JPWO2003105870A1 - ベロ毒素産生抑制剤 - Google Patents
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Abstract
本発明の目的は、例えば大腸菌O−157などのベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素の量を抑制することができる新規なベロ毒素産生抑制剤を提供することである。本発明によれば、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を含むベロ毒素産生抑制剤が提供される。
Description
技術分野
本発明は、ベロ毒素産生抑制剤に関する。より詳細には、本発明は、大腸菌O−157などのベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素の量を抑制することができる医薬品、特定保健用食品又は健康食品等として用いることができるベロ毒素産生抑制剤に関する。
背景技術
1996年、腸管出血性大腸菌による食中毒が日本全国において発生し、腸管出血性大腸菌による溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの発症が社会問題となった。ベロ毒素産生菌の一種である腸管出血性大腸菌による食中毒にみられる下痢、血便、HUSおよび脳症は産生されるベロ毒素(VT)によるものであり、このベロ毒素が人体に重篤な症状を引き起こす。ベロ毒素にはVT1とVT2の2種類があるが、両者とも真核細胞のタンパク質合成を阻害する作用を有する。即ち、ベロ毒素は、細菌が感染した動物の腸管における上皮細胞へ入り、細胞内の28SリボゾームRNAの特定のアデニン残基とリボース残基の間のN−グリコシド結合を加水分解することによりその機能を破壊し、その細胞のタンパク質合成機能を止めて当該細胞を死に至らしめる。この結果、腸管上皮細胞が脱落し、下痢や出血が生じる。また、場合によっては、ベロ毒素が血管内に入って血管内皮細胞を攻撃し、これにより腎障害を引き起こして溶血性尿毒症症候群(HUS)などの重篤な疾患が生じる。
日本において大流行した腸管出血性大腸菌の80%以上がEscherichia coli0157:H7であるが、この他にも腸管出血性大腸菌にはEscherichia coli 0157:H−,0111:H−,026:H11,0128:H2,01:H20,018:H−,0114:H19,0115:H10などを含む多種の大腸菌が見つかっている。また、ベロ毒素は大腸菌のみならず、細菌性赤痢、メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)においても産生されることが知られている。
このようなベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素による疾病の予防及び治療のために、Escherichia coli 0157:H7をはじめとするベロ毒素産生菌の検出方法、疾病発症の作用機作の解明、あるいは有効な治療方法についての研究が進みつつあるが、未だ発症を十分に抑制する方法は見出されておらず、有効な発症抑制方法の確立が望まれている。特に、ベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素による疾病の発症は、免疫機能の低い乳幼児や老人に多いため、これら乳幼児や老人でも摂取しやすく、且つ副作用の少ない安全なベロ毒素産生抑制剤を提供することが望まれていた。
これまでの研究により、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリL−乳酸混合物は、抗悪性腫瘍剤として有用であることが報告されている(特開平9−227388号公報および特開平10−130153号公報)。しかしながら、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物がベロ毒素の産生量に及ぼす効果については報告されていない。
発明の開示
本発明は、例えば大腸菌O−157などのベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素の量を抑制することができる新規なベロ毒素産生抑制剤を提供することを解決すべき課題とした。本発明はまた、上記したベロ毒素産生抑制剤を利用したベロ毒素産生抑制用の飲食品を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決することを目的とした検討を行うために、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を無菌マウスに投与し、大腸菌O−157が産生するベロ毒素の量を測定した。その結果、上記ポリ乳酸混合物は、ベロ毒素の産生量を抑制し、O−157感染マウスの生存率を改善することが判明した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を含むベロ毒素産生抑制剤が提供される。
好ましくは、本発明のベロ毒素産生抑制剤は、O−157などの腸管出血性大腸菌によるベロ毒素産生を抑制するために使用することができる。
好ましくは、ポリ乳酸中における反復単位である乳酸は実質的にL−乳酸から成る。
好ましくは、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物は、ラクチドを式(3):Me−N(R1)(R2)(式中、Meはアルカリ金属を示す。R1及びR2は各々独立に脂肪族基又は芳香族基を示す。)で表される化合物の存在下で重合させることにより製造されるポリ乳酸混合物である。
好ましくは、上記式でMeはリチウムである。好ましくは、上記式でR1及びR2は各々独立に炭素数1から6のアルキル基である。さらに好ましくは、上記式でMeはリチウムであり、R1及びR2はイソプロピル基である。
本発明の別の側面によれば、上記した本発明のベロ毒素産生抑制剤を含む、ベロ毒素産生抑制のための飲食品が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、ベロ毒素産生抑制剤又はベロ毒素産生抑制のための飲食品の製造における、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物の使用が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物の有効量をヒトなどの哺乳動物に投与することを含む、ベロ毒素の産生を抑制するための方法が提供される。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施態様および実施方法について詳細に説明する。
本発明のベロ毒素産生抑制剤は、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を有効成分として含むものであり、例えば、大腸菌O−157等のベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素の量を抑制するために使用することができる。本発明のベロ毒素産生抑制剤は、ベロ毒素産生菌の感染に起因する疾患の治療剤や予防剤として使用することができる。
本明細書で言うベロ毒素産生菌の種類は、特に限定されない。例えば、ベロ毒素を産生する大腸菌としては、O−157のほかの例として、O−1、O−18、O−26、O−68、O−111、O−114、O−115、O−119、O−128、O−138、O−145などの血清型を示す菌が挙げられる。また、ベロ毒素を産生する赤痢菌(細菌性赤痢)の例としては、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、フレキシネル赤痢菌(Shigella flexneri)、ボイド赤痢菌(Shigella boydii)、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)などが挙げられる。その他のベロ毒素産生菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などが挙げられる。
これらの中でも大腸菌は健康人の腸内フローラを構成する1菌種であり、一部の特殊な病原因子産生能を獲得した大腸菌はヒトの腸管感染症を引き起こす。全国各地で腸管出血性大腸菌(EHEC)O−157:H7感染症の集団発生が多発した1996年以降、集団発生の件数は減少しているが、散発例は依然として続いている。EHECはアフリカミドリザルの腎細胞由来のベロ細胞に強い細胞毒性を示すベロ毒素を主要な病原因子として産生し、感染時には約5%の例で溶血性尿毒症症候群や稀に脳症を合併して重篤になる場合が多い。本発明のベロ毒素産生抑制剤は特に、腸管出血性大腸菌O−157によるベロ毒素の産生を抑制するために使用することができる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤は、ベロ毒素産生菌によるベロ毒素の産生を抑制するのに効果的であり、当該菌に感染する前に予め摂取しておくこともできる。従って、本発明のベロ毒素産生抑制剤は、健康食品や医薬品として日頃から摂取しておくことも好ましい。
本発明のベロ毒素産生抑制剤及びベロ毒素産生抑制のための飲食品においては、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物が有効成分として用いられる。
