本発明はレーザ光等の照射により情報の記録および/または再生(以下、記録再生と記す)が行われる情報記録媒体に関し、特に多層の記録膜を備えた情報記録媒体の初期化方法、情報記録媒体の初期化装置、およびその情報記録媒体に関するものである。
情報記録媒体の一例として、レーザ光を用いて光学的手段により情報を記録膜に対して記録、消去、書換えを行うことができる相変化型情報記録媒体がある。相変化型情報記録媒体の記録、消去、書換えは、その記録膜において、相変化材料が結晶と非晶質の間で可逆変化を起こすことを利用するものである。具体的には、一般的に、情報の記録は記録膜の一部を非晶質化(アモルファス化)して記録マークを形成することにより実行され、消去は記録マークを結晶化することにより実行されるものである。非晶質化は記録膜を融点以上に加熱した後に急冷することにより行われる。一方、結晶化は記録膜を結晶化温度以上、融点以下に加熱するか、若しくは融点以上に加熱した後に徐冷することにより行われる。
相変化型情報記録媒体の一例としては、現在商品化されていえる"Blu-ray Disc"の情報記録媒体がある。この"Blu-ray Disc"はデジタルハイビジョン放送(高精細度テレビジョン放送:High definition televisoin)に対応した情報記録媒体として用いられており、記録容量が25GB(1層)および50GB(片面2層)を有し、転送速度が36Mbps(1倍速)のものがある。この1倍速書換え型のBlu-ray Discの記録膜材料としては、例えばGeTeとSb2Te3の間の固溶体(特許文献1参照)やSbをBiに置き換えたGeTeとBi2Te3の間の固溶体(特許文献2参照)が用いられている。
"Blu-ray Disc"において、上記の記録膜をはじめ、反射膜、誘電体膜の膜形成のために、一般的にはスパッタリング法が用いられている。このスパッタリング法により形成された相変化薄膜は、ほとんどの場合が非晶質状態(アモルファス状態)である。したがって、"Blu-ray Disc"においては、情報を記録する前に、予め情報記録媒体のデータ領域における記録膜の全領域を結晶化しておく必要がある。このように記録膜の全領域を非晶質状態から結晶化する処理を初期化(Initialize)と呼ぶ。
情報記録媒体において、最近ではより多くの情報をより高速に処理して、大量の情報を蓄積するために、記録再生のための光ビームの短波長化が進められている。このため、前述の"Blu-ray Disc"のように、405nm(400〜410nm)のレーザ光が用いられるようになってきている。また、製造コストを低減するために、記録膜の全領域を結晶化する初期化に要する時間の短縮化も求められている。そのため、所定のパワーを有する大きなスポット形状の光ビームを用いて、記録膜の広い範囲を短時間で初期化できる構成が必要である。したがって、初期化用光ビームとしては、高出力を得やすい波長810nm(800〜820nm)のレーザ光が用いられている。
図9は従来の初期化装置の一般的な構成を示す概略図である。図9に示すように、光学ヘッド200からの光ビームAにより情報記録媒体209が照射されて、情報記録媒体209の記録膜が初期化されている。図9において、波長810nmの光ビームAを出射する光源201は、レーザ駆動回路208により光源201の出力パワーが制御されている。光源201から出射された光ビームAは、光路補正手段206、コリメータレンズ207を通り、ビームスプリッター203において反射される。ビームスプリッター203で反射された光ビームAは、対物レンズ205を通り、情報記録媒体209を照射する。そして、情報記録媒体209の記録膜などにおいて反射された光ビームAは、再び対物レンズ205を通り、フォーカスエラー検出器210に入射される。このとき、フォーカスエラー検出器210において検出された光ビームAを示す電気信号がフォーカスエラー信号生成回路211に入力される。フォーカスエラー信号回路211においては、フォーカスエラー信号を形成して、そのフォーカスエラー信号をフォーカスサーボ回路212に出力する。フォーカスサーボ回路212はフォーカスエラー信号に基づいてボイスコイル204を駆動し、対物レンズ205の位置を調整する。このように、フォーカスサーボ回路212がボイスコイル204を駆動して対物レンズ205の位置調整を行うことにより、光ビームAのフォーカスを情報記録媒体209の所定の記録膜の位置に合わせている。なお、レーザ駆動回路208やフォーカスサーボ回路212はコントローラ213により制御されている。(特許文献3参照)
特許文献3には、上記のような構成の初期化装置を用いて記録膜を有する情報層として2層の情報層を有する情報記録媒体に対する初期化方法が開示されている。
特開昭63−225934号公報
特開昭63−225935号公報
特開2004−5865号公報
情報記録媒体を大容量化するために、記録再生用光ビームの短波長化に加えて、2層を越える3層以上の複数の情報層(記録膜)を備えた多層情報記録媒体の開発が進められている。このような多層情報記録媒体においては、当該情報記録媒体の一方の面に光ビームを照射することにより、各情報層の記録膜に対して情報を記録し、各記録膜に記録された情報を再生するものである。
図10は多層情報記録媒体の概略構成の一例を示す断面図である。図10に示す多層情報記録媒体300は、4つの情報層を有する多層情報記録媒体の断面図である。図10に示す多層情報記録媒体300は、ポリカーボネートで形成された基板301の上に第1の情報層302、第1の透明分離層303、第2の情報層304、第2の透明分離層305、第3の情報層306、第3の透明分離層307、第4の情報層308、および紫外線効果樹脂で形成されたカバー層309を備えて構成されている。各情報層には記録膜が形成されている。カバー層309側から記録再生用の光ビームが照射されて、各情報層の記録膜に対する記録再生が行われる。
図10に示すような多層情報記録媒体においても、膜形成のためにスパッタリング法が用いられており、スパッタリング法により形成された各情報層(302,304,306,308)における相変化薄膜である記録膜は、殆どが非晶質状態(アモルファス状態)である。したがって、情報を記録する前には、予め多層情報記録媒体の記録膜における記録再生領域であるデータ領域の全領域を結晶化しておく必要がある。
前述の特許文献3には、複数の情報層として2層の情報層を有する情報記録媒体に対する初期化方法が開示されている。しかし、情報層が2層より多い3層以上の複数層、いわゆる多層の情報層を持つ情報記録媒体に対する初期化に関しては、特許献3に開示された初期化方法では、全ての層に対して確実な初期化処理を行うことが非常に困難であった。特に、多層情報記録媒体において、光ビームが入射された面から最も遠い位置にある情報層(奥側情報層)と最も近い位置にある情報層(手前側情報層)との間にある中間の情報層に対する確実な初期化が非常に困難であった。このような3層以上の複数層、いわゆる多層の情報層を持つ情報記録媒体においては、各情報層間の距離が非常に短い間隔しかないため、上記のような中間の情報層の位置を特定して、その中間の情報層のみを確実に初期化処理することは、不可能に近いものであった。
多層情報記録媒体の場合、当該多層情報記録媒体を照射した光ビームは、それぞれの情報層を通過していくため、各情報層の透過率の影響を受けて、それぞれの情報層を通過するたびに徐々に減衰していく。また、それぞれの情報層を光ビームが確実に透過できるように、多層情報記録媒体においては、各情報層の透過率を高く、厚みを薄く設定している。このため、各情報層における反射光量が少なくなり、各情報層におけるフォーカスエラー信号のレベルは低くなり、ノイズとの識別が困難であった。この結果、多層情報記録媒体における各層の位置を、フォーカスエラー信号に基づいて該当する情報層を精度高く検出することが非常に難しく、該当する各情報層を確実に特定して初期化することは不可能に近いものであった。
以上のように、従来の初期化方法を用いることにより、3層以上の複数層、いわゆる多層情報層を持つ情報記録媒体に対して、それぞれの情報層の記録膜の位置に高精度にフォーカス調整して初期化することは非常に困難であり、全ての情報層の記録膜を完全に初期化することは不可能であった。
以下、本発明者において図10に示した4つの情報層(記録膜)を有する多層情報記録媒体300の初期化方法に関して各種実験結果に基づく考察を行ったので説明する。
図10に示す多層情報記録媒体300を用いて初期化処理を行うために、本発明者は810nmの波長の光ビームを出射する光学機器である光学ヘッドを用いた。
通常、多層情報記録媒体に対する初期化処理においては、光学ヘッドからの光ビームの入射面から遠い位置にある奥側の情報層から、光ビームの入射面に近い位置である手前側に向かって順次行うことが、効率がよく、好ましい初期化方法である。したがって、図10に示す多層情報記録媒体300においては、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306、第4の情報層308の順で、基板301側(光ビーム入射面から最も遠い奥側)の情報層からカバー層309側(光ビームの入射面に近い手前側)に向かって順次初期化処理が行われる。
初期化処理において、光ビームの入射面から一番遠い第1の情報層302を照射するためには、光ビームは、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308を通過して行く。このように光ビームが第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308を通過して行く度に、光ヘッドからの光ビームは徐々に減衰していく。このため、1つだけの情報層を有する単層の情報記録媒体に比べて、多層情報記録媒体300において光ビーム入射面から最も遠い第1の情報層302に対して、光ビームを照射したときの第1の情報層302からの反射光量は格段に少なくなる。また、他の情報層304,306,308に関しても、光ビームが各情報層304,306,308を通過する際に生じる減衰を抑制する必要があるため、透過率の高い材料で形成されている。このため、各情報層304,306,308からの反射光量は、当然、少ないものとなる。本発明者による実験においては、波長が810nmの光ビームを当該多層情報記録媒体300に対して照射したときの各情報層304,306,308からの反射光量が少なく、予め設定したしきい値に達しないため、検出されたフォーカスエラー信号においてノイズとの見極めが非常に困難であった。
上記のように、各情報層304,306,308からの反射光量(反射率)が少ないということは、その反射光量に基づいて生成されるフォーカスエラー信号のレベルも低くなる。この結果、生成されたフォーカスエラー信号に基づいて、それぞれの情報層304,306,308の記録膜の位置にフォーカスを合わせることは非常に困難であった。
図11A〜図11Eは、図10に示した4つの情報層を有する情報記録媒体300に対して、波長810nmの光ビーム(赤外色)を照射したときのフォーカスエラー信号を示す。ここで用いた多層情報記録媒体300は、405nm(400〜410nm)の光ビームを用いて情報を記録、再生する情報記録媒体である。
なお、以下に第2の情報層304や第3の情報層306の初期化を行っているが、これらは実験的にそれぞれの情報層を形成した直後に初期化を行っている。
図11Aは、全ての情報層302,304,306,308が初期化される前の状態において検出されたフォーカスエラー信号である。図11Aに示すように、当該多層情報記録媒体300において光ビームの入射面から最も遠い、一番奥側の第1の情報層302のフォーカスエラー信号のレベルは高い値となっている。一番奥側の第1の情報層302に関しては、光ビームが当該情報層を通過する必要がないため、反射光量は比較的大きい。なお、第1の情報層302の膜構成(膜厚、光学定数を含む)次第では、初期化前の方が初期化後より反射光量が大きくなることもある。
図11Bは、第1の情報層302を初期化した後であって、次の第2の情報層304を初期化する前の状態におけるフォーカスエラー信号を示す。即ち、図11Bに示すフォーカスエラー信号は、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308が初期化されていない状態である。
図11Bに示すように、第2の情報層304からの反射光量が少ないため、第2の情報層304におけるフォーカスエラー信号のレベルは非常に低くなっている。したがって、第2の情報層304の位置にフォーカスを合わせることが容易ではなく、第2の情報層304に対して確実に初期化処理することは困難であった。
図11Cは、第1の情報層302および第2の情報層304を初期化した後であって、次の第3の情報層306を初期化する前の状態におけるフォーカスエラー信号を示す。即ち、図11Cに示すフォーカスエラー信号は、第3の情報層306および第4の情報層308が初期化されていない状態である。図11Cに示すように、第3の情報層306からの反射光量が少ないため、第3の情報層306におけるフォーカスエラー信号のレベルは非常に低くなっている。
図11Dは、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306を初期化した後であって、次の第4の情報層308を初期化する前の状態におけるフォーカスエラー信号を示す。図11Dに示すように、第4の情報層308からの反射光量が少ないため、第4の情報層308におけるフォーカスエラー信号のレベルは非常に低くなっている。
図11Eは、全ての情報層302,304,306,308が初期化された状態における、波長810nmの光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号を示す。
以上のように、4つの情報層(記録膜)を有する情報記録媒体300に対して、波長810nmの光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号においては、初期化処理すべき情報層におけるレベルが低いため、当該情報層(記録膜)の位置に光ビームのフォーカスを合わせることが容易ではなく、当該情報層(記録膜)を確実に初期化処理することは非常に困難であった。
上記のような実験結果は、他の波長、例えば波長680nmの光ビーム(赤色)を用いても行ったが、同様の結果を得た。
前述の特許文献3には、2つの情報層を有する情報記録媒体の初期化処理において、2つの情報層における奥側の情報層(光学ビーム入射面から遠い側の情報層)を初期化した後、手前側の情報層(光学ビーム入射面に近い側の情報層)を初期化する前に、その手前側の情報層が存在する領域の位置(厚み100μmの範囲)を特定して、その手前側の情報層の一部を初期化する方法が開示されている。
上記のように、特許文献3に開示された初期化方法により、初期化すべき情報層の初期化処理前に、当該情報層が存在する領域を想定して、その想定された領域に対して初期化用光ビームを照射して、当該情報層を部分的に初期化させることが考えられる。しかしながら、このような初期化処理方法は、2つの情報層を有する情報記録媒体に対しては可能であるが、3層以上の情報層を有する多層情報記録媒体においては以下の理由により、初期化処理は非常に困難であり、不可能に近いものである。
図10に示した4つの情報層を有する多層情報記録媒体300のように、3層以上の情報層を有する多層情報記録媒体においては、各透明分離層303,305,307の厚みが30μm以下と非常に薄くなっている。また、多層情報記録媒体300における歪みである面ぶれは、通常30μm以上である。このため、例えば、初期化すべき情報層として第2の情報層304の位置を想定して初期化用光ビームを照射させたとしても、第3の情報層306や第4の情報層308にも光ビームを照射してしまい第2の情報層304だけでなく、第3の情報層306および第4の情報層308が初期化されるという問題がある。
また、前述のように、第2の情報層304を光ビームが照射する場合には、光ビームが第3の情報層306および第4の情報層308を通過する必要があるため、第3の情報層306および第4の情報層308における減衰を考慮して光ビームのパワーは必然的に大きくなる。このことは、第3の情報層306および第4の情報層308が光ビームにより不要に初期化される原因となる。
第3の情報層306と第4の情報層308が初期化されると、波長810nmの光ビームに対する第3の情報層306と第4の情報層308の透過率は、約半分となり、大きく低下する(例えば、図11D、図11E参照)。この結果、第2の情報層304における、反射光量が大きく低下し、フォーカスエラー信号のレベルは非常に低い状態となる。
以上のように、従来の初期化方法を用いて3つ以上の複数の情報層を有する多層情報記録媒体の全ての情報層(記録膜)を安定して、且つ確実に初期化することは非常に困難であり、多層情報記録媒体に対する完全な初期化は不可能に近いものであった。
本発明は、複数の情報層、特に3層以上の情報層を有する多層情報記録媒体の全ての情報層(記録膜)を安定して、且つ確実に初期化することができる初期化方法、その初期化方法を実行する初期化装置、および確実に初期化された信頼性の高い多層情報記録媒体を提供することを目的とする。
本発明に係る第1の観点の情報記録媒体の初期化方法は、少なくとも2層以上の情報層を有する情報記録媒体を初期化する初期化方法であって、
前記情報層が有する記録膜に対して、初期化用の波長を有する第1の光ビームにより前記記録膜の一部の領域を部分初期化するステップ、
前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長に対応した波長を有する第2の光ビームにより、前記記録膜における部分初期化された領域を照射するステップ、
前記第2の光ビームの照射により生じる前記情報層からの反射光により生成されたフォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス位置を調整するステップ、
フォーカス位置が調整された前記第1の光ビームを前記情報記録媒体に照射することにより前記記録膜の初期化を行っている。このようなステップを有する初期化方法によれば、多層情報記録媒体の全ての情報層の記録膜を安定して、且つ確実に初期化することができる。
本発明に係る第2の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第1の光ビームにより前記記録膜の一部の領域を部分初期化するステップにおいて、前記第1の光ビームは、前記記録膜における記録再生領域以外のフォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化し、
前記第2の光ビームにより前記情報記録媒体を照射するステップにおいて、部分的に初期化された前記フォーカス調整用初期化領域に対して前記第2の光ビームを照射してもよい。
本発明に係る第3の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第2の観点における前記情報記録媒体が、N個(但し、Nは3以上の整数)の前記情報層を含むものでもよい。
本発明に係る第4の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における情報記録媒体が、N個(但し、Nは3以上の整数)の前記情報層を含み、光ビーム入射側より最も遠い情報層から順に、第1の情報層、・・・、第nの情報層(但し、nは整数であり、2≦n<Nの関係を有する)、・・・、および第Nの情報層を有する場合において、
少なくとも第nの情報層における前記記録膜に対して、前記第1の光ビームにより前記記録膜の一部の領域を部分初期化するステップにおいて、
前記第1の光ビームは、前記記録膜における記録再生領域以外のフォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化し、
前記第2の光ビームにより前記情報記録媒体を照射するステップにおいて、部分的に初期化された前記フォーカス調整用初期化領域に対して前記第2の光ビームを照射してもよい。
本発明に係る第5の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第4の観点の第Nの情報層における前記記録膜に対して、前記第1の光ビームにより前記記録膜の一部の領域を部分初期化するステップにおいて、
前記第1の光ビームは、前記記録膜における記録再生領域以外のフォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化し、
前記第2の光ビームにより前記情報記録媒体を照射するステップにおいて、部分的に初期化された前記フォーカス調整用初期化領域に対して前記第2の光ビームを照射してもよい。
本発明に係る第6の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第3の観点における前記フォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化するステップにおいて、前記第1の光ビームのフォーカスの位置を、前記情報記録媒体の厚み方向に往復移動させて、N個の情報層の全ての前記記録膜を部分的に初期化してもよい。
本発明に係る第7の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第2の観点における前記フォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化するステップにおいて、前記第1の光ビームのフォーカス位置を、前記情報記録媒体の厚み方向に往復移動させる場合において、前記第1の光ビームのフォーカス位置の往路動作方向路と復路動作方向で前記第1の光ビームのパワーが異なるよう設定してもよい。
