JP2008269888A - ニッケル水素蓄電池 - Google Patents
ニッケル水素蓄電池 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2008269888A JP2008269888A JP2007109505A JP2007109505A JP2008269888A JP 2008269888 A JP2008269888 A JP 2008269888A JP 2007109505 A JP2007109505 A JP 2007109505A JP 2007109505 A JP2007109505 A JP 2007109505A JP 2008269888 A JP2008269888 A JP 2008269888A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- powder
- alloy
- nickel
- hydrogen storage
- battery
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E60/00—Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
- Y02E60/10—Energy storage using batteries
Landscapes
- Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)
Abstract
【課題】ニッケル水素蓄電池の高率放電性能と充放電サイクル性能との両方を高いレベルとすること。
【解決手段】水素吸蔵合金の粉末と、前記水素吸蔵合金の粉末と比べて、全体積に対するNiリッチ層の体積の割合が大きい遷移金属元素含有合金の粉末とを含むことを特徴とするニッケル水素蓄電池用負極。Niリッチ層の体積の割合が大きい遷移金属元素含有合金の粉末が導電助剤の役割を果たしかつ高い水素触媒能を備えることによって、この粉末自身の高率放電が可能となるだけでなく水素吸蔵合金粉末もまた高率放電が可能となり、その結果、上記課題が解決される。
【選択図】図1
【解決手段】水素吸蔵合金の粉末と、前記水素吸蔵合金の粉末と比べて、全体積に対するNiリッチ層の体積の割合が大きい遷移金属元素含有合金の粉末とを含むことを特徴とするニッケル水素蓄電池用負極。Niリッチ層の体積の割合が大きい遷移金属元素含有合金の粉末が導電助剤の役割を果たしかつ高い水素触媒能を備えることによって、この粉末自身の高率放電が可能となるだけでなく水素吸蔵合金粉末もまた高率放電が可能となり、その結果、上記課題が解決される。
【選択図】図1
Description
本発明は、ニッケル水素畜電池に関し、さらに詳しくは高率放電特性、サイクル特性、放置特性の向上に関するものである。
近年、電気自動車、電動工具を初めとする大電流放電が必要な機器が急速に増加する傾向にある。これらの機器の電源として密閉型ニッケル水素蓄電池は、ニッケルカドミウム蓄電池や鉛蓄電池等よりも高容量で高密度の上、クリーンな電源として最近特に注目されている。さらに、ニッケル水素蓄電池は、過充電時に正極で発生する酸素を水素吸蔵合金を含有する負極で吸収することが可能であるため、充電制御がリチウムイオン電池に比べて簡便である利点を有している。
しかしながら、ニッケル水素蓄電池は、水素吸蔵合金表面の電荷移動が遅いため、ニッケルカドミウム電池に比較して高率放電性能に劣るという欠点を有していた。とくに、水素を吸蔵脱離する希土類元素とニッケルと遷移金属元素を主成分として構成された水素吸蔵合金を電極に用いた場合、初期の放電性能が不十分であり、数十から数百回の充放電による活性化が必要となっていた。これらの問題に対して、水酸化ナトリウムを含む水溶液を用いて水素吸蔵合金を表面処理する方法がこれまでに提案されている。この、処理によれば、水素吸蔵合金の表面にニッケルまたは/およびコバルトを豊富に含んだ層が形成される。
たとえば、特許文献1には、LiOHおよび/またはNaOHを含むアルカリ水溶液に水素吸蔵合金粉末を浸漬する方法が提案されており、浸漬条件を変更して表面層の生成量を所定値以上に増大することによって、電池の高率放電性能が向上することが記載されている。しかし、特許文献1の技術では、表面層の生成量が多くなるにしたがって電池の充放電サイクル性能が低下するので、実用レベルの充放電サイクル性能を得ようとすると高率放電性能を十分に高めることができないという問題があった。
本発明者は、特許文献1の方法について調査したところ、この方法では、安定した高率放電性能と充放電サイクル性能とが得られないという現象を見出した。そこで、本発明者は、その原因を、表面処理ロット間のバラツキが大きいためと仮定して改善策を検討した結果、本発明を提案するに至った。
特開2005−310605号公報
本発明の課題は、ニッケル水素蓄電池の高率放電性能と充放電サイクル性能との両方を高いレベルとすることである。
本発明の追加の課題は、ニッケル水素蓄電池の初期の放電性能を大幅に向上して、初期活性化のための工程を簡素化することである。
本発明の追加の課題は、ニッケル水素蓄電池の放置性能を向上することである。
本発明の構成、効果および作用機構は以下の通りである。ただし、作用機構については推定を含んでおり、その作用機構の正否は本発明を制限するものではない。
本発明の一つは、水素吸蔵合金の粉末と、前記水素吸蔵合金の粉末と比べて、全体積に対するNiリッチ層の体積の割合が大きい遷移金属元素含有合金の粉末とを含むことを特徴とするニッケル水素蓄電池用負極である。
本発明の一つは、水素吸蔵合金の粉末と、前記水素吸蔵合金の粉末と比べて磁性体量が多い遷移金属元素含有合金の粉末とを活物質として用いることを特徴とするニッケル水素蓄電池用負極の製造方法である。
本発明においては、水素吸蔵合金の粉末の磁性体量が6Am2/kg以下であることおよび遷移金属元素含有合金の粉末の磁性体量が7Am2/kg以上であることが好ましい。
本発明の一つは、上記の負極あるいは上記の製造方法により製造した負極を備えたことを特徴とするニッケル水素蓄電池である。
なお、本発明においては、つぎの構成をさらに採用することが好ましい。
(1)水素吸蔵合金の粉末は、磁性体量が3.5Am2/kg以上である。
(2)遷移金属元素含有合金の粉末は、磁性体量が15Am2/kg以下である。
(3)水素吸蔵合金の粉末は、メジアン粒径が18μm以上25μm以下である。
(4)遷移金属元素含有合金の粉末は、メジアン粒径が4μm以上8μm以下である。
(5)遷移金属元素含有合金の粉末の含有量は、水素吸蔵合金の粉末と遷移金属元素含有合金の粉末との合計に対して3wt%以上10wt%以下である。
(1)水素吸蔵合金の粉末は、磁性体量が3.5Am2/kg以上である。
(2)遷移金属元素含有合金の粉末は、磁性体量が15Am2/kg以下である。
(3)水素吸蔵合金の粉末は、メジアン粒径が18μm以上25μm以下である。
(4)遷移金属元素含有合金の粉末は、メジアン粒径が4μm以上8μm以下である。
(5)遷移金属元素含有合金の粉末の含有量は、水素吸蔵合金の粉末と遷移金属元素含有合金の粉末との合計に対して3wt%以上10wt%以下である。
なお、本発明における水素吸蔵合金の粉末および遷移金属元素含有合金の粉末の磁性体量は、粉末を0.3g精秤し、振動試料型磁力計(理研電子製:品番BHV−10H)をもちいて5000エルステッド(Oersted)の磁場での最大値を測定した値である。磁性体量は質量飽和磁化と表記されることもある。単位はAm2/kgまたはemu/gを用いることができ、1Am2/kgは1emu/gに相当する。
本発明において、全体積に対するNiリッチ層の体積割合は、粉末を構成する粒子のNiリッチ層部分の体積が粒子の全体積に占める割合を意味する。この割合を、水素吸蔵合金の粉末と遷移金属元素含有合金の粉末との間で比較するための簡単な方法としては、粉末の断面の全面積に対するNiリッチ層部分の断面積の割合を比較する方法がある。粉末の断面積およびNiリッチ層部分の断面積は、粉末を構成する粒子の断面を走査電池顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)で観察して得られた像からそれぞれ計測することができる。粒子の断面は、収束イオンビーム装置(FIB)を用いて切断することにより製作することができる。
