JPWO2007034832A1 - 弾性表面波素子及び弾性表面波装置 - Google Patents

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Abstract

この弾性表面波素子1は、圧電基板10上に電極指11aを有するIDT電極11を備えている。電極指11aは、中間層12と、中間層12に比べて大きな熱膨張係数を有する電極層13が積層されてなる。電極指11aは、圧電基板10に近づく方向に広がる台形形状となる断面形状を有している。中間層12の側面1の成す角度α1は、電極層13の側面との成す角度β1よりも大きく形成されている。

Description

本発明は、圧電基板上に形成されたIDT電極を有している弾性表面波素子及びそれを搭載した弾性表面波装置に関するものである。
従来より、インターデジタルトランスデューサ電極(Inter Digital Transducer:以下、単にIDT電極という)が圧電基板上に形成されている弾性表面波素子が知られている。このIDT電極は、電気信号と弾性表面波とを相互に変換することができる。弾性表面波素子は、また、IDT電極に加え、IDT電極を挟む位置に反射器電極を配置し、IDT電極で励起した弾性表面波を両側の反射器電極で多重反射させ、エネルギーを閉じ込めることができる。
携帯電話等の移動端末装置に用いられるデュプレクサにおいて、従来では、主に誘電体フィルタが用いられてきていたが、近年では、高性能で小型軽量化が可能な弾性表面波素子を搭載した弾性表面波装置が用いられている。そして、弾性表面波装置の入力レベルは、移動端末装置の段間フィルタ用の10mWレベルから、移動端末装置のデュプレクサで要求される1〜3Wレベルへと、弾性表面波装置の応用範囲の広がりに応じて、広がってきている。このため、移動端末装置のデュプレクサに用いられている弾性表面波装置では、使用周波数帯の上昇に伴い、入力レベルの要求が大きくなる。
一方、近年では、弾性表面波素子の動作周波数が数百MHzから数GHzへ高周波化されている。そして、弾性表面波素子に含まれるIDT電極の線幅は、この高周波化に伴い、周波数に反比例して細くなっている。具体的には、800MHz帯では、IDT電極の電極線幅が約1μm程度であるのに対して、1.9GHz帯では、電極線幅が約0.5μmである。そのため、IDT電極の櫛歯形状に形成されている電極指は、周波数帯の高周波化に伴い、微細な加工が要求される。
上述のように、IDT電極の電極線幅がより細くなってきたことや、デュプレクサに含まれる弾性表面波素子の入力レベルが大きくなってきたことで、GHz帯での弾性表面波素子の耐電力寿命は、800MHz帯の弾性表面波装置に比べて2桁以上短くなってしまう。
また、高周波に対応したIDT電極の細い電極指を用いて、弾性表面波を励振・受信する場合、弾性表面波装置に加わる信号電力が大きくなると、弾性表面波装置の駆動時に弾性表面波によって生じる圧電基板の主面の歪みが発生し、IDT電極の電極指に内部応力が発生する。そして、この内部応力により、電極指にストレスマイグレーション現象が引き起こされ、電極指が破壊され、IDT電極が劣化してしまう。
それに加え、この内部応力を緩和するために、Al(アルミニウム)で形成された電極指内のAl原子が移動(migrate)し、結果として、Al結晶粒界に空孔が集積してしまい、ボイド及び突起(ヒロック)(hillock)が発生する。このため、弾性表面波装置は、弾性表面波の伝搬や共振等の性能に対する特性劣化や電極指の破壊が生じてしまう。
したがって、IDT電極を含んだ弾性表面波素子は、用途の多様化に伴い、高電力の印加に対する耐久性がさらに要求される。そのため、従来のような、AlやAl合金の金属材料が単層で形成された電極指を有するIDT電極に代わって、異なる材料を積層し耐久性を増した電極指を有するIDT電極の開発が進められている。
例えば、特許文献1では、本願の図13に示すように、IDT電極111のストレスマイグレーションの発生を抑制する目的で、Al電極層113と圧電基板110との間に、Ti(チタン)等の材料で形成された中間層112を配置し、それを保護膜(金属膜)114で覆う構造が提案されている。
また、特許文献2は、第1の金属層と第2の金属層とを重ねて構成したIDT電極の構造を開示する。このIDT電極の断面形状は、圧電基板に近い下面のほうが上面より幅の広い台形となっている。
特許文献3は、反射器電極の材料が単一の金属層からなり、その断面形状が台形である反射器の電極構造を開示する。
特許文献4では、台形状の断面を有する第1の金属層と、長方形状の断面を有する第2の金属層とを重ねて構成したIDT電極の構造を開示する。
特開2001−217672号公報 特開2001−168671号公報 特開平3−217109号公報 国際公開第2003/058813A1号パンフレット
ところで、特許文献1でのIDT電極111の構造において、中間層112及び電極層113の側面が、圧電基板110の主面110aに対して、ほぼ垂直に形成されている。この場合、保護膜114を蒸着法等の、回り込みの少ない成膜方法により形成するとき、保護膜114を形成する材料が圧電基板110の主面110aに対してほぼ垂直な方向から入射するので、この電極指111aの側面では、保護膜114は薄く形成されてしまう。このため、保護膜114は、電極指111aの側面に対してのカバレッジを悪くしてしまい、その結果、破断や剥離等のストレスマイグレーションを生じるおそれがある。
また、特許文献2は、材料の異なる2種類の電極層からなり、断面形状が台形のIDT電極を開示するが、2種類の電極層の熱膨張係数が違うために電極層同士の境界面にせん断応力が生じやすくなっている。
特許文献3では、断面形状が台形である反射器の電極構造を開示するにとどまる。
特許文献4も、2種類の電極層の熱膨張係数が違うために電極層同士の境界面にせん断応力が生じた場合、特許文献2と同様、各電極層の破断や剥離を防ぐことができない。
本発明の目的は、複数の導体層を積層している電極指でありながら、これらの導体層の破断や剥離等の発生を抑制できるIDT電極を備えることで、耐久性を高めることができる弾性表面波素子及びそれを搭載した弾性表面波装置を提供することである。
本発明の弾性表面波素子によれば、電極指は、第1の導体層と、この第1の導体層の材料と異なる材料の第2の導体層とを含む複数の導体層が積層されて形成されている。前記第1の導体層は、前記電極指の長手方向に直交する面での断面形状が、圧電基板に近づく方向に広がる台形形状を有しており、前記第2の導体層は、前記電極指の長手方向に直交する面での断面形状が、圧電基板に近づく方向に広がる台形形状を有している。そして、前記第1の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度が、前記第2の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度と異なっている。
この構成によれば、電極指は2層の導体層が積層されており、圧電基板の主面上に形成されている第1の導体層(中間層)と、この第1の導体層上に形成されている第2の導体層(電極層)との導体層で形成されている。この電極指に含まれる第1の導体層及び第2の導体層は、この電極指の長手方向に対して直交する面での断面が、圧電基板の主面に近づくにつれて広く形成されている。つまり、第1の導体層及び第2の導体層は、それぞれ台形形状を有している。
そして、各導体層は、個々に、傾斜角度が異なる台形形状を有することができるので、各導体層を形成する材料の特性(例えば、熱膨張係数)が異なっても、保護膜の破断や剥離等の発生を、より抑制できる。これにより、電極指を複数の導体層で形成しながらも、保護膜の破断や剥離を良好に抑制することができ、弾性表面波素子の耐久性を高めることができる。
なお、前記では、2層の導体層が積層された電極指の例を用いて説明したが、3層以上の導体層が積層された電極指でも、本発明を良好に適用することができる。
前記第2の導体層は、前記第1の導体層に比べて大きな熱膨張係数を有する材料で形成されている場合、前記第1の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度が、前記第2の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度よりも大きく形成されていることが好ましい。
この構成によれば、第1の導体層の熱膨張係数が第2の導体層の熱膨張係数よりも小さいので、第1の導体層に生じる熱膨張の幅は、第2の導体層に生じる熱膨張の幅より小さくなる。ここで、「熱膨張の幅」とは、各導体層の側面にほぼ垂直な方向の伸長の幅を表している。それに加え、第1の導体層の側面の角度が第2の導体層の側面の角度よりも大きく形成されているので、電極指を形成する各導体層の熱膨張の幅の差によるせん断応力(shear stress)を軽減することができる。よって、各導体層の熱膨張の幅における圧電基板の主面に沿う方向への伸長は、各導体層の側面が同じ角度に形成されているときに比べて、その差を軽減することができる。
また、前記第2の導体層は、前記第1の導体層に比べて小さな熱膨張係数を有する材料で形成されている場合、前記第1の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度が、前記第2の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度よりも小さく形成されていてもよい。これにより、電極指を複数の導体層で形成しながらも、電極指表面を覆っている保護膜の破断や剥離等の発生を良好に抑制できるので、弾性表面波素子の耐久性を高めることができる。
また、前記第1の導体層は、前記圧電基板の主面上に接して形成され、前記第2の導体層は前記第1の導体層上に形成され、前記第1の導体層の前記第2の導体層に対向している断面の幅が、前記第2の導体層の前記第1の導体層に対向している断面の幅に比べて、大きく形成されていることが好ましい。この構成によれば、第2の導体層の接合面の方が第1の導体層の接合面に比べて小さく形成されているので、第1の導体層上における第1の導体層の側面から第2の導体層の側面までの領域(段部)に、保護膜を積層することができる。これにより、第2の導体層の熱膨張による伸長が、第1の導体層上にある保護膜により抑制される。よって、第1の導体層と第2の導体層との境界に生じるせん断応力を、さらに抑制することができる。
なお、前記IDT電極の電極指は、保護膜で覆われていてもよい。これにより、電極指を形成する各導体層の剥離を防止することができる。
前記保護膜は、前記電極指を形成する導体層のうちの最も大きな熱膨張係数を有するものに比べて、小さな熱膨張係数を有する材料で形成されていることが好ましい。これにより、保護膜は、第1の導体層や第2の導体層の熱膨張による伸長を抑制することができる。
なお、前記保護膜は、前記IDT電極上にのみ形成されており、Ti,Cr,Nb,Pd,Cu及びNiのうち、少なくとも1種を材料として含んでいてもよい。
本発明の弾性表面波装置は、上述の弾性表面波素子を実装基板に実装したものであり、上述のとおり、信頼性の高いIDT電極を有する。これにより、この弾性表面波装置の寿命が長くなることを期待できる。
以上のように、本発明によれば、IDT電極の電極指に生じるせん断応力を軽減することができる。これにより、弾性表面波素子の温度特性を改善することが可能となる。さらに、ストレスマイグレーションに起因するヒロックやボイドの発生を抑制することができ、高い入力電力に対するIDT電極の破壊が生じにくくなり、弾性表面波素子の耐久性を向上することができる。
