JPWO2006040907A1 - アルカリ電池 - Google Patents

アルカリ電池 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2006040907A1
JPWO2006040907A1 JP2006540859A JP2006540859A JPWO2006040907A1 JP WO2006040907 A1 JPWO2006040907 A1 JP WO2006040907A1 JP 2006540859 A JP2006540859 A JP 2006540859A JP 2006540859 A JP2006540859 A JP 2006540859A JP WO2006040907 A1 JPWO2006040907 A1 JP WO2006040907A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nickel
nickel oxyhydroxide
positive electrode
oxyhydroxide
manganese
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2006540859A
Other languages
English (en)
Inventor
加藤 文生
文生 加藤
勝也 澤田
勝也 澤田
忠也 岡田
忠也 岡田
向井 保雄
保雄 向井
野矢 重人
重人 野矢
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Publication of JPWO2006040907A1 publication Critical patent/JPWO2006040907A1/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/02Electrodes composed of, or comprising, active material
    • H01M4/62Selection of inactive substances as ingredients for active masses, e.g. binders, fillers
    • H01M4/624Electric conductive fillers
    • H01M4/625Carbon or graphite
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M6/00Primary cells; Manufacture thereof
    • H01M6/02Details
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/02Electrodes composed of, or comprising, active material
    • H01M4/06Electrodes for primary cells
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/02Electrodes composed of, or comprising, active material
    • H01M4/24Electrodes for alkaline accumulators
    • H01M4/32Nickel oxide or hydroxide electrodes
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/02Electrodes composed of, or comprising, active material
    • H01M4/36Selection of substances as active materials, active masses, active liquids
    • H01M4/362Composites
    • H01M4/364Composites as mixtures
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/02Electrodes composed of, or comprising, active material
    • H01M4/36Selection of substances as active materials, active masses, active liquids
    • H01M4/48Selection of substances as active materials, active masses, active liquids of inorganic oxides or hydroxides
    • H01M4/50Selection of substances as active materials, active masses, active liquids of inorganic oxides or hydroxides of manganese
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M50/00Constructional details or processes of manufacture of the non-active parts of electrochemical cells other than fuel cells, e.g. hybrid cells
    • H01M50/10Primary casings; Jackets or wrappings
    • H01M50/172Arrangements of electric connectors penetrating the casing
    • H01M50/174Arrangements of electric connectors penetrating the casing adapted for the shape of the cells
    • H01M50/182Arrangements of electric connectors penetrating the casing adapted for the shape of the cells for cells with a collector centrally disposed in the active mass, e.g. Leclanché cells
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/02Electrodes composed of, or comprising, active material
    • H01M2004/021Physical characteristics, e.g. porosity, surface area
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/02Electrodes composed of, or comprising, active material
    • H01M2004/026Electrodes composed of, or comprising, active material characterised by the polarity
    • H01M2004/028Positive electrodes
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/02Electrodes composed of, or comprising, active material
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Composite Materials (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)
  • Primary Cells (AREA)

Abstract

正極合剤と、負極と、前記正極合剤と前記負極との間に配置されたセパレータとを具備するアルカリ電池であって、正極合剤は、オキシ水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび導電剤を含み、(1)オキシ水酸化ニッケルには少なくともマンガンが固溶しており、マンガンが、オキシ水酸化ニッケルに含まれる金属元素の総量の0.5〜10mol%を占め、(2)オキシ水酸化ニッケルがβ型の結晶構造を主体とし、(3)オキシ水酸化ニッケルの体積基準の平均粒子径が、8〜15μmである。上記のような正極合剤を用いることにより、アルカリ電池の高容量化と保存特性の向上を図ることができる。また、マンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケルが上記のような特性を有することにより、そのオキシ水酸化ニッケルの生産性を大幅に向上させることができる。

