JPWO2009005124A1 - 乳酸菌由来の2本鎖rna - Google Patents
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Abstract
Description
これらの関与成分の中で、核酸成分として報告があるのは、DNAのCpGモチーフ(例えば、非特許文献5参照)、ATモチーフ(例えば、非特許文献6参照)である。
その中でもTLR3は、ウイルスの2本鎖RNAを認識し、MyD88非依存的にインターフェロンβプロモーターの活性化及びインターフェロンβの産生を誘導することが知られている。そして、インターフェロンβは、樹状細胞を活性化させて、インターロイキン12、TNFなどの炎症性サイトカインを産生させる。さらに、インターロイキン12は、ナイーブT細胞を1型ヘルパーT(Th1)細胞へと分化誘導し、細胞性免疫を確立させる。
また、非常に報告は少ないながら、細菌があるストレス条件下で2本鎖RNAを形成することは知られている。例えば、大腸菌において、鉄イオン枯渇ストレスによりRyhBという低分子RNAが合成される。この低分子RNAは、sodB mRNAを含む鉄結合タンパク質をコードするmRNAと部分的な塩基対を形成し、2本鎖RNAが生じることが知られている(例えば、非特許文献8参照)。しかし、これらの2本鎖RNAが免疫調節作用を有するか否かは知られていない。また、これまでのところ、乳酸菌において2本鎖RNAが存在するという報告はない。
1つの解決策は、安全性が確保された人工的な2本鎖RNA分子を利用することである。実際、人工的な2本鎖RNA分子であるPolyI:PolyCは、インターフェロン誘導効果があることから、古くから抗がん剤や抗ウイルス薬として検討が行われている。しかし、一般に生体に使用する上では、必要な薬物を細胞に効果的に取り込ませるためのシステムが必要である。例えば、PolyI:PolyCを人体で有効に作用させるためには、リポソーム製剤化することが必要である(例えば、非特許文献9参照)。
このような背景から、免疫賦活剤として利用でき、安全で、かつ、細胞に効率的に取り込まれる2本鎖RNAが求められている。
また、乳酸菌の一種であるテトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属などの菌体が、免疫調節作用を有する2本鎖RNAを菌体中に生産することを明らかにした。醤油醸造において代表的な乳酸菌の一種であるテトラジェノコッカス属においては、ストレス存在下で培養することにより、免疫調節作用を有する2本鎖RNAの含有量を大幅に増加させることができることを見出した。
すなわち本発明により、安全で安価な免疫賦活剤、抗アレルギー剤などの免疫調節剤を提供することができる。
(1)乳酸菌由来の2本鎖RNA。
(2)乳酸菌がテトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、上記(1)記載の乳酸菌由来の2本鎖RNA。
(3)免疫調節作用がTRIF依存性シグナル変換経路又はMyD88依存性シグナル変換経路の賦活化であることを特徴とする、上記(1)〜(2)記載の乳酸菌由来の2本鎖RNA。
(4)TRIF依存性シグナル変換経路又はMyD88依存性シグナル変換経路の賦活化がトル様(Toll−like)受容体3(TLR3)の活性化であることを特徴とする、上記(3)記載の乳酸菌由来の2本鎖RNA。
(5)乳酸菌由来の2本鎖RNAを有効成分とする免疫調節剤。
(6)乳酸菌がテトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、上記(5)記載の免疫調節剤。
(7)ストレス条件下で乳酸菌を培養することによって菌体内に2本鎖RNAを生産させることを特徴とする、乳酸菌由来の2本鎖RNAの製造法。
(8)乳酸菌がテトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、上記(7)記載の乳酸菌由来の2本鎖RNAの製造法。
(9)テトラジェノコッカス属に属する乳酸菌を塩分0.5〜25%の乳酸菌用培地で培養することによって菌体内に2本鎖RNAを生産させることを特徴とする、乳酸菌由来の2本鎖RNAの製造法。
(1)乳酸菌由来の2本鎖RNA
生体内の免疫系は、細菌、酵母、カビ、ウイルスなどの微生物による感染や、腫瘍に対する防御、アレルギーの発症に重要な役割を果たしており、その防御機構の中心はリンパ球と抗原提示細胞である。リンパ球と抗原提示細胞は抗原特異的、また、抗原非特異的に活性化され、異物を排除する能力を高める。
リンパ球や抗原提示細胞の活性化において、インターロイキン12は、NK細胞やT細胞に作用してインターフェロンγや腫瘍壊死因子αの産生を誘導し、抗原提示細胞を活性化すること、NK細胞及びCD8+T細胞の細胞障害活性を増強すること、インターロイキン2と相乗的に作用して細胞障害性リンパ球を活性化するとともにリンホカイン活性化キラー細胞を誘導すること、細胞性免疫を補助するヘルパーT細胞(Th0)のTh1タイプへの分化や、そのバランス(Th1/Th2バランス)の制御にも関与していることが知られている。
このようにインターロイキン12は、自然免疫及び細胞性免疫の強化による感染防御、抗腫瘍活性など免疫賦活活性増強、また、アレルギー予防において重要な役割を担っている。
インターロイキン12産生促進活性は、抗原提示細胞を含有する細胞、例えば、マウス腹腔滲出マクロファージ、マウス脾臓懸濁細胞又は骨髄由来樹状細胞を組織培養プレートで培養し、乳酸菌由来の2本鎖RNA含有物を添加して一定期間培養し、培地中のインターロイキン12濃度をエンザイムイムノアッセイで測定することにより容易に判定することができる。
まず、(a)牛膵臓由来RNaseAを作用させることにより乳酸菌菌体の免疫調節作用が低下することを確認する。これにより、RNA画分(1本鎖RNA及び2本鎖RNA)の存在と、この画分に免疫調節作用があることが証明できる。
その上で、(b)免疫調節作用には、1本鎖RNAを認識するTLR7ではなく、2本鎖RNAを認識するTLR3が必要であることを確認する。
その方法としては、TLR7を欠損した細胞及びTLR3を欠損した細胞を使用して免疫調節作用を評価し、TLR3を欠損した細胞においては正常な細胞を使用した場合と比較して活性が低下することを確認すればよい。
ここで、(b)の代わりに、牛膵臓由来RNaseAに対する感受性の違いを利用して、(c)0.3M以上のNaCl存在下で牛膵臓由来RNaseAを作用させた場合にはNaCl非存在下で作用させた場合と比較して免疫活性が高いことを確認しても良い。なぜなら、牛膵臓由来RNaseAは、0.3M以上のNaCl存在下では1本鎖RNAのみを分解し、2本鎖RNAは分解しないからである。
