JPWO2004084333A1 - 燃料電池および燃料電池用電解質膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、固体酸化物型燃料電池において電解質層の薄膜化を図ることを目的とする。固体酸化物型燃料電池において、水素分離金属層120の表面に固体酸化物の電解質層110を成膜する。また、水素透過時の水素分離金属層120の膨張により、水素分離金属層120と電解質層110が層間剥離するのを抑制するための構造を備える。剥離抑制機構としては、水素分離金属層120の膨張を抑制するための構造、電解質層を分割することで膨張時の応力を緩和する構造などが適用可能である。こうすることにより、電解質層を十分に薄膜化することができる。
Description
本発明は、水素透過性金属層を備えた電解質膜を用いた燃料電池に関する。
近年、水素と空気の電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギ源として注目されている。燃料電池のうち、固体の電解質膜を用いたものとして、固体酸化物型などの高温型の燃料電池が存在する。
固体酸化物型の燃料電池は、電極間に挟まれる電解質膜にジルコニアその他の無機質の薄膜を用いるものである。かかる電解質膜の膜抵抗は、低温になるほど増加する傾向にあるため、膜抵抗を実用的な範囲に抑えるために、比較的高温での運転が必要とされる。
固体酸化物型の燃料電池では、電解質膜の膜厚を薄くすることにより膜抵抗を低減することも可能ではあるが、多孔質体で形成される電極上に緻密な薄膜を形成することは非常に困難であり、十分な薄膜化は図られていない。現状では、固体酸化物型の燃料電池は、一般に約700℃以上の温度で運転されていた。
電解質膜の薄膜化による膜抵抗の低減は、固体酸化物型のみならず、種々の形式の燃料電池に共通の課題であった。本発明では、こうした課題に鑑み、電解質膜の薄膜化を実現する技術を提供することを目的とする。
こうした固体酸化物型燃料電池などに用いることができる水素分離膜に関する文献として、特開平7−185277号公報がある。
固体酸化物型の燃料電池は、電極間に挟まれる電解質膜にジルコニアその他の無機質の薄膜を用いるものである。かかる電解質膜の膜抵抗は、低温になるほど増加する傾向にあるため、膜抵抗を実用的な範囲に抑えるために、比較的高温での運転が必要とされる。
固体酸化物型の燃料電池では、電解質膜の膜厚を薄くすることにより膜抵抗を低減することも可能ではあるが、多孔質体で形成される電極上に緻密な薄膜を形成することは非常に困難であり、十分な薄膜化は図られていない。現状では、固体酸化物型の燃料電池は、一般に約700℃以上の温度で運転されていた。
電解質膜の薄膜化による膜抵抗の低減は、固体酸化物型のみならず、種々の形式の燃料電池に共通の課題であった。本発明では、こうした課題に鑑み、電解質膜の薄膜化を実現する技術を提供することを目的とする。
こうした固体酸化物型燃料電池などに用いることができる水素分離膜に関する文献として、特開平7−185277号公報がある。
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明では、燃料電池に次の構成を適用した。本発明の燃料電池は、水素を供給する水素極、酸素を供給する酸素極、水素極と酸素極の間に配置された電解質膜とを有する。この電解質膜は、水素透過性金属層と、その水素透過性金属層の表面に形成された電解質層とを有している。水素透過性金属層は水素透過性金属で構成されている。水素透過性金属層は金属で形成されているため、その表面は十分に緻密である。従って、電解質層の十分な薄膜化を図ることができ、電解質層の膜抵抗の低減を図ることができる。
水素透過性金属としては、パラジウムPd、パラジウム合金などの貴金属、並びにVA族元素、例えば、バナジウムV、ニオブNb、タンタルTaなどを用いることができる。電解質層としては固体酸化物、例えば、BaCeO3、SrCeO3系のセラミックスなどを用いることができる。電解質層のイオン伝導性は、例えば、プロトン伝導性を含む。
このように水素透過性金属層と電解質層を備える複合材で電解質膜を形成した場合、層間の剥離が問題となることがある。一般に水素透過性金属では、水素透過時に体積が膨張する現象が生じることが知られている。これに対し、電解質層としては、水素透過時の膨張率が水素透過性金属と有意に異なる所定の材料で構成される場合がある。水素透過性金属層と電解質層の膨張率の差違は、水素透過時に両層間での剥離を誘因する可能性がある。本発明では、水素透過時における水素透過性金属層と電解質層との間の剥離を抑制する剥離抑制機構を電解質膜に備えることにより、かかる剥離を抑制する。
ここで、剥離抑制機構は、種々の態様で実現することができる。第1の態様は、水素透過時における水素透過性金属層の膨張を抑制する機構である。一般には、水素透過性金属層の膨張率が大きいため、水素透過性金属層の膨張を抑制することにより、剥離を抑制することが可能となる。水素透過性金属層の膨張を抑制する機構は、例えば、水素透過性金属よりも水素透過時の膨張率が低い所定の材料(以下、「骨格部材」と称する)を水素透過性金属層中に配置することで構成することができる。水素透過性金属の周囲に骨格部材で形成された枠組を設ける構成としてもよいし、骨格部材で形成された繊維を水素透過性金属層内に埋め込む構成としてもよい。骨格部材の材料としては、例えば、酸化アルミニウムAl2O3、炭化珪素SiCなどのセラミックス、および鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、モリブデンMo等を一種類以上含んだ単体または合金、グラファイト(黒鉛)C、ホウ素B、ガラスなどを用いることができる。
骨格部材は、水素透過性金属層とその他の層との接触界面を避けて配置することが好ましい。接触界面としては、例えば、水素透過性金属層と電極との界面、水素透過性金属層と電解質層との界面などが挙げられる。骨格部材は、水素透過率が低いことが多い。従って、接触界面に骨格部材が現れるのを回避することにより、接触界面では水素透過性金属層の接触面積が増大し、水素またはプロトンの移動の円滑化を図ることができる。
第2の態様の剥離抑制機構として、水素透過性金属層と電解質層の間に、水素透過性を有する材質で形成された応力緩和層を設けてもよい。水素透過時における応力緩和層の平均膨張率は、水素透過性金属層および電解質層の間の膨張率となっていることが好ましい。例えば、かかる物性値を有する材料を選択してもよいし、水素透過時の膨張率が前記水素透過性金属層より低く、前記電解質層より高いプロトン伝導性電解質層により形成してもよい。あるいはこれとは逆に、水素透過時の膨張率が前記水素透過性金属層より低く、前記電解質層より高い水素透過性金属層により形成しても良い。こうした構成例としては、例えば水素透過性金属層および応力緩和層をパラジウム−ニッケル合金から構成し、応力緩和層におけるニッケル含有量を電解質層側ほど高くした構造を採用することができる。また、水素透過性金属層および電解質層を構成する材料を混合した材料を用いても良い。表面に凹凸を有するよう形成された水素透過性金属層と電解質層を組み合わせることで、接触面内で両層が混在する構造としてもよい。両層が混在する層の平均膨張率は、水素透過性金属層および電解質層の間の膨張率となるから、この層が応力緩和層として機能する。このように応力緩和層を介在させることにより、水素透過性金属層と応力緩和層の間、応力緩和層と電解質層の間で生じる歪み差を低減することができ、応力の緩和、ひいては層間剥離の抑制を図ることができる。
応力緩和層は、必ずしも単層で設ける必要はない。例えば、水素透過性金属層と応力緩和層を複数層積層しても構わない。こうすることで、応力緩和層が水素透過性金属層の膨張を表裏の両面から抑制することができる。また、水素透過性金属の両面に応力緩和層を配置することにより、水素透過性金属と応力緩和層の歪み差に基づく曲げモーメントを抑制することができる。
水素透過性金属と応力緩和層は、接着その他の手法で張り合わせてもよい。金属によって応力緩和層を形成する場合には、水素透過性金属と応力緩和層を拡散接合してもよい。拡散接合する場合には、応力緩和層について、接合面と対向する側の表面を所定厚さだけ除去することが好ましい。こうすることで、応力緩和層の金属密度が高い部分を除去することができ、水素透過性能の低下を抑制することができる。
第3の態様の剥離抑制機構として、電解質層と水素透過性金属層の間に補強部材を局所的に配置する構造としてもよい。補強部材は、電解質層と水素透過性金属層との間の界面強度よりも高い界面強度で、各層と密着する材質または構造とすることが好ましい。補強部材は、水素またはプロトンの透過性を有する材料、かかる透過性を有さない材料のいずれも適用可能である。後者の例としては、例えば、酸化マグネシウムMgOなどがあげられる。
第4の態様の剥離抑制機構として、電解質層と水素透過性金属層との間の界面強度を高めるため、水素透過性金属層と前記電解質層の間に、双方の層を構成する材料が混在する混合層を設けても良い。かかる混合層を備える電解質膜は、例えば、水素透過性金属層を形成した後、その表面に、混合層を形成し、更に混合層の表面に電解質層を形成することにより形成することができる。水素透過性金属層に、混合層を形成する材料を塗布したり蒸着したりすることで、水素透過性金属層の外部に別途、混合層を形成してもよい。また、水素分離金属の表層付近に、電解質層を形成する材料を埋め込むことで、表層近傍を混合層ならしめてもよい。混合層内における水素透過性金属と電解質の割合は、厚み方向に一定としてもよいし、傾斜させてもよい。
混合層は、水素透過性金属層、電解質層を形成するそれぞれの材料を含んでいるため、双方の層と親和性がある。第4の態様によれば、かかる特性を有する混合層を介在させることにより、各層間の界面強度を向上させることができ、剥離を抑制することができる。
第5の態様の剥離抑制機構として、水素透過性金属層と電解質層の接触面を互いに噛合する凹凸面に形成してもよい。かかる電解質膜は、例えば、水素透過性金属層を形成した後、その表面を凹凸形状に加工し、その凹凸形状に噛合するよう電解質層を形成することにより形成することができる。凹凸形状は、水素透過性金属層の表面に凸部分を付加する方法で形成してもよいし、表面の一部を削って凹部分を形成するようにしてもよい。第5の態様によれば、凹凸形状の噛合部分で各層のひずみに伴う接触界面での剪断応力に抵抗する力を作用させて両層をつなぎとめるというアンカー効果と称すべき効果を得ることができる。この効果によって層間の剥離を抑制することができる。
本発明の第6の態様として、剥離抑制機構を、水素透過時の膨張により、電解質膜を、電解質層を内側として押し曲げる押し曲げ機構とすることができる。水素透過時の膨張により電解質層を内側にして押し曲げが生じると、電解質層に局所的な座屈が生じて引っ張り応力がかかることがない。通常、電解質層は引っ張り応力より圧縮応力に対して強いので、電解質層を内側にした押し曲げが生じれば、局所的な変形により引っ張り応力を受けて電解質層が損傷を受ける可能性を低減することができる。こうした押し曲げ機構は、電解質層の水素透過性金属層側とは反対側の面に設けられた部材を、電解質膜中心部ほど剛性を低く形成することにより実現することができる。こうした部材として、電極や補強板などを用いることができる。また、電解質膜中心部ほど剛性を低く形成した構造としては、この部材を、その中心ほど肉薄とした構造や、中心部に付近に切り欠き等を設けて剛性を低くした構造などを考えることができる。切欠などは、同心円状に設けても良いし、あるいは中心部ほど沢山設けるものとしても良い。
本発明の第7の態様として、剥離抑制機構を、電解質層の表面に配設された酸素極を形成する電極の水素透過時の膨張率を、水素透過性金属層の水素透過時の膨張率と略同一とすることがてぎる。こうすることで、水素透過時における電極と水素透過性金属層の膨張はほぼ等しくなり、両者に挟持された電解質層にかかる応力のアンバランスを緩和することができる。更に、酸素極を形成する電極の厚みと、水素透過性金属層の厚みを略同一にしてもよい。厚みが略同一であれば、電解質層に加わる応力のアンバランスは、一層緩和されるからである。
本発明においては、電解質層と水素透過性金属層の平面積、即ち積層方向に直交する平面の面積を等しくしてもよいし、前者を後者よりも小さくしてもよい。複数の電解質層および水素透過性金属層を積層する場合には、電解質層の平面積が水素透過性金属の平面積よりも小さいことが好ましい。こうすることにより、水素透過性金属層のうち電解質層からはみ出した部分を各層間の接合に利用することができる。水素透過性金属同士の接合となるため、比較的容易かつ強固に層間を接合することができる利点がある。
その一方で、電解質層の平面積を、水素透過性金属層の平面積よりも小さくすると、両層が矩形断面を有する場合には、電解質層の端部で応力集中が生じ、剥離が生じやすくなる。本発明の剥離抑制機構には、このように応力集中に起因する剥離を抑制するための機構も含まれる。
即ち、本発明の剥離抑制機構は第8の態様として、電解質層の端部で、電解質層と水素透過性金属層の外表面が滑らかに連続するように、電解質層および水素透過性金属層の少なくとも一方に施された断面形状としてもよい。外表面が滑らかに連続とは、外表面の法線ベクトルの方向が不連続的に変化しないこと、または積層方向に直交する断面内での外表面の方向微分係数が連続となることを意味する。このような断面形状とすることにより、電解質層の端部での応力集中を緩和でき、電解質層と水素透過性金属層の剥離を抑制することができる。
上述の断面形状は、例えば、電解質層の端面から滑らかにつながる面を形成するように、少なくとも水素透過性金属層に設けられた溝であってもよい。かかる溝は、例えば、水素分離金属層の表面に電解質層を積層させた後、電解質層を貫通し水素透過性金属層に至るまでレーザまたは物理切削加工によって削ることで、形成することができる。水素分離金属層と電解質層を重ねた状態で切削することにより、溝の側面は、両層を滑らかにつなげる面を自然と形成するようになる。溝は、かかる方法に限らず、水素分離金属層のみを切削して形成してもよい。第8の態様の剥離機構は、溝に限定されるものではない。例えば、電解質層の端面と水素分離金属層の表面が滑らかにつながるよう、電解質層の端面を削ってもよい。
本発明においては、剥離抑制機構に代えて、電解質層を複数領域に分割して形成する構造を適用してもよい。かかる構造では、水素透過性金属層が膨張した時には、電解質層の領域間に隙間ができる。従って、水素透過時には、水素透過性金属層と電解質層の間に生じる剪断応力を抑制することができ、層間剥離を抑制することができる。
このように電解質層を分割した構成では、分割された電解質層の隙間には、水素の透過を抑制するための透過抑制機構を設けることが好ましい。こうすることにより、隙間ができても水素またはプロトンの電極間でのリークを抑制することができる。
本発明では、電解質膜を次の構成としてもよい。複数の孔を有する保持部材を、その孔が水素透過性金属層の表面に接触するように設ける。そして、この孔には、液体の電解質材を充填する。かかる構造では、液体の電解質材を用いるため、水素透過時に水素透過性金属層が膨張しても、水素透過性金属層と電解質材との間には応力が生じず、剥離等の弊害を回避することができる。
保持部材は、必ずしもイオン伝導性を有する必要はないが、電解質材と共通のイオン伝導性を有する材質を用いることが好ましい。こうすることにより、保持部材自体も電解質層としての機能を果たすことができ、電解質膜の膜抵抗を低減することができる。