Description

本発明は、オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンを活物質として含む正極合剤を備えるアルカリ電池に関する。
アルカリマンガン乾電池に代表されるアルカリ電池は、正極端子を兼ねる正極ケースの中に、円筒状の二酸化マンガンからなる正極合剤ペレットを正極ケースに密着するように配置し、そのペレットの内側にセパレータを介してゲル状の亜鉛負極を配置したインサイドアウト型の構造を有する。近年のデジタル機器の普及に伴い、これらの電池が使用される機器の負荷電力は次第に大きくなってきている。このため、強負荷放電性能に優れる電池が要望されている。例えば、強負荷放電特性を向上させるために、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを混合することが提案されている(特許文献1参照)。近年では、このような電池が実用化され、広く普及するに到っている。
上記アルカリ電池に用いられるオキシ水酸化ニッケルは、例えば、アルカリ蓄電池用途として使用されてきた球状ないしは鶏卵状の水酸化ニッケルを、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の酸化剤で酸化することにより作製される(特許文献2参照)。このとき、原料の球状水酸化ニッケルとしては、嵩密度(ないしはタップ密度)の大きいβ型のものが用いられ、これを酸化剤で処理して、β型の結晶構造を主体とする球状オキシ水酸化ニッケルに変換している。このようなオキシ水酸化ニッケルを用いることにより、高密度の正極を得ることができる。その結果、電池を高容量化することが可能となる。
一方、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを混合したアルカリ電池は、オキシ水酸化ニッケルを含まないアルカリ電池と比較して保存性能が悪いという問題がある。特に、高温で保存した場合には、正極の自己放電が大きくなることがある。この自己放電反応は、式(1)に示すオキシ水酸化ニッケルの還元反応、及び式(2)に示す水酸化物イオンの酸化分解反応からなり、全体として、式(3)に示されるような反応となる。
NiOOH+HO+e → Ni(OH)+OH (1)
4OH → 2HO+O+4e (2)
4NiOOH+2HO → 4Ni(OH)+O (3)
従って、保存後の電池においで、強負荷放電特性を維持させるためには、式(3)に示す自己放電反応を抑制して、オキシ水酸化ニッケルの劣化を回避する必要がある。
例えば、その自己放電反応を抑制するために、少量の亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケルを用いることが提案されている(特許文献3参照)。このような亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケルにおいては、その表面での酸素発生過電圧が高まり、上記式(2)の反応が抑制される。このため、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを混合したアルカリ電池でも、保存性能をある程度まで向上させることが可能となる。
類似の技術として、亜鉛とコバルトを少量含有したオキシ水酸化ニッケルを用いる提案(特許文献4参照)や、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム)を少量含有したオキシ水酸化ニッケルを用いる提案(特許文献5参照)がなされている。
また、電池の自己放電を低減するために、オキシ水酸化ニッケルを作製した後に、そのオキシ水酸化ニッケルをアルカリ水溶液に浸漬して、オキシ水酸化ニッケル結晶の層間に、アルカリカチオンを強制的に含有させることも提案されている(特許文献6参照)。
特開昭57−72266号公報 特公平4−80513号公報 特開2002−75354号公報 特開2002−203546号公報 特開2002−289187号公報 特開2001−325954号公報
しかしながら、上述したような亜鉛、コバルト、アルカリ土類金属のような金属元素を少量含む固溶体オキシ水酸化ニッケルを用いた場合には、次のような問題を有する。
1)亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケル
亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケルは、亜鉛を含む固溶体水酸化ニッケルを酸化剤で処理することにより作製される。水酸化ニッケル中に固溶させた亜鉛は、アルカリ蓄電池の分野で周知のように、ニッケルの酸化を抑制する効果がある。このため、亜鉛を固溶した水酸化ニッケルは、酸化剤により酸化されにくく、オキシ水酸化ニッケル中に未反応の水酸化ニッケルが残留しやすい。よって、亜鉛を固溶した水酸化ニッケルを十分に酸化させるためには、大過剰の酸化剤を添加して長時間処理を施す必要がある。このため、亜鉛を固溶したオキシ水酸化ニッケルを、生産性良く製造するのは困難である。
2)コバルトを含む固溶体オキシ水酸化ニッケルまたはコバルトおよび亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケル
コバルト、またはコバルトおよび亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケルは、コバルト、またはコバルトおよび亜鉛を含む固溶体水酸化ニッケルを酸化剤で処理することにより作製される。コバルトはニッケルの酸化還元電位を下げて酸化剤による酸化を容易にするが、オキシ水酸化ニッケルの放電時にはその電位を低下させることがある。つまり、作製した電池の放電特性が低下する傾向にある。また、コバルトの価格が割高であるため、このようなオキシ水酸化ニッケルは、コスト高になるという問題もある。
3)アルカリ土類金属を含む固溶体オキシ水酸化ニッケル
アルカリ土類金属を含む固溶体オキシ水酸化ニッケルは、アルカリ土類金属を含む固溶体水酸化ニッケルを酸化剤で処理することにより作製される。まず、アルカリ土類金属を固溶した水酸化ニッケルを合成する場合、アルカリ土類金属の硫酸塩の大半が水に不溶なので、水に可溶性の、アルカリ土類金属の硝酸塩水溶液等を用いる必要がある。このため、硝酸根の除去工程などが必要となり、一般の水酸化ニッケル合成に比べて、操業条件が複雑となる。さらに、水酸化ニッケル中に固溶させたアルカリ土類金属も、亜鉛と同様にニッケルの酸化を抑制する効果があるため、酸化工程における生産性を高めることが困難となる。
本発明は、正極合剤と、負極と、正極合剤と負極との間に配置されたセパレータとを具備するアルカリ電池に関する。ここで、正極合剤は、オキシ水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび導電剤を含み、(1)このオキシ水酸化ニッケルには、少なくともマンガンが固溶されており、このマンガンは、そのオキシ水酸化ニッケルに含まれる金属元素の総量の0.5〜10mol%を占める。また、(2)オキシ水酸化ニッケルはβ型の結晶構造を主体とする。さらに、(3)オキシ水酸化ニッケルの体積基準の平均粒子径は、8〜15μmである。
上記アルカリ電池において、オキシ水酸化ニッケルは、さらに、
(4)ニッケルの平均価数が2.95〜3.05である、
(5)タップ密度が2.15g/cm以上である、
(6)BET比表面積が5〜20m/gである
の少なくとも1つの物性を満たすことが好ましい。ここで、タップ密度とは、300回タッピングした後のオキシ水酸化ニッケルのタップ密度をいう。
上記アルカリ電池において、オキシ水酸化ニッケルは、その表面に、ナトリウムイオンを担持しており、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の0.5〜1重量%を、ナトリウムイオンが占めることが好ましい。
上記アルカリ電池において、オキシ水酸化ニッケルは、正極合剤の10〜80重量%を占めることが好ましい。
上記アルカリ電池において、導電剤が黒鉛であり、黒鉛が正極合剤の3〜10重量%を占めることが好ましい。
本発明によると、正極合剤がオキシ水酸化ニッケルと二酸化マンガンとを含むアルカリ電池の高容量化と保存特性の向上を図ることができる。
また、マンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケルが上記のような物性値を有することにより、そのオキシ水酸化ニッケルの生産性も大幅に高めることができる。よって、強負荷放電特性や信頼性に優れたアルカリ電池を安価に供給することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るアルカリ電池の一部を断面にした正面図である。 実施例で用いたMnを固溶した水酸化ニッケル(曲線A)とMnを共晶状態で含む水酸化ニッケル(曲線B)のそれぞれのX線回折プロファイルを示すグラフである。
図1に、本発明の一実施形態にかかるアルカリ電池を示す。
このアルカリ電池は、正極合剤2、ゲル状負極3、正極合剤2とゲル状負極3の間に配置されたセパレータ4、電解液(図示せず)、ならびにこれらを収容する正極ケース1を具備する。
正極ケース1は、有底円筒形をしており、底部中央には、外側に突出する突部を有している。その突部は、正極端子として機能する。
正極ケース1の内部には、中空円筒状の正極合剤2が、正極ケース1と接するように配置される。正極ケース1の内面には、黒鉛塗装膜10が形成されている。
正極合剤2の内側には、セパレータ4を介して、ゲル状負極3が配置されている。また、ゲル状負極3と正極ケース1とは、絶縁キャップ9によって絶縁されている。
ゲル状負極3には、負極集電体6が差し込まれている。負極集電体6は、樹脂製封口板5の中央孔に嵌合している。負極集電体6の頂部には、底板7が溶接されている。底板7は、負極端子を兼ねている。
正極ケース1の開口部は、正極ケース1の開口端部を封口板5の周縁部を介して底板7の周縁部にかしめつけることにより封口されている。正極ケース1の外表面は、外装ラベル8で被覆されている。
上記電解液は、正極合剤2とセパレータ4とを湿潤させるために用いられる。この電解液としては、当該分野で公知のものを用いることができる。一例として、水酸化カリウムを40重量%含む水溶液が挙げられる。
上記ゲル状負極3としては、当該分野で公知のものを用いることができる。例えば、このようなゲル状負極としては、ゲル化剤であるポリアクリル酸ソーダ、アルカリ電解液、および負極活物質である亜鉛粉末からなるものが挙げられる。なお、ゲル状負極に用いられるアルカリ電解液は、上記電解液と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
正極合剤2は、オキシ水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび導電剤を含む。本発明で用いられるオキシ水酸化ニッケルには、少なくともマンガンが固溶しており、このマンガンはオキシ水酸化ニッケルに含まれる金属元素の総量の0.5〜10mol%を占める。マンガンの量が0.5mol%より小さくなると、容量を向上させたり、保存特性を向上させたりする効果が低下する場合がある。マンガンの量が10mol%より大きくなると、オキシ水酸化ニッケル中に含まれるニッケルの量が低くなり、十分な容量を得ることができない場合がある。
そのオキシ水酸化ニッケルの結晶構造は、密度の高いβ型の結晶構造を主体とする。このとき、β型の結晶構造は、オキシ水酸化ニッケルの結晶構造の90%以上を占めることが好ましい。β型の結晶の含有量が90%よりも少なくなると、オキシ水酸化ニッケルの嵩密度あるいはタップ密度が低下して、所定容積のケースへのオキシ水酸化ニッケルの充填密度が低下するからである。
オキシ水酸化ニッケルの体積基準の平均粒子径は、8〜15μmである。オキシ水酸化ニッケルの平均粒子径が8μmより小さかったり、平均粒子径が15μmより大きかったりすると、正極合剤粒子同士の接触度合いなどが低下し、保存時の容量低下が大きくなることがある。
よって、上記オキシ水酸化ニッケルが、8〜15μmの平均粒子径を有することにより、電池容量が向上するとともに、オキシ水酸化ニッケルの自己分解が少なくなり、電池の保存性能を大きく向上させることができる。
上記のように、本発明の大きな特徴の1つは、オキシ水酸化ニッケルに、少なくともマンガンを固溶していることである。本発明者らが、各種水酸化ニッケルやオキシ水酸化ニッケルについて鋭意検討を行った結果、少なくともマンガンを適量固溶した水酸化ニッケルは、酸化剤を用いて化学的に酸化することが非常に容易となることがわかった。
また、オキシ水酸化ニッケルにマンガンが固溶しているために、そのオキシ水酸化ニッケルの電子伝導性が高く保たれる。よって、オキシ水酸化ニッケルの放電後に二酸化マンガンが放電する際にも、二酸化マンガンからも十分な容量を引き出すことが可能となる。
上記オキシ水酸化ニッケルは、以下の物性:
(4)ニッケル平均価数が2.95〜3.05である、
(5)タップ密度が2.15g/cm以上である、
(6)BET比表面積が5〜20m/gである
のいずれか1つ以上を有することが好ましい。
上記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数が2.95未満であると、オキシ水酸化ニッケルの単位重量あたりの容量が少なくなるため、電池の容量が低下する場合がある。一方、そのニッケルの平均価数が3.05を超えると、オキシ水酸化ニッケルにおいて、γ型の結晶の比率が増えて、強負荷放電特性が低下する場合がある。ここで、オキシ水酸化ニッケル中に含まれるニッケルの平均価数は、例えば、以下に示すICP発光分析と酸化還元滴定とを用いて求めることができる。
(A)オキシ水酸化ニッケル中の金属重量比率の測定
所定量のオキシ水酸化ニッケルを硝酸水溶液と混合し、その混合物を加熱し、オキシ水酸化ニッケルを全て溶解させる。この後、得られた溶液を、ICP発光分析装置(例えば、VARIAN社製のVISTA−RL)で分析する。これにより、オキシ水酸化ニッケルに含まれる各金属元素(ニッケル、マンガン等)の重量比率が求められる。
(B)酸化還元滴定による平均ニッケル価数の測定
オキシ水酸化ニッケルをヨウ化カリウムおよび硫酸と混合し、その混合物を十分に攪拌して、オキシ水酸化ニッケルを完全に溶解させる。この溶解過程で価数の高いニッケルイオン、マンガンイオン等は、ヨウ化物イオンをヨウ素に酸化し、そのニッケルイオンおよびマンガンイオン等は2価に還元される。そこで、生成したヨウ素を0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定する。そのときのチオ硫酸ナトリウムの濃度とその滴定量から、上記のような2価より価数の大きいニッケルイオン、マンガンイオン等の全量を求めることができる。
上記で求めた2価より価数の大きいニッケルイオン、マンガンイオン等の全量と、上記(A)で求めた金属重量比率の値とを用いて、オキシ水酸化ニッケル中のニッケルの平均価数を見積ることを可能となる。このとき、オキシ水酸化ニッケルに含まれるマンガンの価数は4価と仮定する。オキシ水酸化ニッケルにコバルトが含まれる場合には、コバルトの価数を3.5価と仮定する。
さらに、本発明では、オキシ水酸化ニッケルのタップ密度は2.15g/cm以上であることが好ましい。これにより、オキシ水酸化ニッケルのケース内への充填性を好適にすることが可能となる。
また、オキシ水酸化ニッケルのBET比表面積は5〜20m/gの範囲にあることが好ましい。これにより、正極合剤の電解液含浸性を好適とすることが可能となる。
また、オキシ水酸化ニッケルは、その粒子表面に、ナトリウムイオンを担持していることが好ましい。このとき、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の0.5〜1重量%を、ナトリウムイオンが占めることが好ましい。
オキシ水酸化ニッケルは、通常、水酸化ナトリウム水溶液中に分散させた水酸化ニッケルに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の酸化剤を加えて作製される場合が多い。このため、酸化後の水洗条件に依存して、オキシ水酸化ニッケルの表面に、ナトリウムイオンが担持される。オキシ水酸化ニッケルの表面に担持されているナトリウムイオンの量が、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の1重量%よりも多くなると、ナトリウムイオンの弊害が大きくなり、電池特性、主として保存特性が低下することがある。一方、その表面に担持されているナトリウムイオンの量が、0.5重量%未満になると、オキシ水酸化ニッケル表層部にあるニッケルの価数が放電時に低下しやすくなる。このため、その容量を十分に取り出せなくなることがある。
オキシ水酸化ニッケルの表面に担持されたナトリウムイオンの量は、例えば、以下のようにして求めることができる。
所定量のオキシ水酸化ニッケル粉末を硝酸水溶液と混合し、その混合物を加熱して、そのオキシ水酸化ニッケル粉末を全て溶解させる。この後、得られた溶液を、ICP発光分析装置(例えば、VARIAN社製のVISTA−RL)で分析して、ナトリウムの量を求める。このナトリウムの量を用いて、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計に占めるナトリウムイオンの割合(重量%)を求める。
また、上記オキシ水酸化ニッケルは、正極合剤の10〜80重量%を占めることが好ましい。正極活物質である二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを比較した場合、二酸化マンガンの方が単位重量あたりの容量やケース内への充填密度、材料価格といった点では優れる。しかし、放電電圧、強負荷放電特性等についてはオキシ水酸化ニッケルの方が優れる。よって、電池全体としての特性や価格のバランスを考えると、正極合剤中のオキシ水酸化ニッケルの混合比率を、上記範囲にするのが最も好ましい。
本発明のアルカリ電池の正極合剤に含まれる二酸化マンガンとしては、体積基準の平均粒子径が30〜50μm程度の電解二酸化マンガンが好ましい。
導電剤としては、黒鉛、各種カーボンブラック、繊維状炭素等を用いることができる。これらの中でも、導電剤としては、体積基準の平均粒子径が5〜20μm程度の黒鉛粉末が最も好ましい。これは、正極ペレットを成型しやすく、また電池作製時に問題が生じにくいからである。さらに、そのような黒鉛を用いることにより、電池特性を安定化することができる。ここで、黒鉛とは、結晶性炭素のことをいい、粉末X線回折法で求められる(002)面の面間隔(d002)が3.4Å以下のものを指す。
また、導電剤は正極合剤の3〜10重量%を占めることが好ましい。これは、正極合剤中の活物質の体積エネルギー密度を十分に高め、強負荷放電特性を満足に確保することができるからである。
以下、本発明を、実施例に基づいて詳細に説明する。
実施例1
(オキシ水酸化ニッケルの作製)
攪拌翼を備えた反応槽に、所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、所定量ずつ、ポンプで連続的に供給した。供給された溶液は、反応槽内で連続的に混合、攪拌され、水酸化ニッケル粒子が析出した。反応槽内の反応溶液のpHは12、温度は50℃となるようにした。次いで、析出した水酸化ニッケル粒子を水洗し、真空乾燥した。水酸化ニッケルを合成する際に、水酸化ニッケル中に含まれるマンガンの含有量を、水酸化ニッケルに含まれる金属イオンの総量に対して5mol%となるように調整した。このようにして得られた水酸化ニッケルを水酸化ニッケルa(Ni0.95Mn0.05(OH))とした。
また、硫酸マンガン(II)水溶液の代わりに、硫酸亜鉛(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液、または硝酸カルシウム(II)水溶液を用いたこと以外は、上記水酸化ニッケルaを作製したときと同様な方法で、それぞれ水酸化ニッケルb(Ni0.95Zn0.05(OH))、c(Ni0.95Co0.05(OH))、d(Ni0.95Ca0.05(OH))を作製した。
また、硫酸マンガン(II)水溶液の代わりに、硫酸亜鉛(II)と硫酸コバルト(II)の混合水溶液を用いたこと以外は、上記水酸化ニッケルaを作製したときと同様な方法で、水酸化ニッケルe(Ni0.95Zn0.025Co0.025(OH))を作製した。
さらに、硫酸マンガン(II)水溶液を用いなかったこと以外、上記水酸化ニッケルaを作製したときと同様な方法で、いずれの金属元素も固溶していない水酸化ニッケルfを作製した。
こうして得られた水酸化ニッケルa〜fを、粉末X線回折法を用いて分析した。その結果、水酸化ニッケルa〜fは、いずれもβ型の結晶構造(β型の割合:100%)を有し、水酸化ニッケルa〜eでは添加した金属元素が固溶した状態で水酸化ニッケル結晶中に存在することが確認された。これらの水酸化ニッケルa〜fの体積基準の平均粒子径を、レーザー回折式粒度分布計(日機装(株)のマイクロトラックFRA)で測定したところ、いずれも、約10μmであった。それらのタップ密度を、タップ密度測定装置((株)セイシン企業製のタップデンサーKYT−4000)で測定したところ、約2.2g/cmであった。また、それらのBET比表面積を、BET比表面測定装置((株)島津製作所製のASAP−2010)で測定したところ、10〜12m/gであった。
なお、以下の実施例においても、体積基準の平均粒子径、タップ密度、およびBET比表面積は、上記の装置を用いて測定した。
次に、200gの水酸化ニッケルaを、1Lの水酸化ナトリウム水溶液(濃度:0.1mol/L)に投入し、攪拌しながら、酸化剤である次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:10wt%)を所定量加えて、反応溶液とした。その反応溶液をさらに攪拌して、水酸化ニッケルaをオキシ水酸化ニッケルに変換した。このとき、反応溶液の温度を50℃とした。
