従来から、水圧計、気圧計、差圧計などとして圧電振動素子を感圧素子として使用した圧力センサーが知られている。前記圧電振動素子は、例えば、板状の圧電基板上に電極パターンが形成され、力の検出方向を検出軸と設定しており、当該検出軸の方向に圧力が作用すると、前記圧電振動子の共振周波数が変化し、当該共振周波数の変化から圧力を検出する。特許文献1〜3には、感圧素子として圧電振動素子を用いた圧力センサーが開示されている。圧力導入口よりベローズに圧力が加わると当該ベローズの有効面積に応じた力がピボット(撓みヒンジ)を支点とした力伝達手段を介して圧電振動素子に圧縮力或いは引張り力として力Fが加わる。前記圧電振動子には、当該力Fに応じた応力が生じることとなり、当該応力により共振周波数が変化する。当該圧力センサーは圧電振動子に生じる共振周波数の変化を検出することにより圧力を測定するものである。
従来の圧力センサーを、特許文献1などに開示されている例を用いて説明する。図10は従来の圧力センサーの構造を示した模式図である。
図10に示す従来の圧力センサー501は、対向して配置された第1及び第2の圧力入力口502、503を有する筐体504と、筐体504の内部に力伝達部材505とを備え、力伝達部材505の一端を挟むように第1のベローズ506、および第2のベローズ507を接続している。そして、第1のベローズ506の他端を第1の圧力入力口502に接続し、第2のベローズ507の他端を第2の圧力入力口503に接続している。さらに、力伝達部材505の他端と基板508のピボット(支点)ではない方の端部との間に、感圧素子として双音叉型振動子509を配置している。
ここで、圧力センサーにおいて、高精度に圧力を検出する場合、ベローズの内部には、液体が充填されている。当該液体としては、ベローズの内部や内部の蛇腹部分に気泡が入り込んだり、溜まらないようするために、一般的に粘性の高いシリコンオイルなどのオイルが用いられている。
このように、第1のベローズ506の内部には、粘性のあるオイル510が充填されており、圧力測定の対象が液体の場合には、第1の圧力入力口502に開けられた開口部511により液体とオイル510とが接触して相対する構造となっている。なお、開口部511はオイル510が外部に漏れないような開口径が設定されている。
このような構成の圧力センサー501においては、圧力測定の対象となる液体より圧力Fが第1のベローズ506の内部に充填されているオイル510に加わると、第1のベローズ506を経て圧力Fが、力伝達部材505(ピボット支持された揺動レバー)の一端に加わる。一方、第2のベローズ507には、大気圧が加わっており、大気圧に相当する力が力伝達部材505の一端に加わっている。
この結果、力伝達部材505の他端を介して、圧力測定の対象となる液体より加わった圧力Fと大気圧による圧力の差圧に相当する力が基板508のピボットを支点にして、双音叉型振動子509に圧縮力、或いは引張り力として加わる。双音叉型振動子509に圧縮力、或いは引張り力が加わると、双音叉型振動子509には応力が生じ、前記応力の大きさに応じて共振周波数が変化するので、その共振周波数を測定することにより、圧力Fの大きさを検出することができる。
一方、特許文献4には、前述の圧力センサーで用いるようなピボット(撓みヒンジ)を支点とした揺動レバーを用いた高価な力伝達手段(カンチレバー)を用いない構造のものが提示されている。これは、センサーハウジング内に一直線上に2つのベローズを配列して間に台座を挟み込み、それぞれのベローズに導入される圧力の差に起因する圧力変動をベローズの伸縮方向に沿った台座の挙動で検出しようとするものである。このため、第1のベローズの一端と第2のベローズの一端との間に振動子接着用台座を挟み込み、第2のベローズの外周側にて、前記台座と第2のベローズの他端側のハウジング壁面とに感圧素子の両端の各々を固定する。そして、第2のベローズを間に挟む線対称位置に補強板を配置し、当該補強板の両端の各々を前記台座と前記ハウジング壁面とに固定してなる構造を採用している。
更に、特許文献5においては、特許文献4に開示された前記圧力センサーに関し、ベローズの圧力検出軸方向と直交する方向からの衝撃に対する強度が弱いという課題を解決するために、圧力検出軸方向と直交する方向に前記台座とハウジングとを補強用弾性部材(いわゆるバネ)を用いて連結してなる圧力センサーが提案されている。
次に、特許文献6、7には、エンジン内部の油圧を検出するためにエンジンブロックに固定して使用する圧力センサーが開示されている。この圧力センサーは印加された圧力に応じた電気信号を出力するセンシング部、圧力を受圧する受圧用ダイアフラム部、ダイアフラムからセンシング部へ圧力を伝達するための圧力伝達部材とからなり、具体的には、中空金属ステムの一方の端面に受圧用の第1ダイアフラムを設け、他方の端面に検出用の第2ダイアフラムを設け、ステム内にて前記第1、第2ダイアフラム間に力伝達部材を介在させている。力伝達部材は金属あるいはセラミックからなるシャフトであり、これを一対のダイアフラム間にプレストレスを与えた状態で介在させるようにしている。そして、第2ダイアフラムの外端面に圧力検出素子としての歪ゲージ機能をもつチップを貼り付け、第1ダイアフラムで受けた圧力を力伝達部材で第2ダイアフラムに伝達し、第2ダイアフラムの変形を歪ゲージチップにより電気信号に変換することでエンジン油圧を検出するようにしている。
更に、特許文献8、9には、感圧素子を内蔵するハウジングの圧力入力口をダイアフラムにより封止した構造を有する圧力センサーが示され、これには、ダイアフラムをレーザ溶接や電子ビーム溶接等によって溶着する構成が開示されている。このときダイアフラムとハウジングとの溶接部位にはビード(溶接凝固部)がリング状に形成されることになる。
しかしながら、特許文献1〜3の発明においては、図10に示す如き圧力センサーのように、第1のベローズ506に充填されているオイル510は圧力センサー501を構成する要素、例えば、力伝達部材505や双音叉型振動子509などに比べて熱膨張係数が大きいので、圧力センサー501を構成する各部材に温度変化による熱歪みが生じることとなる。このような熱歪みが不要な応力として双音叉型振動子509に作用するので、測定した圧力値に誤差が生じることとなり圧力センサーの特性を悪化させるという問題があった。
