本発明は各種荷重やトルク等を測定する歪センサ及びその製造方法に関する。
以下、感歪抵抗体を用いた従来の歪センサについて図面を参照しながら説明する。図18は従来の歪センサの断面図である。金属基板1上に結晶化ガラスほうろう層からなる電気絶縁層2を設ける。電気絶縁層2上に感歪抵抗体子3を結合させ、さらにその上にオーバーコート4を被覆して、荷重検出装置が構成されている。このような荷重検出装置を用いる車両用サスペンションが特許第2929757号公報に開示されている。しかし、結晶化ガラスの表面は、凹凸が大きく、滑らかでないために、抵抗値バラツキが大きくなることが、特開平6−137805号公報に開示されている。
図19は、焼成される前の結晶化ガラスの部分断面図を示している。焼成する前の結晶化ガラスは、個々のガラス粉5から構成されていることが判る。そしてこうしたガラス粉5が所定温度で焼成されて、電気絶縁層2を形成している。
図20は、結晶化ガラスの断面拡大図を示している。図20において、電気絶縁層2の表面6には細かい凹凸が残り、その内部にはボイド7が残っている。こうしたボイド7は、セラミック電子部品に一般的に含まれている。そして、それ自体は製品の信頼性には影響しないが、製品の特性バラツキ等の発生原因になることがある。次にこうした課題について、図21を用いて説明する。
図21は、メッシュベルト炉(Meshbelt Conveyor Furnace、以後MCFという)を用いて結晶化ガラスを焼成する場合の焼成条件を示す図である。図21において、横軸は時間、縦軸は温度を示している。サンプルはMCFの中で室温から少しずつ加熱され、900℃程度のピーク温度を一定時間保持した後、また室温まで少しずつ冷却される。また図21においてY軸のTemp1は結晶化ガラスの軟化温度、Temp2は結晶化温度に相当する。
一般的な非晶質ガラスの場合、軟化温度(ガラスが軟化変形し始める目安となる温度であり、一般的にはDTAで求められる)、軟化点を超えて、高温になるほどガラスはより軟化していく。しかし結晶化ガラスの場合、軟化点(図21のTemp1)前後でガラスは軟化するが、結晶化温度(図21のTemp2)に達するとガラスが結晶化してしまう。そのため結晶化ガラスが軟化している温度域は、Temp1の軟化温度からTemp2の結晶化温度の間となる。また図21において、Temp1とTemp2に対応する時間が、それぞれX軸のTime1、Time2である。つまり結晶化ガラスは、Time1(Temp1の軟化温度に相当)で軟化し始め、Time2(Temp2の結晶化温度に相当)で結晶化し、固体化する。このようにして結晶化した後の結晶化ガラスの溶解温度は1000℃以上となる。そのため、一度結晶化した後の結晶化ガラスは、ピーク温度(図21では900℃前後)でも溶解することなくそのまま固体状態で保たれる。つまり図21の焼成プロファイル8において、最初からTime1の間は、結晶化ガラスは図19に示すようにガラス粉5から構成された未焼成状態である。そしてTime1からTime2の間に、これらガラス粉5が同時に溶解し、Time2を超えた後は結晶化ガラスとして固体化している。
以上のように、結晶化ガラスは、Time1とTime2の間でのみ溶解するため、結晶化ガラスの溶解時での充分なレベリング(表面の平滑化)を行う時間を確保する必要があった。そのため安定した焼成を行うためには、焼成時間を短くすることは難しい。その結果、焼成工程での生産性効率は低かった。
さらに、金属基板の上で結晶化ガラスを一体化形成する場合、結晶化ガラスの焼成収縮はZ方向(厚み方向)だけ発生する。そして、XY方向(つまり金属基板の上に密着した面)における焼結収縮が阻害される。その結果、一般的な結晶化ガラス材料を使った各種製品(XYZの3次元的な収縮が可能なため、焼結中に発生する応力は均一化しやすい)とは異なり、上記構成の場合結晶化ガラスの焼成条件を最適化する技術的な難易度は高い。つまり、上記構成において、結晶化ガラスの焼成時間を短くすることは大きな課題であった。
本発明は、基板と、基板上に積層した結晶化ガラスと、結晶化ガラス上に積層した感歪抵抗体とを有し、結晶化ガラスは互いに異なる熱機械的定数を有する複数の結晶化ガラス粉を焼成して形成される複合結晶化ガラスである歪センサを提供する。このようにして、結晶化ガラスの溶融時間もしくは溶融温度域を広げられるため、焼成工程での生産性向上、センサの低コスト化を実現できる。
さらに、本発明は上記歪センサの製造方法を提供する。
図1は本発明の実施の形態1におけるセンサの断面図である。
図2は本発明における複合結晶化ガラスの断面拡大図である。
図3は本発明における複合結晶化ガラスのDTA結果の一例を示す図である。
図4は本発明における複合結晶化ガラスの焼成プロファイルを示す図である。
図5は本発明における複合結晶化ガラスの焼成される前の部分断面図である。
図6Aは本発明における複合結晶化ガラスを構成する複数の異なる結晶化ガラスのDTAを示す図である。
図6Bは本発明における複合結晶化ガラスを構成する複数の異なる結晶化ガラスのDTAを示す図である。
図7は本発明における複合結晶化ガラスを構成する部材の割合と、金属基板上での複合結晶化ガラスのクラック強度の関係を示す図である。
図8は本発明における複合結晶化ガラスを構成する複数のガラス材料の混合割合と、そのときの熱膨張係数、更にそのときの溶解温度域について説明する図である。
図9Aは本発明における複合結晶化ガラスを構成する複数のガラス材料の混合割合と、そのときの熱膨張係数、更にそのときの溶解温度域について説明する図である。
図9Bは本発明における複合結晶化ガラスを構成する複数のガラス材料の混合割合と、そのときの熱膨張係数、更にそのときの溶解温度域について説明する図である。
図10は本発明における複合結晶化ガラスの内部に内部電極を内蔵したセンサの断面図である。
図11は本発明における複数の異なる複合結晶化ガラスを用いたセンサの断面図である。
図12は本発明における複合結晶化ガラスと非晶質ガラスの両方を用いたセンサの構造を示す断面図である。
図13は本発明における非晶質ガラスと複合結晶化ガラスのマッチングを改善したセンサの断面図である。
図14は本発明における複合結晶化ガラスを用いたセンサの断面図である。
図15は本発明における歪の残った金属基板の反りを模式的に示す断面図である。
図16は本発明における複合結晶化ガラスと非晶質ガラスを絶縁層に用いたセンサの断面を示す図である。
図17は本発明における複合結晶化ガラスとセラミック粉が同時に焼成されてなるコンポジットガラスの拡大断面を示す図である。
図18は従来のセンサの断面の一例を示す図である。
図19は従来のセンサにおける、焼成される前の結晶化ガラスの部分断面図である。
図20は従来のセンサにおける結晶化ガラスの断面拡大図である。
図21は従来のセンサにおけるMCFを用いて結晶化ガラスを焼成する場合の焼成条件を示す図である。
符号の説明
11 金属基板
13 感歪抵抗体
14 オーバーコート
19 複合結晶化ガラス
20 配線
以下本発明の実施の形態の一例を、図面を用いて説明する。図面は模式図であり、各位置を寸法的に正しく示すものではない。なお、DTAは示差熱分析(Differential Thermal Analysis)の略称である。また、本発明における熱機械的定数には結晶化温度、熱膨張係数、転移点温度などが含まれる。なお、図3、6A,6B、8中の矢印は参照する軸を表わしている。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるセンサの断面図である。図1に示すように、金属基板11の上に、複合結晶化ガラス19(Composite Crystallised Glass、以後CCGという)を介して、配線20や感歪抵抗体13が形成され、これらがオーバーコート14で覆われている。
図2は、CCGの断面拡大図である。従来の図20と比べると、図2に示すCCGの内部には、ボイド17が少なく、その大きさも小さいことが判る。またCCGの表面16は滑らかであることも判る。
本発明におけるCCGとは、夫々異なる軟化点、異なる結晶化温度を有する複数の結晶化ガラスを、粉末状態で均一になるように混合し、これを金属基板の上で同時に焼成して製造される。このようにして、従来の結晶化ガラスでは得られなかった広い温度領域(つまり軟化温度から結晶化温度までの間)が得られる。その結果、図2に示すようにCCGの内部にはボイド17が残りにくく、その表面16は滑らかになっている。
CCGによってボイドの減少や表面性が改善される理由について、図3を用いて説明する。図3は、本発明におけるCCGの示差熱分析(DTA)結果の一例を示している。DTAのグラフは、温度グラフ21、示差熱グラフ22とから構成され、ピーク23を有している。またX軸は時間、Y1軸は温度、Y2軸は示差熱をそれぞれ表わしている。DTAについて、更に詳しく説明する。まず、本発明のCCGのDTAを以下のようにして行った。約500mgのCCGを測定サンプルとし、リファレンスとしてはαアルミナを用いた。そして加熱速度を10℃/分として、室温から1000℃までの示差熱を測定した。図3は、約700〜800℃の測定結果を抜き出したものであり、温度グラフ21は、700℃付近から800℃付近まで昇温していることがわかる。また温度グラフ21において、ピーク23が観察される。次に、CCGの軟化、焼結の様子を説明する。図3の示差熱グラフ22は低温側で一定であるが、Time3付近において急激に低下する。このTime3における温度がTemp3であり、これがCCGの軟化温度に相当する。
さらに示差熱グラフ22は、Time3の後は一定時間下がった後で、Time4付近で急激に増加する(図3では、グラフ枠内からはみ出している)。このTime4での温度がCCGの結晶化温度に相当する。またTime4以降で示差熱グラフ22はグラフ枠内から大きく上にはみ出している。これはCCGの結晶化熱によるものであり、この結晶化熱は温度グラフ21ではピーク23として観察される。
こうしてTime4で結晶化熱を発生しながら結晶化した後のCCGは、安定化しているためTime4以降で大きく変化することは無い。本発明のCCGの場合、ガラスの流動領域に相当するTemp3(軟化温度)とTemp4(結晶化温度)の差が、従来の結晶化ガラスに比べて大きい。その結果、結晶化ガラスが溶解し、結晶化するまでに平滑化に要する充分な時間が得られることになる。
次に図4を用いて、CCGのMCFにおける焼成プロファイル24について説明する。図4において、X軸は時間、Y軸は温度を示している。
図4に示すように、金属基板上に所定パターンで形成されたCCGは、MCFの中で室温から少しずつ加熱され、900℃前後のピーク温度を一定時間保持した後、また室温まで少しずつ冷却される。また、Temp5が、CCGの軟化点、Temp6がCCGの結晶化温度に相当する。CCGの場合、室温からTemp5までの温度(時間軸では、0分からTime5までの間)では、軟化温度(Temp5)未満であるため、個々のガラス粉は溶解していない。そしてY軸のTemp5からTemp6まで(X軸で説明するとTime5からTime6の間)は、個々のガラス粉がそれぞれの軟化温度に応じて温度で溶解し、CCGとして結晶化する。そしてTemp6から上の温度(X軸では、Time6から60分までの間)は、CCGとして結晶化したままである。なお図4のTemp5は図3のTemp3に相当する。また図4のTemp6は図3のTemp4に相当している。
次にCCGの焼成される前の状態(例えば、CCGペーストが脱バインダされた後の状態)を図5に示す。図5に示すように、第1の結晶化ガラス粉25と第2の結晶化ガラス粉26とから構成されている。第1の結晶化ガラス粉25と第2の結晶化ガラス粉26は、互いに異なる軟化温度、結晶化温度を有している。図5においては、第1の結晶化ガラス粉25と第2の結晶化ガラス粉26が、粉末の状態で均質に混ざっていることを示している。そしてこれら異なる特性を有する複数種のガラス粉を有するペーストを金属基板11の上で印刷して所定形状を形成する。さらに、後述する図4のような焼成プロファイルによって焼成され、CCG19を形成する。
なおCCGを構成する第1の結晶化ガラス粉25や第2の結晶化ガラス粉26の平均粒径は0.5〜10μmが望ましい。特にガラス粉の平均粒径が0.3μm未満の場合、ガラス粉同士の均一分散が難しくなる場合がある。単一のガラス粉を使う場合、平均粒径が0.1〜10μm以下であっても使うことができる。なぜなら0.1〜0.3μm程度の微細なガラス粉(ガラス粉は0.5μm未満の微細なものほど凝集しやすい)が、5〜10μm程度の凝集体を形成していたとしても、焼成すれば均一な(同じ)結晶化ガラスとなるためである。
一方本発明のCCG19の場合、異なるガラス粉が同時に焼成されて構成されるため、図5に示すように第1の結晶化ガラス粉25と第2の結晶化ガラス粉26はより均一に混合、分散されることが望ましい。そのため、平均粒径は0.5μm以上が望ましい。またガラス粉の平均粒径が10μmを超える場合、CCGの厚みに加えて、ガラス粉の粒径が影響することがある。それは、平均粒径が10μmを超える場合、粒径が20μmや30μmといったガラス粉が含まれている可能性があるからである。また第1の結晶化ガラス粉25と、第2の結晶化ガラス粉26との平均粒径の差は5μm未満が望ましい。これらの平均粒径の差が5μmを超えると、出来上がったCCGの均一性に影響を与える場合がある。
つぎに図6を用いて、個々のガラス粉の挙動について説明する。図6Aと6BはCCGを構成する複数種類の異なる結晶化ガラスのDTA結果を示す図である。図6Aは第1の結晶化ガラス粉のDTA、図6Bは第2の結晶化ガラス粉のDTAの結果をそれぞれ示している。本来、図6Aと図6Bは元々同じグラフ枠の中に書くべきものであるが、複雑になりすぎるために図6A、図6Bとして分けている。Y軸は共通なので2つの図は重ね合わせることができる。また、各軸の説明は図3と同じであるので省略する。なお、DTAとは、試料に発生した熱エネルギーの変化を定量的に検知する。そして、結晶化ガラスの溶解や結晶化の様子を熱エネルギーの変化(例えば、吸熱現象、発熱現象)として検出するものである。
図6Aに示すように、温度グラフ21aは時間とともに昇温しているが、Time7付近で示差熱グラフ22aが急激に低下(吸熱)している。このときの温度(Temp7)が第1の結晶化ガラスの軟化温度に相当する。さらに、Time8付近で示差熱グラフ22aが急激に上昇(発熱)しており、このときの温度(Temp8)が第1の結晶化ガラスの結晶化温度に相当する。
同様に図6Bにおいて、温度グラフ21bは時間とともに昇温しているが、Time9付近で示差熱グラフ22bが急激に低下(吸熱)しており、このときの温度(Temp9)が第2の結晶化ガラスの軟化温度に相当する。さらに、Time10付近で示差熱グラフ22bが急激に上昇(発熱)しており、この時の温度(Temp10)が第2の結晶化ガラスの結晶化温度に相当する。
図6Aと図6Bの温度軸(Y軸)が共通であるので、これを互いに照らし合わせ、同じ一つのX軸(時間軸)の順番に並べると、Time7、Time9、Time8、Time10の順番となる。言い換えると、Time7はTemp7、Time9はTemp9、Time8はTemp8、Time10はTemp10に相当するので、これらを同じ一つのY軸(温度軸)に並べると、温度の低い方から順番に、Temp7(第1のガラスの軟化温度)、Temp9(第2のガラスの軟化温度)、Temp8(第1のガラスの結晶化温度)、Temp10(第2のガラスの結晶化温度)となる。
そして、これら複数種の異なる示差熱グラフを有するガラス粉が、図5に示すように混合されて一括焼成されるため、本発明のCCGの流動領域は、Temp7(第1の結晶化ガラスの軟化温度)からTemp10(第1の結晶化ガラスの結晶化温度)までの広範囲に広げられる。
そして図6Aと図6Bの結果を合成したものが、図3に相当することになる。このように金属基板上にガラス層を形成する場合、CCG層として形成するとその焼結領域を広げられる。その結果、MCFにおける焼成速度を上げたり、従来は一括焼成の難しさから焼成を複数回(もしくは複数層)に分けていた場合に対しても、より厚い層を一括で焼成形成できるので製品の製造コストを下げられる。
またCCGを構成する異なるガラス粉は、それぞれの組成に応じた特有の結晶化温度を有するため、同じ温度で一斉に結晶化することにならない。特に結晶化ガラスを構成するガラス粉が単一な示差熱グラフを示している場合、結晶化温度に達した時、結晶化に伴い多量の発熱(結晶化熱)が発生する。こうした結晶化熱が隣接するガラス粉にも伝わってしまうため、連鎖的に急激な結晶化が起こることがある。
しかし本発明に示すように、それぞれに固有の結晶化温度を有するガラス粉を用いることで、結晶化熱の発生する温度域を広げられ、更にガラス粉自身を微粒子としておくことで結晶化熱の発生量も少なく、更に別々のガラス粉同士を混合させておくことで、結晶化熱も全体的に均一化し、温和な反応とすることができる。なお図3においては、温度グラフ21には結晶化熱に起因するピーク23を図示しているが、これは温度グラフ21を測定しているDTA装置の測定パン(図示していない)の熱容量が小さいためである。このようにして、CCG19の断面や内部は、図2に示したものとすることができる。上記CCGを用いたセンサは、結晶化ガラスの特徴(高強度、高電気絶縁性)を示すとともに、充分な平滑化に要する時間が得られるため、表面の平滑性等にも優れている。その結果、センサの特性バラツキの低減、センサ特性の安定化を実現できる。
なおCCG19の厚みは10〜100μmが望ましい。厚みが10μm未満の場合、金属基板11の表面の凹凸の影響を受ける場合がある。100μmを超えると、製品の材料費に影響を与える場合がある。
なおCCGを形成する、異なる組成を有する複数種の結晶化ガラス粉末は、500〜900℃の温度で、金属基板と共に熱処理されて結晶化するものであることが望ましい。結晶化温度が500℃未満の結晶化ガラスは特殊で高価なものとなる。また結晶化温度が900℃を超える結晶化ガラスを使うには、高価で特殊な金属基板を使う必要が有り、製品の材料コストに影響を与える。
(実施の形態2)
実施の形態2ではCCGの組成の一例について、表1から表6を用いて説明する。なお、表1から表6における各成分の割合は重量%(wt%)で表わしている。また、評価は○、△、×で表わし、それぞれ良、可、不可を表わしている。
表1から表6は、金属基板上でそれぞれの組成を有する結晶化ガラスのマッチング性を評価した結果を示す。各表では、MgOの添加割合を変化させている。MgOの割合が結晶性と相関があるため、表5に示したようにMgOの割合は35〜55wt%が良いことが判った。このようにMgOの熱膨張係数は、金属基板に近いため、金属基板とのマッチング性に影響しやすい材料でもある。また表2から表6のように、更に色々な組成について検討した。
その結果、MgOが多すぎると表面性が低下することが判った。またBaOも多すぎると耐熱性、密着性が低下することが判った。更にAl2O3が1〜30wt%の範囲で添加されることが望ましい。また一定量のMgOとAl2O3が共に共存していることが、ガラスの安定化に重要なことも判った。また表6に示すように、添加量を増やしすぎても、うまく焼結できないことが判った。以上の結果に基づき、金属基板上で焼成可能な結晶化ガラスの基本組成を、表7に示す。