以上で説明した、本発明の燃料電池においては、水素透過性金属層に種々の触媒を担持させてもよい。かかる触媒としては、例えば、炭化水素系化合物の改質反応を促進させる改質触媒、一酸化炭素を除去する反応を促進させる一酸化炭素除去触媒、原子状水素の生成を促進させる原子状水素生成触媒などが挙げられる。一酸化炭素除去触媒には、一酸化炭素と水から水素を生成するシフト反応を促進するためのシフト触媒、一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化触媒が含まれる。原子状水素生成触媒は、例えば、VIII族元素が含まれる。これらの触媒の少なくとも一つを担持させることにより、電解質膜では、水素を分離する作用と併せて、触媒に応じた付加的な作用を実現することができる。
本発明の燃料電池においては、水素透過性金属層が水素極側に接するよう配置することが好ましい。この配置では、電解質膜は水素極側の歪みが酸素極側の歪みよりも大きくなるから、水素極側に凸になるように曲げモーメントが生じる。従って、かかる配置では、この曲げモーメントを緩和するため、水素極に供給されるガスの全圧が、酸素極側のガスの全圧よりも高くなるよう各極への供給圧力を制御することが好ましい。
本発明の燃料電池においては、更に、次の構成を適用してもよい。即ち、電解質膜において、水素透過性金属層の表面に形成された酸化物層に、水素透過性金属よりも価数の低い異種元素を添加して電解質層を形成してもよい。こうすれば、添加物がホール伝導性を有するため、水素透過性金属層の一部がプロトン伝導性を有する電解質層として利用可能となるため、剥離などの弊害を回避することができる。この場合、水素透過性金属は、例えば、VA族元素またはその合金を用いることができる。添加物としては、例えば、ランタンLa,ガドリニウムGd,バリウムBa,カリウムKなどを用いることができる。
上述した異種元素の添加は種々の製造方法によって実現することができる。例えば、酸化物層の表面に異種元素を被覆させた後、被覆を加熱してもよい。また、異種元素を含む溶液中に酸化物層を浸した状態で、溶液の加熱または通電を行ってもよい。
本発明は、上述した燃料電池としての態様のみならず、燃料電池に使用される電解質膜として構成してもよい。また、これらの電解質膜または燃料電池を製造する製造方法として構成してもよい。いずれの態様で構成するかにかかわらず、本発明においては、上述した種々の特徴点を適宜、組み合わせたり、一部を省略したりして適用することができる。
水素透過性金属としては、パラジウムPd、パラジウム合金などの貴金属、並びにVA族元素、例えば、バナジウムV、ニオブNb、タンタルTaなどを用いることができる。電解質層としては固体酸化物、例えば、BaCeO3、SrCeO3系のセラミックスなどを用いることができる。電解質層のイオン伝導性は、例えば、プロトン伝導性を含む。
このように水素透過性金属層と電解質層を備える複合材で電解質膜を形成した場合、層間の剥離が問題となることがある。一般に水素透過性金属では、水素透過時に体積が膨張する現象が生じることが知られている。これに対し、電解質層としては、水素透過時の膨張率が水素透過性金属と有意に異なる所定の材料で構成される場合がある。水素透過性金属層と電解質層の膨張率の差違は、水素透過時に両層間での剥離を誘因する可能性がある。本発明では、水素透過時における水素透過性金属層と電解質層との間の剥離を抑制する剥離抑制機構を電解質膜に備えることにより、かかる剥離を抑制する。
ここで、剥離抑制機構は、種々の態様で実現することができる。第1の態様は、水素透過時における水素透過性金属層の膨張を抑制する機構である。一般には、水素透過性金属層の膨張率が大きいため、水素透過性金属層の膨張を抑制することにより、剥離を抑制することが可能となる。水素透過性金属層の膨張を抑制する機構は、例えば、水素透過性金属よりも水素透過時の膨張率が低い所定の材料(以下、「骨格部材」と称する)を水素透過性金属層中に配置することで構成することができる。水素透過性金属の周囲に骨格部材で形成された枠組を設ける構成としてもよいし、骨格部材で形成された繊維を水素透過性金属層内に埋め込む構成としてもよい。骨格部材の材料としては、例えば、酸化アルミニウムAl2O3、炭化珪素SiCなどのセラミックス、および鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、モリブデンMo等を一種類以上含んだ単体または合金、グラファイト(黒鉛)C、ホウ素B、ガラスなどを用いることができる。
骨格部材は、水素透過性金属層とその他の層との接触界面を避けて配置することが好ましい。接触界面としては、例えば、水素透過性金属層と電極との界面、水素透過性金属層と電解質層との界面などが挙げられる。骨格部材は、水素透過率が低いことが多い。従って、接触界面に骨格部材が現れるのを回避することにより、接触界面では水素透過性金属層の接触面積が増大し、水素またはプロトンの移動の円滑化を図ることができる。
第2の態様の剥離抑制機構として、水素透過性金属層と電解質層の間に、水素透過性を有する材質で形成された応力緩和層を設けてもよい。水素透過時における応力緩和層の平均膨張率は、水素透過性金属層および電解質層の間の膨張率となっていることが好ましい。例えば、かかる物性値を有する材料を選択してもよいし、水素透過時の膨張率が前記水素透過性金属層より低く、前記電解質層より高いプロトン伝導性電解質層により形成してもよい。あるいはこれとは逆に、水素透過時の膨張率が前記水素透過性金属層より低く、前記電解質層より高い水素透過性金属層により形成しても良い。こうした構成例としては、例えば水素透過性金属層および応力緩和層をパラジウム−ニッケル合金から構成し、応力緩和層におけるニッケル含有量を電解質層側ほど高くした構造を採用することができる。また、水素透過性金属層および電解質層を構成する材料を混合した材料を用いても良い。表面に凹凸を有するよう形成された水素透過性金属層と電解質層を組み合わせることで、接触面内で両層が混在する構造としてもよい。両層が混在する層の平均膨張率は、水素透過性金属層および電解質層の間の膨張率となるから、この層が応力緩和層として機能する。このように応力緩和層を介在させることにより、水素透過性金属層と応力緩和層の間、応力緩和層と電解質層の間で生じる歪み差を低減することができ、応力の緩和、ひいては層間剥離の抑制を図ることができる。
応力緩和層は、必ずしも単層で設ける必要はない。例えば、水素透過性金属層と応力緩和層を複数層積層しても構わない。こうすることで、応力緩和層が水素透過性金属層の膨張を表裏の両面から抑制することができる。また、水素透過性金属の両面に応力緩和層を配置することにより、水素透過性金属と応力緩和層の歪み差に基づく曲げモーメントを抑制することができる。
水素透過性金属と応力緩和層は、接着その他の手法で張り合わせてもよい。金属によって応力緩和層を形成する場合には、水素透過性金属と応力緩和層を拡散接合してもよい。拡散接合する場合には、応力緩和層について、接合面と対向する側の表面を所定厚さだけ除去することが好ましい。こうすることで、応力緩和層の金属密度が高い部分を除去することができ、水素透過性能の低下を抑制することができる。
第3の態様の剥離抑制機構として、電解質層と水素透過性金属層の間に補強部材を局所的に配置する構造としてもよい。補強部材は、電解質層と水素透過性金属層との間の界面強度よりも高い界面強度で、各層と密着する材質または構造とすることが好ましい。補強部材は、水素またはプロトンの透過性を有する材料、かかる透過性を有さない材料のいずれも適用可能である。後者の例としては、例えば、酸化マグネシウムMgOなどがあげられる。
第4の態様の剥離抑制機構として、電解質層と水素透過性金属層との間の界面強度を高めるため、水素透過性金属層と前記電解質層の間に、双方の層を構成する材料が混在する混合層を設けても良い。かかる混合層を備える電解質膜は、例えば、水素透過性金属層を形成した後、その表面に、混合層を形成し、更に混合層の表面に電解質層を形成することにより形成することができる。水素透過性金属層に、混合層を形成する材料を塗布したり蒸着したりすることで、水素透過性金属層の外部に別途、混合層を形成してもよい。また、水素分離金属の表層付近に、電解質層を形成する材料を埋め込むことで、表層近傍を混合層ならしめてもよい。混合層内における水素透過性金属と電解質の割合は、厚み方向に一定としてもよいし、傾斜させてもよい。
混合層は、水素透過性金属層、電解質層を形成するそれぞれの材料を含んでいるため、双方の層と親和性がある。第4の態様によれば、かかる特性を有する混合層を介在させることにより、各層間の界面強度を向上させることができ、剥離を抑制することができる。
第5の態様の剥離抑制機構として、水素透過性金属層と電解質層の接触面を互いに噛合する凹凸面に形成してもよい。かかる電解質膜は、例えば、水素透過性金属層を形成した後、その表面を凹凸形状に加工し、その凹凸形状に噛合するよう電解質層を形成することにより形成することができる。凹凸形状は、水素透過性金属層の表面に凸部分を付加する方法で形成してもよいし、表面の一部を削って凹部分を形成するようにしてもよい。第5の態様によれば、凹凸形状の噛合部分で各層のひずみに伴う接触界面での剪断応力に抵抗する力を作用させて両層をつなぎとめるというアンカー効果と称すべき効果を得ることができる。この効果によって層間の剥離を抑制することができる。
本発明の第6の態様として、剥離抑制機構を、水素透過時の膨張により、電解質膜を、電解質層を内側として押し曲げる押し曲げ機構とすることができる。水素透過時の膨張により電解質層を内側にして押し曲げが生じると、電解質層に局所的な座屈が生じて引っ張り応力がかかることがない。通常、電解質層は引っ張り応力より圧縮応力に対して強いので、電解質層を内側にした押し曲げが生じれば、局所的な変形により引っ張り応力を受けて電解質層が損傷を受ける可能性を低減することができる。こうした押し曲げ機構は、電解質層の水素透過性金属層側とは反対側の面に設けられた部材を、電解質膜中心部ほど剛性を低く形成することにより実現することができる。こうした部材として、電極や補強板などを用いることができる。また、電解質膜中心部ほど剛性を低く形成した構造としては、この部材を、その中心ほど肉薄とした構造や、中心部に付近に切り欠き等を設けて剛性を低くした構造などを考えることができる。切欠などは、同心円状に設けても良いし、あるいは中心部ほど沢山設けるものとしても良い。
本発明の第7の態様として、剥離抑制機構を、電解質層の表面に配設された酸素極を形成する電極の水素透過時の膨張率を、水素透過性金属層の水素透過時の膨張率と略同一とすることがてぎる。こうすることで、水素透過時における電極と水素透過性金属層の膨張はほぼ等しくなり、両者に挟持された電解質層にかかる応力のアンバランスを緩和することができる。更に、酸素極を形成する電極の厚みと、水素透過性金属層の厚みを略同一にしてもよい。厚みが略同一であれば、電解質層に加わる応力のアンバランスは、一層緩和されるからである。
本発明においては、電解質層と水素透過性金属層の平面積、即ち積層方向に直交する平面の面積を等しくしてもよいし、前者を後者よりも小さくしてもよい。複数の電解質層および水素透過性金属層を積層する場合には、電解質層の平面積が水素透過性金属の平面積よりも小さいことが好ましい。こうすることにより、水素透過性金属層のうち電解質層からはみ出した部分を各層間の接合に利用することができる。水素透過性金属同士の接合となるため、比較的容易かつ強固に層間を接合することができる利点がある。
その一方で、電解質層の平面積を、水素透過性金属層の平面積よりも小さくすると、両層が矩形断面を有する場合には、電解質層の端部で応力集中が生じ、剥離が生じやすくなる。本発明の剥離抑制機構には、このように応力集中に起因する剥離を抑制するための機構も含まれる。
即ち、本発明の剥離抑制機構は第8の態様として、電解質層の端部で、電解質層と水素透過性金属層の外表面が滑らかに連続するように、電解質層および水素透過性金属層の少なくとも一方に施された断面形状としてもよい。外表面が滑らかに連続とは、外表面の法線ベクトルの方向が不連続的に変化しないこと、または積層方向に直交する断面内での外表面の方向微分係数が連続となることを意味する。このような断面形状とすることにより、電解質層の端部での応力集中を緩和でき、電解質層と水素透過性金属層の剥離を抑制することができる。
上述の断面形状は、例えば、電解質層の端面から滑らかにつながる面を形成するように、少なくとも水素透過性金属層に設けられた溝であってもよい。かかる溝は、例えば、水素分離金属層の表面に電解質層を積層させた後、電解質層を貫通し水素透過性金属層に至るまでレーザまたは物理切削加工によって削ることで、形成することができる。水素分離金属層と電解質層を重ねた状態で切削することにより、溝の側面は、両層を滑らかにつなげる面を自然と形成するようになる。溝は、かかる方法に限らず、水素分離金属層のみを切削して形成してもよい。第8の態様の剥離機構は、溝に限定されるものではない。例えば、電解質層の端面と水素分離金属層の表面が滑らかにつながるよう、電解質層の端面を削ってもよい。
本発明においては、剥離抑制機構に代えて、電解質層を複数領域に分割して形成する構造を適用してもよい。かかる構造では、水素透過性金属層が膨張した時には、電解質層の領域間に隙間ができる。従って、水素透過時には、水素透過性金属層と電解質層の間に生じる剪断応力を抑制することができ、層間剥離を抑制することができる。
このように電解質層を分割した構成では、分割された電解質層の隙間には、水素の透過を抑制するための透過抑制機構を設けることが好ましい。こうすることにより、隙間ができても水素またはプロトンの電極間でのリークを抑制することができる。
本発明では、電解質膜を次の構成としてもよい。複数の孔を有する保持部材を、その孔が水素透過性金属層の表面に接触するように設ける。そして、この孔には、液体の電解質材を充填する。かかる構造では、液体の電解質材を用いるため、水素透過時に水素透過性金属層が膨張しても、水素透過性金属層と電解質材との間には応力が生じず、剥離等の弊害を回避することができる。
保持部材は、必ずしもイオン伝導性を有する必要はないが、電解質材と共通のイオン伝導性を有する材質を用いることが好ましい。こうすることにより、保持部材自体も電解質層としての機能を果たすことができ、電解質膜の膜抵抗を低減することができる。
以上で説明した、本発明の燃料電池においては、水素透過性金属層に種々の触媒を担持させてもよい。かかる触媒としては、例えば、炭化水素系化合物の改質反応を促進させる改質触媒、一酸化炭素を除去する反応を促進させる一酸化炭素除去触媒、原子状水素の生成を促進させる原子状水素生成触媒などが挙げられる。一酸化炭素除去触媒には、一酸化炭素と水から水素を生成するシフト反応を促進するためのシフト触媒、一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化触媒が含まれる。原子状水素生成触媒は、例えば、VIII族元素が含まれる。これらの触媒の少なくとも一つを担持させることにより、電解質膜では、水素を分離する作用と併せて、触媒に応じた付加的な作用を実現することができる。
本発明の燃料電池においては、水素透過性金属層が水素極側に接するよう配置することが好ましい。この配置では、電解質膜は水素極側の歪みが酸素極側の歪みよりも大きくなるから、水素極側に凸になるように曲げモーメントが生じる。従って、かかる配置では、この曲げモーメントを緩和するため、水素極に供給されるガスの全圧が、酸素極側のガスの全圧よりも高くなるよう各極への供給圧力を制御することが好ましい。
本発明の燃料電池においては、更に、次の構成を適用してもよい。即ち、電解質膜において、水素透過性金属層の表面に形成された酸化物層に、水素透過性金属よりも価数の低い異種元素を添加して電解質層を形成してもよい。こうすれば、添加物がホール伝導性を有するため、水素透過性金属層の一部がプロトン伝導性を有する電解質層として利用可能となるため、剥離などの弊害を回避することができる。この場合、水素透過性金属は、例えば、VA族元素またはその合金を用いることができる。添加物としては、例えば、ランタンLa,ガドリニウムGd,バリウムBa,カリウムKなどを用いることができる。