また、第1のベローズ506に充填されているオイル510は、圧力測定の対象となる液体と接触して相対しているが、圧力センサーの設置方法によりオイル510が圧力測定に対象となる液体側に流出したり、液体が第1のベローズ506側に流入することもあるので、第1のベローズ506に充填されているオイル510内に気泡が発生する場合がある。オイル510内に気泡が発生すると、圧力の伝達媒体として機能しているオイル510は、力を力伝達部材505を経由して双音叉型振動子に安定して伝達することができないので、圧力測定に誤差を生ずる可能性がある。
さらに、上述したように、オイル510は、圧力測定の対象となる液体と接触して相対しているため、圧力センサーの設置方法によりオイル510が圧力測定の対象となる液体側に流出する可能性があり、異物の混入を嫌う清浄な液体の圧力測定を行う場合の用途には、オイル510を使用した従来の如き圧力センサーを使用することができないという問題があった。
さらにまた、従来の如き圧力センサー501は、力伝達部材505が、複雑な構造をしており、圧力センサーを小型化する際に、障害となっている。また、力伝達部材505はくびれ部の細い撓みヒンジを必要とする構造をしているので高コストな部品となるため圧力センサーの製造コストを上昇させるという問題があった。
特許文献4や5が提案している圧力センサーは、姿勢が傾くと、ベローズに垂れが生じてしまうので、感圧素子(双音叉振動子)に加わる力に変化が生じてしまい、それによって共振周波数も変動してしまうという問題があった。
更に、圧力センサーの圧力導入口に内部にオイルが充填されたパイプを接続し、当該パイプの他端を被測定液体に接触させる構造のため、特許文献1〜3で掲げたようにベローズやパイプに充填されているオイルが、圧力測定の対象となる液体と接触して相対しているので、圧力センサーの設置方法によりオイルが圧力測定の対象となる液体側に流出し、液体がベローズ側に流入することもあるので、ベローズに充填されているオイル内に気泡が発生する場合があり、オイル内に気泡が発生すると、圧力の伝達媒体として機能しているオイルが、台座を経由して双音叉型振動子に安定して伝達することができないので、圧力測定に誤差を生ずる問題があった。
特許文献5については、ベローズに挟まれた台座をハウジング側面に板バネからなる補強用弾性部材で支持する構成のため、ベローズの軸方向移動に伴う台座の挙動を抑制する力が作用することは否めない。このため、圧力検出感度は劣化してしまう可能性がある。また、支持を堅固にするために補強用弾性部材の硬さを硬くしてしまうと、ベローズの動きを抑止してしまうことになり、圧力検出感度を劣化させてしまうという問題があった。
更に、特許文献4や5では補強板がベローズを挟んで線対称位置に感圧素子と対向配置されているので、ベローズの動きを抑止してしまうことになり、圧力検出感度を劣化させてしまうという問題があった。
特許文献6や7において、ダイアフラムとシャフトとはプレストレスを与えた状態で接触しているが、圧力センサーが高温高圧化で使用されるので、リジッドに固定してしまうと各部材の熱膨張の違いにより、機構が破壊されてしまう恐れがあるため、当該熱膨張を考慮して、ダイアフラムとシャフトとは点で接触しているに過ぎず、接着剤等の接着手段を用いて接着はされていない。従って、圧力変動によりダイアフラムとシャフトが稼動する際、点接触部がずれてしまう可能性が非常に高く、接触点がずれる過程で、ダイアフラムとシャフトの双方に作用している力が漏洩してしまうため、精度の高い圧力検出を行うことができないという問題があった。また、そもそも特許文献6、7に記載の圧力センサーは圧力センサーが高温高圧化で使用されるので、受圧部とセンシングとの間に距離をおいてセンシングのチップ等への熱的影響を回避するために、できるだけ力伝達部材が長いことが望ましいもので、小型化を図る技術への適用には好ましくないものであった。加えて、特許文献6、7の場合には、一対のダイアフラム間にシャフトを介在させて力の伝達を行っているが、センシング部のダイアフラムにセンサーチップを取り付けた構成であるため、ダイアフラムの性状が受圧側とセンシング部側で異なるため、計測精度を高くすることができないという大きな欠点があった。
更に、特許文献8、9に記載された圧力センサーの構成では、溶接用のレーザや電子ビームの照射を停止するとビードには急冷による熱歪みが生じてクラック等が格段に生じやすくなるので、このようなダイアフラムを搭載した圧力センサーを使用した場合、外部からの圧力を受圧するダイアフラムが変形を繰り返すことにより、ビードに歪みが繰り返し生じるため、クラックが成長し、ダイアフラムの経年劣化および破損といった問題が発生する。
更に、レーザ照射時の熱により膨張したダイアフラムが、レーザ照射停止後の冷却に伴って収縮するため、そのときに生じる残留応力がダイアフラムの受圧部中央領域に集中するので、前記中央領域が不均一に歪むこととなり、圧力センサーの感度が劣化してしまうという問題があった。
更に、溶接部位はレーザ照射による溶接温度が高いために高熱にさらされるので、脆性破壊を起こしやすくなってしまうという問題があった。
そこで、本発明は上記問題点を解決するため、圧力を受けて撓み変形するダイアフラムであって、特に、ダイアフラムとこれが取り付けられるハウジングとの接合部に応力を受けにくい形状として、経年劣化を改善し、不均一な圧縮応力の発生を抑制し、脆性破壊を起こし難い圧力センサー用のダイアフラムを提供することを目的とする。また、上記ダイアフラムが搭載され、受圧媒体としてのオイルを使用しない圧力センサーであって、少ない工程で製造可能であり、歩留まりが良く小型化が可能で、経年劣化を起こしにくく感度の良い圧力センサーを提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題を少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1]外面が外部圧力を受けて変形し、内面がハウジング内部の感圧素子に力を伝達するダイアフラム本体を形成する中央部と、前記中央部の外側であって、ハウジングに形成された圧力入力口の外周と溶接される周縁部と、を一体として同心円状に有し、前記圧力入力口を封止する圧力センサー用のダイアフラムであって、前記中央部と前記周縁部との間に段差壁を形成したことを特徴とする圧力センサー用のダイアフラム。
