JP2004119647A - 熱電変換材料及びそれを用いた熱電変換素子 - Google Patents

熱電変換材料及びそれを用いた熱電変換素子 Download PDF

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桜田 新哉
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Abstract

【課題】ホイスラー構造を有するFe−V−Al系化合物を用いた性能指数の高い熱電変換材料を提供する。
【解決手段】本発明は、ホイスラー構造を主相とし、Fe(GaAl1−p100−x−y(ただし、35≦x≦60、20≦y≦30、0.1≦p≦0.7である)で表される組成を有する化合物を含有することを特徴とする熱電変換材料を提供する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱電変換材料及びそれを用いた熱電変換素子に関し、特に、Fe−V−Al系の熱電変換材料及びそれを用いた熱電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境問題に対する意識の高揚から、フロンレス冷却機器であるペルチェ効果を利用した熱電変換素子に関する関心が高まっている。また、同様に、二酸化炭素排出量を削減するために、未利用廃熱エネルギーを使った発電システムを提供する、ゼーベック効果を利用した熱電変換素子に関する関心が高まっている。
【0003】
ペルチェ効果やゼーベック効果を利用した熱電変換素子は、一般的にp型の熱電変換材料を含むp型素子とn型の熱電変換材料を含むn型素子とを交互に直列に接続して形成されている。現在、室温付近で利用されている熱電変換材料は、効率の高さから、Bi−Te系の単結晶または多結晶体を使用したものが多い。このうち、n型の熱電変換材料を形成する際には一般にSe(セレン)が添加される。また、室温より高温で使用される熱電変換材料には、やはり効率の高さから、Pb−Te系が用いられている。
【0004】
しかしながら、これらの熱電変換素子に用いられている、Se、Pb(鉛)、Te(テルル)は人体にとって有毒有害であり、また地球環境問題の観点からも好ましくない。このため、Bi−Te系、Pb−Te系材料に代わる無害な材料の検討がなされている。
【0005】
Bi−Te系に代わる無害な熱電変換材料のひとつに、Fe−V−Al系材料がある。例えば、FeAlの組成におけるFe(鉄)の1/3をV(バナジウム)で置換したFeVAl合金は、L2型結晶構造(ホイスラー構造、XYZで表される結晶構造を有する金属間化合物)を有し、半導体的な電気伝導の挙動を示すとともにBi−Te系材料に匹敵する高いゼーベック係数を室温で示すことから注目を集めている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0006】
さらに、熱電変換材料は出力因子P(P=α/ρ、αはゼーベック係数であり、ρは電気抵抗率である)が高いことが好ましいが、FeVAl合金におけるAl(アルミニウム)の一部をSi(シリコン)で置換した化合物の出力因子Pは室温で5.4×10−3W/mKに達し、Bi−Te系材料の4〜5×10 W/mKに匹敵する大きさであることが報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0007】
熱電変換材料の特性を測る値としては、上記の出力因子Pの他に、性能指数Zがある。性能指数Zは、熱伝導率をκとしたとき、次の(1)式で表される。
【0008】
Z=P/κ   (1)
一般に、性能指数Zの値が高いほど熱電変換材料としての性能が優れる。つまり、熱電変換材料を用いる場合には、出力因子Pを大きくするだけでなく、熱伝導率κを小さくすることによって性能指数Zを上げることが必要である。
【0009】
しかしながら、上述したホイスラー構造を有するFe−V−Al系化合物は、出力因子の観点では従来のBi−Te系材料に匹敵する高い値を有するものの、熱伝導率がBi−Te系材料より5〜10倍程度高いため、実用化に至っていない。
【0010】
【非特許文献1】
Y.Nishino, H.Kato, and M.Kato, ”Effect of off−stoichiometry on the transport properties of the Heusler−type Fe2VAl compound”, Physical Review B,63,THE AMERICAN PHYSICAL SOCIETY, 2001, 63, 233303, p1−4
