JPWO2003042237A1 - ペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩、その製造法並びにその用途 - Google Patents

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Abstract

本発明は、一般式(I)[式中、Xは、−CH(OH)−又は−CO−を示す。R1は、水素原子であるか又はアミノ基の保護基を示す。R2は、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。R3及びR4の一方はアミノ基が保護基で保護されていてもよいリジンのR基側鎖を示し、R3及びR4の他方はグアニジノ基が保護基で保護されていてもよいアルギニンのR基側鎖を示す。R5及びR6は、同一又は相異なって、水素原子、低級アルキル基又はアラルキル基を示す。]で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩、その製造法並びにその用途を提供するものである。

Description

技 術 分 野
本発明は、新規ペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩、その製造法並びにその用途に関する。
背 景 技 術
多くの歯周病は、歯周局所の常在微生物によって惹起される一種の感染症と考えられている。その中でも、特にグラム陰性嫌気性桿菌のポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingibvalis,以下「P.ジンジバリス」と略す。)が成人性歯周炎、急速進行性歯周炎において最も重要な病因菌であることが明かにされている(J.Clin.Periodontol.,15,85−93,1988、同316−323,1988、J.Dent.Res.,63,441−451,1984)。近年、P.ジンジバリスが産生するプロテアーゼ群が、コラーゲンをはじめとする歯周組織成分や生体防御系に関与する血清蛋白質を分解することが知られ、P.ジンジバリスの病原性と深く関係していることが、明らかにされている(Greiner D.,Mayrand D.:Biology of the Species Porphyromonas Gingivalis,Edited by Shah H.N.,Mayrand D.and Genco R.J.,pp227−243,CRC Press,Boca Raton,Ann Arbor,London,Tokyo,1993)。
P.ジンジバリスが産生するトリプシン様プロテアーゼ活性を有する蛋白質分解酵素には数種類が知られているが、それらのうち、リジル−ジンジパイン(Lys−gingipain、以下「KGP」と略すことがある。)とアルグ−ジンジパイン(Arg−gingipain、以下「RGP」と略すことがある。)が主たる蛋白質分解酵素であり、これらの酵素は高分子キニノーゲンやフィブリノーゲンに対して高い分解活性があることが知られており、菌の定着、歯周病の発現や歯周組織の破壊に関与するものと考えられている(J.Biol.Chem.,269,406−411,1994)。
従来より、歯周病の予防及び治療には細菌の生育を阻害するような薬剤、例えば、テトラサイクリン、ミノサイクリン等の抗生物質、カミツレチンキ、ラタニアチンキ等の天然物、シクロヘキサジン、トラネキサム酸等が利用されている。しかしながら、これらの薬剤には安全性に問題があったり、不快臭を伴う等の種々の問題が残されている。また、特開平5−97708号公報にはATPase阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤等を有効成分とする歯周病治療剤が、特開平11−139947号及び特開2000−191487号公報にはマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤を有効成分とする口腔用組成物が開示されているが、該治療剤や該組成物の抗歯周病効果は満足のいくものではなかった。また、最近、RGPの選択的な阻害剤として、特開平11−335274号公報記載のマラバリコンC、特開平11−228526号公報記載のアルギニン誘導体が公知であり、KGPの選択的な阻害剤としては、組織培養工学,27(9),343−347,2001に記載のリジン誘導体が公知である。
しかしながら、これらの報告には、KGP及びRGPの両酵素を同時に阻害する化合物についての記載はない。
発 明 の 開 示
本発明の目的は、KGP及びRGPの両酵素を強力に阻害する活性を有し、歯周病の予防剤及び治療剤等として有用な新規化合物及びその製造法を提供することにある。
本発明の他の目的は、KGP及びRGPの両酵素の新規な阻害剤、歯周病用薬剤及び口腔用組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、歯周病の新規な予防方法及び治療方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、以下の記載により明らかにされるであろう。
本発明者は、歯周病の発生と進行にP.ジンジバリスが密接に関与していること、P.ジンジバリスの歯周病に関与する成分には蛋白質分解酵素であるKGP及びRGPの両酵素が寄与していることに着目し、有効な歯周病の予防剤及び治療剤を得るべく鋭意研究を重ねた。その結果、蛋白質分解酵素であるKGP及びRGPの両酵素の活性を強力に阻害する新規なペプチド誘導体を見出した。本発明は、かかる新知見に基づき、更に種々検討を重ねて、完成されたものである。