本明細書で言う「ポリ乳酸混合物」とは、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸が任意の割合で存在する混合物を意味する。即ち、「混合物」という用語は、縮合度3〜20の何れかを有するポリ乳酸の混合物であることを意味すると同時に、環状および鎖状のポリ乳酸の混合物を含む概念としても用いられる。このような「ポリ乳酸混合物」は、本明細書中以下に述べるように、乳酸を脱水縮合し、適当な方法で精製することにより得ることができる。なお、本明細書では便宜上「ポリ乳酸混合物」という用語を用いたが、この中には一定の縮合度を有する環状のポリ乳酸または一定の縮合度を有する鎖状のポリ乳酸といった単一成分から成るポリ乳酸も含まれる。
縮合度とは、ポリ乳酸中における反復単位である乳酸単位の数を意味する。例えば、環状のポリ乳酸は下記の構造式を有することが推測されるが、式中のnが縮合度を表す(即ち、n=3〜20)。
本明細書で単に「乳酸」と称する場合、この乳酸にはL−乳酸、D−乳酸またはこれらの任意の割合の混合物の全てが包含される。本発明においては好ましくは、乳酸は実質的にL−乳酸から成る。ここで言う「実質的に」とは、ポリ乳酸混合物中におけるL−乳酸単位の比率[即ち、(L−乳酸単位数/L−乳酸単位数+D−乳酸単位数)×100]が、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上であることを意味する。なお、ポリ乳酸混合物中におけるL−乳酸単位の比率は、出発物質として使用する乳酸中に存在するL−乳酸とD−乳酸の比率に依存する。
縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、特開平9−227388号公報、特開平10−130153号公報、または特願平11−39894号明細書(これらの特許明細書に記載の内容は全て引用により本明細書の開示として含める。)などに記載の製造方法により得ることができる。
より具体的には、例えば、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物は、下記の方法Aにより得ることができる。
方法A:
先ず、乳酸(好ましくは、実質的にL−乳酸から成る乳酸)を不活性雰囲気下で脱水縮合させる。不活性雰囲気としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、窒素ガスを用いるのが好ましい。
脱水縮合反応は、常圧〜1mmHg程度の減圧下、110〜210℃、好ましくは130〜190℃の温度で行われるが、段階的減圧および段階的昇温によって行うのが特に好ましい。反応時間は適宜設定できるが、例えば1〜20時間反応を行うことができる。段階的減圧および段階的昇温を用いる場合には、反応時間を2以上から成る部分的な反応時間に分け、それぞれの部分において圧力と温度を設定して反応を行う。段階的減圧を用いる場合は、例えば、常圧→150mmHg→3mmHgと減圧することができ、段階的昇温を用いる場合は、例えば、145℃→155℃→185℃と昇温することができる。実際には、これらを組み合わせて、例えば、145℃で常圧で3時間、145℃で150mmHgで3時間、155℃で3mmHgで3時間そして185℃で3mmHgで1.5時間反応を行うことができる。
次いで、この脱水縮合反応により得られた反応混合物にエタノールおよびメタノールを加え、濾過して濾液を乾燥してエタノールおよびメタノール可溶分が得られる。即ち、本明細書で言う「エタノールおよびメタノール可溶分」とはエタノールとメタノールの混合液に可溶な画分を意味する。なお、エタノールおよびメタノール可溶分を得る際には、脱水縮合反応の反応混合物をエタノールおよびメタノールと混合するが、その際のエタノールとメタノールの比率は適宜設定することができ、例えばエタノール:メタノール=1:9である。なお、反応混合物にエタノールとメタノールを添加する順番、方法などは限定されず、適宜選択することができ、例えば、脱水縮合反応の反応混合物に先ずエタノールを添加し、次いでメタノールを添加することができる。
上記で得られたエタノール・メタノール可溶分を逆相カラムクロマトグラフィー、特にオクタデシルシラン(ODS)カラムを用いたクロマトグラフィーに付し、まずpH2〜3の25〜50重量%のアセトニトリル水溶液で溶離する画分を除去し、次いでpH2〜3の90重量%以上のアセトニトリル水溶液、好ましくは99重量%以上のアセトニトリル水溶液で溶離してくる画分を採取すると、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物が得られる。
上記のようにして得られた環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ物質で中和し、減圧乾燥後、常法により下記に述べるような所望の形態に製剤化することができる。
本発明で用いる縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を製造するための別法としては、例えば、特願平11−265715号明細書に記載された方法(方法Bとする)または特願平11−265732号明細書に記載された方法(方法Cとする)を挙げることができる(これらの特許明細書に記載の内容は全て引用により本明細書の開示として含める。)。以下、方法Bおよび方法Cについて具体的に説明する。
方法B:
この方法は、ラクチドをRYLi(式中、Rは脂肪族基又は芳香族基を示し、Yは酸素原子又はイオウ原子を示す)で表されるリチウム化合物の存在下で重合させることによって環状乳酸オリゴマーを製造する方法である。重合反応を実施する場合、リチウム化合物(RYLi)の使用割合は、ラクチド1モル当たり、1〜0.1モル、好ましくは0.2〜0.3モルの割合である。反応温度は−100〜0℃、好ましくは−78〜−50℃である。反応は、−78〜−50℃の温度で開始し、徐々に室温にまで昇温させるように実施するのが好ましい。反応は、好ましくは反応溶媒の存在下で実施される。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン等の環状エーテルの他、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン等を用いることができる。反応雰囲気としては、窒素ガスやアルゴン等の不活性ガス雰囲気が用いられる。反応圧力は特に制約されず、好ましくは常圧である。
なお、上記のようにして得られる乳酸オリゴマーの組成(即ち、環状乳酸オリゴマーと鎖状乳酸オリゴマーの混合比率)は、反応助剤として用いるリチウム化合物によって変動する。リチウム化合物として炭素数1〜3のアルキルアルコールのリチウム化合物(ROLi)(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基)を用いる場合には、環状乳酸オリゴマーと鎖状オリゴマーとの混合物(環状乳酸オリゴマーの割合:80〜85重量%)が得られる。一方、リチウム化合物としてt−ブチルアルコール等の炭素数4以上のアルキルアルコールのリチウム化合物や、チオフェノール化合物を用いるときには、実質的に環状乳酸オリゴマーのみを選択的に得ることができる。
方法C:
この方法は、(i)乳酸を350〜400mmHgの圧力条件で120〜140℃の範囲の温度に加熱し、脱水縮合反応させるとともに、ラクチドを留出させずに副生水のみを留出除去する第1加熱工程、
(ii)該第1加熱工程終了後、反応生成物を150〜160℃の温度に加熱し、該反応圧力を降圧速度0.5〜1mmHg/分で15〜20mmHgまで降下させるとともに、その降圧に際し、ラクチドの留出を回避させながら副生水のみを留出除去し、該反応圧力が15〜20mmHgに降下後、同圧力条件及び反応温度150〜160℃においてさらに反応を継続して鎖状乳酸オリゴマーを主成分とする脱水縮合物を生成させる第2加熱工程、
(iii)該第2加熱工程終了後、0.1〜3mmHgの圧力条件で150〜160℃で加熱して該鎖状乳酸オリゴマーを環化させ、環状オリゴマーを生成させる第3加熱工程、
からなることを特徴とする方法である。
この方法では先ず、第1加熱工程において、減圧下において乳酸を加熱し、脱水縮合反応させる。この場合の反応時間は3〜12時間、好ましくは5〜6時間である。この第1加熱下での反応は、その反応を円滑に進行させるために、乳酸の脱水縮合により生成する副生水を留去させるが、この場合、乳酸2分子の脱水縮合物であるラクチドが留去しないように実施する。このためには、反応圧力を減圧、好ましくは300〜500mmHg、より好ましくは350〜400mmHgに保持し、この圧力条件下において、100〜140℃、好ましくは130〜140℃の範囲に加熱するのがよい。この第1加熱工程での反応により、主に、乳酸の3〜23分子の脱水縮合物を主成分とする反応生成物が生じる。
上記第1加熱工程の終了後、第2加熱工程において、高められた平均重合度のオリゴマーが得られるように、前記第1加熱工程における反応温度よりも高められた温度、好ましくは145〜180℃、より好ましくは150〜160℃の温度に加熱するとともに、反応圧力を10〜50mmHg、好ましくは15〜20mmHgの圧力に降下させてさらに脱水縮合反応を継続する。
この反応も、前記第1加熱工程の反応の場合と同様に、反応を円滑に進行させるために副生水を留去させるが、ラクチドが留去しない条件で実施する。反応圧力を前記範囲の圧力にまで降下させる速度(降圧速度)は、ラクチドの留出を回避し、且つ反応効率を高めるためには、0.25〜5mmHg/分、好ましくは0.5〜1mmHg/分の範囲に保持することが通常は必要である。前記範囲より低い降圧速度では、その所定圧まで降圧させるのに必要な時間が長くなるため好ましくなく、一方、前記範囲より高い降圧速度では、ラクチドが副生水とともに留去するようになるので好ましくない。
反応圧力が所定圧力にまで降下後、この反応圧力において、さらに反応を継続する。この場合の加熱時間は、3〜12時間、好ましくは5〜6時間である。
前記第2加熱工程での反応により、平均重合度が3〜30、好ましくは3〜23の乳酸オリゴマーが得られるが、この場合のオリゴマー中の環状オリゴマーの割合は、通常、70〜80重量%程度である。
