JP5486743B2 - 燃料電池セル及び燃料電池スタック若しくは燃料電池装置 - Google Patents

燃料電池セル及び燃料電池スタック若しくは燃料電池装置 Download PDF

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Description

本発明は、板状の電解質の上下面に二つの極を設け、一方の極(以下燃料極という。)に燃料ガスを供給すると共にもう一方の極(以下空気極という。)に酸化剤ガスを供給して発電する燃料電池セルと、その燃料電池セルを複数個積層して固定した燃料電池スタックと、その燃料電池スタックを使用して発電する燃料電池装置に関する。
板状の電解質の上下面に燃料極と空気極を設け、燃料極側に燃料ガス(例えば水素含有ガス)を供給すると共に空気極側に酸化剤ガス(例えば空気)を供給して発電するようにした燃料電池セルが、例えば特許文献1に記載されている。
燃料電池は、この燃料電池セルを複数個積層して燃料電池スタックを形成し、該燃料電池スタックを耐熱性の容器に収めたものである。
さらに前記燃料電池セルは、上下両面に位置する一対のインターコネクタと、該インターコネクタと電解質の空気極との間に形成される空気室と、インターコネクタと電解質の燃料極との間に形成される燃料室と、空気室の内部に空気を供給する空気供給部と、空気室から使用済みの空気を排出する空気排気部と、燃料室に燃料ガスを供給する燃料供給部と、燃料室から使用済みの燃料ガスを排出する燃料排気部と、を備えており、空気室の空気と、燃料室の燃料ガスが電解質を介して反応することによって電気エネルギを発生する。
特開2008−52942号公報
燃料電池セルの空気極とインターコネクタは空気室内に設けた空気極集電体で電気的に接続されている。しかし、燃料電池を長時間稼働させたとき、空気極と空気極集電体の間で電気的な接続不良が発生し、内部抵抗が上昇して特性が劣化してしまうという問題があった。かかる問題の原因について発明者が探求した結果、次のような結論に達した。
まず、燃料電池セルの空気室には、燃料室に供給される燃料ガスの約3倍の流量の空気が供給されている。
一方、燃料電池セルの空気室に空気を供給する空気供給部と、空気室から空気を排出する空気排気部と、燃料室に燃料ガスを供給する燃料供給部と、燃料室から燃料ガスを排出する燃料排気部の構造は全て同じになっている。
したがって、流量が多い空気室の方が燃料室に比べてガスの流速が大きくなる。圧力損失は、Fanningの式で示されているようにガス流速の2乗に比例するため、空気室内のガス圧の方が燃料室内のガス圧より大きくなる。そうするとその圧力差で電解質が燃料室側に押されるため、空気極と電気極集電体の接続が不良になる場合があった。
本発明は、上記に鑑みなされたもので、その目的は、長時間使用しても空気極と空気極集電体との接続不良が発生しにくい燃料電池セル及び燃料電池スタック若しくは燃料電池装置を提供する。
上記の目的を達成するため本発明は、請求項1に記載したように、上下両面に位置する一対のインターコネクタと、
前記インターコネクタ間に位置し、一方のインターコネクタの内面に対向する面に空気極が形成され、他方のインターコネクタの内面に対向する面に燃料極が形成された電解質と、
前記インターコネクタと前記空気極の間に形成された空気室と、
前記インターコネクタと前記燃料極の間に形成された燃料室と、
前記空気室の内部に配置され、前記空気極と前記インターコネクタとを電気的に接続する空気極集電体と、
前記燃料室の内部に配置され、前記燃料極と前記インターコネクタとを電気的に接続する燃料極集電体と、
前記空気室の内部に供給されるガスが通過する流路を含む空気供給部と、
前記空気室から排出されるガスが通過する流路を含む空気排気部と、
前記燃料室の内部に供給される燃料ガスが通過する流路を含む燃料供給部と、
前記燃料室から排出される燃料ガスが通過する流路を含む燃料排気部と、を備えた燃料電池セルにおいて、
前記燃料室内のガスの圧力を前記空気室内のガスの圧力と同等か又はそれより大きく設定した燃料電池セルを提供する。
また、請求項2に記載したように、前記空気室のガスの圧力を、前記空気室に直接接続された空気供給部の流路の断面積が、前記空気室に直接接続された空気排気部の流路の断面積よりも小さくなるように設定して前記燃料室内のガスの圧力と同等か又はそれよ小さくした請求項1記載の燃料電池セルを提供する。
また、請求項3に記載したように、前記燃料室のガスの圧力を、前記燃料室に直接接続された燃料供給部の流路の断面積が、前記燃料室に直接接続された燃料排気部の流路の断面積よりも大きくなるように設定して前記空気室内のガスの圧力と同等か又はそれより大きくした請求項1又は2に記載の燃料電池セルを提供する。
