10・・・測定装置、22・・・比較器、25・・・クロック再生器、30・・・ストローブタイミング発生器、40・・・キャプチャメモリ、50・・・デジタル信号変換部、55・・・パターン比較器、60・・・デジタル信号処理部、65・・・パターン発生器、67・・・パターン生成部、69・・・ドライバ、70・・・判定部、75・・・ロジック判定部、77・・・ジッタ判定部、90・・・入力部、100・・・試験装置、200・・・被試験デバイス、400・・・電子デバイス、402・・・窓関数乗算部、404・・・周波数領域変換部、406・・・瞬時位相雑音算出部、408・・・補正部、410・・・ジッタ算出部、412・・・帯域制限部、414・・・解析信号生成部、416・・・瞬時位相算出部、440・・・動作回路、502・・・周波数領域変換部、504・・・ジッタ算出部、520・・・レベル比較部、522・・・可変遅延回路、524・・・フリップフロップ、526・・・比較器、610・・・符号制御部、612・・・期待値生成部、614・・・論理比較部、615・・・比較器、616・・・フリップフロップ、617・・・可変遅延回路、1900・・・演算装置、2030・・・通信インターフェース、2040・・・ハードディスクドライブ、2050・・・フレキシブルディスク・ドライブ、2060・・・CD−ROMドライブ、2070・・・入出力チップ、2075・・・グラフィック・コントローラ、2080・・・表示装置、2082・・・ホスト・コントローラ、2084・・・入出力コントローラ、2090・・・フレキシブルディスク
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の実施形態に係る試験装置100の構成の一例を示す図である。試験装置100は、半導体回路等の被試験デバイス200を試験する装置であって、測定装置10及び判定部70を備える。測定装置10は、被試験デバイス200が出力する被測定信号のジッタを測定する。ここで、被測定信号は、所定の周期を有する信号である。例えば、被測定信号は、クロック信号であってよく、またデータ信号であってもよい。また、測定装置10は、被測定信号のタイミングジッタを測定してよい。
判定部70は、測定装置10が測定した被測定信号のジッタに基づいて、被試験デバイス200の良否を判定する。例えば判定部70は、被測定信号のタイミングジッタ量が、予め定められた基準値以上であるか否かに基づいて、被試験デバイス200の良否を判定してよい。当該基準値は、要求される被試験デバイス200のスペック等により定められてよい。
測定装置10は、レベル比較部520、ストローブタイミング発生器30、キャプチャメモリ40、デジタル信号変換部50、及びデジタル信号処理部60を有する。レベル比較部520は、順次与えられるストローブのタイミングにおいて、被測定信号のレベルを検出する。例えばレベル比較部520は、それぞれのストローブのタイミングにおける被測定信号のレベルと、与えられる参照レベルとを順次比較した比較結果のデータ列を出力する。
ストローブタイミング発生器30は、略等しい時間間隔で、ストローブを順次生成する。ストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期に同期して、ストローブを順次生成してよい。
また、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期とは独立して、ストローブを順次生成してもよい。ストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期とは異なる周期でストローブを順次生成してもよい。
キャプチャメモリ40は、レベル比較部520が出力する比較結果のデータ列を格納する。例えばキャプチャメモリ40は、レベル比較部520が、それぞれのストローブに応じて順次出力する比較結果を、対応するストローブの位相に応じて整列して格納する。
デジタル信号処理部60は、キャプチャメモリ40が格納した比較結果のデータ列に基づいて、被測定信号のジッタを算出する。デジタル信号処理部60の詳細な動作は、図5以降において後述する。
デジタル信号処理部60には、デジタル信号処理部60における信号処理の方法に応じたデータを入力することが好ましい。例えば、デジタル信号処理部60が、被測定信号のゼロクロス点等に基づいて、被測定信号のジッタを算出する場合、デジタル信号処理部60には、振幅の絶対値がn(但し、nは実数)より小さい範囲の離散的な値を示す信号を入力することが好ましい。
本例における測定装置10は、キャプチャメモリ40が格納した比較結果を、デジタル信号処理部60に入力すべき離散信号(discrete signal)に変換してよい。例えば、デジタル信号変換部50は、キャプチャメモリ40が格納する比較結果に基づいて、被測定信号のそれぞれの電圧値を、その絶対値がn(但しnは実数)より小さい範囲のデジタル値に変換した離散信号を生成してよい。例えば、デジタル信号変換部50は、比較結果を、おおよそデジタル値1から−1の間のデジタル値に変換してよい。
一例として、レベル比較部520が、それぞれのストローブのタイミングにおける被測定信号の電圧値をひとつの参照電圧と比較し、論理値H又は論理値Lを比較結果として出力する場合を説明する。この場合、デジタル信号変換部50は、論理値Hをデジタル値1に変換し、論理値Lをデジタル値−1に変換した離散信号を出力する。また、レベル比較部520が、3値の比較結果を出力する場合、デジタル信号変換部50は、それぞれの比較結果の論理値に応じて、それぞれの比較結果をデジタル値1、0、−1に変換する。このような信号変換により、デジタル信号処理部60における信号処理を容易化できる。
図2は、ストローブタイミング発生器30が生成するストローブの例を示す図である。本例においては、被測定信号の周期をTとして説明する。上述したように、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期Tに同期して、又は非同期で、ストローブを略等しい時間間隔で順次生成する。
一般に試験装置100は、被測定信号の周期Tと同期した動作周期(テストレート)に応じたサイクル毎(T0、T1、T2、・・・)に動作する。ストローブタイミング発生器30は、図2のストローブ(1)及び(2)に示すように、テストレートに応じたサイクル毎に、単一のストローブを生成してよく、複数のストローブを生成してもよい。
また、ストローブタイミング発生器30は、図2の(3)に示すようにテストレートと非同期にストローブを生成してもよい。このとき、それぞれのサイクルに対して生成されるストローブの本数は、ストローブタイミング発生器30がストローブを生成する周期、及びテストレートにより定まる。例えば、ストローブタイミング発生器30は、試験装置100における動作周期とは独立して動作する発振回路であってよい。
また、被測定信号の周期Tと、試験装置100のテストレートは一致していてよく、一致していなくともよい。試験装置100が、後述するファンクション試験をも行う場合には、被測定信号の周期Tと、テストレートとは一致していることが好ましい。
図2の(3)に示すように、ストローブタイミング発生器30が生成するストローブの間隔TSを設定することにより、被測定信号に対して位相が徐々にずれたストローブをも順次生成することができる。また、ストローブタイミング発生器30は、略等時間間隔にストローブが配置されたストローブとして、(1)テストレート毎に、単一のストローブを配置したストローブ、(2)テストレート毎に、複数のストローブを配置したストローブ、(3)テストレートに独立してストローブを配置したストローブ、のいずれかを生成してよい。以上では、試験装置100のテストレートが被測定信号の周期Tと等しい例を示したが、本発明におけるテストレートは、ファンクション試験を行わない場合、被測定信号の周期Tと等しい必要はなく、周期Tと独立に設定してよい。
図3(A)、図3(B)、及び図3(C)は、レベル比較部520の構成例を示す図である。図3(A)に示すレベル比較部520は、第1の参照電圧VOHと、第2の参照電圧VOLが与えられ、3値の比較結果を出力する。本例においては、第2の参照電圧VOLが、第1の参照電圧VOHより小さい場合を説明する。例えばレベル比較部520は、被測定信号の電圧値が第1の参照電圧VOHより大きい場合、被測定信号の電圧値が第1の参照電圧VOH以下であり且つ第2の参照電圧VOLより大きい場合、及び被測定信号の電圧値が第2の参照電圧VOL以下である場合のそれぞれの場合において、それぞれ異なる比較結果を出力する。
当該レベル比較部520は、第1の比較器22−1及び第2の比較器22−2を有する。第1の比較器22−1及び第2の比較器22−2は、被測定信号が分岐して与えられる。また第1の比較器22−1及び第2の比較器22−2には、ストローブタイミング発生器30から略同一のタイミングを示すストローブが与えられる。
第1の比較器22−1は、与えられるストローブ毎に、被測定信号の電圧値と第1の参照電圧VOHとを比較する。例えば第1の比較器22−1は、被測定信号の電圧値が第1の参照電圧VOHより大きい場合にHighを示す論理値を出力し、被測定信号の電圧値が第1の参照電圧VOH以下である場合にLowを示す論理値を出力する。
第2の比較器22−2は、与えられるストローブ毎に、被測定信号の電圧値と第2の参照電圧VOLとを比較する。例えば第2の比較器22−2は、被測定信号の電圧値が第2の参照電圧VOLより大きい場合にHighを示す論理値を出力し、被測定信号の電圧値が第2の参照電圧VOL以下である場合にLowを示す論理値を出力する。
レベル比較部520は、第1の比較器22−1が出力する論理値と、第2の比較器22−2が出力する論理値との組み合わせを、比較結果として出力する。すなわち、レベル比較部520は、第1の比較器22−1が出力する論理値をMとし、第2の比較器22−2が出力する論理値をNとすると、被測定信号の電圧値に応じて、(M,N)=(High、High)、(Low、High)、(Low、Low)の3値の比較結果を出力する。この場合、デジタル信号変換部50は、それぞれの比較結果(High、High)、(Low、High)、(Low、Low)を、例えばそれぞれ1、0、−1のデジタル値に変換する。
図3(B)に示すレベル比較部520は、被測定信号の電圧値が与えられる参照電圧値VTより大きいか否かにより、それぞれ異なる比較結果を出力する。即ち、本例におけるレベル比較部520は、2値の比較結果を出力する。当該レベル比較部520は、参照電圧VTと、被測定信号とが入力される比較器22を有する。比較器22は、ストローブタイミング発生器30から与えられるストローブに応じて、被測定信号の電圧値と参照電圧値VTとを比較する。例えば、被測定信号の電圧値が参照電圧値VTより大きい場合、Highを示す論理値を出力し、被測定信号の電圧値が参照電圧値VT以下である場合、Lowを示す論理値を出力する。レベル比較部520は、比較器22が出力する論理値を比較結果として出力する。この場合、デジタル信号変換部50は、それぞれの比較結果High、Lowを、例えばそれぞれ1、−1のデジタル値に変換する。
図3(C)に示すレベル比較部520は、複数の比較器22を有する。それぞれの比較器22には、それぞれ異なる参照電圧VT1、VT2、・・・が与えられる。また、それぞれの比較器22には、被測定信号が分岐して入力される。また、それぞれの比較器22には、略同一のタイミングのストローブが、ストローブタイミング発生器30から与えられる。
それぞれの比較器22は、与えられるストローブに応じて、対応する参照電圧VTxと、被測定信号の電圧値とを比較する。それぞれの比較器22の動作は、図3(B)に示した比較器22と同様である。レベル比較部520は、それぞれの比較器22が出力する論理値の組み合わせを、比較結果として出力する。つまり、本例におけるレベル比較部520は、3種類以上の異なる参照電圧VTが与えられ、被測定信号の電圧値が、隣接する2つの参照電圧により規定されるそれぞれの電圧範囲のいずれに属するかにより、それぞれ異なる比較結果を出力する。