本発明に係る第8の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第7の観点における前記フォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化するステップにおいて、前記第1の光ビームのフォーカス位置を、前記情報記録媒体の厚み方向に往復移動させる場合において、前記情報記録媒体の光ビーム入射側へ近づく移動時の前記第1の光ビームのパワーが、前記情報記録媒体の光ビーム入射側から離れていく移動時の前記第1の光ビームのパワーより大きく設定してもよい。
本発明に係る第9の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第1の光ビームの波長が、630〜850nmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る第10の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第2の光ビームの波長が、前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長の±60nmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る第11の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第2の光ビームの波長が、前記情報記録媒体前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長の±20nmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る第12の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第2の光ビームのスポットサイズが、前記第1の光ビームのスポットサイズより小さく設定することが好ましい。
本発明に係る第13の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第2の光ビームのスポット位置が、初期化進行方向に対して、前記第1の光ビームのスポット位置よりも後方であることが好ましい。
本発明に係る第14の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第1の光ビームのフォーカス位置を前記記録膜の位置に合わせるステップにおいて、
前記記録膜からの反射光をもとに生成されるフォーカスエラー信号に基づいてフォーカス位置の制御を、前記第2の光ビームを用いて行った後、前記第1の光ビームに切り替えて再度行ってもよい。
本発明に係る第15の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第14の観点における前記第1の光ビームにより前記記録膜の初期化の実行時において、前記第2の光ビームを前記記録膜に照射しないよう構成してもよい。
本発明に係る第16の観点の情報記録媒体は、少なくとも2層以上の情報層を有する情報記録媒体であって、
前記情報層が有する記録膜における記録再生領域以外の領域にフォーカス調整用初期化領域が形成されており、
前記フォーカス調整用初期化領域が初期化用の波長を有する第1の光ビームにより部分的に初期化されて、前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長に対応した波長を有する第2の光ビームにより前記フォーカス調整用初期化領域が照射されて、前記情報層からの反射光により生成されたフォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス位置を調整することにより、フォーカス位置が調整された前記第1の光ビームにより前記記録膜の初期化を行って製造されている。このように構成された情報記録媒体は、全ての情報層の記録膜が確実に初期化されており、信頼性の高い記録媒体を提供することができる。
本発明に係る第17の観点の情報記録媒体は、前記の第16の観点における前記第2の光ビームが照射されたときの前記記録膜において、初期化状態での反射率が未初期化状態の反射率より高くなるように設定されている。このため、第17の観点の情報記録媒体においては、第2の光ビームが情報記録媒体を照射することにより、初期化された記録膜からの反射光が確実に発生して、フォーカスエラー信号のレベルを高くしている。
本発明に係る第18の観点の情報記録媒体は、前記の第16の観点における前記情報記録媒体の各情報層間の距離が30μm以下である。このため、第18の観点の情報記録媒体においては、従来の初期化方法では対応することが非常に困難であり、本発明の初期化方法および初期化装置により確実な初期化処理が可能となる。
本発明に係る第19の観点の情報記録媒体の初期化装置は、情報記録媒体における記録膜を初期化するための初期化装置であって、
前記初期化装置は、前記記録膜に光ビームを照射する少なくとも1つの光学ヘッドを備え、
前記光学ヘッドは、初期化用の波長を有する第1の光ビームを出射する第1の光源、前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長に対応した波長を有する第2の光ビームを出射する第2の光源、前記第1の光ビームと前記第2の光ビームを前記記録膜に集光させる対物レンズ、および少なくとも一つの光ビームのフォーカス位置制御を行うフォーカス位置制御部、を具備する。このように構成された初期化装置によれば、多層情報記録媒体の全ての情報層の記録膜を安定して、且つ確実に初期化することができる。
本発明に係る第20の観点の初期化装置は、前記の第19の観点において、前記記録膜に集光させるための対物レンズを、前記情報記録媒体の厚み方向に移動させる機構を設けてもよい。
本発明に係る第21の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記第1の光ビームの波長が、630〜850nmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る第22の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記第2の光ビームの波長が、前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長の±60nmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る第23の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記第2の光ビームのスポットサイズが、前記第1の光ビームのスポットサイズより小さく設定されていることが好ましい。
本発明に係る第24の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記第2の光ビームのスポット位置が、初期化進行方向に対して、前記第1の光ビームのスポット位置よりも後方であることが好ましい。
本発明に係る第25の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記フォーカス位置制御部が、前記第1の光ビームと前記第2の光ビームのフォーカス位置を制御するよう構成してもよい。
本発明に係る第26の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記対物レンズの開口数が0.6以上であることが好ましい。
本発明に係る情報記録媒体の初期化方法および初期化装置によれば、複数の情報層を有する多層情報記録媒体に対し安定して、且つ確実なフォーカス調整を行って、全ての情報層を確実に初期化することができ、製造歩留りを飛躍的に向上させることが可能であり、製造コストが抑制されて安価な情報記録媒体を提供することができる。
本発明に係る実施の形態1の情報記録媒体の初期化装置の概略構成を示すブロック図
実施の形態1の情報記録媒体の初期化装置における光学ヘッドの構成を示す図
実施の形態1の情報記録媒体の初期化装置において、情報記録媒体における第1の光ビームおよび第2の光ビームのスポット形状、および各光ビームのスポット位置の関係を示す図
実施の形態1の情報記録媒体の初期化装置において用いた情報記録媒体の一例を示す断面図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
本発明の実施形態1における初期化方法の概略を示すフローチャート
本発明の実施形態1における初期化方法の要部を示すフローチャート
本発明の実施形態2における初期化方法の要部を示すフローチャート
従来の情報記録媒体の初期化装置の構成を示すブロック図
4つの情報層を有する多層情報記録媒体の概略構成を示す断面図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
以下、本発明に係る好適な実施の形態における情報記録媒体に対する初期化方法、初期化装置および初期化方法により製造された情報記録媒体について添付の図面を参照して説明する。
先ず始めに、本発明の情報記録媒体の初期化方法を着想した、初期化処理実験結果について説明する。
前述の図11A〜図11Eに示したように、4つの情報層(記録膜)を有する多層情報記録媒体に対して、810nmの波長の光ビームを用いたときのフォーカス調整では、各記録膜からの反射光量が少なく、フォーカスエラー信号により各記録膜に対して確実にフォーカス調整は非常に困難であった。
そこで、本発明者は、多層情報記録媒体に対する初期化処理におけるフォーカス調整において、初期化すべき情報記録媒体に対して記録再生するときに用いる光ビームを用いてフォーカス調整することを着想し、その着想に基づいて以下に述べる初期化処理実験を行って、本発明の初期化方法および初期化装置を実現した。以下に述べる初期化処理実験においては、後述の実施の形態1において説明する初期化装置を用いており、初期化対象の情報記録媒体として4層の情報層を有する多層情報記録媒体(図10参照)を用いた。この多層情報記録媒体の記録再生のための光ビームの波長は405nmである。
図5A〜図5Eは、初期化処理実験結果であり、多層情報記録媒体に対して、波長405nmの光ビーム(青紫色)を照射したときのフォーカスエラー信号を示す。
図5Aは、全ての情報層302,304,306,308が初期化される前の状態において検出されたフォーカスエラー信号である。図5Aに示すように、当該多層情報記録媒体100における全ての情報層からの反射光量は少なく、各情報層におけるフォーカスエラー信号のレベルは低いものであった。
図5Bは、第1の情報層302を部分的に初期化(後述するフォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化)した後のフォーカスエラー信号を示す。図5Bに示すフォーカスエラー信号は、第1の情報層302におけるデータが記録再生される領域以外の領域(フォーカス調整用初期化領域)を部分的に初期化し、その初期化された部分に対して光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号である。したがって、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308における記録再生される領域(データ記録再生領域)は初期化されていない状態である。
図5Bに示すように、第1の情報層302からの反射光量が確実に検出されており、第1の情報層302におけるフォーカスエラー信号のレベルは高くなっている。したがって、第1の情報層302の記録膜の位置にフォーカスを合わせることが容易であった。
図5Cは、第1の情報層302および第2の情報層304を部分的に初期化した後のフォーカスエラー信号を示す。図5Cに示すフォーカスエラー信号は、第1の情報層302および第2の情報層304におけるデータが記録再生される領域以外の領域(フォーカス調整用初期化領域)を部分的に初期化し、その初期化された部分に対して光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号である。したがって、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308における記録再生される領域(データ記録再生領域)は初期化されていない状態である。図5Cに示すように、第1の情報層302および第2の情報層304からの反射光量が確実に検出されており、第1の情報層302および第2の情報層304におけるフォーカスエラー信号のレベルは高くなっている。したがって、第1の情報層302とともに第2の情報層304の位置にフォーカスを合わせることが容易であった。
図5Dは、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306を部分的に初期化した後のフォーカスエラー信号を示す。図5Dに示すフォーカスエラー信号は、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306におけるデータが記録再生される領域以外の領域(フォーカス調整用初期化領域)を部分的に初期化し、その初期化された部分に対して光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号である。したがって、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308における記録再生される領域(データ記録再生領域)は初期化されていない状態である。図5Dに示すように、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306からの反射光量が確実に検出されており、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306におけるフォーカスエラー信号のレベルは高くなっている。したがって、第1の情報層302および第2の情報層304とともに第3の情報層306の位置にフォーカスを合わせることが容易であった。
図5Eは、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308を部分的に初期化した後のフォーカスエラー信号を示す。図5Eに示すフォーカスエラー信号は、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308におけるデータが記録再生される領域以外の領域(フォーカス調整用初期化領域)を部分的に初期化し、その初期化された部分に対して光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号である。したがって、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308における記録再生される領域(データ記録再生領域)は初期化されていない状態である。図5Eに示すように、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308からの反射光量が確実に検出されており、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308におけるフォーカスエラー信号のレベルは高くなっている。したがって、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306とともに第4の情報層308の位置にフォーカスを合わせることが容易であった。
以上のように、多層情報記録媒体に対してフォーカス調整する場合において、当該多層情報記録媒体に対して記録再生するための光ビームを照射することにより、各情報層からの反射光量が多く、各情報層においては高いレベルのフォーカスエラー信号が得られた。したがって、初期化処理すべき各情報層の一部を初期化して、記録再生のための光ビームをフォーカス調整として用いることにより、各情報層の位置に初期化用光ビームのフォーカスを合わせることが容易に、且つ確実に行うことが可能となることが本発明者の初期化処理実験により確認された。
本発明は、上記の初期化処理実験結果に基づいて、情報記録媒体のための初期化方法および初期化装置を実現したものである。
(実施の形態1)
以下、本発明に係る実施の形態1の情報記録媒体の初期化方法および初期化装置について説明する。
図1は、本発明に係る実施の形態1の初期化装置の概略構成を示すブロック図である。図2は実施の形態1の初期化装置における光学ヘッドの構成を示す図である。
図1において、実施の形態1の初期化装置1は、3層以上の情報層を有する多層情報記録媒体100を装着して回転駆動するスピンドルモータ2と、複数の光源を有する光学ヘッド3と、光学ヘッド3を設置した移送台4と、移送台4を所定の位置に移動させる移動手段5と、光学ヘッド3における複数の光源を駆動するための駆動部6と、光学ヘッド3の光ビームのフォーカスを制御するフォーカス位置制御部7と、駆動部6およびフォーカス位置制御部7を制御する光学コントローラ8とを有して構成されている。
駆動部6は、光学ヘッド3における第1の光源10(図2参照)を駆動する第1の駆動回路6Aと、光学ヘッド3における第2の光源11(図2参照)を駆動する第2の駆動回路6Bとを有しており、それぞれの駆動回路6A,6Bは光学コントローラ8により制御されている。
フォーカス位置制御部7は、光学ヘッド3における第1の光源10によるフォーカスエラー信号を形成する第1のフォーカスエラー回路26と、光学ヘッド3における第2の光源11によるフォーカスエラー信号を形成する第2のフォーカスエラー回路27と、切り替え回路28と、光学ヘッド3における対物レンズの位置を調整するフォーカス位置制御回路29とを有して構成されている。
[光学ヘッドの構成]
次に、光学ヘッド3の詳細構造について説明する。図2に示すように、実施の形態1の初期化装置1における光学ヘッド3には、2つの光源10,11が設けられている。
光学ヘッド3における第1の光源10としては、多層情報記録媒体における大面積の初期化を実行するために、スポットサイズが大きく、高出力の半導体レーザが用いられており、例えば、波長が630〜850nmの範囲内の光ビームを出射する半導体レーザが用いられている。実施の形態1の初期化装置1においては、810nmの波長の半導体レーザが用いられている。また、光学ヘッド3における第2の光源11としては、多層情報記録媒体100に対して情報の記録再生を行う波長に対応した波長の光ビームを出射する半導体レーザが用いられている。第2の光源11としては、例えば、多層情報記録媒体100の記録再生を行う波長が405nmの光ビームである場合、当該多層情報記録媒体100の初期化後の各情報層(記録膜)からの反射率がフォーカス調整するのに十分な値を示す、345nm〜465nmの範囲内の波長を持つ光ビームが好ましい。即ち、第2の光源11として好ましい波長は、405±60nmである。より好ましくは、405±20nmの波長の光ビームであり、この光ビームを用いることにより、各情報層(記録膜)からのフォーカスエラー信号は確実に現れるため、各情報層の記録膜に対するフォーカス調整を確実に、且つ高精度に行うことが可能となる。当該多層情報記録媒体においては、405nmの波長の光ビームを用いて記録再生が行われるように設定されているためである。したがって、少なくとも405±60nmの波長の光ビームを当該多層情報記録媒体に照射することにより確実にフォーカス調整を行うことが可能となる。
光学ヘッド3における第1の光源10に対しては、駆動部6の第1の駆動回路6Aにより電流電圧制御が行われる。また、第2の光源11に対しては、駆動部6の第2の駆動回路6Bにより電流電圧制御が行われる。
図2に示す光学ヘッド3において、波長選択性ミラー18は、第1の光源10から出射された第1の光ビームAを反射し、第2の光源11から出射された第2の光ビームBを透過する。第2の光源11から出射された第2の光ビームBは、コリメータレンズ13、ビームスプリッター15、1/4波長板16を通り、波長選択性ミラー18を透過して、対物レンズ20を通して多層情報記録媒体100の所定の情報層(記録膜)に集光される。
情報層において反射された第2の光ビームBは再び対物レンズ20を通り、波長選択性ミラー18を透過して、1/4波長板16を通り、ビームスプリッター15において反射されて、第2のフォーカスエラー検出器23に入射される。第2のフォーカスエラー検出器23に入射された第2の光ビームBの反射光は、第2のフォーカスエラー回路27においてフォーカスエラー信号に変換される。フォーカスエラー信号は、切り替え回路28を介して、フォーカス位置制御回路29に入力される。
フォーカス位置制御回路29は、入力されたフォーカスエラー信号に基づく制御信号を形成してボイスコイル19を制御する。フォーカス位置制御回路29からの制御信号によりボイスコイル19が駆動されて、対物レンズ20の位置が調整され、第2の光ビームBのフォーカスが多層情報記録媒体100における指定された情報層の記録膜の位置に合わせることができる。
一方、第1の光源10から出射された第1の光ビームAは、液晶素子からなる光路補正部21、コリメータレンズ12、ビームスプリッター14、1/4波長板17を通り、波長選択性ミラー18で反射される。波長選択性ミラー18において反射された第1の光ビームAは、対物レンズ20を通して、情報記録媒体100の所定の情報層(記録膜)に集光されて、当該情報層の初期化が実行される。
