JP2003197985A - 熱電変換材料およびそれを用いた熱電変換素子 - Google Patents

熱電変換材料およびそれを用いた熱電変換素子

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の熱電変化材料に比較して、強い毒性を
有する元素を含有せず、安全性が高く、安価であり、ま
た熱電変換材料としての性能が優れるホイスラー合金系
熱電変換材料およびそれを用いた熱電変換素子を提供す
る。 【解決手段】 Fe−V−Alホイスラー合金のFeの
一部をMnまたはCrで置換した組成の合金を採用する
ことにより熱伝導率が小さく、性能指数Zの大きな熱電
変換材料を提供でき、これによって優れた性能の熱電変
換素子を提供することが可能となった。本発明の熱電変
換材料および熱電変換素子は従来より知られたBi−T
e系材料およびそれを用いた熱電素子と比較して毒性が
小さいためリサイクル性も高く地球環境問題の観点から
も好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱電変換材料および
熱電変換素子に係わり、特にFe−V−Al系の熱電変
換材料およびそれを用いた熱電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境問題に対する意識の高揚
から、フロンレス冷却機器であるペルチェ効果を利用し
た熱電冷却素子に関する関心が高まっている。また、同
じく、二酸化炭素排出量を削減するために、未利用廃熱
エネルギーを使った発電システムを提供する、ゼーベッ
ク効果を利用した熱電発電素子に関する関心が高まって
いる。現在室温付近で利用されている熱電材料は、効率
の高さから、Bi−Te系の単結晶または多結晶体を使
用したものが多い。この材料を用いて熱電素子化するた
めには、p型、n型両材料が必要となる。このうちn型
材料には一般にSeが添加される。また、室温より高温
で使用される熱電変換材料には、やはり効率の高さか
ら、Pb−Te系が用いられている。ところで、これら
素子に用いられているSe(セレン),Pb(鉛),T
e(テルル)は人体にとって有毒有害であり、また地球
環境問題の観点からも好ましくない。このため、これま
でBi−Te系、Pb−Te系材料に代わる無害な材料
の検討がなされている。
【0003】現在検討されている材料のひとつに、Fe
−V−Al系材料がある。Fe3AlにおけるFeの1
/3をVで置換したFe2VAl合金はL2型結晶構
造(ホイスラー構造)を有し、半導体的な電気伝導の挙
動を示すとともにBi−Te系材料に匹敵する高いゼー
ベック係数を室温で示すことが報告され注目を集めてい
る(2000年日本金属学会秋期大会講演概要p.36
1)。さらに、Fe2VAlにおけるAlの一部をSi
で置換した合金の出力因子は室温で5.4×10−3
/mKに達し、Bi−Te系材料の4〜5−3W/m
に匹敵する大きさであることが報告されている(日
本金属学会誌 第65巻 第7号(2001)652−
656)。
【0004】熱電変換材料の性能指数Zは、材料の熱起
電力を示すゼーベック係数をα、導電率をσ、熱伝導率
をκとした時、Z=ασ/κで示され、ασが前述
した出力因子である。一般にZの値が高いほど熱電変換
材料としての性能が優れている。すなわち、熱電変換材
料として応用するためには出力因子だけではなく、熱伝
導率を小さくしてZを上げることが必要である。しかし
ながら、前述したFe−V−Al合金は出力因子の観点
ではBi−Te系材料に匹敵する高い値を有するもの
の、熱伝導度が10倍程度高いため実用化に至っていな
い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような観
点からなされたものであり、Fe−V−Al合金を基に
出力因子を出来るだけ損なうことなく熱伝導率を低下さ
せ、性能指数Zの大きな熱電変換材料およびそれを用い