上述した異種元素の添加は種々の製造方法によって実現することができる。例えば、酸化物層の表面に異種元素を被覆させた後、被覆を加熱してもよい。また、異種元素を含む溶液中に酸化物層を浸した状態で、溶液の加熱または通電を行ってもよい。
本発明は、上述した燃料電池としての態様のみならず、燃料電池に使用される電解質膜として構成してもよい。また、これらの電解質膜または燃料電池を製造する製造方法として構成してもよい。いずれの態様で構成するかにかかわらず、本発明においては、上述した種々の特徴点を適宜、組み合わせたり、一部を省略したりして適用することができる。
図1は、第1実施例としての燃料電池の全体構成を示す模式図である。
図2は、電極間の圧力差の作用を示す説明図である。
図3は、電解質膜の構造を示す説明図である。
図4は、水素透過性金属層の生成工程を示す工程図である。
図5は、変形例としての水素透過性金属層の生成工程を示す工程図である。
図6は、変形例としての電解質膜の構造を示す説明図である。
図7Aおよび図7Bは、第2実施例としての電解質膜の構造を示す模式図である。
図8は、第3実施例としての電解質膜の断面図である。
図9は、変形例としての電解質膜の構造を例示する説明図である。
図10Aおよび図10Bは、第4実施例としての電解質膜の構造を示す説明図である。
図11は、変形例としての電解質膜の構造を示す説明図である。
図12は、第5実施例としての水素透過性金属層を示す説明図である。
図13は、第5実施例の第1の変形例を示す説明図である。
図14は、第5実施例の第2の変形例を示す説明図である。
図15は、第6実施例の電解質膜100Eの構成を示す説明図である。
図16は、第6実施例の電解質膜100Eの変形の様子を模式的に示す説明図である。
図17は、第6実施例における補強板の他の構成例を示す説明図である。
図18は、第7実施例の電解質膜100Fの構成を示す説明図である。
図19は、第8実施例としての電解質膜の生成工程を示す工程図である。
図20は、変形例としての電解質膜の生成工程を示す工程図である。
図21は、第9実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。
図22は、第10実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。
図23は、第10実施例の変形例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。
図24は、第11実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。
図25Aないし図25Dは、溝の剥離抑制効果を示す説明図である。
図26Aおよび図26Bは、第11実施例としての2種類の電解質膜を例示する平面図である。
図27Aおよび図27Bは、第11実施例の変形例としての電解質膜の断面形状を例示する説明図である。
図2は、電極間の圧力差の作用を示す説明図である。
図3は、電解質膜の構造を示す説明図である。
図4は、水素透過性金属層の生成工程を示す工程図である。
図5は、変形例としての水素透過性金属層の生成工程を示す工程図である。
図6は、変形例としての電解質膜の構造を示す説明図である。
図7Aおよび図7Bは、第2実施例としての電解質膜の構造を示す模式図である。
図8は、第3実施例としての電解質膜の断面図である。
図9は、変形例としての電解質膜の構造を例示する説明図である。
図10Aおよび図10Bは、第4実施例としての電解質膜の構造を示す説明図である。
図11は、変形例としての電解質膜の構造を示す説明図である。
図12は、第5実施例としての水素透過性金属層を示す説明図である。
図13は、第5実施例の第1の変形例を示す説明図である。
図14は、第5実施例の第2の変形例を示す説明図である。
図15は、第6実施例の電解質膜100Eの構成を示す説明図である。
図16は、第6実施例の電解質膜100Eの変形の様子を模式的に示す説明図である。
図17は、第6実施例における補強板の他の構成例を示す説明図である。
図18は、第7実施例の電解質膜100Fの構成を示す説明図である。
図19は、第8実施例としての電解質膜の生成工程を示す工程図である。
図20は、変形例としての電解質膜の生成工程を示す工程図である。
図21は、第9実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。
図22は、第10実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。
図23は、第10実施例の変形例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。
図24は、第11実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。
図25Aないし図25Dは、溝の剥離抑制効果を示す説明図である。
図26Aおよび図26Bは、第11実施例としての2種類の電解質膜を例示する平面図である。
図27Aおよび図27Bは、第11実施例の変形例としての電解質膜の断面形状を例示する説明図である。
本発明の実施の形態について、以下の順序で説明する。
A.第1実施例
A1.全体構成
A2.電解質膜
A3.変形例
B.第2実施例
C.第3実施例
D.第4実施例
E.第5実施例
F.第6実施例
G.第7実施例
H.第8実施例
I.第9実施例
J.第10実施例
K.第11実施例
A.第1実施例:
A1.全体構成:
図1は第1実施例としての燃料電池の全体構成を示す模式図である。燃料電池を構成するセルの断面を示した。このセルは、酸素極10(以下、カソードとも称する)、水素極20(以下、アノードとも称する)で電解質膜100を挟んだ構造となっている。酸素極10、水素極20の構造および材質は、カーボンなど種々の材料で形成可能である。
電解質膜100は、バナジウムVで形成された緻密な水素透過性金属層120の表面に固体酸化物からなる電解質層110の薄膜が成膜されている。電解質層110は、BaCeO3、SrCeO3系のセラミックスプロトン伝導体などを用いることができる。電解質層110の外面に、パラジウム(Pd)の被膜を設けてもよい。本実施例では、電解質層110の厚さは1μm、水素透過性金属層120の厚さは40μmとした。各層の厚さは任意に設定可能である。
発電過程における水素極および酸素極での反応を促進するために、セル中には白金Pt等の触媒層を設けるのが通常である。図示を省略したが、触媒層は、例えば、電解質膜100と酸素極10、水素極20との間に設けることができる。触媒層は、その他、パラジウムPdの被膜と電解質層110との間、電解質層110と水素透過性金属層120との間などに設けてもよい。
図示する通り、酸素極10には、酸素を含有したガスとして圧縮空気が供給される。水素極20には、水素リッチな燃料ガスが供給される。燃料ガス中の水素は、水素透過性金属層120で分離され、電解質層110を経て酸素極側に移動する。酸素極10、水素極20に供給されるガスの圧力は、任意に設定可能であるが、本実施例では、水素極20の全圧Phが酸素極10の全圧Poよりも高くなる設定とした。
図2は電極間の圧力差の作用を示す説明図である。電解質層110および水素透過性金属層120の断面図を示した。図中に矢印で示すように、水素透過性金属層120から電解質層110を経て水素が移動すると、各層はそれぞれ膨張する。一般に、水素透過時における水素透過性金属層120の膨張率は電解質層110の膨張率よりも高い。この膨張率の相違は、図中に示す曲げモーメントM1を生じさせ、電解質膜を一点鎖線で示す方向に変形させる。一方、先に説明した圧力差は、矢印Pで示す方向に作用する。この圧力差は、曲げモーメントM2を生じさせ、電解質膜を破線で示す方向に変形させる。従って、水素極側の全圧を酸素極側の全圧よりも高く設定しておくことにより、水素透過時の曲げモーメントM1を相殺する曲げモーメントM2を作用させることができ、電解質膜の変形を抑制することができる。
A2.電解質膜
図3は電解質膜の構造を示す説明図である。図3Aに斜視図を示し、図3BにA−A断面図を示した。この図では、上面が水素極20に接触し、下面が酸素極10に接触することになる。電解質層110は、一様に形成された固体酸化物で形成されている。水素透過性金属層120は、水素透過性金属121と、骨格部材126で形成されている。水素透過性金属121は、例えば、パラジウムPd、VA族金属のうち1種類以上を含んだ金属単体または合金とすることができる。骨格部材126は、水素透過性金属121よりも単位体積あたりに水素が入り込み得る値、即ち水素溶解量が低い材料を用いることができる。かかる材料としては、例えば、酸化アルミニウムAl2O3、炭化珪素SiCなどのセラミックス、および鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、モリブデンMo等を一種類以上含んだ単体または合金、グラファイト(黒鉛)C、ホウ素B、ガラスなどを用いることができる。水素透過性金属121としてVA族金属を用いる場合には、骨格部材126としてパラジウムまたはその合金を用いることもできる。骨格部材126を金属で形成する場合には、骨格部材126自体がアノード集電材として機能し得るため、構造がシンプルになるという利点もある。骨格部材126は、多孔質材料とするこ とができ、例えば、酸化アルミニウムAl2O3を用いる場合には、平均の細孔径は0.2μm、気孔率40%程度とすることができる。
図4は水素透過性金属層の生成工程を示す工程図である。まず、水素透過性金属および骨格部材の薄膜をそれぞれ凹凸形状に加工する(ステップS10)。図中には、凹凸形状の例を示した。次に、水素透過性金属の薄膜121Pと、骨格部材の薄膜126Pを凹凸部分がかみあうように張り合わせる(ステップS12)。最後に、水素透過性金属単体または骨格部材単体からなる表層を研磨またはエッチング等により削除する(ステップS14)。
図5は変形例としての水素透過性金属層の生成工程を示す工程図である。まず、骨格部材の薄膜126Qを凹凸形状に加工する(ステップS20)。次に、この薄膜の凹部に水素透過性金属121Qを充填する(ステップS22)。そして、骨格部材単体からなる表層部分を研磨またはエッチング等により削除する(ステップS24)。水素透過性金属層は、ここに例示した以外にも種々の方法で生成可能である。
以上で説明した第1実施例の燃料電池では、水素透過性金属層120の表面に電解質層110の薄膜が形成される。水素透過性金属層120は、十分に緻密であるため、電解質層110の厚さを抑制することができ、膜抵抗を低減することができる。
さらに、第1実施例の燃料電池では、水素透過性金属121の周囲に骨格部材126の枠組みが施されている。骨格部材126は、水素透過時の膨張率が低いため、水素透過性金属121の膨張を抑制することができる。この結果、水素透過性金属層120と電解質層110との間のひずみ差を抑制することができ、両層の剥離を抑制することができる。
A3.変形例
図6は変形例としての電解質膜の構造を示す説明図である。ここでは、ケースA1〜ケースF1の6通りを示した。電解質層110と水素透過性金属層120の接触界面が部分的であるか全面であるか、およびアノードが電解質膜の内部か外部かによって分類した。
ケースA1は、接触界面が部分であり、アノードが外部に構成される例である。このケースでは、実施例と同様、水素透過性金属121Aの周囲に骨格部材126Aが配置される。ただし、アノードとの接触面(図の上面)には、骨格部材126Aは現れない。従って、水素透過性金属121Aが全面でアノードと接触することができ、水素の移動の円滑化、ひいては膜抵抗の低減を図ることができる。
ケースB1は、接触界面が部分であり、アノードが内部に構成される例である。このケースでは、第1実施例と同様、骨格部材126Bの凹部に水素透過性金属121Bが配置された構造となっている。水素透過性金属121Bの上面は、アノード20Bが構成される。この構造では、水素透過性金属121Bを薄くすることにより、水素透過速度の向上、ひいては膜抵抗の低減を図ることができる。
ケースC1は、接触界面が部分であり、アノードが内部に構成される例である。ケースB1と同様、骨格部材126Cの凹部に水素透過性金属121Cが配置され、水素透過性金属121Cの上面には、アノード20Cが構成される。更に、凹部内には、種々の触媒30Cが担持される。触媒30Cとしては、かかる触媒としては、例えば、炭化水素系化合物の改質反応を促進させる改質触媒、一酸化炭素を除去する反応を促進させる一酸化炭素除去触媒、原子状水素の生成を促進させる原子状水素生成触媒(以下、スピルオーバー水素生成触媒とも呼ぶ)などが適用可能である。一酸化炭素除去触媒には、一酸化炭素と水から水素を生成するシフト反応を促進するためのシフト触媒、一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化触媒が含まれる。原子状水素生成触媒は、例えば、VIII族元素、即ち白金Pt、パラジウムPd、ロジウムRh、ルテニウムRuなどが含まれる。
これらの触媒の少なくとも一つを担持させることにより、電解質膜では、水素を分離する作用と併せて、触媒に応じた付加的な作用を実現することができる。例えば、改質触媒を担持させれば、改質反応器を省略または小型化することができる。一酸化炭素除去触媒を担持させれば、シフト反応器や一酸化炭素選択酸化反応器を省略または小型化することができ、燃料電池に有害な成分の濃度を低減することができる。シフト反応で生じる水素は、水素透過性金属121Cによって分離されるため、平衡反応であるシフト反応が促進するという利点もある。原子状水素生成触媒を担持させれば、水素の透過速度を向上することができ、膜抵抗を低減させることができる。
ケースD1は、接触界面が全面であり、アノードが外部に構成される例である。実施例と同様、骨格部材126Dの凹部に水素透過性金属121Dが配置される。ただし、電解質層110との接触面には、骨格部材126Dは現れない。従って、水素透過性金属121Dが全面で電解質層110と接触することができ、水素の移動の円滑化、ひいては膜抵抗の低減を図ることができる。
ケースE1は、接触界面が全面であり、アノードが内部に構成される例である。ケースE1では、電解質層110と水素透過性金属121Eを積層した上に、骨格部材126Eが積層される。骨格部材126Eの凹部には、水素透過性金属121Eは配置されず、アノード20Eが配置されている。水素透過性金属121Eの周囲を骨格部材で枠組みしなくても、水素透過性金属121Eの膨張を抑制することができ、水素透過性金属121Eと電解質層110の剥離を抑制することができる。ケースE1では、製造コストを抑制することができる利点がある。また、水素透過性金属121Eが電解質層110と全面で接触するため、接触界面での水素またはプロトンの移動の円滑化を図ることができる利点もある。
ケースF1は、接触界面が全面であり、アノードが内部に構成される例である。ケースF1では、水素透過性金属層121Fの内部に骨格部材が混在している。例えば、骨格部材を形成する材料、酸化アルミニウムAl2O3、炭化珪素SiC、グラファイト(黒鉛)C、ホウ素Bなどの繊維を強化繊維として混在させることができる。かかる構造は、例えば、水素透過性金属と強化繊維とを混合し、高温で分離金属を溶融したインゴットを作成し、これを圧延して薄膜化することで形成可能である。また、液体急冷法によって製造してもよい。即ち、強化繊維を混ぜて溶融した水素透過性金属を回転している冷却用のロール表面に噴射することで薄膜を形成する方法である。ケースF1によれば、比較的簡易な工程で、膨張率を抑制した水素透過性金属層121Fを形成することができる利点がある。
B.第2実施例:
