JPWO2006001274A1 - アゾ化合物、インク組成物及び着色体 - Google Patents

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Abstract

本発明は下記式(1)【化1】(式中、R1は水素原子;ヒドロキシル基;カルボキシル基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルキル基など、Aはカルボキシル基もしくはスルホ基を有した脂肪族アミン残基をそれぞれ示す。)で表されるアゾ化合物またはその塩、それを含有するインク組成物、それを用いるインクジェット記録方法及び着色体に関するものであり、該アゾ化合物はカラーバリュウが高く、イエロー〜レッド色または茶色の色相を有し、該アゾ化合物を含むインクはインクの保存安定性も良好で、該インクを用いてプリントした場合、サーマル式インクジェットプリンタにおいても安定した吐出性を示し、かつ、記録された記録物は高品質(耐光性、耐オゾンガス性、耐湿性が優れる)である。

Description

本発明は、新規なアゾ化合物またはその塩、これらを含有するインク組成物およびそれによる着色体に関する。
各種のカラー記録法の中でも代表的方法の一つであるインクジェットプリンタによる記録方法は、インクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材料(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うものである。この方法は、記録ヘッドと被記録材料とが接触しないため音の発生が少なく静かであり、また小型化、高速化が容易という特長の為、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。従来、万年筆、フェルトペン等のインク及びインクジェット記録用インクとしては、水溶性染料を水性媒体中に溶解した水性インクが使用されており、これらの水溶性インクにおいてはペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく一般に水溶性有機溶剤が添加されている。これらの従来のインクにおいては、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求され、また、特に水への溶解度が高いこと、インクに添加される水溶性有機溶剤への溶解度が高いことが要求される。水や水溶性有機溶剤への溶解度が低いとブロンジング現象(色素の会合等が原因で光沢紙の表面に金属状のギラつく現象)が発生し印字品位を著しく低下させる。更に、形成される画像には耐水性、耐光性、耐オゾンガス性、耐湿性等の画像堅牢性が求められている。
耐オゾンガス性とは、耐オゾン性又は耐ガス性等とも呼ばれ、空気中に存在する酸化作用を持つオゾンガス等が記録紙中で染料に作用し、印刷された画像を変退色させるという現象に対する耐性のことである。オゾンガスの他にも、この種の作用を持つ酸化性ガスとしては、NOx,SOx等が挙げられるが、これらの酸化性ガスの中でオゾンガスがインクジェット記録画像の変退色をより促進させる主原因物質とされている。特に、写真画質インクジェット専用紙の表面に設けられるインク受容層には、インクの乾燥を早め、また高画質でのにじみを少なくする為に、多孔質の白色無機顔料等による素材を用いているものが多く、このような記録紙上でオゾンガスによる変退色が顕著に見られている。この酸化性ガスによる変退色現象はインクジェット画像に特徴的なものであるため、インクジェット記録において耐オゾンガス性の向上は最も重要な課題の1つとなっている。
今後、インクを用いた印刷方法の使用分野を拡大すべく、インクジェット記録用に用いられるインク組成物及びそれによって着色された着色体には、耐水性、耐光性、耐湿性、耐オゾンガス性の更なる向上が強く求められている。
インクジェット記録法の普及に伴い用途も拡大しつつある。これまでは使用されるインクの色調としては、一般にはイエロー、マゼンタ、シアンの3色またはブラックを加えた4色であったが、これにレッド(オレンジ)、グリーンやブルー色を加えたりする多色インクの使用が検討されている。即ち自然界のあらゆる色を忠実に再現させる挑戦が続けられている。これに応えるためにあらゆる色相、冴え、濃度の再現可能な染料、インクが求められている。
種々の色相のインクが種々の染料から調製されているが、それらのうち黒色インクは、無彩色の文字情報をプリントする用途のみならず、カラー画像においても用いられる重要なインクである。しかし、濃色域と淡色域共に色相がニュートラルで且つ色濃度が高く、また、色相の光源依存性が小さい良好な黒色を呈する色素の開発は技術的に困難な点が多く、多大な研究開発が行われているがまだ十分な性能を有するものが少ない。その為、一般には複数の多様な色素を混合して黒色インクを形成することが行われている。複数の色素を混合してインクを作製すると、単一色素でインクを作製した場合に比べて、メディア(被記録材料)によって色相が異なる、光やオゾンガスによる色素の分解によって特に変色が大きくなる等の問題がある。従って、高品質の黒色〜灰色の無彩色を構成するための調色用のイエロー〜レッド染料が求められている。
本発明の記録用色素と類似の、黒色染料に黄〜橙色染料を調色する染料としては例えば特許文献1、2に記載された下記式(3)のものがあるが、市場の要求を充分に満足する製品を提供するには至っていない。