上記第2加熱工程終了後、第3加熱工程において、反応圧力を0.25〜5mmHg、好ましくは0.5〜1mmHgに保持し、145〜180℃、好ましくは150〜160℃の温度でさらに反応を継続する。反応時間は3〜12時間、好ましくは5〜6時間である。この場合に生じる副生水も留去させる。この場合、ラクチドの留去も回避させることが好ましいが、反応生成物にはラクチドは殆んど含まれないので、その降圧速度を格別遅くする必要はない。
前記第3加熱工程での反応により、平均重合度3〜30、好ましくは3〜23で、かつ環状オリゴマーの割合が90重量%以上、好ましくは99重量%以上の乳酸オリゴマーが生成される。
方法D:
本発明の特に好ましい態様では、ラクチドを式(3):Me−N(R1)(R2)(式中、Meはアルカリ金属を示す。R1及びR2は各々独立に脂肪族基又は芳香族基を示す。)で表される化合物の存在下で重合させることにより製造されるポリ乳酸混合物を使用する。以下、式(3):Me−N(R1)(R2)について説明する。
式(3)において、Meはアルカリ金属を示し。R1及びR2は各々独立に脂肪族基又は芳香族基を示す。
ここで脂肪族基としては、炭素数1から12、好ましくは1から6の直鎖状、分枝状、環状又はそれらの組み合わせの飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、オクチル、ドデシル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロオクチル、シクロドデシル等のシクロアルキル基が挙げられる。脂肪族基は二重結合または三重結合を有する不飽和の炭化水素基でもよい。
ここで芳香族基としては、炭素数は6〜30、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜12、さらに好ましくは6〜10のアリール基及びアリールアルキル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル、トリル、ナフチル等が挙げられ、アリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル等が挙げられる。
脂肪族基および芳香族基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基の種類は特に限定されないが、例えば、直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキル基、直鎖または分岐、鎖状または環状のアルケニル基、直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキニル基、アリール基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アミノ基、アンモニオ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホ基、メルカプト基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ウレイド基、複素環基(例えば、窒素、酸素およびイオウ等を少なくとも1個以上含み、3ないし12員環の単環、縮合環)、複素環オキシ基、複素環チオ基、アシル基、スルファモイルアミノ基、シリル基、ハロゲン原子などが挙げられる。上記においてアルキル、アルケニル、アルキニル及びアルコキシの炭素数は一般的には1から12であり、好ましくは1から6であり、アリールの炭素数は一般的には6から20であり、好ましくは6から10である。
式(3)おいて、Meはアルカリ金属を示す。アルカリ金属としては、例えば、Li、Na又はKが挙げられ、好ましくはLiである。
式(3)で表される化合物で不斉炭素を有するものは、各々(R)体、(S)体、(R),(S)体の何れでもよい。
式(3)で表されるアルカリ金属化合物の入手方法は特に限定されず、当業者であれば適宜入手できる。ジイソプロピルアミン等のジアルキルアミンとn−ブチルリチウム等のアルキル化アルカリ金属を反応させることによって得ることができる。より具体的には、この反応は、例えば、窒素雰囲気下などの反応に不活性な条件下において、THF等の不活性溶媒中にジアルキルアミンを含む溶液と、ヘキサン等の不活性溶媒中にアルキル化アルカリ金属を含む溶液とを混合して攪拌することで行うことができる。反応温度は、反応が進行する限り特に限定されないが、好ましくは−78℃から室温である。反応時間は適宜設定できる。
ラクチドを式(3)の化合物の存在下で重合させる場合、式(3)の化合物(Me−N(R1)(R2))の使用量は、ラクチド1モル当たり好ましくは1〜0.1モルであり、より好ましくは0.2〜0.3モルである。
ラクチドの重合反応を行う際の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されないが、好ましくは−100℃〜室温であり、より好ましくは−78℃〜室温である。
ラクチドの重合反応は、好ましくは反応溶媒の存在下で実施される。反応溶媒は反応に不活性な溶媒であれば特に制限されないが、好ましくはテトラヒドロフラン等の環状エーテル、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン等を用いることができる。反応雰囲気としては、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気を使用することができる。反応圧力は特に制約されず、好ましくは常圧である。
上記方法で得られる鎖状及び環状の乳酸オリゴマー混合物の組成は、反応助剤として用いる式(3)の化合物の種類や反応条件などによって変化するが、好ましくは、環状乳酸オリゴマーよりも鎖状乳酸オリゴマーの含有量が高い。
上記した方法によれば、下記式(1)又は(2):
(式中、mは1〜18の整数を示し、nは1〜18の整数を示す)
で表される鎖状及び環状の乳酸オリゴマー混合物が製造される。
なお、上記方法A、B、C及びDは本発明で用いるポリ乳酸混合物の製造方法の具体例の一部を示したものにすぎず、本発明においては他の方法で製造されたポリ乳酸混合物を用いることもできる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤は、前記の必須成分に加えてさらに必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲内で、医薬品類、医薬部外品類などの製剤に使用される成分や添加剤を任意に選択・併用して製造することができる。本発明のベロ毒素産生抑制剤は、単独の医薬品類として使用できる以外に、医薬品類や医薬部外品類などに配合して用いることもできる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤の形態は特に限定されず、経口投与又は非経口投与用の製剤形態の中から目的に最も適した適宜の形態のものを選択することが可能である。
経口投与に適した製剤形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、ドリンク剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、溶液剤、乳剤、懸濁剤、チュアブル剤などを挙げることができ、非経口投与に適する製剤形態としては、例えば、注射剤(皮下注射、筋肉内注射、又は静脈内注射など)、外用剤、点滴剤、吸入剤、噴霧剤などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
経口投与に適当な液体製剤、例えば、溶液剤、乳剤、又はシロップ剤などは、水、ショ糖、ソルビット、果糖などの糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを用いて製造することができる。また、カプセル剤、錠剤、散剤、又は顆粒剤などの固体製剤の製造には、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニットなどの賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを用いることができる。
非経口投与に適当な注射用又は点滴用の製剤は、好ましくは、受容者の血液と等張な滅菌水性媒体に有効成分である上記の物質を溶解又は懸濁状態で含んでいる。例えば、注射剤の場合、塩溶液、ブドウ糖溶液、又は塩水とブドウ糖溶液との混合物からなる水性媒体などを用いて溶液を調製することができる。腸内投与のための製剤は、例えば、カカオ脂、水素化脂肪、又は水素化カルボン酸などの担体を用いて調製することができ、座剤として提供される。また、噴霧剤の製造には、有効成分である上記の物質を微細な粒子として分散させることができ、受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ有効成分の吸収を容易ならしめる担体を用いることができる。担体としては、具体的には、乳糖又はグリセリンなどが例示される。有効成分である物質及び使用する担体の性質に応じて、エアロゾル又はドライパウダーなどの形態の製剤が調製可能である。これらの非経口投与用製剤には、グリコール類、油類、フレーバー類、防腐剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1種又は2種以上の飲食品を添加することもできる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤の投与量及び投与回数は、投与の目的、投与形態、摂取者の年齢、体重又は性別などの条件などを含む種々の要因により適宜設定することができるが、一般的には、有効成分の投与量として一日当り1〜10,000mg/kg、好ましくは10〜2000mg/kg、より好ましくは10〜200mg/kgである。上記投与量の製剤を一日1〜4回程度に分けて投与することが好ましい。
