JPWO2005045958A1 - アルカリ電池およびアルカリ電池用正極材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明の課題は、アルカリ電池の高容量化と強負荷放電特性の向上を可能とすることにある。本発明は、正極合剤、負極、前記正極合剤と前記負極との間に介在するセパレータ、およびアルカリ電解液からなり、前記正極合剤は、オキシ水酸化ニッケルからなる第1活物質および二酸化マンガンからなる第2活物質を含み、前記オキシ水酸化ニッケルは、γ型の結晶構造を有し、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの含有量は、45重量%以上であり、前記オキシ水酸化ニッケルのレーザー回折式粒度分布計を用いて測定される体積基準の平均粒子径が3〜20μmであるアルカリ電池に関する。
Description
本発明は、オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンからなる正極合剤を具備するアルカリ電池、特に一次電池としてのニッケルマンガン電池に関する。また、本発明は、オキシ水酸化ニッケルからなるアルカリ電池用正極材料の製造方法に関する。
アルカリ電池、特に放電スタート型のアルカリ電池やアルカリ一次電池は、正極端子を兼ねる正極ケースの中に、正極ケースに密着して円筒状の正極合剤ペレットを配置し、ペレットの中空部にセパレータを介してゲル状の亜鉛負極を配置したインサイドアウト型の構造を有する。近年のデジタル機器の普及に伴い、これらの電池が使用される機器の負荷電力は次第に大きくなり、強負荷放電性能に優れる電池が要望されつつある。このような要望に対応して、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを混合して強負荷放電特性を向上させたアルカリ電池が提案されており、近年、実用化に至っている(特許文献1)。
一方、アルカリ蓄電池(二次電池)の分野では、一般に球状ないしは鶏卵状の水酸化ニッケルを、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の酸化剤で酸化して得られるオキシ水酸化ニッケルが使用されている。原料の水酸化ニッケルには、嵩密度(タップ密度)の大きいβ型の結晶構造を有するものが用いられる。これを酸化剤で処理して得られるオキシ水酸化ニッケルは、主にβ型の結晶構造を有し、電池内に高密度充填される傾向がある。β型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルのニッケル価数は、ほぼ3価であり、これが2価近傍まで変化する際の電気化学的エネルギーが電池の放電容量として利用される。
正極の利用率や強負荷放電特性を高める目的から、コバルト・亜鉛等溶解させた水酸化ニッケルの固溶体を出発物質として用いる技術も提案されている(特許文献2)。
オキシ水酸化ニッケルを含むアルカリ一次電池が有する課題として、以下を挙げることができる。
(a)電池を高温雰囲気下で保存した際に生じるオキシ水酸化ニッケルの自己分解(電池容量低下と内圧上昇)の改善。
(b)オキシ水酸化ニッケルの単位重量あたりの容量(mAh/g)が小さいことによる低放電容量(放電時間)の向上。
(a)電池を高温雰囲気下で保存した際に生じるオキシ水酸化ニッケルの自己分解(電池容量低下と内圧上昇)の改善。
(b)オキシ水酸化ニッケルの単位重量あたりの容量(mAh/g)が小さいことによる低放電容量(放電時間)の向上。
上記課題を解決するために、アルカリ一次電池の正極合剤においては、以下のような提案がなされている。
まず、保存特性を改良する観点から、オキシ水酸化ニッケルに亜鉛酸化物、カルシウム酸化物、イットリウム酸化物および二酸化チタンよりなる群から選択された少なくとも1種の酸化物を含有させることが提案されている(特許文献3)。
まず、保存特性を改良する観点から、オキシ水酸化ニッケルに亜鉛酸化物、カルシウム酸化物、イットリウム酸化物および二酸化チタンよりなる群から選択された少なくとも1種の酸化物を含有させることが提案されている(特許文献3)。
また、アルカリ蓄電池の用途では、マンガン等の遷移金属を粒子内に溶解させたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルの固溶体を出発物質として用いることが提案されている(特許文献4および特許文献5)。ここでは、充電反応において、ニッケルの平均価数が3.5価付近のγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを意図的に生成させ、飛躍的な容量の向上が図られている。
これに類似する技術として、例えば特許文献6は、3価の状態にあるマンガン、鉄等の遷移金属イオンを、2価のニッケルイオンと共沈させて作製したα型水酸化ニッケルの固溶体粒子を出発物質として用いることが提案されている。ここでは、充電時にγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを生成させることで高容量が図られる。
また、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの粒子の表面を、導電性の高いコバルト酸化物で被覆して、放電特性を改良する提案がなされている(特許文献7および特許文献8)。
しかし、アルカリ蓄電池において、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを正極に用いて、高容量化を図る試みは、実用化に至っていない。その原因は、γ型の結晶が電解液を過剰に吸収して体積膨張するため、初期の数10サイクルの充放電の間に、電池内における電解液の分布が大きく変化することにある。正極側に電解液が偏在してセパレータ中の電解液が不足すると、電池の内部抵抗は著しく上昇する。
一方、本発明者等は、アルカリ蓄電池で検討されているγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを、一次電池に適用することを試み、その場合に生じる問題点について検討した。
まず、オキシ水酸化ニッケルを含有させたアルカリ一次電池の高エネルギー密度化を図る場合、β型の結晶構造を有する原料水酸化ニッケルの化学酸化条件を強くして、得られるβ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルのニッケル価数を高めるというアプローチが考えられる。しかし、このようなアプローチでは、ニッケル価数の上限は3.00〜3.05未満のβ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルしか得られない。
次に、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを用いた一次電池としてのアルカリ電池においては、以下の(a)〜(c)に示す理由により、β型の結晶構造を主体とするオキシ水酸化ニッケルを用いたアルカリ電池よりも、強負荷放電特性が低下しやすいことが見出された。
(a)γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの酸化還元電位(平衡電位)はβ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルよりも卑である。
(b)γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルは、放電の際に生じる体積変化(結晶構造の変化)が大きい。
(c)マンガンを粒子内に溶解させたγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの電子伝導性は、放電に伴って大きく低下する。
(a)γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの酸化還元電位(平衡電位)はβ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルよりも卑である。
(b)γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルは、放電の際に生じる体積変化(結晶構造の変化)が大きい。
(c)マンガンを粒子内に溶解させたγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの電子伝導性は、放電に伴って大きく低下する。
ニッケルマンガン電池などの一次電池では、強負荷放電時における二酸化マンガンの利用率が低いという欠点を補うために、オキシ水酸化ニッケルが正極合剤に添加される。しかし、上記所見は、オキシ水酸化ニッケルによるアルカリ電池の強負荷放電特性を向上させるという利点が、γ型の結晶構造により損なわれ得ることを意味する。
特開昭57−72266号公報 特公平7−77129号公報 特開2001−15106号公報 国際公開第97/19479号パンフレット 特許第3239076号明細書 特開2001−322817号公報 特開平10−334913号公報 特開平11−260364号公報
本発明は、オキシ水酸化ニッケルの物性を好適化することにより、上記問題点を解決もしくは低減し、アルカリ電池、特にニッケルマンガン電池の高容量化と強負荷放電特性の向上を可能とするものである。
また、本発明は、オキシ水酸化ニッケルに特定の元素を添加することにより、上記問題点を解決もしくは低減し、アルカリ電池、特にニッケルマンガン電池の高容量化と強負荷放電特性の向上を可能とするものである。
また、本発明は、オキシ水酸化ニッケルにおけるγ型の結晶構造の割合を所定の範囲内に制御することにより、上記効果を高めることを内容とする。
また、本発明は、オキシ水酸化ニッケルに特定の元素を添加することにより、上記問題点を解決もしくは低減し、アルカリ電池、特にニッケルマンガン電池の高容量化と強負荷放電特性の向上を可能とするものである。
また、本発明は、オキシ水酸化ニッケルにおけるγ型の結晶構造の割合を所定の範囲内に制御することにより、上記効果を高めることを内容とする。
本発明は、アルカリ電池であって、正極合剤、負極、正極合剤と負極との間に介在するセパレータ、およびアルカリ電解液からなり、正極合剤は、オキシ水酸化ニッケルからなる第1活物質および二酸化マンガンからなる第2活物質を含み、前記オキシ水酸化ニッケルは、γ型の結晶構造を有し、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの含有量は、45重量%以上であり、前記オキシ水酸化ニッケルのレーザー回折式粒度分布計を用いて測定される体積基準の平均粒子径が3〜20μmであるアルカリ電池に関する。
前記オキシ水酸化ニッケルは、さらにβ型の結晶構造を含むことが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルは、さらにβ型の結晶構造を含むことが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルのタップ密度は、タッピングが回数500回の場合に1.5g/cm3以上であることが望ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルに含まれる水分量は3重量%以下であることが好ましい。なお、水分は、オキシ水酸化ニッケルの表面に吸着した状態であると考えられる。
BET法を用いて測定される前記オキシ水酸化ニッケルの比表面積は、10〜30m2/gであることが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルに含まれる水分量は3重量%以下であることが好ましい。なお、水分は、オキシ水酸化ニッケルの表面に吸着した状態であると考えられる。
BET法を用いて測定される前記オキシ水酸化ニッケルの比表面積は、10〜30m2/gであることが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折パターンが、γ型結晶の(003)面に帰属される面間隔6.8〜7.1オングストローム(Å)の回折ピークPγおよびβ型結晶の(001)面に帰属される面間隔4.5〜5オングストローム(Å)の回折ピークPβを有する場合、前記回折ピークPγの積分強度Iγおよび前記回折ピークPβの積分強度Iβは、0.5≦Iγ/(Iγ+Iβ)を満たすことが好ましい。この場合、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は、3.3以上となる。
前記オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折パターンが、γ型結晶の(003)面に帰属される面間隔6.8〜7.1オングストローム(Å)の回折ピークPγおよびβ型結晶の(001)面に帰属される面間隔4.5〜5オングストローム(Å)の回折ピークPβを有する場合、前記回折ピークPγの積分強度Iγおよび前記回折ピークPβの積分強度Iβは、0.1≦Iγ/(Iγ+Iβ)<0.5を満たすことが好ましい。この場合、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は、3.05以上3.3未満となる。
前記オキシ水酸化ニッケルは、添加元素を溶解した固溶体であることが好ましい。この場合、前記添加元素は、マンガンおよびコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルが、前記添加元素としてマンガンを溶解した固溶体である場合、前記固溶体に溶解するマンガンの量は、前記固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であることが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルが、前記添加元素としてマンガンおよびコバルトの両方を溶解した固溶体である場合、前記固溶体に溶解するマンガンおよびコバルトの量は、それぞれ前記固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であることが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルが、前記添加元素としてマンガンを溶解した固溶体である場合、前記固溶体は、その表面に付着したコバルト酸化物を有することが、さらに好ましい。この場合、前記固溶体に溶解するマンガンの量は、前記固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であり、前記コバルト酸化物の量は、前記固溶体の0.1〜7重量%であることが好ましい。また、前記コバルト酸化物に含まれるコバルトの平均価数は、3.0よりも大きいことが好ましい。
前記正極合剤に含まれる前記二酸化マンガンの含有量は、20〜90重量%が好適である。
本発明は、また、アルカリ電池用正極材料の製造方法に関する。
本発明の製造方法は、攪拌翼を供えた反応槽内に、硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、それぞれ独立した流路で供給する操作を、不活性ガスをバブリングするとともに反応槽内の温度およびpHを制御しながら行い、ニッケルサイトの一部が2価のマンガンで置換されたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを得る第1工程を有する。
また、前記方法は、第1工程後の水酸化ニッケルを、水洗し、乾燥し、酸化雰囲気下で50〜150℃で加熱して、マンガンだけを平均価数3.5以上に酸化させる第2工程を有する。
また、前記方法は、第2工程後の水酸化ニッケルを、アルカリ水溶液中に酸化剤とともに投入し、前記水酸化ニッケルを化学酸化する第3工程を有する。
本発明の製造方法は、攪拌翼を供えた反応槽内に、硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、それぞれ独立した流路で供給する操作を、不活性ガスをバブリングするとともに反応槽内の温度およびpHを制御しながら行い、ニッケルサイトの一部が2価のマンガンで置換されたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを得る第1工程を有する。
また、前記方法は、第1工程後の水酸化ニッケルを、水洗し、乾燥し、酸化雰囲気下で50〜150℃で加熱して、マンガンだけを平均価数3.5以上に酸化させる第2工程を有する。
また、前記方法は、第2工程後の水酸化ニッケルを、アルカリ水溶液中に酸化剤とともに投入し、前記水酸化ニッケルを化学酸化する第3工程を有する。
前記第1工程では、さらに反応槽内にヒドラジンが加えられ、還元雰囲気が維持されることが好ましい。
前記第2工程では、前記マンガンの平均価数を3.8以上とすることが好ましい。
前記第3工程で用いる酸化剤は、次亜塩素酸塩であることが好ましい。
前記第2工程では、前記マンガンの平均価数を3.8以上とすることが好ましい。
前記第3工程で用いる酸化剤は、次亜塩素酸塩であることが好ましい。
前記第3工程で用いるアルカリ水溶液は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムよりなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ塩を溶解した水溶液であることが好ましい。この場合、前記アルカリ水溶液のアルカリ塩濃度は、3mol/L以上であることが好ましい。
以下、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルをγ−オキシ水酸化ニッケル、β型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルをβ−オキシ水酸化ニッケル、β型の結晶構造を有する水酸化ニッケルをβ−水酸化ニッケルと言う場合がある。
本発明によれば、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを含有させたアルカリ電池の強負荷放電特性に優れるという長所を維持したまま、高容量化が可能である。
γ−オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケル含有量と平均粒子径の制御は、特に、アルカリ電池の高容量化に有効である。
ニッケル含有量と平均粒子径の制御により、オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンからなる正極合剤ペレットの体積エネルギー密度(mAh/cm3)を、既存のβ−オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンを用いたものよりも格段に高めることができる。よって、アルカリ電池容量は大幅に向上する。
γ−オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケル含有量と平均粒子径の制御は、特に、アルカリ電池の高容量化に有効である。
ニッケル含有量と平均粒子径の制御により、オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンからなる正極合剤ペレットの体積エネルギー密度(mAh/cm3)を、既存のβ−オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンを用いたものよりも格段に高めることができる。よって、アルカリ電池容量は大幅に向上する。
また、オキシ水酸化ニッケルに添加元素を溶解させることは、特にアルカリ電池の強負荷放電特性の改善に有効である。
添加元素としては、特にマンガンが有効であり、オキシ水酸化ニッケルの原料にマンガンを少量溶解した水酸化ニッケルの固溶体を用いれば、酸化還元電位が卑となり、水酸化ニッケルの酸化が促進し、γ型の構結晶造の形成が起こりやすくなる。
添加元素としては、特にマンガンが有効であり、オキシ水酸化ニッケルの原料にマンガンを少量溶解した水酸化ニッケルの固溶体を用いれば、酸化還元電位が卑となり、水酸化ニッケルの酸化が促進し、γ型の構結晶造の形成が起こりやすくなる。
また、本発明の正極材料の製造方法によれば、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに酸化する際に、マンガン酸イオン(MnO4 2−)、過マンガン酸イオン(MnO4 −)等が反応雰囲気に溶出しにくい。よって、ニッケルの酸化度合いにばらつきが生じにくい。換言すると、本発明の製造方法によれば、オキシ水酸化ニッケルにマンガンを安定な状態で存在させることができ、得られる電池の品質を安定に保つことができる。
本発明のアルカリ電池は、正極合剤、負極、前記正極合剤と前記負極との間に介在するセパレータ、およびアルカリ電解液を具備する。前記正極合剤は、オキシ水酸化ニッケルからなる第1活物質および二酸化マンガンからなる第2活物質を含み、前記オキシ水酸化ニッケルは、γ型の結晶構造を有する。
アルカリ電池の高容量化の観点から、オキシ水酸化ニッケルのニッケル含有量は45重量%以とする必要があり、50重量%以上であることが望ましい。また、実際の生産時において、正極合剤ペレットの作製を可能とする観点から、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定される体積基準の平均粒子径は3〜20μmとする必要があり、10〜15μmとすることが望ましい。
本発明で用いるオキシ水酸化ニッケルは、γ型の結晶構造を有する単相からなる場合と、β型の結晶構造とγ型の結晶構造とが混在した共晶からなる場合がある。
γ型の結晶構造は、オキシ水酸化ニッケルを構成するNiO2層間に、アルカリ金属イオン(イオンA)が侵入した構造である。この構造において、オキシ水酸化ニッケルを構成する元素やイオン、すなわちA、H、NiおよびOの間では電気的中性が保たれている。γ−オキシ水酸化ニッケルは、化学式AxHyNiO2・nH2Oで表される酸化物である(J.Power Sources 8,p.229(1982))。
γ−オキシ水酸化ニッケルは、粉末X線回折において、JCPDS無機物質ファイルのファイル番号:6−75の回折パターンを与える。代表的回折ピークとして、(003)面に帰属される面間隔6.8〜7.1オングストローム(Å)の回折ピークPγが挙げられる。(003)面はc軸に垂直な結晶面であり、その面間隔にアルカリ金属イオンや水分子が挿入され、層間を7Å付近まで伸長している。
一方、β−オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折では、代表的な回折ピークとして、(001)面に帰属される面間隔4.5〜5Åの回折ピークPβが観測される。
一方、β−オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折では、代表的な回折ピークとして、(001)面に帰属される面間隔4.5〜5Åの回折ピークPβが観測される。
正極合剤の電池への充填性の観点から、本発明で用いるオキシ水酸化ニッケルは、タップ密度が、タッピング回数500回の場合に1.5g/cm3以上であることが望ましく、1.7g/cm3以上であることが更に望ましい。
また、正極合剤中のアルカリ電解液の分布等を良好な状態に維持し、オキシ水酸化ニッケルの放電反応(電気化学反応)を円滑に進め、強負荷放電特性を高める観点から、BET法を用いて測定される比表面積が10〜30m2/gであることが好ましく、15〜20m2/gであることが更に好ましい。
さらに、オキシ水酸化ニッケルに含まれる水分量は、3重量%以下であることが望ましい。特に水分量が2重量%以下であるオキシ水酸化ニッケルを用いると、正極合剤ペレットの作製が容易となり望ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルが、β型の結晶構造を含む場合、前記オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折パターンは、上述のγ型結晶の(003)面に帰属される回折ピークPγの他に、β型結晶の(001)面に帰属される面間隔約4.5〜5Åの回折ピークPβを有する。
回折ピークPγの積分強度Iγおよび回折ピークPβの積分強度Iβが、0.5≦Iγ/(Iγ+Iβ)を満たす場合、高容量化の効果が顕著となる。具体的には、オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は、3.3以上となる。オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数が3.3以上である場合、γ−オキシ水酸化ニッケルは、その価数に見合うだけの大きな放電容量を与えるため、電池の大幅な高容量化が可能となる。
一方、Iγ/(Iγ+Iβ)が0.5未満になると、高容量化は可能であるが、その効果が小さくなる。この場合、オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は3.05以上3.3未満となる。ただし、0.1≦Iγ/(Iγ+Iβ)<0.5の場合には、粒子の嵩密度(タップ密度)が高く保たれるので、正極合剤ペレットを作製しやすく、電池内への充填が容易になるという利点が生じる。
一般に、水酸化ニッケルを高度に酸化させてオキシ水酸化ニッケルを得る場合、c軸に垂直な結晶面の層間に伸長があまり認められないβ−オキシ水酸化ニッケル(主成分)と、少量のγ−オキシ水酸化ニッケルとの共晶が得られる場合が多い。ただし、本発明では、γ−オキシ水酸化ニッケルの単相や、γ−オキシ水酸化ニッケル(主成分)と少量のβ−オキシ水酸化ニッケルとの共晶を正極材料として積極的に使用する場合にも重点を置いている。
γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルは、必ずしもニッケル価数に見合うだけの放電容量を有するわけではない。β−オキシ水酸化ニッケルに比べると、γ−オキシ水酸化ニッケルの方が大幅な放電電圧の低下を生じ、容量が満足に得られないことも多い。
そこで、本発明では、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルとして、マンガンなどの添加元素を溶解した固溶体を用いることを提案する。添加元素を溶解したオキシ水酸化ニッケルの固溶体は、添加元素を溶解した固溶体の水酸化ニッケルを酸化することにより合成することができる。添加元素としては、マンガンの他に、コバルトを好ましく用いることができる。
マンガンを溶解させた固溶体のγ−オキシ水酸化ニッケルの場合、詳細な反応メカニズムは解明されていないが、比較的高い電位域で、高酸化状態のニッケルが2価付近まで還元されるのに見合う容量が得られる。マンガンを溶解したγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを正極材料に用いる場合、ニッケルの1電子超の放電反応を利用することができ、電池容量の向上に有効である。マンガンの存在によってオキシ水酸化ニッケルの酸化状態、すなわち保持電気量が十分に高められる。
マンガンがオキシ水酸化ニッケルに溶解して固溶体を形成している場合、ニッケルが2〜4価に至る酸化還元電位が卑に移行する。また、オキシ水酸化ニッケルのニッケル層内に存在する4価のマンガンイオンが、γ型の結晶構造を熱力学的に安定化する。従って、オキシ水酸化ニッケルの合成の際に、γ型の結晶構造の生成比率が高くなり、ニッケルの平均価数の大きいオキシ水酸化ニッケルを得ることができる。
コバルトがオキシ水酸化ニッケルに溶解して固溶体を形成している場合、ニッケルの放電過程においてプロトンの拡散に好適な欠陥を結晶(NiO2層)内に形成させることができる。その上、オキシ水酸化ニッケル自身の電子伝導性も向上する。よって、強負荷放電特性を損なうことなく、アルカリ電池を大幅に高容量化することが可能となる。
オキシ水酸化ニッケルは、マンガンおよびコバルトの少なくとも一方を溶解した固溶体であることが好ましいが、マンガンおよびコバルトの両方が溶解した固溶体であることが更に好ましい。マンガンおよびコバルトの両方がオキシ水酸化ニッケルに溶解している場合には、高容量化と強負荷放電特性の向上の効果を同時に高めることができる。
オキシ水酸化ニッケルが、添加元素としてマンガンを溶解した固溶体である場合、固溶体に溶解するマンガンの量は、固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であることが好ましい。マンガンの量が1mol%未満では、添加元素の効果があまり得られない。一方、電池容量の減少を避ける観点から、マンガンの量は7mol%以下であることが好ましい。
オキシ水酸化ニッケルが、添加元素としてコバルトを溶解した固溶体である場合、固溶体に溶解するコバルトの量は、固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であることが好ましい。コバルトの量が1mol%未満では、添加元素の効果があまり得られない。一方、電池容量の減少を避ける観点から、コバルトの量は7mol%以下であることが好ましい。
オキシ水酸化ニッケルが、添加元素としてマンガンおよびコバルトの両方を溶解した固溶体である場合、固溶体に溶解するマンガンおよびコバルトの量は、それぞれ固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であることが好ましい。
強負荷放電特性を維持する観点からは、オキシ水酸化ニッケルの表面に、コバルト酸化物を付着させることも有効である。オキシ水酸化ニッケルの表面に付着しているコバルト酸化物は、体積変化を伴うγ−オキシ水酸化ニッケルの放電の際に、活物質からの良好な集電状態を維持し、強負荷放電特性を維持する役割を果たす。
活物質からの良好な集電状態を維持する観点から、前記コバルト酸化物の量は、オキシ水酸化ニッケルの0.1重量%以上であることが好ましい。また、電池の高温保存時において、コバルトの溶出等を抑制し、正極の安定性(信頼性)を確保する観点から、コバルト酸化物の量は、オキシ水酸化ニッケルの7重量%以下であることが好ましい。
コバルト酸化物に含まれるコバルトの平均価数は、3.0よりも大きいことが好ましい。コバルトの平均価数が3.0よりも大きいコバルト酸化物は、コバルトの平均価数が3.0以下のコバルト酸化物に比較して、電子伝導性が極めて高い。そのため、オキシ水酸化ニッケルからの集電効率を最大限に高めることが可能となる。また、そのようなコバルト酸化物の場合、放電後の電池を放置(保存)した場合において、コバルトが2価へ還元されたり、電解液に溶出したりすることが抑制される。従って、このようなコバルト酸化物が表面に付着したオキシ水酸化ニッケルを用いることで、高容量化と強負荷放電特性の向上に加え、電池の保存特性(信頼性)の改善をも図ることが可能になる。
二酸化マンガンは、オキシ水酸化ニッケルよりも電池ケース内に高密度充填することが容易であり、しかも二酸化マンガンの価格は安価である。これらの点を踏まえると、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量は20重量%以上であることが好ましい。また、電池容量を向上させる観点からは、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量は、90重量%以下であることが好ましい。
γ型構造を有するオキシ水酸化ニッケルは、β型構造を主体とする水酸化ニッケルをアルカリ水溶液中で酸化剤を用いて化学酸化し、これを水洗および乾燥して得ることができる。
ここで、γ型構造を主体とするオキシ水酸化ニッケルは、一般的な水酸化ニッケルの充放電に関するBodeダイアグラム(Electrochemical Acta 11,p.1079(1966))を参照すると、α型構造の水酸化ニッケル(α−3Ni(OH)2・2H2O)を出発原料として用いる場合に、容易に得られると考えられる。
ここで、γ型構造を主体とするオキシ水酸化ニッケルは、一般的な水酸化ニッケルの充放電に関するBodeダイアグラム(Electrochemical Acta 11,p.1079(1966))を参照すると、α型構造の水酸化ニッケル(α−3Ni(OH)2・2H2O)を出発原料として用いる場合に、容易に得られると考えられる。
しかし、α型構造を有する水酸化ニッケルは、一般に非常に嵩高く、c軸に垂直な(003)面の面間距離が8オングストローム超であり、この面間距離はγ−水酸化ニッケルのそれよりも大きい。そのため、α型構造を有する水酸化ニッケルを酸化して得られるγ型構造を有するオキシ水酸化ニッケルは、原料の形状(履歴)を反映することとなり、材料が多孔化し、高密度の粉末が得られない。
そこで、本発明では、γ型構造を有するオキシ水酸化ニッケルの原料に、高密度のβ型構造を主体とする水酸化ニッケル(例えば90重量%以上がβ型構造である水酸化ニッケル)を使用することを提案する。γ型構造を主体とするオキシ水酸化ニッケルは、比較的密度であり、電池内への活物質の高密度充填の達成に有利である。
アルカリ水溶液には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、γ型構造を主体とするオキシ水酸化ニッケルの形成反応は、アルカリ金属イオンのNiO2層内への侵入を伴いながら進行する。このため、酸化剤とともに共存させるアルカリ塩の濃度を高くする方が、反応が円滑に進む。よって、これらアルカリ塩のアルカリ水溶液における濃度は、3mol/L以上であることが望ましい。
γ型構造を有するオキシ水酸化ニッケルの原料として用いるβ型構造を主体とする水酸化ニッケルは、マンガンを溶解した固溶体であることが望ましい。
マンガンを溶解した固溶体の水酸化ニッケルは、酸化還元電位が通常の水酸化ニッケルに比べて卑な方向に移行するため、酸化剤による処理において高度に酸化されてγ型構造を形成しやすい。
マンガンを溶解した固溶体の水酸化ニッケルは、酸化還元電位が通常の水酸化ニッケルに比べて卑な方向に移行するため、酸化剤による処理において高度に酸化されてγ型構造を形成しやすい。
