多くの用途において、構造およびコンポーネントの静的および動的ローディングを含むひずみ測定と、当該測定からのその後の情報の導出とが必要とされている。米国特許第5,585,571号から、ひずみ測定のための方法および装置が公知である。米国特許第5,585,571号中に記載のようなひずみ測定のための方法および装置は、いわゆる弾性表面波共振器(SAW共振器)に基づく。
このような共振器は、圧電基板上に蒸着された微細構造で構成される。この微細構造は、薄い金属導電層として基板上に蒸着された、少なくとも1対の交互配置されたくし状の(「相互嵌合された」)電極により、形成される。本出願の図5および図6において、ひずみセンサとして用いられる1ポート弾性表面波共振器の基本モデルが示されている。
ここで、弾性表面波(SAW)共振器に基づくひずみセンサについて、さらに詳細に説明する。共振器は、2つの電気端子を備えたくし形トランスデューサ(IDT)を少なくとも1つ有し、また、トランスデューサの両側に配置された2つの反射周期的格子も含み得る。IDT端子に付加された信号ソースからのRF信号により、相互に反対方向に伝播する弾性表面波が励起される。格子からのSAWの反射の結果、数百メガヘルツの周波数において、極めて高い線質(Q)係数(10000オーダー)での共振が発生する。SAW共振器の共振周波数は、電子検出ユニットによって非接触な様式で測定可能である。SAW共振器の基板にひずみが発生した場合、格子およびIDTの周期が変化し、SAW伝播速度もひずみ値に比例して変化する。その結果、共振周波数もひずみに比例して変化する。SAW共振周波数の変化を測定することにより、ひずみの測定が可能となる。SAWひずみ感知素子は、温度の影響、RF通信チャンネルの電気パラメータの変動、およびいくつかの望ましくない機械的力を除外または補償するために、電気的に接続されたSAW共振器を数個含み得る。詳細には、シャフトに付加されるトルクをシャフト表面上の剪断ひずみの直接的ひずみ成分(張力および圧縮)を測定することにより測定する場合、単一基板上にシャフト中心線に対して45°で配置された2つのSAW共振器を設ければよい。この場合、2つの共振周波数間の差はトルク値に比例する。
温度感知のために、第3のSAW共振器を同じ単一基板上に設けてもよく、これにより、温度補償トルクを単一SAWセンサから決定することが可能になる。
SAW共振器の動作周波数は、数メガヘルツから数ギガヘルツの幅広い周波数範囲から選択することができる。
SAW共振器は、例えば米国特許第5,585,571号中に記載されているように多くの異なるモードで動作可能である。本出願中、同文献の内容全体を参考のため援用する。
動作モードの選択は、行うべきひずみ測定に依存する。
SAW基板を環境害から保護するために、SAW基板は密封パッケージ内に封入すべきである。先端技術によれば、SAW基板は、オーステナイトステンレス鋼などの材料で構成された2ピースからなる密封パッケージ中にパッケージされる。フラットベース部と上部ヘッド部の2ピースからなる当該パッケージは、例えば溶接により相互に組み立てられる。当該パッケージはまた、ガラスフリットシールの使用により密封された電気リードスルーも有する。ガラスフリットシールは、コンプレッションシールとして公知の膨張係数の差またはマッチドシールとして公知の事前酸化された表面層への接着のいずれかにより、機能する。コンプレッションシールは通常はオーステナイトステンレス鋼パッケージにおいて用いられ、一方マッチドシールはKOVARパッケージにおいて用いられる。
先端技術において、ひずみセンサ中で用いられるSAW基板は、パッケージのベース部にダイボンドされる。その後、ベース部は、ひずみを判定すべき場所であるコンポーネントに接着または溶接される。ひずみ判定のためには、ひずみが、SAW基板が接着されたベース部を介して、コンポーネントからSAW共振器または共振器へと、弾性的に、すなわち、ヒステリシス、塑性変形、またはクリープ変形なく、移動することが必要になる。
2ピースパッケージの場合、弾性特性が低い点またはリードスルーの誘導経路となるガラスフリットコンプレッションシールにクラックが発生する点において、問題がある。