次に表7の結晶化ガラスの組成範囲内で、溶解温度、結晶化温度、更には転移点(ガラスの熱膨張係数が急激に変化する温度)などが異なる複数種類の結晶化ガラスからCCGを作製した。その結果を8に示す。
表8に示すように、第1の結晶化ガラスの組成としては、MgO:35〜50wt%、B2O3:10〜30wt%、SiO2:10〜25wt%、BaO:3〜15wt%、Al2O3:10〜30wt%、SnO2:0.5〜5wt%、P2O5:0.1〜5wt%が望ましい。
同様に第2の結晶化ガラスの組成としては、MgO:35〜50wt%、B2O3:10〜30wt%、SiO2:10〜25wt%、BaO:5〜25wt%、AL2O3:1〜10wt%、SnO2:0.5〜5wt%、P2O5:0.1〜5wt%が望ましいことが判った。
更に第1の結晶化ガラスと第2の結晶化ガラスの組成において、B2O3、SiO2、SnO2、P2O5の内、一種類以上の元素を共通元素として同程度添加しておくことで、これら結晶化ガラスの製造コストを下げられる。特に表3に示すように、MgO、BaO、Al2O3の3元素をそれぞれ一定割合の中で増減させることで、出来上がったCCGの作業性(例えばMCFでの焼結温度)に影響を与えることなく、ガラスの特性(熱膨張係数、転移点、溶解温度、結晶化温度等)をそれぞれ固有に有する複数のガラス組成を開発することができた。
特に表8に示したように、第1の結晶化ガラスと第2の結晶化ガラスの組成において、MgO、BaO、Al2O3の内の1種類以上の元素の含有率を増減させることで、それぞれの溶解温度、結晶化温度をセンサに最適な範囲で増減できる。
本実施の形態2では、表1の結果を基に、結晶化ガラスを構成する酸化物の割合を変化させ、それぞれ異なる性質を有する複数の結晶化ガラスを作製し、これらをブレンドしている。このようにして結晶化ガラスの構成要素を変化させることで様々な軟化点、結晶化温度、熱膨張係数のものが得られ、これらをガラスペーストの中に適量配合することで、CCGの特性を改善できる。そして、結晶化ガラスの基本組成は同じとし、BaOやAl2O3、MgO等の添加量を増減させることで、それぞれに特有な軟化温度と結晶化温度を発現させることができる。そして、これらを混合、同時焼成することで単一の結晶化ガラス材料に比べてより広い流動領域を得ることができる。なおCCGを形成する複数のガラス材料として、Al2O3、BaO、もしくはMgOの内、一つ以上の添加元素の割合は、1〜20wt%の割合で異なっている(もしくは1〜20wt%の割合で差があること)ことが望ましい。これはAl2O3、BaO、MgOが結晶化ガラスを構成する主要元素であり、これらの含有率の違いによって、結晶化ガラスの軟化温度、結晶化温度が変化するためである。またこれら元素の熱膨張係数もそれぞれ異なることを利用して、CCGの熱膨張係数を調整することができる。
以上のように、CCGを形成する複数のガラス材料のそれぞれの特徴(焼成プロファイル、熱膨張係数)を組合せることができるため、様々な基板、様々な用途に対応できるセンサを実現できる。なお添加元素の割合が1wt%未満の場合、それぞれのガラスの特性に差が殆ど表れない場合があると共に、ガラスロットでの組成バラツキの影響も受けやすい課題がある。また添加量が20wt%を超えると、焼結温度等の差が大きくなり、一括焼成できない場合がある。
なおCCGを構成するガラス材料として、SiO2やB2O3の含有率を0.1〜10wt%の割合で変化させることもできる。SiO2やB2O3の添加量を変化させることで、結晶化ガラスの結晶化温度や融点等を効果的に変化させることができる。なおSiO2やB2O3の添加量の差が0.1wt%未満の場合、組成バラツキの範囲であり、CCGとしての特徴が得られない場合がある。また添加量の差が10wt%を超える場合、CCGとして一括焼成できない場合がある。
なお結晶化ガラスの転移点温度は、500〜750℃が望ましい。転移点温度が500℃未満の場合、ガラス材料が特殊になって使いこなしにくい場合がある。また転移点温度が750℃を超えると、ガラスの熱処理温度が高くなるため、焼成炉や金属基板11に耐熱性の高い高価なものを使う必要がある。なおここで、転移点とは、熱膨張曲線の傾きが急激に変わる温度を意味し、ガラス構造が固体状態から液体状態に変化していることに相当している。
本発明の歪センサに用いる結晶化ガラスの場合、特に550℃から700℃の間に転移点を持つものが望ましい。こうしたガラス材料の場合、結晶化温度が700℃から800℃になるため、汎用の設備を使うことができる。
また複数の結晶化ガラスの転移点温度の差は、50℃以下が望ましい。また転移点の差が50℃を超える場合、焼成が不均一になる場合がある。なお複数の結晶化ガラスの転移点温度に差が無くとも、その熱膨張係数に差があれば、下地となる金属基板11に対する熱膨張係数を最適化でき、CCGの強度を高めることができる。
またCCGを構成するガラス粉の熱膨張係数は、90×10−7〜200×10−7/℃の範囲内が望ましい。この範囲であれば、各種耐熱性が高く、安価な金属部材を金属基板11として用いることができる。また複数の結晶化ガラスの互いの熱膨張係数差は100×10−7/℃以下が望ましい。100×10−7/℃を超える場合、複数種の異なるガラス粉をブレンドしても、熱膨張係数の差が大きすぎて焼結性に影響を与える場合がある。
なお複数の結晶化ガラスの結晶化温度は、500〜900℃が望ましい。結晶化温度が500℃未満のガラス部材は特殊になる。また結晶化温度が900℃を超える場合、焼成炉に特殊なものを使う必要がある。また複数の結晶化ガラスの結晶化温度の差は、50℃以下が望ましい。50℃を超える場合、結晶化温度の温度差が焼結性に影響を与える場合がある。
(実施の形態3)
実施の形態3では、図7、図8を用いてCCGを構成する複数のガラス材料として、熱膨張係数が異なるものを用いる熱膨張係数の微調整について、説明する。
図7は、CCGを構成する部材の割合と、金属基板上でのCCGのクラック強度との関係を示す図である。異なる熱膨張係数を有する金属基板Aと金属基板Bに対するクラック強度の測定結果である。
図7において、第1の結晶化ガラスと、第2の結晶化ガラスとの熱膨張係数は異なっている。この結果、熱膨張係数の異なるCCGが構成されるので、その時のクラック強度を得る様子を示すものであり、X軸は第1の結晶化ガラスと第2の結晶化ガラスの互いの混合割合をwt%で示している。
なおX軸において、第1の結晶化ガラスが80、第2の結晶化ガラスが20と言うことは、例えば、第1の結晶化ガラスを80wt%、第2の結晶化ガラスを20wt%秤量し、これを所定の樹脂溶液等と共に混練し、ガラスペーストとした後、これを焼成して構成されるCCGを意味する。
Y軸は、クラック強度である。またY軸において、クラック強度が3000μεの位置と、クラック強度が5000μεの位置に横線を引いている。これは、ある製品に求められるクラック強度の限界値(5000μεの方)と必要値(3000με)の一例である。これら限界値、必要値はセンサの用途によって大幅に変更されることがあると共に、ガラス層の厚みによっても変化する。
なお金属基板上に形成したCCGのクラック強度の測定は、以下のようにして行う。所定の治具にサンプル(決められた寸法の金属基板の上に決められた厚みのガラス層を形成したもの)をセットし、そのサンプルの表面に市販の箔ゲージを貼り付け、サンプルに錘をつけながらサンプルに発生する歪を測定する。
また図7において、金属基板Aと金属基板Bの熱膨張係数は異なっている。金属基板Aの限界クラック強度(5000με)が得られるガラス組成(第1の結晶化ガラスと第2の結晶化ガラスの混合割合)が、X軸における点Aである。同様に金属基板Aにおける必要クラック強度(3000με)が得られるガラス割合が点Bである。
このように、金属基板Aに対しては点Aと点Bの間の組成割合が適当であることが分かる(実際は、クラック強度の測定バラツキ、ガラス組成や製造工程でのバラツキを加味して、点Aと点Bの中央付近とすることが望ましい)。またユーザーニーズによって、基板の材質、厚み、用途等が様々となる。例えば、金属基板Bに対応する場合は、ガラス割合が点Cと点Dの間で、最適化すれば良いことが分かる。
図8は、CCGを構成する複数のガラス材料の混合割合と、そのときの熱膨張係数、更にそのときの溶解温度域について説明するものである。図8において、X軸は第1の結晶化ガラスと、第2の結晶化ガラスの互いの混合割合をwt%で示している。Y1軸は、X軸の組成のガラス材料が焼成されてできたCCGの熱膨張係数を示す。なお熱膨張係数は、測定温度域で変化することがあるため、用途に応じた測定温度域での熱膨張係数を実測することが望ましい。
またY2軸は、X軸の組成のガラス材料が焼成されてできたCCGの溶解温度域であり、これは図3における、Temp3とTemp4の差に相当する。この溶解温度域が広いほど、原料となる各種結晶化ガラス粉が溶解して結晶化してCCGへと変化するまでの変化を遅くできる。図8に示すように、複数のガラス材料を混合することで、熱膨張係数を変化させられると共に、溶解温度域も広げられることが判る。
なお、複数のガラス粉を混合して、同時焼成してなるCCGの場合、混合するガラス粉の割合は、第1の結晶化ガラス:第2の結晶化ガラス=5:95〜95:5の範囲が望ましい。第1の結晶化ガラスが5wt%未満で、かつ第2の結晶化ガラスが95〜100wt%の場合は、CCGとしての、溶解温度域の拡大や熱膨張係数の微調整の割合が限定されるため、CCGとしての作用効果が得られない場合がある。
(実施の形態4)
実施の形態4では、複数の結晶化ガラスのブレンドについて説明する。つまり任意の結晶化ガラス同士をブレンドしても、本発明のCCGを形成するものでは無い。結晶化ガラスとは、焼成時に結晶種が発生して結晶化し、結晶化ガラス特有の高強度、高耐久性を発現させるものである。そのためCCGが構成する複数のガラス材料として、まったく異質の結晶種を有するもの同士を混合して結晶化した場合、結晶化が阻害されたり、所定の特性が得られない可能性がある。
こうした場合、安定したCCGを構成するためには、CCGの原料となる各々の結晶化ガラスにおける結晶種が共通していることが望ましい。複数の異なる組成の結晶化ガラスを混合して一括焼成する際に、互いに共通している結晶種を有することで、その結晶化が阻害されることなく、安定した焼成が可能になる。
次に図9を用いて、CCGを構成する複数の結晶化ガラスの結晶構造について説明する。なお結晶化ガラスの結晶構造については、所定温度で焼成してできた結晶化ガラスを、市販のX線回折装置(XRD)で測定することが望ましい。XRDとは物質にX線を照射した場合の波動の回折現象を利用して、物質中の原子および分子配置の周期性に関する情報を得るための装置である。回折面間隔をDとすると、X線の回折により2Dsinθ=nλ(ブラッグの回折式、nは整数、λは波長を表わす)で示される方向にだけ強度が認められ、それ以外の場所では弱くなり観察されないものである。そのため、結晶質の同定方法として有用である。本実施の形態においても、XRDを用いることで、CCGを構成する個々のガラス材料の結晶種を同定するのに有用である。
図9Aは、第1の結晶化ガラスのXRD結果を示すものである。図9Bは第2の結晶化ガラスのXRD結果を示すものである。図9A、図9BのX軸は2θを示している。Y軸は信号強度(Intensity)を示し、大きさは任意尺度である。図6Aと図6Bの結果から、各々の結晶化ガラスにはそれぞれ特有のピークを有しており、そして同じ2θ位置に共通したピークを有していることが判る。こうした共通する結晶種としてはBaMg2SiO7が望ましい。結晶種がBaMg2SiO7の場合、2θの19.7°、27.5°、34.8°の位置にこうしたピークが現れる。
このように、複数の結晶化ガラスの粉体を混合し、一括焼成してCCGを得る場合でも、このように出発原料となる結晶化ガラス同士に共通した結晶種を有することが望ましい。このようにして、一括焼成する際の焼結安定性を高められると共に、出発原料となる結晶化ガラスの材料選定も容易になる。
更に詳しく説明する。まず個々のガラス原料(第1の結晶化ガラス、第2の結晶化ガラス等)を所定温度(充分結晶種が発生する温度が望ましく、具体的には図4に示した焼成プロファイル24のピーク温度以上が望ましい)で焼成し、それぞれの結晶化ガラスを形成する。次にこれら結晶化ガラスをXRDにより、それぞれの固有の回折パターンを測定する。
なお、複数の結晶化ガラスが焼成してなるCCGにおいて、結晶種はBaMg2SiO7を有することが望ましいが、BaMg2SiO7の元素比に限定される必要はない。表7に示した結晶化ガラスを構成する基本元素から形成される結晶種であれば良い。例えばBaもしくはMgもしくはSiのBの3元素の内、2種類以上の元素からなる結晶種であれば良い。
(実施の形態5)
実施の形態6では、CCGを用いたセンサの耐ノイズ特性を向上させる様子を、図10を用いて説明する。図10は、CCG19の内部に内部電極27を内蔵したセンサの断面図である。このようにして、耐ノイズ特性を改善できる。
特に本発明のように金属基板の上に、絶縁層を形成したセンサの場合、金属基板自身がボルト等を用いて、乗用車のシャーシ等の所定の構造体の上に取付けられる。一般にこうした構造体はそうした他の回路部品の共通GNDとなっている場合がある。そのため、他の回路部品の使用状況によって、GND自体の電圧が変動し、GNDに高周波系の信号が重畳してしまう場合がある。またGND電圧が変化することによって、結果的に、出力電圧や入力電圧等も影響されてしまうことが多い。こうした場合、図10のようにCCG19の内部に内部電極27を形成し、これをGNDとすることで、こうした影響を防止することができる。なお、内部電極27はコストの面から1層が望ましいが、1層に限定する必要は無い。すなわち、内部電極27は1層の場合でも、複数パターンであっても良い。そして、内部電極27を複数に分割することで、一部をGND、一部を信号用にすることにより、センサの小型化と耐ノイズ性を改善できる。
なお、図10において、金属基板11と内部電極27の間に形成されるCCG19の厚みは10〜100μmが望ましい(つまり複合結晶化ガラス19の内部に内部電極27を形成した場合、複合結晶化ガラスのトータルの厚みは20〜200μmが望ましいことになる)。なおCCG19の厚みが10μm未満の場合、金属基板11の表面粗さの影響によって、金属基板11と内部電極27の間で絶縁抵抗が低下する場合がある。また内部電極27と配線20や感歪抵抗体13の間に形成される複合結晶化ガラス19の厚みは10〜100μmが望ましい。10μm未満の場合、ガラスペーストや製造工程中に混入したゴミや異物等の影響を受け、絶縁抵抗が低下する可能性がある。またこれらの厚みが100μmを超える場合、CCG19の使用量が増加するため、製品のコストに影響する可能性がある。
また内部電極27としてはAgを主体としたものを、厚み0.5〜30μmで形成することが望ましい。Agの厚みが0.5μm未満の場合、焼成後の抵抗値が増加するために内部電極として機能しない場合がある。また厚みが30μm以上では、材料費がコストに影響する場合がある。
また金属基板11と内部電極27を電気的に接続することもできる。また金属基板11と配線20を電気的に接続することもできる。また内部電極27と配線20を電気的に接続することができる。こうした接続には、CCGに形成したビア孔(図10には図示していない)を使うことができる。
またビア孔の大きさは10μm〜10mmが望ましい。10μm未満のビアの形成は難しく、10mmを越えるビア孔はパターンの高密度化に影響する可能性がある。このように、配線20の一部に、金属基板11や内部電極27を、ビアを介して電気的に接続しておくことで、配線20に接続されたコネクタ(図示していない)を介して、外部との信号のやり取りを行う場合、ノイズ防止効果、出力の安定化等の作用効果が得られる。
また内部電極27とCCG19を同時に焼成する場合、内部電極27となる内部電極ペーストの中に、予めCCGを形成するガラス粉を一種類以上、粉末状態もしくはペースト状態で添加しておくことが望ましい。こうすることで、内部電極ペーストと、CCGを形成するCCGペーストの同時焼成時における、収縮差による剥離や割れ等の課題発生を防止できる。特に、CCGでは、その溶解温度域を広げていると言っても結晶化温度が存在するため、一般的な非晶質ガラスのような広い温度域は得られない。
つまりCCGの溶解温度域未満の低温領域では、図5に示したように個々のガラス粉同士は互いに接触しているだけであり強度的に弱い状態になっている。そのためこの状態で内部電極ペーストが焼結し収縮してしまうと、ガラス粉の弱い結合が影響を与える可能性がある。そのため、この溶解温度未満の領域では内部電極ペーストは焼結収縮しないことが望ましい。そのため、内部電極ペーストには、焼結開始温度の高い銀粉を含むものを使うことが望ましい。
例えば、従来の平均粒径が1μm未満のAg粉を主体として内部電極ペーストの場合、焼結開始温度が比較的低いため、CCGを形成する個々のガラス粉同士が互いに弱く接触しているだけの溶解温度未満の領域と重なり、クラック発生の一原因になる可能性がある。そのため、望ましくは平均粒径が1μm以上のAg粉を主体とした内部電極ペーストを用いることが望ましい。
更に、平均粒径が1〜5μmの範囲で、粒度分布幅の狭いAg粉を選ぶことが望ましい。これは1μm未満の微細なAg粉が、Ag粉に含まれている場合、これらが内部電極の焼結開始温度に影響を与える可能性がある。
(実施の形態6)
実施の形態6では、複数の異なるCCGを用いた場合のセンサについて、図11を用いて説明する。図11において、第1のCCG28と、第2のCCG29の間に内部電極27を形成しているが、センサの使用状況によっては内部電極27が不要な場合もある。また内部電極27を形成する場合でも、第1のCCG28と第2のCCG29の界面に形成する必要は無く、第1のCCG28の内部や、第2のCCG29の内部に形成してもよい。
このように、センサの厚み方向で、複数種類のCCGを形成することで、センサ自体の構造の最適化設計が容易になる。なお、図11において、複数のCCGを多層に積層する場合、熱膨張係数の大きさの順番は、金属基板>第1の複合結晶化ガラス≧第2の複合結晶化ガラスとすることが望ましい。
CCG28、29より金属基板11の熱膨張係数が小さい場合、センサとしての必要なクラック強度が得られない場合がある。また第1のCCG28と第2のCCG29の熱膨張係数を比較した場合、互いの熱膨張係数は同じか、第1のCCG28の熱膨張係数の方が、第2のCCG29のものより大きい方が望ましい。このようにして、第1のCCG28と第2のCCG29の間にも圧縮応力を発生させられるため、センサの耐力(yield strength)向上を実現できる。
(実施の形態7)
