JP4035572B2 - 熱電変換材料、その製造方法及び熱電変換素子 - Google Patents

熱電変換材料、その製造方法及び熱電変換素子 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は熱電変換材料、その製造方法及び熱電変換素子に関する。本発明の熱電変換材料は、熱電変換効率が高く、製造コストの低廉化が可能であり、環境汚染のおそれが少ない。
【背景技術】
【0002】
従来、熱エネルギーと電気エネルギーとの相互変換が可能な熱電変換素子が知られている。この熱電変換素子は、p型及びn型の二種類の熱電変換材料から構成されており、この二種類の熱電変換材料を電気的に直列に接続し、熱的に並列に配置した構成とされている。この熱電変換素子は、両端子間に電圧を印加すれば、正孔の移動及び電子の移動が起こり、両面間に温度差が発生する(ペルチェ効果)。また、この熱電変換素子は、両面間に温度差を与えれば、やはり正孔の移動及び電子の移動が起こり、両端子間に起電力が発生する(ゼーベック効果)。このため、熱電変換素子を冷蔵庫やカーエアコン等の冷却用の素子として用いたり、ごみ焼却炉等から生ずる廃熱を利用した発電装置用の素子として用いたりすることが検討されている。
【0003】
従来、この熱電変換素子を構成する熱電変換材料として、金属間化合物からなるものが知られている。その中でもBi2Te3を主成分とした熱電変換材料は、大きなゼーベック係数と大きな出力因子とを有しており、比較的効率よく熱電変換を行うことができることから、特によく用いられている。また、金属間化合物以外の熱電変換材料として、複合酸化物系の熱電変換材料も開発されている(特開平9−321346号公報)。この熱電変換材料は、広い温度範囲で熱電変換を行うことができるという利点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の熱電変換材料のうち、Bi2Te3を主成分とした熱電変換材料は、脆くて加工し難い性質を有しており、熱間圧延等の加工法を採用することができない。このため、この熱電変換材料を用いて熱電変換素子を製造する場合には、Bi2Te3の多結晶のインゴットを製造した後、これを切断するという方法が行われている。このため、切断のための削り代が必要になるとともに、切断時においてインゴットが割れやすいことから、熱電変換素子を製造する場合の歩留まりが非常に悪い。また、Teは高価な元素であるため、Teを原料とする上記熱電変換材料も高価になってしまう。こうして、この熱電変換材料では、熱電変換素子の製造コストの高騰化を招来する。また、Teは毒性が極めて強く、Biも毒性が強い。このため、Bi2Te3を主成分とした熱電変換材料は、環境汚染のおそれがある。さらに、Teは希少元素であるため、Bi2Te3を熱電変換材料として大量かつ安定に市場へ供給することは困難と考えられる。
【0005】
この点、上記公報に記載された複合酸化物系の熱電変換材料は、Te等の希少元素を使用しておらず、市場へ大量かつ安定に供給することが可能である。また、この熱電変換材料は、原料として安価な汎用性金属を原料とするため、製造コストの低廉化が可能である。さらに、この熱電変換材料には毒性の強い成分は含まれておらず、環境汚染のおそれも少ない。
【0006】
しかしながら、複合酸化物系の熱電変換材料は、Bi2Te3を主成分とした熱電変換材料と同様、脆くて加工が困難であるという性質を有する。このため、複合酸化物系の熱電変換材料を用いて熱電変換素子を製造した場合、やはり切断のための削り代が必要になるとともに、切断時においてインゴットが割れやすく、歩留まりが非常に悪く、熱電変換素子の製造コストの高騰化を招来する。また、複合酸化物系の熱電変換材料は、Bi2Te3よりもゼーベック係数の絶対値が小さく、出力因子も小さく、熱電変換効率が低い。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、熱電変換効率が高く、製造コストの低廉化が可能であり、環境汚染のおそれも少ない熱電変換材料及び熱電変換素子を提供することを解決すべき課題としている。また、熱電変換効率が高く、環境汚染のおそれも少ない熱電変換材料を低廉に製造することが可能な製造方法を提供することも解決すべき課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題解決のために鋭意研究を行い、以下の考察を経て本発明を完成するに至った。すなわち、発明者らの試験結果によれば、ホイスラー合金型の結晶構造を有する化合物の中には、金属であるにもかかわらず半導体的性質を示すものがある。例えば、Fe2VAlは、2Kでの比抵抗が約30μΩmにも達しており、通常の金属と異なり、半導体的な負の温度依存性を示す。一方、高分解能光電子分光測定によれば、この化合物にはフェルミ準位に半導体型のエネルギーギャップが認められず、明瞭なフェルミ端が観測される。これらのことから、この化合物は金属的あるいは半金属的なバンド構造を有していることが判る。発明者らは、このホイスラー合金型の結晶構造を有する化合物のバンド計算を行った。この結果、この化合物の化学式当たりの総価電子数が24である場合、この化合物がフェルミ準位に鋭い擬ギャップをもつ半金属になることを明らかにした。
【0009】
そして、発明者らは、ホイスラー合金型の結晶構造を有する化合物であって、化学式当たりの総価電子数が24の化合物であるFe2VAl等について、ホール効果の測定も行った。この結果、この化合物はキャリア数がSbのような半金属と同程度に低いことを確認し、その擬ギャップの存在を予測した。このような擬ギャップを有する化合物は、フェルミ準位近傍の状態密度の傾きが急峻である。このため、化学式当たりの総価電子数が24であるホイスラー合金型の化合物の化学組成比を調整し、フェルミ準位を擬ギャップの中心からシフトさせれば、その化合物のゼーベック係数の絶対値及び符号を変化させることができると推測した。また、化学式当たりの総価電子数が24であるホイスラー合金型の化合物の構成元素の少なくとも一部を他の元素つまり第4元素、第5元素等で置換し、フェルミ準位を擬ギャップの中心からシフトさせれば、その化合物のゼーベック係数の絶対値及び符号を変化させることができるとも推測した。さらに、化学式当たりの総価電子数が24であるホイスラー合金型の化合物の化学組成比を調整するとともに、構成元素の少なくとも一部を他の元素で置換し、フェルミ準位を擬ギャップの中心からシフトさせれば、その化合物のゼーベック係数の絶対値及び符号を変化させることができるとも推測した。そして、そのような化合物は、その機構から、熱エネルギーの寄与が少ない低温で熱電変換効率が高いことを確認した。特に、これらの化合物は、常温付近及び常温以下で熱電変換材料としての特性に優れていることを確認した。こうして、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の熱電変換材料は、構成する元素をA、B及びCとした場合、元素A、B及びCがホイスラー合金型の結晶構造になるような化学量論組成(A2BC)をなし、化学式当たりの総価電子数が24である基本構造に対し、化学組成比を調整することによって化学式当たりの総価電子数が制御されていることを特徴とする。
【0011】
発明者らの試験結果によれば、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8の範囲にあることが好ましい。この範囲内の総価電子数の熱電変換材料が高い熱電変換効率を示す。
【0012】
このため、化学組成比の調整量x、y及びzは、総価電子数が23.2〜24.8になるように一般式A2+x1+y1+zを満たす−1<x<1、−1<y<1又は−1<z<1の範囲内で選択され得る。調整量x、y又はzが正であれば、元素A、B又はCが基本構造よりも増加し、調整量x、y又はzが負であれば、元素A、B又はCが基本構造よりも減少することを意味する。化学組成比を調整した化合物がホイスラー合金型の結晶構造を維持するためには、x+y+z=0が満足されていることが好ましい。
【0013】
この際、一般式A2+x1+y1+zの調整量x、y及びzを例えばx=−n、y=n、z=0とすれば、2+x=2−n、1+y=1+n、1+z=1であるから、一般式A2+x1+y1+zは一般式A2-n1+nCで表されるため、基本構造のA2BCに対し、AとBとの調整量nにより、化学式当たりの総価電子数を制御することができる。
