以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る試験装置10の構成をDUT(被試験デバイス)200と共に示す。試験装置10は、DUT200を試験する。DUT200は、一例として、GSM(Global System for Mobile Communications)等の通信デバイスに用いられる増幅器、変調器または復調器等であってよい。
試験装置10は、波形発生装置20と、測定部22と、比較部24とを備える。波形発生装置20は、アナログ信号を発生する。そして、波形発生装置20は、発生したアナログ信号を試験信号としてDUT200に供給する。
波形発生装置20は、波形生成装置30と、波形メモリ32と、出力部34とを有する。波形生成装置30は、当該波形発生装置20が発生する信号に変調されるべき入力データ列、すなわち、DUT200に供給する信号に変調されるべき入力データ列を、例えば外部から入力する。そして、波形生成装置30は、入力した入力データ列に基づき、当該波形発生装置20により発生されるアナログ信号の元となる基本波形データを生成する。波形生成装置30は、一例として、DUT200の試験に先立って、入力データ列を入力して、基本波形データを生成してよい。
波形メモリ32は、波形生成装置30により生成された基本波形データを記憶する。出力部34は、波形メモリ32に記憶された基本波形データを読み出して、例えばDA変換する。そして、出力部34は、当該基本波形データにより表された波形を繰り返す試験信号をDUT200に対して出力する。
測定部22は、試験信号が与えられたことに応じてDUT200が出力した出力信号を入力する。そして、測定部22は、入力した出力信号に基づきDUT200の特性を測定する。測定部22は、一例として、DUT200により出力された出力信号の周波数毎の電力(スペクトラム特性)を測定してよい。これに代えてまたはこれに加えて、測定部22は、一例として、DUT200の隣接周波数チャネルへの漏洩電力を測定してもよいし、また、測定周波数範囲外をマスクした測定周波数範囲内の周波数毎の電力を測定してもよい。
比較部24は、測定部22の測定結果を期待値と比較して、DUT200の良否を判定する。比較部24は、一例として、測定部22の測定結果を期待値と比較して、DUT200をクラス分けしてもよい。このような試験装置10によれば、基本波形データにより表された波形を繰り返す試験信号をDUT200に与え、当該試験信号が与えられたことに応じて出力される出力信号に基づきDUT200の特性を測定することができる。
図2は、本実施形態に係る波形生成装置30の構成を示す。波形生成装置30は、データ変更部42と、波形生成部44とを含む。
データ変更部42は、入力データ列を変更して、MSK(Minimum Shift Keying)変調した後の信号の初期位相の2π(ラジアン)の剰余位相と最終位相の2π(ラジアン)の剰余位相とが連続する変更済データ列を生成する。波形生成部44は、データ変更部42により生成された変更済データ列をMSK変調した信号に応じた波形を表す基本波形データを生成する。波形生成部44におけるMSK変調およびデータ変更部42におけるMSK変調は、シンボル間の位相が連続するMSK変調であり、同じ変調周波数が用いられる。
以上のような波形生成装置30によれば、波形発生装置20がMSK変調された信号に応じた波形を繰返し出力する場合、繰返し波形の接続部分(終了部分と開始部分の接続点)において発生するスプリアスを低減させることができる。そして、このような波形生成装置30を備える試験装置10によれば、DUT200の特性を精度良く測定することができる。
なお、MSK変調は、変調指数が0.5のFSK変調である。すなわち、データ変更部42は、下記の式(1)、(2)により表される周波数f、−fを用いたMSK変調した後の信号の初期位相と最終位相とが連続する変更済データ列を生成してよい。
f= R×0.25 …(1)
−f=−R×0.25 …(2)
式(1)、(2)において、Rは、シンボルレートを表す。すなわち、Rは、波形発生装置20により発生された信号に含まれるデータ列のシンボル周波数である。