実施の形態7では、CCGと非晶質ガラスの両方を用いたセンサについて、図12を用いて説明する。図12に示すように、少なくとも感歪抵抗体13を非晶質ガラス30の上に形成することで、感歪抵抗体13と第2のCCG29のマッチングを改善することができる。特に、従来の感歪抵抗体13を形成する感歪抵抗体ペーストは、非晶質ガラス30の上で、その特性を出すように設計されていることが多い。このように従来の感歪抵抗体ペーストの場合にも、それ特有の特徴があり、このような場合、図12に示すような構成にすることができる。従来のセンサとして、例えば、金属基板11の上に直接、非晶質ガラス30が形成され、その上に感歪抵抗体13が形成される構造が使われている場合がある。こうした従来構造の場合、絶縁層に非晶質ガラスを使うため、強度が不足する場合がある。このように従来のセンサ構造(例えば、金属基板11の上に直接、非晶質ガラス30が形成され、その上に配線20や感歪抵抗体13が形成される場合)、内部電極を非晶質ガラスの中に内蔵することは難しい。これは非晶質ガラスの中に内部電極を形成した後に、配線20や感歪抵抗体13を形成する際に熱処理した場合、非晶質ガラスが再軟化して、内部電極27との間で剥離やクラックが発生する場合があるためである。なお結晶化ガラスの中に内部電極を内蔵した場合、結晶化ガラスはその後の工程で再軟化しないためこうした課題は発生しない。こうした場合、新しく図12の構造を選ぶことで、内部に内部電極を形成しながら、更に第2の結晶化ガラス29と感歪抵抗体13の相互拡散等を防ぐことができる。次に表9を用いて、こうした場合に使われる感歪抵抗体に対してマッチング性の高い非晶質ガラスの組成について説明する。
RuO2を感歪抵抗体とする場合、感歪抵抗体中にPbO系のガラス材料が添加されていることが多い。そのため感歪抵抗体となる下地にもPbOを一定量含ませた材料とすることで、感歪抵抗体の特性を引き出しやすい。またSiO2を主体とすることで、ガラスの強度や絶縁性を高めることができる。更にここにCaOやAl2O3、PbOを添加することで、ガラスの焼結性や流動性を高められる。更にここにZrO2を一定量含ませることが望ましい。SiO2(熱膨張係数0.5ppm/℃と小さい)が多い非晶質ガラス組成であっても、この中にAl2O3(熱膨張係数は8.1ppm/℃)を加えることで、熱膨張係数を金属基板並に高めることができる。
更に熱膨張係数を高めるために、弾性率にも優れ、熱膨張係数がAl2O3より更に大きいZrO2(熱膨張係数10.4)を添加することで、更に非晶質ガラスの熱膨張係数を金属基板にマッチングさせることができる。なお、Al2O3やZrO2の添加量が多すぎると、ガラスの焼結温度や溶解時の流動性に影響を与える可能性がある。
なお非晶質ガラスの組成としては、表9に示すように、SiO2が40〜80wt%、CaOが5〜15wt%、PbOが3〜15wt%、Al2O3が1〜20wt%、ZrO2が1〜20wt%含まれる非晶質ガラスを用いることが望ましい。SiO2が40wt%未満の場合、焼結性に影響が出る場合がある。またCaOが5wt%未満の場合も焼結性に影響が出る場合がある。またPbOが3wt%未満の場合、この上に形成する感歪抵抗体の抵抗値やGF(Gauge Factor、歪に対する抵抗値の変化率を意味する。GFの値が高いほど、感歪抵抗体としての感度が高いことになるため、GFの値は高いことが望ましい)に影響を与える場合がある。また、Al2O3の添加量が1wt%未満の場合、下地となるCCGにもAl2O3が含まれているため、互いのマッチング性に影響を与える場合がある。またZrO2が1wt%未満の場合、非晶質ガラスの熱膨張係数が低くなる場合がある。またSiO2の含有率が80wt%を超える場合、ガラスの溶解温度が高くなる場合がある。またCaOの含有率が15wt%を超える場合、ガラスの焼結性に影響を与える場合がある。また、PbOの含有率が15wt%を超えると、この上に形成する感歪抵抗体の特性に影響を与える場合がある。またAl2O3の含有率が20wt%を超えると、ガラスの焼結性が影響を受け、ガラス表面の平滑性に影響を与える場合がある。またZrO2の含有率が20wt%を超えると、Al2O3同様にガラスの焼結性が影響を受け、ガラス表面の平滑性に影響を与える場合がある。また必要に応じて、非晶質ガラスにB2O3を加えることも可能である。
特に感歪抵抗体の下地に非晶質ガラスを用いた場合、感歪抵抗体の焼成時に下地の非晶質ガラスが再溶解(もしくは再軟化)してしまう可能性がある。そのため、下地が非晶質ガラスの場合、感歪抵抗体とのマッチング性が重要になる場合がある。
なお、SiO2が40wt%未満の場合、非晶質ガラスの電気的特性に影響を与える場合がある。またSiO2が80wt%を超えると焼結温度が高くなる場合がある。またPbOが3wt%未満と少ない場合、PbOガラスを含む感歪抵抗体の特性が影響を受ける場合がある。またPbOが20wt%を超えると、溶解温度が低くなる場合がある。
また非晶質ガラス層(図12の非晶質ガラス30に相当)の厚みは、5〜50μmが望ましい。非晶質ガラス層の厚みが5μm未満の場合、非晶質ガラスのピンホールやボイド(数μmの微細な空隙)の影響を受ける場合がある。また50μmより厚い場合、非晶質ガラスの材料費がコストに影響する場合がある。
(実施の形態8)
実施の形態8では、感歪抵抗体とCCGとのマッチングについて、図13を用いて説明する。図13は非晶質ガラスとCCGのマッチングを改善したセンサの断面図である。第3のCCG31は、第1のCCG28と、非晶質ガラス30とが同時に焼成されて形成されたものである。このように、必要に応じて、結晶化ガラスと非晶質ガラスを同時に焼成されてなる第3のCCG31を形成することが好ましい。このようにして、第3のCCG31の上下に形成された第1のCCG28と、非晶質ガラス30との材料マッチングを行うことができる。非晶質ガラス30と、CCGとのマッチングが難しい場合、このように第3のCCG31を中間層に形成することによって、互いの熱膨張係数をマッチングさせることができるので、センサを構成する各種部材の応力分布を最適化設計しやすい。
またこうした中間層を形成することにより、第1のCCG28と、非晶質ガラス30等の複数の異なる材料から形成された複数のガラス層とを一括焼成させやすくなり、製品の製造コストを下げられる。このように、複数の異なる材料から形成された複数のガラス層を一括焼成する場合でも、各層で固有の軟化温度、結晶化の有無等の違いによる焼結収縮挙動差を吸収できる。その結果、製品の製造工程を安定化させやすく、安定した物作りが可能となる。
なお、第3のCCG31の形成は、第1のCCG28を形成する第1のCCGペーストと、非晶質ガラス30を形成する非晶質ガラスペーストとを所定割合で混合し、これを所定形状に印刷、焼成することで行われる。
このように、第1のCCG28と、非晶質ガラス30との間に、第3のCCG31を形成することで、第3のCCG31が一種のバッファー層として機能するので、これら部材を一括焼成する際での熱応力の発生を低減できる。
なお、金属基板11に接する部分のCCGの結晶化率は40%以上99%以下が望ましい。金属基板11に接する部分のCCGの結晶化率を40%以上とすることで、後工程(例えば、配線20や感歪抵抗体13での焼成)において、再度焼成工程が入ったとしても、結晶化率が高いために、再溶解することなく、強度を保つことができる。結晶化率が30%未満の場合、後工程で焼成工程が入った場合、CCGであっても、結晶化していない部分が再溶解する可能性がある。また金属基板11の種類によっては、加工時の残留歪等が残っている場合があり、金属基板11とそれに接するCCGの接着強度も影響を受ける可能性がある。またCCGの結晶化率を99%より高くした場合、結晶化がシャープになりすぎる。その結果、異なる結晶化条件の部材を混ぜて結晶化をブロードにして、焼成工程の安定条件を広げることが難しくなる。
なお結晶化率はXRDを用いて評価することができるが、サンプルの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することによっても可能である。非晶質ガラスの場合、断面を倍率100倍から1万倍程度の範囲で、元素マッピングしても、各種元素が均質に検出できる。しかし結晶化ガラスの場合、その断面は微細なそれぞれ固有の組成を有する結晶体の複合体として観察される。そのため、結晶体を作りやすい元素(例えば、Mg、Si、Ba、Al)でマッピングすると、断面がこうした元素の島状の集合体として観察される。この場合、こうした偏析された部分の面積(ここが結晶化部分に相当する)と、すべての元素が均質な部分(ここが非晶質部分に相当する)の面積比を、結晶化率とすることができる。
またCCGとして結晶化するガラス結晶の大きさは0.1〜20μmが望ましい。ガラス結晶の大きさが0.1μm未満の場合、小さすぎて結晶化ガラスとしての特性が得られない場合がある。また20μmを超えるほどに粒成長した場合は、CCGの厚みに対して、結晶の大きさが影響を与えてしまう可能性がある。そのため結晶の大きさ(直径もしくは長さ)は、CCGからなる絶縁層の厚みの、1/3以下になるようにすることが望ましい。
(実施の形態9)
実施の形態9では、CCGと金属基板のマッチングについて、図14、図15を用いて説明する。図14はCCGを用いたセンサの断面図であり、金属基板11に孔32を形成している。このように金属基板11に複数の孔32を形成することで、センサを別の構造体に強固に固定することができる。なお孔32はCCG等を形成する前に、打ち抜き等の方法で一括して形成することがコスト面から望ましい。このため、CCG19の形成は、加工(センサ用途に応じた複雑な外形や孔32の打ち抜き加工)の終了した金属基板11に対して行われることが多い。しかしこうした金属基板11は、加工時の複雑な歪が残っていることが多く、更にその歪も金属基板の位置(孔32に対して近い、遠い等)によっても、異なることが考えられる。
図15は歪の残った金属基板の反りを模式的に示す断面図である。図15において、台33の上にセットされた金属基板11は、孔32の加工や、金属基板の外形打ち抜き(図示していない)による歪が残っているため、台33の上で複雑な形状で、微妙に反っていることがある。こうした反りは、色々な機械的な処理で小さくすることができるが、ゼロにすることは難しい。
そのため数μmから数十μm、場合によっては数百μmのうねりとして残る場合がある。更にこうしたうねりは、金属基板11の上に、CCG19を一体形成する場合に、色々複雑な影響を及ぼす場合がある。またこうしたうねりに対して、CCGを使うことにより、うねりを低減させセンサの使い勝手を改善することが可能となる。
更に図14を用いて、孔32の周囲にCCG19を形成して、孔32付近の反りを低減する場合について詳しく説明する。まず金属基板に、熱膨張係数が125ppm/℃のものを使った。そして、CCGを構成する第1の結晶化ガラス粉として120ppm/℃のもの(MgO−B2O3−SiO2系で、転移点が630℃の結晶化ガラス)と、100ppm/℃のもの(MgO−B2O3系で転移点が650℃の結晶化ガラス)を、所定割合で配合し、樹脂溶液中に分散させてCCGペーストを作製した。そして、これを図14に示すように、孔32の周りにも、CCG19として形成する。このようにして、金属基板11の孔の周辺にもCCG19と金属基板11の熱膨張係数の違いによる応力を発生させる。この応力によって孔32の周囲の反りを、処理前の半分以下に低減させることができ、その結果、低歪時でのセンサ出力の直線性を高めることができた。
なお、孔32の周囲すべてに、CCG19を形成する必要は無い。孔32の付近にCCG19を形成しないことで、ボルトやナットを使った固定を容易にすることができる。これは設計上でボルトやナットを使って固定するような部分は、金属基板11の微妙な反りや歪は影響しないことが多いためである。一方、歪出力に影響するような部分(特に感歪抵抗体が形成された付近)については、できるだけ(感歪抵抗体の直下だけでなくて、金属基板11の周辺近くまで)広い範囲で、CCG19を形成することが望ましい。このようにして、金属基板11に起因する微妙な歪を、CCG19が熱膨張係数の違いを利用して低減できるため、センサ出力の安定化を更に高めることができる。
なお、CCG19の表面は、オーバーコート14で覆うことで、CCG素材の各種信頼性を高めることができる。なお、オーバーコート材料としては、低融点のガラス材料や、セラミック粉等をフィラーとして添加した硬化性の樹脂材料を用いることができる。またこうした硬化性の樹脂を用いる場合、オーバーコート層の厚みは10μm〜10mmが望ましい。オーバーコート層の厚みが10μm未満の場合、所定の信頼性が得られない場合がある。また厚みが10mmを超えると、製品のコストアップの原因になる可能性がある。
またオーバーコート材として、ガラスを用いることができる。この場合、PbOを50〜95wt%含むガラス材料を使うことが望ましい。PbOの含有率が50wt%未満の場合、オーバーコート材料の軟化点が高くなって、感歪抵抗体の特性に影響を与える場合がある。またPbOの含有率が95wt%以上の場合、ガラスが流動しやすくなりやすく、チップ部品や半導体等を実装するための窓(半田付け用ランド)の寸法形状に影響を与える場合がある。
またオーバーコート材料の焼成温度は、300〜750℃が望ましい。焼成温度が300℃未満の場合、充分な気密性が得られない場合がある。また焼成温度が750℃より高くなると、ガラスが流動しやすくなり、チップ部品や半導体等を実装するための窓(半田実装部分)の寸法形状に影響を与える場合がある。
またオーバーコートガラスの厚みは、10〜300μmが望ましい。10μm未満の場合、ピンホール等が発生する可能性がある。また厚みが300μmを超える場合、製品の材料費に影響を与える場合がある。また必要に応じて、オーバーコートを複数層にしてもよい。例えば、第1のオーバーコートガラスを印刷し、その上に第2のオーバーコートガラスを印刷し、これら複数層を一括で焼成し、オーバーコートガラスを形成することができる。このように、オーバーコートガラスを複数層とすることで、ピンホールの発生を抑えられるため、製品の低コスト化、高信頼性化が可能となる。この場合も複数層のオーバーコートガラスを共通してPbO含有率を50〜95wt%とすることで、一括焼成が可能になる。また複数層のガラスの、PbOの含有率やそれ以外のガラス成分(SiO2やTiO2、Cr2O3等)を変化させておくことで、それぞれ下地に対する濡れ性、溶解時の濡れ広がり性等をそれぞれ最適化できるため、製品の高品質化が可能となる。
(実施の形態10)
実施の形態10では、金属基板の上にCCGと非晶質ガラスとを介して、感歪抵抗体を形成した場合について図16を用いて説明する。図16はCCGと非晶質ガラスを絶縁層に用いたセンサの断面図を示す。金属基板11の上には、厚み10〜100μmのCCG19が形成され、さらにその上には厚み10〜100μmで非晶質ガラス30が形成されている。また非晶質ガラス30の上には、配線20や感歪抵抗体13が形成され、これらはオーバーコート14によって覆われている。
このように、金属基板11と、配線20や感歪抵抗体13との間に、CCG19と非晶質ガラス30の複数層からなる絶縁層を形成することにより、金属基板11と配線20や感歪抵抗体13との間の絶縁抵抗を高められる。その結果、金属基板11が乗用車のシャーシ等に取り付けられたとして、シャーシ等との絶縁性を高められるため、センサ出力が安定する。
特に、金属基板11の上に非晶質ガラス30だけを介して、配線20や感歪抵抗体13を形成する場合、非晶質ガラス30が配線20や感歪抵抗体13を形成する際の熱処理で軟化してしまい、絶縁性を下げてしまう可能性があった。しかし図16の構造を用いると、たとえ非晶質ガラス30に軟化点の低い材料を用いて、更に配線20や感歪抵抗体13として形成温度の高い材料を用いたとしても、複合結晶化ガラス19はこうした温度域では溶解したり軟化したりしないため、絶縁性を低下させることは無い。
なお金属基板11の大きさは、数mm角から数十cm角までの範囲に適応可能である。また大きな基材の歪を測定する場合、図14に示したように金属基板11に形成した孔32を使って、大きな基材の上に本センサをネジ止めすることができる。
(実施の形態11)
実施の形態11では、CCGにセラミック粉を加えてコンポジットガラスとした場合について、図17を用いて説明する。図17はCCGとセラミック粉が同時焼成されてなるコンポジットガラスの拡大断面を示す模式図である。セラミック粉34は、CCG19の中に分散された状態で、CCG19と一体化され、コンポジットガラス35を形成する。このように、CCGの中にセラミック粉を一種のフィラーとして添加することで、CCGのコストを下げたり、その強度や信頼性を高めることができる。更に詳しく説明する。セラミック粉は、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、カルシウム、シリコンの酸化物もしくは水酸化物が望ましい。これら酸化物(場合によっては水酸化物であっても焼成中に酸化物に変化する)を用いることができる。こうした部材の一部は、CCGにも含まれる部材であるが、セラミック粉として添加することでも、熱膨張係数等を調整できる。なおこうしたセラミック粉は酸化物もしくは水酸化物として添加するため、出来上がったコンポジットガラスの中で、セラミック粉34と、CCGとの区別は容易である。例えば、コンポジットガラスの断面をXMA等で元素分析すれば、セラミック粉34が単一金属(例えば、Al、Mg、Ca、Si等)と酸素よりなる2成分系の粉(もしくは塊)として検出される。一方、CCG19は、表8等で示したような3成分以上の組成が検出される。このようにすればコンポジットガラスにおける結晶化ガラス成分とセラミック粉とを区別できる。
なおコンポジットガラスの形成は、CCGを構成する複数のガラス粉と同時にセラミック粉が、樹脂溶液中に分散されてなるコンポジットガラスペースト使うことが望ましい。このようなコンポジットガラスペーストを、金属基板上で焼成することで、金属基板上に均質なコンポジットガラスを形成することができる。またコンポジットガラスペースト中に添加されたセラミック粉を、コンポジットガラスペースト中で均一に分散させておくことで、ガラス粉が溶解したり結晶化したりするときの急激な温度変化(吸熱、発熱)を緩和させる働きも期待できる。そうしてこのコンポジットガラスペーストを、所定の金属基板11の上で焼成することで、コンポジットガラスを形成できる。
なおセラミック粉34、あるいは酸化物粉もしくは水酸化物粉の平均粒径は0.1〜10μmが望ましい。セラミック粉34の平均粒径が0.05μm未満の場合、セラミック粉34が高価となり、且つこれをコンポジットガラスペーストの一成分として均一に分散することが難しくなる場合がある。またセラミック粉34の平均粒径が15μm以上になると、その大きさがコンポジットガラス層の厚みに影響を与える場合がある。またCCGを構成する複数のガラス粉の平均粒径も0.5〜10μmが望ましい。
ガラス粉の平均粒径が0.3μm未満の場合、ガラス粉同士の均一分散が難しくなる場合がある。特に単一のガラス粉を使う場合、平均粒径が0.1〜10μmであっても、使うことができる。これは0.1〜0.3μm程度の微細なガラス粉(ガラス粉は0.5μm未満の微細なものほど凝集しやすい)が、5〜10μm程度の凝集体を形成していたとして、焼成すれば均一な(同じ)結晶化ガラスとなるためである。
一方本発明のCCGの場合、異なるガラス粉が同時に焼成されてなるため、図5に示すように第1の結晶化ガラス粉25と第2の結晶化ガラス粉26はより均一に混合、分散されることが望ましい。そのため、平均粒径は0.5μm以上が望ましい。またガラス粉の平均粒径が10μmを超えた場合、CCGの厚みに加えてガラス粉の粒径が影響する(平均粒径が10μmを超えた場合、粒径20μmや30μmといった大きさのガラス粉が含まれている可能性が有る)ことが考えられる。なおコンポジットガラスにおけるセラミック粉の含有率は3〜30wt%が望ましい。あるいは結晶化ガラス粉100重量部に対して、セラミック粉の添加量は1〜30重量部が望ましい。セラミック粉の含有率が1重量部未満の場合、セラミック粉の添加効果が少ない場合がある。30重量部を超える場合は、その分だけコンポジットガラスに占めるCCGの含有率が下がるため、出来上がったコンポジットガラスの焼結性が影響を受ける場合がある。