上記構成により、中央部と段差壁との境界にダイアフラムの変形による応力が集中し、溶接部分と応力集中部分とを位置的に分離することが可能なため、ハウジングへの溶着対象の周縁部に前記応力が伝わることを抑制できる。したがって、溶接時にビードにクラックが発生しても前記応力によるクラックの成長を抑制し、ダイアフラムの経年劣化を改善、すなわち寿命を延ばすことができる。また上記構成により、周縁部における溶接後の冷却によって発生する残留応力が段差領域において緩和されるため、中央部が不均一に歪むことを抑制し、ダイアフラムの感度の劣化を抑制することができる。
[適用例2]前記ダイアフラム本体を形成する中央部には、前記段差壁と同心円状に壁が形成されていることを特徴とする適用例1に記載の圧力センサー用のダイアフラム。
ダイアフラムに対して急激な圧力変化があった場合、ダイアフラムは振動する。しかし、壁を設けることで前記振動を壁が内側に反射して、前記振動を内側の領域に閉じ込めることになるため、前記振動がビードに伝わりビード中のクラックが成長することを抑制できる。
[適用例3]前記段差壁の内周面には、前記段差壁の内周に倣った形状の外形を有するリングが嵌め込まれて前記段差壁の変形を拘束可能としていることを特徴とする適用例1または2に記載の圧力センサー用のダイアフラム。
これにより、リングが段差壁を中央部側に変位することが抑制されるため、適用例1の場合よりも効果的にダイアフラムの変形による応力をダイアフラム本体である中央部と段差壁との間に集中させ、ハウジングに溶着される周縁部への応力の伝達を抑制することができる。
[適用例4]前記ダイアフラムは、前記ハウジングと同一材料で形成されていることを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の圧力センサー用のダイアフラム。
ダイアフラムの材料をハウジングと同一材料とすることで、ハウジングからダイアフラムへの温度変化による応力を抑制してダイアフラムの経年劣化を抑制することができる。
[適用例5]外部圧力を受けて撓み変形する円盤状のダイアフラム本体と、当該ダイアフラム本体の周縁に一体的に設けられセンサーハウジングの圧力入力口の内壁面に嵌着可能な円筒部と、この円筒部の端縁に設けられた前記センサーハウジングへの溶着部と前記ダイアフラム本体の撓み基点となる周縁部との間に段差を形成したことを特徴とする圧力センサー用ダイアフラム。
上記構成により、ダイアフラム本体と円筒部との境界にダイアフラムの撓み変形による応力が集中し、溶接部分と応力集中部分とを位置的に分離することが可能なため、円筒部端縁の溶着部に前記応力が伝わることを抑制できる。したがって、溶接時にビードにクラックが発生しても前記応力によるクラックの成長を抑制し、ダイアフラムの経年劣化を改善、すなわち寿命を延ばすことができる。また上記構成により、円筒体縁部を溶接した後の冷却によって発生する残留応力がダイアフラム本体外縁に対して緩和されるため、ダイアフラム本体が不均一に歪むことを抑制し、ダイアフラムの感度の劣化を抑制することができる。
[適用例6]前記円筒部端縁にフランジを形成してハット形ダイアフラムとなし、前記フランジ部を前記ハウジングとの溶着部としてなることを特徴とする適用例5に記載の圧力センサー用ダイアフラム。
このような構成では、溶着部とダイアフラム本体の撓み基点部との離間距離を大きくできるので、ダイアフラム本体の撓み変形による応力が溶着部へ作用することを抑制でき、劣化防止効果が高いものとなる。
[適用例7]前記圧力入力口の開口縁部に接する前記円筒部端縁を前記センサーハウジングとの溶着部としてなることを特徴とする適用例5に記載の圧力センサー用ダイアフラム。
このような構成では、段差によってダイアフラム本体の変形に起因する応力が溶着部に作用することを防止できると同時に、溶着部が円筒部の外縁となるため、溶着時に熱を逃がすためにハウジング側に形成する断熱溝を円筒部に近接させることができ、ダイアフラムの取り付けのための寸法を小さくでき、もって、このダイアフラムが取り付けられる圧力センサーの寸法を小さくできる。
[適用例8]適用例1乃至7のいずれか1例に記載の圧力センサー用のダイアフラムが前記圧力入力口の外周を覆うように前記ダイアフラムの周縁部を溶接していることを特徴とする圧力センサー。
上記構成により、周縁部における溶接後の冷却によって発生する残留応力が段差領域において緩和され、中央部のダイアフラム本体が不均一に歪むことが抑制される。よって中央部に接続される力伝達手段の変位方向にズレが生じることはなく、ダイアフラムから感圧素子への力の伝達の損失を防止し、感度特性への悪影響を及ぼすことのない圧力センサーとなる。
[適用例9]上記適用例8に記載の圧力センサーであって、前記周縁部の近傍に断熱溝が形成されていることを特徴とする圧力センサー。
断熱溝により圧力入力口の溶接部位の容積を小さくして熱容量を低減させているので、溶接時の熱量を下げることができ、それによって溶接温度を低く抑えられるので、溶接部位の熱歪みによる脆性破壊を抑制することができる。そして、溶接終了後の冷却過程でのダイアフラムの収縮率も小さくさせることができるので、残留応力も低減する圧力センサーとなる。
[適用例10]前記圧力入力口の内壁にはザグリが形成され、前記ザグリに前記中央部及び前記緩衝部が接することを特徴とする適用例8に記載の圧力センサー。
これにより、ダイアフラムが外側に変形したときは、中央部と段差領域との境界に応力が集中し、ダイアフラムが内側に変形したときは、中央部とザグリの角の当接部分に応力が集中する。よって中央部と段差領域との境界に掛かる応力の頻度を減少させ、経年劣化を抑制した圧力センサーとなる。