本発明のベロ毒素産生抑制剤の投与時期は特に限定されず、ベロ毒素産生菌の感染の前でも後でもよい。
本発明はさらに、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を含むベロ毒素産生抑制のための飲食品にも関する。即ち、本発明で用いる縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物は、上記したような単独の製剤の形態で使用するのみならず、飲食品の中に配合して用いることができる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤のための飲食品は、ポリ乳酸混合物を分解させることなく配合し得るものであれば、その配合形態には特に制限はない。
本発明によるベロ毒素産生抑制剤のための飲食品の製品の具体例としては、清涼飲料、ドリンク剤、健康食品、特定保健用食品、機能性食品、機能活性型食品、栄養補助食品、サプレメント、飼料、飼料添加物などと一般に呼称される、飲料を含む健康食品または補助食品が挙げられる。
飲食品の具体例としては、例えば、チューインガム、チョコレート、キャンディー、錠菓、ゼリー、クッキー、ビスケット、ヨーグルト等の菓子類、アイスクリーム、氷菓等の冷菓類、茶、清涼飲料(ジュース、コーヒー、ココア等を含む)、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等の飲料、パン、ハム、スープ、ジャム、スパゲティー、冷凍食品など任意の飲食品を挙げることができる。あるいは、本発明で用いるポリ乳酸混合物は調味料又は食品添加剤などに添加して用いることもできる。本発明のベロ毒素産生抑制のための飲食品を摂取することによりベロ毒素産生抑制効果が発揮され、実質的に有害な副作用を示さない安全な飲食品を提供することができる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤のための飲食品は、ポリ乳酸混合物を、食品に使われる一般的な原料に直接混合、分散したのち、公知の方法により所望の形態に加工することによって得ることができる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤のための飲食品はあらゆる形態の飲食品を包含するものであり、その種類は特に制限されず、上記したような各種飲食物、あるいは各種栄養組成物、例えば各種の経口又は経腸栄養剤や飲料等に、本発明のベロ毒素産生抑制剤剤を配合して飲食品として提供することができる。このような飲食品の組成としては、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物の他に、蛋白質、脂質、糖質、ビタミン及び/又はミネラル類などを含めることができる。飲食品の形態は特に限定されず、摂取しやすい形態であれば、固形、粉末、液体、ゲル状、スラリー状等のいずれであってもよい。
飲食品中におけるポリ乳酸混合物の含有量は特には限定されないが、一般的には0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%程度である。
飲食品に含まれるポリ乳酸混合物の量は、本発明の目的とするベロ毒素産生抑制作用を発揮できる程度に含まれることが好ましく、好ましくは摂取される飲食物1食中に0.1gから10g程度、より好ましくは0.5gから3g程度である。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によっていかなる点においても限定されることはない。
実施例
製造例1:ポリ乳酸混合物(以下、CPLとも称する)の製造
製造例1の反応図を以下に示す。
窒素雰囲気下、0℃でジイソプロピルアミン0.101g(1mmol)の5mL THF溶液にn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)0.63mL(1mmol)を加え、10分間攪拌し、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)とした後、L−(−)−ラクチド0.577g(4mmol)の4mL THF溶液を加え、15分間攪拌し反応させた。この反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液20mLを加え、反応を処理し、さらに水10mLを加えた。THF(50mL)で5回抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾別した後、有機溶媒を減圧濃縮し、粗生成物0.53gを得た。得られた粗生成物にエーテル6mLを加え、超音波洗浄器にて10分間浸漬し、濾過し、融点125〜129℃の白色固体生成物0.39gを得た。
得られた生成物の物性データを図1から図7に示す。図1から図7に示したFABMS及びNMRデータから、固体生成物中に3量体から21量体の環状乳酸オリゴマーと3量体から27量体の鎖状乳酸オリゴマーが存在することが確認された。
試験例1:
(材料および方法)
実験動物は5〜12週齢の無菌BALB/c系マウス(日本クレア)を用いた。CPL群は0.1%のCPL(製造例1で製造したもの)を混入させた標準固形餌(CE−2)をあらかじめ高圧蒸気滅菌(121℃、10分間)し、滅菌水道水とともに自由摂取させた。また、対照群は放射線滅菌(コバルト60)した標準固形餌(CE−2)を滅菌水道水とともに自由摂取させた。実験に用いたすべてのマウスはビニール・アイソレーター内で飼育管理された。
EHEC(5.0×106cfu/マウス)はCPLの投与を開始してから7日目に胃ゾンデを用いて経口投与し、生死を観察した。
腸管付着阻止実験として、EHECを無菌マウスに感染させた後4日目に屠殺し、腸管各部位(十二指腸、空・回腸、大腸)を約4cmの長さに切り、腸管を開き、内容物を十分にPBSで洗浄した。腸管の水分を濾紙で吸い取り、重量を計測し、10倍量のPBSを加えてホモジナイズし、その0.1mlを普通寒天培地上に塗抹して集落数を数えた。
また、大腸菌ベロドキシン検出用キット(デンカ生研)を用いて、盲腸内容物中に産生されたベロ毒素(VT1、VT2)、IgAキットを用いて、腸管に分泌されるIgAを測定した。
(結果および考察)
(1)EHEC感染マウスの生存率に対するCPLの効果
CPL投与群および対照群における生死観察(生存率)の結果を図8に示す。15日間の観察期間におけるEHEC感染マウスの生存率は対照群20%(2/10)であったのに対し、CPL投与群は88.9%(16/18)であった。この結果より、CPLはEHECに対して感染防御効果を示すことが示唆された。
(2)EHECの腸管付着に対するCPLの効果
腸管各部位(十二指腸、空・回腸、結腸)における付着菌数および腸管に分泌されたIgAは、CPL投与群と対照群の間には差は認められなかった(図9および図10)。この結果より、CPLは腸管粘膜付着阻止を示さないことが示唆された。
(3)ベロ毒素(VT1、VT2)に対するCPLの効果
CPL投与群および対照群の盲腸内容物中に産生されたベロ毒素(VT1、VT2)を測定した結果を図11に示した。対照群におけるVT1の希釈倍率は64倍であったが、CPL投与群の希釈倍率は32倍であった。また、対照群におけるVT2の希釈倍率は256倍であったが、CPL投与群の希釈倍率は128倍であった。この結果から、CPLはベロ毒素(VT1、T2)量を抑制していることが実証された。以上の結果から、CPL投与群の生存率が高い要因の一つとして、CPLがEHECの産生するベロ毒素量を抑制していることが判明した。
産業上の利用の可能性
本発明のベロ毒素産生抑制剤は、ベロ毒素産生菌(例えば、O−157などの腸管出血性大腸菌)によるベロ毒素の産生を抑制するために使用することができる。また、本発明において有効成分として用いられるポリ乳酸混合物は、生体成分に由来する乳酸の低縮合体であることから、生体適合性が高く、副作用が少ない。
【図面の簡単な説明】
図1は、製造例1で得た生成物のpositiveモードFABMSスペクトルの全体図を示す。Range:m/z 10.0000〜1305.5900
図2は、製造例1で得た生成物のnegativeモードFABMSスペクトルの全体図を示す。Range:m/z 10.0000〜2000.0000
図3は、製造例1で得た生成物のnegativeモードFABMSスペクトルの拡大図を示す。Range:m/z 10.0000〜501.9260
図4は、製造例1で得た生成物のnegativeモードFABMSスペクトルの拡大図を示す。Range:m/z 490.2980〜1003.7700
図5は、製造例1で得た生成物のnegativeモードFABMSスペクトルの拡大図を示す。Range:m/z 999.9500〜1504.3400
図6は、製造例1で得た生成物のnegativeモードFABMSスペクトルの拡大図を示す。Range:m/z 1484.5300〜2000.0000
図7は、製造例1で得た生成物のNMRスペクトルの全体図を示す。
図8は、O−157感染マウスの生存率に及ぼすCPLの効果を示すグラフである。
図9は、EHECの腸管粘膜付着に対するCPLの効果を示す図である。
図10は、分泌型IgAに対するCPLの効果を示す図である。
図11は、盲腸内容物中のベロ毒素(VT1、VT2)に対するCPLの効果を示す図である。
本発明は、ベロ毒素産生抑制剤に関する。より詳細には、本発明は、大腸菌O−157などのベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素の量を抑制することができる医薬品、特定保健用食品又は健康食品等として用いることができるベロ毒素産生抑制剤に関する。