本発明における上述の、又はさらに他の利点、特徴及び効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の一実施形態にかかる弾性表面波素子の平面図である。 弾性表面波素子を実装基板に実装した状態を示すA−A線での断面図である。 弾性表面波素子1に含まれるIDT電極の、図1におけるB−B線での要部断面図である。 このIDT電極における1つの電極指の拡大断面図である。 他の実施形態にかかる弾性表面波素子2に含まれるIDT電極の、図1におけるB−B線での要部断面図である。 このIDT電極における1つの電極指の拡大断面図である。 さらに他の実施形態にかかる弾性表面波素子3に含まれるIDT電極の、図1におけるB−B線での要部断面図である。 このIDT電極における1つの電極指の拡大断面図である。 さらに他の実施形態にかかる弾性表面波素子4に含まれるIDT電極の、図1におけるB−B線での要部断面図である。 このIDT電極における1つの電極指の拡大断面図である。 弾性表面波素子1に含まれるIDT電極の電極指上に、絶縁保護膜を形成した状態を示す拡大断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる弾性表面波素子の平面図である。 従来のIDT電極の電極指の拡大断面図である。
符号の説明
1,2,3,4 弾性表面波素子
10,20,30,40 圧電基板
10a,20a,30a,40a 圧電基板の主面
11,21,31,41 IDT電極
11a,21a,31a,41a 電極指
12,22,32,42 中間層
13,23,33,43 電極層
14,24,34,44 保護膜
14b 絶縁保護膜
図1は、本発明の一実施形態にかかるラダー型の弾性表面波素子の平面図である。図2は、弾性表面波素子を実装基板に実装したときのA−A線における断面図である。
弾性表面波素子1は、圧電基板10と、圧電基板10の主面10a上に形成されたIDT電極11とを有している。ここで、「圧電基板10の主面10a」とは、板状の圧電基板10において、IDT電極11が形成されている面のことをいう。
また、弾性表面波素子1は、IDT電極11の信号の伝搬方向(紙面上下方向)に、IDT電極11を挟む位置に、スリット形状を有した反射器電極(以下、反射器ともいう)19を備えている。この反射器19により、IDT電極11で励起した弾性表面波を多重反射させることができ、発生した弾性表面波のエネルギーを閉じ込めることができる。
また、弾性表面波素子1には、圧電基板10の主面10aの、IDT電極11や反射器19を取り囲む位置に、環状電極16が形成されている。それに加え、弾性表面波素子1には、引き出し電極17を介してIDT電極11と接続される配線電極パッド18が形成されている。
弾性表面波素子1は、断面図である図2に示すように、IDT電極11が形成された主面10aを、樹脂製の実装基板90の上面に対向させて、いわゆるフェースダウン方式で載置固定し、例えば、半田などの接合材を介して環状電極16を実装基板90上の対向する環状導体に接合させ、配線電極パッド18を実装基板90上の対向する配線導体に接合させている。これらの接合面は、接合材をリフロー溶融することによって相互に接合される。このリフロー溶融によって、環状電極16と環状導体とが接合された環状電極部91及び配線電極パッド18と配線導体とが接合された配線電極部92が形成される。
このようにして、弾性表面波素子1が実装基板90に載置固定されて、フリップチップ実装されることで、弾性表面波素子1が実装基板90に電気的かつ機械的に接続されてなる弾性表面波装置Sが製造される。
圧電基板10は、38.7°Yカット−X伝搬のLiTaO単結晶、64°Yカット−X伝搬のLiNbO単結晶、45°Xカット−Z伝搬のLiB単結晶等の圧電性を有する材料で形成されている。これにより、圧電基板10は、電気機械結合係数を大きく、かつ、群遅延時間温度係数を小さくすることができる。
また、圧電基板10の厚みは、好ましくは、0.15〜0.5mmである。厚みが0.15mm未満の場合、圧電基板10が脆く破損しやすい。逆に、厚みが0.5mmの場合、材料コストが大きくなる。
圧電基板10の主面10a上に形成されているIDT電極11は、図1に示すように、互いに噛み合うような櫛歯状に形成されている一対の電極指11aを有している。
電極指11aは、好ましくは、各電極指11aの本数が片側あたり50〜200である。各電極指11aの幅は0.1〜10μmである。隣接する電極指11a同士の間隔(ピッチ)は0.1〜10μmである。対向する電極指11a同士の噛み合う長さ(交差幅)は10〜300μmである。そして、IDT電極11は、弾性表面波共振器や弾性表面波フィルタとしての所期の特性を良好に得るために、0.1〜0.6μmの高さ(厚み)を有する。
IDT電極11は、スパッタリング法、蒸着法やCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)等の薄膜形成法を用いて、後述するようにAl−Cu系のAl合金などでできた電極層と、Ti系の中間層とで形成されている。
前記Al合金として、Alに加えられる金属には、Cuがある。またCuとともに、又は、Cuに代えて、Ti,Ta,W,Mo,Mg等の金属が用いられることもある。そして、IDT電極11はフォトリソグラフィ法を用いてパターニングされ、所定の形状となる。
なお、前述したIDT電極11の材料は、複数の電極指を平行に配列したスリット型の形状を有する反射器19にも適用することができる。
また、図1では、弾性表面波素子1として、ラダー型弾性表面波フィルタを示したが、図12で示すDMS型弾性表面波共振器フィルタで構成してもよい。
図12のDMS型弾性表面波共振器フィルタは、図1のラダー型弾性表面波素子1と同様、圧電基板10′と、圧電基板10′の主面10a′上に形成されたIDT電極11′とを有している。これらのIDT電極11′同士は、引き出し配線17′を介して互いに結合されている。また、弾性表面波素子1′は、IDT電極11′の信号の伝搬方向(紙面左右方向)に、IDT電極11′を挟む位置に反射器19′を備えている。弾性表面波素子1′は、圧電基板10′の主面10a′の、IDT電極11′や反射器19′を取り囲む位置に、環状電極16′が形成されている。それに加え、弾性表面波素子1′には、引き出し配線17′を介してIDT電極11′と接続される配線電極パッド18′が形成されている。
以下、IDT電極の構造を図1のラダー型弾性表面波素子1に基づいて説明するが、図12のDMS型弾性表面波共振器フィルタのIDT電極11′の構造も同様であることをあらかじめ断っておく。
図3は、弾性表面波素子1に含まれるIDT電極11の、図1におけるB−B線での要部断面図である。図4は、このIDT電極11における1つの電極指11aの拡大断面図である。
弾性表面波素子1は、IDT電極11として、圧電基板10の主面10a上に、複数の導体層が積層されている電極指11aを備えている。この電極指11aは、保護膜14で覆われている。
電極指11aは、図3に示すように、圧電基板10の主面10a上に形成されている第1の導体層(以下、中間層ともいう)12と、この中間層12上に形成されている第2の導体層(以下、電極層ともいう)13との2層の導体層が積層されている。
中間層12及び電極層13は、図3に示すように、その長手方向に対して直交する面での断面が、圧電基板10の主面10aに近づくにつれて広く形成されている。つまり、中間層12及び電極層13は、その断面において、それぞれ台形形状を有している。
これにより、保護膜14を形成する材料が、回り込みの少ない成膜方法により、圧電基板10の主面10aに対してほぼ垂直な方向から入射して形成されたとしても、電極指11aの側面において、充分な厚さで保護膜14を形成することができるので、保護膜14の破断や剥離を抑制することができる。
中間層12は、Ti(その熱膨張係数をρ12と書く。ρ12=8.9×10−6/K)等の金属材料で形成されている。
電極層13は、中間層12を形成する材料よりも大きな熱膨張係数(その熱膨張係数をρ13と書く)を有するAl合金(例えばρ13=23.5×10−6/KのAl−Cu(Cu:1重量%)合金)等の金属材料で形成されている。
また、電極層13は、それを形成する主成分としてのAlに混入される材料として、Cuとともに、又は、Cuに代えて前述したTi,Ta,W,Mo,Mg等の金属を添加した金属材料で形成することもできる。
また、電極指11aに含まれる2つの導体層である電極層13及び中間層12は、図4に示すように、中間層12の側面と圧電基板10の主面10aとのなす角度α(例えば、65°)が電極層13の側面と圧電基板10の主面10aとのなす角度β(例えば、58°)よりも大きくなるように形成されている(α>β)。これにより、電極指11aの各導体層に生じる応力を分散することができる(詳しくは後述する)。
電極指11aの各導体層の側面の角度は、以下のようにエッチングを行うことで調整することができる。すなわち、電極指11aの各導体層を積層し、その形状をフォトリソグラフィ法の技術を用いてパターニングし、次いで、ドライエッチング法を用いて形成する。このドライエッチング法では、Cl、BCl及びNを反応ガスとして用い、ガス流量、圧力、印加電力、時間等のエッチング条件を調整することで、TiとAl合金とのエッチングレートの違いを利用して、サイドエッチング量(各導体層の側面部のエッチング量)を制御する。これにより、電極指11aの各導体層(中間層12及び電極層13)の側面の角度α,βを調整することができる。具体的には、サイドエッチング量を大きくする、すなわち導体層の側面と圧電基板の主面とのなす角度を小さくするためには、BClのガス濃度を多くし、印加する電力を大きくすることが効果的である。
保護膜14は、電極指11aを保護するために被覆される。保護膜14は、IDT電極11を形成後、CVD法を用いて、IDT電極11上に所定の材料を形成することで成膜される。保護膜14は、CVD法を用いる他には、スパッタリング法や蒸着法等の方法を用いて成膜することもできる。
なお、保護膜14は、導体性を有する材料で形成された導体保護膜、半導体(semiconductor)性を有する材料で形成された半導体膜、あるいは絶縁性を有する材料で形成された絶縁保護膜を用いることができる。
導体保護膜の場合、ここでは、Tiで形成されるものとして説明するが、Tiの他には、Cr、Nb、Pd、Cu及びNi等の金属材料のうち、いずれかを主成分とすることができる。導体保護膜14は、IDT電極11の電極指11a上にのみ形成されている。
また、絶縁保護膜は、二酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁性を有する材料で形成される。半導体膜は、多結晶シリコン等の半導体性を有する材料で形成される。このとき、絶縁保護膜や半導体膜は、電極指11a上のみに形成してもよく、電極指11a上に加え、圧電基板10の主面10a上にも形成することができる。
以下では、弾性表面波素子1における、角度α、βの設定に基づく、各導体層に生じるせん断応力の軽減の機構を説明する。
各導体層(中間層12及び電極層13)の側面付近では、各導体層の熱膨張による応力が、各導体層の側面に対してほぼ垂直な向きで外方向に生じている。図4に示すように、中間層12の側面付近では、熱膨張の幅Aの伸長を生じ、電極層13の側面付近では、熱膨張の幅Bの伸長を生じる。ここで、「熱膨張の幅」とは、各導体層の側面にほぼ垂直な方向の伸長の幅を表しており、導体層の体積、平面方向への幅や熱膨張係数ρ等により規定される。