例えば、デジタル信号変換部50は、全ての比較器22が出力する論理値がHighを示す比較結果を1のデジタル値に変換し、全ての比較器22が出力する論理値がLowを示す比較結果を−1のデジタル値に変換する。また、他の比較結果を、その論理値に応じて1から−1の間の所定のデジタル値に変換する。
図3(A)から図3(C)において説明したレベル比較部520に与えられるそれぞれの参照電圧は、可変できることが好ましい。例えば、測定装置10は、それぞれの参照電圧を、被測定信号の測定すべき振幅レベルの情報に基づいて、制御してよい。
図4は、図3(A)に示したレベル比較部520を用いた場合の、測定装置10の動作の一例を示す図である。測定装置10には、図4に示すような被測定信号が入力される。当該入力信号には、時間方向のジッタであるタイミングノイズと、振幅方向の振幅ノイズが含まれる。例えば、被測定信号のエッジ部分は、タイミングノイズによるジッタが支配的となり、被測定信号の定常部分は、振幅ノイズが支配的となる。
図4に示すように、被測定信号の垂直方向のアイ開口度は振幅ノイズにより減少し、水平方向のアイ開口度はタイミングノイズにより減少する。理想的には、被測定信号の水平方向のアイ開口度は、タイミングノイズのみの影響を受ける。しかし、一種の振幅変調−位相変調変換(a kind of AM−toPM conversion)により、振幅ノイズも、水平方向のアイ開口に影響を与えてしまう。この結果、振幅ノイズは、比較的高い確率でタイミングノイズに変換される。
以上のことから、振幅ノイズによる影響を排除して、タイミングジッタを測定することが望まれる。これに対し本例における測定装置10は、第1の参照電圧VOHより大きい被測定信号の電圧値をデジタル値1に変換し、第2の参照電圧VOLより小さい被測定信号の電圧値をデジタル値−1に変換する。これにより、振幅ノイズの影響を自動的に排除できる。そして、第1の参照電圧VOH以下であり、且つ第2の参照電圧VOLより大きい被測定信号の電圧値をデジタル値0に変換する。当該デジタル値が検出されるタイミングは、タイミングノイズのみにより与えられる。このため、レベル比較部520の比較結果に基づいて、振幅ノイズの影響を排除し、タイミングノイズを精度よく測定することができる。
また、図4に示すように、レベル比較部520に入力されるストローブは、被測定信号の定常周期とは独立して、略等間隔に配置される。このため、タイミングノイズの時間依存を除いた測定を行うことができる。例えば、ストローブは、被測定信号の各周期に4つ以上配置されてよい。但し、ストローブがレベル比較部520に入力される周波数は、ナイキスト周波数より大きい周波数に限定されない。ストローブがレベル比較部520に入力される周波数は、ナイキスト周波数より小さくてもよい。
図5は、デジタル信号処理部60の構成の一例を示す図である。デジタル信号処理部60は、窓関数乗算部402、周波数領域変換部404、瞬時位相雑音算出部406、補正部408、及びジッタ算出部410を有する。
窓関数乗算部402は、キャプチャメモリ40が格納したデータ列に窓関数を乗算する。例えば窓関数乗算部402は、ハニング(Hanning)窓関数等のように、両端の値が略零となり、中央の値が略1となる窓関数を、当該データ列に乗算する。これにより、キャプチャメモリ40が格納したデータ列のデータ長が被測定信号の周期の整数倍でなくとも、データ列をフーリエ変換してスペクトラムを求めることができる。例えば、試験装置100は、被試験デバイス200に入力する基準クロックと、ストローブの周期を規定するクロックとを異なる発振器で生成してよい。この場合、測定装置10は、被試験デバイス200が出力する信号をノンコヒーレントでサンプリングするが、窓関数乗算部402を設けることにより、サンプリング結果を周波数領域の信号に変換することができる。
周波数領域変換部404は、窓関数乗算部402において窓関数が乗算されたデータ列を受け取り、当該データ列をスペクトラムに変換する。例えば周波数領域変換部404は、当該データ列を離散フーリエ変換することにより、周波数領域のスペクトラムを算出してよい。
瞬時位相雑音算出部406は、周波数領域変換部404が算出したスペクトラムを受け取り、当該スペクトラムに基づいて被測定信号の時間軸における瞬時位相雑音を算出する。被測定信号の瞬時位相雑音の算出方法については、図6から図11において後述する。デジタル信号処理部60は、図6に示すように、当該算出方法を実行する構成を有してよい。
補正部408は、瞬時位相雑音算出部406が算出した瞬時位相雑音を補正する。瞬時位相雑音算出部406が算出した瞬時位相雑音は、窓関数乗算部402が窓関数を乗算したことによる誤差を含む。補正部408は、窓関数乗算部402が乗算した窓関数に基づいて、瞬時位相雑音を補正する。例えば補正部408は、瞬時位相雑音算出部406が算出した時間軸の瞬時位相雑音Δφ(t)を、時間軸の窓関数w(t)で除算した結果(Δφ(t)/w(t))を、補正後の瞬時位相雑音関数として出力してよい。
ジッタ算出部410は、補正部408が補正した瞬時位相雑音に基づいて、被測定信号のジッタを算出する。例えばジッタ算出部410は、被測定信号のそれぞれの立ち上がりエッジのタイミングにおける瞬時位相雑音の値を検出してよい。それぞれの瞬時位相雑音の値が、それぞれのエッジのタイミングジッタに対応する。
このように、瞬時位相雑音Δφ(t)を、窓関数に基づいて補正することにより、被測定信号の瞬時位相雑音及びジッタ等を精度よく測定することができる。測定装置10で被測定信号のタイミングジッタを測定した測定結果の一例を、図20で後述する。
図6は、デジタル信号処理部60の詳細な構成の一例を示す図である。本例におけるデジタル信号処理部60は、図5に示したデジタル信号処理部60の構成に加え、帯域制限部412、解析信号生成部414、及び瞬時位相算出部416を更に有する。尚、図6に示した構成では、図5に示した窓関数乗算部402、周波数領域変換部404、補正部408、及びジッタ算出部410を省略して記載している。
帯域制限部412は、周波数領域変換部404が算出したスペクトラムに対して、所定の周波数範囲内の周波数成分を抽出して、解析信号生成部414に出力する。例えば帯域制限部412は、負の周波数の成分を零としたスペクトラムを生成してよい。また帯域制限部412は、被測定信号のキャリア周波数近傍の周波数成分を抽出してよい。例えば帯域制限部412は、被測定信号のキャリア周波数を中心とした所定の周波数範囲内の周波数成分を抽出してよい。当該周波数範囲は、負の周波数を含まない範囲であってよい。
解析信号生成部414は、帯域制限部412から受け取ったスペクトラムを時間領域の関数に変換する。例えば解析信号生成部414は、当該スペクトラムをフーリエ逆変換してよい。帯域制限部412において、当該スペクトラムの負の周波数成分が除去される。このため、当該スペクトラムをフーリエ逆変換することにより、被測定信号の解析信号を生成することができる。解析信号とは、例えば実数部と虚数部との位相が90度異なる信号であってよい。
瞬時位相算出部416は、解析信号生成部414が生成した解析信号に基づいて、被測定信号の瞬時位相φ(t)を算出する。例えば瞬時位相算出部416は、解析信号の実数部及び虚数部の逆正接を求めることにより、被測定信号の瞬時位相φ(t)を算出してよい。
瞬時位相雑音算出部406は、瞬時位相算出部416が算出した瞬時位相φ(t)に基づいて、被測定信号の瞬時位相雑音Δφ(t)を算出する。被測定信号の瞬時位相雑音Δφ(t)は、理想的な位相に対する瞬時位相φ(t)のずれをあらわす。瞬時位相雑音算出部406は、瞬時位相φ(t)と、被測定信号の理想的な位相との差分を求めることにより、瞬時位相雑音Δφ(t)を算出してよい。
図7は、デジタル信号処理部60の動作の一例を示すフローチャートである。また、デジタル信号処理部60における信号処理を、図8から図11を用いて説明する。まず、S1002において、被測定信号の平均周波数f0を求める。デジタル信号処理部60は、被測定信号の周波数f0を測定する測定部を有してよい。また、被測定信号の周波数f0は、被測定信号の平均周期Tbの2倍の逆数から求めてよい。被測定信号の平均周波数又は平均周期は、例えば使用者等から与えられてよい。また、S1002は、図7において最初のステップとして説明するが、必ずしも最初に行わなくともよい。
窓関数乗算部402は、キャプチャメモリ40が格納したデータ列xa(t)に窓関数w(t)を乗算したデータ列x(t)を生成する(S1003)。図8に、キャプチャメモリ40が格納した被測定信号のデータ列xa(t)、及び窓関数乗算部402が乗算する窓関数w(t)の一例を示す。窓関数乗算部402は、上述したようにハニング窓関数等をデータ列xa(t)に乗算してよい。
次に、周波数領域変換部404は、窓関数をかけたデータ列x(t)=w(t)*xa(t)をフーリエ変換したスペクトラムSa(f)を算出する(S1004)。図9(A)に、周波数領域変換部404が算出するスペクトラムの一例を示す。図9(A)に示すように、当該スペクトラムは、正及び負の周波数に、対称な周波数成分を有する。
次に、解析信号生成部414は、スペクトラムSa(f)に基づいて、解析信号Za(t)を生成する(S1006)。上述したように解析信号生成部414は、帯域制限部412が抽出した、スペクトラムSa(f)の所定の周波数成分をフーリエ逆変換することにより解析信号を生成してよい。図9(B)に、帯域制限部412が抽出する周波数成分の一例を示す。上述したように、帯域制限部412は、正の周波数帯域における所定の周波数成分を抽出してよい。また、図10(A)に、解析信号生成部414が生成する解析信号の実数部及び虚数部の波形の一例を示す。
次に、瞬時位相算出部416は、解析信号Za(t)の実数成分と虚数成分との逆正接arctan[Im(Za(t))/Re(Za(t)]を求め、瞬時位相φ(t)を算出する(S1008)。図10(B)に、瞬時位相φ(t)の一例を示す。ARG[Za(t)]は、−πからπまでの値を取るので、πの次の値が−πとなり、図10(B)の破線で示すように不連続な波形となる。このため、瞬時位相算出部416は、位相アンラップによりARG[Za(t)]から不連続位相をのぞき、図10(B)の実線で示すような直線状の連続した波形を得る。例えば瞬時位相算出部416は、不連続位相ARG[za(t)]に2πを順次加算することにより、位相アンラップを行うことができる。
次に、瞬時位相雑音算出部406は、瞬時位相φ(t)から瞬時位相雑音Δφ(t)を算出する(S1010)。図11(A)に、瞬時位相雑音Δφ(t)の一例を示す。上述したように、瞬時位相φ(t)から被測定信号の理想的な直線位相を減じることにより、瞬時位相雑音Δφ(t)を算出することができる。例えば瞬時位相雑音算出部406は、瞬時位相φ(t)から、直線成分2πf
beatt+φ
0を減じることにより、瞬時位相雑音Δφ(t)を求めてよい。ここで、f
beatは、周期分解能(Δ)で等価的に被測定信号をサンプリングする周波数である。例えば、
であってよい。また、周期分解能は、被測定信号及びストローブの周期の差分であり、φ
0は、瞬時位相φ(t)の初期位相角(initial angle)である。
瞬時位相雑音算出部406は、被測定信号の周期T及びストローブ周期(2(Tb+Δ))からfbeatを求め、瞬時位相φ(t)から、直線成分2πfbeatt+φ0を減じてよい。また、瞬時位相雑音算出部406は、例えば最小二乗法等により、瞬時位相φ(t)の近似直線を求め、瞬時位相φ(t)から当該近似直線を減じてもよい。
次に、補正部408は、瞬時位相雑音Δφ(t)を窓関数w(t)で除算することにより、瞬時位相雑音Δφ(t)を補正する(S1011)。図11(B)に、窓関数w(t)の一例を示す。当該窓関数は、S1003の処理で用いた窓関数と同一である。これにより、より精度よく瞬時位相雑音Δφ(t)を算出することができる。
次に、ラジアン単位の瞬時位相雑音Δφ(t)を、時間単位の瞬時位相雑音Δφ(t)に変換する(S1012)。例えば補正部408は、ラジアン単位の瞬時位相雑音Δφ(t)を、2πf0で除算することにより、時間単位の瞬時位相雑音Δφ(t)を求めてよい。また、補正部408は、S1011の処理に代えて、S1012の処理により得られた瞬時位相雑音Δφ(t)を、窓関数w(t)で除算してもよい。