乳酸菌とは、例えば、テトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属等に属する菌株であり、より具体的には、テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株、テトラジェノコッカス・ハロフィラスNBRC12172株、ペディオコッカス・ペントサセウスOS株(NITE P−354)、ペディオコッカス・ペントサセウスNRIC1915株、ペディオコッカス・ペントサセウスNRIC0099株、ペディオコッカス・ペントサセウスNRIC0122株、ラクトバチルス・プランタラムNRIC1930株、ラクトバチルス・プランタラムNRIC1067株、ラクトバチルス・デルブリュッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスNRIC1688株、ラクトバチルス・デルブリュッキー・サブスピーシーズ・ラクティスNRIC1683株、ラクトバチルス・ブレビスNRIC1713株、ラクトバチルス・ペントーサスNRIC0391株、ラクトバチルス・ペントーサスNRIC0396株、ラクトバチルス・ペントーサスNRIC1836株、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイNRIC0644株、ラクトバチルス・パラカゼイ・サブスピーシーズ・パラカゼイNRIC1936、ストレプトコッカス・サーモフィラスNRIC0256株、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・メセンテロイデスNRIC1982株、ロイコノストック・シュードメセンテロイデスATCC12291株、ロイコノストック・ラクティスNRIC1582株、などである。
なお、本発明の一例であるテトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株は、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6所在の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに2007年6月25日付けで寄託され、受託番号 FERM AP−21310が付与されている。
上記の乳酸菌は、醤油諸味、漬物、市販の乳酸菌飲料等から分離し利用することが可能である。乳酸菌の培養は、菌体が2本鎖RNAを生産する限り、どのように培養してもよい。
TLRが細菌等の構成成分を認識して生じたシグナルは、細胞内において、アダプター分子であるMyD88、TRIF、TIRAP等を介して変換され、下流のNF−kBやMAPKを活性化する。
したがって、TLR3を欠損した細胞において免疫調節作用が低下する場合、そのアダプター分子であるTRIFに依存したシグナル変換経路が、免疫調節作用にかかわっていることになる。また、シグナル変換経路がMyD88に依存していることを証明するには、MyD88を欠損する細胞を用いて評価を行った場合に免疫調節作用が低下することを示せばよい。
テトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属などに属する乳酸菌の菌体に含まれる2本鎖RNAを摂取する場合、その摂取する乳酸菌の菌体量は、例えば、1〜1000mg/体重60kg/日である。
免疫細胞を賦活化する活性を有する乳酸菌由来の2本鎖RNAは、単独で使用してもよいし、飲食品、医薬品に添加して使用することもできる。
本発明の乳酸菌由来の2本鎖RNAは、乳酸菌を培養することによって菌体内に生産させることができる。例えば、テトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属などから選択される1種又は2種以上の乳酸菌を培養し、2本鎖RNAを含有する培養物、菌体又は菌体成分を採取することにより得られる。
菌体が2本鎖RNAを生産する限り、乳酸菌の培地及び培養条件は特に限定されないが、ストレス条件下で乳酸菌を培養することによって菌体内に2本鎖RNAをより多く生産させることができる。ここでストレス条件下とは、高塩濃度、高温、貧栄養、低pHストレスなどを意味する。
特にテトラジェノコッカス属に属する乳酸菌の場合、塩分0.5〜25%、好ましくは5〜10%を含む培地を使用して培養することが望ましい。塩分濃度が0.5%以下、あるいは25%以上の培地では、テトラジェノコッカス属に属する乳酸菌は増殖が極端に遅くなるため、実用的とはいえない。
例えば、抽出した核酸をエタノール存在下でセルロースへ吸着させ、洗浄後、エタノール不含有の緩衝液により乳酸菌由来の2本鎖RNAが濃縮された画分を溶出させる。この画分に対し、DNase処理及び1本鎖RNAのみを切断する条件(例えば、0.3M NaCl)下で牛膵臓由来RNaseA処理を行うことで、乳酸菌由来の2本鎖RNAを精製できる。
テトラジェノコッカス属は、例えば、食塩0.5〜25%、望ましくは5〜10%を含有するMRS培地(BD社製)に、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属及びロイコノストック属に属する乳酸菌は、通常のMRS培地に植菌し、25〜37℃で24〜72時間培養する。このようにして得られた乳酸菌培養物や乳酸菌菌体は、2本鎖RNAを含有し、また、リポソーム製剤化などの特別な処理を行わなくとも細胞に効率的に取り込ませることができる。
次いで、セルロースカラムクロマトグラフィーによって乳酸菌由来の2本鎖RNAの精製を行う。粗核酸抽出液に対し、最終濃度が15%となるようにエタノールを加える。この溶液にセルロース粉末を最終濃度5%になるよう加え、2本鎖RNAを該セルロース粉末へ吸着させる。
セルロース粉末としては、好ましくはCF11セルロース粉末(ワットマン社製)を用いる。2本鎖RNAは、15%エタノール存在下でDNA及び1本鎖RNAよりも強くセルロース粉末に吸着する。2本鎖RNAを吸着したセルロース粉末は、遠心分離によって沈殿物として回収することができる。
回収されたセルロースは、例えば、15%エタノールを含む緩衝液に再懸濁し、該懸濁液をカラムに注ぎ入れる。このカラムに15%エタノールを含む緩衝液を通過させ、乳酸菌由来の2本鎖RNA以外の吸着成分を洗い流す。
セルロースカラムに吸着された乳酸菌由来の2本鎖RNAは、エタノールを含まない緩衝液をカラムに通過させることによって回収することができる。以上の処理によって得られる液体試料をアルコール沈殿処理を行うことによって、乳酸菌由来の2本鎖RNAを得ることができる。
精製した乳酸菌由来の2本鎖RNAは、リポソーム化して生体に投与することができる。
