JPWO2007108176A1 - 熱電変換材料 - Google Patents
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Abstract
Description
試験例1の熱電変換材料は、構成する元素がFe、V及びAlであり、Fe、V及びAlがホイスラー合金型の結晶構造になるような化学量論組成(Fe2VAl)をなす基本構造に対し、Feの少なくとも一部を周期表の7族元素であるMn又はReで置換したものである。
(1)X線回折測定
得られた試験例1の各熱電変換材料を粉末とし、粉末X線回折法によってX線回折測定を行う。この結果、試験例1の各熱電変換材料は、D03(L21)単相により構成されており、ホイスラー合金型の結晶構造を有していた。
試験例1の各熱電変換材料を炭化ケイ素の切断刃によって切断して1×1×15(mm3)の角柱形状の試験片とする。そして、4×10−4Paの真空中において、直流四端子法により各試験片に100mAの電流を通電して電気抵抗率を測定する。この際、4.2Kから室温までは自然昇温させ、室温から1273Kまでは各試験片を真空加熱炉内で加熱することにより昇温速度0.05K/秒で昇温する。このようにして、各試験片による電気抵抗率(μΩm)と温度(K)との関係を求める。基本構造(α=0)である試験例1の熱電変換材料は、4.2Kでの電気抵抗率が27μΩmにも達しており、全測定温度範囲にわたって半導体的な負の温度依存性を示す。これに対し、Feの少なくとも一部をMn又はReで置換した試験例1の熱電変換材料では、低温における電気抵抗率の減少が顕著であった。例えば、置換量α=0.05の試験例1の熱電変換材料では、4.2Kでの電気抵抗率が4μΩm以下まで低下しており、400K以下の温度では金属的な正の温度依存性を示した。さらに、Feの少なくとも一部をMnで置換した熱電変換材料では、Reで置換したものより置換量に対する電気抵抗率の減少が若干大きいことがわかった。
試験例1の各熱電変換材料を炭化ケイ素の切断刃によって切断して0.5×0.5×5(mm3)の角柱形状の試験片とする。そして、MMR−Technologies社製「SB−100」を用い、各試験片のゼーべック係数を90K〜400Kの温度範囲で測定する。
試験例1の熱電変換材料について、バンド計算の結果を用いて検討する。図4に示すように、Fe2VAlのフェルミ準位付近のバンド構造は、フェルミ準位において、Γ点に正孔ポケットが存在し、X点に電子ポケットが存在する。また、正孔ポケットは主としてFe−3dバンドからなり、電子ポケットはV−3dバンドからなる。
試験例1の各熱電変換材料を炭化ケイ素の切断刃によって切断して3.5×3.5×4(mm3)の角柱状の試験片とする。そして、4×10−4Paの真空中において、熱流法による定常比較測定法を用いて各試験片の熱伝導率を測定する。
熱電変換材料としては、ゼーべック係数が大きいだけでなく、電気抵抗率が小さいと同時に熱伝導率も小さいことが要求される。そのため、一般に性能指数Z=S2/ρκを用いて性能を評価する。但し、Sはゼーべック係数、ρは電気伝導率、κは熱伝導率である。
試験例1の熱電変換材料は、金属的性質として、750°C以上かつ融点以下の温度で熱間加工を行うことができる。例えば、試験例1の熱電変換材料を熱間圧延によって帯材とし、この帯材を切断して直方体形状のチップとし、このチップをモジュール化する等の方法により熱電変換素子を製造することも可能である。このため、熱電変換素子を製造する場合の歩留まりを高くすることができるとともに、製造工程数も少なくなり、ひいては熱電変換素子の製造コストの低廉化も実現できる。
試験例1の熱電変換材料は、FeやAlという安価な金属を主成分としているため、原料費が低廉であり、製造コストの低廉化が可能である。また、これらの元素は汎用性の金属であるため、大量かつ安定に原料を確保することができる。
試験例1の熱電変換材料はFe、V及びAlから構成されているため、毒性が弱く、環境汚染のおそれは小さい。
試験例2の熱電変換材料は、基本構造のFe2VAlに対し、Fe、V及びAlのうちのVの少なくとも一部を周期表の4族元素であるTiで置換し、かつAlの少なくとも一部を14族元素であるGeで同時置換したものである。Tiの置換量βは0≦β≦0.2の範囲内で選択されており、Geの置換量γは0≦γ≦0.1の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例2の熱電変換材料は、一般式Fe2(V1−βTiβ)(Al1−γGeγ)で表される化合物である。