Figure 2006001274
特開2002−332426号公報 特開2003−73596号公報
本発明は水を主要成分とする媒体に対する溶解性が高く、高濃度染料水溶液及びインクを長期間保存した場合でも安定であること、黒色用色素と配合して色味のないニュートラルなグレー〜黒色を呈すること、インクジェットプリンタでのプリント適性に優れていること、印字された画像の濃度が高くブロンジングが生じないこと、印字された画像の堅牢性、特に耐オゾンガス性に優れた記録画像を与えること、また合成が容易であるイエロー〜レッド色または茶色のアゾ化合物インク用色素とそれを含有するインク組成物を提供する事を目的とする。
本発明者らは前記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアゾ化合物が上記課題を解決させるものであることを見出し、本発明に至ったものである。
即ち本発明は、
(1)下記式(1)
Figure 2006001274
(式(1)中、R1は水素原子;ヒドロキシル基;カルボキシル基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルキル基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルコキシ基;ヒドロキシル基若しくは(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルキルアミノ基;カルボキシ(C1〜C5)アルキルアミノ基;ビス{カルボキシ(C1〜C5)アルキル}アミノ基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルカノイルアミノ基;カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基で置換されていても良いフェニルアミノ基;スルホ基;ハロゲン原子又はウレイド基を、Aはカルボキシル基もしくはスルホ基を有した脂肪族アミン残基をそれぞれ示す。)
で表されるアゾ化合物またはその塩、
(2)下記式(2)
Figure 2006001274
(式(2)中、Aは式(1)におけるのと同様の意味を表す)
で表される上記(1)に記載のアゾ化合物またはその塩、
(3)(1)における式(1)中、または(2)における式(2)中、Aがカルボキシル基もしくはスルホ基を有した、モノ(C1〜C5)アルキルアミノ基もしくはジ(C1〜C5)アルキルアミノ基である(1)または(2)に記載のアゾ化合物またはその塩、
(4)(1)における式(1)中、または(2)における式(2)中、Aがカルボキシル基もしくはスルホ基を有した、モノ(C1〜C2)アルキルアミノ基もしくはジ(C1〜C2)アルキルアミノ基である(1)または(2)に記載のアゾ化合物またはその塩、
(5)式(2)におけるAがスルホエチルアミノ基である(2)に記載のアゾ化合物またはその塩、
(6)式(2)におけるAがモノまたはジ(カルボキシメチル)アミノ基及びモノまたはジ(カルボキシエチル)アミノ基よりなる群から選ばれる基である(2)に記載のアゾ化合物またはその塩、
(7)(1)から(6)のいずれか一項に記載のアゾ化合物またはその塩を含有することを特徴とするインク組成物、
(8)(1)から(6)のいずれか一項に記載のアゾ化合物またはその塩と黒色用色素を含有することを特徴とするインク組成物、
(9)水溶性有機溶剤を含有する(7)または(8)に記載のインク組成物、
(10)インクジェット記録用である(7)から(9)のいずれか一項に記載のインク組成物、
(11)インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材料に記録を行うインクジェット記録方法において、インクとして(7)から(10)のいずれか一項に記載のインク組成物を用いることを特徴とするインクジェットプリント記録方法、
(12)被記録材料が情報伝達用シートである(11)に記載のインクジェット記録方法、
(13)情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有する(12)に記載のインクジェット記録方法、
(14)(7)から(10)のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器を装填したインクジェットプリンタ、
(15)(1)から(6)のいずれか一項に記載のアゾ化合物またはその塩によって着色された着色体、
に関する。
本発明のアゾ化合物またはその塩(以下両者を合わせて単にアゾ化合物という)は水溶解性に優れるので、インク組成物製造過程でのメンブランフィルターによるろ過性が良好であり、記録液の保存時の安定性や吐出安定性にも優れている。又、このアゾ化合物を含有する本発明のインク組成物は長期間保存後の結晶析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。又、本発明のアゾ化合物を含有するインク組成物は、インクジェット記録用、筆記用具用として用いられ、特にインクジェットプリンタで長期間安定した吐出性を有し、普通紙及びインクジェット専用紙に記録した場合の記録画像の印字濃度が高く、写真記録に用いる光沢紙でもブロンジングを生じない。さらに各種堅牢性、特に耐オゾンガス性に優れているマゼンタ、シアン及びイエロー染料と共に用いることで各種堅牢性に優れた色だし範囲の広いフルカラーのインクジェット記録が可能である。