また、本発明におけるメジアン粒径は、粉末Aまたは/および粉末Bを粒度分布測定装置(マイクロトラック社製:品番MT3000)をもちいて測定したD50の値である。
以下では、水素吸蔵合金の粉末を粉末Aと記載し、粉末Aと比べて、Niリッチ層の体積比が大きい遷移金属元素含有合金の粉末および粉末Aと比べて大きい磁性体量を持つ遷移金属元素含有合金の粉末を粉末Bと記載する。
本発明のニッケル水素蓄電池用負極は、粉末Aと粉末Bとを含むことによって、ニッケル水素蓄電池の高率放電性能を大幅に向上できるようになる。この向上は、結果的に、高率放電性能と充放電サイクル性能との両方が優れたニッケル水素蓄電池が得られるという効果をもたらす。なお、上記の高率放電特性の大幅な向上は、とくに低温において顕著に認められるものである。
また、粉末Aと粉末Bとを活物質として用いる方法を採用することによって、ニッケル水素蓄電池の高率放電性能を大幅に向上することのできる負極が得られる。この高率放電性能を大幅な向上は、結果的に、高率放電性能と充放電サイクル性能との両方が優れたニッケル水素蓄電池が得られるという効果をもたらす。なお、上記の高率放電特性の大幅な向上は、とくに低温において顕著に認められるものである。
本発明においては、粉末Aの磁性体量を6Am2/kg以下および粉末Bの磁性体量が7Am2/kg以上の条件とすることによって、高率放電性能と充放電サイクル性能との両方が優れた電池を提供でいるという効果が顕著となる。
また、上記の方法で製造することによって、ニッケル水素蓄電池の活性化に必要な充放電サイクルの繰り返し数を大幅に低減することのできる負極が得られる。この効果は、粉末Bが粉末Aの活性化を促進したことに起因するものと考えられる。
また、上記の方法で製造することによって、ニッケル水素蓄電池の放置性能を向上することのできる負極が得られる。
本発明においては、粉末Aの磁性体量を3.5Am2/kg以上とすることによって、電池の高率放電性能をさらに高めることができる。
本発明においては、粉末Bの磁性体量を15Am2/kg以下とすることによって、電池の充放電サイクル性能をさらに高めることができる。
本発明においては、粉末Aのメジアン粒径を18μm以上とすることによって電池の充放電サイクル性能をさらに高めることができ、25μm以下とすることによって電池の高率放電特性をさらに高めることができる。
本発明においては、粉末Bのメジアン粒径を4μm以上とすることによって電池の高率放電性能を大幅に向上することができ、8μm以下とすることによって電池の充放電サイクル性能をさらに高めることができる。すなわち、粉末Bのメジアン粒径を4μm以上8μm以下とすることによって、上述の本発明の効果が顕著に認められることとなる。
本発明においては、粉末Bの含有量を、粉末Aと粉末Bとの合計に対して3wt%以上とすることによって高率放電性能向上の効果が顕著となり、10wt%以下とすることによって充放電サイクル性能をさらに高めることができる。
本発明者らは、ニッケル水素蓄電池の抵抗成分解析をおこなうことによって高率放電時の抵抗の大きな部分を負極が占めることを確認した。そこで、本発明者らは、高率放電時の負極の合金表面における電荷移動速度を向上すべく水素吸蔵合金の表面処理と粒度について検討するとともに水素吸蔵合金を用いて負極を製造する方法を検討したところ、特定の材料を添加して負極を製造することによって、驚くべき高率放電性能を発揮する負極が得られることが判った。以下に、本発明の実施の形態を例示するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
本発明のニッケル水素蓄電池用の負極は、粉末Bが導電助剤の役割を果たしかつ粉末Bが高い水素触媒能を備えることによって、粉末B自身の高率放電が可能となるだけでなく粉末Aもまた高率放電が可能となり、その結果、高率放電性能と充放電サイクル性能との両方が優れたニッケル水素蓄電池が得られる。このメカニズムは、粉末Bの水素触媒能が粉末Aのそれと比べて優れているときに生じるものである。粉末Bの水素触媒能が粉末Aのそれと比べて優れているということは、粉末Bに設けられたNiリッチ層の割合が粉末Aのそれと比べて大きいことを意味するものであるので、具体的には、粉末Bの全体積に対するNiリッチ層部分の体積の割合が粉末Aのそれと比べて大きいこと、粉末Bの断面積に占めるNiリッチ層の断面積の割合が粉末Aのそれと比べて大きいこと、あるいは、粉末Bの磁性体量が粉末Aのそれと比べて大きいことに相当する。このような負極は、たとえば、本発明の製造方法によって製造することができる。
本発明のニッケル水素蓄電池用負極は、活物質部分を構成する個々の粒子についてNiリッチ層の割合を測定してその分布を調べると少なくとも2つのピークが認められる。これらのピークは、粉末Aと粉末Bとにそれぞれ由来するものである。調査方法はつぎの通りである。まず、負極の活物質部分を粉砕して個々の粒子を分離可能としたあと、粒子を複数個サンプリングして対象とするパラメータ(Niリッチ層部分の体積割合等)をそれぞれ測定する。つぎに、測定したデータを階級ごとに分類して各階級に分類されたデータ数を数えて度数とし、度数分布図または度数分布曲線を作成する。度数分布図または度数分布曲線を評価することによって、粉末Aと粉末Bとが混合されていたことがわかる。なお、粉末Aと粉末Bとの組成が異なる場合は、X線マイクロアナライザ(EPMA)元素マッピングを用いることによって、粉末Aと粉末Bとが混在していることを確認することができる。
本発明の製造方法によれば、粉末Aと、粉末Aと比べて磁性体量が大きい粉末Bとを活物質として備えたニッケル水素蓄電池用の負極を得ることができる。具体的には、粉末Aおよび粉末Bを混合したのちに集電体に充填することによって負極が得られる。充填する方法としては、たとえば、粉末Aと粉末Bとを含むペースト状の混合物を集電体に塗布してから乾燥する方法がある。
本発明のニッケル水素蓄電池は、本発明の負極あるいは本発明の方法で製造した負極を備えた電池であって、負極、正極およびセパレータを積層したものを電解液とともに外装材で封止することによって好適に作製される。また、正極と負極とがセパレータを介して積層された発電要素を巻回してなる密閉型ニッケル水素蓄電池においては、電解質は、前記巻回の前後に発電要素に注液されるのが好ましい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法や遠心含浸法も使用可能である。ニッケル水素蓄電池の外装材の材料としては、ニッケルメッキした鉄やステンレススチール、ポリオレフィン系樹脂等が一例として挙げられる。また、ニッケル水素蓄電池の構成については特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複層のセパレータを有するコイン電池やボタン電池、角型電池、扁平型電池、さらに、ロール状の正極、負極およびセパレータを有する円筒型電池等が一例として挙げられる。
本発明においては、粉末Bの割合を粉末Aと粉末Bとの合計に対して3wt%以上10wt%以下とすることが好ましい。その割合を3wt%以上とすることによって、高率放電性能向上の効果を顕著なものとすることができ、10wt%以下とすることによって充放電サイクル性能向上の効果を顕著なものとすることができる。この割合が10wt%を越えると、セパレータ中の電解液が負極に移動する現象が顕著となってサイクル寿命が低下する虞がある。この現象は、粉末Bの合金が腐食及び微粉化によって劣化したことに起因するものである。
表面処理をおこなっていない素の水素吸蔵合金粉末の磁性体量は0.2Am2/kg以下であるが、アルカリを用いた表面処理によって、水素吸蔵合金中に含まれる希土類元素、Mn及びAlが溶出し、合金表面と合金内部の微細な割れ部分とにNiの含有量が大きい層(Niリッチ層)が形成される。磁性体量はNiリッチ層の生成量と相関があり、磁性体量が多いほど、Niリッチ層の割合が増加し、優れた水素触媒能を示す。なお、Niリッチ層の割合の評価は、磁性体量を用いるほかに、粉末の断面積を測定してその断面積に占めるNiリッチ層の断面積の割合を用いることができる。中でも、30nm以上800nm以下の厚みを有するNiリッチ層において、ニッケル換算した磁性体量を3.5〜15wt%形成すると、電池の高率放電特性が大幅に改善できる。なお、Niリッチ層の厚さは透過型電子顕微鏡等で計測できる。