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
加熱殺菌処理したテトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体に牛膵臓由来RNaseA処理を施し、菌体懸濁液のインターロイキン12産生促進活性を、マウス腹腔滲出マクロファージ細胞及び脾臓懸濁細胞を用いて評価した。
食塩を0.5%、5%、10%を含有したMRS培地(BD社製)に乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株を1×107個/mlとなるように接種した。48〜72時間静置培養した後、95℃で10分間の加熱殺菌を行った。その後、遠心によって培地を除去して集菌した。生理食塩水にて菌体を洗浄後、生理食塩水に1×109個/mlとなるように懸濁し、乳酸菌懸濁液を調製した。
上記乳酸菌懸濁液に10μg/mlとなるように牛膵臓由来RNaseA(Sigma社製)を添加し、37℃で1時間インキュベートを行った。その後、生理食塩水にて菌体を洗浄し、再び生理食塩水に1×109個/mlとなるように懸濁し、乳酸菌懸濁液を調製した。
チオグリコレート(BD社製)2mlを腹腔内に投与し、刺激したマウス(8週齢BALB/c、雄、チャールスリバー社より購入)から、投与3日後に無菌的に腹腔滲出マクロファージを採取した。腹腔滲出マクロファージ細胞浮遊液の細胞数を測定した後、細胞数を2×106/mlの濃度となるようRPMI完全培地で調製した。RPMI完全培地の組成は、25mM HEPES、100U/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン、50μM 2−メルカプトエタノール、2mM L−グルタミン酸加RPMI1640培地(Gibco社製)に非働化(56℃、30分)した1%ウシ胎児血清(以下「FCS」という。Invitrogen社製)を10%添加したものである。この調製済みの腹腔滲出マクロファージ細胞液を96穴組織培養プレートに1穴当たり100μlを播種した。
6週齢BALB/cマウス(日本エスエルシー社より購入)をイソフルラン吸入麻酔下で頸椎脱臼して安楽死させた後、開腹して脾臓を採取し、氷冷した1%FCS加RPMI1640培地(Sigma社製)の入った細胞培養用6cm ディッシュに入れた。2つの脾臓をハサミで細片にし、400U/mlコラゲナーゼ加基本培地(10ml)とともに50mlプラスチックチューブ(BD FALCON社製)に入れ、インキュベーター(37℃)内にて30分間スターラーで緩やかに撹拌した。
基本培地は、ペニシリン(100,000 U/L、 明治製菓社製)、ストレプトマイシン(100mg/L、 明治製菓社製)、2−メルカプトエタノール(50μM、 Gibco社製)、L−グルタミン酸(2mM、 ナカライテスク社製)、HEPES(20mM、 同仁化学研究所社製)加RPMI1640培地(Gibco社製)に56℃、30分非働化したFCS(Hyclone社製)を10%添加したものを用いた。得られた細胞懸濁液を440×gで5分間遠心した後、1%FCS加RPMI1640培地で2回洗浄した。
細胞を1%FCS加RPMI1640培地に懸濁した後、セルストレイナーで濾過し、残った細胞塊もセルストレイナー上で10mlプラスチックシリンジ(テルモ社製)のプランジャー部分で押しつぶして濾過した。
得られた細胞懸濁液を遠心して上清を吸引除去し、溶血バッファー(0.155M NH4Cl、0.01M Tris−HCl pH7.5)を5ml加え、5分間氷上に置いた後、FCS(5ml)を加えて、静かに懸濁し、1%FCS加RPMI1640培地(10ml)を加えて、400×gで7分間遠心した。1%FCS加RPMI1640培地でさらに3回洗浄した後、基本培地に懸濁した。細胞液は、血球計算板を用いて細胞数を計測した。調製した脾臓懸濁細胞は、96穴プレートに5.0×105cells/0.2ml/wellとなるように播種した。
上記のようにして得た2種類の細胞懸濁液と、牛膵臓由来RNaseA処理前後の乳酸菌懸濁液とを細胞数:乳酸菌数が1:50になるように混合し、37℃の5%炭酸ガス培養器内で24時間共培養を行った。上清を回収し、インターロイキン12濃度をエンザイムイムノアッセイにより測定した。
エンザイムイムノアッセイは、ラット抗マウスインターロイキン12抗体(Pharmingen社製)を0.2M、pH6.0のリン酸緩衝液で2μg/mlに調製した溶液を、96穴組織培養プレート1穴当たり100μl加え、室温で一晩放置しラット抗マウスインターロイキン12抗体を各穴に付着させたプレートを用いて行った。
培養上清を1穴当たり100μl加え、室温で90分間放置し、培養上清のマウスインターロイキン12をプレートに付着したラット抗マウスインターロイキン12抗体と結合させた。洗浄後、ラットビオチン化抗マウスインターロイキン12抗体(Pharmingen社製)を加え、マウスインターロイキン12に結合させた。
洗浄後、ストレプトアビジンで標識したペルオキシダーゼ酵素(Vector社製)を加え、ビオチンと結合させた。
洗浄後、TMB基質溶液(Moss/コスモバイオ社製)を1穴当たり100μl加え、室温で20分間反応させ、反応を0.5N塩酸で停止し、マイクロプレートリーダーで吸光度450nmを測定し、リコンビナントマウスインターロイキン12(Pharmingen社製)で作成した標識曲線から、培養上清中のインターロイキン12の濃度を求めた。
また、いずれの細胞を用いた場合も、培養時の培地食塩濃度が高い菌体において、免疫調節作用の低下が大きかった。このことから、培養時の培地食塩濃度が高いと、免疫調節作用を有する、RNA画分の生産量が多いことが示された。
2本鎖RNAを認識するTLR3、1本鎖RNAを認識するTLR7、免疫調節作用にかかわるシグナル変換経路のアダプター分子であるMyD88をノックアウトしたマウスから骨髄由来樹状細胞を調製し、インターロイキン12産生促進活性を測定した。
食塩を0%、5%、10%を含有したMRS培地に乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株を1×107個/ml接種した。48〜72時間静置培養した後、95℃で10分間の煮沸殺菌を行った。その後、遠心濃縮機によって培地を除去して集菌した。生理食塩水にて菌体を洗浄後、生理食塩水に1×109個/mlとなるように懸濁し、乳酸菌懸濁液を調製した。