また、請求項4に記載したように、前記空気極集電体は前記空気室の内部に間隔をおいて複数配置され、前記空気室のガスの圧力を、前記空気極集電体間に形成されるガス流路に流れるガスの流れ方向と直交する方向の前記ガス流路の断面積を調整することにより設定した請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池セルを提供する。
また、請求項5に記載したように、空気の流れ方向と直交する方向の前記空気室の幅Aと、平行に並べた前記空気極集電体間に形成されるガス流路の幅Bを、0.015<B/A≦0.1に設定した請求項4記載の燃料電池セルを提供する。
また、請求項6に記載したように、前記空気極集電体の高さCを、0.6mm<C≦5mmに設定した請求項4記載の燃料電池セルを提供する。
また、請求項7に記載したように、前記燃料室のガスの圧力を、前記燃料排気部を構成する燃料排気流路に圧力損失を生じさせる圧損手段を設けて調整するように設定した請求項1記載の燃料電池セルを提供する。
また、請求項8に記載したように、前記圧損手段は、前記燃料供給部の燃料供給流路の断面積より小さい断面積の前記燃料排気部の燃料排気流路である請求項7記載の燃料電池セルを提供する。
また、請求項9に記載したように、請求項8に記載の燃料排気部の燃料排気流路は管状であり、管径Dが、3mm≦D<16mmである燃料電池セルを提供する。
また、請求項10に記載したように前記圧損手段は、前記燃料排気部の燃料排気流路の途中に設けた流量調節弁である請求項7記載の燃料電池セルを提供する。
また、請求項11に記載したように、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の燃料電池セルを複数個積層して固定部材で固定してなる燃料電池スタックを提供する。
また、請求項12に記載したように、請求項10に記載の燃料電池セルを複数個積層して固定部材で固定した燃料電池スタックと、
前記燃料排気部の燃料排気流路の途中に設けた前記流量調節弁を調節する流量調節手段と、
前記燃料供給部に燃料ガスを供給する燃料供給流路のガス圧を検出する圧力センサ(Pa_in)と、
前記燃料排気部から燃料ガスを排出する燃料排気流路のガス圧を検出する圧力センサ(Pa_out)と、
前記空気供給部に空気を供給する空気供給流路のガス圧を検出する圧力センサ(Pc_in)と、
前記空気排気部から空気を排出する空気排気流路のガス圧を検出する圧力センサ(Pc_out)と、
前記燃料供給流路と前記燃料排気流路の燃料側圧力差と、前記空気供給流路と前記空気排気流路の空気側圧力差を比較する比較手段を備え、
前記流量調節手段で流量調節弁を調節して前記燃料側圧力差が前記空気側圧力差と同等か又はそれより大きくなるように制御するものである燃料電池装置を提供する。
本発明の燃料電池セルは、燃料室内のガスの圧力を空気室内のガスの圧力と同等か又はそれより大きく設定したことにより、電解質に空気極集電体から離れる方向の力が作用しない。したがって、空気極と空気極集電体の接続不良が起きにくくなり、耐久性が向上する。なお、斯かる効果は、請求項2〜10で特定した燃料電池セルにより、或はそれらの燃料電池セルを複数個積層して固定した請求項11に記載の燃料電池スタックにより確実に達成し得る。また、請求項12に記載の燃料電池装置は、長時間の安定した発電が可能になる効果がある。
燃料電池の斜視図である。 燃料電池セルの斜視図である。 燃料電池セルの分解斜視図である。 分解パーツを絞った燃料電池セルの分解斜視図である。 燃料電池セルの縦断面図である。 図5を分解して示す縦断面図である。 図5のE−E線断面図である。 図5のF−F線断面図である。 実施形態2の燃料電池セルを示す図5のE−E線相当断面図である。 実施形態2の燃料電池セルを示す図5のF−F線相当断面図である。 実施形態3の燃料電池セルを示す図5のF−F線相当断面図である。 実施形態4の一つの燃料電池セルを示す図5のE−E線相当断面図である。 実施形態4の一つの燃料電池セルの分解パーツを絞った分解縦断面図である。 実施形態4の他の燃料電池セルを示す縦断面図である。 実施形態4の他の燃料電池セルを示す分解縦断面図である。 実施形態5の燃料電池装置を説明するフローチャートである。 試作セル1〜3についての実験結果を示すグラフである。 試作セル1〜3についての実験結果を示すグラフである。
現在、燃料電池には電解質の材質により大別して、高分子電解質膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)と、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)と、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)と、例えばZrO系セラミックを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)の4タイプがある。各タイプは、作動温度(イオンが電解質中を移動できる温度)が異なるのであって、現時点において、PEFCは常温〜約90℃、PAFCは約150℃〜200℃、MCFCは約650℃〜700℃、SOFCは約750℃〜1000℃である。