本発明は、以下の、KGP及びRGPの両酵素に対して阻害作用を有する新規ペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩、その製造法並びにその用途を、提供するものである。
1.一般式(I)
Figure 2003042237
[式中、Xは、−CH(OH)−又は−CO−を示す。Rは、水素原子であるか又はアミノ基の保護基を示す。Rは、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。R及びRの一方はアミノ基が保護基で保護されていてもよいリジンのR基側鎖を示し、R及びRの他方はグアニジノ基が保護基で保護されていてもよいアルギニンのR基側鎖を示す。R及びRは、同一又は相異なって、水素原子、低級アルキル基又はアラルキル基を示す。]で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩。
2.一般式(I)において、Xが−CO−である上記項1に記載のペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩。
3.一般式(I)において、Xが−CO−であり、Rが水素原子又は置換基を有してもよいアラルキルオキシカルボニル基であり、Rが水酸基又は低級アルコキシ基であり、R及びRの一方がリジンのR基側鎖で、R及びRの他方がグアニジノ基がニトロ基で保護されていてもよいアルギニンのR基側鎖であり、R及びRが、同一又は相異なって、水素原子又はアラルキル基である上記項2に記載のペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩。
4.一般式(I)において、Xが−CO−であり、Rがベンジルオキシカルボニル基であり、Rが水酸基又はt−ブトキシ基であり、RがリジンのR基側鎖であり、Rがグアニジノ基がニトロ基で保護されたアルギニンのR基側鎖であり、Rが水素原子であり、Rがフェネチル基である上記項3に記載のペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩。
5.一般式(I)
Figure 2003042237
[式中、Xは、−CH(OH)−又は−CO−を示す。Rは、水素原子であるか又はアミノ基の保護基を示す。Rは、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。R及びRの一方はアミノ基が保護基で保護されていてもよいリジンのR基側鎖を示し、R及びRの他方はグアニジノ基が保護基で保護されていてもよいアルギニンのR基側鎖を示す。R及びRは、同一又は相異なって、水素原子、低級アルキル基又はアラルキル基を示す。]で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩を製造する方法であって、下記工程(i)で示される製造方法。
(i)一般式(II)
Figure 2003042237
(式中、R及びRは前記に同じ。R2aは低級アルコキシ基を示す。)で表される化合物と、一般式(III)
Figure 2003042237
(式中、R、R及びRは前記に同じ。)で表される化合物を、縮合反応させることによる、一般式(I−a)
Figure 2003042237
(式中、R、R2a、R、R、R及びRは前記に同じ。)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩の製造法。
6.前記一般式(I)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩を製造する方法であって、下記工程(ii)で示される製造方法。
(ii)上記一般式(I−a)で表される化合物を、酸化することによる、一般式(I−b)
Figure 2003042237
(式中、R、R2a、R、R、R及びRは前記に同じ。)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩の製造法。
7.前記一般式(I)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩を製造する方法であって、下記工程(iii)で示される製造方法。
(iii)上記一般式(I−a)で表される化合物又は一般式(I−b)で表される化合物を、酸処理することによる、一般式(I−c)
Figure 2003042237
(式中、X、R、R、R、R及びRは前記に同じ。)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩の製造法。
8.上記項1に記載の一般式(I)で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を有効成分とするアルグ−ジンジパイン及びリジル−ジンジパインの阻害剤。
9.上記項1に記載の一般式(I)で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を有効成分とする歯周病用薬剤。
10.上記項1に記載の一般式(I)で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種及び薬学的に許容される担体を含有する口腔用組成物。
11.ヒトを含む哺乳動物に、上記項8に記載のアルグ−ジンジパイン及びリジル−ジンジパインの阻害剤の有効量を投与する歯周病の予防方法。
12.ヒトを含む哺乳動物に、上記項9に記載の歯周病用薬剤の有効量を投与する歯周病の予防方法。
13.ヒトを含む哺乳動物に、上記項10に記載の口腔用組成物の有効量を投与する歯周病の予防方法。