試験例3の熱電変換材料は、基本構造のFe2VAlに対し、Fe、V及びAlのうちのFeの少なくとも一部を周期表の9族元素であるIrで置換し、かつVの少なくとも一部を周期表の4族元素であるTiで同時置換したものである。Irの置換量αは0≦α≦0.03の範囲内で選択されており、Tiの置換量βは0≦β≦0.16の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例3の熱電変換材料は、一般式(Fe1−αIrα)2(V1−βTiβ)Alで表される化合物である。
試験例4の熱電変換材料は、基本構造のFe2VAlに対し、Fe、V及びAlのうちのVの少なくとも一部を周期表の5族元素であるTaで置換し、かつAlの少なくとも一部を周期表の14族元素であるGeで同時置換したものである。Taの置換量βは0≦β≦0.1の範囲内で選択されており、Geの置換量γは0≦γ≦0.1の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例4の熱電変換材料は、一般式Fe2(V1−βTaβ)(Al1−γGeγ)で表される化合物である。
試験例5の熱電変換材料は、基本構造のFe2VAlに対し、Fe、V及びAlのうちのFeの少なくとも一部を周期表の8族元素であるRuで置換し、かつAlの少なくとも一部を周期表の14族元素であるSiで同時置換したものである。Ruの置換量αは0≦α≦0.04の範囲内で選択されており、Siの置換量γは0≦γ≦0.05の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例5の熱電変換材料は、一般式(Fe1−αRuα)2V(Al1−γSiγ)で表される化合物である。
試験例6の熱電変換材料は、基本構造のFe2VAlに対し、Fe、V及びAlのうちのVの少なくとも一部を周期表の4族元素であるTiで置換し、かつVの少なくとも一部を周期表の5族元素であるTaで同時置換したものである。Tiの置換量βaは0≦βa≦0.05の範囲内で選択されており、Taの置換量βbは0≦βb≦0.05の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例6の熱電変換材料は、一般式Fe2(V1−(βa+βb)TiβaTaβb)Alで表される化合物である。
本発明の熱電変換材料の基本構造であるFe2VAlと、試験例1の一般式(Fe1−αMnα)2VAl及び(Fe1−αReα)2VAlで表される熱電変換材料(p型)と、試験例2の一般式Fe2(V1−βTiβ)(Al1−γGeγ)で表される熱電変換材料(p型又はn型)と、試験例3の一般式(Fe1−αIrα)2(V1−βTiβ)Alで表される熱電変換材料(p型又はn型)と、試験例4の一般式Fe2(V1−βTaβ)(Al1−γGeγ)で表される熱電変換材料(n型)と、試験例5の一般式(Fe1−αRuα)2V(Al1−γSiγ)で表される熱電変換材料(n型)と、試験例6の一般式Fe2(V1−(βa+βb)TiβaTaβb)Alで表される熱電変換材料(p型)とについて、300Kにおけるゼーべック係数(μV/K)と総価電子数との関係を求める。結果を図10に示す。
カーブで記述できるような変化の仕方になっている。このため、本発明で明らかにしたように、置換する元素の種類及び置換量を選択することにより、擬ギャップ内のフェルミ準位のエネルギー位置を最適化することが可能であり、ひいてはゼーべック係数の符号を制御することができるために、基本構造のFe2VAlをベースとしてp型とn型の熱電変換材料を作製することが可能になるだけでなく、ゼーベック係数の絶対値を大幅に増大することによって、優れた熱電特性を発揮できる熱電変換材料を製造することが可能となる。
[0010]
特許文献1:特開平9−321346号公報
特許文献2:WO03/019681公報
特許文献3:特開2004−253618号公報
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0011]
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、より熱電変換効率が高く、製造コストの低廉化が可能であり、環境汚染のおそれも少ない熱電変換材料を提供することを解決すべき課題としている。
課題を解決するための手段
[0012]
今回、発明者らはさらに研究を進め、Fe2VAlの基本構造に対し、Feに替えて元素Mn(マンガン)又は元素Re(レニウム)で置換し、化学式あたりの総価電子数を制御することによって、熱電変換材料が正孔を多数キャリアとするp型に規則的になることを実証した。こうして、より実用性を向上させて本発明を完成させるに至った。
[0013]