また図1、図10、図11、図12に示したセンサの断面構造図において、CCGを、CCGとセラミック粉とからなるコンポジットガラスとすることが好ましい。このようにして、市販の安価なセラミック粉を使うことができるため、センサの材料費を抑えることができる。
なお、金属基板の大きさは、数mm角から数十cm角までの範囲に適応可能である。また大きな基材の歪を測定する場合、図14に示したように金属基板11に形成した孔32を使って、大きな基材の上に本センサをネジ止めすることができる。
(実施の形態12)
実施の形態12では、感歪抵抗体について説明する。本発明に用いる感歪抵抗体としては、抵抗体材料としてPbOを用い、これをPbOやSiO2を主体としたガラス中に分散させたものが望ましい。なお感歪抵抗体としては、酸化ルテニウムが5〜50wt%含まれていることが望ましい。酸化ルテニウムが5wt%未満の場合、所定の抵抗値が得られない場合がある。また酸化ルテニウムの含有率が50wt%を超えた場合も抵抗値が低くなりすぎ、更に材料費がコストに影響を与える場合がある。
また酸化鉛(PbO)の含有率は、20〜70wt%が望ましい。酸化鉛の含有率が20wt%未満の場合、所定の特性が得られない場合がある。また酸化鉛の含有率が70wt%を超えた場合、RuO2や他の添加剤の添加量が相対的に少なくなるため、感歪抵抗体としての所定の特性が得られない場合がある。また必要に応じて、SiO2を1〜20wt%以下の割合で添加することが望ましい。SiO2の添加量が1wt%未満の場合、感歪抵抗体としての所定の特性が得られない場合がある。またSiO2の割合が20wt%を超えると、焼結性に影響がある場合がある。またこれ以外にB2O3を1〜40wt%の割合で添加することも好ましい。B2O3の添加量が1wt%未満、あるいは40wt%以上の場合、所定のGF値が得られない場合がある。なおこうした組成分析には、蛍光X線分析やICP−AESと呼ばれる一般的な材料分析手法を使うことができる。またこうした酸化ルテニウムやPbO等の粉末を樹脂溶液中に分散させることで、感歪抵抗体ペーストを作製できる。なおこうした感歪抵抗体ペーストの焼成温度は500〜950℃が望ましい。抵抗体ペーストの焼成温度を500℃未満にしようとすると、脱バインダが不十分となり、抵抗体の特性に影響を与える場合がある。また抵抗体の焼成温度を950℃以上とした場合、抵抗体の特性が不安定になる場合がある。
なお、感歪抵抗体13は、配線20によって所定のブリッジ回路を構成している。この場合、感歪抵抗体13を複数個、望ましくは4個を使って、ホイーストンブリッジを形成することが望ましい。この場合、複数の感歪抵抗体13の抵抗値の互いの抵抗値は近いことが望ましい。特に互いの抵抗値を±5%以下の範囲に入れることで、ブリッジ回路を構成しやすい。互いの抵抗値が±5%を超えた場合、ブリッジ回路の安定性が影響を受ける場合がある。なお、ここで抵抗値の範囲とは、複数の抵抗体の平均値に対するバラツキ(バラツキの式は3σ/xで表され、σは標準偏差、xは平均である)も、同様に±5%以下が望ましい。抵抗値バラツキを5%以下にすることで製品の歩留まりを高められる。
(実施の形態13)
以下本発明の実施の形態13を、図面を参照しながら説明する。
実施の形態13では、図1に示したCCGを用いた歪センサの製造方法について説明する。まず、異なる結晶化温度を有する複数の結晶化ガラス粉を作製する。ここで、CCGを構成する個々のガラス粉の均一分散とその成型方法について説明する。均質なCCGを得るためには、組成の異なる個々のガラス粉を、金属基板上で均一で均質な状態で、所定形状に成型することが望ましい。
こうした成型方法としては、ガラス粉を所定の樹脂溶液の中に分散し、これをガラスペーストとして、スクリーン印刷等の手法を用いて金属基板の上に直接、所定形状で塗布、乾燥させた後、所定温度で焼成する形成方法が望ましい。この際、ガラスペーストとしては、ガラス粉の種類や品番に応じて、複数のガラスペーストを作製し、これら出来上がった複数のガラスペースト(各々、異なるガラス粉を含んでいる)を、秤量しブレンドしても良い。このように複数のガラスペースト同士をブレンドすることで、求めるCCGペーストを作製できる。
またガラスペーストを作製する際、最初から複数種のガラス粉を所定割合で秤量し、これを所定の樹脂溶液の中に分散することで、CCGペーストを作製しても良い。特にCCGの場合、異なる結晶化ガラス粉同士を均一に分散させる必要がある。もしこの分散が不均一であると、出来上がったCCGにおける結晶の析出ムラや密度ムラが発生する可能性がある。
またCCGペーストに用いる有機溶剤としては、印刷での取り扱いやすさから、消防法に基づく危険物区分において、危険物第四類の中で、第二石油類、もしくは第三石油類として選ばれているものが望ましい(その中でも取り扱いの容易さからは第三石油類が望ましい。第四石油類は乾燥が遅すぎて生産性が影響されてしまう)。更に言えば、第三石油類の非水溶性液体として区分されているものを用いることが望ましい。こうした溶剤として、BCA(Butyl Carbitol Acetate)やαテルピネオールのような有機溶剤が好ましい。第三石油類の水溶性液体として区分されているものの内、例えば、BC(Butyl Carbitol)のような水溶性液体の場合、それ自体に水が混じっていたり、保存中に吸湿する可能性がある。その結果、CCGペーストのポットライフが短くなることが有る。これについて、更に詳しく説明する。
まず、表8に示した、MgO−B2O3−SiO2系の結晶化ガラス粉を複数種類選んだ。まず所定の原料粉末を溶解炉で高温溶解し、これを結晶化しないように急冷し、粉砕し、分級した。なお分級はエアー(風)で行うことが望ましい。湿式分級した場合、ガラス粉が吸湿して硬化、凝集する可能性がある。こうして、異なる配合比の複数の結晶化ガラス粉を作製した。またこれらの結晶化ガラス粉の平均粒径は、2〜10μm程度であった。
ガラスペーストを製造する場合、平均粒径は10μm以下が望ましい。2μm未満であると、粉砕コストや分級での収率がコストに影響する場合がある。また平均粒径が20μm以上の場合、数十μmの大きなガラス粒子が残っている可能性があり、こうした大きな粒子はガラスペーストを所定パターンにスクリーン印刷する際に、スクリーンメッシュに目詰まりを起こさせる可能性がある。
こうして作製したガラスペーストを、金属基板の上に所定形状で印刷し、焼成することでCCG19を形成した。
特に本発明のように、金属弾性体の上に絶縁ガラスとしてCCGを形成する場合、金属自体の熱膨張係数が大きい(例えば、SUS430で10.4ppm/℃、SUS304で17.3ppm/℃)ため、CCGの熱膨張係数を大きくすることが必要である。こうした目的では、MgOやBaO、Al2O3といった熱膨張係数の大きな元素を含むことが望ましい。しかしこうした構成部材(例えばBaOは乾燥剤として使われるように吸湿性が高い)には、吸湿性の高いものが多い。更に吸湿によって、CCGペーストの原料粉となる結晶化ガラス粉自身が吸湿し、硬化してしまうことがある。このような対策として、CCGペーストを構成する溶剤としては、吸湿性の少ないもの、具体的には水と相溶性の小さい有機溶剤を用いることが望ましい。
以上のように構成したガラスを、エチルセルロースを有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液中に、3本ロールを用いて分散し、CCGペーストとした。そして、このCCGペーストを、金属基板上にスクリーン印刷機を使って所定パターンで印刷し、これを200℃で乾燥させた。
次に、これをMCFにセットし、ピーク温度850℃、In/out60分の酸化雰囲気中で焼成した。このように、複数種の結晶化ガラスを一度に焼成することで、図1に示すようなCCG19を形成した。そしてこの上に、市販の電極ペーストを所定パターンで印刷し、焼成することで、図1に示すような配線20を形成した。そして、複数の配線20の間を接続するように、感歪抵抗ペーストを所定パターンで印刷し、焼成することにより、図1に示すような感歪抵抗体13を形成した。さらに、感歪抵抗体13の全面と、配線20の一部を覆うようにオーバーコート14を形成した。そして最後に半導体チップや各種チップ部品やコネクタを実装し、歪センサとして完成させた。
本発明においては、複数の結晶化ガラス粉を所定割合でブレンドし、一括焼成してCCGを形成するため、金属基板11に対する焼結密着性を高められる。このようにして、歪センサの耐力アップと低コスト化が可能となる。なお複数種の結晶化ガラス粉としては、結晶化温度の異なるものの他に、熱膨張係数が100×10−7以下の範囲で熱膨張係数の異なる結晶化ガラス粉を用いても良い。この場合本発明においては、複数の結晶化ガラス粉を所定割合でブレンドし、一括焼成してCCGを形成するため、様々な熱膨張係数を有する金属基板11に対しても熱膨張係数を最適化できる。このようにして、歪センサの耐力アップと低コスト化が可能となる。
なお、ここで結晶化ガラス粉の平均粒径は0.5〜20μmが望ましい。平均粒径が0.5μm未満の結晶化ガラス粉を作製するのは、破砕費用や分級費用が発生するため製品コストに影響を与える場合がある。また平均粒径が20μm以上の場合、焼結体の均質性に影響を与える場合がある。また複数の結晶化ガラス粉の平均粒径の差は5μm以下が望ましい。平均粒径の差が5μmを超えると、CCGペーストの均一性や焼結体の均一性に影響を与える場合がある。
なお複数の結晶化ガラスの結晶化温度の差は50℃以下が望ましい。結晶化温度の差が50℃を超える場合、焼結の均一性に影響を与える場合がある。
またガラスペーストの乾燥後の厚みは15〜250μmが望ましい。この範囲であれば上記ガラスペーストが焼成されてなるCCGの厚みが10〜200μmとなり、所定の特性を得ることができる。ガラスペーストの乾燥後の厚みが15μm未満もしくは焼成後の結晶化ガラスの厚みが10μm未満の場合、ピンホール等の影響を受ける場合がある。またガラスペーストの乾燥後の厚みが250μmを超える場合、あるいは焼成後の結晶化ガラスの厚みが200μmを超える場合、これらの材料費が製品コストに影響を与える場合がある。
なおCCGペースト中の結晶化ガラス粉の濃度は40〜80wt%が望ましい。CCGペースト中の結晶化ガラス粉の濃度が40wt%未満の場合、出来上がったCCGにボイドが発生しやすくなる場合がある。また80wt%を超えた場合、ペーストの流動性、レベリング性、印刷性が影響を受ける場合がある。
またCCGペーストの粘度は、ズリ速度が1〜100/s(/sはズリ速度の単位で、秒=secondの逆数である)の範囲で、100〜2000ポイズが望ましい。ズリ速度が1/s未満の場合、粘度を高精度に測定することが難しい。またズリ速度が100/sを超える場合、コーンプレート型のレオメータを使ったとしても、コーンとプレートの間に空気を巻き込みやすく、粘度を高精度に測定するのが難しい。また粘度が10ポイズ未満の場合、金属基板11の上で高精度なパターンの印刷が難しい(粘度が低くて、パターンがダレたり、にじんだりしやすくなる)。また粘度が200ポイズを超えると、粘度が高すぎてスクリーン印刷した後のスクリーンメッシュに起因するピンホールが発生しやすく、更にレベリングしにくい場合がある。
なお本実施の形態において、複数の結晶化ガラスは、結晶化温度、熱膨張係数、転移点温度の少なくとも一つが異なれば良い。例えば熱膨張係数が100×10−7/℃以下の範囲で異なっておれば、結晶化温度や転移点温度の差が無くて良い。
(実施の形態14)
実施の形態14では、図10に示した内部電極入りの歪センサの製造方法について説明する。まず異なる結晶化温度を有する複数の結晶化ガラス粉末を用意した。そして、これを樹脂溶液中に分散してガラスペーストとした後、図10に示すように、金属基板11の上に所定形状で印刷、乾燥した。さらにこの上に内部電極となる市販のAgを主体とした電極ペーストを所定形状に印刷、乾燥した。
次にこの電極ペーストを覆うように、上記ガラスペーストを印刷、乾燥した。こうして、ガラスペーストと電極ペーストとからなる積層体を形成した後、これら複数層を一括して焼成した。その後、図10に示すように、配線20や感歪抵抗体13を形成し、更にオーバーコート14を形成した。そして最後に半導体や各種チップ部品やコネクタ等を実装した。
こうして作製したサンプルのノイズ特性を測定したところ、図1に示した構造体より、耐ノイズ性が高いことが判った。このように、例えば配線20の一部を内部電極27に接続することにより、配線のインピーダンスを下げることができるためEMI(電磁界干渉)による電圧変動を低減できる。なお、内部電極27を金属基板11から電気的に浮かせることで、金属基板11からのノイズの混入を防止することもできる。なお内部電極の厚みは0.5〜30μmが望ましい。内部電極の厚みが0.5μm未満の場合、焼結後の電極が断線しやすいため耐ノイズ効果が得られない場合がある。また厚みが30μmを超えると、製品コストに影響を与える場合がある。また内部電極は銀を主体とする導電粉末が樹脂溶液中に分散されてなる電極ペーストを用いることが望ましい。また内部電極の焼成温度は500〜950℃が望ましい。この温度域で内部電極を焼成することで、内部電極に隣接して形成されたCCG粉も同時に焼成できるため、焼成コストを抑えることができる。また感歪抵抗体に接続される配線20も、銀を主体とする導電粉末が樹脂液中に分散されてなる電極ペーストを用いることができる。
こうした電極ペーストを500〜950℃で焼成することで、隣接するガラス材料や感歪抵抗体との一括焼成が可能となり、焼成コストを下げられる。なお配線20として、銀を主体として、パラジウム(Pd)を5〜20wt%の範囲で添加することで、部品実装時のはんだ喰われを防止できる。または白金(Pt)を同様に5〜20wt%の範囲で添加することにより、鉛フリーはんだを用いたときのはんだ実装性を高められる。なおPdやPtの割合が5wt%未満の場合、はんだ喰われ防止の効果が低い場合がある。またPdやPtの添加割合は多いほど、はんだ付け性が良好になるが、これらの割合が20wt%を超えた場合、材料費に影響を与える場合がある。
なお複数の結晶化ガラスの結晶化温度の差は50℃以下が望ましい。結晶化温度の差が50℃を超える場合、焼結の均一性に影響を与える場合がある。またCCGや非晶質ガラスに共通した元素(例えば、SiO2、AL2O3)を一定量添加しておくことで、こうした異種材料からなる複数層を一括焼成でき、製造コストを抑えられる。なお本実施の形態において、複数の結晶化ガラスは、結晶化温度、熱膨張係数、転移点温度の少なくとも一つが異なっていれば良い。例えば熱膨張係数が100×10−7/℃以下の範囲で異なっていれば、結晶化温度や転移点温度の差が無くて良い。
(実施の形態15)
実施の形態15では、図12に示した歪センサの製造方法について説明する。まず異なる結晶化温度を有する複数種の結晶化ガラス粉末を用意した。そしてこれを樹脂溶液中に均一に分散し、CCGペーストとした。また非晶質ガラス粉を樹脂溶液中に均一に分散し、非晶質ガラスペーストを作製した。まずCCGペーストを金属基板11の上に所定形状で印刷、乾燥した。次に、この上に内部電極27を形成する電極ペーストを所定形状で印刷、乾燥した。さらに、その上に上記CCGペーストを所定形状に印刷、乾燥した。次にこの上に上記非晶質ガラスペーストを所定形状に印刷、乾燥し、これら複数層を一括で焼成した。そしてこの上に図12に示すように、配線20や感歪抵抗体13を形成した後、オーバーコート14を形成した。最後に、半導体や各種チップ部品や、コネクタを実装した。こうして完成した歪センサの特性を調べたところ、実施の形態14〜16と同じ感歪抵抗体13を用いているにも関わらず、より高いGF値を得ることができた。このように、必要に応じて、感歪抵抗体13とCCGの間に、非晶質ガラス30を形成することができる。
なお非晶質ガラスとしては、表9に示すように、SiO2が40〜80wt%、CaOが5〜15wt%、PbOが3〜15wt%、Al2O3が1〜20wt%、ZrO2が1〜20wt%含まれる非晶質ガラスを用いることが望ましい。SiO2が40wt%未満の場合、焼結性に影響が出る場合がある。またCaOが5wt%未満の場合も焼結性に影響が出る場合がある。またPbOが3wt%未満の場合、この上に形成する感歪抵抗体の抵抗値やGFに影響を与える場合がある。またAl2O3の添加量が1wt%未満の場合、下地となるCCGにもAl2O3が含まれているため、互いのマッチング性に影響を与える場合がある。またZrO2が1wt%未満の場合、非晶質ガラスの熱膨張係数が低くなる場合がある。また、SiO2の含有率が80wt%を超える場合、ガラスの溶解温度が高くなる場合がある。またCaOの含有率が15wt%を超える場合、ガラスの焼結性に影響を与える場合がある。またPbOの含有率が15wt%を超えると、この上に形成する感歪抵抗体の特性に影響を与える場合がある。またAl2O3の含有率が20wt%を超えると、ガラスの焼結性が影響を受けたり、ガラス表面の平滑性に影響を与える場合がある。またZrO2の含有率が20wt%を超えると、Al2O3同様にガラスの焼結性が影響を受けたり、ガラス表面の平滑性に影響を与える場合がある。また必要に応じて、非晶質ガラスにB2O3を加えることも可能である。
なお本実施の形態において、複数の結晶化ガラスは、結晶化温度、熱膨張係数、転移点温度の一つ以上が異なれば良い。例えば熱膨張係数が100×10−7/℃以下の範囲で異なっておれば、結晶化温度や転移点温度の差が無くて良い。
(実施の形態16)
実施の形態15では、図17に示したコンポジットガラスを用いた歪センサの製造方法について説明する。まず異なる結晶化温度を有する複数の結晶化ガラス粉を用意した。そして、ここにセラミック粉として市販のアルミナ粉を添加し、所定の樹脂溶液中に均一に分散した。そして、作製したコンポジットガラスペーストを金属基板11の上に所定形状に印刷し、焼成し、コンポジットガラス35を形成した。こうして図1のCCG19の代わりに、コンポジットガラス35を用いた。次に図1に示すように、配線20や感歪抵抗体13、オーバーコート14を形成した後、所定の部品を実装し歪センサを完成させた。こうして作製した歪センサは、結晶化ガラス粉の一部を安価なセラミック粉に置き換えたことで、その分、製品に占める材料費を抑えることができた。なお、結晶化ガラス粉100重量部に対するセラミック粉の添加割合は、1重量部以上30重量部以下が望ましい。セラミック粉の添加量が1重量部未満の場合、セラミック粉の添加効果が得られない場合がある。また30重量部を超えると、CCGとセラミック粉が同時に焼結されてなるコンポジットガラスの焼結性が影響を受ける場合がある。
なお複数の結晶化ガラスの結晶化温度の差は50℃以下が望ましい。結晶化温度の差が50℃を超える場合、焼結の均一性に影響を与える場合がある。
なお本実施の形態において、複数の結晶化ガラスは、結晶化温度、熱膨張係数、転移点温度の少なくとも一つが異なっていればよい。例えば熱膨張係数が100×10−7/℃以下の範囲で異なっておれば、結晶化温度や転移点温度の差が無くて良い。