また、マンガンが水酸化ニッケル中に酸化物として存在し、ニッケル酸化物との共晶を形成している状態に比べ、水酸化ニッケルにマンガンを溶解した固溶体の状態の方が、酸化剤による処理時にマンガンの溶出が殆ど起こらない点で優れている。
また、マンガンが水酸化ニッケル結晶内のニッケルサイト以外の位置に侵入した固溶状態よりも、マンガンが水酸化ニッケルのニッケルサイトに置換された固溶状態の方が、酸化剤による処理時にマンガンの溶出が殆ど起こらない点で優れている。
また、マンガンが水酸化ニッケル結晶内のニッケルサイト以外の位置に侵入した固溶状態よりも、マンガンが水酸化ニッケルのニッケルサイトに置換された固溶状態の方が、酸化剤による処理時にマンガンの溶出が殆ど起こらない点で優れている。
なお、水酸化ニッケルを酸化剤で処理する際に、マンガンがマンガン酸イオン(MnO4 2−)、過マンガン酸イオン(MnO4 −)等として溶出すると、ニッケルの酸化度合いにばらつきが生ずる。ニッケルサイトの一部がマンガンに置換された固溶体の水酸化ニッケルを用いる場合には、このような現象が抑制され、マンガンの溶出が殆ど起こらない。
酸化剤による処理直前のβ−水酸化ニッケル中のマンガンの平均価数は、3.5以上であることが好ましく、3.8以上であることが更に好ましい。マンガンの平均価数が2〜3価と低い場合には、オキシ水酸化ニッケル粒子内に、局所的にマンガン酸化物が遊離する等の現象が起こることがある。その原因の詳細は明らかではないが、酸化処理時にマンガン種が結晶内で移動するなどして、酸化物が形成されると考えられる。その場合、電池の高容量化に寄与するだけの高い放電効率を有するγ−オキシ水酸化ニッケルを得ることが困難になる。よって、マンガンの平均価数は、4価に近い状態の方が好ましい。
次に、マンガンを好適な状態で溶解したγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの効率的な製造方法の一例について説明する。
第1工程
まず、攪拌翼を供えた反応槽内に、硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、それぞれ独立した流路で供給する。この操作は、反応槽内に不活性ガスをバブリングするとともに、反応槽内の温度およびpHを制御しながら行う。この操作では、ニッケルサイトの一部が2価のマンガンで置換されたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを得ることができる。
第1工程
まず、攪拌翼を供えた反応槽内に、硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、それぞれ独立した流路で供給する。この操作は、反応槽内に不活性ガスをバブリングするとともに、反応槽内の温度およびpHを制御しながら行う。この操作では、ニッケルサイトの一部が2価のマンガンで置換されたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを得ることができる。
反応槽内における各溶液の濃度は、反応槽の設備等によって当業者が適宜調整することが要求されるが、そのような調整は当業者が任意に行うことができる。一般的な濃度を挙げれば、硫酸ニッケル(II)の濃度は0.5〜2mol/L、水酸化ナトリウムの濃度は1〜5mol/L、アンモニア水の濃度は10〜30重量%であるが、これに限定されるわけではない。また、硫酸マンガン(II)の濃度は、所望のニッケル含有量が達成されるように選択すればよい。
不活性ガスには、窒素、アルゴン等を用いる。不活性ガスのバブリングを行いながら原料溶液の攪拌を行うことで、ニッケルおよびマンガンが2価の状態でアンミン錯体を形成し、アンミン錯体に過剰供給された水酸化ナトリウム水溶液が作用して、2価のニッケルサイトの一部がマンガンに置換されたβ型構造を主体とする水酸化ニッケルが析出する。マンガンを溶解させた水酸化ニッケルの密度は低下する場合が多いが、これは水酸化ニッケルの合成途上で2価のマンガンイオンが酸化を受けることが主要因となっている。一方、上記のような不活性ガス雰囲気下で合成すれば、非常に密度の高いβ−水酸化ニッケルを得ることができる。
反応槽内の還元雰囲気を維持する観点から、第1工程では、さらに反応槽内にヒドラジンを加えることが望ましい。このような雰囲気制御がなされることで、合成時のマンガンイオンの酸化がより一層抑えられ、2価のマンガンがニッケルサイトの一部に置換したβ−水酸化ニッケルを確実に得ることが可能になる。
第2工程
次に、第1工程で得られたβ−水酸化ニッケルを、水洗し、乾燥し、酸化雰囲気下で50〜150℃で加熱する。この操作により、マンガンだけを平均価数3.5以上に酸化させることができる。
β−水酸化ニッケル中のマンガンの価数が2価のままであると、酸化処理前の常温大気中での保存時あるいは酸化処理時に、粒子内で局所的にマンガン酸化物が遊離する等の現象が起こり、後に十分な特性が得られないことがある。一方、第1工程後に、マンガンを3.5価以上の状態に変換すると、マンガンをβ−水酸化ニッケルのニッケルサイトに安定して存在させることができる。
次に、第1工程で得られたβ−水酸化ニッケルを、水洗し、乾燥し、酸化雰囲気下で50〜150℃で加熱する。この操作により、マンガンだけを平均価数3.5以上に酸化させることができる。
β−水酸化ニッケル中のマンガンの価数が2価のままであると、酸化処理前の常温大気中での保存時あるいは酸化処理時に、粒子内で局所的にマンガン酸化物が遊離する等の現象が起こり、後に十分な特性が得られないことがある。一方、第1工程後に、マンガンを3.5価以上の状態に変換すると、マンガンをβ−水酸化ニッケルのニッケルサイトに安定して存在させることができる。
第3工程
次に、第2工程後の水酸化ニッケルを、アルカリ水溶液中に酸化剤とともに投入し、水酸化ニッケルを化学酸化する。この操作によって、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルが得られる。
γ−オキシ水酸化ニッケルは、オキシ水酸化ニッケルのNiO2層間にアルカリ金属イオンが挿入して4価ニッケルイオンの電気的中性が保たれている。従って、アルカリ金属イオンを含む水溶液中で酸化剤処理を行う必要がある。ただし、OH−以外の大半のアニオン種(SO4 2−、NO3 −、Cl−等)は、電池特性に悪影響を及ぼすため、実質上、アルカリ水溶液中での処理が必須となる。
次に、第2工程後の水酸化ニッケルを、アルカリ水溶液中に酸化剤とともに投入し、水酸化ニッケルを化学酸化する。この操作によって、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルが得られる。
γ−オキシ水酸化ニッケルは、オキシ水酸化ニッケルのNiO2層間にアルカリ金属イオンが挿入して4価ニッケルイオンの電気的中性が保たれている。従って、アルカリ金属イオンを含む水溶液中で酸化剤処理を行う必要がある。ただし、OH−以外の大半のアニオン種(SO4 2−、NO3 −、Cl−等)は、電池特性に悪影響を及ぼすため、実質上、アルカリ水溶液中での処理が必須となる。
アルカリ水溶液には、上述のように、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムよりなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ塩が好ましい。また、γ−オキシ水酸化ニッケルの生成効率を高める観点から、アルカリ水溶液におけるアルカリ塩濃度は3mol/L以上であることが望ましい。
水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに酸化させるための酸化剤には、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩、ペルオキシ二硫酸カリウム等の過硫酸塩、臭素等のハロゲン類、過酸化水素水等を用いることができる。これらのうちでは、酸化力が高く安定しており、価格も安価であるため、次亜塩素酸塩が最も適する。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
まず、オキシ水酸化ニッケル、ないしは原料水酸化ニッケルの物性測定法について説明する。
〈1〉粉末X線回折測定
理学電機株式会社製の粉末X線回折装置「RINT1400」を用い、以下の測定条件により、2θ=10〜70度(deg.)の範囲で各粉末のX線回折プロファイル(回折パターン)を得た。
(対陰極)Cu
(フィルタ)Ni
(管電圧)40kV
(管電流)100mA
(サンプリング角度)0.02deg.
(走査速度)3.0deg./min.
(発散スリット)1/2deg.
(散乱スリット)1/2deg.
まず、オキシ水酸化ニッケル、ないしは原料水酸化ニッケルの物性測定法について説明する。
〈1〉粉末X線回折測定
理学電機株式会社製の粉末X線回折装置「RINT1400」を用い、以下の測定条件により、2θ=10〜70度(deg.)の範囲で各粉末のX線回折プロファイル(回折パターン)を得た。
(対陰極)Cu
(フィルタ)Ni
(管電圧)40kV
(管電流)100mA
(サンプリング角度)0.02deg.
(走査速度)3.0deg./min.
(発散スリット)1/2deg.
(散乱スリット)1/2deg.
各回折パターンから、γ型結晶の(003)面に帰属される面間隔6.8〜7.1Å付近の回折ピークPγの積分強度Iγと、β型結晶の(001)面に帰属される面間隔4.5〜5Åの回折ピークPβの積分強度Iβを求め、Iγ/(Iγ+Iβ)の値を求めた。
〈2〉ニッケル含有量
各試料粉末のニッケル含有量は、重量法に基づく以下の化学測定で求めた。
オキシ水酸化ニッケルないしは水酸化ニッケルの試料粉末に、硝酸水溶液を加えて加熱し、粒子を完全に溶解させ、酒石酸水溶液とイオン交換水とを加えて体積調整した。この溶液のpHをアンモニア水および酢酸を用いて調整した後、臭素酸カリウムを加えて、測定誤差となりうる添加元素(マンガンイオンやコバルトイオン)を高次な状態に酸化させた。
各試料粉末のニッケル含有量は、重量法に基づく以下の化学測定で求めた。
オキシ水酸化ニッケルないしは水酸化ニッケルの試料粉末に、硝酸水溶液を加えて加熱し、粒子を完全に溶解させ、酒石酸水溶液とイオン交換水とを加えて体積調整した。この溶液のpHをアンモニア水および酢酸を用いて調整した後、臭素酸カリウムを加えて、測定誤差となりうる添加元素(マンガンイオンやコバルトイオン)を高次な状態に酸化させた。
次に、この溶液を加熱攪拌しながらジメチルグリオキシムのエタノール溶液を添加し、ニッケル(II)イオンをジメチルグリオキシム錯化合物として沈殿させた。続いて吸引濾過を行い、生成した沈殿物を捕集して110℃雰囲気で乾燥させ、沈殿物の重量を測定した。測定結果より、各粉末中に含まれるニッケル含有量を次式により算出した。
ニッケル含有量(重量%)={沈殿物の重量(g)×0.2032}/{試料粉末の重量(g)}
ニッケル含有量(重量%)={沈殿物の重量(g)×0.2032}/{試料粉末の重量(g)}
〈3〉ニッケルの平均価数
オキシ水酸化ニッケルがマンガンやコバルトのような添加元素を含まない場合は、オキシ水酸化ニッケルの試料粉末にヨウ化カリウムと硫酸を加え、十分に攪拌を続けることで完全に溶解させた。この過程で価数の高いニッケルイオンは、ヨウ化カリウムをヨウ素に酸化し、自身は2価に還元される。続いて、生成、遊離したヨウ素を0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定した。この際の滴定量は、価数が2価よりも大きいニッケルイオン量を反映している。滴定の結果と、上記〈2〉で求めたニッケル含有量を用いて、オキシ水酸化ニッケル中に含まれるニッケルの平均価数を以下の式で算出した。
ニッケルの平均価数={滴定量(L)×0.1(mol/L)×58.69}/{オキシ水酸化ニッケルの重量(g)×ニッケル含有量}+2.00
オキシ水酸化ニッケルがマンガンやコバルトのような添加元素を含まない場合は、オキシ水酸化ニッケルの試料粉末にヨウ化カリウムと硫酸を加え、十分に攪拌を続けることで完全に溶解させた。この過程で価数の高いニッケルイオンは、ヨウ化カリウムをヨウ素に酸化し、自身は2価に還元される。続いて、生成、遊離したヨウ素を0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定した。この際の滴定量は、価数が2価よりも大きいニッケルイオン量を反映している。滴定の結果と、上記〈2〉で求めたニッケル含有量を用いて、オキシ水酸化ニッケル中に含まれるニッケルの平均価数を以下の式で算出した。
ニッケルの平均価数={滴定量(L)×0.1(mol/L)×58.69}/{オキシ水酸化ニッケルの重量(g)×ニッケル含有量}+2.00
オキシ水酸化ニッケルが添加元素(マンガンやコバルト)を含む固溶体である場合は、価数の高いマンガンイオンやコバルトイオンもヨウ化カリウムをヨウ素に酸化し、自身は2価に還元されるため、この分を補正する必要がある。
そこで、添加元素を溶解したオキシ水酸化ニッケルの固溶体の場合は、これに硝酸水溶液を加えて加熱し、粒子を完全に溶解させた後、得られた溶液に関してICP発光分析を行って、添加元素の含有量を定量した。ICP発光分析には、VARIAN社製のVISTA−RLを使用した。オキシ水酸化ニッケル中に含まれるマンガンの平均価数を4価、コバルトの平均価数を3.5価と仮定して、ICP発光分析結果を用いて前記滴定量を補正し、ニッケルの平均価数を算出した。
なお、オキシ水酸化ニッケルに酸化される前の原料水酸化ニッケルの固溶体に含まれるマンガンの平均価数は、添加元素の含有量をICP発光分析で求めた値とし、ニッケルを2価、コバルトを2価と仮定して、基本的には上記と同様の酸化還元滴定で求めた。
〈4〉タップ密度
タップ密度の測定には、ホソカワミクロン株式会社製の測定装置「パウダテスタPT−R」を用いた。試料粉末が通過する篩には、目開き100μmの篩を使用し、20ccのタッピングセルに粉末を落下させた。セルが満杯に充填された後、1回/秒でストローク長18mmのタッピングを500回行った。その後、タップ密度を測定した。
タップ密度の測定には、ホソカワミクロン株式会社製の測定装置「パウダテスタPT−R」を用いた。試料粉末が通過する篩には、目開き100μmの篩を使用し、20ccのタッピングセルに粉末を落下させた。セルが満杯に充填された後、1回/秒でストローク長18mmのタッピングを500回行った。その後、タップ密度を測定した。
〈5〉平均粒子径
日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置「9220FRA」を用いて、試料粉末を水中に十分に分散させ、レーザー回折法によって体積基準の平均粒子径D50を求めた。
日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置「9220FRA」を用いて、試料粉末を水中に十分に分散させ、レーザー回折法によって体積基準の平均粒子径D50を求めた。
〈6〉水分量
株式会社製チノー製の乾量式水分計「CZA−2100」を用いて、5gの試料粉末を120℃で加熱乾燥させ、その後、試料中に含まれている水分量(重量%)を測定した。
株式会社製チノー製の乾量式水分計「CZA−2100」を用いて、5gの試料粉末を120℃で加熱乾燥させ、その後、試料中に含まれている水分量(重量%)を測定した。
〈7〉BET比表面積
マイクロメリテックス社製「ASAP2010」を用いて、約2gの試料粉末に対して、60℃で加熱しながら6時間真空引きを行い、予備乾燥させた後、窒素ガスを試料に吸着させて吸着量を測定した。さらに試料粉末の重量を精秤して、BET法により比表面積を求めた。
マイクロメリテックス社製「ASAP2010」を用いて、約2gの試料粉末に対して、60℃で加熱しながら6時間真空引きを行い、予備乾燥させた後、窒素ガスを試料に吸着させて吸着量を測定した。さらに試料粉末の重量を精秤して、BET法により比表面積を求めた。
[1]水酸化ニッケルの製造
(1)水酸化ニッケルa1
それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、攪拌翼を備えた反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、球状のβ−水酸化ニッケルを析出・成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸イオンを除去した後、水洗し、乾燥させて、水酸化ニッケルa1とした。
(1)水酸化ニッケルa1
それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、攪拌翼を備えた反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、球状のβ−水酸化ニッケルを析出・成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸イオンを除去した後、水洗し、乾燥させて、水酸化ニッケルa1とした。
(2)水酸化ニッケルb1
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出させ、成長させた。
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出させ、成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸イオンを除去した後、水洗・真空乾燥を行い、さらに、これに80℃で72時間の空気酸化を施して、水酸化ニッケルb1〔組成:Ni0.95Mn0.05(OH)2〕とした。ここで、空気酸化は、Mnだけを4価近傍にまで酸化するための処理である。
(3)水酸化ニッケルc1
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンとコバルトとを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出させ、成長させた。
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンとコバルトとを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出させ、成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸イオンを除去した後、水洗・真空乾燥を行い、さらに、これに80℃で72時間の空気酸化を施して、水酸化ニッケルc1〔組成:Ni0.90Mn0.05Co0.05(OH)2〕とした。
(4)水酸化ニッケルd1
水酸化ニッケルb1を反応槽内の硫酸コバルト水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、35℃で槽内のpHが10を維持するように制御しながら攪拌を続けて、固溶体粒子の表面に水酸化コバルトを析出させた。こうして、Co(OH)2で被覆された水酸化ニッケルb1を水酸化ニッケルd1とした。水酸化ニッケルd1は、水洗した後、真空乾燥を行った。
ここで、水酸化ニッケルb1の表面に付着する水酸化コバルトの量は、水酸化ニッケルb1の100重量部あたり5.0重量部とした。
水酸化ニッケルa1〜d1は、いずれも平均粒子径が約12μm、BET比表面積が10〜12m2/g、タップ密度が2.1〜2.2g/cm3の範囲にあった。
水酸化ニッケルb1を反応槽内の硫酸コバルト水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、35℃で槽内のpHが10を維持するように制御しながら攪拌を続けて、固溶体粒子の表面に水酸化コバルトを析出させた。こうして、Co(OH)2で被覆された水酸化ニッケルb1を水酸化ニッケルd1とした。水酸化ニッケルd1は、水洗した後、真空乾燥を行った。
ここで、水酸化ニッケルb1の表面に付着する水酸化コバルトの量は、水酸化ニッケルb1の100重量部あたり5.0重量部とした。
水酸化ニッケルa1〜d1は、いずれも平均粒子径が約12μm、BET比表面積が10〜12m2/g、タップ密度が2.1〜2.2g/cm3の範囲にあった。
[2]水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
水酸化ニッケルa1の200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルA1とした。
また、水酸化ニッケルa1の代わりに水酸化ニッケルb1、c1およびd1を用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルB1、C1およびD1を製造した。
水酸化ニッケルa1の200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルA1とした。
また、水酸化ニッケルa1の代わりに水酸化ニッケルb1、c1およびd1を用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルB1、C1およびD1を製造した。
[3]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1について得られたIγ/(Iγ+Iβ)値およびニッケルの平均価数を表1に示す。
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1について得られたIγ/(Iγ+Iβ)値およびニッケルの平均価数を表1に示す。
表1より以下のことが言える。
まず、マンガンやコバルトを含まないオキシ水酸化ニッケルA1では、γ−オキシ水酸化ニッケルの生成比率は僅かであり、ニッケルの化学酸化が、ほぼ3価近傍までで抑えられている。
一方、マンガンを溶解させた固溶体のオキシ水酸化ニッケルB1〜D1では、いずれもIγ/(Iγ+1β)値が0.8付近であり、ニッケルの平均価数が3.4価程度まで高められている。
まず、マンガンやコバルトを含まないオキシ水酸化ニッケルA1では、γ−オキシ水酸化ニッケルの生成比率は僅かであり、ニッケルの化学酸化が、ほぼ3価近傍までで抑えられている。
一方、マンガンを溶解させた固溶体のオキシ水酸化ニッケルB1〜D1では、いずれもIγ/(Iγ+1β)値が0.8付近であり、ニッケルの平均価数が3.4価程度まで高められている。
[4]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1を用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池を作製した。図1は、本実施例で作製した電池の一部を断面にした正面図である。
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1を用いた電池を、それぞれ電池A1〜D1とした。
(1)正極合剤ペレットの作製
所定のオキシ水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、この配合物に、オキシ水酸化ニッケルa2の5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルa2と二酸化マンガンとの合計100重量部に対して、アルカリ電解液(40重量%の水酸化カリウム水溶液)1重量部を添加した。その後、配合物が均一になるまでミキサーで撹拌および混合して、配合物を粒状物とした。得られた粒状物を中空の短筒状に成形し、正極合剤ペレットとした。
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1を用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池を作製した。図1は、本実施例で作製した電池の一部を断面にした正面図である。
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1を用いた電池を、それぞれ電池A1〜D1とした。
(1)正極合剤ペレットの作製
所定のオキシ水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、この配合物に、オキシ水酸化ニッケルa2の5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルa2と二酸化マンガンとの合計100重量部に対して、アルカリ電解液(40重量%の水酸化カリウム水溶液)1重量部を添加した。その後、配合物が均一になるまでミキサーで撹拌および混合して、配合物を粒状物とした。得られた粒状物を中空の短筒状に成形し、正極合剤ペレットとした。
(2)電池の組立
正極ケース1には、ニッケルメッキされた鋼板を用いた。正極ケース1の内面には、黒鉛塗装膜2を形成した。正極ケース1の内部に、短筒状の正極合剤ペレット3を複数個挿入した。正極合剤ペレット3は、正極ケース1の内部で再加圧して、その内面に密着させた。正極合剤ペレット3の内側には、筒状セパレータ4を挿入し、正極ケース1の内底面には、絶縁キャップ5を載置した。その後、セパレータ4と正極合剤ペレット3を湿潤させる目的で、アルカリ電解液を正極ケース1に注液した。アルカリ電解液には、水酸化カリウムを40重量%含む水溶液を用いた。電解液の注液後、セパレータ4の内側にゲル状負極6を充填した。ゲル状負極6には、ゲル化剤のポリアクリル酸ナトリウム、アルカリ電解液、および負極活物質の亜鉛粉末の混合物を用いた。
正極ケース1には、ニッケルメッキされた鋼板を用いた。正極ケース1の内面には、黒鉛塗装膜2を形成した。正極ケース1の内部に、短筒状の正極合剤ペレット3を複数個挿入した。正極合剤ペレット3は、正極ケース1の内部で再加圧して、その内面に密着させた。正極合剤ペレット3の内側には、筒状セパレータ4を挿入し、正極ケース1の内底面には、絶縁キャップ5を載置した。その後、セパレータ4と正極合剤ペレット3を湿潤させる目的で、アルカリ電解液を正極ケース1に注液した。アルカリ電解液には、水酸化カリウムを40重量%含む水溶液を用いた。電解液の注液後、セパレータ4の内側にゲル状負極6を充填した。ゲル状負極6には、ゲル化剤のポリアクリル酸ナトリウム、アルカリ電解液、および負極活物質の亜鉛粉末の混合物を用いた。
次に、樹脂製封口板7、負極端子を兼ねる底板8、および絶縁ワッシャ9と一体化された負極集電体10を、ゲル状負極6に差し込んだ。そして、正極ケース1の開口端部を、封口板7の端部を介して、底板8の周縁部にかしめつけ、正極ケース1の開口部を密閉した。正極ケース1の外表面には、外装ラベル11を被覆した。こうして図1に示すような単三サイズのニッケルマンガン電池を完成した。
[5]アルカリ電池の評価
こうして作製したニッケルマンガン電池A1〜D1を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
得られた結果を表2にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方において、ニッケルマンガン電池B1〜D1の放電容量は、ニッケルマンガン電池A1の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
こうして作製したニッケルマンガン電池A1〜D1を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
得られた結果を表2にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方において、ニッケルマンガン電池B1〜D1の放電容量は、ニッケルマンガン電池A1の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
表2より以下のことが言える。
まず、マンガンを溶解させてニッケルの平均価数を3.4価程度にまで高めたオキシ水酸化ニッケルB1〜D1を用いた電池では、50mAの定電流(低負荷)で連続放電させた場合、高価数に見合うだけの高い容量が得られている。つまり、β−オキシ水酸化ニッケルを主体とするオキシ水酸化ニッケルA1を用いた電池A1より、電池B1〜D1の方が高容量化が図られる。
まず、マンガンを溶解させてニッケルの平均価数を3.4価程度にまで高めたオキシ水酸化ニッケルB1〜D1を用いた電池では、50mAの定電流(低負荷)で連続放電させた場合、高価数に見合うだけの高い容量が得られている。つまり、β−オキシ水酸化ニッケルを主体とするオキシ水酸化ニッケルA1を用いた電池A1より、電池B1〜D1の方が高容量化が図られる。
ただし、マンガンだけを溶解させたオキシ水酸化ニッケルB1を用いた電池B1では、1W(強負荷)での連続放電では、オキシ水酸化ニッケルA1を用いた電池A1よりも容量が劣っている。
これは、(a)γ−オキシ水酸化ニッケルの酸化還元電位(平衡電位)がβ−オキシ水酸化ニッケルよりも卑であること、(b)γ−オキシ水酸化ニッケルは、放電の際に生じる体積変化(結晶構造の変化)が大きいため、分極の程度が大きいこと、(c)マンガンだけを溶解させたγ−オキシ水酸化ニッケルの電子伝導性は、放電に伴って大きく低下すること(支配因子)などにより、強負荷放電特性が大きく低下したためと推察される。
これは、(a)γ−オキシ水酸化ニッケルの酸化還元電位(平衡電位)がβ−オキシ水酸化ニッケルよりも卑であること、(b)γ−オキシ水酸化ニッケルは、放電の際に生じる体積変化(結晶構造の変化)が大きいため、分極の程度が大きいこと、(c)マンガンだけを溶解させたγ−オキシ水酸化ニッケルの電子伝導性は、放電に伴って大きく低下すること(支配因子)などにより、強負荷放電特性が大きく低下したためと推察される。
これに比較して、マンガンとコバルトとを溶解させたオキシ水酸化ニッケルC1を用いた電池C1では、50mA(低負荷)放電と1W(強負荷)放電のいずれにおいても、高い放電容量を与えている。
ここでは、ニッケル層内に添加されたマンガンイオン(4価)の存在により、γ型の結晶構造が熱力学的に安定化され、オキシ水酸化ニッケル中のニッケルの平均価数が大きくなり、放電容量が向上したものと考えられる。
ここでは、ニッケル層内に添加されたマンガンイオン(4価)の存在により、γ型の結晶構造が熱力学的に安定化され、オキシ水酸化ニッケル中のニッケルの平均価数が大きくなり、放電容量が向上したものと考えられる。
また、オキシ水酸化ニッケル中にコバルトが添加されていると、ニッケルの放電過程で、プロトンの拡散に好適な欠陥をNiO2層内に形成させることができ、同時にオキシ水酸化ニッケル自身の電子伝導性が向上する。従って、放電に際しても、オキシ水酸化ニッケルの電子伝導性が高く維持されるため、強負荷放電特性が大幅に改善されるものと考えられる。
このような理由から、マンガンとコバルトの両者を溶解させた固溶体のオキシ水酸化ニッケルC1を用いた電池C1は、低負荷・強負荷のいずれの放電においても、高い容量を与えたものと推察される。
このような理由から、マンガンとコバルトの両者を溶解させた固溶体のオキシ水酸化ニッケルC1を用いた電池C1は、低負荷・強負荷のいずれの放電においても、高い容量を与えたものと推察される。
また、コバルト酸化物で表面が被覆された、マンガンを溶解させたオキシ水酸化ニッケルD1を用いた電池D1も、50mA(低負荷)放電と1W(強負荷)放電の両方において、高い放電容量を与えている。
これに関連して、別の実験で、pH=10付近で合成したCo(OH)2を5mol/Lの水酸化ナトリウムに投入し、そこへ次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加して、Co(OH)2をコバルト酸化物に酸化した。そして、得られたコバルト酸化物中のコバルトの平均価数を調べたところ、3価を超えるまで酸化されており、極めて高い電子伝導性を有することが確認できた。
オキシ水酸化ニッケルD1においては、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の表面に、電子伝導性の高いコバルト酸化物が付着していることから、体積変化を伴うγ−オキシ水酸化ニッケルの放電においても、活物質間の集電性を比較的良好に保つことができると考えられる。従って、分極の度合いが低減し、高容量化と強負荷放電特性向上の両立が図られたと考えられる。
以上のように、本発明によれば、高容量で強負荷放電特性にも優れたアルカリ電池を得ることができた。
以上のように、本発明によれば、高容量で強負荷放電特性にも優れたアルカリ電池を得ることができた。
オキシ水酸化ニッケル中のニッケルの平均価数、Iγ/(Iγ+Iβ)値および正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量を最適化するために、以下の実験と評価を行った。
[1]オキシ水酸化ニッケルの製造
実施例1で用いた水酸化ニッケルc1〔組成:Ni0.90Mn0.05Co0.05(OH)2〕の200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルC1とした。
実施例1で用いた水酸化ニッケルc1〔組成:Ni0.90Mn0.05Co0.05(OH)2〕の200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルC1とした。
また、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を1.0mol/L、3.0mol/L、4.0mol/L、5.0mol/Lおよび7.0mol/Lとしたこと以外、上記と同様にして、オキシ水酸化ニッケルC2〜C6を製造した。
[2]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
得られたオキシ水酸化ニッケルC1〜C6の粉末X線回折によるIγ/(Iγ+Iβ)値と、化学分析によるニッケルの平均価数を表3にまとめる。
表3より、化学酸化に際して共存させる水酸化ナトリウム水溶液の濃度を調整することで、オキシ水酸化ニッケルの酸化度(γ−オキシ水酸化ニッケルの生成比率とニッケルの平均価数)の制御が可能であることがわかる。
得られたオキシ水酸化ニッケルC1〜C6の粉末X線回折によるIγ/(Iγ+Iβ)値と、化学分析によるニッケルの平均価数を表3にまとめる。