ここで、データ変更部42においてMSK変調した後の信号の初期位相の2πの剰余位相と最終位相の2πの剰余位相とを連続させるためには、MSK変調した後の信号における初期位相の2πの剰余位相と最終位相の2πの剰余位相とが一致しなければならない。MSK変調した後の信号における初期位相の2πの剰余位相と最終位相の2πの剰余位相とを一致させるには、下記式(3)が成り立つ必要がある。
式(3)において、nは入力データ列の各シンボルのシンボル番号を表し、Nは入力データ列のシンボル数を表し、fr(n)はMSK変調した場合においてn番目のシンボルのデータ値に割り当てられるべき角周波数を表し、Phase(0)は入力データ列をMSK変調した後の信号の初期位相を表し、kは任意の整数を表す。
MSK変調の場合、fr(n)は、+π/2または−π/2となる。従って、シンボル数Nが偶数である場合、式(3)の左辺のfr(n)の累積値(Σの結果、すなわち、fr(0)からfr(N−1)までの累積値)は、2πkまたは(2πk+π)となる(kは任意の整数。)。このことから、上記式(3)は、シンボル数Nが偶数であることを条件として成り立つ。
さらに、MSK変調された信号の各シンボルの位相は、シンボル毎に位相が±π/2遷移する。すなわち、MSK変調された信号の各シンボルの位相は、奇数個のシンボルの値を反転させれば、位相が(m1×π)遷移し(m1は任意の奇数。)、偶数個(0個も含む。)のシンボルの値を反転させれば、位相がm2×π遷移する(m2は任意の偶数。)。従って、式(3)の左辺のfr(n)の累積値が2πk+πとなる場合、入力データ列の奇数個のシンボルの値を反転させれば、反転後のデータ列については、上記の式(3)が成り立つ。
このことから、シンボル数が偶数個の入力データ列であって且つMSK変調した後の信号の初期位相と最終位相との位相差が2πの整数倍である入力データ列は、MSK変調した後の信号の初期位相の2πの剰余位相と最終位相の2πの剰余位相とが一致することがわかる。さらに、このような入力データ列に含まれる偶数個(0個も含む。)のシンボルの値を反転させた変更済データ列は、MSK変調した後の信号の初期位相の2πの剰余位相と最終位相の2πの剰余位相とが一致することがわかる。
また、シンボル数が偶数個の入力データ列であって且つMSK変調した後の信号の初期位相と最終位相との位相差が2πの整数倍でない入力データ列は、MSK変調した後の信号の初期位相の2πの剰余位相と最終位相の2πの剰余位相とが一致しない(πの差が生じる)。しかし、このような入力データ列に含まれる奇数個のシンボルの値を反転させた変更済データ列は、MSK変調した後の信号の初期位相の2πの剰余位相と最終位相の2πの剰余位相とが一致することがわかる。
以上から、データ変更部42は、一例として、位相差算出部46と、反転部48とを含むことにより、MSK変調した後の信号の初期位相の2πの剰余位相と最終位相の2πの剰余位相とが連続する変更済データ列を生成することができる。位相差算出部46は、外部から、シンボル数が偶数の入力データ列を入力する。そして、位相差算出部46は、入力データ列をMSK変調した波形の初期位相と終端位相との位相差を算出する。
反転部48は、位相差算出部46により算出された位相差が2πの整数倍でない場合(すなわち、位相差が(2πk+π)である場合)、入力データ列に含まれる奇数個のシンボルのデータ値を反転する。反転部48は、一例として、入力データ列のうち奇数個のシンボルを選択し、選択したシンボルがデータ値0の場合にはデータ値1とし、データ値1の場合にはデータ値0とする。
また、反転部48は、位相差算出部46により算出された位相差が2πの整数倍である場合(すなわち、位相差が(2πk)である場合)、入力データ列に含まれる偶数個のシンボルのデータ値を反転する。反転部48は、一例として、入力データ列のうち偶数個のシンボルを選択し、選択したシンボルがデータ値0の場合にはデータ値1とし、データ値1の場合にはデータ値0とする。
