁22を最適な開閉タイミングに制御する吸気・排気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)27,28となっている。この可変動弁手段としての吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24の軸端部にVVTコントローラ29,30が設けられて構成され、オイルコントロールバルブ31,32からの油圧をこのVVTコントローラ29,30の図示しない進角室及び遅角室に作用させることによりカムシャフトスプロケットに対するカムシャフト23,24の位相を変更し、吸気弁21及び排気弁22の開閉時期を進角又は遅角することができるものである。この場合、吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気弁21及び排気弁22の作用角(開放期間)を一定としてその開閉時期を進角又は遅角する。また、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24には、その回転位相を検出するカムポジションセンサ33,34(図1も参照)が設けられている。
吸気ポート19には、吸気マニホールド35を介してサージタンク36が連結され、このサージタンク36に吸気管37が連結されており、この吸気管37の空気取入口にはエアクリーナ38が取付けられている。そして、このエアクリーナ38の空気流動方向下流側にスロットル弁39を有する負荷調節手段としての電子スロットル装置40が設けられている。また、シリンダヘッド12には、燃焼室18に直接燃料を噴射する燃料噴射手段としての燃料噴射弁41が装着されている。この燃料噴射弁41は、吸気ポート19側に位置して上下方向に所定角度傾斜して配置されている。この燃料噴射弁41は、燃焼室18に生成される吸気流動に燃料が乗るようにピストン14の頂面に向かって燃料を噴射可能である。各気筒に装着される燃料噴射弁41は、デリバリパイプ42に連結され、このデリバリパイプ42には、高圧燃料供給管43を介して高圧燃料ポンプ(燃料ポンプ)44が連結されている。更に、シリンダヘッド12には、燃焼室18の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ45が装着されている。
一方、排気ポート20には、排気マニホールド46を介して排気管47が連結されており、この排気管47には排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどの有害物質を浄化処理する三元触媒48,49が装着されている。また、エンジン10には、クランキングを行うスタータモータ50が設けられており、エンジン始動時に図示しないピニオンギヤがリングギヤと噛み合った後、回転力がピニオンギヤからリングギヤへと伝わり、クランクシャフト16を回転することができる。
ところで、図1、図2に示すように、車両1にはマイクロコンピュータを中心として構成され、エンジン10の各部を制御可能な電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)51が搭載されている。ECU51は、エンジン10、変速機3、制動装置8のブレーキアクチュエータ8eなどの車両1の各部に電気的に接続されており、これら車両1の各部を制御可能である。このECU51は、燃料噴射弁41の燃料噴射時期や点火プラグ45の点火時期、電子スロットル装置40のスロットル開度(スロットル弁39が全開とされた場合のスロットル開度を100%とする)などを制御可能となっており、検出した吸入空気量、吸気温度、吸気圧(吸気管負圧)、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期、スロットル開度などを決定している。
すなわち、吸気管37の空気流動方向上流側にはエアフローセンサ52及び吸気温センサ53が装着され、また、サージタンク36には吸気圧センサ54が設けられており、計測した吸入空気量、吸気温度、吸気圧(吸気管負圧)をECU51に出力している。
また、電子スロットル装置40にはスロットル開度センサ55が装着されており、現在のスロットル開度をECU51に出力している。ここで、ECU51は、検出されたスロットル開度や吸入空気量に基づいて内燃機関負荷としてのエンジン負荷(負荷率)を算出することができる。
アクセルペダル10aにはアクセル開度センサ56が設けられており、アクセル開度センサ56は、現在のアクセル開度(アクセルが全開とされた場合のアクセル開度を100%とする)をECU51に出力している。なお、このアクセル開度センサ56は、運転者の車両1に対する加速の要求の有無及び運転者の車両1に対する加速の要求量を判定するためのパラメータとして、エンジン10が搭載された車両1のアクセルペダル10aの踏み込みに応じたアクセル開度を検出するものである。すなわち、アクセル開度センサ56が検出するアクセル開度は、運転者による車両1に対する加速要求操作の操作量に相当する。さらに言えば、アクセル開度センサ56が検出するアクセル開度は、運転者による車両1に対する加速要求に応じた駆動力の要求操作の操作量に相当する。つまり、アクセル開度センサ56が検出するアクセル開度は、運転者が車両1に要求する要求駆動力に応じた値に相当する。
さらに、クランクシャフト16にはクランク角センサ57が設けられ、検出したクランク角度をECU51に出力し、ECU51はクランク角度に基づいて各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、エンジン回転数を算出する。なおここで、エンジン回転数は、言い換えれば、クランクシャフト16の回転速度に対応し、このクランクシャフト16の回転速度が高くなれば、クランクシャフト16の回転数、すなわち、エンジン10のエンジン回転数も高くなる。
また、シリンダブロック11にはエンジン冷却水温を検出する水温センサ58が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU51に出力している。また、各燃料噴射弁41に連通するデリバリパイプ42には燃料圧力を検出する燃圧センサ59が設けられており、検出した燃料圧力をECU51に出力している。
一方、排気管47には、三元触媒48の排気ガス流動方向上流側にエンジン10の空燃比を検出するA/Fセンサ60、排気ガス流動方向下流側に酸素センサ61が設けられている。A/Fセンサ60は、三元触媒48に導入される前の排気ガスの排気ガス空燃比を検出し、検出した空燃比をECU51に出力し、酸素センサ61は、三元触媒48から排出された後の排気ガスの酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度をECU51に出力している。このA/Fセンサ60により検出された空燃比(推定空燃比)は、吸入空気と燃料とからなる混合ガスの空燃比(理論空燃比)をフィードバック制御するために用いられる。すなわち、A/Fセンサ60は、排気ガス中の酸素濃度と未燃ガス濃度から排気空燃比をリッチ域からリーン域までの全域にわたり検出し、これをECU51にフィードバックすることにより燃料噴射量を補正し、燃焼を運転状態に合わせた最適な燃焼状態に制御可能となる。
また、車両1の各車輪7F、7Rの近傍には、それぞれ車輪速度センサ62が設けられており、検出した各車輪7F、7Rの回転速度をECU51に出力している。ECU51は、各車輪速度センサ62により検出される各車輪7F、7Rの回転速度に基づいて、車両1の車速を算出することができる。なお、ECU51は、車両1の車速を車輪速度センサ62の検出結果ではなく、例えば後述の出力回転数センサ65による検出結果に基づいて算出してもよい。
また、ブレーキペダル8aにはブレーキペダルセンサ63が設けられており、ブレーキペダルセンサ63は、検出したブレーキ操作のON/OFF、ペダルストロークやペダル踏力をECU51に出力している。なお、このブレーキペダルセンサ63は、運転者によるブレーキペダル8aの操作、すなわち、ブレーキ操作を検出するものである。
また、変速機3の入力側(エンジン10側)には、入力回転数センサ64が設けられており、検出した変速機3への入力回転数(入力回転速度)をECU51に出力している。変速機3の出力側(車輪(後輪)7R側)には、出力回転数センサ65が設けられており、検出した変速機3からの出力回転数(出力回転速度)をECU51に出力している。なお、入力回転数センサ64、出力回転数センサ65は、それぞれ、入力側の回転部材(例えば、トロイダル式無段変速機であれば入力ディスク、ベルト式無段変速機であればプライマリプーリ)、出力側の回転部材(例えば、トロイダル式無段変速機であれば出力ディスク、ベルト式無段変速機であればセカンダリプーリ)の回転数(回転速度)に比例した回転数(回転速度)で回転する部材の回転数に基づいて検出してもよい。また、この変速機3への入力回転数は、基本的には、エンジン10の出力回転数であるエンジン回転数と対応している。
したがって、ECU51は、検出した燃料圧力に基づいてこの燃料圧力が所定圧力となるように高圧燃料ポンプ44を駆動すると共に、検出した吸入空気量、吸気温度、吸気圧、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料噴射期間)、噴射時期、点火時期などを決定し、燃料噴射弁41及び点火プラグ45を駆動して燃料噴射及び点火を実行する。また、ECU51は、検出した排気ガスの酸素濃度をフィードバックして空燃比がストイキ(理論空燃比)となるように燃料噴射量を補正している。
また、ECU51は、エンジン運転状態に基づいて吸気・排気可変動弁機構27,28を制御可能となっている。即ち、低温時、エンジン始動時、アイドル運転時や軽負荷時には、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップをなくすことで、排気ガスが吸気ポート19又は燃焼室18に吹き返す量を少なくし、燃焼安定及び燃費向上を可能とする。また、中負荷時には、このオーバーラップを大きくすることで、内部EGR率を高めて排ガス浄化効率を向上させると共に、ポンピングロスを低減して燃費向上を可能とする。更に、高負荷低中回転時には、吸気弁21の閉止時期を進角することで、吸気が吸気ポート19に吹き返す量を少なくし、体積効率を向上させる。そして、高負荷高回転時には、吸気弁21の閉止時期を回転数にあわせて遅角することで、吸入空気の慣性力に合わせたタイミングとし、体積効率を向上させる。
上記のように構成されるエンジン10では、ピストン14がシリンダボア13内を下降することで、吸気ポート19を介して燃焼室18内に空気が吸入され(吸気行程)、このピストン14が吸気行程下死点を経てシリンダボア13内を上昇することで空気が圧縮される(圧縮行程)。このとき、吸気行程又は圧縮行程にて燃料噴射弁41から燃焼室18内へ燃料が噴射され、この燃料と空気とが混合して混合気を形成する。そして、ピストン14が圧縮行程上死点付近に近づくと点火プラグ45により混合気に点火され、該混合気が燃焼し、その燃焼圧力によりピストン14を下降させる(膨張行程)。燃焼後の混合気は、ピストン14が膨張行程下死点を経て吸気行程上死点に向かって再び上昇することで排気ポート20を介して排気ガスとして放出される(排気行程)。このピストン14のシリンダボア13内での往復運動は、コネクティングロッド17を介してクランクシャフト16に伝えられ、ここで回転運動に変換され、出力として取り出されると共に、このピストン14は、カウンタウェイトと共にクランクシャフト16が慣性力によりさらに回転することで、このクランクシャフト16の回転に伴ってシリンダボア13内を往復する。このクランクシャフト16が2回転することで、ピストン14はシリンダボア13を2往復し、この間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行い、燃焼室18内で1回の爆発が行われる。
ここで、本実施形態の駆動力制御装置100として兼用されるECU51は、エンジン10と変速機3とを組み合わせて車両1の駆動力を制御するものであり、エンジン10の運転を制御可能であると共に変速機3の変速比(又は変速段)を制御可能である。駆動力制御装置100は、運転者による車両1に対する駆動力要求操作(加速要求操作)の操作量に相当するアクセル開度(アクセル操作量)に基づいて、エンジン10と変速機3とを協調制御し、エンジン10が発生させる機関トルクとしてのエンジントルクと機関回転速度としてのエンジン回転数とを制御して車両1の駆動力を制御する。なお、このアクセル開度センサ56が検出するアクセル開度は、上述したように運転者が車両1に要求する要求駆動力に応じた値に相当する。
そして、本実施形態の駆動力制御装置100は、所定の条件下でエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御(回転変動抑制制御)を実行することで、車両1の駆動系全体での効率の向上を図っている。すなわち、本実施形態の駆動力制御装置100は、エンジントルクとエンジン回転数とに応じたエンジン10の動作点がエンジン10の最適燃費線に対して所定のヒステリシス幅を有して設定される領域である最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行することで、車両1の駆動系全体での効率の向上を図っている。
具体的には、本実施形態に係る駆動力制御装置100として兼用されるECU51は、図1、図3に示すように、機能概念的に、目標制御量算出手段としての目標制御量算出部110と、機関制御手段としてのエンジン制御部120と、変速制御手段としての変速機制御部130とが設けられている。
ここで、この駆動力制御装置100として兼用されるECU51は、マイクロコンピュータを中心として構成され、処理部51a、記憶部51b及び入出力部51cを有し、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。入出力部51cにはエンジン10、変速機3を含む車両1の各部を駆動する不図示の駆動回路、上述した各種センサが接続されており、この入出力部51cは、これらのセンサ等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部51bには、エンジン10、変速機3を含む車両1の各部を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部51bは、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。処理部51aは、不図示のメモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されており、少なくとも上述の目標制御量算出部110、エンジン制御部120、変速機制御部130を有している。駆動力制御装置100による各種制御は、各部に設けられたセンサによる検出結果に基づいて、処理部51aが前記コンピュータプログラムを当該処理部51aに組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて制御信号を送ることにより実行される。その際に処理部51aは、適宜記憶部51bへ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、このエンジン10を含む車両1の各部を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、ECU51とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