次に、第2実施例としての電解質膜の構造について説明する。図7Aは、第2実施例としての電解質膜の構造を模式的に示す斜視図であり、図7Bは、そのA−A断面図である。この図では、図示上面が酸素極10に接触し、図示下面が水素極20に接触することになる。水素透過性金属120は、例えば、パラジウムPd、VA族金属のうち1種類以上を含んだ金属単体または合金とすることができる。
電解質層110Aは、液体の電解質材116Aと、保持部材116Bで形成されている。保持部材116Bは、プロトン伝導性を有する材料として多孔質のセラミックスを用いた。プロトン伝導性を有さない材料、緻密な材料を用いることも可能である。
電解質材116Aは、保持部材116Bの凹部に充填されている。液体でプロトン伝導性を有する材料としては、例えば、塩化リチウム−塩化ストロンチウム(LiCl−SrCl2)等が挙げられる。この電解質層110Aの上面に、図7Bに破線で示したように、電解質材116Aを含浸させた多孔質の電極を配置してもよい。かかる電極を配置すると、電極内に液相プロトン、電極、触媒の三相界面が形成されるため、電極での反応を促進させることができる。また、この電極が液体の電解質材の蒸発等を抑制する利点もある。
以上説明した第2実施例によれば、液体の電解質材116Aを用いるため、水素透過時に水素透過性金属120が膨張しても、水素透過性金属層120と電解質層110Aとの間での応力を抑制でき、層間の剥離を抑制することができる。
C.第3実施例:
図8は第3実施例としての電解質膜の構造を模式的に示す断面図である。この電解質膜は、電解質層110、水素透過性金属層120の間に、応力緩和層115が配置されている。図の右側に、水素透過時の膨張率を模式的に示した。電解質層110の膨張率は最も低い値CE1、水素透過性金属層120の膨張率は最も高い値CE3であり、応力緩和層はCE1、CE3の間の値CE2である。
応力緩和層115は、水素透過性金属層120の素材に応じて、種々の態様で構成することができる。例えば、水素透過性金属層120として、VA族元素を用いている場合には、応力緩和層は、パラジウムPdなど、VA族元素よりも水素透過率の低い金属を用いることができる。この他、水素透過性金属層120と電解質層110の素材を混合した材料を応力緩和層115に適用してもよい。
第3実施例の電解質膜によれば、応力緩和層115がない場合に比較して、電解質層110と応力緩和層115の間のひずみ差、および応力緩和層115と水素透過性金属層120の間のひずみ差を抑制することができる。従って、これらの層間での剥離を抑制することができる。
図9は変形例としての電解質膜の構造を模式的に示す説明図である。応力緩和層115は、水素透過性金属層120、電解質層110と材質を代えるだけでなく、構造や組成の変化によって実現してもよい。ケースA2は、構造的に実現した例を示している。ケースA2では、電解質層110Aと水素透過性金属層120Aは、互いに凹凸を有する断面形状となっている。両層を組み合わせた中間の層内が、応力緩和層115Aとなる。この応力緩和層115Aでは、局所的に電解質層110Aと水素透過性金属層120Aが混在した状態となっているため、平均の膨張率は、電解質層110Aと水素透過性金属層120Aの間の値となる。
ケースB2は、組成を変化させることで応力緩和層を形成した例を示している。水素透過性金属層120Bと電解質層110Bの間では、両者の組成が混在した層が応力緩和層115Bとして形成されている。応力緩和層115B内では、水素透過性金属層120Bから電解質層110Bに向かうにつれ、組成は、水素透過性金属の密度が低くなるとともに、電解質の密度が高くなるように変化する。ここでは、膨張率が線形的に連続的に変化する例を示しているが、非線形に変化しても構わないし、不連続的に変化しても構わない。また、応力緩和層115としては、こうした構成の他、膨張率が、電解質層110の膨張率と水素透過性金属層120の膨張率の間であるプロトン伝導性の電解質層を用いる構成も可能である。こうした電解質層は、一層でも良いし、複数層設けても良い。複数層設ける場合には、その膨張率を徐々に変化させるものとすれば更に好ましい。応力緩和層115としての電解質層の厚みや層数などは、燃料電池として要求される電気的な特性や機械的な強度などに基づいて決定すれば良い。
D.第4実施例:
次に第4実施例について説明する。図10Aは、電解質膜の構造を斜視方向から模式的に示す説明図であり、図10BはそのA−A断面図である。水素透過性金属層120は、先に説明した種々の実施例と同様、VA族、パラジウムPdなど水素透過性を有する金属で構成された一様な層である。
電解質層112は、複数の円柱状に分割されている。材料は、先に説明した実施例と同様、固体酸化物などを用いることができる。電解質層112は、円柱状である必要はなく、種々の形状とすることができる。例えば、連続した壁状としても良い。また、必ずしも隙間が設けられている必要はなく、分割されてさえいえれば、密着して配列されていても構わない。分割は等間隔である必要はなく、ランダムな配置に分割しても差し支えない。
第4実施例の構造によれば、水素透過性金属層120の膨張によるひずみは、電解質層112の隙間が大きくなることで吸収される。従って、水素透過性金属層120と電解質層112の間の応力を回避することができ、層間の剥離を抑制することができる。
図11は変形例としての電解質膜の構造を示す説明図である。ここでは、ケースA3〜ケースD3の4通りを示した。各構成は、電解質層112と水素透過性金属層120の接触界面の構造、およびカノードとの接触面が部分的であるか全面であるかによって分類した。
ケースA3は、接触界面にリーク防止機構が設けられ、カソードとの接触面が分割されている例である。電解質層112Aの構造は、上記の実施例(図10A、図10B参照)と同様に分割されている。ケースA3では、電解質層112Aの隙間に、図中の上面に位置することになるカソードと水素透過性金属層120との間の水素の漏れを抑制するためのリーク防止機構が設けられている。リーク防止機構は、例えば、水素透過金属の酸化物、窒化物、炭化物などをめっき法などによって付着させることで構成される。更に、燃料電池の作動温度で流動性を有する材料、例えば、ガラスなどを用いると、水素の漏れをより確実に抑制することができる利点がある。先に説明した液体のプロトン伝導材をリーク防止機構として適用してもよい。
ケースB3は、接触界面は空洞、カソードとの接触面が連結している例である。図示する通り、電解質層112Bは、水素透過性金属層120との接触界面では分割されているが、カソードとの接触面では連結している。かかる構造によれば、カソードとの接触面積を確保することにより、プロトンの伝導性を向上することができ、膜抵抗を低減することができる。
ケースC3は、ケースB3において、水素透過性金属120と電解質層112Cとの界面にリーク防止機構113Cを設けた例である。リーク防止機構113Cには、ケースA3と同様の材質を適用することができる。こうすることにより、水素の漏れを抑制することができる。
ケースD3は、ケースB3において、水素透過性金属120と電解質層112Dとの間に、両者を固定するピンニング材料113Dを設けた例である。ピンニング材料113Dとしては、水素透過性金属120、電解質層112Dとの間で、水素透過性金属120と電解質層112D間の界面強度よりも強い界面強度を確保可能な材料を用いることが好ましい。かかる材料としては、例えば、酸化マグネシウムMgOなどが挙げられる。水素透過性およびプロトン伝導性は有していなくても構わない。この例では、ピンニング材料は、電解質層112Dの内部にのみ配置されているが、水素透過性金属120内に食い込ませるように配置してもよい。ピンニング材料113Dを用いることにより、水素透過性金属120と電解質層112Dとの間の剥離を更に抑制することが可能となる。
E.第5実施例:
図12は第5実施例としての水素透過性金属層を示す説明図である。この上面または下面に電解質層を形成することにより電解質膜を形成することができる。第5実施例では、水素透過性金属層は、水素透過性の高い金属と、低い金属の2種類を組み合わせて形成される。ここでは、3つのケースを例示した。
ケースA4は、組成の傾斜を設けない例である。水素透過性の高い金属層123Aの間に、透過性の低い金属層127Aを設けた構成である。金属層123A、127Aはともに、複数層、積層されている。金属層123Aとしては、例えば、VA族元素またはその合金を用いることができる。金属層127Aとしては、例えば、パラジウムPdまたはパラジウム合金を用いることができる。金属層127Aとして、ニッケルNi,銅Cu,コバルトCo等を、単独または組み合わせて添加したVA族元素の合金を用いてもよい。
ケースB4は、ケースA4において層間で膜の厚み方向に組成を傾斜させた例である。かかる構造は、例えば、水素透過性の高い金属層123Bの間に、透過性の低い金属層127Bを設けた上で、加熱し、各層間で金属拡散を生じさせることにより形成することができる。拡散を促進するため、例えば、金属層123BにはニッケルNiの添加量の少ないVA族元素の合金を用い、金属層127BにはニッケルNiの添加量の多いバナジウム合金を用いることが好ましい。一例として、金属層123BにおけるニッケルNiの添加量を5%程度、金属層127BにおけるニッケルNiの添加量を50%としたバナジウム合金を用いることができる。
ケースC4は、水素透過性の高い金属層123Cを単層とし、その両面に透過性の低い金属層127Cを設けた例である。層間は、ケースB4と同様に組成を傾斜させる場合を例示したが、ケースA4のように傾斜なしとしてもよい。ケースC4の構造は、例えば、次の手順で生成することができる。まず、金属層123Cの両面に金属層127Cを張り合わせた後、加熱し、層間で金属拡散を生じさせる。この状態では、表面に水素透過性の低い金属の密度が高い層が残留しているため、研磨またはエッチングにより表面の所定範囲を除去する。除去する厚みについては、金属拡散時の加熱および処理時間などに応じて設定することができる。このように表面を研磨することにより、水素透過性の低い金属層を薄くすることができ、水素透過性を向上することができる。
次に、上述した第5実施例の変形例について説明する。図13は、変形例としての電解質膜100Dの構造を示す模式図である。図示するように、燃料電池に用いられるこの電解質膜100Dは、水素透過性金属層120Dの組成を電解質層110D側において異ならせ、中間層118を形成している。この変形例において、水素透過性金属層120Dは、ニッケルNiを5パーセント添加したバナジウム合金を用いているが、中間層118では、このニッケルNiのドープ量(含有量)が電解質層110D側ほど高く、最大で10パーセントとなっている。バナジウム−ニッケル合金は、ニッケルNiのドープ量が高いほど水素透過時の膨張率が低くなる特性を有する。図13右側に、膨張率を模式的に示した。かかる構成を採用すれば、電解質層110Dと接する箇所での膨張率の差は小さくなり、電解質層110Dにかかる引っ張り応力を低減することができる。なお、中間層118は、水素透過金属層120Dと一体に形成しても良いし、独立の層として形成しても良い。前者の場合は、水素透過金属層120Dの表面にニッケルNiをドープし、表面ほどそのドープ量を増加した構造とすれば良い。また、中間層118におけるニッケルNiのドープ量は、図13に示した例のように、電解質層110D側に向けて連続的に徐々に高くした構成としても良いし、図14に例示したように、ニッケルNiドープ量の異なる水素透過金属層を何枚か積層することで、電解質層110D側に向けてニッケルNiドープ量がステップ状に上昇する構成としても良い。前者の場合には、積層工程を必要とせず構成を簡略にすることができる。後者の場合には、ニッケルNiドープ量の変化を調整しやすいという利点がある。ニッケルNiのドープ量と層厚とを設定することにより、膨張率の変化の特性を自由に設計することができる。なお、この例ではニッケルNiのドープ量により膨張率を調整したが、水素透過時の膨張率を調整できる材料であれば、他の材料も当然採用可能である。
これらの構造によれば、水素透過性の高い金属層の膨張を、水素透過性の低い金属層で抑制することができる。従って、水素透過性金属層全体の膨張を抑制することができ、電解質層との剥離を抑制することができる。図12に示した例では、透過性の高い金属層の両面に、透過性の低い金属層を設ける例を示したが、図13、図14に示したように、片面にのみ設けるものとしてもよい。
F.第6実施例:
次に第6実施例の燃料電池に用いられる電解質膜100Eについて説明する。この電解質膜100Eは、図15に示したように、水素透過性金属層120Eと電解質層110Eとからなり、電解質層110Eに接する補強板40を備える。補強板40は、この実施例では、所定の開口率有するパンチメタルとしたが、金網状、格子状やメッシュ状の板材でも差し支えない。この補強板40は、中心部ほどその肉厚が薄くされている。このため、水素透過時に、水素透過性金属層120Eと電解質層110Eとの膨張率の差により、電解質膜100Eに応力が加わると、補強板40の中心部が肉薄であることから、電解質膜100Eは、水素透過性金属層120E側に凸状に変形しながら押し曲げられることになる。この様子を、図16に示した。補強板40の中心部の機械的強度を低くしておき、電解質層110E全体が、水素透過性金属層120E側に凸状となることから、電解質層110Eに部分的に強い引っ張り応力が加わるような変形が生じることがない。電解質層110Eの膨張が原因となる反りをきっかけとして局所的な座屈等か生じることがないからである。なお、図16に示しような変形が生じると、電解質層110Eには、圧縮応力が加わるが、電解質層110E、特にセラミックス系の電解質膜の場合には、引っ張り応力に比べると圧縮応力に対する強度は高いので、こうした変形により電解質膜100Eが損傷を受ける可能性を大幅に低減することができる。
なお、以上説明した第6実施例では、電解質膜100Eに接する補強板40の肉厚を中心部ほど薄くして、水素透過性金属層120E側に凸状となる変形が起きやすいようにしたが、図17に示したように、補強板40に切り欠き部40aを設け、同様の変形が生じやすくしても良い。切り欠き部40aは、電解質膜100Eの中心から同心円状に設けても良いし、小さな切り欠き部40aを所定間隔に設けるものとしても良く、変形が一様に生じるように、設計すれば良い。また、この実施例では、補強板40が存在することから、補強板40に所定の変形が生じやすくなる仕組みを設けたが、電解質膜100Eに直接酸素極の集電体が接している場合には、この集電体の肉厚を中心部ほど薄くするなど、同様の構造を持たせれば良い。
G.第7実施例:
次に、第7実施例について説明する。図18は、第7実施例の電解質膜100Fの構造を示す説明図である。この実施例では、電解質膜100Fは、プロトン伝導性を備えた電解質層110Fと水素透過性金属層120Fとから形成されているが、電解質層110F上に形成されるカソード電極(酸素極)10Fを、水素透過性金属層120Fと同じ材料でかつ同じ厚みD1としている。第7実施例では、カソード極10Fおよび水素透過性金属層120Fとして、パラジウムPdを用いた。また、その厚みは、実施例では、共に30ないし40μmである。
かかる構造を採用した結果、水素透過時に電解質層110Fが膨張しても、カソード電極10Fと水素透過性金属層120Fの膨張率と厚みD1が同じであることから、電解質層110Fはその両側から略同一の伸び、略同一の応力を受けることになる。この結果、電解質層110Fを一方向に曲げようとする力が加わることがなく、電解質層110F全体として平坦に保たれることになる。なお、カソード電極10Fと水素透過性金属層120Fの膨張率と厚みは、両者から電解質層110Fが受ける力が減殺するように設計すればよく、例えば厚みを完全に同一にする必要はない。カソード電極10Fは場合によっては複雑な形状となるため(図1参照)、カソード電極側から電解質層110Fが受ける力を計測または演算し、これと略等しい力を電解質層110Fが受けるように、水素透過性金属層120Fの膨張率や厚みを設計すれば良い。また、カソード電極10Fおよび水素透過性金属層120Fの材料は、パラジウムPdに限るものではなく、上述した各実施例で開示した種々の材料を用いることができる。