このように本発明のアゾ化合物はイエロー〜レッド色の幅広い色相が得られる色素として、あるいは色調を調整するための色素(調色用色素)として有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の式(1)の化合物において、R1は水素原子;ヒドロキシル基;カルボキシル基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルキル基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルコキシ基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルキルアミノ基;カルボキシ(C1〜C5)アルキルアミノ基;ビス{カルボキシ−(C1〜C5)アルキル}アミノ基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルカノイルアミノ基;フェニル基がカルボキシル基、スルホ基又はアミノ基で置換されていても良いフェニルアミノ基;スルホ基;ハロゲン原子又はウレイド基を示す。
ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、メトキシエチル、エトキシエチル、n−プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、n−ブトキシエチル、sec−ブトキシエチル、tert−ブトキシエチル、2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
又、ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−ヒドロキシプロポキシ、3−ヒドロキシプロポキシ、メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、n−プロポキシエトキシ、イソプロポキシエトキシ、n−ブトキシエトキシ、メトキシプロポキシ、エトキシプロポキシ、n−プロポキシプロポキシ、イソプロポキシブトキシ、n−プロポキシブトキシ、2−ヒドロキシエトキシエトキシ等が挙げられる。
更に、ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルキルアミノ基の例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、イソブチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジ(n−プロピル)アミノ、N,N−ジ(イソプロピル)アミノ、ヒドロキシエチルアミノ、2−ヒドロキシプロピルアミノ、3−ヒドロキシプロピルアミノ、ビス(ヒドロキシエチル)アミノ、メトキシエチルアミノ、エトキシエチルアミノ、ビス(メトキシエチル)アミノ、ビス(2−エトキシエチル)アミノ等が挙げられる。
更に、カルボキシ(C1〜C5)アルキルアミノ基の例としてはカルボキシメチルアミノ、カルボキシエチルアミノ、カルボキシプロピルアミノ、カルボキシ−n−ブチルアミノ、カルボキシ−n−ペンチルアミノなどが挙げられる。
更に、ビス{カルボキシ−(C1〜C5)アルキル}アミノ基の例としてはビス(カルボキシメチル)アミノ、ビス(カルボキシエチル)アミノ、ビス(カルボキシプロピル)アミノ等が挙げられる。
更に、ヒドロキシル基または(C1〜C4)アルコキシ基により置換されていてもよい(C1〜C4)アルカノイルアミノ基の例としてはアセチルアミノ、n−プロピオニルアミノ、イソプロピオニルアミノ、ヒドロキシアセチルアミノ、2−ヒドロキシ−n−プロピオニルアミノ、3−ヒドロキシ−n−プロピオニルアミノ、2−メトキシ−n−プロピオニルアミノ、3−メトキシ−n−プロピオニルアミノ、2−ヒドロキシ−n−ブチリルアミノ、3−ヒドロキシ−n−ブチリルアミノ、2−メトキシ−n−ブチリルアミノ、3−メトキシ−n−ブチリルアミノ等が挙げられる。
更に、フェニル基がカルボキシル基、スルホ基またはアミノ基で置換されていても良いフェニルアミノ基の例としては、フェニルアミノ、スルホフェニルアミノ、カルボキシフェニルアミノ、ビスカルボキシフェニルアミノ、アミノフェニルアミノ、ジアミノフェニルアミノ、ジアミノスルホフェニルアミノ等が挙げられる。
好ましいR1は(C1〜C4)アルキル基であり、メチル基が特に好ましい。
Aはカルボキシル基もしくはスルホ基を有した脂肪族アミン残基、好ましくはC1−C5脂肪族アミン残基であり、スルホ(C1〜C5)アルキルアミノ基、ジ{スルホ(C1〜C5)アルキル}アミノ基、カルボキシル(C1〜C5)アルキルアミノ基、ジ{カルボキシル(C1〜C5)アルキル}アミノ基、などの、カルボキシル基もしくはスルホ基を有した、モノ(C1〜C5)アルキルアミノ基もしくはジ(C1〜C5)アルキルアミノ基が挙げられる。より好ましい脂肪族の炭素数は1〜2であり、さらに好ましくはスルホエチルアミノ基、モノまたはジ(カルボキシルエチル)アミノ基、モノまたはジ(カルボキシメチル)アミノ基であり、スルホエチルアミノ基が特に好ましい。
前記式(1)及び(2)で示される化合物は遊離酸の形で、あるいはその塩の形態で存在する。本発明ではその塩としては、無機又は有機の陽イオンの塩が挙げられる。そのうち無機塩の具体例としては、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩が挙げられ、好ましい無機塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩及びアンモニウム塩であり、又、有機の陽イオンとの塩としては例えば一般式(4)で表される化合物との塩が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