反転部48は、一例として、位相差が2πの整数倍でない場合、入力データ列に含まれるいずれか1つのシンボルのデータ値を反転し、位相差が2πの整数倍である場合、入力データ列のいずれのシンボルのデータ値も反転しなくてよい。そして、反転部48は、反転して得られたデータ列を変更済データ列として出力する。このようにして、データ変更部42は、MSK変調した後の信号の初期位相の2πの剰余位相と最終位相の2πの剰余位相とが連続する変更済データ列を生成することができる。
図3は、図2に示したデータ変更部42による変更済データ列を生成する方法の一例を示す。まず、位相差算出部46は、入力データ列のデータ値0とデータ値1との出現頻度の差を算出する(S1)。位相差算出部46は、一例として、入力データ列のデータ値0を+1(又は−1)に変換し、データ値1を−1(又は+1)に変換し、変換値の合計を出現頻度の差としてよい。
ここで、入力データ列のデータ値0とデータ値1との出現頻度の差は、入力データ列をMSK変調した波形の初期位相と終端位相との位相差を表す。出現頻度の差が1の場合、初期位相と終端位相との位相差は、π/2となる。従って、データ値0とデータ値1との出現頻度の差が4の倍数である場合、入力データ列をMSK変調した波形の初期位相と終端位相との位相差は2πkとなり、出現頻度の差が4の倍数以外(2の倍数であって、4の倍数でない値)である場合、位相差は2πk+πとなる。
次に、反転部48は、ステップS1において算出した出現頻度の差が4の倍数か否かを判断する(S2)。反転部48は、一例として、出現頻度の差の4の剰余が0か否かを判断してよい(S2)。
出現頻度の差が4の倍数でない場合、例えば出現頻度の差の4の剰余が0でない場合(S2のNo)、反転部48は、入力データ列に含まれる奇数個のシンボルのデータ値を反転して変更済データ列とする(S3)。出現頻度の差が4の倍数でない場合、反転部48は、一例として、入力データ列に含まれるいずれか1シンボル(例えば、先頭の1シンボル又は最後の1シンボル)のデータ値を反転して変更済データ列を生成してよい。
出現頻度の差が4の倍数である場合、例えば出現頻度の差の4の剰余が0である場合(S2のYes)、反転部48は、一例として、入力データ列に含まれる偶数個のシンボルのデータ値を反転して変更済データ列とする(S4)。出現頻度の差が4の倍数である場合、反転部48は、一例として、入力データ列に含まれるいずれのシンボルのデータ値も反転せずに変更済データ列を生成してよい。
そして、反転部48は、ステップS3またはステップS4において生成された変更済データ列を、波形生成部44に対して出力する(S5)。このようにして、データ変更部42は、MSK変調した後の信号の初期位相の2πの剰余位相と最終位相の2πの剰余位相とが連続する変更済データ列を生成することができる。
図4は、本実施形態のデータ変更部42の構成の他の例を示す。データ変更部42は、一例として、位相差算出部46と、反転部48と、シンボル数変更部50とを含んでよい。位相差算出部46および反転部48は、図2に示した同一符号の部材と略同一の構成および機能を有するので、詳細な説明を省略する。
シンボル数変更部50は、入力した入力データ列のシンボル数が奇数の場合、当該入力データ列に奇数個のシンボルを付加または削除して、位相差算出部46および反転部48に与える。このようなデータ変更部42によれば、シンボル数が偶数個でない入力データ列が外部から入力される可能性がある場合であっても、シンボル数を偶数個とした入力データ列を位相差算出部46および反転部48に与えることができる。
また、シンボル数変更部50は、奇数シンボル長の擬似ランダム符号列(例えば、PN9の511ビットのデータ列)を入力データ列として入力してもよい。この場合、シンボル数変更部50は、入力した擬似ランダム符号列の最後のシンボルの後(または先頭のシンボルの前)に奇数個のシンボルを付加する。これに代えて、シンボル数変更部50は、入力した擬似ランダム符号列の最後(又は先頭)の奇数個のシンボルを削除してもよい。これにより、データ変更部42は、符号のランダム性を保持しながら、偶数個のシンボル長の入力データ列を生成することができる。
図5は、本実施形態に係る波形生成部44の構成の一例を示す。図6は、2周波MSK変調した信号に応じた波形を表す基本波形データを生成する場合における、波形生成部44内の各信号の一例を示す。