た熱電変換素子を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】ホイスラー合金Fe2V
Alは、バンド計算(G.Y.Guo et.al.,
J.Phys.:Condens.Matter.10
(1998)L119)によりその電子状態が詳しく調
べられている。計算結果によると、フェルミ準位におい
てΓ点付近にFeの3dバンドからなる正孔ポケット、
X点付近にVの3dバンドからなる電子ポケットが形成
されることがわかっており、フェルミ面のわずかな変化
でキャリア濃度およびゼーベック係数が大きく変化する
ことが推察される。本発明者らはFe2VAl近傍の組
成におけるFeの一部をCr、Mn、Co、Niといっ
た他の3d遷移元素で置換した合金についてゼーベック
係数の変化を調べたところ、置換元素がFeよりも周期
律表で左側に位置するCr、Mnの場合にはゼーベック
係数は正に、また、Feよりも周期律表で右側に位置す
るCo、Niの場合には負になることを確認した。つま
り、3d電子数の制御でゼーベック係数の正負や絶対値
を制御できることが示され、特にMnで置換した場合に
は100μV/Kを超える正の大きなゼーベック係数が
得られることが明らかになった。さらに、前記MnでF
eを置換した合金は、置換しない場合と比較して熱伝導
率が低下することを見出し、その結果、高い性能指数を
持つ熱電変換材料が実現され本発明に至ったものであ
る。
【0007】すなわち、第1の本発明は、下記の組成式
で表される組成を有することを特徴とする熱電変換材料
である。 A(Fe1―a(E1−b
100−x―y−z (式中、Aは、MnまたはCrの少なくとも一種、D
は、Ti,Co,Ni,Cu,Zn,Zr,Nb,M
o,Ag,Hf,Ta,W,Y,および希土類元素の群
から選ばれる少なくとも一種の元素、EはAlまたはS
iの少なくとも一種、Gは、B,C,N,P,S,M
g,Ga,Ge,Sn,In,およびBiの群から選ば
れる少なくとも一種の元素、a、bはそれぞれ0≦a≦
0.2、0≦b≦0.2、x、y、zはそれぞれ、2≦
x、35≦x+y≦60、15≦z≦35の数を表
す。)
【0008】前記第1の本発明において、前記化学式の
x+yおよびzは、それぞれ、2≦x、48≦x+y≦
52、25≦z≦33の数であることが望ましい。前記
第1の本発明の熱電変換材料において、L2型結晶構
造を有する結晶相が全結晶相および非晶質層の内の50
体積%以上を占める相であることが望ましい。このL2
型結晶構造を有する結晶相が50体積%を下回った場
合、十分な性能指数Zを有する材料が得られない。
【0009】第2の本発明は、電気的に接続されたp型
熱電変換材料とn型熱電変換材料とを備えた熱電変換素
子において、前記p型熱電変換材料と前記n型熱電変換
材料のいずれか一方もしくは双方として、下記の組成式
で表される材料を用いたことを特徴とする熱電変換素子
である。 A(Fe1―a(E1−b
100−x―y−z (式中、Aは、MnまたはCrの少なくとも一種、D
は、Ti,Co,Ni,Cu,Zn,Zr,Nb,M
o,Ag,Hf,Ta,W,Y,および希土類元素の群
から選ばれる少なくとも一種の元素、EはAlまたはS
iの少なくとも一種、Gは、B,C,N,P,S,M
g,Ga,Ge,Sn,In,およびBiの群から選ば
れる少なくとも一種の元素、a、bはそれぞれ0≦a≦
0.2、0≦b≦0.2、x、y、zはそれぞれ、2≦
x、35≦x+y≦60、15≦z≦35の数を表
す。)
【0010】
【発明の実施の形態】まず、本発明の熱電変換材料につ
いて詳細に説明する。 [熱電変換材料]本発明の熱電変換材料の一実施形態
は、下記の組成式で表される組成を有するものである。 AFe100−x―y−z (式中、Aは、MnまたはCrの少なくとも一種、Eは
AlまたはSiの少なくとも一種、x、y、zはそれぞ
れ、2≦x、35≦x+y≦60、15≦z≦35の数
を表す。)