Figure 2006001274
一般式(4)中、Z1、Z、Z、Zはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシ(C1〜C4)アルキル基またはヒドロキシ(C1〜C4)アルコキシ(C1〜C4)アルキル基を表す。アルキル基は特に限定されないが、通常炭素数1〜20程度である。好ましくは炭素数1〜10程度である。
一般式(1)で示される本発明のアゾ化合物は、例えば次のような方法で合成することができる。また各工程における化合物の構造式は遊離酸の形で表すこととする。すなわち、式(5)
Figure 2006001274
で表される化合物に塩化シアヌールを反応させ、式(6)で表される化合物が得られる。
Figure 2006001274
更にこれに前記式(5)で表される化合物を再度縮合反応させ、式(7)
Figure 2006001274
で表される化合物を得る。次いでアルカリ条件下、この化合物に、カルボキシル基もしくはスルホ基を有した脂肪族アミン(A−H)を縮合させることにより前記式(1)で表される化合物を得る。なお、上記において、R1 及びAは前記式(1)におけると同じ意味を表す。
カルボキシル基もしくはスルホ基を有した脂肪族アミン残基の好適な例として、特に限定されるものではないが、具体的には下記表1に示す構造のものが挙げられる。
Figure 2006001274
式(5)の化合物と塩化シアヌールとの反応(1次縮合)はそれ自体公知の条件で実施される。例えば該反応は水性または有機媒体中で、例えば0〜40℃、好ましくは0〜30℃の温度ならびにpH1〜7、好ましくはpH3〜7において実施される。式(5)の化合物と塩化シアヌルの反応には、両者をほぼ化学量論量において用いる。
式(5)の化合物と式(6)の化合物との反応(2次縮合)もそれ自体公知の条件で実施される。例えば該反応は水性または有機媒体中、例えば10〜60℃、好ましくは20〜45℃の温度ならびにpH3〜10、好ましくはpH6〜8において実施される。式(5)と(6)の化合物の反応には両者をほぼ化学量論量において用いる。
式(6)の化合物とカルボキシル基又はスルホ基を有した脂肪族アミンとの反応もそれ自体公知の条件で実施される。例えば該反応は水性または有機媒体中、例えば30〜100℃、好ましくは50〜95℃の温度ならびにpH5〜13、好ましくはpH6〜11において実施される。
本発明による一般式(1)又は(2)で示されるアゾ化合物は、カップリング反応後、鉱酸の添加により遊離酸の形で単離する事ができ、これから水または酸性化した水による洗浄により無機塩を除去する事が出来る。次に、この様にして得られる低い塩含有率を有する酸型色素は、水性媒体中で所望の無機又は有機の塩基により中和することで対応する塩の溶液とすることが出来る。無機の塩基の例としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられ、有機の塩基の例としては、例えば前記式(4)で示される有機アミンの塩、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどがあげられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の前記一般式(1)又は(2)で表されるアゾ化合物は、これを含む水性組成物とすることにより、セルロースからなる材料を染色することが可能である。また、その他カルボンアミド結合を有する材料にも染色が可能で、皮革、織物、紙の染色に幅広く用いることができる。また、本発明の化合物の好ましい用途としては、インク組成物が挙げられる。本発明の化合物を液体の媒体に溶解することにより、インク組成物とすることができる。
前記一般式(1)又は(2)で示される本発明のアゾ化合物を含む反応液は、インク組成物の製造に直接使用する事が出来る。しかし、まずこれを乾燥、例えばスプレー乾燥させて単離するか、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類によって塩析するか、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸によって酸析するか、あるいは前記した塩析と酸析を組み合わせた酸塩析することによって本発明のアゾ化合物を取り出し、次にこれをインク組成物に加工することもできる。
本発明のインク組成物は、一般式(1)、好ましくは一般式(2)で示される本発明のアゾ化合物を通常0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%含有する水を主要な媒体とする組成物である。
また、黒色用色素と併用し、黒色インク組成物を調製することもできる。併用しうる黒色用色素とは、黒色インク組成物を調製する為の色素であって、色相が黒色としては青味〜緑味である色素であり、特に制限はないが耐水性、耐光性、耐湿性、耐オゾンガス性などインクとして求められる諸特性が良好であるものが好ましい。また他の色相を有するイエロー色、マゼンタ色、シアン色、その他の色の色素を混合して黒色用色素としてもよい。