図12は、帯域制限部412の他の動作例を説明する図である。図12(A)は、図11のS1006の処理において帯域制限部412が抽出するスペクトラムの一例を示す。帯域制限部412は、当該スペクトラムから、確定的な雑音成分を除去する。確定的な雑音成分とは、例えば線スペクトルのように、所定の条件により再現可能な確定的ジッタ等であってよい。
図12(B)は、帯域制限部412が生成するスペクトラムの一例を示す。帯域制限部412は、図12(A)に示すスペクトラムに対して、被測定信号のキャリア周波数fcのサイドバンドにおける所定の周波数範囲内(fc−a〜fc+a)の確定的な線スペクトル成分を除去する。このとき、帯域制限部412は、キャリア周波数fcの周波数成分は除去しない。このような処理により、キャリア周波数fcの近傍の雑音成分を除去することができる。また、当該周波数範囲(fc−a〜fc+a)は、測定すべきジッタの周波数範囲等に基づいて、使用者等により予め定められてよい。
また、帯域制限部412は、当該周波数範囲の外側の周波数(fc−aより小さい周波数、又はfc+aより大きい周波数)のスペクトラムの波形に対して、予め定められた高周波成分を除去してよい。例えば、帯域制限部412は、fc−aより小さい周波数、及びfc+aより大きい周波数において、レベルが予め定められた閾値より大きい周波数成分を除去してもよい。つまり、係る周波数成分を零に置き換えてよい。
このとき、帯域制限部412は、当該周波数範囲の外側の周波数(fc−aより小さい周波数、又はfc+aより大きい周波数)のスペクトラムを平滑化して、平滑化したスペクトラムから、上述した閾値を生成してよい。例えば、平滑化したスペクトラムのレベルに、予め定められたオフセット値を加算した値を、上述した閾値として生成してよい。そして、生成した閾値を用いて、平滑化前のスペクトラムにおける、当該閾値より大きいレベルの周波数成分を除去してよい。帯域制限部412は、fc−aより小さい周波数、及びfc+aより大きい周波数におけるスペクトラムの波形データを、所定のカットオフ周波数を有するローパスフィルタに入力することにより、平滑化したスペクトラムを生成してよい。
以上のような処理により、fc−aより小さい周波数、及びfc+aより大きい周波数におけるスペクトラムの確定的な雑音成分を除去することができる。また、当該閾値は、使用者等により予め定められてもよい。また、帯域制限部412は、予め定められた周波数範囲ごとに、異なる閾値を用いてよい。
また、帯域制限部412は、スペクトラムの各周波数成分のレベルを、キャリア周波数の周波数成分のレベルで除算して正規化してよい。サイドバンドの周波数成分のレベルを、キャリア周波数のレベルで除算することにより、キャリアパワーとサイドバンド雑音のパワーとの比(carrier−power−to−sideband−noise ratio)、即ち位相雑音を求めることができる。
図13は、帯域制限部412に与えられる閾値の一例を示す図である。本例における帯域制限部412は、上述したように周波数範囲毎に、異なる閾値が与えられる。例えばfc+a1〜fc+a2の周波数範囲に対して閾値TH1、fc+a2〜fc+a3の周波数範囲に対して閾値TH2、fc+a3〜fc+a4の周波数範囲に対して閾値TH3、・・・、が与えられる。当該閾値は、キャリア周波数からの周波数差anに応じて小さくなってよい。また、帯域制限部412は、それぞれの周波数範囲における周波数成分のレベルの平均値に応じた閾値を用いてもよい。
また、帯域制限部412は、それぞれの周波数範囲毎に、平滑化したスペクトラムを用いて閾値を生成してよい。例えば、それぞれの周波数範囲における、平滑化したスペクトラムのレベルの平均値に、予め定められたオフセット値を加算した値を、当該周波数範囲における閾値として用いてよい。前述したように、帯域制限部412は、生成した閾値を用いて、平滑化前のスペクトラムから、所定の周波数成分を除去してよい。
このような処理により、所定の周波数でピークを有する確定的な雑音成分を除去することができる。そして、帯域制限部412が出力するスペクトラムに基づいて、ジッタ算出部410がジッタを算出することにより、被測定信号のランダムジッタを求めることができる。
図14は、デジタル信号処理部60の他の構成例を示す図である。本例におけるデジタル信号処理部60は、図5及び図6において説明したデジタル信号処理部60の構成に対し、補正部408を設ける位置が異なる。本例における補正部408は、解析信号生成部414と瞬時位相算出部416との間に設けられ、解析信号生成部414が生成した解析信号を補正して、瞬時位相算出部416に入力する。このような構成によっても、フーリエ変換時に窓関数を乗算したことによる、瞬時位相雑音又はジッタ等の算出誤差を補正することができる。
図15は、図14において説明したデジタル信号処理部60の動作の一例を示すフローチャートである。本例におけるS1002〜S1006までの処理は、図7において説明したS1002〜S1006までの処理と同一であってよい。
本例におけるデジタル信号処理部60は、解析信号生成部414が被測定信号の解析信号を生成した後、補正部408が解析信号を補正する(S1007)。例えば補正部408は、解析信号Za(t)の実数部及び虚数部を、それぞれ窓関数w(t)で除算することにより、解析信号Za(t)を補正してよい。これにより、被測定信号のデータ列を窓関数で振幅変調したことによる、解析信号の振幅変調成分を補正することができる。
そして、デジタル信号処理部60は、図7において説明したS1008、S1010、及びS1012の処理を行う。このような処理によっても、フーリエ変換時に窓関数を乗算したことによる、瞬時位相雑音又はジッタ等の算出誤差を補正することができる。
また、図12及び図13において説明したように、帯域制限部412は、周波数領域変換部404が出力するスペクトラムのうち、確定的な雑音の周波数成分を除去してよい。
図16は、図14において説明したデジタル信号処理部60が有する帯域制限部412の動作の一例を示す図である。帯域制限部412は、図12(B)において説明したように、被測定信号のキャリア周波数fcのサイドバンドにおける所定の周波数範囲内(fc−a〜fc+a)の周波数成分を除去する。
このとき、図12(B)の例では、キャリア周波数fcの周波数成分のみを残している。これに対し、本例における帯域制限部412は、キャリア周波数fcを含む第1の周波数範囲内(A)の周波数成分を通過させる。第1の周波数範囲(A)は、少なくともキャリア周波数の周波数成分、及び当該周波数成分の両側に隣接する周波数成分を含む。ここで、キャリア周波数成分の両側に隣接する周波数成分とは、離散フーリエ変換により離散化された周波数のうち、キャリア周波数の両側において、キャリア周波数に最も近い周波数の成分であってよい。また、第1の周波数範囲(A)は、キャリア周波数fcが略中心となるように、上下限の周波数が設定されることが好ましい。
また図16に示すように、帯域制限部412は、第1の周波数範囲(A)の外側に位置する第2の周波数範囲内(B)の周波数成分を除去する。第2の周波数範囲(B)は、第1の周波数範囲(A)の両側に設けられる。また、第1の周波数範囲(A)の両側における、それぞれの第2の周波数範囲(B)の周波数範囲幅は、略等しいことが好ましい。
また図16に示すように、帯域制限部412は、第2の周波数範囲(B)の外側に位置する第3の周波数範囲内(C)の周波数成分を通過させる。第3の周波数範囲(C)は、第2の周波数範囲(B)の両側に設けられる。また、第2の周波数範囲(B)の両側における、それぞれの第3の周波数範囲(C)の周波数範囲幅は、略等しいことが好ましい。第1の周波数範囲(A)、第2の周波数範囲(B)、及び第3の周波数範囲(C)は、測定すべきジッタ周波数等に基づいて、使用者等により設定されてよい。
図15におけるS1003の処理のように、データ列に窓関数を乗算することにより、周波数領域のスペクトラムにおいてキャリア周波数成分の両側に周波数成分が生じる。このため、上述した帯域制限を行ったスペクトラムに基づいて生成した解析信号は、窓関数を乗算したことによる影響が生じる。このため、当該解析信号を窓関数で除算して補正することにより、被測定信号の瞬時位相雑音及びジッタをより精度よく算出することができる。
尚、図12(B)に関連して説明したように、キャリア周波数成分のみを残す処理では、解析信号za(t)の包絡線|za(t)|は一定となる。ここで包絡線とは、例えば解析信号の波形の頂点を接続した線であってよい。つまり、キャリア周波数成分のみを残す処理では、解析信号za(t)の包絡線|za(t)|には、窓関数を乗算した影響があらわれない。
このため、図12(B)に関連して説明した処理では、解析信号を窓関数で除算しても窓関数を乗算したことの影響を補正することができない。但し、解析信号の位相情報には、窓関数を乗算したことにより影響が残存しているので、図7に関連して説明したように、解析信号に基づいて算出した瞬時位相雑音を窓関数で除算することにより、窓関数を乗算したことによる影響を補正することができる。
図17は、デジタル信号処理部60の他の構成例を示す図である。本例におけるデジタル信号処理部60は、周波数領域変換部502及びジッタ算出部504を有する。周波数領域変換部502は、図5に関連して説明した周波数領域変換部404と同一であってよい。周波数領域変換部502は、キャプチャメモリ40が格納したデータ列を、周波数領域のスペクトラムに変換する。ジッタ算出部504は、周波数領域変換部502が生成するスペクトラムの予め定められた周波数範囲における周波数成分のレベルに基づいて、被測定信号のジッタの振幅を算出する。
図18及び図19は、周波数領域変換部502が出力するスペクトラムの一例を示す図である。ジッタ算出部504は、当該スペクトラムの所定の周波数範囲(fmin〜fmax)における周波数成分のレベルに基づいて、被測定信号のジッタ値を算出する。
このとき、ジッタ算出部504は、スペクトラムの各周波数成分のレベルを、キャリア周波数の周波数成分のレベルで除算して正規化してよい。また、ジッタ算出部504は、所定の周波数範囲(fmin〜fmax)における周波数成分のレベルを積分した値に基づいて、被測定信号のジッタの振幅を算出してよい。例えばジッタ算出部504は、下記の式により被測定信号のタイミングジッタの振幅TJ
RMS[sec]を算出してよい。
但しΔfは、Tb及びFFTサイズ(例えば、FFT処理を行うデータ数)の積で決まる周波数分解能、G
ΔφΔφ(f)はスペクトラム、enobは窓関数により定まる等価雑音帯域幅を示す。
このような処理により、被測定信号のタイミングジッタの振幅を測定することができる。また、ジッタ算出部504は、図12(B)関連して説明したように、与えられるスペクトラムの波形を平滑化してから、所定の周波数範囲の周波数成分のレベルを積分してもよい。尚、図12(B)に関連して説明した例では、平滑化前のスペクトラムをフーリエ逆変換したが、本例の処理では、平滑化したスペクトラムを積分することによりジッタを測定する。この場合、タイミングジッタのランダム成分の振幅を測定することができる。
図18は、周波数領域変換部502が出力するスペクトラムのサイドバンドの一例を示す図である。尚、図18において点線で示す波形は、従来のスペクトラムアナライザにより測定した被測定信号のスペクトラムを示す。上述したように、ジッタ算出部504は、図18において実線で示される、所定の周波数範囲内のスペクトラムを積分する。また、上述したように当該波形を平滑化した後に積分してもよい。
図20は、図1から図19において説明した測定装置10により測定したジッタ値の一例を示す図である。尚、図20では、従来のスペクトラムアナライザによる測定結果と対比して、図17から図19において説明した測定装置10による測定結果を示す。また、従来のオシロスコープによる測定結果と対比して、図1から図16において説明した測定装置10による測定結果を示す。また、図20においてRateは、被測定信号のビットレートを示しており、fJは、fmaxと同様に、ジッタの周波数の上限値を示す。