【0011】前記組成を有する材料の結晶形としては、
L2型結晶構造すなわちホイスラー型結晶構造や、α
−Fe相などがあるが、本発明の熱電変換材料として
は、これらの結晶形の内、L2型結晶構造すなわちホ
イスラー型結晶構造を有する結晶相を全相の内の50体
積%以上とすることによって、より性能指数Zの大きな
熱電変換材料が得られる。本発明の熱電変換材料を構成
する他の相については特に制約を受けるものではなく、
これらのいずれの相か、あるいは、非晶質相であっても
良い。
【0012】以下、本発明を構成する各成分の配合理由
および配合量の規定理由について述べる。本発明の熱電
変換材料には、MnまたはCrが2原子%以上配合され
る。MnまたはCrの配合量が2原子%未満であると前
述した熱伝導率低下の効果が小さくなり好ましくない。
より好ましいMnまたはCrの配合量は2〜50原子%
であり、さらに好ましくは5〜25原子%である。
【0013】また、本発明の熱電変換材料は、A元素す
なわちMnまたはCrと、Feの総量が35〜60原子
%の範囲で配合される。MnまたはCrとFeの総量が
35原子%未満の場合、および60原子%を超える場合
には大きなゼーベック係数が得られない。より好ましい
MnまたはCrとFeの総量は40〜55原子%、さら
に好ましくは42〜52原子%である。
【0014】また、本発明の熱電変換材料はVが、15
〜35原子%の範囲で配合される。Vの配合量が15原
子%未満の場合、ホイスラー型結晶構造以外の結晶相が
主相となってしまう恐れがあり、その結果、良好な熱電
性能が得られない。また、Vの配合量が35原子%を超
えると、ゼーベック係数の低下が著しい。より好ましい
V配合量の範囲は20〜30原子%、さらに好ましくは
22〜28原子%である。
【0015】また、本発明の別の実施形態は、下記の組
成式で表される組成を有するものである。 A(Fe1―a(E1−b
100−x―y−z (式中、Aは、MnまたはCrの少なくとも一種、D
は、Ti,Co,Ni,Cu,Zn,Zr,Nb,M
o,Ag,Hf,Ta,W,Y,および希土類元素の群
から選ばれる少なくとも一種の元素、EはAlまたはS
iの少なくとも一種、Gは、B,C,N,P,S,M
g,Ga,Ge,Sn,In,およびBiの群から選ば
れる少なくとも一種の元素、a、bはそれぞれ0≦a≦
0.2、0≦b≦0.2、x、y、zはそれぞれ、2≦
x、35≦x+y≦60、15≦z≦35の数を表
す。) すなわち、先に述べた熱電変換材料において、Feの一
部をTi,Cr,Co,Ni,Cu,Zn,Zr,N
b,Mo,Ag,Hf,Ta,W,Y,および希土類元
素の群から選ばれる少なくとも一種で置換することもで
きる。このような置換によって熱伝導率を更に低下させ
ることができ、性能指数Zを高めることが可能である。
ただし、過剰の置換はゼーベック係数の低下などによっ
て逆にZを低下させる恐れがあるため、置換する元素の
量は、Feと置換元素量の総量に対して20原子%以下
とすることが好ましい。また、Feと置換元素量の総量
に対して3原子%以上とすることが好ましく、これより
も少ないと置換することによる充分な効果が得られな
い。
【0016】また、本発明の熱電変換材料において、D
元素すなわちAlまたはSiの一部をB,C,N,P,
S,Mg,Ga,Ge,Sn,In,Biの群から選ば
れる少なくとも一種で置換することもできる。このよう
な置換によって熱伝導率を更に低下することができ、性
能指数Zを高めることが可能である。ただし、過剰の置
換はゼーベック係数の低下などによって逆にZを低下さ
せる恐れがあるため、置換する元素の量は、E元素と置
換元素量の総量に対して20原子%以下とすることが好
ましい。また、Feと置換元素量の総量に対して8原子
%以上とすることが好ましく、これよりも少ないと置換
することによる充分な効果が得られない。
【0017】以下、本発明の熱電変換材料成形体の製造
例を説明する。まず、上記組成式で示される所定量の各