【0014】
また、一般式A2+x1+y1+zの調整量x、y及びzを例えばx=−n、y=0、z=nとすれば、2+x=2−n、1+y=1、1+z=1+nであるから、一般式A2+x1+y1+zは一般式A2-nBC1+nで表されるため、基本構造のA2BCに対し、AとCとの調整量nにより、化学式当たりの総価電子数を制御することができる。
【0015】
さらに、一般式A2+x1+y1+zの調整量x、y及びzを例えばx=0、y=−n、z=nとすれば、2+x=2、1+y=1−n、1+z=1+nであるから、一般式A2+x1+y1+zは一般式A21-n1+nで表されるため、基本構造のA2BCに対し、BとCとの調整量nにより、化学式当たりの総価電子数を制御することができる。
【0016】
また、一般式A2+x1+y1+zの調整量x、y及びzを例えばx=−2n/3、y=−n/3、z=nとすれば、2+x=2(3−n)/3、1+y=(3−n)/3、1+z=1+nであるから、一般式A2+x1+y1+zは一般式(A2/31/33-n1+nで表され、基本構造のA2BCに対し、A2BのグループとCとの調整量nにより、化学式当たりの総価電子数を制御することができる。
【0017】
さらに、一般式A2+x1+y1+zの調整量x、y及びzを例えばx=−2n/3、y=n、z=−n/3とすれば、2+x=2(3−n)/3、1+y=1+n、1+z=(3−n)/3であるから、一般式A2+x1+y1+zは一般式(A2/33-n1+n(C1/33-nで表されるため、基本構造のA2BCに対し、A2CのグループとBとの調整量nにより、化学式当たりの総価電子数を制御することができる。
【0018】
また、一般式A2+x1+y1+zの調整量x、y及びzを例えばx=−n、y=n/2、z=n/2とすれば、2+x=2−n、1+y=(2+n)/2、1+z=(2+n)/2であるから、一般式A2+x1+y1+zは一般式A2-n(B1/21/22+nで表されるため、基本構造のA2BCに対し、A2とBCのグループとの調整量nにより、化学式当たりの総価電子数を制御することができる。
【0019】
また、本発明の熱電変換材料は、構成する元素をA、B及びCとした場合、元素A、B及びCがホイスラー合金型の結晶構造になるような化学量論組成(A2BC)をなし、化学式当たりの総価電子数が24である基本構造に対し、元素A、B及びCの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換することによって化学式当たりの総価電子数が制御されていることを特徴とする。
【0020】
発明者らの試験結果によれば、基本構造の元素Aに替えて置換する他の元素がDsである場合、元素Dsの置換量αが一般式(A1- αDsα2BCを満たす0≦α≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御され得る。また、基本構造の元素Bに替えて置換する他の元素がEsである場合、元素Esの置換量βが一般式A2(B1- βEsβ)Cを満たす0≦β≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御され得る。さらに、基本構造の元素Cに替えて置換する他の元素がFsである場合、元素Fsの置換量γが一般式A2B(C1- γFsγ)を満たす0≦γ≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御され得る。元素Ds、Es又はFsは1種の元素でもよく、複数の元素でもよい。
【0021】
基本構造の元素Aに替えて元素Dsで置換するとともに、基本構造の元素Bに替えて元素Esで置換すれば、一般式は(A1- αDsα2(B1- βEsβ)Cとなる。また、基本構造の元素Aに替えて元素Dsで置換するとともに、基本構造の元素Cに替えて元素Fsで置換すれば、一般式は(A1- αDsα2B(C1- γFsγ)となる。基本構造の元素Bに替えて元素Esで置換するとともに、基本構造の元素Cに替えて元素Fsで置換すれば、一般式はA2(B1- βEsβ)(C1- γFsγ)となる。基本構造の元素Aに替えて元素Dsで置換し、基本構造の元素Bに替えて元素Esで置換し、かつ基本構造の元素Cに替えて元素Fsで置換すれば、一般式は(A1- αDsα2(B1- βEsβ)(C1- γFsγ)となる。これらによっても、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御され得る。
【0022】
さらに、本発明の熱電変換材料は、構成する元素をA、B及びCとした場合、元素A、B及びCがホイスラー合金型の結晶構造になるような化学量論組成(A2BC)をなし、化学式当たりの総価電子数が24である基本構造に対し、化学組成比を調整すること並びに元素A、B及びCの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換することによって化学式当たりの総価電子数が制御されていることを特徴とする。
【0023】
発明者らの試験結果によれば、基本構造の元素Aに替えて置換する他の元素がDsである場合、化学組成比の調整量x、y及びz並びに元素Dsの置換量αが一般式(A1- αDsα2+x1+y1+zを満たす−1<x<1、−1<y<1又は−1<z<1及び0≦α≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御され得る。また、基本構造の元素Bに替えて置換する他の元素がEsである場合、化学組成比の調整量x、y及びz並びに元素Esの置換量βが一般式A2+x(B1- βEsβ1+y1+zを満たす−1<x<1、−1<y<1又は−1<z<1及び0≦β≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御され得る。さらに、基本構造の元素Cに替えて置換する他の元素がFsである場合、化学組成比の調整量x、y及びz並びに元素Fsの置換量γが一般式A2+x1+y(C1- γFsγ1+zを満たす−1<x<1、−1<y<1又は−1<z<1及び0≦γ≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御され得る。
【0024】
化学組成比を調整量x、y及びzで調整しつつ、基本構造の元素Aに替えて元素Dsで置換するとともに、基本構造の元素Bに替えて元素Esで置換すれば、一般式は(A1- αDsα2+x(B1- βEsβ1+y1+zとなる。また、化学組成比を調整量x、y及びzで調整しつつ、基本構造の元素Aに替えて元素Dsで置換するとともに、基本構造の元素Cに替えて元素Fsで置換すれば、一般式は(A1- αDsα2+x1+y(C1- γFsγ1+zとなる。さらに、化学組成比を調整量x、y及びzで調整しつつ、基本構造の元素Bに替えて元素Esで置換するとともに、基本構造の元素Cに替えて元素Fsで置換すれば、一般式はA2+x(B1- βEsβ1+y(C1- γFsγ1+zとなる。化学組成比を調整量x、y及びzで調整しつつ、基本構造の元素Aに替えて元素Dsで置換し、基本構造の元素Bに替えて元素Esで置換し、かつ基本構造の元素Cに替えて元素Fsで置換すれば、一般式は(A1- αDsα2+x(B1- βEsβ1+y(C1- γFsγ1+zとなる。
【0025】
発明者らの試験結果によれば、構成する元素をA、B及びCとした場合、元素A、B及びCがホイスラー合金型の結晶構造になるような化学量論組成(A2BC)をなし、化学式当たりの総価電子数が24である基本構造を有している場合、すなわち原子当たりの平均電子濃度が24/4=6である場合、この熱電変換材料は、フェルミ準位に鋭い擬ギャップをもつことが確認された。そして、この熱電変換材料は、化学組成比を調整すること、元素A、B及びCの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換すること、又は化学組成比を調整すること並びに元素A、B及びCの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換することによって化学式当たりの総価電子数を制御すれば、これによってフェルミ準位を擬ギャップの中心からシフトさせることができ、ゼーベック係数の符号や大きさを変化させ得る。
【0026】