図20に示すように、測定装置10のいずれの測定結果も、従来のスペクトラムアナライザ又はオシロスコープによる測定結果とよく一致している。このように、本例における測定装置10によれば、簡易な構成により被測定信号のジッタ振幅を精度よく測定することができる。
図21は、レベル比較部520及びストローブタイミング発生器30の動作の一例を示す図である。本例において測定装置10は、被測定信号を繰り返し受け取り、それぞれの被測定信号に対し、ストローブの位相をずらして測定することにより、等価的にストローブの発生周波数の整数倍の周波数で被測定信号を測定する。本例においては、測定装置10が同一の被測定信号を2回(被測定信号A及び被測定信号B)受け取る場合を説明する。
まず、被測定信号Aに対し、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期又はテストレートと同期して(又は非同期で)、略等時間間隔に配置されたストローブAを生成する。ここで、ストローブタイミング発生器30は、レベル比較部520に対して入力するストローブを、被測定信号に同期したトリガ信号の位相を基準として生成する。例えばストローブタイミング発生器30は、被測定信号Aに対して所定の位相を有するトリガ信号を基準として、所定のオフセット時間が経過してから、ストローブAの出力を開始する。
そして、被測定信号Aの次に受け取る被測定信号Bに対して、ストローブタイミング発生器30は、同様にトリガ信号を基準として、所定のオフセット時間が経過してから、ストローブBの出力を開始する。ストローブBは、ストローブAと同一の時間間隔でストローブが配置される。
ここで、被測定信号Aの基準となるトリガ信号の位相と、被測定信号Bの基準となるトリガ信号の位相は略同一であり、ストローブA及びストローブBの各ストローブ間隔も同一である。また、ストローブAのトリガ信号に対するオフセットと、ストローブBのトリガ信号に対するオフセットは、ストローブ間隔の略半分異なってよい。即ち、ストローブAとストローブBとを重ね合わせた場合に、ストローブAとストローブBとが略等間隔で交互に配置される。
係るストローブA及びストローブBを生成することにより、ひとつのレベル比較部520を用いて、ストローブの発生周波数の2倍の周波数で等価的にサンプリングすることができる。ストローブタイミング発生器30は、例えば所定の時間間隔で配置されたストローブを生成する発振回路と、当該発振回路の出力を遅延させる遅延回路とを備えてよい。この場合発振回路は、ストローブA及びストローブBを順次生成する。そして、遅延回路は、それぞれのストローブが有するべきオフセットに応じて、それぞれのストローブを順次遅延させる。
また、本例においては、ストローブA及びストローブBを用いて説明したが、他の例においては、ストローブタイミング発生器30は、更に多くのストローブを順次生成してもよい。これらのストローブのオフセットを順次変化させることにより、より高周波数での等価時間測定を行うことができる。
図22は、測定装置10の構成の他の例を示す図である。本例における測定装置10は、図1に関連して説明した測定装置10の構成に加え、クロック再生器25を更に備える。他の構成については、図1から図21に関連して説明した測定装置10と同一であるので、その説明を省略する。クロック再生器25は、被測定信号に基づいて、被測定信号に同期した再生クロックを生成し、当該再生クロックをトリガ信号としてストローブタイミング発生器30に入力する。このような構成により、図21において説明したストローブA及びストローブBの生成開始のタイミングを制御し、所定の位相差を有するストローブA及びストローブBを生成することができる。
図23は、レベル比較部520の構成の他の例を示す図である。本例における測定装置10は、二つのレベル比較部(520−1、520−2、以下520と総称する)を有する。それぞれのレベル比較部520は、図3(A)において説明したレベル比較部520と同一である。また、それぞれのレベル比較部520には、同一の第1の参照電圧VOH及び第2の参照電圧VOLが与えられる。また、それぞれのレベル比較部520には、被測定信号が分岐して入力される。測定装置10は、被測定信号を分岐してそれぞれのレベル比較部520に並列に入力する入力部90を更に備えてよい。この場合、ストローブタイミング発生器30は、それぞれのレベル比較部520に対して、位相の異なるストローブを入力する。例えば、レベル比較部520−1に対しては、図21に示したストローブAを入力し、レベル比較部520−2に対しては、図21に示したストローブBを入力する。これにより、二つのレベル比較部520を用いてインターリーブサンプリングを行うことができ、ストローブの発生周波数の2倍の周波数で、被測定信号を測定することができる。
図24は、図23に示したレベル比較部520及びストローブタイミング発生器30の動作の一例を示す図である。上述したように、ストローブタイミング発生器30は、ストローブA(1、2、3、・・・)及びストローブB(A、B、C、・・・)を生成し、それぞれのレベル比較部520に入力する。
キャプチャメモリ40は、二つのレベル比較部520における比較結果を、対応するストローブの位相に応じて整列して格納する。例えば、キャプチャメモリ40は、図14に示すストローブ1、ストローブA、ストローブ2、ストローブB、・・・に対応する比較結果を順に整列させて格納する。係る場合、ストローブA及びストローブBは同時に生成されるので、トリガ信号を基準としてそれぞれのストローブを生成しなくてもよい。ストローブA及びストローブBを重ね合わせたストローブ群が略等時間間隔に配置されればよい。例えば、ストローブタイミング発生器30は、ストローブAを生成する回路と、ストローブAを遅延させてストローブBを生成する回路とを有してよい。
また、本例においては2つのレベル比較部520を有する例を説明したが、他の例においては、更に多くのレベル比較部520を有してもよい。この場合、それぞれのレベル比較部520に入力されるストローブのオフセットを異ならせることにより、より高周波数の測定を行うことができる。
しかし、図21から図24に説明したサンプリング手法では、いずれかのストローブの位相が、予め定められた位相に対して誤差を有すると、測定結果に誤差が生じてしまう。このため、ストローブの位相、即ちサンプリングタイミングの誤差に基づく測定誤差を補正することが好ましい。
図25及び図26は、サンプリングタイミングの誤差を補正する方法の一例を示すフローチャートである。当該補正は、デジタル信号処理部60が行ってよい。まず、理想位相差算出段階S300において、それぞれのストローブに応じてサンプリングしたそれぞれのデータ列の、サンプリングタイミングの位相差の理想値を算出する。例えば、当該位相差は、それぞれのストローブのオフセットの差分の理想値をΔtとし、被測定信号の平均周期をTとすると、2π(Δt/T)で与えられる。
次に、基準スペクトラム算出段階S302において、複数のデータ列のうち、任意のデータ列を基準として選択し、当該データ列のスペクトラムを算出する。当該スペクトラムは、当該データ列の高速フーリエ変換で求めることができる。
次に、比較スペクトラム算出段階S304において、基準データ列とは異なるデータ列を選択し、当該データ列のスペクトラムを算出する。当該スペクトラムは、当該データ列の高速フーリエ変換で求めることができる。
次に、クロススペクトラム算出段階S306において、基準データ列のスペクトラムと、比較対象データ列のスペクトラムとのクロススペクトラムを算出する。当該クロススペクトラムは、基準データ列のスペクトラムの複素共役スペクトラムと、比較対象データ列のスペクトラムとの複素乗算により求めることができる。
次に、位相差算出段階S306において、基準データ列と、比較対象データ列との位相差を算出する。当該位相差は、S306において算出したクロススペクトラムに基づいて算出することができる。つまり、当該クロススペクトラムの位相成分が、基準データ列と比較対象データ列との位相差を示す。
S304及びS306においては、二つのデータ列のクロススペクトラムを用いて位相差を算出したが、他の方法により当該位相差を算出してもよい。例えば、二つのデータ列のスペクトラムの相互相関に基づいて、位相差を算出してもよい。
次に、S310において、全ての比較対象データ列に対して、位相差を算出したか否かを判定する。基準データ列との位相差を算出していないデータ列が存在する場合、当該データ列に対して、S304からS306の処理を繰り返す。
全ての比較対象データ列に対して位相差を算出している場合、エラー訂正段階S312において、それぞれの比較対象データ列の位相差に基づいて、測定誤差を補正する。例えば、それぞれの比較対象データ列の位相差と、S300において求めた理想位相差との差分に基づいて、それぞれのデータ列を補正する。
図26は、エラー訂正段階S312の処理の一例を示すフローチャートである。まず、タイミングエラー算出段階S314において、基準データ列と、比較対象データ列との位相差に基づいて、比較対象データ列のサンプリングタイミングエラーを算出する。当該タイミングエラーは、理想位相差に基づいて算出することができる。
次に、比較段階S316において、当該タイミングエラーが、所定の基準値より大きいか否かを判定する。タイミングエラーが基準値以下である場合、対応するデータ列に対する補正を行わず、S320の処理に移行する。また、タイミングエラーが基準値より大きい場合、訂正段階S318において、対応するデータ列を補正する。例えば、当該データ列のスペクトラムの位相を、当該タイミングエラーに基づいてシフトすることにより、当該データ列を補正してよい。
次に、全てのデータ列について、タイミングエラーの訂正を行ったか否かを判定する。タイミングエラーの訂正を行っていないデータ列が存在する場合、当該データ列に対してS314からS318の処理を繰り返す。全てのデータ列に対してタイミングエラーの訂正を行った場合、データ列生成段階S322において、それぞれタイミングエラーを訂正したデータ列を生成する。例えば、タイミングエラーの訂正を行ったそれぞれのデータ列のスペクトラムを、高速フーリエ逆変換することにより、タイミングエラーが訂正されたデータ列を得ることができる。
そして、整列段階S324において、それぞれのデータ列を整列させる。例えば、それぞれのデータのサンプリングタイミングに応じて、それぞれのデータを整列させる。このような処理により、サンプリングタイミングの誤差により生じる測定誤差を補正することができる。このため、より精度よくジッタを測定することができる。
図27は、試験装置100の構成の他の例を示す図である。本例における試験装置100は、図1から図26において説明した試験装置100が行うジッタ試験を行う機能に加え、被試験デバイス200のファンクション試験を行う機能を更に備える。
また、本例における試験装置100は、図1から図26に関連して説明した試験装置100の構成に加え、パターン発生器65、及びパターン比較部55を更に備える。また、判定部70は、ロジック判定部75及びジッタ判定部77を有する。他の構成要素については、図1から図26において同一の符号を付して説明した構成要素と同一又は同様の機能及び構成を有する。
パターン発生器65は、被試験デバイスのファンクション試験を行う場合に、所定の論理パターンを有する試験信号を被試験デバイス200に入力する。レベル比較部520は、被試験デバイス200が出力する被測定信号の電圧値を、与えられるストローブのタイミングで所定の参照電圧と比較することにより、被測定信号の論理パターンを検出する。
このとき、ストローブタイミング発生器30は、ストローブを生成する。ファンクション試験を行う場合、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期に同期したテストレートに応じて、ストローブを生成する。例えば、ストローブタイミング発生器30は、各テストレートの略中央のタイミングで、1つのストローブを生成する。これにより、レベル比較部520は、被測定信号の各周期における論理値を検出する。