本発明は、絶縁材料として焼結安定性の高いCCG材料を用いるので、低コスト化と特性のバラツキ低減を実現するセンサや各種歪センサ等を提供できる。
本発明は各種荷重やトルク等を測定する歪センサ及びその製造方法に関する。
以下、感歪抵抗体を用いた従来の歪センサについて図面を参照しながら説明する。図18は従来の歪センサの断面図である。金属基板1上に結晶化ガラスほうろう層からなる電気絶縁層2を設ける。電気絶縁層2上に感歪抵抗体子3を結合させ、さらにその上にオーバーコート4を被覆して、荷重検出装置が構成されている。このような荷重検出装置を用いる車両用サスペンションが特許第2929757号公報に開示されている。しかし、結晶化ガラスの表面は、凹凸が大きく、滑らかでないために、抵抗値バラツキが大きくなることが、特開平6−137805号公報に開示されている。
図19は、焼成される前の結晶化ガラスの部分断面図を示している。焼成する前の結晶化ガラスは、個々のガラス粉5から構成されていることが判る。そしてこうしたガラス粉5が所定温度で焼成されて、電気絶縁層2を形成している。
図20は、結晶化ガラスの断面拡大図を示している。図20において、電気絶縁層2の表面6には細かい凹凸が残り、その内部にはボイド7が残っている。こうしたボイド7は、セラミック電子部品に一般的に含まれている。そして、それ自体は製品の信頼性には影響しないが、製品の特性バラツキ等の発生原因になることがある。次にこうした課題について、図21を用いて説明する。
図21は、メッシュベルト炉(Meshbelt Conveyor Furnace、以後MCFという)を用いて結晶化ガラスを焼成する場合の焼成条件を示す図である。図21において、横軸は時間、縦軸は温度を示している。サンプルはMCFの中で室温から少しずつ加熱され、900℃程度のピーク温度を一定時間保持した後、また室温まで少しずつ冷却される。また図21においてY軸のTemp1は結晶化ガラスの軟化温度、Temp2は結晶化温度に相当する。
一般的な非晶質ガラスの場合、軟化温度(ガラスが軟化変形し始める目安となる温度であり、一般的にはDTAで求められる)、軟化点を超えて、高温になるほどガラスはより軟化していく。しかし結晶化ガラスの場合、軟化点(図21のTemp1)前後でガラスは軟化するが、結晶化温度(図21のTemp2)に達するとガラスが結晶化してしまう。そのため結晶化ガラスが軟化している温度域は、Temp1の軟化温度からTemp2の結晶化温度の間となる。また図21において、Temp1とTemp2に対応する時間が、それぞれX軸のTime1、Time2である。つまり結晶化ガラスは、Time1(Temp1の軟化温度に相当)で軟化し始め、Time2(Temp2の結晶化温度に相当)で結晶化し、固体化する。このようにして結晶化した後の結晶化ガラスの溶解温度は1000℃以上となる。そのため、一度結晶化した後の結晶化ガラスは、ピーク温度(図21では900℃前後)でも溶解することなくそのまま固体状態で保たれる。つまり図21の焼成プロファイル8において、最初からTime1の間は、結晶化ガラスは図19に示すようにガラス粉5から構成された未焼成状態である。そしてTime1からTime2の間に、これらガラス粉5が同時に溶解し、Time2を超えた後は結晶化ガラスとして固体化している。
以上のように、結晶化ガラスは、Time1とTime2の間でのみ溶解するため、結晶化ガラスの溶解時での充分なレベリング(表面の平滑化)を行う時間を確保する必要があった。そのため安定した焼成を行うためには、焼成時間を短くすることは難しい。その結果、焼成工程での生産性効率は低かった。
さらに、金属基板の上で結晶化ガラスを一体化形成する場合、結晶化ガラスの焼成収縮はZ方向(厚み方向)だけ発生する。そして、XY方向(つまり金属基板の上に密着した面)における焼結収縮が阻害される。その結果、一般的な結晶化ガラス材料を使った各種製品(XYZの3次元的な収縮が可能なため、焼結中に発生する応力は均一化しやすい)とは異なり、上記構成の場合結晶化ガラスの焼成条件を最適化する技術的な難易度は高い。つまり、上記構成において、結晶化ガラスの焼成時間を短くすることは大きな課題であった。
本発明は、基板と、基板上に積層した結晶化ガラスと、結晶化ガラス上に積層した感歪抵抗体とを有し、結晶化ガラスは互いに異なる熱機械的定数を有する複数の結晶化ガラス粉を焼成して形成される複合結晶化ガラスである歪センサを提供する。このようにして、結晶化ガラスの溶融時間もしくは溶融温度域を広げられるため、焼成工程での生産性向上、センサの低コスト化を実現できる。
さらに、本発明は上記歪センサの製造方法を提供する。
以下本発明の実施の形態の一例を、図面を用いて説明する。図面は模式図であり、各位置を寸法的に正しく示すものではない。なお、DTAは示差熱分析(Differential Thermal Analysis)の略称である。また、本発明における熱機械的定数には結晶化温度、熱膨張係数、転移点温度などが含まれる。なお、図3、6A,6B、8中の矢印は参照する軸を表わしている。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるセンサの断面図である。図1に示すように、金属基板11の上に、複合結晶化ガラス19(Composite Crystallised Glass、以後CCGという)を介して、配線20や感歪抵抗体13が形成され、これらがオーバーコート14で覆われている。
図2は、CCGの断面拡大図である。従来の図20と比べると、図2に示すCCGの内部には、ボイド17が少なく、その大きさも小さいことが判る。またCCGの表面16は滑らかであることも判る。
本発明におけるCCGとは、夫々異なる軟化点、異なる結晶化温度を有する複数の結晶化ガラスを、粉末状態で均一になるように混合し、これを金属基板の上で同時に焼成して製造される。このようにして、従来の結晶化ガラスでは得られなかった広い温度領域(つまり軟化温度から結晶化温度までの間)が得られる。その結果、図2に示すようにCCGの内部にはボイド17が残りにくく、その表面16は滑らかになっている。
CCGによってボイドの減少や表面性が改善される理由について、図3を用いて説明する。図3は、本発明におけるCCGの示差熱分析(DTA)結果の一例を示している。DTAのグラフは、温度グラフ21、示差熱グラフ22とから構成され、ピーク23を有している。またX軸は時間、Y1軸は温度、Y2軸は示差熱をそれぞれ表わしている。DTAについて、更に詳しく説明する。まず、本発明のCCGのDTAを以下のようにして行った。約500mgのCCGを測定サンプルとし、リファレンスとしてはαアルミナを用いた。そして加熱速度を10℃/分として、室温から1000℃までの示差熱を測定した。図3は、約700〜800℃の測定結果を抜き出したものであり、温度グラフ21は、700℃付近から800℃付近まで昇温していることがわかる。また温度グラフ21において、ピーク23が観察される。次に、CCGの軟化、焼結の様子を説明する。図3の示差熱グラフ22は低温側で一定であるが、Time3付近において急激に低下する。このTime3における温度がTemp3であり、これがCCGの軟化温度に相当する。
さらに示差熱グラフ22は、Time3の後は一定時間下がった後で、Time4付近で急激に増加する(図3では、グラフ枠内からはみ出している)。このTime4での温度がCCGの結晶化温度に相当する。またTime4以降で示差熱グラフ22はグラフ枠内から大きく上にはみ出している。これはCCGの結晶化熱によるものであり、この結晶化熱は温度グラフ21ではピーク23として観察される。
こうしてTime4で結晶化熱を発生しながら結晶化した後のCCGは、安定化しているためTime4以降で大きく変化することは無い。本発明のCCGの場合、ガラスの流動領域に相当するTemp3(軟化温度)とTemp4(結晶化温度)の差が、従来の結晶化ガラスに比べて大きい。その結果、結晶化ガラスが溶解し、結晶化するまでに平滑化に要する充分な時間が得られることになる。
次に図4を用いて、CCGのMCFにおける焼成プロファイル24について説明する。図4において、X軸は時間、Y軸は温度を示している。
図4に示すように、金属基板上に所定パターンで形成されたCCGは、MCFの中で室温から少しずつ加熱され、900℃前後のピーク温度を一定時間保持した後、また室温まで少しずつ冷却される。また、Temp5が、CCGの軟化点、Temp6がCCGの結晶化温度に相当する。CCGの場合、室温からTemp5までの温度(時間軸では、0分からTime5までの間)では、軟化温度(Temp5)未満であるため、個々のガラス粉は溶解していない。そしてY軸のTemp5からTemp6まで(X軸で説明するとTime5からTime6の間)は、個々のガラス粉がそれぞれの軟化温度に応じて温度で溶解し、CCGとして結晶化する。そしてTemp6から上の温度(X軸では、Time6から60分までの間)は、CCGとして結晶化したままである。なお図4のTemp5は図3のTemp3に相当する。また図4のTemp6は図3のTemp4に相当している。
次にCCGの焼成される前の状態(例えば、CCGペーストが脱バインダされた後の状態)を図5に示す。図5に示すように、第1の結晶化ガラス粉25と第2の結晶化ガラス粉26とから構成されている。第1の結晶化ガラス粉25と第2の結晶化ガラス粉26は、互いに異なる軟化温度、結晶化温度を有している。図5においては、第1の結晶化ガラス粉25と第2の結晶化ガラス粉26が、粉末の状態で均質に混ざっていることを示している。そしてこれら異なる特性を有する複数種のガラス粉を有するペーストを金属基板11の上で印刷して所定形状を形成する。さらに、後述する図4のような焼成プロファイルによって焼成され、CCG19を形成する。
なおCCGを構成する第1の結晶化ガラス粉25や第2の結晶化ガラス粉26の平均粒径は0.5〜10μmが望ましい。特にガラス粉の平均粒径が0.3μm未満の場合、ガラス粉同士の均一分散が難しくなる場合がある。単一のガラス粉を使う場合、平均粒径が0.1〜10μm以下であっても使うことができる。なぜなら0.1〜0.3μm程度の微細なガラス粉(ガラス粉は0.5μm未満の微細なものほど凝集しやすい)が、5〜10μm程度の凝集体を形成していたとしても、焼成すれば均一な(同じ)結晶化ガラスとなるためである。
一方本発明のCCG19の場合、異なるガラス粉が同時に焼成されて構成されるため、図5に示すように第1の結晶化ガラス粉25と第2の結晶化ガラス粉26はより均一に混合、分散されることが望ましい。そのため、平均粒径は0.5μm以上が望ましい。またガラス粉の平均粒径が10μmを超える場合、CCGの厚みに加えて、ガラス粉の粒径が影響することがある。それは、平均粒径が10μmを超える場合、粒径が20μmや30μmといったガラス粉が含まれている可能性があるからである。また第1の結晶化ガラス粉25と、第2の結晶化ガラス粉26との平均粒径の差は5μm未満が望ましい。これらの平均粒径の差が5μmを超えると、出来上がったCCGの均一性に影響を与える場合がある。
つぎに図6を用いて、個々のガラス粉の挙動について説明する。図6Aと6BはCCGを構成する複数種類の異なる結晶化ガラスのDTA結果を示す図である。図6Aは第1の結晶化ガラス粉のDTA、図6Bは第2の結晶化ガラス粉のDTAの結果をそれぞれ示している。本来、図6Aと図6Bは元々同じグラフ枠の中に書くべきものであるが、複雑になりすぎるために図6A、図6Bとして分けている。Y軸は共通なので2つの図は重ね合わせることができる。また、各軸の説明は図3と同じであるので省略する。なお、DTAとは、試料に発生した熱エネルギーの変化を定量的に検知する。そして、結晶化ガラスの溶解や結晶化の様子を熱エネルギーの変化(例えば、吸熱現象、発熱現象)として検出するものである。
図6Aに示すように、温度グラフ21aは時間とともに昇温しているが、Time7付近で示差熱グラフ22aが急激に低下(吸熱)している。このときの温度(Temp7)が第1の結晶化ガラスの軟化温度に相当する。さらに、Time8付近で示差熱グラフ22aが急激に上昇(発熱)しており、このときの温度(Temp8)が第1の結晶化ガラスの結晶化温度に相当する。
同様に図6Bにおいて、温度グラフ21bは時間とともに昇温しているが、Time9付近で示差熱グラフ22bが急激に低下(吸熱)しており、このときの温度(Temp9)が第2の結晶化ガラスの軟化温度に相当する。さらに、Time10付近で示差熱グラフ22bが急激に上昇(発熱)しており、この時の温度(Temp10)が第2の結晶化ガラスの結晶化温度に相当する。
図6Aと図6Bの温度軸(Y軸)が共通であるので、これを互いに照らし合わせ、同じ一つのX軸(時間軸)の順番に並べると、Time7、Time9、Time8、Time10の順番となる。言い換えると、Time7はTemp7、Time9はTemp9、Time8はTemp8、Time10はTemp10に相当するので、これらを同じ一つのY軸(温度軸)に並べると、温度の低い方から順番に、Temp7(第1のガラスの軟化温度)、Temp9(第2のガラスの軟化温度)、Temp8(第1のガラスの結晶化温度)、Temp10(第2のガラスの結晶化温度)となる。
そして、これら複数種の異なる示差熱グラフを有するガラス粉が、図5に示すように混合されて一括焼成されるため、本発明のCCGの流動領域は、Temp7(第1の結晶化ガラスの軟化温度)からTemp10(第1の結晶化ガラスの結晶化温度)までの広範囲に広げられる。
そして図6Aと図6Bの結果を合成したものが、図3に相当することになる。このように金属基板上にガラス層を形成する場合、CCG層として形成するとその焼結領域を広げられる。その結果、MCFにおける焼成速度を上げたり、従来は一括焼成の難しさから焼成を複数回(もしくは複数層)に分けていた場合に対しても、より厚い層を一括で焼成形成できるので製品の製造コストを下げられる。
またCCGを構成する異なるガラス粉は、それぞれの組成に応じた特有の結晶化温度を有するため、同じ温度で一斉に結晶化することにならない。特に結晶化ガラスを構成するガラス粉が単一な示差熱グラフを示している場合、結晶化温度に達した時、結晶化に伴い多量の発熱(結晶化熱)が発生する。こうした結晶化熱が隣接するガラス粉にも伝わってしまうため、連鎖的に急激な結晶化が起こることがある。
しかし本発明に示すように、それぞれに固有の結晶化温度を有するガラス粉を用いることで、結晶化熱の発生する温度域を広げられ、更にガラス粉自身を微粒子としておくことで結晶化熱の発生量も少なく、更に別々のガラス粉同士を混合させておくことで、結晶化熱も全体的に均一化し、温和な反応とすることができる。なお図3においては、温度グラフ21には結晶化熱に起因するピーク23を図示しているが、これは温度グラフ21を測定しているDTA装置の測定パン(図示していない)の熱容量が小さいためである。このようにして、CCG19の断面や内部は、図2に示したものとすることができる。上記CCGを用いたセンサは、結晶化ガラスの特徴(高強度、高電気絶縁性)を示すとともに、充分な平滑化に要する時間が得られるため、表面の平滑性等にも優れている。その結果、センサの特性バラツキの低減、センサ特性の安定化を実現できる。
なおCCG19の厚みは10〜100μmが望ましい。厚みが10μm未満の場合、金属基板11の表面の凹凸の影響を受ける場合がある。100μmを超えると、製品の材料費に影響を与える場合がある。
なおCCGを形成する、異なる組成を有する複数種の結晶化ガラス粉末は、500〜900℃の温度で、金属基板と共に熱処理されて結晶化するものであることが望ましい。結晶化温度が500℃未満の結晶化ガラスは特殊で高価なものとなる。また結晶化温度が900℃を超える結晶化ガラスを使うには、高価で特殊な金属基板を使う必要が有り、製品の材料コストに影響を与える。
(実施の形態2)
実施の形態2ではCCGの組成の一例について、表1から表6を用いて説明する。なお、表1から表6における各成分の割合は重量%(wt%)で表わしている。また、評価は○、△、×で表わし、それぞれ良、可、不可を表わしている。
表1から表6は、金属基板上でそれぞれの組成を有する結晶化ガラスのマッチング性を評価した結果を示す。各表では、MgOの添加割合を変化させている。MgOの割合が結晶性と相関があるため、表5に示したようにMgOの割合は35〜55wt%が良いことが判った。このようにMgOの熱膨張係数は、金属基板に近いため、金属基板とのマッチング性に影響しやすい材料でもある。また表2から表6のように、更に色々な組成について検討した。
その結果、MgOが多すぎると表面性が低下することが判った。またBaOも多すぎると耐熱性、密着性が低下することが判った。更にAl2O3が1〜30wt%の範囲で添加されることが望ましい。また一定量のMgOとAl2O3が共に共存していることが、ガラスの安定化に重要なことも判った。また表6に示すように、添加量を増やしすぎても、うまく焼結できないことが判った。以上の結果に基づき、金属基板上で焼成可能な結晶化ガラスの基本組成を、表7に示す。
次に表7の結晶化ガラスの組成範囲内で、溶解温度、結晶化温度、更には転移点(ガラスの熱膨張係数が急激に変化する温度)などが異なる複数種類の結晶化ガラスからCCGを作製した。その結果を8に示す。
表8に示すように、第1の結晶化ガラスの組成としては、MgO:35〜50wt%、B2O3:10〜30wt%、SiO2:10〜25wt%、BaO:3〜15wt%、Al2O3:10〜30wt%、SnO2:0.5〜5wt%、P2O5:0.1〜5wt%が望ましい。
同様に第2の結晶化ガラスの組成としては、MgO:35〜50wt%、B2O3:10〜30wt%、SiO2:10〜25wt%、BaO:5〜25wt%、AL2O3:1〜10wt%、SnO2:0.5〜5wt%、P2O5:0.1〜5wt%が望ましいことが判った。
更に第1の結晶化ガラスと第2の結晶化ガラスの組成において、B2O3、SiO2、SnO2、P2O5の内、一種類以上の元素を共通元素として同程度添加しておくことで、これら結晶化ガラスの製造コストを下げられる。特に表3に示すように、MgO、BaO、Al2O3の3元素をそれぞれ一定割合の中で増減させることで、出来上がったCCGの作業性(例えばMCFでの焼結温度)に影響を与えることなく、ガラスの特性(熱膨張係数、転移点、溶解温度、結晶化温度等)をそれぞれ固有に有する複数のガラス組成を開発することができた。
特に表8に示したように、第1の結晶化ガラスと第2の結晶化ガラスの組成において、MgO、BaO、Al2O3の内の1種類以上の元素の含有率を増減させることで、それぞれの溶解温度、結晶化温度をセンサに最適な範囲で増減できる。
本実施の形態2では、表1の結果を基に、結晶化ガラスを構成する酸化物の割合を変化させ、それぞれ異なる性質を有する複数の結晶化ガラスを作製し、これらをブレンドしている。このようにして結晶化ガラスの構成要素を変化させることで様々な軟化点、結晶化温度、熱膨張係数のものが得られ、これらをガラスペーストの中に適量配合することで、CCGの特性を改善できる。そして、結晶化ガラスの基本組成は同じとし、BaOやAl2O3、MgO等の添加量を増減させることで、それぞれに特有な軟化温度と結晶化温度を発現させることができる。そして、これらを混合、同時焼成することで単一の結晶化ガラス材料に比べてより広い流動領域を得ることができる。なおCCGを形成する複数のガラス材料として、Al2O3、BaO、もしくはMgOの内、一つ以上の添加元素の割合は、1〜20wt%の割合で異なっている(もしくは1〜20wt%の割合で差があること)ことが望ましい。これはAl2O3、BaO、MgOが結晶化ガラスを構成する主要元素であり、これらの含有率の違いによって、結晶化ガラスの軟化温度、結晶化温度が変化するためである。またこれら元素の熱膨張係数もそれぞれ異なることを利用して、CCGの熱膨張係数を調整することができる。