波形生成部44は、一例として、周波数割当部52と、オーバーサンプル部54と、フィルタ56と、位相変化量変換部58と、累積積分部60と、IQ変換部62とを含んでよい。周波数割当部52は、データ変更部42から変更済データ列を入力する。周波数割当部52は、一例として、図6の(A)に示されるような、擬似ランダム符号列(PRBS)のシンボル数を偶数にして、データ値0とデータ値1との出現頻度の差を4の倍数にした2値の変更済データ列を入力してよい。
そして、周波数割当部52は、入力した変更済データ列の各データ値をMSK変調した場合に割り当てられる周波数値に変換し、変換した周波数値を順次に出力する。例えば、図6の(A)に示された変更済データ列を入力した場合、周波数割当部52は、図6の(B)に示すように、データ値0を周波数fを表す周波数値に変換し、データ値1を周波数−fを表す周波数値に変換し、変換した各周波数値を順次に出力してよい。
オーバーサンプル部54は、周波数割当部52により出力された周波数値の系列を、所定のオーバーサンプリング率によりオーバーサンプリングする。すなわち、オーバーサンプル部54は、シンボルレートに対応する周波数値の系列を、生成すべき基本波形データのサンプリングレート(シンボルレート×オーバーサンプリング率)に対応する周波数値の系列に変換する。オーバーサンプル部54は、一例として、図6の(B)に示された周波数値fまたは周波数値−fの系列を、図6の(C)に示されるような0次ホールドフィルタによって補間をしてオーバーサンプリングした系列に変換してよい。
フィルタ56は、オーバーサンプル部54により出力されたオーバーサンプリングされた周波数値の系列を、例えばガウスフィルタまたは平均化フィルタ等のフィルタによりフィルタリングする。フィルタ56は、一例として、図6の(C)に示されオーバーサンプリングされた周波数値fおよび周波数値−fの系列を、図6の(D)に示されるようにガウスフィルタ等によってフィルタリングしてよい。これにより、フィルタ56は、シンボル境界における位相変化を滑らかにして、シンボル境界において発生するスプリアスを低減することができる。
更に、フィルタ56は、例えばガウスフィルタまたは平均化フィルタ等のフィルタにより、オーバーサンプリングされた周波数値の系列の開始部分及び終了部分を、円状フィルタリングしてよい。すなわち、フィルタ56は、オーバーサンプリングされた周波数値の系列の開始部分の前に終了部分を付加し、当該開始部分のフィルタリングを実行してよい。更に、フィルタ56は、オーバーサンプリングされた周波数値の系列の終了部分の後ろに開始部分を付加し、当該終了部分のフィルタリングを実行してよい。これにより、フィルタ56は、周波数値の系列の終了部分から開始部分への位相変化を滑らかにすることができる。そして、フィルタ56は、当該波形生成部44により生成された基本波形データにより表される信号を繰り返して出力した場合、繰返し単位の境界において発生するスプリアスを低減することができる。
位相変化量変換部58は、フィルタ56によりフィルタリングされた周波数値の系列を、位相変化量の系列に変換する。すなわち、位相変化量変換部58は、2πをサンプリング周波数で除算した値(2π/fs)を各周波数値に乗算することにより、位相変化量を算出する。そして、位相変化量変換部58は、算出した位相変化量を順次に出力する。なお、fsは、サンプリング周波数を表す。
累積積分部60は、位相変化量変換部58により出力された位相変化量の系列を、図6の(E)に示されるような位相値の系列に変換する。すなわち、累積積分部60は、順次に出力される位相変化量を累積加算し、各サンプル点における位相を算出する。
なお、変更済データ列は、シンボル数が偶数であり、データ値0とデータ値1との出現頻度の差が4の倍数とされている。従って、累積積分部60により生成された位相値の系列は、図6の(E)に示されるように、初期値(初期位相)と最終値(最終位相)とが2πの整数倍に一致している。
IQ変換部62は、累積積分部60により出力された位相値の系列を、直交座標上のI成分(実数成分)およびQ成分(虚数成分)の系列に変換する。そして、IQ変換部62は、変換したI成分およびQ成分の系列を、基本波形データとして波形メモリ32に書き込む。