初期化処理において、情報層から反射された第1の光ビームAは、再び対物レンズ20を通り、波長選択性ミラー18で反射され、1/4波長板17を通り、ビームスプリッター14で反射されて、第1のフォーカスエラー検出器22に入射される。第1のフォーカスエラー検出器22に入射された第1の光ビームAの反射光は、第1のフォーカスエラー回路26においてフォーカスエラー信号に変換される。
フォーカス位置制御部7の切り替え回路28において、第1のフォーカスエラー回路26からのフォーカスエラー信号がフォーカス位置制御回路29に入力されるように切り替えられている場合(初期化処理動作中)、フォーカスエラー信号は、切り替え回路28を介して、フォーカス位置制御回路29に入力される。フォーカス位置制御回路29から出力された制御信号により、ボイスコイル19により対物レンズ20の位置を調整することに加えて、光路補正部21により光路を補正することが可能である。
上記のように、切り替え回路28は、第1のフォーカスエラー回路26からのフォーカスエラー信号、または第2のフォーカスエラー回路27からのフォーカスエラー信号のいずれかの信号をフォーカス位置制御回路29に入力するよう光学コントローラ8により切り替え制御されている。
光学コントローラ8は、スピンドルモータ2、移動手段5、駆動部6、フォーカス位置制御部7などの駆動制御を行っている。例えば、光学コントローラ8は、スピンドルモータ2の駆動制御、第1の光ビームAと第2の光ビームBの強度設定制御、第1の光ビームAを情報記録媒体100に対して、その厚み方向に相対的に往復移動(上下動)させる部分初期化のための駆動制御、切り替え回路28の切り替え制御などの初期化動作の全体に対する制御を行っている。
切り替え回路28を介して入力されたフォーカスエラー信号に基づいてフォーカス位置制御回路29は、ボイスコイル19を動作させ、対物レンズ20のフォーカス位置を特定の情報層の記録膜の位置に制御する。実施の形態1においては、初期化処理前に段階においては、第1の光ビームAによる部分初期化の後、第2の光ビームBによるフォーカスエラー信号に基づいて対物レンズ20のフォーカス調整を行う。フォーカス調整後の初期化処理中においては、基本的には第2の光ビームBによるフォーカス調整を随時行っているが、特定の情報層の場合には第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号に基づいて対物レンズ20のフォーカス調整を行ってもよい。この場合において、初期化処理中において第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号が所定値より小さくなった場合には、切り替え回路28により切り替え制御を行い、第2の光ビームBによりフォーカス調整が行い、その後に第1の光ビームAによる初期化処理を行ってもよい。
対物レンズ20の開口数NAは、初期化の対象となる多層情報記録媒体100における情報層の記録膜の光学特性、基板の厚さ等に応じて、適宜設計される。しかし、例えば、3層の多層情報記録媒体においては、情報層間に形成されている透明分離層が30μm以下となり、フォーカスエラー信号の分離性を良くするためには開口数NAは高いほうが有利であり、NA≧0.6であることが好ましい。また、フォーカス調整としては、ナイフエッジ法、非点収差法などの一般的な調整方法により行うことができる。
初期化処理動作においては、対物レンズ20から多層情報記録媒体100の所定の記録膜に対して大きなパワーを有する第1の光ビームAが照射される。
第1の光ビームAのフォーカス位置におけるスポット形状は、多層情報記録媒体100の径方向に30〜200μm、周方向に1〜5μmの長さの長円形に設定されている。したがって、第1の光ビームAにより多層情報記録媒体100の情報層に対して広い範囲を初期化することが可能である。
なお、第1の光源10から第1の光ビームAの光路を補正する光路補正部21は液晶素子で構成した例で説明したが、光路を調整できる手段であれば用いることが可能であり、例えば圧電素子などによる可動機構を備えたレンズによって構成してもよい。また、光路補正部21の設置場所は、コリメータレンズ12とビームスプリッター14の間でもよい。
図3は、多層情報記録媒体100に第1の光ビームAおよび第2の光ビームBの光スポットが照射された位置、スポットサイズ、および多層情報記録媒体100における情報層の記録膜の初期化済み領域と未初期化領域を観念的に示す部分拡大図である。図3において、クロスハッチ部分が第1の光ビームAにより初期化された初期化済み領域112であり、白い部分が未初期化領域113を示している。
ここで、第1の光ビームAと第2の光ビームBの情報層における膜厚方向のフォーカス位置は同じ(最大でもずれ量は50nm)である。また、情報層面内のフォーカス位置は図3に示すように、トラック方向における初期化進行方向に対して、第2の光ビームBのビームスポット111は、第1の光ビームAのビームスポット110より後方となるよう設定されている。さらに、図3に示すように、第2の光ビームBのスポットサイズは第1の光ビームAのスポットサイズよりも小さく設定されている。これにより、第1の光ビームAにより部分的な初期化が完了した領域における、第2の光ビームBによるフォーカスエラー信号に基づいて実施の形態1の初期化装置におけるフォーカス調整が可能となる。
[多層情報記録媒体の構成]
図4は、実施の形態1の初期化装置1により初期化される多層情報記録媒体100の断面構成を示す断面図である。
図4に示すように、多層情報記録媒体100は、基板501上に形成された第1の情報層502から第Nの情報層507(但し、Nは3以上の正の整数)まで、N層の情報層が形成されており、情報層間には透明分離層503,504,506が形成されている。また、最後の第Nの情報層507の上(図4においては下側)にはカバー層508が形成されている。ここで、第1の情報層502と第Nの情報層507との間に形成された中間情報層として、第nの情報層505(但し、nは整数であり、2≦n<N)として説明する。
第1の情報層502は、基板501上に、反射膜510、第2の誘電体膜511、界面膜512、記録膜513、界面膜512、第1の誘電体膜514が、この順に積層されて形成されている。中間情報層である第nの情報層505は、基板501側から順に、透過率調整膜515、反射膜510、第2の誘電体膜511、界面膜512、記録膜513、界面膜512、第1の誘電体膜514が積層されて形成されている。基板501から最も遠い位置にある最終情報層である第Nの情報層507は、第nの情報層505と同様に、基板501側から順に、透過率調整膜515、反射膜510、第2の誘電体膜511、界面膜512、記録膜513、界面膜512、第1の誘電体膜514が積層されて形成されている。
なお、第1の情報層502、第nの情報層505および第Nの情報層507においては、界面膜512を設けた例で説明するが、当該多層情報記録媒体の仕様に応じて、または第1の誘電体514や第2の誘電体511が記録膜513と直接に接しても、記録再生性能や、耐候性を悪化させない場合には設けなくてもよい。
多層情報記録媒体100における基板501は、円盤状の透明な基板であり、基板501の材料としては、例えば、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、あるいはガラスを用いることができる。基板501において、第1の情報層側の表面には、必要に応じてレーザ光である光ビームを導くための案内溝(トラックピッチ0.32μm)を形成してもよい。基板501としては、厚みが500μm〜1300μmのものが用いられている。
図4に示す多層情報記録媒体100における透明分離層503,504,506は、例えば、光硬化型樹脂(特に、紫外線硬化型樹脂が好ましい)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を材料として形成されている。透明分離層503,504,506は、上記の樹脂を各情報層上に塗布し、スピンコートとした後に、当該樹脂を硬化させることにより形成される。なお、透明分離層503,504,506に案内溝を形成する場合には、表面に所定の形状の溝が形成された転写用基板(型)を硬化前の樹脂上に設置した後、基板501を回転させながら転写用基板と当該樹脂とを密着させて、樹脂を硬化させる。その後、転写用基板を硬化した樹脂から剥がすことにより、所定の案内溝が形成された透明分離層503,504,506を形成することができる。
カバー層508は、例えば、光硬化型樹脂(特に、紫外線硬化型樹脂が好ましい)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂、または誘電体等を材料として形成されており、カバー層508の材料としては、使用するレーザ光に対して光吸収が少ないことが好ましい。カバー層508としては、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、若しくはガラスを用いてもよい。なお、カバー層508としてポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、若しくはガラスを使用する場合には、例えば、光硬化型樹脂(特に、紫外線硬化型樹脂が好ましい)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂によって第Nの情報層において接触する第1の誘電体膜に張り合わせることにより、カバー層508を形成する。
各情報層における反射膜510にはAgやAg合金等が用いられ、反射膜510の膜厚は3nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。その理由は、反射膜510の膜厚が3nmより薄い場合には、冷却能力が不足し、信号振幅低下が大きくなるため好ましいものではない。一方、250nmより厚い場合には、冷却能力は変わらないが、製造時間、材料費が増大して、製造コストが高くなるという問題がある。
各情報層において、反射膜510上に形成される第2の誘電体膜511には、例えば、SiO2、ZrO2、Cr2O3、In2O3、TiO2等の酸化物、またはそれらの複合酸化物、若しくは窒化物、またはZnS−SiO2等の材料が用いられる。より好ましくは、波長405nmに対する消衰係数が0.15以下の光吸収が少ない材料を用いることである。第2の誘電体膜511の膜厚としては、3nm〜50nmであることが好ましい。その理由は、第2の誘電体膜511の膜厚が3nmより薄い場合には信号振幅の低下が大きくなり、50nmより厚い場合には膜の吸収による透過率低下が大きくなる。
各情報層における界面膜512には、例えば、SiO2、ZrO2、Cr2O3、In2O3、TiO2等の酸化物、またはそれらの複合酸化物、若しくは窒化物等が用いられる。より好ましくは、波長405nmに対する消衰係数が0.15以下の光吸収が少ない材料を用いることである。界面膜512の膜厚としては、2nm〜10nmであることが好ましい。その理由は、界面膜512の膜厚が2nmより薄い場合には、記録膜への元素拡散の抑制効果が低下し、密着性が低下する。一方、10nmより厚い場合には、膜の吸収による透過率低下が大きくなる。
各情報層における記録膜513には、GeSbTe、またはGeBiTeで構成された相変化材料が用いられる。その中でも、GeTe−Sb2Te3、GeTe―Bi2Te3の合金で形成される相変化材料は光学変化量も多く、高速な相変化が行われるためより好ましい。記録膜513の膜厚としては、2nm〜30nmであることが好ましい。その理由は、記録膜513の膜厚が2nmより薄い場合には、書き換え(消去)性能が低下し、信号振幅の低下が大きくなる。一方、30nmより厚い場合には、信号振幅が低下し、信号保存性(アーカイバル性能)が低下する。
中間の情報層である第nの情報層505、および第Nの情報層507における透過率調整膜515は、第nの情報層の透過率を調整する働きを有する。透過率調整膜515を形成することにより、記録膜513が結晶状態における当該情報層の透過率Tc(%)と、記録膜513が非晶質状態における当該情報層の透過率Ta(%)を共に高くすることができる。また、透過率調整膜515は、記録膜513において発生した熱を速やかに反射膜510へ拡散し、記録膜513を冷却する機能も有する。透過率をより高めるため、透過率調整膜515の屈折率n1および減衰係数k1は、n1≧2.0およびk1≦0.1を満たすことが好ましい。さらに好ましくは、透過率調整膜515の屈折率n1および減衰係数k1が、2.0≦n1≦3.0およびk1≦0.08を満たすことである。このように、透過率調整膜515における屈折率n1および減衰係数k1を設定することにより透過率の高い透過率調整膜515を形成することができ、好ましい中間の情報層となる。透過率調整膜515には、TiO2、ZrO2、HfO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、Bi2O3、Y2O3、またはCeO2等の酸化物、若しくは窒化物等を用いることができる。
多層情報記録媒体100における各層の膜厚を調整して、各情報層の記録膜513が初期化されて結晶状態の場合、即ち、多層情報記録媒体100に対する初期化処理が終了した形態においては、波長405nmのレーザ光に対する各情報層の反射率が、同等レベルであることが好ましい。ここで、反射率が同等レベルとは、反射率が最大となる情報層の反射率をRmax、反射率が最小となる情報層の反射率をRminとすると、(Rmax−Rmin)/Rmax≦0.5を満足することをいう。なお、カバー層508の表面からの波長405nmのレーザ光に対する反射率は約4%である。
[初期化方法]
次に、実施の形態1の初期化方法について説明する。初期化対象は、図4に示した3層以上の情報層を有する多層情報記録媒体100である。
図6は、実施の形態1の初期化方法における大きな流れを示すフローチャートである。最初に、ステップS1において初期化装置が起動して初期化が開始される。具体的には、初期化対象である多層情報記録媒体100が、スピンドルモータ2を設けた情報記録媒体装着部に装着されて、回転する。次に、ステップS2において、光ビームが入射される光ビーム入射面から最も遠い位置にある情報層、即ち、多層情報記録媒体100における第1の情報層502の記録膜に対する初期化処理が行われる。第1の情報層502の記録膜に対する初期化処理が終了すると、次の第2の情報層の記録膜に対する初期化処理を行う。第2の情報層の記録膜に対する初期化処理が終了すると、次の情報層であるカバー層508の方向にある情報層の記録膜に対する初期化処理を行う。このように、基板501側からカバー層508の方向に向かって各情報層の記録膜に対して順次初期化処理が行われる。図6に示すフローチャートにおいては、ステップS(n+1)として、中間の情報層である第nの情報層505の初期化処理を行っており、ステップS(N+1)として、カバー層508に最も近い情報層、即ち光ビーム入射面に最も近い第Nの情報層507の初期化処理を行っている。但し、nとNは、2≦n<Nの関係を有する。ステップS(N+1)において、多層情報記録媒体100における光ビーム入射面に最も近い第Nの情報層507の記録膜に対する初期化処理が終了すると、全ての情報層に対する初期化処理が終了し、スピンドルモータ2の回転を停止して当該多層情報記録媒体100に対する初期化が完了する(ステップS(Final))。
実施の形態1の初期化方法においては、図6に示すステップS2の第1の情報層502に対する初期化処理は、初期化用光ビームである第1の光ビームAを用いてフォーカス調整を行い、その調整結果に基づいて初期化処理を行っている。これは、第1の情報層502においては透過率を低くする必要がないため、第1の情報層502からの反射光量が多くなるよう設定されているためである。
なお、実施の形態1の初期化方法においては、第1の光源10からの第1の光ビームAの波長が805nmであり、第2の光源11からの第2の光ビームBの波長が、当該多層情報記録媒体100の記録再生の光ビームと同じ405nmである。
図7は、図6に示したステップS(n+1)における第nの情報層505の初期化処理の詳細ステップを示すフォローチャートである。即ち、中間の情報層である第nの情報層505における初期化処理は全て同じステップにより実行される。
最初に、ステップS101において、当該第nの情報層505の初期化処理のための初期設定が行われる。具体的には、移送台4を初期化開始位置に移動し、当該多層情報記録媒体100のカバー層508の表面(光ビーム入射面)と対物レンズ20(図2参照)との間を予め設定されている所定の距離に調整する。
次に、ステップS102において、第1の光源10および第2の光源11を予め設定したパワーで発光させる。
次に、ステップS103において、第1の光源10からの第1の光ビームAを用いて部分初期化を行う。この部分初期化は、当該多層情報記録媒体100において記録再生に用いない領域(フォーカス調整用初期化領域、例えば、ディスクの最内周の領域)における記録膜の一部を初期化(結晶化)するものである。部分初期化は、初期化(結晶化)に十分な第1の光ビームAのフォーカス位置を、多層情報記録媒体100に対して、厚み方向(上下方向)に相対的に往復移動させるものである。部分初期化において、第1の光源10は光学コントローラ8からの制御信号に基づき第1の駆動回路6Aにより駆動される。このように、初期化に十分なパワーを有する第1の光ビームAのフォーカス位置を厚み方向(上下方向)に振ることにより、第nの情報層の記録膜を含め他の情報層の記録膜の一部が初期化される。
上記の部分初期化において、第1の光ビームAの振り幅(上下の移動距離)は、第nの情報層505の記録膜の一部が確実に初期化されるように、第1の情報層501から第Nの情報層507の全ての記録膜の一部が確実に初期化されるように、設定されている。このように、第nの情報層505の記録膜の一部が初期化されることにより、フォーカス調整用の第2の光ビームB(波長が405nm)に対して、第nの情報層505の記録膜からの反射光量が多くなり、第nの情報層505において十分大きなレベルを持つフォーカスエラー信号が検出される。
部分初期化における第1の光ビームAのフォーカス位置の厚み方向へ往復動作(上下動作)の回数は、光学コントローラ8においてカウントされており、そのカウント数により部分初期化は制御されている。
なお、多層情報記録媒体100において、カバー層508の表面である光ビーム入射面から基板501側への方向(以後、上方向と称する。)と、その反対である基板501側から光ビーム入射面への方向(以後、下方向と称する。)と、において第1の光ビームAのパワーを変えている。例えば、下方向へ移動するときのパワーが、上方向へ移動するときのパワーより高いことがより好ましい。これは、上方向であるカバー層508側から基板501側に移動するときのパワーが高い場合には、カバー層508に近い情報層が基板501に近い情報層より先に初期化されるためである。このように、カバー層508に近い手前側の情報層が、基板501に近い奥側の情報層より先に初期化されると、第1の光ビームAの波長に対して、初期化された手前側の情報層の透過率が大きく低下し、奥側である基板501に近い情報層にエネルギーが入らなくなり、部分的な初期化が困難になるためである。
ステップS104においては、第2のフォーカスエラー回路27からのフォーカスエラー信号が切り替え回路28を介して、フォーカス位置制御回路29に入力される。フォーカス位置制御回路29は、フォーカスエラー検出器23からのフォーカスエラー信号に基づいて、ボイスコイル19を駆動制御して対物レンズ20の位置調整を行い、第2の光ビームBのフォーカスを第nの情報層505の記録膜513の位置に合わせている。
次に、ステップS105において、そのときのフォーカスエラー信号に基づいて第nの情報層505の記録膜513に対して第2の光ビームBのフォーカスが外れていないかを確認する。フォーカスが外れていた場合には、ステップS106へ移行する。
ステップS106において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)以内であれば、ステップS103の部分初期化以降のステップを再度行う。一方、ステップS106において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)を超えたことを検出した場合には、当該多層情報記録媒体100において異常があると判断されて、ステップS111へ移行して、第1の光ビームAおよび第2の光ビームBを消光して、初期化処理動作を強制的に終了させる。
ステップS105において、フォーカス外れが発生していない場合には、ステップS107において、第1の光ビームAを初期化に適したパワーに設定する。そして、ステップS108において、移送台4の移動が開始される。
なお、ステップS107とステップS108における第1の光ビームAのパワー設定と、移送台4の移動開始の各ステップは、順番が逆になってもよい。また、ステップS101からステップS108までのステップは、当該多層情報記録媒体100におけるデータ記録再生の領域外で行わなければならない。
ステップS109においては、移送台4が駆動されて、予め決められた送り速度で、多層情報記録媒体100の半径方向に移動していく。このように、移送台4が、回転している多層情報記録媒体100の半径方向に移動しつつ、所定のパワーに設定された第1の光ビームAにより当該多層情報記録媒体100が照射されることにより、第nの情報層505の記録膜に対する初期化が行われる。