[適用例11]圧力入力口を有するハウジングと、当該ハウジングの前記圧力入力口を封止し外面が受圧面であるダイアフラムと、前記ハウジング内部にて前記ダイアフラムの中央領域に接続され当該ダイアフラムに連動してその受圧面と垂直方向に動く力伝達手段と、この力伝達手段と前記ハウジングに接続されて検出軸を前記ダイアフラムの受圧面と垂直な軸に沿って設定した感圧部とを有してなり、前記ダイアフラムは外部圧力を受けて撓み変形する円盤状のダイアフラム本体と、当該ダイアフラム本体の周縁に一体的に設けられセンサーハウジングの圧力入力口の内壁面に嵌着可能な円筒部と、この円筒部の端縁に設けられた前記センサーハウジングへの溶着部と前記ダイアフラム本体の撓み基点となる周縁部との間に段差を形成したことを特徴とする圧力センサー。
上記構成によれば、被圧力測定環境の圧力を受ける受圧媒体をダイアフラムとして、圧力センサーには受圧媒体としてのオイルを不要としたので、被圧力測定環境側にオイルが流出することはなく、例えば被圧力測定環境として異物の混入を嫌う清浄な液体の圧力測定を行うなどの用途に使用可能となる。また、熱膨張係数が大きい受圧媒体であるオイルの使用を止めたので、圧力センサーの温度特性を大きく向上させることができる。特に、ダイアフラム本体と円筒部との境界にダイアフラムの撓み変形による応力が集中し、溶接部分と応力集中部分とを位置的に分離することが可能なため、円筒部端縁の溶着部に前記応力が伝わることを抑制できる。したがって、溶接時にビードにクラックが発生しても前記応力によるクラックの成長を抑制し、ダイアフラムの経年劣化を改善、すなわち寿命を延ばすことができる。また上記構成により、円筒体縁部を溶接した後の冷却によって発生する残留応力がダイアフラム本体外縁に対して緩和されるため、ダイアフラム本体が不均一に歪むことを抑制し、ダイアフラムの感度の劣化を抑制することができる。
[適用例12]前記圧力入力口の開口縁部に接する前記円筒部端縁を前記センサーハウジングとの溶着部としてなることを特徴とする適用例10に記載の圧力センサー用ダイアフラム。
当該構成によれば、段差によってダイアフラム本体の変形に起因する応力が溶着部に作用することを防止できると同時に、溶着部が円筒部の外縁となるため、溶着時に熱を逃がすためにハウジング側に形成する断熱溝を円筒部に近接させることができ、ダイアフラムの取り付けのための寸法を小さくでき、もって、このダイアフラムが取り付けられる圧力センサーの寸法を小さくできる。
[適用例13]ハウジングと、当該ハウジングの対向する端面板に同軸上に設けられた一対の圧力入力口と、前記圧力入力口を封止し外面が受圧面である第1、第2のダイアフラムと、前記ハウジング内部にて前記ダイアフラムの内面の中央領域同士を接続する力伝達手段と、この力伝達手段の途中に一端を接続され他端を前記ハウジングに接続するとともに、検出軸を前記ダイアフラムの受圧面と垂直な軸と平行に配列された感圧素子とを有してなり、前記ダイアフラムは外部圧力を受けて撓み変形する円盤状のダイアフラム本体と、当該ダイアフラム本体の周縁に一体的に設けられセンサーハウジングの圧力入力口の内壁面に嵌着可能な円筒部と、この円筒部の端縁に設けられた前記センサーハウジングへの溶着部と前記ダイアフラム本体の撓み基点となる周縁部との間に段差を形成し、前記圧力入力口の開口縁部に接する前記円筒部端縁を前記センサーハウジングとの溶着部としてなることを特徴とする圧力センサー。
この構成により、相対圧センサーとしてオイルレスで小型の圧力センサーとすることができるとともに、ダイアフラム本体と円筒部との境界にダイアフラムの撓み変形による応力が集中し、溶接部分と応力集中部分とを位置的に分離することが可能なため、円筒部端縁の溶着部に前記応力が伝わることを抑制できる。したがって、溶接時にビードにクラックが発生しても前記応力によるクラックの成長を抑制し、ダイアフラムの経年劣化を改善、すなわち寿命を延ばすことができる。
[適用例14]ハウジングと、当該ハウジングの端面板に設けられた圧力入力口と、前記圧力入力口を封止し外面が受圧面であるダイアフラムと、前記ハウジング内部にて前記ダイアフラムの内面の中央領域に当該ダイアフラムの受圧面と垂直な軸線上に配置され対向するハウジング端面板と接続される力伝達手段と、この力伝達手段の途中に一端を接続され他端を前記ハウジングに接続するとともに、検出軸を前記ダイアフラムの受圧面と垂直な軸と同軸に設定した感圧素子とを有してなり、前記ダイアフラムは外部圧力を受けて撓み変形する円盤状のダイアフラム本体と、当該ダイアフラム本体の周縁に一体的に設けられセンサーハウジングの圧力入力口の内壁面に嵌着可能な円筒部と、この円筒部の端縁に設けられた前記センサーハウジングへの溶着部と前記ダイアフラム本体の撓み基点となる周縁部との間に段差を形成し、前記圧力入力口の開口縁部に接する前記円筒部端縁を前記センサーハウジングとの溶着部としてなることを特徴とする圧力センサー。
このような構成により、絶対圧センサーとしてオイルレスで小型の圧力センサーとすることができるとともに、ダイアフラム本体と円筒部との境界にダイアフラムの撓み変形による応力が集中し、溶接部分と応力集中部分とを位置的に分離することが可能なため、円筒部端縁の溶着部に前記応力が伝わることを抑制できる。したがって、溶接時にビードにクラックが発生しても前記応力によるクラックの成長を抑制し、ダイアフラムの経年劣化を改善、すなわち寿命を延ばすことができる。
以下、本発明に係る圧力センサー用のダイアフラム、及びこれを搭載した圧力センサーを図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1に本発明に係る圧力センサーの第1実施形態を示す。図1(a)は圧力センサーの概要を示す模式断面図、図1(b)は図1(a)のダイアフラムの溶接部位を示す部分詳細図である。第1実施形態に係る圧力センサー10は円筒形の外形を有し、ハウジング12、ダイアフラム32、力伝達手段34であるシャフト36、感圧素子38から構成される。
ハウジング12は、内部を真空に封止して後述の各構成要素を収容するものである。これにより圧力センサー10は、感圧素子38のQ値を高め、安定した共振周波数を確保することができるので、圧力センサー10の長期安定性を確保することができる。