米国特許第2006/0130585A1号から、トルクSAW共振器用のパッケージが公知である。米国特許第2006/0130585A1号から公知のパッケージシステムは、トルクSAW共振器中のひずみを最大化するように設計されている。パッケージのベース部は、高強度ステンレス鋼製である一方、パッケージ壁は、より可撓性の高いステンレス鋼で形成されている。米国特許第2006/0130585号から公知のパッケージのデメリットは、「可撓性」という用語が定義されていない点である。全ての鋼は、マルテンサイトのものであれ、オーステナイトのものであれ、または析出硬化のものであれ、いずれも約200GPaの同様のヤング係数(E)を持ち、これは、弾性応力−ひずみ線の傾斜を規定し、ゆえに当該材料の固有弾性スティフネスを規定する。加えて、米国特許第2006/0130585号中には、ともに重要である、記載された材料の応力−ひずみ状態及び製造プロセスのいずれも記載されていない。
米国特許第4,213,104号および米国特許第4,422,055号から、弾性表面波デバイスが公知である。米国特許第4,213,104号および米国特許第4,422,055号中に示されているデバイスのパッケージは、SAW基板材料であるベースと、スペーサと、カバーとを含む。米国特許第4,213,104号において、全ての部分は、実質的に同じ熱膨張特性および結晶方位を有する材料で構成されている。SAW基板に対して要求されているのは石英などの圧電結晶性材料であるため、このパッケージは「全石英」パッケージを特徴とする。
本発明は、3パート金属パッケージを取り扱う。この3パート金属パッケージ中には、圧電基板が接着される。この圧電基板上には、SAW共振器が作製される。本発明において用いられる設計、材料および製造プロセスは、米国特許第4,213,104号中に記載のものと根本的に異なる。
米国特許第4,422,055号において、切込み(円形スロット)が導入されている。この切込みは、SAW連結器を外部ひずみから隔離するためにSAW連結器を包囲する。
英国特許第2,346,493号において、ひずみセンサ用のパッケージが開示されている。米国特許第4,213,104号および米国特許第4,422,055号中のように、ベース(SAW基板材料)は蓋部と同様に石英である。中央部は接着膜の薄窓となっており、そのため、これは「全石英」パッケージへの別の設計アプローチである。
「全石英」パッケージはコスト面において潜在的利点があるものの、その固有の脆性(非弾性変形能力がないこと)は、機械的衝撃に対する耐性が弱く、そのため、大量自動車用途に望ましい溶接などの手段により構造コンポーネントに取り付けることができないことを意味する。
よって、本発明の目的は、先端技術中において述べられたデメリットを回避するひずみセンサ用パッケージを提供することである。特に、構造コンポーネントに取り付けることが可能であって、パッケージ内部に接着されたSAW基板に弾性ひずみを移動させることを可能とする良好な機械的結合が得られる、ひずみセンサ用パッケージが提供されるべきである。
これらの問題は、少なくとも3つの要素または部分、すなわち、ベース部と、中央部と、蓋部とからなるパッケージにより解決される。このパッケージにおいて、上記中央部は焼鈍材料製であり、上記ベース部は可撓性材料製である。再現性を高めるために、発明者らは、ベース部の材料は弾性特性が良好でなければならないことを発見した。ベース部用の弾性特性が良好な材料は、線形弾性および高降伏ひずみを本質的に有する材料である。降伏ひずみは、材料の弾性変形の限界を表す。ベース部の高降伏ひずみを規定することにより、低ヒステリシスおよび低クリープの観点において、パッケージとパッケージ中に封入されかつベース部に取り付けられたひずみセンサとを含む、最終完成ひずみセンサシステムの測定性能の主な利益を得ることが可能となる。好適には、ベースプレートの材料の降伏ひずみ(弾性変形の限界)を、2000マイクロストレイン(0.20%ストレイン)よりも大きく、最も好適には2500マイクロストレイン(0.25%ストレイン)よりも大きくなるように、選択する。