添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量は、水酸化ニッケルに含まれるニッケルを3.0価まで酸化させるのに必要な最低限の理論量を1.0当量として、1.1当量と1.8当量の2種類とした。また、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後の処理時間(攪拌時間)を2.0時間と6.0時間の2種類に設定した。このように、表1に示すような4つの異なる酸化条件で、4種のオキシ水酸化ニッケルを作製した。
次いで、得られたオキシ水酸化ニッケル粒子を水洗した。このとき、水洗は、その濾液のpHが11.5(25℃)に達するまで行った。その後、水洗後のオキシ水酸化ニッケルを60℃で24時間真空乾燥して、オキシ水酸化ニッケルA1〜A4を得た。
これらのオキシ水酸化ニッケルの表面に担持されるナトリウムイオンの量を測定した。その結果、そのナトリウムイオンの量は、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の0.8重量%程度であった。
Figure 2006040907
次に、水酸化ニッケルb〜fを用いたこと以外、上記オキシ水酸化ニッケルA1〜A4を作製したときの方法と同様にして、オキシ水酸化ニッケルB1〜B4、C1〜C4、D1〜D4、E1〜E4、およびF1〜F4をそれぞれ作製した。ここで、各オキシ水酸化ニッケルを表すA〜Fは、水酸化ニッケルa〜fに対応する。また、1〜4の番号は、表1中に示したA1〜A4のそれぞれと番号が同じであれば、同じ酸化条件で作製されたことを意味する。
これら24種類のオキシ水酸化ニッケルは、いずれも、その体積基準の平均粒子径(D50)が約10μmであった。また、これらのオキシ水酸化ニッケルのタップ密度は約2.3g/cmであり、BET比表面積は10〜15m/gの範囲にあった。
さらに、これら24種類のオキシ水酸化ニッケルについて、そのニッケル平均価数を測定した。その結果を、表2に示す。
また、粉末X線回折法により、いずれのオキシ水酸化ニッケルもβ型の結晶構造を主体とすることが確認された。つまり、いずれのオキシ水酸化ニッケルにおけるβ型の結晶の割合は、β型の結晶構造に特徴的な(001)面による回折ピークの強度とγ型の結晶構造に特徴的な(003)面による回折ピークの強度とから見積もると、98%以上であった。しかしながら、水酸化ニッケルのピークを示す試料もあったため、酸化剤による処理の際に酸化されずに残留した水酸化ニッケル量を反映する回折角2θ=33.8°付近の(100)面による回折ピークの高さを読み取った。その結果を表2に示す。なお、表2において、「N.D.」は、(100)面による回折ピークが現れなかったことを意味する。また、オキシ水酸化ニッケルに固溶した元素の種類を表2に示す。
Figure 2006040907
水酸化ニッケルaまたはcに含まれるニッケルは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量が少なく、処理時間が短くても、その平均価数がほぼ3.0価となるまで酸化されていた。よって、マンガンを固溶させた水酸化ニッケルaまたはコバルトを固溶させた水酸化ニッケルcは、酸化が容易であることがわかる。
これに対して、水酸化ニッケルb、d、e、およびfに含まれるニッケルは、過剰な次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加し、かつ長時間処理を行わなければ、その平均価数が3.0価付近には到達していなかった。よって、亜鉛を固溶させた水酸化ニッケルb、カルシウムを固溶させた水酸化ニッケルd、亜鉛とコバルトを固溶させた水酸化ニッケルe、あるいは他の金属元素を固溶させていない水酸化ニッケルfは、酸化が容易には進行しないことがわかる。ここで、特に、水酸化ニッケルb、d、およびeにおいては、水酸化ニッケル中に固溶させた亜鉛イオンやカルシウムイオンの価数は2価のまま不変である。水酸化ニッケルを酸化剤で酸化する場合、これらのイオンは2価の状態を保つため、酸化されにくいと考えられる。
(アルカリ電池の作製)
上記のようにして得られたオキシ水酸化ニッケル粉末A1〜F4を用いて、図1に示されるようなアルカリ電池を作製した。
(正極合剤の作製)
まず、体積基準の平均粒子径が40μmである電解二酸化マンガンと、上記オキシ水酸化ニッケルA1と、導電剤である人造黒鉛(日本黒鉛工業(株)製のSPグレード;平均粒径15μm)とを重量比50:45:5で混合し、混合粉を得た。この混合粉100重量部あたり、40重量%の水酸化カリウム水溶液を1重量部混合し、その混合物をミキサーで均一に混合して、所定の粒度を有する粒状物を得た。得られた粒状物を中空円筒形に加圧成型して、正極合剤とした。
(負極の作製)
ゲル化剤であるポリアクリル酸ソーダ、アルカリ電解液、および負極活物質である亜鉛粉末を、重量比で、2.5:100:200の割合で混合して、ゲル状負極を作製した。アルカリ電解液としては、40重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。
(アルカリ電池の組立)
上記のようにして得られた正極合剤およびゲル状負極を用いて、図1に示されるような単3サイズのアルカリ電池を作製した。
正極ケースとしては、ニッケルメッキされた鋼板からなるものを用いた。この正極ケースの内壁には、黒鉛塗装膜を形成しておいた。
この正極ケースの内部に、上記正極合剤を複数個挿入し、その後、この正極合剤を再度加圧することにより、正極ケースの内面に密着させた。
次に、この正極合剤の内側の中空部に、セパレータおよび絶縁キャップを挿入した。この後、電池ケース内に電解液を注液して、セパレータと正極合剤を湿潤させた。ここで、電解液としては、40重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。
電解液の注液後、セパレータの内側に、上記ゲル状負極を充填した。この後、封口体および底板が一体化された負極集電体を、ゲル状負極に挿入した。正極ケースの開口端部を、封口板を介して、底板にかしめつけて、正極ケースの開口部を封口した。最後に、正極ケースの外表面を外装ラベルで被覆して、電池を完成させた。得られた電池を、電池A1とした。
オキシ水酸化ニッケルA1の代わりに、オキシ水酸化ニッケルA2〜A4、B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4、E1〜E4、およびF1〜F4を用いたこと以外、電池1Aを作製したときの作製方法と同様にして、電池A2〜A4、B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4、E1〜E4、およびF1〜F4を作製した。ここで、電池B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4、E1〜E4、およびF1〜F4は比較電池である。
(電池の評価)
(低負荷放電特性)
上記で作製した24種類の各電池を、20℃で、50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの初度の放電容量(以下、50mAでの放電容量または低負荷放電容量ともいう)を測定した。
(強負荷放電特性)
上記24種類の各電池を、20℃で、1000mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの初度の放電容量(以下、1000mAでの放電容量または強負荷放電容量ともいう)を測定した。
(保存特性)
60℃で1週間保存した電池を、20℃で1000mAの定電流で連続放電させて、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量(以下、保存後の放電容量ともいう)を測定した。上記強負荷放電容量に対する保存後の放電容量の比を百分率値で表したものを容量維持率とした。
得られた結果を、表3に示す。表3において、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ、比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。
Figure 2006040907
電池A1〜A4は、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および保存後の容量維持率のいずれもについても、優れた値を示した。低負荷放電容量および強負荷放電容量が高いのは、以下のように考えられる。すなわち、オキシ水酸化ニッケルA1〜A4のニッケル価数が十分に高いため、オキシ水酸化ニッケルの放電容量が大きくなる。さらにオキシ水酸化ニッケルの放電後に二酸化マンガンが放電する際にも、固溶させたマンガンの効果としてオキシ水酸化ニッケルの電子伝導性が高く保たれ、二酸化マンガンからも十分な容量が引き出される。
また、保存特性が向上したことのメカニズムは定かではないが、オキシ水酸化ニッケルの結晶中に固溶させたマンガンにより、オキシ水酸化ニッケル上での酸素発生過電圧が上昇し、その結果、自己放電が抑制されたために、容量維持率が高い値を示したと考えられる。
一方、ニッケル平均価数が十分に高められておらず、部分的に未反応の水酸化ニッケルを含むオキシ水酸化ニッケルを用いた電池B1〜B3、D1〜D3、E1〜E3、およびF1〜F3では、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それほど向上していなかった。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液が過剰に添加され、かつ長時間処理することにより得られたオキシ水酸化ニッケルを含む電池B4、D4およびE4においては、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および容量維持率は、それぞれ、電池B1〜B3、電池D1〜D3および電池E1〜E3と比較して、多少良くなる。しかしながら、それらの特性は、いずれも本発明の電池A1〜A4より劣る。
コバルトを固溶させたオキシ水酸化ニッケルを用いた電池C1〜C4では、オキシ水酸化ニッケルのニッケル価数が高められるので、低負荷放電容量は比較的高い。しかしながら、固溶させたコバルトにより、オキシ水酸化ニッケルの酸化還元電位が低くなるため、強負荷放電容量は、それほど高くなかった。
以上のように、上記のようなオキシ水酸化ニッケルA1、A2、A3またはA4と二酸化マンガンとを正極合剤に含有させることにより、アルカリ電池の高容量化と保存性能の改善を図ることが可能となる。また、マンガンが固溶されていることにより、水酸化ニッケルからオキシ水酸化ニッケルの作製、すなわち水酸化ニッケルの酸化剤による酸化処理も非常に容易となることがわかる。
実施例2
ここでは、オキシ水酸化ニッケルに含有させるマンガンの量、およびそのマンガンの状態に関する検討を行った。
マンガンの含有量が、水酸化ニッケルに含まれる金属イオンの総量に対して0.3mol%、0.5mol%、1mol%、3mol%、7mol%、10mol%、または12mol%となるように、硫酸マンガン(II)水溶液の供給速度を調整したこと以外、水酸化ニッケルaの作製方法と同様にして、マンガンの含有量の異なる7種の水酸化ニッケルを合成した。これらを、水酸化ニッケルm1〜m7とした。
水酸化ニッケルm1〜m7を、粉末X線回折法により分析したところ、これらの水酸化ニッケルは、いずれもβ型の結晶構造を有し、そしてその水酸化ニッケル結晶中に、添加したマンガンが固溶していることが確認された。
マンガンの含有量が水酸化ニッケルに含まれる金属イオンの総量に対して3mol%または7mol%となるように硫酸マンガン(II)水溶液の供給速度を調整し、反応溶液のpHを11.0、反応溶液の温度を40℃としたこと以外、水酸化ニッケルaの作製方法と同様にして、水酸化ニッケルm8およびm9を作製した。
水酸化ニッケルm8およびm9を粉末X線回折法により分析した。ここで、一例として、水酸化ニッケルm5(Mn:7mol%、固溶)(曲線A)と水酸化ニッケルm9(Mn:7mol%、共晶)(曲線B)のX線回折プロファイルを、図2に示す。
これらの水酸化ニッケルm8およびm9は、いずれもβ型水酸化ニッケルの結晶構造を有していた。しかしながら、図2に示されるように、水酸化ニッケルm9においては、マンガン酸化物と思われるピーク(図2の黒丸の位置)も現れていた。このため、水酸化ニッケルm8およびm9においては、マンガンが水酸化ニッケル結晶中に固溶しているわけではなく、マンガンがマンガン酸化物の形態で水酸化ニッケル中に分散されている、つまりマンガンを含む水酸化ニッケルm8およびm9は、共晶であると推察された。
また、水酸化ニッケルm1〜m9の体積基準の平均粒子径は約10μmであり、タップ密度は約2.2g/cmであり、BET比表面積は10〜12m/gであった。
次に、200gの水酸化ニッケルm1を用い、反応溶液の温度を50℃とし、添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を1.5当量とし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後の処理時間(攪拌時間)を4.0時間としたこと以外、実施例1と同様にして、水酸化ニッケルm1をオキシ水酸化ニッケルに変換した。
その後、得られたオキシ水酸化ニッケル粒子を、水洗した。このとき、水洗は、濾液のpHが11.5(25℃)に達するまで行った。この後、水洗後のオキシ水酸化ニッケルを、60℃で、24時間、真空乾燥して、オキシ水酸化ニッケルM1を得た。
水酸化ニッケルm1の代わりに、水酸化ニッケルm2〜m9を用いたこと以外、オキシ水酸化ニッケルM1を作製したときの方法と同様にして、オキシ水酸化ニッケルM2〜M9を作製した。なお、オキシ水酸化ニッケルM1〜M9の表面に担持されるナトリウムイオンの量は、いずれも、オキシ水酸化ニッケルおよびナトリウムイオンの合計の0.8重量%程度であった。
得られた9種類のオキシ水酸化ニッケルは、いずれも、体積基準の平均粒子径(D50)が約10μmであった。これらのオキシ水酸化ニッケルのタップ密度は約2.3g/cmであり、BET比表面積は10〜15m/gであり、ニッケルの平均価数は約3.0であった。
オキシ水酸化ニッケルM1〜M9を、粉末X線回折法を用いて分析した。その結果、これらのオキシ水酸化ニッケルにおいて、残留の水酸化ニッケルは一切認められなかった。
次に、上記オキシ水酸化ニッケルM1〜M9を用いて、上記実施例1と同様にして、アルカリ電池M1〜M9を作製した。ここで、電池M1および電池M7〜M9は、比較電池である。
こうして作製した電池M1〜M9について、実施例1と同様にして、低負荷放電容量、強負荷放電容量および保存後の容量維持率を求めた。得られた結果を表4に示す。表4において、表3と同様に、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。また、表4には、オキシ水酸化ニッケルに含まれる金属元素に占めるマンガンの量(mol%)とその状態(固溶または共晶)についても示す。
Figure 2006040907
表4により、0.5〜10mol%の割合でマンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケルを用いた電池M2〜M6は、低負荷放電容量、強負荷放電容量、容量維持率のいずれについても、高い値を示した。
一方、マンガンの固溶量が0.3mol%のオキシ水酸化ニッケルを用いた電池M1では、これらの特性値は低い値を示した。これは、マンガンの量が少なすぎて、その十分な効果が得られなかったためと考えられる。
また、マンガンの固溶量が12mol%のオキシ水酸化ニッケルを用いた電池M7では、電池容量に寄与するニッケル含量が相対的に少なくなるため、低負荷放電容量および強負荷放電容量の値が低下していた。
さらに、マンガンを含有するオキシ水酸化ニッケルが共晶である電池M8およびM9では、容量維持率は比較的高い値を示したが、低負荷放電容量および強負荷放電容量の低下が顕著であった。これは、マンガンが固溶することによって、オキシ水酸化ニッケルの放電末期の電子伝導性が高く保たれ、二酸化マンガンからも十分な容量を引き出して高容量化させるという効果が、オキシ水酸化ニッケルM8およびM9ではうまく発現しないためであると推察される。
実施例3
本実施例では、オキシ水酸化ニッケルの平均粒子径(粒度)に関する検討を行った。
錯イオン形成剤であるアンモニア水の供給速度を変化させて、反応槽内で析出する水酸化ニッケルの結晶核の大きさと水酸化ニッケル粒子の成長速度を調整して、水酸化ニッケルの体積基準の平均粒子径(D50)を、それぞれ5μm、8μm、11μm、15μm、および20μmとしたこと以外、水酸化ニッケルaの作製方法と同様にして、水酸化ニッケルを作製した。得られた水酸化ニッケルをそれぞれ水酸化ニッケルx1〜x5とした。
粉末X線回折法により、水酸化ニッケルx1〜x5を分析したところ、いずれもβ型の結晶構造を有し、マンガンを固溶していた。また、これらの水酸化ニッケルのタップ密度は2.1〜2.2g/cmの範囲にあり、BET比表面積は10〜18m/gの範囲にあった。
次に、200gの水酸化ニッケルx1を用い、反応溶液の温度を50℃とし、添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を1.5当量とし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後の処理時間(攪拌時間)を4.0時間としたこと以外、実施例1と同様にして、水酸化ニッケルx1をオキシ水酸化ニッケルに変換した。
次いで、得られたオキシ水酸化ニッケルを水洗した。このとき、水洗は、濾液のpHが11.5(25℃)に達するまで行った。そののち、水洗後のオキシ水酸化ニッケルを、60℃で24時間真空乾燥して、オキシ水酸化ニッケルX1を得た。
水酸化ニッケルx1の代わりに、水酸化ニッケルx2〜x5を用いたこと以外、上記オキシ水酸化ニッケルX1を作製したときの方法と同様にして、それそれ、オキシ水酸化ニッケルX2〜X5を作製した。なお、オキシ水酸化ニッケルX1〜X5の表面に担持されるナトリウムイオンの量は、いずれも、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンの合計の0.8重量%程度であった。
上記オキシ水酸化ニッケルX1〜X5の平均粒径を測定した。その結果、オキシ水酸化ニッケルX1〜X5は、それぞれ水酸化ニッケルx1〜x5とほぼ同一の平均粒子径(D50)を有していた。また、これらのオキシ水酸化ニッケルのタップ密度は2.2〜2.3g/cmの範囲にあり、BET比表面積は10〜20m/gの範囲にあった。
これら5種類のオキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は、いずれも約3.0であった。
また、粉末X線回折法により水酸化ニッケルの有無を測定した。その結果、オキシ水酸化ニッケルX1〜X5において、残留の水酸化ニッケルは一切認められなかった。
次に、上記オキシ水酸化ニッケルX1〜X5を用い、実施例1と同様にして、アルカリ電池X1〜X5を作製した。ここで、電池X1およびX5は、比較電池である。
こうして作製した電池X1〜X5の各々について、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および保存後の容量維持率を測定した。得られた結果を表5に示す。また、表5において、表3と同様に、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。さらに、表5に、各電池に含まれるオキシ水酸化ニッケルの平均粒子径(D50)を示す。
Figure 2006040907
表5に示されるように、体積基準の平均粒子径(D50)が8〜15μmの範囲にあるオキシ水酸化ニッケルを用いた電池X2〜X4は、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および容量維持率のいずれについても、高い値を示した。
一方、平均粒子径が5μmと小さいオキシ水酸化ニッケルを用いた電池X1および平均粒子径が20μmと大きいオキシ水酸化ニッケルを用いた電池X5では、低負荷放電容量、強負荷放電容量および容量維持率について、満足な値が得られなかった。このような差が生ずる理由について、現時点では十分に解明できていないが、以下のように考えられる。すなわち、粒子径が5μmや20μmのオキシ水酸化ニッケルを用いた場合には、正極合剤粒子の電気的な接触度合いやそれに関連するペレットの電気伝導度が比較的悪くなる。特に、60℃で1週間保存することによって、オキシ水酸化ニッケルの自己放電(粒子表面の導電性低下)が進むと、そのことが顕在化すると推察される。
なお、ここでは詳細を述べないが、別の実験で、正極合剤に含まれる電解二酸化マンガンの平均粒子径を30〜50μmの範囲で変化させたり、黒鉛の平均粒子径を5〜20μmの範囲で変化させたり、あるいはオキシ水酸化ニッケルの混合比率を変化させたりしても、得られる電池の60℃で1週間保存した後の容量維持率はオキシ水酸化ニッケルの平均粒子径と関連づけられた。つまり、体積基準の平均粒子径(D50)が8〜15μmのオキシ水酸化ニッケルを用いた系で、その容量維持率が良好となる点が確認された。
以上のように、オキシ水酸化ニッケルの平均粒子径を8〜15μmという範囲に調整することが、放電容量および保存性能を確保する観点から極めて重要であることがわかった。
実施例4
本実施例では、オキシ水酸化ニッケルのニッケル平均価数に関する知見を得るための実験を行った。
実施例1で作製した水酸化ニッケルa(Ni0.95Mn0.05(OH))の200gを用い、反応溶液の温度を50℃とし、添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を、0.9当量、1.0当量、1.2当量、2.0当量、2.5当量、または3.0当量と変化させ、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後の処理時間(攪拌時間)を6.0時間としたこと以外、実施例1と同様にして、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。