またハウジング12は上端面板を構成する円盤状の第1部材14、下端面板を構成する円盤上の第2部材16、第1部材14と第2部材16とを接合する支持棒18、第1部材14及び第2部材16の側面を覆う円筒側壁を形成する第3部材20とから全体の外形が構成されている。第1部材14及び第2部材16は同一の直径を有する部材である。第1部材14及び第2部材16は、同心円を構成する位置に、それぞれ外部に突出する口金22を突出させ、この口金22に第1圧力入力口24、第2圧力入力口26を開口させている。そして第1部材14及び第1圧力入力口24(第2部材16及び第2圧力入力口26)を連通する貫通孔28が、前記同心円の中心位置に形成されている。
支持棒18は、一定の剛性を有し、第1部材14及び第2部材16の互いに対向する位置に形成され、支持棒18の断面の外形に倣った形状のダボ穴(不図示)に差し込んで接合することで、第1部材14、第2部材16、及び支持棒18との間で剛性を獲得し、圧力センサー10の組み立て時、及び使用時に後述の感圧素子38に対する不要な歪みを抑えることができる。なお、図示では2本の支持棒18が記載されているが、1本または3本以上用いてもよい。
ハウジング12の材質は、熱膨張による圧力センサー10の誤差を緩和するため、支持棒18及び感圧素子38を収容する部分の周囲を熱膨張係数の小さい金属もしくはセラミックとすることが望ましい。
そして、第1圧力入力口24および第2圧力入力口26には、測定対象の液体もしくは気体の圧力に応じて撓むダイアフラム32(第1ダイアフラム32a、第2ダイアフラム32b)が取り付けられ、貫通孔28を封止して外部に露出している。
ダイアフラム32(第1ダイアフラム32a、第2ダイアフラム32b)は、内側から同心円状に中央部(ダイアフラム本体)40、この中央部(ダイアフラム本体)40の外縁に形成された円筒状の緩衝部(円筒部)42、この緩衝部(円筒部)42の先端外縁に形成されたフランジからなる周縁部(フランジ)44から構成され、全体的にハット形の灰皿のような形状をしている。円盤状の中央部(ダイアフラム本体)40は一面が外部に面した受圧面となっており、前記受圧面が被測定圧力としての外部圧力を受けて撓み変形し、ダイアフラム32の他面の中央部(ダイアフラム本体)40に接触している後述の力伝達手段34であるシャフト36の端面に力を印加するものである。リング形状の周縁部(フランジ)44はハウジング12の口金22の外周とレーザ溶接等により溶接される部分である。円筒形状の緩衝部(円筒部)42は、中央部(ダイアフラム本体)40の外周、及び周縁部(フランジ)44の内周とそれぞれ垂直に接続され、これがて中央部(ダイアフラム本体)40の外周と周縁部(フランジ)44との間に段差を形成して離隔している。これにより中央部(ダイアフラム本体)40と周縁部(フランジ)44との間に段差壁(緩衝部42)が形成される。一方、ハウジング12の口金22には周縁部(フランジ)44の外形に倣った形状の周縁ザグリ25が形成され、周縁部(フランジ)44を嵌めこむことができる。そして周縁ザグリ25に嵌めこまれた周縁部(フランジ)44は溶接により周縁ザグリ25に接続され、このときリング状のビード46が形成される。さらに周縁ザグリ25の近傍(外周)には断熱溝27が同心円を形成するように彫りこまれている。
ハウジング12及びダイアフラム32の材料は、ステンレスのような金属やセラミックなどの耐腐食性に優れたもの、また、水晶のような単結晶体やその他の非結晶体でもよいが、同一材料で形成することが望ましい。ダイアフラムの材料をハウジングと同一材料とすることで、ハウジングからダイアフラムへの温度変化による応力を抑制してダイアフラムの経年劣化を抑制することができる。
ダイアフラム32は、プレス加工にて形成してもよく、また残留応力の発生がなく、小型化に有利なフォトリソグラフィー技法とエッチング技法と(以下、両者を併せてフォトリソ・エッチング加工と称す)により形成しても良い。とくに中央部(ダイアフラム本体)と周縁部(フランジ)の厚みが同じ場合は一回のエッチング工程でダイアフラムを形成することができる。またダイアフラム32は、液体やガス等により腐食しないように、外部に露出する表面をコーティングしてもよい。例えば、金属製のダイアフラムであれば、ニッケルの化合物をコーティングしてもよい。
第1ダイアフラム32aと第2ダイアフラム32bとの間には、力伝達手段34であるシャフト36が貫通孔28を挿通して取り付けられ、シャフト36の両端部は第1ダイアフラム32a、及び第2ダイアフラム32bの中央部(ダイアフラム本体)40の中心領域の面とそれぞれ垂直に接触(接続)している。よって、ダイアフラム32に圧力が掛かってもシャフト36と第1ダイアフラム32a及び第2ダイアフラム32bとの変位の方向は同じとなる。このとき圧力の高い側のダイアフラム32がハウジング12の内側に変位し、圧力の低い側のダイアフラム32がハウジング12の外側に変位するが、シャフト36の長さは変わらないので、変位の絶対値は両側で一致する。またシャフト36の所定の位置には可動部材36aが固定され、この可動部材36aもシャフト36と同じ変位方向を持つ。
シャフト36は、強度が安定した材質であるステンレス、或いはアルミニウム、または加工のしやすいセラミックなどを、圧力センサーの用途に応じて選択して使用することにより、精度の高い安定した圧力センサーを構成することができる。特にシャフト36の材料をセラミックにすると、熱膨張係数が小さいため圧力センサーの温度特性は、ほとんど感圧素子38の温度特性に依存することになる。さらにシャフト36の両端部は円形で、かつダイアフラム32の中央部(ダイアフラム本体)40と同心円を形成するように接続することが望ましい。