このような高降伏ひずみを達成する材料の例として、AISI304などのひずみ硬化(冷延)オーステナイトステンレス鋼、およびAISI420または17−4PH(析出硬化)などの硬化マルテンサイトステンレス鋼がある。
好適な実施形態において、上記パッケージの3つの部分は全て金属コンポーネントで構成され、圧電ダイの形態をしたひずみセンサが、上記ベース部に接着される。最も好適には、3つの金属コンポーネントは全て、熱膨張係数(CTE)が同じ材料で構成される。3つの金属コンポーネント全てが同じCTEを持つ場合、温度変化に起因する熱ひずみをなくすことができる。より好適な実施形態において、上記ベース部は、ひずみ硬化オーステナイトステンレス鋼からなり、上記中央部は、焼鈍オーステナイトステンレス鋼製である。上記蓋部は、ひずみ硬化ステンレス鋼製または焼鈍ステンレス鋼製のいずれでもよい。
最も好適な実施形態において、3つの部分は全て同じ材料で構成可能であり、例えば、上記ベース部、中央部、および蓋部をオーステナイトステンレス鋼製にすることができる。
上記中央部については、その材料が、コンプレッションシールプロセスによって電気リードスルーをガラスフリットするのに適していることが重要である。
好適なオーステナイトステンレス鋼は、AISI304およびAISI316である。最も好適なのは、AISI304LまたはAISI316Lなどの炭素含有量の少ないオーステナイトステンレス鋼であり、これらは、熱影響部(HAZ)における脆化低減およびその結果としての発生傾向の低下によって、溶接、特にレーザー溶接、に適している。
ひずみセンサ用パッケージを3つの部分に分けることにより、例えば、コンプレッションシールの形態で、高温で、SAW基板が取り付けられたベース部の弾性特性に影響を与えることなく、電気リードスルーをガラスフリットすることが可能となる。
電気リードスルーをガラスフリットするには、1000℃よりも高い温度を用いる。中央部をこのような温度まで加熱すると、選択されたステンレス鋼に関係なく、中央部が焼鈍され、その弾性特性、特に降伏ひずみ、が大幅に低減する。
先ず中央部をガラスフリットコンプレッションシールと共におよそ1000℃の高温で製造することにより、別個のベース部の弾性特性は損なわれない。ガラスフリットコンプレッションシールの製造温度は、好適には800℃〜1100℃であり、好適には900℃〜1050℃であり、最も好適には950℃〜1020℃である。この温度域において温度処理された鋼は、一般的に焼鈍される。
中央部のみが焼鈍されるため、オーステナイトステンレス鋼製のこの中央部のみがその弾性特性を失う一方、ひずみ硬化(冷延)オーステナイトステンレス鋼製のベース部は焼鈍されていないため、このベース部の弾性特性は保持することができる。
ベース部は、ひずみ硬化オーステナイトステンレス鋼製であるため、SAW基板をベース部上に取り付け、ひずみ硬化オーステナイトベース部を介して、弾性的に、すなわち、ヒステリシス、塑性変形またはクリープ変形を起こすことなく、パッケージ外部からのひずみをSAW共振器(単数または複数)に移動させることが可能となる。
オーステナイトステンレス鋼をパッケージ材料として使用することにより、酸化および腐食に対する耐性が高くなる。さらに、オーステナイトステンレス鋼により、溶接または接着によってうまく相互接合が可能なパッケージ材料が得られる。さらに、オーステナイトステンレス鋼をパッケージ材料として使用することにより、コンプレッションシーリング技術とともに使用すると、密封電気リードスルーが得られる。
−40℃〜150℃の温度範囲において、オーステナイトステンレス鋼により、ひずみ硬化(冷延)材料として2500マイクロストレイン以上の高弾性降伏ひずみを得ることができる。
本発明は、リードスルーを含む中央部を有する少なくとも3つの部分からなるひずみセンサ用の改良されたパッケージが得られるだけでなく、ひずみセンサ用パッケージ製造のための改良された方法であって、上記ひずみセンサ用パッケージは、少なくとも1つのベース部と、中央部と、蓋部と、を有する方法も得られる。