元素を含有する合金を、アーク溶解や高周波溶解などに
よって作製する。この合金は、単ロール法、双ロール
法、回転ディスク法、ガスアトマイズ法などの液体急冷
法やメカニカルアロイング法などの固相反応を利用した
方法で製造することができる。この液体急冷法やメカニ
カルアロイング法などによって合金を製造した場合、合
金を構成する結晶相が微細化できることや、結晶相内へ
の元素の固溶域を拡大することができるなどの効果があ
り、熱伝導度の低減、ゼーベック係数の増大などに有効
である。また、この合金は、必要に応じて熱処理が施さ
れ、これによって合金を単相化したり、結晶粒子径を制
御するなどして、さらに熱電特性を高めることも可能で
ある。この工程で溶解、液体急冷、メカニカルアロイン
グおよび熱処理を実施する際の雰囲気はArなどの不活
性雰囲気中が好ましい。
【0018】次に、前記合金をボールミル、ブラウンミ
ル、スタンプミルなどによって粉砕して合金粉末とした
後、この合金粉末を焼結法、ホットプレス法、SPS法
などによって一体成型する。この工程で、一体成型を実
施する際の雰囲気は、Arなどの不活性雰囲気中が好ま
しい。
【0019】次いで、得られた成型体を例えば角柱状な
ど所望の形状・寸法に機械加工して熱電変換材料成形体
を製造することができる。
【0020】[熱電変換素子]以下本発明の熱電変換素
子について説明する。本発明の熱電変換素子は、電気的
に接続されたp型熱電変換材料成形体とn型熱電変換材
料成形体とを備えた熱電変換素子において、前記p型熱
電変換材料と前記n型熱電変換材料のいずれか一方もし
くは双方として、下記の組成式で表される材料を用いた
ことを特徴とするものである。 A(Fe1―a(E1−b
100−x―y−z (式中、Aは、MnまたはCrの少なくとも一種、D
は、Ti,Co,Ni,Cu,Zn,Zr,Nb,M
o,Ag,Hf,Ta,W,Y,および希土類元素の群
から選ばれる少なくとも一種の元素、EはAlまたはS
iの少なくとも一種、Gは、B,C,N,P,S,M
g,Ga,Ge,Sn,In,およびBiの群から選ば
れる少なくとも一種の元素、a、bはそれぞれ0≦a≦
0.2、0≦b≦0.2、x、y、zはそれぞれ、2≦
x、35≦x+y≦60、15≦z≦35の数を表
す。) p型とn型のどちらか一方に本発明の熱電変換材料を用
いる場合には、他方はBi−Te系材料など既知の材料
を使用すればよい。
【0021】以下本発明に係る熱電変換素子の一態様を
図1に示す。図1において、1は本発明の熱電変換素子
である。そして、例えば角柱状のp型熱電変換材料成形
体2と、これも角柱状のn型熱電変換材料成形体3と
を、並列に且つ離間するように配置し、これらの成形体
の両端部を、例えば短冊状のアルミニウムなど導電材料
からなる共通電極8によって電気的に直列に接続する。
そして、両端部にある熱電変換材料成形体から、外部に
取り出すための電極端子6,7を接続する。前記共通電
極8の外側には、電気絶縁材料であり且つ熱伝導性材料
からなる低温側熱伝導層4と、高温側熱伝導層5とを、
覆設する。この素子において、熱電変換材料成形体2,
3と、共通電極8との接着接続は、公知の導電性接着剤
によって行うことができる。また、共通電極8と低温側
および高温側熱伝導層4,5との接着は、公知の有機接
着剤もしくは無機接着剤を用いて行うことができる。
【0022】このような素子において、低温側熱伝導層
4を低温度(L)にし、かつ高温側熱伝導層5を高温度
(H)にして両熱伝導層に温度差を与えると、p型半導
体である熱電変換材料成形体2においては、正の電荷を
持ったホールが低温度L側に、n型半導体である熱電変
換材料成形体3においては、負の電荷を持った電子が低
温度側Lに移動する。その結果、電極端子6,7間に電
位差が生じることになる。一方、このような素子におい
て、電極端子6を正極に、電極端子7を負極にして電圧
を印加すると、前述と同様にホールおよび電子が移動し