本発明で使用する粉末Aの構造は、水素吸蔵合金の粒子の表面にNiリッチ層が備えられた構造であることが好ましい。粉末Bの構造は、遷移金属元素含有合金の粒子にNiリッチ層が備えられた構造であることが好ましい。これらの構造は、負極の合材層の断面を透過型電子顕微鏡顕微鏡を用いて観察することにより確認することができる。
本発明で使用する粉末Aおよび粉末Bに備えられたNiリッチ層は、Niの含有量が母層よりも大きいものであれば良く、Ni金属または/およびNi合金を含むものを用いることができる。また、Niリッチ層は、劣化が抑制される点からCoを含むことが好ましく、このCoはNiと合金化して用いることができる。ほかにNiリッチ層は希土類元素を含んでも良く、この希土類元素は水酸化物として含ませることができる。
本発明で使用する水素吸蔵合金の粉末Aは、水素吸蔵が可能なAB2系、希土類系のAB3〜5合金、BCC合金等を用いることができる。なかでも、CaCu5型合金のMmNi5(Mmは希土類元素の混合物)のNiの一部をCo、MnおよびAl等で置換した合金あるいは長周期構造を有する希土類−Mg−Niの一部をCoおよびAl等で置換した合金が、優れたサイクル寿命特性と高い放電容量を持つので好ましい。
本発明で使用する遷移金属元素含有合金の粉末Bは、遷移金属元素としてニッケル元素を含む合金の粉末であることが好ましく、コバルト元素を含むことができる。また、粉末Bは、負極および電池のエネルギー密度を向上できることから、水素吸蔵が可能な合金組成とすることが好ましい。粉末Bとして水素吸蔵合金の粉末を採用する場合は、粉末Aの場合と同様に、水素吸蔵が可能なAB2系、希土類系のAB3〜5合金、BCC合金等を用いることができる。なかでも、CaCu5型合金のMmNi5(Mmは希土類元素の混合物)のNiの一部をCo、MnおよびAl等で置換した合金あるいは長周期構造を有する希土類−Mg−Niの一部をCoおよびAl等で置換した合金が、優れたサイクル寿命特性と高い放電容量を持つので好ましい。
本発明の粉末Aおよび粉末Bは、防触添加剤として、イットリウム、イッテルビウム、エルビウムの他に、ガドリウム、セリウムを酸化物や水酸化物を添加したり、予め合金に金属として含有させても良い。
本発明の粉末Aおよび粉末Bは、アルカリ性水溶液によって表面を処理することによって、磁性体量およびNiリッチ層を所定の範囲に調節することができる。表面処理に使用するアルカリ性溶液としては、有機アルカリ性水溶液等の非アルカリ金属電解液を用いる事が出来るが、電解液組成に用いるKOH、NaOH,LiOHなどの金属アルカリ水溶液を1種又は2種以上を混合して用いると、溶出元素成分と成分比が電解液と類似しているためか、電池にしたときの合金の更なる腐食が進みにくいため好ましい。中でもNaOHは合金表面の処理速度(腐食速度)がLiOH、KOHより2倍以上早いために、処理時間を短縮できるという利点がある。NaOHの濃度は濃い方が処理(腐食)の進行が早く、20℃での比重が1.3以上で処理速度が向上し時間が短縮できるためより好ましく、比重が1.5を越えると常温で再結晶し取り扱いが困難となるため、1.5以下が好ましい。処理温度は100℃以上で処理速度が劇的に向上するので好ましく、沸点以上では反応速度が速くなりすぎ、制御が困難になるため沸点以下が好ましい。処理時間は、短すぎるとNiリッチ層の形成が十分出来ないため30分以上が好ましく、10時間を超えるとNiリッチ層が形成されすぎ、電池容量が低下するため10時間以下が好ましい。
本発明の粉末Aおよび粉末Bとして用いる水素吸蔵合金は、上記のアルカリ処理をおこなう前に、水素ガスを吸蔵させて微細な割れを発生する工程をおこなうことが好ましい。この工程は、たとえば、水素ガス加圧によって気相にて5%以上含有させひび割れさせる方法またはアルカリ性水溶液によって合金成分の希土類等を溶解せしめて、合金の希土類金属をイオン化と水酸化物化させる反応によって5%以上の水素を発生させ、大気圧下に於いて処理合金に水素を吸蔵させる方法により実施することができる。
アルカリ性水溶液によって水素吸蔵合金の表面を処理すると、表面の合金中のランタンなどの希土類元素が溶出し、希土類イオンと水酸化物、Mn化合物などを生成する。このとき、水素吸蔵合金が5%以上の水素を含有している場合、NiまたはCo金属が溶解する電位にないので、NiおよびCoの溶出を大幅に低減させることができる。その結果、最小限の表面処理(腐食)と最小限のNiリッチ層厚さで十分な活性が得られるため、合金中の希土類元素の流出による合金の容量の低下を最小限に抑制することができる。この際、粉体の周辺に酸化物や水酸化物の生成物が残留したまま蓄電池の電極にした場合、粉体の抵抗が大きくなり、高率放電特性が低下する。この為、これらの希土類不純物を除去する工程を含むことが望ましい。
希土類元素の酸化物または/および水酸化物の不純物を粉体から除去する工程としては、水溶液中の沈降速度を利用する方法、例えば、合金攪拌タンク下部から流水をフローさせ、沈降しにくい希土類不純物をフロー水に混じらせ除去する方法や、粒径の差を利用する方法、例えば希土類不純物粒径が合金粒径より小さいため、濾過によって小粒径のものを取り除く方法がある。更にpHによって、合金からの溶出物浮遊量が異なるため、効率的に不純物を除去する方法として、上記流水フローや加圧濾過を繰り返しpHを12〜11まで低下させた後、酢酸などの有機酸を加えることによってpHを10〜9として、再度上記流水フローや加圧濾過を繰り返す方法が好ましい。
また、上記のアルカリ処理後の合金は水素を含有しているため、電極への加工工程で発熱し発火する恐れがある。この為、水素を合金から脱離させることが好ましい。水素を合金から脱離させる方法として、H2O2などの酸化剤を用いて酸化する方法がある。酸化剤としては何でも良いが、過酸化水素は分解後の生成物が合金性能を低下させる不純物を有しないために好ましい。これら酸化剤は45℃以上で合金のNiリッチ層に接触すると酸素ガスを放出し自己分解をするので効率が悪く、45℃以下に冷却して用いると効率よく合金中の水素と反応するのでより好ましい。
水素吸蔵合金は空気酸化させると活性が低下する。合金を含水状態で保管すると合金中の希土類が溶出しアルカリを示し、処理(腐食)が進行する為、長期保管をした場合、合金容量が極端に低下する。これに対して、真空乾燥などの方法で乾燥させた合金は合金表面を酸化させていない為か合金は活性度が高すぎ発火しやすく、運送時や、加工工程での合金投入時に発火するなどの問題が発生する。そこで、本発明で使用する水素吸蔵合金は、合金表面は酸化されるものの高率放電特性の低下は限定的であるため、60℃〜90℃の空気によって部分乾燥させることが好ましい。この方法で水素脱離させることによって、高率放電性能を低下させずに発火の危険性を回避できる。これは、合金表面の酸化される部分が薄い範囲に限られるためであると考えられ、この部分が、電池組み込み後の電池の充放電による活性化作用によって、再還元されたり、剥離したりするためであると考えられる。
また、本発明で使用する水素吸蔵合金は、乾燥後の合金に含まれる希土類水酸化物量が5質量%以下が好ましく、1.5wt%以下が更に好ましい。5wt%を越えると、合金の接触抵抗が増大したり、合金容量が低下したりするため、高率放電特性が低下する虞がある。
この為、上記の工程をおこなうことにより、長期保管時の容量低下が無く、発火の恐れが無い安全で優れた高率放電特性を有する負極用合金粉体が得られる。
本発明の粉末Aおよび粉末Bとして用いる水素吸蔵合金は、目的とする水素吸蔵合金の組成に基づいて原料粉末を所定量秤量し、反応容器に入れ、不活性ガス雰囲気中又は真空中で高周波溶解炉を用いて該原料粉末を溶解させる方法によって得ることができる。そして、当該合金は、溶融状態から毎秒1000℃以上の冷却速度で凝固させることにより溶製することが好ましい。溶解状態にある合金を1000K/秒以上の冷却速度で急冷したものを用いることによって、合金劣化が抑制される。急冷によって前記合金を作製することにより、合金組織が均質化されるため、微粉化されにくく、耐アルカリ性に優れた合金となり、高い触媒性が長期間維持され、且つ長寿命となる。