ステップS109の初期化処理が所定期間経過すると、ステップS110において、移送台4が初期化終了位置に達したか否かが判定される。移送台4が初期化終了位置に達していない場合には、ステップS104に戻り、第2の光ビームBによるフォーカス調整を行い、そのときのフォーカスエラー信号に基づいて第nの情報層505の記録膜513に対して第2の光ビームBのフォーカスが外れていないかが確認される。そして、ステップS106からステップS110までのステップが繰り返される。
ステップS110において、移送台4が初期化終了位置に達したと判定された場合には、ステップS111において第1の光ビームAおよび第2の光ビームBが消光されて、第nの情報層505の記録膜に対する初期化処理が終了する。
図7に示すフローチャートは、第nの情報層505の記録膜513に対する初期化処理であるが、光ビーム入射面に最も近い第Nの情報層507の記録膜513に対する初期化処理に関しても、実施の形態1の初期化方法においては同様の処理が行われる。
また、図7に示したフローチャートにおいては各情報層の記録膜に対する初期化処理動作のそれぞれのステップにおいて、部分初期化(ステップS103)を行った後にフォーカス調整を行う例で説明したが、当該多層情報記録媒体100に対して最初に行った部分初期化を利用して、その後のステップにおけるフォーカス調整を行って当該情報層に対する初期化処理を行ってもよい。
なお、実施の形態1の初期化方法においては、第1の情報層502の記録膜513の初期化処理が、初期化用の第1の光ビームAを用いてフォーカス調整を行っている例で説明したが、第1の情報層502の記録膜に対する初期化処理は、他の初期化方法でもよい。即ち、図7に示した第nの情報層505の記録膜に対して行った初期化方法を第1の情報層502に対して行ってもよい。
また、実施の形態1の初期化方法において、第Nの情報層507の記録膜の初期化処理は、図7に示したように、部分初期化後にフォーカス調整用の第2の光ビームBを用いてフォーカス調整を行い、その調整結果に基づいて第1の光ビームAにより全体の初期化処理を行う例で説明したが、第Nの情報層507の記録膜に対する初期化処理は、第1の光ビームAによりフォーカス調整を行い、その調整結果に基づいて第1の光ビームAにより初期化処理を行ってもよい。これは、光ビーム入射面に最も近い第Nの情報層507の記録膜に関しては、前述の図11Eにおいて第4の情報層308のフォーカスエラー信号に示したように、第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号においても、レベルが高く、第Nの情報層507の記録膜513にフォーカスを合わせることが可能であるためである。
以上のように、本発明に係る実施の形態1の初期化方法および初期化装置においては、多層情報記録媒体における各情報層の記録膜に対して、高精度にフォーカス調整を行うことができ、各記録膜に対して確実な初期化処理を行うことが可能となる。
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2の初期化方法および初期化装置について説明する。なお、実施の形態2において前述の実施の形態1と異なる点は、初期化方法である。実施の形態2の初期化装置は、実施の形態1の初期化装置の構成と実質的に同様の構成を有するため、実施の形態2において実施の形態1と同じ機能、構成を示すものには同じ符号を付して、その説明は実施の形態1の説明を適用する。
実施の形態2の初期化方法は、2つの光ビームの波長差により生じる集光された光ビームの色収差を補償して、初期化ムラをなくし、精度の高い安定した初期化処理を行うことができる初期化方法である。
実施の形態2の初期化方法においても、前述の図6に示した実施の形態1の初期化方法と同様に、基板側の第1の情報層502からカバー層側の第Nの情報層507の各記録膜に対して、順番に初期化処理を行っている。
図8に示すフローチャートは、図6に示したステップS(n+1)の第nの情報層505の初期化処理の詳細ステップを示すフローチャートである。即ち、中間の情報層である第nの情報層505における初期化処理は、実施の形態2の初期化方法においても、全て同じステップにより実行される。
最初に、ステップS201において、当該第nの情報層505の初期化処理のための初期設定が行われる。具体的には、移送台4を初期化開始位置に移動し、当該多層情報記録媒体100のカバー層508の表面(光ビーム入射面)と対物レンズ20(図2参照)との間を予め設定されている所定の距離に調整する。
次に、ステップS202において、第1の光源10および第2の光源11を予め設定したパワーで発光させる。
次に、ステップS203において、第1の光源10からの第1の光ビームAを用いて部分初期化を行う。この部分初期化は、当該多層情報記録媒体100において記録再生に用いない領域(フォーカス調整用初期化領域、例えば、ディスクの最内周の領域)における記録膜の一部を初期化(結晶化)するものである。部分初期化は、前述の実施の形態1において説明したように、初期化(結晶化)に十分な第1の光ビームAのフォーカス位置を、多層情報記録媒体100に対して、厚み方向(上下方向)に相対的に往復移動させるものである。このように、初期化に十分なパワーを有する第1の光ビームAのフォーカス位置を厚み方向(上下方向)に振ることにより、第nの情報層の記録膜を含め他の情報層の記録膜の一部が初期化される。実施の形態2の初期化方法における部分初期化は、実施の形態1の初期化方法と同じように実行される。
実施の形態2の初期化方法において、部分初期化における第1の光ビームAのフォーカス位置の厚み方向へ往復動作(上下動作)の回数は、光学コントローラ8においてカウントされており、そのカウント数により部分初期化が制御されている。
また、実施の形態2の初期化方法において、実施の形態1の初期化方法と同様に、多層情報記録媒体100において、カバー層508の表面である光ビーム入射面から基板501側への方向(上方向)と、基板501側から光ビーム入射面への方向(下方向)と、において第1の光ビームAのパワーを変えており、下方向へ移動するときのパワーが、上方向へ移動するときのパワーより高く設定されている。
ステップS204においては、第2のフォーカスエラー回路27からのフォーカスエラー信号が切り替え回路28を介して、フォーカス位置制御回路29に入力される。フォーカス位置制御回路29は、フォーカスエラー信号に基づいて、ボイスコイル19を駆動制御して、対物レンズ20の位置調整を行い、第2の光ビームBのフォーカスを第nの情報層505の記録膜513の位置に合わせている。
次に、ステップS205において、そのときのフォーカスエラー信号に基づいて第nの情報層505の記録膜513に対して第2の光ビームBのフォーカスが外れていないかを確認する。フォーカスが外れていた場合には、ステップS206へ移行する。
ステップS206において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)以内であれば、ステップS203の部分初期化以降のステップを再度行う。一方、ステップS206において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)を超えたことを検出した場合には、当該多層情報記録媒体100において異常があると判断されて、ステップS207へ移行して、第1の光ビームAおよび第2の光ビームBを消光して、初期化処理動作を強制的に終了させる。
ステップS205において、フォーカス外れが発生していない場合には、ステップS208において、第1の光ビームAを初期化に適したパワーに設定する。そして、ステップS209において、移送台4の移動が開始される。
なお、ステップS208とステップS209における第1の光ビームAのパワー設定と、移送台4の移動開始の各ステップは、順番が逆になってもよい。
次に、ステップS210において、第1のフォーカスエラー回路26からのフォーカスエラー信号が切り替え回路28を介して、フォーカス位置制御回路29に入力される。フォーカス位置制御回路29においては、第1のフォーカスエラー回路26からのフォーカスエラー信号に従って、対物レンズ20に対する位置の微調整を行い、第2の光ビームBのフォーカスを第nの情報層505の記録膜513に高精度に合わせる。
実施の形態2の初期化方法においては、第2のフォーカスエラー回路27からのフォーカスエラー信号によりフォーカス調整を行った後に、さらに第1のフォーカスエラー回路26からのフォーカスエラー信号によりフォーカス調整を行っている。これは、2つの光ビームA,Bが集光された光ビームの色収差を補償して、初期化におけるムラをなくし、精度の高い安定した初期化処理を行うためである。
次に、ステップS211において、第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号に基づいて第nの情報層505の記録膜513の位置に対して第1の光ビームAのフォーカスが外れていないかを確認する。フォーカスが外れていた場合には、ステップS212へ移行する。
ステップS212において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)以内であれば、ステップS210の第1の光ビームAによるフォーカス調整、およびステップS211のフォーカス外れを再度行う。一方、ステップS212において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)を超えたことを検出した場合には、当該多層情報記録媒体100において異常があると判断されて、ステップS207へ移行して、第1の光ビームAおよび第2の光ビームBを消光して、初期化処理動作を強制的に終了させる。
なお、ステップS210における第1の光ビームAによるフォーカス調整ステップ、およびステップS211におけるフォーカス外れ検出ステップは、移送台4を移動させながら行ってもよいし、一旦移送台4を停止させてから行ってもよい。但し、ステップS201からステップS212の各ステップは、当該多層情報記録媒体100におけるデータ領域外で行わなければならない。したがって、後述するステップS214の初期化処理が始まるときには、当該多層情報記録媒体100における第nの情報層505の記録膜513におけるデータ領域の開始点となるよう設定されている。
次に、ステップS213において、第2の光ビームBが消光される。なお、初期化対象の多層情報記録媒体100が第2の光ビームBにより不要な初期化されるおそれが無い場合には、ステップS213は省略することができる。
ステップS209においては、移送台4が駆動されて、予め決められた送り速度で、当該多層情報記録媒体100の半径方向に移動していく。このように、移送台4が、回転している多層情報記録媒体100の半径方向に移動し、初期化すべき記録膜の開始点に配置されたとき、所定のパワーに設定された第1の光ビームAにより当該多層情報記録媒体100が照射されることにより、第nの情報層505の記録膜に対する初期化が行われる(ステップ214)。
なお、ステップ209における移送台4の移動開始ステップは、ステップS213の第2の光ビームBの消光ステップの後、ステップS214の初期化処理の前に行ってもよい。
ステップS214の初期化処理が所定期間経過すると、ステップS215において、移送台4が初期化終了位置に達したか否かが判定される。移送台4が初期化終了位置に達していない場合には、ステップS210に戻り、第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号に基づいてフォーカス調整が行われる。そして、ステップS211において、第nの情報層505の記録膜に対するフォーカス外れが生じていないかが確認される。そして、初期化処理が再度行われる。このとき、第2の光ビームBは消光しているため、当然ステップS213は実行されない。
ステップS215において、移送台4が初期化終了位置に達したと判定された場合には、ステップS216において第1の光ビームAが消光されて、第nの情報層505の記録膜513に対する初期化処理が終了する。
図8に示すフローチャートは、第nの情報層505の記録膜に対する初期化処理であるが、光ビーム入射面に最も近い第Nの情報層507の記録膜に対する初期化処理に関しても、実施の形態2の初期化方法においては同様の処理が行われる。
また、図8に示したフローチャートにおいては各情報層の記録膜に対する初期化処理動作のそれぞれのステップにおいて、部分初期化(ステップS203)を行った後にフォーカス調整を行う例で説明したが、当該多層情報記録媒体100に対して最初に行った部分初期化を利用して、その後のステップにおけるフォーカス調整を行って当該情報層に対する初期化処理を行ってもよい。
なお、実施の形態2の初期化方法において、第1の情報層502の記録膜の初期化処理は、初期化用の第1の光ビームAを用いてフォーカス調整を行ってもよいし、図8に示した第nの情報層505の記録膜に対して行った初期化方法を第1の情報層502に対して同様に行ってもよい。
また、実施の形態2の初期化方法において、第Nの情報層507の記録膜の初期化処理は、図8に示した初期化方法でもよいし、第1の光ビームAによりフォーカス調整を行い、その調整結果に基づいて第1の光ビームAにより初期化処理を行ってもよい。これは、光ビーム入射面に近い第Nの情報層507の記録膜に関しては、前述の図11Eにおいては第4の情報層308に示したように、第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号においても、レベルが高く、第Nの情報層507の記録膜513にフォーカスを合わせることが可能であるためである。
以上のように、本発明に係る実施の形態2の初期化方法および初期化装置においては、複数の情報層を有する多層情報記録媒体に対して、確実にフォーカス調整を行うことが可能となり、ムラのない初期化を確実に行うことができる。また、実施の形態2の初期化方法および初期化装置は、初期化を行う第1の光ビームAにおいても、初期化を実行する情報層の記録膜に対するフォーカス調整を行うため、より均一な、ムラの無い初期化を形成することが可能となる。
実施の形態1および実施の形態2を用いて説明したように、本発明の情報記録媒体の初期化方法および初期化装置においては、3つ以上の複数の情報層を有する多層情報記録媒体の全ての情報層を安定して、且つ確実に初期化することができる。
以下、本発明の情報記録媒体の初期化方法および初期化装置に関する具体的な実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1においては、3層の情報層(N=3)有する多層情報記録媒体に対して、前述の実施の形態1において説明した図7で示した初期化方法を実施した。
初期化対象である多層記情報記録媒体の各情報層の記録膜にはGeBiTeで組成された相変化材料を適用し、初期化後の各情報層からの反射率が3〜4%となるように設計した。
初期化方法に用いられる2つの光ビームに関して、第1の光ビームAの波長が810nmであり、第2の光ビームBの波長が405nmである。第1の光ビームAに関しては、そのスポット形状が、多層情報記録媒体の径方向に96μmの長さであり、周方向に1μmの長さの長円形になるよう光学機構を設計した。なお、第2の光ビームBのスポット形状は、直径が1μmの円形である。
実施例1の初期化方法において、図7に示したステップS103における第1の光ビームAによる部分初期化は、全ての情報層における記録膜に対して部分初期化を行った。即ち、第1の光ビームAのフォーカス位置を当該多層情報記録媒体の厚み方向(上下方向)に大きく複数回往復移動させて、全ての記録膜の部分初期化を行った。
3層の情報層を有する多層情報記録媒体に対する実施例1の初期化方法においては、図7のフローチャートに示す実施の形態1の初期化方法を用いて実行した。
始めに、基板側である第1の情報層の初期化処理を行った。この第1の情報層に対する初期化処理においては、図7に示すステップS103の部分初期化を行わずに、第1の光ビームAによりフォーカス調整し、そして第1の光ビームAにより初期化を行った。初期化処理時における、多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは2400mWであった。
第1の情報層の記録膜の初期化処理の終了後、第2の情報層の記録膜に対する初期化処理を実行した。第2の情報層の初期化処理においては、図7に示したステップS103の部分初期化を全ての情報層の記録膜に対して実行した。この初期化処理時における多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは1500mWであった。
第2の情報層の記録膜の初期化処理の終了後、最後に第3の情報層の記録膜に対する初期化処理を実行した。第3の情報層の初期化処理においては、図7に示すステップS103の部分初期化を行わずに、第1の光ビームAによりフォーカス調整し、そして第1の光ビームAにより初期化を行った。初期化処理時における、多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは1000mWであった。
上記のように、3層の情報層を有する多層情報記録媒体において、中間の情報層(第2の情報層)に対して、図7に示した実施の形態1の初期化方法を実行することにより、全ての情報層における記録膜は安定してムラ無く初期化することができた。
実施例2においては、4層の情報層(N=4)有する多層情報記録媒体に対して、前述の実施の形態2において図8を用いて説明した初期化方法を実施した。
実施例2における初期化対象である多層記情報記録媒体は、前述の実施例1の多層情報記録媒体と同じように、各情報層の記録膜にはGeBiTeで組成された相変化材料を適用し、初期化後の各情報層からの反射率が3〜4%となるように設計した。
また、実施例2の初期化方法に用いられる2つの光ビームの仕様は、前述の実施例1の第1の光ビームAおよび第2の光ビームBと同じである。また、実施例1および実施例2において用いた初期化装置は、実施の形態1において説明した初期化装置である。
4つの情報層を有する多層情報記録媒体に対する実施例2の初期化方法においては、図8のフローチャートに示す実施の形態2の初期化方法を用いて実行した。
始めに、基板側である第1の情報層の初期化処理を行った。この第1の情報層に対する初期化処理においては、図8に示すステップS203の部分初期化を行わずに、第1の光ビームAによりフォーカス調整し、そして第1の光ビームAにより初期化を行った。初期化処理時における、多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは3800mWであった。
第1の情報層の記録膜の初期化処理の終了後、第2の情報層の記録膜に対する初期化処理を実行した。第2の情報層の初期化処理においては、図8に示したステップS203の部分初期化を全ての情報層の記録膜に対して実行した。この初期化処理時における多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは2600mWであった。
第2の情報層の記録膜の初期化処理の終了後、第3の情報層の記録膜に対する初期化処理を実行した。第3の情報層の初期化処理においては、図8に示したステップS203の部分初期化を全ての情報層の記録膜に対して実行した。この初期化処理時における多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは1400mWであった。
第3の情報層の記録膜の初期化処理の終了後、最後に第4の情報層の記録膜に対する初期化処理を実行した。第4の情報層の初期化処理においては、図8に示すステップS203の部分初期化を行わずに、第1の光ビームAによりフォーカス調整し、初期化を行った。初期化処理時における、多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは1000mWであった。
上記のように、4層の情報層を有する多層情報記録媒体において、中間の情報層(第2の情報層および第3の情報層)、実施の形態2の初期化方法を実行することにより、全ての情報層における記録膜は安定してムラ無く初期化することができた。
本発明の情報記録媒体の初期化方法および初期化装置について、前述の実施例において具体例を挙げて説明したが、本発明は前述の実施例で説明したステップや構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく同様のステップや構成も本発明に含まれるものである。
本発明は、レーザ光等の照射により情報の記録再生を行う記録膜を有する情報記録媒体に対して確実に初期化することができる初期化方法および初期化装置を提供するものであるため、情報記録媒体の初期化の分野において優れた効果を有し、有用である。特に、本発明は、多層情報記録媒体、例えば大容量の"Blu-ray Disc"、直径6cmおよび8cmのような小径で大容量のディスクの初期化に適用することができ、また次世代のSIL(Solid Immersion Lens)型近接場光多層ディスクの初期化にも適用することができるため、汎用性が高いものである。
1 初期化装置
2 スピンドルモータ
3 光学ヘッド
4 移送台
5 移動手段
6 駆動部
7 フォーカス位置制御部
8 光学コントローラ
100 多層情報記録媒体
10 第1の光源
11 第2の光源
12,13 コリメータレンズ