このような波形生成部44によれば、変更済データ列をMSK変調した信号に応じた波形であって、初期位相と最終位相とが連続する波形を表す基本波形データを生成することができる。なお、波形生成部44において、フィルタ56は、オーバーサンプル部54の後段に代えて、位相変化量変換部58の後段に設けられてもよい。この場合であっても、フィルタ56は、オーバーサンプル部54の後段に設けられた場合と同様の効果を奏する。
図7は、PN9の擬似ランダム符号が波形生成部44に与えられた場合における、基本波形データに応じた波形のFFT演算結果を示す。図8は、PN9の擬似ランダム符号に基づき生成された変更済データ列が波形生成部44に与えられた場合における、基本波形データに応じた波形のFFT演算結果を示す。なお、図7及び図8は、フィルタ56がBT=0.3のガウスフィルタである場合における、FFT演算結果を示す。
波形生成部44がPN9の擬似ランダム符号をMSK変調した場合、図7に示すように、周波数が−0.25以下の成分および周波数が0.25以上の成分は、レベルが−50dB以上となる。これに対して、波形生成部44が変更済データ列をMSK変調した場合、図8に示すように、周波数が−0.25以下の成分および周波数が0.25以上の成分の範囲は、レベルが−50dBより小さい。このように、波形生成装置30によれば、変更済データ列をMSK変調した場合、MSK変調の周波数範囲(−2.5〜+2.5)より外のスプリアスを、小さくすることができる。
図9は、出力部34の構成の第1例を波形メモリ32とともに示す。出力部34は、一例として、I側DA変換器72と、Q側DA変換器74とを含んでよい。
I側DA変換器72は、波形メモリ32に記憶された基本波形データのI成分の系列をサンプリングレートで順次に読み出して、DA変換してアナログ信号を生成する。そして、I側DA変換器72は、生成したアナログ信号を試験信号としてDUT200に出力する。このようにして、I側DA変換器72は、変更済データ列をMSK変調した信号における実数成分(I(t))を、試験信号としてDUT200に出力することができる。
Q側DA変換器74は、波形メモリ32に記憶された基本波形データのQ成分の系列をサンプリングレートで順次に読み出して、DA変換してアナログ信号を生成する。そして、Q側DA変換器74は、生成したアナログ信号を試験信号としてDUT200に出力する。このようにして、Q側DA変換器74は、変更済データ列をMSK変調した信号における虚数成分(Q(t))を、試験信号としてDUT200に出力することができる。
更に、I側DA変換器72およびQ側DA変換器74のそれぞれは、基本波形データを連続して繰返してDA変換する。これにより、I側DA変換器72およびQ側DA変換器74は、基本波形データにより表された波形を繰り返す試験信号をDUT200に対して出力することができる。
図10は、出力部34の構成の第2例を波形メモリ32とともに示す。出力部34は、一例として、I側DA変換器72と、Q側DA変換器74と、キャリア発生器76と、+90度移相器78と、I側乗算器80と、Q側乗算器82と、加算器84とを含んでよい。なお、第2例に係るI側DA変換器72およびQ側DA変換器74は、図9に示した第1例に係る同一符号の部材と同様の機能および構成であるので以下相違点を除き説明を省略する。
I側DA変換器72は、生成したアナログ信号をI側乗算器80に出力する。Q側DA変換器74は、生成したアナログ信号をQ側乗算器82に出力する。
キャリア発生器76は、予め定められた周波数のキャリア信号を発生する。+90度移相器78は、キャリア発生器76により発生されたキャリア信号を、+90°位相をシフトする。I側乗算器80は、I側DA変換器72から出力された変更済データ列をMSK変調した信号における実数成分(I(t))に、キャリア発生器76により発生されたキャリア信号を乗じる。Q側乗算器82は、Q側DA変換器74から出力された変更済データ列をMSK変調した信号における虚数成分(Q(t))に、キャリア発生器76により発生されたキャリア信号を乗じる。