本発明の粉末Aおよび粉末Bとして用いる水素吸蔵合金は、目的とする水素吸蔵合金の組成に基づいて原料粉末を所定量秤量し、反応容器に入れ、不活性ガス雰囲気中又は真空中で高周波溶解炉を用いて該原料粉末を溶解させる方法によって得ることができる。そして、当該合金は、溶融状態から毎秒1000℃以上の冷却速度で凝固させることにより溶製することが好ましい。溶解状態にある合金を1000K/秒以上の冷却速度で急冷したものを用いることによって、合金劣化が抑制される。急冷によって前記合金を作製することにより、合金組織が均質化されるため、微粉化されにくく、耐アルカリ性に優れた合金となり、高い触媒性が長期間維持され、且つ長寿命となる。
本発明の粉末Aおよび粉末Bとして用いる水素吸蔵合金は、冷却の際に生じた歪を除去するために、ArやHeなどの不活性ガス雰囲気中又は真空中で550〜1100℃の温度範囲にて2〜50時間、より好ましくは800〜1100℃の温度範囲にて2〜10時間、さらに好ましくは900〜1000℃の温度範囲にて3〜8時間の焼鈍を行なうことが好ましい。
本発明の粉末Aおよび粉末Bとして用いる水素吸蔵合金は、水素吸蔵合金組成中のMn量を制御することが好ましい。なぜなら、優れた高率放電特性とサイクル寿命特性を備える電池が得られるからである。たとえば、粉末Aの水素吸蔵合金の組成は、Mnを含まないあるいはMn含有量が3.2wt%以下であることが好ましい。Mn含有量を3.2wt%以下とすることによって、高率放電性能を低下させることなく、放置特性が向上する効果が得られる。とくに、前記合金がMnを含まない場合は、サイクル末期での微短絡が抑制でき、放置特性が向上する。この組成の合金は小粒径かつ高磁化であるため、高い水素触媒性をもつ合金粉末である。そのため、この合金のMn含有量が3.2wt%を越えると、合金の腐食が促進され、サイクル中のMnの溶出が増大し、サイクル寿命が低下する。また、サイクル末期にMnに起因する微短絡がおこる虞がある。
本発明で使用する正極活物質としては、水酸化ニッケルに水酸化亜鉛、水酸化コバルトを混合したものが用いられるが、共沈法によって均一分散した水酸化ニッケル複合水酸化物が好ましい。水酸化ニッケル複合酸化物以外の添加物には、導電改質剤として水酸化コバルト、酸化コバルト、等を用いるが、前期水酸化ニッケル複合酸化物に水酸化コバルトをコートしたものや、これらの水酸化ニッケル複合酸化物の一部を酸素又は酸素含気体、又は、K2S2O8、次亜塩素酸などの薬剤を用いて酸化したものを用いることができる。添加剤としては酸素過電圧を向上させる物質としてY、Yb等の希土類元素の酸化物や水酸化物を用いることができる。
本発明で使用する正極活物質の粉体及び負極材料の粉体は、とくに指定しない場合は、メジアン粒子サイズ50μm以下であることが望ましい。特に、負極活物質である水素吸蔵合金の粉体は、ニッケル水素電池の高出力特性を向上する目的で粒径は25μm以下の小さいものの方が良い。
粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはアルカリ金属を含有した水溶液を用いて湿式粉砕を用いることもできる。特に、メジアン粒径(D50)が4μm〜8μmの粉体を得るには、湿式粉砕が好ましく、ブロードな粒度分布にすると更に好ましい。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
本発明で使用する集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、耐還元性及び耐酸化性向上のためにニッケルやニッケルメッキを行った鋼板を好適に用いることが出来、発泡体、繊維群の形成体、凸凹加工を施した3次元基材の他に、パンチング鋼板等の2次元基材が用いられる。厚さの限定は特にないが、5〜700μmのものが用いられる。これらの集電体の中で、正極用のものとしては、アルカリに対する耐食性と耐酸化性に優れているNiを、集電性に優れた構造である多孔体構造の発泡体としたものを使用する事が好ましい。負極用のものとしては、安価で、且つ電導性に優れる鉄箔に、耐還元性向上のためにNiメッキを施した、パンチング体を使用することが好ましい。さらに、鋼板のパンチング径は1.7mm以下、開口率40%以上であることが好ましく、これにより少量の結着剤でも負極活物質と集電体との密着性は優れたものとなる。
本発明においては、焼成炭素、導電性高分子の他に、接着性、導電性および耐酸化性向上の目的で、集電体のニッケルの表面をNi粉末やカーボンや白金等を付着させて処理した物を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。
以上、正極及び負極の主要構成成分である正極活物質および負極活物質について詳述したが、前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
前記導電剤としては電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、気相成長炭素、金属(銅,ニッケル,金等)粉、金属繊維等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1wt%〜10wt%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1wt%〜3wt%が好ましい。
前記増粘剤としては、通常、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。増粘剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1wt%〜3wt%が好ましい。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は5wt%以下が好ましい。
正極および負極は、前記活物質、導電剤および結着剤を水やアルコール、トルエン等の有機溶媒に混合させた後、得られた混合液を集電体の上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ブレードコーター、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚みおよび任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
本発明で用いるセパレータとしては、優れたレート特性を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。密閉型ニッケル水素電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂や、ナイロンを挙げることができる。
セパレータの空孔率は強度、ガス透過性の観点から80体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。また、セパレータは親水化処理を施したものであることが好ましい。
例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂に、表面にスルフォン化処理、コロナ処理、PVA処理を施したり、これらの処理を既に施されたものを混合したものを用いても良い。
セパレータの空孔率は強度、ガス透過性の観点から80体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。また、セパレータは親水化処理を施したものであることが好ましい。
例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂に、表面にスルフォン化処理、コロナ処理、PVA処理を施したり、これらの処理を既に施されたものを混合したものを用いても良い。