14,15 ビームスプリッター
16,17 1/4波長板
18 波長選択性ミラー
19 ボイスコイル
20 対物レンズ
21 光路補正手段
22 第1のフォーカスエラー検出器
23 第1のフォーカスエラー検出器
26 第1のフォーカスエラー回路
27 第2のフォーカスエラー回路
28 切り替え回路
本発明はレーザ光等の照射により情報の記録および/または再生(以下、記録再生と記す)が行われる情報記録媒体に関し、特に多層の記録膜を備えた情報記録媒体の初期化方法、情報記録媒体の初期化装置、およびその情報記録媒体に関するものである。
情報記録媒体の一例として、レーザ光を用いて光学的手段により情報を記録膜に対して記録、消去、書換えを行うことができる相変化型情報記録媒体がある。相変化型情報記録媒体の記録、消去、書換えは、その記録膜において、相変化材料が結晶と非晶質の間で可逆変化を起こすことを利用するものである。具体的には、一般的に、情報の記録は記録膜の一部を非晶質化(アモルファス化)して記録マークを形成することにより実行され、消去は記録マークを結晶化することにより実行されるものである。非晶質化は記録膜を融点以上に加熱した後に急冷することにより行われる。一方、結晶化は記録膜を結晶化温度以上、融点以下に加熱するか、若しくは融点以上に加熱した後に徐冷することにより行われる。
相変化型情報記録媒体の一例としては、現在商品化されていえる"Blu-ray Disc"の情報記録媒体がある。この"Blu-ray Disc"はデジタルハイビジョン放送(高精細度テレビジョン放送:High definition televisoin)に対応した情報記録媒体として用いられており、記録容量が25GB(1層)および50GB(片面2層)を有し、転送速度が36Mbps(1倍速)のものがある。この1倍速書換え型のBlu-ray Discの記録膜材料としては、例えばGeTeとSb2Te3の間の固溶体(特許文献1参照)やSbをBiに置き換えたGeTeとBi2Te3の間の固溶体(特許文献2参照)が用いられている。
"Blu-ray Disc"において、上記の記録膜をはじめ、反射膜、誘電体膜の膜形成のために、一般的にはスパッタリング法が用いられている。このスパッタリング法により形成された相変化薄膜は、ほとんどの場合が非晶質状態(アモルファス状態)である。したがって、"Blu-ray Disc"においては、情報を記録する前に、予め情報記録媒体のデータ領域における記録膜の全領域を結晶化しておく必要がある。このように記録膜の全領域を非晶質状態から結晶化する処理を初期化(Initialize)と呼ぶ。
情報記録媒体において、最近ではより多くの情報をより高速に処理して、大量の情報を蓄積するために、記録再生のための光ビームの短波長化が進められている。このため、前述の"Blu-ray Disc"のように、405nm(400〜410nm)のレーザ光が用いられるようになってきている。また、製造コストを低減するために、記録膜の全領域を結晶化する初期化に要する時間の短縮化も求められている。そのため、所定のパワーを有する大きなスポット形状の光ビームを用いて、記録膜の広い範囲を短時間で初期化できる構成が必要である。したがって、初期化用光ビームとしては、高出力を得やすい波長810nm(800〜820nm)のレーザ光が用いられている。
図9は従来の初期化装置の一般的な構成を示す概略図である。図9に示すように、光学ヘッド200からの光ビームAにより情報記録媒体209が照射されて、情報記録媒体209の記録膜が初期化されている。図9において、波長810nmの光ビームAを出射する光源201は、レーザ駆動回路208により光源201の出力パワーが制御されている。光源201から出射された光ビームAは、光路補正手段206、コリメータレンズ207を通り、ビームスプリッター203において反射される。ビームスプリッター203で反射された光ビームAは、対物レンズ205を通り、情報記録媒体209を照射する。そして、情報記録媒体209の記録膜などにおいて反射された光ビームAは、再び対物レンズ205を通り、フォーカスエラー検出器210に入射される。このとき、フォーカスエラー検出器210において検出された光ビームAを示す電気信号がフォーカスエラー信号生成回路211に入力される。フォーカスエラー信号回路211においては、フォーカスエラー信号を形成して、そのフォーカスエラー信号をフォーカスサーボ回路212に出力する。フォーカスサーボ回路212はフォーカスエラー信号に基づいてボイスコイル204を駆動し、対物レンズ205の位置を調整する。このように、フォーカスサーボ回路212がボイスコイル204を駆動して対物レンズ205の位置調整を行うことにより、光ビームAのフォーカスを情報記録媒体209の所定の記録膜の位置に合わせている。なお、レーザ駆動回路208やフォーカスサーボ回路212はコントローラ213により制御されている。(特許文献3参照)
特許文献3には、上記のような構成の初期化装置を用いて記録膜を有する情報層として2層の情報層を有する情報記録媒体に対する初期化方法が開示されている。
特開昭63−225934号公報
特開昭63−225935号公報
特開2004−5865号公報
情報記録媒体を大容量化するために、記録再生用光ビームの短波長化に加えて、2層を越える3層以上の複数の情報層(記録膜)を備えた多層情報記録媒体の開発が進められている。このような多層情報記録媒体においては、当該情報記録媒体の一方の面に光ビームを照射することにより、各情報層の記録膜に対して情報を記録し、各記録膜に記録された情報を再生するものである。
図10は多層情報記録媒体の概略構成の一例を示す断面図である。図10に示す多層情報記録媒体300は、4つの情報層を有する多層情報記録媒体の断面図である。図10に示す多層情報記録媒体300は、ポリカーボネートで形成された基板301の上に第1の情報層302、第1の透明分離層303、第2の情報層304、第2の透明分離層305、第3の情報層306、第3の透明分離層307、第4の情報層308、および紫外線効果樹脂で形成されたカバー層309を備えて構成されている。各情報層には記録膜が形成されている。カバー層309側から記録再生用の光ビームが照射されて、各情報層の記録膜に対する記録再生が行われる。
図10に示すような多層情報記録媒体においても、膜形成のためにスパッタリング法が用いられており、スパッタリング法により形成された各情報層(302,304,306,308)における相変化薄膜である記録膜は、殆どが非晶質状態(アモルファス状態)である。したがって、情報を記録する前には、予め多層情報記録媒体の記録膜における記録再生領域であるデータ領域の全領域を結晶化しておく必要がある。
前述の特許文献3には、複数の情報層として2層の情報層を有する情報記録媒体に対する初期化方法が開示されている。しかし、情報層が2層より多い3層以上の複数層、いわゆる多層の情報層を持つ情報記録媒体に対する初期化に関しては、特許献3に開示された初期化方法では、全ての層に対して確実な初期化処理を行うことが非常に困難であった。特に、多層情報記録媒体において、光ビームが入射された面から最も遠い位置にある情報層(奥側情報層)と最も近い位置にある情報層(手前側情報層)との間にある中間の情報層に対する確実な初期化が非常に困難であった。このような3層以上の複数層、いわゆる多層の情報層を持つ情報記録媒体においては、各情報層間の距離が非常に短い間隔しかないため、上記のような中間の情報層の位置を特定して、その中間の情報層のみを確実に初期化処理することは、不可能に近いものであった。
多層情報記録媒体の場合、当該多層情報記録媒体を照射した光ビームは、それぞれの情報層を通過していくため、各情報層の透過率の影響を受けて、それぞれの情報層を通過するたびに徐々に減衰していく。また、それぞれの情報層を光ビームが確実に透過できるように、多層情報記録媒体においては、各情報層の透過率を高く、厚みを薄く設定している。このため、各情報層における反射光量が少なくなり、各情報層におけるフォーカスエラー信号のレベルは低くなり、ノイズとの識別が困難であった。この結果、多層情報記録媒体における各層の位置を、フォーカスエラー信号に基づいて該当する情報層を精度高く検出することが非常に難しく、該当する各情報層を確実に特定して初期化することは不可能に近いものであった。
以上のように、従来の初期化方法を用いることにより、3層以上の複数層、いわゆる多層情報層を持つ情報記録媒体に対して、それぞれの情報層の記録膜の位置に高精度にフォーカス調整して初期化することは非常に困難であり、全ての情報層の記録膜を完全に初期化することは不可能であった。
以下、本発明者において図10に示した4つの情報層(記録膜)を有する多層情報記録媒体300の初期化方法に関して各種実験結果に基づく考察を行ったので説明する。
図10に示す多層情報記録媒体300を用いて初期化処理を行うために、本発明者は810nmの波長の光ビームを出射する光学機器である光学ヘッドを用いた。
通常、多層情報記録媒体に対する初期化処理においては、光学ヘッドからの光ビームの入射面から遠い位置にある奥側の情報層から、光ビームの入射面に近い位置である手前側に向かって順次行うことが、効率がよく、好ましい初期化方法である。したがって、図10に示す多層情報記録媒体300においては、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306、第4の情報層308の順で、基板301側(光ビーム入射面から最も遠い奥側)の情報層からカバー層309側(光ビームの入射面に近い手前側)に向かって順次初期化処理が行われる。
初期化処理において、光ビームの入射面から一番遠い第1の情報層302を照射するためには、光ビームは、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308を通過して行く。このように光ビームが第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308を通過して行く度に、光ヘッドからの光ビームは徐々に減衰していく。このため、1つだけの情報層を有する単層の情報記録媒体に比べて、多層情報記録媒体300において光ビーム入射面から最も遠い第1の情報層302に対して、光ビームを照射したときの第1の情報層302からの反射光量は格段に少なくなる。また、他の情報層304,306,308に関しても、光ビームが各情報層304,306,308を通過する際に生じる減衰を抑制する必要があるため、透過率の高い材料で形成されている。このため、各情報層304,306,308からの反射光量は、当然、少ないものとなる。本発明者による実験においては、波長が810nmの光ビームを当該多層情報記録媒体300に対して照射したときの各情報層304,306,308からの反射光量が少なく、予め設定したしきい値に達しないため、検出されたフォーカスエラー信号においてノイズとの見極めが非常に困難であった。
上記のように、各情報層304,306,308からの反射光量(反射率)が少ないということは、その反射光量に基づいて生成されるフォーカスエラー信号のレベルも低くなる。この結果、生成されたフォーカスエラー信号に基づいて、それぞれの情報層304,306,308の記録膜の位置にフォーカスを合わせることは非常に困難であった。
図11A〜図11Eは、図10に示した4つの情報層を有する情報記録媒体300に対して、波長810nmの光ビーム(赤外色)を照射したときのフォーカスエラー信号を示す。ここで用いた多層情報記録媒体300は、405nm(400〜410nm)の光ビームを用いて情報を記録、再生する情報記録媒体である。
なお、以下に第2の情報層304や第3の情報層306の初期化を行っているが、これらは実験的にそれぞれの情報層を形成した直後に初期化を行っている。
図11Aは、全ての情報層302,304,306,308が初期化される前の状態において検出されたフォーカスエラー信号である。図11Aに示すように、当該多層情報記録媒体300において光ビームの入射面から最も遠い、一番奥側の第1の情報層302のフォーカスエラー信号のレベルは高い値となっている。一番奥側の第1の情報層302に関しては、光ビームが当該情報層を通過する必要がないため、反射光量は比較的大きい。なお、第1の情報層302の膜構成(膜厚、光学定数を含む)次第では、初期化前の方が初期化後より反射光量が大きくなることもある。
図11Bは、第1の情報層302を初期化した後であって、次の第2の情報層304を初期化する前の状態におけるフォーカスエラー信号を示す。即ち、図11Bに示すフォーカスエラー信号は、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308が初期化されていない状態である。
図11Bに示すように、第2の情報層304からの反射光量が少ないため、第2の情報層304におけるフォーカスエラー信号のレベルは非常に低くなっている。したがって、第2の情報層304の位置にフォーカスを合わせることが容易ではなく、第2の情報層304に対して確実に初期化処理することは困難であった。
図11Cは、第1の情報層302および第2の情報層304を初期化した後であって、次の第3の情報層306を初期化する前の状態におけるフォーカスエラー信号を示す。即ち、図11Cに示すフォーカスエラー信号は、第3の情報層306および第4の情報層308が初期化されていない状態である。図11Cに示すように、第3の情報層306からの反射光量が少ないため、第3の情報層306におけるフォーカスエラー信号のレベルは非常に低くなっている。
図11Dは、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306を初期化した後であって、次の第4の情報層308を初期化する前の状態におけるフォーカスエラー信号を示す。図11Dに示すように、第4の情報層308からの反射光量が少ないため、第4の情報層308におけるフォーカスエラー信号のレベルは非常に低くなっている。
図11Eは、全ての情報層302,304,306,308が初期化された状態における、波長810nmの光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号を示す。
以上のように、4つの情報層(記録膜)を有する情報記録媒体300に対して、波長810nmの光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号においては、初期化処理すべき情報層におけるレベルが低いため、当該情報層(記録膜)の位置に光ビームのフォーカスを合わせることが容易ではなく、当該情報層(記録膜)を確実に初期化処理することは非常に困難であった。
上記のような実験結果は、他の波長、例えば波長680nmの光ビーム(赤色)を用いても行ったが、同様の結果を得た。
前述の特許文献3には、2つの情報層を有する情報記録媒体の初期化処理において、2つの情報層における奥側の情報層(光学ビーム入射面から遠い側の情報層)を初期化した後、手前側の情報層(光学ビーム入射面に近い側の情報層)を初期化する前に、その手前側の情報層が存在する領域の位置(厚み100μmの範囲)を特定して、その手前側の情報層の一部を初期化する方法が開示されている。
上記のように、特許文献3に開示された初期化方法により、初期化すべき情報層の初期化処理前に、当該情報層が存在する領域を想定して、その想定された領域に対して初期化用光ビームを照射して、当該情報層を部分的に初期化させることが考えられる。しかしながら、このような初期化処理方法は、2つの情報層を有する情報記録媒体に対しては可能であるが、3層以上の情報層を有する多層情報記録媒体においては以下の理由により、初期化処理は非常に困難であり、不可能に近いものである。
図10に示した4つの情報層を有する多層情報記録媒体300のように、3層以上の情報層を有する多層情報記録媒体においては、各透明分離層303,305,307の厚みが30μm以下と非常に薄くなっている。また、多層情報記録媒体300における歪みである面ぶれは、通常30μm以上である。このため、例えば、初期化すべき情報層として第2の情報層304の位置を想定して初期化用光ビームを照射させたとしても、第3の情報層306や第4の情報層308にも光ビームを照射してしまい第2の情報層304だけでなく、第3の情報層306および第4の情報層308が初期化されるという問題がある。
また、前述のように、第2の情報層304を光ビームが照射する場合には、光ビームが第3の情報層306および第4の情報層308を通過する必要があるため、第3の情報層306および第4の情報層308における減衰を考慮して光ビームのパワーは必然的に大きくなる。このことは、第3の情報層306および第4の情報層308が光ビームにより不要に初期化される原因となる。
第3の情報層306と第4の情報層308が初期化されると、波長810nmの光ビームに対する第3の情報層306と第4の情報層308の透過率は、約半分となり、大きく低下する(例えば、図11D、図11E参照)。この結果、第2の情報層304における、反射光量が大きく低下し、フォーカスエラー信号のレベルは非常に低い状態となる。
以上のように、従来の初期化方法を用いて3つ以上の複数の情報層を有する多層情報記録媒体の全ての情報層(記録膜)を安定して、且つ確実に初期化することは非常に困難であり、多層情報記録媒体に対する完全な初期化は不可能に近いものであった。
本発明は、複数の情報層、特に3層以上の情報層を有する多層情報記録媒体の全ての情報層(記録膜)を安定して、且つ確実に初期化することができる初期化方法、その初期化方法を実行する初期化装置、および確実に初期化された信頼性の高い多層情報記録媒体を提供することを目的とする。
本発明に係る第1の観点の情報記録媒体の初期化方法は、少なくとも2層以上の情報層を有する情報記録媒体を初期化する初期化方法であって、
前記情報層が有する記録膜に対して、初期化用の波長を有する第1の光ビームにより前記記録膜の一部の領域を部分初期化するステップ、
前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長に対応した波長を有する第2の光ビームにより、前記記録膜における部分初期化された領域を照射するステップ、
前記第2の光ビームの照射により生じる前記情報層からの反射光により生成されたフォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス位置を調整するステップ、
フォーカス位置が調整された前記第1の光ビームを前記情報記録媒体に照射することにより前記記録膜の初期化を行っている。このようなステップを有する初期化方法によれば、多層情報記録媒体の全ての情報層の記録膜を安定して、且つ確実に初期化することができる。
本発明に係る第2の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第1の光ビームにより前記記録膜の一部の領域を部分初期化するステップにおいて、前記第1の光ビームは、前記記録膜における記録再生領域以外のフォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化し、
前記第2の光ビームにより前記情報記録媒体を照射するステップにおいて、部分的に初期化された前記フォーカス調整用初期化領域に対して前記第2の光ビームを照射してもよい。
本発明に係る第3の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第2の観点における前記情報記録媒体が、N個(但し、Nは3以上の整数)の前記情報層を含むものでもよい。
本発明に係る第4の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における情報記録媒体が、N個(但し、Nは3以上の整数)の前記情報層を含み、光ビーム入射側より最も遠い情報層から順に、第1の情報層、・・・、第nの情報層(但し、nは整数であり、2≦n<Nの関係を有する)、・・・、および第Nの情報層を有する場合において、
少なくとも第nの情報層における前記記録膜に対して、前記第1の光ビームにより前記記録膜の一部の領域を部分初期化するステップにおいて、
前記第1の光ビームは、前記記録膜における記録再生領域以外のフォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化し、
前記第2の光ビームにより前記情報記録媒体を照射するステップにおいて、部分的に初期化された前記フォーカス調整用初期化領域に対して前記第2の光ビームを照射してもよい。
本発明に係る第5の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第4の観点の第Nの情報層における前記記録膜に対して、前記第1の光ビームにより前記記録膜の一部の領域を部分初期化するステップにおいて、
前記第1の光ビームは、前記記録膜における記録再生領域以外のフォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化し、
前記第2の光ビームにより前記情報記録媒体を照射するステップにおいて、部分的に初期化された前記フォーカス調整用初期化領域に対して前記第2の光ビームを照射してもよい。
本発明に係る第6の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第3の観点における前記フォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化するステップにおいて、前記第1の光ビームのフォーカスの位置を、前記情報記録媒体の厚み方向に往復移動させて、N個の情報層の全ての前記記録膜を部分的に初期化してもよい。