表3より、化学酸化に際して共存させる水酸化ナトリウム水溶液の濃度を調整することで、オキシ水酸化ニッケルの酸化度(γ−オキシ水酸化ニッケルの生成比率とニッケルの平均価数)の制御が可能であることがわかる。
[3]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルC1〜C6を用いて、正極合剤C1n〜C6n(nは1〜8の整数)を調製し、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池C1n〜C6n(nは1〜8の整数)を作製した。
ここでは、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量を最適化する観点から、表4に示すように正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量(導電剤の黒鉛等も含めた正極合剤全体に対する二酸化マンガンの重量比率)を変化させた。
オキシ水酸化ニッケルC1〜C6を用いて、正極合剤C1n〜C6n(nは1〜8の整数)を調製し、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池C1n〜C6n(nは1〜8の整数)を作製した。
ここでは、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量を最適化する観点から、表4に示すように正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量(導電剤の黒鉛等も含めた正極合剤全体に対する二酸化マンガンの重量比率)を変化させた。
正極合剤C1nの場合、オキシ水酸化ニッケルC1と二酸化マンガンとの合計100重量部あたり5重量部の黒鉛(導電剤)を添加し、さらにオキシ水酸化ニッケルC1の5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルC1と二酸化マンガンとの合計100重量部あたり、電解液1重量部を添加した。その後、配合物をミキサーで均一に撹拌・混合して、一定粒度に整粒した。得られた粒状物を、短筒状のペレットに加圧成型して、正極合剤ペレットとした。この正極合剤ペレットを用いたこと以外、実施例1と同様にして、単3サイズのニッケルマンガン電池C1nを作製した。
また、オキシ水酸化ニッケルC1の代わりにオキシ水酸化ニッケルC2〜C6を用い、上記と同様にして、単3サイズのニッケルマンガン電池C2n〜C6nを作製した。この際、正極ケースへの正極合剤の充填量がすべての電池で同じになるように留意した。
[4]アルカリ電池の評価
こうして作製した48種類のニッケルマンガン電池C1n〜C6nならびに実施例1で作製した電池A(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
こうして作製した48種類のニッケルマンガン電池C1n〜C6nならびに実施例1で作製した電池A(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
得られた結果を表5にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方において、ニッケルマンガン電池B〜Dの放電容量は、ニッケルマンガン電池Aの放電容量を100とした場合の相対値で示した。
表5より以下のことが言える。
まず、マンガンおよびコバルトを溶解させたオキシ水酸化ニッケルを用いたアルカリ電池C11〜C68は、マンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルトの存在によって、電子伝導性が高められている。従って、電池C11〜C68は、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルを用いた電池A1より、高い特性を与えている。
まず、マンガンおよびコバルトを溶解させたオキシ水酸化ニッケルを用いたアルカリ電池C11〜C68は、マンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルトの存在によって、電子伝導性が高められている。従って、電池C11〜C68は、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルを用いた電池A1より、高い特性を与えている。
特に、Iγ/(Iγ+Iβ)値が0.5以上で、ニッケルの平均価数が3.3以上のオキシ水酸化ニッケル(C3〜C6)を用い、正極合剤中の二酸化マンガンの含有量を20〜90重量%にした電池C32〜C37、C42〜C47、C52〜C57およびC62〜C67では、電池Aよりも1W(強負荷)放電が顕著に向上しており、表5において110以上の特性を与えている。
以上のような結果が得られた理由として、以下が考えられる。
まず、二酸化マンガンの含有量が同じ場合、オキシ水酸化ニッケルにおけるγ型の結晶構造の生成比率〔Iγ/(Iγ+Iβ)値〕やニッケルの平均価数が高くなるほど(つまりC1からC6へいくほど)、ニッケルの多電子反応を放電に活用できるようになるため、容量が向上する。
まず、二酸化マンガンの含有量が同じ場合、オキシ水酸化ニッケルにおけるγ型の結晶構造の生成比率〔Iγ/(Iγ+Iβ)値〕やニッケルの平均価数が高くなるほど(つまりC1からC6へいくほど)、ニッケルの多電子反応を放電に活用できるようになるため、容量が向上する。
一方、二酸化マンガンは、容量そのものは大きいが、電子伝導性に乏しく、強負荷で放電した際の効率が低いため、二酸化マンガンの含有量が90重量%を超えると1W特性が低下する。
また、二酸化マンガンの含有量が10重量%と極端に少ない場合、正極合剤ペレットの成型性の低下のため、活物質間を黒鉛でうまく接続することが困難になると推察され、やはり1W特性の低下が起こる。
また、二酸化マンガンの含有量が10重量%と極端に少ない場合、正極合剤ペレットの成型性の低下のため、活物質間を黒鉛でうまく接続することが困難になると推察され、やはり1W特性の低下が起こる。
以上のような理由から、Iγ/(Iγ+Iβ)値が0.5以上で、ニッケルの平均価数が3.3以上のオキシ水酸化ニッケルからなる粒子を用い、正極合剤中の二酸化マンガンの含有量を20〜90重量%とした電池は、特に優れた特性を与えると考えられる。
なお、ここでは詳細を記さないが、実施例1で用いたオキシ水酸化ニッケルD1を用いた場合にも、総じてβ−オキシ水酸化ニッケルを用いた電池A1より高い特性が得られた。特にIγ/(Iγ+Iβ)値が0.5以上で、ニッケルの平均価数が3.3以上のオキシ水酸化ニッケルからなる粒子をコバルト酸化物で被覆し、正極合剤中の二酸化マンガンの含有量を20〜90重量%にした場合に、強負荷特性を中心としたアルカリ電池の高性能化が顕著となることを、別の実験で確認した。
オキシ水酸化ニッケルからなる粒子内に溶解させるマンガンおよびコバルトの量を最適化するために、以下の実験と評価を行った。
[1]水酸化ニッケルからなる粒子の製造
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンとコバルトとを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出・成長させた。
[1]水酸化ニッケルからなる粒子の製造
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンとコバルトとを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出・成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸根を除去した後、水洗・真空乾燥を行い、さらに、これに80℃で72時間の空気酸化を施して、水酸化ニッケルaa〔組成:Ni0.99Mn0.005Co0.005(OH)2〕とした。ここで、空気酸化は、Mnだけを4価近傍にまで酸化するための処理である。
また、反応槽に定量供給する硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液の比率を変化させたこと以外、上記と同様にして、表6に示すような組成を有する水酸化ニッケルab〜ayを合成した。
また、反応槽に定量供給する硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液の比率を変化させたこと以外、上記と同様にして、表6に示すような組成を有する水酸化ニッケルab〜ayを合成した。
[2]水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
水酸化ニッケルaaの200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルAAとした。
また、水酸化ニッケルaaの代わりに水酸化ニッケルab〜ayを用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルAB〜AYを製造した。
水酸化ニッケルaaの200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルAAとした。
また、水酸化ニッケルaaの代わりに水酸化ニッケルab〜ayを用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルAB〜AYを製造した。
[3]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
得られた25種類のオキシ水酸化ニッケルC1〜C6の粉末X線回折によるIγ/(Iγ+Iβ)値と、化学分析によるニッケルの平均価数を表6にまとめる。
表6より、マンガンの溶解量が0.5mol%(Mn0.005)と極端に少ないオキシ水酸化ニッケルAA〜AEでは、γ型の結晶構造の生成比率とニッケルの平均価数が、他に比べて低いことがわかる。
得られた25種類のオキシ水酸化ニッケルC1〜C6の粉末X線回折によるIγ/(Iγ+Iβ)値と、化学分析によるニッケルの平均価数を表6にまとめる。
表6より、マンガンの溶解量が0.5mol%(Mn0.005)と極端に少ないオキシ水酸化ニッケルAA〜AEでは、γ型の結晶構造の生成比率とニッケルの平均価数が、他に比べて低いことがわかる。
[4]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルAA〜AYを用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池AA〜AYを作製した。
ニッケルマンガン電池AAの場合、オキシ水酸化ニッケルAA、二酸化マンガン、および黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、さらにこの配合物に、オキシ水酸化ニッケルAAの5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルAAと二酸化マンガンとの合計100重量部あたり、電解液1重量部を添加した。その後、配合物をミキサーで均一に撹拌・混合して、一定粒度に整粒した。得られた粒状物を、短筒状のペレットに加圧成型して、正極合剤ペレットとした。この正極合剤ペレットを用いたこと以外、実施例1と同様にして、単3サイズのアルカリ電池AAを作製した。
オキシ水酸化ニッケルAA〜AYを用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池AA〜AYを作製した。
ニッケルマンガン電池AAの場合、オキシ水酸化ニッケルAA、二酸化マンガン、および黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、さらにこの配合物に、オキシ水酸化ニッケルAAの5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルAAと二酸化マンガンとの合計100重量部あたり、電解液1重量部を添加した。その後、配合物をミキサーで均一に撹拌・混合して、一定粒度に整粒した。得られた粒状物を、短筒状のペレットに加圧成型して、正極合剤ペレットとした。この正極合剤ペレットを用いたこと以外、実施例1と同様にして、単3サイズのアルカリ電池AAを作製した。
また、オキシ水酸化ニッケルAAの代わりにオキシ水酸化ニッケルAB〜AYを用い、上記と同様にして、単3サイズのニッケルマンガン電池AB〜AYを作製した。この際、正極ケースへの正極合剤の充填量がすべての電池で同じになるように留意した。
[5]アルカリ電池の評価
こうして作製した25種類のニッケルマンガン電池AB〜AYならびに実施例1で作製した電池A(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
得られた結果を表7にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方において、ニッケルマンガン電池AA〜AYの放電容量は、ニッケルマンガン電池Aの放電容量を100とした場合の相対値で示した。
こうして作製した25種類のニッケルマンガン電池AB〜AYならびに実施例1で作製した電池A(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
得られた結果を表7にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方において、ニッケルマンガン電池AA〜AYの放電容量は、ニッケルマンガン電池Aの放電容量を100とした場合の相対値で示した。
表7より以下のことが言える。
まず、マンガンおよびコバルトを溶解させたオキシ水酸化ニッケルを用いたアルカリ電池AA〜AYは、マンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルトの存在によって、電子伝導性が高められている。従って、電池AA〜AYは、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルを用いた電池A1より、高い特性を与えている。
まず、マンガンおよびコバルトを溶解させたオキシ水酸化ニッケルを用いたアルカリ電池AA〜AYは、マンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルトの存在によって、電子伝導性が高められている。従って、電池AA〜AYは、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルを用いた電池A1より、高い特性を与えている。
特に、オキシ水酸化ニッケルへのマンガンおよびコバルトの溶解量を、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子内に含まれる金属元素の総量の1〜7mol%とした場合、すなわちオキシ水酸化ニッケルAG〜AI、AL〜ANおよびAQ〜ASを用いた電池では、50mA(低負荷)放電および1W(強負荷)放電の両方において、高容量化が顕著となり、表7において110以上の特性を与えている。
表6の結果から明らかなように、オキシ水酸化ニッケルへのマンガンの溶解量が1mol%未満の電池AA〜AEでは、酸化度の高いオキシ水酸化ニッケルが得られないため、容量の増加が比較的小さい。また、オキシ水酸化ニッケルへのマンガンの溶解量が7mol%を超える電池AU〜AYでは、オキシ水酸化ニッケル中のニッケル含有量が相対的に少なくなることに加え、強負荷放電ではマンガンを含む固溶体に特徴的な電子伝導性の低下が影響し始め、容量が低下する傾向がある。
また、オキシ水酸化ニッケルへのコバルトの溶解量が1mol%未満の電池AA、AF、AK、APおよびAUでは、コバルトの添加による電子伝導性とプロトン拡散性を改善する効果が比較的小さくなっている。一方、オキシ水酸化ニッケルへのコバルトの溶解量が7mol%を超える電池AE、AJ、AO、ATおよびAYでは、オキシ水酸化ニッケル中のニッケル含有量が相対的に少なくなるため、容量の増加が比較的小さい。
このように、容量向上の観点から、本発明においては、オキシ水酸化ニッケルないしはその原料となる水酸化ニッケルからなる粒子内に溶解させるマンガンおよびコバルトの量を、いずれも粒子内に含まれる金属元素の総量の1〜7mol%とすることが特に好ましい。
オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の表面に付着するコバルト酸化物の量を最適化するために、以下の実験と評価を行った。
[1]オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の製造
実施例1で用いた水酸化ニッケルb1〔組成:Ni0.95Mn0.05(OH)2〕を、反応槽内の硫酸コバルト水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、35℃で槽内のpHが10を維持するように制御しながら攪拌を続けて、固溶体粒子の表面に水酸化コバルトを析出させた。
[1]オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の製造
実施例1で用いた水酸化ニッケルb1〔組成:Ni0.95Mn0.05(OH)2〕を、反応槽内の硫酸コバルト水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、35℃で槽内のpHが10を維持するように制御しながら攪拌を続けて、固溶体粒子の表面に水酸化コバルトを析出させた。
この際、硫酸コバルト水溶液の濃度を適宜調整し、水酸化ニッケルbの表面に付着する水酸化コバルトの量を、水酸化ニッケルb1の100重量部あたり、0.05〜9重量部(水酸化ニッケルbに対して0.05〜9重量%)の範囲で変化させた。こうして、表8に示すような7種類のCo(OH)2で被覆された水酸化ニッケルe1〜k1を製造した。水酸化ニッケルe1〜k1は、水洗した後、真空乾燥を行った。
[2]水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
水酸化ニッケルe1の200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、Co(OH)2を酸化するとともに、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルE1とした。
また、水酸化ニッケルe1の代わりに水酸化ニッケルf1〜k1を用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルF1〜K1を製造した。
水酸化ニッケルe1の200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、Co(OH)2を酸化するとともに、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルE1とした。
また、水酸化ニッケルe1の代わりに水酸化ニッケルf1〜k1を用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルF1〜K1を製造した。
[3]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルE1〜K1を用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池E1〜K1を作製した。
ニッケルマンガン電池E1の場合、オキシ水酸化ニッケルE1、二酸化マンガン、および黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、さらにこの配合物に、オキシ水酸化ニッケルE1の5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルE1と二酸化マンガンとの合計100重量部あたり、アルカリ電解液1重量部を添加した。その後、配合物をミキサーで均一に撹拌・混合して、一定粒度に整粒した。得られた粒状物を、短筒状のペレットに成形して、正極合剤ペレットとした。この正極合剤ペレットを用いたこと以外、実施例1と同様にして、単3サイズのアルカリ電池E1を作製した。
オキシ水酸化ニッケルE1〜K1を用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池E1〜K1を作製した。
ニッケルマンガン電池E1の場合、オキシ水酸化ニッケルE1、二酸化マンガン、および黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、さらにこの配合物に、オキシ水酸化ニッケルE1の5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルE1と二酸化マンガンとの合計100重量部あたり、アルカリ電解液1重量部を添加した。その後、配合物をミキサーで均一に撹拌・混合して、一定粒度に整粒した。得られた粒状物を、短筒状のペレットに成形して、正極合剤ペレットとした。この正極合剤ペレットを用いたこと以外、実施例1と同様にして、単3サイズのアルカリ電池E1を作製した。
また、オキシ水酸化ニッケルE1の代わりにオキシ水酸化ニッケルF1〜K1を用い、上記と同様にして、単3サイズのニッケルマンガン電池F1〜K1を作製した。この際、正極ケースへの正極合剤の充填量がすべての電池で同じになるように留意した。
[4]アルカリ電池の評価
こうして作製した7種類のニッケルマンガン電池E1〜K1ならびに実施例1で作製した電池A1(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
さらに、ここでは1Wで放電が終わった各電池を60℃で7日間保存した後、電池内部でのガス発生量を測定した。
こうして作製した7種類のニッケルマンガン電池E1〜K1ならびに実施例1で作製した電池A1(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
さらに、ここでは1Wで放電が終わった各電池を60℃で7日間保存した後、電池内部でのガス発生量を測定した。
得られた結果を表9にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方におけるニッケルマンガン電池E1〜K1の放電容量ならびに放電後の電池E1〜K1の内部で発生したガス発生量は、ニッケルマンガン電池A1の放電容量およびガス発生量を100とした場合の相対値で示した。
表9より以下のことが言える。
コバルト酸化物を表面に付着させたオキシ水酸化ニッケルからなる粒子を用いたアルカリ電池E1〜K1においては、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子内に溶解させたマンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルト酸化物によって活物質間の電気的な接続が改善されている。従って、アルカリ電池E1〜K1は、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルからなる粒子を用いた電池A1より高い特性を与えている。
コバルト酸化物を表面に付着させたオキシ水酸化ニッケルからなる粒子を用いたアルカリ電池E1〜K1においては、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子内に溶解させたマンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルト酸化物によって活物質間の電気的な接続が改善されている。従って、アルカリ電池E1〜K1は、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルからなる粒子を用いた電池A1より高い特性を与えている。
特に、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子に対するコバルト酸化物の重量%を0.1〜7重量%にした電池F1〜J1では、50mA(低負荷)放電および1W(強負荷)放電の両方において、高い放電容量が得られており、表9では110以上の特性が得られている。また、保存時のガス発生量も、電池Aと同程度に抑制されている。
コバルト酸化物の重量%が0.1重量%未満のオキシ水酸化ニッケルE1を用いた電池E1では、コバルト酸化物量が少なすぎて、強負荷放電特性に対する大幅な改善効果を得るには至っていない。
コバルト酸化物の重量%が0.1重量%未満のオキシ水酸化ニッケルE1を用いた電池E1では、コバルト酸化物量が少なすぎて、強負荷放電特性に対する大幅な改善効果を得るには至っていない。
また、コバルト酸化物の重量%が7重量%を超えるオキシ水酸化ニッケルK1を用いた電池Kは、比較的よい放電特性を維持できるが、放電後の電池を60℃で7日間保存した際のガス発生量が増加している。これは、電池K1では、正極中のコバルト酸化物の量が過剰であるため、放電後の電池を放置(保存)した際に正極中のコバルト酸化物が2価に還元されて、電解液中に溶出しているためと考えられる。そして、コバルトイオンが、負極の亜鉛粒子上で金属コバルトとして析出し、負極における水素発生反応が加速されていると推察される。
以上より、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の表面をコバルト酸化物で被覆する場合には、放電特性と保存特性(信頼性)のバランスを好適に確保する観点から、コバルト酸化物の量をオキシ水酸化ニッケルからなる粒子の0.1〜7重量%とするが好ましい。
ここで、本実施例においては、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の原料として、5mol%のMnを含む水酸化ニッケルの固溶体〔Ni0.95Mn0.05(OH)2〕を用いた。しかしながら、実施例3の結果等も踏まえると、固溶体に含まれるMnの溶解量が1〜7mol%の範囲であれば、同様の電池特性が得られると推察される。
[1]水酸化ニッケルの製造
所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を用意し、これらを槽内pHが一定となるように、攪拌翼を備えた反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、球状のβ−水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸根を除去した後、水洗および乾燥させて、粉末状の水酸化ニッケル粉末とした。得られた水酸化ニッケル粉末のレーザー回折式粒度分布計による体積基準の平均粒子径は10μm、BET比表面積は9.0m2/g、タップ密度は2.20g/cm3であった。
所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を用意し、これらを槽内pHが一定となるように、攪拌翼を備えた反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、球状のβ−水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸根を除去した後、水洗および乾燥させて、粉末状の水酸化ニッケル粉末とした。得られた水酸化ニッケル粉末のレーザー回折式粒度分布計による体積基準の平均粒子径は10μm、BET比表面積は9.0m2/g、タップ密度は2.20g/cm3であった。
[2]水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
次に、水酸化ニッケル粉末に対する酸化処理として、酸化剤による化学酸化処理と、電気化学反応を用いた過剰酸化処理(過充電処理)の2つを検討した。
(1)酸化剤による化学酸化処理
〈1〉オキシ水酸化ニッケルa2
水酸化ニッケル粉末200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行い、オキシ水酸化ニッケルa2とした。
次に、水酸化ニッケル粉末に対する酸化処理として、酸化剤による化学酸化処理と、電気化学反応を用いた過剰酸化処理(過充電処理)の2つを検討した。
(1)酸化剤による化学酸化処理
〈1〉オキシ水酸化ニッケルa2
水酸化ニッケル粉末200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行い、オキシ水酸化ニッケルa2とした。
〈2〉オキシ水酸化ニッケルb2
0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、7mol/Lという高濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いたこと以外は、上記〈1〉と同様の化学酸化処理を行い、オキシ水酸化ニッケルb2とした。
0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、7mol/Lという高濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いたこと以外は、上記〈1〉と同様の化学酸化処理を行い、オキシ水酸化ニッケルb2とした。
(2)電気化学反応を用いた過剰酸化処理
〈1〉オキシ水酸化ニッケルc2
オキシ水酸化ニッケルa2に適量の純水を加えてペーストとし、これを空隙率95%の発泡ニッケル基板に所定量だけ充填した。続いて、ペーストが充填されたニッケル基板を80℃の乾燥機内で乾燥させた後、ロールプレスを用いて圧延し、ニッケル基板に集電のためのニッケルリードをとりつけてニッケル正極とした。このニッケル正極と十分に容量の大きい酸化カドミウム負極と、親水化処理を施したポリプロピレン不織布セパレータと、7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液とを用いて、開放型のセルを作製した。
〈1〉オキシ水酸化ニッケルc2
オキシ水酸化ニッケルa2に適量の純水を加えてペーストとし、これを空隙率95%の発泡ニッケル基板に所定量だけ充填した。続いて、ペーストが充填されたニッケル基板を80℃の乾燥機内で乾燥させた後、ロールプレスを用いて圧延し、ニッケル基板に集電のためのニッケルリードをとりつけてニッケル正極とした。このニッケル正極と十分に容量の大きい酸化カドミウム負極と、親水化処理を施したポリプロピレン不織布セパレータと、7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液とを用いて、開放型のセルを作製した。
開放型のセルにおいて、正極の過充電(過剰酸化)処理を行った。この際、正極に充填したオキシ水酸化ニッケルa2が1電子反応をする場合の電気容量をセル容量(1It)と捉え、充電レート0.1Itで3時間の過充電を行った。過充電後に、ニッケル正極を取り出して超音波洗浄でオキシ水酸化ニッケルを脱落させ、これを水洗した。その後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、過充電処理がなされたオキシ水酸化ニッケルc2を得た。
〈2〉オキシ水酸化ニッケルd2、e2、f2
充電レート0.1Itで6時間、9時間および12時間の充電を行ったこと以外は、上記〈1〉と同様の過充電処理を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルd2、e2およびf2を得た。
充電レート0.1Itで6時間、9時間および12時間の充電を行ったこと以外は、上記〈1〉と同様の過充電処理を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルd2、e2およびf2を得た。
[3]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2について、まず粉末X線回折を行った。その結果、何れの回折パターンでもオキシ水酸化ニッケルの存在が確認できた。オキシ水酸化ニッケルf2は、ほぼγ−オキシ水酸化ニッケルの単相であり、そのピークパターンはJCPDS無機物質ファイルのファイル番号:6−75に一致した。一方、オキシ水酸化ニッケルb2〜e2は、いずれもγ型結晶とβ型結晶との共晶であった。代表例として、図2にオキシ水酸化ニッケルe2およびf2の回折パターンを示す。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2について得られたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数、タップ密度、水分量、平均粒子径、BET比表面積を表10に示す。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2について、まず粉末X線回折を行った。その結果、何れの回折パターンでもオキシ水酸化ニッケルの存在が確認できた。オキシ水酸化ニッケルf2は、ほぼγ−オキシ水酸化ニッケルの単相であり、そのピークパターンはJCPDS無機物質ファイルのファイル番号:6−75に一致した。一方、オキシ水酸化ニッケルb2〜e2は、いずれもγ型結晶とβ型結晶との共晶であった。代表例として、図2にオキシ水酸化ニッケルe2およびf2の回折パターンを示す。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2について得られたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数、タップ密度、水分量、平均粒子径、BET比表面積を表10に示す。
化学酸化で得たオキシ水酸化ニッケルa2、b2は、Iγ/(Iγ+Iβ)値が小さく、ニッケルの平均価数もほぼ3価近傍であるが、これに過充電処理を施したオキシ水酸化ニッケルc2〜f2では、充電電気量に応じて効果的にIγ/(Iγ+Iβ)値とニッケルの平均価数に増大が認められる。また、γ−NiOOHの生成に伴って水酸化ニッケル粒子の膨張と粒子割れが進行するため、ニッケル含有量とタップ密度は減少し、水分量とBET比表面積は増加する傾向にある。