そして、目標制御量算出部110は、アクセル開度センサ56が検出したアクセル開度(アクセル操作量)に基づいて、エンジン10の内燃機関目標制御量と、変速機3の変速機目標制御量とを算出するものである。目標制御量算出部110によって算出される内燃機関目標制御量は、エンジン10の出力制御の目標となる制御量であり、目標制御量算出部110によって算出される変速機目標制御量は、変速機3の変速制御の目標となる制御量である。
エンジン制御部120は、内燃機関目標制御量に基づいてエンジン10の運転を制御し、このエンジン10の出力制御を行うものである。エンジン制御部120は、基本的には、この内燃機関目標制御量に基づいて、エンジン10の燃料噴射弁41の燃料噴射時期や点火プラグ45の点火時期、電子スロットル装置40のスロットル開度などを制御し、エンジン10の出力を制御する。
変速機制御部130は、変速機目標制御量に基づいて変速機3の変速制御を行うものである。変速機制御部130は、基本的には、この変速機目標制御量に基づいて、変速機3の各部を制御し、変速機3に入力される入力回転速度と変速機3から出力される出力回転速度との比である変速比(変速機3が有段変速機である場合には変速段)を制御する。
本実施形態の目標制御量算出部110は、内燃機関目標制御量として目標のスロットル開度である目標スロットル開度を算出し、変速機目標制御量として目標のエンジン回転数である目標エンジン回転数を算出する。
そして、この目標制御量算出部110は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にアクセル開度センサ56が検出したアクセル開度の変化が無いものとして目標エンジン回転数を算出する。そして、変速機制御部130は、この目標エンジン回転数に基づいて、実際のエンジン回転数が目標エンジン回転数となるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行する。
なお、上述したように、エンジン10の出力回転数であるエンジン回転数は、基本的には変速機3への入力回転数と対応していることから、目標制御量算出部110は、変速機目標制御量として、目標エンジン回転数にかえて目標の入力回転数である目標入力回転数を算出し、変速機制御部130は、この目標入力回転数を用いて変速機3の変速比を制御するようにしてもよい。すなわち、変速機制御部130は、例えば、入力回転数センサ64が検出した実際の入力回転数が目標入力回転数となるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行するようにしてもよい。
具体的には、本実施形態の目標制御量算出部110は、図3に示すように、目標スロットル開度算出部111と、動作点判定部112と、調停部113と、目標エンジン回転数算出部114とを含んで構成される。
目標スロットル開度算出部111は、内燃機関目標制御量として目標スロットル開度を算出するものである。目標スロットル開度算出部111は、運転者による車両1に対する駆動力要求操作(加速要求操作)の操作量に相当し、運転者が車両1に要求する要求駆動量に相当するアクセル開度(アクセル操作量)に基づいて、目標スロットル開度tatgtを算出する。さらに具体的には、目標スロットル開度算出部111は、アクセル開度センサ56から検出信号に応じてアクセル開度paが入力され、車輪速度センサ62から検出信号に応じて車両1の車速spdが入力され、この現在のアクセル開度paと現在の車速spdとに基づいて目標スロットル開度tatgtを算出する。目標スロットル開度tatgtは、運転者が車両1に要求する要求駆動力を実現するための車両1の目標の駆動力に対応するスロットル開度である。
目標スロットル開度算出部111は、例えば、図4に示すスロットル開度マップm01に基づいて、目標スロットル開度tatgtを求める。このスロットル開度マップm01は、横軸がアクセル開度pa、縦軸がスロットル開度taを示す。スロットル開度マップm01は、各車速spdにおけるアクセル開度paとスロットル開度taとの関係を記述したものである。このスロットル開度マップm01では、スロットル開度taは、アクセル開度paの増加にともなって増加し、車速spdの増加にともなって減少する。スロットル開度マップm01は、車速spd、アクセル開度paとスロットル開度taとの関係が予め設定され、記憶部51bに格納されている。目標スロットル開度算出部111は、このスロットル開度マップm01に基づいて、アクセル開度pa、車速spdから目標スロットル開度tatgtを求める。目標スロットル開度算出部111は、算出した目標スロットル開度tatgtをエンジン制御部120へ出力する。
なお、本実施形態では、目標スロットル開度算出部111は、スロットル開度マップm01を用いて目標スロットル開度tatgtを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。目標スロットル開度算出部111は、例えば、スロットル開度マップm01に相当する数式に基づいて目標スロットル開度tatgtを求めてもよい。以下で説明する種々のマップについても同様である。
そして、エンジン制御部120は、目標制御量算出部110をなす目標スロットル開度算出部111が算出したこの目標スロットル開度tatgtに基づいて、エンジン10の出力制御を行う。エンジン制御部120は、スロットル開度センサ55により検出された現在の実際のスロットル開度が目標スロットル開度算出部111から入力された目標スロットル開度tatgtとなるように、すなわち、現在の実際のスロットル開度taが目標スロットル開度tatgtに収束するように、エンジン10の電子スロットル装置40の駆動を制御し、エンジン10から取り出される出力(エンジントルク、エンジン回転数)を制御する。
動作点判定部112は、エンジン10の動作点の状態を判定するものである。このエンジン10の動作点は、エンジントルクとエンジン回転数とに応じて定まるものである。本実施形態の動作点判定部112は、現在のエンジントルクと現在のエンジン回転数とに応じた現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にあるか否かを判定するものである。
ここで、図5は、駆動力制御装置100が制御するエンジン10の動作特性を示す図であり、横軸をエンジン回転数neとし、縦軸をエンジントルクteとしている。図5中、実線は最適燃費線L、点線は等燃費線E1、E2、E3、一点鎖線は等出力線P1、P2、P3、P4、二点差線は最適燃費帯Xの最適燃費帯上限Lmax、最適燃費帯下限Lminを示す。
最適燃費線Lは、エンジン10を最適な燃費で(効率良く)運転できるエンジン10の動作点の集合である。すなわち、最適燃費線Lは、最も燃費良く、すなわち、最もエンジン効率(機関効率)良くエンジン10を運転できるエンジントルクteとエンジン回転数neとの関係を表すものである。ここで燃費とは、単位仕事量あたりの燃料消費量をいい、車両1が単位距離を走行するために必要な燃料量、あるいは、車両1が単位燃料量で走行できる距離に相当するものである。つまり、最適燃費線Lは、エンジン10を搭載した車両1が単位燃料量で走行できる距離を優先してエンジン10を運転できるエンジン回転数neとエンジントルクteとに基づいて設定され、エンジン10の出力特性に応じて定まるものである。
そして、最適燃費線Lを基準として設定される最適燃費帯Xは、最適燃費線Lに対して所定のヒステリシス幅αを有して設定される領域であり、上限Lmaxが最適燃費帯Xの上限、下限Lminが最適燃費帯Xの下限をなす。最適燃費帯Xは、最適燃費線Lに対して、走行できる距離の低下、すなわち、燃費の低下が所定のヒステリシス幅αに応じた所定範囲内の領域として設定される。この所定のヒステリシス幅αは、例えば、運転時における運転者の違和感の抑制や燃費低下の抑制などを勘案して、これらを両立できる範囲に応じて適宜設定されればよい。本実施形態の最適燃費帯Xは、最適燃費線Lに対する所定のヒステリシス幅αが予め設定されており、例えば最適燃費線Lに対する燃費低下が5%以内の領域として設定される。なお、後述する他の実施形態では、この所定のヒステリシス幅α、言い換えれば、最適燃費帯Xを車両1の状態に応じて可変としている。
なお、等燃費線E1、E2、E3は、燃費(エンジン10の効率)が等しくなるエンジン10の動作点である。エンジン10の動作点、すなわち、エンジントルクとエンジン回転数との組み合わせが同一の等燃費線E1、E2、E3上にある場合は、エンジン10の燃費が等しくなる。等出力線P1、P2、P3、P4は、エンジン10の出力(パワー)が等しくなるエンジン10の動作点の集合である。エンジン10の動作点、すなわち、エンジントルクとエンジン回転数との組み合わせが同一の等出力線P1、P2、P3、P4上にある場合は、エンジン10の出力(パワー)が等しくなる。
そして、動作点判定部112は、エンジン10から現在のエンジントルクteと現在のエンジン回転数neが入力される。動作点判定部112は、クランク角センサ57から入力される検出信号に応じて現在のエンジン回転数neを取得する。また、動作点判定部112は、エンジン10に取り付けられた種々のセンサから入力される検出信号に応じて現在のエンジントルクteを取得する。動作点判定部112は、例えば、エンジン回転数neや吸入空気量(ディーゼルエンジンの場合は燃料噴射量)などに基づいて種々の公知の手法で現在のエンジントルクteを取得すればよい。
動作点判定部112は、入力された現在のエンジントルクteと現在のエンジン回転数neとに応じた現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯X内にあるか否かを判定する。動作点判定部112は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯X内にあるか否かの判定結果を調停部113へ出力する。
調停部113は、動作点判定部112から入力された判定結果に基づいて、算出用のアクセル開度paである算出用アクセル開度papを調停するものである。この調停部113が調停する算出用アクセル開度papは、後述する目標エンジン回転数算出部114で目標エンジン回転数netgtを算出する際に適用されるアクセル開度である。つまり、後述する目標エンジン回転数算出部114は、この算出用アクセル開度papに基づいて目標エンジン回転数netgtを算出する。
調停部113は、現在のエンジントルクteと現在のエンジン回転数neとに応じた現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯X外にある場合、例えば、現在のエンジン10の動作点が図5の動作点Aである場合には、アクセル開度センサ56から入力される検出信号に応じた現在のアクセル開度paを算出用アクセル開度papに設定し目標エンジン回転数算出部114へ出力する。
一方、調停部113は、現在のエンジントルクteと現在のエンジン回転数neとに応じた現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯X内にある場合、例えば、現在のエンジン10の動作点が図5の動作点Bである場合には、アクセル開度センサ56から入力される検出信号に応じた現在のアクセル開度paを用いずに、アクセル開度paの変化がないものとして算出用アクセル開度papを設定し目標エンジン回転数算出部114へ出力する。調停部113は、例えば、算出用アクセル開度papを一定に保持することで、アクセル開度paの変化がなかったものとして算出用アクセル開度papを設定する。さらに言えば、調停部113は、例えば、記憶部51bに記憶されている前回の制御周期における算出用アクセル開度pap(前回値)を今回の制御周期における算出用アクセル開度papに設定することで、アクセル開度paの変化がなかったものとして算出用アクセル開度papを設定し、この算出用アクセル開度papを目標エンジン回転数算出部114へ出力する。
目標エンジン回転数算出部114は、変速機目標制御量として目標エンジン回転数を算出するものである。目標エンジン回転数算出部114は、運転者による車両1に対する駆動力要求操作(加速要求操作)の操作量に相当し、運転者が車両1に要求する要求駆動量に相当するアクセル開度(アクセル操作量)に基づいて、目標エンジン回転数netgtを算出する。さらに具体的には、目標エンジン回転数算出部114は、調停部113から現在のエンジン10の動作点の判定結果に応じて調停された算出用アクセル開度papが入力され、車輪速度センサ62から検出信号に応じて車両1の車速spdが入力され、この算出用アクセル開度papと車速spdとに基づいて目標エンジン回転数netgtを算出する。
目標エンジン回転数算出部114は、例えば、図6に示すエンジン回転数マップm02に基づいて、目標エンジン回転数netgtを求める。このエンジン回転数マップm02は、横軸が車速spd、縦軸がエンジン回転数neを示す。エンジン回転数マップm02は、各アクセル開度paにおける車速spdとエンジン回転数neとの関係を記述したものである。このエンジン回転数マップm02では、エンジン回転数neは、アクセル開度paの増加にともなって増加し、車速spdの増加にともなって増加する。エンジン回転数マップm02は、車速spd、アクセル開度paとエンジン回転数neとの関係が予め設定され、記憶部51bに格納されている。目標エンジン回転数算出部114は、このエンジン回転数マップm02に基づいて、算出用アクセル開度pap、車速spdから目標エンジン回転数netgtを求める。目標エンジン回転数算出部114は、算出した目標エンジン回転数netgtを変速機制御部130へ出力する。