加算器84は、実数成分(I(t))にキャリア信号を乗じた信号と、虚数成分(Q(t))にキャリア信号を乗じた信号とを加算する。そして、加算器84は、加算した結果得られた信号をDUT200に出力する。このようにして、出力部34は、基本波形データにより表された波形を繰り返す試験信号をキャリア信号に変調した変調信号を、DUT200に対して出力することができる。
図11は、測定部22の構成の第1例を示す。測定部22は、一例として、I側AD変換器92と、Q側AD変換器94と、取込メモリ96と、演算部98とを含んでよい。
第1例において、DUT200は、試験信号が与えられたことに応じて、実数成分(I´(t))および虚数成分(Q´(t))に分離された出力信号を出力する。例えばDUT200が増幅器であれば、当該DUT200は、与えられた試験信号を増幅した信号を、出力信号として出力する。また、DUT200が復調器であれば、当該DUT200は、試験信号が変調された変調信号を復調し、復調した結果得られた信号を出力信号として出力する。
I側AD変換器92は、試験信号に応じてDUT200が出力した出力信号のうちの実数成分(I´(t))をサンプリングする。すなわち、I側AD変換器92は、出力信号の実数成分をサンプリングレートで順次にサンプルしてAD変換し、出力信号の実数成分に応じたデジタル値の系列(I´(n))を出力する。Q側AD変換器94は、試験信号に応じてDUT200が出力した出力信号のうちの虚数成分(Q´(t))をサンプリングする。すなわち、Q側AD変換器94は、出力信号の虚数成分をサンプリングレートで順次にサンプルしてAD変換し、出力信号の虚数成分に応じたデジタル値の系列(Q´(n))を出力する。
また、I側AD変換器92およびQ側AD変換器94は、一例として、波形発生装置20のサンプリングレートに同期したクロックにより出力信号をサンプリングしてよい。これにより、I側AD変換器92およびQ側AD変換器94は、送信側と受信側とのクロック誤差を無くすことができる。
取込メモリ96は、I側AD変換器92およびQ側AD変換器94によりサンプリングされた出力信号を記憶する。演算部98は、取込メモリ96に記憶されている出力信号の系列に基づき、DUT200の特性を算出する。演算部98は、一例として、出力信号のスペクトラム特性の算出、隣接周波数チャネルへの漏洩電力の算出、および、測定周波数範囲外をマスクした測定周波数範囲内の周波数毎の電力の算出を行ってよい。
そして、演算部98は、算出した結果を比較部24に出力する。このようにして、測定部22は、試験信号が与えられたことに応じて出力される出力信号に基づきDUT200の特性を測定することができる。
図12は、測定部22の構成の第2例を示す。測定部22は、一例として、I側AD変換器92と、Q側AD変換器94と、取込メモリ96と、演算部98と、基準信号発生器102と、+90度移相器104と、I側乗算器106と、I側LPF108と、Q側乗算器110と、Q側LPF112とを含んでよい。なお、第2例に係るI側AD変換器92、Q側AD変換器94、取込メモリ96および演算部98は、図11に示した第1例に係る同一符号の部材と同様の機能および構成であるので以下相違点を除き説明を省略する。
第2例において、DUT200は、試験信号が与えられたことに応じて、実数成分(I(t))および虚数成分(Q(t))が直交変調された変調信号を、出力信号として出力する。DUT200が例えば増幅器である場合、当該DUT200は、試験信号が変調された変調信号を増幅した信号を、出力信号として出力する。また、DUT200が例えば変調器である場合、当該DUT200は、与えられた試験信号を変調した変調信号を、出力信号として出力する。
基準信号発生器102は、入力した変調信号のキャリア信号と例えば同じ周波数の基準信号を発生する。+90度移相器104は、基準信号発生器102により発生された基準信号を、+90°位相シフトする。I側乗算器106は、入力された変調信号と基準信号発生器102により発生された基準信号とを乗じる。I側LPF108は、基準信号と変調信号とを乗じた信号をローパスフィルタリングし、和周波成分を除去する。この結果、I側LPF108は、変調信号に直交変調されていた信号の実数成分(I´(t))を出力することができる。