[4]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2を用い、実施例1と同様にして、それぞれ図1に示すニッケルマンガン電池A2〜F2を作製した。なお、オキシ水酸化ニッケルc2〜f2を用いた電池では、正極合剤の電池への充填性に若干の低下が見られたが、基本的にはオキシ水酸化ニッケルa2、b2を用いた電池と同様の電池作製が可能であった。充填性の低下はγ−NiOOHの生成に伴う粉末体積の膨張に起因する。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2を用い、実施例1と同様にして、それぞれ図1に示すニッケルマンガン電池A2〜F2を作製した。なお、オキシ水酸化ニッケルc2〜f2を用いた電池では、正極合剤の電池への充填性に若干の低下が見られたが、基本的にはオキシ水酸化ニッケルa2、b2を用いた電池と同様の電池作製が可能であった。充填性の低下はγ−NiOOHの生成に伴う粉末体積の膨張に起因する。
[5]アルカリ電池の評価
電池A2〜F2を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表11にまとめて示す。なお、表11において、放電容量の値は、電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
電池A2〜F2を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表11にまとめて示す。なお、表11において、放電容量の値は、電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
過充電処理でγ−NiOOHの含有比率を高めたオキシ水酸化ニッケルを用いた電池C2〜F2は、化学酸化で得たオキシ水酸化ニッケルを用いた電池A2、B2よりも高い容量を与えている。特に、粉末X線回折におけるIγ/(Iγ+Iβ)値が0.5以上、ニッケルの平均価数が3.3以上にまで高められたオキシ水酸化ニッケルd2〜f2を用いた電池では、より顕著な容量向上効果が得られている。
オキシ水酸化ニッケルb2、c2のように、比較的ニッケル価数の低い段階で生成したγ−NiOOHは、放電容量への寄与が少ないと考えられる。一方、オキシ水酸化ニッケルd2〜f2のように、ニッケル価数が3.3程度以上の段階で生成するγ−NiOOHは、その価数に見合うだけの大きな放電容量を与えると考えられる。オキシ水酸化ニッケルd2〜f2の比表面積は比較的大きく、電気化学反応の有効面積が大きい点も、容量向上の一因と考えられる。ただし、化学酸化で得たβ−NiOOHを電気化学的に過剰酸化(過充電処理)してγ型結晶を主体としたオキシ水酸化ニッケルの作製を行う場合、電池の生産性は比較的低くなる。
γ型結晶の生成を容易とするため、原料水酸化ニッケルに添加元素としてMnを溶解させた水酸化ニッケルを種々作製し、化学酸化だけでγ型結晶を主体としたオキシ水酸化ニッケルを作製することを試みた。なお、以下の合成1〜合成5においては、原料水酸化ニッケルの組成が、すべてNi0.9Mn0.1(OH)2となるように調整した。
[1]合成1
(1)水酸化ニッケルの製造
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリング開始した。所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を、反応槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、Mnを溶解した固溶体のβ−水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。
(1)水酸化ニッケルの製造
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリング開始した。所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を、反応槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、Mnを溶解した固溶体のβ−水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸根を除去した後、水洗と真空乾燥を行った。さらに、乾燥後の粒子に80℃で72時間の空気酸化を施して、マンガンだけを酸化させ、原料水酸化ニッケル1とした。
原料水酸化ニッケル1は、粉末X線回折においてはβ−水酸化ニッケルの単相であり、マンガンの平均価数は3.95価、平均粒子径は14μm、タップ密度は2.12g/cm3、BET比表面積は9.5m2/gであった。
原料水酸化ニッケル1は、粉末X線回折においてはβ−水酸化ニッケルの単相であり、マンガンの平均価数は3.95価、平均粒子径は14μm、タップ密度は2.12g/cm3、BET比表面積は9.5m2/gであった。
(2)水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
続いて、原料水酸化ニッケル1の200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行い、オキシ水酸化ニッケルg2とした。
続いて、原料水酸化ニッケル1の200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行い、オキシ水酸化ニッケルg2とした。
また、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.5mol/Lから、1mol/L、2mol/L、3mol/L、5mol/Lまたは7mol/Lに変更したこと以外は、上記と同様にして、オキシ水酸化ニッケルh2〜l2を作製した。
[2]合成2
(1)水酸化ニッケルの製造
80℃で72時間の空気酸化を施さなかった点以外は、上記合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル2を得た。原料水酸化ニッケル2は、粉末X線回折においてはβ−水酸化ニッケルの単相であり、マンガンの平均価数は2.04価と見積もられた。
(1)水酸化ニッケルの製造
80℃で72時間の空気酸化を施さなかった点以外は、上記合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル2を得た。原料水酸化ニッケル2は、粉末X線回折においてはβ−水酸化ニッケルの単相であり、マンガンの平均価数は2.04価と見積もられた。
(2)水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
次に、原料水酸化ニッケル2の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルm2とした。
次に、原料水酸化ニッケル2の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルm2とした。
[3]合成3
(1)水酸化ニッケルの製造
80℃で72時間の空気酸化を施す代わりに、20℃で1ヶ月間空気中で放置したこと以外、上記の合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル3を得た。原料水酸化ニッケル3は、粉末X線回折においてはβ型の水酸化ニッケル以外に、オキシ水酸化マンガン、二酸化マンガンのピークも一部観測され、長期放置によって不安定なマンガン種が水酸化ニッケルの結晶外に遊離したものと推察された。原料水酸化ニッケル3中のマンガンの平均価数は3.47価であった。
(1)水酸化ニッケルの製造
80℃で72時間の空気酸化を施す代わりに、20℃で1ヶ月間空気中で放置したこと以外、上記の合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル3を得た。原料水酸化ニッケル3は、粉末X線回折においてはβ型の水酸化ニッケル以外に、オキシ水酸化マンガン、二酸化マンガンのピークも一部観測され、長期放置によって不安定なマンガン種が水酸化ニッケルの結晶外に遊離したものと推察された。原料水酸化ニッケル3中のマンガンの平均価数は3.47価であった。
(2)水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
次に、原料水酸化ニッケル3の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際、遊離したマンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が顕著に認められた。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルn2とした。
次に、原料水酸化ニッケル3の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際、遊離したマンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が顕著に認められた。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルn2とした。
[4]合成4
(1)水酸化ニッケルの製造
攪拌翼を備えた反応槽内への窒素ガスによるバブリングとヒドラジン添加を行わずに、所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を反応槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給したこと以外、上記の合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル4を得た。原料水酸化ニッケル4は、粉末X線回折においてはβ型の水酸化ニッケル単相であり、マンガンの平均価数は2.45価、平均粒子径は14μm、タップ密度は2.04g/cm3、BET比表面積は10.9m2/gであった。
(1)水酸化ニッケルの製造
攪拌翼を備えた反応槽内への窒素ガスによるバブリングとヒドラジン添加を行わずに、所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を反応槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給したこと以外、上記の合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル4を得た。原料水酸化ニッケル4は、粉末X線回折においてはβ型の水酸化ニッケル単相であり、マンガンの平均価数は2.45価、平均粒子径は14μm、タップ密度は2.04g/cm3、BET比表面積は10.9m2/gであった。
(2)水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
次に、原料水酸化ニッケル4の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際にも、マンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が顕著に認められた。このことから、原料水酸化ニッケル4においては、マンガンイオンの多数が、水酸化ニッケルの結晶中に不安定な状態で侵入していると推察された。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルo2とした。
次に、原料水酸化ニッケル4の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際にも、マンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が顕著に認められた。このことから、原料水酸化ニッケル4においては、マンガンイオンの多数が、水酸化ニッケルの結晶中に不安定な状態で侵入していると推察された。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルo2とした。
[5]合成5
(1)水酸化ニッケルの製造
硫酸マンガン(II)水溶液に過酸化水素水を添加した後に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH調整し、マンガンイオンが3価の状態で存在する溶液を調製した。この溶液と、硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水とを、攪拌翼を供えた反応槽に槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、3価のMnを10mol%含有するα型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。得られた粒子は水洗および真空乾燥を行って原料水酸化ニッケル5とした。原料水酸化ニッケル5は、粉末X線回折においてはα−水酸化ニッケル単相であり、マンガンの平均価数は3.02価、平均粒径は13μm、タップ密度は1.28g/cm3、BET比表面積は24.5m2/gであった。
(1)水酸化ニッケルの製造
硫酸マンガン(II)水溶液に過酸化水素水を添加した後に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH調整し、マンガンイオンが3価の状態で存在する溶液を調製した。この溶液と、硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水とを、攪拌翼を供えた反応槽に槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、3価のMnを10mol%含有するα型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。得られた粒子は水洗および真空乾燥を行って原料水酸化ニッケル5とした。原料水酸化ニッケル5は、粉末X線回折においてはα−水酸化ニッケル単相であり、マンガンの平均価数は3.02価、平均粒径は13μm、タップ密度は1.28g/cm3、BET比表面積は24.5m2/gであった。
(2)水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
次に、原料水酸化ニッケル5の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際も、マンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が認められた。このことから、原料水酸化ニッケル5においては、マンガンイオンの多数が、水酸化ニッケルの結晶中に不安定な状態で侵入していると推察された。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルp2とした。
次に、原料水酸化ニッケル5の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際も、マンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が認められた。このことから、原料水酸化ニッケル5においては、マンガンイオンの多数が、水酸化ニッケルの結晶中に不安定な状態で侵入していると推察された。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルp2とした。
[6]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
オキシ水酸化ニッケルg2〜p2について求めたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数、タップ密度、水分量、平均粒子径、BET比表面積を表10に示す。
オキシ水酸化ニッケルg2〜p2について求めたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数、タップ密度、水分量、平均粒子径、BET比表面積を表10に示す。
原料水酸化ニッケル1の化学酸化に際して共存させる水酸化ナトリウム水溶液の濃度を高める(g2〜l2)に伴って、Iγ/(Iγ+Iβ)値が大きくなり、ニッケルの酸化が進行することがわかる。これは、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を高めることによって、オキシ水酸化ニッケルのNiO2層間にアルカリ金属イオンが効果的に挿入し、4価のニッケルイオンの電気的中性を保ち、ニッケルの高次化反応が促進したためと理解できる。
また、原料水酸化ニッケル2〜5の化学酸化処理で得られたオキシ水酸化ニッケルm2〜p2は、原料水酸化ニッケル1から得られたオキシ水酸化ニッケルl2と、見かけ上は同じような粉末X線回折パターンを与え、ニッケルの平均価数も同様となることが確認できる。
また、原料水酸化ニッケル2〜5の化学酸化処理で得られたオキシ水酸化ニッケルm2〜p2は、原料水酸化ニッケル1から得られたオキシ水酸化ニッケルl2と、見かけ上は同じような粉末X線回折パターンを与え、ニッケルの平均価数も同様となることが確認できる。
[7]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2の代わりに、オキシ水酸化ニッケルg2〜p2を用いたこと以外、それぞれ実施例5と同様にして、図1に示すようなニッケルマンガン電池を作製した。オキシ水酸化ニッケルg2〜p2を用いた電池を、それぞれ電池G2〜P2とした。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2の代わりに、オキシ水酸化ニッケルg2〜p2を用いたこと以外、それぞれ実施例5と同様にして、図1に示すようなニッケルマンガン電池を作製した。オキシ水酸化ニッケルg2〜p2を用いた電池を、それぞれ電池G2〜P2とした。
[8]アルカリ電池の評価
電池A2〜F2を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表13にまとめて示す。なお、表13において、放電容量の値は、実施例5の電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
電池A2〜F2を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表13にまとめて示す。なお、表13において、放電容量の値は、実施例5の電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
原料水酸化ニッケル1は、反応晶析法で得られたMnを溶解した固溶体のβ−水酸化ニッケルに空気酸化を施し、Mnだけを酸化させたものである。また、オキシ水酸化ニッケルj2〜l2は、3mol/l以上の水酸化ナトリウム水溶液中で、原料水酸化ニッケル1を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で化学酸化したものである。オキシ水酸化ニッケルj2〜l2を用いた電J2〜L2は、他のプロセスで得たオキシ水酸化ニッケルを用いた電池よりも、際立って高い容量を与えている。
電池J2〜L2の容量が、電池G2〜I2の容量よりも顕著に高くなる理由は、実施例5の場合と同様に説明することができる。すなわち、オキシ水酸化ニッケルg2〜i2のように、比較的ニッケル価数の低い段階で生成したγ−NiOOHは、あまり放電容量に寄与できないと考えられる。一方、オキシ水酸化ニッケルj2〜l2のように、ニッケル価数が3.3程度以上の段階で生成するγ−NiOOHは活性が高く、その価数に見合うだけの大きな放電容量を与えると推察される。
電池M2およびN2も、電池G2〜I2に比べて高い放電容量を示している。電池M2およびN2のオキシ水酸化ニッケルは、原料水酸化ニッケル1から得られたオキシ水酸化ニッケルlとほぼ同等の物性を有している。よって、電池M2およびN2は、電池J2〜K2に次いで良好な放電特性を示すものと考えられる。
電池M2に用いたオキシ水酸化ニッケルm2の原料である水酸化ニッケル2は、Mnを酸化する処理を経ていない。詳細なメカニズムまでは判明していないが、Mnが高酸化状態に酸化されない状態で、水酸化ニッケルを酸化剤で処理すると、マンガン種が結晶内で移動するなどして、粒子内で局所的なマンガン酸化物の遊離等が起こるものと考えられる。ただし、このようなマンガン酸化物の遊離は、通常の粉末X線回折では判明しないレベルであると考えられる。よって、オキシ水酸化ニッケルm2においては、電池の高容量化に寄与する高い放電効率を有するγ−オキシ水酸化ニッケルの生成が少ないものと推測される。同様に、電池N2も遊離したマンガンによる影響を受けたものと推察される。
電池O2、P2で用いたオキシ水酸化ニッケルo2、p2も、粉末X線回折やニッケルの平均価数はオキシ水酸化ニッケルl2(ないしはk2)と類似しているが、容量は低めである。オキシ水酸化ニッケルo2、p2の作製に際しては、マンガン種の遊離現象やマンガン溶出等が確認されたため、オキシ水酸化ニッケルの放電反応がマンガン種によって阻害されているものと推定される。また、特にオキシ水酸化ニッケルo2、p2は、水分量が3重量%を超え、BET比表面積が30m2/gを超えている。よって、正極合剤中での電解液分布等は、電池O2およびP2と、他の電池とでは、大きく異なると考えられ、その点が容量に影響を与えていると考えられる。
[1]オキシ水酸化ニッケルの製造
硫酸ニッケル(II)水溶液と硫酸マンガン(II)水溶液の割合を変化させ、原料水酸化ニッケルにおけるマンガンの含有量を変化させたこと以外、実施例6のオキシ水酸化ニッケルL2と同様にして、オキシ水酸化ニッケルr1〜r6を調製した。
硫酸ニッケル(II)水溶液と硫酸マンガン(II)水溶液の割合を変化させ、原料水酸化ニッケルにおけるマンガンの含有量を変化させたこと以外、実施例6のオキシ水酸化ニッケルL2と同様にして、オキシ水酸化ニッケルr1〜r6を調製した。
また、硫酸ニッケル(II)水溶液と硫酸マンガン(II)水溶液の割合を変化させ、原料水酸化ニッケルにおけるマンガンの含有量を変化させるとともに、化学酸化において次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を減量したこと以外、実施例6のオキシ水酸化ニッケルL2と同様にして、オキシ水酸化ニッケルs1〜s6を調製した。
[2]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
オキシ水酸化ニッケルr1〜r6、s1〜s6について求めたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数を表14に示す。
オキシ水酸化ニッケルr1〜r6、s1〜s6について求めたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数を表14に示す。
[3]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2の代わりに、オキシ水酸化ニッケルr1〜r6、s1〜s6を用いたこと以外、それぞれ実施例5と同様にして、図1に示すようなニッケルマンガン電池を作製した。オキシ水酸化ニッケルr1〜r6を用いた電池を、それぞれ電池R1〜R6とした。また、オキシ水酸化ニッケルs1〜s6を用いた電池を、それぞれ電池S1〜S6とした。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2の代わりに、オキシ水酸化ニッケルr1〜r6、s1〜s6を用いたこと以外、それぞれ実施例5と同様にして、図1に示すようなニッケルマンガン電池を作製した。オキシ水酸化ニッケルr1〜r6を用いた電池を、それぞれ電池R1〜R6とした。また、オキシ水酸化ニッケルs1〜s6を用いた電池を、それぞれ電池S1〜S6とした。
[4]アルカリ電池の評価
電池R1〜R6、S1〜S6を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表14にまとめて示す。なお、表13において、放電容量の値は、実施例5の電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
電池R1〜R6、S1〜S6を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表14にまとめて示す。なお、表13において、放電容量の値は、実施例5の電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
表14より、ニッケル含有量が45重量%以上のオキシ水酸化ニッケルを用いれば、Iγ/(Iγ+Iβ)値が約0.5、ニッケルの平均価数が約3.3と、それほど大きくない場合であっても、オキシ水酸化ニッケルa2を用いた電池より高容量化できることがわかる。
なお、以上の実施例では、Mnを溶解した固溶体の水酸化ニッケル中のマンガンを酸化する際に80℃で72時間の空気酸化を施したが、大気雰囲気下50〜150℃で酸化時間を適宜調整してマンガン価数を3.5価以上、より好ましくは3.8価以上にまで高める場合も同様の結果を得ることができる。
また、以上の実施例では、次亜塩素酸ナトリウムでのニッケルの化学酸化に際して、水酸化ナトリウム水溶液中で処理を実施したが、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、これらの混合アルカリ水溶液を用いても同様の結果を得ることができる。
また、以上の実施例では、正極合剤に、オキシ水酸化ニッケルに対して5重量%の酸化亜鉛を添加したが、本発明はこれを必須とするものではない。
また、以上の実施例では、円筒形の正極ケース内に短筒状の正極合剤ペレット、セパレータおよびゲル状の亜鉛負極を配置した、いわゆるインサイドアウト型のニッケルマンガン電池を作製した。しかしながら、本発明は、ボタン型、角型を含む他の構造のアルカリ電池にも適応することが可能である。
また、以上の実施例では、円筒形の正極ケース内に短筒状の正極合剤ペレット、セパレータおよびゲル状の亜鉛負極を配置した、いわゆるインサイドアウト型のニッケルマンガン電池を作製した。しかしながら、本発明は、ボタン型、角型を含む他の構造のアルカリ電池にも適応することが可能である。
本発明は、様々なタイプのアルカリ電池に適用可能であるが、特にニッケルマンガン電池に有用である。また、本発明は、強負荷放電特性を損なうことなく、アルカリ電池の大幅な高容量化を実現できるから、特に負荷電力の大きな機器の電源となるアルカリ電池に有用である。
本発明は、オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンからなる正極合剤を具備するアルカリ電池、特に一次電池としてのニッケルマンガン電池に関する。また、本発明は、オキシ水酸化ニッケルからなるアルカリ電池用正極材料の製造方法に関する。
アルカリ電池、特に放電スタート型のアルカリ電池やアルカリ一次電池は、正極端子を兼ねる正極ケースの中に、正極ケースに密着して円筒状の正極合剤ペレットを配置し、ペレットの中空部にセパレータを介してゲル状の亜鉛負極を配置したインサイドアウト型の構造を有する。近年のデジタル機器の普及に伴い、これらの電池が使用される機器の負荷電力は次第に大きくなり、強負荷放電性能に優れる電池が要望されつつある。このような要望に対応して、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを混合して強負荷放電特性を向上させたアルカリ電池が提案されており、近年、実用化に至っている(特開昭57−72266号公報)。
一方、アルカリ蓄電池(二次電池)の分野では、一般に球状ないしは鶏卵状の水酸化ニッケルを、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の酸化剤で酸化して得られるオキシ水酸化ニッケルが使用されている。原料の水酸化ニッケルには、嵩密度(タップ密度)の大きいβ型の結晶構造を有するものが用いられる。これを酸化剤で処理して得られるオキシ水酸化ニッケルは、主にβ型の結晶構造を有し、電池内に高密度充填される傾向がある。β型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルのニッケル価数は、ほぼ3価であり、これが2価近傍まで変化する際の電気化学的エネルギーが電池の放電容量として利用される。
正極の利用率や強負荷放電特性を高める目的から、コバルト・亜鉛等溶解させた水酸化ニッケルの固溶体を出発物質として用いる技術も提案されている(特公平7−77129号公報)。
オキシ水酸化ニッケルを含むアルカリ一次電池が有する課題として、以下を挙げることができる。
(a)電池を高温雰囲気下で保存した際に生じるオキシ水酸化ニッケルの自己分解(電池容量低下と内圧上昇)の改善。
(b)オキシ水酸化ニッケルの単位重量あたりの容量(mAh/g)が小さいことによる低放電容量(放電時間)の向上。
(a)電池を高温雰囲気下で保存した際に生じるオキシ水酸化ニッケルの自己分解(電池容量低下と内圧上昇)の改善。
(b)オキシ水酸化ニッケルの単位重量あたりの容量(mAh/g)が小さいことによる低放電容量(放電時間)の向上。
上記課題を解決するために、アルカリ一次電池の正極合剤においては、以下のような提案がなされている。
まず、保存特性を改良する観点から、オキシ水酸化ニッケルに亜鉛酸化物、カルシウム酸化物、イットリウム酸化物および二酸化チタンよりなる群から選択された少なくとも1種の酸化物を含有させることが提案されている(特開2001−15106号公報)。
まず、保存特性を改良する観点から、オキシ水酸化ニッケルに亜鉛酸化物、カルシウム酸化物、イットリウム酸化物および二酸化チタンよりなる群から選択された少なくとも1種の酸化物を含有させることが提案されている(特開2001−15106号公報)。
また、アルカリ蓄電池の用途では、マンガン等の遷移金属を粒子内に溶解させたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルの固溶体を出発物質として用いることが提案されている(国際公開第97/19479号パンフレットおよび特許第3239076号明細書)。ここでは、充電反応において、ニッケルの平均価数が3.5価付近のγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを意図的に生成させ、飛躍的な容量の向上が図られている。
これに類似する技術として、例えば特開2001−322817号公報は、3価の状態にあるマンガン、鉄等の遷移金属イオンを、2価のニッケルイオンと共沈させて作製したα型水酸化ニッケルの固溶体粒子を出発物質として用いることが提案されている。ここでは、充電時にγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを生成させることで高容量が図られる。
また、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの粒子の表面を、導電性の高いコバルト酸化物で被覆して、放電特性を改良する提案がなされている(特開平10−334913号公報および特開平11−260364号公報)。
しかし、アルカリ蓄電池において、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを正極に用いて、高容量化を図る試みは、実用化に至っていない。その原因は、γ型の結晶が電解液を過剰に吸収して体積膨張するため、初期の数10サイクルの充放電の間に、電池内における電解液の分布が大きく変化することにある。正極側に電解液が偏在してセパレータ中の電解液が不足すると、電池の内部抵抗は著しく上昇する。
一方、本発明者等は、アルカリ蓄電池で検討されているγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを、一次電池に適用することを試み、その場合に生じる問題点について検討した。
まず、オキシ水酸化ニッケルを含有させたアルカリ一次電池の高エネルギー密度化を図る場合、β型の結晶構造を有する原料水酸化ニッケルの化学酸化条件を強くして、得られるβ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルのニッケル価数を高めるというアプローチが考えられる。しかし、このようなアプローチでは、ニッケル価数の上限は3.00〜3.05未満のβ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルしか得られない。
次に、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを用いた一次電池としてのアルカリ電池においては、以下の(a)〜(c)に示す理由により、β型の結晶構造を主体とするオキシ水酸化ニッケルを用いたアルカリ電池よりも、強負荷放電特性が低下しやすいことが見出された。
(a)γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの酸化還元電位(平衡電位)はβ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルよりも卑である。
(b)γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルは、放電の際に生じる体積変化(結晶構造の変化)が大きい。
(c)マンガンを粒子内に溶解させたγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの電子伝導性は、放電に伴って大きく低下する。
(a)γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの酸化還元電位(平衡電位)はβ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルよりも卑である。