そして、変速機制御部130は、目標制御量算出部110をなす目標エンジン回転数算出部114が算出したこの目標エンジン回転数netgtに基づいて、変速機3の変速制御を行う。変速機制御部130は、クランク角センサ57により検出された現在の実際のエンジン回転数が目標エンジン回転数算出部114から入力された目標エンジン回転数netgtとなるように、すなわち、現在の実際のエンジン回転数neが目標エンジン回転数netgtに収束するように、変速機3の変速比(変速機3が有段変速機である場合には変速段)を制御する。
つまり、目標制御量算出部110は、エンジン10の動作点が最適燃費帯外にある場合、内燃機関目標制御量である目標スロットル開度tatgtと変速機目標制御量である目標エンジン回転数netgtとの両方を現在の実際のアクセル開度paに基づいて算出する。これに対して、目標制御量算出部110は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合、内燃機関目標制御量である目標スロットル開度tatgtを現在の実際のアクセル開度paに基づいて算出する一方、変速機目標制御量である目標エンジン回転数netgtを現在の実際のアクセル開度paではなく、前回の制御周期で用いたアクセル開度paに基づいて算出する。
上記のように構成される駆動力制御装置100は、動作点判定部112により現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯外にあると判定した場合に、調停部113が現在の実際のアクセル開度paを算出用アクセル開度papとして設定し、目標エンジン回転数算出部114がこの現在の実際のアクセル開度paである算出用アクセル開度papに基づいて目標エンジン回転数netgtを算出する。この結果、駆動力制御装置100は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯外にある場合に変速機制御部130がこの現在の実際のアクセル開度paに応じて変動する目標エンジン回転数netgtに基づいて、実際のエンジン回転数neが目標エンジン回転数netgtとなるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、通常の変速制御を実行することができる。
一方、駆動力制御装置100は、動作点判定部112により現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にあると判定した場合に、調停部113が算出用アクセル開度papとして前回値を設定し、目標エンジン回転数算出部114がこの前回値の算出用アクセル開度papに基づいて目標エンジン回転数netgtを算出することで、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、目標制御量算出部110によりアクセル開度の変化が無いものとして目標エンジン回転数netgtを算出することができ、言い換えれば、目標エンジン回転数netgtをほぼ一定に保持することができる。つまり、駆動力制御装置100は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、アクセル開度センサ56が検出したアクセル開度の変化が無いものとして目標エンジン回転数を算出することができる。
この結果、駆動力制御装置100は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に変速機制御部130がこのほぼ一定に保持された目標エンジン回転数netgtに基づいて、実際のエンジン回転数neが目標エンジン回転数netgtとなるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合において、実際のエンジン回転数をほぼ一定に保持してこの実際のエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行ことができる。
したがって、駆動力制御装置100は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合においてエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行ことから、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、不必要な変速を抑制しエンジン10の回転変動を抑制することができる。駆動力制御装置100は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、不必要なエンジン10の回転変動を抑制することができることから、動作点が最適燃費線上からずれることによるエンジン10のエンジン効率(機関効率)の悪化、すなわち、燃費の悪化が過大にならない範囲で、エンジン10の回転変動、言い換えれば、変速機3への入力軸の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)トルク分の動力損失を抑制することができ、イナーシャトルク分の燃料消費量を抑制することができる。
この結果、駆動力制御装置100は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、エンジン10のエンジン効率(燃費)が悪化しすぎない範囲でエンジン10の回転変動に伴うイナーシャトルク分の損失を抑制することができることから、例えば、予め設定された変速線上の動作点で変速比を制御しエンジン回転数を制御する場合と比較して、車両1の駆動系全体での効率、すなわち、燃費をさらに向上することができる。言い換えれば、駆動力制御装置100は、エンジン10のエンジン効率が多少悪化してでもイナーシャトルク分の損失を抑制した方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができる場合として、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、エンジン10の回転変動に伴うイナーシャトルク分の損失を抑制することで、結果的に、車両1の駆動系全体での効率を向上することができる。つまり、駆動力制御装置100は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行することで、エンジン効率の悪化を抑制しつつエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を抑制することができ、すなわち、エンジン効率の悪化抑制とエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失抑制とを両立することができ、車両1の駆動系全体での効率を向上することができる。
また例えば、アクセル開度に対して所定のヒステリシス幅を設定し、この範囲内ではアクセル開度の変化が無かったようにアクセル開度を保持して目標エンジン回転数(あるいは目標変速比)の算出に反映させ目標エンジン回転数を保持することで変速ビジーを防止し運転フィーリングの悪化を抑制する場合、結果的にエンジン効率が悪い運転領域の動作点でエンジン10が運転されてしまうおそれもある。例えば、アクセル開度が低下した上で、この低下したアクセル開度が上記アクセル開度に対する所定のヒステリシス幅内に収まっていた場合、アクセル開度の低下に伴って、エンジントルクを制御するための制御量であるスロットル開度は低下するのに対して、(目標)エンジン回転数はアクセル開度の低下にかかわらずほぼ一定に保持されてしまう。ここで、一般的なエンジンは、低回転高負荷域でのエンジン効率が比較的に良い一方、高回転低負荷域でのエンジン効率が比較的に悪い傾向にある。このため、上記のようにアクセル開度の低下に対して、スロットル開度が低下しエンジンの動作点が低負荷域側に移動する一方、エンジン回転数がほぼ一定に保持されエンジンの動作点が高回転域側で保持されることで、結果的にエンジン効率が悪い高回転低負荷域の動作点でエンジンが運転されてしまうおそれもある。
これに対して、本実施形態の駆動力制御装置100は、アクセル開度(あるいはスロットル開度など)自体にヒステリシス幅を設けるのではく、最適燃費線を基準としてエンジン効率の悪化代が所定範囲内である所定のヒステリシス幅を設け、この領域を最適燃費帯とし、エンジン10の動作点がこの最適燃費帯内にある場合に、エンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行するようにしている。この結果、本実施形態の駆動力制御装置100は、例えば、上述のようにエンジン効率が悪い高回転低負荷域でエンジン10が運転されることを防止した上で、エンジン効率の悪化抑制とエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失抑制とを両立することができ、よって、車両1の駆動系全体での効率を向上することができる。
また、駆動力制御装置100は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合において不必要なエンジン10の回転変動を抑制することができることから、不要な変速を抑制し、すなわち、変速の頻度を抑制して変速ビジーを抑制し、ドライバビリティを向上することもできる。
次に、図7のフローチャート及び図8のタイムチャートを参照して、本実施形態に係る駆動力制御装置100として兼用されるECU51の駆動力制御、特に駆動力制御における変速制御を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、駆動力制御装置100として兼用されるECU51は、動作点判定部112が種々のセンサから入力される検出信号に基づいて、エンジントルクとエンジン回転数とに応じたエンジン10の動作点が最適燃費帯内にあるか否かを判定する(S100)。
駆動力制御装置100として兼用されるECU51は、動作点判定部112によりエンジン10の動作点が最適燃費帯内にないと判定した場合(S100:No)、調停部113が現在の実際のアクセル開度paを算出用アクセル開度papとして設定し、目標エンジン回転数算出部114がこの現在の実際のアクセル開度paである算出用アクセル開度papに基づいて目標エンジン回転数netgtを算出する。そして、駆動力制御装置100は、変速機制御部130がこの現在の実際のアクセル開度paに応じて変動する目標エンジン回転数netgtに基づいて、通常の変速制御を実行し(S102)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
一方、駆動力制御装置100として兼用されるECU51は、動作点判定部112によりエンジン10の動作点が最適燃費帯内にあると判定した場合(S100:Yes)、アクセル開度の変化が無いものと仮定して調停部113が算出用アクセル開度papとして前回値を設定し、目標エンジン回転数算出部114がこの前回値の算出用アクセル開度papに基づいて目標エンジン回転数netgtを算出する。そして、駆動力制御装置100は、変速機制御部130が前回値で一定に保持された算出用アクセル開度papに応じて算出される目標エンジン回転数netgtに基づいて、回転変動抑制変速制御を実行し(S104)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
この結果、図8に例示するように、駆動力制御装置100は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合、例えば、図中の時刻t1から時刻t3までの期間において、実際のアクセル開度paの変動に対して算出用アクセル開度papが一定に保持され回転変動抑制変速制御が実行されることで、図中の時刻t2から時刻t3までの期間において、エンジン10のエンジン回転数neの変動が抑制される。
以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置100によれば、車両1に対する駆動力要求操作の操作量としてのアクセル開度に基づいて、この車両1に搭載されるエンジン10が発生させるエンジントルク(機関トルク)とこのエンジン10のエンジン回転数(機関回転速度)とを制御して車両1の駆動力を制御する駆動力制御装置100において、エンジントルクとエンジン回転数とに応じたエンジン10の動作点がエンジン10の最適燃費線に対して所定のヒステリシス幅を有して設定される領域である最適燃費帯内にある場合に、エンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制制御を実行する。
したがって、駆動力制御装置100は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行することで、エンジン効率の悪化を抑制しつつエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を抑制することができ、エンジン効率の悪化抑制とエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失抑制とを両立することができるので、車両1の駆動系全体での効率を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置100によれば、アクセル開度に基づいて、エンジン10の目標スロットル開度(内燃機関目標制御量)とこのエンジン10の回転出力が伝達されエンジン回転速度を変速する変速機3の目標エンジン回転数(変速機目標制御量)とを算出する目標制御量算出部110と、目標スロットル開度に基づいてエンジン10の出力制御を行うエンジン制御部120と、目標エンジン回転数に基づいて変速機3の変速制御を行う変速機制御部130とを備え、目標制御量算出部110は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、アクセル開度の変化が無いものとして、目標エンジン回転数を算出する。したがって、駆動力制御装置100は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、目標制御量算出部110がアクセル開度の変化が無いものとして目標エンジン回転数を算出することから、変速機制御部130がこの目標エンジン回転数に基づいて、実際のエンジン回転数neが目標エンジン回転数となるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行することができ、実際のエンジン回転数をほぼ一定に保持することができる。