本発明のアゾ化合物と黒色用色素の配合の目安は、黒色用色素の色相により異なるが、配合した色素全質量に対し、本発明のアゾ化合物は例えば1〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。
本発明のインク組成物には、さらに水溶性有機溶剤を例えば0〜30質量%、インク調製剤を例えば0〜5質量%含有していても良い。なお、インク組成物のpHとしては、保存安定性を向上させる点で、pH5〜11が好ましく、pH7〜9がより好ましい。また、インク組成物の表面張力としては、25〜70mN/mが好ましく、25〜60mN/mがより好ましい。さらに、インク組成物の粘度としては、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。
本発明のインク組成物は、前記の一般式(1)、好ましくは一般式(2)で示されるアゾ化合物を水及び/または水溶性有機溶剤(水と混和可能な有機溶剤)に溶解し、必要に応じインク調製剤を添加したものである。このインク組成物をインクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合、本発明の化合物として金属陽イオンの塩化物、硫酸塩等の無機物の含有量が少ないものを用いるのが好ましく、その含有量の目安は例えば1質量%以下(対色素原体)程度である。無機物の少ない本発明の化合物を製造するには、例えば逆浸透膜による通常の方法又は本発明の化合物の乾燥品あるいはウェットケーキをメタノール等のアルコール及び水の混合溶媒中で撹拌し、濾過、乾燥するなどの方法で脱塩処理すればよい。
前記インク組成物の調製において用いうる水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1〜C4アルカノール、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オンまたは1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類、アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトンまたはケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等の(C2〜C6)アルキレン単位を有するモノマー、オリゴマーまたはポリアルキレングリコールまたはチオグリコール、グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール)、エチレングリコールモノメチルエーテルまたはエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はジエチレングリコールモノエチルエーテル又はトリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの(C1〜C4)アルキルエーテル、γーブチロラクトンまたはジメチルスルホキシド等があげられる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
前記インク組成物の調製において用いられるインク調製剤としては、例えば防黴剤、防腐剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤、酸化防止剤、界面活性剤などがあげられる。
用いうる防黴剤としては、例えばデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。これらはインク組成物中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
用いうる防腐剤としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオシキド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオシキド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、無機塩系化合物としては、例えば無水酢酸ソーダが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐剤として、ソルビン酸ソーダ、安息香酸ナトリウム等があげられる。
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを例えば5〜11の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その例として、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム(アンモニア)、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、酢酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム等の無機塩基などが挙げられる。
用いうるpキレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウムなどがあげられる。
用いうる防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグルコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライトなどがあげられる。