14.歯周病を有するヒトを含む哺乳動物に、上記項8に記載のアルグ−ジンジパイン及びリジル−ジンジパインの阻害剤の有効量を投与する歯周病の治療方法。
15.歯周病を有するヒトを含む哺乳動物に、上記項9に記載の歯周病用薬剤の有効量を投与する歯周病の治療方法。
16.歯周病を有するヒトを含む哺乳動物に、上記項10に記載の口腔用組成物の有効量を投与する歯周病の治療方法。
17.上記項8に記載のアルグ−ジンジパイン及びリジル−ジンジパインの阻害剤の製造のための上記項1に記載のペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の使用。
18.上記項9に記載の歯周病用薬剤の製造のための上記項1に記載のペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の使用。
19.上記項10に記載の口腔用組成物の製造のための上記項1に記載のペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の使用。
上記一般式(I)において、Rで示されるアミノ基の保護基としては、生体及び合成反応に影響しないものであれば特に制限はなく、通常利用されているアミノ基の保護基、例えば、T.W.Greene,”Protective groups in Organic Synthesis”,A Wiley−Interscience Publication,John−Wiley & Sons,New York,1981,pp218−287に記載の保護基が適当である。具体的には、置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよい低級アルキルオキシカルボニル基、置換スルホニル基、アセチル基、ベンジル基、1−アダマンチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz);p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、p−エトキシベンジルオキシカルボニル基等の置換基として炭素数1〜4の低級アルコキシ基を1〜3個有するベンジルオキシカルボニル基;p−ニトロベンジルオキシカルボニル基等の置換基としてニトロ基を1個有するベンジルオキシカルボニル基;p−ブロモベンジルオキシカルボニル基、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル基等の置換基としてハロゲン原子を1〜3個有するベンジルオキシカルボニル基;ジフェニルメトキシカルボニル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい低級アルキルオキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基(Boc)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基等の置換基としてハロゲン原子を1〜3個有してもよい炭素数2〜7の直鎖又は分枝状の低級アルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
置換スルホニル基としては、例えば、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝状の低級アルキル基が1〜3個置換していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の直鎖又は分枝状の低級アルキル基等が1個置換したスルホニル基が挙げられる。
で示されるアミノ基の保護基としては、好ましくは置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基又は置換基を有していてもよい低級アルキルオキシカルボニル基であり、より好ましくは置換基として低級アルコキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子を有してもよいベンジルオキシカルボニル基、又は置換基としてハロゲン原子を有してもよい炭素数2〜7の直鎖又は分枝状の低級アルキルオキシカルボニル基であり、更に好ましくはベンジルオキシカルボニル基又は2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基である。
で示される低級アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝状の低級アルコキシ基が挙げられ、好ましくはt−ブトキシ基である。
又はRで示されるリジンのR基側鎖とは、リジンのα−炭素原子に結合している側鎖又は残基のことで、4−アミノブチル基のことである。該R基側鎖のアミノ基は保護基で保護されていてもよい。かかる保護基としては、上述のアミノ基の保護基が例示でき、好ましくは上述の置換基としてハロゲン原子を1〜3個有してもよい炭素数2〜7の直鎖又は分枝状の低級アルキルオキシカルボニル基であり、より好ましくは無置換の炭素数2〜7の直鎖又は分枝状の低級アルキルオキシカルボニル基であり、更に好ましくはt−ブトキシカルボニル基である。