感圧素子38は、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料を用い、双音叉型圧電振動子、SAW共振子、厚みすべり振動子等として形成されたものである。感圧素子38は、可動部材36aと、第1部材14の固定部材30のそれぞれに感圧素子38の両端部を接続して支持されている。このとき、感圧素子38は力の検出方向を検出軸として設定しており、感圧素子38の前記両端部を結ぶ方向は前記検出軸と平行関係にある。また感圧素子38はハウジング12に取り付けられた発振回路(不図示)と電気的に接続され、発振回路(不図示)からの交流電圧により固有の共振周波数により振動する。そして、感圧素子38は可動部材38aからの伸長(引張り)応力または圧縮応力を受けることにより共振周波数が変動する。特に双音叉型圧電振動片は、厚みすべり振動子などに比べて、伸長・圧縮応力に対する共振周波数の変化が極めて大きく共振周波数の可変幅が大きいので、わずかな圧力差を検出するような分解能力に優れる圧力センサーにおいては好適である。双音叉型圧電振動子は、伸長応力を受けると振動腕(振動部)の振幅幅が小さくなるので共振周波数が高くなり、圧縮応力を受けると振動腕(振動部)の振幅幅が大きくなるので共振周波数は低くなる。なお、双音叉型圧電振動子の圧電基板としては温度特性に優れた水晶が望ましい。
上記構成のダイアフラム32(図1(b)斜線部分)は、口金22に圧入しているので、中央部(ダイアフラム本体)40及び緩衝部(円筒部)42は、口金22の内壁により圧縮応力が生じている。前記圧縮応力は、ダイアフラム32の受圧部である中央部(ダイアフラム本体)40において同心円状に均一に分布することになるため、ダイアフラムの有する撓み感度には悪影響を及ぼさない。したがって中央部(ダイアフラム本体)40と緩衝部(円筒部)42との境界41にダイアフラムの変形により応力が集中するが、溶接部分(周縁部(フランジ)44)と上述の応力集中部分とは位置的に分離しているので、周縁部(フランジ)44に前記応力が伝わることを抑制できる。したがって、溶接時において、ビード46にクラックが発生しても前記応力によるクラックの成長を抑制し、ダイアフラム32の経年劣化を改善、すなわち寿命を延ばすことができる。また、周縁部(フランジ)44のレーザ照射による溶接時に生じた残留応力は、段差領域である緩衝部(円筒部)42において緩和され、ダイアフラムの受圧部である中央部(ダイアフラム本体)40に集中することはないので、中央部(ダイアフラム本体)40が不均一に歪むことを防止できる。
従って、本願発明者が提案する図1(a)の圧力センサー10においても、ダイアフラム32の不均一な歪みにより、シャフト36が傾いて変位方向がズレることはなく、力の検出軸方向にシャフト36が確実に変位するので、変位方向のズレによるダイアフラム32から感圧素子38への力の伝達の損失を防止し、圧力センサー10の感度特性に悪影響を及ぼすこともない。
更に、断熱溝27により口金22の溶接部位の容積を小さくして熱容量を低減させているので、溶接時の熱量を下げることができ、それによって溶接温度を低く抑えられるので、溶接部位の熱歪みによる脆性破壊を抑制することができる。そして、溶接停止後の冷却過程でのダイアフラムの収縮率も小さくさせることができるので、残留応力も低減することができる。
図3に第2実施形態に係る圧力センサー用のダイアフラム、及びこれを搭載した圧力センサー示す。図3(a)は圧力センサーの概要図、図3(b)は図3(a)のダイアフラムの溶接部位を示す部分詳細図である。第2実施形態に係るダイアフラム32は第1実施形態と同様である。一方、第2実施形態にかかる圧力センサー50は、基本的には第1実施形態に係る圧力センサー10と類似するが、圧力センサー50は、第1圧力入力口54及び第2圧力入力口56の内壁の開口端にザグリ58が形成されている。すなわち貫通孔60は、前記開口端の近傍でその内径が大きくなった構成を有している。このザグリ58にダイアフラム32が接することになる。ここで、中央部(ダイアフラム本体)40の外周部分はザグリ58のリング状の端面58bと接し、緩衝部42の外周はザグリ58の側面58cと接する。
これにより、ダイアフラム32がハウジング52の外側に変形したときは、中央部(ダイアフラム本体)40と緩衝部42との境界41に応力が集中し、ダイアフラム32がハウジング52の内側に変形したときは、中央部(ダイアフラム本体)40とザグリ58の角58aとの当接部分に応力が集中する。よって中央部(ダイアフラム本体)40と緩衝部42との境界41に掛かる応力の頻度を減少させ、経年劣化を抑制することができる。
図4に第3実施形態に係るダイアフラムを示す。図4(a)は溶接時のダイアフラムの平面図、図4(b)は溶接時の詳細図である。第3実施形態に係るダイアフラム70は、第1実施形態に係るダイアフラム32の形態と同一であるが、段差壁としての緩衝部(円筒部)74の内周に倣った形状の外形を有するリング78(図4の斜線部分)が嵌め込まれ、前記緩衝部(円筒部)74の変形を拘束可能としている。リング78はダイアフラム32を口金22にビード79を形成しつつ溶接したのち嵌め込む。これにより、リング78が緩衝部(円筒部)74を中央部72側に変位することを抑制するため、第1実施形態及び第2実施形態の場合よりもダイアフラム70の受圧に伴い発生する変形による応力を中央部72と緩衝部74との境界73に効果的に集中させ、周縁部76へ伝達することを抑制することができる。なお、このリング78も上述同様の理由により、ダイアフラム70及びハウジングと同一の材料を用いると良い。
図5に第4実施形態に係るダイアフラム80を示す。図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のA−A線断面図である。第4実施形態に係るダイアフラム80は、第1実施形態のダイアフラムと類似するが、ダイアフラム80の中央部(ダイアフラム本体)82には、同心円状に壁88(図5(a)の斜線部分)が形成されている。壁88の外周と緩衝部(円筒部)84との間には隙間が形成されている。ダイアフラム80は、壁88の開放端88aと周縁部(フランジ)86が同一平面を形成する場合は、フォトリソ・エッチング加工において、一回のエッチング工程で形成することができる。
ダイアフラムに対して急激な圧力変化があった場合、ダイアフラムは振動する。しかし、壁88を設けることで前記振動を壁88が内側に反射して、前記振動を中央部(ダイアフラム本体)82の壁88より内側の領域に閉じ込めることになるため、前記振動がビードに伝わりビード中のクラックが成長することを抑制できる。