上述したように、ジッタ試験を行う場合、ストローブタイミング発生器30は、テストレートとは独立したストローブを生成してよい。ストローブタイミング発生器30は、例えばストローブを生成する発振回路を有しており、ファンクション試験を行う場合に当該発振回路の動作をテストレートにより制御してよく、ジッタ試験を行う場合には当該発振回路の動作をテストレートでは制御しなくてよい。また、ストローブタイミング発生器30は、ファンクション試験を行う場合のストローブを生成する第1の発振回路と、ジッタ試験を行う場合のストローブを生成する第2の発振回路とを有してよい。この場合、第1の発振回路の動作はテストレートにより制御され、第2の発振回路はテストレートとは独立して動作する。
ファンクション試験を行う場合、パターン比較部55は、キャプチャメモリ40に格納された比較結果により定まる被測定信号の論理パターンが、予め定められた期待値パターンと一致するか否かを比較する。当該期待値パターンは、パターン発生器65が試験信号の論理パターンに基づいて生成してよい。
ロジック判定部75は、パターン比較部55における比較結果に基づいて、被試験デバイス200の良否を判定する。デジタル信号変換部50、デジタル信号処理部、及び判定部70は、ソフトウェアが組み込まれた計算機であってよい。この場合、試験装置100は、従来のファンクション試験用の試験装置を用いて、ハードウェアを追加することなく、ジッタ試験をも行うことができる。このため、被試験デバイス200の試験を低コストで行うことができる。
尚、キャプチャメモリ40の後段の回路は、被測定信号に非同期(ノンリアルタイム)で動作してよい。例えば、被試験デバイス200に対する一連の試験信号の入力が終了して、一連の被測定信号の論理値がキャプチャメモリ40に格納された後に、パターン比較部55、デジタル信号変換部50、デジタル信号処理部60、及び判定部70は、キャプチャメモリ40が格納したデータを処理してよい。また、試験装置100は、パターン比較部55、デジタル信号変換部50、デジタル信号処理部60、及び判定部70がデータを処理している間に、次の試験信号を被試験デバイス200に入力してもよい。
図28は、本発明の実施形態に係る電子デバイス400の構成の一例を示す図である。電子デバイス400は、被測定信号を生成する動作回路440と、測定装置10とを備える。例えば電子デバイス400は、樹脂、セラミック等のパッケージの内部に、動作回路440、及び測定装置10の一部の構成を備えてよい。
動作回路440は、例えば外部から入力される信号に応じて動作し、被測定信号を外部に出力する。測定装置10は、動作回路440が出力する被測定信号を測定する。測定装置10は、図1から図26に関連して説明した測定装置10と同様の機能及び構成を有してよい。また、測定装置10は、図29から図50に関連して説明する測定装置10と同様の機能及び構成を有してもよい。
また、測定装置10は、図1から図26、又は図29から図50に示す測定装置10の構成のうちの、一部の構成を有してよい。例えば、測定装置10は、レベル比較部520及びキャプチャメモリ40を有してよい。この場合、レベル比較部520には、図1から図26、又は図29から図50に関連して説明するストローブが与えられる。当該ストローブは、外部から与えられてよく、電子デバイス400の内部で生成してもよい。
電子デバイス400の内部でストローブを生成する場合、電子デバイス400は、ストローブタイミング発生器30を更に備えることが好ましい。図1から図26に関連して説明したように、キャプチャメモリ40には、等価的に高周波数で被測定信号を測定した測定結果が格納される。
このため、キャプチャメモリ40が格納した比較結果を読み出すことにより、電子デバイス400のジッタを精度よく算出することができる。この場合、外部の装置は、被測定信号を高速に測定する必要がなく、当該装置のコストを低減することができる。
図29は、ストローブタイミング発生器30が生成するストローブの例を示す図である。本例におけるストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期(T)に対して周期分解能(Δ)異なる周期(T+Δ)で、ストローブを順次生成する。つまり、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号に対する相対位相が徐々に変化するストローブを生成する。本例において被測定信号は、周期(T)で略同一の波形を示す信号である。
また、本例におけるストローブタイミング発生器30は、被測定信号に対してナイキスト定理を満たさない周期でストローブを生成してよい。つまり、本例におけるストローブタイミング発生器30は、被測定信号をアンダーサンプリングする。例えば、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期の半分より大きい周期でストローブを生成する。本例では、図29に示すように、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期より大きい周期で等間隔のストローブを生成する。
このように、略同一の波形が繰り返される被測定信号に対して、ストローブの相対位相を徐々に変化させて被測定信号を測定することにより、等価的に高い時間分解能のサンプリングを行うことができる。
例えば、被測定信号の周期が400psであり、ストローブの周期が405psである場合、被測定信号に対するストローブの相対位相は、各サイクルで5psずつ変化する。被測定信号の各サイクルにおいて略同一の波形であるので、等価的に5psの周期で被測定信号をサンプリングすることができる。
キャプチャメモリ40は、レベル比較部520がストローブに応じて出力する比較結果を時系列に格納してよい。デジタル信号変換部50は、キャプチャメモリ40が格納した比較結果のうち、所定のポイント数の比較結果を取り出して離散信号に変換し、デジタル信号処理部60に入力してよい。
図30は、被測定信号の周期と、ストローブの周期との差分値(以下、周期分解能と称する)を変化させた場合に算出される瞬時位相雑音Δφ(t)の一例を示す。本例では、周期分解能(Δ)を5ps、10ps、20ps、40psとしたときのそれぞれの瞬時位相雑音を示す。図22に示すように、周期分解能(Δ)を変化させた場合、算出される瞬時位相雑音の波形が変化する。このため、周期分解能(Δ)を、被測定信号のランダムジッタ値やその標準偏差(standard deviation)、又はその実効値(rms値)と同程度の値を選ぶのが望ましい。
図31は、それぞれの周期分解能(Δ)に対して算出されるジッタ値の観測帯域幅依存性を例示する図である。本例においては、被測定信号に含まれるジッタ振幅の実効値が2psである場合に、それぞれの周期分解能(Δ)に対して算出されるジッタ値を示す。尚、図31における横軸における周波数fuは、キャリア周波数f0を基準としたカットオフ周波数を示す。
図32は、それぞれの周期分解能(Δ)に対して算出したジッタ値の、測定誤差の一例を示す図である。本例においては、周期分解能(Δ)が5psである場合の測定値を真値とする。図31及び図32に示すように、周期分解能(Δ)が大きくなるに従い、ジッタ値の測定誤差が急激に増大する。
ストローブタイミング発生器30は、周期分解能(Δ)がより小さくなるように、ストローブの周期を設定してよい。例えば、ストローブタイミング発生器30において、ストローブの周期として複数種類の周期が選択できる場合、ストローブタイミング発生器30は、当該周期分解能(Δ)がより小さくなる周期を選択してよい。
また、ストローブタイミング発生器30は、周期分解能が、測定すべきジッタの振幅、又はジッタを算出すべき時間分解能に応じた値となるように、ストローブの周期を設定してよい。例えば、ストローブタイミング発生器30は、測定すべきジッタの振幅値又は算出すべきジッタ値が与えられ、周期分解能が、ジッタの実効値の2倍又は要求される時間分解能の値と同程度になるように、ストローブを順次設定してよい。ここで、測定すべきジッタ値は、タイミングジッタのピークツウピーク値であってよい。また、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期の値が与えられることが好ましい。
被測定信号の各エッジのタイミングと、理想的なタイミングとのずれ(即ちタイミングジッタ)の最大値は、タイミングジッタの値により定まる。つまり、被測定信号の各エッジが観測される確率は、理想的なタイミングの前後のそれぞれで、ジッタの値に応じて変化する。このため、被測定信号の各エッジは、理想的なタイミングを中心として、ジッタ値の2〜3倍の幅で変化しうる。逆に、図34で後述するように、周期分解能(Δ)をジッタ値の2倍程度とすることにより、被測定信号のタイミングのずれ(即ちタイミングジッタ)をより精度よく検出することができる。
また、周期分解能(Δ)を、ジッタ値を算出すべき時間分解能より小さくすることにより、当該時間分解能でのジッタ値をより精度よく算出することができる。また、周期分解能(Δ)を、被測定信号に含まれるジッタの確率密度分布の標準偏差に基づいて定めてもよい。以下において、標準偏差に基づいて周期分解能(Δ)、即ち、等価的なサンプリング間隔を定める手順の一例を説明する。
図33(A)は、被測定信号に含まれるジッタの確率密度関数p(t)の一例を示す図である。但し、図33(A)において横軸は、確率密度関数p(t)の標準偏差で正規化した時間を示す。係るジッタ測定の、正規化2乗誤差(normalized mean square error)は下式で与えられる。
式(1)
ここで、式(1)の右辺第1項は、測定誤差のうち、不規則誤差(random
error)を示す。また、式(1)の右辺第2項は、測定誤差のうち、バイアス誤差(bias error)を示す。また、Wは、被測定信号を観測する間隔、即ち、周期分解能(Δ)に比例する。また、p''(t)は、確率密度関数p(t)の2階微分を示す。また、右辺第1項の不規則誤差の各定数は、下記の文献を参照されたい。
「Analysis and Measurement Procedure 3rd ed.」、pp.290、J.S.Bendat and A.G.Piersol
式(1)から明らかなように、観測間隔W、すなわち周期分解能(Δ)を十分に小さくすれば、被測定信号に含まれるジッタ成分を精度よく測定することができる。つまり、式(1)の右辺第2項が略零となり、バイアス誤差による測定誤差を除去して、ジッタ成分を精度よく測定することができる。
理論的には、ストローブの周期設定の分解能を十分に高くすることにより、周期分解能(Δ)を十分に小さくすることができる。しかし、実際には、係るストローブを生成できる回路を実現することは困難である。
また、係る回路を測定装置10に設けることは、測定装置10のコストを増大させてしまう。また、測定装置10において、ストローブの周期として設定しうる値が制限されている場合、周期分解能(Δ)を十分に小さくすることは困難である。
以下では、ストローブの周期として設定しうる値が制限されており、周期設定の分解能が比較的低い場合であっても、ストローブの周期を適切に選択することにより、被測定信号に含まれるジッタ成分を精度よく測定できることを説明する。被測定信号に含まれるジッタがガウス分布を示す場合、確率密度関数p(t)は、下式で与えられる。
式(2)
但し、σは被測定信号に含まれるジッタの確率密度分布の標準偏差を示す。
式(2)から、式(1)の右辺第2項の因数(p''(t)/p(t))
2は、下式で与えられる。
式(3)
図33(B)は、式(3)に示した関数の波形の一例を示す図である。式(3)及び図33(B)に示すように、|t|=σのとき、式(1)の右辺第2項は略零となる。つまり、ストローブ及び被測定信号の周期分解能(Δ)、即ち測定間隔が2σの場合、式(1)の右辺第2項は略零となり、測定誤差のバイアス誤差を除去してジッタ成分を精度よく測定することができる。また、式(1)の右辺第1項に示される、測定誤差の不規則誤差は、測定データ数を十分大きくすることにより、低減することができる。