本発明に係る第7の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第2の観点における前記フォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化するステップにおいて、前記第1の光ビームのフォーカス位置を、前記情報記録媒体の厚み方向に往復移動させる場合において、前記第1の光ビームのフォーカス位置の往路動作方向路と復路動作方向で前記第1の光ビームのパワーが異なるよう設定してもよい。
本発明に係る第8の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第7の観点における前記フォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化するステップにおいて、前記第1の光ビームのフォーカス位置を、前記情報記録媒体の厚み方向に往復移動させる場合において、前記情報記録媒体の光ビーム入射側へ近づく移動時の前記第1の光ビームのパワーが、前記情報記録媒体の光ビーム入射側から離れていく移動時の前記第1の光ビームのパワーより大きく設定してもよい。
本発明に係る第9の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第1の光ビームの波長が、630〜850nmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る第10の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第2の光ビームの波長が、前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長の±60nmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る第11の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第2の光ビームの波長が、前記情報記録媒体前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長の±20nmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る第12の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第2の光ビームのスポットサイズが、前記第1の光ビームのスポットサイズより小さく設定することが好ましい。
本発明に係る第13の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第2の光ビームのスポット位置が、初期化進行方向に対して、前記第1の光ビームのスポット位置よりも後方であることが好ましい。
本発明に係る第14の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第1の観点における前記第1の光ビームのフォーカス位置を前記記録膜の位置に合わせるステップにおいて、
前記記録膜からの反射光をもとに生成されるフォーカスエラー信号に基づいてフォーカス位置の制御を、前記第2の光ビームを用いて行った後、前記第1の光ビームに切り替えて再度行ってもよい。
本発明に係る第15の観点の情報記録媒体の初期化方法は、前記の第14の観点における前記第1の光ビームにより前記記録膜の初期化の実行時において、前記第2の光ビームを前記記録膜に照射しないよう構成してもよい。
本発明に係る第16の観点の情報記録媒体は、少なくとも2層以上の情報層を有する情報記録媒体であって、
前記情報層が有する記録膜における記録再生領域以外の領域にフォーカス調整用初期化領域が形成されており、
前記フォーカス調整用初期化領域が初期化用の波長を有する第1の光ビームにより部分的に初期化されて、前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長に対応した波長を有する第2の光ビームにより前記フォーカス調整用初期化領域が照射されて、前記情報層からの反射光により生成されたフォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス位置を調整することにより、フォーカス位置が調整された前記第1の光ビームにより前記記録膜の初期化を行って製造されている。このように構成された情報記録媒体は、全ての情報層の記録膜が確実に初期化されており、信頼性の高い記録媒体を提供することができる。
本発明に係る第17の観点の情報記録媒体は、前記の第16の観点における前記第2の光ビームが照射されたときの前記記録膜において、初期化状態での反射率が未初期化状態の反射率より高くなるように設定されている。このため、第17の観点の情報記録媒体においては、第2の光ビームが情報記録媒体を照射することにより、初期化された記録膜からの反射光が確実に発生して、フォーカスエラー信号のレベルを高くしている。
本発明に係る第18の観点の情報記録媒体は、前記の第16の観点における前記情報記録媒体の各情報層間の距離が30μm以下である。このため、第18の観点の情報記録媒体においては、従来の初期化方法では対応することが非常に困難であり、本発明の初期化方法および初期化装置により確実な初期化処理が可能となる。
本発明に係る第19の観点の情報記録媒体の初期化装置は、情報記録媒体における記録膜を初期化するための初期化装置であって、
前記初期化装置は、前記記録膜に光ビームを照射する少なくとも1つの光学ヘッドを備え、
前記光学ヘッドは、初期化用の波長を有する第1の光ビームを出射する第1の光源、前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長に対応した波長を有する第2の光ビームを出射する第2の光源、前記第1の光ビームと前記第2の光ビームを前記記録膜に集光させる対物レンズ、および少なくとも一つの光ビームのフォーカス位置制御を行うフォーカス位置制御部、を具備する。このように構成された初期化装置によれば、多層情報記録媒体の全ての情報層の記録膜を安定して、且つ確実に初期化することができる。
本発明に係る第20の観点の初期化装置は、前記の第19の観点において、前記記録膜に集光させるための対物レンズを、前記情報記録媒体の厚み方向に移動させる機構を設けてもよい。
本発明に係る第21の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記第1の光ビームの波長が、630〜850nmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る第22の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記第2の光ビームの波長が、前記情報記録媒体において情報を記録再生するための波長の±60nmの範囲内であることが好ましい。
本発明に係る第23の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記第2の光ビームのスポットサイズが、前記第1の光ビームのスポットサイズより小さく設定されていることが好ましい。
本発明に係る第24の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記第2の光ビームのスポット位置が、初期化進行方向に対して、前記第1の光ビームのスポット位置よりも後方であることが好ましい。
本発明に係る第25の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記フォーカス位置制御部が、前記第1の光ビームと前記第2の光ビームのフォーカス位置を制御するよう構成してもよい。
本発明に係る第26の観点の情報記録媒体の初期化装置は、前記の第19の観点における前記対物レンズの開口数が0.6以上であることが好ましい。
本発明に係る情報記録媒体の初期化方法および初期化装置によれば、複数の情報層を有する多層情報記録媒体に対し安定して、且つ確実なフォーカス調整を行って、全ての情報層を確実に初期化することができ、製造歩留りを飛躍的に向上させることが可能であり、製造コストが抑制されて安価な情報記録媒体を提供することができる。
本発明に係る実施の形態1の情報記録媒体の初期化装置の概略構成を示すブロック図
実施の形態1の情報記録媒体の初期化装置における光学ヘッドの構成を示す図
実施の形態1の情報記録媒体の初期化装置において、情報記録媒体における第1の光ビームおよび第2の光ビームのスポット形状、および各光ビームのスポット位置の関係を示す図
実施の形態1の情報記録媒体の初期化装置において用いた情報記録媒体の一例を示す断面図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
本発明の実施形態1における初期化方法の概略を示すフローチャート
本発明の実施形態1における初期化方法の要部を示すフローチャート
本発明の実施形態2における初期化方法の要部を示すフローチャート
従来の情報記録媒体の初期化装置の構成を示すブロック図
4つの情報層を有する多層情報記録媒体の概略構成を示す断面図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
実験におけるフォーカスエラー信号の一例を示す図
以下、本発明に係る好適な実施の形態における情報記録媒体に対する初期化方法、初期化装置および初期化方法により製造された情報記録媒体について添付の図面を参照して説明する。
先ず始めに、本発明の情報記録媒体の初期化方法を着想した、初期化処理実験結果について説明する。
前述の図11A〜図11Eに示したように、4つの情報層(記録膜)を有する多層情報記録媒体に対して、810nmの波長の光ビームを用いたときのフォーカス調整では、各記録膜からの反射光量が少なく、フォーカスエラー信号により各記録膜に対して確実にフォーカス調整は非常に困難であった。
そこで、本発明者は、多層情報記録媒体に対する初期化処理におけるフォーカス調整において、初期化すべき情報記録媒体に対して記録再生するときに用いる光ビームを用いてフォーカス調整することを着想し、その着想に基づいて以下に述べる初期化処理実験を行って、本発明の初期化方法および初期化装置を実現した。以下に述べる初期化処理実験においては、後述の実施の形態1において説明する初期化装置を用いており、初期化対象の情報記録媒体として4層の情報層を有する多層情報記録媒体(図10参照)を用いた。この多層情報記録媒体の記録再生のための光ビームの波長は405nmである。
図5A〜図5Eは、初期化処理実験結果であり、多層情報記録媒体に対して、波長405nmの光ビーム(青紫色)を照射したときのフォーカスエラー信号を示す。
図5Aは、全ての情報層302,304,306,308が初期化される前の状態において検出されたフォーカスエラー信号である。図5Aに示すように、当該多層情報記録媒体100における全ての情報層からの反射光量は少なく、各情報層におけるフォーカスエラー信号のレベルは低いものであった。
図5Bは、第1の情報層302を部分的に初期化(後述するフォーカス調整用初期化領域を部分的に初期化)した後のフォーカスエラー信号を示す。図5Bに示すフォーカスエラー信号は、第1の情報層302におけるデータが記録再生される領域以外の領域(フォーカス調整用初期化領域)を部分的に初期化し、その初期化された部分に対して光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号である。したがって、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308における記録再生される領域(データ記録再生領域)は初期化されていない状態である。
図5Bに示すように、第1の情報層302からの反射光量が確実に検出されており、第1の情報層302におけるフォーカスエラー信号のレベルは高くなっている。したがって、第1の情報層302の記録膜の位置にフォーカスを合わせることが容易であった。
図5Cは、第1の情報層302および第2の情報層304を部分的に初期化した後のフォーカスエラー信号を示す。図5Cに示すフォーカスエラー信号は、第1の情報層302および第2の情報層304におけるデータが記録再生される領域以外の領域(フォーカス調整用初期化領域)を部分的に初期化し、その初期化された部分に対して光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号である。したがって、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308における記録再生される領域(データ記録再生領域)は初期化されていない状態である。図5Cに示すように、第1の情報層302および第2の情報層304からの反射光量が確実に検出されており、第1の情報層302および第2の情報層304におけるフォーカスエラー信号のレベルは高くなっている。したがって、第1の情報層302とともに第2の情報層304の位置にフォーカスを合わせることが容易であった。
図5Dは、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306を部分的に初期化した後のフォーカスエラー信号を示す。図5Dに示すフォーカスエラー信号は、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306におけるデータが記録再生される領域以外の領域(フォーカス調整用初期化領域)を部分的に初期化し、その初期化された部分に対して光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号である。したがって、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308における記録再生される領域(データ記録再生領域)は初期化されていない状態である。図5Dに示すように、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306からの反射光量が確実に検出されており、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306におけるフォーカスエラー信号のレベルは高くなっている。したがって、第1の情報層302および第2の情報層304とともに第3の情報層306の位置にフォーカスを合わせることが容易であった。
図5Eは、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308を部分的に初期化した後のフォーカスエラー信号を示す。図5Eに示すフォーカスエラー信号は、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308におけるデータが記録再生される領域以外の領域(フォーカス調整用初期化領域)を部分的に初期化し、その初期化された部分に対して光ビームを照射したときのフォーカスエラー信号である。したがって、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308における記録再生される領域(データ記録再生領域)は初期化されていない状態である。図5Eに示すように、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308からの反射光量が確実に検出されており、第1の情報層302、第2の情報層304、第3の情報層306および第4の情報層308におけるフォーカスエラー信号のレベルは高くなっている。したがって、第1の情報層302、第2の情報層304および第3の情報層306とともに第4の情報層308の位置にフォーカスを合わせることが容易であった。
以上のように、多層情報記録媒体に対してフォーカス調整する場合において、当該多層情報記録媒体に対して記録再生するための光ビームを照射することにより、各情報層からの反射光量が多く、各情報層においては高いレベルのフォーカスエラー信号が得られた。したがって、初期化処理すべき各情報層の一部を初期化して、記録再生のための光ビームをフォーカス調整として用いることにより、各情報層の位置に初期化用光ビームのフォーカスを合わせることが容易に、且つ確実に行うことが可能となることが本発明者の初期化処理実験により確認された。
本発明は、上記の初期化処理実験結果に基づいて、情報記録媒体のための初期化方法および初期化装置を実現したものである。
(実施の形態1)
以下、本発明に係る実施の形態1の情報記録媒体の初期化方法および初期化装置について説明する。
図1は、本発明に係る実施の形態1の初期化装置の概略構成を示すブロック図である。図2は実施の形態1の初期化装置における光学ヘッドの構成を示す図である。
図1において、実施の形態1の初期化装置1は、3層以上の情報層を有する多層情報記録媒体100を装着して回転駆動するスピンドルモータ2と、複数の光源を有する光学ヘッド3と、光学ヘッド3を設置した移送台4と、移送台4を所定の位置に移動させる移動手段5と、光学ヘッド3における複数の光源を駆動するための駆動部6と、光学ヘッド3の光ビームのフォーカスを制御するフォーカス位置制御部7と、駆動部6およびフォーカス位置制御部7を制御する光学コントローラ8とを有して構成されている。
駆動部6は、光学ヘッド3における第1の光源10(図2参照)を駆動する第1の駆動回路6Aと、光学ヘッド3における第2の光源11(図2参照)を駆動する第2の駆動回路6Bとを有しており、それぞれの駆動回路6A,6Bは光学コントローラ8により制御されている。
フォーカス位置制御部7は、光学ヘッド3における第1の光源10によるフォーカスエラー信号を形成する第1のフォーカスエラー回路26と、光学ヘッド3における第2の光源11によるフォーカスエラー信号を形成する第2のフォーカスエラー回路27と、切り替え回路28と、光学ヘッド3における対物レンズの位置を調整するフォーカス位置制御回路29とを有して構成されている。
[光学ヘッドの構成]
次に、光学ヘッド3の詳細構造について説明する。図2に示すように、実施の形態1の初期化装置1における光学ヘッド3には、2つの光源10,11が設けられている。
光学ヘッド3における第1の光源10としては、多層情報記録媒体における大面積の初期化を実行するために、スポットサイズが大きく、高出力の半導体レーザが用いられており、例えば、波長が630〜850nmの範囲内の光ビームを出射する半導体レーザが用いられている。実施の形態1の初期化装置1においては、810nmの波長の半導体レーザが用いられている。また、光学ヘッド3における第2の光源11としては、多層情報記録媒体100に対して情報の記録再生を行う波長に対応した波長の光ビームを出射する半導体レーザが用いられている。第2の光源11としては、例えば、多層情報記録媒体100の記録再生を行う波長が405nmの光ビームである場合、当該多層情報記録媒体100の初期化後の各情報層(記録膜)からの反射率がフォーカス調整するのに十分な値を示す、345nm〜465nmの範囲内の波長を持つ光ビームが好ましい。即ち、第2の光源11として好ましい波長は、405±60nmである。より好ましくは、405±20nmの波長の光ビームであり、この光ビームを用いることにより、各情報層(記録膜)からのフォーカスエラー信号は確実に現れるため、各情報層の記録膜に対するフォーカス調整を確実に、且つ高精度に行うことが可能となる。当該多層情報記録媒体においては、405nmの波長の光ビームを用いて記録再生が行われるように設定されているためである。したがって、少なくとも405±60nmの波長の光ビームを当該多層情報記録媒体に照射することにより確実にフォーカス調整を行うことが可能となる。
光学ヘッド3における第1の光源10に対しては、駆動部6の第1の駆動回路6Aにより電流電圧制御が行われる。また、第2の光源11に対しては、駆動部6の第2の駆動回路6Bにより電流電圧制御が行われる。
図2に示す光学ヘッド3において、波長選択性ミラー18は、第1の光源10から出射された第1の光ビームAを反射し、第2の光源11から出射された第2の光ビームBを透過する。第2の光源11から出射された第2の光ビームBは、コリメータレンズ13、ビームスプリッター15、1/4波長板16を通り、波長選択性ミラー18を透過して、対物レンズ20を通して多層情報記録媒体100の所定の情報層(記録膜)に集光される。
情報層において反射された第2の光ビームBは再び対物レンズ20を通り、波長選択性ミラー18を透過して、1/4波長板16を通り、ビームスプリッター15において反射されて、第2のフォーカスエラー検出器23に入射される。第2のフォーカスエラー検出器23に入射された第2の光ビームBの反射光は、第2のフォーカスエラー回路27においてフォーカスエラー信号に変換される。フォーカスエラー信号は、切り替え回路28を介して、フォーカス位置制御回路29に入力される。
フォーカス位置制御回路29は、入力されたフォーカスエラー信号に基づく制御信号を形成してボイスコイル19を制御する。フォーカス位置制御回路29からの制御信号によりボイスコイル19が駆動されて、対物レンズ20の位置が調整され、第2の光ビームBのフォーカスが多層情報記録媒体100における指定された情報層の記録膜の位置に合わせることができる。
一方、第1の光源10から出射された第1の光ビームAは、液晶素子からなる光路補正部21、コリメータレンズ12、ビームスプリッター14、1/4波長板17を通り、波長選択性ミラー18で反射される。波長選択性ミラー18において反射された第1の光ビームAは、対物レンズ20を通して、情報記録媒体100の所定の情報層(記録膜)に集光されて、当該情報層の初期化が実行される。