(b)γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルは、放電の際に生じる体積変化(結晶構造の変化)が大きい。
(c)マンガンを粒子内に溶解させたγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの電子伝導性は、放電に伴って大きく低下する。
ニッケルマンガン電池などの一次電池では、強負荷放電時における二酸化マンガンの利用率が低いという欠点を補うために、オキシ水酸化ニッケルが正極合剤に添加される。しかし、上記所見は、オキシ水酸化ニッケルによるアルカリ電池の強負荷放電特性を向上させるという利点が、γ型の結晶構造により損なわれ得ることを意味する。
本発明は、オキシ水酸化ニッケルの物性を好適化することにより、上記問題点を解決もしくは低減し、アルカリ電池、特にニッケルマンガン電池の高容量化と強負荷放電特性の向上を可能とするものである。
また、本発明は、オキシ水酸化ニッケルに特定の元素を添加することにより、上記問題点を解決もしくは低減し、アルカリ電池、特にニッケルマンガン電池の高容量化と強負荷放電特性の向上を可能とするものである。
また、本発明は、オキシ水酸化ニッケルにおけるγ型の結晶構造の割合を所定の範囲内に制御することにより、上記効果を高めることを内容とする。
また、本発明は、オキシ水酸化ニッケルに特定の元素を添加することにより、上記問題点を解決もしくは低減し、アルカリ電池、特にニッケルマンガン電池の高容量化と強負荷放電特性の向上を可能とするものである。
また、本発明は、オキシ水酸化ニッケルにおけるγ型の結晶構造の割合を所定の範囲内に制御することにより、上記効果を高めることを内容とする。
本発明は、アルカリ電池であって、正極合剤、負極、正極合剤と負極との間に介在するセパレータ、およびアルカリ電解液からなり、正極合剤は、オキシ水酸化ニッケルからなる第1活物質および二酸化マンガンからなる第2活物質を含み、前記オキシ水酸化ニッケルは、γ型の結晶構造を有し、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの含有量は、45重量%以上であり、前記オキシ水酸化ニッケルのレーザー回折式粒度分布計を用いて測定される体積基準の平均粒子径が3〜20μmであるアルカリ電池に関する。
前記オキシ水酸化ニッケルは、さらにβ型の結晶構造を含むことが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルは、さらにβ型の結晶構造を含むことが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルのタップ密度は、タッピングが回数500回の場合に1.5g/cm3以上であることが望ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルに含まれる水分量は3重量%以下であることが好ましい。なお、水分は、オキシ水酸化ニッケルの表面に吸着した状態であると考えられる。
BET法を用いて測定される前記オキシ水酸化ニッケルの比表面積は、10〜30m2/gであることが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルに含まれる水分量は3重量%以下であることが好ましい。なお、水分は、オキシ水酸化ニッケルの表面に吸着した状態であると考えられる。
BET法を用いて測定される前記オキシ水酸化ニッケルの比表面積は、10〜30m2/gであることが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折パターンが、γ型結晶の(003)面に帰属される面間隔6.8〜7.1オングストローム(Å)の回折ピークPγおよびβ型結晶の(001)面に帰属される面間隔4.5〜5オングストローム(Å)の回折ピークPβを有する場合、前記回折ピークPγの積分強度Iγおよび前記回折ピークPβの積分強度Iβは、 0.5≦Iγ/(Iγ+Iβ)を満たすことが好ましい。この場合、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は、3.3以上となる。
前記オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折パターンが、γ型結晶の(003)面に帰属される面間隔6.8〜7.1オングストローム(Å)の回折ピークPγおよびβ型結晶の(001)面に帰属される面間隔4.5〜5オングストローム(Å)の回折ピークPβを有する場合、前記回折ピークPγの積分強度Iγおよび前記回折ピークPβの積分強度Iβは、 0.1≦Iγ/(Iγ+Iβ)<0.5を満たすことが好ましい。この場合、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は、3.05以上3.3未満となる。
前記オキシ水酸化ニッケルは、添加元素を溶解した固溶体であることが好ましい。この場合、前記添加元素は、マンガンおよびコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルが、前記添加元素としてマンガンを溶解した固溶体である場合、前記固溶体に溶解するマンガンの量は、前記固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であることが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルが、前記添加元素としてマンガンおよびコバルトの両方を溶解した固溶体である場合、前記固溶体に溶解するマンガンおよびコバルトの量は、それぞれ前記固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であることが好ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルが、前記添加元素としてマンガンを溶解した固溶体である場合、前記固溶体は、その表面に付着したコバルト酸化物を有することが、さらに好ましい。この場合、前記固溶体に溶解するマンガンの量は、前記固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であり、前記コバルト酸化物の量は、前記固溶体の0.1〜7重量%であることが好ましい。また、前記コバルト酸化物に含まれるコバルトの平均価数は、3.0よりも大きいことが好ましい。
前記正極合剤に含まれる前記二酸化マンガンの含有量は、20〜90重量%が好適である。
本発明は、また、アルカリ電池用正極材料の製造方法に関する。
本発明の製造方法は、攪拌翼を供えた反応槽内に、硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、それぞれ独立した流路で供給する操作を、不活性ガスをバブリングするとともに反応槽内の温度およびpHを制御しながら行い、ニッケルサイトの一部が2価のマンガンで置換されたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを得る第1工程を有する。
また、前記方法は、第1工程後の水酸化ニッケルを、水洗し、乾燥し、酸化雰囲気下で50〜150℃で加熱して、マンガンだけを平均価数3.5以上に酸化させる第2工程を有する。
また、前記方法は、第2工程後の水酸化ニッケルを、アルカリ水溶液中に酸化剤とともに投入し、前記水酸化ニッケルを化学酸化する第3工程を有する。
本発明の製造方法は、攪拌翼を供えた反応槽内に、硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、それぞれ独立した流路で供給する操作を、不活性ガスをバブリングするとともに反応槽内の温度およびpHを制御しながら行い、ニッケルサイトの一部が2価のマンガンで置換されたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを得る第1工程を有する。
また、前記方法は、第1工程後の水酸化ニッケルを、水洗し、乾燥し、酸化雰囲気下で50〜150℃で加熱して、マンガンだけを平均価数3.5以上に酸化させる第2工程を有する。
また、前記方法は、第2工程後の水酸化ニッケルを、アルカリ水溶液中に酸化剤とともに投入し、前記水酸化ニッケルを化学酸化する第3工程を有する。
前記第1工程では、さらに反応槽内にヒドラジンが加えられ、還元雰囲気が維持されることが好ましい。
前記第2工程では、前記マンガンの平均価数を3.8以上とすることが好ましい。
前記第3工程で用いる酸化剤は、次亜塩素酸塩であることが好ましい。
前記第2工程では、前記マンガンの平均価数を3.8以上とすることが好ましい。
前記第3工程で用いる酸化剤は、次亜塩素酸塩であることが好ましい。
前記第3工程で用いるアルカリ水溶液は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムよりなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ塩を溶解した水溶液であることが好ましい。この場合、前記アルカリ水溶液のアルカリ塩濃度は、3mol/L以上であることが好ましい。
以下、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルをγ−オキシ水酸化ニッケル、β型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルをβ−オキシ水酸化ニッケル、β型の結晶構造を有する水酸化ニッケルをβ−水酸化ニッケルと言う場合がある。
本発明によれば、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを含有させたアルカリ電池の強負荷放電特性に優れるという長所を維持したまま、高容量化が可能である。
γ−オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケル含有量と平均粒子径の制御は、特に、アルカリ電池の高容量化に有効である。
ニッケル含有量と平均粒子径の制御により、オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンからなる正極合剤ペレットの体積エネルギー密度(mAh/cm3)を、既存のβ−オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンを用いたものよりも格段に高めることができる。よって、アルカリ電池容量は大幅に向上する。
γ−オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケル含有量と平均粒子径の制御は、特に、アルカリ電池の高容量化に有効である。
ニッケル含有量と平均粒子径の制御により、オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンからなる正極合剤ペレットの体積エネルギー密度(mAh/cm3)を、既存のβ−オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンを用いたものよりも格段に高めることができる。よって、アルカリ電池容量は大幅に向上する。
また、オキシ水酸化ニッケルに添加元素を溶解させることは、特にアルカリ電池の強負荷放電特性の改善に有効である。
添加元素としては、特にマンガンが有効であり、オキシ水酸化ニッケルの原料にマンガンを少量溶解した水酸化ニッケルの固溶体を用いれば、酸化還元電位が卑となり、水酸化ニッケルの酸化が促進し、γ型の構結晶造の形成が起こりやすくなる。
添加元素としては、特にマンガンが有効であり、オキシ水酸化ニッケルの原料にマンガンを少量溶解した水酸化ニッケルの固溶体を用いれば、酸化還元電位が卑となり、水酸化ニッケルの酸化が促進し、γ型の構結晶造の形成が起こりやすくなる。
また、本発明の正極材料の製造方法によれば、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに酸化する際に、マンガン酸イオン(MnO4 2-)、過マンガン酸イオン(MnO4 -)等が反応雰囲気に溶出しにくい。よって、ニッケルの酸化度合いにばらつきが生じにくい。換言すると、本発明の製造方法によれば、オキシ水酸化ニッケルにマンガンを安定な状態で存在させることができ、得られる電池の品質を安定に保つことができる。
本発明のアルカリ電池は、正極合剤、負極、前記正極合剤と前記負極との間に介在するセパレータ、およびアルカリ電解液を具備する。前記正極合剤は、オキシ水酸化ニッケルからなる第1活物質および二酸化マンガンからなる第2活物質を含み、前記オキシ水酸化ニッケルは、γ型の結晶構造を有する。
アルカリ電池の高容量化の観点から、オキシ水酸化ニッケルのニッケル含有量は45重量%以とする必要があり、50重量%以上であることが望ましい。また、実際の生産時において、正極合剤ペレットの作製を可能とする観点から、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定される体積基準の平均粒子径は3〜20μmとする必要があり、10〜15μmとすることが望ましい。
本発明で用いるオキシ水酸化ニッケルは、γ型の結晶構造を有する単相からなる場合と、β型の結晶構造とγ型の結晶構造とが混在した共晶からなる場合がある。
γ型の結晶構造は、オキシ水酸化ニッケルを構成するNiO2層間に、アルカリ金属イオン(イオンA)が侵入した構造である。この構造において、オキシ水酸化ニッケルを構成する元素やイオン、すなわちA、H、NiおよびOの間では電気的中性が保たれている。γ−オキシ水酸化ニッケルは、化学式AxHyNiO2・nH2Oで表される酸化物である(J. Power Sources 8, p. 229(1982))。
γ−オキシ水酸化ニッケルは、粉末X線回折において、JCPDS無機物質ファイルのファイル番号:6-75の回折パターンを与える。代表的回折ピークとして、(003)面に帰属される面間隔6.8〜7.1オングストローム(Å)の回折ピークPγが挙げられる。(003)面はc軸に垂直な結晶面であり、その面間隔にアルカリ金属イオンや水分子が挿入され、層間を7Å付近まで伸長している。
一方、β−オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折では、代表的な回折ピークとして、(001)面に帰属される面間隔4.5〜5Åの回折ピークPβが観測される。
一方、β−オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折では、代表的な回折ピークとして、(001)面に帰属される面間隔4.5〜5Åの回折ピークPβが観測される。
正極合剤の電池への充填性の観点から、本発明で用いるオキシ水酸化ニッケルは、タップ密度が、タッピング回数500回の場合に1.5g/cm3以上であることが望ましく、1.7g/cm3以上であることが更に望ましい。
また、正極合剤中のアルカリ電解液の分布等を良好な状態に維持し、オキシ水酸化ニッケルの放電反応(電気化学反応)を円滑に進め、強負荷放電特性を高める観点から、BET法を用いて測定される比表面積が10〜30m2/gであることが好ましく、15〜20m2/gであることが更に好ましい。
さらに、オキシ水酸化ニッケルに含まれる水分量は、3重量%以下であることが望ましい。特に水分量が2重量%以下であるオキシ水酸化ニッケルを用いると、正極合剤ペレットの作製が容易となり望ましい。
前記オキシ水酸化ニッケルが、β型の結晶構造を含む場合、前記オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折パターンは、上述のγ型結晶の(003)面に帰属される回折ピークPγの他に、β型結晶の(001)面に帰属される面間隔約4.5〜5Åの回折ピークPβを有する。
回折ピークPγの積分強度Iγおよび回折ピークPβの積分強度Iβが、0.5≦Iγ/(Iγ+Iβ)を満たす場合、高容量化の効果が顕著となる。具体的には、オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は、3.3以上となる。オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数が3.3以上である場合、γ−オキシ水酸化ニッケルは、その価数に見合うだけの大きな放電容量を与えるため、電池の大幅な高容量化が可能となる。
一方、Iγ/(Iγ+Iβ)が0.5未満になると、高容量化は可能であるが、その効果が小さくなる。この場合、オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は3.05以上3.3未満となる。ただし、0.1≦Iγ/(Iγ+Iβ)<0.5の場合には、粒子の嵩密度(タップ密度)が高く保たれるので、正極合剤ペレットを作製しやすく、電池内への充填が容易になるという利点が生じる。
一般に、水酸化ニッケルを高度に酸化させてオキシ水酸化ニッケルを得る場合、c軸に垂直な結晶面の層間に伸長があまり認められないβ−オキシ水酸化ニッケル(主成分)と、少量のγ−オキシ水酸化ニッケルとの共晶が得られる場合が多い。ただし、本発明では、γ−オキシ水酸化ニッケルの単相や、γ−オキシ水酸化ニッケル(主成分)と少量のβ−オキシ水酸化ニッケルとの共晶を正極材料として積極的に使用する場合にも重点を置いている。
γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルは、必ずしもニッケル価数に見合うだけの放電容量を有するわけではない。β−オキシ水酸化ニッケルに比べると、γ−オキシ水酸化ニッケルの方が大幅な放電電圧の低下を生じ、容量が満足に得られないことも多い。
そこで、本発明では、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルとして、マンガンなどの添加元素を溶解した固溶体を用いることを提案する。添加元素を溶解したオキシ水酸化ニッケルの固溶体は、添加元素を溶解した固溶体の水酸化ニッケルを酸化することにより合成することができる。添加元素としては、マンガンの他に、コバルトを好ましく用いることができる。
マンガンを溶解させた固溶体のγ−オキシ水酸化ニッケルの場合、詳細な反応メカニズムは解明されていないが、比較的高い電位域で、高酸化状態のニッケルが2価付近まで還元されるのに見合う容量が得られる。マンガンを溶解したγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルを正極材料に用いる場合、ニッケルの1電子超の放電反応を利用することができ、電池容量の向上に有効である。マンガンの存在によってオキシ水酸化ニッケルの酸化状態、すなわち保持電気量が十分に高められる。
マンガンがオキシ水酸化ニッケルに溶解して固溶体を形成している場合、ニッケルが2〜4価に至る酸化還元電位が卑に移行する。また、オキシ水酸化ニッケルのニッケル層内に存在する4価のマンガンイオンが、γ型の結晶構造を熱力学的に安定化する。従って、オキシ水酸化ニッケルの合成の際に、γ型の結晶構造の生成比率が高くなり、ニッケルの平均価数の大きいオキシ水酸化ニッケルを得ることができる。
コバルトがオキシ水酸化ニッケルに溶解して固溶体を形成している場合、ニッケルの放電過程においてプロトンの拡散に好適な欠陥を結晶(NiO2層)内に形成させることができる。その上、オキシ水酸化ニッケル自身の電子伝導性も向上する。よって、強負荷放電特性を損なうことなく、アルカリ電池を大幅に高容量化することが可能となる。
オキシ水酸化ニッケルは、マンガンおよびコバルトの少なくとも一方を溶解した固溶体であることが好ましいが、マンガンおよびコバルトの両方が溶解した固溶体であることが更に好ましい。マンガンおよびコバルトの両方がオキシ水酸化ニッケルに溶解している場合には、高容量化と強負荷放電特性の向上の効果を同時に高めることができる。
オキシ水酸化ニッケルが、添加元素としてマンガンを溶解した固溶体である場合、固溶体に溶解するマンガンの量は、固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であることが好ましい。マンガンの量が1mol%未満では、添加元素の効果があまり得られない。一方、電池容量の減少を避ける観点から、マンガンの量は7mol%以下であることが好ましい。
オキシ水酸化ニッケルが、添加元素としてコバルトを溶解した固溶体である場合、固溶体に溶解するコバルトの量は、固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であることが好ましい。コバルトの量が1mol%未満では、添加元素の効果があまり得られない。一方、電池容量の減少を避ける観点から、コバルトの量は7mol%以下であることが好ましい。
オキシ水酸化ニッケルが、添加元素としてマンガンおよびコバルトの両方を溶解した固溶体である場合、固溶体に溶解するマンガンおよびコバルトの量は、それぞれ固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であることが好ましい。
強負荷放電特性を維持する観点からは、オキシ水酸化ニッケルの表面に、コバルト酸化物を付着させることも有効である。オキシ水酸化ニッケルの表面に付着しているコバルト酸化物は、体積変化を伴うγ−オキシ水酸化ニッケルの放電の際に、活物質からの良好な集電状態を維持し、強負荷放電特性を維持する役割を果たす。
活物質からの良好な集電状態を維持する観点から、前記コバルト酸化物の量は、オキシ水酸化ニッケルの0.1重量%以上であることが好ましい。また、電池の高温保存時において、コバルトの溶出等を抑制し、正極の安定性(信頼性)を確保する観点から、コバルト酸化物の量は、オキシ水酸化ニッケルの7重量%以下であることが好ましい。
コバルト酸化物に含まれるコバルトの平均価数は、3.0よりも大きいことが好ましい。コバルトの平均価数が3.0よりも大きいコバルト酸化物は、コバルトの平均価数が3.0以下のコバルト酸化物に比較して、電子伝導性が極めて高い。そのため、オキシ水酸化ニッケルからの集電効率を最大限に高めることが可能となる。また、そのようなコバルト酸化物の場合、放電後の電池を放置(保存)した場合において、コバルトが2価へ還元されたり、電解液に溶出したりすることが抑制される。従って、このようなコバルト酸化物が表面に付着したオキシ水酸化ニッケルを用いることで、高容量化と強負荷放電特性の向上に加え、電池の保存特性(信頼性)の改善をも図ることが可能になる。
二酸化マンガンは、オキシ水酸化ニッケルよりも電池ケース内に高密度充填することが容易であり、しかも二酸化マンガンの価格は安価である。これらの点を踏まえると、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量は20重量%以上であることが好ましい。また、電池容量を向上させる観点からは、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量は、90重量%以下であることが好ましい。
γ型構造を有するオキシ水酸化ニッケルは、β型構造を主体とする水酸化ニッケルをアルカリ水溶液中で酸化剤を用いて化学酸化し、これを水洗および乾燥して得ることができる。
ここで、γ型構造を主体とするオキシ水酸化ニッケルは、一般的な水酸化ニッケルの充放電に関するBodeダイアグラム(Electrochemical Acta 11, p.1079(1966))を参照すると、α型構造の水酸化ニッケル(α−3Ni(OH)2・2H2O)を出発原料として用いる場合に、容易に得られると考えられる。
ここで、γ型構造を主体とするオキシ水酸化ニッケルは、一般的な水酸化ニッケルの充放電に関するBodeダイアグラム(Electrochemical Acta 11, p.1079(1966))を参照すると、α型構造の水酸化ニッケル(α−3Ni(OH)2・2H2O)を出発原料として用いる場合に、容易に得られると考えられる。
しかし、α型構造を有する水酸化ニッケルは、一般に非常に嵩高く、c軸に垂直な(003)面の面間距離が8オングストローム超であり、この面間距離はγ−水酸化ニッケルのそれよりも大きい。そのため、α型構造を有する水酸化ニッケルを酸化して得られるγ型構造を有するオキシ水酸化ニッケルは、原料の形状(履歴)を反映することとなり、材料が多孔化し、高密度の粉末が得られない。
そこで、本発明では、γ型構造を有するオキシ水酸化ニッケルの原料に、高密度のβ型構造を主体とする水酸化ニッケル(例えば90重量%以上がβ型構造である水酸化ニッケル)を使用することを提案する。γ型構造を主体とするオキシ水酸化ニッケルは、比較的密度であり、電池内への活物質の高密度充填の達成に有利である。
アルカリ水溶液には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、γ型構造を主体とするオキシ水酸化ニッケルの形成反応は、アルカリ金属イオンのNiO2層内への侵入を伴いながら進行する。このため、酸化剤とともに共存させるアルカリ塩の濃度を高くする方が、反応が円滑に進む。よって、これらアルカリ塩のアルカリ水溶液における濃度は、3mol/L以上であることが望ましい。
γ型構造を有するオキシ水酸化ニッケルの原料として用いるβ型構造を主体とする水酸化ニッケルは、マンガンを溶解した固溶体であることが望ましい。
マンガンを溶解した固溶体の水酸化ニッケルは、酸化還元電位が通常の水酸化ニッケルに比べて卑な方向に移行するため、酸化剤による処理において高度に酸化されてγ型構造を形成しやすい。
マンガンを溶解した固溶体の水酸化ニッケルは、酸化還元電位が通常の水酸化ニッケルに比べて卑な方向に移行するため、酸化剤による処理において高度に酸化されてγ型構造を形成しやすい。
また、マンガンが水酸化ニッケル中に酸化物として存在し、ニッケル酸化物との共晶を形成している状態に比べ、水酸化ニッケルにマンガンを溶解した固溶体の状態の方が、酸化剤による処理時にマンガンの溶出が殆ど起こらない点で優れている。
また、マンガンが水酸化ニッケル結晶内のニッケルサイト以外の位置に侵入した固溶状態よりも、マンガンが水酸化ニッケルのニッケルサイトに置換された固溶状態の方が、酸化剤による処理時にマンガンの溶出が殆ど起こらない点で優れている。
また、マンガンが水酸化ニッケル結晶内のニッケルサイト以外の位置に侵入した固溶状態よりも、マンガンが水酸化ニッケルのニッケルサイトに置換された固溶状態の方が、酸化剤による処理時にマンガンの溶出が殆ど起こらない点で優れている。
なお、水酸化ニッケルを酸化剤で処理する際に、マンガンがマンガン酸イオン(MnO4 2-)、過マンガン酸イオン(MnO4 -)等として溶出すると、ニッケルの酸化度合いにばらつきが生ずる。ニッケルサイトの一部がマンガンに置換された固溶体の水酸化ニッケルを用いる場合には、このような現象が抑制され、マンガンの溶出が殆ど起こらない。
酸化剤による処理直前のβ−水酸化ニッケル中のマンガンの平均価数は、3.5以上であることが好ましく、3.8以上であることが更に好ましい。マンガンの平均価数が2〜3価と低い場合には、オキシ水酸化ニッケル粒子内に、局所的にマンガン酸化物が遊離する等の現象が起こることがある。その原因の詳細は明らかではないが、酸化処理時にマンガン種が結晶内で移動するなどして、酸化物が形成されると考えられる。その場合、電池の高容量化に寄与するだけの高い放電効率を有するγ−オキシ水酸化ニッケルを得ることが困難になる。よって、マンガンの平均価数は、4価に近い状態の方が好ましい。
次に、マンガンを好適な状態で溶解したγ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルの効率的な製造方法の一例について説明する。
第1工程
まず、攪拌翼を供えた反応槽内に、硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、それぞれ独立した流路で供給する。この操作は、反応槽内に不活性ガスをバブリングするとともに、反応槽内の温度およびpHを制御しながら行う。この操作では、ニッケルサイトの一部が2価のマンガンで置換されたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを得ることができる。
第1工程
まず、攪拌翼を供えた反応槽内に、硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、それぞれ独立した流路で供給する。この操作は、反応槽内に不活性ガスをバブリングするとともに、反応槽内の温度およびpHを制御しながら行う。この操作では、ニッケルサイトの一部が2価のマンガンで置換されたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを得ることができる。
反応槽内における各溶液の濃度は、反応槽の設備等によって当業者が適宜調整することが要求されるが、そのような調整は当業者が任意に行うことができる。一般的な濃度を挙げれば、硫酸ニッケル(II)の濃度は0.5〜2mol/L、水酸化ナトリウムの濃度は1〜5mol/L、アンモニア水の濃度は10〜30重量%であるが、これに限定されるわけではない。また、硫酸マンガン(II)の濃度は、所望のニッケル含有量が達成されるように選択すればよい。
不活性ガスには、窒素、アルゴン等を用いる。不活性ガスのバブリングを行いながら原料溶液の攪拌を行うことで、ニッケルおよびマンガンが2価の状態でアンミン錯体を形成し、アンミン錯体に過剰供給された水酸化ナトリウム水溶液が作用して、2価のニッケルサイトの一部がマンガンに置換されたβ型構造を主体とする水酸化ニッケルが析出する。マンガンを溶解させた水酸化ニッケルの密度は低下する場合が多いが、これは水酸化ニッケルの合成途上で2価のマンガンイオンが酸化を受けることが主要因となっている。一方、上記のような不活性ガス雰囲気下で合成すれば、非常に密度の高いβ−水酸化ニッケルを得ることができる。
反応槽内の還元雰囲気を維持する観点から、第1工程では、さらに反応槽内にヒドラジンを加えることが望ましい。このような雰囲気制御がなされることで、合成時のマンガンイオンの酸化がより一層抑えられ、2価のマンガンがニッケルサイトの一部に置換したβ−水酸化ニッケルを確実に得ることが可能になる。
第2工程
次に、第1工程で得られたβ−水酸化ニッケルを、水洗し、乾燥し、酸化雰囲気下で50〜150℃で加熱する。この操作により、マンガンだけを平均価数3.5以上に酸化させることができる。
β−水酸化ニッケル中のマンガンの価数が2価のままであると、酸化処理前の常温大気中での保存時あるいは酸化処理時に、粒子内で局所的にマンガン酸化物が遊離する等の現象が起こり、後に十分な特性が得られないことがある。一方、第1工程後に、マンガンを3.5価以上の状態に変換すると、マンガンをβ−水酸化ニッケルのニッケルサイトに安定して存在させることができる。
次に、第1工程で得られたβ−水酸化ニッケルを、水洗し、乾燥し、酸化雰囲気下で50〜150℃で加熱する。この操作により、マンガンだけを平均価数3.5以上に酸化させることができる。
β−水酸化ニッケル中のマンガンの価数が2価のままであると、酸化処理前の常温大気中での保存時あるいは酸化処理時に、粒子内で局所的にマンガン酸化物が遊離する等の現象が起こり、後に十分な特性が得られないことがある。一方、第1工程後に、マンガンを3.5価以上の状態に変換すると、マンガンをβ−水酸化ニッケルのニッケルサイトに安定して存在させることができる。
第3工程
次に、第2工程後の水酸化ニッケルを、アルカリ水溶液中に酸化剤とともに投入し、水酸化ニッケルを化学酸化する。この操作によって、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルが得られる。
γ−オキシ水酸化ニッケルは、オキシ水酸化ニッケルのNiO2層間にアルカリ金属イオンが挿入して4価ニッケルイオンの電気的中性が保たれている。従って、アルカリ金属イオンを含む水溶液中で酸化剤処理を行う必要がある。ただし、OH-以外の大半のアニオン種(SO4 2-、NO3 -、Cl-等)は、電池特性に悪影響を及ぼすため、実質上、アルカリ水溶液中での処理が必須となる。
次に、第2工程後の水酸化ニッケルを、アルカリ水溶液中に酸化剤とともに投入し、水酸化ニッケルを化学酸化する。この操作によって、γ型の結晶構造を有するオキシ水酸化ニッケルが得られる。
γ−オキシ水酸化ニッケルは、オキシ水酸化ニッケルのNiO2層間にアルカリ金属イオンが挿入して4価ニッケルイオンの電気的中性が保たれている。従って、アルカリ金属イオンを含む水溶液中で酸化剤処理を行う必要がある。ただし、OH-以外の大半のアニオン種(SO4 2-、NO3 -、Cl-等)は、電池特性に悪影響を及ぼすため、実質上、アルカリ水溶液中での処理が必須となる。
アルカリ水溶液には、上述のように、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムよりなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ塩が好ましい。また、γ−オキシ水酸化ニッケルの生成効率を高める観点から、アルカリ水溶液におけるアルカリ塩濃度は3mol/L以上であることが望ましい。
水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに酸化させるための酸化剤には、例えば次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩、ペルオキシ二硫酸カリウム等の過硫酸塩、臭素等のハロゲン類、過酸化水素水等を用いることができる。これらのうちでは、酸化力が高く安定しており、価格も安価であるため、次亜塩素酸塩が最も適する。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
まず、オキシ水酸化ニッケル、ないしは原料水酸化ニッケルの物性測定法について説明する。
〈1〉粉末X線回折測定
理学電機株式会社製の粉末X線回折装置「RINT1400」を用い、以下の測定条件により、2θ=10〜70度(deg.)の範囲で各粉末のX線回折プロファイル(回折パターン)を得た。
(対陰極) Cu
(フィルタ) Ni
(管電圧) 40kV
(管電流) 100mA
(サンプリング角度) 0.02deg.