図34は、周期分解能(Δ)と測定誤差との関係の一例を示す図である。図34において、横軸は、2σで正規化した周期分解能(Δ)を示す。また縦軸は、上述したバイアス誤差に対応する測定誤差を示す。また本例においては、丸印、四角印等に示すように、4回の測定を行い、測定結果を曲線で近似した。図34に示すように、周期分解能(Δ)が2σとなる、即ちΔ/2σ=1となる点の近傍で、測定誤差が十分に小さくなることがわかる。
本例における測定装置10のストローブタイミング発生器30は、被測定信号に含まれるジッタの確率密度分布の標準偏差に基づいて、ストローブの周期を設定又は選択してよい。例えば、ストローブタイミング発生器30は、測定すべきジッタの標準偏差σ、及び被測定信号の周期が予め与えられており、周期分解能(Δ)が、標準偏差σの2倍と略等しくなるように、ストローブの周期を設定してよい。また、ストローブタイミング発生器30は、バイアス成分による測定誤差が許容される範囲内となるように、ストローブの周期を設定してもよい。この場合、ストローブタイミング発生器30は、周期分解能(Δ)が、標準偏差σの2倍の近傍となるように、ストローブの周期を設定することが好ましい。
また、ストローブの周期として選択できる複数種類の周期が、予め定められている場合、ストローブタイミング発生器30は、周期分解能(Δ)が、標準偏差σの2倍に最も近くなるように、ストローブの周期を選択してよい。尚、以上においては、被測定信号に含まれるジッタの確率密度分布がガウス分布である場合について説明したが、測定対象のジッタは、ガウス分布のジッタに限定されない。他の分布のジッタであっても、図33及び図34に関連して説明した手順と同様の手順で、ジッタの標準偏差に基づいてストローブの周期を適切に設定することができる。
以上、最適周期分解能(Δ)が2σであることを理論的に導き、図34に示すように実験的に検証した。ところで、式(1)及び式(3)は、サンプリングに関するパラメータは観測間隔Wのみであるから、式(1)及び式(3)はサンプリング手法に依存せず成立する。つまり、式(1)及び式(3)は、等価的サンプリング(アンダーサンプリング)に限らず、リアルタイムサンプリング(オーバーサンプリング)についても、等価的サンプリングと同様に成立する。
図35は、図27に示した試験装置100が備えるパターン発生器65の構成の一例を示す図である。パターン発生器65は、試験信号の信号パターンを生成するパターン生成部67と、信号パターンに基づいて試験信号を出力するドライバ69とを有する。ドライバ69は、予め定められたテストレートに応じて動作し、被試験デバイス200にテストレートまたはその整数倍のテストレートに応じた周期の被測定信号を出力させる。本例では、ドライバ69は、テストレートTに応じた周期のタイミング信号が与えられ、被試験デバイス200に当該周期に応じた被測定信号を出力させる。
これに対し、ストローブタイミング発生器30は、テストレートTより所定値大きい周期T+Δでストローブを生成する。このような動作により、低い動作周期で、高速な被測定信号を精度よく測定することができる。ストローブタイミング発生器30には、テストレートTに対して設定可能なストローブの周期の差分Δが複数種類用意されることが好ましい。例えば、ストローブタイミング発生器30に対して設定可能なタイミングセットが複数用意されており、それぞれのタイミングセットを設定した場合における、テストレートとストローブとの周期の差分値Δが予め測定されていてよい。
ストローブタイミング発生器30は、これらのタイミングセットのうち、周期の差分値Δが最も小さくなるタイミングセットを選択してよい。また周期の差分値Δが、測定すべきジッタ値の2倍より小さくなるタイミングセットを選択してもよい。
図36は、被測定信号K及び被測定信号Jの瞬時線形位相φの一例を示す図である。試験装置100は、2つの被測定信号の瞬時位相φ(t)のオフセット値φ0_k及びφ0_Jに基づいて、2つの信号間の確定(deterministic)スキューを求めてよい。ここで、確定スキューとは、2つの信号が伝播する経路の電気長の差であってよい。
例えばデジタル信号変換部50及びデジタル信号処理部60は、t=0における、2つの被測定信号の瞬時位相φ(t)の値φ0_k及びφ0_Jを求め、これらの差分を確定スキューとして求めてよい。また、デジタル信号変換部50及びデジタル信号処理部60は、ラジアン単位で求めた確定スキューを2πf0で除算して、時間単位の確定スキューを求めてもよい。また、ラジアン単位の瞬時位相φ(t)を、時間単位の瞬時位相φ(t)に変換して、それぞれの瞬時位相φ(t)の初期値の差分から時間単位の確定スキューを求めてもよい。また、デジタル信号変換部50及びデジタル信号処理部60は、2つの被測定信号の瞬時位相雑音Δφ(t)から、2つの被測定信号の不規則(random)スキューを求めてよい。
図37は、被測定信号K及び被測定信号Jの間の不規則スキューを測定する方法を説明する図である。図37(A)は、被測定信号Kの瞬時位相雑音Δφ(t)
_Kの一例を示す。図37(B)は、被測定信号Jの瞬時位相雑音Δφ(t)
_Jの一例を示す。図37(C)は、被測定信号K及びJの間の不規則スキューの一例を示す。尚、図37において、瞬時位相雑音Δφ(t)は、瞬時位相φ(t)の直線成分2πf
beatを減じたものである。ここで、f
beatは、周期分解能(Δ)で等価的に被測定信号をサンプリングする周波数である。例えば、
であってよい。
不規則スキューは、各時刻における、被測定信号K及びJの瞬時位相雑音Δφ(t)の差分に対応するので、図37(A)及び図37(B)に示した瞬時位相雑音Δφ(t)の差分を求めることにより、図37(C)に示した不規則スキューTSkew(t)を求めることができる。例えばデジタル信号変換部50及びデジタル信号処理部60が、不規則スキューを求めてよい。
また、試験装置100が、図36及び図37において説明した確定スキュー又は不規則スキューを測定するとき、試験装置100は、レベル比較部520を並列に2つ有することが好ましい。そして、これらのレベル比較部520に同時に被測定信号K及びJを入力する。また、これらのレベル比較部520に同一のストローブを与える。つまり、試験装置100は、レベル比較部520に入力する2つの被測定信号を同時にアンダーサンプリングする。
そして、上述したように、それぞれの信号に対して瞬時位相φ(t)を求め、それぞれの瞬時位相φ(t)について、所定の時刻(例えばt=0)のオフセット値を求める。求めた値の差分が確定スキューを示す。係る処理は、デジタル信号変換部50及びデジタル信号処理部60が行ってよい。また、試験装置100は、2つのレベル比較部520に対応して2つのキャプチャメモリ40を有してよい。デジタル信号変換部50及びデジタル信号処理部60は、2つのキャプチャメモリ40からデータを受け取り、上述した確定スキューや不規則スキューを算出する。デジタル信号処理部60は、確定スキュー及び不規則スキューを測定する場合、図12に関連して説明したように、確定ジッタ成分を除去してよい。
図38は、試験装置100のジッタ測定結果とシグナルソース解析器(signal source analyzer)E5052Aをもちいたジッタ測定結果とを比較する図である。図38では、シグナルソース解析器を用いたジッタ測定結果の範囲を点線で示す。シグナルソース解析器は、ジッタを測定する機能を有する一般的な測定器であってよい。
また、図38では、試験装置100のジッタ測定結果を丸印及び三角印でプロットした。図38に示すように、試験装置100における測定結果は、ジッタを測定する目的で用いられる測定器での測定結果とよくあっている。つまり、試験装置100を用いてジッタを高精度に測定できることが示されている。
図39は、試験装置100の構成の他の例を示す図である。本例における試験装置100は、測定装置10及び判定部70を備える。また測定装置10は、図1に関連して説明した測定装置10の構成に加え、符号制御部610を更に有する。本例において、図1の構成要素と同一の符号を付した構成要素は、図1に関連して説明した当該構成要素と同一の機能及び構成を有してよい。
本例におけるストローブタイミング発生器30は、略等時間間隔に配置され、且つ被測定信号のビット時間間隔より大きい間隔でストローブを順次生成する。被測定信号のビット時間間隔とは、被測定信号の信号レベルが遷移する周期であってよい。また、被測定信号は、ビット時間間隔毎に信号レベルがHレベル又はLレベルに交互に遷移する信号であってよい。
レベル比較部520は、順次与えられるストローブのタイミングにおいて、被測定信号の信号レベルを検出する。レベル比較部520は、図1に関連して説明したレベル比較部520を用いて、被測定信号の信号レベルを検出してよい。レベル比較部520は、順次与えられるストローブのタイミングにおいて、被測定信号の電圧値と、与えられる参照電圧値とを順次比較してよい。例えばレベル比較部520は、被測定信号の電圧値が参照電圧値より大きいときに、論理値1を出力し、被測定信号の電圧値が参照電圧値より小さいときに、論理値−1を出力してよい。また、レベル比較部520は、値の異なる複数の参照電圧値と被測定信号の電圧値とを比較してよい。この場合レベル比較部520は、複数種類の比較結果に応じて複数種類の論理値を出力する。キャプチャメモリ40は、レベル比較部520が出力する信号レベルを格納する。キャプチャメモリ40は、レベル比較部520が順次出力する論理値を時系列に格納してよい。
符号制御部610は、キャプチャメモリ40が格納したデータ列のデータ値を、被測定信号の中間レベルを基準として交互に反転させてよい。例えば符号制御部610は、データ列の偶数番目の系列又は奇数番目の系列のいずれかの系列のデータ値を反転させてよい。ここで、データ値とは、被測定信号の電圧値等のレベルをデジタル値で表した値であってよい。また符号制御部610は、キャプチャメモリ40が格納したデータ列の論理値を交互に反転させてもよい。符号制御部610は、キャプチャメモリ40が格納したデータ列に、cos(πk)を乗算することにより、データ列のデータ値又は論理値を反転させてよい。
また、符号制御部610は、図43において後述するように、データ列の論理値と、期待される論理値(以下、期待値と称する)とを比較した比較結果を出力してよい。このとき、符号制御部610は、データ列の各論理値と比較する期待値を、交互に反転させてよい。
デジタル信号処理部60は、キャプチャメモリ40が格納したデータ列に基づいて、被測定信号の測定結果を求める。データ列とは、例えば上述した時系列に整列されたデータ値又は論理値の列であってよい。また、デジタル信号処理部60は、当該データ列に基づいて、被測定信号の波形、スペクトラム、ジッタ、瞬時位相、瞬時位相雑音等を測定してよい。またデジタル信号処理部60は、二つの被測定信号間のスキューを求めてよい。更に、被試験デバイス200の入出力間におけるジッタ伝達関数のゲインを求めてもよい。またデジタル信号処理部60は、被試験デバイス200のビット誤り率(BER)を求めてもよい。それぞれの測定対象についての測定装置10の動作は、後述する。
図40は、ストローブタイミング発生器30が生成するストローブの例を示す図である。本例においては、被測定信号のビット時間間隔をTとして説明する。本例における試験装置100は、被測定信号のビット時間間隔と略等しいテストレートで動作する。ストローブタイミング発生器30は、テストレート毎に、一つ以下のストローブを生成する。
また、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号のテストレート(T)に対して所定値(Δ)異なる周期(T+Δ)で、ストローブを順次生成する。また、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号に対してナイキスト定理(Nyquist sampling theorem)を満たさない周期でストローブを出力してよい。