この熱電変換材料は、金属的性質として、比抵抗が小さいという特徴がある。また、この熱電変換材料では、化学組成比を変化させて非化学量論組成としたり、元素A、B及びCの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換したりすれば、格子振動の散乱が大きくなるため、熱伝導率が低下する。このため、この熱電変換材料を用いて、熱電変換効率の高い熱電変換素子を製造することができる。この際、熱電変換材料の製造過程において、熱間圧延等の歪加工を行ったり、溶融した原料を急冷したりすること等により結晶粒を小さくし、粒界散乱の度合いを高めて熱伝導率を低下させれば、熱電変換効率のより高い熱電変換素子を製造することができると考えられる。さらに、この熱電変換材料では、従来の熱電変換材料と異なり、金属的性質として、750°C以上かつ融点以下の温度で熱間加工等を行うことができる。このため、熱電変換素子を製造する場合の歩留まりを高くすることができるとともに、製造工程数も少なくなり、ひいては熱電変換素子の製造コストの低廉化も実現できる。また、この熱電変換材料は、BiやTe等の毒性の強い成分を主成分とすることを避け得るため、環境汚染のおそれも少ない。
【0027】
発明者らの試験結果によれば、本発明の熱電変換材料は、元素Aが周期表における第4〜6周期のVIII族からなる群から選ばれた元素であり、元素Bが周期表における第4〜6周期のIVa族〜VIIa族からなる群から選ばれた元素であり、元素Cが周期表における第3〜5周期のIIa族又はIIIb族〜Vb族からなる群から選ばれた元素であれば、基本構造が得られる。基本構造の元素AはFe(鉄)であり、元素BはV(バナジウム)であり、元素CはAl(アルミニウム)であることが好ましい。発明者らは基本構造をこれらの元素によって構成した熱電変換材料について効果を確認している。これらFe、V及びAlが主成分であれば、これらはいずれも毒性のほとんどないため、環境汚染の問題を生ずるおそれが小さくなる。また、Fe及びAlは安価であるので、製造コストの低廉化が可能になる。なお、Vの替わりにNb(ニオブ)を用いることもできる。NbはFeと原子半径及び質量が大きく異なるため、熱伝導率を下げる効果が大きいと推定される。また、元素AはFe(鉄)であり、元素BはTi(チタン)であり、元素CはSn(スズ)とすることもできる。こうであれば、SnはAlより質量が大きいため、やはり熱伝導率を下げる効果が大きいと推定される。
【0028】
発明者らの試験結果によれば、元素Aに替えて置換する他の元素がDsである場合、元素Dsは周期表における第4〜6周期のVIII族からなる群から選ばれ得る。発明者らは、元素DsがPt(白金)及びCo(コバルト)の少なくとも一方であり得ることを確認している。これらの場合、ゼーベック係数及び出力因子の大きな熱電変換材料となる。基本構造がFe2VAlである場合、Feの少なくとも一部をPtで置換すれば、n型の熱電変換材料が得られる。基本構造がFe2VAlである場合、Feの少なくとも一部をCoで置換しても、n型の熱電変換材料が得られる。
【0029】
また、元素Bに替えて置換する他の元素がEsである場合、元素Esは周期表における第4〜6周期のIVa族〜VIIa族からなる群から選ばれ得る。発明者らは、元素EsがMo(モリブデン)及びTi(チタン)の少なくとも一方であり得ることを確認している。これらの場合もゼーベック係数及び出力因子の大きな熱電変換材料となる。基本構造がFe2VAlである場合、Vの少なくとも一部をMoで置換すれば、n型の熱電変換材料が得られる。また、基本構造がFe2VAlである場合、Vの少なくとも一部をTiで置換すれば、p型の熱電変換材料が得られる。
【0030】
さらに、元素Cに替えて置換する他の元素がFsである場合、元素Fsは周期表における第3〜6周期のIIa族又はIIIb族〜Vb族からなる群から選ばれ得る。発明者らは、元素FsはSi(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)及びSn(錫)の少なくとも一方であり得ることを確認している。これらの場合もゼーベック係数及び出力因子の大きな熱電変換材料となる。基本構造がFe2VAlである場合、Alの少なくとも一部をSiで置換すれば、n型の熱電変換材料が得られる。基本構造がFe2VAlである場合、Alの少なくとも一部をGeで置換しても、n型の熱電変換材料が得られる。
【0031】
これらを表で示すと以下のようになる。
【0032】
【表1】
Figure 0004035572
【0033】
これらの選択により、上記基本構造に対し、元素A、B及びCの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換することができる。これにより、化学式当たりの総価電子数を制御することができる。
【0034】
また、発明者らの試験結果によれば、本発明による元素で置換された熱電変換材料は、化学式当たりの総価電子数が大きいと、ゼーベック係数の符号が負であり、その絶対値が大きくなり、n型としての挙動を示すとともに、出力因子も大きくなる。また、本発明の熱電変換材料は、化学式当たりの総価電子数が小さいと、ゼーベック係数の符号が正で、その絶対値が大きくなり、p型としての挙動を示すとともに、出力因子も大きくなる。
【0035】
発明者らの試験結果によれば、これらによりゼーベック係数の絶対値が300K(約20°C)において50μV/K以上の熱電変換材料が得られる。また、出力因子が300Kにおいて1×10-3W/mK2以上の熱電変換材料が得られる。
【0036】
本発明の熱電変換材料の製造方法は、上記熱電変換材料を製造可能な元素と構成比率とを有する原料混合物を用意する第1工程と、該原料混合物を真空中又は不活性ガス中において溶融又は気化及び固化し、熱電変換材料を得る第2工程とを有することを特徴とする。
【0037】
この製造方法で上記熱電変換材料を製造すれば、熱電変換効率が高く、環境汚染のおそれも少ない熱電変換材料を低廉に製造することが可能である。
【0038】
第2工程としては、例えば、原料混合物を真空中や不活性ガス中において溶解させた後で冷却する方法を採用することができる。溶解の方法はアーク溶解法等を採用することができる。また、固化させた後、粉砕機等で粉砕し、カーボンダイス等に充填し、ホットプレス法や放電プラズマ焼結法等により焼結することも可能である。こうして、気孔や酸化物を含んで焼結すれば、熱伝導率が低下し、熱電変換効率の高い熱電変換素子を製造することができると考えられる。さらに、750°C以上かつ融点以下の温度で熱間加工又は粉末冶金を施すことも可能である。例えば、この熱電変換材料を熱間圧延によって帯材とし、この帯材を切断して直方体形状のチップとし、このチップをモジュール化する等の方法により熱電変換素子を製造することも可能である。また、この熱電変換材料をアトマイズ粉とし、このアトマイズ粉を粉末冶金によってチップとし、このチップをモジュール化する等の方法により熱電変換素子を製造することも可能である。また、PVD法を用いて原料混合物を気化し、薄膜として固化させる方法等も採用することができる。固化後、第3工程として、焼鈍、熱間加工及びその組み合わせ等により熱電変換材料を均質化することが好ましい。
【0039】
本発明の熱電変換素子は、上記熱電変換材料のうち、ゼーベック係数の符号が負のものを組み合わせてなることを特徴とする。この場合、ゼーベック係数の符号が正のものとしては、ゼーベック係数の符号が正の本発明の熱電変換材料又は公知の他の熱電変換材料を用いることができる。また、本発明の熱電変換素子は、上記熱電変換材料のうち、ゼーベック係数の符号が正のものを組み合わせてなることを特徴とする。この場合、ゼーベック係数の符号が負のものとしては、ゼーベック係数の符号が負の本発明の熱電変換材料又は公知の他の熱電変換材料を用いることができる。さらに、本発明の熱電変換素子は、上記熱電変換材料のうち、ゼーベック係数の符号が正のものと、ゼーベック係数の符号が負のものとを組み合わせてなることを特徴とする。
【0040】
これらの熱電変換素子は、ゼーベック係数の符号が正の上記熱電変換材料がp型としての挙動を示し、ゼーベック係数の符号が負の上記熱電変換材料がn型としての挙動を示す。これらの熱電変換素子は、熱電変換効率が高く、製造コストの低廉化が可能であり、環境汚染のおそれが少ない。
【0041】
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態1、2を図面等とともに説明する。