以上のように、CCGを形成する複数のガラス材料のそれぞれの特徴(焼成プロファイル、熱膨張係数)を組合せることができるため、様々な基板、様々な用途に対応できるセンサを実現できる。なお添加元素の割合が1wt%未満の場合、それぞれのガラスの特性に差が殆ど表れない場合があると共に、ガラスロットでの組成バラツキの影響も受けやすい課題がある。また添加量が20wt%を超えると、焼結温度等の差が大きくなり、一括焼成できない場合がある。
なおCCGを構成するガラス材料として、SiO2やB2O3の含有率を0.1〜10wt%の割合で変化させることもできる。SiO2やB2O3の添加量を変化させることで、結晶化ガラスの結晶化温度や融点等を効果的に変化させることができる。なおSiO2やB2O3の添加量の差が0.1wt%未満の場合、組成バラツキの範囲であり、CCGとしての特徴が得られない場合がある。また添加量の差が10wt%を超える場合、CCGとして一括焼成できない場合がある。
なお結晶化ガラスの転移点温度は、500〜750℃が望ましい。転移点温度が500℃未満の場合、ガラス材料が特殊になって使いこなしにくい場合がある。また転移点温度が750℃を超えると、ガラスの熱処理温度が高くなるため、焼成炉や金属基板11に耐熱性の高い高価なものを使う必要がある。なおここで、転移点とは、熱膨張曲線の傾きが急激に変わる温度を意味し、ガラス構造が固体状態から液体状態に変化していることに相当している。
本発明の歪センサに用いる結晶化ガラスの場合、特に550℃から700℃の間に転移点を持つものが望ましい。こうしたガラス材料の場合、結晶化温度が700℃から800℃になるため、汎用の設備を使うことができる。
また複数の結晶化ガラスの転移点温度の差は、50℃以下が望ましい。また転移点の差が50℃を超える場合、焼成が不均一になる場合がある。なお複数の結晶化ガラスの転移点温度に差が無くとも、その熱膨張係数に差があれば、下地となる金属基板11に対する熱膨張係数を最適化でき、CCGの強度を高めることができる。
またCCGを構成するガラス粉の熱膨張係数は、90×10-7〜200×10-7/℃の範囲内が望ましい。この範囲であれば、各種耐熱性が高く、安価な金属部材を金属基板11として用いることができる。また複数の結晶化ガラスの互いの熱膨張係数差は100×10-7/℃以下が望ましい。100×10-7/℃を超える場合、複数種の異なるガラス粉をブレンドしても、熱膨張係数の差が大きすぎて焼結性に影響を与える場合がある。
なお複数の結晶化ガラスの結晶化温度は、500〜900℃が望ましい。結晶化温度が500℃未満のガラス部材は特殊になる。また結晶化温度が900℃を超える場合、焼成炉に特殊なものを使う必要がある。また複数の結晶化ガラスの結晶化温度の差は、50℃以下が望ましい。50℃を超える場合、結晶化温度の温度差が焼結性に影響を与える場合がある。
(実施の形態3)
実施の形態3では、図7、図8を用いてCCGを構成する複数のガラス材料として、熱膨張係数が異なるものを用いる熱膨張係数の微調整について、説明する。
図7は、CCGを構成する部材の割合と、金属基板上でのCCGのクラック強度との関係を示す図である。異なる熱膨張係数を有する金属基板Aと金属基板Bに対するクラック強度の測定結果である。
図7において、第1の結晶化ガラスと、第2の結晶化ガラスとの熱膨張係数は異なっている。この結果、熱膨張係数の異なるCCGが構成されるので、その時のクラック強度を得る様子を示すものであり、X軸は第1の結晶化ガラスと第2の結晶化ガラスの互いの混合割合をwt%で示している。
なおX軸において、第1の結晶化ガラスが80、第2の結晶化ガラスが20と言うことは、例えば、第1の結晶化ガラスを80wt%、第2の結晶化ガラスを20wt%秤量し、これを所定の樹脂溶液等と共に混練し、ガラスペーストとした後、これを焼成して構成されるCCGを意味する。
Y軸は、クラック強度である。またY軸において、クラック強度が3000μεの位置と、クラック強度が5000μεの位置に横線を引いている。これは、ある製品に求められるクラック強度の限界値(5000μεの方)と必要値(3000με)の一例である。これら限界値、必要値はセンサの用途によって大幅に変更されることがあると共に、ガラス層の厚みによっても変化する。
なお金属基板上に形成したCCGのクラック強度の測定は、以下のようにして行う。所定の治具にサンプル(決められた寸法の金属基板の上に決められた厚みのガラス層を形成したもの)をセットし、そのサンプルの表面に市販の箔ゲージを貼り付け、サンプルに錘をつけながらサンプルに発生する歪を測定する。
また図7において、金属基板Aと金属基板Bの熱膨張係数は異なっている。金属基板Aの限界クラック強度(5000με)が得られるガラス組成(第1の結晶化ガラスと第2の結晶化ガラスの混合割合)が、X軸における点Aである。同様に金属基板Aにおける必要クラック強度(3000με)が得られるガラス割合が点Bである。
このように、金属基板Aに対しては点Aと点Bの間の組成割合が適当であることが分かる(実際は、クラック強度の測定バラツキ、ガラス組成や製造工程でのバラツキを加味して、点Aと点Bの中央付近とすることが望ましい)。またユーザーニーズによって、基板の材質、厚み、用途等が様々となる。例えば、金属基板Bに対応する場合は、ガラス割合が点Cと点Dの間で、最適化すれば良いことが分かる。
図8は、CCGを構成する複数のガラス材料の混合割合と、そのときの熱膨張係数、更にそのときの溶解温度域について説明するものである。図8において、X軸は第1の結晶化ガラスと、第2の結晶化ガラスの互いの混合割合をwt%で示している。Y1軸は、X軸の組成のガラス材料が焼成されてできたCCGの熱膨張係数を示す。なお熱膨張係数は、測定温度域で変化することがあるため、用途に応じた測定温度域での熱膨張係数を実測することが望ましい。
またY2軸は、X軸の組成のガラス材料が焼成されてできたCCGの溶解温度域であり、これは図3における、Temp3とTemp4の差に相当する。この溶解温度域が広いほど、原料となる各種結晶化ガラス粉が溶解して結晶化してCCGへと変化するまでの変化を遅くできる。図8に示すように、複数のガラス材料を混合することで、熱膨張係数を変化させられると共に、溶解温度域も広げられることが判る。
なお、複数のガラス粉を混合して、同時焼成してなるCCGの場合、混合するガラス粉の割合は、第1の結晶化ガラス:第2の結晶化ガラス=5:95〜95:5の範囲が望ましい。第1の結晶化ガラスが5wt%未満で、かつ第2の結晶化ガラスが95〜100wt%の場合は、CCGとしての、溶解温度域の拡大や熱膨張係数の微調整の割合が限定されるため、CCGとしての作用効果が得られない場合がある。
(実施の形態4)
実施の形態4では、複数の結晶化ガラスのブレンドについて説明する。つまり任意の結晶化ガラス同士をブレンドしても、本発明のCCGを形成するものでは無い。結晶化ガラスとは、焼成時に結晶種が発生して結晶化し、結晶化ガラス特有の高強度、高耐久性を発現させるものである。そのためCCGが構成する複数のガラス材料として、まったく異質の結晶種を有するもの同士を混合して結晶化した場合、結晶化が阻害されたり、所定の特性が得られない可能性がある。
こうした場合、安定したCCGを構成するためには、CCGの原料となる各々の結晶化ガラスにおける結晶種が共通していることが望ましい。複数の異なる組成の結晶化ガラスを混合して一括焼成する際に、互いに共通している結晶種を有することで、その結晶化が阻害されることなく、安定した焼成が可能になる。
次に図9を用いて、CCGを構成する複数の結晶化ガラスの結晶構造について説明する。なお結晶化ガラスの結晶構造については、所定温度で焼成してできた結晶化ガラスを、市販のX線回折装置(XRD)で測定することが望ましい。XRDとは物質にX線を照射した場合の波動の回折現象を利用して、物質中の原子および分子配置の周期性に関する情報を得るための装置である。回折面間隔をDとすると、X線の回折により2Dsinθ=nλ(ブラッグの回折式、nは整数、λは波長を表わす)で示される方向にだけ強度が認められ、それ以外の場所では弱くなり観察されないものである。そのため、結晶質の同定方法として有用である。本実施の形態においても、XRDを用いることで、CCGを構成する個々のガラス材料の結晶種を同定するのに有用である。
図9Aは、第1の結晶化ガラスのXRD結果を示すものである。図9Bは第2の結晶化ガラスのXRD結果を示すものである。図9A、図9BのX軸は2θを示している。Y軸は信号強度(Intensity)を示し、大きさは任意尺度である。図6Aと図6Bの結果から、各々の結晶化ガラスにはそれぞれ特有のピークを有しており、そして同じ2θ位置に共通したピークを有していることが判る。こうした共通する結晶種としてはBaMg2SiO7が望ましい。結晶種がBaMg2SiO7の場合、2θの19.7°、27.5°、34.8°の位置にこうしたピークが現れる。
このように、複数の結晶化ガラスの粉体を混合し、一括焼成してCCGを得る場合でも、このように出発原料となる結晶化ガラス同士に共通した結晶種を有することが望ましい。このようにして、一括焼成する際の焼結安定性を高められると共に、出発原料となる結晶化ガラスの材料選定も容易になる。
更に詳しく説明する。まず個々のガラス原料(第1の結晶化ガラス、第2の結晶化ガラス等)を所定温度(充分結晶種が発生する温度が望ましく、具体的には図4に示した焼成プロファイル24のピーク温度以上が望ましい)で焼成し、それぞれの結晶化ガラスを形成する。次にこれら結晶化ガラスをXRDにより、それぞれの固有の回折パターンを測定する。
なお、複数の結晶化ガラスが焼成してなるCCGにおいて、結晶種はBaMg2SiO7を有することが望ましいが、BaMg2SiO7の元素比に限定される必要はない。表7に示した結晶化ガラスを構成する基本元素から形成される結晶種であれば良い。例えばBaもしくはMgもしくはSiのBの3元素の内、2種類以上の元素からなる結晶種であれば良い。
(実施の形態5)
実施の形態6では、CCGを用いたセンサの耐ノイズ特性を向上させる様子を、図10を用いて説明する。図10は、CCG19の内部に内部電極27を内蔵したセンサの断面図である。このようにして、耐ノイズ特性を改善できる。
特に本発明のように金属基板の上に、絶縁層を形成したセンサの場合、金属基板自身がボルト等を用いて、乗用車のシャーシ等の所定の構造体の上に取付けられる。一般にこうした構造体はそうした他の回路部品の共通GNDとなっている場合がある。そのため、他の回路部品の使用状況によって、GND自体の電圧が変動し、GNDに高周波系の信号が重畳してしまう場合がある。またGND電圧が変化することによって、結果的に、出力電圧や入力電圧等も影響されてしまうことが多い。こうした場合、図10のようにCCG19の内部に内部電極27を形成し、これをGNDとすることで、こうした影響を防止することができる。なお、内部電極27はコストの面から1層が望ましいが、1層に限定する必要は無い。すなわち、内部電極27は1層の場合でも、複数パターンであっても良い。そして、内部電極27を複数に分割することで、一部をGND、一部を信号用にすることにより、センサの小型化と耐ノイズ性を改善できる。
なお、図10において、金属基板11と内部電極27の間に形成されるCCG19の厚みは10〜100μmが望ましい(つまり複合結晶化ガラス19の内部に内部電極27を形成した場合、複合結晶化ガラスのトータルの厚みは20〜200μmが望ましいことになる)。なおCCG19の厚みが10μm未満の場合、金属基板11の表面粗さの影響によって、金属基板11と内部電極27の間で絶縁抵抗が低下する場合がある。また内部電極27と配線20や感歪抵抗体13の間に形成される複合結晶化ガラス19の厚みは10〜100μmが望ましい。10μm未満の場合、ガラスペーストや製造工程中に混入したゴミや異物等の影響を受け、絶縁抵抗が低下する可能性がある。またこれらの厚みが100μmを超える場合、CCG19の使用量が増加するため、製品のコストに影響する可能性がある。
また内部電極27としてはAgを主体としたものを、厚み0.5〜30μmで形成することが望ましい。Agの厚みが0.5μm未満の場合、焼成後の抵抗値が増加するために内部電極として機能しない場合がある。また厚みが30μm以上では、材料費がコストに影響する場合がある。
また金属基板11と内部電極27を電気的に接続することもできる。また金属基板11と配線20を電気的に接続することもできる。また内部電極27と配線20を電気的に接続することができる。こうした接続には、CCGに形成したビア孔(図10には図示していない)を使うことができる。
またビア孔の大きさは10μm〜10mmが望ましい。10μm未満のビアの形成は難しく、10mmを越えるビア孔はパターンの高密度化に影響する可能性がある。このように、配線20の一部に、金属基板11や内部電極27を、ビアを介して電気的に接続しておくことで、配線20に接続されたコネクタ(図示していない)を介して、外部との信号のやり取りを行う場合、ノイズ防止効果、出力の安定化等の作用効果が得られる。
また内部電極27とCCG19を同時に焼成する場合、内部電極27となる内部電極ペーストの中に、予めCCGを形成するガラス粉を一種類以上、粉末状態もしくはペースト状態で添加しておくことが望ましい。こうすることで、内部電極ペーストと、CCGを形成するCCGペーストの同時焼成時における、収縮差による剥離や割れ等の課題発生を防止できる。特に、CCGでは、その溶解温度域を広げていると言っても結晶化温度が存在するため、一般的な非晶質ガラスのような広い温度域は得られない。
つまりCCGの溶解温度域未満の低温領域では、図5に示したように個々のガラス粉同士は互いに接触しているだけであり強度的に弱い状態になっている。そのためこの状態で内部電極ペーストが焼結し収縮してしまうと、ガラス粉の弱い結合が影響を与える可能性がある。そのため、この溶解温度未満の領域では内部電極ペーストは焼結収縮しないことが望ましい。そのため、内部電極ペーストには、焼結開始温度の高い銀粉を含むものを使うことが望ましい。
例えば、従来の平均粒径が1μm未満のAg粉を主体として内部電極ペーストの場合、焼結開始温度が比較的低いため、CCGを形成する個々のガラス粉同士が互いに弱く接触しているだけの溶解温度未満の領域と重なり、クラック発生の一原因になる可能性がある。そのため、望ましくは平均粒径が1μm以上のAg粉を主体とした内部電極ペーストを用いることが望ましい。
更に、平均粒径が1〜5μmの範囲で、粒度分布幅の狭いAg粉を選ぶことが望ましい。これは1μm未満の微細なAg粉が、Ag粉に含まれている場合、これらが内部電極の焼結開始温度に影響を与える可能性がある。
(実施の形態6)
実施の形態6では、複数の異なるCCGを用いた場合のセンサについて、図11を用いて説明する。図11において、第1のCCG28と、第2のCCG29の間に内部電極27を形成しているが、センサの使用状況によっては内部電極27が不要な場合もある。また内部電極27を形成する場合でも、第1のCCG28と第2のCCG29の界面に形成する必要は無く、第1のCCG28の内部や、第2のCCG29の内部に形成してもよい。
このように、センサの厚み方向で、複数種類のCCGを形成することで、センサ自体の構造の最適化設計が容易になる。なお、図11において、複数のCCGを多層に積層する場合、熱膨張係数の大きさの順番は、金属基板>第1の複合結晶化ガラス≧第2の複合結晶化ガラスとすることが望ましい。
CCG28、29より金属基板11の熱膨張係数が小さい場合、センサとしての必要なクラック強度が得られない場合がある。また第1のCCG28と第2のCCG29の熱膨張係数を比較した場合、互いの熱膨張係数は同じか、第1のCCG28の熱膨張係数の方が、第2のCCG29のものより大きい方が望ましい。このようにして、第1のCCG28と第2のCCG29の間にも圧縮応力を発生させられるため、センサの耐力(yield strength)向上を実現できる。
(実施の形態7)
実施の形態7では、CCGと非晶質ガラスの両方を用いたセンサについて、図12を用いて説明する。図12に示すように、少なくとも感歪抵抗体13を非晶質ガラス30の上に形成することで、感歪抵抗体13と第2のCCG29のマッチングを改善することができる。特に、従来の感歪抵抗体13を形成する感歪抵抗体ペーストは、非晶質ガラス30の上で、その特性を出すように設計されていることが多い。このように従来の感歪抵抗体ペーストの場合にも、それ特有の特徴があり、このような場合、図12に示すような構成にすることができる。従来のセンサとして、例えば、金属基板11の上に直接、非晶質ガラス30が形成され、その上に感歪抵抗体13が形成される構造が使われている場合がある。こうした従来構造の場合、絶縁層に非晶質ガラスを使うため、強度が不足する場合がある。このように従来のセンサ構造(例えば、金属基板11の上に直接、非晶質ガラス30が形成され、その上に配線20や感歪抵抗体13が形成される場合)、内部電極を非晶質ガラスの中に内蔵することは難しい。これは非晶質ガラスの中に内部電極を形成した後に、配線20や感歪抵抗体13を形成する際に熱処理した場合、非晶質ガラスが再軟化して、内部電極27との間で剥離やクラックが発生する場合があるためである。なお結晶化ガラスの中に内部電極を内蔵した場合、結晶化ガラスはその後の工程で再軟化しないためこうした課題は発生しない。こうした場合、新しく図12の構造を選ぶことで、内部に内部電極を形成しながら、更に第2の結晶化ガラス29と感歪抵抗体13の相互拡散等を防ぐことができる。次に表9を用いて、こうした場合に使われる感歪抵抗体に対してマッチング性の高い非晶質ガラスの組成について説明する。
RuO2を感歪抵抗体とする場合、感歪抵抗体中にPbO系のガラス材料が添加されていることが多い。そのため感歪抵抗体となる下地にもPbOを一定量含ませた材料とすることで、感歪抵抗体の特性を引き出しやすい。またSiO2を主体とすることで、ガラスの強度や絶縁性を高めることができる。更にここにCaOやAl2O3、PbOを添加することで、ガラスの焼結性や流動性を高められる。更にここにZrO2を一定量含ませることが望ましい。SiO2(熱膨張係数0.5ppm/℃と小さい)が多い非晶質ガラス組成であっても、この中にAl2O3(熱膨張係数は8.1ppm/℃)を加えることで、熱膨張係数を金属基板並に高めることができる。
更に熱膨張係数を高めるために、弾性率にも優れ、熱膨張係数がAl2O3より更に大きいZrO2(熱膨張係数10.4)を添加することで、更に非晶質ガラスの熱膨張係数を金属基板にマッチングさせることができる。なお、Al2O3やZrO2の添加量が多すぎると、ガラスの焼結温度や溶解時の流動性に影響を与える可能性がある。