初期化処理において、情報層から反射された第1の光ビームAは、再び対物レンズ20を通り、波長選択性ミラー18で反射され、1/4波長板17を通り、ビームスプリッター14で反射されて、第1のフォーカスエラー検出器22に入射される。第1のフォーカスエラー検出器22に入射された第1の光ビームAの反射光は、第1のフォーカスエラー回路26においてフォーカスエラー信号に変換される。
フォーカス位置制御部7の切り替え回路28において、第1のフォーカスエラー回路26からのフォーカスエラー信号がフォーカス位置制御回路29に入力されるように切り替えられている場合(初期化処理動作中)、フォーカスエラー信号は、切り替え回路28を介して、フォーカス位置制御回路29に入力される。フォーカス位置制御回路29から出力された制御信号により、ボイスコイル19により対物レンズ20の位置を調整することに加えて、光路補正部21により光路を補正することが可能である。
上記のように、切り替え回路28は、第1のフォーカスエラー回路26からのフォーカスエラー信号、または第2のフォーカスエラー回路27からのフォーカスエラー信号のいずれかの信号をフォーカス位置制御回路29に入力するよう光学コントローラ8により切り替え制御されている。
光学コントローラ8は、スピンドルモータ2、移動手段5、駆動部6、フォーカス位置制御部7などの駆動制御を行っている。例えば、光学コントローラ8は、スピンドルモータ2の駆動制御、第1の光ビームAと第2の光ビームBの強度設定制御、第1の光ビームAを情報記録媒体100に対して、その厚み方向に相対的に往復移動(上下動)させる部分初期化のための駆動制御、切り替え回路28の切り替え制御などの初期化動作の全体に対する制御を行っている。
切り替え回路28を介して入力されたフォーカスエラー信号に基づいてフォーカス位置制御回路29は、ボイスコイル19を動作させ、対物レンズ20のフォーカス位置を特定の情報層の記録膜の位置に制御する。実施の形態1においては、初期化処理前に段階においては、第1の光ビームAによる部分初期化の後、第2の光ビームBによるフォーカスエラー信号に基づいて対物レンズ20のフォーカス調整を行う。フォーカス調整後の初期化処理中においては、基本的には第2の光ビームBによるフォーカス調整を随時行っているが、特定の情報層の場合には第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号に基づいて対物レンズ20のフォーカス調整を行ってもよい。この場合において、初期化処理中において第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号が所定値より小さくなった場合には、切り替え回路28により切り替え制御を行い、第2の光ビームBによりフォーカス調整が行い、その後に第1の光ビームAによる初期化処理を行ってもよい。
対物レンズ20の開口数NAは、初期化の対象となる多層情報記録媒体100における情報層の記録膜の光学特性、基板の厚さ等に応じて、適宜設計される。しかし、例えば、3層の多層情報記録媒体においては、情報層間に形成されている透明分離層が30μm以下となり、フォーカスエラー信号の分離性を良くするためには開口数NAは高いほうが有利であり、NA≧0.6であることが好ましい。また、フォーカス調整としては、ナイフエッジ法、非点収差法などの一般的な調整方法により行うことができる。
初期化処理動作においては、対物レンズ20から多層情報記録媒体100の所定の記録膜に対して大きなパワーを有する第1の光ビームAが照射される。
第1の光ビームAのフォーカス位置におけるスポット形状は、多層情報記録媒体100の径方向に30〜200μm、周方向に1〜5μmの長さの長円形に設定されている。したがって、第1の光ビームAにより多層情報記録媒体100の情報層に対して広い範囲を初期化することが可能である。
なお、第1の光源10から第1の光ビームAの光路を補正する光路補正部21は液晶素子で構成した例で説明したが、光路を調整できる手段であれば用いることが可能であり、例えば圧電素子などによる可動機構を備えたレンズによって構成してもよい。また、光路補正部21の設置場所は、コリメータレンズ12とビームスプリッター14の間でもよい。
図3は、多層情報記録媒体100に第1の光ビームAおよび第2の光ビームBの光スポットが照射された位置、スポットサイズ、および多層情報記録媒体100における情報層の記録膜の初期化済み領域と未初期化領域を観念的に示す部分拡大図である。図3において、クロスハッチ部分が第1の光ビームAにより初期化された初期化済み領域112であり、白い部分が未初期化領域113を示している。
ここで、第1の光ビームAと第2の光ビームBの情報層における膜厚方向のフォーカス位置は同じ(最大でもずれ量は50nm)である。また、情報層面内のフォーカス位置は図3に示すように、トラック方向における初期化進行方向に対して、第2の光ビームBのビームスポット111は、第1の光ビームAのビームスポット110より後方となるよう設定されている。さらに、図3に示すように、第2の光ビームBのスポットサイズは第1の光ビームAのスポットサイズよりも小さく設定されている。これにより、第1の光ビームAにより部分的な初期化が完了した領域における、第2の光ビームBによるフォーカスエラー信号に基づいて実施の形態1の初期化装置におけるフォーカス調整が可能となる。
[多層情報記録媒体の構成]
図4は、実施の形態1の初期化装置1により初期化される多層情報記録媒体100の断面構成を示す断面図である。
図4に示すように、多層情報記録媒体100は、基板501上に形成された第1の情報層502から第Nの情報層507(但し、Nは3以上の正の整数)まで、N層の情報層が形成されており、情報層間には透明分離層503,504,506が形成されている。また、最後の第Nの情報層507の上(図4においては下側)にはカバー層508が形成されている。ここで、第1の情報層502と第Nの情報層507との間に形成された中間情報層として、第nの情報層505(但し、nは整数であり、2≦n<N)として説明する。
第1の情報層502は、基板501上に、反射膜510、第2の誘電体膜511、界面膜512、記録膜513、界面膜512、第1の誘電体膜514が、この順に積層されて形成されている。中間情報層である第nの情報層505は、基板501側から順に、透過率調整膜515、反射膜510、第2の誘電体膜511、界面膜512、記録膜513、界面膜512、第1の誘電体膜514が積層されて形成されている。基板501から最も遠い位置にある最終情報層である第Nの情報層507は、第nの情報層505と同様に、基板501側から順に、透過率調整膜515、反射膜510、第2の誘電体膜511、界面膜512、記録膜513、界面膜512、第1の誘電体膜514が積層されて形成されている。
なお、第1の情報層502、第nの情報層505および第Nの情報層507においては、界面膜512を設けた例で説明するが、当該多層情報記録媒体の仕様に応じて、または第1の誘電体514や第2の誘電体511が記録膜513と直接に接しても、記録再生性能や、耐候性を悪化させない場合には設けなくてもよい。
多層情報記録媒体100における基板501は、円盤状の透明な基板であり、基板501の材料としては、例えば、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、あるいはガラスを用いることができる。基板501において、第1の情報層側の表面には、必要に応じてレーザ光である光ビームを導くための案内溝(トラックピッチ0.32μm)を形成してもよい。基板501としては、厚みが500μm〜1300μmのものが用いられている。
図4に示す多層情報記録媒体100における透明分離層503,504,506は、例えば、光硬化型樹脂(特に、紫外線硬化型樹脂が好ましい)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂を材料として形成されている。透明分離層503,504,506は、上記の樹脂を各情報層上に塗布し、スピンコートとした後に、当該樹脂を硬化させることにより形成される。なお、透明分離層503,504,506に案内溝を形成する場合には、表面に所定の形状の溝が形成された転写用基板(型)を硬化前の樹脂上に設置した後、基板501を回転させながら転写用基板と当該樹脂とを密着させて、樹脂を硬化させる。その後、転写用基板を硬化した樹脂から剥がすことにより、所定の案内溝が形成された透明分離層503,504,506を形成することができる。
カバー層508は、例えば、光硬化型樹脂(特に、紫外線硬化型樹脂が好ましい)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂、または誘電体等を材料として形成されており、カバー層508の材料としては、使用するレーザ光に対して光吸収が少ないことが好ましい。カバー層508としては、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、若しくはガラスを用いてもよい。なお、カバー層508としてポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂、若しくはガラスを使用する場合には、例えば、光硬化型樹脂(特に、紫外線硬化型樹脂が好ましい)や遅効性熱硬化型樹脂等の樹脂によって第Nの情報層において接触する第1の誘電体膜に張り合わせることにより、カバー層508を形成する。
各情報層における反射膜510にはAgやAg合金等が用いられ、反射膜510の膜厚は3nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。その理由は、反射膜510の膜厚が3nmより薄い場合には、冷却能力が不足し、信号振幅低下が大きくなるため好ましいものではない。一方、250nmより厚い場合には、冷却能力は変わらないが、製造時間、材料費が増大して、製造コストが高くなるという問題がある。
各情報層において、反射膜510上に形成される第2の誘電体膜511には、例えば、SiO2、ZrO2、Cr2O3、In2O3、TiO2等の酸化物、またはそれらの複合酸化物、若しくは窒化物、またはZnS−SiO2等の材料が用いられる。より好ましくは、波長405nmに対する消衰係数が0.15以下の光吸収が少ない材料を用いることである。第2の誘電体膜511の膜厚としては、3nm〜50nmであることが好ましい。その理由は、第2の誘電体膜511の膜厚が3nmより薄い場合には信号振幅の低下が大きくなり、50nmより厚い場合には膜の吸収による透過率低下が大きくなる。
各情報層における界面膜512には、例えば、SiO2、ZrO2、Cr2O3、In2O3、TiO2等の酸化物、またはそれらの複合酸化物、若しくは窒化物等が用いられる。より好ましくは、波長405nmに対する消衰係数が0.15以下の光吸収が少ない材料を用いることである。界面膜512の膜厚としては、2nm〜10nmであることが好ましい。その理由は、界面膜512の膜厚が2nmより薄い場合には、記録膜への元素拡散の抑制効果が低下し、密着性が低下する。一方、10nmより厚い場合には、膜の吸収による透過率低下が大きくなる。
各情報層における記録膜513には、GeSbTe、またはGeBiTeで構成された相変化材料が用いられる。その中でも、GeTe−Sb2Te3、GeTe―Bi2Te3の合金で形成される相変化材料は光学変化量も多く、高速な相変化が行われるためより好ましい。記録膜513の膜厚としては、2nm〜30nmであることが好ましい。その理由は、記録膜513の膜厚が2nmより薄い場合には、書き換え(消去)性能が低下し、信号振幅の低下が大きくなる。一方、30nmより厚い場合には、信号振幅が低下し、信号保存性(アーカイバル性能)が低下する。
中間の情報層である第nの情報層505、および第Nの情報層507における透過率調整膜515は、第nの情報層の透過率を調整する働きを有する。透過率調整膜515を形成することにより、記録膜513が結晶状態における当該情報層の透過率Tc(%)と、記録膜513が非晶質状態における当該情報層の透過率Ta(%)を共に高くすることができる。また、透過率調整膜515は、記録膜513において発生した熱を速やかに反射膜510へ拡散し、記録膜513を冷却する機能も有する。透過率をより高めるため、透過率調整膜515の屈折率n1および減衰係数k1は、n1≧2.0およびk1≦0.1を満たすことが好ましい。さらに好ましくは、透過率調整膜515の屈折率n1および減衰係数k1が、2.0≦n1≦3.0およびk1≦0.08を満たすことである。このように、透過率調整膜515における屈折率n1および減衰係数k1を設定することにより透過率の高い透過率調整膜515を形成することができ、好ましい中間の情報層となる。透過率調整膜515には、TiO2、ZrO2、HfO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、Bi2O3、Y2O3、またはCeO2等の酸化物、若しくは窒化物等を用いることができる。
多層情報記録媒体100における各層の膜厚を調整して、各情報層の記録膜513が初期化されて結晶状態の場合、即ち、多層情報記録媒体100に対する初期化処理が終了した形態においては、波長405nmのレーザ光に対する各情報層の反射率が、同等レベルであることが好ましい。ここで、反射率が同等レベルとは、反射率が最大となる情報層の反射率をRmax、反射率が最小となる情報層の反射率をRminとすると、(Rmax−Rmin)/Rmax≦0.5を満足することをいう。なお、カバー層508の表面からの波長405nmのレーザ光に対する反射率は約4%である。
[初期化方法]
次に、実施の形態1の初期化方法について説明する。初期化対象は、図4に示した3層以上の情報層を有する多層情報記録媒体100である。
図6は、実施の形態1の初期化方法における大きな流れを示すフローチャートである。最初に、ステップS1において初期化装置が起動して初期化が開始される。具体的には、初期化対象である多層情報記録媒体100が、スピンドルモータ2を設けた情報記録媒体装着部に装着されて、回転する。次に、ステップS2において、光ビームが入射される光ビーム入射面から最も遠い位置にある情報層、即ち、多層情報記録媒体100における第1の情報層502の記録膜に対する初期化処理が行われる。第1の情報層502の記録膜に対する初期化処理が終了すると、次の第2の情報層の記録膜に対する初期化処理を行う。第2の情報層の記録膜に対する初期化処理が終了すると、次の情報層であるカバー層508の方向にある情報層の記録膜に対する初期化処理を行う。このように、基板501側からカバー層508の方向に向かって各情報層の記録膜に対して順次初期化処理が行われる。図6に示すフローチャートにおいては、ステップS(n+1)として、中間の情報層である第nの情報層505の初期化処理を行っており、ステップS(N+1)として、カバー層508に最も近い情報層、即ち光ビーム入射面に最も近い第Nの情報層507の初期化処理を行っている。但し、nとNは、2≦n<Nの関係を有する。ステップS(N+1)において、多層情報記録媒体100における光ビーム入射面に最も近い第Nの情報層507の記録膜に対する初期化処理が終了すると、全ての情報層に対する初期化処理が終了し、スピンドルモータ2の回転を停止して当該多層情報記録媒体100に対する初期化が完了する(ステップS(Final))。
実施の形態1の初期化方法においては、図6に示すステップS2の第1の情報層502に対する初期化処理は、初期化用光ビームである第1の光ビームAを用いてフォーカス調整を行い、その調整結果に基づいて初期化処理を行っている。これは、第1の情報層502においては透過率を低くする必要がないため、第1の情報層502からの反射光量が多くなるよう設定されているためである。
なお、実施の形態1の初期化方法においては、第1の光源10からの第1の光ビームAの波長が805nmであり、第2の光源11からの第2の光ビームBの波長が、当該多層情報記録媒体100の記録再生の光ビームと同じ405nmである。
図7は、図6に示したステップS(n+1)における第nの情報層505の初期化処理の詳細ステップを示すフォローチャートである。即ち、中間の情報層である第nの情報層505における初期化処理は全て同じステップにより実行される。
最初に、ステップS101において、当該第nの情報層505の初期化処理のための初期設定が行われる。具体的には、移送台4を初期化開始位置に移動し、当該多層情報記録媒体100のカバー層508の表面(光ビーム入射面)と対物レンズ20(図2参照)との間を予め設定されている所定の距離に調整する。
次に、ステップS102において、第1の光源10および第2の光源11を予め設定したパワーで発光させる。
次に、ステップS103において、第1の光源10からの第1の光ビームAを用いて部分初期化を行う。この部分初期化は、当該多層情報記録媒体100において記録再生に用いない領域(フォーカス調整用初期化領域、例えば、ディスクの最内周の領域)における記録膜の一部を初期化(結晶化)するものである。部分初期化は、初期化(結晶化)に十分な第1の光ビームAのフォーカス位置を、多層情報記録媒体100に対して、厚み方向(上下方向)に相対的に往復移動させるものである。部分初期化において、第1の光源10は光学コントローラ8からの制御信号に基づき第1の駆動回路6Aにより駆動される。このように、初期化に十分なパワーを有する第1の光ビームAのフォーカス位置を厚み方向(上下方向)に振ることにより、第nの情報層の記録膜を含め他の情報層の記録膜の一部が初期化される。
上記の部分初期化において、第1の光ビームAの振り幅(上下の移動距離)は、第nの情報層505の記録膜の一部が確実に初期化されるように、第1の情報層501から第Nの情報層507の全ての記録膜の一部が確実に初期化されるように、設定されている。このように、第nの情報層505の記録膜の一部が初期化されることにより、フォーカス調整用の第2の光ビームB(波長が405nm)に対して、第nの情報層505の記録膜からの反射光量が多くなり、第nの情報層505において十分大きなレベルを持つフォーカスエラー信号が検出される。
部分初期化における第1の光ビームAのフォーカス位置の厚み方向へ往復動作(上下動作)の回数は、光学コントローラ8においてカウントされており、そのカウント数により部分初期化は制御されている。
なお、多層情報記録媒体100において、カバー層508の表面である光ビーム入射面から基板501側への方向(以後、上方向と称する。)と、その反対である基板501側から光ビーム入射面への方向(以後、下方向と称する。)と、において第1の光ビームAのパワーを変えている。例えば、下方向へ移動するときのパワーが、上方向へ移動するときのパワーより高いことがより好ましい。これは、上方向であるカバー層508側から基板501側に移動するときのパワーが高い場合には、カバー層508に近い情報層が基板501に近い情報層より先に初期化されるためである。このように、カバー層508に近い手前側の情報層が、基板501に近い奥側の情報層より先に初期化されると、第1の光ビームAの波長に対して、初期化された手前側の情報層の透過率が大きく低下し、奥側である基板501に近い情報層にエネルギーが入らなくなり、部分的な初期化が困難になるためである。
ステップS104においては、第2のフォーカスエラー回路27からのフォーカスエラー信号が切り替え回路28を介して、フォーカス位置制御回路29に入力される。フォーカス位置制御回路29は、フォーカスエラー検出器23からのフォーカスエラー信号に基づいて、ボイスコイル19を駆動制御して対物レンズ20の位置調整を行い、第2の光ビームBのフォーカスを第nの情報層505の記録膜513の位置に合わせている。
次に、ステップS105において、そのときのフォーカスエラー信号に基づいて第nの情報層505の記録膜513に対して第2の光ビームBのフォーカスが外れていないかを確認する。フォーカスが外れていた場合には、ステップS106へ移行する。
ステップS106において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)以内であれば、ステップS103の部分初期化以降のステップを再度行う。一方、ステップS106において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)を超えたことを検出した場合には、当該多層情報記録媒体100において異常があると判断されて、ステップS111へ移行して、第1の光ビームAおよび第2の光ビームBを消光して、初期化処理動作を強制的に終了させる。
ステップS105において、フォーカス外れが発生していない場合には、ステップS107において、第1の光ビームAを初期化に適したパワーに設定する。そして、ステップS108において、移送台4の移動が開始される。
なお、ステップS107とステップS108における第1の光ビームAのパワー設定と、移送台4の移動開始の各ステップは、順番が逆になってもよい。また、ステップS101からステップS108までのステップは、当該多層情報記録媒体100におけるデータ記録再生の領域外で行わなければならない。
ステップS109においては、移送台4が駆動されて、予め決められた送り速度で、多層情報記録媒体100の半径方向に移動していく。このように、移送台4が、回転している多層情報記録媒体100の半径方向に移動しつつ、所定のパワーに設定された第1の光ビームAにより当該多層情報記録媒体100が照射されることにより、第nの情報層505の記録膜に対する初期化が行われる。