【0042】
{実施形態1}
実施形態1では以下の試験例1〜9の熱電変換材料を得る。
【0043】
「試験例1」
試験例1の熱電変換材料は、構成する元素がFe、V及びAlであり、Fe、V及びAlがホイスラー合金型の結晶構造になるような化学量論組成(Fe2VAl)をなす基本構造に対し、化学組成比を調整したものである。ここでは、基本構造の一般式Fe2+x1+yAl1+zの調整量x、y及びzをx=−2n/3、y=−n/3、z=nとし、一般式Fe2+x1+yAl1+zを一般式(Fe2/31/33-nAl1+nで表すことにより、Fe2VのグループとAlとを調整量nで調整した。
【0044】
化学組成比の調整量n=0、つまりFe2VAlの基本構造の化学式当たりの総価電子数は、以下の計算により、24である。つまり、Feの価電子数は4s軌道の2と3d軌道の6との合計8に係数2を乗じた16である。また、Vの価電子数は4s軌道の2と3d軌道の3との合計5である。また、Alの価電子数は3s軌道の2と3p軌道の1との合計3である。これらFe、V及びAlの価電子数の合計24が基本構造の化学式当たりの総価電子数である。
【0045】
この基本構造に対し、調整量nを−0.048≦n≦+0.052の範囲で変化させる。この熱電変換材料は以下のように製造される。
【0046】
まず、図1に示すように、第1工程S1として、99.99質量%のFeと、99.99質量%のAlと、99.9質量%のVとを用意する。そして、これらを上記一般式を満足するように計量して混合し、原料混合物を得る。
【0047】
次に、第2工程S2として、この原料混合物をアルゴン雰囲気下でアーク溶解した後、これを冷却することによりインゴットを得る。この場合の質量損失は0.2%以下であった。
【0048】
さらに、第3工程S3として、そのインゴットを5×10-3Paの真空度において、1273Kで48時間の焼鈍を行った後、さらに673Kで4時間の規則化焼鈍を行い、炉冷する。こうして、均質化された各熱電変換材料を得る。
【0049】
<評価>
(1)X線回折測定
得られた試験例1の各熱電変換材料を粉末とし、粉末X線回折法によってX線回折測定を行う。この結果、試験例1の各熱電変換材料は、D03(L21)単相により構成されており、ホイスラー合金型の結晶構造を有していた。
【0050】
(2)比抵抗の測定
試験例1の各熱電変換材料を炭化ケイ素の切断刃によって切断して1×1×15mm3の角柱形状の試験片とする。そして、4×10-4Paの真空中において、直流四端子法により各試験片の比抵抗を測定する。この際、4.2Kから室温までは自然昇温させ、室温から1273Kまでは各試験片に100mAの電流を通電することにより昇温速度0.05K/秒で昇温する。
【0051】
各試験片による温度(K)と比抵抗(μΩm)との関係を求める。結果を図2に示す。図2に示すように、化学量論組成(調整量n=0)である試験例1の熱電変換材料は、4.2Kでの比抵抗が26μΩmにも達しており、半導体的な負の温度依存性を示している。これに対し、Fe2VのグループとAlとにより化学量論組成を僅かにずらした試験例1の熱電変換材料では、低温における比抵抗が著しく減少している。特に、Alが多い試験例1の熱電変換材料では、比抵抗の減少が顕著である。例えば、調整量n=+0.02の試験例1の熱電変換材料は、4.2Kでの比抵抗がおよそ3μΩmになり、400K以下では金属的な正の温度依存性を示している。このことから、化学量論組成の基本構造を調整量nで調整することにより得られる熱電変換材料は、化学量論組成(調整量=0)である熱電変換材料と比べて400K以下の低温における比抵抗が格段に小さくなっているため、電気伝導率の高い熱電変換素子を得られることがわかる。
【0052】
(3)ゼーベック係数の測定
試験例1の各熱電変換材料を炭化ケイ素の切断刃によって切断して0.5×0.5×5mm3の角柱形状の試験片とする。そして、MMR/Technologies社製「SB−100」を用い、各試験片のゼーベック係数を測定する。
【0053】
各試験片による温度(K)とゼーベック係数(μV/K)との関係を図3に示す。図3に示すように、化学量論組成(調整量n=0)である試験例1の熱電変換材料では、ゼーベック係数が+20〜30μV/K程度である。これに対し、Alが多い調整量n>0の試験例1の熱電変換材料では、ゼーベック係数は符号が正のまま大きくなるように変化する。この熱電変換材料はp型である。一方、Alが少ない調整量n<0の試験例1の熱電変換材料では、ゼーベック係数は符号が負に変わる。この熱電変換材料はn型である。調整量nがより小さくなれば、つまりAlがより少なくなれば、ゼーベック係数の絶対値が大きくなる。このため、Alを多くしたり、Alを少なくしたりして化学量論組成を僅かにずらせば、ゼーベック係数の符号を変えることができ、ゼーベック係数の絶対値も変え得ることがわかる。また、Fe2VのグループとAlとにより化学量論組成を僅かにずらした試験例1の熱電変換材料はゼーベック係数の絶対値が300Kで50μV/K以上になっていることから、これ又はこれら試験例1の熱電変換材料によれば熱電変換効率の高い熱電変換素子を製造できることがわかる。
【0054】
また、各試験片による100K及び300Kにおける調整量nとゼーベック係数(μV/K)との関係を図4に示す。図4に示すように、調整量nを−0.048〜+0.052の間で変化させた場合、試験例1の熱電変換材料では、ゼーベック係数は符号が負から正まで大きく変化する。特に、調整量n=−0.028の試験例1の熱電変換材料では、ゼーベック係数は符号が負であり、その絶対値が300Kにおいて125μV/Kという大きな値になっている。また、調整量n=0.012の試験例1の熱電変換材料では、ゼーベック係数は符号が正になり、その絶対値は300Kにおいて75μV/Kという大きな値になっている。このため、これ又はこれら試験例1の熱電変換材料を用いれば、大きな起電力を発生可能な熱電変換素子が得られることがわかる。
【0055】
また、試験例1の熱電変換材料の化学式当たりの総価電子数は、調整量nが−0.048〜0.052であるため、(8×2/3+5×1/3)×(3−n+3(1+n)=23.79〜24.19であり、この範囲内でゼーベック係数が大きく変化していることがわかる。図3及び図4より、特に総価電子数が23.2〜24.8の範囲内である試験例1の熱電変換材料において、ゼーベック係数が大きく変化していることがわかる。
【0056】
(4)ホール係数の測定
試験例1の各熱電変換材料を炭化ケイ素の切断刃によって切断して1×0.5×7mm3の板形状の試験片とする。そして、各試験片のホール係数を測定する。ホール係数は、五端子法により、各試験片に10mAの電流を通電し、−5Tから5Tまでの外部磁場を各試験片の厚さ方向に加えて測定した。各試験片による100K及び300Kにおける調整量nとホール係数(m3/C)との関係を求める。結果を図5に示す。
【0057】
図5より、調整量nを−0.048〜+0.052の間で変化させた試験例1の熱電変換材料では、ホール係数が化学量論組成である調整量n=0付近で大きく変化しており、調整量n<0で電子が多数キャリアになり、調整量n>0で正孔が多数キャリアになることがわかる。また、ホール係数の測定結果はゼーベック係数の変化によく対応していることもわかる。
【0058】
(5)バンド計算
試験例1の熱電変換材料について、バンド計算の結果を用いて検討する。図6に示すように、Fe2VAlのフェルミ準位付近のバンド構造は、フェルミ準位において、Γ点に正孔ポケットが存在し、X点に電子ポケットが存在する。また、正孔ポケットは主としてFe−3dバンドからなり、電子ポケットはV−3dバンドからなる。
【0059】
これらの正孔及び電子ポケットは非常に小さく、図5に示すホール係数の測定からも明らかなように、これはキャリア密度が著しく低いことの原因になっている。擬ギャップ系では、フェルミ準位での状態密度が非常に小さいので、化学量論組成からのずれによって価電子濃度が変化すると、フェルミ準位が大きくシフトすると考えられる。Alが化学量論組成より僅かに多くなると、化学式当たりの総価電子数が減少するので、フェルミ準位は低エネルギー側のEF +にシフトする。このため、キャリアに占める正孔の割合が増加し、ゼーベック係数は符号が正の値を示す。一方、Alが化学量論組成より僅かに少なくなると、化学式当たりの総価電子数が増加するので、フェルミ準位は高エネルギー側のEF -にシフトする。このため、キャリアに占める電子の割合が増加し、ゼーベック係数は符号が負の値を示す。以上のバンド計算からの考察によっても、試験例1の熱電変換材料は、その化学量論組成を調整量nで調整することによって、ゼーベック係数を変化させ得ることがわかる。