H.第8実施例:
図19は第8実施例としての電解質膜の生成工程を示す工程図である。第8実施例では、水素透過性を有する金属を基材102として用意し、この表面に酸化物層102Aを形成する(ステップS30)。かかる金属としては、例えば、VA族元素を用いることができる。
次に、この酸化物層102Aに対して、添加成分の酸化物106をコーティングする(ステップS32)。添加物としては、バナジウムVを基材として用いた場合には、例えば、ランタンLa、ガドリニウムGd、バリウムBaなどが挙げられる。タンタルTaを基材として用いた場合には、例えば、カリウムKなどが挙げられる。基材として用いられる金属よりも価数の低い金属をすることが可能である。
次に、コーティングが施された表面をレーザ等によって加熱処理する(ステップS34)。こうすることで、添加成分によってホール伝導性が付与され、基材102の表面に添加成分を含むプロトン伝導層102Bが形成される。プロトン伝導層102Bは、例えば、バナジウムVを基材とした場合には、LaVO3、GdVO3などのペロブスカイト型酸化バナジウムとなる。
図20は変形例としての電解質膜の生成工程を示す工程図である。この工程では、基材102の表面に酸化物層102Aを形成する(ステップS40)。次に、この基材102を添加成分を含む水溶液106Aに浸し、基材102と電極107との間に電源108を接続し、通電する(ステップS42)。こうすることにより、溶液中の添加物成分、例えば、ランタンイオンLa3+などが酸化物層102Aと反応し、プロトン伝導層が形成される。通電に代えて、溶液全体を加熱するようにしてもよい。
以上で説明した第8実施例の電解質膜によれば、基材表面に形成された酸化物層が電解質層、即ちプロトン伝導体として機能する。従って、電解質層と水素透過性金属との剥離を抑制することができる。基材および添加物の組み合わせによっては、電子伝導性を有するプロトン伝導体を構成することも可能であり、こうして形成された酸化物層は金属拡散の抑制層としても利用することができる。従って、酸化物層の表面にパラジウムPdまたはその合金をコーティングして、水素透過性金属層を形成してもよい。
I.第9実施例:
図21は第9実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。この工程では、水素透過性金属で基材を形成し(ステップS50)、その表面に混合層を形成する(ステップS52)。混合層とは、基材を形成する水素透過性金属と、電解質層を形成する材料とが混在する層である。
図中に、混合層の形成状態を方法A、方法Bの2種類について、模式的に示した。方法Aでは、基材130Aに電解質を形成するセラミックス材料を埋め込むことにより、表層近傍の領域を、混合層131Aとさせる。材料の埋め込みは、種々の方法で実現可能である。例えば、
(1)基材130Aの表面を、セラミックス材料の粒子で物理研磨する方法;
(2)セラミックス材料の粒子を基材130Aの表面に吹き付けるサンドブラスト法;
(3)基材130Aを、セラミックス粒子が混ぜられた水溶液中で超音波振動させることにより、セラミックス粒子を基材130Aの表面に物理的に衝突させる方法;
などが挙げられる。
方法Bでは、基材130Bの表面に、別途、混合層131Bを形成する。方法Bにおける混合層131Bの形成も種々の方法で実現可能である。例えば、
(a)水素分離金属が薄くコートされた直径1μm以下程度のセラミックス微粒子を、基材131Bの表面に塗布し、焼成する方法;
(b)水素分離金属の微粒子とセラミックス微粒子を混ぜ合わせたものを、基材131Bの表面に塗布し、焼成する方法;
(c)水素分離金属の錯体とセラミックス微粒子の水溶液を、基材131Bの表面に塗布し、焼成する方法;
などが挙げられる。
混合層の形成は、上述の方法A、Bのいずれか一方のみに依る必要はなく、両者を組み合わせて用いても良いし、両者以外の方法を適用しても構わない。第9実施例の生成工程では、こうして形成された混合層の表面に、電解質層を形成する(ステップS54)。図中に、方法A、方法Bそれぞれについて、電解質層132A、132Bを形成した状態を模式的に示した。電解質層の形成は、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、ゾルゲル法、メッキなどの方法によって行うことができる。第9実施例では、混合層に含まれるセラミックス粒子が、成膜時の結晶核となり、成膜速度が速くなるという効果がある。
第9実施例によれば、混合層を基材と電解質層の間に介在させることにより、各層間の界面強度を向上させることができ、剥離を抑制することができる。第9実施例において、混合層は基材および電解質層と同じ材料を用いても良いし、異なる材料としてもよい。
J.第10実施例:
図22は第10実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。この工程では、水素透過性金属で基材を形成し(ステップS60)、その表面に凹凸加工を施す(ステップS62)。図中に基材140Aの断面図を模式的に示した。図示の便宜上、規則的な凹凸形状を例示したが、不規則な形状であってもよいし、凸部の頂部は必ずしも角ばっている必要はない。かかる凹凸形状は、例えば、基材140Aの表面の物理研磨、化学研磨、イオン照射、レーザ照射などによって形成することができる。
次に、こうして凹凸加工が施された基材140Aの表面に、電解質層140Bを形成する(ステップS64)。電解質層140Bは、例えば、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、ゾルゲル法、メッキなどの方法によって行うことができる。次に、こうして形成された表面に残った凹凸形状を研磨し、平滑化する(ステップS66)。その後、平滑化された表面上に、電解質層140Cを再形成する(ステップS68)。電解質層140B、140Cは同材料であるため、この工程で一体化される。電解質層140Cの厚さtは、0.1〜1μm程度とすること好ましい。
ステップS68の枠内には、かかる工程を、他種類の材料で行った場合の断面を併せて例示した。例えば、バナジウムVの基材150Aの表面に、パラジウムPdの層150B、電解質層150Cを形成した後(ステップS64)、表面平滑化を行い(ステップS66)、電解質層150Cの再形成を行うことにより、このような3層構造の電解質膜を形成することができる。
第10実施例の電解質膜によれば、基材と電解質層の界面を凹凸形状にすることによって、層間の剥離を抑制することができる。第10実施例の電解質膜の生成工程においては、表面平滑化を省略しても構わないが、この工程を有することにより、以下に示す通り、電解質層の薄膜化を図りつつ、その品質の安定化を図ることができる利点がある。一般に、基材表面を凹凸加工して、電解質層を形成する場合、電解質層の薄膜化を図ると、基材の凸部で電解質層に孔が発生する場合がある。第10実施例では、一旦、平滑化によって、凹部を電解質で埋めた状態で「平滑面」を形成することができるため、電解質層形成時にかかる孔の発生を抑制することができるのである。
図23は第10実施例の変形例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。この工程では、水素透過性金属で基材を形成し、その表面を平坦化する(ステップS70)。平坦化は、例えば、物理研磨、化学研磨などによって行うことができる。次に、その基材表面に凹凸加工を施す(ステップS72)。但し、第10実施例と異なり、変形例では、基材160の表面に、基材と同材料の凸部161を縞状に付着させることで凹凸加工とする。この加工は、例えば、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、ゾルゲル法、メッキなどの方法によって行うことができる。かかる手法を適用することにより、数nm〜数十nm程度の微細な凹凸加工を実現することができる。
次に、こうして形成された凹凸面上に、電解質層162を形成する(ステップS74)。電解質層162の膜厚は、凹凸加工による孔の発生を回避可能な範囲で、十分に薄く設定することが好ましい。変形例の凹凸加工は、非常に微細であるため、0.1〜1μm程度の膜厚としても、孔の発生を抑制することができる。縞状の凸部161は、等間隔に形成してもよいし、ランダムな間隔としても良い。またその幅は一定にしても良いし、適宜ばらつかせることもできる。
K.第11実施例:
図24は第11実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。この工程では、水素透過性金属で基材170を形成し、その上に、電解質層180を積層する(ステップS80)。電解質層180の形成には、物理蒸着、化学蒸着、ゾルゲル法、メッキなど、先の実施例でも例示した種々の方法を適用可能である。電解質層180を積層方向から見た平面の面積(以下、「平面積」と呼ぶ)は基材170の平面積よりも小さい。電解質層180の平面積を基材170よりも小さくすることにより、複数の電解質膜を積層する際に、基材170のうち電解質層180からはみ出した部分を電解質膜同士の接合に利用することができ、同材料同士の接合となるため、比較的容易かつ強固に層間を接合することができる利点がある。図中に示すように、基材170Aと電解質層180Aとの間に、中間層185を設けても良い。中間層185としては、例えば、先に説明した種々の実施例で開示した応力緩和層や骨格部材などを用いることができる。
次に、こうして形成された電解質膜に、剥離防止用の溝を形成する(ステップS82)。溝は、例えば、レーザ照射、切削器具を用いた物理切削によって形成することができる。溝は、電解質層180、180Aおよび中間層185を貫通し、基材170、170Aに至る深さで形成する。溝は、積層方向、即ち図中の下方に、形成することが好ましい。
図25Aないし図25Dは溝の剥離抑制効果を示す説明図である。図25Aは、基材170の上に電解質層180が形成された電解質膜全体の側断面図を示した。図25Bないし図25Dは、電解質膜を使用している状況において、基材170と電解質層180の膨張率の差によって生じる主応力の分布を解析した結果を、図25A中の破線の領域A内について拡大して示している。図25Bないし図25Dの断面形状は、それぞれ図25A中のLb,Lc,Ldに相当する。図中に示した主応力の数値は、解析条件に応じて変動するが、図25Bないし図25Dの定性的な大小関係は、解析条件に依らず保持されている。
図25Bには、溝を形成しない場合の応力を示した。図中の曲線は、等応力線であり、ハッチングを付した部分が応力の高い部分である。基材170と電解質層180の接合部分では、応力集中により、12300MPaという値になる。図25Cには、くさび形状の溝を形成した場合の応力を示した。この形状では、接合部での応力は、5760Mpaとなり、溝を形成しない場合の約45%程度に低減する。図25Dには、半円形状の溝を形成した場合の応力を示した。この形状では、接合部での応力は、1480Mpaとなり、溝を形成しない場合の約12%程度に低減する。このように、溝は、基材170と電解質層180の接合部での断面形状の急激な変化を抑制し、応力集中を緩和する作用がある。かかる作用により、第11実施例の電解質膜は、使用時において基材170と電解質層180の膨張率の差に起因する剥離を抑制することができる。
図26A、図26Bは第11実施例としての電解質膜の平面図である。上述した溝の形成パターン例を示した。図26Aは、矩形の溝182を例示した。図26Bは、一定の間隔dで設けられた複数の平行な部分を備えた溝182Aを例示した。溝の形状は、任意に設定可能であるが、図26Aのように電解質層180の外形に沿って溝182を設けた場合には、電解質層180の有効面積、即ち溝以外の部分を十分に確保することができる利点がある。図26Bのように比較的密に溝182Aを設ければ、溝の部分で応力を緩和することにより、電解質層180全体の応力を緩和することができる。また、図26Bでは、使用中になんらかの原因により、電解質層180の表面に亀裂が生じた場合でも、亀裂近傍の溝の効果によって亀裂部分での応力を緩和でき、亀裂部分から基材170と電解質層180が剥離することを抑制することができる。
図27Aおよび図27Bは第11実施例の変形例としての電解質膜の断面形状を示す説明図である。本実施例の電解質膜は、図25Bないし図25Dで例示した種々の溝を設ける構造に限らず、基材と電解質層の外表面が、両者の接合部で滑らかに連続する種々の構造を採ることができる。外表面が滑らかに連続とは、外表面の法線ベクトルの方向が不連続的に変化しないこと、または積層方向に直交する断面内での外表面の方向微分係数が連続となることを意味する。図27Aは、基材170Bの上面は平坦な状態とし、電解質層180Bの角を、図示する通り、円弧状に削った例を示している。かかる形状でも、基材170Bと電解質層180Bの接合部Pcでは、両者の表面は滑らかに連続する。従って、接合部における応力集中を緩和することができる。
図27Bは、電解質層180Cは平坦な状態とし、基材170Cを段付き状態に加工した例を示している。かかる形状では、基材170Cにおいて段の付け根部分Pbで、断面形状が急激に変化するものの、基材170Cと電解質層180Cの接合部Pcでは、両者の表面は平面となり、滑らかに連続する。従って、図27Bの構造によっても、接合部Pcでの応力を緩和することができる。
以上で説明した第11実施例によれば、比較的簡易な構造で、基材と電解質層の剥離を抑制することができる。第11実施例で説明した構造は、先に各実施例で説明した構造と組み合わせて電解質膜に適用することも可能である。
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。
A.第1実施例
A1.全体構成
A2.電解質膜
A3.変形例
B.第2実施例
C.第3実施例
D.第4実施例
E.第5実施例
F.第6実施例
G.第7実施例
H.第8実施例
I.第9実施例
J.第10実施例
K.第11実施例
A.第1実施例:
A1.全体構成:
図1は第1実施例としての燃料電池の全体構成を示す模式図である。燃料電池を構成するセルの断面を示した。このセルは、酸素極10(以下、カソードとも称する)、水素極20(以下、アノードとも称する)で電解質膜100を挟んだ構造となっている。酸素極10、水素極20の構造および材質は、カーボンなど種々の材料で形成可能である。
電解質膜100は、バナジウムVで形成された緻密な水素透過性金属層120の表面に固体酸化物からなる電解質層110の薄膜が成膜されている。電解質層110は、BaCeO3、SrCeO3系のセラミックスプロトン伝導体などを用いることができる。電解質層110の外面に、パラジウム(Pd)の被膜を設けてもよい。本実施例では、電解質層110の厚さは1μm、水素透過性金属層120の厚さは40μmとした。各層の厚さは任意に設定可能である。
発電過程における水素極および酸素極での反応を促進するために、セル中には白金Pt等の触媒層を設けるのが通常である。図示を省略したが、触媒層は、例えば、電解質膜100と酸素極10、水素極20との間に設けることができる。触媒層は、その他、パラジウムPdの被膜と電解質層110との間、電解質層110と水素透過性金属層120との間などに設けてもよい。
図示する通り、酸素極10には、酸素を含有したガスとして圧縮空気が供給される。水素極20には、水素リッチな燃料ガスが供給される。燃料ガス中の水素は、水素透過性金属層120で分離され、電解質層110を経て酸素極側に移動する。酸素極10、水素極20に供給されるガスの圧力は、任意に設定可能であるが、本実施例では、水素極20の全圧Phが酸素極10の全圧Poよりも高くなる設定とした。