例えば、被測定信号の論理値が、ビット時間間隔毎にHレベル及びLレベルと交互に遷移するとき、ストローブの周期をビット時間間隔(T)より小さくするとナイキスト定理を満たす。ストローブタイミング発生器30は、ビット時間間隔よりわずかに大きい周期でストローブを順次出力してよい。このケースでは、図32に示すように、レベル比較部520は、被測定信号のHレベル及びLレベルを、ほぼ交互に検出する。
図41は、デジタル信号処理部60の動作の一例を示す図である。本例では、図40において説明したように、ビット時間間隔毎に論理値がHレベル及びLレベルに交互に遷移する被測定信号を測定するケースを説明する。尚、本例での被測定信号は、ジッタをもたない(jitter free)。また、ストローブタイミング発生器30の動作は、図40において説明したストローブタイミング発生器30と同一である。
図41(A)は、デジタル信号処理部60に入力されるデータ列の一例を示す。図40において説明したように、レベル比較部520は、被測定信号がHレベルを示すビット区間と、Lレベルを示すビット区間とをほぼ交互に検出する。
図41(B)及び図41(C)は、デジタル信号処理部60におけるデータ処理の一例を示す図である。図41(B)の左図に示すように、デジタル信号処理部60は、入力されるデータ列を、等価な時間波形に圧縮してよい。つまり、デジタル信号処理部60は、周期T+Δでサンプリングされたデータ列は、等価的に周期Δでサンプリングされたものとして処理できる。また、図41(B)の右図は、図41(B)の左図に示したデータ列をフーリエ変換したスペクトラムの一例である。
次に図41(C)の左図に示すように、デジタル信号処理部60は、図41(B)の右図に示したデータ列のデータのうち、奇数又は偶数番目のいずれかの系列に対応するデータの値を、被測定信号の中間レベルを基準として反転させる。
例えば、図41(A)及び図41(B)に示したデータのうち、1、3、5、7、9、・・・番目のデータのオリジナルの値を維持する。また、2、4、6、8、10、・・・番目のデータの値を、被測定信号の中間レベル(本例では0レベル)を基準として反転させる(本例では、論理値1のデータ値を論理値−1に変換し、論理値−1のデータ値を論理値1に変換する)。
即ち、図41(C)に示すように、偶数番目又は奇数番目のいずれかのデータ列のデータ値を反転させることにより、被測定信号をサンプリング周期Δでサンプリングしたときと等価な波形を得ることができ、より高精度に被測定信号の波形を再現することができる。
尚、図41(C)の右図は、図41(C)の左図に示したデータ列をフーリエ変換したスペクトラムの一例である。図41(C)の左図に示したデータ列をフーリエ変換することにより、デジタル信号処理部60は、被測定信号のスペクトラムを算出することができる。
また、デジタル信号処理部60は、上述したデータ値を反転させる処理として、それぞれのデータ値にcos(πk)を乗算してよい(但し、kはデータ列におけるデータ番号を示す)。時間軸上におけるデータ値を反転させる処理は、cos(πk)を乗算することと等価であるので、周波数軸上においては、周波数をπシフトすることと等価である。つまり、図41(C)に示したスペクトラムは、図41(B)に示したスペクトラムの周波数をπシフトすることによっても算出することができる。デジタル信号処理部60は、データ値を反転させる処理を行う前のデータ列(図41(B)の左図)をフーリエ変換することにより得たスペクトラム(図41(B)の右図)をπ周波数シフト(frequency shifting)することにより、被測定信号のスペクトラム(図41(C)の右図)を算出してもよい。更に、デジタル信号処理部60は、このようにして算出した被測定信号のスペクトラムをフーリエ逆変換することにより、被測定信号の波形(図41(C)の左図)を算出してもよい。
図42は、ジッタが印加された被測定信号に対して、図41において説明した処理と同様の処理を行ったケースを示す図である。図42(A)は、被測定信号にジッタが印加されている場合における、デジタル信号処理部60に入力されるデータ列の一例を示す図である。また図42(B)及び図42(C)は、被測定信号にジッタが印加されている場合における、デジタル信号処理部60におけるデータ処理の一例を示す図である。
図42(B)及び図42(C)に示すように、被測定信号にジッタが印加されていると、データ列に当該ジッタ成分が現れる。そして、当該データ列をフーリエ変換したスペクトラムのキャリア周波数近傍にも、ジッタ周波数に応じたジッタ成分が現れる。デジタル信号処理部60は、当該スペクトラムに基づいて、被測定信号のジッタを算出してよい。
本例においては、被測定信号のビット時間間隔よりわずかに大きい周期で、被測定信号をサンプリングする例について説明した。この場合、上述したように、サンプリングした被測定信号のデータ値を、ビット時間間隔毎に、被測定信号の中間レベルを基準として交互に反転させる(奇数番目又は偶数番目のデータ値を反転させる)。例えば、サンプリングした被測定信号のデータ値を、一つおきに(one by one)反転させる。
同様に、サンプリングした被測定信号の論理値を、ビット時間間隔毎に交互に反転させてよい。つまり、サンプリングした被測定信号の論理値を、一つおきに反転させてよい。また、論理値の反転とは、例えば論理値Hを論理値Lに変換して、論理値Lを論理値Hに変換する処理であってよい。これに対し、データ値の反転とは、例えば被測定信号のレベル(例えば電圧値)を、被測定信号の中間レベル(例えば零電圧)を基準として反転させる処理であってよい。
図43は、符号制御部610の構成の一例を示す図である。上述したように、符号制御部610は、期待値を交互に反転させる。本例における符号制御部610は、期待値生成部612及び論理比較部614を有する。
論理比較部614は、レベル比較部520が検出した被測定信号のそれぞれの論理値と、与えられる期待値とが一致するか否かを示す比較結果を出力する。論理比較部614は、被測定信号の論理値と期待値との排他的論理和を出力する排他的論理和回路を有してよい。期待値生成部612は、被測定信号の論理値のデータ列において、奇数又は偶数番目のデータの系列に対応する期待値を、直前の期待値を反転させて論理比較部614に供給する。
図44は、図43に示した符号制御部610を用いた場合の試験装置100の動作の一例を示す図である。本例における測定装置10は、被測定信号の各ビットの論理値が、予め定められた期待値と一致するか否かを示す比較結果を生成する。
上述したように、期待値生成部612は、被測定信号のデータ列において奇数又は偶数番目のいずれかのデータに対応する期待値を反転させてよい。例えば期待値として2つの論理値を取りうる場合に、直前の期待値と異なる論理値を順次設定してよい。このような処理により、被測定信号の各ビットの論理値と、予め定められた期待値との比較結果が、図41(C)及び図42(C)の左図に示したデータ列に対応する。
図45は、図44において説明した処理により得られる比較結果系列の一例を示す。図45(A)に示すように、測定装置10は、期待値(期待される論理値)をビット時間間隔毎に交互に反転させて、被測定信号の論理値と比較する。例えば測定装置10は、期待値を一つおきに(one by one)反転させる。
これにより、図45(B)に示すように、図42(C)の左図に示したデータ列と同等の比較結果系列を得ることができる。尚、本例において、被測定信号の論理値と期待値とが一致したケースの比較結果を論理値1で示し、一致しないケースの比較結果を−1で示す。
また、測定装置10は、期待値を反転させずに、例えば論理値Hに期待値を固定して、比較結果系列を求めてもよい。このとき、比較結果系列は、図42(B)の左図に示したデータ列と同等になる。上述したように、測定装置10は、当該比較結果の系列をフーリエ変換したスペクトラムをπ周波数シフトすることにより、被測定信号のスペクトラムを求めてよい。また、当該比較結果の系列をフーリエ変換したスペクトラムのいずれかのピーク近傍の周波数成分に基づいて、被測定信号のジッタ等を算出してもよい。
同様に、測定装置10は、サンプリングした被測定信号の論理値を、ビット時間間隔毎に交互に反転させてよい。つまり、サンプリングした被測定信号の論理値を、一つおきに反転させてよい。
図46は、レベル比較部520及び符号制御部610の他の構成例を示す図である。また、図47は、図46に示したレベル比較部520及び符号制御部610の動作の一例を示すタイミングチャートである。本例における符号制御部610の期待値生成部612は、被測定信号に基づいて期待値を生成する。
図46に示すように、レベル比較部520は、可変遅延回路522、フリップフロップ524、及び比較器526を有する。比較器526は、被測定信号と、予め設定される参照値VOHとを比較した比較結果を出力する。例えば比較器526は、被測定信号のレベルが、参照値VOHより大きい場合にH論理を出力して、参照値VOHより小さい場合にL論理を出力してよい。
可変遅延回路522は、ストローブタイミング発生器30が出力するストローブの位相を調整する。可変遅延回路522は、測定中は一定の遅延を生じさせてよい。フリップフロップ524は、可変遅延回路522が出力するストローブに応じて、比較器526が出力する論理値をサンプリングする。これにより、被測定信号の論理値を、ストローブに応じてサンプリングすることができる。
ストローブの周期は、被測定信号の周期TbよりΔ大きいので、図47に示すように、フリップフロップ524は、被測定信号を等価的にサンプリング周期Δでサンプリングする。図46に示すように、期待値生成部612は、可変遅延回路617、フリップフロップ616、及び比較器615を有する。比較器615は、被測定信号と、予め設定される参照値VOHとを比較した比較結果を出力する。比較器615に設定される参照値と、比較器526に設定される参照値とは同一であってよい。
フリップフロップ616は、可変遅延回路617を介して与えられる同期信号に応じて、比較器615の出力をサンプリングする。同期信号は、被測定信号と略同一の周期を有する信号である。
測定装置10は同期信号を生成する回路を有してよい。例えば測定装置10は、発振回路等を用いて同期信号を生成する回路を有してよい。また測定装置10は、被測定信号に基づいて、同期信号を生成する回路を有してもよい。例えば測定装置10は、PLL回路等を用いて、被測定信号に同期したクロックを再生するクロック再生回路を有してよい。
また図47に示すように、可変遅延回路617は、同期信号のそれぞれのエッジの位相が、被測定信号のそれぞれのビット時間間隔の略中央に配置されるように、同期信号を遅延させる。つまり、フリップフロップ616は、被測定信号のアイ開口の略中央で、被測定信号の論理値をサンプリングする。
論理比較部614は、レベル比較部520が検出した被測定信号の論理値と、前サイクルにおいて期待値生成部612が検出した被測定信号の論理値を反転させた論理値とが一致するか否かを判定する。つまり、論理比較部614は、前サイクルにおいて期待値生成部612が検出した被測定信号の論理値を期待値として用いることにより、被測定信号の状態(論理値が期待値と一致するか否かを示す状態)をサンプリングする。
上述したように、期待値生成部612は、被測定信号のアイ開口の略中央で、被測定信号の論理値をサンプリングする。このため、被測定信号に比較的大きなジッタが印加されている場合であっても、被測定信号が当該サイクルにおいて示すべき論理値を精度よく検出することができる。そして、被測定信号は各サイクルで論理値が反転するクロック信号であるので、図41に示すように、期待値生成部612が当該サイクルで検出した論理値を反転させることにより、次サイクルにおける期待値として用いることができる。
論理比較部614は、期待値生成部612からの入力を反転させて受け取ってよい。また、図46に示すように、期待値生成部612の出力と、レベル比較部520の出力との排他的論理和を反転させて出力してよい。このような構成により、被測定信号の状態を簡易な構成で測定することができる。