アルギニンのR基側鎖とは、アルギニンのα−炭素原子に結合している側鎖又は残基のことで、3−グアニジノプロピル基のことである。該R基側鎖のグアニジノ基は保護基で保護されていてもよい。かかる保護基としては、生体及び合成反応に影響しないものであれば特に制限はなく、通常利用されているグアニジノ基の保護基、例えば、T.W.Greene,”Protective groups in Organic Synthesis”,A Wiley−Interscience Publication,John−Wiley & Sons,New York,1981,pp218−287に記載の保護基が適当である。具体的には、ニトロ基;パラトルエンスルホニル基、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝状の低級アルキル基が1〜3個置換していてもよいフェニル基、炭素数1〜6の直鎖又は分枝状の低級アルキル基が1〜6個置換していてもよいクロマン基等が1個置換したスルホニル基;ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、1−アダマンチルオキシカルボニル基等のアラルキル基、アダマンチル基等が1個置換したオキシカルボニル基等が挙げられ、好ましくはニトロ基である。
又はRで示される低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1−エチルブチル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝状の低級アルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基である。
アラルキル基としては、例えば、フェニル−C−Cアルキル基、特にベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物において好ましい化合物としては、Xが−CO−である化合物である。より好ましくは、Xが−CO−であり、Rが水素原子又は置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基であり、Rが水酸基又は炭素数1〜6の直鎖又は分枝状の低級アルコキシ基であり、R及びRの一方がリジンのR基側鎖で、R及びRの他方がグアニジノ基がニトロ基で保護されていてもよいアルギニンのR基側鎖であり、R及びRが、同一又は相異なって、水素原子又はアラルキル基である化合物である。更に好ましくは、Xが−CO−であり、Rがベンジルオキシカルボニル基であり、Rが水酸基又はt−ブトキシ基であり、RがリジンのR基側鎖であり、Rがグアニジノ基がニトロ基で保護されたアルギニンのR基側鎖であり、Rが水素原子であり、Rがフェネチル基である化合物である。
本発明化合物の薬学的に許容される塩としては、特に制限はなく、薬学的に許容される酸を作用させた酸付加塩が挙げられ、例えば塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩、ギ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。更に、本発明化合物又はその薬学的に許容される塩は、水和物に代表される溶媒和物の形であってもよい。
また、本発明化合物を構成するアミノ酸は、L−体、D−体のいずれであっても良く、好ましくはL−体である。
また、本発明化合物には、それを構成する不斉炭素により、鏡像異性体又はジアテレオ異性体が存在するが、いずれも本発明に包含される。そして、それらは、通常の方法により光学分割して利用してもよく、異性体混合物のままで利用してもよい。
一般式(I)で表される本発明化合物は、以下の反応工程式に従って製造することができる。
<反応工程式1>
Figure 2003042237
(式中、R、R、R、R、Rは、前記に同じ。R2aは低級アルコキシ基である)。
2aで示される低級アルコキシ基としては、上述の炭素数1〜6の直鎖又は分枝状の低級アルコキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基である。
工程(i):一般式(II)で表される化合物と、特開平11−228526号公報記載の方法に準じて合成される一般式(III)で表される公知化合物を、適当な溶媒中、縮合反応させることにより、一般式(I−a)で表される本発明化合物を合成することができる。
上記縮合反応としては、公知慣用の方法を用いることができ、例えば、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等の縮合剤を用いる方法またはそれらの縮合剤に更に添加剤(例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)を加える方法、イソブチルクロロフォルメート等を用いた混合酸無水物法、アジド法、活性エステル法等を用いることができる。
上記縮合反応に用いられる溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ジオキサン、酢酸エチル、N−メチルピロリドン等が例示でき、これらを単独で又は2種以上混合して使用できる。一般式(III)で表される化合物の使用量は、一般式(II)で表される化合物に対して、0.5〜10倍モル量程度、好ましくは1〜5倍モル量程度である。縮合剤の量としては、一般式(II)で表される化合物に対して、0.5〜10倍モル量程度、好ましくは1〜5倍モル量程度である。反応時間は0.3〜100時間程度であり、好ましくは0.5〜20時間程度である。また、反応温度は−20〜100℃程度であり、好ましくは、0〜40℃程度である。本工程で得られた化合物は、単離して、又は単離することなく、次工程に用いることができる。
<反応工程式2>
Figure 2003042237
(式中、R、R2a、R、R、R、Rは、前記に同じ。)。
工程(ii):反応工程式1で得られた一般式(I−a)で表される化合物を適当な溶媒中で酸化反応を行うことにより、一般式(I−b)で表される本発明化合物を合成することができる。