【0060】
(6)加工性
試験例1の熱電変換材料は、金属的性質として、750°C以上かつ融点以下の温度で熱間加工を行うことができる。例えば、試験例1の熱電変換材料を熱間圧延によって帯材とし、この帯材を切断して直方体形状のチップとし、このチップをモジュール化する等の方法により熱電変換素子を製造することも可能である。このため、熱電変換素子を製造する場合の歩留まりを高くすることができるとともに、製造工程数も少なくなり、ひいては熱電変換素子の製造コストの低廉化も実現できる。
【0061】
(7)原料費
試験例1の熱電変換材料は、Fe、V及びAlという安価な金属を主成分としているため、原料費が低廉であり、製造コストの低廉化が可能である。また、これらの元素は汎用性の金属であるため、大量かつ安定に原料を確保することができる。
【0062】
(8)毒性
試験例1の熱電変換材料はFe、V及びAlから構成されているため、毒性が弱く、環境汚染のおそれは小さい。
【0063】
「試験例2」
試験例2の熱電変換材料は、試験例1の基本構造に対し、Fe、V及びAlのうちのAlの少なくとも一部をSiで置換したものである。Siの置換量γは0≦γ≦0.2の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例2の熱電変換材料は、一般式Fe2V(Al1- γSiγ)で表される化合物である。
【0064】
試験例2の各熱電変換材料について、試験例1と同様のX線回折測定を行う。この結果、試験例2の各熱電変換材料もホイスラー合金型の結晶構造を有していた。
【0065】
また、試験例2の各熱電変換材料について、試験例1と同様、各試験片による温度(K)と比抵抗(μΩm)との関係を求める。結果を図7に示す。図7に示すように、試験例2の熱電変換材料では、低温における比抵抗が試験例1の熱電変換材料よりも著しく減少している。特に、置換量γ=0.2の試験例2の熱電変換材料では、4.2Kの比抵抗が0.35μΩmまで低下しており、600K以下の温度では金属的な正の温度依存性を示している。このため、試験例2の熱電変換材料を用いれば、電気伝導率の高い熱電変換素子を得られることがわかる。
【0066】
さらに、試験例2の各熱電変換材料について、試験例1と同様、各試験片による温度(K)とゼーベック係数(μV/K)との関係を求める。結果を図8に示す。また、各試験片による100K及び300Kにおける置換量γとゼーベック係数との関係を図9に示す。図8及び図9に示すように、化学量論組成(置換量γ=0)である試験例2の熱電変換材料では、ゼーベック係数が+20〜30μV/K程度である。これに対し、Alの少なくとも一部をSiで置換した熱電変換材料では、ゼーベック係数は符号が負に変化し、その絶対値が著しく増加している。置換量γ=0.05の熱電変換材料では、ゼーベック係数の絶対値が300Kにおいて130μV/Kという大きな値になっている。この熱電変換材料はn型である。このため、試験例2の熱電変換材料を用いれば、大きな起電力を発生可能な熱電変換素子を得られることがわかる。
【0067】
また、試験例2の熱電変換材料の化学式当たりの総価電子数は、置換量γが0〜0.2であるため、2×8+5+3(1−γ)+4γ=24.0〜24.2であり、この範囲内でゼーベック係数が大きく変化していることがわかる。図8及び図9より、特に総価電子数が23.2〜24.8の範囲内である試験例2の熱電変換材料において、ゼーベック係数が大きく変化していることがわかる。
【0068】
試験例2の各熱電変換材料について、試験例1と同様、各試験片による100K及び300Kにおける置換量γとホール係数(m3/C)との関係を求める。結果を図10に示す。図10より、Alの少なくとも一部をSiで置換した試験例2の熱電変換材料では、ホール係数は符号が負へ大きく変化してSbのような半金属と同じオーダを示し、正孔より電子のほうがキャリアとして優勢になることがわかる。
【0069】
また、バンド計算の結果、試験例2の熱電変換材料においても、正孔及び電子ポケットが非常に小さく、これはキャリア密度が著しく低いことの原因になっている。このため、Alの少なくとも一部をSiで置換することによって総価電子数が増加すると、図6においてフェルミ準位が大きく高エネルギー側のEF -にシフトする。このため、キャリアに占める電子の割合が増加し、ゼーベック係数は符号が負の値を示す。以上のバンド計算からの考察により、試験例2の熱電変換材料は、Alの少なくとも一部をSiにより置換することによって、ゼーベック係数の絶対値を増大させ得ることがわかる。
【0070】
試験例2の各熱電変換材料について、ゼーベック係数Sの二乗を比抵抗ρで除した出力因子を求める。各試験片による100K及び300Kにおける置換量γと出力因子(W/mK2)との関係を図11に示す。図11に示すように、Alの少なくとも一部をSiで置換していない化学量論組成(置換量γ=0)の熱電変換材料では、出力因子が1.0×10-4W/mK2であるのに対し、Alの少なくとも一部をSiで置換した試験例2の熱電変換材料では、比抵抗が格段に減少すると同時にゼーベック係数が大幅に増大するため、出力因子が急激に大きくなる。特に、置換量γ=0.1の試験例2の熱電変換材料では、出力因子が300Kで5.5×10-3W/mK2に達している。この値は従来のBi2Te3を主成分とした熱電変換材料を凌ぐものであり、この熱電変換材料を用いて熱電変換素子を製造した場合、大きな出力が得られることがわかる。
【0071】
加工性、原料費及び毒性については、試験例1と同様の効果を有している。
【0072】
「試験例3」
試験例3の熱電変換材料は、試験例1の基本構造に対し、一般式Fe2+x1+y(Al1- γSiγ1+zの調整量x、y及びzをx=−n、y=n、z=0とし、一般式Fe2+x1+y(Al1- γSiγ1+zを一般式Fe2-n1+n(Al1- γSiγ)で表すことにより、FeとVとを調整量nで調整するとともに、Alの少なくとも一部をSiで置換したものである。調整量nは0.05であり、Siの置換量γは0≦γ≦0.2の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例3の熱電変換材料は、一般式Fe1.951.05(Al1- γSiγ)で表される化合物である。
【0073】
試験例3の各熱電変換材料について、試験例1と同様のX線回折測定を行う。この結果、試験例3の各熱電変換材料もホイスラー合金型の結晶構造を有していた。
【0074】
また、試験例3の各熱電変換材料について、試験例1と同様、各試験片による温度(K)と比抵抗(μΩm)との関係を求める。結果を図12に示す。図12に示すように、試験例3の熱電変換材料では、Siで置換しない場合(置換量γ=0)に低温における比抵抗が試験例1、2の熱電変換材料よりも低くなっているだけでなく、Alの少なくとも一部をSiで置換することによってさらに比抵抗が減少しており、置換量γ=0.1の場合には500K以下で金属的な正の温度依存性を示している。
【0075】
さらに、試験例3の各熱電変換材料について、試験例1と同様、各試験片による温度(K)とゼーベック係数(μV/K)との関係を求める。結果を図13に示す。図13に示すように、調整量nを調整するとともに、Alの少なくとも一部をSiで置換した試験例3の熱電変換材料では、Alの少なくとも一部をSiで置換しただけの試験例の熱電変換材料と比べ、ゼーベック係数の絶対値がさらに増加している。調整量n=0.05、置換量γ=0.03の熱電変換材料では、ゼーベック係数の絶対値が250Kにおいて170μV/Kという大きな値になっている。このため、試験例3の熱電変換材料を用いれば、さらに大きな起電力を発生可能な熱電変換素子が得られることがわかる。この熱電変換材料もn型である。
【0076】
また、試験例2、3の各試験片による300Kにおける置換量γとゼーベック係数との関係を図14に示す。図14より、試験例3の熱電変換材料は、試験例2の熱電変換材料と比べ、全ての置換量γにおいて、ゼーベック係数の絶対値が大きくなっており、さらに置換量γの変化にもかかわらず絶対値は150μV/K以上で比較的安定していることがわかる。このため、調整量nの調整と置換とを行えば、熱電変換材料の実際の製造時に不可避の不純物が混入するとしても、大きな起電力を発生可能な熱電変換素子を安定して得られることがわかる。