[実施形態1]
図1〜図8に示した実施形態1の燃料電池1は、例えばZrO系セラミックを電解質2とするSOFCである。この燃料電池1は、発電の最小単位である燃料電池セル3と、該燃料電池セル3に空気を供給する空気供給流路4と、その空気を外部に排出する空気排気流路5と、同じく燃料電池セル3に燃料ガスを供給する燃料供給流路6と、その燃料ガスを外部に排出する燃料排気流路7と、該燃料電池セル3を複数セット積層してセル群となし該セル群を固定して燃料電池スタック8となす固定部材9と、燃料電池スタック8を納める容器10と、燃料電池スタック8で発電した電気を出力する出力部材11と、から概略構成される。
[燃料電池セル]
燃料電池セル3は平面視正方形であり、図3に示したように上下両面に位置する一対のインターコネクタ12,13と、上下のインターコネクタ12,13のほぼ中間に位置すると共に上のインターコネクタ12の内面(下面)に対向する面に空気極14を形成し下のインターコネクタ13の内面(上面)に対向する面に燃料極15を形成した電解質2と、上のインターコネクタ12と空気極14との間に形成された空気室16と、下のインターコネクタ13と燃料極15との間に形成された燃料室17と、空気室16の内部に配置され空気極14と上のインターコネクタ12とを電気的に接続する空気極集電体18と、前記燃料室17の内部に配置され燃料極15と下のインターコネクタ13とを電気的に接続する燃料極集電体19と、を有し、正方形のコーナー部分に前記固定部材9の後述する締付ボルト46a〜46dを通すコーナー通孔20,20…を貫通状態に形成したものである。
この燃料電池セル3をさらに詳しく図3,図4により説明すると、燃料電池セル3は、四角い板形態で導電性を有する上のインターコネクタ12と、同じく四角い板形態で導電性を有する下のインターコネクタ13と、該下のインターコネクタ13の上面中央に複数本を間隔をおいて平行に並べて配置した燃料極集電体19と、下のインターコネクタ13の上面に設置され前記燃料極集電体19の周りを四角く囲って燃料室17を形成する四角い額縁形態の燃料極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「燃料極絶縁フレーム」ともいう。)21と、四角い額縁形態で前記燃料極絶縁フレーム21の上面に設置される燃料極フレーム22と、四角い板形態で前記燃料極フレーム22の内部にあって前記燃料極集電体19の上面に燃料極15を介して接する電解質2と、四角い額縁形態であって導電性を有し下面に前記電解質2を取着した薄い金属製のセパレータ23と、前記電解質2の上面の空気極14と前記上のインターコネクタ12の下面(内面)に当接する状態にして複数本を間隔をおいて平行に並べて配置した空気極集電体18と、前記セパレータ23と上のインターコネクタ12の間に設置され前記空気極集電体18の周りを四角く囲って空気室16を形成する四角い額縁形態の空気極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下、「空気極絶縁フレーム」ともいう。)24と、から構成される。
なお、前記電解質2は、ZrO系セラミックの他、LaGaO系セラミック、BaCeO系セラミック、SrCeO系セラミック、SrZrO系セラミック、CaZrO系セラミック等で形成される。
また、前記燃料極15の材質は、Ni及びFe等の金属と、Sc、Y等の希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニア等のZrO系セラミック、CeO系セラミック等のセラミックのうちの少なくとも1種との混合物が挙げられる。また、Pt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru、Rh、Ni及びFe等の金属でもよく、これらの金属は1種のみでもよいし、2種以上の合金にしてもよい。さらに、これらの金属及び/又は合金と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物(サーメットを含む。)が挙げられる。また、Ni及びFe等の金属の酸化物と、上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物等が挙げられる。