上記酸化反応は、公知慣用の方法を用いることができ、例えば、デスマーチン試薬を用いるデスマーチン酸化、ジメチルスルホキシド−1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩−ジクロロ酢酸を用いる改良モファット酸化、N−tert−ブチルフェニルスルフィンイミドイルクロリド酸化等の方法が用いられる。
上記酸化反応に用いられる溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はなく、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ジオキサン、酢酸エチル、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が例示でき、これらを単独で又は2種以上混合して使用できる。酸化試薬の量としては、一般式(I−a)で表される化合物に対して、0.3〜100倍モル量程度、好ましくは1〜10倍モル量程度である。反応時間は0.1〜100時間程度であり、好ましくは、0.5〜50時間程度である。反応温度は−78〜100℃程度であり、好ましくは0〜40℃程度である。本工程で得られた化合物は、単離して、又は単離することなく、次工程に用いることができる。
<反応工程式3>
Figure 2003042237
(式中、X、R、R、R、R、Rは、前記に同じ。)。
工程(iii):反応工程式1又は2で得られた化合物(I−a)又は(I−b)を、適当な溶媒中又は無溶媒で酸で処理することにより、一般式(I−c)で表される本発明化合物を得ることができる。
上記反応に用いられる溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等が例示できる。酸としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸が例示できる。反応に用いる酸の量は、化合物(I−a)又は(I−b)に対し、1〜1,000倍モル量程度であり、好ましくは1〜100倍モル量程度である。反応時間は0.5〜50時間程度である。反応温度は0〜100℃程度であり、好ましくは0〜30℃程度である。
前記一般式(II)で表される化合物は、例えば、下記反応工程式4に従って製造することができる。
<反応工程式4>
Figure 2003042237
(式中、R、R2a、Rは、前記に同じ。Rは低級アルコキシ基である)。
で示される低級アルコキシ基としては、上述の炭素数1〜6の直鎖又は分枝状の低級アルコキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基である。
工程(iv):一般式(IV)で表される化合物と一般式(V)で表される公知化合物を、適当な溶媒中、縮合反応させることにより、一般式(VI)で表される化合物を合成することができる。
上記縮合反応としては、公知慣用の方法を用いることができ、例えば、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等の縮合剤を用いる方法またはそれらの縮合剤に更に添加剤(例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)を加える方法、イソブチルクロロフォルメート等を用いた混合酸無水物法、アジド法、活性エステル法等を用いることができる。
上記縮合反応に用いられる溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ジオキサン、酢酸エチル、N−メチルピロリドン等が例示でき、これらを単独で又は2種以上混合して使用してもよい。一般式(V)で表される化合物の使用量は、一般式(IV)で表される化合物に対して、0.5〜10倍モル量程度、好ましくは1〜5倍モル量程度である。縮合剤の量としては一般式(IV)で表される化合物に対して、0.5〜10倍モル量程度、好ましくは1〜5倍モル量程度である。反応時間は0.3〜100時間程度であり、好ましくは0.5〜20時間程度である。また、反応温度は−10〜100℃程度であり、好ましくは、0〜40℃程度である。本工程で得られた化合物は、単離して、又は単離することなく、次工程(v)に用いることができる。
一般式(IV)で表される化合物は、例えば、国際公開WO98/50420号公報、特開平11−228526号等に記載の公知化合物を、公知慣用のアミノ基の脱保護反応に付すことにより得られる。脱保護反応としては、例えば、接触還元法、トリメチルシリルヨードジド又はトリエチルシラン等を作用させる方法が挙げられ、接触還元法に用いられる触媒としてはパラジウム−炭素、塩化パラジウム等が挙げられる。一般式(IV)で表される化合物は、その前駆体である化合物の保護基の種類により脱保護の条件が異なるため、フリー体又はその塩として得られる。塩の種類としては、縮合反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、塩酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩である。
工程(v):上記工程(iv)で得られた化合物(VI)を、適当な溶媒中、塩基を用いて加水分解することにより一般式(II)で表される化合物を得ることができる。反応に用いられる溶媒としては、反応に関与しない溶媒であれば特に制限はなく、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン等を単独又は2種以上混合して使用することができる。塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。塩基の量としては一般式(VI)で表される化合物に対して、1〜10倍モル量程度、好ましくは1〜2倍モル量程度である。反応時間は0.3〜100時間程度であり、好ましくは0.5〜20時間程度である。又、反応温度は0〜100℃程度であり、好ましくは0〜40℃程度である。本工程で得られた化合物は、単離して、又は単離することなく、反応工程式1に用いることができる。