Q側乗算器110は、入力された変調信号と+90度移相器104により出力された+90°位相シフトした基準信号とを乗じる。Q側LPF112は、+90°位相シフトした基準信号と変調信号とを乗じた信号をローパスフィルタリングし、和周波成分を除去する。この結果、Q側LPF112は、変調信号に直交変調されていた信号の虚数成分(Q´(t))を出力することができる。
I側AD変換器92は、I側LPF108から出力された実数成分(I´(t))をサンプリングする。Q側AD変換器94は、Q側LPF112から出力された虚数成分(Q´(t))をサンプリングする。このようにして、測定部22は、試験信号が与えられたことに応じて出力される変調信号に基づきDUT200の特性を測定することができる。
図13は、本実施形態に係る測定部22による測定範囲を示す。測定部22は、一例として、基本波形データに応じた波形の周期(基本周期)の整数倍に対応する時間長の出力信号を試験信号の繰返し波形とは非同期に取得し、取得した出力信号に基づきDUT200の特性を測定してよい。例えば出力信号の電力を測定する場合、測定部22は、基本周期の整数倍に対応する時間長の出力信号を取得し、取得した出力信号に基づき電力を測定してよい。
波形発生装置20から出力された試験信号は基本周期毎に波形が同一となっているので、出力信号のどの位置から基本周期(または基本周期の整数倍の期間)分の信号が抽出された場合であっても、抽出した信号の電力が同一となる。従って、測定部22は、任意の位置から基本周期の整数倍の期間分の信号を抽出し、抽出した信号の電力等の特性を測定することができる。
例えば、基本波形データのサンプリング数が2のべき乗である場合、測定部22は、基本波形データのサンプリング数と同数(または、基本波形データのサンプリング数の2べき乗)のポイント数の出力信号を、任意の位置から取り込んで、FFT演算してスペクトラム算出をしてよい。
これにより、測定部22によれば、試験信号の波形の繰返周期との同期処理を行わずに、出力信号の電力等を測定することができる。例えば、測定部22によれば、FFT演算の演算範囲を定める制御をせずに、出力信号のスペクトラム算出をすることができる。さらに、算出結果が取得位置に影響されないので、測定部22によれば、再現性よく出力信号のスペクトラムを算出することができる。
図14は、本実施形態に係るコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD−ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有するレガシー入出力部とを備える。
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、ネットワークを介して他の装置と通信する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ2060は、CD−ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラムや、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050や、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を波形生成装置30として機能させるプログラムは、データ変更モジュールと、波形生成モジュールとを備える。これらのプログラム又はモジュールは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、データ変更部42および波形生成部44としてそれぞれ機能させる。
以上に示したプログラム又はモジュールは、外部の記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095の他に、DVDやCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークやインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1900に提供してもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。