この例では、中間層12の熱膨張係数ρ12が電極層13の熱膨張係数ρ13よりも小さいので、熱膨張の幅Aは、熱膨張の幅Bよりも小さくなる(A<B)。
よって、中間層12においては、熱膨張の幅Aによる圧電基板10の主面10aに沿う方向に生じる伸長がAsinαとなり、電極層13においては、熱膨張の幅Bによる圧電基板10の主面10aに沿う方向に生じる伸長がBsinβとなる。
ここで、中間層12の側面の角度αが電極層13の側面の角度βよりも大きく形成されている(sinα>sinβ)ので、各導体層における圧電基板10の主面10aに沿う方向に生じる伸長(Asinα、Bsinβ)は、各導体層の側面が同じ角度に形成されているときに比べて、その差を軽減することができる。
したがって、各導体層の側面がなす角度を、その導体層が有する熱膨張係数に応じて調整することで、中間層12と電極層13との境界面に生じるせん断応力を軽減することができ、結果として、保護膜14の破断や剥離を抑制することができる。
ところで、中間層12の側面のなす角度αは、80度を超えない角度を有することが好ましい。この角度が80度を超えない範囲の値をとることで、保護膜14は、例えば、蒸着等の回り込みの少ない成膜方法を用いて形成されたときでも、電極指11aの側面の圧電基板10の主面10aに近い部分まで、充分な厚さを有することができ、中間層12及び電極層13に対して良好な密着性を有するものとなる。
また、中間層12と電極層13とのなす角度の差(α−β)は、好ましくは10°から20°の範囲であり、より好ましくは15°である。これにより、このとき、保護膜14は、中間層12及び電極層13に対して良好な密着性を有するものとなる。
次に、本発明の他の実施形態にかかる弾性表面波素子について説明する。なお、以下の説明での弾性表面波素子2,3,4(圧電基板20,30,40、その主面20a,30a,40a、IDT電極21,31,41を含む)は、特に言及をしない部分において、図1の弾性表面波素子1(圧電基板10、その主面10a、IDT電極11を含む)や図12の弾性表面波素子1′(圧電基板10′、その主面10a′、IDT電極11′を含む)と同様の構造を有するものとする。
図5は、他の実施形態にかかる弾性表面波素子2に含まれるIDT電極21の、図1におけるB−B線での要部断面図であり、図6は、このIDT電極21における1つの電極指21aの拡大断面図である。
弾性表面波素子2は、IDT電極21として、圧電基板20の主面20a上に、複数の導体層が積層されている電極指21aを備えている。この電極指21aは、保護膜24で覆われている。
電極指21aは、図5に示すように、圧電基板20の主面20a上に形成されている第1の導体層である中間層22と、この中間層22上に形成されている第2の導体層である電極層23との2層の導体層が積層されている。電極指21aに含まれる中間層22及び電極層23は、図5に示すように、その長手方向に対して直交する面での断面が、圧電基板20の主面20aに近づくにつれて広く形成されている。つまり、中間層22及び電極層23は、その断面において、それぞれ台形形状を有している。
中間層22は、AlにCuやMg等の金属材料を含有したAl合金(その熱膨張係数をρ22と書くと、ρ22=23.5×10−6/KのAl−Cu(Cu:1重量%)合金)等の金属材料で形成されている。
電極層23は、中間層22を形成する材料よりも小さな熱膨張係数ρ23を有するTa(その熱膨張係数をρ23と書くと、熱膨張係数ρ23=6.6×10−6/K)等の金属材料で形成されている。
電極指21aを形成する2つの導体層は、図6に示すように、中間層22の側面と圧電基板20の主面20aとのなす角度α(例えば、60°)が電極層23の側面と圧電基板20の主面20aとのなす角度β(例えば、75°)よりも小さくなるように形成されている(α<β)。
保護膜24は、電極指21aを保護するために備えられている。保護膜24は、保護膜14と同様、IDT電極21を形成後、CVD法を用いて、IDT電極21上に所定の材料を形成することで成膜される。
中間層22の側面付近では、熱膨張の幅Aの伸長を生じ、電極層23の側面付近では、熱膨張の幅Bの伸長を生じる。このとき、中間層22の熱膨張係数ρ22が電極層23の熱膨張係数ρ23よりも大きいので、熱膨張の幅Aは、熱膨張の幅Bより大きくなる(A>B)。
よって、中間層22においては、熱膨張の幅Aによる圧電基板20の主面20aに沿う方向に生じる伸長がAsinαとなり、電極層23においては、熱膨張の幅Bによる圧電基板20の主面20aに沿う方向に生じる伸長がBsinβとなる。中間層22の側面の角度αが電極層23の側面の角度βよりも小さく形成されている(sinα<sinβ)ので、各導体層における圧電基板20の主面20aに沿う方向に生じる伸長(Asinα、Bsinβ)は、各導体層の側面が同じ角度に形成されているときに比べて、その差を軽減することができる。
したがって、その導体層が有する熱膨張係数に応じて、各導体層の側面がなす角度を調整することで、中間層22と電極層23との境界面に生じるせん断応力を軽減することができ、結果として、保護膜24の破断や剥離を防ぐことができる。
なお中間層22の側面のなす角度αは、45°から80°の範囲の角度であることが好ましい。さらに好ましくは60°から80°の範囲である。
高周波フィルタの電極パターンが微細化され、電極指21a上の微細な質量(mass)差が重要になってくる。この質量差とは、圧電基板20上の電極薄膜の形状に基づく電極の質量差を意味する。ここでは、IDT電極21の形状、つまりIDT電極21を形成する電極指21aの質量が、弾性表面波の励振に影響する。このことは、「質量効果」と呼ばれるもので、弾性表面波の周波数特性に影響を及ぼし、これらの特性における中心周波数が、電極薄膜の質量(形状、特に、線幅や膜厚)により所望の値からずれるおそれがある。中間層22の側面のなす角度αが45度を超える角度であれば、上述の質量効果を軽減することができ、当該周波数特性の設計値が実測値と大きく異なることが少ないので、安定した歩留まりを得ることができる。
また、中間層22と電極層23とのなす角度の差(α−β)は、好ましくは10°から20°の範囲であり、より好ましくは15°である。このとき、保護膜24は、中間層22及び電極層23に対して良好な密着性を有するものとなる。
図7は、さらに他の実施形態にかかる弾性表面波素子3に含まれるIDT電極31の、図1におけるB−B線での要部断面図である。図8は、このIDT電極31における1つの電極指31aの拡大断面図である。
弾性表面波素子3は、IDT電極31として、圧電基板30の主面30a上に、複数の導体層が積層された電極指31aを備えている。この電極指31aは、保護膜34で覆われている。
電極指31aは、図7に示すように、圧電基板30の主面30a上に形成されている中間層32と、この中間層32上に形成されている電極層33との2層の導体層が積層されている。
電極指31aに含まれる中間層32及び電極層33は、図7に示すように、その長手方向に対して直交する面での断面が、圧電基板30の主面30aに近づくにつれて広く形成されている。つまり、中間層32及び電極層33は、その断面において、それぞれ台形形状を有している。
電極指31aにおける電極層33の下面、すなわち中間層32との接合面33aは、中間層32の接合面32aをはみ出すことがなく、中間層32の接合面32aの中に含まれる。
中間層32が電極層33に対向している接合面32aの断面の幅Lは、図8に示すように、電極層33が中間層32に対向している接合面33aの断面の幅Lに比べて、大きくなるように形成されている。
そのため、電極指31aは、中間層32の側面と電極層33の側面との間に、中間層32の接合面32a上に直接保護膜34が形成されうる領域として、縦断面形状がL字形状であって幅Rを有する段部32bを左右に有している。この段部32bでは、中間層32の接合面32a上に直接、保護膜34が形成される。なお、このような段部は、例えば、電極指をエッチングする際に、エッチングする時間を長くしてオーバーエッチングを行うことによって、中間層が電極層に対向している接合面の断面の幅Lを、電極層が中間層に対向している接合面の断面の幅L2よりも長くすることができる。
中間層32は、Ti(その熱膨張係数をρ32と書くと、ρ32=8.9×10−6/K)等の金属材料で形成されている。
電極層33は、中間層32を形成する材料よりも大きな熱膨張係数ρ33を有するAl合金(その熱膨張係数をρ33と書くと、ρ33=23.5×10−6/KのAl−Cu(Cu:1重量%)合金)等の金属材料で形成されている。
電極指31aを形成する2つの導体層は、図8に示すように、中間層32の側面と圧電基板30の主面30aとのなす角度α(例えば、65°)が電極層33の側面と圧電基板30の主面30aとのなす角度β(例えば、58°)よりも大きくなるように形成されている(α>β)。
電極指31aに生じるせん断応力は、上述のように、中間層32の側面の角度αが電極層33の側面の角度βよりも大きく形成されているので、各導体層の側面が同じ角度に形成されているときに比べて、その差を軽減することができる。
これにより、その導体層が有する熱膨張係数に応じて、各導体層の側面がなす角度を調整することで、中間層32と電極層33との境界面に生じるせん断応力を軽減することができ、結果として、保護膜34の破断や剥離を防ぐことができる。
保護膜34は、IDT電極31を形成する各導体層(中間層32及び電極層33)の熱膨張係数ρ32,ρ33のうちの最も大きな熱膨張係数(この場合ρ33)に比べて小さな熱膨張係数を有する材料で形成されている。これにより、電極層33の熱膨張による伸長が、段部32b上にある保護膜34により抑制される。よって、中間層32と電極層33との境界に生じるせん断応力をさらに抑制することができる。また、保護膜34の密着性を向上することができる。
図9は、さらに他の実施形態にかかるIDT電極41の、図1におけるB−B線での要部断面図である。図10は、このIDT電極41における1つの電極指41aの拡大断面図である。
弾性表面波素子4は、IDT電極41として、圧電基板40の主面40a上に、複数の導体層が積層されている電極指41aを備えている。この電極指41aは、保護膜44で覆われている。
電極指41aは、図9に示すように、圧電基板40の主面40a上に形成されている中間層42と、この中間層42上に形成されている電極層43との2層の導体層が、交互に、合計4層、積層されている。
電極指41aに含まれる中間層42及び電極層43は、その長手方向に対して直交する面での断面が、圧電基板40の主面40aに近づくにつれて広く形成されている。つまり、中間層42及び電極層43は、それぞれ台形形状を有している。
電極指41aにおける中間層42が電極層43に対向している接合面42aの断面の幅は、図10に示すように、電極層43が中間層42に対向している接合面43aの断面の幅に比べて、大きく形成されている。そのため、電極指41aは、中間層42の側面と電極層43の側面との間に、中間層42の接合面42a上に直接、保護膜44が形成されうる領域として、縦断面形状がL字形状であって幅Rを有する段部42bを左右に有している。なお、このような段部は、例えば、電極指をエッチングする際に、エッチングする時間を長くしてオーバーエッチングを行うことによって、中間層が電極層に対向している接合面の断面の幅を、電極層が中間層に対向している接合面の断面の幅よりも長くすることができる。