【0011】
【非特許文献2】
加藤英晃、外4名、「ホイスラー型FeVAl合金の熱電特性に及ぼすSi置換の効果」、日本金属学会誌、社団法人日本金属学会、平成13年、第65巻、第7号、p.652−656
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、ホイスラー構造を有するFe−V−Al系化合物を用いた性能指数の高い熱電変換材料を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は、ホイスラー構造を主相とし、Fe(GaAl1−p100−x−y(ただし、35≦x≦60、20≦y≦30、0.1≦p≦0.7である)で表される組成を有する化合物を含有することを特徴とする熱電変換材料を提供する。
【0014】
また本発明は、ホイスラー構造を主相とし、Fe(GaAl1−p−q100−x−y(ただし、35≦x≦60、20≦y≦30、0.001≦p≦0.5、0.001≦q≦0.3である)で表される組成を有する化合物を含有することを特徴とする熱電変換材料を提供する。
【0015】
本発明においては、Feの一部が、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Y及び希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも一種で置換されても良い。
【0016】
また本発明においては、Alの一部が、C、N、Si、P、S、Mg、Ge、Sn、Sb、In及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種で置換されても良い。
【0017】
また本発明はp型熱電変換材料を含むp型素子およびn型熱電変換材料を含むn型素子を交互に直列に接続した熱電変換素子において、p型熱電変換材料及びn型熱電変換材料の少なくとも一方に上記いずれかの熱電変換材料を用いたことを特徴とする熱電変換素子を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者らはホイスラー構造を有するFe−V−Al系化合物において、この化合物の一部を、数々の元素で置換した合金を製造して熱伝導率を調査した結果、Al(アルミニウム)の一部をGa(ガリウム)で置換、もしくはGa及びB(ホウ素)で複合的に置換した化合物において、極めて低い熱伝導率が実現されることを見出し、本発明に至った。具体的には、本発明の熱電変換材料は、Se、PbおよびTe等の元素を含まず、Fe(GaAl1−p100−x−y(ただし、35≦x≦60、20≦y≦30、0.1≦p≦0.7である)や、Fe(GaAl1−p−q100−x−y(ただし、35≦x≦60、20≦y≦30、0.001≦p≦0.5、0.001≦q≦0.3である)の組成式で表され、ホイスラー構造を主相とする。なお、主相とは熱電変換材料を構成している結晶相および非晶質相の中で最も体積占有率の大きな相をさす。主相の割合は、好ましくは約50体積%以上、より好ましくは約70体積%以上、最も好ましくは約90体積%以上である。主相以外は、α−Fe相などの結晶構造により構成される可能性がある。
【0019】
Fe(GaAl1−p100−x−yの組成式を有する本発明の実施形態に係る熱電変換材料においては、Fe(鉄)の含有量xは、約35原子%以上約60原子%以下の範囲とすることが好ましい。鉄の含有量が約35原子%未満となるとゼーベック係数が小さくなるおそれがあり、約60原子%を超えるとやはりゼーベック係数が小さくなるおそれがある。
【0020】
Fe(GaAl1−p100−x−yの組成式を有する本発明の実施形態に係る熱電変換材料においては、V(バナジウム)の含有量yは、約20原子%以上約30原子%以下の範囲とすることが好ましい。Vの含有量が約20原子%未満となるとゼーベック係数が小さくなるおそれがあり、約30原子%を超えるとやはりゼーベック係数が小さくなるおそれがある。
【0021】