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係る駆動力制御装置の概略構成図である。実施形態2に係る駆動力制御装置は、実施形態1に係る駆動力制御装置と略同様の構成であるが目標制御量算出手段の構成が実施形態1に係る駆動力制御装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の駆動力制御装置200は、図9に示すように、機能概念的に、目標制御量算出手段としての目標制御量算出部210と、機関制御手段としてのエンジン制御部120と、変速制御手段としての変速機制御部130とが設けられている。
本実施形態の目標制御量算出部210は、現在の実際のアクセル開度paに基づいて仮の目標エンジン回転数netgt’を算出した後に、エンジン10の動作点が最適燃費帯X内にあるか否かに応じて変速制御に実際に用いる目標エンジン回転数netgtを調停する点で上述の目標制御量算出部110(図3参照)とは異なる。
本実施形態の目標制御量算出部210は、内燃機関目標制御量として目標のスロットル開度である目標スロットル開度を算出し、変速機目標制御量として目標のエンジン回転数である目標エンジン回転数を算出する。
そして、本実施形態の目標制御量算出部210は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、アクセル開度の変化が無いものとして算出用のアクセル開度paを一定に保持するかわりに、変速機目標制御量である目標エンジン回転数netgt自体を一定に保持するように構成される。変速機制御部130は、この目標エンジン回転数に基づいて、実際のエンジン回転数が目標エンジン回転数となるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行する。
具体的には、本実施形態の目標制御量算出部210は、目標スロットル開度算出部211と、動作点判定部212と、目標エンジン回転数算出部213と、調停部214とを含んで構成される。
目標スロットル開度算出部211は、現在の実際のアクセル開度に基づいて、目標スロットル開度tatgtを算出する。そして、エンジン制御部120は目標スロットル開度算出部211が算出したこの目標スロットル開度tatgtに基づいて、エンジン10の出力制御を行う。動作点判定部212は、現在のエンジントルクと現在のエンジン回転数とに応じた現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にあるか否かを判定する。
そして、本実施形態の目標エンジン回転数算出部213は、変速機目標制御量として仮の目標エンジン回転数netgt’を算出するものである。目標エンジン回転数算出部213は、運転者による車両1に対する駆動力要求操作(加速要求操作)の操作量に相当し、運転者が車両1に要求する要求駆動量に相当するアクセル開度(アクセル操作量)に基づいて、仮の目標エンジン回転数netgt’を算出する。目標エンジン回転数算出部213は、アクセル開度センサ56が検出する現在の実際のアクセル開度paに基づいて仮の目標エンジン回転数netgt’を算出する。
目標エンジン回転数算出部213は、アクセル開度センサ56から検出信号に応じて現在の実際のアクセル開度paが入力され、車輪速度センサ62から検出信号に応じて現在の実際の車速spdが入力され、このアクセル開度paと車速spdとに基づいて仮の目標エンジン回転数netgt’を算出する。
目標エンジン回転数算出部213は、例えば、図6に示したエンジン回転数マップm02に基づいて、現在のアクセル開度pa、現在の車速spdから仮の目標エンジン回転数netgt’を求める。目標エンジン回転数算出部213は、算出した仮の目標エンジン回転数netgt’を調停部214へ出力する。
調停部214は、動作点判定部212から入力された判定結果に基づいて、変速制御に実際に用いる目標エンジン回転数netgtを調停するものである。調停部214は、現在のエンジントルクteと現在のエンジン回転数neとに応じた現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯X外にある場合には、目標エンジン回転数算出部213から入力された現在のアクセル開度paに応じた仮の目標エンジン回転数netgt’を実際の目標エンジン回転数netgtに設定しこの目標エンジン回転数netgtを変速機制御部130へ出力する。
一方、調停部214は、現在のエンジントルクteと現在のエンジン回転数neとに応じた現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯X内にある場合には、目標エンジン回転数算出部213から入力された現在のアクセル開度paに応じた仮の目標エンジン回転数netgt’を用いずに、目標エンジン回転数netgtを一定に保持する。さらに言えば、調停部214は、例えば、記憶部51bに記憶されている前回の制御周期における目標エンジン回転数netgt(前回値)を今回の制御周期における目標エンジン回転数netgtに設定することで、目標エンジン回転数netgtを一定に保持し、この目標エンジン回転数netgtを変速機制御部130へ出力する。
そして、変速機制御部130は、目標制御量算出部210をなす調停部113により現在のエンジン10の動作点の判定結果に応じて調停した目標エンジン回転数netgtが入力され、この目標エンジン回転数netgtに基づいて、変速機3の変速制御を行う。
つまり、目標制御量算出部210は、エンジン10の動作点が最適燃費帯外にある場合、内燃機関目標制御量である目標スロットル開度tatgtと変速機目標制御量である目標エンジン回転数netgtとの両方を現在の実際のアクセル開度paに基づいて算出する。これに対して、目標制御量算出部210は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合、内燃機関目標制御量である目標スロットル開度tatgtを現在の実際のアクセル開度paに基づいて算出する一方、変速機目標制御量である目標エンジン回転数netgtを現在の実際のアクセル開度paに基づいて算出するのではなく、前回の制御周期で用いた目標エンジン回転数netgtを用いる。
上記のように構成される駆動力制御装置200は、動作点判定部212により現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯外にあると判定した場合に、調停部214が現在の実際のアクセル開度paに応じた仮の目標エンジン回転数netgt’を実際の目標エンジン回転数netgtに設定する。この結果、駆動力制御装置200は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯外にある場合に変速機制御部130がこの現在の実際のアクセル開度paに応じて変動する目標エンジン回転数netgtに基づいて、実際のエンジン回転数neが目標エンジン回転数netgtとなるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、通常の変速制御を実行することができる。
一方、駆動力制御装置200は、動作点判定部212により現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にあると判定した場合に、調停部113が目標エンジン回転数netgtとして前回値を設定することで、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、目標制御量算出部110により前回値で一定に保持した目標エンジン回転数netgtを算出することができる。つまり、駆動力制御装置200は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、目標エンジン回転数netgtをほぼ一定に保持することができる。
この結果、駆動力制御装置200は、現在のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に変速機制御部130がこのほぼ一定に保持された目標エンジン回転数netgtに基づいて、実際のエンジン回転数neが目標エンジン回転数netgtとなるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合において、実際のエンジン回転数をほぼ一定に保持してこの実際のエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行することができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置200によれば、駆動力制御装置200は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行することで、エンジン効率の悪化を抑制しつつエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を抑制することができ、エンジン効率の悪化抑制とエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失抑制とを両立することができるので、車両1の駆動系全体での効率を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置200によれば、アクセル開度に基づいて、エンジン10の目標スロットル開度(内燃機関目標制御量)とこのエンジン10の回転出力が伝達されエンジン回転速度を変速する変速機3の目標エンジン回転数(変速機目標制御量)とを算出する目標制御量算出部210と、目標スロットル開度に基づいてエンジン10の出力制御を行うエンジン制御部120と、目標エンジン回転数に基づいて変速機3の変速制御を行う変速機制御部130とを備え、目標制御量算出部210は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、目標エンジン回転数を保持する。したがって、駆動力制御装置200は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、目標制御量算出部210がアクセル開度の変化にかかわらず目標エンジン回転数をほぼ一定に保持することから、変速機制御部130がこの目標エンジン回転数に基づいて、実際のエンジン回転数neが目標エンジン回転数となるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行ことができ、実際のエンジン回転数をほぼ一定に保持することができる。
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3に係る駆動力制御装置の概略構成図、図11は、本発明の実施形態3に係る駆動力制御装置の駆動力マップである。実施形態3に係る駆動力制御装置は、実施形態1に係る駆動力制御装置と略同様の構成であるが目標制御量算出手段の構成が実施形態1に係る駆動力制御装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の駆動力制御装置300は、図10に示すように、機能概念的に、目標制御量算出手段としての目標制御量算出部310と、機関制御手段としてのエンジン制御部120と、変速制御手段としての変速機制御部130とが設けられている。
本実施形態の目標制御量算出部310は、エンジン10の現在の動作点にかえて、エンジン10の目標の動作点が最適燃費帯X内にあるか否かに応じて回転変動抑制変速制御を実行する点で上述の目標制御量算出部110(図3参照)、目標制御量算出部210(図9参照)とは異なる。
本実施形態の目標制御量算出部310は、内燃機関目標制御量として目標のエンジントルクである目標エンジントルクを算出し、変速機目標制御量として目標のエンジン回転数である目標エンジン回転数を算出する。
そして、本実施形態の目標制御量算出部310は、エンジン10の目標の動作点が最適燃費帯内にある場合に、変速機目標制御量である目標エンジン回転数netgt自体を一定に保持するように構成される。変速機制御部130は、この目標エンジン回転数に基づいて、実際のエンジン回転数が目標エンジン回転数となるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、エンジン10の目標の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行する。
具体的には、本実施形態の目標制御量算出部310は、目標駆動力算出部311と、目標出力算出部312と、目標エンジントルク算出部313と、目標エンジン回転数算出部314と、動作点判定部315と、調停部316とを含んで構成される。
目標駆動力算出部311は、現在の実際のアクセル開度に基づいて、車両1が目標とする駆動力である目標駆動力Ftgtを算出するものである。目標駆動力算出部311は、アクセル開度センサ56から検出信号に応じてアクセル開度paが入力され、車輪速度センサ62から検出信号に応じて車両1の車速spdが入力され、この現在のアクセル開度paと現在の車速spdとに基づいて目標駆動力Ftgtを算出する。目標駆動力Ftgtは、運転者が車両1に要求する要求駆動力を実現するための車両1の目標の駆動力である。
目標駆動力算出部311は、例えば、図11に示す駆動力マップm03に基づいて、目標駆動力Ftgtを求める。この駆動力マップm03は、横軸が車速spd、縦軸が駆動力Fを示す。駆動力マップm03は、各アクセル開度paにおける車速spdと駆動力Fとの関係を記述したものである。この駆動力マップm03では、駆動力Fは、車速spdの増加にともなって減少しアクセル開度paの増加にともなって増加する。駆動力マップm03は、車速spd、アクセル開度paと駆動力Fとの関係が予め設定され、記憶部51bに格納されている。目標駆動力算出部311は、この駆動力マップm03に基づいて、アクセル開度pa、車速spdから目標駆動力Ftgtを求める。目標駆動力算出部311は、算出した目標駆動力Ftgtを目標出力算出部312へ出力する。
目標出力算出部312は、目標駆動力と現在の実際の車速とに基づいて、車両1が搭載するエンジン10が目標とする出力である目標出力petgtを算出するものである。目標出力算出部312は、目標駆動力算出部311から目標駆動力Ftgtが入力され、車輪速度センサ62から検出信号に応じて車両1の車速spdが入力され、この目標駆動力Ftgtと現在の車速spdとに基づいて目標出力petgtを算出する。目標出力petgtは、車両1が目標駆動力Ftgtを得るためのエンジン10の目標の出力であり、すなわち、運転者が車両1に要求する要求駆動力に対応した車両1の目標駆動力Ftgtを実現するためのエンジン10の目標の出力である。目標出力算出部312は、例えば、目標駆動力算出部311から入力された目標駆動力Ftgtと車輪速度センサ62から入力された現在の車速spdとの乗算によりエンジン10の目標出力petgt(目標出力petgt=目標駆動力Ftgt×車速spd)を算出する。目標出力算出部312は、算出した目標出力petgtを目標エンジントルク算出部313へ出力する。