【0077】
さらに、試験例3の各試験片による温度(K)と出力因子(W/mK2)との関係を図15に示す。図15に示すように、調整量nを調整しただけで、置換量γ=0である熱電変換材料では、最高の出力因子がせいぜい1.5×10-3W/mK2であるのに対し、調整量nを調整するとともに、Alの少なくとも一部をSiで置換した試験例3の熱電変換材料では出力因子が急激に大きくなる。特に、置換量γ=0.1の試験例3の熱電変換材料では、出力因子が300Kでおよそ4.0×10-3W/mK2に達している。この値も従来のBi2Te3を主成分とした熱電変換材料に匹敵するものであり、この熱電変換材料を用いて熱電変換素子を製造した場合、大きな出力が得られることがわかる。
【0078】
加工性、原料費及び毒性については、試験例1、2と同様の効果を有している。
【0079】
「試験例4」
試験例4の熱電変換材料は、試験例1の基本構造に対し、Fe、V及びAlのうちのAlの少なくとも一部をGeで置換したものである。Geの置換量γは0≦γ≦0.2の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例4の熱電変換材料は、一般式Fe2V(Al1- γGeγ)で表される化合物である。
【0080】
試験例4の各熱電変換材料について、試験例1と同様のX線回折測定を行う。この結果、試験例4の各熱電変換材料もホイスラー合金型の結晶構造を有していた。
【0081】
試験例4の各試験片による100K及び300Kにおける置換量γとゼーベック係数との関係を図16に示す。図16に示すように、置換量γ=0.05の試験例4の熱電変換材料では、ゼーベック係数の絶対値が300Kにおいて110μV/Kという大きな値になっている。この熱電変換材料もn型である。
【0082】
また、試験例4の各試験片による300Kにおける置換量γと出力因子(W/mK2)との関係を図17に示す。図17に示すように、置換量γ=0.1の試験例4の熱電変換材料では、出力因子が300Kにおいておよそ4.0×10-3W/mK2にも達している。このため、試験例4の熱電変換材料を用いても、大きな起電力を発生可能な熱電変換素子を得られることがわかる。そして、Alの少なくとも一部をGeで置換した熱電変換材料は、Alの少なくとも一部をSiで置換した試験例2の熱電変換材料と同様、ゼーベック係数は符号が負に変化し、その絶対値が著しく増加している。
【0083】
加工性、原料費及び毒性については、試験例1〜3と同様の効果を有している。
【0084】
「試験例5」
試験例5の熱電変換材料は、試験例1の基本構造に対し、Fe、V及びAlのうちのFeの少なくとも一部をCoで置換したものである。Coの置換量αは0≦α≦0.2の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例5の熱電変換材料は、一般式(Fe1- αCoα2VAlで表される化合物である。
【0085】
試験例5の各熱電変換材料について、試験例1と同様のX線回折測定を行う。この結果、試験例5の各熱電変換材料もホイスラー合金型の結晶構造を有していた。
【0086】
試験例5の各試験片による300Kにおける置換量αとゼーベック係数(μV/K)との関係を図18に示す。また、試験例5の各試験片による300Kにおける置換量αと出力因子(W/mK2)との関係を図19に示す。図18及び図19より、Feの少なくとも一部をCoで置換した熱電変換材料は、Alの少なくとも一部をSiやGeで置換した試験例2、4の熱電変換材料と同様、ゼーベック係数は符号が負に変化し、その絶対値が著しく増加している。置換量γ=0.05の熱電変換材料では、ゼーベック係数の絶対値が300Kにおいて101μV/Kという大きな値になっている。この熱電変換材料もn型である。このため、試験例5の熱電変換材料を用いても、大きな起電力を発生可能な熱電変換素子を得られることがわかる。
【0087】
加工性、原料費及び毒性については、試験例1〜4と同様の効果を有している。
【0088】
「試験例6」
試験例6の熱電変換材料は、試験例1の基本構造に対し、Fe、V及びAlのうちのVの少なくとも一部をMoで置換したものである。Moの置換量βは0≦β≦0.2の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例6の熱電変換材料は、一般式Fe2(V1- βMoβ)Alで表される化合物である。
【0089】
試験例6の各熱電変換材料について、試験例1と同様のX線回折測定を行う。この結果、試験例6の各熱電変換材料もホイスラー合金型の結晶構造を有していた。
【0090】
試験例6の各試験片による100K及び300Kにおける置換量βとゼーベック係数(μV/K)との関係を図20に示す。図20より、Vの少なくとも一部をMoで置換した熱電変換材料は、Alの少なくとも一部をSiやGeで置換したり、Feの少なくとも一部をCoで置換したりした試験例2、4、5の熱電変換材料と同様、ゼーベック係数は符号が負に変化し、その絶対値が著しく増加している。置換量γ=0.1の熱電変換材料では、ゼーベック係数の絶対値が300Kにおいて105μV/Kという大きな値になっている。この熱電変換材料もn型である。このため、試験例6の熱電変換材料を用いても、大きな起電力を発生可能な熱電変換素子を得られることがわかる。
【0091】
加工性、原料費及び毒性については、試験例1〜5と同様の効果を有している。
【0092】
「試験例7」
試験例7の熱電変換材料は、試験例1の基本構造に対し、Fe、V及びAlのうちのVの少なくとも一部をTiで置換したものである。Tiの置換量βは0≦β≦0.25の範囲内で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例7の熱電変換材料は、一般式Fe2(V1- βTiβ)Alで表される化合物である。
【0093】
試験例7の各熱電変換材料について、試験例1と同様のX線回折測定を行う。この結果、試験例7の各熱電変換材料もホイスラー合金型の結晶構造を有していた。
【0094】
試験例6、7の各試験片による300Kにおける置換量βとゼーベック係数(μV/K)との関係を図21に示す。図21より、Vの少なくとも一部をTiで置換した熱電変換材料は、Vの少なくとも一部をMoで置換した熱電変換材料とは逆に、ゼーベック係数は符号が正のまま絶対値が増加している。置換量γ=0.25の熱電変換材料では、ゼーベック係数の絶対値が300Kにおいて75μV/Kという大きな値になっている。この熱電変換材料はp型である。このため、試験例7の熱電変換材料を用いても、大きな起電力を発生可能な熱電変換素子を得られることがわかる。
【0095】
また、試験例6、7の各試験片による300Kにおける置換量βとホール係数(m3/C)との関係を図22に示す。図22より、Vの少なくとも一部をTiで置換した熱電変換材料のホール係数は常に正の値であるため、多数キャリアは正孔であることがわかる。これに対し、Vの少なくとも一部をMoで置換した熱電変換材料のホール係数は置換量β>0.3において負の値であるため、多数キャリアは電子であることがわかる。このホール係数の測定結果は図21に示したゼーベック係数の変化によく対応していることもわかる。
【0096】
加工性、原料費及び毒性については、試験例1〜6と同様の効果を有している。
【0097】
「試験例8」
試験例8の熱電変換材料は、試験例1の基本構造に対し、Fe、V及びAlのうちのAlの少なくとも一部をSnで置換したものである。Snの置換量γはγ=0.05、0.10で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例8の熱電変換材料は、一般式Fe2V(Al1- γSnγ)で表される化合物である。
【0098】
置換量γ=0.05の試験例8の熱電変換材料では、300Kにおけるゼーベック係数が−122μV/K、出力因子が2.8×10-3W/mK2であった。また、置換量γ=0.10の試験例8の熱電変換材料では、300Kにおけるゼーベック係数が−105μV/K、出力因子が3.7×10-3W/mK2であった。この熱電変換材料はn型である。このため、試験例8の熱電変換材料を用いても、大きな起電力を発生可能な熱電変換素子を得られることがわかる。