上記各方法により得られる本発明化合物及び各化合物は再結晶、蒸留、各種カラムクロマトグラフィー等の合成化学上の通常用いられる分離精製手段によって精製可能である。
本発明の一般式(I)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩は、歯周病の発生と進行に密接に関与しているP.ジンジバリスが産生する蛋白質分解酵素であるKGP及びRGPを強力に阻害する。また、本発明ペプチド誘導体は、その構成成分が天然に存在している安全性の高いアミノ酸又はその誘導体より成ることから生体代謝産物も含めて、極めて安全性が高いと考えられる。
よって、一般式(I)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩は、これを有効成分とするリジル−ジンジパイン及びアルグ−ジンジパインの両酵素の阻害剤及び歯周病用薬剤として有用である。ここで、該阻害剤及び歯周病用薬剤は、いずれも、歯周病の予防剤及び治療剤として使用できる。
また、一般式(I)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩は、これと薬学的に許容される担体を含有する口腔用組成物としても有用である。例えば、本発明ペプチド誘導体又はその薬学的に許容される塩は薬学的に許容される担体と配合し、口腔用ゲル製剤、口腔用粘膜付着性軟膏、口腔パスタ、歯周ポケット挿入剤、歯肉付着製剤などの口腔用製剤又は歯磨、洗口液、チューインガム、タブレット、キャンデー、トローチなどの口腔衛生剤として投与することできる。ここで、口腔組成物は、歯周病の予防剤及び治療剤として使用できる。
薬学的に許容される担体としては、その剤形に応じた通常使用される適宜な成分を使用することができ、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、流動パラフィン、白色ワセリン、プラチナベース、オイドラジットL、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、プルラン、トラガント、キサンタンガム、キトサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタアクリル酸、メタアクリル酸エチル、ジメチルアミノアセテート、酢酸セルロース、コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、グリセリン、トリアセチン、マクロゴール400、ポリソルベート60、ステアリン酸ポリオキシル40、パラオキシ安息香酸ブチル、エタノール、セタノール、モノステアリン酸グリセリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、カラギーナン、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヒノキチオール、アラントイン、グリチルリチン、アラビアゴム、デンプン、コーンスターチ、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ブドウ糖、乳糖、ソルビトール、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、メントール、ユーカリ油、ペッパーミント、スペアミント、色素、香料、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムのフッ化物、塩化リゾチーム、アズレン等の抗炎症剤、塩化ナトリウム等の通常使用される成分を適宜配合することができる。
本発明ペプチド誘導体又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有するリジル−ジンジパイン及びアルグ−ジンジパインの阻害剤、歯周病用薬剤及び口腔用組成物を、ヒトを含む哺乳動物に投与する方法としては、有効成分0.001重量%以上程度、好ましくは0.01〜20重量%程度を含有する製剤の適量を、通常1日1回以上挿入、塗布、洗浄等に使用すればよい。
本発明のリジル−ジンジパイン及びアルグ−ジンジパインの阻害剤、歯周病用薬剤及び口腔用組成物を治療剤として使用する場合の使用量としては、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度により適宜選択できる。ヒトの場合、通常、有効成分とする本発明化合物の量が、1日当たり、体重1kg当たり、0.001〜100mg程度であり、好ましくは0.005〜10mg程度である。
また、本発明のリジル−ジンジパイン及びアルグ−ジンジパインの阻害剤、歯周病用薬剤及び口腔用組成物を予防剤として使用する場合の使用量としては、用法、年齢、性別その他の条件により適宜選択できる。ヒトの場合、通常、有効成分とする本発明化合物の量が、1日当たり、体重1kg当たり、0.001〜100mg程度であり、好ましくは0.005〜10mg程度である。
発明を実施するための最良の形態
以下、参考例、実施例、製剤例及び試験例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、各例においてMeはメチル基を、Bocはt−ブトキシカルボニル基を、Cbzはベンジルオキシカルボニル基を、t−Buはt−ブチル基を、Phはフェニル基をそれぞれ示す。また、アミノ酸の略号は、一般的に用いられているIUPACの方法に準じた。