ここで、目標エンジン回転数算出部314は、変速機目標制御量として仮の目標エンジン回転数netgt’を算出するものである。目標エンジン回転数算出部314は、アクセル開度センサ56から検出信号に応じて現在の実際のアクセル開度paが入力され、車輪速度センサ62から検出信号に応じて現在の実際の車速spdが入力され、このアクセル開度paと車速spdとに基づいて仮の目標エンジン回転数netgt’を算出する。目標エンジン回転数算出部314は、例えば、図6に示したエンジン回転数マップm02に基づいて、現在のアクセル開度pa、現在の車速spdから仮の目標エンジン回転数netgt’を求める。目標エンジン回転数算出部314は、算出した仮の目標エンジン回転数netgt’を目標エンジントルク算出部313へ出力すると共に、動作点判定部315へも出力する。さらに、目標エンジン回転数算出部314は、算出した仮の目標エンジン回転数netgt’を調停部316へも出力する。
目標エンジントルク算出部313は、目標出力petgtと仮の目標エンジン回転数netgt’とに基づいて、内燃機関目標制御量として、目標のエンジントルクである目標エンジントルクtetgtを算出するものである。目標エンジントルク算出部313は、目標出力算出部312から目標出力petgtが入力され、目標エンジン回転数算出部314から仮の目標エンジン回転数netgt’が入力され、この目標出力petgtと仮の目標エンジン回転数netgt’とに基づいて目標エンジントルクtetgtを算出する。目標エンジントルクtetgtは、エンジン10が目標出力petgtを得るためのエンジン10の目標のエンジントルクであり、仮の目標エンジン回転数netgt’で目標出力petgtを実現することができるエンジントルクである。目標エンジントルク算出部313は、例えば、目標出力算出部312から入力された目標出力petgtを目標エンジン回転数算出部314から入力された仮の目標エンジン回転数netgt’で除算することでエンジン10の目標エンジントルクtetgt(目標エンジントルクtetgt=目標出力petgt/仮の目標エンジン回転数netgt’)を算出する。目標エンジントルク算出部313は、算出した目標エンジントルクtetgtをエンジン制御部120へ出力すると共に、動作点判定部315へも出力する。
そして、エンジン制御部120は、目標制御量算出部310をなす目標エンジントルク算出部313が算出したこの目標エンジントルクtetgtに基づいて、エンジン10の出力制御を行う。
本実施形態の動作点判定部315は、目標のエンジントルクと目標のエンジン回転数とに応じた目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にあるか否かを判定するものである。動作点判定部315は、目標エンジントルク算出部313から目標エンジントルクtetgtが入力され、目標エンジン回転数算出部314から仮の目標エンジン回転数netgt’が入力される。動作点判定部315は、入力された目標エンジントルクtetgtと仮の目標エンジン回転数netgt’とに応じた目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯X内にあるか否かを判定する。動作点判定部315は、目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯X内にあるか否かの判定結果を調停部316へ出力する。
調停部316は、動作点判定部315から入力された判定結果に基づいて、変速制御に実際に用いる目標エンジン回転数netgtを調停するものである。調停部316は、目標エンジントルクtetgtと仮の目標エンジン回転数netgt’とに応じた目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯X外にある場合には、目標エンジン回転数算出部314から入力された現在のアクセル開度paに応じた仮の目標エンジン回転数netgt’を実際の目標エンジン回転数netgtに設定しこの目標エンジン回転数netgtを変速機制御部130へ出力する。
一方、調停部316は、目標エンジントルクtetgtと仮の目標エンジン回転数netgt’とに応じた目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯X内にある場合には、目標エンジン回転数算出部314から入力された現在のアクセル開度paに応じた仮の目標エンジン回転数netgt’を用いずに、目標エンジン回転数netgtを一定に保持する。さらに言えば、調停部316は、例えば、記憶部51bに記憶されている前回の制御周期おける目標エンジン回転数netgt(前回値)を今回の制御周期における目標エンジン回転数netgtに設定することで、目標エンジン回転数netgtを一定に保持し、この目標エンジン回転数netgtを変速機制御部130へ出力する。
そして、変速機制御部130は、目標制御量算出部310をなす調停部316により目標のエンジン10の動作点の判定結果に応じて調停した目標エンジン回転数netgtが入力され、この目標エンジン回転数netgtに基づいて、変速機3の変速制御を行う。
つまり、目標制御量算出部310は、目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯外にある場合、内燃機関目標制御量である目標エンジントルクtetgtと変速機目標制御量である目標エンジン回転数netgtとの両方を現在の実際のアクセル開度paに基づいて算出する。これに対して、目標制御量算出部310は、目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合、内燃機関目標制御量である目標エンジントルクtetgtを現在の実際のアクセル開度paに基づいて算出する一方、変速機目標制御量である目標エンジン回転数netgtを現在の実際のアクセル開度paに基づいて算出するのではなく、前回の制御周期で用いた目標エンジン回転数netgtを用いる。
上記のように構成される駆動力制御装置300は、動作点判定部315により目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯外にあると判定した場合に、調停部316が現在の実際のアクセル開度paに応じた仮の目標エンジン回転数netgt’を実際の目標エンジン回転数netgtに設定する。この結果、駆動力制御装置300は、目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯外にある場合に変速機制御部130がこの現在の実際のアクセル開度paに応じて変動する目標エンジン回転数netgtに基づいて、実際のエンジン回転数neが目標エンジン回転数netgtとなるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、通常の変速制御を実行することができる。
一方、駆動力制御装置300は、動作点判定部315により目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にあると判定した場合に、調停部113が目標エンジン回転数netgtとして前回値を設定することで、目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、目標制御量算出部110により前回値で一定に保持した目標エンジン回転数netgtを算出することができる。つまり、駆動力制御装置300は、目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に、目標エンジン回転数netgtをほぼ一定に保持することができる。
この結果、駆動力制御装置300は、目標のエンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合に変速機制御部130がこのほぼ一定に保持された目標エンジン回転数netgtに基づいて、実際のエンジン回転数neが目標エンジン回転数netgtとなるように変速機3の変速比を制御し変速制御を実行することで、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合において、実際のエンジン回転数をほぼ一定に保持してこの実際のエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行ことができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置300によれば、駆動力制御装置300は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行することで、エンジン効率の悪化を抑制しつつエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を抑制することができ、エンジン効率の悪化抑制とエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失抑制とを両立することができるので、車両1の駆動系全体での効率を向上することができる。また、この駆動力制御装置300は、エンジン10の目標の動作点が最適燃費帯内にあるか否かに応じて回転変動抑制変速制御を実行することから、エンジン10の目標の動作点に基づいて予測的に回転変動抑制変速制御を実行することができるので、車両1の駆動系全体での効率をさらに向上することができる。
(実施形態4)
図12は、本発明の実施形態4に係る駆動力制御装置を適用した車両を示す概略構成図、図13は、本発明の実施形態4に係る駆動力制御装置のヒステリシス幅設定制御を説明するフローチャートである。実施形態4に係る駆動力制御装置は、実施形態1に係る駆動力制御装置と略同様の構成であるが設定手段を備える点で実施形態1に係る駆動力制御装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の駆動力制御装置400は、図12に示すように、機能概念的に、目標制御量算出手段としての目標制御量算出部110と、機関制御手段としてのエンジン制御部120と、変速制御手段としての変速機制御部130とが設けられている。
さらに、本実施形態の駆動力制御装置400は、機能概念的に、設定手段としてのヒステリシス幅設定部440が設けられており、このヒステリシス幅設定部440が車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅α(図5参照)を適宜設定することで、車両1の駆動系全体での効率のさらなる向上を図っている。
具体的には、ヒステリシス幅設定部440は、車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するものである。すなわち、ヒステリシス幅設定部440は、車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。上述したように、この所定のヒステリシス幅αは、最適燃費線Lを基準として設定されるものであり、最適燃費帯Xは、最適燃費線Lに対してこのヒステリシス幅αを有して設定される領域である。このため、ヒステリシス幅設定部440は、車両1の状態に基づいてヒステリシス幅αを可変とすることで、最適燃費帯Xも車両1の状態に基づいて可変となる。
本実施形態のヒステリシス幅設定部440は、少なくともエンジン回転数の変動に伴う損失と、エンジン10のエンジン効率(機関効率)に基づいて、所定のヒステリシス幅αを設定する。このヒステリシス幅設定部440は、仮定損失算出部441と、実損失算出部442と、エンジン効率算出部443と、比較・決定部444とを含んで構成される
仮定損失算出部441は、エンジン10の動作点が最適燃費線L上にあると仮定した場合、すなわち、エンジン効率が最もよくなる最適燃費線L上の動作点でエンジン10を運転していたと仮定した場合のエンジン回転数の変動に伴う損失を算出するものである。このエンジン回転数の変動に伴う損失とは、典型的には、エンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)トルク分の動力損失である。
仮定損失算出部441は、エンジン10の動作点が最適燃費線L上にあると仮定した場合における仮定のエンジン回転数を算出し、予め設定された所定期間でのエンジン10の仮定の回転変動、すなわち、仮定のエンジン回転数の変動に伴うイナーシャトルク分の動力損失の総和を算出し、これを仮定損失量とする。エンジン10の回転変動に伴うイナーシャトルク分の動力損失は、種々の公知の手法により算出することができ、例えば、回転慣性質量と各速度変化などに基づいて算出できる。仮定損失算出部441は、例えば、予め設定された所定期間でのエンジン10の回転変動に伴うイナーシャトルク分の動力損失に対応した燃料消費量の総和を仮定損失量として算出する。
なおここでは、ヒステリシス幅設定部440は、仮定損失量や後述の実損失量、エンジン効率を燃料消費量の単位系にそろえて算出するものとして説明するがこれに限らず、これらを相互に比較できる単位に適宜そろえればよい。
実損失算出部442は、実際のエンジン10の動作点でのエンジン回転数の変動に伴う損失、すなわち、イナーシャ(回転慣性)トルク分の動力損失を算出するものである。実損失算出部442は、上記と同様の予め設定された所定期間でのエンジン10の実際のエンジン回転数の変動に伴うイナーシャトルク分の動力損失の総和を算出し、これを実損失量とする。実損失算出部442は、例えば、予め設定された所定期間でのエンジン10の実際の回転変動に伴うイナーシャトルク分の動力損失に対応した燃料消費量の総和を実損失量として算出する。
仮定損失算出部441が算出する仮定損失量と実損失算出部442が算出する実損失量との差の絶対値は、最適燃費線L上の動作点でエンジン10を運転していたと仮定した場合のエンジン回転数の変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失に対して、回転変動抑制変速制御を実行してエンジン回転数の変動を抑制した場合に、上記予め設定された所定期間において、実際に抑制できたイナーシャ(回転慣性)損失に応じた値に相当する。