次に、得られた6種のオキシ水酸化ニッケル粒子を、水洗した。このとき、水洗は、濾液のpHが11.5(25℃)に達するまで行った。こののち、水洗後のオキシ水酸化ニッケルを60℃で24時間、真空乾燥して、オキシ水酸化ニッケルY1〜Y6を得た。なお、オキシ水酸化ニッケルの表面に担持されるナトリウムイオンの量は、いずれも、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の0.8重量%程度であった。
こうして得られた6種類のオキシ水酸化ニッケルの体積基準の平均粒子径(D50)は約10μmであり、タップ密度は約2.3g/cmであり、BET比表面積は10〜15m/gであった。
これらオキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数を測定した。結果を表6に示す。また、表6には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量についても示す。
Figure 2006040907
次に、上記オキシ水酸化ニッケルY1〜Y6を用い、上記実施例1と同様にして、アルカリ電池Y1〜Y6を作製した。
こうして作製した電池Y1〜Y6について、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および保存後の容量維持率を、実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表7に示す。また、表7において、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。
Figure 2006040907
表7に示されるように、ニッケルの平均価数が2.95〜3.05である電池Y3〜Y5は、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および容量維持率のいずれについても高い値を示した。
ニッケルの平均価数が2.95よりも低い電池Y1およびY2では、オキシ水酸化ニッケルの単位重量あたりの容量が少なくなるため、放電容量がやや低下していた。
ニッケルの平均価数が3.05よりも高い電池Y6では、強負荷放電容量がやや低下していた。これは、ニッケルの価数が極端に高くなると、オキシ水酸化ニッケルにおける不活性なγ型構造の比率が増えるためであると考えられる。
このように、本発明では、オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数を2.95〜3.05という範囲に調整するのが好ましい。
なお、いずれの電池も保存特性に優れるため、これらの電池は、特に保存特性が重視される用途には十分な効果を有する。
実施例5
本実施例では、オキシ水酸化ニッケルの水洗条件に関する検討を行った。なお、水洗条件を変えると、オキシ水酸化ニッケルの粒子表面に担持されるナトリウムイオンの量が変化する。
実施例1で作製した水酸化ニッケルa(Ni0.95Mn0.05(OH))の200gを用い、反応溶液の温度を50℃とし、添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を1.5当量とし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後の処理時間(攪拌時間)を4.0時間としたこと以外、実施例1と同様にして、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。
次に、得られたオキシ水酸化ニッケルを、水洗した。このとき、濾液のpH(25℃)が、12.5、12.0、11.5、11.0、または10.5に達した時点で、水洗を終了した。水洗後の各オキシ水酸化ニッケルを、60℃で24時間、真空乾燥して、表面に担持されるナトリウムイオンの量が異なるオキシ水酸化ニッケルW1〜W5を得た。
こうして得られた5種類のオキシ水酸化ニッケルW1〜W5は、いずれも、平均粒子径(D50)が約10μmであった。また、これらのオキシ水酸化ニッケルのタップ密度は約2.3g/cmであり、BET比表面積は10〜15m/gの範囲にあった。
各オキシ水酸化ニッケルの表面に担持されたナトリウムイオンの量を測定した。結果を表8に示す。また、表8には、オキシ水酸化ニッケルの水洗時の濾液のpHを示す。
Figure 2006040907
次に、上記オキシ水酸化ニッケルW1〜W5を用いて、実施例1と同様にして、アルカリ電池W1〜W5を作製した。
こうして作製した電池W1〜W5を用い、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および保存後の容量維持率を、実施例1と同様にして、測定した。得られた結果を表9に示す。また、表9において、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。
Figure 2006040907
表9に示されるように、水洗時の濾液のpHが11.0〜12.0で、その表面に担持されているナトリウムイオンの量が、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の0.5〜1重量%の範囲にある電池W2〜W4は、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および容量維持率のいずれについても高い値を示した。
一方、表面に担持されているナトリウムイオンの量が1重量%よりも多い電池W1では、ナトリウムイオンの不純物としての影響が強くなり、保存特性を中心にその性能が低下した。また、表面に担持されているナトリウムイオンの量が0.5重量%未満である電池W5では、低負荷放電容量および高負荷放電容量があまり向上していなかった。これは、ナトリウムイオンの量が少ないために、放電時にオキシ水酸化ニッケル表層部のニッケルの価数が低下しやすくなり、その結果、容量を十分に取り出せなくなったためと推察される。
実施例6
本実施例では、正極合剤中のオキシ水酸化ニッケルの配合比率に関する検討を行った。
体積基準の平均粒子径が40μmである電解二酸化マンガン、上記実施例1で作製したオキシ水酸化ニッケルA4、および人造黒鉛(日本黒鉛工業(株)製のSPグレード;平均粒径15μm)を、表10に示されるような10種の重量比率で混合し、混合粉を得た。これらの混合粉を用いたこと以外、実施例1と同様にして、アルカリ電池Z1〜Z10を作製した。ここで、電池Z1およびZ10は、比較電池である。
こうして作製した電池Z1〜Z10を用い、低負荷放電容量および強負荷放電容量を、実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表10に示す。また、表10において、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。また、表10には、比較電池F4の正極合剤に含まれる電解二酸化マンガンと、オキシ水酸化ニッケルと、黒鉛との配合比率を示す。
Figure 2006040907
表10に示されるように、オキシ水酸化ニッケルA4の比率が80重量%よりも多い電池Z8、Z9およびZ10では、低負荷放電容量が低下していた。オキシ水酸化ニッケルA4の比率が10重量%未満である電池Z1およびZ2では、強負荷放電容量が低下していた。以上の結果から、低負荷放電容量と強負荷放電容量のいずれも優れたものとすることができるため、マンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケルが、正極合剤に、10〜80重量%の量で含まれることが好ましいことがわかる。
また、電池Z1〜Z10は、強負荷放電容量または低負荷放電容量の少なくとも一方が優れているため、それらの特長に応じた用途に使用することにより、それらの電池の効果が十分に得られる。
実施例7
本実施例では、正極合剤中の導電剤である黒鉛の配合比率に関する検討を行った。
実施例1で用いた電解二酸化マンガンと、実施例1で作製したオキシ水酸化ニッケルA4とを重量比1:1で混合した。これに、正極合剤に占める重量比率が表11に示されるような6種の値となるように、実施例1で用いた黒鉛を添加して、6種の混合粉を得た。これらの混合粉を用いたこと以外、実施例1と同様にして、アルカリ電池U1〜U6を作製した。
こうして作製した電池U1〜U6を用い、低負荷放電容量および強負荷放電容量を、実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表11に示す。また、表11において、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。また、表11には、比較電池F4の正極合剤に含まれる黒鉛の量を示す。
Figure 2006040907
表11に示されるように、正極合剤に含まれる黒鉛の割合が3〜10重量%の場合に、特に放電特性が優れることがわかった。黒鉛の混合比率が3重量%未満の電池U1では、正極合剤内の導電網が不完全となるため、特に強負荷放電容量がやや低くなった。黒鉛の混合比率が10重量%よりも大きい電池U6では、正極合剤における活物質の比率が相対的に低くなるために、低負荷放電において、そのエネルギー密度が低下すると考えられる。以上の結果から、本発明においては、導電剤は、3〜10重量%の量で正極合剤に含まれることが好ましい。
また、電池U1〜U6は、いずれも、比較電池F4に比べて優れる点があり、それらの特長に応じた用途に使用することにより、これらの電池U1〜U6のいずれを用いても、十分な効果が得られる。
また、上記実施例では、マンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケルに関し、そのタップ密度が2.2〜2.3g/cmであり、BET比表面積が10〜20m/gであるものを使用した。マンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケル粉末の電池ケースへの充填密度を考慮すると、そのタップ密度は2.15g/cm以上であり、電池内での正極合剤の電解液の含浸性を考慮すると、BET比表面積は5〜20m/gの範囲であるのが好適である。
上記実施例では、マンガンを単独で固溶させたオキシ水酸化ニッケルを用いたが、マンガンの他に、さらに亜鉛、コバルト等の元素をマンガンよりも少量固溶させたオキシ水酸化ニッケルを用いても、ほぼ同様の結果が得られる。
また、上記実施例では、導電剤として黒鉛を用いたが、導電剤として、各種カーボンブラックや繊維状炭素を単独で用いた場合、あるいはそれらを黒鉛と混合して用いた場合にも、本発明の基本的な効果は得られる。
さらに、本発明は、上記実施例で作製した、円筒形状の正極ケース内に、筒状の正極合剤ペレット、セパレータ、ゲル状負極等を配置した、いわゆるインサイドアウト型のアルカリ電池以外にも、アルカリボタン型、角型等の別構造の電池にも適応することが可能である。
本発明により、容量が高く、保存特性が向上したアルカリ電池を提供することができる。このようなアルカリ電池は、例えば、携帯型電子機器用の電源に用いることができる。
本発明は、オキシ水酸化ニッケルおよび二酸化マンガンを活物質として含む正極合剤を備えるアルカリ電池に関する。
アルカリマンガン乾電池に代表されるアルカリ電池は、正極端子を兼ねる正極ケースの中に、円筒状の二酸化マンガンからなる正極合剤ペレットを正極ケースに密着するように配置し、そのペレットの内側にセパレータを介してゲル状の亜鉛負極を配置したインサイドアウト型の構造を有する。近年のデジタル機器の普及に伴い、これらの電池が使用される機器の負荷電力は次第に大きくなってきている。このため、強負荷放電性能に優れる電池が要望されている。例えば、強負荷放電特性を向上させるために、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを混合することが提案されている(特許文献1参照)。近年では、このような電池が実用化され、広く普及するに到っている。
上記アルカリ電池に用いられるオキシ水酸化ニッケルは、例えば、アルカリ蓄電池用途として使用されてきた球状ないしは鶏卵状の水酸化ニッケルを、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の酸化剤で酸化することにより作製される(特許文献2参照)。このとき、原料の球状水酸化ニッケルとしては、嵩密度(ないしはタップ密度)の大きいβ型のものが用いられ、これを酸化剤で処理して、β型の結晶構造を主体とする球状オキシ水酸化ニッケルに変換している。このようなオキシ水酸化ニッケルを用いることにより、高密度の正極を得ることができる。その結果、電池を高容量化することが可能となる。
一方、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを混合したアルカリ電池は、オキシ水酸化ニッケルを含まないアルカリ電池と比較して保存性能が悪いという問題がある。特に、高温で保存した場合には、正極の自己放電が大きくなることがある。この自己放電反応は、式(1)に示すオキシ水酸化ニッケルの還元反応、及び式(2)に示す水酸化物イオンの酸化分解反応からなり、全体として、式(3)に示されるような反応となる。
NiOOH+H2O+e- → Ni(OH)2+OH- (1)
4OH- → 2H2O+O2+4e- (2)
4NiOOH+2H2O → 4Ni(OH)2+O2 (3)
従って、保存後の電池において、強負荷放電特性を維持させるためには、式(3)に示す自己放電反応を抑制して、オキシ水酸化ニッケルの劣化を回避する必要がある。
例えば、その自己放電反応を抑制するために、少量の亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケルを用いることが提案されている(特許文献3参照)。このような亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケルにおいては、その表面での酸素発生過電圧が高まり、上記式(2)の反応が抑制される。このため、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを混合したアルカリ電池でも、保存性能をある程度まで向上させることが可能となる。
類似の技術として、亜鉛とコバルトを少量含有したオキシ水酸化ニッケルを用いる提案(特許文献4参照)や、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム)を少量含有したオキシ水酸化ニッケルを用いる提案(特許文献5参照)がなされている。
また、電池の自己放電を低減するために、オキシ水酸化ニッケルを作製した後に、そのオキシ水酸化ニッケルをアルカリ水溶液に浸漬して、オキシ水酸化ニッケル結晶の層間に、アルカリカチオンを強制的に含有させることも提案されている(特許文献6参照)。
特開昭57−72266号公報 特公平4-80513号公報 特開2002−75354号公報 特開2002−203546号公報 特開2002−289187号公報 特開2001−325954号公報
しかしながら、上述したような亜鉛、コバルト、アルカリ土類金属のような金属元素を少量含む固溶体オキシ水酸化ニッケルを用いた場合には、次のような問題を有する。
1)亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケル
亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケルは、亜鉛を含む固溶体水酸化ニッケルを酸化剤で処理することにより作製される。水酸化ニッケル中に固溶させた亜鉛は、アルカリ蓄電池の分野で周知のように、ニッケルの酸化を抑制する効果がある。このため、亜鉛を固溶した水酸化ニッケルは、酸化剤により酸化されにくく、オキシ水酸化ニッケル中に未反応の水酸化ニッケルが残留しやすい。よって、亜鉛を固溶した水酸化ニッケルを十分に酸化させるためには、大過剰の酸化剤を添加して長時間処理を施す必要がある。このため、亜鉛を固溶したオキシ水酸化ニッケルを、生産性良く製造するのは困難である。
2)コバルトを含む固溶体オキシ水酸化ニッケルまたはコバルトおよび亜鉛をを含む固溶体オキシ水酸化ニッケル
コバルト、またはコバルトおよび亜鉛を含む固溶体オキシ水酸化ニッケルは、コバルト、またはコバルトおよび亜鉛を含む固溶体水酸化ニッケルを酸化剤で処理することにより作製される。コバルトはニッケルの酸化還元電位を下げて酸化剤による酸化を容易にするが、オキシ水酸化ニッケルの放電時にはその電位を低下させることがある。つまり、作製した電池の放電特性が低下する傾向にある。また、コバルトの価格が割高であるため、このようなオキシ水酸化ニッケルは、コスト高になるという問題もある。
3)アルカリ土類金属を含む固溶体オキシ水酸化ニッケル
アルカリ土類金属を含む固溶体オキシ水酸化ニッケルは、アルカリ土類金属をを含む固溶体水酸化ニッケルを酸化剤で処理することにより作製される。まず、アルカリ土類金属を固溶した水酸化ニッケルを合成する場合、アルカリ土類金属の硫酸塩の大半が水に不溶なので、水に可溶性の、アルカリ土類金属の硝酸塩水溶液等を用いる必要がある。このため、硝酸根の除去工程などが必要となり、一般の水酸化ニッケル合成に比べて、操業条件が複雑となる。さらに、水酸化ニッケル中に固溶させたアルカリ土類金属も、亜鉛と同様にニッケルの酸化を抑制する効果があるため、酸化工程における生産性を高めることが困難となる。
本発明は、正極合剤と、負極と、正極合剤と負極との間に配置されたセパレータとを具備するアルカリ電池に関する。ここで、正極合剤は、オキシ水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび導電剤を含み、(1)このオキシ水酸化ニッケルには、少なくともマンガンが固溶されており、このマンガンは、そのオキシ水酸化ニッケルに含まれる金属元素の総量の0.5〜10mol%を占める。また、(2)オキシ水酸化ニッケルはβ型の結晶構造を主体とする。さらに、(3)オキシ水酸化ニッケルの体積基準の平均粒子径は、8〜15μmである。
上記アルカリ電池において、オキシ水酸化ニッケルは、さらに、
(4)ニッケルの平均価数が2.95〜3.05である、
(5)タップ密度が2.15g/cm3以上である、
(6)BET比表面積が5〜20m2/gである
の少なくとも1つの物性を満たすことが好ましい。ここで、タップ密度とは、300回タッピングした後のオキシ水酸化ニッケルのタップ密度をいう。
上記アルカリ電池において、オキシ水酸化ニッケルは、その表面に、ナトリウムイオンを担持しており、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の0.5〜1重量%を、ナトリウムイオンが占めることが好ましい。
上記アルカリ電池において、オキシ水酸化ニッケルは、正極合剤の10〜80重量%を占めることが好ましい。
上記アルカリ電池において、導電剤が黒鉛であり、黒鉛が正極合剤の3〜10重量%を占めることが好ましい。
本発明によると、正極合剤がオキシ水酸化ニッケルと二酸化マンガンとを含むアルカリ電池の高容量化と保存特性の向上を図ることができる。
また、マンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケルが上記のような物性値を有することにより、そのオキシ水酸化ニッケルの生産性も大幅に高めることができる。よって、強負荷放電特性や信頼性に優れたアルカリ電池を安価に供給することが可能となる。
図1に、本発明の一実施形態にかかるアルカリ電池を示す。
このアルカリ電池は、正極合剤2、ゲル状負極3、正極合剤2とゲル状負極3の間に配置されたセパレータ4、電解液(図示せず)、ならびにこれらを収容する正極ケース1を具備する。
正極ケース1は、有底円筒形をしており、底部中央には、外側に突出する突部を有している。その突部は、正極端子として機能する。
正極ケース1の内部には、中空円筒状の正極合剤2が、正極ケース1と接するように配置される。正極ケース1の内面には、黒鉛塗装膜10が形成されている。
正極合剤2の内側には、セパレータ4を介して、ゲル状負極3が配置されている。また、ゲル状負極3と正極ケース1とは、絶縁キャップ9によって絶縁されている。
ゲル状負極3には、負極集電体6が差し込まれている。負極集電体6は、樹脂製封口板5の中央孔に嵌合している。負極集電体6の頂部には、底板7が溶接されている。底板7は、負極端子を兼ねている。
正極ケース1の開口部は、正極ケース1の開口端部を封口板5の周縁部を介して底板7の周縁部にかしめつけることにより封口されている。正極ケース1の外表面は、外装ラベル8で被覆されている。
上記電解液は、正極合剤2とセパレータ4とを湿潤させるために用いられる。この電解液としては、当該分野で公知のものを用いることができる。一例として、水酸化カリウムを40重量%含む水溶液が挙げられる。
上記ゲル状負極3としては、当該分野で公知のものを用いることができる。例えば、このようなゲル状負極としては、ゲル化剤であるポリアクリル酸ソーダ、アルカリ電解液、および負極活物質である亜鉛粉末からなるものが挙げられる。なお、ゲル状負極に用いられるアルカリ電解液は、上記電解液と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
正極合剤2は、オキシ水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび導電剤を含む。本発明で用いられるオキシ水酸化ニッケルには、少なくともマンガンが固溶しており、このマンガンはオキシ水酸化ニッケルに含まれる金属元素の総量の0.5〜10mol%を占める。マンガンの量が0.5mol%より小さくなると、容量を向上させたり、保存特性を向上させたりする効果が低下する場合がある。マンガンの量が10mol%より大きくなると、オキシ水酸化ニッケル中に含まれるニッケルの量が低くなり、十分な容量を得ることができない場合がある。