本発明による方法によれば、上記密封パッケージを製造する第1の工程において、上記リードスルーは、例えば約1000℃以上の温度により上記中央部にガラスフリットされ、上記ガラス材料と上記オーステナイトステンレス鋼材料との間の膨張係数の差に起因するコンプレッションシールを提供する。
上記リードスルーを高温で上記中央部にガラスフリットした後、例えば、接着または溶接により、はるかに低い温度で、上記中央部を上記ベース部に取り付ける。好適な溶接プロセスとして、抵抗溶接、レーザー溶接、電子ビーム溶接またはシーム溶接がある。上記ベース部は通常はフラットコンポーネントである。上記中央部を溶接により上記ベース部に取り付ける場合、上記溶接に起因する熱影響部(HAZ)が小さく、かつ、上記SAW共振器を接着する上記ベース部の領域内に及んでいないことを確保しなければならない。
上記中央部が、接着または溶接により、上記ベース部に取り付けられ、遡及的に接続された後、上記SAW基板は、上記ベース部に取り付けられる。上記SAW基板(圧電ダイ)を上記ベース部上に取り付けるため、高強度で高ガラス転位温度(Tg)の接着剤が、低ヒステリシスおよび低クリープを確保するために用いられる。
上記SAW基板を上記ベース部に取り付けた後、例えば金線接着プロセスにより、上記SAW共振器(単数または複数)を上記電気リードスルーに電気的に接続する。
上記工程の完了後、上記蓋部を上記中央部に取り付けることにより、上記パッケージを閉める。その後、上記SAW共振器を含むSAW基板を密封様式で完全に密封する。
本発明のさらなる利点は、SAW連結器を外部ひずみから隔離するために切込みを使用していない点である。本発明によれば、上記ベースの目的は、上記ベース全体内の外部ひずみを、上記ベースに接着された上記圧電基板中に連結させることである。
以下、図面を参照して、本発明について説明する。これらの図面は、本発明の実施形態に過ぎない。本発明は、これらの図面中に図示されている実施形態に限定されない。
図1は、本発明に係るひずみセンサ用パッケージのさまざまな部分の分解図を示す。
上記パッケージは、3つの主要な部分を含む。すなわち、上記パッケージは、上記実施形態中においてフラットプレートとして図示されているベース部10と、上記実施形態中において輪状形状で図示されている中央部20と、蓋部または上側部30とを含む。
上記センサからの線形反応を最小のヒステリシスおよびクリープで確保するためには、ベース部10は、線形弾性挙動および高降伏ひずみを持つ材料で構成しなければならない。
中央部20は、1000℃を越える温度を伴うガラスフリットに適した材料を必要とする。このような温度は、焼き入れおよび焼き戻しによって誘起されたフェライト/マルテンサイト鋼の弾性範囲や冷間加工によるオーステナイト鋼の弾性範囲をアニールアウト(実質的に低減)する。加えて、上記中央部の材料は、上記ベース部に容易に溶接可能であるか接着可能でなければならない。
上記中央部およびベース部が別個ではない場合、上記パッケージのベースの弾性範囲は、ガラスフリットプロセスにより許容できないほど低減し、上記センサの性能が全体として損なわれる。
蓋部30は、上記中央部に容易に溶接可能であるか接着可能でなければならない。
好適には上記ベース部、中央部、および蓋部は、同様の熱膨張係数(CTE)を持ち、かつ、酸化および腐食への耐性が高い材料で構成すべきである。
好適には、上記ベース部および蓋部の厚さと、上記中央部の壁の厚さとは、上記パッケージの機械的剛性を低減するために、実際に可能なだけできるだけ薄く、例えば、0.1〜1mmに、好適には0.2〜0.6mmに、すべきである。上記パッケージの剛性を低減することにより、パッケージと、ひずみ測定箇所であるコンポーネントとの間の接着または溶接された接続部における応力レベルが低減しその結果、SAWセンサシステムの耐久性にとって利益となる。