すなわち、本発明の熱電変換材料は、ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、
[0014]
化学組成比の調整量を調整すること並びに/又は元素Fe、V及びAlの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換することによって化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型又は24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御された熱電変換材料において、
Feの一部が周期表における第4〜6周期の7族からなる群から選ばれる元素Mで置換されていることを特徴とする。
発明者らは、元素MがMn(マンガン)であり、(Fe1−αMnα)2VAlを満たす0<α<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23、5以上になるようにしてp型に制御された熱電変換材料で本発明の効果を確認した。
また、発明者らは、元素MがRe(レニウム)であり、(Fe1−αReα)2VAlを満たす0<α<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23、5以上になるようにしてp型に制御された熱電変換材料で本発明の効果を確認した。
[0015]
また、発明者らは、Fe2VAlの基本構造に対し、Vに替えてTi(チタン)及びTa(タンタル)で置換し、化学式あたりの総価電子数を制御することによって、熱電変換材料が正孔を多数キャリアとするp型に規則的になることを実証した。こうして、この点においても、より実用性を向上させて本発明を完成させるに至った。
[0016]
すなわち、本発明の熱電変換材料は、ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、
[0017]
化学組成比の調整量を調整すること並びに/又は元素Fe、V及びAlの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換することによって化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型又は24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御された熱電変換材料において、
Fe、V及びAlの1種の一部が元素X1及び元素X2で置換されていることを特徴とする。
発明者らは、Vの一部を置換する元素X1がTi(チタン)であり、Vの一部を置換する元
b<0.05の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型に制御されている熱電変換材料で本発明の効果を確認している。
[0018]
さらに、発明者らは、Fe2VAlの基本構造に対し、Fe、V及びAlの少なくとも2元素の少なくとも一部が他の元素で同時に置換され、化学式あたりの総価電子数を制御することによって、熱電変換材料が電子を多数キャリアとするn型や正孔を多数キャリアとするp型に規則的になることを実証した。また、置換する元素のうち少なくとも1種類が原子量の大きい元素であれば熱伝導率を大幅に低下させることが可能であり、これらによって熱電変換材料の熱電変換効率を向上できることを実証した。こうして、この点においても、より実用性を向上させて本発明を完成させるに至った。
[0019]
すなわち、本発明の熱電変換材料は、ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、
[0020]
[0021]
化学組成比の調整量を調整すること並びに/又は元素Fe、V及びAlの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換することによって化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型又は24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御された熱電変換材料において、
[0022]
Fe、V及びAlの1種の一部が元素Xで置換されているとともに、Fe、V及びAlの他の1種の一部が元素Yで置換されていることを特徴とする。
[0023]