そのオキシ水酸化ニッケルの結晶構造は、密度の高いβ型の結晶構造を主体とする。このとき、β型の結晶構造は、オキシ水酸化ニッケルの結晶構造の90%以上を占めることが好ましい。β型の結晶の含有量が90%よりも少なくなると、オキシ水酸化ニッケルの嵩密度あるいはタップ密度が低下して、所定容積のケースへのオキシ水酸化ニッケルの充填密度が低下するからである。
オキシ水酸化ニッケルの体積基準の平均粒子径は、8〜15μmである。オキシ水酸化ニッケルの平均粒子径が8μmより小さかったり、平均粒子径が15μmより大きかったりすると、正極合剤粒子同士の接触度合いなどが低下し、保存時の容量低下が大きくなることがある。
よって、上記オキシ水酸化ニッケルが、8〜15μmの平均粒子径を有することにより、電池容量が向上するとともに、オキシ水酸化ニッケルの自己分解が少なくなり、電池の保存性能を大きく向上させることができる。
さらに、上記のように、本発明の大きな特徴の1つは、オキシ水酸化ニッケルに、少なくともマンガンを固溶していることである。本発明者らが、各種水酸化ニッケルやオキシ水酸化ニッケルについて鋭意検討を行った結果、少なくともマンガンを適量固溶した水酸化ニッケルは、酸化剤を用いて化学的に酸化することが非常に容易となることがわかった。
また、オキシ水酸化ニッケルにマンガンが固溶しているために、そのオキシ水酸化ニッケルの電子伝導性が高く保たれる。よって、オキシ水酸化ニッケルの放電後に二酸化マンガンが放電する際にも、二酸化マンガンからも十分な容量を引き出すことが可能となる。
上記オキシ水酸化ニッケルは、以下の物性:
(4)ニッケル平均価数が2.95〜3.05である、
(5)タップ密度が2.15g/cm3以上である、
(6)BET比表面積が5〜20m2/gである
のいずれか1つ以上を有することが好ましい。
上記オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数が2.95未満であると、オキシ水酸化ニッケルの単位重量あたりの容量が少なくなるため、電池の容量が低下する場合がある。一方、そのニッケルの平均価数が3.05を超えると、オキシ水酸化ニッケルにおいて、γ型の結晶の比率が増えて、強負荷放電特性が低下する場合がある。ここで、オキシ水酸化ニッケル中に含まれるニッケルの平均価数は、例えば、以下に示すICP発光分析と酸化還元滴定とを用いて求めることができる。
(A)オキシ水酸化ニッケル中の金属重量比率の測定
所定量のオキシ水酸化ニッケルを硝酸水溶液と混合し、その混合物を加熱し、オキシ水酸化ニッケルを全て溶解させる。この後、得られた溶液を、ICP発光分析装置(例えば、VARIAN社製のVISTA−RL)で分析する。これにより、オキシ水酸化ニッケルに含まれる各金属元素(ニッケル、マンガン等)の重量比率が求められる。
(B)酸化還元滴定による平均ニッケル価数の測定
オキシ水酸化ニッケルをヨウ化カリウムおよび硫酸と混合し、その混合物を十分に攪拌して、オキシ水酸化ニッケルを完全に溶解させる。この溶解過程で価数の高いニッケルイオン、マンガンイオン等は、ヨウ化物イオンをヨウ素に酸化し、そのニッケルイオンおよびマンガンイオン等は2価に還元される。そこで、生成したヨウ素を0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定する。そのときのチオ硫酸ナトリウムの濃度とその滴定量から、上記のような2価より価数の大きいニッケルイオン、マンガンイオン等の全量を求めることができる。
上記で求めた2価より価数の大きいニッケルイオン、マンガンイオン等の全量と、上記(A)で求めた金属重量比率の値とを用いて、オキシ水酸化ニッケル中のニッケルの平均価数を見積ることを可能となる。このとき、オキシ水酸化ニッケルに含まれるマンガンの価数は4価と仮定する。オキシ水酸化ニッケルにコバルトが含まれる場合には、コバルトの価数を3.5価と仮定する。
さらに、本発明では、オキシ水酸化ニッケルのタップ密度は2.15g/cm3以上であることが好ましい。これにより、オキシ水酸化ニッケルのケース内への充填性を好適にすることが可能となる。
また、オキシ水酸化ニッケルのBET比表面積は5〜20m2/gの範囲にあることが好ましい。これにより、正極合剤の電解液含浸性を好適とすることが可能となる。
また、オキシ水酸化ニッケルは、その粒子表面に、ナトリウムイオンを担持していることが好ましい。このとき、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の0.5〜1重量%を、ナトリウムイオンが占めることが好ましい。
オキシ水酸化ニッケルは、通常、水酸化ナトリウム水溶液中に分散させた水酸化ニッケルに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の酸化剤を加えて作製される場合が多い。このため、酸化後の水洗条件に依存して、オキシ水酸化ニッケルの表面に、ナトリウムイオンが担持される。オキシ水酸化ニッケルの表面に担持されているナトリウムイオンの量が、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の1重量%よりも多くなると、ナトリウムイオンの弊害が大きくなり、電池特性、主として保存特性が低下することがある。一方、その表面に担持されているナトリウムイオンの量が、0.5重量%未満になると、オキシ水酸化ニッケル表層部にあるニッケルの価数が放電時に低下しやすくなる。このため、その容量を十分に取り出せなくなることがある。
オキシ水酸化ニッケルの表面に担持されたナトリウムイオンの量は、例えば、以下のようにして求めることができる。
所定量のオキシ水酸化ニッケル粉末を硝酸水溶液と混合し、その混合物を加熱して、そのオキシ水酸化ニッケル粉末を全て溶解させる。この後、得られた溶液を、ICP発光分析装置(例えば、VARIAN社製のVISTA−RL)で分析して、ナトリウムの量を求める。このナトリウムの量を用いて、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計に占めるナトリウムイオンの割合(重量%)を求める。
また、上記オキシ水酸化ニッケルは、正極合剤の10〜80重量%を占めることが好ましい。正極活物質である二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを比較した場合、二酸化マンガンの方が単位重量あたりの容量やケース内への充填密度、材料価格といった点では優れる。しかし、放電電圧、強負荷放電特性等についてはオキシ水酸化ニッケルの方が優れる。よって、電池全体としての特性や価格のバランスを考えると、正極合剤中のオキシ水酸化ニッケルの混合比率を、上記範囲にするのが最も好ましい。
本発明のアルカリ電池の正極合剤に含まれる二酸化マンガンとしては、体積基準の平均粒子径が30〜50μm程度の電解二酸化マンガンが好ましい。
導電剤としては、黒鉛、各種カーボンブラック、繊維状炭素等を用いることができる。これらの中でも、導電剤としては、体積基準の平均粒子径が5〜20μm程度の黒鉛粉末が最も好ましい。これは、正極ペレットを成型しやすく、また電池作製時に問題が生じにくいからである。さらに、そのような黒鉛を用いることにより、電池特性を安定化することができる。ここで、黒鉛とは、結晶性炭素のことをいい、粉末X線回折法で求められる(002)面の面間隔(d002)が3.4Å以下のものを指す。
また、導電剤は正極合剤の3〜10重量%を占めることが好ましい。これは、正極合剤中の活物質の体積エネルギー密度を十分に高め、強負荷放電特性を満足に確保することができるからである。
以下、本発明を、実施例に基づいて詳細に説明する。
実施例1
(オキシ水酸化ニッケルの作製)
攪拌翼を備えた反応槽に、所定濃度の硫酸ニッケル(II)水溶液、硫酸マンガン(II)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、およびアンモニア水を、所定量ずつ、ポンプで連続的に供給した。供給された溶液は、反応槽内で連続的に混合、攪拌され、水酸化ニッケル粒子が析出した。反応槽内の反応溶液のpHは12、温度は50℃となるようにした。次いで、析出した水酸化ニッケル粒子を水洗し、真空乾燥した。水酸化ニッケルを合成する際に、水酸化ニッケル中に含まれるマンガンの含有量を、水酸化ニッケルに含まれる金属イオンの総量に対して5mol%となるように調整した。このようにして得られた水酸化ニッケルを水酸化ニッケルa(Ni0.95Mn0.05(OH)2)とした。
また、硫酸マンガン(II)水溶液の代わりに、硫酸亜鉛(II)水溶液、硫酸コバルト(II)水溶液、または硝酸カルシウム(II)水溶液を用いたこと以外は、上記水酸化ニッケルaを作製したときと同様な方法で、それぞれ水酸化ニッケルb(Ni0.95Zn0.05(OH)2)、c(Ni0.95Co0.05(OH)2)、d(Ni0.95Ca0.05(OH)2)を作製した。
また、硫酸マンガン(II)水溶液の代わりに、硫酸亜鉛(II)と硫酸コバルト(II)の混合水溶液を用いたこと以外は、上記水酸化ニッケルaを作製したときと同様な方法で、水酸化ニッケルe(Ni0.95Zn0.025Co0.025(OH)2)を作製した。
さらに、硫酸マンガン(II)水溶液を用いなかったこと以外、上記水酸化ニッケルaを作製したときと同様な方法で、いずれの金属元素も固溶していない水酸化ニッケルfを作製した。
こうして得られた水酸化ニッケルa〜fを、粉末X線回折法を用いて分析した。その結果、水酸化ニッケルa〜fは、いずれもβ型の結晶構造(β型の割合:100%)を有し、水酸化ニッケルa〜eでは添加した金属元素が固溶した状態で水酸化ニッケル結晶中に存在することが確認された。これらの水酸化ニッケルa〜fの体積基準の平均粒子径を、レーザー回折式粒度分布計(日機装(株)のマイクロトラックFRA)で測定したところ、いずれも、約10μmであった。それらのタップ密度を、タップ密度測定装置((株)セイシン企業製のタップデンサーKYT−4000)で測定したところ、約2.2g/cm3であった。また、それらのBET比表面積を、BET比表面測定装置((株)島津製作所製のASAP−2010)で測定したところ、10〜12m2/gであった。
なお、以下の実施例においても、体積基準の平均粒子径、タップ密度、およびBET比表面積は、上記の装置を用いて測定した。
次に、200gの水酸化ニッケルaを、1Lの水酸化ナトリウム水溶液(濃度:0.1mol/L)に投入し、攪拌しながら、酸化剤である次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:10wt%)を所定量加えて、反応溶液とした。その反応溶液をさらに攪拌して、水酸化ニッケルaをオキシ水酸化ニッケルに変換した。このとき、反応溶液の温度を50℃とした。
添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量は、水酸化ニッケルに含まれるニッケルを3.0価まで酸化させるのに必要な最低限の理論量を1.0当量として、1.1当量と1.8当量の2種類とした。また、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後の処理時間(攪拌時間)を2.0時間と6.0時間の2種類に設定した。このように、表1に示すような4つの異なる酸化条件で、4種のオキシ水酸化ニッケルを作製した。
次いで、得られたオキシ水酸化ニッケル粒子を水洗した。このとき、水洗は、その濾液のpHが11.5(25℃)に達するまで行った。その後、水洗後のオキシ水酸化ニッケルを60℃で24時間真空乾燥して、オキシ水酸化ニッケルA1〜A4を得た。
これらのオキシ水酸化ニッケルの表面に担持されるナトリウムイオンの量を測定した。その結果、そのナトリウムイオンの量は、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の0.8重量%程度であった。
Figure 2006040907
次に、水酸化ニッケルb〜fを用いたこと以外、上記オキシ水酸化ニッケルA1〜A4を作製したときの方法と同様にして、オキシ水酸化ニッケルB1〜B4、C1〜C4、D1〜D4、E1〜E4、およびF1〜F4をそれぞれ作製した。ここで、各オキシ水酸化ニッケルを表すA〜Fは、水酸化ニッケルa〜fに対応する。また、1〜4の番号は、表1中に示したA1〜A4のそれぞれと番号が同じであれば、同じ酸化条件で作製されたことを意味する。
これら24種類のオキシ水酸化ニッケルは、いずれも、その体積基準の平均粒子径(D50)が約10μmであった。また、これらのオキシ水酸化ニッケルのタップ密度は約2.3g/cm3であり、BET比表面積は10〜15m2/gの範囲にあった。
さらに、これら24種類のオキシ水酸化ニッケルについて、そのニッケル平均価数を測定した。その結果を、表2に示す。
また、粉末X線回折法により、いずれのオキシ水酸化ニッケルもβ型の結晶構造を主体とすることが確認された。つまり、いずれのオキシ水酸化ニッケルにおけるβ型の結晶の割合は、β型の結晶構造に特徴的な(001)面による回折ピークの強度とγ型の結晶構造に特徴的な(003)面による回折ピークの強度とから見積もると、98%以上であった。しかしながら、水酸化ニッケルのピークを示す試料もあったため、酸化剤による処理の際に酸化されずに残留した水酸化ニッケル量を反映する回折角2θ=33.8°付近の(100)面による回折ピークの高さを読み取った。その結果を表2に示す。なお、表2において、「N.D.」は、(100)面による回折ピークが現れなかったことを意味する。また、オキシ水酸化ニッケルに固溶した元素の種類を表2に示す。
Figure 2006040907
水酸化ニッケルaまたはcに含まれるニッケルは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量が少なく、処理時間が短くても、その平均価数がほぼ3.0価となるまで酸化されていた。よって、マンガンを固溶させた水酸化ニッケルaまたはコバルトを固溶させた水酸化ニッケルcは、酸化が容易であることがわかる。
これに対して、水酸化ニッケルb、d、e、およびfに含まれるニッケルは、過剰な次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加し、かつ長時間処理を行わなければ、その平均価数が3.0価付近には到達していなかった。よって、亜鉛を固溶させた水酸化ニッケルb、カルシウムを固溶させた水酸化ニッケルd、亜鉛とコバルトを固溶させた水酸化ニッケルe、あるいは他の金属元素を固溶させていない水酸化ニッケルfは、酸化が容易には進行しないことがわかる。ここで、特に、水酸化ニッケルb、d、およびeにおいては、水酸化ニッケル中に固溶させた亜鉛イオンやカルシウムイオンの価数は2価のまま不変である。水酸化ニッケルを酸化剤で酸化する場合、これらのイオンは2価の状態を保つため、酸化されにくいと考えられる。
(アルカリ電池の作製)
上記のようにして得られたオキシ水酸化ニッケル粉末A1〜F4を用いて、図1に示されるようなアルカリ電池を作製した。
(正極合剤の作製)
まず、体積基準の平均粒子径が40μmである電解二酸化マンガンと、上記オキシ水酸化ニッケルA1と、導電剤である人造黒鉛(日本黒鉛工業(株)製のSPグレード;平均粒径15μm)とを重量比50:45:5で混合し、混合粉を得た。この混合粉100重量部あたり、40重量%の水酸化カリウム水溶液を1重量部混合し、その混合物をミキサーで均一に混合して、所定の粒度を有する粒状物を得た。得られた粒状物を中空円筒形に加圧成型して、正極合剤とした。
(負極の作製)
ゲル化剤であるポリアクリル酸ソーダ、アルカリ電解液、および負極活物質である亜鉛粉末を、重量比で、2.5:100:200の割合で混合して、ゲル状負極を作製した。アルカリ電解液としては、40重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。
(アルカリ電池の組立)
上記のようにして得られた正極合剤およびゲル状負極を用いて、図1に示されるような単3サイズのアルカリ電池を作製した。
正極ケースとしては、ニッケルメッキされた鋼板からなるものを用いた。この正極ケースの内壁には、黒鉛塗装膜を形成しておいた。
この正極ケースの内部に、上記正極合剤を複数個挿入し、その後、この正極合剤を再度加圧することにより、正極ケースの内面に密着させた。
次に、この正極合剤の内側の中空部に、セパレータおよび絶縁キャップを挿入した。この後、電池ケース内に電解液を注液して、セパレータと正極合剤を湿潤させた。ここで、電解液としては、40重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。
電解液の注液後、セパレータの内側に、上記ゲル状負極を充填した。この後、封口体および底板が一体化された負極集電体を、ゲル状負極に挿入した。正極ケースの開口端部を、封口板を介して、底板にかしめつけて、正極ケースの開口部を封口した。最後に、正極ケースの外表面を外装ラベルで被覆して、電池を完成させた。得られた電池を、電池A1とした。
オキシ水酸化ニッケルA1の代わりに、オキシ水酸化ニッケルA2〜A4、B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4、E1〜E4、およびF1〜F4を用いたこと以外、電池1Aを作製したときの作製方法と同様にして、電池A2〜A4、B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4、E1〜E4、およびF1〜F4を作製した。ここで、電池B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4、E1〜E4、およびF1〜F4は比較電池である。
(電池の評価)
(低負荷放電特性)
上記で作製した24種類の各電池を、20℃で、50mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの初度の放電容量(以下、50mAでの放電容量または低負荷放電容量ともいう)を測定した。
(強負荷放電特性)
上記24種類の各電池を、20℃で、1000mAの定電流で連続放電させ、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの初度の放電容量(以下、1000mAでの放電容量または強負荷放電容量ともいう)を測定した。
(保存特性)
60℃で1週間保存した電池を、20℃で1000mAの定電流で連続放電させて、電池電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量(以下、保存後の放電容量ともいう)を測定した。上記強負荷放電容量に対する保存後の放電容量の比を百分率値で表したものを容量維持率とした。
得られた結果を、表3に示す。表3において、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ、比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。
Figure 2006040907
電池A1〜A4は、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および保存後の容量維持率のいずれもについても、優れた値を示した。低負荷放電容量および強負荷放電容量が高いのは、以下のように考えられる。すなわち、オキシ水酸化ニッケルA1〜A4のニッケル価数が十分に高いため、オキシ水酸化ニッケルの放電容量が大きくなる。さらにオキシ水酸化ニッケルの放電後に二酸化マンガンが放電する際にも、固溶させたマンガンの効果としてオキシ水酸化ニッケルの電子伝導性が高く保たれ、二酸化マンガンからも十分な容量が引き出される。
また、保存特性が向上したことのメカニズムは定かではないが、オキシ水酸化ニッケルの結晶中に固溶させたマンガンにより、オキシ水酸化ニッケル上での酸素発生過電圧が上昇し、その結果、自己放電が抑制されたために、容量維持率が高い値を示したと考えられる。
一方、ニッケル平均価数が十分に高められておらず、部分的に未反応の水酸化ニッケルを含むオキシ水酸化ニッケルを用いた電池B1〜B3、D1〜D3、E1〜E3、およびF1〜F3では、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それほど向上していなかった。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液が過剰に添加され、かつ長時間処理することにより得られたオキシ水酸化ニッケルを含む電池B4、D4およびE4においては、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および容量維持率は、それぞれ、電池B1〜B3、電池D1〜D3および電池E1〜E3と比較して、多少良くなる。しかしながら、それらの特性は、いずれも本発明の電池A1〜A4より劣る。
また、コバルトを固溶させたオキシ水酸化ニッケルを用いた電池C1〜C4では、オキシ水酸化ニッケルのニッケル価数が高められるので、低負荷放電容量は比較的高い。しかしながら、固溶させたコバルトにより、オキシ水酸化ニッケルの酸化還元電位が低くなるため、強負荷放電容量は、それほど高くなかった。
以上のように、上記のようなオキシ水酸化ニッケルA1、A2、A3またはA4と二酸化マンガンとを正極合剤に含有させることにより、アルカリ電池の高容量化と保存性能の改善を図ることが可能となる。また、マンガンが固溶されていることにより、水酸化ニッケルからオキシ水酸化ニッケルの作製、すなわち水酸化ニッケルの酸化剤による酸化処理も非常に容易となることがわかる。
実施例2
ここでは、オキシ水酸化ニッケルに含有させるマンガンの量、およびそのマンガンの状態に関する検討を行った。
マンガンの含有量が、水酸化ニッケルに含まれる金属イオンの総量に対して0.3mol%、0.5mol%、1mol%、3mol%、7mol%、10mol%、または12mol%となるように、硫酸マンガン(II)水溶液の供給速度を調整したこと以外、水酸化ニッケルaの作製方法と同様にして、マンガンの含有量の異なる7種の水酸化ニッケルを合成した。これらを、水酸化ニッケルm1〜m7とした。