上記ベース部10、中央部20、および蓋部30は、最も好適な形態においては、すべて同じ材料で構成され、最も好適にはオーステナイトステンレス鋼、例えば、オーステナイトステンレス鋼AISI304である。最も好適には、オーステナイトステンレス鋼AISI304Lである。中央部20は、焼鈍オーステナイトステンレス鋼で構成されるのに対し、ベース部は、ひずみ硬化(冷延)オーステナイトステンレス鋼で構成される。焼鈍オーステナイトステンレス鋼は、ガラスフリットに最適であるのに対し、冷間加工されたオーステナイトステンレス鋼は高降伏ひずみを有する。主にオーステナイトステンレス鋼で構成されるこのような実施形態は、パッケージのさまざまな部分に対し、同様の熱膨張係数(CTE)を与える。
上記密封パッケージの全ての部分に同じ材料を用いることにより、全パッケージ要素について、共通の熱膨張係数(CTE)が良好な酸化特性および耐食性特性とともに得られるという利点が得られる。
パッケージ1の中央部20は、パッケージ外部から内部へと延びるリードスルー24.1および24.2用の開口部22を含む。
開口部22に、ガラス部26が組み込まれる。ガラス部26は、上記中央部の開口部22と同じ形状を有する。さらに、上記ガラス部は、リードスルー24.1および24.2を通す2つの開口部28.1および28.2も含む。
上記ガラス部が、上記リードスルーと共に、上記中央部の開口部に組み込まれた後、上記中央部は、約1000℃の温度まで加熱され、ガラスを溶融し、その結果、ガラスが上記リードスルーおよび上記中央部の壁に付着する。当該アセンブリが約1000℃の高温から室温まで冷却されると、まずガラスが凝固する。その次に、ガラスフリット材料のCTEと比較して中央部の材料の膨張係数(CTE)が高いため、圧縮応力が働き、上記リードスルー、上記ガラス部および上記中央部の密封シールが確保される。このようなガラスフリットシールは、コンプレッションシールとして公知である。
次の工程において、中央部20をベース部10に取り付け、これにより、中間アセンブリを形成する。中央部20のベース部10への取り付けは、さまざまな技術により行うことができる。第1の選択肢として、レーザー溶接などの適切なプロセスによる溶接がある。別の技術として接着技術がある。どちらの技術も、当業者にとって周知である。レーザー溶接のほかに、抵抗溶接、圧入溶接、および冷間溶接も可能である。はんだ付けも可能である。溶接技術、接着技術、またははんだ付けにより中央部20をベース部10に相互接続することにより、同じく真空気密の密封相互接続または取付が得られる。
リードスルーを含む中央部20を上記ベース部に取り付けた後、最高3つまでのSAW共振器を組み込んだSAW基板28(典型的には結晶性石英)をベース部10に接着する。上記SAW基板をベースプレート10に取り付けるために、高ガラス転位温度(Tg)接着剤が用いられ、低ヒステリシスおよび低クリープを確保する。
上記SAW基板を上記ベースプレート上に取り付けた後、金線接着プロセス(図示せず)により、上記SAW共振器(単数または複数)をリードスルー24.1および24.2に電気的に接続する。金線を用いた接着によって上記SAW共振器を上記リードスルーに接続する代わりに、アルミ線を用いてもよい。
上記SAW共振器を上記リードスルーにワイヤーボンドした後、蓋部30をベース部10および中央部20からなるアセンブリに接着または溶接、好適にはレーザー溶接、することにより、上記パッケージを完成させる。蓋部30は好適にはオーステナイトステンレス鋼製である。
その後、完成したパッケージを、ひずみの測定対象となる構造コンポーネントに接着させることができる。上記構造コンポーネントの嵌合表面上のひずみは、上記コンポーネントの直接的ローディングの結果、例えば、張力、圧縮、屈曲、またはトルクにより、あるいは温度変化の結果得られたものであり、上記SAW基板まで弾性的に、すなわち、ヒステリシス、塑性変形またはクリープ変形なしに移動させるべきである。
従って、最も好適な実施形態においてオーステナイトステンレス鋼AISI304Lからなる、ベース部10は、ベース部を介したコンポーネントからSAW基板へのひずみの線形伝達に必要な弾性特性を有するように事前にひずみ硬化(冷延)された材料から製造しなければならない。