また、前記空気極14の材質は、例えば各種の金属、金属の酸化物、金属の複酸化物等を用いることができる。金属としてはPt、Au、Ag、Pb、Ir、Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。さらに、金属の酸化物としては、La、Sr、Ce、Co、Mn及びFe等の酸化物(La、SrO、Ce、Co、MnO及びFeO等)が挙げられる。また、複酸化物としては、少なくともLa、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe及びMn等を含有する複酸化物(La1−XSrCoO系複酸化物、La1−XSrFeO系複酸化物、La1−XSrCo1−yFeO系複酸化物、La1−XSrMnO系複酸化物、Pr1−XBaCoO系複酸化物及びSm1−XSrCoO系複酸化物等)が挙げられる。
また、前記空気極集電体18は、緻密な導電部材である例えばステンレス材で形成され、一方、前記燃料極集電体19は、発泡構造で変形可能な多孔質金属材で形成される。
以上のように燃料電池セル3は、下のインターコネクタ13と、燃料極絶縁フレーム21と、燃料極フレーム22と、セパレータ23と、空気極絶縁フレーム24と、上のインターコネクタ12との組合せによって燃料室17と空気室16を形成し、その燃料室17と空気室16を電解質2で仕切って相互に独立させ、さらに、燃料極絶縁フレーム21と空気極絶縁フレーム24で燃料極15側と空気極14側を電気的に絶縁している。
また、燃料電池セル3は、前記空気室16の内部に空気を供給する前記空気供給流路4を含む空気供給部25と、空気室16から空気を外部に排出する空気排気流路5を含む空気排気部26と、燃料室17の内部に燃料ガスを供給する燃料供給流路6を含む燃料供給部27と、燃料室17から排出される燃料排気流路7を含む燃料排気部28と、を備えている。
[空気供給部]
空気供給部25は、四角い燃料電池セル3の一辺側中央に上下方向に開設した空気供給通孔29と、該空気供給通孔29に連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の空気供給連絡室30と、該空気供給連絡室30と空気室16の間を仕切る隔壁31の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した空気供給連絡部32と、前記空気供給通孔29に挿通して外部から前記空気供給連絡室30に空気を供給する前記空気供給流路4と、を備えている。
[空気排気部]
空気排気部26は、燃料電池セル3の空気供給部25の反対側の一辺側中央に上下方向に開設した空気排気通孔33と、該空気排気通孔33に連通するように空気極絶縁フレーム24に開設した長孔状の空気排気連絡室34と、該空気排気連絡室34と空気室16の間を仕切る隔壁35の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した空気排気連絡部36と、前記空気排気通孔33に挿通して空気排気連絡室34から外部に空気を排出する管状の前記空気排気流路5と、を備えている。
[燃料供給部]
燃料供給部27は、四角い燃料電池セル3の残り二辺のうちの一辺側中央に上下方向に開設した燃料供給通孔37と、該燃料供給通孔37に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の燃料供給連絡室38と、該燃料供給連絡室38と燃料室17の間を仕切る隔壁39の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した燃料供給連絡部40と、前記燃料供給通孔37に挿通して外部から前記燃料供給連絡室38に燃料ガスを供給する管状の前記燃料供給流路6と、を備えている。
[燃料排気部]
燃料排気部28は、燃料電池セル3の燃料供給部27の反対側の一辺側中央に上下方向に開設した燃料排気通孔41と、該燃料排気通孔41に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設した長孔状の燃料排気連絡室42と、該空気排気連絡室34と燃料室17の間を仕切る隔壁43の上面を複数個等間隔に窪ませて形成した燃料排気連絡部44と、前記燃料排気通孔41に挿通して燃料排気連絡室42から外部に燃料ガスを排出する管状の前記燃料排気流路7と、を備えている。
[燃料電池スタック]
燃料電池スタック8は、前記燃料電池セル3を複数セット積層してセル群となし、該セル群を固定部材9で固定して構成される。この固定部材9は、セル群の上下を挟む一対のエンドプレート45a,45bと、該エンドプレート45a,45bとセル群をエンドプレート45a,45bのコーナー孔(図示せず)とセル群の前記コーナー通孔20に挿通して締め付ける四組の締付ねじ46a〜46dとナット47a〜47dと、を組み合わせたものである。