野生型マウス及びTLR3、TLR7、MyD88をノックアウトしたマウス(6〜12週齢C57BL/6、雌、兵庫医科大学より分与)を用いて試験を行った。イソフルラン吸入麻酔下に頸椎脱臼して、安楽死させた後、下肢から大腿骨、頸骨を取り出し、氷冷した1%ウシ胎児血清(FCS、非動化したもの)加RPMI1640培地(Sigma社製)の入った細胞培養用6cmディッシュ(BD FALCON社製)に入れた。1%FCS加RPMI1640を注入して骨髄を押し出した後、懸濁した。
得られた細胞懸濁液をセルストレイナー(40μm、 BD FALCON社製)で濾過した後、440×gで5分間遠心分離した。
phycoerythrin(以下PEという)標識抗I−A抗体(Clone M5/114.14.2、 BD Pharmingen社製、 0.2mg/mL)、PE標識抗CD4抗体(Clone GK1.5、 BD Pharmingen社製、 0.2mg/mL)及びPE標識抗CD8抗体(Clone 53−6.7、BD Pharmingen社製、0.2mg/mL)をMACS running bufferでそれぞれ1000倍希釈した抗体カクテル(100μL/107 cells)及びウサギIgG(50μg/mL Zymed社製)を加え、氷上で30分間静置した。
反応液の20倍量のMACS running bufferで1回洗浄した後、MACS running buffer(0.5mL/108 cells)に懸濁し、自動磁気分離システム(Auto MACS、 Miltenyi社製)を用いてネガティブフラクションを分離した。
分離した細胞を1%FCS加RPMI1640培地で1回洗浄した後、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)加基本培地に懸濁した。
実施例1と同様に行った。結果を図3に示す。
インターロイキン12産生促進活性は、TLR3ノックアウトマウスからの骨髄由来樹状細胞で減少したが、TLR7ノックアウトマウスからの骨髄由来樹状細胞では変化がなかった。このことより、免疫調節作用を有するRNA画分は、TLR7のリガンドである1本鎖RNAではなく、TLR3のリガンドである2本鎖RNAであることが示された。
また、TLR3ノックアウトマウスからの骨髄由来樹状細胞で減少することから、TLR3のアダプター分子であるTRIFに依存したシグナル変換経路が、免疫調節作用に関係していることが示された。
MyD88ノックアウトマウスからの骨髄由来樹状細胞では、インターロイキン12産生促進活性が消失した。
これらのことから、2本鎖RNAを含有するテトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221菌体による免疫調節作用においては、TRIF依存性シグナル変換経路とMyD88依存性シグナル変換経路が協調的に働いていることが示された。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体において、免疫調節作用を有する2本鎖RNAが生産されることを、牛膵臓由来RNaseAに対する感受性の違いを利用して確認した。
10%の塩を含むMRS培地にテトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株を1×106個/mlとなるように接種した。72時間静置培養した後、95℃で10分間の加熱殺菌を行った。サンプルから2画分採取し、片方は10mM Tris−HCl(pH8.0)で、もう片方は0.3M NaClを含む10mM Tris−HCl(pH8.0)で洗浄後、それぞれの液に懸濁した。懸濁液は、OD600nmの値が10になるように調製した。
上記乳酸菌懸濁液に10μg/mlとなるように牛膵臓由来RNaseA(Sigma社製)を添加し、37℃で2時間インキュベートを行った。本酵素処理において、NaCl非存在下では1本鎖RNAと2本鎖RNAの両方が分解され、0.3M NaCl存在下では、1本鎖RNAのみが分解される。酵素処理後、それぞれ10mM Tris−HCl(pH8.0)及び0.3M NaClを含む10mM Tris−HCl(pH8.0)で2回洗浄し、その後RPMI完全培地に懸濁した。懸濁液は、OD600nmの値が0.125になるように調製した。
実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に行った。
結果を図4に示す。NaCl非存在下で酵素処理を行ったサンプルでは、インターロイキン12産生促進活性が大きく低下したが、0.3M NaCl存在下酵素処理を行ったサンプルでは、インターロイキン12産生促進活性の低下が少なかった。これにより、2本鎖RNA画分にインターロイキン12産生促進活性を有することが示された。
加熱殺菌した乳酸菌懸濁液をRNaseA処理することにより、菌体内のRNAが分解されうることを以下のようにして確認した。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体において、免疫調節作用を有する核酸の構造として2本鎖構造が重要であることを、実施例3の牛膵臓由来RNaseAに対する感受性の違いを用いた試験に加えて、1本鎖核酸を切断するS1 nuclease酵素処理試験を行って確認した。
10%の塩を含むMRS培地にテトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株を1×106個/mlとなるように接種した。72時間静置培養した後、95℃で10分間の加熱殺菌を行った。サンプルは3つの画分に分割し、第1画分は10mM Tris−HCl(pH8.0)で、第2画分は0.3M NaClを含む10mM Tris−HCl(pH8.0)で、第3画分はS1 nuclease緩衝液(30mM 酢酸ナトリウム pH4.6、280mM NaCl、1mM ZnSO4)で洗浄後、それぞれの液に懸濁した。懸濁液は、OD600nmの値が10になるように調製した。
第1画分及び第2画分には10μg/mlとなるように牛膵臓由来RNaseA(Sigma社製)を添加し、37℃で2時間インキュベートを行った。第3画分にはS1 nuclease(宝酒造社製)を2000U/mlになるように添加した。酵素処理後、それぞれの酵素処理緩衝液で2回洗浄し、その後RPMI完全培地に懸濁した。懸濁液は、OD600nmの値が0.125になるように調製した。
腹腔滲出マクロファージ細胞の採取、調製は実施例1と同様に行った。骨髄由来樹状細胞の調製は実施例2と同様に行った。