なお非晶質ガラスの組成としては、表9に示すように、SiO2が40〜80wt%、CaOが5〜15wt%、PbOが3〜15wt%、Al2O3が1〜20wt%、ZrO2が1〜20wt%含まれる非晶質ガラスを用いることが望ましい。SiO2が40wt%未満の場合、焼結性に影響が出る場合がある。またCaOが5wt%未満の場合も焼結性に影響が出る場合がある。またPbOが3wt%未満の場合、この上に形成する感歪抵抗体の抵抗値やGF(Gauge Factor、歪に対する抵抗値の変化率を意味する。GFの値が高いほど、感歪抵抗体としての感度が高いことになるため、GFの値は高いことが望ましい)に影響を与える場合がある。また、Al2O3の添加量が1wt%未満の場合、下地となるCCGにもAl2O3が含まれているため、互いのマッチング性に影響を与える場合がある。またZrO2が1wt%未満の場合、非晶質ガラスの熱膨張係数が低くなる場合がある。またSiO2の含有率が80wt%を超える場合、ガラスの溶解温度が高くなる場合がある。またCaOの含有率が15wt%を超える場合、ガラスの焼結性に影響を与える場合がある。また、PbOの含有率が15wt%を超えると、この上に形成する感歪抵抗体の特性に影響を与える場合がある。またAl2O3の含有率が20wt%を超えると、ガラスの焼結性が影響を受け、ガラス表面の平滑性に影響を与える場合がある。またZrO2の含有率が20wt%を超えると、Al2O3同様にガラスの焼結性が影響を受け、ガラス表面の平滑性に影響を与える場合がある。また必要に応じて、非晶質ガラスにB2O3を加えることも可能である。
特に感歪抵抗体の下地に非晶質ガラスを用いた場合、感歪抵抗体の焼成時に下地の非晶質ガラスが再溶解(もしくは再軟化)してしまう可能性がある。そのため、下地が非晶質ガラスの場合、感歪抵抗体とのマッチング性が重要になる場合がある。
なお、SiO2が40wt%未満の場合、非晶質ガラスの電気的特性に影響を与える場合がある。またSiO2が80wt%を超えると焼結温度が高くなる場合がある。またPbOが3wt%未満と少ない場合、PbOガラスを含む感歪抵抗体の特性が影響を受ける場合がある。またPbOが20wt%を超えると、溶解温度が低くなる場合がある。
また非晶質ガラス層(図12の非晶質ガラス30に相当)の厚みは、5〜50μmが望ましい。非晶質ガラス層の厚みが5μm未満の場合、非晶質ガラスのピンホールやボイド(数μmの微細な空隙)の影響を受ける場合がある。また50μmより厚い場合、非晶質ガラスの材料費がコストに影響する場合がある。
(実施の形態8)
実施の形態8では、感歪抵抗体とCCGとのマッチングについて、図13を用いて説明する。図13は非晶質ガラスとCCGのマッチングを改善したセンサの断面図である。第3のCCG31は、第1のCCG28と、非晶質ガラス30とが同時に焼成されて形成されたものである。このように、必要に応じて、結晶化ガラスと非晶質ガラスを同時に焼成されてなる第3のCCG31を形成することが好ましい。このようにして、第3のCCG31の上下に形成された第1のCCG28と、非晶質ガラス30との材料マッチングを行うことができる。非晶質ガラス30と、CCGとのマッチングが難しい場合、このように第3のCCG31を中間層に形成することによって、互いの熱膨張係数をマッチングさせることができるので、センサを構成する各種部材の応力分布を最適化設計しやすい。
またこうした中間層を形成することにより、第1のCCG28と、非晶質ガラス30等の複数の異なる材料から形成された複数のガラス層とを一括焼成させやすくなり、製品の製造コストを下げられる。このように、複数の異なる材料から形成された複数のガラス層を一括焼成する場合でも、各層で固有の軟化温度、結晶化の有無等の違いによる焼結収縮挙動差を吸収できる。その結果、製品の製造工程を安定化させやすく、安定した物作りが可能となる。
なお、第3のCCG31の形成は、第1のCCG28を形成する第1のCCGペーストと、非晶質ガラス30を形成する非晶質ガラスペーストとを所定割合で混合し、これを所定形状に印刷、焼成することで行われる。
このように、第1のCCG28と、非晶質ガラス30との間に、第3のCCG31を形成することで、第3のCCG31が一種のバッファー層として機能するので、これら部材を一括焼成する際での熱応力の発生を低減できる。
なお、金属基板11に接する部分のCCGの結晶化率は40%以上99%以下が望ましい。金属基板11に接する部分のCCGの結晶化率を40%以上とすることで、後工程(例えば、配線20や感歪抵抗体13での焼成)において、再度焼成工程が入ったとしても、結晶化率が高いために、再溶解することなく、強度を保つことができる。結晶化率が30%未満の場合、後工程で焼成工程が入った場合、CCGであっても、結晶化していない部分が再溶解する可能性がある。また金属基板11の種類によっては、加工時の残留歪等が残っている場合があり、金属基板11とそれに接するCCGの接着強度も影響を受ける可能性がある。またCCGの結晶化率を99%より高くした場合、結晶化がシャープになりすぎる。その結果、異なる結晶化条件の部材を混ぜて結晶化をブロードにして、焼成工程の安定条件を広げることが難しくなる。
なお結晶化率はXRDを用いて評価することができるが、サンプルの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することによっても可能である。非晶質ガラスの場合、断面を倍率100倍から1万倍程度の範囲で、元素マッピングしても、各種元素が均質に検出できる。しかし結晶化ガラスの場合、その断面は微細なそれぞれ固有の組成を有する結晶体の複合体として観察される。そのため、結晶体を作りやすい元素(例えば、Mg、Si、Ba、Al)でマッピングすると、断面がこうした元素の島状の集合体として観察される。この場合、こうした偏析された部分の面積(ここが結晶化部分に相当する)と、すべての元素が均質な部分(ここが非晶質部分に相当する)の面積比を、結晶化率とすることができる。
またCCGとして結晶化するガラス結晶の大きさは0.1〜20μmが望ましい。ガラス結晶の大きさが0.1μm未満の場合、小さすぎて結晶化ガラスとしての特性が得られない場合がある。また20μmを超えるほどに粒成長した場合は、CCGの厚みに対して、結晶の大きさが影響を与えてしまう可能性がある。そのため結晶の大きさ(直径もしくは長さ)は、CCGからなる絶縁層の厚みの、1/3以下になるようにすることが望ましい。
(実施の形態9)
実施の形態9では、CCGと金属基板のマッチングについて、図14、図15を用いて説明する。図14はCCGを用いたセンサの断面図であり、金属基板11に孔32を形成している。このように金属基板11に複数の孔32を形成することで、センサを別の構造体に強固に固定することができる。なお孔32はCCG等を形成する前に、打ち抜き等の方法で一括して形成することがコスト面から望ましい。このため、CCG19の形成は、加工(センサ用途に応じた複雑な外形や孔32の打ち抜き加工)の終了した金属基板11に対して行われることが多い。しかしこうした金属基板11は、加工時の複雑な歪が残っていることが多く、更にその歪も金属基板の位置(孔32に対して近い、遠い等)によっても、異なることが考えられる。
図15は歪の残った金属基板の反りを模式的に示す断面図である。図15において、台33の上にセットされた金属基板11は、孔32の加工や、金属基板の外形打ち抜き(図示していない)による歪が残っているため、台33の上で複雑な形状で、微妙に反っていることがある。こうした反りは、色々な機械的な処理で小さくすることができるが、ゼロにすることは難しい。
そのため数μmから数十μm、場合によっては数百μmのうねりとして残る場合がある。更にこうしたうねりは、金属基板11の上に、CCG19を一体形成する場合に、色々複雑な影響を及ぼす場合がある。またこうしたうねりに対して、CCGを使うことにより、うねりを低減させセンサの使い勝手を改善することが可能となる。
更に図14を用いて、孔32の周囲にCCG19を形成して、孔32付近の反りを低減する場合について詳しく説明する。まず金属基板に、熱膨張係数が125ppm/℃のものを使った。そして、CCGを構成する第1の結晶化ガラス粉として120ppm/℃のもの(MgO−B2O3−SiO2系で、転移点が630℃の結晶化ガラス)と、100ppm/℃のもの(MgO−B2O3系で転移点が650℃の結晶化ガラス)を、所定割合で配合し、樹脂溶液中に分散させてCCGペーストを作製した。そして、これを図14に示すように、孔32の周りにも、CCG19として形成する。このようにして、金属基板11の孔の周辺にもCCG19と金属基板11の熱膨張係数の違いによる応力を発生させる。この応力によって孔32の周囲の反りを、処理前の半分以下に低減させることができ、その結果、低歪時でのセンサ出力の直線性を高めることができた。
なお、孔32の周囲すべてに、CCG19を形成する必要は無い。孔32の付近にCCG19を形成しないことで、ボルトやナットを使った固定を容易にすることができる。これは設計上でボルトやナットを使って固定するような部分は、金属基板11の微妙な反りや歪は影響しないことが多いためである。一方、歪出力に影響するような部分(特に感歪抵抗体が形成された付近)については、できるだけ(感歪抵抗体の直下だけでなくて、金属基板11の周辺近くまで)広い範囲で、CCG19を形成することが望ましい。このようにして、金属基板11に起因する微妙な歪を、CCG19が熱膨張係数の違いを利用して低減できるため、センサ出力の安定化を更に高めることができる。
なお、CCG19の表面は、オーバーコート14で覆うことで、CCG素材の各種信頼性を高めることができる。なお、オーバーコート材料としては、低融点のガラス材料や、セラミック粉等をフィラーとして添加した硬化性の樹脂材料を用いることができる。またこうした硬化性の樹脂を用いる場合、オーバーコート層の厚みは10μm〜10mmが望ましい。オーバーコート層の厚みが10μm未満の場合、所定の信頼性が得られない場合がある。また厚みが10mmを超えると、製品のコストアップの原因になる可能性がある。
またオーバーコート材として、ガラスを用いることができる。この場合、PbOを50〜95wt%含むガラス材料を使うことが望ましい。PbOの含有率が50wt%未満の場合、オーバーコート材料の軟化点が高くなって、感歪抵抗体の特性に影響を与える場合がある。またPbOの含有率が95wt%以上の場合、ガラスが流動しやすくなりやすく、チップ部品や半導体等を実装するための窓(半田付け用ランド)の寸法形状に影響を与える場合がある。
またオーバーコート材料の焼成温度は、300〜750℃が望ましい。焼成温度が300℃未満の場合、充分な気密性が得られない場合がある。また焼成温度が750℃より高くなると、ガラスが流動しやすくなり、チップ部品や半導体等を実装するための窓(半田実装部分)の寸法形状に影響を与える場合がある。
またオーバーコートガラスの厚みは、10〜300μmが望ましい。10μm未満の場合、ピンホール等が発生する可能性がある。また厚みが300μmを超える場合、製品の材料費に影響を与える場合がある。また必要に応じて、オーバーコートを複数層にしてもよい。例えば、第1のオーバーコートガラスを印刷し、その上に第2のオーバーコートガラスを印刷し、これら複数層を一括で焼成し、オーバーコートガラスを形成することができる。このように、オーバーコートガラスを複数層とすることで、ピンホールの発生を抑えられるため、製品の低コスト化、高信頼性化が可能となる。この場合も複数層のオーバーコートガラスを共通してPbO含有率を50〜95wt%とすることで、一括焼成が可能になる。また複数層のガラスの、PbOの含有率やそれ以外のガラス成分(SiO2やTiO2、Cr2O3等)を変化させておくことで、それぞれ下地に対する濡れ性、溶解時の濡れ広がり性等をそれぞれ最適化できるため、製品の高品質化が可能となる。
(実施の形態10)
実施の形態10では、金属基板の上にCCGと非晶質ガラスとを介して、感歪抵抗体を形成した場合について図16を用いて説明する。図16はCCGと非晶質ガラスを絶縁層に用いたセンサの断面図を示す。金属基板11の上には、厚み10〜100μmのCCG19が形成され、さらにその上には厚み10〜100μmで非晶質ガラス30が形成されている。また非晶質ガラス30の上には、配線20や感歪抵抗体13が形成され、これらはオーバーコート14によって覆われている。
このように、金属基板11と、配線20や感歪抵抗体13との間に、CCG19と非晶質ガラス30の複数層からなる絶縁層を形成することにより、金属基板11と配線20や感歪抵抗体13との間の絶縁抵抗を高められる。その結果、金属基板11が乗用車のシャーシ等に取り付けられたとして、シャーシ等との絶縁性を高められるため、センサ出力が安定する。
特に、金属基板11の上に非晶質ガラス30だけを介して、配線20や感歪抵抗体13を形成する場合、非晶質ガラス30が配線20や感歪抵抗体13を形成する際の熱処理で軟化してしまい、絶縁性を下げてしまう可能性があった。しかし図16の構造を用いると、たとえ非晶質ガラス30に軟化点の低い材料を用いて、更に配線20や感歪抵抗体13として形成温度の高い材料を用いたとしても、複合結晶化ガラス19はこうした温度域では溶解したり軟化したりしないため、絶縁性を低下させることは無い。
なお金属基板11の大きさは、数mm角から数十cm角までの範囲に適応可能である。また大きな基材の歪を測定する場合、図14に示したように金属基板11に形成した孔32を使って、大きな基材の上に本センサをネジ止めすることができる。
(実施の形態11)
実施の形態11では、CCGにセラミック粉を加えてコンポジットガラスとした場合について、図17を用いて説明する。図17はCCGとセラミック粉が同時焼成されてなるコンポジットガラスの拡大断面を示す模式図である。セラミック粉34は、CCG19の中に分散された状態で、CCG19と一体化され、コンポジットガラス35を形成する。このように、CCGの中にセラミック粉を一種のフィラーとして添加することで、CCGのコストを下げたり、その強度や信頼性を高めることができる。更に詳しく説明する。セラミック粉は、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、カルシウム、シリコンの酸化物もしくは水酸化物が望ましい。これら酸化物(場合によっては水酸化物であっても焼成中に酸化物に変化する)を用いることができる。こうした部材の一部は、CCGにも含まれる部材であるが、セラミック粉として添加することでも、熱膨張係数等を調整できる。なおこうしたセラミック粉は酸化物もしくは水酸化物として添加するため、出来上がったコンポジットガラスの中で、セラミック粉34と、CCGとの区別は容易である。例えば、コンポジットガラスの断面をXMA等で元素分析すれば、セラミック粉34が単一金属(例えば、Al、Mg、Ca、Si等)と酸素よりなる2成分系の粉(もしくは塊)として検出される。一方、CCG19は、表8等で示したような3成分以上の組成が検出される。このようにすればコンポジットガラスにおける結晶化ガラス成分とセラミック粉とを区別できる。
なおコンポジットガラスの形成は、CCGを構成する複数のガラス粉と同時にセラミック粉が、樹脂溶液中に分散されてなるコンポジットガラスペースト使うことが望ましい。このようなコンポジットガラスペーストを、金属基板上で焼成することで、金属基板上に均質なコンポジットガラスを形成することができる。またコンポジットガラスペースト中に添加されたセラミック粉を、コンポジットガラスペースト中で均一に分散させておくことで、ガラス粉が溶解したり結晶化したりするときの急激な温度変化(吸熱、発熱)を緩和させる働きも期待できる。そうしてこのコンポジットガラスペーストを、所定の金属基板11の上で焼成することで、コンポジットガラスを形成できる。
なおセラミック粉34、あるいは酸化物粉もしくは水酸化物粉の平均粒径は0.1〜10μmが望ましい。セラミック粉34の平均粒径が0.05μm未満の場合、セラミック粉34が高価となり、且つこれをコンポジットガラスペーストの一成分として均一に分散することが難しくなる場合がある。またセラミック粉34の平均粒径が15μm以上になると、その大きさがコンポジットガラス層の厚みに影響を与える場合がある。またCCGを構成する複数のガラス粉の平均粒径も0.5〜10μmが望ましい。
ガラス粉の平均粒径が0.3μm未満の場合、ガラス粉同士の均一分散が難しくなる場合がある。特に単一のガラス粉を使う場合、平均粒径が0.1〜10μmであっても、使うことができる。これは0.1〜0.3μm程度の微細なガラス粉(ガラス粉は0.5μm未満の微細なものほど凝集しやすい)が、5〜10μm程度の凝集体を形成していたとして、焼成すれば均一な(同じ)結晶化ガラスとなるためである。
一方本発明のCCGの場合、異なるガラス粉が同時に焼成されてなるため、図5に示すように第1の結晶化ガラス粉25と第2の結晶化ガラス粉26はより均一に混合、分散されることが望ましい。そのため、平均粒径は0.5μm以上が望ましい。またガラス粉の平均粒径が10μmを超えた場合、CCGの厚みに加えてガラス粉の粒径が影響する(平均粒径が10μmを超えた場合、粒径20μmや30μmといった大きさのガラス粉が含まれている可能性が有る)ことが考えられる。なおコンポジットガラスにおけるセラミック粉の含有率は3〜30wt%が望ましい。あるいは結晶化ガラス粉100重量部に対して、セラミック粉の添加量は1〜30重量部が望ましい。セラミック粉の含有率が1重量部未満の場合、セラミック粉の添加効果が少ない場合がある。30重量部を超える場合は、その分だけコンポジットガラスに占めるCCGの含有率が下がるため、出来上がったコンポジットガラスの焼結性が影響を受ける場合がある。
また図1、図10、図11、図12に示したセンサの断面構造図において、CCGを、CCGとセラミック粉とからなるコンポジットガラスとすることが好ましい。このようにして、市販の安価なセラミック粉を使うことができるため、センサの材料費を抑えることができる。
なお、金属基板の大きさは、数mm角から数十cm角までの範囲に適応可能である。また大きな基材の歪を測定する場合、図14に示したように金属基板11に形成した孔32を使って、大きな基材の上に本センサをネジ止めすることができる。
(実施の形態12)
実施の形態12では、感歪抵抗体について説明する。本発明に用いる感歪抵抗体としては、抵抗体材料としてPbOを用い、これをPbOやSiO2を主体としたガラス中に分散させたものが望ましい。なお感歪抵抗体としては、酸化ルテニウムが5〜50wt%含まれていることが望ましい。酸化ルテニウムが5wt%未満の場合、所定の抵抗値が得られない場合がある。また酸化ルテニウムの含有率が50wt%を超えた場合も抵抗値が低くなりすぎ、更に材料費がコストに影響を与える場合がある。
また酸化鉛(PbO)の含有率は、20〜70wt%が望ましい。酸化鉛の含有率が20wt%未満の場合、所定の特性が得られない場合がある。また酸化鉛の含有率が70wt%を超えた場合、RuO2や他の添加剤の添加量が相対的に少なくなるため、感歪抵抗体としての所定の特性が得られない場合がある。また必要に応じて、SiO2を1〜20wt%以下の割合で添加することが望ましい。SiO2の添加量が1wt%未満の場合、感歪抵抗体としての所定の特性が得られない場合がある。またSiO2の割合が20wt%を超えると、焼結性に影響がある場合がある。またこれ以外にB2O3を1〜40wt%の割合で添加することも好ましい。B2O3の添加量が1wt%未満、あるいは40wt%以上の場合、所定のGF値が得られない場合がある。なおこうした組成分析には、蛍光X線分析やICP−AESと呼ばれる一般的な材料分析手法を使うことができる。またこうした酸化ルテニウムやPbO等の粉末を樹脂溶液中に分散させることで、感歪抵抗体ペーストを作製できる。なおこうした感歪抵抗体ペーストの焼成温度は500〜950℃が望ましい。抵抗体ペーストの焼成温度を500℃未満にしようとすると、脱バインダが不十分となり、抵抗体の特性に影響を与える場合がある。また抵抗体の焼成温度を950℃以上とした場合、抵抗体の特性が不安定になる場合がある。