用いうる水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホン化したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ−ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。
用いうる水溶性高分子化合物の例としては、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等があげられる。
用いうる染料溶解剤の例としては、例えばε−カプロラクタム、エチレンカ−ボネ−ト、尿素などが挙げられる。
用いうる酸化防止剤の例としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類、等が挙げられる。
用いうる界面活性剤の例としては、例えばアニオン系、カチオン系、ノニオン系などの公知の界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホン酸、アルキルカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸およびその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体などがある。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどのアセチレングリコール系(例えば、日信化学社製サーフィノール104、105、82、465、オルフィンSTGなど)、などが挙げられる。これらのインク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。
本発明のインク組成物は前記各成分を任意の順序で混合、撹拌することによって得られる。得られたインク組成物は狭雑物を除く為に所望によりメンブランフィルター等で濾過を行ってもよい。
本発明のインク組成物は、各種分野において使用することができるが、筆記用水性インク、水性印刷インク、情報記録インク等に好適であり、該インク組成物を含有してなるインクジェット用インクとして用いることが、特に好ましく、後述する本発明のインクジェット記録方法において好適に使用される。
次に、本発明のインクジェット記録方法について説明する。本発明のインクジェット記録方法は、前記インク組成物を含有してなるインクジェット用インクを用いて記録を行うことを特徴とする。本発明のインクジェット記録方法においては、前記インク組成物を含有してなるインクジェット用インクを用いて被記録材料に記録を行うが、その際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等を用いることができる。なお、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
本発明の着色体は前記の本発明の化合物又はこれを含有するインク組成物で着色された被記録材料であり、より好ましくは本発明のインク組成物を用いてインクジェットプリンタによって着色されたものである。着色されうるものとしては、例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。情報伝達用シートとしては、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層には、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工することにより、また多孔質のシリカ、アルミナゾルや特殊セラミックスなどのインク中の色素を吸収し得る多孔性白色無機物をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工することにより設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙(フィルム)、光沢紙(フィルム)等と呼ばれ、ピクトリコ(旭硝子(株)製)、プロフェッショナルフォトペーパーPR−101、スーパーフォトペーパー、マットフォトペーパー(いずれもキヤノン(株)製)、PM写真用紙(光沢)、PMマット紙(いずれもセイコーエプソン(株)製)、プレミアムプラスフォト用紙、プレミアム光沢フィルム、フォト用紙(いずれも日本ヒューレット・パッカード(株)製)フォトライクQP(コニカ(株)製)が市販されている。なお、普通紙も利用できることはもちろんである。
本発明のアゾ化合物は水溶解性に優れ、本アゾ化合物を含有する本発明のインク組成物は長期間保存後の結晶析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。又、本発明のアゾ化合物を含有する記録用インク液は、インクジェット記録用、筆記具用として用いられ、特にサーマルインクジェット方式で要求されるコゲ現象と思われる問題がなく安定した吐出性が得られる。又普通紙及びインクジェット専用紙に記録した場合にまたブロンジングが発生せず、印字濃度が高く、さらに耐オゾンガス性、耐光性及び耐湿性が優れている。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。