第3実施形態及び第4実施形態のダイアフラムは、第1実施形態及び第2実施形態に係る圧力センサーと何ら干渉しないため、これらを第1実施形態及び第2実施形態に適用することができる。なお第3実施形態を第2実施形態に適用する場合、リング78が中央部72に当接しないように、リング78は、中央部72との間に隙間を形成しつつ嵌め込む必要がある。また第4実施形態に第3実施形態を適用する際には、リング78の厚みが壁88の外周と緩衝部84の内周との隙間の幅以下となるように設計すればよい。
図6には第5実施形態を示す。この図は、第5実施形態に係る圧力センサー90は、ダイアフラム92を圧力センサーのハウジング94に取り付けた状態の断面図を示している。当該ダイアフラム92は、外部圧力を受けて撓み変形する円盤状のダイアフラム本体(中央部)96と、当該ダイアフラム本体(中央部)96の周縁に一体的に設けられセンサーハウジング94の圧力入力口98の内壁面に嵌着可能な円筒部(緩衝部)100とからなる。そして、この円筒部(緩衝部)100の端縁に設けられた前記センサーハウジング94との溶着部(ビード)102と前記ダイアフラム本体96の撓み基点となる外周縁部104との間に段差壁を形成している。特に、この実施形態では、溶着部(ビード)102を、センサーハウジング94の圧力入力口98の開口縁部に接する前記円筒部端縁とし、前記センサーハウジング94の開口縁に溶着するようにしたものである。すなわち、この実施形態に係るダイアフラム92は、上述した第1〜4実施形態におけるダイアフラムの周縁部として説明したフランジを省略した円筒容器形ダイアフラムとし、圧力入力口98の内壁面に円筒部(緩衝部)100を嵌着して、圧力入力口98の開口端で溶接するようにしたものである。このようにすることで、溶接時の熱的影響を回避するために溶接部(ビード)102の外周を取り囲むように形成された断熱溝106の半径を、フランジ付きのダイアフラムを用いた場合よりも小さくすることができ、もって圧力センサーのサイズを小さくすることができる。
図7には第6実施形態を示す。これは図6の第5実施形態に係る圧力センサー110は、ダイアフラム112において受圧面を形成するダイアフラム本体114の構造が異なるのみである。すなわち、圧力センサー110が圧力を受けて撓む変形を感圧部材に伝達するための力伝達部材であるシャフト36が接続されるダイアフラム本体114を平板面によって形成する。そして、シャフト36が接続されるダイアフラム本体114の中心領域116の周囲に環状溝118を形成して、中心領域116を相対的に厚肉にしている。その他の構成は第5実施形態と同様であるので、同一部材には同一番号を付して説明を省略する。
この実施形態によれば、上記第5実施形態の圧力センサーの効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、圧力を受けて薄肉部と厚肉部の段差部分に応力が集中するが、厚肉の中心領域116は圧力を受けて上下変位はするものの、中心領域116の湾曲変形は小さくなるため、センターシャフト36とダイアフラム112との接合部分への応力集中は回避される。これによってセンターシャフト36へは軸方向力と異なる方向への不要な力が作用せず、圧力検出精度を向上させることができる。
図8は図7に示したダイアフラム112を用いた第7実施形態に係る相対圧検出用の圧力センサー120を示している。
この圧力センサー120は、中空円筒体からなるハウジング122を有している。このハウジング122は第1部材(上端面板)をハーメ端子台124とするとともに、第2部材(下端面板)をフランジ端面板126とし、第3部材である円筒側壁128によって離隔配置した端面板の周囲を取り囲んで中空密閉容器として構成したものである。ハーメ端子台124とフランジ端面板126の各外面部には、ハウジング内部空間と連通する第1圧力入力口130、第2圧力入力口132が凹陥部として形成されており、その底板部分にハウジング122の軸芯と同芯の貫通孔134(134A、134B)が穿設されて、内外を連通している。この圧力入力口130、132の凹陥部にはそれぞれ第1ダイアフラム112A、第2ダイアフラム112Bが嵌着され、その周囲をハーメ端子台124とフランジ端面板126とに一体的に溶接結合し、これによって内外を遮蔽するようにされている。ハーメ端子台124側の第1ダイアフラム112Aは大気圧設定用であり、フランジ端面板126の第2ダイアフラム112Bは受圧用としている。このようなハウジング122も、内外が遮断された状態となっているとともに、図示しない空気抜き手段により内部を真空状態に保持できるようにしているのはその他の実施形態と同様である。
各ダイアフラム112(112A、112B)は、図7に示した構造であり、外部圧力を受けて撓み変形する円盤状のダイアフラム本体(中央部)114と、当該ダイアフラム本体(中央部)114の周縁に一体的に設けられセンサーハウジング122の圧力入力口130、132の内壁面に嵌着可能な円筒部(緩衝部)100とからなる。そして、この円筒部(緩衝部)100の端縁と圧力入力口130、132の開口縁とを溶接した溶着部102(溶接ビード)によって結合している。溶着部102の周囲を囲むように断熱溝106が形成されている。これによって、前記センサーハウジング122との溶着部(溶接ビード)102と前記ダイアフラム本体114の撓み基点となる外周縁部104との間に段差壁を形成している。特に、この実施形態では、ダイアフラム本体114の中心領域に接続される力伝達手段としてのシャフト136を接続しているが、この中心領域116を厚肉とするように、周囲に円周溝118を形成している。