この燃料電池スタック8に対し前記空気供給流路4は、エンドプレート45a,45bの通孔(図示せず)とセル群の前記空気供給通孔29を上下に貫く状態にして取り付けられており、管状流路の端部を閉じ前記空気供給連絡室30毎に対応させて図7に示したように横孔48を設けることにより、該横孔48を介して空気供給連絡室30に空気が供給されるようになっている。
同様に空気排気流路5は空気排気連絡室34毎に対応させた横孔49から空気を取り込んで外部に排出し、燃料供給流路6は図8に示したように燃料供給連絡室38毎に対応させた横孔50から燃料ガスを供給し、燃料排気流路7は燃料排気連絡室42毎に対応させた横孔51から燃料ガスを取り込んで外部に排出する。
[容器]
燃料電池スタック8を収める容器10は、耐熱且つ密閉構造であって、開口部にフランジ52a,52bを有する二個の半割体53a,53bを向かい合わせにして接合したものである。この容器10の頂部から前記固定部材9の締付ねじ46a〜46dが外部に突出しており、この締付ねじ46a〜46dの突出部分にナット54を螺合させて燃料電池スタック8を容器10内に固定する。また、容器10の頂部から前記空気供給流路4、空気排気流路5、燃料供給流路6、燃料排気流路7も外部に突出しており、その突出部分に空気や燃料ガスの供給源等が接続されている。
[出力部材]
燃料電池スタック8で発電した電気を出力する出力部材11は、燃料電池スタック8のコーナー部分に位置する前記固定部材9の締付ねじ46a〜46dと前記エンドプレート45a,45bであって、対角線上で向かい合う一対の締付ねじ46a,46cを正極である上のエンドプレート45aに電気的に接続し、また、他の一対の締付ねじ46b,46dを負極である下のエンドプレート45bに電気的に接続する。もちろん正極に接続した締付ねじ46a,46dや負極に接続した締付ねじ46b,46cは、他極のエンドプレート45a(45b)に対しては絶縁座金55(図1参照)を介在させ、また、燃料電池スタック8に対してはコーナー通孔20との間に隙間を設けるなどして絶縁されている。よって、固定部材9の締付ねじ46a,46cは、上のエンドプレート45aにつながった正極の出力端子としても機能し、また、他の締付ねじ46b,46dは、下のエンドプレート45bにつながった負極の出力端子としても機能する。
[発電]
上記燃料電池1の空気供給流路4に空気を供給すると、その空気は、図7の右側から左側に流れて、右側の空気供給流路4と、空気供給連絡室30と、空気供給連絡部32とからなる空気供給部25を通って空気室16に供給され、この空気室16の空気極集電体18同士の間のガス流路56を通り抜け、さらに空気排気連絡部36と、空気排気連絡室34と、空気排気流路5とからなる空気排気部26を通って外部に排出される。
同時に燃料電池1の燃料供給流路6に燃料ガスとして例えば水素を供給すると、その燃料ガスは、図8の上側から下側に流れて、上側の燃料供給流路6と、燃料供給連絡室38と、燃料供給連絡部40とからなる燃料供給部27を通って燃料室17に供給され、この燃料室17の燃料極集電体19同士の間のガス流路57を通り抜け、さらに燃料排気連絡部44と、燃料排気連絡室42と、燃料排気流路7とからなる燃料排気部28を通って外部に排気される。
以上のような空気と燃料ガスの供給・排気を、前記容器10内を作動温度に高めた状態で行うと、それらが空気極14と電解質2と燃料極15を介して反応を起こすため、空気極14を正極、燃料極15を負極とする直流の電気エネルギが発生する。前記のように燃料電池スタック8は複数の燃料電池セル3を積層して直列に接続した状態であるから、上のエンドプレート45aが正極で、下のエンドプレート45bが負極になる。なお、燃料電池セル3内で電気エネルギが発生する原理は周知であるため説明を省略する。
さて、本発明の燃料電池セル3は、前記燃料室17内のガスの圧力を前記空気室16内のガスの圧力と同等か又はそれより大きく設定したものである。
そのため実施形態1の燃料電池セル3は、図7に示したように、空気供給部25の流路中、空気室16に直接接続された空気供給連絡部32の断面積(窪んだ通路部分。以下同じ。)が、空気排気部26の流路中、空気室16に直接接続された空気排気連絡部36の断面積よりも小さくなるように設定されている。これにより空気室16内における空気の流速が減少し、Fanningの式により知られているようにガスの流速の2乗に比例して圧力損失が減少するため、空気室16内のガスの圧力が減少する。
一方、図8に示したように、燃料電池セル3の燃料供給連絡部40の断面積と燃料排気連絡部44の断面積は従来型から変更なく同一であるため、燃料室17のガスの圧力も従来と同程度である。
したがって、空気室16に直接接続された空気供給連絡部32と空気排気連絡部36の断面積の差を調整して空気室16内のガスの圧力を下げることにより、相対的に燃料室17内のガスの圧力を空気室16内のガスの圧力と同等か又はそれより大きくすることができる。