水600部中に式(8)で表される化合物14.3部を加え、液体苛性ソーダでpH=6.0〜7.0に調整し、10〜20℃で塩化シアヌル6.1部を添加した。添加後、炭酸ナトリウムでpH=6.0〜7.5を保ち、2時間攪拌し、式(9)の化合物を含む溶液を得た。
Figure 2006001274
Figure 2006001274
この溶液を30〜40℃に昇温し、式(8)の化合物17.1部を添加した。添加後、炭酸ナトリウムでpH=7.0〜8.5を保ち、3時間攪拌し、式(10)の化合物を含む溶液を得た。
Figure 2006001274
この溶液を80〜95℃に昇温し、タウリン5.0部を添加した。添加後、炭酸ナトリウムでpH=9.0〜10.0を保ち、6時間攪拌し、塩化ナトリウムにより塩析し、ろ過した。得られたケーキ全量を水300部に溶解し、2−プロパノール600部により晶析させることより脱塩し、次いで乾燥し本発明の式(11)の化合物30.1部を得た。この化合物の水中での最大吸収波長は437nmであった。
Figure 2006001274
実施例1のタウリン5.0部をイミノジ酢酸12.5部とする以外は実施例1と同様の方法で本発明の式(12)の化合物31.0部を得た。この化合物の水中での最大吸収波長は436nmであった。
Figure 2006001274
実施例3−4
(A)インクの作製
下記成分を混合することによりインク組成物を調製し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過する事によりインクジェット用の本発明の水性インク組成物を得た。このインクは茶色であった。また水はイオン交換水を使用した。尚、インク組成物のpHがpH=8〜9になるように水、水酸化アンモニウムを加えた。
表2
上記実施例で得られた各化合物・・・・・・5.0部
(脱塩処理されたものを使用)
グリセリン・・・・・・・・・・・・・・・5.0部
尿素・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0部
N−メチル−2−ピロリドン・・・・・・・4.0部
イソプロピルアルコール・・・・・・・・・3.0部
ブチルカルビトール・・・・・・・・・・・2.0部
界面活性剤・・・・・・・・・・・・・・・0.1部
(サーフィノール105 日信化学社製)
水+水酸化アンモニウム・・・・・・・・75.9部
計・・・・・・・・・・・・・・・100.0部
表2において、上記実施例で得られた各化合物とは、実施例3は式(11)の化合物を、実施例4は式(12)の化合物をそれぞれ用いたことを示す。これらの水性インク組成物は、貯蔵中、沈殿分離が生ぜず、また長期間保存後においても沈殿分離、粘度変化等の物性の変化は生じなかった。
(B)インクジェットプリント
上記で得られたそれぞれのインク組成物を使用し、インクジェットプリンタ(商品名 Canon社 BJ−S630 )により、普通紙(キヤノン社 LBP PAPER LS−500)、及び専用光沢紙PM(EPSON社 PM写真用紙(光沢) KA420PSK)の2種の紙にインクジェット記録を行った。
印刷の際、各インクは黒色インクカートリッジに詰め替えて反射濃度が数段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの印字物を得た。印刷時はグレースケールモードを用いているため、この淡色部分においては記録液以外のイエロー、シアン、マゼンタの各記録液はプリントされていない。以下に記す試験方法のうち、ブロンジング性は最高濃度の印刷部の表面観察により評価した。測色機を用いて評価する項目である耐光性試験、耐オゾンガス性試験の測定の際には、試験前の印刷物の反射濃度D値が1.0に最も近い階調部分を用いて測定を行った。
(a)吐出性
インクジェットプリンタ(商品名 Canon社 BJ−S630 :ヘッドはサーマル式)にインクを装填し、継続して安定的に何枚の普通紙がプリントできるかをみた。プリントはベタ柄を5段に50%プリントした。評価は下記の基準を用いて評価した。その結果を(表3)に示した。
○ :A4普通紙に10枚以上問題なくプリントできる
△ :A4普通紙に10枚プリントできるが一部にカスレが生じるもの
× :A4普通紙に1−2枚プリントでカスレが生じるもの
(C)記録画像の評価
本発明の水性インク組成物による記録画像につき、ブロンジング、耐光性試験後の濃度残存率、耐オゾンガス性試験後の濃度残存率の3点について評価を行った。尚ブロンジング性、耐オゾンガス性試験は、専用光沢紙PMについてのみ行った。その結果を(表3)に示した。試験方法は下記に示した。
(b)ブロンジング性
専用光沢紙について最高濃度部の表面観察により下記の基準で評価した。
○ :プリント部が非プリント部と同様の光沢状況を示すもの
△ :プリント部が非プリント部に比し光沢状況がかなり劣化しているもの
× :プリント部が金属状のギラつきを呈し光沢を無くしたもの
(c) 耐光性試験
キセノンウェザオメーターCi4000(ATLAS社製)を用い、印刷サンプルに0.36W/平方メートルの照度で50時間照射した。試験終了後測色機を用いて上記のようにして試験後の濃度の残存率を測定した。判定は以下を目安に行った。
○ :残存率が95%以上
△ :残存率が95%未満〜90%以上
× :残存率が90%未満
(d) 耐オゾンガス性試験
オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製)を用いてオゾン濃度を40ppm、湿度60%RH、温度24℃で印刷サンプルを6時間放置した。試験終了後上記の測色システムを用いて試験後の濃度残存率を測定した。判定は以下を目安に行った。