中間層42は、Ti(その熱膨張係数をρ42と書くと、ρ42=8.9×10−6/K)等の金属材料で形成されている。
電極層43は、中間層42を形成する材料よりも大きな熱膨張係数を有するAl合金(その熱膨張係数をρ42と書くと、ρ42=23.5×10−6/KのAl−Cu(Cu:1重量%)合金)等の金属材料で形成されている。
電極指41aを形成する複数の導体層は、図10に示すように、中間層42の側面と圧電基板40の主面40aとのなす角度α(例えば、74°)が電極層43の側面と圧電基板40の主面40aとのなす角度β(例えば、60°)よりも大きくなるように形成されている(α>β)。
保護膜44は、IDT電極41を形成する各導体層42及び43の熱膨張係数ρ42,ρ43のうちの最も大きな熱膨張係数(この場合ρ43)よりも小さな熱膨張係数を有する材料で形成されている。
電極指41aに生じるせん断応力は、上述のように、中間層42の側面の角度αが電極層43の側面の角度βよりも大きく形成されているので、各導体層の側面が同じ角度に形成されているときに比べて、その差を軽減することができる。それに加え、電極層43の接合面43aの断面の幅が、中間層42の接合面42aの断面の幅に比べて、小さく形成されているので、段部42bに積層されている保護膜44は、電極層43の熱膨張による伸長を抑制することができる。これにより、中間層42と電極層43との境界に生じるせん断応力を軽減することができ、結果として、保護膜44の破断や剥離を防止することができる。
また、段部42bでは、中間層42の接合面42a上に直接保護膜44が形成されているので、中間層42よりも大きな熱膨張係数ρ43を有する電極層43の、圧電基板40の主面40a方向への伸長を抑制することができる。
また、本実施形態では、電極指41aが3層以上の導体層で形成されているので、電極指41aの耐久性をさらに増すことができる。
なお、上述の弾性表面波素子1では、IDT電極上にのみ導体保護膜を形成する実施形態を説明したが、図11に示すように、電極指11aの導体保護膜の上面に、さらに絶縁保護膜14bを形成するか、または導体保護膜に代えて絶縁保護膜14bを形成することができる。これにより、IDT電極11を保護しながらも、電極指11aと圧電基板10との密着性を高めることができる。絶縁保護膜14bを形成する場合、絶縁保護膜14bは、圧電基板10の主面上にも形成されていてもよい。もちろん、弾性表面波素子2,3,4においても、同様に、IDT電極21,31,41上に絶縁保護膜を形成することができる。
<実施例1>
図3、図4に示される弾性表面波素子1を製造した。圧電基板10には、圧電性を有する材料として、LiTaO単結晶で形成された基板を用いた。
スパッタリング法を用いて、圧電基板10上に中間層12としてTiを堆積(deposit)し、中間層12上に電極層13として、AlにCuを含有したAl−Cu(Cu:1重量%)合金を堆積した。膜厚はTiが18nm、Al−Cu合金が402nmであった。
IDT電極11及び反射器19は、その形状をフォトリソグラフィ法の技術を用いてパターニングし、次いで、ドライエッチング法を用いて形成した。
ドライエッチング法では、Cl、BCl及びNを反応ガスとして用い、ガス流量、圧力、印加電力等のエッチング条件を調整することによって、TiとAl−Cu合金とのエッチング選択比を調整した。
すなわち、ガス流量、圧力、印加電力、時間等のエッチング条件を調整して、TiとAl−Cu合金とのエッチングレートの違いにより、サイドエッチング量を制御して傾斜角α,βを調整した。具体的には、用いたRIE装置はICP(Inductive Coupled Plasma)−RIE装置であり、エッチング条件は、ガス流量BClが20sccm、Clが20sccm、Nが10sccmであり、圧力1.0Pa、バイアスパワー60W、であり、加工に要したエッチング時間は約60秒である。
このときの電極指11aの側面の角度は、圧電基板10の主面10aを基準とするとき、中間層12の有する角度αが65度であり、電極層13の有する角度βが58度であった。
次に、中間層12及び電極層13を形成した後、ドライエッチング時に用いたマスクを使って、保護膜14となる金属層(Ti)を、スパッタリング法により形成した。
このようにして作製した弾性表面波素子1に高周波をかけても、また、環境温度を変化しても、保護膜14の剥離は生じなかった。また、弾性表面波素子1のウェハ面内およびウェハ間の歩留まりは高いものが得られた。
<実施例2>
図5、図6に示される弾性表面波素子2を製作した。圧電基板20には、圧電性を有する材料として、LiTaO単結晶で形成された基板を用いた。
まずスパッタリング法を用いて、圧電基板20上に中間層22としてAl−Cu(Cu:1重量%)合金を堆積し、中間層22上に電極層23としてTiを堆積した。膜厚はAl−Cuが402nm、Al−Cu合金が18nmであった。
IDT電極21及び反射器(図示せず)は、その形状をフォトリソグラフィ法の技術を用いてパターニングし、次いで、ドライエッチング法を用いて形成した、このとき、中間層22及び電極層23のエッチング選択比を調整した。また、このドライエッチング法を用いて、電極指21aに含まれるそれぞれの導体層の側面と圧電基板20の主面20aとのなす角度が、設計した角度となるように調整した。エッチング条件は、ガス流量BClが20sccm、Clが20sccm、Nが20sccmであり、圧力1.0Pa、バイアスパワー60W、であり、加工に要したエッチング時間は約60秒である。
このとき、電極指21aの側面の角度は、圧電基板20の主面20aを基準としたとき、中間層22の有する角度αが60度であり、電極層23の有する角度βが75度であった。
次に、中間層22及び電極層23を形成した後、保護膜24を、スパッタリング法を用いてSiOで形成した。そしてドライエッチング法により、保護膜34の不要な部分を削り取った。
このようにして作製した弾性表面波素子2に高周波をかけても、また、環境温度を変化しても、保護膜24の剥離は生じなかった。
<実施例3>
図7、図8に示される弾性表面波素子3を製造した。圧電基板30には、圧電性を有する材料として、LiTaO単結晶で形成された基板を用いた。
次にスパッタリング法を用いて、圧電基板30上に中間層32としてTiを堆積し、中間層32上に電極層33としてAl−Cu(Cu:1重量%)合金を堆積した。膜厚はTiが18nm、Al−Cu合金が402nmであった。
IDT電極31及び反射器(図示せず)は、その形状をフォトリソグラフィ法の技術を用いてパターニングし、次いで、ドライエッチング法を用いて形成した。ドライエッチング法では、Cl、BCl及びNを反応ガスとして用い、ガス流量、圧力、印加電力等のエッチング条件を調整することによって、中間層32及び電極層33のエッチング選択比を調整した。また、このドライエッチング法を用いて、電極指31aに含まれるそれぞれの導体層の側面と圧電基板30の主面30aとのなす角度が、設計した角度となるように調整した。エッチング条件は、ガス流量BClが20sccm、Clが20sccm、Nが10sccmであり、圧力1.0Pa、バイアスパワー60W、であり、加工に要したエッチング時間は約70秒である。
このとき、電極指31aの側面の角度は、圧電基板30の主面30aを基準とするとき、中間層32の有する角度αが65度であり、電極層33の有する角度βが58度であった。
また、電極指31aのエッチングの際に、オーバーエッチングをすることによって、電極層33の接合面33aの断面での幅を、中間層32の接合面32aの断面での幅よりも左右各8nm短くした(図8のR参照)。
次に、中間層32及び電極層33を形成した後、フォトリソグラフィにてパターニングし、スパッタリングを用いて、保護膜34をSiOで形成した。そしてドライエッチング法により、保護膜34の不要な部分を削り取った。
このようにして作製した弾性表面波素子3に高周波をかけても、また、環境温度を変化しても、保護膜34の剥離は生じなかった。
<実施例4>
図9、図10に示される弾性表面波素子4を製造した。圧電基板40には、圧電性を有する材料として、LiTaO単結晶で形成された基板を用いた。
まずスパッタリング法を用いて、圧電基板40上に中間層42となるTiを堆積し、中間層42上に電極層43となるAl−Cu(Cu:1重量%)合金を堆積した。このようにして、圧電基板40の主面40a上に、中間層42と電極層43とを交互に4層、積層させた。膜厚は1層あたりTiが6nm、Al−Cu合金が130nmであった。
IDT電極41及び反射器(図示せず)は、その形状をフォトリソグラフィ法の技術を用いてパターニングし、次いで、ドライエッチング法を用いて形成した。ドライエッチング法では、Cl、BCl及びNを反応ガスとして用い、ガス流量、圧力、印加電力等のエッチング条件を調整することによって、中間層42及び電極層43のエッチング選択比を調整した。また、このドライエッチング法を用いて、電極指41aに含まれるそれぞれの導体層の側面と圧電基板40の主面40aとのなす角度が、設計した角度となるように調整した。エッチング条件は、ガス流量BClが20sccm、Clが20sccm、Nが10sccmであり、圧力1.0Pa、バイアスパワー60W、であり、加工に要したエッチング時間は約60秒である。
このとき、電極指41aの側面の角度は、圧電基板40の主面40aを基準とするとき、中間層42の有する角度αが74度であり、電極層43の有する角度βが60度であった。
また、電極指41aのエッチングの際に、オーバーエッチングを行うことによって、中間層42の接合面42aの断面での幅を、電極層43の接合面43aの断面での幅よりも左右各16nm長くした(図10のR参照)。
次に、中間層42及び電極層43を形成した後、フォトリソグラフィにてパターニングし、スパッタリングを用いて、保護膜44を、SiOで形成した。そして、保護膜44を形成した後、ドライエッチング法により、IDT電極41を形成した。
このようにして製造した弾性表面波素子4に高周波をかけても、また、環境温度を変化しても保護膜44の剥離は生じなかった。
本発明は、圧電基板上に形成されたIDT電極を有している弾性表面波素子及びそれを搭載した弾性表面波装置に関するものである。
従来より、インターデジタルトランスデューサ電極(Inter Digital Transducer:以下、単にIDT電極という)が圧電基板上に形成されている弾性表面波素子が知られている。このIDT電極は、電気信号と弾性表面波とを相互に変換することができる。弾性表面波素子は、また、IDT電極に加え、IDT電極を挟む位置に反射器電極を配置し、IDT電極で励起した弾性表面波を両側の反射器電極で多重反射させ、エネルギーを閉じ込めることができる。
携帯電話等の移動端末装置に用いられるデュプレクサにおいて、従来では、主に誘電体フィルタが用いられてきていたが、近年では、高性能で小型軽量化が可能な弾性表面波素子を搭載した弾性表面波装置が用いられている。そして、弾性表面波装置の入力レベルは、移動端末装置の段間フィルタ用の10mWレベルから、移動端末装置のデュプレクサで要求される1〜3Wレベルへと、弾性表面波装置の応用範囲の広がりに応じて、広がってきている。このため、移動端末装置のデュプレクサに用いられている弾性表面波装置では、使用周波数帯の上昇に伴い、入力レベルの要求が大きくなる。