水酸化ニッケルm1〜m7を、粉末X線回折法により分析したところ、これらの水酸化ニッケルは、いずれもβ型の結晶構造を有し、そしてその水酸化ニッケル結晶中に、添加したマンガンが固溶していることが確認された。
マンガンの含有量が水酸化ニッケルに含まれる金属イオンの総量に対して3mol%または7mol%となるように硫酸マンガン(II)水溶液の供給速度を調整し、反応溶液のpHを11.0、反応溶液の温度を40℃としたこと以外、水酸化ニッケルaの作製方法と同様にして、水酸化ニッケルm8およびm9を作製した。
水酸化ニッケルm8およびm9を粉末X線回折法により分析した。ここで、一例として、水酸化ニッケルm5(Mn:7mol%、固溶)(曲線A)と水酸化ニッケルm9(Mn:7mol%、共晶)(曲線B)のX線回折プロファイルを、図2に示す。
これらの水酸化ニッケルm8およびm9は、いずれもβ型水酸化ニッケルの結晶構造を有していた。しかしながら、図2に示されるように、水酸化ニッケルm9においては、マンガン酸化物と思われるピーク(図2の黒丸の位置)も現れていた。このため、水酸化ニッケルm8およびm9においては、マンガンが水酸化ニッケル結晶中に固溶しているわけではなく、マンガンがマンガン酸化物の形態で水酸化ニッケル中に分散されている、つまりマンガンを含む水酸化ニッケルm8およびm9は、共晶であると推察された。
また、水酸化ニッケルm1〜m9の体積基準の平均粒子径は約10μmであり、タップ密度は約2.2g/cm3であり、BET比表面積は10〜12m2/gであった。
次に、200gの水酸化ニッケルm1を用い、反応溶液の温度を50℃とし、添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を1.5当量とし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後の処理時間(攪拌時間)を4.0時間としたこと以外、実施例1と同様にして、水酸化ニッケルm1をオキシ水酸化ニッケルに変換した。
その後、得られたオキシ水酸化ニッケル粒子を、水洗した。このとき、水洗は、濾液のpHが11.5(25℃)に達するまで行った。この後、水洗後のオキシ水酸化ニッケルを、60℃で、24時間、真空乾燥して、オキシ水酸化ニッケルM1を得た。
水酸化ニッケルm1の代わりに、水酸化ニッケルm2〜m9を用いたこと以外、オキシ水酸化ニッケルM1を作製したときの方法と同様にして、オキシ水酸化ニッケルM2〜M9を作製した。なお、オキシ水酸化ニッケルM1〜M9の表面に担持されるナトリウムイオンの量は、いずれも、オキシ水酸化ニッケルおよびナトリウムイオンの合計の0.8重量%程度であった。
得られた9種類のオキシ水酸化ニッケルは、いずれも、体積基準の平均粒子径(D50)が約10μmであった。これらのオキシ水酸化ニッケルのタップ密度は約2.3g/cm3であり、BET比表面積は10〜15m2/gであり、ニッケルの平均価数は約3.0であった。
オキシ水酸化ニッケルM1〜M9を、粉末X線回折法を用いて分析した。その結果、これらのオキシ水酸化ニッケルにおいて、残留の水酸化ニッケルは一切認められなかった。
次に、上記オキシ水酸化ニッケルM1〜M9を用いて、上記実施例1と同様にして、アルカリ電池M1〜M9を作製した。ここで、電池M1および電池M7〜M9は、比較電池である。
こうして作製した電池M1〜M9について、実施例1と同様にして、低負荷放電容量、強負荷放電容量および保存後の容量維持率を求めた。得られた結果を表4に示す。表4において、表3と同様に、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。また、表4には、オキシ水酸化ニッケルに含まれる金属元素に占めるマンガンの量(mol%)とその状態(固溶または共晶)についても示す。
Figure 2006040907
表4により、0.5〜10mol%の割合でマンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケルを用いた電池M2〜M6は、低負荷放電容量、強負荷放電容量、容量維持率のいずれについても、高い値を示した。
一方、マンガンの固溶量が0.3mol%のオキシ水酸化ニッケルを用いた電池M1では、これらの特性値は低い値を示した。これは、マンガンの量が少なすぎて、その十分な効果が得られなかったためと考えられる。
また、マンガンの固溶量が12mol%のオキシ水酸化ニッケルを用いた電池M7では、電池容量に寄与するニッケル含量が相対的に少なくなるため、低負荷放電容量および強負荷放電容量の値が低下していた。
さらに、マンガンを含有するオキシ水酸化ニッケルが共晶である電池M8およびM9では、容量維持率は比較的高い値を示したが、低負荷放電容量および強負荷放電容量の低下が顕著であった。これは、マンガンが固溶することによって、オキシ水酸化ニッケルの放電末期の電子伝導性が高く保たれ、二酸化マンガンからも十分な容量を引き出して高容量化させるという効果が、オキシ水酸化ニッケルM8およびM9ではうまく発現しないためであると推察される。
実施例3
本実施例では、オキシ水酸化ニッケルの平均粒子径(粒度)に関する検討を行った。
錯イオン形成剤であるアンモニア水の供給速度を変化させて、反応槽内で析出する水酸化ニッケルの結晶核の大きさと水酸化ニッケル粒子の成長速度を調整して、水酸化ニッケルの体積基準の平均粒子径(D50)を、それぞれ5μm、8μm、11μm、15μm、および20μmとしてこと以外、水酸化ニッケルaの作製方法と同様にして、水酸化ニッケルを作製した。得られた水酸化ニッケルをそれぞれ水酸化ニッケルx1〜x5とした。
粉末X線回折法により、水酸化ニッケルx1〜x5を分析したところ、いずれもβ型の結晶構造を有し、マンガンを固溶していた。また、これらの水酸化ニッケルのタップ密度は2.1〜2.2g/cm3の範囲にあり、BET比表面積は10〜18m2/gの範囲にあった。
次に、200gの水酸化ニッケルx1を用い、反応溶液の温度を50℃とし、添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を1.5当量とし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後の処理時間(攪拌時間)は4.0時間としたこと以外、実施例1と同様にして、水酸化ニッケルx1をオキシ水酸化ニッケルに変換した。
次いで、得られたオキシ水酸化ニッケルを水洗した。このとき、水洗は、濾液のpHが11.5(25℃)に達するまで行った。そののち、水洗後のオキシ水酸化ニッケルを、60℃で24時間真空乾燥して、オキシ水酸化ニッケルX1を得た。
水酸化ニッケルx1の代わりに、水酸化ニッケルx2〜x5を用いたこと以外、上記オキシ水酸化ニッケルX1を作製したときの方法と同様にして、それそれ、オキシ水酸化ニッケルX2〜X5を作製した。なお、オキシ水酸化ニッケルX1〜X5の表面に担持されるナトリウムイオンの量は、いずれも、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンの合計の0.8重量%程度であった。
上記オキシ水酸化ニッケルX1〜X5の平均粒径を測定した。その結果、オキシ水酸化ニッケルX1〜X5は、それぞれ水酸化ニッケルx1〜x5とほぼ同一の平均粒子径(D50)を有していた。また、これらのオキシ水酸化ニッケルのタップ密度は2.2〜2.3g/cm3の範囲にあり、BET比表面積は10〜20m2/gの範囲にあった。
これら5種類のオキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数は、いずれも約3.0であった。
また、粉末X線回折法により水酸化ニッケルの有無を測定した。その結果、オキシ水酸化ニッケルX1〜X5において、残留の水酸化ニッケルは一切認められなかった。
次に、上記オキシ水酸化ニッケルX1〜X5を用い、実施例1と同様にして、アルカリ電池X1〜X5を作製した。ここで、電池X1およびX5は、比較電池である。
こうして作製した電池X1〜X5の各々について、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および保存後の容量維持率を測定した。得られた結果を表5に示す。また、表5において、表3と同様に、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。さらに、表5に、各電池に含まれるオキシ水酸化ニッケルの平均粒子径(D50)を同時に示す。
Figure 2006040907
表5に示されるように、体積基準の平均粒子径(D50)が8〜15μmの範囲にあるオキシ水酸化ニッケルを用いた電池X2〜X4は、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および容量維持率のいずれについても、高い値を示した。
一方、平均粒子径が5μmと小さいオキシ水酸化ニッケルを用いた電池X1および平均粒子径が20μmと大きいオキシ水酸化ニッケルを用いた電池X5では、低負荷放電容量、強負荷放電容量および容量維持率について、満足な値が得られなかった。このような差が生ずる理由について、現時点では十分に解明できていないが、以下のように考えられる。すなわち、粒子径が5μmや20μmのオキシ水酸化ニッケルを用いた場合には、正極合剤粒子の電気的な接触度合いやそれに関連するペレットの電気伝導度が比較的悪くなる。特に、60℃で1週間保存することによって、オキシ水酸化ニッケルの自己放電(粒子表面の導電性低下)が進むと、そのことが顕在化すると推察される。
なお、ここでは詳細を述べないが、別の実験で、正極合剤に含まれる電解二酸化マンガンの平均粒子径を30〜50μmの範囲で変化させたり、黒鉛の平均粒子径を5〜20μmの範囲で変化させたり、あるいはオキシ水酸化ニッケルの混合比率を変化させたりしても、得られる電池の60℃で1週間保存した後の容量維持率はオキシ水酸化ニッケルの平均粒子径と関連づけられた。つまり、体積基準の平均粒子径(D50)が8〜15μmのオキシ水酸化ニッケルを用いた系で、その容量維持率が良好となる点が確認された。
以上のように、オキシ水酸化ニッケルの平均粒子径を8〜15μmという範囲に調整することが、放電容量および保存性能を確保する観点から極めて重要であることがわかった。
実施例4
本実施例では、オキシ水酸化ニッケルのニッケル平均価数に関する知見を得るための実験を行った。
実施例1で作製した水酸化ニッケルa(Ni0.95Mn0.05(OH)2)の200gを用い、反応溶液の温度を50℃とし、添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を、0.9当量、1.0当量、1.2当量、2.0当量、2.5当量、または3.0当量と変化させ、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後の処理時間(攪拌時間)を6.0時間としたこと以外、実施例1と同様にして、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。
次に、得られた6種のオキシ水酸化ニッケル粒子を、水洗した。このとき、水洗は、濾液のpHが11.5(25℃)に達するまで行った。こののち、水洗後のオキシ水酸化ニッケルを60℃で24時間、真空乾燥して、オキシ水酸化ニッケルY1〜Y6を得た。なお、オキシ水酸化ニッケルの表面に担持されるナトリウムイオンの量は、いずれも、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の0.8重量%程度であった。
こうして得られた6種類のオキシ水酸化ニッケルの体積基準の平均粒子径(D50)は約10μmであり、タップ密度は約2.3g/cm3であり、BET比表面積は10〜15m2/gであった。
これらオキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数を測定した。結果を表6に示す。また、表6には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量についても示す。
Figure 2006040907
次に、上記オキシ水酸化ニッケルY1〜Y6を用い、上記実施例1と同様にして、アルカリ電池Y1〜Y6を作製した。
こうして作製した電池Y1〜Y6について、低負荷放電容量、強負荷放電容量、保存後の容量維持率を、実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表7に示す。また、表7において、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。
Figure 2006040907
表7に示されるように、ニッケルの平均価数が2.95〜3.05である電池Y3〜Y5は、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および容量維持率のいずれについても高い値を示した。
ニッケルの平均価数が2.95よりも低い電池Y1およびY2では、オキシ水酸化ニッケルの単位重量あたりの容量が少なくなるため、放電容量がやや低下していた。
ニッケルの平均価数が3.05よりも高い電池Y6では、強負荷放電容量がやや低下していた。これは、ニッケルの価数が極端に高くなると、オキシ水酸化ニッケル中に不活性なγ型構造の比率が増えるためであると考えられる。
このように、本発明では、オキシ水酸化ニッケルに含まれるニッケルの平均価数を2.95〜3.05という範囲に調整するのが好ましい。
なお、いずれの電池も保存特性に優れるため、これらの電池は、特に保存特性が重視される用途には十分な効果を有する。
実施例5
本実施例では、オキシ水酸化ニッケルの水洗条件に関する検討を行った。なお、水洗条件を変えると、オキシ水酸化ニッケルの粒子表面に担持されるナトリウムイオンの量が変化する。
実施例1で作製した水酸化ニッケルa(Ni0.95Mn0.05(OH)2)の200gを用い、反応溶液の温度を50℃とし、添加する次亜塩素酸ナトリウム水溶液の量を1.5当量とし、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を投入した後の処理時間(攪拌時間)を4.0時間としたこと以外、実施例1と同様にして、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変換した。
次に、得られたオキシ水酸化ニッケルを、水洗した。このとき、濾液のpH(25℃)が、12.5、12.0、11.5、11.0、または10.5に達した時点で、水洗を終了した。水洗後の各オキシ水酸化ニッケルを、60℃で24時間、真空乾燥して、表面に担持されるナトリウムイオンの量が異なるオキシ水酸化ニッケルW1〜W5を得た。
こうして得られた5種類のオキシ水酸化ニッケルW1〜W5は、いずれも、平均粒子径(D50)が約10μmであった。また、これらのオキシ水酸化ニッケルのタップ密度は約2.3g/cm3であり、BET比表面積は10〜15m2/gの範囲にあった。
各オキシ水酸化ニッケルの表面に担持されたナトリウムイオンの量を測定した。結果を表8に示す。また、表8には、オキシ水酸化ニッケルの水洗時の濾液のpHを同時に示す。
Figure 2006040907
次に、上記オキシ水酸化ニッケルW1〜W5を用いて、実施例1と同様にして、アルカリ電池W1〜W5を作製した。
こうして作製した電池W1〜W5を用い、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および保存後の容量維持率を、実施例1と同様にして、測定した。得られた結果を表9に示す。また、表9において、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。
Figure 2006040907
表9に示されるように、水洗時の濾液のpHが11.0〜12.0で、その表面に担持されているナトリウムイオンの量が、オキシ水酸化ニッケルとナトリウムイオンとの合計の0.5〜1重量%の範囲にある電池W2〜W4は、低負荷放電容量、強負荷放電容量、および容量維持率のいずれについても高い値を示した。
一方、表面に担持されているナトリウムイオンの量が1重量%よりも多い電池W1では、ナトリウムイオンの不純物としての影響が強くなり、保存特性を中心にその性能が低下した。また、表面に担持されているナトリウムイオンの量が0.5重量%未満である電池W5では、低負荷放電容量および高負荷放電容量があまり向上していなかった。これは、ナトリウムイオンの量が少ないために、放電時にオキシ水酸化ニッケル表層部のニッケルの価数が低下しやすくなり、その結果、容量を十分に取り出せなくなったためと推察される。
実施例6
本実施例では、正極合剤中のオキシ水酸化ニッケルの配合比率に関する検討を行った。
体積基準の平均粒子径が40μmである電解二酸化マンガン、上記実施例1で作製したオキシ水酸化ニッケルA4、および人造黒鉛(日本黒鉛工業(株)製のSPグレード;平均粒径15μm)を、表10に示されるような10種の重量比率で混合し、混合粉を得た。これらの混合粉を用いたこと以外、実施例1と同様にして、アルカリ電池Z1〜Z10を作製した。ここで、電池Z1およびZ10は、比較電池である。
こうして作製した電池Z1〜Z10を用い、低負荷放電容量および強負荷放電容量を、実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表10に示す。また、表10において、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。また、表10には、比較電池F4の正極合剤に含まれる電解二酸化マンガンと、オキシ水酸化ニッケルと、黒鉛との配合比率を同時に示す。
Figure 2006040907
表10に示されるように、オキシ水酸化ニッケルA4の比率が80重量%よりも多い電池Z8、Z9およびZ10では、低負荷放電容量が低下していた。オキシ水酸化ニッケルA4の比率が10重量%未満である電池Z1およびZ2では、強負荷放電容量が低下していた。以上の結果から、低負荷放電容量と強負荷放電容量のいずれの優れたものとすることができるため、マンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケルが、正極合剤に、10〜80重量%の量で含まれることが好ましいことがわかる。
また、電池Z1〜Z10は、強負荷放電容量または低負荷放電容量の少なくとも一方が優れているため、それらの特長に応じた用途に使用することにより、それらの電池の効果が十分に得られる。
実施例7
本実施例では、正極合剤中の導電剤である黒鉛の配合比率に関する検討を行った。
実施例1で用いた電解二酸化マンガンと、実施例1で作製したオキシ水酸化ニッケルA4とを重量比1:1で混合した。これに、正極合剤に占める重量比率が表11に示されるような6種の値となるように、実施例1で用いた黒鉛を添加して、6種の混合粉を得た。これらの混合粉を用いたこと以外、実施例1と同様にして、アルカリ電池U1〜U6を作製した。
こうして作製した電池U1〜U6を用い、低負荷放電容量および強負荷放電容量を、実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表11に示す。また、表11において、低負荷放電容量および強負荷放電容量は、それぞれ比較電池F4の低負荷放電容量および高負荷放電容量の値に対する百分率値として示されている。また、表11には、比較電池F4の正極合剤に含まれる黒鉛の量を同時に示す。
Figure 2006040907
表11に示されるように、正極合剤に含まれる黒鉛の割合が3〜10重量%の場合に、特に放電特性が優れることがわかった。黒鉛の混合比率が3重量%未満の電池U1では、正極合剤内の導電網が不完全となるため、特に強負荷放電容量がやや低くなった。黒鉛の混合比率が10重量%よりも大きい電池U6では、正極合剤における活物質の比率が相対的に低くなるために、低負荷放電において、そのエネルギー密度が低下すると考えられる。以上の結果から、本発明においては、導電剤は、3〜10重量%の量で正極合剤に含まれることが好ましい。
また、電池U1〜U6は、いずれも、比較電池F4に比べて優れる点があり、それらの特長に応じた用途に使用することにより、これらの電池U1〜U6のいずれを用いても、十分な効果が得られる。
また、上記実施例では、マンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケルに関し、そのタップ密度が2.2〜2.3g/cm3であり、BET比表面積が10〜20m2/gであるものを使用した。マンガンを固溶したオキシ水酸化ニッケル粉末の電池ケースへの充填密度を考慮すると、そのタップ密度は2.15g/cm3以上であり、電池内での正極合剤の電解液の含浸性を考慮すると、BET比表面積は5〜20m2/gの範囲であるのが好適である。
上記実施例では、マンガンを単独で固溶させたオキシ水酸化ニッケルを用いたが、マンガンの他に、さらに亜鉛、コバルト等の元素をマンガンよりも少量固溶させたオキシ水酸化ニッケルを用いても、ほぼ同様の結果が得られる。
また、上記実施例では、導電剤として黒鉛を用いたが、導電剤として、各種カーボンブラックや繊維状炭素を単独で用いた場合、あるいはそれらを黒鉛と混合して用いた場合にも、本発明の基本的な効果は得られる。
さらに、本発明は、上記実施例で作製した、円筒形状の正極ケース内に、筒状の正極合剤ペレット、セパレータ、ゲル状負極等を配置した、いわゆるインサイドアウト型のアルカリ電池以外にも、アルカリボタン型、角型等の別構造の電池にも適応することが可能である。
本発明により、容量が高く、保存特性が向上したアルカリ電池を提供することができる。このようなアルカリ電池は、例えば、携帯型電子機器用の電源に用いることができる。
本発明の一実施形態に係るアルカリ電池の一部を断面にした正面図である。 実施例で用いたMnを固溶した水酸化ニッケル(曲線A)とMnを共晶状態で含む水酸化ニッケル(曲線B)のそれぞれのX線回折プロファイルを示すグラフである。