前記ハウジング122の内部には、前記第1、第2のダイアフラム112A、112Bの内面の中心領域を相互に接続するシャフト(力伝達手段)136がハウジング122の軸芯に沿って配置され、前記貫通孔134を貫通して両者を接着連結している。そして、このシャフト136の途中には感圧素子受け台としての可動部138が一体的に設けられており、この可動部138に対して、検出軸を前記第1、第2ダイアフラム112(112A、112B)の受圧面と垂直な軸と平行に設定した双音叉型振動子からなる感圧素子140の一端部を取り付けるようにしている。感圧素子140の他端部は前記ハウジング122のハーメ端子台124に設けられている内側に突出した感圧素子受け台としてのボス部142に接続するようにしている。これにより、受圧用第2ダイアフラム112Bと大気圧用第1ダイアフラム112Aの差圧によりシャフト136が軸方向移動すると、これに追随して可動部138が位置を変動し、この力が感圧素子140の検出軸方向への作用力を発生させるようにしている。
上記ハウジング122の内部には、前記シャフト136と平行であって、その周囲に複数の支持棒144が配置されている。これらは第2部材であるフランジ端面板126と第1部材であるハーメ端子台124との間隔を一定に保持し、外力によるハウジング122の変形や任意の姿勢によって検出精度が低下しないようにしている。
このような第7実施形態によれば、一対のダイアフラム112同士はセンターシャフト136により連結され、センターシャフト136の途中に設けた可動部138がダイアフラム112の挙動に応じて一体的にシャフト軸方向に移動し(これが一対のダイアフラム112A、112Bが受ける圧力差に起因する動きとなる。)、双音叉型振動子である感圧素子140の検出軸方向に作用する力に応じた動きとなる。したがって、オイルを用いることなく、検出精度の高い圧力センサーを構成でき、かつ小型で組み立てが容易な構造となる。また、フランジ端面板126、ハーメ端子台124、並びに円筒側壁128が真空容器としてのハウジング122を形成し、ハーメ端子台124と第1ダイアフラム112Aが一体とされ、フランジ端面板126と第2ダイアフラム112Bとが一体とされ、組み立てが簡便に行えるようにしている。この圧力センサー120を測定対象液体へ沈める(浸す)容器に取り付けるには、フランジ端面板126を測定対象液体容器に第2ダイアフラム112Bの周囲を囲むように配置されたOリングを介して面接合してボルト締めにより取り付ける。Oリングは前記断熱溝106を利用して装着するとよい。
特に、この第7実施形態では、シャフト136が接続される一対のダイアフラム112の中心領域116(図7参照)をその周辺部より厚肉としているので、圧力を受けて薄肉部と厚肉部の段差部分に応力が集中するが、厚肉の中心領域116は圧力を受けて上下変位はするものの、中心領域116の湾曲変形は小さくなるため、シャフト136とダイアフラム112との接合部分への応力集中は回避される。これによってセンターシャフト136へは軸方向力と異なる方向への不要な力が作用せず、圧力検出精度を向上させることができる。
また、第7実施形態では、ダイアフラム112をハーメ端子台124とフランジ端面板126の外面に凹陥部として形成した圧力入力口130、132に嵌着して取り付けるため、ハウジング122には外部への突出部分が無くなり、高さ寸法を短くすることができて、小型化を促進することができるものとなっている。
加えて、この実施形態では、ダイアフラム112をハウジング122に取り付けるに際して、円筒部100の先端縁を圧力入力口130、132の開口縁で溶着するようにしているので、断熱溝106の形成位置がハウジング中心側に近接させることができ、これによって、他の実施形態の場合よりダイアフラムフランジ寸法分だけ小さくすることができ、小型化への寄与が大きいものとなっている。
次に、図9には、第8実施形態に係る圧力センサー150の断面図を示している。図示の例は、図7に示したダイアフラム112を用いた絶対圧検出用の圧力センサーとして用いた例である。
この圧力センサー150は、中空円筒体からなるハウジング152を有している。このハウジング152は第1部材(上端面板)をハーメ端子台154とするとともに、第2部材(下端面板)を構成する端面板を第7実施形態と同様なフランジ端面板156とし、第3のケースである円筒側壁158によって離隔配置した端面板の周囲を取り囲んで中空密閉容器として構成している。フランジ端面板156には、内部空間と連通する圧力入力口160がハウジング152の軸芯と同芯に貫通されて、凹陥部を形成してその中央部に貫通孔164を形成し、凹陥部にダイアフラム112を嵌着してハウジング152の内外を遮蔽している。ダイアフラム112は、第7実施形態と同様に、圧力入力口160の凹陥部内壁に溶着結合されて一体的に結合されている。このダイアフラム112は測定対象液体の受圧用である。ハーメ端子台154には圧力流入口もダイアフラムも省略された端面板として構成されている。このようなハウジング152も、内外が遮断された状態となっているとともに、図示しない空気抜き手段により内部を真空状態に保持できるようにしているのは他の実施形態と同様である。
前記ハウジング152の内部には、前記ダイアフラム112の内面の中心領域116(図9参照)にシャフト(力伝達手段)166が垂直に立設されており、これはハウジング152の軸芯に沿って配置されている。そして、このシャフト166の先端部には感圧素子受け台としての可動部168が一体的に設けられており、この可動部168に検出軸をシャフト166と同軸となるように設定した双音叉型振動子からなる感圧素子170の一端部を取り付けるようにしている。感圧素子170の他端部は前記ハウジング152のハーメ端子台154の中心領域に設けられている内側に突出した台座172に接続するようにしている。これにより、受圧用ダイアフラム112が測定対象液体の圧力を受けることにより撓むと、シャフト166が軸方向に移動し、これに追随して可動部168に連結された感圧素子170の検出軸方向への作用力を発生させるようにしている。
その他は、第7実施形態に示した圧力センサーと同様であるので、同一部品に同一番号を付して説明を省略する。
このような第8実施形態によれば、絶対圧検出用の圧力センサーとして小型で検出精度の高いものとなる。
なお、上記いずれの実施形態におけるダイアフラムの構成要素は組み合わせが自由にできる。すなわち、図6、図7に示したダイアフラムには、図4、図5に示したリング78や壁88を設けることもできる。