一方、近年では、弾性表面波素子の動作周波数が数百MHzから数GHzへ高周波化されている。そして、弾性表面波素子に含まれるIDT電極の線幅は、この高周波化に伴い、周波数に反比例して細くなっている。具体的には、800MHz帯では、IDT電極の電極線幅が約1μm程度であるのに対して、1.9GHz帯では、電極線幅が約0.5μmである。そのため、IDT電極の櫛歯形状に形成されている電極指は、周波数帯の高周波化に伴い、微細な加工が要求される。
上述のように、IDT電極の電極線幅がより細くなってきたことや、デュプレクサに含まれる弾性表面波素子の入力レベルが大きくなってきたことで、GHz帯での弾性表面波素子の耐電力寿命は、800MHz帯の弾性表面波装置に比べて2桁以上短くなってしまう。
また、高周波に対応したIDT電極の細い電極指を用いて、弾性表面波を励振・受信する場合、弾性表面波装置に加わる信号電力が大きくなると、弾性表面波装置の駆動時に弾性表面波によって生じる圧電基板の主面の歪みが発生し、IDT電極の電極指に内部応力が発生する。そして、この内部応力により、電極指にストレスマイグレーション現象が引き起こされ、電極指が破壊され、IDT電極が劣化してしまう。
それに加え、この内部応力を緩和するために、Al(アルミニウム)で形成された電極指内のAl原子が移動(migrate)し、結果として、Al結晶粒界に空孔が集積してしまい、ボイド及び突起(ヒロック)(hillock)が発生する。このため、弾性表面波装置は、弾性表面波の伝搬や共振等の性能に対する特性劣化や電極指の破壊が生じてしまう。
したがって、IDT電極を含んだ弾性表面波素子は、用途の多様化に伴い、高電力の印加に対する耐久性がさらに要求される。そのため、従来のような、AlやAl合金の金属材料が単層で形成された電極指を有するIDT電極に代わって、異なる材料を積層し耐久性を増した電極指を有するIDT電極の開発が進められている。
例えば、特許文献1では、本願の図13に示すように、IDT電極111のストレスマイグレーションの発生を抑制する目的で、Al電極層113と圧電基板110との間に、Ti(チタン)等の材料で形成された中間層112を配置し、それを保護膜(金属膜)114で覆う構造が提案されている。
また、特許文献2は、第1の金属層と第2の金属層とを重ねて構成したIDT電極の構造を開示する。このIDT電極の断面形状は、圧電基板に近い下面のほうが上面より幅の広い台形となっている。
特許文献3は、反射器電極の材料が単一の金属層からなり、その断面形状が台形である反射器の電極構造を開示する。
特許文献4では、台形状の断面を有する第1の金属層と、長方形状の断面を有する第2の金属層とを重ねて構成したIDT電極の構造を開示する。
特開2001−217672号公報 特開2001−168671号公報 特開平3−217109号公報 国際公開第2003/058813A1号パンフレット
ところで、特許文献1でのIDT電極111の構造において、中間層112及び電極層113の側面が、圧電基板110の主面110aに対して、ほぼ垂直に形成されている。この場合、保護膜114を蒸着法等の、回り込みの少ない成膜方法により形成するとき、保護膜114を形成する材料が圧電基板110の主面110aに対してほぼ垂直な方向から入射するので、この電極指111aの側面では、保護膜114は薄く形成されてしまう。このため、保護膜114は、電極指111aの側面に対してのカバレッジを悪くしてしまい、その結果、破断や剥離等のストレスマイグレーションを生じるおそれがある。
また、特許文献2は、材料の異なる2種類の電極層からなり、断面形状が台形のIDT電極を開示するが、2種類の電極層の熱膨張係数が違うために電極層同士の境界面にせん断応力が生じやすくなっている。
特許文献3では、断面形状が台形である反射器の電極構造を開示するにとどまる。
特許文献4も、2種類の電極層の熱膨張係数が違うために電極層同士の境界面にせん断応力が生じた場合、特許文献2と同様、各電極層の破断や剥離を防ぐことができない。
本発明の目的は、複数の導体層を積層している電極指でありながら、これらの導体層の破断や剥離等の発生を抑制できるIDT電極を備えることで、耐久性を高めることができる弾性表面波素子及びそれを搭載した弾性表面波装置を提供することである。
本発明の弾性表面波素子によれば、電極指は、第1の導体層と、この第1の導体層の材料と比べて小さな熱膨張係数を有する材料で形成された第2の導体層とを含む複数の導体層が積層されて形成されている。前記第1の導体層は、前記電極指の長手方向に直交する面での断面形状が、圧電基板に近づく方向に広がる台形形状を有しており、前記第2の導体層は、前記電極指の長手方向に直交する面での断面形状が、圧電基板に近づく方向に広がる台形形状を有している。そして、前記第1の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度が、前記第2の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度よりも小さく形成されているものである
この構成によれば、電極指は2層の導体層が積層されており、圧電基板の主面上に形成されている第1の導体層(中間層)と、この第1の導体層上に形成されている第2の導体層(電極層)との導体層で形成されている。この電極指に含まれる第1の導体層及び第2の導体層は、この電極指の長手方向に対して直交する面での断面が、圧電基板の主面に近づくにつれて広く形成されている。つまり、第1の導体層及び第2の導体層は、それぞれ台形形状を有している。
そして、各導体層は、個々に、傾斜角度が異なる台形形状を有することができるので、各導体層を形成する材料の特性(例えば、熱膨張係数)が異なっても、保護膜の破断や剥離等の発生を、より抑制できる。これにより、電極指を複数の導体層で形成しながらも、保護膜の破断や剥離を良好に抑制することができ、弾性表面波素子の耐久性を高めることができる。
なお、前記では、2層の導体層が積層された電極指の例を用いて説明したが、3層以上の導体層が積層された電極指でも、本発明を良好に適用することができる。
本発明によれば、前記第2の導体層は、前記第1の導体層に比べて小さな熱膨張係数を有する材料で形成されており、前記第1の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度が、前記第2の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度よりも小さく形成されている。
この構成によれば、第1の導体層の熱膨張係数が第2の導体層の熱膨張係数よりも大きいので、第1の導体層に生じる熱膨張の幅は、第2の導体層に生じる熱膨張の幅より大きくなる。ここで、「熱膨張の幅」とは、各導体層の側面にほぼ垂直な方向の伸長の幅を表している。それに加え、第1の導体層の側面の角度が第2の導体層の側面の角度よりも小さく形成されているので、電極指を形成する各導体層の熱膨張の幅の差によるせん断応力(shear stress)を軽減することができる。よって、各導体層の熱膨張の幅における圧電基板の主面に沿う方向への伸長は、各導体層の側面が同じ角度に形成されているときに比べて、その差を軽減することができる。
れにより、電極指を複数の導体層で形成しながらも、電極指表面を覆っている保護膜の破断や剥離等の発生を良好に抑制できるので、弾性表面波素子の耐久性を高めることができる。
また、本発明にかかる他の弾性表面波素子によれば、前記第1の導体層は、前記圧電基板の主面上に接して形成され、前記第2の導体層は前記第1の導体層上に形成され、前記第1の導体層の前記第2の導体層に対向している断面の幅が、前記第2の導体層の前記第1の導体層に対向している断面の幅に比べて、大きく形成されている。この構成によれば、第2の導体層の接合面の方が第1の導体層の接合面に比べて小さく形成されているので、第1の導体層上における第1の導体層の側面から第2の導体層の側面までの領域(段部)に、保護膜を積層することができる。これにより、第2の導体層の熱膨張による伸長が、第1の導体層上にある保護膜により抑制される。よって、第1の導体層と第2の導体層との境界に生じるせん断応力を、さらに抑制することができる。
なお、前記IDT電極の電極指は、保護膜で覆われていてもよい。これにより、電極指を形成する各導体層の剥離を防止することができる。
前記保護膜は、前記電極指を形成する導体層のうちの最も大きな熱膨張係数を有するものに比べて、小さな熱膨張係数を有する材料で形成されていることが好ましい。これにより、保護膜は、第1の導体層や第2の導体層の熱膨張による伸長を抑制することができる。
なお、前記保護膜は、前記IDT電極上にのみ形成されており、Ti,Cr,Nb,Pd,Cu及びNiのうち、少なくとも1種を材料として含んでいてもよい。
本発明の弾性表面波装置は、上述の弾性表面波素子を実装基板に実装したものであり、上述のとおり、信頼性の高いIDT電極を有する。これにより、この弾性表面波装置の寿命が長くなることを期待できる。
以上のように、本発明によれば、IDT電極の電極指に生じるせん断応力を軽減することができる。これにより、弾性表面波素子の温度特性を改善することが可能となる。さらに、ストレスマイグレーションに起因するヒロックやボイドの発生を抑制することができ、高い入力電力に対するIDT電極の破壊が生じにくくなり、弾性表面波素子の耐久性を向上することができる。
図1は、本発明の一実施形態にかかるラダー型の弾性表面波素子の平面図である。図2は、弾性表面波素子を実装基板に実装したときのA−A線における断面図である。
弾性表面波素子1は、圧電基板10と、圧電基板10の主面10a上に形成されたIDT電極11とを有している。ここで、「圧電基板10の主面10a」とは、板状の圧電基板10において、IDT電極11が形成されている面のことをいう。
また、弾性表面波素子1は、IDT電極11の信号の伝搬方向(紙面上下方向)に、IDT電極11を挟む位置に、スリット形状を有した反射器電極(以下、反射器ともいう)19を備えている。この反射器19により、IDT電極11で励起した弾性表面波を多重反射させることができ、発生した弾性表面波のエネルギーを閉じ込めることができる。
また、弾性表面波素子1には、圧電基板10の主面10aの、IDT電極11や反射器19を取り囲む位置に、環状電極16が形成されている。それに加え、弾性表面波素子1には、引き出し電極17を介してIDT電極11と接続される配線電極パッド18が形成されている。
弾性表面波素子1は、断面図である図2に示すように、IDT電極11が形成された主面10aを、樹脂製の実装基板90の上面に対向させて、いわゆるフェースダウン方式で載置固定し、例えば、半田などの接合材を介して環状電極16を実装基板90上の対向する環状導体に接合させ、配線電極パッド18を実装基板90上の対向する配線導体に接合させている。これらの接合面は、接合材をリフロー溶融することによって相互に接合される。このリフロー溶融によって、環状電極16と環状導体とが接合された環状電極部91及び配線電極パッド18と配線導体とが接合された配線電極部92が形成される。
このようにして、弾性表面波素子1が実装基板90に載置固定されて、フリップチップ実装されることで、弾性表面波素子1が実装基板90に電気的かつ機械的に接続されてなる弾性表面波装置Sが製造される。
圧電基板10は、38.7°Yカット−X伝搬のLiTaO単結晶、64°Yカット−X伝搬のLiNbO単結晶、45°Xカット−Z伝搬のLiB単結晶等の圧電性を有する材料で形成されている。これにより、圧電基板10は、電気機械結合係数を大きく、かつ、群遅延時間温度係数を小さくすることができる。
また、圧電基板10の厚みは、好ましくは、0.15〜0.5mmである。厚みが0.15mm未満の場合、圧電基板10が脆く破損しやすい。逆に、厚みが0.5mmの場合、材料コストが大きくなる。