(走査速度) 3.0deg./min.
(発散スリット) 1/2deg.
(散乱スリット) 1/2deg.
まず、オキシ水酸化ニッケル、ないしは原料水酸化ニッケルの物性測定法について説明する。
〈1〉粉末X線回折測定
理学電機株式会社製の粉末X線回折装置「RINT1400」を用い、以下の測定条件により、2θ=10〜70度(deg.)の範囲で各粉末のX線回折プロファイル(回折パターン)を得た。
(対陰極) Cu
(フィルタ) Ni
(管電圧) 40kV
(管電流) 100mA
(サンプリング角度) 0.02deg.
(走査速度) 3.0deg./min.
(発散スリット) 1/2deg.
(散乱スリット) 1/2deg.
各回折パターンから、γ型結晶の(003)面に帰属される面間隔6.8〜7.1Å付近の回折ピークPγの積分強度Iγと、β型結晶の(001)面に帰属される面間隔4.5〜5Åの回折ピークPβの積分強度Iβを求め、Iγ/(Iγ+Iβ)の値を求めた。
〈2〉ニッケル含有量
各試料粉末のニッケル含有量は、重量法に基づく以下の化学測定で求めた。
オキシ水酸化ニッケルないしは水酸化ニッケルの試料粉末に、硝酸水溶液を加えて加熱し、粒子を完全に溶解させ、酒石酸水溶液とイオン交換水とを加えて体積調整した。この溶液のpHをアンモニア水および酢酸を用いて調整した後、臭素酸カリウムを加えて、測定誤差となりうる添加元素(マンガンイオンやコバルトイオン)を高次な状態に酸化させた。
各試料粉末のニッケル含有量は、重量法に基づく以下の化学測定で求めた。
オキシ水酸化ニッケルないしは水酸化ニッケルの試料粉末に、硝酸水溶液を加えて加熱し、粒子を完全に溶解させ、酒石酸水溶液とイオン交換水とを加えて体積調整した。この溶液のpHをアンモニア水および酢酸を用いて調整した後、臭素酸カリウムを加えて、測定誤差となりうる添加元素(マンガンイオンやコバルトイオン)を高次な状態に酸化させた。
次に、この溶液を加熱攪拌しながらジメチルグリオキシムのエタノール溶液を添加し、ニッケル(II)イオンをジメチルグリオキシム錯化合物として沈殿させた。続いて吸引濾過を行い、生成した沈殿物を捕集して110℃雰囲気で乾燥させ、沈殿物の重量を測定した。測定結果より、各粉末中に含まれるニッケル含有量を次式により算出した。
ニッケル含有量(重量%)={沈殿物の重量(g)×0.2032}/{試料粉末の重量(g)}
ニッケル含有量(重量%)={沈殿物の重量(g)×0.2032}/{試料粉末の重量(g)}
〈3〉ニッケルの平均価数
オキシ水酸化ニッケルがマンガンやコバルトのような添加元素を含まない場合は、オキシ水酸化ニッケルの試料粉末にヨウ化カリウムと硫酸を加え、十分に攪拌を続けることで完全に溶解させた。この過程で価数の高いニッケルイオンは、ヨウ化カリウムをヨウ素に酸化し、自身は2価に還元される。続いて、生成、遊離したヨウ素を0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定した。この際の滴定量は、価数が2価よりも大きいニッケルイオン量を反映している。滴定の結果と、上記〈2〉で求めたニッケル含有量を用いて、オキシ水酸化ニッケル中に含まれるニッケルの平均価数を以下の式で算出した。
ニッケルの平均価数={滴定量(L)×0.1(mol/L)×58.69}/{オキシ水酸化ニッケルの重量(g)×ニッケル含有量}+2.00
オキシ水酸化ニッケルがマンガンやコバルトのような添加元素を含まない場合は、オキシ水酸化ニッケルの試料粉末にヨウ化カリウムと硫酸を加え、十分に攪拌を続けることで完全に溶解させた。この過程で価数の高いニッケルイオンは、ヨウ化カリウムをヨウ素に酸化し、自身は2価に還元される。続いて、生成、遊離したヨウ素を0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定した。この際の滴定量は、価数が2価よりも大きいニッケルイオン量を反映している。滴定の結果と、上記〈2〉で求めたニッケル含有量を用いて、オキシ水酸化ニッケル中に含まれるニッケルの平均価数を以下の式で算出した。
ニッケルの平均価数={滴定量(L)×0.1(mol/L)×58.69}/{オキシ水酸化ニッケルの重量(g)×ニッケル含有量}+2.00
オキシ水酸化ニッケルが添加元素(マンガンやコバルト)を含む固溶体である場合は、価数の高いマンガンイオンやコバルトイオンもヨウ化カリウムをヨウ素に酸化し、自身は2価に還元されるため、この分を補正する必要がある。
そこで、添加元素を溶解したオキシ水酸化ニッケルの固溶体の場合は、これに硝酸水溶液を加えて加熱し、粒子を完全に溶解させた後、得られた溶液に関してICP発光分析を行って、添加元素の含有量を定量した。ICP発光分析には、VARIAN社製のVISTA−RLを使用した。オキシ水酸化ニッケル中に含まれるマンガンの平均価数を4価、コバルトの平均価数を3.5価と仮定して、ICP発光分析結果を用いて前記滴定量を補正し、ニッケルの平均価数を算出した。
なお、オキシ水酸化ニッケルに酸化される前の原料水酸化ニッケルの固溶体に含まれるマンガンの平均価数は、添加元素の含有量をICP発光分析で求めた値とし、ニッケルを2価、コバルトを2価と仮定して、基本的には上記と同様の酸化還元滴定で求めた。
〈4〉タップ密度
タップ密度の測定には、ホソカワミクロン株式会社製の測定装置「パウダテスタPT-R」を用いた。試料粉末が通過する篩には、目開き100μmの篩を使用し、20ccのタッピングセルに粉末を落下させた。セルが満杯に充填された後、1回/秒でストローク長18mmのタッピングを500回行った。その後、タップ密度を測定した。
タップ密度の測定には、ホソカワミクロン株式会社製の測定装置「パウダテスタPT-R」を用いた。試料粉末が通過する篩には、目開き100μmの篩を使用し、20ccのタッピングセルに粉末を落下させた。セルが満杯に充填された後、1回/秒でストローク長18mmのタッピングを500回行った。その後、タップ密度を測定した。
〈5〉平均粒子径
日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置「9220FRA」を用いて、試料粉末を水中に十分に分散させ、レーザー回折法によって体積基準の平均粒子径D50を求めた。
日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置「9220FRA」を用いて、試料粉末を水中に十分に分散させ、レーザー回折法によって体積基準の平均粒子径D50を求めた。
〈6〉水分量
株式会社製チノー製の乾量式水分計「CZA−2100」を用いて、5gの試料粉末を120℃で加熱乾燥させ、その後、試料中に含まれている水分量(重量%)を測定した。
株式会社製チノー製の乾量式水分計「CZA−2100」を用いて、5gの試料粉末を120℃で加熱乾燥させ、その後、試料中に含まれている水分量(重量%)を測定した。
〈7〉BET比表面積
マイクロメリテックス社製「ASAP2010」を用いて、約2gの試料粉末に対して、60℃で加熱しながら6時間真空引きを行い、予備乾燥させた後、窒素ガスを試料に吸着させて吸着量を測定した。さらに試料粉末の重量を精秤して、BET法により比表面積を求めた。
マイクロメリテックス社製「ASAP2010」を用いて、約2gの試料粉末に対して、60℃で加熱しながら6時間真空引きを行い、予備乾燥させた後、窒素ガスを試料に吸着させて吸着量を測定した。さらに試料粉末の重量を精秤して、BET法により比表面積を求めた。
《実施例1》
[1]水酸化ニッケルの製造
(1)水酸化ニッケルa1
それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、攪拌翼を備えた反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、球状のβ−水酸化ニッケルを析出・成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸イオンを除去した後、水洗し、乾燥させて、水酸化ニッケルa1とした。
[1]水酸化ニッケルの製造
(1)水酸化ニッケルa1
それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、攪拌翼を備えた反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、球状のβ−水酸化ニッケルを析出・成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸イオンを除去した後、水洗し、乾燥させて、水酸化ニッケルa1とした。
(2)水酸化ニッケルb1
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出させ、成長させた。
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出させ、成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸イオンを除去した後、水洗・真空乾燥を行い、さらに、これに80℃で72時間の空気酸化を施して、水酸化ニッケルb1〔組成:Ni0.95Mn0.05(OH)2〕とした。ここで、空気酸化は、Mnだけを4価近傍にまで酸化するための処理である。
(3)水酸化ニッケルc1
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンとコバルトとを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出させ、成長させた。
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンとコバルトとを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出させ、成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸イオンを除去した後、水洗・真空乾燥を行い、さらに、これに80℃で72時間の空気酸化を施して、水酸化ニッケルc1〔組成:Ni0.90Mn0.05Co0.05(OH)2〕とした。
(4)水酸化ニッケルd1
水酸化ニッケルb1を反応槽内の硫酸コバルト水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、35℃で槽内のpHが10を維持するように制御しながら攪拌を続けて、固溶体粒子の表面に水酸化コバルトを析出させた。こうして、Co(OH)2で被覆された水酸化ニッケルb1を水酸化ニッケルd1とした。水酸化ニッケルd1は、水洗した後、真空乾燥を行った。
ここで、水酸化ニッケルb1の表面に付着する水酸化コバルトの量は、水酸化ニッケルb1の100重量部あたり5.0重量部とした。
水酸化ニッケルa1〜d1は、いずれも平均粒子径が約12μm、BET比表面積が10〜12m2/g、タップ密度が2.1〜2.2g/cm3の範囲にあった。
水酸化ニッケルb1を反応槽内の硫酸コバルト水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、35℃で槽内のpHが10を維持するように制御しながら攪拌を続けて、固溶体粒子の表面に水酸化コバルトを析出させた。こうして、Co(OH)2で被覆された水酸化ニッケルb1を水酸化ニッケルd1とした。水酸化ニッケルd1は、水洗した後、真空乾燥を行った。
ここで、水酸化ニッケルb1の表面に付着する水酸化コバルトの量は、水酸化ニッケルb1の100重量部あたり5.0重量部とした。
水酸化ニッケルa1〜d1は、いずれも平均粒子径が約12μm、BET比表面積が10〜12m2/g、タップ密度が2.1〜2.2g/cm3の範囲にあった。
[2]水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
水酸化ニッケルa1の200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルA1とした。
また、水酸化ニッケルa1の代わりに水酸化ニッケルb1、c1およびd1を用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルB1、C1およびD1を製造した。
水酸化ニッケルa1の200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルA1とした。
また、水酸化ニッケルa1の代わりに水酸化ニッケルb1、c1およびd1を用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルB1、C1およびD1を製造した。
[3]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1について得られたIγ/(Iγ+Iβ)値およびニッケルの平均価数を表1に示す。
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1について得られたIγ/(Iγ+Iβ)値およびニッケルの平均価数を表1に示す。
表1より以下のことが言える。
まず、マンガンやコバルトを含まないオキシ水酸化ニッケルA1では、γ−オキシ水酸化ニッケルの生成比率は僅かであり、ニッケルの化学酸化が、ほぼ3価近傍までで抑えられている。
一方、マンガンを溶解させた固溶体のオキシ水酸化ニッケルB1〜D1では、いずれもIγ/(Iγ+Iβ)値が0.8付近であり、ニッケルの平均価数が3.4価程度まで高められている。
まず、マンガンやコバルトを含まないオキシ水酸化ニッケルA1では、γ−オキシ水酸化ニッケルの生成比率は僅かであり、ニッケルの化学酸化が、ほぼ3価近傍までで抑えられている。
一方、マンガンを溶解させた固溶体のオキシ水酸化ニッケルB1〜D1では、いずれもIγ/(Iγ+Iβ)値が0.8付近であり、ニッケルの平均価数が3.4価程度まで高められている。
[4]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1を用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池を作製した。図1は、本実施例で作製した電池の一部を断面にした正面図である。
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1を用いた電池を、それぞれ電池A1〜D1とした。
(1)正極合剤ペレットの作製
所定のオキシ水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、この配合物に、オキシ水酸化ニッケルa2の5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルa2と二酸化マンガンとの合計100重量部に対して、アルカリ電解液(40重量%の水酸化カリウム水溶液)1重量部を添加した。その後、配合物が均一になるまでミキサーで撹拌および混合して、配合物を粒状物とした。得られた粒状物を中空の短筒状に成形し、正極合剤ペレットとした。
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1を用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池を作製した。図1は、本実施例で作製した電池の一部を断面にした正面図である。
オキシ水酸化ニッケルA1〜D1を用いた電池を、それぞれ電池A1〜D1とした。
(1)正極合剤ペレットの作製
所定のオキシ水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、この配合物に、オキシ水酸化ニッケルa2の5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルa2と二酸化マンガンとの合計100重量部に対して、アルカリ電解液(40重量%の水酸化カリウム水溶液)1重量部を添加した。その後、配合物が均一になるまでミキサーで撹拌および混合して、配合物を粒状物とした。得られた粒状物を中空の短筒状に成形し、正極合剤ペレットとした。
(2)電池の組立
正極ケース1には、ニッケルメッキされた鋼板を用いた。正極ケース1の内面には、黒鉛塗装膜2を形成した。正極ケース1の内部に、短筒状の正極合剤ペレット3を複数個挿入した。正極合剤ペレット3は、正極ケース1の内部で再加圧して、その内面に密着させた。正極合剤ペレット3の内側には、筒状セパレータ4を挿入し、正極ケース1の内底面には、絶縁キャップ5を載置した。その後、セパレータ4と正極合剤ペレット3を湿潤させる目的で、アルカリ電解液を正極ケース1に注液した。アルカリ電解液には、水酸化カリウムを40重量%含む水溶液を用いた。電解液の注液後、セパレータ4の内側にゲル状負極6を充填した。ゲル状負極6には、ゲル化剤のポリアクリル酸ナトリウム、アルカリ電解液、および負極活物質の亜鉛粉末の混合物を用いた。
正極ケース1には、ニッケルメッキされた鋼板を用いた。正極ケース1の内面には、黒鉛塗装膜2を形成した。正極ケース1の内部に、短筒状の正極合剤ペレット3を複数個挿入した。正極合剤ペレット3は、正極ケース1の内部で再加圧して、その内面に密着させた。正極合剤ペレット3の内側には、筒状セパレータ4を挿入し、正極ケース1の内底面には、絶縁キャップ5を載置した。その後、セパレータ4と正極合剤ペレット3を湿潤させる目的で、アルカリ電解液を正極ケース1に注液した。アルカリ電解液には、水酸化カリウムを40重量%含む水溶液を用いた。電解液の注液後、セパレータ4の内側にゲル状負極6を充填した。ゲル状負極6には、ゲル化剤のポリアクリル酸ナトリウム、アルカリ電解液、および負極活物質の亜鉛粉末の混合物を用いた。
次に、樹脂製封口板7、負極端子を兼ねる底板8、および絶縁ワッシャ9と一体化された負極集電体10を、ゲル状負極6に差し込んだ。そして、正極ケース1の開口端部を、封口板7の端部を介して、底板8の周縁部にかしめつけ、正極ケース1の開口部を密閉した。正極ケース1の外表面には、外装ラベル11を被覆した。こうして図1に示すような単三サイズのニッケルマンガン電池を完成した。
[5]アルカリ電池の評価
こうして作製したニッケルマンガン電池A1〜D1を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
得られた結果を表2にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方において、ニッケルマンガン電池B1〜D1の放電容量は、ニッケルマンガン電池A1の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
こうして作製したニッケルマンガン電池A1〜D1を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
得られた結果を表2にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方において、ニッケルマンガン電池B1〜D1の放電容量は、ニッケルマンガン電池A1の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
表2より以下のことが言える。
まず、マンガンを溶解させてニッケルの平均価数を3.4価程度にまで高めたオキシ水酸化ニッケルB1〜D1を用いた電池では、50mAの定電流(低負荷)で連続放電させた場合、高価数に見合うだけの高い容量が得られている。つまり、β−オキシ水酸化ニッケルを主体とするオキシ水酸化ニッケルA1を用いた電池A1より、電池B1〜D1の方が高容量化が図られる。
まず、マンガンを溶解させてニッケルの平均価数を3.4価程度にまで高めたオキシ水酸化ニッケルB1〜D1を用いた電池では、50mAの定電流(低負荷)で連続放電させた場合、高価数に見合うだけの高い容量が得られている。つまり、β−オキシ水酸化ニッケルを主体とするオキシ水酸化ニッケルA1を用いた電池A1より、電池B1〜D1の方が高容量化が図られる。
ただし、マンガンだけを溶解させたオキシ水酸化ニッケルB1を用いた電池B1では、1W(強負荷)での連続放電では、オキシ水酸化ニッケルA1を用いた電池A1よりも容量が劣っている。
これは、(a)γ−オキシ水酸化ニッケルの酸化還元電位(平衡電位)がβ−オキシ水酸化ニッケルよりも卑であること、(b)γ−オキシ水酸化ニッケルは、放電の際に生じる体積変化(結晶構造の変化)が大きいため、分極の程度が大きいこと、(c)マンガンだけを溶解させたγ−オキシ水酸化ニッケルの電子伝導性は、放電に伴って大きく低下すること(支配因子)などにより、強負荷放電特性が大きく低下したためと推察される。
これは、(a)γ−オキシ水酸化ニッケルの酸化還元電位(平衡電位)がβ−オキシ水酸化ニッケルよりも卑であること、(b)γ−オキシ水酸化ニッケルは、放電の際に生じる体積変化(結晶構造の変化)が大きいため、分極の程度が大きいこと、(c)マンガンだけを溶解させたγ−オキシ水酸化ニッケルの電子伝導性は、放電に伴って大きく低下すること(支配因子)などにより、強負荷放電特性が大きく低下したためと推察される。
これに比較して、マンガンとコバルトとを溶解させたオキシ水酸化ニッケルC1を用いた電池C1では、50mA(低負荷)放電と1W(強負荷)放電のいずれにおいても、高い放電容量を与えている。
ここでは、ニッケル層内に添加されたマンガンイオン(4価)の存在により、γ型の結晶構造が熱力学的に安定化され、オキシ水酸化ニッケル中のニッケルの平均価数が大きくなり、放電容量が向上したものと考えられる。
ここでは、ニッケル層内に添加されたマンガンイオン(4価)の存在により、γ型の結晶構造が熱力学的に安定化され、オキシ水酸化ニッケル中のニッケルの平均価数が大きくなり、放電容量が向上したものと考えられる。
また、オキシ水酸化ニッケル中にコバルトが添加されていると、ニッケルの放電過程で、プロトンの拡散に好適な欠陥をNiO2層内に形成させることができ、同時にオキシ水酸化ニッケル自身の電子伝導性が向上する。従って、放電に際しても、オキシ水酸化ニッケルの電子伝導性が高く維持されるため、強負荷放電特性が大幅に改善されるものと考えられる。
このような理由から、マンガンとコバルトの両者を溶解させた固溶体のオキシ水酸化ニッケルC1を用いた電池C1は、低負荷・強負荷のいずれの放電においても、高い容量を与えたものと推察される。
このような理由から、マンガンとコバルトの両者を溶解させた固溶体のオキシ水酸化ニッケルC1を用いた電池C1は、低負荷・強負荷のいずれの放電においても、高い容量を与えたものと推察される。
また、コバルト酸化物で表面が被覆された、マンガンを溶解させたオキシ水酸化ニッケルD1を用いた電池D1も、50mA(低負荷)放電と1W(強負荷)放電の両方において、高い放電容量を与えている。
これに関連して、別の実験で、pH=10付近で合成したCo(OH)2を5mol/Lの水酸化ナトリウムに投入し、そこへ次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加して、Co(OH)2をコバルト酸化物に酸化した。そして、得られたコバルト酸化物中のコバルトの平均価数を調べたところ、3価を超えるまで酸化されており、極めて高い電子伝導性を有することが確認できた。
オキシ水酸化ニッケルD1においては、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の表面に、電子伝導性の高いコバルト酸化物が付着していることから、体積変化を伴うγ−オキシ水酸化ニッケルの放電においても、活物質間の集電性を比較的良好に保つことができると考えられる。従って、分極の度合いが低減し、高容量化と強負荷放電特性向上の両立が図られたと考えられる。
以上のように、本発明によれば、高容量で強負荷放電特性にも優れたアルカリ電池を得ることができた。
以上のように、本発明によれば、高容量で強負荷放電特性にも優れたアルカリ電池を得ることができた。
《実施例2》
オキシ水酸化ニッケル中のニッケルの平均価数、Iγ/(Iγ+Iβ)値および正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量を最適化するために、以下の実験と評価を行った。
オキシ水酸化ニッケル中のニッケルの平均価数、Iγ/(Iγ+Iβ)値および正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量を最適化するために、以下の実験と評価を行った。
[1]オキシ水酸化ニッケルの製造
実施例1で用いた水酸化ニッケルc1〔組成:Ni0.90Mn0.05Co0.05(OH)2〕の200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルC1とした。
実施例1で用いた水酸化ニッケルc1〔組成:Ni0.90Mn0.05Co0.05(OH)2〕の200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルC1とした。
また、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を1.0mol/L、3.0mol/L、4.0mol/L、5.0mol/Lおよび7.0mol/Lとしたこと以外、上記と同様にして、オキシ水酸化ニッケルC2〜C6を製造した。
[2]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
得られたオキシ水酸化ニッケルC1〜C6の粉末X線回折によるIγ/(Iγ+Iβ)値と、化学分析によるニッケルの平均価数を表3にまとめる。
表3より、化学酸化に際して共存させる水酸化ナトリウム水溶液の濃度を調整することで、オキシ水酸化ニッケルの酸化度(γ−オキシ水酸化ニッケルの生成比率とニッケルの平均価数)の制御が可能であることがわかる。
得られたオキシ水酸化ニッケルC1〜C6の粉末X線回折によるIγ/(Iγ+Iβ)値と、化学分析によるニッケルの平均価数を表3にまとめる。
表3より、化学酸化に際して共存させる水酸化ナトリウム水溶液の濃度を調整することで、オキシ水酸化ニッケルの酸化度(γ−オキシ水酸化ニッケルの生成比率とニッケルの平均価数)の制御が可能であることがわかる。
[3]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルC1〜C6を用いて、正極合剤C1n〜C6n(nは1〜8の整数)を調製し、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池C1n〜C6n(nは1〜8の整数)を作製した。
ここでは、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量を最適化する観点から、表4に示すように正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量(導電剤の黒鉛等も含めた正極合剤全体に対する二酸化マンガンの重量比率)を変化させた。
オキシ水酸化ニッケルC1〜C6を用いて、正極合剤C1n〜C6n(nは1〜8の整数)を調製し、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池C1n〜C6n(nは1〜8の整数)を作製した。
ここでは、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量を最適化する観点から、表4に示すように正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量(導電剤の黒鉛等も含めた正極合剤全体に対する二酸化マンガンの重量比率)を変化させた。
正極合剤C1nの場合、オキシ水酸化ニッケルC1と二酸化マンガンとの合計100重量部あたり5重量部の黒鉛(導電剤)を添加し、さらにオキシ水酸化ニッケルC1の5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルC1と二酸化マンガンとの合計100重量部あたり、電解液1重量部を添加した。その後、配合物をミキサーで均一に撹拌・混合して、一定粒度に整粒した。得られた粒状物を、短筒状のペレットに加圧成型して、正極合剤ペレットとした。この正極合剤ペレットを用いたこと以外、実施例1と同様にして、単3サイズのニッケルマンガン電池C1nを作製した。
また、オキシ水酸化ニッケルC1の代わりにオキシ水酸化ニッケルC2〜C6を用い、上記と同様にして、単3サイズのニッケルマンガン電池C2n〜C6nを作製した。この際、正極ケースへの正極合剤の充填量がすべての電池で同じになるように留意した。
[4]アルカリ電池の評価
こうして作製した48種類のニッケルマンガン電池C1n〜C6nならびに実施例1で作製した電池A(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
こうして作製した48種類のニッケルマンガン電池C1n〜C6nならびに実施例1で作製した電池A(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
得られた結果を表5にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方において、ニッケルマンガン電池B〜Dの放電容量は、ニッケルマンガン電池Aの放電容量を100とした場合の相対値で示した。
表5より以下のことが言える。
まず、マンガンおよびコバルトを溶解させたオキシ水酸化ニッケルを用いたアルカリ電池C11〜C68は、マンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルトの存在によって、電子伝導性が高められている。従って、電池C11〜C68は、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルを用いた電池A1より、高い特性を与えている。
まず、マンガンおよびコバルトを溶解させたオキシ水酸化ニッケルを用いたアルカリ電池C11〜C68は、マンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルトの存在によって、電子伝導性が高められている。従って、電池C11〜C68は、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルを用いた電池A1より、高い特性を与えている。
特に、Iγ/(Iγ+Iβ)値が0.5以上で、ニッケルの平均価数が3.3以上のオキシ水酸化ニッケル(C3〜C6)を用い、正極合剤中の二酸化マンガンの含有量を20〜90重量%にした電池C32〜C37、C42〜C47、C52〜C57およびC62〜C67では、電池Aよりも1W(強負荷)放電が顕著に向上しており、表5において110以上の特性を与えている。
以上のような結果が得られた理由として、以下が考えられる。
まず、二酸化マンガンの含有量が同じ場合、オキシ水酸化ニッケルにおけるγ型の結晶構造の生成比率〔Iγ/(Iγ+Iβ)値〕やニッケルの平均価数が高くなるほど(つまりC1からC6へいくほど)、ニッケルの多電子反応を放電に活用できるようになるため、容量が向上する。