なお、仮定損失算出部441、実損失算出部442は、エンジン10の回転変動に伴うイナーシャトルク分の動力損失に加えて、上記予め設定された所定期間における変速機3による変速に伴う動力損失の総和(動力損失に対応した燃料消費量の総和)も仮定損失量、実損失量にそれぞれ含めて算出するようにしてもよい。つまり、ヒステリシス幅設定部440は、エンジン10の回転出力が伝達される変速機3によるエンジン回転速度の変速に伴う動力損失に応じて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。変速機3による変速に伴う動力損失とは、変速機3の変速動作に伴う動力損失であり、変速機3の各種油圧室などに供給される作動油の油圧の大きさなどに応じて発生する動力損失である。この場合、仮定損失算出部441、実損失算出部442は、例えば、作動油の油圧や変速機3への入力トルクなどの運転状態と、変速に伴う動力損失に対応した燃料消費量との対応関係を予めマップ化しておき、各種センサの検出信号に応じてこのマップから適宜変速に伴う動力損失に対応した燃料消費量を算出すればよい。この場合、ヒステリシス幅設定部440は、仮定損失算出部441、実損失算出部442が所定期間における変速機3による変速に伴う動力損失の総和を仮定損失量、実損失量にそれぞれ含めて算出することで、所定のヒステリシス幅αを車両1の状態に基づいてより適正に設定することができ、すなわち、最適燃費帯Xを車両1の状態に基づいてより適正に設定できるので、結果的に車両1の駆動系全体での効率をさらに向上することができる。
エンジン効率算出部443は、エンジン10のエンジン効率を算出するものである。さらに言えば、エンジン効率算出部443は、エンジン10の動作点が最適燃費線L上にあると仮定した場合、すなわち、エンジン効率が最もよくなる最適燃費線L上の動作点でエンジン10を運転していたと仮定した場合の仮定のエンジン効率と、実際のエンジン10の動作点での実際のエンジン効率とを算出し、この仮定のエンジン効率と実際のエンジン効率との差を算出する。そして、エンジン効率算出部443は、上記と同様の予め設定された所定期間における仮定のエンジン効率と実際のエンジン効率との差の総和を算出し、これをエンジン効率悪化量とする。エンジン効率算出部443は、例えば、所定期間における仮定のエンジン効率と実際のエンジン効率との差に対応した燃料消費量の総和をエンジン効率悪化量として算出する。ここで、このエンジン効率は、種々の公知の手法により算出することができ、例えば、エンジン回転数とこれに対応するエンジントルクとに応じて消費される燃料消費量などに基づいて算出することができるがこれに限らない。
このエンジン効率算出部443が算出するエンジン効率悪化量は、最適燃費線L上の動作点でエンジン10を運転していたと仮定した場合のエンジン効率に対して、回転変動抑制変速制御を実行してエンジン回転数の変動を抑制することで、最適燃費線L上からずれた動作点でエンジン10を運転した場合の実際のエンジン効率の悪化に応じた値に相当する。
そして、比較・決定部444は、仮定損失算出部441が算出する仮定損失量と実損失算出部442が算出する実損失量との差の絶対値と、エンジン効率算出部443が算出するエンジン効率悪化量とを比較し、比較結果に応じて所定のヒステリシス幅αを設定するものである。比較・決定部444は、仮定損失量と実損失量との差の絶対値がエンジン効率悪化量より大きい場合にはヒステリシス幅αを相対的に増加させて設定する一方、仮定損失量と実損失量との差の絶対値がエンジン効率悪化量以下である場合にはヒステリシス幅αを相対的に減少させて設定する。比較・決定部444は、例えば、ヒステリシス幅αを相対的に増加させて設定する場合にはこのヒステリシス幅αを予め設定された所定量増加させ、ヒステリシス幅αを相対的に減少させて設定する場合にはこのヒステリシス幅αを予め設定された所定量減少させる。
つまり、比較・決定部444は、仮定損失量と実損失量との差の絶対値がエンジン効率悪化量より大きい場合、すなわち、回転変動抑制変速制御を実行することで実際に抑制できたイナーシャ(回転慣性)損失が最適燃費線L上からずれた動作点でエンジン10を運転した場合のエンジン効率の悪化より相対的に多くなり車両1の駆動系全体での効率を向上できる場合には、ヒステリシス幅αを相対的に増加させ、最適燃費帯Xを拡大し、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大させる。一方、比較・決定部444は、仮定損失量と実損失量との差の絶対値がエンジン効率悪化量以下である場合、すなわち、回転変動抑制変速制御を実行することで実際に抑制できたイナーシャ(回転慣性)損失が最適燃費線L上からずれた動作点でエンジン10を運転した場合のエンジン効率の悪化より相対的に少ない場合には、ヒステリシス幅αを相対的に減少させ、最適燃費帯Xを縮小し、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を縮小させる。
言い換えれば、比較・決定部444は、仮定損失量と実損失量との差の絶対値と、エンジン効率悪化量とを比較することで、エンジン効率を多少悪化させてでもエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を抑制する方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができるのか、エンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を許容してでもエンジン効率の悪化を抑制する方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができるのかを判定することができる。そして、比較・決定部444は、仮定損失量と実損失量との差の絶対値がエンジン効率悪化量より大きい場合、すなわち、エンジン効率を多少悪化させてでもエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を抑制する方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができる場合に、上述のようにヒステリシス幅αを相対的に増加させる。一方、比較・決定部444は、仮定損失量と実損失量との差の絶対値がエンジン効率悪化量以下である場合、すなわち、エンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を許容してでもエンジン効率の悪化を抑制する方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができる場合に、上述のようにヒステリシス幅αを相対的に減少させる。
なお、エンジン効率を多少悪化させてでも回転変動抑制変速制御を実行することでエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を抑制する方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができるような運転状態としては、例えば、運転者のアクセル操作によるアクセル開度の変動頻度が比較的に高い運転状態などがあげられる。エンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を許容してでもエンジン効率の悪化を抑制する方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができるような運転状態としては、例えば、運転者のアクセル操作によるアクセル開度の変動頻度が低い運転状態などがあげられる。
そして、目標制御量算出部110をなす本実施形態の動作点判定部112(図3参照)は、上記のようにしてヒステリシス幅設定部440の比較・決定部444によって設定されたヒステリシス幅αに応じた最適燃費帯X(図5参照)に基づいて、エンジン10の動作点が最適燃費帯X内にあるか否かを判定する。変速機制御部130は、エンジン10の動作点がこの最適燃費帯X内にある場合に、上述のようにしてエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行する。
上記のように構成される駆動力制御装置400は、ヒステリシス幅設定部440が車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定することから、最適燃費帯Xを実際の車両1の状態にあわせてより適正に設定できるので、車両1の駆動系全体での効率をさらに向上することができる。
すなわち、本実施形態の駆動力制御装置400は、ヒステリシス幅設定部440がエンジン回転数の変動に伴う損失とエンジン10のエンジン効率とに基づいて所定のヒステリシス幅αを設定することから、エンジン効率を多少悪化させてでもエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失を抑制する方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができるのか、エンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失を許容してでもエンジン効率の悪化を抑制する方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができるのかを判定することができ、この判定結果に基づいてヒステリシス幅αを設定することができる。
例えば、駆動力制御装置400は、運転者のアクセル操作によるアクセル開度の変動頻度が比較的に高い運転状態では、エンジン回転数の変動が大きくなり易くイナーシャ損失が大きくなり易い傾向にあるが、このような場合には、ヒステリシス幅αが相対的に増加され、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域である最適燃費帯Xが拡大されることから、エンジン効率を多少悪化させてでもエンジン10の回転変動を抑制しこれに伴うイナーシャ損失を抑制することで、車両1の駆動系全体での効率を向上することができる。またこの場合、エンジン10の回転変動を抑制することでエンジン騒音を抑制することができると共に、イナーシャトルクが抑制されることで運転者のアクセル操作に対する車両1の駆動力の応答性を向上することができる。
一方、駆動力制御装置400は、運転者のアクセル操作によるアクセル開度の変動頻度が比較的に低い運転状態では、エンジン回転数の変動が小さくイナーシャ損失自体が少なくなる傾向にあるため、このような場合には、ヒステリシス幅αが相対的に減少され、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域である最適燃費帯Xが縮小されることから、エンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失を許容してでもエンジン効率の悪化を抑制することで、車両1の駆動系全体での効率を向上することができる。
次に、図13のフローチャートを参照して、本実施形態に係る駆動力制御装置400として兼用されるECU51のヒステリシス幅設定制御を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、駆動力制御装置400のヒステリシス幅設定部440をなす仮定損失算出部441は、エンジン10の動作点が最適燃費線L上にあると仮定した場合、すなわち、エンジン効率が最もよくなる最適燃費線L上の動作点でエンジン10を運転していたと仮定した場合の予め設定された所定期間での仮定損失量Aを算出する(S400)。
次に、ヒステリシス幅設定部440をなす実損失算出部442は、上記と同様の予め設定された所定期間における実際のエンジン回転数の変動に伴う実損失量Bを算出する(S402)。
次に、ヒステリシス幅設定部440をなすエンジン効率算出部443は、上記と同様の予め設定された所定期間における仮定のエンジン効率と実際のエンジン効率との差の総和を算出しエンジン効率悪化量Cを算出する(S404)。
次に、ヒステリシス幅設定部440をなす比較・決定部444は、S400にて仮定損失算出部441が算出した仮定損失量AとS402にて実損失算出部442が算出した実損失量Bとの差の絶対値と、S404にてエンジン効率算出部443が算出するエンジン効率悪化量Cとを比較し、仮定損失量Aと実損失量Bとの差の絶対値がエンジン効率悪化量Cより大きいか否かを判定する(S406)。
比較・決定部444は、仮定損失量Aと実損失量Bとの差の絶対値がエンジン効率悪化量Cより大きいと判定した場合(S406:Yes)、ヒステリシス幅αを相対的に増加させ最適燃費帯Xを拡大して(S408)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
比較・決定部444は、仮定損失量Aと実損失量Bとの差の絶対値がエンジン効率悪化量C以下であると判定した場合(S406:No)、ヒステリシス幅αを相対的に減少させ最適燃費帯Xを縮小して(S410)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置400によれば、駆動力制御装置400は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行することで、エンジン効率の悪化を抑制しつつエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を抑制することができ、エンジン効率の悪化抑制とエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失抑制とを両立することができるので、車両1の駆動系全体での効率を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置400によれば、車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅を設定するヒステリシス幅設定部440を備える。したがって、駆動力制御装置400は、ヒステリシス幅設定部440が車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定することから、最適燃費帯Xを実際の車両1の状態にあわせてより適正に設定できるので、車両1の駆動系全体での効率をさらに向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置400によれば、ヒステリシス幅設定部440は、エンジン回転数の変動に伴う損失とエンジン10のエンジン効率とに基づいて、所定のヒステリシス幅を設定する。したがって、駆動力制御装置400は、ヒステリシス幅設定部440がエンジン回転数の変動に伴う損失とエンジン10のエンジン効率とに基づいて所定のヒステリシス幅αを設定することから、エンジン効率を多少悪化させてでもエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失を抑制する方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができるのか、エンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失を許容してでもエンジン効率の悪化を抑制する方が車両1の駆動系全体での効率を向上することができるのかを判定することができ、この判定結果に基づいてヒステリシス幅αを設定することができ、よって、車両1の駆動系全体での効率をさらに向上することができる。