なお、感歪抵抗体13は、配線20によって所定のブリッジ回路を構成している。この場合、感歪抵抗体13を複数個、望ましくは4個を使って、ホイーストンブリッジを形成することが望ましい。この場合、複数の感歪抵抗体13の抵抗値の互いの抵抗値は近いことが望ましい。特に互いの抵抗値を±5%以下の範囲に入れることで、ブリッジ回路を構成しやすい。互いの抵抗値が±5%を超えた場合、ブリッジ回路の安定性が影響を受ける場合がある。なお、ここで抵抗値の範囲とは、複数の抵抗体の平均値に対するバラツキ(バラツキの式は3σ/xで表され、σは標準偏差、xは平均である)も、同様に±5%以下が望ましい。抵抗値バラツキを5%以下にすることで製品の歩留まりを高められる。
(実施の形態13)
以下本発明の実施の形態13を、図面を参照しながら説明する。
実施の形態13では、図1に示したCCGを用いた歪センサの製造方法について説明する。まず、異なる結晶化温度を有する複数の結晶化ガラス粉を作製する。ここで、CCGを構成する個々のガラス粉の均一分散とその成型方法について説明する。均質なCCGを得るためには、組成の異なる個々のガラス粉を、金属基板上で均一で均質な状態で、所定形状に成型することが望ましい。
こうした成型方法としては、ガラス粉を所定の樹脂溶液の中に分散し、これをガラスペーストとして、スクリーン印刷等の手法を用いて金属基板の上に直接、所定形状で塗布、乾燥させた後、所定温度で焼成する形成方法が望ましい。この際、ガラスペーストとしては、ガラス粉の種類や品番に応じて、複数のガラスペーストを作製し、これら出来上がった複数のガラスペースト(各々、異なるガラス粉を含んでいる)を、秤量しブレンドしても良い。このように複数のガラスペースト同士をブレンドすることで、求めるCCGペーストを作製できる。
またガラスペーストを作製する際、最初から複数種のガラス粉を所定割合で秤量し、これを所定の樹脂溶液の中に分散することで、CCGペーストを作製しても良い。特にCCGの場合、異なる結晶化ガラス粉同士を均一に分散させる必要がある。もしこの分散が不均一であると、出来上がったCCGにおける結晶の析出ムラや密度ムラが発生する可能性がある。
またCCGペーストに用いる有機溶剤としては、印刷での取り扱いやすさから、消防法に基づく危険物区分において、危険物第四類の中で、第二石油類、もしくは第三石油類として選ばれているものが望ましい(その中でも取り扱いの容易さからは第三石油類が望ましい。第四石油類は乾燥が遅すぎて生産性が影響されてしまう)。更に言えば、第三石油類の非水溶性液体として区分されているものを用いることが望ましい。こうした溶剤として、BCA(Butyl Carbitol Acetate)やαテルピネオールのような有機溶剤が好ましい。第三石油類の水溶性液体として区分されているものの内、例えば、BC(Butyl Carbitol)のような水溶性液体の場合、それ自体に水が混じっていたり、保存中に吸湿する可能性がある。その結果、CCGペーストのポットライフが短くなることが有る。これについて、更に詳しく説明する。
まず、表8に示した、MgO−B2O3−SiO2系の結晶化ガラス粉を複数種類選んだ。まず所定の原料粉末を溶解炉で高温溶解し、これを結晶化しないように急冷し、粉砕し、分級した。なお分級はエアー(風)で行うことが望ましい。湿式分級した場合、ガラス粉が吸湿して硬化、凝集する可能性がある。こうして、異なる配合比の複数の結晶化ガラス粉を作製した。またこれらの結晶化ガラス粉の平均粒径は、2〜10μm程度であった。
ガラスペーストを製造する場合、平均粒径は10μm以下が望ましい。2μm未満であると、粉砕コストや分級での収率がコストに影響する場合がある。また平均粒径が20μm以上の場合、数十μmの大きなガラス粒子が残っている可能性があり、こうした大きな粒子はガラスペーストを所定パターンにスクリーン印刷する際に、スクリーンメッシュに目詰まりを起こさせる可能性がある。
こうして作製したガラスペーストを、金属基板の上に所定形状で印刷し、焼成することでCCG19を形成した。
特に本発明のように、金属弾性体の上に絶縁ガラスとしてCCGを形成する場合、金属自体の熱膨張係数が大きい(例えば、SUS430で10.4ppm/℃、SUS304で17.3ppm/℃)ため、CCGの熱膨張係数を大きくすることが必要である。こうした目的では、MgOやBaO、Al2O3といった熱膨張係数の大きな元素を含むことが望ましい。しかしこうした構成部材(例えばBaOは乾燥剤として使われるように吸湿性が高い)には、吸湿性の高いものが多い。更に吸湿によって、CCGペーストの原料粉となる結晶化ガラス粉自身が吸湿し、硬化してしまうことがある。このような対策として、CCGペーストを構成する溶剤としては、吸湿性の少ないもの、具体的には水と相溶性の小さい有機溶剤を用いることが望ましい。
以上のように構成したガラスを、エチルセルロースを有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液中に、3本ロールを用いて分散し、CCGペーストとした。そして、このCCGペーストを、金属基板上にスクリーン印刷機を使って所定パターンで印刷し、これを200℃で乾燥させた。
次に、これをMCFにセットし、ピーク温度850℃、In/out60分の酸化雰囲気中で焼成した。このように、複数種の結晶化ガラスを一度に焼成することで、図1に示すようなCCG19を形成した。そしてこの上に、市販の電極ペーストを所定パターンで印刷し、焼成することで、図1に示すような配線20を形成した。そして、複数の配線20の間を接続するように、感歪抵抗ペーストを所定パターンで印刷し、焼成することにより、図1に示すような感歪抵抗体13を形成した。さらに、感歪抵抗体13の全面と、配線20の一部を覆うようにオーバーコート14を形成した。そして最後に半導体チップや各種チップ部品やコネクタを実装し、歪センサとして完成させた。
本発明においては、複数の結晶化ガラス粉を所定割合でブレンドし、一括焼成してCCGを形成するため、金属基板11に対する焼結密着性を高められる。このようにして、歪センサの耐力アップと低コスト化が可能となる。なお複数種の結晶化ガラス粉としては、結晶化温度の異なるものの他に、熱膨張係数が100×10-7以下の範囲で熱膨張係数の異なる結晶化ガラス粉を用いても良い。この場合本発明においては、複数の結晶化ガラス粉を所定割合でブレンドし、一括焼成してCCGを形成するため、様々な熱膨張係数を有する金属基板11に対しても熱膨張係数を最適化できる。このようにして、歪センサの耐力アップと低コスト化が可能となる。
なお、ここで結晶化ガラス粉の平均粒径は0.5〜20μmが望ましい。平均粒径が0.5μm未満の結晶化ガラス粉を作製するのは、破砕費用や分級費用が発生するため製品コストに影響を与える場合がある。また平均粒径が20μm以上の場合、焼結体の均質性に影響を与える場合がある。また複数の結晶化ガラス粉の平均粒径の差は5μm以下が望ましい。平均粒径の差が5μmを超えると、CCGペーストの均一性や焼結体の均一性に影響を与える場合がある。
なお複数の結晶化ガラスの結晶化温度の差は50℃以下が望ましい。結晶化温度の差が50℃を超える場合、焼結の均一性に影響を与える場合がある。
またガラスペーストの乾燥後の厚みは15〜250μmが望ましい。この範囲であれば上記ガラスペーストが焼成されてなるCCGの厚みが10〜200μmとなり、所定の特性を得ることができる。ガラスペーストの乾燥後の厚みが15μm未満もしくは焼成後の結晶化ガラスの厚みが10μm未満の場合、ピンホール等の影響を受ける場合がある。またガラスペーストの乾燥後の厚みが250μmを超える場合、あるいは焼成後の結晶化ガラスの厚みが200μmを超える場合、これらの材料費が製品コストに影響を与える場合がある。
なおCCGペースト中の結晶化ガラス粉の濃度は40〜80wt%が望ましい。CCGペースト中の結晶化ガラス粉の濃度が40wt%未満の場合、出来上がったCCGにボイドが発生しやすくなる場合がある。また80wt%を超えた場合、ペーストの流動性、レベリング性、印刷性が影響を受ける場合がある。
またCCGペーストの粘度は、ズリ速度が1〜100/s(/sはズリ速度の単位で、秒=secondの逆数である)の範囲で、100〜2000ポイズが望ましい。ズリ速度が1/s未満の場合、粘度を高精度に測定することが難しい。またズリ速度が100/sを超える場合、コーンプレート型のレオメータを使ったとしても、コーンとプレートの間に空気を巻き込みやすく、粘度を高精度に測定するのが難しい。また粘度が10ポイズ未満の場合、金属基板11の上で高精度なパターンの印刷が難しい(粘度が低くて、パターンがダレたり、にじんだりしやすくなる)。また粘度が200ポイズを超えると、粘度が高すぎてスクリーン印刷した後のスクリーンメッシュに起因するピンホールが発生しやすく、更にレベリングしにくい場合がある。
なお本実施の形態において、複数の結晶化ガラスは、結晶化温度、熱膨張係数、転移点温度の少なくとも一つが異なれば良い。例えば熱膨張係数が100×10-7/℃以下の範囲で異なっておれば、結晶化温度や転移点温度の差が無くて良い。
(実施の形態14)
実施の形態14では、図10に示した内部電極入りの歪センサの製造方法について説明する。まず異なる結晶化温度を有する複数の結晶化ガラス粉末を用意した。そして、これを樹脂溶液中に分散してガラスペーストとした後、図10に示すように、金属基板11の上に所定形状で印刷、乾燥した。さらにこの上に内部電極となる市販のAgを主体とした電極ペーストを所定形状に印刷、乾燥した。
次にこの電極ペーストを覆うように、上記ガラスペーストを印刷、乾燥した。こうして、ガラスペーストと電極ペーストとからなる積層体を形成した後、これら複数層を一括して焼成した。その後、図10に示すように、配線20や感歪抵抗体13を形成し、更にオーバーコート14を形成した。そして最後に半導体や各種チップ部品やコネクタ等を実装した。
こうして作製したサンプルのノイズ特性を測定したところ、図1に示した構造体より、耐ノイズ性が高いことが判った。このように、例えば配線20の一部を内部電極27に接続することにより、配線のインピーダンスを下げることができるためEMI(電磁界干渉)による電圧変動を低減できる。なお、内部電極27を金属基板11から電気的に浮かせることで、金属基板11からのノイズの混入を防止することもできる。なお内部電極の厚みは0.5〜30μmが望ましい。内部電極の厚みが0.5μm未満の場合、焼結後の電極が断線しやすいため耐ノイズ効果が得られない場合がある。また厚みが30μmを超えると、製品コストに影響を与える場合がある。また内部電極は銀を主体とする導電粉末が樹脂溶液中に分散されてなる電極ペーストを用いることが望ましい。また内部電極の焼成温度は500〜950℃が望ましい。この温度域で内部電極を焼成することで、内部電極に隣接して形成されたCCG粉も同時に焼成できるため、焼成コストを抑えることができる。また感歪抵抗体に接続される配線20も、銀を主体とする導電粉末が樹脂液中に分散されてなる電極ペーストを用いることができる。
こうした電極ペーストを500〜950℃で焼成することで、隣接するガラス材料や感歪抵抗体との一括焼成が可能となり、焼成コストを下げられる。なお配線20として、銀を主体として、パラジウム(Pd)を5〜20wt%の範囲で添加することで、部品実装時のはんだ喰われを防止できる。または白金(Pt)を同様に5〜20wt%の範囲で添加することにより、鉛フリーはんだを用いたときのはんだ実装性を高められる。なおPdやPtの割合が5wt%未満の場合、はんだ喰われ防止の効果が低い場合がある。またPdやPtの添加割合は多いほど、はんだ付け性が良好になるが、これらの割合が20wt%を超えた場合、材料費に影響を与える場合がある。
なお複数の結晶化ガラスの結晶化温度の差は50℃以下が望ましい。結晶化温度の差が50℃を超える場合、焼結の均一性に影響を与える場合がある。またCCGや非晶質ガラスに共通した元素(例えば、SiO2、AL2O3)を一定量添加しておくことで、こうした異種材料からなる複数層を一括焼成でき、製造コストを抑えられる。なお本実施の形態において、複数の結晶化ガラスは、結晶化温度、熱膨張係数、転移点温度の少なくとも一つが異なっていれば良い。例えば熱膨張係数が100×10-7/℃以下の範囲で異なっていれば、結晶化温度や転移点温度の差が無くて良い。
(実施の形態15)
実施の形態15では、図12に示した歪センサの製造方法について説明する。まず異なる結晶化温度を有する複数種の結晶化ガラス粉末を用意した。そしてこれを樹脂溶液中に均一に分散し、CCGペーストとした。また非晶質ガラス粉を樹脂溶液中に均一に分散し、非晶質ガラスペーストを作製した。まずCCGペーストを金属基板11の上に所定形状で印刷、乾燥した。次に、この上に内部電極27を形成する電極ペーストを所定形状で印刷、乾燥した。さらに、その上に上記CCGペーストを所定形状に印刷、乾燥した。次にこの上に上記非晶質ガラスペーストを所定形状に印刷、乾燥し、これら複数層を一括で焼成した。そしてこの上に図12に示すように、配線20や感歪抵抗体13を形成した後、オーバーコート14を形成した。最後に、半導体や各種チップ部品や、コネクタを実装した。こうして完成した歪センサの特性を調べたところ、実施の形態14〜16と同じ感歪抵抗体13を用いているにも関わらず、より高いGF値を得ることができた。このように、必要に応じて、感歪抵抗体13とCCGの間に、非晶質ガラス30を形成することができる。
なお非晶質ガラスとしては、表9に示すように、SiO2が40〜80wt%、CaOが5〜15wt%、PbOが3〜15wt%、Al2O3が1〜20wt%、ZrO2が1〜20wt%含まれる非晶質ガラスを用いることが望ましい。SiO2が40wt%未満の場合、焼結性に影響が出る場合がある。またCaOが5wt%未満の場合も焼結性に影響が出る場合がある。またPbOが3wt%未満の場合、この上に形成する感歪抵抗体の抵抗値やGFに影響を与える場合がある。またAl2O3の添加量が1wt%未満の場合、下地となるCCGにもAl2O3が含まれているため、互いのマッチング性に影響を与える場合がある。またZrO2が1wt%未満の場合、非晶質ガラスの熱膨張係数が低くなる場合がある。また、SiO2の含有率が80wt%を超える場合、ガラスの溶解温度が高くなる場合がある。またCaOの含有率が15wt%を超える場合、ガラスの焼結性に影響を与える場合がある。またPbOの含有率が15wt%を超えると、この上に形成する感歪抵抗体の特性に影響を与える場合がある。またAl2O3の含有率が20wt%を超えると、ガラスの焼結性が影響を受けたり、ガラス表面の平滑性に影響を与える場合がある。またZrO2の含有率が20wt%を超えると、Al2O3同様にガラスの焼結性が影響を受けたり、ガラス表面の平滑性に影響を与える場合がある。また必要に応じて、非晶質ガラスにB2O3を加えることも可能である。
なお本実施の形態において、複数の結晶化ガラスは、結晶化温度、熱膨張係数、転移点温度の一つ以上が異なれば良い。例えば熱膨張係数が100×10-7/℃以下の範囲で異なっておれば、結晶化温度や転移点温度の差が無くて良い。
(実施の形態16)
実施の形態15では、図17に示したコンポジットガラスを用いた歪センサの製造方法について説明する。まず異なる結晶化温度を有する複数の結晶化ガラス粉を用意した。そして、ここにセラミック粉として市販のアルミナ粉を添加し、所定の樹脂溶液中に均一に分散した。そして、作製したコンポジットガラスペーストを金属基板11の上に所定形状に印刷し、焼成し、コンポジットガラス35を形成した。こうして図1のCCG19の代わりに、コンポジットガラス35を用いた。次に図1に示すように、配線20や感歪抵抗体13、オーバーコート14を形成した後、所定の部品を実装し歪センサを完成させた。こうして作製した歪センサは、結晶化ガラス粉の一部を安価なセラミック粉に置き換えたことで、その分、製品に占める材料費を抑えることができた。なお、結晶化ガラス粉100重量部に対するセラミック粉の添加割合は、1重量部以上30重量部以下が望ましい。セラミック粉の添加量が1重量部未満の場合、セラミック粉の添加効果が得られない場合がある。また30重量部を超えると、CCGとセラミック粉が同時に焼結されてなるコンポジットガラスの焼結性が影響を受ける場合がある。
なお複数の結晶化ガラスの結晶化温度の差は50℃以下が望ましい。結晶化温度の差が50℃を超える場合、焼結の均一性に影響を与える場合がある。
なお本実施の形態において、複数の結晶化ガラスは、結晶化温度、熱膨張係数、転移点温度の少なくとも一つが異なっていればよい。例えば熱膨張係数が100×10-7/℃以下の範囲で異なっておれば、結晶化温度や転移点温度の差が無くて良い。
本発明は、絶縁材料として焼結安定性の高いCCG材料を用いるので、低コスト化と特性のバラツキ低減を実現するセンサや各種歪センサ等を提供できる。
本発明の実施の形態1におけるセンサの断面図
本発明における複合結晶化ガラスの断面拡大図
本発明における複合結晶化ガラスのDTA結果の一例を示す図
本発明における複合結晶化ガラスの焼成プロファイルを示す図
本発明における複合結晶化ガラスの焼成される前の部分断面図
本発明における複合結晶化ガラスを構成する複数の異なる結晶化ガラスのDTAを示す図
本発明における複合結晶化ガラスを構成する複数の異なる結晶化ガラスのDTAを示す図
本発明における複合結晶化ガラスを構成する部材の割合と、金属基板上での複合結晶化ガラスのクラック強度の関係を示す図
本発明における複合結晶化ガラスを構成する複数のガラス材料の混合割合と、そのときの熱膨張係数、更にそのときの溶解温度域について説明する図
本発明における複合結晶化ガラスを構成する複数のガラス材料の混合割合と、そのときの熱膨張係数、更にそのときの溶解温度域について説明する図
本発明における複合結晶化ガラスを構成する複数のガラス材料の混合割合と、そのときの熱膨張係数、更にそのときの溶解温度域について説明する図
本発明における複合結晶化ガラスの内部に内部電極を内蔵したセンサの断面図
本発明における複数の異なる複合結晶化ガラスを用いたセンサの断面図
本発明における複合結晶化ガラスと非晶質ガラスの両方を用いたセンサの構造を示す断面図
本発明における非晶質ガラスと複合結晶化ガラスのマッチングを改善したセンサの断面図
本発明における複合結晶化ガラスを用いたセンサの断面図
本発明における歪の残った金属基板の反りを模式的に示す断面図
本発明における複合結晶化ガラスと非晶質ガラスを絶縁層に用いたセンサの断面を示す図
本発明における複合結晶化ガラスとセラミック粉が同時に焼成されてなるコンポジットガラスの拡大断面を示す図
従来のセンサの断面の一例を示す図
従来のセンサにおける、焼成される前の結晶化ガラスの部分断面図
従来のセンサにおける結晶化ガラスの断面拡大図
従来のセンサにおけるMCFを用いて結晶化ガラスを焼成する場合の焼成条件を示す図
符号の説明
11 金属基板
13 感歪抵抗体
14 オーバーコート
19 複合結晶化ガラス
20 配線