圧電基板10の主面10a上に形成されているIDT電極11は、図1に示すように、互いに噛み合うような櫛歯状に形成されている一対の電極指11aを有している。
電極指11aは、好ましくは、各電極指11aの本数が片側あたり50〜200である。各電極指11aの幅は0.1〜10μmである。隣接する電極指11a同士の間隔(ピッチ)は0.1〜10μmである。対向する電極指11a同士の噛み合う長さ(交差幅)は10〜300μmである。そして、IDT電極11は、弾性表面波共振器や弾性表面波フィルタとしての所期の特性を良好に得るために、0.1〜0.6μmの高さ(厚み)を有する。
IDT電極11は、スパッタリング法、蒸着法やCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)等の薄膜形成法を用いて、後述するようにAl−Cu系のAl合金などでできた電極層と、Ti系の中間層とで形成されている。
前記Al合金として、Alに加えられる金属には、Cuがある。またCuとともに、又は、Cuに代えて、Ti,Ta,W,Mo,Mg等の金属が用いられることもある。そして、IDT電極11はフォトリソグラフィ法を用いてパターニングされ、所定の形状となる。
なお、前述したIDT電極11の材料は、複数の電極指を平行に配列したスリット型の形状を有する反射器19にも適用することができる。
また、図1では、弾性表面波素子1として、ラダー型弾性表面波フィルタを示したが、図12で示すDMS型弾性表面波共振器フィルタで構成してもよい。
図12のDMS型弾性表面波共振器フィルタは、図1のラダー型弾性表面波素子1と同様、圧電基板10′と、圧電基板10′の主面10a′上に形成されたIDT電極11′とを有している。これらのIDT電極11′同士は、引き出し配線17′を介して互いに結合されている。また、弾性表面波素子1′は、IDT電極11′の信号の伝搬方向(紙面左右方向)に、IDT電極11′を挟む位置に反射器19′を備えている。弾性表面波素子1′は、圧電基板10′の主面10a′の、IDT電極11′や反射器19′を取り囲む位置に、環状電極16′が形成されている。それに加え、弾性表面波素子1′には、引き出し配線17′を介してIDT電極11′と接続される配線電極パッド18′が形成されている。
以下、IDT電極の構造を図1のラダー型弾性表面波素子1に基づいて説明するが、図12のDMS型弾性表面波共振器フィルタのIDT電極11′の構造も同様であることをあらかじめ断っておく。
図3は、弾性表面波素子1に含まれるIDT電極11の、図1におけるB−B線での要部断面図である。図4は、このIDT電極11における1つの電極指11aの拡大断面図である。
弾性表面波素子1は、IDT電極11として、圧電基板10の主面10a上に、複数の導体層が積層されている電極指11aを備えている。この電極指11aは、保護膜14で覆われている。
電極指11aは、図3に示すように、圧電基板10の主面10a上に形成されている第1の導体層(以下、中間層ともいう)12と、この中間層12上に形成されている第2の導体層(以下、電極層ともいう)13との2層の導体層が積層されている。
中間層12及び電極層13は、図3に示すように、その長手方向に対して直交する面での断面が、圧電基板10の主面10aに近づくにつれて広く形成されている。つまり、中間層12及び電極層13は、その断面において、それぞれ台形形状を有している。
これにより、保護膜14を形成する材料が、回り込みの少ない成膜方法により、圧電基板10の主面10aに対してほぼ垂直な方向から入射して形成されたとしても、電極指11aの側面において、充分な厚さで保護膜14を形成することができるので、保護膜14の破断や剥離を抑制することができる。
中間層12は、Ti(その熱膨張係数をρ12と書く。ρ12=8.9×10−6/K)等の金属材料で形成されている。
電極層13は、中間層12を形成する材料よりも大きな熱膨張係数(その熱膨張係数をρ13と書く)を有するAl合金(例えばρ13=23.5×10−6/KのAl−Cu(Cu:1重量%)合金)等の金属材料で形成されている。
また、電極層13は、それを形成する主成分としてのAlに混入される材料として、Cuとともに、又は、Cuに代えて前述したTi,Ta,W,Mo,Mg等の金属を添加した金属材料で形成することもできる。
また、電極指11aに含まれる2つの導体層である電極層13及び中間層12は、図4に示すように、中間層12の側面と圧電基板10の主面10aとのなす角度α(例えば、65°)が電極層13の側面と圧電基板10の主面10aとのなす角度β(例えば、58°)よりも大きくなるように形成されている(α>β)。これにより、電極指11aの各導体層に生じる応力を分散することができる(詳しくは後述する)。
電極指11aの各導体層の側面の角度は、以下のようにエッチングを行うことで調整することができる。すなわち、電極指11aの各導体層を積層し、その形状をフォトリソグラフィ法の技術を用いてパターニングし、次いで、ドライエッチング法を用いて形成する。このドライエッチング法では、Cl、BCl及びNを反応ガスとして用い、ガス流量、圧力、印加電力、時間等のエッチング条件を調整することで、TiとAl合金とのエッチングレートの違いを利用して、サイドエッチング量(各導体層の側面部のエッチング量)を制御する。これにより、電極指11aの各導体層(中間層12及び電極層13)の側面の角度α,βを調整することができる。具体的には、サイドエッチング量を大きくする、すなわち導体層の側面と圧電基板の主面とのなす角度を小さくするためには、BClのガス濃度を多くし、印加する電力を大きくすることが効果的である。
保護膜14は、電極指11aを保護するために被覆される。保護膜14は、IDT電極11を形成後、CVD法を用いて、IDT電極11上に所定の材料を形成することで成膜される。保護膜14は、CVD法を用いる他には、スパッタリング法や蒸着法等の方法を用いて成膜することもできる。
なお、保護膜14は、導体性を有する材料で形成された導体保護膜、半導体(semiconductor)性を有する材料で形成された半導体膜、あるいは絶縁性を有する材料で形成された絶縁保護膜を用いることができる。
導体保護膜の場合、ここでは、Tiで形成されるものとして説明するが、Tiの他には、Cr、Nb、Pd、Cu及びNi等の金属材料のうち、いずれかを主成分とすることができる。導体保護膜14は、IDT電極11の電極指11a上にのみ形成されている。
また、絶縁保護膜は、二酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁性を有する材料で形成される。半導体膜は、多結晶シリコン等の半導体性を有する材料で形成される。このとき、絶縁保護膜や半導体膜は、電極指11a上のみに形成してもよく、電極指11a上に加え、圧電基板10の主面10a上にも形成することができる。
以下では、弾性表面波素子1における、角度α、βの設定に基づく、各導体層に生じるせん断応力の軽減の機構を説明する。
各導体層(中間層12及び電極層13)の側面付近では、各導体層の熱膨張による応力が、各導体層の側面に対してほぼ垂直な向きで外方向に生じている。図4に示すように、中間層12の側面付近では、熱膨張の幅Aの伸長を生じ、電極層13の側面付近では、熱膨張の幅Bの伸長を生じる。ここで、「熱膨張の幅」とは、各導体層の側面にほぼ垂直な方向の伸長の幅を表しており、導体層の体積、平面方向への幅や熱膨張係数ρ等により規定される。
この例では、中間層12の熱膨張係数ρ12が電極層13の熱膨張係数ρ13よりも小さいので、熱膨張の幅Aは、熱膨張の幅Bよりも小さくなる(A<B)。
よって、中間層12においては、熱膨張の幅Aによる圧電基板10の主面10aに沿う方向に生じる伸長がAsinαとなり、電極層13においては、熱膨張の幅Bによる圧電基板10の主面10aに沿う方向に生じる伸長がBsinβとなる。
ここで、中間層12の側面の角度αが電極層13の側面の角度βよりも大きく形成されている(sinα>sinβ)ので、各導体層における圧電基板10の主面10aに沿う方向に生じる伸長(Asinα、Bsinβ)は、各導体層の側面が同じ角度に形成されているときに比べて、その差を軽減することができる。
したがって、各導体層の側面がなす角度を、その導体層が有する熱膨張係数に応じて調整することで、中間層12と電極層13との境界面に生じるせん断応力を軽減することができ、結果として、保護膜14の破断や剥離を抑制することができる。
ところで、中間層12の側面のなす角度αは、80度を超えない角度を有することが好ましい。この角度が80度を超えない範囲の値をとることで、保護膜14は、例えば、蒸着等の回り込みの少ない成膜方法を用いて形成されたときでも、電極指11aの側面の圧電基板10の主面10aに近い部分まで、充分な厚さを有することができ、中間層12及び電極層13に対して良好な密着性を有するものとなる。
また、中間層12と電極層13とのなす角度の差(α−β)は、好ましくは10°から20°の範囲であり、より好ましくは15°である。これにより、このとき、保護膜14は、中間層12及び電極層13に対して良好な密着性を有するものとなる。
次に、本発明の他の実施形態にかかる弾性表面波素子について説明する。なお、以下の説明での弾性表面波素子2,3,4(圧電基板20,30,40、その主面20a,30a,40a、IDT電極21,31,41を含む)は、特に言及をしない部分において、図1の弾性表面波素子1(圧電基板10、その主面10a、IDT電極11を含む)や図12の弾性表面波素子1′(圧電基板10′、その主面10a′、IDT電極11′を含む)と同様の構造を有するものとする。
図5は、他の実施形態にかかる弾性表面波素子2に含まれるIDT電極21の、図1におけるB−B線での要部断面図であり、図6は、このIDT電極21における1つの電極指21aの拡大断面図である。
弾性表面波素子2は、IDT電極21として、圧電基板20の主面20a上に、複数の導体層が積層されている電極指21aを備えている。この電極指21aは、保護膜24で覆われている。
電極指21aは、図5に示すように、圧電基板20の主面20a上に形成されている第1の導体層である中間層22と、この中間層22上に形成されている第2の導体層である電極層23との2層の導体層が積層されている。電極指21aに含まれる中間層22及び電極層23は、図5に示すように、その長手方向に対して直交する面での断面が、圧電基板20の主面20aに近づくにつれて広く形成されている。つまり、中間層22及び電極層23は、その断面において、それぞれ台形形状を有している。
中間層22は、AlにCuやMg等の金属材料を含有したAl合金(その熱膨張係数をρ22と書くと、ρ22=23.5×10−6/KのAl−Cu(Cu:1重量%)合金)等の金属材料で形成されている。
電極層23は、中間層22を形成する材料よりも小さな熱膨張係数ρ23を有するTa(その熱膨張係数をρ23と書くと、熱膨張係数ρ23=6.6×10−6/K)等の金属材料で形成されている。
電極指21aを形成する2つの導体層は、図6に示すように、中間層22の側面と圧電基板20の主面20aとのなす角度α(例えば、60°)が電極層23の側面と圧電基板20の主面20aとのなす角度β(例えば、75°)よりも小さくなるように形成されている(α<β)。
保護膜24は、電極指21aを保護するために備えられている。保護膜24は、保護膜14と同様、IDT電極21を形成後、CVD法を用いて、IDT電極21上に所定の材料を形成することで成膜される。