Fe(GaAl1−p100−x−yの組成式を有する本発明の実施形態に係る熱電変換材料においては、Fe−V−Alの三元系化合物からAlの一部をGaで置換することにより熱伝導率の低下を実現しているが、AlのGaによる置換量pは、約10原子%以上約70原子%以下の範囲とすることが好ましい。Gaによる置換量が約10原子%未満となると熱伝導率の低減効果が小さくなるおそれがあり、約70原子%を超えると熱伝導率の低減効果が小さくなるだけでなく、材料のコストが高くなるおそれがある。
【0022】
Fe(GaAl1−p−q100−x−yの組成式を有する本発明の実施形態に係る熱電変換材料においては、Fe(鉄)の含有量xは、約35原子%以上約60原子%以下の範囲とすることが好ましい。鉄の含有量が約35原子%未満となるとゼーベック係数が小さくなるおそれがあり、約60原子%を超えるとやはりゼーベック係数が小さくなるおそれがある。
【0023】
Fe(GaAl1−p−q100−x−yの組成式を有する本発明の実施形態に係る熱電変換材料においては、V(バナジウム)の含有量yは、約20原子%以上約30原子%以下の範囲とすることが好ましい。Vの含有量が約20原子%未満となるとゼーベック係数が小さくなるおそれがあり、約30原子%を超えるとやはりゼーベック係数が小さくなるおそれがある。
【0024】
Fe(GaAl1−p−q100−x−yの組成式を有する本発明の実施形態に係る熱電変換材料においては、Fe−V−Alの三元系化合物からAlの一部をGa及びBで置換することによって、熱伝導率の低下を実現している。Alの一部をGaのみで置換すると、熱伝導率を低下させる効果は高いもののGaが高価であることからコストがかかるが、Alの一部をGa及びBで複合的に置換することにより、熱伝導率を低下させるという効果を、低コストで得ることが可能となる。AlのGa及びBによる置換量としては、Alのうち、約0.1原子%以上約50原子%以下の範囲をGaで置換し、約0.1原子%以上約30原子%以下の範囲をBで置換することが好ましい。Gaによる置換量が約0.1原子%未満となると熱伝導率の低減効果が小さくなるおそれがあり、約50原子%を超えると熱伝導率の低減効果が小さくなるだけでなく材料コストが高くなるおそれがある。また、Bによる置換量が約0.1原子%未満となるとGaの量を低減することによるコスト削減効果が小さくなるおそれがあり、約30原子%を超えるとゼーベック係数が小さくなるおそれがある。
【0025】
Fe(GaAl1−p100−x−yもしくはFe(GaAl1−p−q100−x−yの組成式を有する本発明の実施形態に係る熱電変換材料においては、Fe(鉄)の一部が、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Y及び希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも一種で置換されていても良い。このような置換によってキャリア濃度を最適化するなどして電気抵抗率を下げることが出来、性能指数Zを高めることが可能である。ただし、こうした元素の置換は、鉄と置換元素量の総量に対して約20原子%以下とすることが好ましい。約20原子%を超えて過剰に置換することにより、ゼーベック係数の低下などによって逆に性能指数を低下させる恐れがある。
【0026】
Fe(GaAl1−p100−x−yもしくはFe(GaAl1−p−q100−x−yの組成式を有する本発明の実施形態に係る熱電変換材料においては、Alの一部が、C、N、Si、P、S、Mg、Ge、Sn、Sb、In及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種で置換されていても良い。このような置換によって熱伝導率を更に低下させたり、電気抵抗率を下げることができ、性能指数Zを高めることが可能である。ただし、こうした元素の置換は、アルミニウムと置換元素量の総量に対して約20原子%以下とすることが好ましい。約20原子%を超えて過剰に置換することにより、ゼーベック係数の低下などによって逆に出力因子を低下させる恐れがある。また、アルミニウムの一部を置換する元素としては、熱伝導率を低減する効果が高いことから、Sn、Sb、InおよびBi等が特に好ましい。
【0027】
本発明の実施形態にかかる熱電変換材料は、例えば以下のような方法により製造することができる。
【0028】
まず、所定量の各元素を含有する合金を、アーク溶解や高周波溶解などにより作製する。合金の作製に当たっては、単ロール法、双ロール法、回転ディスク法、ガスアトマイズ法などの液体急冷法、あるいはメカニカルアロイング法などの固相反応を利用した方法などを採用することもできる。液体急冷法やメカニカルアロイング法といった方法は、合金を構成する結晶相を微細化する、結晶相内への元素の固溶域を拡大するなどの点で有利である。このため、熱伝導率の低減、ゼーベック係数の増大などに有効である。