図4において、オーステナイトステンレス鋼(例えば、304L型)を示す応力/ひずみ曲線が図示されている。参照符号800は、降伏応力500MPaおよび2500マイクロストレイン(0.25%)の降伏ひずみを有する加工硬化ステンレス鋼の引張応力/ひずみ曲線を示す。参照符号810は、焼鈍オーステナイトステンレス鋼の引張応力/ひずみ曲線を示し、この曲線は、ひずみ硬化に対応する約200MPaを越える応力の着実の増加を示す領域を含む。0.2%オフセット弾性線および1%オフセット弾性線が、応力−ひずみ曲線がAISI304Lの公表された応力値と連携するそれぞれの交差部における応力を確保するように図示されている。
参照符号810において、引張ひずみがおよそ500MPaの応力まで継続し、その後ひずみ方向が反転すると、応力は、初期負荷線に平行な線をたどって直線的に0まで低減する。再ローディングの際、参照符号800中の曲線と同様の形状をした新規応力−ひずみ曲線が生成される。換言すれば、上記材料は、その線形弾性挙動範囲を500MPaの新規降伏点まで増加させるように、ひずみ硬化されていることになる。これは、上記ベース部を製造する理想的な材料状態である。引張ひずみを継続する場合、上記応力−ひずみ線は急速に低減(図示せず)して、ひずみ硬化を継続する。典型的な引張試験において、試験片は最終的にくびれを形成し、その最大応力レベルを達成し、その後砕けるまで応力がかなり急速に低減する。
また、図4から、ひずみ硬化オーステナイトステンレス鋼を事前に焼き入れすることにより、良好な弾性特性、すなわち、高降伏点および応力とひずみとの間の線形性、が失われることも明確に分かる。降伏ひずみが0.25%(2500マイクロストレイン)である加工硬化ステンレス鋼の応力/ひずみ曲線は応力500MPaまで線形であり得るが、上記焼鈍材料はその弾性範囲を大幅に失うため、この状態の材料で製造されたベース部を用いると、非線形性、ヒステリシス、およびクリープを示すひずみセンサが生じる可能性が高くなる。別の実施形態において、上記加工硬化ステンレス鋼は、応力400MPaおよび降伏ひずみ0.20%(2000マイクロストレイン)まで線形である。
ベース部の材料として好適な材料の降伏ひずみは、1500マイクロストレインよりも大きく、特に2000マイクロストレインよりも大きく、最も好適には2500マイクロストレインよりも大きい。実際には、最大約0.2%のひずみ(2000マイクロストレイン)までの図の左側のみがパッケージのベースプレート上に配置されたSAW共振器によって用いられるが、これは極端な過負荷状態においてのみである。通常の発生するひずみは、0.05%(500マイクロストレイン)を越えることはない。図4から明らかなように、上記ベース部および上記中央部が相互接合されるか、または高温ガラスフリットプロセスが行われる前の単一部分となると、上記ベース部および上記中央部は焼鈍され、上記ベース部はその良好な弾性特性を失う。上記ベース部および上記中央部を分離し、ガラスフリットプロセスによってリードスルーを上記中央部に組み込んだ後に両者を接合することにより、上記ベース部の高降伏ひずみが保持され、その結果、最終完成センサの線形性、低ヒステリシスおよびクリープにおける測定性能の点について大きな恩恵が得られる。
図2において、本発明の第1の実施形態が図示されている。図2中、図1中の部分と同様の部分については全て、同一参照符号に100をプラスした参照符号で示してある。
図2に示す実施形態において、中央部120は、2つのフランジ190.1および190.2を含む。これら2つのフランジ190.1および190.2は、溶接プロセスにおいてベース部110および蓋部130を中央部120に相互接続するのに用いられる。溶接時においてレーザー溶接プロセスが用いられる場合、溶接に起因する熱影響部は小さく、SAWセンサ(128)がベース部110に取り付けられている領域までは延びない。
蓋部130は、中央部120同様、容易に溶接可能であるかまたは接着可能であり、かつ酸化および腐食に対して高い耐性を持つ材料、例えば、オーステナイトステンレス鋼、からなる。