図2は電極間の圧力差の作用を示す説明図である。電解質層110および水素透過性金属層120の断面図を示した。図中に矢印で示すように、水素透過性金属層120から電解質層110を経て水素が移動すると、各層はそれぞれ膨張する。一般に、水素透過時における水素透過性金属層120の膨張率は電解質層110の膨張率よりも高い。この膨張率の相違は、図中に示す曲げモーメントM1を生じさせ、電解質膜を一点鎖線で示す方向に変形させる。一方、先に説明した圧力差は、矢印Pで示す方向に作用する。この圧力差は、曲げモーメントM2を生じさせ、電解質膜を破線で示す方向に変形させる。従って、水素極側の全圧を酸素極側の全圧よりも高く設定しておくことにより、水素透過時の曲げモーメントM1を相殺する曲げモーメントM2を作用させることができ、電解質膜の変形を抑制することができる。
A2.電解質膜
図3は電解質膜の構造を示す説明図である。図3Aに斜視図を示し、図3BにA−A断面図を示した。この図では、上面が水素極20に接触し、下面が酸素極10に接触することになる。電解質層110は、一様に形成された固体酸化物で形成されている。水素透過性金属層120は、水素透過性金属121と、骨格部材126で形成されている。水素透過性金属121は、例えば、パラジウムPd、VA族金属のうち1種類以上を含んだ金属単体または合金とすることができる。骨格部材126は、水素透過性金属121よりも単位体積あたりに水素が入り込み得る値、即ち水素溶解量が低い材料を用いることができる。かかる材料としては、例えば、酸化アルミニウムAl2O3、炭化珪素SiCなどのセラミックス、および鉄Fe、ニッケルNi、クロムCr、モリブデンMo等を一種類以上含んだ単体または合金、グラファイト(黒鉛)C、ホウ素B、ガラスなどを用いることができる。水素透過性金属121としてVA族金属を用いる場合には、骨格部材126としてパラジウムまたはその合金を用いることもできる。骨格部材126を金属で形成する場合には、骨格部材126自体がアノード集電材として機能し得るため、構造がシンプルになるという利点もある。骨格部材126は、多孔質材料とするこ とができ、例えば、酸化アルミニウムAl2O3を用いる場合には、平均の細孔径は0.2μm、気孔率40%程度とすることができる。
図4は水素透過性金属層の生成工程を示す工程図である。まず、水素透過性金属および骨格部材の薄膜をそれぞれ凹凸形状に加工する(ステップS10)。図中には、凹凸形状の例を示した。次に、水素透過性金属の薄膜121Pと、骨格部材の薄膜126Pを凹凸部分がかみあうように張り合わせる(ステップS12)。最後に、水素透過性金属単体または骨格部材単体からなる表層を研磨またはエッチング等により削除する(ステップS14)。
図5は変形例としての水素透過性金属層の生成工程を示す工程図である。まず、骨格部材の薄膜126Qを凹凸形状に加工する(ステップS20)。次に、この薄膜の凹部に水素透過性金属121Qを充填する(ステップS22)。そして、骨格部材単体からなる表層部分を研磨またはエッチング等により削除する(ステップS24)。水素透過性金属層は、ここに例示した以外にも種々の方法で生成可能である。
以上で説明した第1実施例の燃料電池では、水素透過性金属層120の表面に電解質層110の薄膜が形成される。水素透過性金属層120は、十分に緻密であるため、電解質層110の厚さを抑制することができ、膜抵抗を低減することができる。
さらに、第1実施例の燃料電池では、水素透過性金属121の周囲に骨格部材126の枠組みが施されている。骨格部材126は、水素透過時の膨張率が低いため、水素透過性金属121の膨張を抑制することができる。この結果、水素透過性金属層120と電解質層110との間のひずみ差を抑制することができ、両層の剥離を抑制することができる。
A3.変形例
図6は変形例としての電解質膜の構造を示す説明図である。ここでは、ケースA1〜ケースF1の6通りを示した。電解質層110と水素透過性金属層120の接触界面が部分的であるか全面であるか、およびアノードが電解質膜の内部か外部かによって分類した。
ケースA1は、接触界面が部分であり、アノードが外部に構成される例である。このケースでは、実施例と同様、水素透過性金属121Aの周囲に骨格部材126Aが配置される。ただし、アノードとの接触面(図の上面)には、骨格部材126Aは現れない。従って、水素透過性金属121Aが全面でアノードと接触することができ、水素の移動の円滑化、ひいては膜抵抗の低減を図ることができる。
ケースB1は、接触界面が部分であり、アノードが内部に構成される例である。このケースでは、第1実施例と同様、骨格部材126Bの凹部に水素透過性金属121Bが配置された構造となっている。水素透過性金属121Bの上面は、アノード20Bが構成される。この構造では、水素透過性金属121Bを薄くすることにより、水素透過速度の向上、ひいては膜抵抗の低減を図ることができる。
ケースC1は、接触界面が部分であり、アノードが内部に構成される例である。ケースB1と同様、骨格部材126Cの凹部に水素透過性金属121Cが配置され、水素透過性金属121Cの上面には、アノード20Cが構成される。更に、凹部内には、種々の触媒30Cが担持される。触媒30Cとしては、かかる触媒としては、例えば、炭化水素系化合物の改質反応を促進させる改質触媒、一酸化炭素を除去する反応を促進させる一酸化炭素除去触媒、原子状水素の生成を促進させる原子状水素生成触媒(以下、スピルオーバー水素生成触媒とも呼ぶ)などが適用可能である。一酸化炭素除去触媒には、一酸化炭素と水から水素を生成するシフト反応を促進するためのシフト触媒、一酸化炭素を選択的に酸化する一酸化炭素選択酸化触媒が含まれる。原子状水素生成触媒は、例えば、VIII族元素、即ち白金Pt、パラジウムPd、ロジウムRh、ルテニウムRuなどが含まれる。
これらの触媒の少なくとも一つを担持させることにより、電解質膜では、水素を分離する作用と併せて、触媒に応じた付加的な作用を実現することができる。例えば、改質触媒を担持させれば、改質反応器を省略または小型化することができる。一酸化炭素除去触媒を担持させれば、シフト反応器や一酸化炭素選択酸化反応器を省略または小型化することができ、燃料電池に有害な成分の濃度を低減することができる。シフト反応で生じる水素は、水素透過性金属121Cによって分離されるため、平衡反応であるシフト反応が促進するという利点もある。原子状水素生成触媒を担持させれば、水素の透過速度を向上することができ、膜抵抗を低減させることができる。
ケースD1は、接触界面が全面であり、アノードが外部に構成される例である。実施例と同様、骨格部材126Dの凹部に水素透過性金属121Dが配置される。ただし、電解質層110との接触面には、骨格部材126Dは現れない。従って、水素透過性金属121Dが全面で電解質層110と接触することができ、水素の移動の円滑化、ひいては膜抵抗の低減を図ることができる。
ケースE1は、接触界面が全面であり、アノードが内部に構成される例である。ケースE1では、電解質層110と水素透過性金属121Eを積層した上に、骨格部材126Eが積層される。骨格部材126Eの凹部には、水素透過性金属121Eは配置されず、アノード20Eが配置されている。水素透過性金属121Eの周囲を骨格部材で枠組みしなくても、水素透過性金属121Eの膨張を抑制することができ、水素透過性金属121Eと電解質層110の剥離を抑制することができる。ケースE1では、製造コストを抑制することができる利点がある。また、水素透過性金属121Eが電解質層110と全面で接触するため、接触界面での水素またはプロトンの移動の円滑化を図ることができる利点もある。
ケースF1は、接触界面が全面であり、アノードが内部に構成される例である。ケースF1では、水素透過性金属層121Fの内部に骨格部材が混在している。例えば、骨格部材を形成する材料、酸化アルミニウムAl2O3、炭化珪素SiC、グラファイト(黒鉛)C、ホウ素Bなどの繊維を強化繊維として混在させることができる。かかる構造は、例えば、水素透過性金属と強化繊維とを混合し、高温で分離金属を溶融したインゴットを作成し、これを圧延して薄膜化することで形成可能である。また、液体急冷法によって製造してもよい。即ち、強化繊維を混ぜて溶融した水素透過性金属を回転している冷却用のロール表面に噴射することで薄膜を形成する方法である。ケースF1によれば、比較的簡易な工程で、膨張率を抑制した水素透過性金属層121Fを形成することができる利点がある。
B.第2実施例:
次に、第2実施例としての電解質膜の構造について説明する。図7Aは、第2実施例としての電解質膜の構造を模式的に示す斜視図であり、図7Bは、そのA−A断面図である。この図では、図示上面が酸素極10に接触し、図示下面が水素極20に接触することになる。水素透過性金属120は、例えば、パラジウムPd、VA族金属のうち1種類以上を含んだ金属単体または合金とすることができる。
電解質層110Aは、液体の電解質材116Aと、保持部材116Bで形成されている。保持部材116Bは、プロトン伝導性を有する材料として多孔質のセラミックスを用いた。プロトン伝導性を有さない材料、緻密な材料を用いることも可能である。
電解質材116Aは、保持部材116Bの凹部に充填されている。液体でプロトン伝導性を有する材料としては、例えば、塩化リチウム−塩化ストロンチウム(LiCl−SrCl2)等が挙げられる。この電解質層110Aの上面に、図7Bに破線で示したように、電解質材116Aを含浸させた多孔質の電極を配置してもよい。かかる電極を配置すると、電極内に液相プロトン、電極、触媒の三相界面が形成されるため、電極での反応を促進させることができる。また、この電極が液体の電解質材の蒸発等を抑制する利点もある。
以上説明した第2実施例によれば、液体の電解質材116Aを用いるため、水素透過時に水素透過性金属120が膨張しても、水素透過性金属層120と電解質層110Aとの間での応力を抑制でき、層間の剥離を抑制することができる。
C.第3実施例:
図8は第3実施例としての電解質膜の構造を模式的に示す断面図である。この電解質膜は、電解質層110、水素透過性金属層120の間に、応力緩和層115が配置されている。図の右側に、水素透過時の膨張率を模式的に示した。電解質層110の膨張率は最も低い値CE1、水素透過性金属層120の膨張率は最も高い値CE3であり、応力緩和層はCE1、CE3の間の値CE2である。
応力緩和層115は、水素透過性金属層120の素材に応じて、種々の態様で構成することができる。例えば、水素透過性金属層120として、VA族元素を用いている場合には、応力緩和層は、パラジウムPdなど、VA族元素よりも水素透過率の低い金属を用いることができる。この他、水素透過性金属層120と電解質層110の素材を混合した材料を応力緩和層115に適用してもよい。
第3実施例の電解質膜によれば、応力緩和層115がない場合に比較して、電解質層110と応力緩和層115の間のひずみ差、および応力緩和層115と水素透過性金属層120の間のひずみ差を抑制することができる。従って、これらの層間での剥離を抑制することができる。
図9は変形例としての電解質膜の構造を模式的に示す説明図である。応力緩和層115は、水素透過性金属層120、電解質層110と材質を代えるだけでなく、構造や組成の変化によって実現してもよい。ケースA2は、構造的に実現した例を示している。ケースA2では、電解質層110Aと水素透過性金属層120Aは、互いに凹凸を有する断面形状となっている。両層を組み合わせた中間の層内が、応力緩和層115Aとなる。この応力緩和層115Aでは、局所的に電解質層110Aと水素透過性金属層120Aが混在した状態となっているため、平均の膨張率は、電解質層110Aと水素透過性金属層120Aの間の値となる。
ケースB2は、組成を変化させることで応力緩和層を形成した例を示している。水素透過性金属層120Bと電解質層110Bの間では、両者の組成が混在した層が応力緩和層115Bとして形成されている。応力緩和層115B内では、水素透過性金属層120Bから電解質層110Bに向かうにつれ、組成は、水素透過性金属の密度が低くなるとともに、電解質の密度が高くなるように変化する。ここでは、膨張率が線形的に連続的に変化する例を示しているが、非線形に変化しても構わないし、不連続的に変化しても構わない。また、応力緩和層115としては、こうした構成の他、膨張率が、電解質層110の膨張率と水素透過性金属層120の膨張率の間であるプロトン伝導性の電解質層を用いる構成も可能である。こうした電解質層は、一層でも良いし、複数層設けても良い。複数層設ける場合には、その膨張率を徐々に変化させるものとすれば更に好ましい。応力緩和層115としての電解質層の厚みや層数などは、燃料電池として要求される電気的な特性や機械的な強度などに基づいて決定すれば良い。
D.第4実施例:
次に第4実施例について説明する。図10Aは、電解質膜の構造を斜視方向から模式的に示す説明図であり、図10BはそのA−A断面図である。水素透過性金属層120は、先に説明した種々の実施例と同様、VA族、パラジウムPdなど水素透過性を有する金属で構成された一様な層である。
電解質層112は、複数の円柱状に分割されている。材料は、先に説明した実施例と同様、固体酸化物などを用いることができる。電解質層112は、円柱状である必要はなく、種々の形状とすることができる。例えば、連続した壁状としても良い。また、必ずしも隙間が設けられている必要はなく、分割されてさえいえれば、密着して配列されていても構わない。分割は等間隔である必要はなく、ランダムな配置に分割しても差し支えない。
第4実施例の構造によれば、水素透過性金属層120の膨張によるひずみは、電解質層112の隙間が大きくなることで吸収される。従って、水素透過性金属層120と電解質層112の間の応力を回避することができ、層間の剥離を抑制することができる。
図11は変形例としての電解質膜の構造を示す説明図である。ここでは、ケースA3〜ケースD3の4通りを示した。各構成は、電解質層112と水素透過性金属層120の接触界面の構造、およびカノードとの接触面が部分的であるか全面であるかによって分類した。
ケースA3は、接触界面にリーク防止機構が設けられ、カソードとの接触面が分割されている例である。電解質層112Aの構造は、上記の実施例(図10A、図10B参照)と同様に分割されている。ケースA3では、電解質層112Aの隙間に、図中の上面に位置することになるカソードと水素透過性金属層120との間の水素の漏れを抑制するためのリーク防止機構が設けられている。リーク防止機構は、例えば、水素透過金属の酸化物、窒化物、炭化物などをめっき法などによって付着させることで構成される。更に、燃料電池の作動温度で流動性を有する材料、例えば、ガラスなどを用いると、水素の漏れをより確実に抑制することができる利点がある。先に説明した液体のプロトン伝導材をリーク防止機構として適用してもよい。
ケースB3は、接触界面は空洞、カソードとの接触面が連結している例である。図示する通り、電解質層112Bは、水素透過性金属層120との接触界面では分割されているが、カソードとの接触面では連結している。かかる構造によれば、カソードとの接触面積を確保することにより、プロトンの伝導性を向上することができ、膜抵抗を低減することができる。
ケースC3は、ケースB3において、水素透過性金属120と電解質層112Cとの界面にリーク防止機構113Cを設けた例である。リーク防止機構113Cには、ケースA3と同様の材質を適用することができる。こうすることにより、水素の漏れを抑制することができる。