て、個々の熱電変換材料成形体の両端に温度差が生じ、
低温側熱伝導層4が低温に冷却され、一方高温側熱伝導
層5が高温に加熱される。このようにして本発明の熱電
変換素子を、発電素子あるいは加熱・冷却素子として用
いることができる。
【0023】上記実施の形態においては、複数の熱電変
換材料を、線状に配列した例を示したが、熱電変換材料
成形体を面状に配列することによってさらに熱電変換効
率を向上させることもできる。
【0024】
【実施例】(実施例1)所定量のFe、Mn、V、Al
原料を秤量してアーク溶解にて合金を製造した後、ボー
ルミルを用いて45μm以下に粉砕、900℃で1時間
ホットプレスすることにより外径10mmφ、厚み2m
mの成型体を得た。成型体の生成相をX線回折で調査し
たところ、ホイスラー型の結晶構造を有することを確認
した。成型体の組成を表1に示した。成型体の熱拡散率
をレーザーフラッシュ法、密度をアルキメデス法、比熱
をDSC(示差走査熱量計)法でそれぞれ測定し、それ
らの結果から熱伝導率κを求めたところ、300Kで
4.5W/mKであった。また、前記成型体を針状に切
り出してゼーベック係数αを測定したところ、300K
で115μV/Kであった。さらに、前記針状の成型体
の電気抵抗率ρを4端子法にて測定した結果、300K
で0.92mΩcmであった。これらの結果から性能指
数Z(Z=α/ρκ)を求めたところ、3.19×1
−4−1であった。
【0025】(実施例2〜7、比較例1)実施例1と同
様の方法で合金を製造、実施例1と同様にボールミル粉
砕、ホットプレスすることにより成型体を得た。成型体
の生成相をX線回折で調査したところ、いずれもホイス
ラー型の結晶構造を有することを確認した。実施例2〜
5、比較例1の各成型体の組成を表1に示した。また、
実施例1と同様の方法で求めた300Kでの性能指数Z
の値を表1に併記した。実施例1〜5および比較例1か
ら、Feの一部をMnで置換した本発明の組成の方が熱
伝導率が小さく、その結果、性能指数Zの値が高いこと
がわかる。
【0026】(実施例8)所定量のFe、Mn、V、A
l原料を秤量してアーク溶解にて合金を製造した後、前
記合金をAr雰囲気中で溶解し、40m/sの周速度で
回転する直径300mmの銅製ロールに射出する液体急
冷法により急冷薄帯を作製した。次いで、この急冷薄帯
をボールミルを用いて45μm以下に粉砕、850℃で
30分間ホットプレスすることにより外径10mmφ、
厚み2mmの成型体を得た。成型体の生成相をX線回折
で調査したところ、ホイスラー型の結晶構造を有するこ
とを確認した。成型体の組成を表1に示した。成型体の
熱拡散率をレーザーフラッシュ法、密度をアルキメデス
法、比熱をDSC(示差走査熱量計)法でそれぞれ測定
し、それらの結果から熱伝導率κを求めたところ、30
0Kで3.8W/mKであった。また、前記成型体を針
状に切り出してゼーベック係数αを測定したところ、3
00Kで118μV/Kであった。さらに、前記針状の
成型体の電気抵抗率ρを4端子法にて測定した結果、3
00Kで0.95mΩcmであった。これらの結果から
性能指数Z(Z=α/ρκ)を求めたところ、3.8
6×10 −4−1であった。
【0027】(実施例9〜12、比較例2)実施例8と
同様の方法で急冷薄帯を作製、実施例8と同様にボール
ミル粉砕、ホットプレスすることにより成型体を得た。
成型体の生成相をX線回折で調査したところ、いずれも
ホイスラー型の結晶構造を有することを確認した。実施
例9〜12、比較例2の各成型体の組成を表1に示し
た。また、実施例1と同様の方法で求めた300Kでの
性能指数Zの値を表1に併記した。実施例8〜12およ
び比較例2から、Feの一部をMnで置換した本発明の
組成の方が熱伝導率が小さく、その結果、性能指数Zの
値が高いことがわかる。
【0028】
【表1】
【0029】また、実施例3のWに代えて、Zn、A
g、Hf又はYでFeの一部を置換した場合にも、Fe