本発明で使用する電解液としては、一般にアルカリ電池等への使用が提案されているものが使用可能である。水を溶媒とし、溶質としてはカリウム、ナトリウム、リチウムを単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。電解液における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する電池を確実に得るために、水酸化カリウム5〜7mol/l、水酸化リチウム0.5〜0.8mol/lが好ましい。
本発明では、合金への防食剤や、正極での過電圧向上のためや、負極の耐食性の向上や、自己放電向上の為の電解液への添加剤として、イットリウム、イッテルビウム、エルビウム、カルシウム、硫黄、亜鉛等を単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
以下に、実施例を示しながら本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載により限定されるものではなく、試験方法や構成する電池の正極活物質、負極材料、正極、負極、電解質、セパレータ並びに電池形状等は任意である。
本発明の方法を用いて負極を作製したのちに、この負極を用いて実施例の電池を製作した。また、比較のために負極の構成が異なる比較例の電池も製作した。詳細は下記の通りである。これらの電池は、負極、セパレータおよびニッケル正極と組み合わせてロール状に巻回したものを電解液とともに外装材に封入して製作したsubC形の密閉型ニッケル水素蓄電池である。電解液には6.8Nの水酸化カリウム水溶液に0.8Nの水酸化リチウムを溶解したアルカリ電解液を用いた。セパレータにはスルホン化処理を施した厚み120μmのポリプロピレンの不織布状セパレータを用いた。
(負極の作製)
磁性体量が6Am2/kg以下の水素吸蔵合金の粉末(粉末A)と、磁性体量が7Am2/kg以上の遷移金属元素含有合金の粉末(粉末B)とをそれぞれ製作したのちに、これらの粉末を種々の配合比で含む混合物を集電体に塗布したのちに乾燥することによって実施例の負極を製造した。混合物は、スチレンブタジエン共重合体水溶液と水とを用いてペースト状とした。合金とスチレンブタジエン共重合体水溶液との固形分重量比は99.36:0.65とした。塗布にはブレードコーターを用い、乾燥温度は80℃とした。集電体には鉄にニッケルメッキを施したパンチング鋼板を用いた。こ負極の寸法および容量は、幅34mm(内、無塗工部1mm)長さ260mmおよび容量4800mAhとした。
磁性体量が6Am2/kg以下の水素吸蔵合金の粉末(粉末A)と、磁性体量が7Am2/kg以上の遷移金属元素含有合金の粉末(粉末B)とをそれぞれ製作したのちに、これらの粉末を種々の配合比で含む混合物を集電体に塗布したのちに乾燥することによって実施例の負極を製造した。混合物は、スチレンブタジエン共重合体水溶液と水とを用いてペースト状とした。合金とスチレンブタジエン共重合体水溶液との固形分重量比は99.36:0.65とした。塗布にはブレードコーターを用い、乾燥温度は80℃とした。集電体には鉄にニッケルメッキを施したパンチング鋼板を用いた。こ負極の寸法および容量は、幅34mm(内、無塗工部1mm)長さ260mmおよび容量4800mAhとした。
粉末Aの作製手順を5工程に分けてつぎに説明する。
(粉末A作製の第1工程)
まず、つぎの手順で、水素ガスを吸蔵させることによって水素吸蔵合金の粉末に微細な割れを発生させる工程を行った。モル比がMmNi4.00Co0.60Al0.30Mn0.30となるように原料インゴットをそれぞれ所定量秤量し、るつぼに入れ、減圧されたアルゴンガス雰囲気下において、高周波溶融炉を用いて1500℃に加熱し、材料を溶解させた。MmはLa,Ce,Pr,Ndをそれぞれ70wt%,20wt%,2wt%,8wt%含む。さらに、溶解状態にある材料を回転冷却ロールに噴射することによって1000℃/秒以上の冷却速度で冷却(急冷)して固化させ、水素吸蔵合金を得た。得られた水素吸蔵合金を、アルゴンガス雰囲気下、電気炉を用いて1000℃の温度で4時間の熱処理をおこない再結晶化および焼鈍をおこなった。そのあと、水素吸蔵合金を機械粉砕してメジアン粒径を調整したのちにPCT(圧力組成等温線)装置の密閉容器内にて80℃、水素ガス雰囲気および0.1MPaの条件で処理して水素吸蔵量0.1H/M(合金の原子が10に対して、水素原子1)とすることによって、表面と内部とに微細な割れをもつ水素吸蔵合金の粉末とした。この実施例では、機械粉砕の条件を変更することによってメジアン粒径が15μm、18μm、20μm、25μmおよび30μmの粒子をそれぞれ準備した。メジアン粒径は、粒度分布測定装置(マイクロトラック社製:品番MT3000)をもちいて測定したD50の値を用いた。
まず、つぎの手順で、水素ガスを吸蔵させることによって水素吸蔵合金の粉末に微細な割れを発生させる工程を行った。モル比がMmNi4.00Co0.60Al0.30Mn0.30となるように原料インゴットをそれぞれ所定量秤量し、るつぼに入れ、減圧されたアルゴンガス雰囲気下において、高周波溶融炉を用いて1500℃に加熱し、材料を溶解させた。MmはLa,Ce,Pr,Ndをそれぞれ70wt%,20wt%,2wt%,8wt%含む。さらに、溶解状態にある材料を回転冷却ロールに噴射することによって1000℃/秒以上の冷却速度で冷却(急冷)して固化させ、水素吸蔵合金を得た。得られた水素吸蔵合金を、アルゴンガス雰囲気下、電気炉を用いて1000℃の温度で4時間の熱処理をおこない再結晶化および焼鈍をおこなった。そのあと、水素吸蔵合金を機械粉砕してメジアン粒径を調整したのちにPCT(圧力組成等温線)装置の密閉容器内にて80℃、水素ガス雰囲気および0.1MPaの条件で処理して水素吸蔵量0.1H/M(合金の原子が10に対して、水素原子1)とすることによって、表面と内部とに微細な割れをもつ水素吸蔵合金の粉末とした。この実施例では、機械粉砕の条件を変更することによってメジアン粒径が15μm、18μm、20μm、25μmおよび30μmの粒子をそれぞれ準備した。メジアン粒径は、粒度分布測定装置(マイクロトラック社製:品番MT3000)をもちいて測定したD50の値を用いた。
(粉末A作製の第2工程)
つぎに、アルカリ性水溶液にて水素吸蔵合金粉末の表面と内部とに微細な割れ部分を処理する工程を行った。即ち、水素吸蔵処理後の水素吸蔵合金粉末を20℃の比重で1.5のNaOH水溶液中で、100℃の温度条件で2〜6時間撹拌した。この実施例では、放置時間を変更することによって磁性体量が2Am2/kg、3.5Am2/kg、5Am2/kg、5.2Am2/kg、5.5Am2/kgおよび6Am2/kgの水素吸蔵合金粉末をそれぞれ準備した。また、参考のために、放置時間を変更することにより磁性体量が8Am2/kgのものも準備した。磁性体量は振動試料型磁力計(理研電子製:品番BHV−10H)をもちいて測定した。
つぎに、アルカリ性水溶液にて水素吸蔵合金粉末の表面と内部とに微細な割れ部分を処理する工程を行った。即ち、水素吸蔵処理後の水素吸蔵合金粉末を20℃の比重で1.5のNaOH水溶液中で、100℃の温度条件で2〜6時間撹拌した。この実施例では、放置時間を変更することによって磁性体量が2Am2/kg、3.5Am2/kg、5Am2/kg、5.2Am2/kg、5.5Am2/kgおよび6Am2/kgの水素吸蔵合金粉末をそれぞれ準備した。また、参考のために、放置時間を変更することにより磁性体量が8Am2/kgのものも準備した。磁性体量は振動試料型磁力計(理研電子製:品番BHV−10H)をもちいて測定した。
(粉末A作製の第3工程)
さらに、希土類を主成分とするイオンと水酸化物とを除去する工程をおこなった。即ち、水素吸蔵合金粉末に付着した前記希土類の化合物を加圧濾過によって除去し、濾液の水素イオン濃度がpH11〜12になるまでこの加圧濾過を繰り返した後、pH4の酢酸をpH10〜9となるまで加えてから再度加圧濾過を行った。
さらに、希土類を主成分とするイオンと水酸化物とを除去する工程をおこなった。即ち、水素吸蔵合金粉末に付着した前記希土類の化合物を加圧濾過によって除去し、濾液の水素イオン濃度がpH11〜12になるまでこの加圧濾過を繰り返した後、pH4の酢酸をpH10〜9となるまで加えてから再度加圧濾過を行った。
(粉末A作製の第4工程)
さらにまた、水素吸蔵合金中の水素を脱離させる工程を行った。フロー水洗を3回行い合金からの溶出物の除去をおこなった後、攪拌下4%過酸化水素を合金重量と同量加えることによって、合金から水素を脱離させた。