腹腔滲出マクロファージ細胞からのインターロイキン12産生促進活性の測定は実施例1と同様に行った。結果を図6に示す。NaCl非存在下でRNaseA処理を行ったサンプルでは、インターロイキン12産生促進活性が大きく低下したが、0.3M NaCl存在下でRNaseA処理を行ったサンプル及びS1 nuclease酵素処理を行ったサンプルでは、インターロイキン12産生促進活性の低下が見られなかった。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスNBRC12172株菌体、ペディオコッカス・ペントサセウスOS株菌体、ペディオコッカス・ペントサセウスNRIC1915株菌体、ラクトバチルス・プランタラムNRIC1930株菌体、ラクトバチルス・デルブリュッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスNRIC1688株菌体、ラクトバチルス・デルブリュッキー・サブスピーシーズ・ラクティスNRIC1683株菌体、ラクトバチルス・ブレビスNRIC1713株菌体、ストレプトコッカス・サーモフィラスNRIC0256株菌体、ロイコノストック・シュードメセンテロイデスATCC12291株菌体、市販のヤクルト(ヤクルト社製)分離株菌体、植物性乳酸菌ラブレ(カゴメ社製)分離株菌体においても、免疫調節作用を有する2本鎖RNAが生産されることを牛膵臓由来RNaseAに対する感受性の違いを利用して確認した。
なお、乳酸菌同定キットAPI50CH(日本ビオメリュー社製)により、ヤクルト分離株はラクトバチルス属・パラカゼイ種・パラカゼイ亜種、植物性乳酸菌ラブレ分離株は、ラクトバチルス属・ブレビス種あるいはラクトバチルス種コリノイデス種と同定された。
10%の食塩を含むMRS培地にテトラジェノコッカス・ハロフィラスNBRC12172株を、通常のMRS培地にその他の株を1×106個/mlとなるように接種した。テトラジェノコッカス・ハロフィラスNBRC12172株は、72時間、その他の株は48時間静置培養した後、95℃で10分間の加熱殺菌を行った。サンプルから2画分採取し、一方は10mM Tris−HCl(pH8.0)で、もう一方は0.3M NaClを含む10mM Tris−HCl(pH8.0)で洗浄後、それぞれの液に懸濁した。懸濁液は、OD600nmの値が約10になるように調製した。
上記乳酸菌懸濁液に10μg/mlの濃度となるように牛膵臓由来RNaseA(Sigma社製)を添加し、37℃で2時間インキュベートを行った。本酵素処理において、NaCl非存在下では1本鎖RNAと2本鎖RNAの両方が分解され、0.3M NaCl存在下では、1本鎖RNAのみが分解される。
酵素処理後、それぞれ10mM Tris−HCl(pH8.0)及び0.3M NaClを含む10mM Tris−HCl(pH8.0)で洗浄し、その後RPMI完全培地に懸濁した。懸濁液は、OD600nmの値が0.125になるように調製した。
実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に行った。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスNBRC12172株菌体の結果を図9に、ペディオコッカス・ペントサセウスOS株菌体の結果を図10に、ペディオコッカス・ペントサセウスNRIC1915株菌体の結果を図11に、ラクトバチルス・プランタラムNRIC1930株菌体の結果を図12に、ラクトバチルス・デルブリュッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスNRIC1688株菌体の結果を図13に、ラクトバチルス・デルブリュッキー・サブスピーシーズ・ラクティスNRIC1683株菌体の結果を図14に、ラクトバチルス・ブレビスNRIC1713株菌体の結果を図15に、ストレプトコッカス・サーモフィラスNRIC0256株菌体の結果を図16に、ロイコノストック・シュードメセンテロイデスATCC12291株菌体の結果を図17に、市販のヤクルト(ヤクルト社製)より分離した分離株菌体の結果を図18に、植物性乳酸菌ラブレ(カゴメ社製)より分離した分離株菌体の結果を図19に示す。
いずれの場合もNaCl非存在下で酵素処理を行ったサンプルでは、インターロイキン12産生促進活性が大きく低下したが、0.3M NaCl存在下酵素処理を行ったサンプルでは、インターロイキン12産生促進活性の低下が少なかった。これにより、2本鎖RNA画分にインターロイキン12産生促進活性を有することが示された。
ペディオコッカス・ペントサセウスNRIC0099株菌体、ペディオコッカス・ペントサセウスNRIC1915株菌体、ペディオコッカス・ペントサセウスNRIC0122株菌体、ラクトバチルス・ペントーサスNRIC0391株菌体、ラクトバチルス・ペントーサスNRIC0396株菌体、ラクトバチルス・カゼイ・サブスピーシーズ・カゼイNRIC0644株菌体、ラクトバチルス・プランタラムNRIC1067株菌体、ラクトバチルス・ペントーサスNRIC1836株菌体、ラクトバチルス・プランタラムNRIC1930株菌体、ラクトバチルス・パラカゼイ・サブスピーシーズ・パラカゼイNRIC1936、ロイコノストック・ラクティスNRIC1582株菌体、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシーズ・メセンテロイデスNRIC1982株菌体においても、免疫調節作用を有する2本鎖RNAが生産されることを、2本鎖RNAを認識するTLR3をノックアウトしたマウスから骨髄由来樹状細胞を調製し、インターロイキン12産生促進活性を測定することで確認した。
MRS培地に各種乳酸菌を1×107個/mlとなるように接種した。30℃で48〜72時間静置培養した後、95℃で10分間の煮沸殺菌を行った。その後、遠心濃縮機によって培地を除去して集菌した。生理食塩水にて菌体を洗浄後、基本培地で懸濁して調製した。
実施例2と同様に行った。
実施例2と同様に行った。結果を図20に示す。インターロイキン12産生促進活性がTLR3ノックアウトマウスからの骨髄由来樹状細胞で減少したことから、TLR3のリガンドである2本鎖RNAが免疫調節作用を有し、図20に示す菌体内に2本鎖RNAが生産されていることが示された。
本試験では、インターロイキン12産生への関与が報告されているインターフェロンβも測定した。骨髄由来樹状細胞からのインターフェロンβ産生促進活性(培養6時間、PBL社製インターフェロンβ測定キット使用)は図21に示すとおりであった。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体及びテトラジェノコッカス・ハロフィラスNBRC12172株菌体について、TRIF経路阻害剤存在下でのインターロイキン12産生促進活性を測定した。
食塩を10%含有するMRS培地にテトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体及びテトラジェノコッカス・ハロフィラスNBRC12172株菌体を1×106個/mlとなるように接種した。72時間静置培養した後、95℃で10分間の加熱殺菌を行った。菌体を生理食塩水で洗浄後、RPMI完全培地に懸濁した。懸濁液は、OD600nmの値が0.25、0.125になるように調製した。