以上のようにして燃料室17内のガスの圧力を空気室16内のガスの圧力と同等に設定することにより、電解質2が空気極集電体18と燃料極集電体19のいずれの側にも変位しないため、電解質2と両集電体18,19の電気接点が良好に保たれる。
また、燃料室17内のガスの圧力を空気室16内のガスの圧力より大きく設定した場合、その圧力差で電解質2が空気極集電体18側に押されるが、空気極集電体18は、例えばステンレス材のような緻密で変形しにくい導電材でできているため、電解質2は変位しない。よって電解質2と両集電体18,19の電気接点が良好に保たれる。
[実施形態2]
実施形態1の燃料電池セル3は、空気室16内のガスの圧力を調整したものであるのに対し、実施形態2の燃料電池セル3は、燃料室17内のガスの圧力を調整するものである。
そのため実施形態2の燃料電池セル3は、図10に示したように、燃料供給部27の流路中、燃料室17に直接接続された燃料供給連絡部40の断面積が、燃料排気部28の流路中、燃料室17に直接接続された燃料排気連絡部44の断面積よりも大きくなるように設定されている。これにより燃料排気連絡部44を通る燃料ガスの流速が増加し、Fanningの式により知られているようにガスの流速の2乗に比例して圧力損失が増加するため、燃料室17内のガスの圧力が増加する。
一方、図9に示したように、燃料電池セル3の空気供給連絡部32の断面積と空気排気連絡部36の断面積は同一で従来と変わらないため、空気室16のガスの圧力も従来と同じである。
したがって、燃料室17に直接接続された燃料供給連絡部40と燃料排気連絡部44の断面積の差を調整して燃料室17内のガスの圧力を上げることにより、燃料室17内のガスの圧力を空気室16内のガスの圧力と同等か又はそれより大きくすることができ、これにより実施形態1と同様の作用・効果を得ることができる。
[実施形態3]
実施形態3は、図11の拡大図に示したように、燃料供給部27の流路中、燃料供給連絡部40に接続された燃料供給流路6の断面積(管径D1)が、燃料排気部28の流路中、燃料排気連絡部44に接続された燃料排気流路7の断面積(管径D)よりも大きくなるように設定したものである。具体的には、燃料供給流路6の管径D1を標準的な16mmに設定し、燃料排気流路7の管径Dを前記管径D1より小さい3mm≦D<16mmに設定することが挙げられる。この場合、燃料排気流路7が圧損手段になって圧力損失を生じさせるから確実に燃料室17のガスの圧力を高めることができる。よって、実施形態3の燃料電池セル3も実施形態2と同様の作用・効果を得ることができる。
なお、本実施形態3において燃料供給連絡部40の断面積と燃料排気連絡部44の断面積は図11に示したように同一であり、また、空気供給連絡部32の断面積と空気排気連絡部36の断面積も燃料供給連絡部40の断面積と同一である。
この実施形態3の前記圧損手段は、燃料排気流路7の管径Dを細くすることなく、該燃料排気流路7の途中に後述する流量調節弁58(図16参照。)を設けて該流量調節弁58で実質的に管径Dを絞ったのと同等の効果が得られるようにしてもよい。なお、この点については実施形態5で詳述する。
[実施形態4]
実施形態4の燃料電池セル3は、図12〜図15に示したように、空気室16の内部に配置された複数の空気極集電体18に対し、空気極集電体18同士の間に形成されるガス流路56のガスの流れ方向と直交する方向の断面積を大きくして空気の流速を減少させ、そうして実施形態1と同じく空気室16内のガスの圧力を下げ、実施形態1と同じ効果が得られるようにしたものである。
図12,図13の燃料電池セル3は、空気極集電体18の本数を減らして間隔Bを広くし、そうしてガス流路56の断面積を大きくしたものであり、具体的には、空気室16の幅Aとガス流路56の幅Bの比が、従来B/A=0.015であるものを0.015<B/A≦0.1に設定することが挙げられる。そうすることで空気室16内のガスの圧力は従来との比較において確実に低下させることができる。なお、前記B/Aの値を0.1より大きくすると、空気極14及びインターコネクタ12との接触面積が減少して集電率が低下するおそれがあるため好ましくない。
一方、図14,図15の燃料電池セル3は、空気極14の本数を従来のまま維持すると共に(これにより高い集電率が維持できる。)、空気極集電体18の高さCを高くすることによってガス流路56の断面積を大きくしたものであり、具体的には空気極集電体18の高さCを0.6mm<C≦5mmに設定するとよい。従来の燃料電池セル3は、図6に符合C1で示した空気極集電体18の高さが0.6mmであるから、それより高くすることで空気室16内のガスの圧力を従来との比較において確実に低下させることができる。なお、空気極集電体18の高さCを5mmより大きくすると、燃料電池セル3の高さが増して燃料電池スタック8の高さが大きくなりすぎるため好ましくない。