Claims (5)

  1. 正極合剤と、負極と、前記正極合剤と前記負極との間に配置されたセパレータとを具備するアルカリ電池であって、
    前記正極合剤は、オキシ水酸化ニッケル、二酸化マンガンおよび導電剤を含み、
    (1)前記オキシ水酸化ニッケルには、少なくともマンガンが固溶されており、前記マンガンが、前記オキシ水酸化ニッケルに含まれる金属元素の総量の0.5〜10mol%を占め、
    (2)前記オキシ水酸化ニッケルがβ型の結晶構造を主体とし、
    (3)前記オキシ水酸化ニッケルの体積基準の平均粒子径が、8〜15μmであるアルカリ電池。
  2. 前記オキシ水酸化ニッケルが、さらに、
    (4)ニッケルの平均価数が2.95〜3.05である、
    (5)タップ密度が2.15g/cm以上である、
    (6)BET比表面積が5〜20m/gである、
    の少なくとも1つの物性を満たす請求項1に記載のアルカリ電池。
  3. 前記オキシ水酸化ニッケルが、その表面に、ナトリウムイオンを担持しており、前記オキシ水酸化ニッケルと前記ナトリウムイオンとの合計の0.5〜1重量%を、前記ナトリウムイオンが占める請求項1に記載のアルカリ電池。
  4. 前記オキシ水酸化ニッケルが、前記正極合剤の10〜80重量%を占める請求項1に記載のアルカリ電池。
  5. 前記導電剤が黒鉛であり、前記黒鉛が、前記正極合剤の3〜10重量%を占める請求項1に記載のアルカリ電池。
JP2006540859A 2004-10-15 2005-09-20 アルカリ電池 Withdrawn JPWO2006040907A1 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004301153 2004-10-15
JP2004301153 2004-10-15
JP2004355690 2004-12-08
JP2004355690 2004-12-08
PCT/JP2005/017261 WO2006040907A1 (ja) 2004-10-15 2005-09-20 アルカリ電池