まず、二酸化マンガンの含有量が同じ場合、オキシ水酸化ニッケルにおけるγ型の結晶構造の生成比率〔Iγ/(Iγ+Iβ)値〕やニッケルの平均価数が高くなるほど(つまりC1からC6へいくほど)、ニッケルの多電子反応を放電に活用できるようになるため、容量が向上する。
一方、二酸化マンガンは、容量そのものは大きいが、電子伝導性に乏しく、強負荷で放電した際の効率が低いため、二酸化マンガンの含有量が90重量%を超えると1W特性が低下する。
また、二酸化マンガンの含有量が10重量%と極端に少ない場合、正極合剤ペレットの成型性の低下のため、活物質間を黒鉛でうまく接続することが困難になると推察され、やはり1W特性の低下が起こる。
また、二酸化マンガンの含有量が10重量%と極端に少ない場合、正極合剤ペレットの成型性の低下のため、活物質間を黒鉛でうまく接続することが困難になると推察され、やはり1W特性の低下が起こる。
以上のような理由から、Iγ/(Iγ+Iβ)値が0.5以上で、ニッケルの平均価数が3.3以上のオキシ水酸化ニッケルからなる粒子を用い、正極合剤中の二酸化マンガンの含有量を20〜90重量%とした電池は、特に優れた特性を与えると考えられる。
なお、ここでは詳細を記さないが、実施例1で用いたオキシ水酸化ニッケルD1を用いた場合にも、総じてβ−オキシ水酸化ニッケルを用いた電池A1より高い特性が得られた。特にIγ/(Iγ+Iβ)値が0.5以上で、ニッケルの平均価数が3.3以上のオキシ水酸化ニッケルからなる粒子をコバルト酸化物で被覆し、正極合剤中の二酸化マンガンの含有量を20〜90重量%にした場合に、強負荷特性を中心としたアルカリ電池の高性能化が顕著となることを、別の実験で確認した。
《実施例3》
オキシ水酸化ニッケルからなる粒子内に溶解させるマンガンおよびコバルトの量を最適化するために、以下の実験と評価を行った。
[1]水酸化ニッケルからなる粒子の製造
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンとコバルトとを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出・成長させた。
オキシ水酸化ニッケルからなる粒子内に溶解させるマンガンおよびコバルトの量を最適化するために、以下の実験と評価を行った。
[1]水酸化ニッケルからなる粒子の製造
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリングを開始した。また、それぞれ所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、ならびにアンモニア水を用意した。これらを槽内pHが一定となるように、前記反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、マンガンとコバルトとを溶解した球状のβ−水酸化ニッケルからなる固溶体を析出・成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸根を除去した後、水洗・真空乾燥を行い、さらに、これに80℃で72時間の空気酸化を施して、水酸化ニッケルaa〔組成:Ni0.99Mn0.005Co0.005(OH)2〕とした。ここで、空気酸化は、Mnだけを4価近傍にまで酸化するための処理である。
また、反応槽に定量供給する硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液の比率を変化させたこと以外、上記と同様にして、表6に示すような組成を有する水酸化ニッケルab〜ayを合成した。
また、反応槽に定量供給する硫酸マンガン(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液の比率を変化させたこと以外、上記と同様にして、表6に示すような組成を有する水酸化ニッケルab〜ayを合成した。
[2]水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
水酸化ニッケルaaの200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルAAとした。
また、水酸化ニッケルaaの代わりに水酸化ニッケルab〜ayを用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルAB〜AYを製造した。
水酸化ニッケルaaの200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルAAとした。
また、水酸化ニッケルaaの代わりに水酸化ニッケルab〜ayを用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルAB〜AYを製造した。
[3]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
得られた25種類のオキシ水酸化ニッケルC1〜C6の粉末X線回折によるIγ/(Iγ+Iβ)値と、化学分析によるニッケルの平均価数を表6にまとめる。
表6より、マンガンの溶解量が0.5mol%(Mn0.005)と極端に少ないオキシ水酸化ニッケルAA〜AEでは、γ型の結晶構造の生成比率とニッケルの平均価数が、他に比べて低いことがわかる。
得られた25種類のオキシ水酸化ニッケルC1〜C6の粉末X線回折によるIγ/(Iγ+Iβ)値と、化学分析によるニッケルの平均価数を表6にまとめる。
表6より、マンガンの溶解量が0.5mol%(Mn0.005)と極端に少ないオキシ水酸化ニッケルAA〜AEでは、γ型の結晶構造の生成比率とニッケルの平均価数が、他に比べて低いことがわかる。
[4]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルAA〜AYを用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池AA〜AYを作製した。
ニッケルマンガン電池AAの場合、オキシ水酸化ニッケルAA、二酸化マンガン、および黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、さらにこの配合物に、オキシ水酸化ニッケルAAの5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルAAと二酸化マンガンとの合計100重量部あたり、電解液1重量部を添加した。その後、配合物をミキサーで均一に撹拌・混合して、一定粒度に整粒した。得られた粒状物を、短筒状のペレットに加圧成型して、正極合剤ペレットとした。この正極合剤ペレットを用いたこと以外、実施例1と同様にして、単3サイズのアルカリ電池AAを作製した。
オキシ水酸化ニッケルAA〜AYを用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池AA〜AYを作製した。
ニッケルマンガン電池AAの場合、オキシ水酸化ニッケルAA、二酸化マンガン、および黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、さらにこの配合物に、オキシ水酸化ニッケルAAの5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルAAと二酸化マンガンとの合計100重量部あたり、電解液1重量部を添加した。その後、配合物をミキサーで均一に撹拌・混合して、一定粒度に整粒した。得られた粒状物を、短筒状のペレットに加圧成型して、正極合剤ペレットとした。この正極合剤ペレットを用いたこと以外、実施例1と同様にして、単3サイズのアルカリ電池AAを作製した。
また、オキシ水酸化ニッケルAAの代わりにオキシ水酸化ニッケルAB〜AYを用い、上記と同様にして、単3サイズのニッケルマンガン電池AB〜AYを作製した。この際、正極ケースへの正極合剤の充填量がすべての電池で同じになるように留意した。
[5]アルカリ電池の評価
こうして作製した25種類のニッケルマンガン電池AB〜AYならびに実施例1で作製した電池A(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
得られた結果を表7にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方において、ニッケルマンガン電池AA〜AYの放電容量は、ニッケルマンガン電池Aの放電容量を100とした場合の相対値で示した。
こうして作製した25種類のニッケルマンガン電池AB〜AYならびに実施例1で作製した電池A(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
得られた結果を表7にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方において、ニッケルマンガン電池AA〜AYの放電容量は、ニッケルマンガン電池Aの放電容量を100とした場合の相対値で示した。
表7より以下のことが言える。
まず、マンガンおよびコバルトを溶解させたオキシ水酸化ニッケルを用いたアルカリ電池AA〜AYは、マンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルトの存在によって、電子伝導性が高められている。従って、電池AA〜AYは、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルを用いた電池A1より、高い特性を与えている。
まず、マンガンおよびコバルトを溶解させたオキシ水酸化ニッケルを用いたアルカリ電池AA〜AYは、マンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルトの存在によって、電子伝導性が高められている。従って、電池AA〜AYは、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルを用いた電池A1より、高い特性を与えている。
特に、オキシ水酸化ニッケルへのマンガンおよびコバルトの溶解量を、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子内に含まれる金属元素の総量の1〜7mol%とした場合、すなわちオキシ水酸化ニッケルAG〜AI、AL〜ANおよびAQ〜ASを用いた電池では、50mA(低負荷)放電および1W(強負荷)放電の両方において、高容量化が顕著となり、表7において110以上の特性を与えている。
表6の結果から明らかなように、オキシ水酸化ニッケルへのマンガンの溶解量が1mol%未満の電池AA〜AEでは、酸化度の高いオキシ水酸化ニッケルが得られないため、容量の増加が比較的小さい。また、オキシ水酸化ニッケルへのマンガンの溶解量が7mol%を超える電池AU〜AYでは、オキシ水酸化ニッケル中のニッケル含有量が相対的に少なくなることに加え、強負荷放電ではマンガンを含む固溶体に特徴的な電子伝導性の低下が影響し始め、容量が低下する傾向がある。
また、オキシ水酸化ニッケルへのコバルトの溶解量が1mol%未満の電池AA、AF、AK、APおよびAUでは、コバルトの添加による電子伝導性とプロトン拡散性を改善する効果が比較的小さくなっている。一方、オキシ水酸化ニッケルへのコバルトの溶解量が7mol%を超える電池AE、AJ、AO、ATおよびAYでは、オキシ水酸化ニッケル中のニッケル含有量が相対的に少なくなるため、容量の増加が比較的小さい。
このように、容量向上の観点から、本発明においては、オキシ水酸化ニッケルないしはその原料となる水酸化ニッケルからなる粒子内に溶解させるマンガンおよびコバルトの量を、いずれも粒子内に含まれる金属元素の総量の1〜7mol%とすることが特に好ましい。
《実施例4》
オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の表面に付着するコバルト酸化物の量を最適化するために、以下の実験と評価を行った。
[1]オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の製造
実施例1で用いた水酸化ニッケルb1〔組成:Ni0.95Mn0.05(OH)2〕を、反応槽内の硫酸コバルト水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、35℃で槽内のpHが10を維持するように制御しながら攪拌を続けて、固溶体粒子の表面に水酸化コバルトを析出させた。
オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の表面に付着するコバルト酸化物の量を最適化するために、以下の実験と評価を行った。
[1]オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の製造
実施例1で用いた水酸化ニッケルb1〔組成:Ni0.95Mn0.05(OH)2〕を、反応槽内の硫酸コバルト水溶液中に投入し、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加え、35℃で槽内のpHが10を維持するように制御しながら攪拌を続けて、固溶体粒子の表面に水酸化コバルトを析出させた。
この際、硫酸コバルト水溶液の濃度を適宜調整し、水酸化ニッケルbの表面に付着する水酸化コバルトの量を、水酸化ニッケルb1の100重量部あたり、0.05〜9重量部(水酸化ニッケルbに対して0.05〜9重量%)の範囲で変化させた。こうして、表8に示すような7種類のCo(OH)2で被覆された水酸化ニッケルe1〜k1を製造した。水酸化ニッケルe1〜k1は、水洗した後、真空乾燥を行った。
[2]水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
水酸化ニッケルe1の200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、Co(OH)2を酸化するとともに、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルE1とした。
また、水酸化ニッケルe1の代わりに水酸化ニッケルf1〜k1を用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルF1〜K1を製造した。
水酸化ニッケルe1の200gを5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、Co(OH)2を酸化するとともに、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、オキシ水酸化ニッケルE1とした。
また、水酸化ニッケルe1の代わりに水酸化ニッケルf1〜k1を用いて、上記と同様の工程を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルF1〜K1を製造した。
[3]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルE1〜K1を用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池E1〜K1を作製した。
ニッケルマンガン電池E1の場合、オキシ水酸化ニッケルE1、二酸化マンガン、および黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、さらにこの配合物に、オキシ水酸化ニッケルE1の5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルE1と二酸化マンガンとの合計100重量部あたり、アルカリ電解液1重量部を添加した。その後、配合物をミキサーで均一に撹拌・混合して、一定粒度に整粒した。得られた粒状物を、短筒状のペレットに成形して、正極合剤ペレットとした。この正極合剤ペレットを用いたこと以外、実施例1と同様にして、単3サイズのアルカリ電池E1を作製した。
オキシ水酸化ニッケルE1〜K1を用いて、それぞれ一次電池としてのニッケルマンガン電池E1〜K1を作製した。
ニッケルマンガン電池E1の場合、オキシ水酸化ニッケルE1、二酸化マンガン、および黒鉛を、重量比50:50:5の割合で配合し、さらにこの配合物に、オキシ水酸化ニッケルE1の5重量%に相当する量の酸化亜鉛を添加した。また、オキシ水酸化ニッケルE1と二酸化マンガンとの合計100重量部あたり、アルカリ電解液1重量部を添加した。その後、配合物をミキサーで均一に撹拌・混合して、一定粒度に整粒した。得られた粒状物を、短筒状のペレットに成形して、正極合剤ペレットとした。この正極合剤ペレットを用いたこと以外、実施例1と同様にして、単3サイズのアルカリ電池E1を作製した。
また、オキシ水酸化ニッケルE1の代わりにオキシ水酸化ニッケルF1〜K1を用い、上記と同様にして、単3サイズのニッケルマンガン電池F1〜K1を作製した。この際、正極ケースへの正極合剤の充填量がすべての電池で同じになるように留意した。
[4]アルカリ電池の評価
こうして作製した7種類のニッケルマンガン電池E1〜K1ならびに実施例1で作製した電池A1(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
さらに、ここでは1Wで放電が終わった各電池を60℃で7日間保存した後、電池内部でのガス発生量を測定した。
こうして作製した7種類のニッケルマンガン電池E1〜K1ならびに実施例1で作製した電池A1(β−オキシ水酸化ニッケルを使用)を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。
また、初度の電池を、それぞれ20℃で1Wの定電力で連続放電させ、電池電圧が0.9Vに至るまでの放電容量についても測定した。
さらに、ここでは1Wで放電が終わった各電池を60℃で7日間保存した後、電池内部でのガス発生量を測定した。
得られた結果を表9にまとめて示す。なお、50mA放電および1W放電の両方におけるニッケルマンガン電池E1〜K1の放電容量ならびに放電後の電池E1〜K1の内部で発生したガス発生量は、ニッケルマンガン電池A1の放電容量およびガス発生量を100とした場合の相対値で示した。
表9より以下のことが言える。
コバルト酸化物を表面に付着させたオキシ水酸化ニッケルからなる粒子を用いたアルカリ電池E1〜K1においては、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子内に溶解させたマンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルト酸化物によって活物質間の電気的な接続が改善されている。従って、アルカリ電池E1〜K1は、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルからなる粒子を用いた電池A1より高い特性を与えている。
コバルト酸化物を表面に付着させたオキシ水酸化ニッケルからなる粒子を用いたアルカリ電池E1〜K1においては、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子内に溶解させたマンガンの存在によってニッケルの平均価数が高められており、また、コバルト酸化物によって活物質間の電気的な接続が改善されている。従って、アルカリ電池E1〜K1は、いずれもβ−オキシ水酸化ニッケルからなる粒子を用いた電池A1より高い特性を与えている。
特に、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子に対するコバルト酸化物の重量%を0.1〜7重量%にした電池F1〜J1では、50mA(低負荷)放電および1W(強負荷)放電の両方において、高い放電容量が得られており、表9では110以上の特性が得られている。また、保存時のガス発生量も、電池Aと同程度に抑制されている。
コバルト酸化物の重量%が0.1重量%未満のオキシ水酸化ニッケルE1を用いた電池E1では、コバルト酸化物量が少なすぎて、強負荷放電特性に対する大幅な改善効果を得るには至っていない。
コバルト酸化物の重量%が0.1重量%未満のオキシ水酸化ニッケルE1を用いた電池E1では、コバルト酸化物量が少なすぎて、強負荷放電特性に対する大幅な改善効果を得るには至っていない。
また、コバルト酸化物の重量%が7重量%を超えるオキシ水酸化ニッケルK1を用いた電池Kは、比較的よい放電特性を維持できるが、放電後の電池を60℃で7日間保存した際のガス発生量が増加している。これは、電池K1では、正極中のコバルト酸化物の量が過剰であるため、放電後の電池を放置(保存)した際に正極中のコバルト酸化物が2価に還元されて、電解液中に溶出しているためと考えられる。そして、コバルトイオンが、負極の亜鉛粒子上で金属コバルトとして析出し、負極における水素発生反応が加速されていると推察される。
以上より、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の表面をコバルト酸化物で被覆する場合には、放電特性と保存特性(信頼性)のバランスを好適に確保する観点から、コバルト酸化物の量をオキシ水酸化ニッケルからなる粒子の0.1〜7重量%とするが好ましい。
ここで、本実施例においては、オキシ水酸化ニッケルからなる粒子の原料として、5mol%のMnを含む水酸化ニッケルの固溶体〔Ni0.95Mn0.05(OH)2〕を用いた。しかしながら、実施例3の結果等も踏まえると、固溶体に含まれるMnの溶解量が1〜7mol%の範囲であれば、同様の電池特性が得られると推察される。
《実施例5》
[1]水酸化ニッケルの製造
所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を用意し、これらを槽内pHが一定となるように、攪拌翼を備えた反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、球状のβ−水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸根を除去した後、水洗および乾燥させて、粉末状の水酸化ニッケル粉末とした。得られた水酸化ニッケル粉末のレーザー回折式粒度分布計による体積基準の平均粒子径は10μm、BET比表面積は9.0m2/g、タップ密度は2.20g/cm3であった。
[1]水酸化ニッケルの製造
所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を用意し、これらを槽内pHが一定となるように、攪拌翼を備えた反応槽内にポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、球状のβ−水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸根を除去した後、水洗および乾燥させて、粉末状の水酸化ニッケル粉末とした。得られた水酸化ニッケル粉末のレーザー回折式粒度分布計による体積基準の平均粒子径は10μm、BET比表面積は9.0m2/g、タップ密度は2.20g/cm3であった。
[2]水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
次に、水酸化ニッケル粉末に対する酸化処理として、酸化剤による化学酸化処理と、電気化学反応を用いた過剰酸化処理(過充電処理)の2つを検討した。
(1)酸化剤による化学酸化処理
〈1〉オキシ水酸化ニッケルa2
水酸化ニッケル粉末200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行い、オキシ水酸化ニッケルa2とした。
次に、水酸化ニッケル粉末に対する酸化処理として、酸化剤による化学酸化処理と、電気化学反応を用いた過剰酸化処理(過充電処理)の2つを検討した。
(1)酸化剤による化学酸化処理
〈1〉オキシ水酸化ニッケルa2
水酸化ニッケル粉末200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行い、オキシ水酸化ニッケルa2とした。
〈2〉オキシ水酸化ニッケルb2
0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、7mol/Lという高濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いたこと以外は、上記〈1〉と同様の化学酸化処理を行い、オキシ水酸化ニッケルb2とした。
0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、7mol/Lという高濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いたこと以外は、上記〈1〉と同様の化学酸化処理を行い、オキシ水酸化ニッケルb2とした。
(2)電気化学反応を用いた過剰酸化処理
〈1〉オキシ水酸化ニッケルc2
オキシ水酸化ニッケルa2に適量の純水を加えてペーストとし、これを空隙率95%の発泡ニッケル基板に所定量だけ充填した。続いて、ペーストが充填されたニッケル基板を80℃の乾燥機内で乾燥させた後、ロールプレスを用いて圧延し、ニッケル基板に集電のためのニッケルリードをとりつけてニッケル正極とした。このニッケル正極と十分に容量の大きい酸化カドミウム負極と、親水化処理を施したポリプロピレン不織布セパレータと、7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液とを用いて、開放型のセルを作製した。
〈1〉オキシ水酸化ニッケルc2
オキシ水酸化ニッケルa2に適量の純水を加えてペーストとし、これを空隙率95%の発泡ニッケル基板に所定量だけ充填した。続いて、ペーストが充填されたニッケル基板を80℃の乾燥機内で乾燥させた後、ロールプレスを用いて圧延し、ニッケル基板に集電のためのニッケルリードをとりつけてニッケル正極とした。このニッケル正極と十分に容量の大きい酸化カドミウム負極と、親水化処理を施したポリプロピレン不織布セパレータと、7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液とを用いて、開放型のセルを作製した。
開放型のセルにおいて、正極の過充電(過剰酸化)処理を行った。この際、正極に充填したオキシ水酸化ニッケルa2が1電子反応をする場合の電気容量をセル容量(1It)と捉え、充電レート0.1Itで3時間の過充電を行った。過充電後に、ニッケル正極を取り出して超音波洗浄でオキシ水酸化ニッケルを脱落させ、これを水洗した。その後、60℃の真空乾燥(24時間)を行って、過充電処理がなされたオキシ水酸化ニッケルc2を得た。
〈2〉オキシ水酸化ニッケルd2、e2、f2
充電レート0.1Itで6時間、9時間および12時間の充電を行ったこと以外は、上記〈1〉と同様の過充電処理を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルd2、e2およびf2を得た。
充電レート0.1Itで6時間、9時間および12時間の充電を行ったこと以外は、上記〈1〉と同様の過充電処理を行い、それぞれオキシ水酸化ニッケルd2、e2およびf2を得た。
[3]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2について、まず粉末X線回折を行った。その結果、何れの回折パターンでもオキシ水酸化ニッケルの存在が確認できた。オキシ水酸化ニッケルf2は、ほぼγ−オキシ水酸化ニッケルの単相であり、そのピークパターンはJCPDS無機物質ファイルのファイル番号:6-75に一致した。一方、オキシ水酸化ニッケルb2〜e2は、いずれもγ型結晶とβ型結晶との共晶であった。代表例として、図2にオキシ水酸化ニッケルe2およびf2の回折パターンを示す。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2について得られたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数、タップ密度、水分量、平均粒子径、BET比表面積を表10に示す。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2について、まず粉末X線回折を行った。その結果、何れの回折パターンでもオキシ水酸化ニッケルの存在が確認できた。オキシ水酸化ニッケルf2は、ほぼγ−オキシ水酸化ニッケルの単相であり、そのピークパターンはJCPDS無機物質ファイルのファイル番号:6-75に一致した。一方、オキシ水酸化ニッケルb2〜e2は、いずれもγ型結晶とβ型結晶との共晶であった。代表例として、図2にオキシ水酸化ニッケルe2およびf2の回折パターンを示す。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2について得られたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数、タップ密度、水分量、平均粒子径、BET比表面積を表10に示す。
化学酸化で得たオキシ水酸化ニッケルa2、b2は、Iγ/(Iγ+Iβ)値が小さく、ニッケルの平均価数もほぼ3価近傍であるが、これに過充電処理を施したオキシ水酸化ニッケルc2〜f2では、充電電気量に応じて効果的にIγ/(Iγ+Iβ)値とニッケルの平均価数に増大が認められる。また、γ−NiOOHの生成に伴って水酸化ニッケル粒子の膨張と粒子割れが進行するため、ニッケル含有量とタップ密度は減少し、水分量とBET比表面積は増加する傾向にある。
[4]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2を用い、実施例1と同様にして、それぞれ図1に示すニッケルマンガン電池A2〜F2を作製した。なお、オキシ水酸化ニッケルc2〜f2を用いた電池では、正極合剤の電池への充填性に若干の低下が見られたが、基本的にはオキシ水酸化ニッケルa2、b2を用いた電池と同様の電池作製が可能であった。充填性の低下はγ−NiOOHの生成に伴う粉末体積の膨張に起因する。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2を用い、実施例1と同様にして、それぞれ図1に示すニッケルマンガン電池A2〜F2を作製した。なお、オキシ水酸化ニッケルc2〜f2を用いた電池では、正極合剤の電池への充填性に若干の低下が見られたが、基本的にはオキシ水酸化ニッケルa2、b2を用いた電池と同様の電池作製が可能であった。充填性の低下はγ−NiOOHの生成に伴う粉末体積の膨張に起因する。
[5]アルカリ電池の評価
電池A2〜F2を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表11にまとめて示す。なお、表11において、放電容量の値は、電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
電池A2〜F2を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表11にまとめて示す。なお、表11において、放電容量の値は、電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