[実施形態1〜4の組み合わせ]
実施形態1〜4は、それぞれ単独で実施可能であるが、これらを適宜組み合わせるようにしてもよい。例えば、空気供給部25と空気排気部26に係る実施形態1及び/又は4と、燃料供給部27と燃料排気部28に係る実施形態2及び/又は燃料供給流路6と燃料排気流路7に係る実施形態3の組合せが考えられる。そうすることにより空気室16のガスの圧力の低下と、燃料室17のガスの圧力の上昇が相乗的に作用して広い範囲での圧力調整が可能になる。
[実施形態5]
図16は、長時間の安定的な発電を可能にした燃料電池装置を示したものである。この燃料電池装置は、燃料電池セル3を複数個積層して固定部材9で固定した燃料電池スタック8を使用し、前記実施形態3で説明したように圧損手段として燃料排気流路7の途中に流量調節弁58(図16参照。)を設けてなる。そしてさらにこの燃料電池装置は、前記流量調節弁58の流量を調節する流量調節手段と、前記燃料供給流路6のガス圧を検出する圧力センサ(Pa_in)と、前記燃料排気流路7のガス圧を検出する圧力センサ(Pa_out)と、前記空気供給流路4のガス圧を検出する圧力センサ(Pc_in)と、前記空気排気流路5のガス圧を検出する圧力センサ(Pc_out)と、燃料供給流路6と燃料排気流路7の燃料側圧力差と、空気供給流路4と空気排気流路5の空気側圧力差を算出して比較する比較手段を備えている。
以上のように構成される燃料電池装置は、図16に示したフローチャートのように、発電時に前記圧力センサ(Pa_in),(Pa_out)で燃料供給流路6のガス圧と燃料排気流路7のガス圧を計測し(ステップS1)、また、圧力センサ(Pc_in),(Pc_out)で空気供給流路4のガス圧と空気排気流路5のガス圧を計測し(ステップS2)、そうして燃料側圧力差((Pa_in)−(Pa_out))と空気側圧力差((Pc_in)−(Pc_out))を算出して比較手段で比較し(ステップS3)、ここで燃料側圧力差が前記空気側圧力差と同等か又はそれより大きければ正常と判断してステップS1に戻る。一方、ステップS3で燃料側圧力差が空気側圧力差より小さければ異常と判断し、流量調節弁58を絞って燃料室17の圧力を上昇させ(ステップS4)、燃料側圧力差が空気側圧力差と同等か又はそれより大きくなるように制御してステップS1に戻る。
なお、実施形態5で使用する燃料電池セル3は、実施形態1〜4で説明した燃料電池セル3か或は実施形態1〜4の燃料電池セルを適宜組み合わせたものでよい。
本発明の効果を確認するため、空気室16と燃料室17の図13中寸法Aに相当する幅100mm、図13中寸法Bに相当する空気極集電体18同士の間のガス流路56の幅1.5mm、空気供給連絡部32、空気排気連絡部36、燃料供給連絡部40、燃料排気連絡部44の窪みの1つ分の幅1.7mm、燃料供給流路6と燃料排気流路7の管径が16mmである従来型の燃料電池セル(以下、従来セルともいう。)をベースにして、以下の燃料電池セル(以下、試作セルともいう。)1〜3を製造した。
[試作セル1]
空気排気連絡部36の幅を大きくする実施形態1と、燃料排気連絡部44の幅Bを小さくする実施形態2を組み合わせたもので、空気供給連絡部32の幅=1.7mm、空気排気連絡部36の幅=3.5mm、燃料供給連絡部40の幅=1.7mm、燃料排気連絡部44の幅=0.3mmに設定した。それ以外は従来セルと同じである。
[試作セル2]
実施形態4(前者)に対応するもので、空気室16の幅Aと、空気極集電体18同士の間のガス流路56の幅Bとの比を、B/A=0.065に設定した。それ以外は従来セルと同じである。
[試作セル3]
実施形態3に対応するもので、燃料排気流路7の管径5mmに設定した。それ以外は従来セルと同じである。
以上の試作セル1〜3と従来セルを温度700℃、0.75A/cm2の条件で3000時間連続作動させ、500時間ごとにセル電圧と内部抵抗を測定した。
その結果を図17と図18のグラフに示す。この耐久試験により試作セル1〜3の十分な耐久性が確認できた。
1 …燃料電池
2 …電解質
3 …燃料電池セル
4 …空気供給流路
5 …空気排気流路
6 …燃料供給流路
7 …燃料排気流路
9 …固定部材
12,13…インターコネクタ
14…空気極
15…燃料極
16…空気室
17…燃料室
18…空気極集電体
19…燃料極集電体
25…空気供給部
26…空気排気部
27…燃料供給部
28…燃料排気部
56…ガス流路
58…流量調節弁(圧損手段)
A …空気室16の幅
B …ガス流路56の幅
C …空気極集電体18の高さ
D …燃料排気流路7の管径
Pa_in …圧力センサ
Pa_out …圧力センサ
Pc_in …圧力センサ
Pc_out …圧力センサ

Claims (12)

  1. 上下両面に位置する一対のインターコネクタと、