本発明の熱電変換材料は、Feの一部が周期表における第4〜6周期の9族からなる群から選ばれる元素Mで置換され、Vの一部が周期表における第4〜6周期の4族からなる群から選ばれる元素Nで置換され得る。この場合、元素M及び元素Nの置換量が一般式(Fe1−αMα)2(V1−βNβ)Alを満たす0<α<1及び0<β<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型又は24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御され得る。
[0024]
発明者らは、元素MがIr(イリジウム)であり、かつ元素NがTiである場合に本発明の効果を確認している。
[0025]
[0026]
[0027]
[0028]
[0029]
また、本発明の熱電変換材料は、Feの一部が周期表における第4〜6周期の8族からなる群から選ばれる元素Mで置換され、Alの一部が周期表における第3〜6周期の14族からなる群から選ばれる元素Dで置換され得る。この場合、元素M及び元素Dの置換量が一般式(Fe1−αMα)2V(Al1−γDγ)を満たす0<α<1及び0<γ<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型又は24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御され得る。
[0030]
発明者らは、元素MがRu(ルテニウム)であり、かつ元素DがSi(ケイ素)である場合に本発明の効果を確認している。
[0031]
[0032]
[0033]
[0034]
[0035]
さらに、本発明の熱電変換材料は、Vの一部が周期表における第4〜6周期の4族からなる群から選ばれる元素Nで置換され、Alの一部が周期表における第3〜6周期の14族からなる群から選ばれる元素Dで置換され得る。この場合、元素N及び元素Dの置換量が一般式Fe2(V1−βNβ)(Al1−γDγ)を満たす0<β<1及び0<γ<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型又は24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御され得る。
[0036]
発明者らは、元素NがTiであり,かつ元素DがGeである場合に本発明の効果を確認している。また、発明者らは、元素NがTaであり,かつ元素DがGeである場合に本発明の効果を確認している。
[0037]
ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、Fe、V及びAlの少なくとも1元素の少なくとも一部が他の元素で置換されることにより、化学式当たりの総価電子数が24を超えるとき、ゼーベック係数の符号が負であり、その絶対値が大きくなり、n型としての挙動を示すとともに、性能指数も大きくなる。
[0038]
つまり、基本構造に対してFe(鉄)の少なくとも一部を元素Mで置換する場合、元素Mが周期表における第4〜6周期の9族及び10族からなる群から選ばれれば、その
変換効率を示す。元素M、元素N又は元素Dは1種の元素でもよく、複数の元素でもよい。
[0048]
さらに、発明者らの試験結果によれば、置換する元素が原子量の大きいもの、つまり原子半径及び質量が大きいものとされれば、熱伝導率を下げる効果が大きく、熱電変換効率のより高いn型の熱電変換材料になる。
すなわち、本発明の熱電変換材料は、Fe、V及びAlの少なくとも1種の一部は原子量の大きな元素で置換されていることが好ましい。
[0049]
発明者らは、元素MをIrやPtとしたn型の熱電変換材料が元素MをRhとしたn型の熱電変換材料よりも熱伝導率が低く、熱電変換効率に優れることを確認した。
[0050]
また、元素DをGeやSnとしたn型の熱電変換材料は元素DをSiとしたn型の熱電変換材料よりも熱伝導率が低く、熱電変換効率に優れる。
[0051]
また、発明者らの試験結果によれば、熱電変換材料が可及的に小さな粒径の粉体又は結晶粒の集合体にされれば、格子振動の散乱が大きくなるため、熱伝導率が低下し、熱電変換効率のより高いn型の熱電変換材料になる。
[0052]
本発明の熱電変換材料は、ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、Fe、V及びAlの少なくとも1元素の少なくとも一部が他の元素で置換されることにより、化学式当たりの総価電子数が24未満になるとき、ゼーベック係数の符号が正であり、その絶対値が大きくなり、p型としての挙動を示すとともに、性能指数も大きくなる。
[0053]
つまり、基本構造に対してFeに替えて置換する他の元素がMである場合、元素Mが周期表における第4〜6周期の7族からなる群から選ばれれば、その熱電変換材料は正孔を多数キャリアとするp型になる。
[0054]