過充電処理でγ−NiOOHの含有比率を高めたオキシ水酸化ニッケルを用いた電池C2〜F2は、化学酸化で得たオキシ水酸化ニッケルを用いた電池A2、B2よりも高い容量を与えている。特に、粉末X線回折におけるIγ/(Iγ+Iβ)値が0.5以上、ニッケルの平均価数が3.3以上にまで高められたオキシ水酸化ニッケルd2〜f2を用いた電池では、より顕著な容量向上効果が得られている。
オキシ水酸化ニッケルb2、c2のように、比較的ニッケル価数の低い段階で生成したγ−NiOOHは、放電容量への寄与が少ないと考えられる。一方、オキシ水酸化ニッケルd2〜f2のように、ニッケル価数が3.3程度以上の段階で生成するγ−NiOOHは、その価数に見合うだけの大きな放電容量を与えると考えられる。オキシ水酸化ニッケルd2〜f2の比表面積は比較的大きく、電気化学反応の有効面積が大きい点も、容量向上の一因と考えられる。ただし、化学酸化で得たβ−NiOOHを電気化学的に過剰酸化(過充電処理)してγ型結晶を主体としたオキシ水酸化ニッケルの作製を行う場合、電池の生産性は比較的低くなる。
《実施例6》
γ型結晶の生成を容易とするため、原料水酸化ニッケルに添加元素としてMnを溶解させた水酸化ニッケルを種々作製し、化学酸化だけでγ型結晶を主体としたオキシ水酸化ニッケルを作製することを試みた。なお、以下の合成1〜合成5においては、原料水酸化ニッケルの組成が、すべてNi0.9Mn0.1(OH)2となるように調整した。
γ型結晶の生成を容易とするため、原料水酸化ニッケルに添加元素としてMnを溶解させた水酸化ニッケルを種々作製し、化学酸化だけでγ型結晶を主体としたオキシ水酸化ニッケルを作製することを試みた。なお、以下の合成1〜合成5においては、原料水酸化ニッケルの組成が、すべてNi0.9Mn0.1(OH)2となるように調整した。
[1]合成1
(1)水酸化ニッケルの製造
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリング開始した。所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を、反応槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、Mnを溶解した固溶体のβ−水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。
(1)水酸化ニッケルの製造
攪拌翼を備えた反応槽に純水と少量のヒドラジン(還元剤)を加え、窒素ガスによるバブリング開始した。所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を、反応槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、Mnを溶解した固溶体のβ−水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。
続いて、得られた粒子を、上記とは別の水酸化ナトリウム水溶液中で加熱して硫酸根を除去した後、水洗と真空乾燥を行った。さらに、乾燥後の粒子に80℃で72時間の空気酸化を施して、マンガンだけを酸化させ、原料水酸化ニッケル1とした。
原料水酸化ニッケル1は、粉末X線回折においてはβ−水酸化ニッケルの単相であり、マンガンの平均価数は3.95価、平均粒子径は14μm、タップ密度は2.12g/cm3、BET比表面積は9.5m2/gであった。
原料水酸化ニッケル1は、粉末X線回折においてはβ−水酸化ニッケルの単相であり、マンガンの平均価数は3.95価、平均粒子径は14μm、タップ密度は2.12g/cm3、BET比表面積は9.5m2/gであった。
(2)水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
続いて、原料水酸化ニッケル1の200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行い、オキシ水酸化ニッケルg2とした。
続いて、原料水酸化ニッケル1の200gを0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行い、オキシ水酸化ニッケルg2とした。
また、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.5mol/Lから、1mol/L、2mol/L、3mol/L、5mol/Lまたは7mol/Lに変更したこと以外は、上記と同様にして、オキシ水酸化ニッケルh2〜l2を作製した。
[2]合成2
(1)水酸化ニッケルの製造
80℃で72時間の空気酸化を施さなかった点以外は、上記合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル2を得た。原料水酸化ニッケル2は、粉末X線回折においてはβ−水酸化ニッケルの単相であり、マンガンの平均価数は2.04価と見積もられた。
(1)水酸化ニッケルの製造
80℃で72時間の空気酸化を施さなかった点以外は、上記合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル2を得た。原料水酸化ニッケル2は、粉末X線回折においてはβ−水酸化ニッケルの単相であり、マンガンの平均価数は2.04価と見積もられた。
(2)水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
次に、原料水酸化ニッケル2の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルm2とした。
次に、原料水酸化ニッケル2の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルm2とした。
[3]合成3
(1)水酸化ニッケルの製造
80℃で72時間の空気酸化を施す代わりに、20℃で1ヶ月間空気中で放置したこと以外、上記の合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル3を得た。原料水酸化ニッケル3は、粉末X線回折においてはβ型の水酸化ニッケル以外に、オキシ水酸化マンガン、二酸化マンガンのピークも一部観測され、長期放置によって不安定なマンガン種が水酸化ニッケルの結晶外に遊離したものと推察された。原料水酸化ニッケル3中のマンガンの平均価数は3.47価であった。
(1)水酸化ニッケルの製造
80℃で72時間の空気酸化を施す代わりに、20℃で1ヶ月間空気中で放置したこと以外、上記の合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル3を得た。原料水酸化ニッケル3は、粉末X線回折においてはβ型の水酸化ニッケル以外に、オキシ水酸化マンガン、二酸化マンガンのピークも一部観測され、長期放置によって不安定なマンガン種が水酸化ニッケルの結晶外に遊離したものと推察された。原料水酸化ニッケル3中のマンガンの平均価数は3.47価であった。
(2)水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
次に、原料水酸化ニッケル3の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際、遊離したマンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が顕著に認められた。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルn2とした。
次に、原料水酸化ニッケル3の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際、遊離したマンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が顕著に認められた。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルn2とした。
[4]合成4
(1)水酸化ニッケルの製造
攪拌翼を備えた反応槽内への窒素ガスによるバブリングとヒドラジン添加を行わずに、所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を反応槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給したこと以外、上記の合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル4を得た。原料水酸化ニッケル4は、粉末X線回折においてはβ型の水酸化ニッケル単相であり、マンガンの平均価数は2.45価、平均粒子径は14μm、タップ密度は2.04g/cm3、BET比表面積は10.9m2/gであった。
(1)水酸化ニッケルの製造
攪拌翼を備えた反応槽内への窒素ガスによるバブリングとヒドラジン添加を行わずに、所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水を反応槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給したこと以外、上記の合成1と同様にして、原料水酸化ニッケル4を得た。原料水酸化ニッケル4は、粉末X線回折においてはβ型の水酸化ニッケル単相であり、マンガンの平均価数は2.45価、平均粒子径は14μm、タップ密度は2.04g/cm3、BET比表面積は10.9m2/gであった。
(2)水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
次に、原料水酸化ニッケル4の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際にも、マンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が顕著に認められた。このことから、原料水酸化ニッケル4においては、マンガンイオンの多数が、水酸化ニッケルの結晶中に不安定な状態で侵入していると推察された。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルo2とした。
次に、原料水酸化ニッケル4の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際にも、マンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が顕著に認められた。このことから、原料水酸化ニッケル4においては、マンガンイオンの多数が、水酸化ニッケルの結晶中に不安定な状態で侵入していると推察された。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルo2とした。
[5]合成5
(1)水酸化ニッケルの製造
硫酸マンガン(II)水溶液に過酸化水素水を添加した後に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH調整し、マンガンイオンが3価の状態で存在する溶液を調製した。この溶液と、硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水とを、攪拌翼を供えた反応槽に槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、3価のMnを10mol%含有するα型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。得られた粒子は水洗および真空乾燥を行って原料水酸化ニッケル5とした。原料水酸化ニッケル5は、粉末X線回折においてはα−水酸化ニッケル単相であり、マンガンの平均価数は3.02価、平均粒径は13μm、タップ密度は1.28g/cm3、BET比表面積は24.5m2/gであった。
(1)水酸化ニッケルの製造
硫酸マンガン(II)水溶液に過酸化水素水を添加した後に、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH調整し、マンガンイオンが3価の状態で存在する溶液を調製した。この溶液と、硫酸ニッケル(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液およびアンモニア水とを、攪拌翼を供えた反応槽に槽内pHが一定となるようにポンプで定量供給し、十分に攪拌を続けることで、3価のMnを10mol%含有するα型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを析出させ、成長させた。得られた粒子は水洗および真空乾燥を行って原料水酸化ニッケル5とした。原料水酸化ニッケル5は、粉末X線回折においてはα−水酸化ニッケル単相であり、マンガンの平均価数は3.02価、平均粒径は13μm、タップ密度は1.28g/cm3、BET比表面積は24.5m2/gであった。
(2)水酸化ニッケルのオキシ水酸化ニッケルへの酸化
次に、原料水酸化ニッケル5の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際も、マンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が認められた。このことから、原料水酸化ニッケル5においては、マンガンイオンの多数が、水酸化ニッケルの結晶中に不安定な状態で侵入していると推察された。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルp2とした。
次に、原料水酸化ニッケル5の200gを7mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1L中に投入し、酸化剤の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:5重量%)を十分量加えて攪拌し、オキシ水酸化ニッケルに変換した。この際も、マンガン種の酸化もしくは溶解に由来する反応液の赤変が認められた。このことから、原料水酸化ニッケル5においては、マンガンイオンの多数が、水酸化ニッケルの結晶中に不安定な状態で侵入していると推察された。得られた粒子は十分に水洗後、60℃の真空乾燥(24時間)を行ってオキシ水酸化ニッケルp2とした。
[6]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
オキシ水酸化ニッケルg2〜p2について求めたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数、タップ密度、水分量、平均粒子径、BET比表面積を表10に示す。
オキシ水酸化ニッケルg2〜p2について求めたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数、タップ密度、水分量、平均粒子径、BET比表面積を表10に示す。
原料水酸化ニッケル1の化学酸化に際して共存させる水酸化ナトリウム水溶液の濃度を高める(g2〜l2)に伴って、Iγ/(Iγ+Iβ)値が大きくなり、ニッケルの酸化が進行することがわかる。これは、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を高めることによって、オキシ水酸化ニッケルのNiO2層間にアルカリ金属イオンが効果的に挿入し、4価のニッケルイオンの電気的中性を保ち、ニッケルの高次化反応が促進したためと理解できる。
また、原料水酸化ニッケル2〜5の化学酸化処理で得られたオキシ水酸化ニッケルm2〜p2は、原料水酸化ニッケル1から得られたオキシ水酸化ニッケルl2と、見かけ上は同じような粉末X線回折パターンを与え、ニッケルの平均価数も同様となることが確認できる。
また、原料水酸化ニッケル2〜5の化学酸化処理で得られたオキシ水酸化ニッケルm2〜p2は、原料水酸化ニッケル1から得られたオキシ水酸化ニッケルl2と、見かけ上は同じような粉末X線回折パターンを与え、ニッケルの平均価数も同様となることが確認できる。
[7]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2の代わりに、オキシ水酸化ニッケルg2〜p2を用いたこと以外、それぞれ実施例5と同様にして、図1に示すようなニッケルマンガン電池を作製した。オキシ水酸化ニッケルg2〜p2を用いた電池を、それぞれ電池G2〜P2とした。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2の代わりに、オキシ水酸化ニッケルg2〜p2を用いたこと以外、それぞれ実施例5と同様にして、図1に示すようなニッケルマンガン電池を作製した。オキシ水酸化ニッケルg2〜p2を用いた電池を、それぞれ電池G2〜P2とした。
[8]アルカリ電池の評価
電池G2〜P2を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表13にまとめて示す。なお、表13において、放電容量の値は、実施例5の電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
電池G2〜P2を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表13にまとめて示す。なお、表13において、放電容量の値は、実施例5の電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
原料水酸化ニッケル1は、反応晶析法で得られたMnを溶解した固溶体のβ−水酸化ニッケルに空気酸化を施し、Mnだけを酸化させたものである。また、オキシ水酸化ニッケルj2〜l2は、3mol/l以上の水酸化ナトリウム水溶液中で、原料水酸化ニッケル1を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で化学酸化したものである。オキシ水酸化ニッケルj2〜l2を用いた電池J2〜L2は、他のプロセスで得たオキシ水酸化ニッケルを用いた電池よりも、際立って高い容量を与えている。
電池J2〜L2の容量が、電池G2〜I2の容量よりも顕著に高くなる理由は、実施例5の場合と同様に説明することができる。すなわち、オキシ水酸化ニッケルg2〜i2のように、比較的ニッケル価数の低い段階で生成したγ−NiOOHは、あまり放電容量に寄与できないと考えられる。一方、オキシ水酸化ニッケルj2〜l2のように、ニッケル価数が3.3程度以上の段階で生成するγ−NiOOHは活性が高く、その価数に見合うだけの大きな放電容量を与えると推察される。
電池M2およびN2も、電池G2〜I2に比べて高い放電容量を示している。電池M2およびN2のオキシ水酸化ニッケルは、原料水酸化ニッケル1から得られたオキシ水酸化ニッケルlとほぼ同等の物性を有している。よって、電池M2およびN2は、電池J2〜K2に次いで良好な放電特性を示すものと考えられる。
電池M2に用いたオキシ水酸化ニッケルm2の原料である水酸化ニッケル2は、Mnを酸化する処理を経ていない。詳細なメカニズムまでは判明していないが、Mnが高酸化状態に酸化されない状態で、水酸化ニッケルを酸化剤で処理すると、マンガン種が結晶内で移動するなどして、粒子内で局所的なマンガン酸化物の遊離等が起こるものと考えられる。ただし、このようなマンガン酸化物の遊離は、通常の粉末X線回折では判明しないレベルであると考えられる。よって、オキシ水酸化ニッケルm2においては、電池の高容量化に寄与する高い放電効率を有するγ−オキシ水酸化ニッケルの生成が少ないものと推測される。同様に、電池N2も遊離したマンガンによる影響を受けたものと推察される。
電池O2、P2で用いたオキシ水酸化ニッケルo2、p2も、粉末X線回折やニッケルの平均価数はオキシ水酸化ニッケルl2(ないしはk2)と類似しているが、容量は低めである。オキシ水酸化ニッケルo2、p2の作製に際しては、マンガン種の遊離現象やマンガン溶出等が確認されたため、オキシ水酸化ニッケルの放電反応がマンガン種によって阻害されているものと推定される。また、特にオキシ水酸化ニッケルo2、p2は、水分量が3重量%を超え、BET比表面積が30m2/gを超えている。よって、正極合剤中での電解液分布等は、電池O2およびP2と、他の電池とでは、大きく異なると考えられ、その点が容量に影響を与えていると考えられる。
《実施例7》
[1]オキシ水酸化ニッケルの製造
硫酸ニッケル(II)水溶液と硫酸マンガン(II)水溶液の割合を変化させ、原料水酸化ニッケルにおけるマンガンの含有量を変化させたこと以外、実施例6のオキシ水酸化ニッケルL2と同様にして、オキシ水酸化ニッケルr1〜r6を調製した。
[1]オキシ水酸化ニッケルの製造
硫酸ニッケル(II)水溶液と硫酸マンガン(II)水溶液の割合を変化させ、原料水酸化ニッケルにおけるマンガンの含有量を変化させたこと以外、実施例6のオキシ水酸化ニッケルL2と同様にして、オキシ水酸化ニッケルr1〜r6を調製した。
また、硫酸ニッケル(II)水溶液と硫酸マンガン(II)水溶液の割合を変化させ、原料水酸化ニッケルにおけるマンガンの含有量を変化させるとともに、化学酸化において次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を減量したこと以外、実施例6のオキシ水酸化ニッケルL2と同様にして、オキシ水酸化ニッケルs1〜s6を調製した。
[2]オキシ水酸化ニッケルの物性解析
オキシ水酸化ニッケルr1〜r6、s1〜s6について求めたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数を表14に示す。
オキシ水酸化ニッケルr1〜r6、s1〜s6について求めたIγ/(Iγ+Iβ)値、ニッケル含有量、ニッケルの平均価数を表14に示す。
[3]アルカリ電池の作製
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2の代わりに、オキシ水酸化ニッケルr1〜r6、s1〜s6を用いたこと以外、それぞれ実施例5と同様にして、図1に示すようなニッケルマンガン電池を作製した。オキシ水酸化ニッケルr1〜r6を用いた電池を、それぞれ電池R1〜R6とした。また、オキシ水酸化ニッケルs1〜s6を用いた電池を、それぞれ電池S1〜S6とした。
オキシ水酸化ニッケルa2〜f2の代わりに、オキシ水酸化ニッケルr1〜r6、s1〜s6を用いたこと以外、それぞれ実施例5と同様にして、図1に示すようなニッケルマンガン電池を作製した。オキシ水酸化ニッケルr1〜r6を用いた電池を、それぞれ電池R1〜R6とした。また、オキシ水酸化ニッケルs1〜s6を用いた電池を、それぞれ電池S1〜S6とした。
[4]アルカリ電池の評価
電池R1〜R6、S1〜S6を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表14にまとめて示す。なお、表13において、放電容量の値は、実施例5の電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
電池R1〜R6、S1〜S6を、それぞれ20℃で50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。得られた結果を表14にまとめて示す。なお、表13において、放電容量の値は、実施例5の電池A2の放電容量を100とした場合の相対値で示した。
表14より、ニッケル含有量が45重量%以上のオキシ水酸化ニッケルを用いれば、Iγ/(Iγ+Iβ)値が約0.5、ニッケルの平均価数が約3.3と、それほど大きくない場合であっても、オキシ水酸化ニッケルa2を用いた電池より高容量化できることがわかる。
なお、以上の実施例では、Mnを溶解した固溶体の水酸化ニッケル中のマンガンを酸化する際に80℃で72時間の空気酸化を施したが、大気雰囲気下50〜150℃で酸化時間を適宜調整してマンガン価数を3.5価以上、より好ましくは3.8価以上にまで高める場合も同様の結果を得ることができる。
また、以上の実施例では、次亜塩素酸ナトリウムでのニッケルの化学酸化に際して、水酸化ナトリウム水溶液中で処理を実施したが、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、これらの混合アルカリ水溶液を用いても同様の結果を得ることができる。
また、以上の実施例では、正極合剤に、オキシ水酸化ニッケルに対して5重量%の酸化亜鉛を添加したが、本発明はこれを必須とするものではない。
また、以上の実施例では、円筒形の正極ケース内に短筒状の正極合剤ペレット、セパレータおよびゲル状の亜鉛負極を配置した、いわゆるインサイドアウト型のニッケルマンガン電池を作製した。しかしながら、本発明は、ボタン型、角型を含む他の構造のアルカリ電池にも適応することが可能である。
また、以上の実施例では、円筒形の正極ケース内に短筒状の正極合剤ペレット、セパレータおよびゲル状の亜鉛負極を配置した、いわゆるインサイドアウト型のニッケルマンガン電池を作製した。しかしながら、本発明は、ボタン型、角型を含む他の構造のアルカリ電池にも適応することが可能である。
本発明は、様々なタイプのアルカリ電池に適用可能であるが、特にニッケルマンガン電池に有用である。また、本発明は、強負荷放電特性を損なうことなく、アルカリ電池の大幅な高容量化を実現できるから、特に負荷電力の大きな機器の電源となるアルカリ電池に有用である。
Claims (18)
- アルカリ電池であって、正極合剤、負極、前記正極合剤と前記負極との間に介在するセパレータ、およびアルカリ電解液からなり、
前記正極合剤は、オキシ水酸化ニッケルからなる第1活物質および二酸化マンガンからなる第2活物質を含み、
前記オキシ水酸化ニッケルは、γ型の結晶構造を有し、
前記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの含有量は、45重量%以上であり、
前記オキシ水酸化ニッケルのレーザー回折式粒度分布計を用いて測定される体積基準の平均粒子径が3〜20μmであるアルカリ電池。 - 前記オキシ水酸化ニッケルが、さらにβ型の結晶構造を含む請求項1記載のアルカリ電池。
- 前記オキシ水酸化ニッケルのタップ密度が、タッピングが回数500回の場合に1.5g/cm3以上であり、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれる水分量が3重量%以下であり、BET法を用いて測定される前記オキシ水酸化ニッケルの比表面積が、10〜30m2/gである請求項1記載のアルカリ電池。
- 前記オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折パターンが、γ型結晶の(003)面に帰属される面間隔6.8〜7.1オングストローム(Å)の回折ピークPγおよびβ型結晶の(001)面に帰属される面間隔4.5〜5オングストローム(Å)の回折ピークPβを有し、前記回折ピークPγの積分強度Iγおよび前記回折ピークPβの積分強度Iβが、0.5≦Iγ/(Iγ+Iβ)を満たし、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は、3.3以上である請求項1記載のアルカリ電池。
- 前記オキシ水酸化ニッケルの粉末X線回折パターンが、γ型結晶の(003)面に帰属される面間隔6.8〜7.1オングストローム(Å)の回折ピークPγおよびβ型結晶の(001)面に帰属される面間隔4.5〜5オングストローム(Å)の回折ピークPβを有し、前記回折ピークPγの積分強度Iγおよび前記回折ピークPβの積分強度Iβが、0.1≦Iγ/(Iγ+Iβ)<0.5を満たし、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は、3.05以上3.3未満である請求項1記載のアルカリ電池。
- 前記オキシ水酸化ニッケルが、添加元素を溶解した固溶体であり、前記添加元素がマンガンおよびコバルトよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のアルカリ電池。
- 前記オキシ水酸化ニッケルが、前記添加元素としてマンガンを溶解した固溶体であり、前記固溶体に溶解するマンガンの量が、前記固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%である請求項6記載のアルカリ電池。
- 前記オキシ水酸化ニッケルが、前記添加元素としてマンガンおよびコバルトの両方を溶解した固溶体であり、前記固溶体に溶解するマンガンおよびコバルトの量が、それぞれ前記固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%である請求項6記載のアルカリ電池。
- 前記オキシ水酸化ニッケルが、前記添加元素としてマンガンを溶解した固溶体であり、かつ前記固溶体は、その表面に付着したコバルト酸化物を有する請求項1記載のアルカリ電池。
- 前記固溶体に溶解するマンガンの量が、前記固溶体に含まれる全金属元素の総量の1〜7mol%であり、前記コバルト酸化物の量が、前記固溶体の0.1〜7重量%である請求項9記載のアルカリ電池。
- 前記コバルト酸化物に含まれるコバルトの平均価数が、3.0よりも大きい請求項9記載のアルカリ電池。
- 前記正極合剤に含まれる前記二酸化マンガンの含有量が、20〜90重量%である請求項1記載のアルカリ電池。
- 攪拌翼を供えた反応槽内に、硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、それぞれ独立した流路で供給する操作を、不活性ガスをバブリングするとともに反応槽内の温度およびpHを制御しながら行い、ニッケルサイトの一部が2価のマンガンで置換されたβ型の結晶構造を有する水酸化ニッケルを得る第1工程、
第1工程後の水酸化ニッケルを、水洗し、乾燥し、酸化雰囲気下で50〜150℃で加熱して、マンガンを平均価数3.5以上に酸化させる第2工程、
第2工程後の水酸化ニッケルを、アルカリ水溶液中に酸化剤とともに投入し、前記水酸化ニッケルを化学酸化する第3工程、からなるアルカリ電池用正極材料の製造方法。 - 前記第1工程で、さらに反応槽内にヒドラジンが加えられ、還元雰囲気を維持する請求項13記載のアルカリ電池用正極材料の製造方法。
- 前記第2工程で、前記マンガンの平均価数を3.8以上とする請求項13記載のアルカリ電池用正極材料の製造方法。
- 前記第3工程で用いる酸化剤が、次亜塩素酸塩である請求項13記載のアルカリ電池用正極材料の製造方法。
- 前記第3工程で用いるアルカリ水溶液が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムよりなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ塩を溶解した水溶液である請求項13記載のアルカリ電池用正極材料の製造方法。
- 前記アルカリ水溶液のアルカリ塩濃度が、3mol/L以上である請求項17記載のアルカリ電池用正極材料の製造方法。
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