ケースD3は、ケースB3において、水素透過性金属120と電解質層112Dとの間に、両者を固定するピンニング材料113Dを設けた例である。ピンニング材料113Dとしては、水素透過性金属120、電解質層112Dとの間で、水素透過性金属120と電解質層112D間の界面強度よりも強い界面強度を確保可能な材料を用いることが好ましい。かかる材料としては、例えば、酸化マグネシウムMgOなどが挙げられる。水素透過性およびプロトン伝導性は有していなくても構わない。この例では、ピンニング材料は、電解質層112Dの内部にのみ配置されているが、水素透過性金属120内に食い込ませるように配置してもよい。ピンニング材料113Dを用いることにより、水素透過性金属120と電解質層112Dとの間の剥離を更に抑制することが可能となる。
E.第5実施例:
図12は第5実施例としての水素透過性金属層を示す説明図である。この上面または下面に電解質層を形成することにより電解質膜を形成することができる。第5実施例では、水素透過性金属層は、水素透過性の高い金属と、低い金属の2種類を組み合わせて形成される。ここでは、3つのケースを例示した。
ケースA4は、組成の傾斜を設けない例である。水素透過性の高い金属層123Aの間に、透過性の低い金属層127Aを設けた構成である。金属層123A、127Aはともに、複数層、積層されている。金属層123Aとしては、例えば、VA族元素またはその合金を用いることができる。金属層127Aとしては、例えば、パラジウムPdまたはパラジウム合金を用いることができる。金属層127Aとして、ニッケルNi,銅Cu,コバルトCo等を、単独または組み合わせて添加したVA族元素の合金を用いてもよい。
ケースB4は、ケースA4において層間で膜の厚み方向に組成を傾斜させた例である。かかる構造は、例えば、水素透過性の高い金属層123Bの間に、透過性の低い金属層127Bを設けた上で、加熱し、各層間で金属拡散を生じさせることにより形成することができる。拡散を促進するため、例えば、金属層123BにはニッケルNiの添加量の少ないVA族元素の合金を用い、金属層127BにはニッケルNiの添加量の多いバナジウム合金を用いることが好ましい。一例として、金属層123BにおけるニッケルNiの添加量を5%程度、金属層127BにおけるニッケルNiの添加量を50%としたバナジウム合金を用いることができる。
ケースC4は、水素透過性の高い金属層123Cを単層とし、その両面に透過性の低い金属層127Cを設けた例である。層間は、ケースB4と同様に組成を傾斜させる場合を例示したが、ケースA4のように傾斜なしとしてもよい。ケースC4の構造は、例えば、次の手順で生成することができる。まず、金属層123Cの両面に金属層127Cを張り合わせた後、加熱し、層間で金属拡散を生じさせる。この状態では、表面に水素透過性の低い金属の密度が高い層が残留しているため、研磨またはエッチングにより表面の所定範囲を除去する。除去する厚みについては、金属拡散時の加熱および処理時間などに応じて設定することができる。このように表面を研磨することにより、水素透過性の低い金属層を薄くすることができ、水素透過性を向上することができる。
次に、上述した第5実施例の変形例について説明する。図13は、変形例としての電解質膜100Dの構造を示す模式図である。図示するように、燃料電池に用いられるこの電解質膜100Dは、水素透過性金属層120Dの組成を電解質層110D側において異ならせ、中間層118を形成している。この変形例において、水素透過性金属層120Dは、ニッケルNiを5パーセント添加したバナジウム合金を用いているが、中間層118では、このニッケルNiのドープ量(含有量)が電解質層110D側ほど高く、最大で10パーセントとなっている。バナジウム−ニッケル合金は、ニッケルNiのドープ量が高いほど水素透過時の膨張率が低くなる特性を有する。図13右側に、膨張率を模式的に示した。かかる構成を採用すれば、電解質層110Dと接する箇所での膨張率の差は小さくなり、電解質層110Dにかかる引っ張り応力を低減することができる。なお、中間層118は、水素透過金属層120Dと一体に形成しても良いし、独立の層として形成しても良い。前者の場合は、水素透過金属層120Dの表面にニッケルNiをドープし、表面ほどそのドープ量を増加した構造とすれば良い。また、中間層118におけるニッケルNiのドープ量は、図13に示した例のように、電解質層110D側に向けて連続的に徐々に高くした構成としても良いし、図14に例示したように、ニッケルNiドープ量の異なる水素透過金属層を何枚か積層することで、電解質層110D側に向けてニッケルNiドープ量がステップ状に上昇する構成としても良い。前者の場合には、積層工程を必要とせず構成を簡略にすることができる。後者の場合には、ニッケルNiドープ量の変化を調整しやすいという利点がある。ニッケルNiのドープ量と層厚とを設定することにより、膨張率の変化の特性を自由に設計することができる。なお、この例ではニッケルNiのドープ量により膨張率を調整したが、水素透過時の膨張率を調整できる材料であれば、他の材料も当然採用可能である。
これらの構造によれば、水素透過性の高い金属層の膨張を、水素透過性の低い金属層で抑制することができる。従って、水素透過性金属層全体の膨張を抑制することができ、電解質層との剥離を抑制することができる。図12に示した例では、透過性の高い金属層の両面に、透過性の低い金属層を設ける例を示したが、図13、図14に示したように、片面にのみ設けるものとしてもよい。
F.第6実施例:
次に第6実施例の燃料電池に用いられる電解質膜100Eについて説明する。この電解質膜100Eは、図15に示したように、水素透過性金属層120Eと電解質層110Eとからなり、電解質層110Eに接する補強板40を備える。補強板40は、この実施例では、所定の開口率有するパンチメタルとしたが、金網状、格子状やメッシュ状の板材でも差し支えない。この補強板40は、中心部ほどその肉厚が薄くされている。このため、水素透過時に、水素透過性金属層120Eと電解質層110Eとの膨張率の差により、電解質膜100Eに応力が加わると、補強板40の中心部が肉薄であることから、電解質膜100Eは、水素透過性金属層120E側に凸状に変形しながら押し曲げられることになる。この様子を、図16に示した。補強板40の中心部の機械的強度を低くしておき、電解質層110E全体が、水素透過性金属層120E側に凸状となることから、電解質層110Eに部分的に強い引っ張り応力が加わるような変形が生じることがない。電解質層110Eの膨張が原因となる反りをきっかけとして局所的な座屈等か生じることがないからである。なお、図16に示しような変形が生じると、電解質層110Eには、圧縮応力が加わるが、電解質層110E、特にセラミックス系の電解質膜の場合には、引っ張り応力に比べると圧縮応力に対する強度は高いので、こうした変形により電解質膜100Eが損傷を受ける可能性を大幅に低減することができる。
なお、以上説明した第6実施例では、電解質膜100Eに接する補強板40の肉厚を中心部ほど薄くして、水素透過性金属層120E側に凸状となる変形が起きやすいようにしたが、図17に示したように、補強板40に切り欠き部40aを設け、同様の変形が生じやすくしても良い。切り欠き部40aは、電解質膜100Eの中心から同心円状に設けても良いし、小さな切り欠き部40aを所定間隔に設けるものとしても良く、変形が一様に生じるように、設計すれば良い。また、この実施例では、補強板40が存在することから、補強板40に所定の変形が生じやすくなる仕組みを設けたが、電解質膜100Eに直接酸素極の集電体が接している場合には、この集電体の肉厚を中心部ほど薄くするなど、同様の構造を持たせれば良い。
G.第7実施例:
次に、第7実施例について説明する。図18は、第7実施例の電解質膜100Fの構造を示す説明図である。この実施例では、電解質膜100Fは、プロトン伝導性を備えた電解質層110Fと水素透過性金属層120Fとから形成されているが、電解質層110F上に形成されるカソード電極(酸素極)10Fを、水素透過性金属層120Fと同じ材料でかつ同じ厚みD1としている。第7実施例では、カソード極10Fおよび水素透過性金属層120Fとして、パラジウムPdを用いた。また、その厚みは、実施例では、共に30ないし40μmである。
かかる構造を採用した結果、水素透過時に電解質層110Fが膨張しても、カソード電極10Fと水素透過性金属層120Fの膨張率と厚みD1が同じであることから、電解質層110Fはその両側から略同一の伸び、略同一の応力を受けることになる。この結果、電解質層110Fを一方向に曲げようとする力が加わることがなく、電解質層110F全体として平坦に保たれることになる。なお、カソード電極10Fと水素透過性金属層120Fの膨張率と厚みは、両者から電解質層110Fが受ける力が減殺するように設計すればよく、例えば厚みを完全に同一にする必要はない。カソード電極10Fは場合によっては複雑な形状となるため(図1参照)、カソード電極側から電解質層110Fが受ける力を計測または演算し、これと略等しい力を電解質層110Fが受けるように、水素透過性金属層120Fの膨張率や厚みを設計すれば良い。また、カソード電極10Fおよび水素透過性金属層120Fの材料は、パラジウムPdに限るものではなく、上述した各実施例で開示した種々の材料を用いることができる。
H.第8実施例:
図19は第8実施例としての電解質膜の生成工程を示す工程図である。第8実施例では、水素透過性を有する金属を基材102として用意し、この表面に酸化物層102Aを形成する(ステップS30)。かかる金属としては、例えば、VA族元素を用いることができる。
次に、この酸化物層102Aに対して、添加成分の酸化物106をコーティングする(ステップS32)。添加物としては、バナジウムVを基材として用いた場合には、例えば、ランタンLa、ガドリニウムGd、バリウムBaなどが挙げられる。タンタルTaを基材として用いた場合には、例えば、カリウムKなどが挙げられる。基材として用いられる金属よりも価数の低い金属をすることが可能である。
次に、コーティングが施された表面をレーザ等によって加熱処理する(ステップS34)。こうすることで、添加成分によってホール伝導性が付与され、基材102の表面に添加成分を含むプロトン伝導層102Bが形成される。プロトン伝導層102Bは、例えば、バナジウムVを基材とした場合には、LaVO3、GdVO3などのペロブスカイト型酸化バナジウムとなる。
図20は変形例としての電解質膜の生成工程を示す工程図である。この工程では、基材102の表面に酸化物層102Aを形成する(ステップS40)。次に、この基材102を添加成分を含む水溶液106Aに浸し、基材102と電極107との間に電源108を接続し、通電する(ステップS42)。こうすることにより、溶液中の添加物成分、例えば、ランタンイオンLa3+などが酸化物層102Aと反応し、プロトン伝導層が形成される。通電に代えて、溶液全体を加熱するようにしてもよい。
以上で説明した第8実施例の電解質膜によれば、基材表面に形成された酸化物層が電解質層、即ちプロトン伝導体として機能する。従って、電解質層と水素透過性金属との剥離を抑制することができる。基材および添加物の組み合わせによっては、電子伝導性を有するプロトン伝導体を構成することも可能であり、こうして形成された酸化物層は金属拡散の抑制層としても利用することができる。従って、酸化物層の表面にパラジウムPdまたはその合金をコーティングして、水素透過性金属層を形成してもよい。
I.第9実施例:
図21は第9実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。この工程では、水素透過性金属で基材を形成し(ステップS50)、その表面に混合層を形成する(ステップS52)。混合層とは、基材を形成する水素透過性金属と、電解質層を形成する材料とが混在する層である。
図中に、混合層の形成状態を方法A、方法Bの2種類について、模式的に示した。方法Aでは、基材130Aに電解質を形成するセラミックス材料を埋め込むことにより、表層近傍の領域を、混合層131Aとさせる。材料の埋め込みは、種々の方法で実現可能である。例えば、
(1)基材130Aの表面を、セラミックス材料の粒子で物理研磨する方法;
(2)セラミックス材料の粒子を基材130Aの表面に吹き付けるサンドブラスト法;
(3)基材130Aを、セラミックス粒子が混ぜられた水溶液中で超音波振動させることにより、セラミックス粒子を基材130Aの表面に物理的に衝突させる方法;
などが挙げられる。
方法Bでは、基材130Bの表面に、別途、混合層131Bを形成する。方法Bにおける混合層131Bの形成も種々の方法で実現可能である。例えば、
(a)水素分離金属が薄くコートされた直径1μm以下程度のセラミックス微粒子を、基材131Bの表面に塗布し、焼成する方法;
(b)水素分離金属の微粒子とセラミックス微粒子を混ぜ合わせたものを、基材131Bの表面に塗布し、焼成する方法;
(c)水素分離金属の錯体とセラミックス微粒子の水溶液を、基材131Bの表面に塗布し、焼成する方法;
などが挙げられる。
混合層の形成は、上述の方法A、Bのいずれか一方のみに依る必要はなく、両者を組み合わせて用いても良いし、両者以外の方法を適用しても構わない。第9実施例の生成工程では、こうして形成された混合層の表面に、電解質層を形成する(ステップS54)。図中に、方法A、方法Bそれぞれについて、電解質層132A、132Bを形成した状態を模式的に示した。電解質層の形成は、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、ゾルゲル法、メッキなどの方法によって行うことができる。第9実施例では、混合層に含まれるセラミックス粒子が、成膜時の結晶核となり、成膜速度が速くなるという効果がある。
第9実施例によれば、混合層を基材と電解質層の間に介在させることにより、各層間の界面強度を向上させることができ、剥離を抑制することができる。第9実施例において、混合層は基材および電解質層と同じ材料を用いても良いし、異なる材料としてもよい。
J.第10実施例:
図22は第10実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。この工程では、水素透過性金属で基材を形成し(ステップS60)、その表面に凹凸加工を施す(ステップS62)。図中に基材140Aの断面図を模式的に示した。図示の便宜上、規則的な凹凸形状を例示したが、不規則な形状であってもよいし、凸部の頂部は必ずしも角ばっている必要はない。かかる凹凸形状は、例えば、基材140Aの表面の物理研磨、化学研磨、イオン照射、レーザ照射などによって形成することができる。
次に、こうして凹凸加工が施された基材140Aの表面に、電解質層140Bを形成する(ステップS64)。電解質層140Bは、例えば、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、ゾルゲル法、メッキなどの方法によって行うことができる。次に、こうして形成された表面に残った凹凸形状を研磨し、平滑化する(ステップS66)。その後、平滑化された表面上に、電解質層140Cを再形成する(ステップS68)。電解質層140B、140Cは同材料であるため、この工程で一体化される。電解質層140Cの厚さtは、0.1〜1μm程度とすること好ましい。
ステップS68の枠内には、かかる工程を、他種類の材料で行った場合の断面を併せて例示した。例えば、バナジウムVの基材150Aの表面に、パラジウムPdの層150B、電解質層150Cを形成した後(ステップS64)、表面平滑化を行い(ステップS66)、電解質層150Cの再形成を行うことにより、このような3層構造の電解質膜を形成することができる。
第10実施例の電解質膜によれば、基材と電解質層の界面を凹凸形状にすることによって、層間の剥離を抑制することができる。第10実施例の電解質膜の生成工程においては、表面平滑化を省略しても構わないが、この工程を有することにより、以下に示す通り、電解質層の薄膜化を図りつつ、その品質の安定化を図ることができる利点がある。一般に、基材表面を凹凸加工して、電解質層を形成する場合、電解質層の薄膜化を図ると、基材の凸部で電解質層に孔が発生する場合がある。第10実施例では、一旦、平滑化によって、凹部を電解質で埋めた状態で「平滑面」を形成することができるため、電解質層形成時にかかる孔の発生を抑制することができるのである。