既に上記にて説明した通り、ベース部110は、例えば、高弾性限界を持つひずみ硬化(冷延)オーステナイトステンレス鋼など、高い弾性特性を持つ材料で構成される。
図3において、本発明によるパッケージの別の実施形態が図示されている。図3中、図1および図2と同一部分は、同一参照符号に200をプラスした参照符号で示してある。
図3に示す中央部220は、フランジの代わりに、外形が中央部(280)の外形と同一である、上リング295.1および下リング295.2のみを有する。図3に示す実施形態において、上記中央部は、接着により蓋部230およびベース部210に接続される。図3に示す実施形態において、中央部220は、一対の円周方向溝部を有する環状コンポーネントである。これらの円周方向溝部は、熱的および機械的分離の双方が得られるほど十分に深い。このような実施形態の利点としては、接着が行われている領域から中央部が熱的に分離されている点がある。そのため、例えば、ベース部および/または蓋部を中央部に溶接する際に、レーザー溶接に必要なエネルギーがより少量ですむ。さらに、中央部はベース部10から機械的に分離される。
図5において、シャフトS上に取り付けられた2つのSAW共振器トランスデューサT1およびT2を用いたトルク測定の原理が図示されている。中央線C1およびC2は、トルクを測定するシャフトSの長手方向軸Aに対して45度で配置される。さらに、中央線C1およびC2は、相互に直角である。図5中、矢印Kによって示される時計方向にシャフトに付加されるトルクにより、圧縮ひずみがトランスデューサT1に発生し、引張ひずみがトランスデューサT2に発生する。任意の温度変化が、双方の要素に均等に付加される。トランスデューサT1およびT2のジオメトリが、例えば、トルクによって変化した場合、形状変化から発生したSAW共振器間の差周波数を測定することができる。これは、例えば米国特許第5,585,571号中に広く記載されている。本出願において、同文献の開示内容全体を援用する。
図6において、SAWひずみセンサである、いわゆるSAW(弾性表面波)共振器の詳細な実施形態が図示されている。このような共振器1000は、導電性の薄膜微細構造で構成される。通常、厚さ100nmオーダーのアルミニウム膜が用いられる。この微細構造は、少なくとも1つのくし形トランスデューサ(IDT)によって形成される。これらのくし形トランスデューサ(IDT)は、圧電基板1040の上側表面1030上に蒸着された2つのくし形電極1010および1020からなる。基板は、可撓性プラスチックポリマーから、セラミック、石英、ニオブ酸リチウム、などの硬質材料に至るまで、多数の材料で構成可能である。IDTとは別に、上記微細構造は、トランスデューサの両側に配置される2つの反射格子1050および1060を含んでもよい。これらの格子は、一定間隔を空けて配置された多数の反射要素(薄い金属ストリップまたは浅溝のいずれか)からなる。これらの格子により、IDTによって生成されるSAWの反射が向上し、その結果、共振器の線質(Q)係数が向上する。
本発明により、3つの部分からなるSAWひずみセンサ用パッケージが初めて提供される。本発明に係るパッケージは、単一材料で構成されているため、全パッケージ要素について共通の熱膨張係数を持つ。さらには、本発明に係るパッケージは、良好な酸化特性および耐食性特性を持つ。本発明に係るパッケージは、熱膨張係数が9.6x10−61/K〜5.0x10−61/Kと低い、ガラス材料で構成された従来法でフリットされるコンプレッションシールを含み得る。DIN52328によれば、膨張係数は20℃〜300℃の温度範囲について与えられる。
さらに、このパッケージにより、自動車フレックスプレートまたはドライブシャフトなどの構造コンポーネントからSAWひずみセンサへの弾性ひずみの移転が可能となる。
本発明に係るSAWひずみセンサは、トルクセンサなどの多様な分野において使用することができる。本発明に係るSAWひずみセンサは、SAW共振器(単数または複数)を含むSAW基板、および密封パッケージを含む。
本発明は、磁界への感受性が低い小型ひずみセンサを提供する。さらに、本発明は、静的負荷および動的負荷の測定において極めて高い精度を提供する