さらにまた、水素吸蔵合金中の水素を脱離させる工程を行った。フロー水洗を3回行い合金からの溶出物の除去をおこなった後、攪拌下4%過酸化水素を合金重量と同量加えることによって、合金から水素を脱離させた。
(粉末A作製の第5工程)
最後に、水素吸蔵合金の粉末を空気によって部分酸化する工程をおこなうことによって、第1の水素吸蔵合金粉末を製造した。具体的には、フロー水洗を5回、加圧濾過後、80℃にて乾燥を行った。得られた水素吸蔵合金は、希土類水酸化物量の含有量が5質量%以下であった。希土類水酸化物量は、X線回折装置(BrukerAXS社製、品番M06XCE)を用い、40kV,100mA(Cu管球)の条件でX線回折測定した後、得られたX線回折結果に基づいてリートベルト法(解析ソフト、RIETAN2000使用)で求めた。
最後に、水素吸蔵合金の粉末を空気によって部分酸化する工程をおこなうことによって、第1の水素吸蔵合金粉末を製造した。具体的には、フロー水洗を5回、加圧濾過後、80℃にて乾燥を行った。得られた水素吸蔵合金は、希土類水酸化物量の含有量が5質量%以下であった。希土類水酸化物量は、X線回折装置(BrukerAXS社製、品番M06XCE)を用い、40kV,100mA(Cu管球)の条件でX線回折測定した後、得られたX線回折結果に基づいてリートベルト法(解析ソフト、RIETAN2000使用)で求めた。
つぎに、粉末Bの作製手順を5工程に分けてつぎに説明する。
(粉末B作製の第1工程)
モル比がMmNi3.95Co0.60Al0.40Mn0.20となるように原料インゴットをそれぞれ所定量秤量したこと、MmがLa,Ce,Pr,Ndをそれぞれ75wt%,18wt%,1wt%,6wt%含むことおよび
メジアン粒径が2μm、4μm、6μm、8μmおよび10μmの粒子をそれぞれ準備したことを除いて、粉末Aの場合と同様の方法で水素吸蔵合金の粉末を得た。
モル比がMmNi3.95Co0.60Al0.40Mn0.20となるように原料インゴットをそれぞれ所定量秤量したこと、MmがLa,Ce,Pr,Ndをそれぞれ75wt%,18wt%,1wt%,6wt%含むことおよび
メジアン粒径が2μm、4μm、6μm、8μmおよび10μmの粒子をそれぞれ準備したことを除いて、粉末Aの場合と同様の方法で水素吸蔵合金の粉末を得た。
(粉末B作製の第2工程)
磁性体量が7Am2/kg、10Am2/kg、15Am2/kgおよび20Am2/kgの水素吸蔵合金粉末をそれぞれ準備したことを除いて、粉末Aの場合と同様の方法でアルカリ性水溶液による表面処理をおこなった。なお、参考のために、磁性体量が5Am2/kgおよびのものも準備した。
磁性体量が7Am2/kg、10Am2/kg、15Am2/kgおよび20Am2/kgの水素吸蔵合金粉末をそれぞれ準備したことを除いて、粉末Aの場合と同様の方法でアルカリ性水溶液による表面処理をおこなった。なお、参考のために、磁性体量が5Am2/kgおよびのものも準備した。
(粉末B作製の第3工程、第4工程および第5工程)
粉末Aと同様の方法で、希土類を主成分とするイオンと水酸化物とを除去する工程、水素吸蔵合金中の水素を脱離させる工程および水素吸蔵合金の粉末を空気によって部分酸化する工程をおこなうことによって、粉末Bを製造した。
粉末Aと同様の方法で、希土類を主成分とするイオンと水酸化物とを除去する工程、水素吸蔵合金中の水素を脱離させる工程および水素吸蔵合金の粉末を空気によって部分酸化する工程をおこなうことによって、粉末Bを製造した。
(ニッケル正極の作製)
正極活物質粒子にカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を添加して前記活物質粒子:CMC溶質=99.5:0.5重量比のペースト状とし、該ペーストを450g/m2のニッケル多孔体(住友電工(株)社製ニッケルセルメット#8)に充填した。その後80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスし、表面にテフロン(登録商標)コーティングを行い幅34mm(内、無塗工部1mm)長さ260mmの容量3000mAhのニッケル正極板とした。
正極活物質粒子にカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を添加して前記活物質粒子:CMC溶質=99.5:0.5重量比のペースト状とし、該ペーストを450g/m2のニッケル多孔体(住友電工(株)社製ニッケルセルメット#8)に充填した。その後80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスし、表面にテフロン(登録商標)コーティングを行い幅34mm(内、無塗工部1mm)長さ260mmの容量3000mAhのニッケル正極板とした。
正極活物質粒子は、水酸化ニッケル粒子の表面に表面層を形成することによって製作した。水酸化ニッケル粒子はつぎの方法で合成した。硫酸ニッケルと硫酸亜鉛および硫酸コバルトを所定比で溶解した水溶液に硫酸アンモニウムと苛性ソーダ水溶液を添加してアンミン錯体を生成させた。反応系を激しく撹拌しながら更に苛性ソーダを滴下し、反応系のpHを10〜13に制御して芯層母材となる球状高密度水酸化ニッケル粒子を水酸化ニッケル:水酸化亜鉛:水酸化コバルト=93:5:2の重量比となるように合成した。表面層の形成は、つぎの手順で実施した。前記高密度水酸化ニッケル粒子を、苛性ソーダでpH10〜13に制御したアルカリ水溶液に投入した。該溶液を撹拌しながら、所定濃度の硫酸コバルト、アンモニアを含む水溶液を滴下した。この間、苛性ソーダ水溶液を適宜滴下して反応浴のpHを10〜13の範囲に維持した。約1時間pHを10〜13の範囲に保持し、水酸化ニッケル粒子表面にCoを含む混合水酸化物から成る表面層を形成させた。該混合水酸化物の表面層の比率は水酸化物の芯層母粒子(以下単に芯層と記述する)に対して、7wt%であった。このあと、表面層の酸化処理をおこなった。すなわち、前記混合水酸化物から成る表面層を有する水酸化ニッケル粒子50gを、温度110℃の30wt%(10N)の苛性ソーダ水溶液に投入し、充分に攪拌した。続いて表面層に含まれるコバルトの水酸化物の当量に対して過剰のK2S2O8を添加し、粒子表面から酸素ガスが発生するのを確認した。活物質粒子をろ過し、水洗、乾燥した。
製作したニッケル水素蓄電池の高率放電性能と充放電サイクル性能とをそれぞれ測定した。測定は、電池を40℃12時間の保管処理した後、0.02ItAで600mAhの充電、0.1ItAで12時間の充電、0.2ItAで1Vまでの放電、0.1ItAで12時間の充電、0.2ItAで1Vまでの放電する操作を4回繰り返してからおこなった。高率放電性能は、0.1ItAで12時間充電した後、0℃に5時間放置して十分冷却したのち、0.8Vまで10ItA放電を行った時の放電容量比(20℃で0.8Vまで0.2ItA放電したときとの容量比)として評価した。充放電サイクル性能は、25℃で2ItAで−ΔV5mVまで充電し、10分間休止し、2ItAで1.0Vまで放電し、10分間休止するサイクルを行い、初期の放電容量の80%に到達したサイクル数で評価した。
まず、粉末Bの含有量が異なる実施例の電池の高率放電性能と充放電サイクル性能とを表1に示す。各電池の粉末Aおよび粉末Bの磁性体量、メジアン粒径および配合割合は表のとおりである。粉末Bの含有量は、粉末Aと粉末Bとの合計に対する粉末Bの重量の割合で表示している。表1から、実施例の電池は、比較例の電池のものと比べて同レベルの充放電サイクル性能を備えているとともに、優れた高率放電性能を有していることがわかる。これは、本発明によれば高率放電性能および充放電サイクル性能の両方が優れたニッケル水素蓄電池が得られたことを意味するものである。また表1から、3wt%以上であると高率放電特性が大幅に向上することがわかる。また表には示されていないが、含有量が20wt%の場合には、高率放電性能および充放電サイクル性能の両方が優れたものとなる効果は確認できたものの、他の実施例と比べてサイクル寿命が大きく低減されたものとなることがわかった。すなわち、本発明においては、高率放電特性とサイクル寿命の面から、粉末Bの割合が3wt%以上10wt%以下の範囲とすることが好ましい。このような両特性がともに高いレベルにあるという性能は、粉末Aを単独で用いた条件で製作した電池では得られなかったものである。また、粉末Bの配合割合を3wt%以上とすることによって、性能バラツキも抑えられることが確認された。