背景技術
1996年、腸管出血性大腸菌による食中毒が日本全国において発生し、腸管出血性大腸菌による溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの発症が社会問題となった。ベロ毒素産生菌の一種である腸管出血性大腸菌による食中毒にみられる下痢、血便、HUSおよび脳症は産生されるベロ毒素(VT)によるものであり、このベロ毒素が人体に重篤な症状を引き起こす。ベロ毒素にはVT1とVT2の2種類があるが、両者とも真核細胞のタンパク質合成を阻害する作用を有する。即ち、ベロ毒素は、細菌が感染した動物の腸管における上皮細胞へ入り、細胞内の28SリボゾームRNAの特定のアデニン残基とリボース残基の間のN−グリコシド結合を加水分解することによりその機能を破壊し、その細胞のタンパク質合成機能を止めて当該細胞を死に至らしめる。この結果、腸管上皮細胞が脱落し、下痢や出血が生じる。また、場合によっては、ベロ毒素が血管内に入って血管内皮細胞を攻撃し、これにより腎障害を引き起こして溶血性尿毒症症候群(HUS)などの重篤な疾患が生じる。
日本において大流行した腸管出血性大腸菌の80%以上がEscherichia coli0157:H7であるが、この他にも腸管出血性大腸菌にはEscherichia coli 0157:H−,0111:H−,026:H11,0128:H2,01:H20,018:H−,0114:H19,0115:H10などを含む多種の大腸菌が見つかっている。また、ベロ毒素は大腸菌のみならず、細菌性赤痢、メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)においても産生されることが知られている。
このようなベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素による疾病の予防及び治療のために、Escherichia coli 0157:H7をはじめとするベロ毒素産生菌の検出方法、疾病発症の作用機作の解明、あるいは有効な治療方法についての研究が進みつつあるが、未だ発症を十分に抑制する方法は見出されておらず、有効な発症抑制方法の確立が望まれている。特に、ベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素による疾病の発症は、免疫機能の低い乳幼児や老人に多いため、これら乳幼児や老人でも摂取しやすく、且つ副作用の少ない安全なベロ毒素産生抑制剤を提供することが望まれていた。
これまでの研究により、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリL−乳酸混合物は、抗悪性腫瘍剤として有用であることが報告されている(特開平9−227388号公報および特開平10−130153号公報)。しかしながら、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物がベロ毒素の産生量に及ぼす効果については報告されていない。
発明の開示
本発明は、例えば大腸菌O−157などのベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素の量を抑制することができる新規なベロ毒素産生抑制剤を提供することを解決すべき課題とした。本発明はまた、上記したベロ毒素産生抑制剤を利用したベロ毒素産生抑制用の飲食品を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決することを目的とした検討を行うために、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を無菌マウスに投与し、大腸菌O−157が産生するベロ毒素の量を測定した。その結果、上記ポリ乳酸混合物は、ベロ毒素の産生量を抑制し、O−157感染マウスの生存率を改善することが判明した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を含むベロ毒素産生抑制剤が提供される。
好ましくは、本発明のベロ毒素産生抑制剤は、O−157などの腸管出血性大腸菌によるベロ毒素産生を抑制するために使用することができる。
好ましくは、ポリ乳酸中における反復単位である乳酸は実質的にL−乳酸から成る。
好ましくは、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物は、ラクチドを式(3):Me−N(R1)(R2)(式中、Meはアルカリ金属を示す。R1及びR2は各々独立に脂肪族基又は芳香族基を示す。)で表される化合物の存在下で重合させることにより製造されるポリ乳酸混合物である。
好ましくは、上記式でMeはリチウムである。好ましくは、上記式でR1及びR2は各々独立に炭素数1から6のアルキル基である。さらに好ましくは、上記式でMeはリチウムであり、R1及びR2はイソプロピル基である。
本発明の別の側面によれば、上記した本発明のベロ毒素産生抑制剤を含む、ベロ毒素産生抑制のための飲食品が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、ベロ毒素産生抑制剤又はベロ毒素産生抑制のための飲食品の製造における、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物の使用が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物の有効量をヒトなどの哺乳動物に投与することを含む、ベロ毒素の産生を抑制するための方法が提供される。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施態様および実施方法について詳細に説明する。
本発明のベロ毒素産生抑制剤は、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を有効成分として含むものであり、例えば、大腸菌O−157等のベロ毒素産生菌が産生するベロ毒素の量を抑制するために使用することができる。本発明のベロ毒素産生抑制剤は、ベロ毒素産生菌の感染に起因する疾患の治療剤や予防剤として使用することができる。
本明細書で言うベロ毒素産生菌の種類は、特に限定されない。例えば、ベロ毒素を産生する大腸菌としては、O−157のほかの例として、O−1、O−18、O−26、O−68、O−111、O−114、O−115、O−119、O−128、O−138、O−145などの血清型を示す菌が挙げられる。また、ベロ毒素を産生する赤痢菌(細菌性赤痢)の例としては、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、フレキシネル赤痢菌(Shigella flexneri)、ボイド赤痢菌(Shigella boydii)、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)などが挙げられる。その他のベロ毒素産生菌としては、メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などが挙げられる。
これらの中でも大腸菌は健康人の腸内フローラを構成する1菌種であり、一部の特殊な病原因子産生能を獲得した大腸菌はヒトの腸管感染症を引き起こす。全国各地で腸管出血性大腸菌(EHEC)O−157:H7感染症の集団発生が多発した1996年以降、集団発生の件数は減少しているが、散発例は依然として続いている。EHECはアフリカミドリザルの腎細胞由来のベロ細胞に強い細胞毒性を示すベロ毒素を主要な病原因子として産生し、感染時には約5%の例で溶血性尿毒症症候群や稀に脳症を合併して重篤になる場合が多い。本発明のベロ毒素産生抑制剤は特に、腸管出血性大腸菌O−157によるベロ毒素の産生を抑制するために使用することができる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤は、ベロ毒素産生菌によるベロ毒素の産生を抑制するのに効果的であり、当該菌に感染する前に予め摂取しておくこともできる。従って、本発明のベロ毒素産生抑制剤は、健康食品や医薬品として日頃から摂取しておくことも好ましい。
本発明のベロ毒素産生抑制剤及びベロ毒素産生抑制のための飲食品においては、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物が有効成分として用いられる。
本明細書で言う「ポリ乳酸混合物」とは、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸が任意の割合で存在する混合物を意味する。即ち、「混合物」という用語は、縮合度3〜20の何れかを有するポリ乳酸の混合物であることを意味すると同時に、環状および鎖状のポリ乳酸の混合物を含む概念としても用いられる。このような「ポリ乳酸混合物」は、本明細書中以下に述べるように、乳酸を脱水縮合し、適当な方法で精製することにより得ることができる。なお、本明細書では便宜上「ポリ乳酸混合物」という用語を用いたが、この中には一定の縮合度を有する環状のポリ乳酸または一定の縮合度を有する鎖状のポリ乳酸といった単一成分から成るポリ乳酸も含まれる。
縮合度とは、ポリ乳酸中における反復単位である乳酸単位の数を意味する。例えば、環状のポリ乳酸は下記の構造式を有することが推測されるが、式中のnが縮合度を表す(即ち、n=3〜20)。
本明細書で単に「乳酸」と称する場合、この乳酸にはL−乳酸、D−乳酸またはこれらの任意の割合の混合物の全てが包含される。本発明においては好ましくは、乳酸は実質的にL−乳酸から成る。ここで言う「実質的に」とは、ポリ乳酸混合物中におけるL−乳酸単位の比率[即ち、(L−乳酸単位数/L−乳酸単位数+D−乳酸単位数)×100]が、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上であることを意味する。なお、ポリ乳酸混合物中におけるL−乳酸単位の比率は、出発物質として使用する乳酸中に存在するL−乳酸とD−乳酸の比率に依存する。
縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、特開平9−227388号公報、特開平10−130153号公報、または特願平11−39894号明細書(これらの特許明細書に記載の内容は全て引用により本明細書の開示として含める。)などに記載の製造方法により得ることができる。
より具体的には、例えば、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物は、下記の方法Aにより得ることができる。
方法A:
先ず、乳酸(好ましくは、実質的にL−乳酸から成る乳酸)を不活性雰囲気下で脱水縮合させる。不活性雰囲気としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、窒素ガスを用いるのが好ましい。
脱水縮合反応は、常圧〜1mmHg程度の減圧下、110〜210℃、好ましくは130〜190℃の温度で行われるが、段階的減圧および段階的昇温によって行うのが特に好ましい。反応時間は適宜設定できるが、例えば1〜20時間反応を行うことができる。段階的減圧および段階的昇温を用いる場合には、反応時間を2以上から成る部分的な反応時間に分け、それぞれの部分において圧力と温度を設定して反応を行う。段階的減圧を用いる場合は、例えば、常圧→150mmHg→3mmHgと減圧することができ、段階的昇温を用いる場合は、例えば、145℃→155℃→185℃と昇温することができる。実際には、これらを組み合わせて、例えば、145℃で常圧で3時間、145℃で150mmHgで3時間、155℃で3mmHgで3時間そして185℃で3mmHgで1.5時間反応を行うことができる。
次いで、この脱水縮合反応により得られた反応混合物にエタノールおよびメタノールを加え、濾過して濾液を乾燥してエタノールおよびメタノール可溶分が得られる。即ち、本明細書で言う「エタノールおよびメタノール可溶分」とはエタノールとメタノールの混合液に可溶な画分を意味する。なお、エタノールおよびメタノール可溶分を得る際には、脱水縮合反応の反応混合物をエタノールおよびメタノールと混合するが、その際のエタノールとメタノールの比率は適宜設定することができ、例えばエタノール:メタノール=1:9である。なお、反応混合物にエタノールとメタノールを添加する順番、方法などは限定されず、適宜選択することができ、例えば、脱水縮合反応の反応混合物に先ずエタノールを添加し、次いでメタノールを添加することができる。
上記で得られたエタノール・メタノール可溶分を逆相カラムクロマトグラフィー、特にオクタデシルシラン(ODS)カラムを用いたクロマトグラフィーに付し、まずpH2〜3の25〜50重量%のアセトニトリル水溶液で溶離する画分を除去し、次いでpH2〜3の90重量%以上のアセトニトリル水溶液、好ましくは99重量%以上のアセトニトリル水溶液で溶離してくる画分を採取すると、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物が得られる。
上記のようにして得られた環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ物質で中和し、減圧乾燥後、常法により下記に述べるような所望の形態に製剤化することができる。
本発明で用いる縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を製造するための別法としては、例えば、特願平11−265715号明細書に記載された方法(方法Bとする)または特願平11−265732号明細書に記載された方法(方法Cとする)を挙げることができる(これらの特許明細書に記載の内容は全て引用により本明細書の開示として含める。)。以下、方法Bおよび方法Cについて具体的に説明する。
方法B:
この方法は、ラクチドをRYLi(式中、Rは脂肪族基又は芳香族基を示し、Yは酸素原子又はイオウ原子を示す)で表されるリチウム化合物の存在下で重合させることによって環状乳酸オリゴマーを製造する方法である。重合反応を実施する場合、リチウム化合物(RYLi)の使用割合は、ラクチド1モル当たり、1〜0.1モル、好ましくは0.2〜0.3モルの割合である。反応温度は−100〜0℃、好ましくは−78〜−50℃である。反応は、−78〜−50℃の温度で開始し、徐々に室温にまで昇温させるように実施するのが好ましい。反応は、好ましくは反応溶媒の存在下で実施される。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン等の環状エーテルの他、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン等を用いることができる。反応雰囲気としては、窒素ガスやアルゴン等の不活性ガス雰囲気が用いられる。反応圧力は特に制約されず、好ましくは常圧である。
なお、上記のようにして得られる乳酸オリゴマーの組成(即ち、環状乳酸オリゴマーと鎖状乳酸オリゴマーの混合比率)は、反応助剤として用いるリチウム化合物によって変動する。リチウム化合物として炭素数1〜3のアルキルアルコールのリチウム化合物(ROLi)(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基)を用いる場合には、環状乳酸オリゴマーと鎖状オリゴマーとの混合物(環状乳酸オリゴマーの割合:80〜85重量%)が得られる。一方、リチウム化合物としてt−ブチルアルコール等の炭素数4以上のアルキルアルコールのリチウム化合物や、チオフェノール化合物を用いるときには、実質的に環状乳酸オリゴマーのみを選択的に得ることができる。
方法C:
この方法は、(i)乳酸を350〜400mmHgの圧力条件で120〜140℃の範囲の温度に加熱し、脱水縮合反応させるとともに、ラクチドを留出させずに副生水のみを留出除去する第1加熱工程、
(ii)該第1加熱工程終了後、反応生成物を150〜160℃の温度に加熱し、該反応圧力を降圧速度0.5〜1mmHg/分で15〜20mmHgまで降下させるとともに、その降圧に際し、ラクチドの留出を回避させながら副生水のみを留出除去し、該反応圧力が15〜20mmHgに降下後、同圧力条件及び反応温度150〜160℃においてさらに反応を継続して鎖状乳酸オリゴマーを主成分とする脱水縮合物を生成させる第2加熱工程、
(iii)該第2加熱工程終了後、0.1〜3mmHgの圧力条件で150〜160℃で加熱して該鎖状乳酸オリゴマーを環化させ、環状オリゴマーを生成させる第3加熱工程、
からなることを特徴とする方法である。
この方法では先ず、第1加熱工程において、減圧下において乳酸を加熱し、脱水縮合反応させる。この場合の反応時間は3〜12時間、好ましくは5〜6時間である。この第1加熱下での反応は、その反応を円滑に進行させるために、乳酸の脱水縮合により生成する副生水を留去させるが、この場合、乳酸2分子の脱水縮合物であるラクチドが留去しないように実施する。このためには、反応圧力を減圧、好ましくは300〜500mmHg、より好ましくは350〜400mmHgに保持し、この圧力条件下において、100〜140℃、好ましくは130〜140℃の範囲に加熱するのがよい。この第1加熱工程での反応により、主に、乳酸の3〜23分子の脱水縮合物を主成分とする反応生成物が生じる。
上記第1加熱工程の終了後、第2加熱工程において、高められた平均重合度のオリゴマーが得られるように、前記第1加熱工程における反応温度よりも高められた温度、好ましくは145〜180℃、より好ましくは150〜160℃の温度に加熱するとともに、反応圧力を10〜50mmHg、好ましくは15〜20mmHgの圧力に降下させてさらに脱水縮合反応を継続する。
この反応も、前記第1加熱工程の反応の場合と同様に、反応を円滑に進行させるために副生水を留去させるが、ラクチドが留去しない条件で実施する。反応圧力を前記範囲の圧力にまで降下させる速度(降圧速度)は、ラクチドの留出を回避し、且つ反応効率を高めるためには、0.25〜5mmHg/分、好ましくは0.5〜1mmHg/分の範囲に保持することが通常は必要である。前記範囲より低い降圧速度では、その所定圧まで降圧させるのに必要な時間が長くなるため好ましくなく、一方、前記範囲より高い降圧速度では、ラクチドが副生水とともに留去するようになるので好ましくない。
反応圧力が所定圧力にまで降下後、この反応圧力において、さらに反応を継続する。この場合の加熱時間は、3〜12時間、好ましくは5〜6時間である。
前記第2加熱工程での反応により、平均重合度が3〜30、好ましくは3〜23の乳酸オリゴマーが得られるが、この場合のオリゴマー中の環状オリゴマーの割合は、通常、70〜80重量%程度である。
上記第2加熱工程終了後、第3加熱工程において、反応圧力を0.25〜5mmHg、好ましくは0.5〜1mmHgに保持し、145〜180℃、好ましくは150〜160℃の温度でさらに反応を継続する。反応時間は3〜12時間、好ましくは5〜6時間である。この場合に生じる副生水も留去させる。この場合、ラクチドの留去も回避させることが好ましいが、反応生成物にはラクチドは殆んど含まれないので、その降圧速度を格別遅くする必要はない。
前記第3加熱工程での反応により、平均重合度3〜30、好ましくは3〜23で、かつ環状オリゴマーの割合が90重量%以上、好ましくは99重量%以上の乳酸オリゴマーが生成される。
方法D:
本発明の特に好ましい態様では、ラクチドを式(3):Me−N(R1)(R2)(式中、Meはアルカリ金属を示す。R1及びR2は各々独立に脂肪族基又は芳香族基を示す。)で表される化合物の存在下で重合させることにより製造されるポリ乳酸混合物を使用する。以下、式(3):Me−N(R1)(R2)について説明する。