中間層22の側面付近では、熱膨張の幅Aの伸長を生じ、電極層23の側面付近では、熱膨張の幅Bの伸長を生じる。このとき、中間層22の熱膨張係数ρ22が電極層23の熱膨張係数ρ23よりも大きいので、熱膨張の幅Aは、熱膨張の幅Bより大きくなる(A>B)。
よって、中間層22においては、熱膨張の幅Aによる圧電基板20の主面20aに沿う方向に生じる伸長がAsinαとなり、電極層23においては、熱膨張の幅Bによる圧電基板20の主面20aに沿う方向に生じる伸長がBsinβとなる。中間層22の側面の角度αが電極層23の側面の角度βよりも小さく形成されている(sinα<sinβ)ので、各導体層における圧電基板20の主面20aに沿う方向に生じる伸長(Asinα、Bsinβ)は、各導体層の側面が同じ角度に形成されているときに比べて、その差を軽減することができる。
したがって、その導体層が有する熱膨張係数に応じて、各導体層の側面がなす角度を調整することで、中間層22と電極層23との境界面に生じるせん断応力を軽減することができ、結果として、保護膜24の破断や剥離を防ぐことができる。
なお中間層22の側面のなす角度αは、45°から80°の範囲の角度であることが好ましい。さらに好ましくは60°から80°の範囲である。
高周波フィルタの電極パターンが微細化され、電極指21a上の微細な質量(mass)差が重要になってくる。この質量差とは、圧電基板20上の電極薄膜の形状に基づく電極の質量差を意味する。ここでは、IDT電極21の形状、つまりIDT電極21を形成する電極指21aの質量が、弾性表面波の励振に影響する。このことは、「質量効果」と呼ばれるもので、弾性表面波の周波数特性に影響を及ぼし、これらの特性における中心周波数が、電極薄膜の質量(形状、特に、線幅や膜厚)により所望の値からずれるおそれがある。中間層22の側面のなす角度αが45度を超える角度であれば、上述の質量効果を軽減することができ、当該周波数特性の設計値が実測値と大きく異なることが少ないので、安定した歩留まりを得ることができる。
また、中間層22と電極層23とのなす角度の差(α−β)は、好ましくは10°から20°の範囲であり、より好ましくは15°である。このとき、保護膜24は、中間層22及び電極層23に対して良好な密着性を有するものとなる。
図7は、さらに他の実施形態にかかる弾性表面波素子3に含まれるIDT電極31の、図1におけるB−B線での要部断面図である。図8は、このIDT電極31における1つの電極指31aの拡大断面図である。
弾性表面波素子3は、IDT電極31として、圧電基板30の主面30a上に、複数の導体層が積層された電極指31aを備えている。この電極指31aは、保護膜34で覆われている。
電極指31aは、図7に示すように、圧電基板30の主面30a上に形成されている中間層32と、この中間層32上に形成されている電極層33との2層の導体層が積層されている。
電極指31aに含まれる中間層32及び電極層33は、図7に示すように、その長手方向に対して直交する面での断面が、圧電基板30の主面30aに近づくにつれて広く形成されている。つまり、中間層32及び電極層33は、その断面において、それぞれ台形形状を有している。
電極指31aにおける電極層33の下面、すなわち中間層32との接合面33aは、中間層32の接合面32aをはみ出すことがなく、中間層32の接合面32aの中に含まれる。
中間層32が電極層33に対向している接合面32aの断面の幅Lは、図8に示すように、電極層33が中間層32に対向している接合面33aの断面の幅Lに比べて、大きくなるように形成されている。
そのため、電極指31aは、中間層32の側面と電極層33の側面との間に、中間層32の接合面32a上に直接保護膜34が形成されうる領域として、縦断面形状がL字形状であって幅Rを有する段部32bを左右に有している。この段部32bでは、中間層32の接合面32a上に直接、保護膜34が形成される。なお、このような段部は、例えば、電極指をエッチングする際に、エッチングする時間を長くしてオーバーエッチングを行うことによって、中間層が電極層に対向している接合面の断面の幅Lを、電極層が中間層に対向している接合面の断面の幅L2よりも長くすることができる。
中間層32は、Ti(その熱膨張係数をρ32と書くと、ρ32=8.9×10−6/K)等の金属材料で形成されている。
電極層33は、中間層32を形成する材料よりも大きな熱膨張係数ρ33を有するAl合金(その熱膨張係数をρ33と書くと、ρ33=23.5×10−6/KのAl−Cu(Cu:1重量%)合金)等の金属材料で形成されている。
電極指31aを形成する2つの導体層は、図8に示すように、中間層32の側面と圧電基板30の主面30aとのなす角度α(例えば、65°)が電極層33の側面と圧電基板30の主面30aとのなす角度β(例えば、58°)よりも大きくなるように形成されている(α>β)。
電極指31aに生じるせん断応力は、上述のように、中間層32の側面の角度αが電極層33の側面の角度βよりも大きく形成されているので、各導体層の側面が同じ角度に形成されているときに比べて、その差を軽減することができる。
これにより、その導体層が有する熱膨張係数に応じて、各導体層の側面がなす角度を調整することで、中間層32と電極層33との境界面に生じるせん断応力を軽減することができ、結果として、保護膜34の破断や剥離を防ぐことができる。
保護膜34は、IDT電極31を形成する各導体層(中間層32及び電極層33)の熱膨張係数ρ32,ρ33のうちの最も大きな熱膨張係数(この場合ρ33)に比べて小さな熱膨張係数を有する材料で形成されている。これにより、電極層33の熱膨張による伸長が、段部32b上にある保護膜34により抑制される。よって、中間層32と電極層33との境界に生じるせん断応力をさらに抑制することができる。また、保護膜34の密着性を向上することができる。
図9は、さらに他の実施形態にかかるIDT電極41の、図1におけるB−B線での要部断面図である。図10は、このIDT電極41における1つの電極指41aの拡大断面図である。
弾性表面波素子4は、IDT電極41として、圧電基板40の主面40a上に、複数の導体層が積層されている電極指41aを備えている。この電極指41aは、保護膜44で覆われている。
電極指41aは、図9に示すように、圧電基板40の主面40a上に形成されている中間層42と、この中間層42上に形成されている電極層43との2層の導体層が、交互に、合計4層、積層されている。
電極指41aに含まれる中間層42及び電極層43は、その長手方向に対して直交する面での断面が、圧電基板40の主面40aに近づくにつれて広く形成されている。つまり、中間層42及び電極層43は、それぞれ台形形状を有している。
電極指41aにおける中間層42が電極層43に対向している接合面42aの断面の幅は、図10に示すように、電極層43が中間層42に対向している接合面43aの断面の幅に比べて、大きく形成されている。そのため、電極指41aは、中間層42の側面と電極層43の側面との間に、中間層42の接合面42a上に直接、保護膜44が形成されうる領域として、縦断面形状がL字形状であって幅Rを有する段部42bを左右に有している。なお、このような段部は、例えば、電極指をエッチングする際に、エッチングする時間を長くしてオーバーエッチングを行うことによって、中間層が電極層に対向している接合面の断面の幅を、電極層が中間層に対向している接合面の断面の幅よりも長くすることができる。
中間層42は、Ti(その熱膨張係数をρ42と書くと、ρ42=8.9×10−6/K)等の金属材料で形成されている。
電極層43は、中間層42を形成する材料よりも大きな熱膨張係数を有するAl合金(その熱膨張係数をρ42と書くと、ρ42=23.5×10−6/KのAl−Cu(Cu:1重量%)合金)等の金属材料で形成されている。
電極指41aを形成する複数の導体層は、図10に示すように、中間層42の側面と圧電基板40の主面40aとのなす角度α(例えば、74°)が電極層43の側面と圧電基板40の主面40aとのなす角度β(例えば、60°)よりも大きくなるように形成されている(α>β)。
保護膜44は、IDT電極41を形成する各導体層42及び43の熱膨張係数ρ42,ρ43のうちの最も大きな熱膨張係数(この場合ρ43)よりも小さな熱膨張係数を有する材料で形成されている。
電極指41aに生じるせん断応力は、上述のように、中間層42の側面の角度αが電極層43の側面の角度βよりも大きく形成されているので、各導体層の側面が同じ角度に形成されているときに比べて、その差を軽減することができる。それに加え、電極層43の接合面43aの断面の幅が、中間層42の接合面42aの断面の幅に比べて、小さく形成されているので、段部42bに積層されている保護膜44は、電極層43の熱膨張による伸長を抑制することができる。これにより、中間層42と電極層43との境界に生じるせん断応力を軽減することができ、結果として、保護膜44の破断や剥離を防止することができる。
また、段部42bでは、中間層42の接合面42a上に直接保護膜44が形成されているので、中間層42よりも大きな熱膨張係数ρ43を有する電極層43の、圧電基板40の主面40a方向への伸長を抑制することができる。
また、本実施形態では、電極指41aが3層以上の導体層で形成されているので、電極指41aの耐久性をさらに増すことができる。
なお、上述の弾性表面波素子1では、IDT電極上にのみ導体保護膜を形成する実施形態を説明したが、図11に示すように、電極指11aの導体保護膜の上面に、さらに絶縁保護膜14bを形成するか、または導体保護膜に代えて絶縁保護膜14bを形成することができる。これにより、IDT電極11を保護しながらも、電極指11aと圧電基板10との密着性を高めることができる。絶縁保護膜14bを形成する場合、絶縁保護膜14bは、圧電基板10の主面上にも形成されていてもよい。もちろん、弾性表面波素子2,3,4においても、同様に、IDT電極21,31,41上に絶縁保護膜を形成することができる。
<実施例1>
図3、図4に示される弾性表面波素子1を製造した。圧電基板10には、圧電性を有する材料として、LiTaO単結晶で形成された基板を用いた。
スパッタリング法を用いて、圧電基板10上に中間層12としてTiを堆積(deposit)し、中間層12上に電極層13として、AlにCuを含有したAl−Cu(Cu:1重量%)合金を堆積した。膜厚はTiが18nm、Al−Cu合金が402nmであった。
IDT電極11及び反射器19は、その形状をフォトリソグラフィ法の技術を用いてパターニングし、次いで、ドライエッチング法を用いて形成した。
ドライエッチング法では、Cl、BCl及びNを反応ガスとして用い、ガス流量、圧力、印加電力等のエッチング条件を調整することによって、TiとAl−Cu合金とのエッチング選択比を調整した。
すなわち、ガス流量、圧力、印加電力、時間等のエッチング条件を調整して、TiとAl−Cu合金とのエッチングレートの違いにより、サイドエッチング量を制御して傾斜角α,βを調整した。具体的には、用いたRIE装置はICP(Inductive Coupled Plasma)−RIE装置であり、エッチング条件は、ガス流量BClが20sccm、Clが20sccm、Nが10sccmであり、圧力1.0Pa、バイアスパワー60W、であり、加工に要したエッチング時間は約60秒である。
このときの電極指11aの側面の角度は、圧電基板10の主面10aを基準とするとき、中間層12の有する角度αが65度であり、電極層13の有する角度βが58度であった。
次に、中間層12及び電極層13を形成した後、ドライエッチング時に用いたマスクを使って、保護膜14となる金属層(Ti)を、スパッタリング法により形成した。