【0099】
加工性、原料費及び毒性については、試験例1〜7と同様の効果を有している。
【0100】
「試験例9」
試験例9の熱電変換材料は、試験例1の基本構造に対し、Fe、V及びAlのうちのFeの少なくとも一部をPtで置換したものである。Ptの置換量αはα=0.015で選択されている。製法は試験例1と同様である。こうして得られる試験例9の熱電変換材料は、一般式(Fe1- αPtα2VAlで表される化合物である。
【0101】
置換量α=0.015の試験例9の熱電変換材料では、300Kにおけるゼーベック係数が−122μV/K、出力因子が3.1×10-3W/mK2であった。この熱電変換材料はn型である。このため、試験例9の熱電変換材料を用いても、大きな起電力を発生可能な熱電変換素子を得られることがわかる。
【0102】
加工性、原料費及び毒性については、試験例1〜8と同様の効果を有している。
【0103】
{比較試験1}
試験例2の一般式Fe2V(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料と、試験例6の一般式Fe2(V1- βMoβ)Alで表される熱電変換材料と、試験例7の一般式Fe2(V1- βTiβ)Alで表される熱電変換材料とについて、300Kにおける置換量β、γと出力因子(W/mK2)との関係を求める。結果を図23に示す。
【0104】
図23より、Vの少なくとも一部をTiで置換した熱電変換材料よりも、Vの少なくとも一部をMoで置換した熱電変換材料の方が大きな出力因子を発揮し、Vの少なくとも一部をMoで置換した熱電変換材料よりも、Alの少なくとも一部をSiで置換した熱電変換材料の方が大きな出力因子を発揮することがわかる。
【0105】
{比較試験2}
本発明の熱電変換材料の基本構造であるFe2VAlと、試験例2のFe2V(Al0.90Si0.10)で表される熱電変換材料(n型)と、試験例6のFe2(V0.90Mo0.10)Alで表される熱電変換材料(n型)と、試験例7のFe2(V0.90Ti0.10)Alで表される熱電変換材料(p型)と、他の熱電変換材料とについて、温度(K)と出力因子(W/mK2)との関係を求める。他の熱電変換材料としては、CoSb3(n型)、CoSb3(p型)、Bi2Te3、SiGe及びPbTeを用いる。結果を図24に示す。
【0106】
図24より、Fe2VAlのままでは出力因子が極めて低いが、これを基本構造として置換した試験例2、6、7の熱電変換材料では、他の熱電変換材料と比べ、常温付近及び常温以下で優れた出力因子を発揮できることがわかる。
【0107】
{実施形態2}
実施形態2では以下の熱電変換素子を得る。これらの熱電変換素子は、試験例1〜9の熱電変換材料から選択した1組又は試験例1〜9の熱電変換材料と公知の他の熱電変換材料との組み合せによって構成されている。すなわち、図25に示すように、これらの熱電変換素子は、ゼーベック係数の符号の異なる熱電変換材料の直方体の小片からなる熱電変換チップ4a、4bが交互に並べられ、隣合う熱電変換チップ4a、4bの両端部が電極板5によって電気的に接続されたものである。電極板5はセラミックス板6a、6bで電気的に絶縁されつつ固定されている。両端の電極板5には導電線7a、7bが接続されている。
【0108】
以上のように構成された熱電変換素子では、導電線7a、7b間に電圧を印加すれば、正孔及び電子が移動し、セラミックス板6a、6b間に温度差が発生する。また、これらの熱電変換素子のセラミックス板6a、6b間で温度差を発生させれば、各熱電変換素子の導電線7a、7b間には起電力が発生する。
【0109】
これらの熱電変換素子は、試験例1〜9の熱電変換材料が絶対値の大きなゼーベック係数を有しているため、ゼーベック係数の差が大きくなっている。また、試験例1〜9の熱電変換材料はゼーベック係数の絶対値が大きく、比抵抗も小さい。このため、これらの熱電変換素子は熱電変換の熱電変換効率が高い。また、これらの熱電変換素子は、p型及びn型を試験例1〜9の熱電変換材料から選択すれば、各熱電変換材料が互いに酷似した化学組成であり、熱膨張係数等の物理的性質も酷似しているため、熱による歪を生じにくく、耐久性に優れる。
【0110】
また、試験例1〜9の熱電変換材料は安価に製造可能であるため、これらの熱電変換素子の製造コストも低廉である。さらに、試験例1〜9の熱電変換材料が毒性の弱い成分のみで構成されているため、これらの熱電変換素子は環境汚染のおそれも少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の熱電変換材料の製造方法を示す工程図である。
【図2】試験例1の一般式(Fe2/31/33-nAl1+nで表される熱電変換材料に係り、温度と比抵抗との関係を示すグラフである。
【図3】試験例1の一般式(Fe2/31/33-nAl1+nで表される熱電変換材料に係り、温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図4】試験例1の一般式(Fe2/31/33-nAl1+nで表される熱電変換材料に係り、化学組成比の調整量とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図5】試験例1の一般式(Fe2/31/33-nAl1+nで表される熱電変換材料に係り、化学組成比の調整量とホール係数との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の熱電変換材料に係り、バンド構造を示す模式図である。
【図7】試験例2の一般式Fe2V(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料に係り、温度と比抵抗との関係を示すグラフである。
【図8】試験例2の一般式Fe2V(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料に係り、温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図9】試験例2の一般式Fe2V(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料に係り、置換量とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図10】試験例2の一般式Fe2V(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料に係り、置換量とホール係数との関係を示すグラフである。
【図11】試験例2の一般式Fe2V(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料に係り、置換量と出力因子との関係を示すグラフである。
【図12】試験例3の一般式Fe1.951.05(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料に係り、温度と比抵抗との関係を示すグラフである。
【図13】試験例3の一般式Fe1.951.05(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料に係り、温度とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図14】試験例2の一般式Fe2V(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料と、試験例3の一般式Fe1.951.05(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料とに係り、置換量とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図15】試験例3の一般式Fe1.951.05(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料に係り、温度と出力因子との関係を示すグラフである。
【図16】試験例4の一般式Fe2V(Al1- γGeγ)で表される熱電変換材料に係り、置換量とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図17】試験例4の一般式Fe2V(Al1- γGeγ)で表される熱電変換材料に係り、置換量と出力因子との関係を示すグラフである。