(実施形態5)
図14は、本発明の実施形態5に係る駆動力制御装置を適用した車両を示す概略構成図、図15乃至図22は、本発明の実施形態5に係る駆動力制御装置のヒステリシス幅設定制御を説明するフローチャートである。実施形態5に係る駆動力制御装置は、実施形態4に係る駆動力制御装置と略同様の構成であるが設定手段の構成が実施形態4に係る駆動力制御装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態の駆動力制御装置500は、図14に示すように、機能概念的に、目標制御量算出手段としての目標制御量算出部110と、機関制御手段としてのエンジン制御部120と、変速制御手段としての変速機制御部130とが設けられている。
さらに、本実施形態の駆動力制御装置500は、機能概念的に、設定手段としてのヒステリシス幅設定部540が設けられており、このヒステリシス幅設定部540が車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅α(図5参照)を適正に設定することで、車両1の駆動系全体での効率の向上と共に、いわゆるドライバビリティの向上も可能である。
具体的には、ヒステリシス幅設定部540は、車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するものである。すなわち、ヒステリシス幅設定部540は、車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。ヒステリシス幅設定部540は、車両1の状態に基づいてヒステリシス幅αを可変とすることで、最適燃費帯Xも車両1の状態に基づいて可変となる。
そして、本実施形態のヒステリシス幅設定部540は、車両1の状態として、例えば、車両1の運転状態、車両1に対する運転指向状態、車両1の走行状態などに基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するように構成される。
ヒステリシス幅設定部540は、車両1の運転状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定する場合、例えば、車両1の車速や車両1に対する運転者による駆動力要求操作の操作量としてのアクセル開度などに基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。
具体的には、ヒステリシス幅設定部540は、車両1の車速の変動幅に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、車輪速度センサ62の検出信号に基づいて車両1の車速を取得し、この車速の予め設定される所定期間内での変動幅を常時時更新し、この車速の変動幅に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。
この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、図15のヒステリシス幅設定制御を説明するフローチャートに示すように、車速の変動幅が予め設定される所定値より小さいか否かを判定する(S500a)。ヒステリシス幅設定部540は、車速の変動幅が所定値以上であると判定した場合(S500a:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。ヒステリシス幅設定部540は、車速の変動幅が所定値より小さいと判定した場合(S500a:Yes)、言い換えれば、車両1の運転状態が定常運転状態に近い状態である場合には、車速の変動幅に応じてヒステリシス幅αを変更して(S502a)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。このとき、ヒステリシス幅設定部540は、車速の変動幅が相対的に小さいほどヒステリシス幅αを相対的に増加させ、最適燃費帯Xを拡大し、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大させる。言い換えれば、ヒステリシス幅設定部540は、車速の変動幅が相対的に大きいほどヒステリシス幅αを相対的に減少させる。
この結果、駆動力制御装置500は、車両1の車速の変動幅が比較的に小さく車両1の運転状態が定常運転状態に近い状態である場合にヒステリシス幅設定部540がヒステリシス幅αを相対的に増加させ回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大することで、エンジン10の回転変動を積極的に抑制することができるので、エンジン回転数の過敏な変動を抑制して車両1の駆動系全体での効率を向上すると共にドライバビリティを向上することができる。
また、ヒステリシス幅設定部540は、車速の変動幅が予め設定された所定範囲(第1所定範囲)内である期間に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、車輪速度センサ62の検出信号に基づいて車両1の車速を取得し、この車速の変動幅が所定範囲内である期間を常時更新し、この車速の変動幅が所定範囲内である期間に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。
この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、図16のヒステリシス幅設定制御を説明するフローチャートに示すように、車速の変動幅が所定範囲内である期間が予め設定される所定期間より長いか否かを判定する(S500b)。ヒステリシス幅設定部540は、車速の変動幅が所定範囲内である期間が所定期間以下であると判定した場合(S500b:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。ヒステリシス幅設定部540は、車速の変動幅が所定範囲内である期間が所定期間より長いと判定した場合(S500b:Yes)、言い換えれば、車両1の運転状態が定常運転状態に近い状態である場合には、車速の変動幅が所定範囲内である期間に応じてヒステリシス幅αを変更して(S502b)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。このとき、ヒステリシス幅設定部540は、車速の変動幅が所定範囲内である期間が相対的に長いほどヒステリシス幅αを相対的に増加させ、最適燃費帯Xを拡大し、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大させる。言い換えれば、ヒステリシス幅設定部540は、車速の変動幅が所定範囲内である期間が相対的に短いほどヒステリシス幅αを相対的に減少させる。
この結果、駆動力制御装置500は、車速の変動幅が所定範囲内である期間が比較的に長く車両1の運転状態が定常運転状態に近い状態である場合にヒステリシス幅設定部540がヒステリシス幅αを相対的に増加させ回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大することで、エンジン10の回転変動を積極的に抑制することができるので、エンジン回転数の過敏な変動を抑制して車両1の駆動系全体での効率を向上すると共にドライバビリティを向上することができる。
また、ヒステリシス幅設定部540は、アクセル開度が予め設定された所定範囲(第2所定範囲)内である期間に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、アクセル開度センサ56の検出信号に基づいてアクセル開度を取得し、このアクセル開度の変動幅が所定範囲内である期間を常時更新し、このアクセル開度の変動幅が所定範囲内である期間に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。
この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、図17のヒステリシス幅設定制御を説明するフローチャートに示すように、アクセル開度の変動幅が所定範囲内である期間が予め設定される所定期間より長いか否かを判定する(S500c)。ヒステリシス幅設定部540は、アクセル開度の変動幅が所定範囲内である期間が所定期間以下であると判定した場合(S500c:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。ヒステリシス幅設定部540は、アクセル開度の変動幅が所定範囲内である期間が所定期間より長いと判定した場合(S500c:Yes)、言い換えれば、車両1の運転状態が定常運転状態に近い状態である場合には、アクセル開度の変動幅が所定範囲内である期間に応じてヒステリシス幅αを変更して(S502c)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。このとき、ヒステリシス幅設定部540は、アクセル開度の変動幅が所定範囲内である期間が相対的に長いほどヒステリシス幅αを相対的に増加させ、最適燃費帯Xを拡大し、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大させる。言い換えれば、ヒステリシス幅設定部540は、アクセル開度の変動幅が所定範囲内である期間が相対的に短いほどヒステリシス幅αを相対的に減少させる。
この結果、駆動力制御装置500は、アクセル開度の変動幅が所定範囲内である期間が比較的に長く車両1の運転状態が定常運転状態に近い状態である場合にヒステリシス幅設定部540がヒステリシス幅αを相対的に増加させ回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大することで、エンジン10の回転変動を積極的に抑制することができるので、エンジン回転数の過敏な変動を抑制して車両1の駆動系全体での効率を向上すると共にドライバビリティを向上することができる。
また、ヒステリシス幅設定部540は、車両1に対する運転者の運転指向状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定する場合、例えば、種々のセンサの検出信号に基づいた運転指向推定値により車両1に対する運転者の運転指向(例えば、スポーツ走行指向や燃費走行指向など)を分類しこれに基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。
具体的には、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、運転指向推定値として、車両1で実現される駆動力の分布割合に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、種々センサの検出信号に基づいて車両1で実現された駆動力を取得し、実現された駆動力の分布を常時時更新し、この実現された駆動力の分布割合に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。
この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、図18のヒステリシス幅設定制御を説明するフローチャートに示すように、予め設定される所定値よりも小さな駆動力の分布割合が予め設定される所定割合より多いか否かを判定する(S500d)。ヒステリシス幅設定部540は、所定値よりも小さな駆動力の分布割合が所定割合以下であると判定した場合(S500d:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。ヒステリシス幅設定部540は、所定値よりも小さな駆動力の分布割合が所定割合より多いと判定した場合(S500d:Yes)、すなわち、所定値よりも小さな駆動力を比較的多く利用するような運転指向である場合には、所定値よりも小さな駆動力の分布割合に応じてヒステリシス幅αを変更して(S502d)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。このとき、ヒステリシス幅設定部540は、所定値よりも小さな駆動力の分布割合が相対的に多いほどヒステリシス幅αを相対的に増加させ、最適燃費帯Xを拡大し、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大させる。言い換えれば、ヒステリシス幅設定部540は、所定値よりも小さな駆動力の分布割合が相対的に少ないほどヒステリシス幅αを相対的に減少させる。
この結果、駆動力制御装置500は、所定値よりも小さな駆動力を比較的多く利用するような運転指向である場合にヒステリシス幅設定部540がヒステリシス幅αを相対的に増加させ回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大することで、エンジン10の回転変動を積極的に抑制することができるので、エンジン回転数の過敏な変動を抑制して車両1の駆動系全体での効率を向上すると共にドライバビリティを向上することができる。
また、ヒステリシス幅設定部540は、車両1の走行状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定する場合、例えば、車両1が走行する道路の車速制限情報、車両1が走行する道路の渋滞情報、車両1が走行する道路のコーナー情報などの種々の道路情報や車両1の前方を走行する走行物としての他の車両と車両1の距離情報などを含む車両1の周辺環境の状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。
この場合、駆動力制御装置500は、車両1が走行中の道路の状態に関する道路情報や他の車両と関係に関する車両通信情報を取得する手段、例えば、図14に示すように、ナビゲーション装置550やレーダ551などが接続されているとよい。ナビゲーション装置550は、車両1に搭載され車両1を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としている。ナビゲーション装置550は、例えば、GPS(全地球測位システム)や自律航法を利用して車両1の現在地を特定し、車両1の走行に必要な道路情報(地図、直線路、コーナー、登降坂、高速道路、道路交通・渋滞状況、道路種別、車速制限等)などに照会して目的地への最適ルートを取得し、例えば、ディスプレイ画面上で目的地への走行経路案内を行なう。ナビゲーション装置550は、駆動力制御装置500に接続されており、種々の情報を駆動力制御装置500に出力している。レーダ551は、例えば、他の車両との間で車両通信を行うものであり、例えば、他の車両から車両通信情報などを受信するものである。また、駆動力制御装置500は、車両1に搭載され車両1の車外を撮像可能な車載カメラ(不図示)などが接続されていてもよい。