また、その基本構造に対してVに替えて置換する他の元素がNである場合、元素Nが周期表における第4〜6周期の4族からなる群から選ばれれば、その熱電変換材料はp型になる。
[0055]
さらに、その基本構造に対してAlに替えて置換する他の元素がDである場合、元素Dが周期表における第3〜6周期の2族からなる群から選ばれれば、その熱電変換材料はp型になる。
[0056]
元素M、元素N又は元素Dは1種の元素でもよく、複数の元素でもよい。
[0057]
これらを表で示すと表2のようになる。
ると同時にゼーベック係数が大幅に増大し、さらに熱伝導率が減少するため、性能指数が急激に大きくなる。試験例2の熱電変換材料では、置換量β=0.15及びγ=0の300Kでの性能指数は0.07×10−3/Kであるが、置換量β=0.15及びγ=0.1では0.15×10−3/Kに達しており、Geの置換量が増加すると性能指数は増加することがわかる。このように、原子量の大きい元素で置換した熱電変換材料を用いて熱電変換素子を製造した場合、熱伝導率の大幅な減少の結果として大きな性能指数を示す熱電変換素子が得られることがわかる。
[0136]
加工性、原料費及び毒性については、試験例1と同様の効果を有している。
[0137]
[試験例3]
試験例3の熱電変換材料は、基本構造のFe2VAlに対し、Fe、V及びAlのうちのFeの少なくとも一部を周期表の9族元素であるIrで置換し、かつVの少なくとも一部を周期表の4族元素であるTiで同時置換したものである。Irの置換量αは0□α□0.03の範囲内で選択されており、Tiの置換量βは0□β□0.16の範囲内で選択されている。製法は
[0138]
試験例3の各熱電変換材料について、試験例1と同様のX線回折測定を行う。この結果、試験例3の各熱電変換材料もホイスラー合金型の結晶構造を有していた。
[0139]
試験例3の各熱電変換材料について、試験例1と同様、各試験片による300Kにおけ
びβ=0)である試験例3の熱電変換材料では、試験例1の熱電変換材料と同様、ゼーベック係数の符号は正で、その値は30μV/K程度である。また、図9に示すように、Feの少なくとも一部をIrで置換した試験例3の熱電変換材料(置換量α=0.015及びβ=0)では、ゼーベック係数の符号は負となり、その絶対値は135μV/K程度の大きな値である。これに対し、Feの少なくとも一部をIrで置換し、かつVの少なくとも一部をTiで同時置換した試験例3の熱電変換材料は、Feの少なくとも一部をMn又はReで置換したり、Vの少なくとも一部をTiで置換し、かつAlの少なくとも一部をGeで同時置換したりした試験例1及び2の熱電変換材料と同様、ゼーベック
係数の符号が正となり、その絶対値が著しく増加した。特に、置換量α=0.015及びβ=0.06の熱電変換材料では、ゼーベック係数の絶対値が80μV/K以上の大きな値である。Irは周期表の9族の元素であり、またTiは周期表の4族の元素であり、Feに替えて置換する元素が第4〜6周期の7〜10族からなる群から選ばれ、Vに替えて置換する元素が第4〜6周期の4〜6族からなる群から選ばれた試験例3の熱電変換材料において、置換量α及びβを調節することによって電子を多数キャリアとするn型又は正孔を多数キャリアとするp型に制御されているだけでなく、大きな熱起電力を発生可能な熱電変換素子が得られることがわかる。
[0140]
また、試験例3の熱電変換材料の化学式当たりの総価電子数は、置換量α=0.015の場合、置換量βが0〜0.13であるため、2{8×0.985+9×0.015}+{5(1−β)+4β}+3=24.03−β=24.03〜23.90であり、この範囲内でゼーベック係数が大きく変化していることがわかる。図9より、特に、総価電子数が24未満、23.5以上の範囲内である試験例3の熱電変換材料において、ゼーベック係数が正の大きな値に変化しており、また、総価電子数が24を超え、24.5以下の範囲内である試験例3の熱電変換材料において、ゼーベック係数が負の大きな値に変化していることがわかる。
[0141]
また、バンド計算の結果、基本構造(置換量α=0及びβ=0)である試験例3の熱電変換材料においても、正孔及び電子ポケットが非常に小さく、これはキャリア密度が著しく低いことの原因になっている。このため、Feの少なくとも一部をIrで置換し、かつVの少なくとも一部をTiで同時置換することによって総価電子数が24未満に減少すると、図4においてフェルミ準位が大きく低エネルギー側のEF −にシフトする。このため、キャリアに占める正孔の割合が増加し、ゼーベック係数は符号が正の値を示す。一方、Feの少なくとも一部をIrで置換し、かつVの少なくとも一部をTiで同時置換することによって総価電子数が24以上に増加すると、図4においてフェルミ準位が大きく高エネルギー側のEF +にシフトする。このため、キャリアに占める電子の割合が増加し、ゼーベック係数は符号が負の値を示す。以上のバンド計算からの考察により、試験例3の熱電変換材料は、Feの少なくとも一部をIrで置換し、かつVの少なくとも一部をTiで同時置換することによって、ゼーベック係数の符号を正に変化させること