【0029】
作製された合金には、必要に応じて熱処理を施してもよい。この熱処理によって合金の単相化や、結晶粒子径の制御などを行うことが出来、熱電特性をいっそう向上させることも可能である。
【0030】
上述したような溶解、液体急冷、メカニカルアロイング、および熱処理などの工程は、合金の酸化を防止するという観点から、例えばArなどの不活性雰囲気中で行なわれることが好ましい。
【0031】
次に、合金をボールミル、ブラウンミル、またはスタンプミルなどにより粉砕して合金粉末を得、合金粉末を焼結法、ホットプレス法、またはSPS法などによって一体成型する。一体成型は、合金の酸化を防止するという観点から、例えばArなどの不活性雰囲気中で行なわれることが好ましい。次いで、得られた成型体を所望の寸法に加工することによって、本発明の実施形態にかかる熱電変換材料を含むp型素子もしくはn型素子が得られる。成型体の形状や寸法は、使用目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、外径約0.5〜10mmφ、厚み約1〜30mmの円柱状や、0.5〜10mm×0.5〜10mm×1〜30mm程度の直方体状などとすることができる。
【0032】
こうして得られた熱電変換材料を用いて、本発明の実施形態にかかる熱電変換素子を製造することができる。その一例の斜視図を、図1に示す。
【0033】
図1に示される熱電変換素子1は、p型素子2とn型素子3とを、電極4により交互に直列に接続したものである。この熱電変換素子1をペルチェ素子として用いる場合には、第1の端子5と第2の端子6の間に電圧を印加することにより、電極4の形成された面のうち一方の面が高温側、他方の面が低温側となり、低温側の面を発熱体に接触させて冷却することが出来る。また、この熱電変換素子1をゼーベック素子として用いる場合には、電極4の形成された面のうち一方の面を高温な物質などに接するようにし、他方の面を低温な物質などに接するようにすることで、第1の端子5と第2の端子6との間から電力を取り出すことが出来る。
【0034】
また、本発明の実施形態にかかる熱電変換材料を用いて熱電変換モジュール(ゼーベック素子)を形成し、これを用いた熱交換器を製造することも出来る。このような熱交換器の概略断面図を図2に、熱交換器中の熱電変換モジュール部分の概略断面図を図3に示す。
【0035】
図2の熱交換器20は、後述するように高温度側と低温度側とを有し、熱電変換モジュール10を、この高温度側と低温度側とに接するように組み込んだ構成とする。
【0036】
この熱交換器20は、中央にガス通路21を有し、その周りに多数の熱交換フィン22が設置されている。この熱交換フィン22に接して熱電変換モジュール10が設けられる。熱電変換モジュール10は熱交換フィン22とともに外囲器23により囲まれ、外囲器23と熱電変換モジュール10との間は、導入管25から排出管26に至る、たとえば水など、冷却用の物質の流路24となる。
【0037】
この熱交換器20において、ガス通路21内には例えばごみ焼却炉からの高温の排ガスが導入され、他方、流路24内には導入管25を介して冷却水が導入される。高温ガスの熱は、熱交換フィン22により奪われて流路24内を流れる水を加熱し、その結果、水は排出管26から温水となって取り出される。このとき、熱電変換モジュール10の流路24側の面は、流路24内を流れる水により低温度側となり、ガス通路21側の面は、ガス通路21内を流れる高温排ガスにより高温度側となる。従って、ゼーベック効果により、熱電変換モジュール10から温度差に対応した電力が取り出される。
【0038】
図2に示される熱交換器中の熱電変換モジュール10は、図3に示すように、p型熱電変換材料を有する複数のp型素子11と、n型熱電変換材料を有する複数のn型素子12とが交互に並べて配列され、隣接するp型素子11とn型素子12は全てが直列に配列するよう、第1の電極13と第2の電極14によって接続される。具体的には、第1の電極13は図中上側の面で隣接するp型素子11とn型素子12とを接続し、第2の電極14は図中下側の面で隣接するp型素子11とn型素子12とを接続しており、第1の電極13と第2の電極14とは、互い違いとなるよう配される。また、第1の電極13が形成された図中上側の面、第2の電極14が形成された図中下側の面の夫々には第1の絶縁性導熱板15、第2の絶縁性導熱板16が設けられる。