このようにして作製した弾性表面波素子1に高周波をかけても、また、環境温度を変化しても、保護膜14の剥離は生じなかった。また、弾性表面波素子1のウェハ面内およびウェハ間の歩留まりは高いものが得られた。
<実施例2>
図5、図6に示される弾性表面波素子2を製作した。圧電基板20には、圧電性を有する材料として、LiTaO単結晶で形成された基板を用いた。
まずスパッタリング法を用いて、圧電基板20上に中間層22としてAl−Cu(Cu:1重量%)合金を堆積し、中間層22上に電極層23としてTiを堆積した。膜厚はAl−Cuが402nm、Al−Cu合金が18nmであった。
IDT電極21及び反射器(図示せず)は、その形状をフォトリソグラフィ法の技術を用いてパターニングし、次いで、ドライエッチング法を用いて形成した、このとき、中間層22及び電極層23のエッチング選択比を調整した。また、このドライエッチング法を用いて、電極指21aに含まれるそれぞれの導体層の側面と圧電基板20の主面20aとのなす角度が、設計した角度となるように調整した。エッチング条件は、ガス流量BClが20sccm、Clが20sccm、Nが20sccmであり、圧力1.0Pa、バイアスパワー60W、であり、加工に要したエッチング時間は約60秒である。
このとき、電極指21aの側面の角度は、圧電基板20の主面20aを基準としたとき、中間層22の有する角度αが60度であり、電極層23の有する角度βが75度であった。
次に、中間層22及び電極層23を形成した後、保護膜24を、スパッタリング法を用いてSiOで形成した。そしてドライエッチング法により、保護膜34の不要な部分を削り取った。
このようにして作製した弾性表面波素子2に高周波をかけても、また、環境温度を変化しても、保護膜24の剥離は生じなかった。
<実施例3>
図7、図8に示される弾性表面波素子3を製造した。圧電基板30には、圧電性を有する材料として、LiTaO単結晶で形成された基板を用いた。
次にスパッタリング法を用いて、圧電基板30上に中間層32としてTiを堆積し、中間層32上に電極層33としてAl−Cu(Cu:1重量%)合金を堆積した。膜厚はTiが18nm、Al−Cu合金が402nmであった。
IDT電極31及び反射器(図示せず)は、その形状をフォトリソグラフィ法の技術を用いてパターニングし、次いで、ドライエッチング法を用いて形成した。ドライエッチング法では、Cl、BCl及びNを反応ガスとして用い、ガス流量、圧力、印加電力等のエッチング条件を調整することによって、中間層32及び電極層33のエッチング選択比を調整した。また、このドライエッチング法を用いて、電極指31aに含まれるそれぞれの導体層の側面と圧電基板30の主面30aとのなす角度が、設計した角度となるように調整した。エッチング条件は、ガス流量BClが20sccm、Clが20sccm、Nが10sccmであり、圧力1.0Pa、バイアスパワー60W、であり、加工に要したエッチング時間は約70秒である。
このとき、電極指31aの側面の角度は、圧電基板30の主面30aを基準とするとき、中間層32の有する角度αが65度であり、電極層33の有する角度βが58度であった。
また、電極指31aのエッチングの際に、オーバーエッチングをすることによって、電極層33の接合面33aの断面での幅を、中間層32の接合面32aの断面での幅よりも左右各8nm短くした(図8のR参照)。
次に、中間層32及び電極層33を形成した後、フォトリソグラフィにてパターニングし、スパッタリングを用いて、保護膜34をSiOで形成した。そしてドライエッチング法により、保護膜34の不要な部分を削り取った。
このようにして作製した弾性表面波素子3に高周波をかけても、また、環境温度を変化しても、保護膜34の剥離は生じなかった。
<実施例4>
図9、図10に示される弾性表面波素子4を製造した。圧電基板40には、圧電性を有する材料として、LiTaO単結晶で形成された基板を用いた。
まずスパッタリング法を用いて、圧電基板40上に中間層42となるTiを堆積し、中間層42上に電極層43となるAl−Cu(Cu:1重量%)合金を堆積した。このようにして、圧電基板40の主面40a上に、中間層42と電極層43とを交互に4層、積層させた。膜厚は1層あたりTiが6nm、Al−Cu合金が130nmであった。
IDT電極41及び反射器(図示せず)は、その形状をフォトリソグラフィ法の技術を用いてパターニングし、次いで、ドライエッチング法を用いて形成した。ドライエッチング法では、Cl、BCl及びNを反応ガスとして用い、ガス流量、圧力、印加電力等のエッチング条件を調整することによって、中間層42及び電極層43のエッチング選択比を調整した。また、このドライエッチング法を用いて、電極指41aに含まれるそれぞれの導体層の側面と圧電基板40の主面40aとのなす角度が、設計した角度となるように調整した。エッチング条件は、ガス流量BClが20sccm、Clが20sccm、Nが10sccmであり、圧力1.0Pa、バイアスパワー60W、であり、加工に要したエッチング時間は約60秒である。
このとき、電極指41aの側面の角度は、圧電基板40の主面40aを基準とするとき、中間層42の有する角度αが74度であり、電極層43の有する角度βが60度であった。
また、電極指41aのエッチングの際に、オーバーエッチングを行うことによって、中間層42の接合面42aの断面での幅を、電極層43の接合面43aの断面での幅よりも左右各16nm長くした(図10のR参照)。
次に、中間層42及び電極層43を形成した後、フォトリソグラフィにてパターニングし、スパッタリングを用いて、保護膜44を、SiOで形成した。そして、保護膜44を形成した後、ドライエッチング法により、IDT電極41を形成した。
このようにして製造した弾性表面波素子4に高周波をかけても、また、環境温度を変化しても保護膜44の剥離は生じなかった。
本発明の一実施形態にかかる弾性表面波素子の平面図である。 弾性表面波素子を実装基板に実装した状態を示すA−A線での断面図である。 弾性表面波素子1に含まれるIDT電極の、図1におけるB−B線での要部断面図である。 このIDT電極における1つの電極指の拡大断面図である。 他の実施形態にかかる弾性表面波素子2に含まれるIDT電極の、図1におけるB−B線での要部断面図である。 このIDT電極における1つの電極指の拡大断面図である。 さらに他の実施形態にかかる弾性表面波素子3に含まれるIDT電極の、図1におけるB−B線での要部断面図である。 このIDT電極における1つの電極指の拡大断面図である。 さらに他の実施形態にかかる弾性表面波素子4に含まれるIDT電極の、図1におけるB−B線での要部断面図である。 このIDT電極における1つの電極指の拡大断面図である。 弾性表面波素子1に含まれるIDT電極の電極指上に、絶縁保護膜を形成した状態を示す拡大断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる弾性表面波素子の平面図である。 従来のIDT電極の電極指の拡大断面図である。
符号の説明
1,2,3,4 弾性表面波素子
10,20,30,40 圧電基板
10a,20a,30a,40a 圧電基板の主面
11,21,31,41 IDT電極
11a,21a,31a,41a 電極指
12,22,32,42 中間層
13,23,33,43 電極層
14,24,34,44 保護膜
14b 絶縁保護膜

Claims (11)

  1. 圧電基板と、
    前記圧電基板の主面上に形成され、電極指を有するIDT電極とを有し、
    前記電極指は、第1の導体層と、この第1の導体層の材料と異なる材料の第2の導体層とを含む複数の導体層が積層されて形成されており、
    前記第1の導体層は、前記電極指の長手方向に直交する面での断面形状が、圧電基板に近づく方向に広がる台形形状を有しており、
    前記第2の導体層は、前記電極指の長手方向に直交する面での断面形状が、圧電基板に近づく方向に広がる台形形状を有しており、
    前記第1の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度が、前記第2の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度と異なっている、弾性表面波素子。
  2. 前記電極指の前記第1の導体層の材料の熱膨張係数は、前記第2の導体層の材料の熱膨張係数と異なっている、請求項1記載の弾性表面波素子。
  3. 前記第2の導体層は、前記第1の導体層に比べて大きな熱膨張係数を有する材料で形成されており、
    前記第1の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度が、前記第2の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度よりも大きく形成されている、請求項1記載の弾性表面波素子。
  4. 前記第2の導体層は、前記第1の導体層に比べて小さな熱膨張係数を有する材料で形成されており、
    前記第1の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度が、前記第2の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度よりも小さく形成されている、請求項1記載の弾性表面波素子。
  5. 前記第1の導体層は、前記圧電基板の主面上に接して形成され、
    前記第2の導体層は前記第1の導体層上に形成され、
    前記第1の導体層の前記第2の導体層に対向している断面の幅が、前記第2の導体層の前記第1の導体層に対向している断面の幅に比べて、大きく形成されている、請求項1記載の弾性表面波素子。
  6. 前記第1の導体層は、前記圧電基板の主面上に接して形成され、
    前記第2の導体層は前記第1の導体層上に形成され、
    前記第1の導体層と同じ材料で形成された第3の導体層が前記第2の導体層上に形成され、
    前記第2の導体層と同じ材料で形成された第4の導体層が前記第3の導体層上に形成され、
    前記第3の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度が、前記第1の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度と同じに形成され、
    前記第4の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度が、前記第2の導体層の側面と前記圧電基板の主面との成す角度と同じに形成されている、請求項1記載の弾性表面波素子。
  7. 前記第1の導体層の断面形状と、前記第2の導体層の断面形状は、ドライエッチング法によって作られる請求項1記載の弾性表面波素子。
  8. 前記IDT電極の電極指は、保護膜で覆われている、請求項1記載の弾性表面波素子。
  9. 前記保護膜は、前記電極指を形成する導体層のうちの最も大きな熱膨張係数を有するものに比べて、小さな熱膨張係数を有する材料で形成されている、請求項8記載の弾性表面波素子。
  10. 前記保護膜は、前記IDT電極上に形成されており、
    Ti,Cr,Nb,Pd,Cu及びNiのうち、少なくとも1種を材料として含んでいる、請求項8記載の弾性表面波素子。
  11. 請求項1記載の弾性表面波素子を実装基板に実装している、弾性表面波装置。
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