式(3)において、Meはアルカリ金属を示し。R1及びR2は各々独立に脂肪族基又は芳香族基を示す。
ここで脂肪族基としては、炭素数1から12、好ましくは1から6の直鎖状、分枝状、環状又はそれらの組み合わせの飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、オクチル、ドデシル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロオクチル、シクロドデシル等のシクロアルキル基が挙げられる。脂肪族基は二重結合または三重結合を有する不飽和の炭化水素基でもよい。
ここで芳香族基としては、炭素数は6〜30、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜12、さらに好ましくは6〜10のアリール基及びアリールアルキル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル、トリル、ナフチル等が挙げられ、アリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル等が挙げられる。
脂肪族基および芳香族基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基の種類は特に限定されないが、例えば、直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキル基、直鎖または分岐、鎖状または環状のアルケニル基、直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキニル基、アリール基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アミノ基、アンモニオ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホ基、メルカプト基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ウレイド基、複素環基(例えば、窒素、酸素およびイオウ等を少なくとも1個以上含み、3ないし12員環の単環、縮合環)、複素環オキシ基、複素環チオ基、アシル基、スルファモイルアミノ基、シリル基、ハロゲン原子などが挙げられる。上記においてアルキル、アルケニル、アルキニル及びアルコキシの炭素数は一般的には1から12であり、好ましくは1から6であり、アリールの炭素数は一般的には6から20であり、好ましくは6から10である。
式(3)おいて、Meはアルカリ金属を示す。アルカリ金属としては、例えば、Li、Na又はKが挙げられ、好ましくはLiである。
式(3)で表される化合物で不斉炭素を有するものは、各々(R)体、(S)体、(R),(S)体の何れでもよい。
式(3)で表されるアルカリ金属化合物の入手方法は特に限定されず、当業者であれば適宜入手できる。ジイソプロピルアミン等のジアルキルアミンとn−ブチルリチウム等のアルキル化アルカリ金属を反応させることによって得ることができる。より具体的には、この反応は、例えば、窒素雰囲気下などの反応に不活性な条件下において、THF等の不活性溶媒中にジアルキルアミンを含む溶液と、ヘキサン等の不活性溶媒中にアルキル化アルカリ金属を含む溶液とを混合して攪拌することで行うことができる。反応温度は、反応が進行する限り特に限定されないが、好ましくは−78℃から室温である。反応時間は適宜設定できる。
ラクチドを式(3)の化合物の存在下で重合させる場合、式(3)の化合物(Me−N(R1)(R2))の使用量は、ラクチド1モル当たり好ましくは1〜0.1モルであり、より好ましくは0.2〜0.3モルである。
ラクチドの重合反応を行う際の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されないが、好ましくは−100℃〜室温であり、より好ましくは−78℃〜室温である。
ラクチドの重合反応は、好ましくは反応溶媒の存在下で実施される。反応溶媒は反応に不活性な溶媒であれば特に制限されないが、好ましくはテトラヒドロフラン等の環状エーテル、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン等を用いることができる。反応雰囲気としては、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気を使用することができる。反応圧力は特に制約されず、好ましくは常圧である。
上記方法で得られる鎖状及び環状の乳酸オリゴマー混合物の組成は、反応助剤として用いる式(3)の化合物の種類や反応条件などによって変化するが、好ましくは、環状乳酸オリゴマーよりも鎖状乳酸オリゴマーの含有量が高い。
上記した方法によれば、下記式(1)又は(2):
(式中、mは1〜18の整数を示し、nは1〜18の整数を示す)
で表される鎖状及び環状の乳酸オリゴマー混合物が製造される。
なお、上記方法A、B、C及びDは本発明で用いるポリ乳酸混合物の製造方法の具体例の一部を示したものにすぎず、本発明においては他の方法で製造されたポリ乳酸混合物を用いることもできる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤は、前記の必須成分に加えてさらに必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲内で、医薬品類、医薬部外品類などの製剤に使用される成分や添加剤を任意に選択・併用して製造することができる。本発明のベロ毒素産生抑制剤は、単独の医薬品類として使用できる以外に、医薬品類や医薬部外品類などに配合して用いることもできる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤の形態は特に限定されず、経口投与又は非経口投与用の製剤形態の中から目的に最も適した適宜の形態のものを選択することが可能である。
経口投与に適した製剤形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、ドリンク剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、溶液剤、乳剤、懸濁剤、チュアブル剤などを挙げることができ、非経口投与に適する製剤形態としては、例えば、注射剤(皮下注射、筋肉内注射、又は静脈内注射など)、外用剤、点滴剤、吸入剤、噴霧剤などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
経口投与に適当な液体製剤、例えば、溶液剤、乳剤、又はシロップ剤などは、水、ショ糖、ソルビット、果糖などの糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを用いて製造することができる。また、カプセル剤、錠剤、散剤、又は顆粒剤などの固体製剤の製造には、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニットなどの賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを用いることができる。
非経口投与に適当な注射用又は点滴用の製剤は、好ましくは、受容者の血液と等張な滅菌水性媒体に有効成分である上記の物質を溶解又は懸濁状態で含んでいる。例えば、注射剤の場合、塩溶液、ブドウ糖溶液、又は塩水とブドウ糖溶液との混合物からなる水性媒体などを用いて溶液を調製することができる。腸内投与のための製剤は、例えば、カカオ脂、水素化脂肪、又は水素化カルボン酸などの担体を用いて調製することができ、座剤として提供される。また、噴霧剤の製造には、有効成分である上記の物質を微細な粒子として分散させることができ、受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ有効成分の吸収を容易ならしめる担体を用いることができる。担体としては、具体的には、乳糖又はグリセリンなどが例示される。有効成分である物質及び使用する担体の性質に応じて、エアロゾル又はドライパウダーなどの形態の製剤が調製可能である。これらの非経口投与用製剤には、グリコール類、油類、フレーバー類、防腐剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1種又は2種以上の飲食品を添加することもできる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤の投与量及び投与回数は、投与の目的、投与形態、摂取者の年齢、体重又は性別などの条件などを含む種々の要因により適宜設定することができるが、一般的には、有効成分の投与量として一日当り1〜10,000mg/kg、好ましくは10〜2000mg/kg、より好ましくは10〜200mg/kgである。上記投与量の製剤を一日1〜4回程度に分けて投与することが好ましい。
本発明のベロ毒素産生抑制剤の投与時期は特に限定されず、ベロ毒素産生菌の感染の前でも後でもよい。
本発明はさらに、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を含むベロ毒素産生抑制のための飲食品にも関する。即ち、本発明で用いる縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物は、上記したような単独の製剤の形態で使用するのみならず、飲食品の中に配合して用いることができる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤のための飲食品は、ポリ乳酸混合物を分解させることなく配合し得るものであれば、その配合形態には特に制限はない。