具体的には、ヒステリシス幅設定部540は、車両1が走行する道路の車速制限情報に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、車両1の現在の位置情報をナビゲーション装置550のGPSなどにより取得し、ナビゲーション装置550の地図データベースから当該位置に対応付けられた道路の道路情報を取得して、車両1が現在走行している道路の車速制限(例えば、法定速度など)に関する情報である車速制限情報を取得する。そして、ヒステリシス幅設定部540は、この車速制限情報に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。ここでは、ヒステリシス幅設定部540は、車輪速度センサ62の検出信号に基づいて現在の車両1の車速も取得し、車速制限情報に応じた車速制限とこの現在の車速との偏差に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。
この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、図19のヒステリシス幅設定制御を説明するフローチャートに示すように、車速制限情報に応じた車速制限と現在の車速との偏差が予め設定される所定偏差よりも小さいか否かを判定する(S500e)。ヒステリシス幅設定部540は、車速制限情報に応じた車速制限と現在の車速との偏差が所定偏差以上であると判定した場合(S500e:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。ヒステリシス幅設定部540は、車速制限情報に応じた車速制限と現在の車速との偏差が所定偏差より小さいと判定した場合(S500e:Yes)、すなわち、車両1の車速が既に車速制限近傍まで上昇しその後の加減速の要求が相対的に少ないと推定できる場合には、車速制限と現在の車速との偏差に応じてヒステリシス幅αを変更して(S502e)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。このとき、ヒステリシス幅設定部540は、車速制限と現在の車速との偏差が相対的に小さいほどヒステリシス幅αを相対的に増加させ、最適燃費帯Xを拡大し、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大させる。言い換えれば、ヒステリシス幅設定部540は、車速制限と現在の車速との偏差が相対的に大きいほどヒステリシス幅αを相対的に減少させる。
この結果、駆動力制御装置500は、車両1の車速が車速制限近傍まで上昇しその後の加減速の要求が相対的に少ないと推定できる場合に、ヒステリシス幅設定部540がヒステリシス幅αを相対的に増加させ回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大することで、エンジン10の回転変動を積極的に抑制することができるので、エンジン回転数の過敏な変動を抑制して車両1の駆動系全体での効率を向上すると共にドライバビリティを向上することができる。
また、ヒステリシス幅設定部540は、車両1が走行する道路の渋滞情報に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、車両1の現在の位置情報をナビゲーション装置550のGPSなどにより取得し、ナビゲーション装置550の地図データベースから当該位置に対応付けられた道路の道路情報を取得して、車両1が現在走行している道路の渋滞に関する情報である渋滞情報を取得する。そして、ヒステリシス幅設定部540は、この渋滞情報に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。
この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、図20のヒステリシス幅設定制御を説明するフローチャートに示すように、渋滞情報に基づいて車両1が現在走行している道路が渋滞しているか否かを判定する(S500f)。ヒステリシス幅設定部540は、渋滞情報に基づいて渋滞時でないと判定した場合(S500f:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。ヒステリシス幅設定部540は、渋滞情報に基づいて渋滞時であると判定した場合(S500f:Yes)、渋滞情報に基づいて渋滞の度合いに応じてヒステリシス幅αを変更して(S502f)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。このとき、ヒステリシス幅設定部540は、渋滞度合いが高いほどヒステリシス幅αを相対的に増加させ、最適燃費帯Xを拡大し、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大させる。言い換えれば、ヒステリシス幅設定部540は、渋滞度合いが低いほどヒステリシス幅αを相対的に減少させる。
この結果、駆動力制御装置500は、渋滞度合いが高く短時間で加減速を繰り返しエンジン回転数の変動が生じ易い傾向にある場合に、ヒステリシス幅設定部540がヒステリシス幅αを相対的に増加させ回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大することで、エンジン10の回転変動を積極的に抑制することができるので、エンジン回転数の過敏な変動を抑制して車両1の駆動系全体での効率を向上すると共にドライバビリティを向上することができる。
また、ヒステリシス幅設定部540は、車両1が走行する道路のコーナー(カーブ)情報に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、車両1の現在の位置情報をナビゲーション装置550のGPSなどにより取得し、ナビゲーション装置550の地図データベースから当該位置に対応付けられた道路の道路情報を取得して、車両1が現在走行している道路のコーナー(カーブ)に関する情報であるコーナー情報を取得する。そして、ヒステリシス幅設定部540は、このコーナー情報に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。
この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、図21のヒステリシス幅設定制御を説明するフローチャートに示すように、コーナー情報に基づいて車両1が現在走行している道路がコーナーの手前であるか否かを判定する(S500g)。ヒステリシス幅設定部540は、コーナー情報に基づいてコーナーの手前でないと判定した場合(S500g:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。ヒステリシス幅設定部540は、コーナー情報に基づいてコーナーの手前であると判定した場合(S500g:Yes)、コーナー情報に基づいてコーナー(カーブ)の曲率などに応じてヒステリシス幅αを変更して(S502g)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。このとき、ヒステリシス幅設定部540は、コーナーの曲率が大きいほど(急カーブであるほど)ヒステリシス幅αを相対的に増加させ、最適燃費帯Xを拡大し、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大させる。言い換えれば、ヒステリシス幅設定部540は、コーナーの曲率が小さいほどヒステリシス幅αを相対的に減少させる。
この結果、駆動力制御装置500は、運転者によりアクセル操作が戻され易い傾向にあるコーナーの手前の状態である場合に、ヒステリシス幅設定部540がヒステリシス幅αを相対的に増加させ回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大することで、エンジン10の回転変動を積極的に抑制することができるので、エンジン回転数の過敏な変動を抑制し無駄なエンジン回転数の上昇を抑制して車両1の駆動系全体での効率を向上すると共にドライバビリティを向上することができる。
また、ヒステリシス幅設定部540は、 車両1の前方を走行する他の車両と車両1の距離情報、言い換えれば車間距離情報に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定するようにしてもよい。この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、レーダ551などから車両通信情報を取得し、車両通信情報に基づいて車両1の前方を走行する他の車両と車両1の距離に関する情報である距離情報(車間距離情報)を取得する。そして、ヒステリシス幅設定部540は、この車両1の前方を走行する他の車両と車両1の距離情報に基づいて所定のヒステリシス幅αを可変とする。
この場合、ヒステリシス幅設定部540は、例えば、図22のヒステリシス幅設定制御を説明するフローチャートに示すように、距離情報(車両通信情報)に基づいて前方を走行する他の車両と車両1との車間距離が予め設定される所定距離より短いか否かを判定する(S500h)。ヒステリシス幅設定部540は、車間距離が所定距離より長いと判定した場合(S500h:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。ヒステリシス幅設定部540は、車間距離が所定距離より短いと判定した場合(S500h:Yes)、距離情報に応じてヒステリシス幅αを変更して(S502h)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。このとき、ヒステリシス幅設定部540は、距離情報に基づいた車間距離が短いほどヒステリシス幅αを相対的に増加させ、最適燃費帯Xを拡大し、回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大させる。言い換えれば、ヒステリシス幅設定部540は、距離情報に基づいた車間距離が長いほどヒステリシス幅αを相対的に減少させる。
この結果、駆動力制御装置500は、前方を走行する他の車両と車両1との距離が比較的に短い場合に、ヒステリシス幅設定部540がヒステリシス幅αを相対的に増加させ回転変動抑制変速制御を実行する運転領域を拡大することで、エンジン10の回転変動を積極的に抑制することができるので、エンジン回転数の過敏な変動を抑制し無駄なエンジン回転数の上昇を抑制して車両1の駆動系全体での効率を向上すると共にドライバビリティを向上することができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置500によれば、駆動力制御装置500は、エンジン10の動作点が最適燃費帯内にある場合にエンジン回転数の変動を抑制する回転変動抑制変速制御を実行することで、エンジン効率の悪化を抑制しつつエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ(回転慣性)損失を抑制することができ、エンジン効率の悪化抑制とエンジン10の回転変動に伴うイナーシャ損失抑制とを両立することができるので、車両1の駆動系全体での効率を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置500によれば、駆動力制御装置500は、ヒステリシス幅設定部540が車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを設定することから、最適燃費帯Xを実際の車両1の状態にあわせてより適正に設定できるので、車両1の駆動系全体での効率をさらに向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置500によれば、ヒステリシス幅設定部540は、車両1の運転状態に基づいて、所定のヒステリシス幅αを設定するように構成してもよい。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置500によれば、ヒステリシス幅設定部540は、車両1に対する運転指向状態に基づいて、所定のヒステリシス幅αを設定するように構成してもよい。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置500によれば、ヒステリシス幅設定部540は、車両1の走行状態に基づいて、所定のヒステリシス幅αを設定するように構成してもよい。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置500によれば、ヒステリシス幅設定部540は、車両1の車速の変動幅、車速の変動幅が予め設定された第1所定範囲内である期間、車両1に対する駆動力要求操作の操作量であるアクセル開度の変動幅が予め設定された第2所定範囲内である期間、車両1で実現される駆動力の分布、車両1が走行する道路の車速制限情報、車両1が走行する道路の渋滞情報、車両1が走行する道路のコーナー情報又は車両1の前方を走行する走行物とこの車両1との距離情報に基づいて、所定のヒステリシス幅αを設定するように構成してもよい。
この場合、駆動力制御装置500は、ヒステリシス幅設定部540が車両1の状態に基づいて所定のヒステリシス幅αを適正に設定することで、車両1の駆動系全体での効率を向上することができると共にドライバビリティを向上することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る駆動力制御装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施形態に係る駆動力制御装置は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
また、以上の説明では、本発明の内燃機関として筒内噴射式の多気筒エンジンを適用して説明したがこの形式のエンジンに限らず、本発明の駆動力制御装置は、内燃機関として直列型またはV型エンジン、ポート噴射式のエンジンを適用することもでき、この場合でも同様の作用効果を奏することができる。また、燃焼形態も上記のものには限定されない。
また、以上の説明では、運転者による車両に対する駆動力要求操作(加速要求操作)の操作量としてアクセル開度センサ56により検出されるアクセル開度を用いるものとして説明したが、これに限らない。