を置換しない場合に比べて熱伝導率が小さく、その結
果、性能指数Zの値が高かった。また、実施例4のGa
に代えて、P,S,Mg,Ge,Sn,In又はBiで
Alの一部を置換した場合にも、Feを置換しない場合
に比べて熱伝導率が小さく、その結果、性能指数Zの値
が高かった。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によればF
e−V−Al合金のFeの一部をMnまたはCrで置換
した組成の合金を採用することにより、熱伝導率が小さ
く、性能指数Zの大きな熱電変換材料を提供でき、これ
によって優れた性能の熱電変換素子を提供することが可
能となった。本発明の熱電変換材料および熱電変換素子
は従来より知られたBi−Te系材料と比較して毒性が
小さいため地球環境問題の観点からも好ましく、工業的
価値は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の熱電変換素子の1例を示す概略図
【符号の説明】
1・・・熱電変換素子 2・・・p型熱電変換材料成形体 3・・・n型熱電変換材料成形体 4・・・低温度側熱伝導層 5・・・高温度側熱伝導層 6,7・・・電極端子 8・・・共通電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H02N 11/00 H02N 11/00 A

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の組成式で表される組成を有すること
    を特徴とする熱電変換材料。 A(Fe1―a(E1−b
    100−x―y−z (式中、Aは、MnまたはCrの少なくとも一種、D
    は、Ti,Co,Ni,Cu,Zn,Zr,Nb,M
    o,Ag,Hf,Ta,W,Y,および希土類元素の群
    から選ばれる少なくとも一種の元素、EはAlまたはS
    iの少なくとも一種、Gは、B,C,N,P,S,M
    g,Ga,Ge,Sn,In,およびBiの群から選ば
    れる少なくとも一種の元素、a、bはそれぞれ0≦a≦
    0.2、0≦b≦0.2、x、y、zはそれぞれ、2≦
    x、35≦x+y≦60、15≦z≦35の数を表
    す。)
  2. 【請求項2】前記組成式において、x+yおよびzは、
    それぞれ、2≦x、48≦x+y≦52、25≦z≦3
    3の数であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変
    換材料。
  3. 【請求項3】前記熱電変換材料において、L2型結晶
    構造を有する結晶相が全結晶相および非晶質層の内の5
    0体積%以上を占める相であることを特徴とする請求項
    1ないし請求項4のいずれかに記載の熱電変換材料。
  4. 【請求項4】電気的に接続されたp型熱電変換材料とn
    型熱電変換材料とを備えた熱電変換素子において、前記
    p型熱電変換材料と前記n型熱電変換材料のいずれか一
    方もしくは双方として、下記の組成式で表される材料を
    用いたことを特徴とする熱電変換素子。 A(Fe1―a(E1−b
    100−x―y−z (式中、Aは、MnまたはCrの少なくとも一種、D
    は、Ti,Co,Ni,Cu,Zn,Zr,Nb,M
    o,Ag,Hf,Ta,W,Y,および希土類元素の群
    から選ばれる少なくとも一種の元素、EはAlまたはS
    iの少なくとも一種、Gは、B,C,N,P,S,M
    g,Ga,Ge,Sn,In,およびBiの群から選ば
    れる少なくとも一種の元素、a、bはそれぞれ0≦a≦
    0.2、0≦b≦0.2、x、y、zはそれぞれ、2≦
    x、35≦x+y≦60、15≦z≦35の数を表
    す。)
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