図23は第10実施例の変形例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。この工程では、水素透過性金属で基材を形成し、その表面を平坦化する(ステップS70)。平坦化は、例えば、物理研磨、化学研磨などによって行うことができる。次に、その基材表面に凹凸加工を施す(ステップS72)。但し、第10実施例と異なり、変形例では、基材160の表面に、基材と同材料の凸部161を縞状に付着させることで凹凸加工とする。この加工は、例えば、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、ゾルゲル法、メッキなどの方法によって行うことができる。かかる手法を適用することにより、数nm〜数十nm程度の微細な凹凸加工を実現することができる。
次に、こうして形成された凹凸面上に、電解質層162を形成する(ステップS74)。電解質層162の膜厚は、凹凸加工による孔の発生を回避可能な範囲で、十分に薄く設定することが好ましい。変形例の凹凸加工は、非常に微細であるため、0.1〜1μm程度の膜厚としても、孔の発生を抑制することができる。縞状の凸部161は、等間隔に形成してもよいし、ランダムな間隔としても良い。またその幅は一定にしても良いし、適宜ばらつかせることもできる。
K.第11実施例:
図24は第11実施例としての電解質膜の生成工程を示す説明図である。この工程では、水素透過性金属で基材170を形成し、その上に、電解質層180を積層する(ステップS80)。電解質層180の形成には、物理蒸着、化学蒸着、ゾルゲル法、メッキなど、先の実施例でも例示した種々の方法を適用可能である。電解質層180を積層方向から見た平面の面積(以下、「平面積」と呼ぶ)は基材170の平面積よりも小さい。電解質層180の平面積を基材170よりも小さくすることにより、複数の電解質膜を積層する際に、基材170のうち電解質層180からはみ出した部分を電解質膜同士の接合に利用することができ、同材料同士の接合となるため、比較的容易かつ強固に層間を接合することができる利点がある。図中に示すように、基材170Aと電解質層180Aとの間に、中間層185を設けても良い。中間層185としては、例えば、先に説明した種々の実施例で開示した応力緩和層や骨格部材などを用いることができる。
次に、こうして形成された電解質膜に、剥離防止用の溝を形成する(ステップS82)。溝は、例えば、レーザ照射、切削器具を用いた物理切削によって形成することができる。溝は、電解質層180、180Aおよび中間層185を貫通し、基材170、170Aに至る深さで形成する。溝は、積層方向、即ち図中の下方に、形成することが好ましい。
図25Aないし図25Dは溝の剥離抑制効果を示す説明図である。図25Aは、基材170の上に電解質層180が形成された電解質膜全体の側断面図を示した。図25Bないし図25Dは、電解質膜を使用している状況において、基材170と電解質層180の膨張率の差によって生じる主応力の分布を解析した結果を、図25A中の破線の領域A内について拡大して示している。図25Bないし図25Dの断面形状は、それぞれ図25A中のLb,Lc,Ldに相当する。図中に示した主応力の数値は、解析条件に応じて変動するが、図25Bないし図25Dの定性的な大小関係は、解析条件に依らず保持されている。
図25Bには、溝を形成しない場合の応力を示した。図中の曲線は、等応力線であり、ハッチングを付した部分が応力の高い部分である。基材170と電解質層180の接合部分では、応力集中により、12300MPaという値になる。図25Cには、くさび形状の溝を形成した場合の応力を示した。この形状では、接合部での応力は、5760Mpaとなり、溝を形成しない場合の約45%程度に低減する。図25Dには、半円形状の溝を形成した場合の応力を示した。この形状では、接合部での応力は、1480Mpaとなり、溝を形成しない場合の約12%程度に低減する。このように、溝は、基材170と電解質層180の接合部での断面形状の急激な変化を抑制し、応力集中を緩和する作用がある。かかる作用により、第11実施例の電解質膜は、使用時において基材170と電解質層180の膨張率の差に起因する剥離を抑制することができる。
図26A、図26Bは第11実施例としての電解質膜の平面図である。上述した溝の形成パターン例を示した。図26Aは、矩形の溝182を例示した。図26Bは、一定の間隔dで設けられた複数の平行な部分を備えた溝182Aを例示した。溝の形状は、任意に設定可能であるが、図26Aのように電解質層180の外形に沿って溝182を設けた場合には、電解質層180の有効面積、即ち溝以外の部分を十分に確保することができる利点がある。図26Bのように比較的密に溝182Aを設ければ、溝の部分で応力を緩和することにより、電解質層180全体の応力を緩和することができる。また、図26Bでは、使用中になんらかの原因により、電解質層180の表面に亀裂が生じた場合でも、亀裂近傍の溝の効果によって亀裂部分での応力を緩和でき、亀裂部分から基材170と電解質層180が剥離することを抑制することができる。
図27Aおよび図27Bは第11実施例の変形例としての電解質膜の断面形状を示す説明図である。本実施例の電解質膜は、図25Bないし図25Dで例示した種々の溝を設ける構造に限らず、基材と電解質層の外表面が、両者の接合部で滑らかに連続する種々の構造を採ることができる。外表面が滑らかに連続とは、外表面の法線ベクトルの方向が不連続的に変化しないこと、または積層方向に直交する断面内での外表面の方向微分係数が連続となることを意味する。図27Aは、基材170Bの上面は平坦な状態とし、電解質層180Bの角を、図示する通り、円弧状に削った例を示している。かかる形状でも、基材170Bと電解質層180Bの接合部Pcでは、両者の表面は滑らかに連続する。従って、接合部における応力集中を緩和することができる。
図27Bは、電解質層180Cは平坦な状態とし、基材170Cを段付き状態に加工した例を示している。かかる形状では、基材170Cにおいて段の付け根部分Pbで、断面形状が急激に変化するものの、基材170Cと電解質層180Cの接合部Pcでは、両者の表面は平面となり、滑らかに連続する。従って、図27Bの構造によっても、接合部Pcでの応力を緩和することができる。
以上で説明した第11実施例によれば、比較的簡易な構造で、基材と電解質層の剥離を抑制することができる。第11実施例で説明した構造は、先に各実施例で説明した構造と組み合わせて電解質膜に適用することも可能である。
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。
本発明は、車載用、定置用など、種々の燃料電池およびこれらの燃料電池用の電解質膜の製造方法として実施することができる。
Claims (33)
- 燃料電池であって、
水素を供給する水素極と、
酸素を供給する酸素極と、
前記水素極と酸素極の間に配置された電解質膜とを備え、
該電解質膜は、
水素透過性金属からなる水素透過性金属層と、
水素透過時の膨張率が前記水素透過性金属と有意に異なる所定の材料で、前記水素透過性金属層の表面に形成された電解質層と、
水素透過時における前記水素透過性金属層と電解質層との間の剥離を抑制する剥離抑制機構とを備える燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池であって、
前記剥離抑制機構は、水素透過時における前記水素透過性金属層の膨張を抑制する機構である燃料電池。 - 請求項2記載の燃料電池であって、
前記剥離抑制機構は、前記水素透過性金属よりも水素透過時の膨張率が低い所定の材料を前記水素透過性金属層中に配置して構成される燃料電池。 - 請求項3記載の燃料電池であって、
前記剥離抑制機構は、前記水素透過性金属層とその他の層との接触界面を避けて配置されている燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池であって、
前記剥離抑制機構は、前記水素透過性金属層と前記電解質層の間に介在し、水素透過性を有するとともに、水素透過時の平均膨張率が該水素透過性金属層および電解質層の間の値となる材料または構造で形成された応力緩和層である燃料電池。 - 請求項5記載の燃料電池であって、
前記応力緩和層は、水素透過時の膨張率が前記水素透過性金属層より低く、前記電解質層より高いプロトン伝導性電解質層により形成されている燃料電池。 - 請求項5記載の燃料電池であって、
前記応力緩和層は、水素透過時の膨張率が前記水素透過性金属層より低く、前記電解質層より高い水素透過性金属層により形成されている燃料電池。 - 請求項5記載の燃料電池であって、
更に、前記水素透過性金属層と前記応力緩和層は複数層積層されている燃料電池。 - 請求項5記載の燃料電池であって、
前記水素透過性金属と前記応力緩和層は、金属拡散により接合されるとともに、該応力緩和層について、該接合面と対向する側の表面を所定厚さだけ除去することで構成されている燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池であって、
前記剥離抑制機構は、前記電解質層と水素透過性金属層の間に局所的に配置され、該電解質層と水素透過性金属層との間の界面強度よりも高い界面強度で、各層と密着する補強部材である燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池であって、
前記剥離抑制機構は、前記水素透過性金属層と前記電解質層の間に設けられ、双方の層を構成する材料が混在する混合層である燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池であって、
前記剥離抑制機構は、前記水素透過性金属層と前記電解質層の接触面に形成され、両者を互いに噛合する凹凸面である燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池であって、
前記剥離抑制機構は、前記水素透過時の膨張により、前記電解質膜を、前記電解質層を内側として、押し曲げる押し曲げ機構である燃料電池。 - 請求項13記載の燃料電池であって、
前記押し曲げ機構は、前記電解質層の前記水素透過性金属層側とは反対側の面に設けられた部材を、前記電解質膜中心部ほど剛性を低く形成した構造である燃料電池。 - 請求項14記載の燃料電池であって、
前記電解質膜中心部ほど剛性を低く形成した構造は、前記部材を、その中心ほど肉薄とした構造である燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池であって、
前記剥離抑制機構は、前記電解質層の表面に配設された前記酸素極を形成する電極の前記水素透過時の膨張率を、前記水素透過性金属層の水素透過時の膨張率と略同一とした構成である燃料電池。 - 請求項16記載の燃料電池であって、
前記酸素極を形成する電極の厚みと、前記水素透過性金属層の厚みを略同一にした燃料電池。 - 請求項1ないし請求項17のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記電解質層の平面積は、前記水素透過性金属層の平面積よりも小さく、
前記剥離抑制機構は、前記電解質層の端部で、該電解質層と水素透過性金属層の外表面が滑らかに連続するように、前記電解質層および水素透過性金属層の少なくとも一方に施された断面形状である燃料電池。 - 請求項18記載の燃料電池であって、
前記剥離抑制機構は、前記電解質層の端面から滑らかにつながる面を形成するように、少なくとも前記水素透過性金属層に設けられた溝である燃料電池。 - 燃料電池であって、
水素を供給する水素極と、
酸素を供給する酸素極と、
前記水素極と酸素極の間に配置された電解質膜とを備え、
該電解質膜は、
水素透過性金属からなる水素透過性金属層と、
水素透過時の膨張率が前記水素透過性金属と有意に異なる所定の材料で、前記水素透過性金属層の表面に複数領域に分割して形成された電解質層とを備える燃料電池。 - 請求項20記載の燃料電池であって、
前記分割された電解質層の隙間には、水素の透過を抑制するための透過抑制機構が設けられている燃料電池。 - 燃料電池であって、
水素を供給する水素極と、
酸素を供給する酸素極と、
前記水素極と酸素極の間に配置された電解質膜とを備え、
該電解質膜は、
水素透過性金属からなる水素透過性金属層と、
該水素透過性金属層の表面に接触して設けられ、該接触面には複数の孔を有する保持部材と、
前記孔に充填された液体の電解質材とを備える燃料電池。 - 請求項22記載の燃料電池であって、
前記保持部材および電解質材は、共通のイオン伝導性を有する燃料電池。 - 請求項1ないし請求項23いずれか記載の燃料電池であって、
前記水素透過性金属層は、炭化水素系化合物の改質反応を促進させる改質触媒、一酸化炭素を除去する反応を促進させる一酸化炭素除去触媒、原子状水素の生成を促進させる原子状水素生成触媒の少なくとも一つを担持する燃料電池。 - 請求項1ないし請求項24いずれか記載の燃料電池であって、
前記水素極に供給されるガスの全圧が、前記酸素極側のガスの全圧よりも高くなるよう圧力を制御する圧力制御部を備える燃料電池。 - 燃料電池であって、
水素を供給する水素極と、
酸素を供給する酸素極と、
前記水素極と酸素極の間に配置された電解質膜とを備え、
該電解質膜は、
水素透過性金属からなる水素透過性金属層と、
該水素透過性金属層の表面に形成された酸化物層に、該水素透過性金属よりも価数の低い異種元素を添加して形成された電解質層とを備える燃料電池。 - 請求項26記載の燃料電池であって、
前記水素透過性金属は、VA族元素またはその合金である燃料電池。 - 燃料電池用の電解質膜の製造方法であって、
(a) 水素透過性金属からなる薄膜を生成する工程と、
(b) 該薄膜の一方の表面を酸化して酸化物層を形成する工程と、
(c) 該酸化物層内に、該水素透過性金属よりも価数の低い異種元素を添加して該水素透過性金属と異種元素の複合酸化物からなる層を生成する工程とを備える製造方法。 - 請求項28記載の製造方法であって、
前記工程(c)は、
前記酸化物層の表面に前記異種元素を被覆させる工程と、
該被覆を加熱する工程とを備える製造方法。 - 請求項28記載の製造方法であって、
前記工程(c)は、
前記異種元素を含む溶液中に前記酸化物層を浸す工程と、
該浸した状態で、溶液の加熱または通電を行う工程とを備える製造方法。 - 燃料電池用に、水素透過性金属層と電解質層とを備える電解質膜を製造する製造方法であって、
(a) 前記水素透過性金属層を形成する工程と、
(b) 前記水素透過性金属層の表面に、前記水素透過性金属層および前記電解質層を形成する材料が混在する混合層を形成する工程と、
(b) 該混合層の表面に前記電解質層を形成する工程とを備える製造方法。 - 燃料電池用に、水素透過性金属層と電解質層とを備える電解質膜を製造する製造方法であって、
(a) 前記水素透過性金属層を形成する工程と、
(b) 前記水素透過性金属層の表面を凹凸形状に加工する工程と、
(b) 前記凹凸化された表面に、該凹凸形状に噛合するよう前記電解質層を形成する工程とを備える製造方法。 - 燃料電池用に、水素透過性金属層と電解質層とを備える電解質膜を製造する製造方法であって、
(a) 前記水素透過性金属層を形成する工程と、
(b) 該水素透過性金属層よりも平面積の小さい電解質層を、前記水素透過性金属層に積層する工程と、
(c) 前記電解質層を貫通し前記水素透過性金属層に至る溝を設ける工程とを備える製造方法。
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