本発明によるベロ毒素産生抑制剤のための飲食品の製品の具体例としては、清涼飲料、ドリンク剤、健康食品、特定保健用食品、機能性食品、機能活性型食品、栄養補助食品、サプレメント、飼料、飼料添加物などと一般に呼称される、飲料を含む健康食品または補助食品が挙げられる。
飲食品の具体例としては、例えば、チューインガム、チョコレート、キャンディー、錠菓、ゼリー、クッキー、ビスケット、ヨーグルト等の菓子類、アイスクリーム、氷菓等の冷菓類、茶、清涼飲料(ジュース、コーヒー、ココア等を含む)、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等の飲料、パン、ハム、スープ、ジャム、スパゲティー、冷凍食品など任意の飲食品を挙げることができる。あるいは、本発明で用いるポリ乳酸混合物は調味料又は食品添加剤などに添加して用いることもできる。本発明のベロ毒素産生抑制のための飲食品を摂取することによりベロ毒素産生抑制効果が発揮され、実質的に有害な副作用を示さない安全な飲食品を提供することができる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤のための飲食品は、ポリ乳酸混合物を、食品に使われる一般的な原料に直接混合、分散したのち、公知の方法により所望の形態に加工することによって得ることができる。
本発明のベロ毒素産生抑制剤のための飲食品はあらゆる形態の飲食品を包含するものであり、その種類は特に制限されず、上記したような各種飲食物、あるいは各種栄養組成物、例えば各種の経口又は経腸栄養剤や飲料等に、本発明のベロ毒素産生抑制剤剤を配合して飲食品として提供することができる。このような飲食品の組成としては、縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物の他に、蛋白質、脂質、糖質、ビタミン及び/又はミネラル類などを含めることができる。飲食品の形態は特に限定されず、摂取しやすい形態であれば、固形、粉末、液体、ゲル状、スラリー状等のいずれであってもよい。
飲食品中におけるポリ乳酸混合物の含有量は特には限定されないが、一般的には0.1〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%程度である。
飲食品に含まれるポリ乳酸混合物の量は、本発明の目的とするベロ毒素産生抑制作用を発揮できる程度に含まれることが好ましく、好ましくは摂取される飲食物1食中に0.1gから10g程度、より好ましくは0.5gから3g程度である。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によっていかなる点においても限定されることはない。
実施例
製造例1:ポリ乳酸混合物(以下、CPLとも称する)の製造
製造例1の反応図を以下に示す。
窒素雰囲気下、0℃でジイソプロピルアミン0.101g(1mmol)の5mL THF溶液にn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)0.63mL(1mmol)を加え、10分間攪拌し、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)とした後、L−(−)−ラクチド0.577g(4mmol)の4mL THF溶液を加え、15分間攪拌し反応させた。この反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液20mLを加え、反応を処理し、さらに水10mLを加えた。THF(50mL)で5回抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾別した後、有機溶媒を減圧濃縮し、粗生成物0.53gを得た。得られた粗生成物にエーテル6mLを加え、超音波洗浄器にて10分間浸漬し、濾過し、融点125〜129℃の白色固体生成物0.39gを得た。
得られた生成物の物性データを図1から図7に示す。図1から図7に示したFABMS及びNMRデータから、固体生成物中に3量体から21量体の環状乳酸オリゴマーと3量体から27量体の鎖状乳酸オリゴマーが存在することが確認された。
試験例1:
(材料および方法)
実験動物は5〜12週齢の無菌BALB/c系マウス(日本クレア)を用いた。CPL群は0.1%のCPL(製造例1で製造したもの)を混入させた標準固形餌(CE−2)をあらかじめ高圧蒸気滅菌(121℃、10分間)し、滅菌水道水とともに自由摂取させた。また、対照群は放射線滅菌(コバルト60)した標準固形餌(CE−2)を滅菌水道水とともに自由摂取させた。実験に用いたすべてのマウスはビニール・アイソレーター内で飼育管理された。
EHEC(5.0×106cfu/マウス)はCPLの投与を開始してから7日目に胃ゾンデを用いて経口投与し、生死を観察した。
腸管付着阻止実験として、EHECを無菌マウスに感染させた後4日目に屠殺し、腸管各部位(十二指腸、空・回腸、大腸)を約4cmの長さに切り、腸管を開き、内容物を十分にPBSで洗浄した。腸管の水分を濾紙で吸い取り、重量を計測し、10倍量のPBSを加えてホモジナイズし、その0.1mlを普通寒天培地上に塗抹して集落数を数えた。
また、大腸菌ベロドキシン検出用キット(デンカ生研)を用いて、盲腸内容物中に産生されたベロ毒素(VT1、VT2)、IgAキットを用いて、腸管に分泌されるIgAを測定した。
(結果および考察)
(1)EHEC感染マウスの生存率に対するCPLの効果
CPL投与群および対照群における生死観察(生存率)の結果を図8に示す。15日間の観察期間におけるEHEC感染マウスの生存率は対照群20%(2/10)であったのに対し、CPL投与群は88.9%(16/18)であった。この結果より、CPLはEHECに対して感染防御効果を示すことが示唆された。
(2)EHECの腸管付着に対するCPLの効果
腸管各部位(十二指腸、空・回腸、結腸)における付着菌数および腸管に分泌されたIgAは、CPL投与群と対照群の間には差は認められなかった(図9および図10)。この結果より、CPLは腸管粘膜付着阻止を示さないことが示唆された。
(3)ベロ毒素(VT1、VT2)に対するCPLの効果
CPL投与群および対照群の盲腸内容物中に産生されたベロ毒素(VT1、VT2)を測定した結果を図11に示した。対照群におけるVT1の希釈倍率は64倍であったが、CPL投与群の希釈倍率は32倍であった。また、対照群におけるVT2の希釈倍率は256倍であったが、CPL投与群の希釈倍率は128倍であった。この結果から、CPLはベロ毒素(VT1、T2)量を抑制していることが実証された。以上の結果から、CPL投与群の生存率が高い要因の一つとして、CPLがEHECの産生するベロ毒素量を抑制していることが判明した。
産業上の利用の可能性
本発明のベロ毒素産生抑制剤は、ベロ毒素産生菌(例えば、O−157などの腸管出血性大腸菌)によるベロ毒素の産生を抑制するために使用することができる。また、本発明において有効成分として用いられるポリ乳酸混合物は、生体成分に由来する乳酸の低縮合体であることから、生体適合性が高く、副作用が少ない。
【図面の簡単な説明】
図1は、製造例1で得た生成物のpositiveモードFABMSスペクトルの全体図を示す。Range:m/z 10.0000〜1305.5900
図2は、製造例1で得た生成物のnegativeモードFABMSスペクトルの全体図を示す。Range:m/z 10.0000〜2000.0000
図3は、製造例1で得た生成物のnegativeモードFABMSスペクトルの拡大図を示す。Range:m/z 10.0000〜501.9260
図4は、製造例1で得た生成物のnegativeモードFABMSスペクトルの拡大図を示す。Range:m/z 490.2980〜1003.7700
図5は、製造例1で得た生成物のnegativeモードFABMSスペクトルの拡大図を示す。Range:m/z 999.9500〜1504.3400
図6は、製造例1で得た生成物のnegativeモードFABMSスペクトルの拡大図を示す。Range:m/z 1484.5300〜2000.0000
図7は、製造例1で得た生成物のNMRスペクトルの全体図を示す。
図8は、O−157感染マウスの生存率に及ぼすCPLの効果を示すグラフである。
図9は、EHECの腸管粘膜付着に対するCPLの効果を示す図である。
図10は、分泌型IgAに対するCPLの効果を示す図である。
図11は、盲腸内容物中のベロ毒素(VT1、VT2)に対するCPLの効果を示す図である。
Claims (9)
- 縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物を含むベロ毒素産生抑制剤。
- 腸管出血性大腸菌によるベロ毒素産生を抑制するために使用する、請求項1に記載のベロ毒素産生抑制剤。
- 腸管出血性大腸菌O−157によるベロ毒素産生を抑制するために使用する、請求項1又は2に記載のベロ毒素産生抑制剤。
- ポリ乳酸中における反復単位である乳酸が実質的にL−乳酸から成る、請求項1から3の何れか1項に記載のベロ毒素産生抑制剤。
- 縮合度3〜20の環状及び/又は鎖状のポリ乳酸混合物が、ラクチドを式(3):Me−N(R1)(R2)(式中、Meはアルカリ金属を示す。R1及びR2は各々独立に脂肪族基又は芳香族基を示す。)で表される化合物の存在下で重合させることにより製造されるポリ乳酸混合物である、請求項1から4の何れかに記載のベロ毒素産生抑制剤。
- Meがリチウムである、請求項5に記載のベロ毒素産生抑制剤。
- R1及びR2が各々独立に炭素数1から6のアルキル基である、請求項5又は6に記載のベロ毒素産生抑制剤。
- Meがリチウムであり、R1及びR2がイソプロピル基である、請求項5から7の何れかに記載のベロ毒素産生抑制剤。
- 請求項1から8の何れかに記載のベロ毒素産生抑制剤を含む、ベロ毒素産生抑制のための飲食品。
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