つぎに、粉末Bの磁性体量が異なる実施例の電池の高率放電性能と充放電サイクル性能とを表2に示す。表2から、粉末Bの磁性体量は、5Am2/kgの場合でも高率放電性能向上の効果が得られるのであるが、この効果が顕著となるのは7Am2/kg以上のときであることがわかる。またこの表から15Am2/kgを超えるとサイクル寿命の低下が大きくなることがわかる。したがって、粉末Bの磁性体量は、高率放電性能および充放電サイクル性能の両方が向上する効果が顕著に認められることから、7Am2/kg以上15Am2/kg以下の範囲とすることが好ましい。
さらに、粉末Aの磁性体量が異なる実施例の電池の高率放電性能と充放電サイクル性能とを表3に示す。表3から、粉末Aの磁性体量は、6Am2/kg以下であることが好ましく、とくに、3.5Am2/kg以上6Am2/kg以下が高率放電特性とサイクル寿命の面から好ましく、3.5Am2/kg未満であると高率放電特性が大幅に低下し、また6Am2/kgを越えるとサイクル寿命が大幅に低下することがわかる。
さらに、粉末Aのメジアン粒径が異なる実施例の電池の高率放電性能と充放電サイクル性能とを表4に示す。表4から、粉末Aのメジアン粒径は18μm以上25μm以下が高率放電特性とサイクル寿命の面から好ましい。なお、この表には示されていないが、粉末Aのメジアン粒径が15μmの場合は、高率放電性能および充放電サイクル性能の両方が優れたものとなる効果は確認できたものの、他の実施例と比べて充放電サイクル性能が大きく低減されたものとなることがわかった。このことは、メジアン粒径が18μm未満であるとサイクル寿命が大幅に低下することを意味するものである。
さらに、粉末Bメジアン粒径が異なる実施例の電池の高率放電性能と充放電サイクル性能とを表5に示す。表5から、粉末Bは4μm以上8μm以下が高率放電特性とサイクル寿命の面から好ましいことがわかる。8μmを越えると高率放電特性が大幅に低下することがわかる。この表には示されていないが、粉末Bのメジアン粒径が2μmの場合は、高率放電性能および充放電サイクル性能の両方が優れたものとなる効果は確認できたものの、他の実施例と比べて充放電サイクル性能の低下の傾向が大きいことがわかった。
さらに、粉末Bの合金の組成が異なる実施例の電池の高率放電性能および充放電サイクル性能を表6に示す。実施例17、18、19および20の組成はそれぞれつぎのとおりである。MmNi4.1Co0.60Al0.45(MmはLa、Ce、Pr、Ndをそれぞれ80、15、1、4wt%含む。)、MmNi4.1Co0.60Al0.40Mn0.1(MmはLa、Ce、Pr、Ndをそれぞれ76、19、1、4wt%含む。)、MmNi4.0Co0.60Al0.35Mn0.25(MmはLa、Ce、Pr、Ndをそれぞれ75、20、1、4wt%含む。)、MmNi4.0Co0.60Al0.30Mn0.3(MmはLa、Ce、Pr、Ndをそれぞれ75、18、1、6wt%含む。)とした。表6から、粉末Bの合金組成中にMnを含まない場合、サイクル特性が大幅に向上することがわかる。なお、表6の実施例17〜22の電池は、粉末Aのメジアン粒径および磁性体量、粉末Bのメジアン粒径および磁性体量および粉末Bの含有量条件を実施例3と同じとした。
また、希土類系のLa0.60Pr0.04Nd0.20Mg0.16Ni3.25Co0.20Al0.15組成の粉末Aについての測定結果を表6に実施例21として併記する。この結果から、長周期構造の合金を用いた場合、高率放電特性が大幅に向上することが確認できる。
また、表6の電池について、1000サイクル後、0.1ItAで5時間充電した後、0℃にて30日間放置する放置試験をおこなった。その結果を表6に示す。粉末Bの合金のMn含有量が3.2wt%を越えると、10セル中3セルで電池電圧が1.15Vを下回ることがわかる。実施例20の電池は、その後、20℃、0.1ItAで1Vまで放電させたが、残存容量も0%であり、微短絡を起こしていることが確認された。Mn含有量が3.2wt%以下であると、電池電圧は全て、1.3V以上(残存容量も90%以上)であり、優れた放置特性を示すことが確認された。
また、粉末Bび合金について、冷却速度50℃/秒以上の冷却速度で冷却(徐冷)して固化させ、水素吸蔵合金を得た以外は、実施例3の電池と同様に作製して電池(実施例22の電池)を製作した。この電池の高率放電性能および充放電サイクル性能は、表6に示したように、ともに実施例3の電池と比較して低下する傾向がみられた。
なお、本発明は上記実施例に記載された活物質の出発原料、製造方法、正極、負極、電解質、セパレータ及び電池形状などに限定されるものではない。
本発明の効果をさらに詳しく説明するために、粉末Aおよび粉末Bの合計の磁性体量と高率放電性能との関係を図1に示す。比較として、粉末Bを混合しない条件で製作した電池の結果を併記する。また、磁性体量と充放電サイクル性能との関係も示す。なお、充放電サイクル性能は、実施例の電池について結果をプロットしたものであるが、このうち図中の実線と点線とで示した傾向は、粉末Bを混合しない条件で製作した電池においても認められるものである。なお、図1に示されたデータは、実施例2、3、4、5、6、7、10および比較例1の電池のほか、つぎの仕様の3つの電池のものである。粉末Bの含有量が20wt%の電池(粉末Aの粒径20μm、粉末Aの磁性体量5Am2/Kg、粉末Bの粒径6μm、粉末Bの磁性体量10Am2/Kg)、粉末Bを混合しない条件で製作した電池(粉末Aの粒径20μm、粉末Aの磁性体量5.2Am2/Kg)および粉末Bを混合しない条件で製作した電池(粉末Aの粒径20μm、粉末Aの磁性体量5.5Am2/Kg)。
図1から、磁性体量が多くなるにしたがって、高率放電性能が向上することがわかる。さらにこの図から、本発明の方法で製造した負極を用いた場合は、この性能が向上する度合いが粉末Bを混合しない条件の場合と比べて飛躍的に大きいことがわかる。このことは、粉末Bが導電助剤の役割を果たし且つ粉末Bの高い水素触媒能によって、粉末B自身の高率放電が可能となっただけでなく粉末Aもまた高率放電が可能となったとことに起因するものと考えられる。なお、この結果は、本発明の効果が0℃という低温条件でも顕著に認められることを意味するものである。
一方、充放電サイクル性能については、磁性体量が多くなるにしたがって充放電サイクル性能が低下することが図1からわかる。このことは、粉末Bを混合しない条件の場合では、高率放電性能と充放電サイクル性能との両方を同時に高いレベルにできないこと、これらの性能がいわゆるトレードオフの関係にあることを意味するものである。このことから、粉末Bを混合しない条件の電池では、水素吸蔵合金の磁性体量を大幅に増大した場合、実施例の電池レベルの優れた高率放電性能は得られる可能性があるが、充放電サイクル性能が極めて低いレベルとなることが予想される。これに対して、本発明の方法で製造した負極を用いた場合では、磁性体量がわずかに増加した時点で高率放電性能が高いレベルになっているので、高率放電性能と充放電サイクル性能との両方を高いレベルで実現することができる。
さらに、図1から、磁性体量が6.2Am2/Kgでの充放サイクル性能(実施例10の電池のもの)は、予想される性能(点線で示した)と比べてはるかに高いものであることがわかる。これは、粉末Bの相対的に微細なものとし、粉末Bの含有割合を少ない範囲とすることによって、高率放電性能と充放電サイクル性能との両方を同時に高いレベルにできる効果を飛躍的に高めることができることを意味するものである。具体的に調べたところ、このような効果を得るためには、粉末Bの含有量が3%以上5%以下であること、粉末Bのメジアン粒径が4μm以上8μm以下であることおよび粉末Aのメジアン粒径を18μm以上25μm以下であることを満たす必要があることがわかった。なお、当該効果は、粉末Aの磁性体量が3.5Am2/Kg以上6Am2/Kgの範囲でとくに顕著に認められるものである。