    前記インターコネクタ間に位置し、一方のインターコネクタの内面に対向する面に空気極が形成され、他方のインターコネクタの内面に対向する面に燃料極が形成された電解質と、
    前記インターコネクタと前記空気極の間に形成された空気室と、
    前記インターコネクタと前記燃料極の間に形成された燃料室と、
    前記空気室の内部に配置され、前記空気極と前記インターコネクタとを電気的に接続する空気極集電体と、
    前記燃料室の内部に配置され、前記燃料極と前記インターコネクタとを電気的に接続する燃料極集電体と、
    前記空気室の内部に供給されるガスが通過する空気供給流路を含む空気供給部と、
    前記空気室から排出されるガスが通過する空気排気流路を含む空気排気部と、
    前記燃料室の内部に供給される燃料ガスが通過する燃料供給流路を含む燃料供給部と、
    前記燃料室から排出される燃料ガスが通過する燃料排気流路を含む燃料排気部と、を備えた燃料電池セルにおいて、
    前記燃料室内のガスの圧力を前記空気室内のガスの圧力と同等か又はそれより大きく設定したことを特徴とする燃料電池セル。
  2. 前記空気室のガスの圧力を、前記空気室に直接接続された空気供給部の流路の断面積が、前記空気室に直接接続された空気排気部の流路の断面積よりも小さくなるように設定して前記燃料室内のガスの圧力と同等か又はそれよ小さくしたことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
  3. 前記燃料室のガスの圧力を、前記燃料室に直接接続された燃料供給部の流路の断面積が、前記燃料室に直接接続された燃料排気部の流路の断面積よりも大きくなるように設定して前記空気室内のガスの圧力と同等か又はそれより大きくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池セル。
  4. 前記空気極集電体は前記空気室の内部に間隔をおいて複数配置され、
    前記空気室のガスの圧力を、前記空気極集電体間に形成されるガス流路に流れるガスの流れ方向と直交する方向の前記ガス流路の断面積を調整することにより設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池セル。
  5. 空気の流れ方向と直交する方向の前記空気室の幅Aと、平行に並べた前記空気極集電体間に形成されるガス流路の幅Bを、0.015<B/A≦0.1に設定したことを特徴とする請求項4記載の燃料電池セル。
  6. 前記空気極集電体の高さCを、0.6mm<C≦5mmに設定したことを特徴とする請求項4記載の燃料電池セル。
  7. 前記燃料室のガスの圧力を、前記燃料排気部を構成する燃料排気流路に圧力損失を生じさせる圧損手段を設けて調整するように設定したことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
  8. 前記圧損手段は、前記燃料供給部の燃料供給流路の断面積より小さい断面積の前記燃料排気部の燃料排気流路であることを特徴とする請求項7記載の燃料電池セル。
  9. 請求項8に記載の燃料排気部の燃料排気流路は管状であり、管径Dが、3mm≦D<16mmであることを特徴とする燃料電池セル。
  10. 前記圧損手段は、前記燃料排気部の燃料排気流路の途中に設けた流量調節弁であることを特徴とする請求項7記載の燃料電池セル。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の燃料電池セルを複数個積層して固定部材で固定してなることを特徴とする燃料電池スタック。
  12. 請求項10に記載の燃料電池セルを複数個積層して固定部材で固定した燃料電池スタックと、
    前記燃料排気部の燃料排気流路の途中に設けた前記流量調節弁を調節する流量調節手段と、
    前記燃料供給部に燃料ガスを供給する燃料供給流路のガス圧を検出する圧力センサ(Pa_in)と、
    前記燃料排気部から燃料ガスを排出する燃料排気流路のガス圧を検出する圧力センサ(Pa_out)と、
    前記空気供給部に空気を供給する空気供給流路のガス圧を検出する圧力センサ(Pc_in)と、
    前記空気排気部から空気を排出する空気排気流路のガス圧を検出する圧力センサ(Pc_out)と、
    前記燃料供給流路と前記燃料排気流路の燃料側圧力差と、前記空気供給流路と前記空気排気流路の空気側圧力差を比較する比較手段を備え、
    前記流量調節手段で流量調節弁を調節して前記燃料側圧力差が前記空気側圧力差と同等か又はそれより大きくなるように制御するものであることを特徴とする燃料電池装置。
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