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2006040907A1 true JPWO2006040907A1 (ja) 2008-05-15

Family

ID=36148206

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006540859A Withdrawn JPWO2006040907A1 (ja) 2004-10-15 2005-09-20 アルカリ電池

Country Status (8)

Country Link
US (1) US20070218358A1 (ja)
EP (1) EP1811593A4 (ja)
JP (1) JPWO2006040907A1 (ja)
KR (1) KR100904349B1 (ja)
AU (1) AU2005293057C1 (ja)
BR (1) BRPI0509966A (ja)
CA (1) CA2564422C (ja)
WO (1) WO2006040907A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102007039471A1 (de) * 2007-08-21 2009-02-26 H.C. Starck Gmbh Pulverförmige Verbindungen, Verfahren zu deren Herstellung sowie deren Verwendung in Lithium-Sekundärbatterien
JP6318955B2 (ja) * 2014-07-31 2018-05-09 株式会社リコー 画像形成装置
JP7057271B2 (ja) * 2018-05-21 2022-04-19 トヨタ自動車株式会社 正極活物質、正極、アルカリ蓄電池および正極活物質の製造方法

Family Cites Families (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5674643A (en) * 1995-02-14 1997-10-07 Sanyo Electric Co., Ltd. Non-sintered nickel electrode for alkaline storage cell
JP3239076B2 (ja) * 1997-01-30 2001-12-17 三洋電機株式会社 密閉型アルカリ蓄電池
US6235428B1 (en) * 1997-01-30 2001-05-22 Sanyo Electric Co., Ltd. Enclosed alkali storage battery
JP2002008650A (ja) * 2000-04-21 2002-01-11 Sony Corp 正極活物質およびニッケル亜鉛電池
JP3866903B2 (ja) * 2000-05-23 2007-01-10 松下電器産業株式会社 アルカリ乾電池
JP4040829B2 (ja) * 2000-09-04 2008-01-30 松下電器産業株式会社 アルカリ電池およびその正極活物質の製造方法
EP1372201A4 (en) * 2001-02-26 2008-06-18 Fdk Corp ALKALINE PRIMARY BATTERY
JP2003234101A (ja) * 2002-02-07 2003-08-22 Fdk Corp アルカリ一次電池
JP4243449B2 (ja) * 2002-02-15 2009-03-25 Fdk株式会社 アルカリ一次電池
US7081319B2 (en) * 2002-03-04 2006-07-25 The Gillette Company Preparation of nickel oxyhydroxide
US7273680B2 (en) * 2002-08-28 2007-09-25 The Gillette Company Alkaline battery including nickel oxyhydroxide cathode and zinc anode
JP4307864B2 (ja) * 2003-02-24 2009-08-05 東芝電池株式会社 密閉形アルカリ亜鉛一次電池
JP2005310752A (ja) * 2004-03-24 2005-11-04 Matsushita Electric Ind Co Ltd アルカリ電池

Also Published As

Publication number Publication date
EP1811593A4 (en) 2010-12-08
CA2564422C (en) 2010-10-19
WO2006040907A1 (ja) 2006-04-20
CA2564422A1 (en) 2006-04-20
BRPI0509966A (pt) 2007-10-02
EP1811593A1 (en) 2007-07-25
AU2005293057C1 (en) 2009-04-02
AU2005293057B2 (en) 2008-11-20
US20070218358A1 (en) 2007-09-20
AU2005293057A1 (en) 2006-04-20
KR20070042121A (ko) 2007-04-20
KR100904349B1 (ko) 2009-06-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2828202B1 (en) Methods of making metal-doped nickel oxide active materials
JP4425100B2 (ja) アルカリ電池
JPWO2005104272A1 (ja) アルカリ一次電池およびその正極材の製造方法
JP2005519021A (ja) オゾンを使用するオキシ水酸化ニッケルの製造
JP2007103111A (ja) アルカリ一次電池およびオキシ水酸化ニッケルの製造方法
CN100431212C (zh) 碱性电池
CN100428538C (zh) 碱性电池
US20060257742A1 (en) Alkaline battery and positive electrode material for alkaline battery
JPWO2006001210A1 (ja) アルカリ電池
JP2004111389A (ja) ニッケル系化合物正極材料一次電池
JPWO2006040907A1 (ja) アルカリ電池
JP2005056733A (ja) アルカリ電池、ならびにアルカリ電池用正極活物質の製造方法
KR100740758B1 (ko) 알칼리 전지
JP2006313678A (ja) アルカリ一次電池とその製造方法
CN100499217C (zh) 碱性电池
JP2005071991A (ja) アルカリ電池
JP2006294288A (ja) アルカリ乾電池
JP2006221831A (ja) アルカリ乾電池
JP4552319B2 (ja) アルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法
JP4467504B2 (ja) アルカリ蓄電池用正極活物質及びその製造方法並びにアルカリ蓄電池用正極
JP4374430B2 (ja) アルカリ電解液電池用正極活物質およびそれを用いたアルカリ電解液電池
JP2006179428A (ja) アルカリ電池
JP2001052694A (ja) アルカリ蓄電池正極活物質用コバルト固溶水酸化ニッケル粉末とその製造方法
JP2006012533A (ja) アルカリ電池
JP2006179429A (ja) アルカリ乾電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080611

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20101108