【0039】
図3の熱電変換モジュール10においては、第1の絶縁性導熱板15側を図2の低温度側(L)とし、第2の絶縁性導熱板16を図2の高温度側(H)となるよう温度差を与えると、第1の電極13と第2の電極14との間に電位差が生じる。そして、これらの電極13、14や複数のp型素子11、n型素子12の配列の終端(図示せず)に負荷を接続すると、電力を取り出すことが出来る。
【0040】
図1の熱電変換素子1、若しくは図3の熱電変換モジュール10において、本発明の実施形態にかかる熱電変換材料は、p型素子およびn型素子のいずれか一方、または双方の材料として用いることができる。
【0041】
以下、具体例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
所定量のFe、V、Al原料を秤量してアーク溶解にて合金を作製した。その後、ボールミルを用いて粒子径が45μm以下となるように粉砕した後、950℃で1時間ホットプレスすることにより外形が10mmφで、厚みが2mmの成形体を得た。成型体における生成相をX線回折で調査したところ、ホイスラー型結晶構造を有する相が主相であることが確認された。具体的には、全体積の90%以上がホイスラー型結晶構造を有する相からなっていた。
【0042】
得られた成型体の熱拡散率、密度および比熱を、レーザーフラッシュ法、アルキメデス法、およびDSC(示差走査熱量計)法によりそれぞれ測定して、それらの結果から熱伝導率κを求めた。また、この成形体を4×1×0.5mmの針状に切り出して、成形体の両端に3℃(300Kと303K)の温度差をつけて起電力を測定し、ゼーベック係数αを求めた。さらに、この針状に切り出した成形体の電気抵抗率ρを4端子法にて測定し、これらの値を用いて、性能指数Z(Z=α2/ρκ)を算出した。
【0043】
得られた結果を、合金の組成とともに(表1)に示す。
(実施例2〜17)
(表1)に示す組成により各々原料を配合して、実施例1と同様の方法により実施例2〜17の合金を作製した。次いで、実施例1と同様にボールミル粉砕した後に、ホットプレスすることにより成型体を形成して、各実施例の熱電変換材料を得た。成型体における生成相をX線回折により調査したところ、いずれもホイスラー型結晶構造を有する相が主相として存在することが確認された。具体的には、いずれの場合も全体積の90%以上がホイスラー型結晶構造を有する相からなっていた。
【0044】
また、実施例1と同様の方法により、熱伝導率κ、ゼーベック係数α、および性能指数Zを求めた。それらの値を(表1)に示す。
(実施例18)
p型熱電変換材料として実施例10の熱電変換材料を、n型熱電変換材料として実施例1の熱電変換材料を使用して、図3の熱電変換モジュール10を作製した。まず、各材料とも1.5mm角、高さ4.5mmに切り出してp型素子11及びn型素子12とした。これらを、32個ずつ銀電極板13、14で交互に直列となるよう接続し、終端電極には電流リード線を接合した。また、銀電極板13、14の、p型素子11やn型素子12を接続していない側には、2面とも窒化アルミニウム焼結体板15、16を接合した。この熱電変換モジュール10の内部抵抗は、1.06Ωであった。
【0045】
得られた熱電変換モジュール10について、高温度側を200℃、低温度側を20℃として発電特性を評価した。負荷としてこの熱電変換モジュールの内部抵抗と同じ1.06Ωの負荷を繋ぐ、整合負荷条件で熱電特性を測定したところ、発生した電圧は0.35Vであり、0.33Aの電流が流れ、0.12Wの電力が得られ、発電が確認された。
(比較例1〜11)
(表1)に示す組成により各々原料を配合して、実施例1と同様の方法により比較例1〜11の合金を作製した。次いで、実施例1と同様にボールミル粉砕した後に、ホットプレスすることにより成型体を形成して、各実施例の熱電変換材料を得た。成型体における生成相をX線回折により調査したところ、いずれもホイスラー型結晶構造を有する相が主相として存在することが確認された。具体的には、いずれの場合も全体積の90%以上がホイスラー型結晶構造を有する相からなっていた。
【0046】
また、実施例1と同様の方法により、熱伝導率κ、ゼーベック係数α、および性能指数Zを求めた。それらの値を(表1)に示す。