TBK1(キナーゼ)は、TRIFと相互作用し、転写因子IRF−3をリン酸化することが知られている。このTBK1活性を阻害することが知られているレスベラトロールを乳酸菌懸濁液に下記のとおりに添加した。レスベラトロール(Sigma社製)を20mM、10mM、5mM、2.5mMになるようにDMSOにて溶解した。また、コントロールとしてDMSOのみも用意した。これらのレスベラトロール溶解液を1%(v/v)になるように菌体懸濁液に添加した。
実施例1と同様に行った。
実施例1と同様に行った。菌体と細胞の共培養液中のレスベラトロール濃度は、終濃度100μM、50μM、25μM、12.5μM、0μMである。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221菌体の結果を図22に、テトラジェノコッカス・ハロフィラスNBRC12172株菌体の結果を図23に示す。いずれの場合も、レスベラトロールの濃度依存的にインターロイキン12産生促進活性が低下した。このことから、テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体及びテトラジェノコッカス・ハロフィラスNBRC12172株菌体によるインターロイキン12産生促進がTRIF依存性シグナル変換経路の賦活化によることが示された。
免疫調節作用にかかわるシグナル変換経路のアダプター分子であるTRIFをノックアウトしたマウスから骨髄由来樹状細胞を調製し、インターロイキン12産生促進活性を測定した。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株の培養は、食塩を10%含有したMRS培地で行い、実施例1と同様にして乳酸菌懸濁液を調製した。
実施例2と同様にして調製した。
実施例1と同様に行った。結果を図24に示す。
TRIFノックアウトマウスからの骨髄由来樹状細胞では、インターロイキン12産生促進活性は減少した。このことから、テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体によるインターロイキン12産生促進に、TRIF依存性シグナル変換経路の賦活化が関わっていることが示された。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体のインターロイキン12産生促進試験において、TLR3 mRNAの発現をリアルタイムRT−PCR法にて測定した。
乳酸菌テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株の培養は、食塩を10%含有したMRS培地で行い、実施例1と同様にして乳酸菌懸濁液を調製した。
実施例1と同様にして調製した。
細胞懸濁液と乳酸菌懸濁液との共培養は、実施例1と同様に行った。24時間の共培養後、上清を除去し、PBSにて洗浄を行った。そこに、TRIzol(Invitrogen社製)を200μl添加し、エッペンドルフチューブにサンプルを回収した。クロロホルムを40μl添加、攪拌・遠心後、水層を回収し、そこに等量のクロロホルムを添加した。攪拌・遠心後、水層を回収し、イソプロパノールを1.7倍量添加し、混和した。4℃、12,000rpmで遠心後、沈殿を回収し、70%エタノールで洗浄後、DEPC水(Ambion社製)に溶解して、リアルタイムRT−PCRに用いるテンプレートとした。
5’−GAGGGCTGGAGGATCTCTTTT−3’(配列番号1)、
PCR Reverse primerとして、
5’−CCGTTCTTTCTGAACTGGCCA−3’(配列番号2)、
を使用した。
内部標準としてはβアクチンを使用し、PCR Forward Primerとして、
5’−GCTACAGCTTCACCACCACAG−3’(配列番号3)、
PCR Reverse primerとして、
5’−GGTCTTTACGGATGTCAACGTC−3’(配列番号4)、
を使用した。
SYBR ExScript RT−PCR Kit(Perfect Real Time 宝酒造社製)を用い、添付のプロトコールにしたがってリアルタイムRT−PCRを行い、解析した。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体との共培養によって、TLR3 mRNAの発現の発現が10倍に増加した。すなわち、テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体によるインターロイキン12産生促進は、TLR3の活性化によることであることが示された。
10%の食塩を含むMRS培地(BD社製)400mlにテトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株を1×106個/mlとなるように接種した。72時間静置培養した後、95℃で10分間の加熱殺菌を行った。その後、遠心によって培地を除去して集菌した。この菌体を5mlのSTE緩衝液(100mM NaCl、10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH8.0)に懸濁した。
ここに、1ml 50mg/mlのリゾチームを添加し、37℃で30分インキュベートした。
その後、0.1mlのSTE緩衝液、0.3mlの10%SDS、30μlの20mg/mlのProteinase Kを添加し、37℃で1時間インキュベートした。そこに6mlのクロロホルム/イソアミルアルコールを添加し、混和して遠心し、上清を回収した。
その後、等量のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを添加して混和し、遠心して上清を回収した。この操作を2度行った。0.6等量のイソプロパノールを添加して沈殿させた後、10mlのTE(10mM Tris−HCl、1mM EDTA)に溶解した。
乳酸菌の培養塩濃度に依存して2本鎖RNA含量が上昇するとき、乳酸菌の添加により、骨髄由来樹状細胞のTLR3経由でインターフェロンβが産生され、細胞の活性化状態に影響を与えることが考えられる。
異なる塩濃度で調製したテトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体で骨髄由来樹状細胞を刺激し、そのときの樹状細胞の活性化状態を測定した。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体の調製は、実施例1と同様の方法で行った。骨髄由来樹状細胞は、BALB/cマウスより骨髄細胞を採取後、実施例2と同様の方法で得た。