【図18】試験例5の一般式(Fe1- αCoα2VAlで表される熱電変換材料に係り、置換量とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図19】試験例5の一般式(Fe1- αCoα2VAlで表される熱電変換材料に係り、置換量と出力因子との関係を示すグラフである。
【図20】試験例6の一般式Fe2(V1- βMoβ)Alで表される熱電変換材料に係り、置換量とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図21】試験例6の一般式Fe2(V1- βMoβ)Alで表される熱電変換材料と、試験例7の一般式Fe2(V1- βTiβ)Alで表される熱電変換材料とに係り、置換量とゼーベック係数との関係を示すグラフである。
【図22】試験例6の一般式Fe2(V1- βMoβ)Alで表される熱電変換材料と、試験例7の一般式Fe2(V1- βTiβ)Alで表される熱電変換材料とに係り、置換量とホール係数との関係を示すグラフである。
【図23】試験例2の一般式Fe2V(Al1- γSiγ)で表される熱電変換材料と、試験例6の一般式Fe2(V1- βMoβ)Alで表される熱電変換材料と、試験例7の一般式Fe2(V1- βTiβ)Alで表される熱電変換材料とに係り、置換量と出力因子との関係を示すグラフである。
【図24】試験例2のFe2V(Al0.90Si0.10)で表される熱電変換材料と、試験例6のFe2(V0.90Mo0.10)Alで表される熱電変換材料と、試験例7のFe2(V0.90Ti0.10)Alで表される熱電変換材料と、他の熱電変換材料とに係り、温度と出力因子との関係を示すグラフである。
【図25】実施形態2の熱電変換素子の模式断面図である。

Claims (22)

  1. 構成する元素をA、B及びCとした場合、元素A、B及びCがホイスラー合金型の結晶構造になるような化学量論組成(A2BC)をなし、化学式当たりの総価電子数が24である基本構造に対し、元素A、B及びCの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換することによって化学式当たりの総価電子数が制御されていることを特徴とする熱電変換材料。
  2. 基本構造の元素Aに替えて置換する他の元素がDsである場合、元素Dsの置換量αが一般式(A1- αDsα2BCを満たす0≦α≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御されていることを特徴とする請求項1記載の熱電変換材料。
  3. 基本構造の元素Bに替えて置換する他の元素がEsである場合、元素Esの置換量βが一般式A2(B1- βEsβ)Cを満たす0≦β≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御されていることを特徴とする請求項1記載の熱電変換材料。
  4. 基本構造の元素Cに替えて置換する他の元素がFsである場合、元素Fsの置換量γが一般式A2B(C1- γFsγ)を満たす0≦γ≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御されていることを特徴とする請求項1記載の熱電変換材料。
  5. 構成する元素をA、B及びCとした場合、元素A、B及びCがホイスラー合金型の結晶構造になるような化学量論組成(A2BC)をなし、化学式当たりの総価電子数が24である基本構造に対し、化学組成比の調整量を調整すること並びに元素A、B及びCの少なくとも1元素の少なくとも一部を他の元素で置換することによって化学式当たりの総価電子数が制御されていることを特徴とする熱電変換材料。
  6. 基本構造の元素Aに替えて置換する他の元素がDsである場合、化学組成比の調整量x、y及びz並びに元素Dsの置換量αが一般式(A1- αDsα2+x1+y1+zを満たす−1<x<1、−1<y<1又は−1<z<1及び0≦α≦1の範囲内で選択されていることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御されていることを特徴とする請求項5記載の熱電変換材料。
  7. 基本構造の元素Bに替えて置換する他の元素がEsである場合、化学組成比の調整量x、y及びz並びに元素Esの置換量βが一般式A2+x(B1- βEsβ1+y1+zを満たす−1<x<1、−1<y<1又は−1<z<1及び0≦β≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御されていることを特徴とする請求項5記載の熱電変換材料。
  8. 基本構造の元素Cに替えて置換する他の元素がFsである場合、化学組成比の調整量x、y及びz並びに元素Fsの置換量γが一般式A2+x1+y(C1- γFsγ1+zを満たす−1<x<1、−1<y<1又は−1<z<1及び0≦γ≦1の範囲内で選択されることによって、化学式当たりの総価電子数が23.2〜24.8になるように制御されていることを特徴とする請求項5記載の熱電変換材料。
  9. 元素Aは周期表における第4〜6周期のVIII族からなる群から選ばれた元素であり、元素Bは周期表における第4〜6周期のIVa族〜VIIa族からなる群から選ばれた元素であり、元素Cは周期表における第3〜5周期のIIa族又はIIIb族〜Vb族からなる群から選ばれた元素であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の熱電変換材料。
  10. 元素AはFe(鉄)であり、元素BはV(バナジウム)であり、元素CはAl(アルミニウム)であることを特徴とする請求項9記載の熱電変換材料。
  11. 元素Aに替えて置換する他の元素がDsである場合、元素Dsは周期表における第4〜6周期のVIII族からなる群から選ばれた元素であることを特徴とする請求項2又は6記載の熱電変換材料。
  12. 元素DsはPt(白金)及びCo(コバルト)の少なくとも一方であることを特徴とする請求項11記載の熱電変換材料。
  13. 元素Bに替えて置換する他の元素がEsである場合、元素Esは周期表における第4〜6周期のIVa族〜VIIa族からなる群から選ばれた元素であることを特徴とする請求項3又は7記載の熱電変換材料。
  14. 元素EsはMo(モリブデン)及びTi(チタン)の少なくとも一方であることを特徴とする請求項13記載の熱電変換材料。
  15. 元素Cに替えて置換する他の元素がFsである場合、元素Fsは周期表における第3〜6周期のIIa族又はIIIb族〜Vb族からなる群から選ばれた元素であることを特徴とする請求項4又は8記載の熱電変換材料。
  16. 元素FsはSi(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)及びSn(錫)の少なくとも一方であることを特徴とする請求項15記載の熱電変換材料。
  17. ゼーベック係数の絶対値が300Kにおいて50μV/K以上であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項記載の熱電変換材料。
  18. 出力因子が300Kにおいて1×10-3W/mK2以上であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項記載の熱電変換材料。
  19. 請求項1乃至18のいずれか1項記載の熱電変換材料を製造可能な元素と構成比率とを有する原料混合物を用意する第1工程と、
    該原料混合物を真空中又は不活性ガス中において溶融又は気化及び固化し、熱電変換材料を得る第2工程とを有することを特徴とする熱電変換材料の製造方法。
  20. 請求項1乃至18のいずれか1項記載の熱電変換材料のうち、ゼーベック係数の符号が負のものを組み合わせてなることを特徴とする熱電変換素子。
  21. 請求項1乃至18のいずれか1項記載の熱電変換材料のうち、ゼーベック係数の符号が正のものを組み合わせてなることを特徴とする熱電変換素子。
  22. 請求項1乃至18のいずれか1項記載の熱電変換材料のうち、ゼーベック係数の符号が正のものと、ゼーベック係数の符号が負のものとを組み合わせてなることを特徴とする熱電変換素子。
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