【0047】
【表1】
Figure 2004119647
【0048】
(表1)に示すように、Fe(GaAl1−p100−x−y(ただし、35≦x≦60、20≦y≦30、0.1≦p≦0.7である)もしくはFe(GaAl1−p−q100−x−y(ただし、35≦x≦60、20≦y≦30、0.001≦p≦0.5、0.001≦q≦0.3である)の組成で表される各実施例の熱電変換材料が熱伝導率が低く、性能指数の高い熱電変換材料であるのに対し、各比較例の熱電変換材料は、熱伝導率が高いか、もしくは性能指数が低くなってしまっている。特に、比較例1〜3及び8では、Gaが含まれていないか、若しくは組成比が小さすぎることから、熱伝導率が高くなってしまっている。また、比較例4〜7では、FeやVの組成比が大きすぎる、もしくは小さすぎることからゼーベック係数の絶対値が小さくなるために性能指数が小さくなっている。さらに、比較例9、11では、Gaの組成比が大きすぎることから、熱伝導率が高くなってしまっている。また、比較例10では、Bの置換量が多すぎることから、ゼーベック係数の絶対値が小さくなるために性能指数が小さくなってしまっている。
【0049】
また、各実施例の中でも、実施例3ではFeの一部をTiで、実施例4ではFeの一部をMoで、また実施例5ではAlの一部をSiで夫々置換しており、これらによって、より高い性能指数が得られている。また、実施例6ではAlの一部をInで、実施例7ではAlの一部をSnで、実施例8ではAlの一部をBiで夫々置換しており、これらによって、より低い熱伝導率が得られている。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ホイスラー構造を有するFe−V−Al系化合物を用いた性能指数の高い熱電変換材料を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る熱電変換素子の構造を表わす斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る熱交換器を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る熱電変換モジュールを示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…熱電変換素子
2、11…p型素子
3、12…n型素子
4…電極
5…第1の端子
6…第2の端子
10…熱電変換モジュール
13…第1の電極
14…第2の電極
15…第1の絶縁性導熱板
16…第2の絶縁性導熱板
20…熱交換器
21…ガス通路
22…熱交換フィン
23…外囲器
24…流路
25…導入管
26…排出管

Claims (5)

  1. ホイスラー構造を主相とし、Fe(GaAl1−p100−x−y(ただし、35≦x≦60、20≦y≦30、0.1≦p≦0.7である)で表される組成を有する化合物を含有することを特徴とする熱電変換材料。
  2. ホイスラー構造を主相とし、Fe(GaAl1−p−q100−x−y(ただし、35≦x≦60、20≦y≦30、0.001≦p≦0.5、0.001≦q≦0.3である)で表される組成を有する化合物を含有することを特徴とする熱電変換材料。
  3. 前記Feの一部が、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Y及び希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも一種で置換されていることを特徴とする請求項1もしくは2記載の熱電変換材料。
  4. 前記Alの一部が、C、N、Si、P、S、Mg、Ge、Sn、Sb、In及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種で置換されていることを特徴とする請求項1もしくは2記載の熱電変換材料。
  5. p型熱電変換材料を含むp型素子およびn型熱電変換材料を含むn型素子を交互に直列に接続した熱電変換素子において、前記p型熱電変換材料及び前記n型熱電変換材料の少なくとも一方に請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱電変換材料を用いたことを特徴とする熱電変換素子。
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