粉末Bの含有量が異なる条件で製作した電池について、1サイクル目から5サイクル目までの放電容量を測定した結果を図2に示す。なお、測定した電池は、負極をセパレータを介して正極で挟み込みこれらの電極に10kgf/cm2の圧力がかかるようにボルトで固定した解放形セルとしたこと、負極形状を幅30mm(無塗工部1mm)、長さ30mm、容量450mAhおよび電解液組成を6.8mol/lKOH、0.8mol/lLiOHとした以外は、実施例1〜4および比較例1と同様の条件で製作した。測定は、20℃の水槽に電池を入れ、充電は0.1Cで150%、放電は0.2ItAで終止電圧−0.6V(vs.Hg/HgO)の条件で充放電を5サイクル繰り返すことによりおこなった。図2から、粉末Bを1wt%以上10wt%以下の割合で含む負極を用いた電池は、粉末Aのみの電池と比べて初期の活性が高いことがわかる。これは、本発明のニッケル水素蓄電池の初期活性化のための工程を短時間でおこなえることを意味するものである。さらに、この図から、粉末Bの割合が多くなるにしたがって初期活性向上効果が顕著であり、とくに含有量が5wt%および10wt%の1サイクル目の容量は、2サイクル目以降のものに匹敵することがわかる。このことは、電池の初期活性化のための工程を不要とできることを意味するものである。以上のことから、本発明によれば、ニッケル水素蓄電池の初期活性化のための工程を大幅に簡素化できることが明らかである。
本発明によれば、高率放電性能、充放電サイクル性能、活性化特性および放置特性に優れたニッケル水素蓄電池が提供される。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高いものである。
Claims (4)
- 水素吸蔵合金の粉末と、前記水素吸蔵合金の粉末と比べて、全体積に対するNiリッチ層の体積の割合が大きい遷移金属元素含有合金の粉末とを含むことを特徴とするニッケル水素蓄電池用負極。
- 水素吸蔵合金の粉末と、前記水素吸蔵合金の粉末と比べて磁性体量が大きい遷移金属元素含有合金の粉末とを活物質として用いたことを特徴とするニッケル水素蓄電池用負極の製造方法。
- 水素吸蔵合金の粉末の磁性体量が6Am2/kg以下であることおよび遷移金属元素含有合金の粉末の磁性体量が7Am2/kg以上であることを特徴とする請求項2記載のニッケル水素蓄電池用負極の製造方法。
- 請求項1のニッケル水素蓄電池用負極、請求項2または3記載の製造方法により製造したニッケル水素蓄電池用負極を備えたことを特徴とするニッケル水素蓄電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007109505A JP2008269888A (ja) | 2007-04-18 | 2007-04-18 | ニッケル水素蓄電池 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007109505A JP2008269888A (ja) | 2007-04-18 | 2007-04-18 | ニッケル水素蓄電池 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2008269888A true JP2008269888A (ja) | 2008-11-06 |
Family
ID=40049147
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007109505A Pending JP2008269888A (ja) | 2007-04-18 | 2007-04-18 | ニッケル水素蓄電池 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2008269888A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107358981A (zh) * | 2017-07-31 | 2017-11-17 | 重庆宙盾新能源技术开发有限公司 | 一种镍氢水能源燃料发电系统 |
CN115461479A (zh) * | 2020-04-28 | 2022-12-09 | 三井金属矿业株式会社 | 储氢合金 |
-
2007
- 2007-04-18 JP JP2007109505A patent/JP2008269888A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107358981A (zh) * | 2017-07-31 | 2017-11-17 | 重庆宙盾新能源技术开发有限公司 | 一种镍氢水能源燃料发电系统 |
CN107358981B (zh) * | 2017-07-31 | 2023-03-14 | 重庆宙盾新能源技术开发有限公司 | 一种镍氢水能源燃料发电系统 |
CN115461479A (zh) * | 2020-04-28 | 2022-12-09 | 三井金属矿业株式会社 | 储氢合金 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4678130B2 (ja) | 密閉型ニッケル水素蓄電池とその製造法 | |
JP5534459B2 (ja) | 水素吸蔵合金およびニッケル水素蓄電池 | |
JP5217826B2 (ja) | ニッケル水素蓄電池 | |
JP5796787B2 (ja) | 水素吸蔵合金及びニッケル水素蓄電池 | |
EP0986119A1 (en) | Alkaline storage battery, hydrogen-absorbing alloy electrode and method for producing the same | |
JP5577672B2 (ja) | 水素吸蔵合金電極およびそれを用いたニッケル水素電池 | |
JP4667513B2 (ja) | 水素吸蔵合金粉末とその表面処理方法、アルカリ蓄電池用負極、およびアルカリ蓄電池 | |
JP2012188728A (ja) | 複合水素吸蔵合金及びニッケル水素蓄電池 | |
JP5169050B2 (ja) | ニッケル水素電池用負極活物質およびニッケル水素電池、およびニッケル水素電池用負極活物質の処理方法 | |
JP5495100B2 (ja) | 水素吸蔵合金及びニッケル水素蓄電池 | |
JP5481803B2 (ja) | ニッケル水素蓄電池 | |
JP6422017B2 (ja) | 水素吸蔵合金、電極及びニッケル水素蓄電池 | |
JP5703468B2 (ja) | 水素吸蔵合金、水素吸蔵合金電極及びニッケル水素二次電池 | |
JP2008269888A (ja) | ニッケル水素蓄電池 | |
JP5532390B2 (ja) | ニッケル水素蓄電池 | |
JP6394955B2 (ja) | 水素吸蔵合金、電極及びニッケル水素蓄電池 | |
JP5532389B2 (ja) | 水素吸蔵合金及びニッケル水素蓄電池 | |
JP4894132B2 (ja) | 水素吸蔵合金電極とその製造方法およびニッケル水素蓄電池 | |
JP2010050011A (ja) | ニッケル水素蓄電池およびその製造方法 | |
JP4706163B2 (ja) | 水素吸蔵合金電極及びこれを用いたニッケル水素蓄電池 | |
JP5309479B2 (ja) | アルカリ蓄電池 | |
JP2010182684A (ja) | ニッケル水素電池用負極活物質の処理方法ならびにニッケル水素電池用負極活物質およびニッケル水素電池 | |
JP4296592B2 (ja) | 水素吸蔵合金粉末とその製造方法、水素吸蔵合金電極およびニッケル水素蓄電池 | |
JP2004185956A (ja) | ニッケル水素蓄電池 | |
JP2005019360A (ja) | 密閉型ニッケル水素蓄電池 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20100507 |
|
A072 | Dismissal of procedure |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A072 Effective date: 20101221 |