○ :試験時間6時間後の残存率が85%以上
△ :試験時間6時間後の残存率が85%未満〜70%以上
× :試験時間6時間後の残存率が70%未満
比較例1
比較対象として、実施例3〜4の式(11)又は(12)の化合物の代わりに、水溶性インクジェット用色素として特許文献1に記載された方法により製造した前記式(3)の化合物を用いる以外、その他の点は実施例3〜4と同様の組成でインク組成物を調製して、実施例3〜4と同様に、インクジェットプリントし、評価した。インクジェットプリンタでの吐出性、得られた記録画像のブロンジング、耐光性評価、耐オゾンガス性評価の結果を(表3)に示した。
Figure 2006001274
(表3)より、比較例1はサーマルヘッドを有するプリンタでの吐出性が極めて不良であり又光沢紙でブロンジングが発生しているのに対し、実施例3(実施例1の式(11)の化合物)及び実施例4(実施例2の式(12)の化合物)では吐出性が良好でブロンジングが発生しないことがわかる。また、実施例3及び4は比較例1と比較して良好な耐光性、耐オゾンガス性が維持されていることがわかる。
実施例1(式(11))及び2(式(12))の化合物では吐出性が良好であり、またブロンジングが発生しないので、黒色用色素と配合して、黒色インク組成物を調製する際、本発明のアゾ化合物の割合を高めることも可能であり、従って用いうる黒色用色素の選択の範囲が広がると考えられる。
本発明のアゾ化合物を含有するインク組成物はインクジェット記録用、筆記用具用インク液として用いられる。

Claims (15)

  1. 下記式(1)
    Figure 2006001274
    (式(1)中、R1は水素原子;ヒドロキシル基;カルボキシル基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルキル基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルコキシ基;ヒドロキシル基若しくは(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルキルアミノ基;カルボキシ(C1〜C5)アルキルアミノ基;ビス{カルボキシ(C1〜C5)アルキル}アミノ基;ヒドロキシル基又は(C1〜C4)アルコキシ基によって置換されていてもよい(C1〜C4)アルカノイルアミノ基;カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基で置換されていても良いフェニルアミノ基;スルホ基;ハロゲン原子又はウレイド基を、Aはカルボキシル基もしくはスルホ基を有した脂肪族アミン残基をそれぞれ示す。)
    で表されるアゾ化合物またはその塩。
  2. 下記式(2)
    Figure 2006001274
    (式(2)中、Aは式(1)におけるのと同様の意味を表す)
    で表される請求項1に記載のアゾ化合物またはその塩。
  3. 請求項1における式(1)中、または請求項2における式(2)中、Aがカルボキシル基もしくはスルホ基を有した、モノ(C1〜C5)アルキルアミノ基もしくはジ(C1〜C5)アルキルアミノ基である請求項1または2に記載のアゾ化合物またはその塩。
  4. 請求項1における式(1)中、または請求項2における式(2)中、Aがカルボキシル基もしくはスルホ基を有した、モノ(C1〜C2)アルキルアミノ基もしくはジ(C1〜C2)アルキルアミノ基である請求項1または2に記載のアゾ化合物またはその塩。
  5. 式(2)におけるAがスルホエチルアミノ基である請求項2に記載のアゾ化合物またはその塩。
  6. 式(2)におけるAがモノまたはジ(カルボキシメチル)アミノ基及びモノまたはジ(カルボキシエチル)アミノ基よりなる群から選ばれる基である請求項2に記載のアゾ化合物またはその塩。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載のアゾ化合物またはその塩を含有することを特徴とするインク組成物。
  8. 請求項1から6のいずれか一項に記載のアゾ化合物またはその塩と黒色用色素を含有することを特徴とするインク組成物。
  9. 水溶性有機溶剤を含有する請求項7または8に記載のインク組成物。
  10. インクジェット記録用である請求項7から9のいずれか一項に記載のインク組成物。
  11. インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材料に記録を行うインクジェット記録方法において、インクとして請求項7から10のいずれか一項に記載のインク組成物を用いることを特徴とするインクジェットプリント記録方法。
  12. 被記録材料が情報伝達用シートである請求項11に記載のインクジェット記録方法。
  13. 情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有する請求項12に記載のインクジェット記録方法。
  14. 請求項7から10のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器を装填したインクジェットプリンタ。
  15. 請求項1から6のいずれか一項に記載のアゾ化合物またはその塩によって着色された着色体。
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