図48は、図43に示した符号制御部610を有する測定装置10を用いて測定した被測定信号のスペクトラムの一例を示す。尚、図48においては、被測定信号及びストローブの周期差Δを、1倍、2倍、4倍、8倍に変化させて測定したスペクトラムを示す。また、図48の横軸は、キャリア周波数からのオフセット周波数を示す。つまり、図48のスペクトラムは、ジッタ成分のスペクトラムを示す。
図48に示すように、ビット誤り率の測定装置10を用いたときも、被測定信号のジッタを測定できることがわかる。尚、図31及び図32における説明と同様に、被測定信号及びストローブの周期差を大きくすると、測定分解能が大きくなるので、測定誤差が大きくなる。本例では、当該周期差を8倍にすると、ジッタ成分を検出しない。このため、当該周期差は、より小さいことが好ましい。
図49は、図43に示した符号制御部610を有する測定装置10を用いたケースにおける、試験装置100の動作の他の例を示す図である。本例におけるストローブタイミング発生器30は、被測定信号のビット時間間隔Tに対し、2T+Δの周期でストローブを生成する。例えば、被測定信号がクロック信号であると、被測定信号の周期は2Tとなる。このとき、ストローブタイミング発生器30は、被測定信号の周期に所定の差分値Δを加えた周期でストローブを生成する。
また、本例における期待値生成部612は、所定の論理値に固定された期待値を生成する。例えば図49Aに示すように、H論理に固定された期待値を生成してよい。このような処理により、図49Bに示すような、比較結果の系列を得ることができる。
ここで説明した周期(2T+Δ)は、図45に関連して説明したビット時間間隔(T+Δ)の約2倍である。この場合、図45において説明した、ビット時間間隔毎に(一つおきに)期待値を反転させる処理は、周期(2T+Δ)の間に2回行われることになる。このため、図49に示したように、周期(2T+Δ)で被測定信号をサンプリングする例では、期待値を反転させない処理が、図45において説明した期待値を反転させる処理と等価な処理になる。
つまり、周期((2m−1)T+Δ)で被測定信号をサンプリングする場合、各サンプリングデータについて、上述した反転処理が(2m−1)回、即ち奇数回行われるので、期待値を一つおきに反転させる処理が、図45において説明した期待値を反転させる処理と等価な処理になる(但し、mは1以上の整数)。また、周期(2mT+Δ)で被測定信号をサンプリングする場合、各サンプリングデータについて、上述した反転処理が偶数回行われるので、期待値を反転させない処理が、図45において説明した期待値を反転させる処理と等価な処理になる。
尚、図41に関連して説明した、ビット時間間隔毎に、サンプリングした被測定信号のデータ値又は論理値を反転させる処理についても同様である。つまり、周期((2m−1)T+Δ)で被測定信号をサンプリングする場合、各サンプリングデータについて、上述した反転処理が奇数回行われるので、データ値又は論理値を一つおきに反転させる処理が、図41において説明したデータ値又は論理値を反転させる処理と等価な処理になる(但し、mは1以上の整数)。また、周期(2mT+Δ)で被測定信号をサンプリングする場合、各サンプリングデータについて、上述した反転処理が偶数回行われるので、データ値又は論理値を反転させない処理が、図41において説明したデータ値又は論理値を反転させる処理と等価な処理になる。
図50は、測定装置10の他の例を示す図である。本例における測定装置10は、図39から図49において説明した測定装置10の機能に加え、被試験デバイス200の入出力間のジッタ伝達関数ゲインを測定する機能を更に備える。
本例におけるレベル比較部520は、被試験デバイス200への入力信号の信号と、当該入力信号に対する被試験デバイス200の出力信号の信号とを測定する。レベル比較部520は、当該入力信号及び当該出力信号を略同時に測定してよい。
ストローブタイミング発生器30、キャプチャメモリ40、及びデジタル信号処理部60は、図39から図39において同一の符号を付したものと同様の機能及び構成を有してよい。尚、本例におけるキャプチャメモリ40は、入力信号のデータ列と、出力信号のデータ列とをそれぞれ格納する。
また、デジタル信号処理部60は、入力信号及び出力信号のそれぞれのデータ列に基づいて、入力信号及び出力信号のそれぞれのジッタを算出する。入力信号のジッタ値と、出力信号のジッタ値との比から、被試験デバイス200の入出力間におけるジッタ伝達関数のゲインを求めることができる。
また、デジタル信号処理部60は、ゲイン算出部及びBER算出部を更に備えてよい。ゲイン算出部を備える場合、ジッタ算出部は、被試験デバイス200の入力信号のデータ列及び出力信号のデータ列のそれぞれに対して、ジッタを算出する。
ゲイン算出部は、ジッタ算出部が算出する入力信号のジッタ及び出力信号のジッタに基づいて、被試験デバイス200のジッタゲインを算出する。例えばゲイン算出部は、入力信号のジッタ及び出力信号のジッタの比に基づいて、被試験デバイス200のジッタゲインを算出してよい。またゲイン算出部は、サイン波ジッタの周波数成分毎に、ジッタゲインを算出してもよい。
BER算出部は、ゲイン算出部が算出したジッタゲインに基づいて、被試験デバイス200のビット誤り率を算出する。ジッタ伝達関数のゲインから、所定の入力信号を被試験デバイス200に入力した場合に出力信号にあらわれるジッタの大きさが求められるので、ビット誤り率を推定することができる。例えば、BER算出部は、入力信号のジッタ振幅の確率密度が与えられ、出力信号の受信側で許容されるジッタ振幅が与えられてよい。BER算出部は、入力信号のジッタの確率密度及びジッタゲインから、出力信号のジッタの確率密度を求めてよい。そして、受信側で許容されないジッタ振幅が出力信号にあらわれる確率を求めることにより、出力信号のビット誤り率を算出することができる。
図51は、本発明の一つの実施形態に係る演算装置1900の構成の一例を示す図である。演算装置1900は、いわゆるコンピュータ、又は電子計算機であってよい。演算装置1900は、与えられるプログラムに基づいて、図1から図50において説明した測定装置10の少なくとも一部の構成要素として機能する。例えば演算装置1900は、図1から図50において説明したデジタル信号変換部50及びデジタル信号処理部60として機能してよい。また演算装置1900は、キャプチャメモリ40として更に機能してよく、判定部70として更に機能してよく、符号制御部610として更に機能してよい。
本実施形態に係る演算装置1900は、CPU周辺部、入出力部、及びレガシー入出力部を備える。CPU周辺部は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び表示装置2080を有する。入出力部は、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェース2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD−ROMドライブ2060を有する。レガシー入出力部は、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有する。
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェース2030、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェース2030は、ネットワークを介して他の装置と通信する。ハードディスクドライブ2040は、演算装置1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ2060は、CD−ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、演算装置1900が起動時に実行するブート・プログラム、及び演算装置1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介して演算装置1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
当該プログラムは、演算装置1900にインストールされる。CPU2000が当該プログラムを実行することにより、演算装置1900を、デジタル信号変換部50、デジタル信号処理部60、キャプチャメモリ40、判定部70、符号制御部610等として機能させる。
例えば、プログラムは、CPU2000を、デジタル信号変換部50及びデジタル信号処理部60として機能させてよい。例えばプログラムは、CPU2000に、図1から図50において説明したデジタル信号変換部50及びデジタル信号処理部60が行うべきデータ処理を実行させる命令群を含んでよい。
また、プログラムは、RAM2020を、キャプチャメモリ40として機能させてよい。例えばプログラムは、通信インターフェース2030を介して、測定装置10本体からのデータを受け取らせ、RAM2020に格納させてよい。プログラムは、演算装置1900に係る動作を行わせる命令群を含み、CPU2000が当該命令群に応じて演算装置1900を制御することにより、RAM2020をキャプチャメモリ40として機能させてよい。
以上に示したプログラムは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095の他に、DVDやCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークやインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムを演算装置1900に提供してもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
例えば、ストローブタイミング発生器30が、等時間間隔、且つビット時間間隔より大きい時間間隔で、ストローブを順次生成する実施形態において、ストローブタイミング発生器30は、等時間間隔、且つビット時間間隔より小さい時間間隔でストローブを順次生成してもよい。この場合、例えばデジタル信号処理部60において、サンプリングしたデータ、又は期待値と比較した比較結果を間引くことにより、等時間間隔、且つビット時間間隔より大きいデータからなるデータ列を生成してよい。これにより、実施形態において説明した処理と同一の処理を行うことができる。
以上から明らかなように、本発明の実施形態によれば、ンコヒーレントのサンプリングで測定した被測定信号のジッタを低コストで測定することができる。またコヒーレントのサンプリングにおいては、一般に基準信号を被試験デバイスに供給して、被試験デバイスが当該基準信号にコヒーレントな論理系列を出力する。このため、被試験デバイスの出力論理系列/信号の波形品質は試験装置が生成可能な基準信号の波形品質に制限され、被試験デバイスの性能限界を試験できなかった。これに対し、上述した測定装置10はノンコヒーレントなサンプリングを行うので、外部発振器から基準信号を被試験デバイスに供給することができる。したがって、高い波形品質の基準信号をもちいることができ、被試験デバイスの性能限界を試験できる。
また、タイミングノイズを振幅ノイズから分離して測定できるので、タイミングジッタを精度よく測定することができる。また、ストローブタイミング発生器が発生できるストローブの最大周波数より高い周波数のクロックやデータのジッタ測定を行うことができる。
特に、被測定信号のジッタの標準偏差σの2倍から、ストローブの最適な周期(最適周期分解能)を決定することができる。このため、文献1に示されるように、被測定信号の周期と1/1000程度まで一致した周期の信号を用いずに、被測定信号のジッタを精度よく測定することができる。
また、ジッタを測定すべきエッジタイプに限定されずにジッタを測定することができる。また、現在の試験装置のハードウェア構成を用いて、ジッタ試験を行うことができる。つまり、サンプル値と期待値との比較で、パターンマッチングを行わずにジッタを測定することができる。
また、測定値をジッタに対応させるキャリブレートを行わずに、被測定信号のジッタを精度よく測定することができる。更に、サンプリングタイミングのオフセット時間を調整せずに、被測定信号のジッタを精度よく測定することができる。