参考例1
反応工程式4で示された一般式(VI)で表される化合物に包含される下記化合物を、合成した。
Figure 2003042237
国際公開WO98/50420号公報記載の方法に準じて合成された公知化合物である(3S)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノ−7−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシヘプタン酸メチルエステル(Cbz−Lys(Boc)ψ[CHOHCO]−OMe)21g(49.5mmol)のメタノール−クロロホルム(10:1)の混合溶液1,000mlに10%パラジウム−炭素4gを加え、水素雰囲気下、室温にて3時間45分間攪拌し、リジン上のアミノ基の保護基であるベンジルオキシカルボニル基を脱保護した。反応終了後、不溶物を濾去した。濾液を濃縮後、単離精製することなくN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)525mlに溶解した。この溶液に氷冷下、N−ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミン酸−γ−tert−ブチルエステル(Cbz−Glu(O−t−Bu)−OH)20g(59.4mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール8.7g(64.3mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩11.4g(59.4mmol)、N−メチルモルホリン13.5g(134mmol)を加え、室温にて14時間攪拌した。反応終了後、10%クエン酸水溶液を加え、pH=3に調整し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2〜1:1)で分離精製し、標記化合物のジアステレオ混合物18.3g(収率60%)を白色粉体として得た。以下に物性値を示す。
H−NMR(DMSO−d)δ:7.67(0.3H,d,J=8.8Hz),7.54(0.7H,d,J=9.0Hz),7.40−7.25(6H,m),6.73(1H,m),5.69(0.3H,d,J=5.9Hz),5.53(0.7H,d,J=5.6Hz),5.02(2H,m),4.11−3.96(3H,m),3.61 & 3.56(3H,s),2.87(2H,m),2.20(2H,m),1.83(1H,m),1.66(1H,m),1.59−1.06(6H,m),1.38(9H,s),1.36(9H,s)
Mass(FAB(+)):610(M+H)
性状:白色粉体
融点:101〜103℃。
参考例2
反応工程式4で示された一般式(II)で表される化合物に包含される下記化合物を、合成した。
Figure 2003042237
参考例1で得られた化合物3.53g(5.76mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液100mlに水酸化リチウム一水和物270mg(6.43mmol)の水溶液10mlを氷冷下で加え、1時間撹拌し、次いで室温にて30分間攪拌した。反応終了後、減圧下、濃縮し、残渣に10%クエン酸水溶液を加えて、pH=3に調整し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を留去し、標記化合物3.5g(収率100%)を白色粉末として得た。以下に物性値を示す。
H−NMR(DMSO−d)δ:12.45(1H,brs),7.49−7.31(7H,m),6.74(1H,m),5.38(0.3H,d,J=5.8Hz),5.26(0.7H,d,J=5.8Hz),5.01(1H,q,J=12.4Hz),4.04−3.85(4H,m),2.86(2H,m),2.19(2H,m),1.90−0.90(8H,m),1.40−1.36(18H,s x 2)
Mass(FAB(−)):596(M+H),594(M−H)
性状:白色粉体
融点:48〜50℃。
実施例1
下記の本発明化合物を合成した。
Figure 2003042237
参考例2で得られた化合物263mg(0.44mmol)のDMF溶液4mlに氷冷下、特表平8−502493号公報記載の6−ニトログアニジノ−(3S)−アミノ−2−ヒドロキシヘプタン酸 N−フェネチルアミド(H−Arg(NNO)−CH(OH)−CONHCHCHPh)の塩酸塩172mg(0.44mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール63mg(0.46mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩89mg(0.46mmol)、N−メチルモルホリン89mg(0.88mmol)を加え、室温にて3.5時間攪拌した。反応終了後、10%クエン酸水溶液を加え、pH=3に調整し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1)にて分離精製を行い、標記化合物のジアステレオ混合物190mg(収率46%)をアモルファスとして得た。以下に物性値を示す。
H−NMR(DMSO−d)δ:8.50(0.5H,m),8.25−7.17(14.5H,m),6.75−6.58(1H,m),6.01−5.75(2H,m),4.99(2H,m),4.25−3.82(5H,m),3.48−2.97(4H,m),2.91−2.65(4H,m),2.20(2H,m),1.95−1.58(2H,m),1.52−1.11(28H,m)