骨髄由来樹状細胞と乳酸菌の共培養は実施例1と同様の方法で行った。共培養24時間後に骨髄由来樹状細胞を回収し、細胞表面の活性化マーカーを調べた。
具体的にはCD40、CD80、CD86の各活性化マーカーを、それぞれPE標識抗CD40抗体(BD Pharmingen社製)、PE標識抗CD80抗体(BD Pharmingen社製)、PE標識抗CD86抗体(BD Pharmingen社製)で検出した。細胞は、FACS Calibur(BD Pharmingen社製)で測定を行い、Cell Questソフトウェア(BD Pharmingen社製)によって解析を行った。
各活性化マーカーの発現量は、テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株の培養塩濃度に依存して上昇した。このことから、テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体内の2本鎖RNA含量が塩濃度依存的に上昇していると考えられた。結果を図26に示す。
実施例11の結果から、テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体内の2本鎖RNA含量が培養時の塩濃度依存的に上昇していると考えられた。そこで、塩濃度の異なる条件で培養した菌体から2本鎖RNA画分を精製し、含量を調べた。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体の培養、加熱殺菌、集菌は、実施例1と同様の方法で行った。この菌体をSTE緩衝液に懸濁し、OD600nmの値が80になるように調製した。以降、実験操作による回収率のばらつきをみるために、各サンプルを3分割して並行して進めた。実施例3の(5)と同様の方法で粗核酸抽出液を得、この該粗核酸抽出液に対し、TRIzol処理(Invitrogen社製、添付説明書に従って処理)を行うことでRNA画分を得、次いでS1 nuclease酵素処理(宝酒造社製、添付説明書に従って処理)で1本鎖核酸の分解を行うことにより2本鎖RNA画分を得た。これらの2本鎖RNA画分のアガロースゲル電気泳動を行い、含量を調べた。
結果を図27に示す。テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体内の2本鎖RNA含量は培養時の塩濃度依存的に上昇していることが確認できた。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株由来から2本鎖RNA画分を精製し、そのいくつかについて配列を決定し、免疫調節活性を測定した。
免疫調節活性としては、骨髄由来樹状細胞からのインターロイキン12産生促進活性を測定した。あるいは、インターロイキン12産生に関与するサイトカインの1つとしてインターフェロンβが知られていることから、骨髄由来樹状細胞からのインターフェロンβ産生促進活性を測定した。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株の培養液10Lから精製を開始した。培養、加熱殺菌、集菌、溶菌、クロロホルム/イソアミルアルコール処理、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール処理、イソプロパノール沈殿は実施例10と同様に行い、粗核酸抽出液を得た。
この該粗核酸抽出液に対し、TRIzol処理(Invitrogen社製、添付説明書に従って処理)、DNase処理(寶酒造社製、添付説明書に従って処理)、0.3M NaCl存在下でのRNaseA処理(Sigma社製、実施例3と同様な方法で処理)、再度TRIzol処理(Invitrogen社製、添付説明書に従って処理)、RNeasy Mini−RNase−Free DNase Set(QIAGEN社製、添付説明書に従って処理)、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製、添付説明書に従って処理)の処理を行い、2本鎖RNA画分を得た。
上記(1)で精製した2本鎖RNA画分についてインターロイキン12産生促進活性を測定した。骨髄由来樹状細胞は実施例2と同様にして調製した。
骨髄由来樹状細胞に精製2本鎖RNA画分を添加し、37℃の5%炭酸ガス培養器内で24時間共培養を行った。インターロイキン12産生促進活性は実施例1と同様にして測定した。
結果を図28に示す。精製2本鎖RNA画分の濃度依存的にインターロイキン12産生促進活性は上昇した。
このとき、インターロイキン12産生への関与が報告されているインターフェロンβも測定した。結果を図29に示す。骨髄由来樹状細胞からのインターフェロンβ産生促進活性(培養6時間、PBL社製インターフェロンβ測定キット使用)は精製2本鎖RNA画分の濃度依存的に上昇した。
精製2本鎖RNA画分からcDNAの合成は、Lambdenらの方法(J.Virol, 1992, 66, 1817−1822)に従って行った。合成したcDNAはpCR4Blunt−TOPOベクターにクローニングし、大腸菌HB101を形質転換した。約60クローンが得られ、そのうち2クローンの塩基配列を決定したところ、以下のような配列であった。
DSR1(46mer):
5’−AAATTTTCAAAAACCTGTTTTGCTTCTTCTAAAAATCCAATTGAAA−3’(配列番号5)、
DSR2(119mer):
5’−AAAAAATTACCTTTTTCTATTCGTGAGAAAATTTCTCAAGCCGACAAGTATCATAAAAAATTTGCTTTTGAACACTTTTTGAAGGTGTTTCTCTATGGCATCGATCATGAGTGTGAAAG−3’(配列番号6)、
インターフェロンβはインターロイキン12産生への関与が報告されているサイトカインである。そこで骨髄由来樹状細胞からのインターフェロンβ産生促進活性を測定した。
2本鎖RNA DSR1は株式会社ジーンデザインに合成を委託した。
骨髄由来樹状細胞は実施例2と同様にして調製した。骨髄由来樹状細胞に合成RNAを添加し、37℃の5%炭酸ガス培養器内で6時間共培養を行った。インターフェロンβ産生促進活性はPBL社製インターフェロンβ測定キットを使用して測定した。
2本鎖合成RNAの濃度依存的な応答を調べた結果を図30に示す。2本鎖合成RNAの濃度依存的に活性は上昇した。
また、野生型及びTLR3ノックアウトマウスからの骨髄由来樹状細胞を用いて調べた結果を図31に示す。TLR3ノックアウトマウスからの骨髄由来樹状細胞でインターフェロンβ産生促進活性が減少したことから、2本鎖合成RNAがTLR3を介してインターフェロンβを産生していることが示された。