Claims (8)
- ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、
Feに替えて置換する元素Reの置換量が一般式(Fe1-αReα)2VAlを満たす0<α<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型に制御されていることを特徴とする熱電変換材料。 - ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、
Vに替えて置換する元素Ti及びTaの置換量が一般式Fe2(V1-(βa+βb)TiβaTaβb)Alを満たす0<βa<0.05、βb<0.05の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型に制御されていることを特徴とする熱電変換材料。 - ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、
Fe及びVのそれぞれ少なくとも一部が他の元素で置換され、
Feに替えて置換する他の元素がMである場合には、元素Mが周期表における第4〜6周期の7〜10族からなる群から選ばれ、
Vに替えて置換する他の元素がNである場合には、元素Nが周期表における第4〜6周期の4〜6族からなる群から選ばれており、
元素M及び元素Nの置換量が一般式(Fe1-αMα)2(V1-βNβ)Alを満たす0<α<1及び0<β<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型又は24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御されていることを特徴とする熱電変換材料。 - 元素MはRh、Ir及びPtの少なくとも1種であり、かつ元素NはTi、Zr及びHfの少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の熱電変換材料。
- ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、
Fe及びAlのそれぞれ少なくとも一部が他の元素で置換され、
Feに替えて置換する他の元素がMである場合には、元素Mが周期表における第4〜6周期の7〜10族からなる群から選ばれ、
Alに替えて置換する他の元素がDである場合には、元素Dが周期表における第3〜6周期の2族及び13〜16族からなる群から選ばれており、
元素M及び元素Dの置換量が一般式(Fe1-αMα)2V(Al1-γDγ)を満たす0<α<1及び0<γ<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型又は24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御されていることを特徴とする熱電変換材料。 - 元素MはMn、Re、Ru及びOsの少なくとも1種であり、かつ元素DはSi、Ge及びSnの少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の熱電変換材料。
- ホイスラー合金型の結晶構造をもち、化学式当たりの総価電子数が24であるFe2VAlの基本構造に対し、
V及びAlのそれぞれ少なくとも一部が他の元素で置換され、
Vに替えて置換する他の元素がNである場合には、元素Nが周期表における第4〜6周期の4〜6族からなる群から選ばれ、
Alに替えて置換する他の元素がDである場合には、元素Dが周期表における第3〜6周期の2族及び13〜16族からなる群から選ばれており、
元素N及び元素Dの置換量が一般式Fe2(V1-βNβ)(Al1-γDγ)を満たす0<β<1及び0<γ<1の範囲内で調整され、かつ化学式当たりの総価電子数が24未満、23.5以上になるようにしてp型又は24を超え、24.5以下になるようにしてn型に制御されていることを特徴とする熱電変換材料。 - 元素NはTi、Zr、Hf、Nb及びTaの少なくとも1種であり,かつ元素DはSi、Ge及びSnの少なくとも1種であることを特徴とする請求項7項記載の熱電変換材料。
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