ステップS109の初期化処理が所定期間経過すると、ステップS110において、移送台4が初期化終了位置に達したか否かが判定される。移送台4が初期化終了位置に達していない場合には、ステップS104に戻り、第2の光ビームBによるフォーカス調整を行い、そのときのフォーカスエラー信号に基づいて第nの情報層505の記録膜513に対して第2の光ビームBのフォーカスが外れていないかが確認される。そして、ステップS106からステップS110までのステップが繰り返される。
ステップS110において、移送台4が初期化終了位置に達したと判定された場合には、ステップS111において第1の光ビームAおよび第2の光ビームBが消光されて、第nの情報層505の記録膜に対する初期化処理が終了する。
図7に示すフローチャートは、第nの情報層505の記録膜513に対する初期化処理であるが、光ビーム入射面に最も近い第Nの情報層507の記録膜513に対する初期化処理に関しても、実施の形態1の初期化方法においては同様の処理が行われる。
また、図7に示したフローチャートにおいては各情報層の記録膜に対する初期化処理動作のそれぞれのステップにおいて、部分初期化(ステップS103)を行った後にフォーカス調整を行う例で説明したが、当該多層情報記録媒体100に対して最初に行った部分初期化を利用して、その後のステップにおけるフォーカス調整を行って当該情報層に対する初期化処理を行ってもよい。
なお、実施の形態1の初期化方法においては、第1の情報層502の記録膜513の初期化処理が、初期化用の第1の光ビームAを用いてフォーカス調整を行っている例で説明したが、第1の情報層502の記録膜に対する初期化処理は、他の初期化方法でもよい。即ち、図7に示した第nの情報層505の記録膜に対して行った初期化方法を第1の情報層502に対して行ってもよい。
また、実施の形態1の初期化方法において、第Nの情報層507の記録膜の初期化処理は、図7に示したように、部分初期化後にフォーカス調整用の第2の光ビームBを用いてフォーカス調整を行い、その調整結果に基づいて第1の光ビームAにより全体の初期化処理を行う例で説明したが、第Nの情報層507の記録膜に対する初期化処理は、第1の光ビームAによりフォーカス調整を行い、その調整結果に基づいて第1の光ビームAにより初期化処理を行ってもよい。これは、光ビーム入射面に最も近い第Nの情報層507の記録膜に関しては、前述の図11Eにおいて第4の情報層308のフォーカスエラー信号に示したように、第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号においても、レベルが高く、第Nの情報層507の記録膜513にフォーカスを合わせることが可能であるためである。
以上のように、本発明に係る実施の形態1の初期化方法および初期化装置においては、多層情報記録媒体における各情報層の記録膜に対して、高精度にフォーカス調整を行うことができ、各記録膜に対して確実な初期化処理を行うことが可能となる。
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2の初期化方法および初期化装置について説明する。なお、実施の形態2において前述の実施の形態1と異なる点は、初期化方法である。実施の形態2の初期化装置は、実施の形態1の初期化装置の構成と実質的に同様の構成を有するため、実施の形態2において実施の形態1と同じ機能、構成を示すものには同じ符号を付して、その説明は実施の形態1の説明を適用する。
実施の形態2の初期化方法は、2つの光ビームの波長差により生じる集光された光ビームの色収差を補償して、初期化ムラをなくし、精度の高い安定した初期化処理を行うことができる初期化方法である。
実施の形態2の初期化方法においても、前述の図6に示した実施の形態1の初期化方法と同様に、基板側の第1の情報層502からカバー層側の第Nの情報層507の各記録膜に対して、順番に初期化処理を行っている。
図8に示すフローチャートは、図6に示したステップS(n+1)の第nの情報層505の初期化処理の詳細ステップを示すフローチャートである。即ち、中間の情報層である第nの情報層505における初期化処理は、実施の形態2の初期化方法においても、全て同じステップにより実行される。
最初に、ステップS201において、当該第nの情報層505の初期化処理のための初期設定が行われる。具体的には、移送台4を初期化開始位置に移動し、当該多層情報記録媒体100のカバー層508の表面(光ビーム入射面)と対物レンズ20(図2参照)との間を予め設定されている所定の距離に調整する。
次に、ステップS202において、第1の光源10および第2の光源11を予め設定したパワーで発光させる。
次に、ステップS203において、第1の光源10からの第1の光ビームAを用いて部分初期化を行う。この部分初期化は、当該多層情報記録媒体100において記録再生に用いない領域(フォーカス調整用初期化領域、例えば、ディスクの最内周の領域)における記録膜の一部を初期化(結晶化)するものである。部分初期化は、前述の実施の形態1において説明したように、初期化(結晶化)に十分な第1の光ビームAのフォーカス位置を、多層情報記録媒体100に対して、厚み方向(上下方向)に相対的に往復移動させるものである。このように、初期化に十分なパワーを有する第1の光ビームAのフォーカス位置を厚み方向(上下方向)に振ることにより、第nの情報層の記録膜を含め他の情報層の記録膜の一部が初期化される。実施の形態2の初期化方法における部分初期化は、実施の形態1の初期化方法と同じように実行される。
実施の形態2の初期化方法において、部分初期化における第1の光ビームAのフォーカス位置の厚み方向へ往復動作(上下動作)の回数は、光学コントローラ8においてカウントされており、そのカウント数により部分初期化が制御されている。
また、実施の形態2の初期化方法において、実施の形態1の初期化方法と同様に、多層情報記録媒体100において、カバー層508の表面である光ビーム入射面から基板501側への方向(上方向)と、基板501側から光ビーム入射面への方向(下方向)と、において第1の光ビームAのパワーを変えており、下方向へ移動するときのパワーが、上方向へ移動するときのパワーより高く設定されている。
ステップS204においては、第2のフォーカスエラー回路27からのフォーカスエラー信号が切り替え回路28を介して、フォーカス位置制御回路29に入力される。フォーカス位置制御回路29は、フォーカスエラー信号に基づいて、ボイスコイル19を駆動制御して、対物レンズ20の位置調整を行い、第2の光ビームBのフォーカスを第nの情報層505の記録膜513の位置に合わせている。
次に、ステップS205において、そのときのフォーカスエラー信号に基づいて第nの情報層505の記録膜513に対して第2の光ビームBのフォーカスが外れていないかを確認する。フォーカスが外れていた場合には、ステップS206へ移行する。
ステップS206において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)以内であれば、ステップS203の部分初期化以降のステップを再度行う。一方、ステップS206において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)を超えたことを検出した場合には、当該多層情報記録媒体100において異常があると判断されて、ステップS207へ移行して、第1の光ビームAおよび第2の光ビームBを消光して、初期化処理動作を強制的に終了させる。
ステップS205において、フォーカス外れが発生していない場合には、ステップS208において、第1の光ビームAを初期化に適したパワーに設定する。そして、ステップS209において、移送台4の移動が開始される。
なお、ステップS208とステップS209における第1の光ビームAのパワー設定と、移送台4の移動開始の各ステップは、順番が逆になってもよい。
次に、ステップS210において、第1のフォーカスエラー回路26からのフォーカスエラー信号が切り替え回路28を介して、フォーカス位置制御回路29に入力される。フォーカス位置制御回路29においては、第1のフォーカスエラー回路26からのフォーカスエラー信号に従って、対物レンズ20に対する位置の微調整を行い、第2の光ビームBのフォーカスを第nの情報層505の記録膜513に高精度に合わせる。
実施の形態2の初期化方法においては、第2のフォーカスエラー回路27からのフォーカスエラー信号によりフォーカス調整を行った後に、さらに第1のフォーカスエラー回路26からのフォーカスエラー信号によりフォーカス調整を行っている。これは、2つの光ビームA,Bが集光された光ビームの色収差を補償して、初期化におけるムラをなくし、精度の高い安定した初期化処理を行うためである。
次に、ステップS211において、第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号に基づいて第nの情報層505の記録膜513の位置に対して第1の光ビームAのフォーカスが外れていないかを確認する。フォーカスが外れていた場合には、ステップS212へ移行する。
ステップS212において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)以内であれば、ステップS210の第1の光ビームAによるフォーカス調整、およびステップS211のフォーカス外れを再度行う。一方、ステップS212において、フォーカス外れが所定回数(例えば、5回)を超えたことを検出した場合には、当該多層情報記録媒体100において異常があると判断されて、ステップS207へ移行して、第1の光ビームAおよび第2の光ビームBを消光して、初期化処理動作を強制的に終了させる。
なお、ステップS210における第1の光ビームAによるフォーカス調整ステップ、およびステップS211におけるフォーカス外れ検出ステップは、移送台4を移動させながら行ってもよいし、一旦移送台4を停止させてから行ってもよい。但し、ステップS201からステップS212の各ステップは、当該多層情報記録媒体100におけるデータ領域外で行わなければならない。したがって、後述するステップS214の初期化処理が始まるときには、当該多層情報記録媒体100における第nの情報層505の記録膜513におけるデータ領域の開始点となるよう設定されている。
次に、ステップS213において、第2の光ビームBが消光される。なお、初期化対象の多層情報記録媒体100が第2の光ビームBにより不要な初期化されるおそれが無い場合には、ステップS213は省略することができる。
ステップS209においては、移送台4が駆動されて、予め決められた送り速度で、当該多層情報記録媒体100の半径方向に移動していく。このように、移送台4が、回転している多層情報記録媒体100の半径方向に移動し、初期化すべき記録膜の開始点に配置されたとき、所定のパワーに設定された第1の光ビームAにより当該多層情報記録媒体100が照射されることにより、第nの情報層505の記録膜に対する初期化が行われる(ステップ214)。
なお、ステップ209における移送台4の移動開始ステップは、ステップS213の第2の光ビームBの消光ステップの後、ステップS214の初期化処理の前に行ってもよい。
ステップS214の初期化処理が所定期間経過すると、ステップS215において、移送台4が初期化終了位置に達したか否かが判定される。移送台4が初期化終了位置に達していない場合には、ステップS210に戻り、第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号に基づいてフォーカス調整が行われる。そして、ステップS211において、第nの情報層505の記録膜に対するフォーカス外れが生じていないかが確認される。そして、初期化処理が再度行われる。このとき、第2の光ビームBは消光しているため、当然ステップS213は実行されない。
ステップS215において、移送台4が初期化終了位置に達したと判定された場合には、ステップS216において第1の光ビームAが消光されて、第nの情報層505の記録膜513に対する初期化処理が終了する。
図8に示すフローチャートは、第nの情報層505の記録膜に対する初期化処理であるが、光ビーム入射面に最も近い第Nの情報層507の記録膜に対する初期化処理に関しても、実施の形態2の初期化方法においては同様の処理が行われる。
また、図8に示したフローチャートにおいては各情報層の記録膜に対する初期化処理動作のそれぞれのステップにおいて、部分初期化(ステップS203)を行った後にフォーカス調整を行う例で説明したが、当該多層情報記録媒体100に対して最初に行った部分初期化を利用して、その後のステップにおけるフォーカス調整を行って当該情報層に対する初期化処理を行ってもよい。
なお、実施の形態2の初期化方法において、第1の情報層502の記録膜の初期化処理は、初期化用の第1の光ビームAを用いてフォーカス調整を行ってもよいし、図8に示した第nの情報層505の記録膜に対して行った初期化方法を第1の情報層502に対して同様に行ってもよい。
また、実施の形態2の初期化方法において、第Nの情報層507の記録膜の初期化処理は、図8に示した初期化方法でもよいし、第1の光ビームAによりフォーカス調整を行い、その調整結果に基づいて第1の光ビームAにより初期化処理を行ってもよい。これは、光ビーム入射面に近い第Nの情報層507の記録膜に関しては、前述の図11Eにおいては第4の情報層308に示したように、第1の光ビームAによるフォーカスエラー信号においても、レベルが高く、第Nの情報層507の記録膜513にフォーカスを合わせることが可能であるためである。
以上のように、本発明に係る実施の形態2の初期化方法および初期化装置においては、複数の情報層を有する多層情報記録媒体に対して、確実にフォーカス調整を行うことが可能となり、ムラのない初期化を確実に行うことができる。また、実施の形態2の初期化方法および初期化装置は、初期化を行う第1の光ビームAにおいても、初期化を実行する情報層の記録膜に対するフォーカス調整を行うため、より均一な、ムラの無い初期化を形成することが可能となる。
実施の形態1および実施の形態2を用いて説明したように、本発明の情報記録媒体の初期化方法および初期化装置においては、3つ以上の複数の情報層を有する多層情報記録媒体の全ての情報層を安定して、且つ確実に初期化することができる。
以下、本発明の情報記録媒体の初期化方法および初期化装置に関する具体的な実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1においては、3層の情報層(N=3)有する多層情報記録媒体に対して、前述の実施の形態1において説明した図7で示した初期化方法を実施した。
初期化対象である多層記情報記録媒体の各情報層の記録膜にはGeBiTeで組成された相変化材料を適用し、初期化後の各情報層からの反射率が3〜4%となるように設計した。
初期化方法に用いられる2つの光ビームに関して、第1の光ビームAの波長が810nmであり、第2の光ビームBの波長が405nmである。第1の光ビームAに関しては、そのスポット形状が、多層情報記録媒体の径方向に96μmの長さであり、周方向に1μmの長さの長円形になるよう光学機構を設計した。なお、第2の光ビームBのスポット形状は、直径が1μmの円形である。
実施例1の初期化方法において、図7に示したステップS103における第1の光ビームAによる部分初期化は、全ての情報層における記録膜に対して部分初期化を行った。即ち、第1の光ビームAのフォーカス位置を当該多層情報記録媒体の厚み方向(上下方向)に大きく複数回往復移動させて、全ての記録膜の部分初期化を行った。
3層の情報層を有する多層情報記録媒体に対する実施例1の初期化方法においては、図7のフローチャートに示す実施の形態1の初期化方法を用いて実行した。
始めに、基板側である第1の情報層の初期化処理を行った。この第1の情報層に対する初期化処理においては、図7に示すステップS103の部分初期化を行わずに、第1の光ビームAによりフォーカス調整し、そして第1の光ビームAにより初期化を行った。初期化処理時における、多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは2400mWであった。
第1の情報層の記録膜の初期化処理の終了後、第2の情報層の記録膜に対する初期化処理を実行した。第2の情報層の初期化処理においては、図7に示したステップS103の部分初期化を全ての情報層の記録膜に対して実行した。この初期化処理時における多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは1500mWであった。
第2の情報層の記録膜の初期化処理の終了後、最後に第3の情報層の記録膜に対する初期化処理を実行した。第3の情報層の初期化処理においては、図7に示すステップS103の部分初期化を行わずに、第1の光ビームAによりフォーカス調整し、そして第1の光ビームAにより初期化を行った。初期化処理時における、多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは1000mWであった。
上記のように、3層の情報層を有する多層情報記録媒体において、中間の情報層(第2の情報層)に対して、図7に示した実施の形態1の初期化方法を実行することにより、全ての情報層における記録膜は安定してムラ無く初期化することができた。
実施例2においては、4層の情報層(N=4)有する多層情報記録媒体に対して、前述の実施の形態2において図8を用いて説明した初期化方法を実施した。
実施例2における初期化対象である多層記情報記録媒体は、前述の実施例1の多層情報記録媒体と同じように、各情報層の記録膜にはGeBiTeで組成された相変化材料を適用し、初期化後の各情報層からの反射率が3〜4%となるように設計した。
また、実施例2の初期化方法に用いられる2つの光ビームの仕様は、前述の実施例1の第1の光ビームAおよび第2の光ビームBと同じである。また、実施例1および実施例2において用いた初期化装置は、実施の形態1において説明した初期化装置である。
4つの情報層を有する多層情報記録媒体に対する実施例2の初期化方法においては、図8のフローチャートに示す実施の形態2の初期化方法を用いて実行した。
始めに、基板側である第1の情報層の初期化処理を行った。この第1の情報層に対する初期化処理においては、図8に示すステップS203の部分初期化を行わずに、第1の光ビームAによりフォーカス調整し、そして第1の光ビームAにより初期化を行った。初期化処理時における、多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは3800mWであった。
第1の情報層の記録膜の初期化処理の終了後、第2の情報層の記録膜に対する初期化処理を実行した。第2の情報層の初期化処理においては、図8に示したステップS203の部分初期化を全ての情報層の記録膜に対して実行した。この初期化処理時における多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは2600mWであった。
第2の情報層の記録膜の初期化処理の終了後、第3の情報層の記録膜に対する初期化処理を実行した。第3の情報層の初期化処理においては、図8に示したステップS203の部分初期化を全ての情報層の記録膜に対して実行した。この初期化処理時における多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは1400mWであった。
第3の情報層の記録膜の初期化処理の終了後、最後に第4の情報層の記録膜に対する初期化処理を実行した。第4の情報層の初期化処理においては、図8に示すステップS203の部分初期化を行わずに、第1の光ビームAによりフォーカス調整し、初期化を行った。初期化処理時における、多層情報記録媒体に対する線速度は8m/sであり、移送台4の送り速度は20μmであり、第1の光源10のパワーは1000mWであった。
上記のように、4層の情報層を有する多層情報記録媒体において、中間の情報層(第2の情報層および第3の情報層)、実施の形態2の初期化方法を実行することにより、全ての情報層における記録膜は安定してムラ無く初期化することができた。
本発明の情報記録媒体の初期化方法および初期化装置について、前述の実施例において具体例を挙げて説明したが、本発明は前述の実施例で説明したステップや構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく同様のステップや構成も本発明に含まれるものである。
本発明は、レーザ光等の照射により情報の記録再生を行う記録膜を有する情報記録媒体に対して確実に初期化することができる初期化方法および初期化装置を提供するものであるため、情報記録媒体の初期化の分野において優れた効果を有し、有用である。特に、本発明は、多層情報記録媒体、例えば大容量の"Blu-ray Disc"、直径6cmおよび8cmのような小径で大容量のディスクの初期化に適用することができ、また次世代のSIL(Solid Immersion Lens)型近接場光多層ディスクの初期化にも適用することができるため、汎用性が高いものである。
1 初期化装置
2 スピンドルモータ
3 光学ヘッド
4 移送台
5 移動手段
6 駆動部
7 フォーカス位置制御部
8 光学コントローラ
100 多層情報記録媒体
10 第1の光源
11 第2の光源
12,13 コリメータレンズ
14,15 ビームスプリッター
16,17 1/4波長板
18 波長選択性ミラー
19 ボイスコイル
20 対物レンズ
21 光路補正手段
22 第1のフォーカスエラー検出器
23 第1のフォーカスエラー検出器
26 第1のフォーカスエラー回路
27 第2のフォーカスエラー回路
28 切り替え回路