2本鎖RNA DSR1に加え、DSR1を3分割した短い2本鎖RNA(S1、S2、S3)も株式会社ジーンデザインに合成を委託した。S1、S2、S3はそれぞれ以下のような配列である。
S1(18mer):DSR1の1塩基目から18塩基目まで
5’−AAATTTTCAAAAACCTGT−3’(配列番号7)、
S2(15mer):DSR1の18塩基目から32塩基目まで
5’−TTTTGCTTCTTCTAA−3’(配列番号8)、
S3(15mer):DSR1の32塩基目から46塩基目まで
5’−AAAATCCAATTGAAA−3’(配列番号9)、
骨髄由来樹状細胞は実施例2と同様にして調製した。骨髄由来樹状細胞に合成RNAを添加し、37℃の5%炭酸ガス培養器内で6時間共培養を行った。インターフェロンβ産生促進活性はPBL社製インターフェロンβ測定キットを使用して測定した。
結果を図32に示す。配列及び長さによって、インターフェロンβ量に違いは見られるものの、2本鎖合成RNAによって骨髄由来樹状細胞からインターフェロンβが産生されることを確認できた。
2本鎖RNA DSR2は以下のようにして合成した。まず、DSR2 DNAの5’側あるいは3’側にT7 RNAポリメラーゼのプロモーター領域を付加した2種類のPCR増幅反応物を作製した。
テンプレートとしては、テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株ゲノムをショットガンクローニングしたプラスミドのうち、DSR2領域を含むものを用いた。実際に用いたプライマーは以下のとおりである:
T7DSR2F(50mer):
5’−GATCACTAATACGACTCACTATAGGGAAAAAATTACCTTTTTCTATTCGT−3’(配列番号10)、
DSR2C(24mer):
5’−CTTTCACACTCATGATCGATGCCA−3’(配列番号11)、
DSR2F(24mer):
5’−AAAAAATTACCTTTTTCTATTCGT−3’(配列番号12)、
T7DSR2C(50mer):
5’−GATCACTAATACGACTCACTATAGGGCTTTCACACTCATGATCGATGCCA−3’(配列番号13)、
PCR産物はMERmaid Kit(MPバイオメディカル社製)を用い、添付説明書に従って精製した。これをテンプレートとして、T7 RNAポリメラーゼによるインビトロトランスクリプションを行った(寶酒造社製in vitro Transcription T7 Kit使用、添付説明書に従って実施)。
合成された転写物は、mirVana miRNA Isolation Kitを用いて精製し、モル数を合わせてアニーリング操作を行って2本鎖RNAを形成させた。これをエタノール沈殿で精製したものを以降の試験に用いた。
骨髄由来樹状細胞は実施例2と同様にして調製した。骨髄由来樹状細胞に合成RNAを添加し、37℃の5%炭酸ガス培養器内で24時間共培養を行った。インターフェロンβ産生促進活性はPBL社製インターフェロンβ測定キットを使用して測定した。
結果を図33に示す。2本鎖合成RNA DSR2によって骨髄由来樹状細胞からインターフェロンβが産生されることが示された。
骨髄由来樹状細胞とCD4+ T細胞の共培養を行う試験において乳酸菌を添加するとき、菌体のRNaseA処理の有無によって、インターフェロンγ産生細胞の誘導にどのような影響が見られるかを確認した。
テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221株菌体は食塩を10%含有するMRS培地で培養した。RNaseA処理を行う菌体及び行わない菌体の調製は実施例1と同様に行った。骨髄由来樹状細胞の調製は実施例2と同様に行った。
また、CD4+ T細胞はDO11.10マウスの脾臓から調製した。DO11.10マウスの脾臓を採取後、メッシュによりすり潰し、脾臓細胞を得た。その後、抗マウスCD4ビーズ(Miltenyi)と30分間インキュベートし、Auto MACS(Miltenyi)により、CD4+ T細胞を得た。
96ウェルプレートにおいて1ウェル当たり1×106個の骨髄由来樹状細胞と5×105個のCD4+ T細胞を培養した。同時に、RNaseA処理を行った乳酸菌及び行っていない乳酸菌を5×107個添加した。
培養開始3日目に培地交換を行い、7日目にフローサイトメトリー FACS Aria(BD社製)を用いて、インターフェロンγ産生細胞、インターロイキン4産生細胞の割合を調べた。測定には抗マウスインターフェロンγ抗体(BD Pharmingen)と抗マウスインターロイキン4抗体(BD Pharmingen)を用いた。
結果を図34に示す。テトラジェノコッカス・ハロフィラスTh221の刺激によりインターフェロンγ産生細胞の割合が増加した。そして菌体のRNaseA処理により、インターフェロンγ産生細胞の誘導は抑制された。このことから、乳酸菌のRNAがインターフェロンγ産生細胞の誘導に関わっていることが確認された。
Claims (9)
- 乳酸菌由来の2本鎖RNA。
- 乳酸菌がテトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1記載の乳酸菌由来の2本鎖RNA。
- 免疫調節作用がTRIF依存性シグナル変換経路又はMyD88依存性シグナル変換経路の賦活化であることを特徴とする、請求項1〜2記載の乳酸菌由来の2本鎖RNA。
- TRIF依存性シグナル変換経路又はMyD88依存性シグナル変換経路の賦活化がトル様(Toll−like)受容体3(TLR3)の活性化であることを特徴とする、請求項3記載の乳酸菌由来の2本鎖RNA。
- 乳酸菌由来の2本鎖RNAを有効成分とする免疫調節剤。
- 乳酸菌がテトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項5記載の免疫調節剤。
- ストレス条件下で乳酸菌を培養することによって菌体内に2本鎖RNAを生産させることを特徴とする、乳酸菌由来の2本鎖RNAの製造法。
- 乳酸菌がテトラジェノコッカス属、ペディオコッカス属、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項7記載の乳酸菌由来の2本鎖RNAの製造法。
- テトラジェノコッカス属に属する乳酸菌を塩分0.5〜25%の乳酸菌用培地で培養することによって菌体内に2本鎖RNAを生産させることを特徴とする、乳酸菌由来の2本鎖RNAの製造法。
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