Mass(FAB(+));952(M+Na),968(M+K)
性状:アモルファス。
実施例2
下記の本発明化合物を合成した。
Figure 2003042237
実施例1で得られた化合物105mg(0.11mmol)の塩化メチレン溶液2mlにデスマーチン試薬144mg(0.34mmol)を加え、室温にて1時間攪拌した。反応終了後、20%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え、5分間攪拌し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=40:1)で分離精製し、標記化合物101mg(収率97%)をアモルファスとして得た。以下に物性値を示す。
H−NMR(DMSO−d)δ:9.10−8.00(3H,m),7.55−7.15(12H,m),6.80−6.62(1H,m),5.06−4.94(3H,m),4.18−3.91(2H,m),3.21−2.65(8H,m),2.29−2.18(2H,m),1.86−0.98(30H,m)
LC/Mass ES(+);925(M),ES(−);924(M−H)
性状:アモルファス。
実施例3
下記の本発明化合物を合成した。
Figure 2003042237
実施例2で得られた化合物75mg(0.08mmol)に4N塩酸−酢酸エチル溶液2mlを加えて、室温にて40分間攪拌した。反応液に無水エーテルを加えると、白色沈殿を生じた。これを濾取し、沈殿物を無水エーテルで洗浄し、標記化合物59mg(収率90%)をアモルファスとして得た。以下に物性を示す。
H−NMR(DMSO−d)δ:9.10−8.30(3H,m),7.75(3H,brs),7.60−7.11(12H,m),6.80−6.60(1H,m),5.06−4.95(3H,m),4.20−3.95(2H,m),3.20−2.61(8H,m),2.31−2.18(2H,m),1.86−1.00(12H,m)
Mass(FAB(+));770(M+H),768(M−H)
性状:アモルファス。
製剤例1 口腔用軟膏剤
実施例1の本発明化合物 1.0
白色ワセリン 10.0
ポリアクリル酸ナトリウム 3.0
流動パラフィン 残量
全 量 100.0(重量%)
常法により、上記配合割合で口腔用軟膏剤を調製した。
製剤例2 歯磨剤
第2リン酸カルシウム 42.0
グリセリン 19.0
カラギーナン 0.9
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
サッカリン 1.0
実施例2の本発明化合物 1.0
パラオキシ安息香酸ブチル 0.005
香料 1.0
水 残量
全 量 100.0(重量%)
常法により、上記配合割合で歯磨剤を調製した。
製剤例3 トローチ剤
アラビアゴム 6.0
ブドウ糖 72.0
乳糖 19.0
実施例3の本発明化合物 1.5
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
香料 1.0
水 残量
全 量 100.0(重量%)
常法により、上記配合割合でトローチ剤を調製した。
製剤例4 チューインガム
酢酸ビニル樹脂 20.0
ポリイソブチレン 3.0
炭酸カルシウム 2.0
ソルビトール 55.0
マンニトール 15.0
実施例3の本発明化合物 4.0
香料 1.0
全 量 100.0(重量%)
常法により、上記配合割合でチューインガムを調製した。
製剤例5 うがい剤
エタノール 20.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 3.0
ポリエチレングリコール 2.0
グリセリン 10.0
サッカリンナトリウム 0.02
実施例3の本発明化合物 0.5
香料 0.2
水 残量
全 量 100.0(重量%)
常法により、上記配合割合でうがい剤を調製した。
製剤例6 洗口剤
エタノール 30.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンラウレート 1.0
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.5
水酸化ナトリウム 0.05
サッカリンナトリウム 0.05
実施例3の本発明化合物 0.5
香料 0.5
水 残量
全 量 100.0(重量%)
常法により、上記配合割合で洗口剤を調製した。
試験例1:KGP及びRGPに対する阻害活性の測定
リジル−ジンジパイン(KGP)及びアルグ−ジンジパイン(RGP)に対する阻害活性の測定は、Cbz−His−Glu−Lys−MCA及びCbz−Phe−Arg−MCAを基質として、それぞれAbeらの方法(Journal Biochemistry,1998年,123巻,305−312)およびKadowakiらの方法(Journal Biological Chemistry,1994年,269巻,21371−21378)に従って行った。具体的には、50mMのL−システインを100μl、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を200μl、0.05%Brij35(商品名、アルドリッチ社製、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル)を含む12.3nMのKGP又はRGP溶液を20μl、蒸留水80μl、及び本発明化合物のジメチルスルオキシド溶液100μlを混合し、37℃で5分間プレインキュベーションした。その後、20μMのCbz−His−Glu−Lys−MCA(KGPに対して)又はCbz−Phe−Arg−MCA(RGPに対して)を含む0.1%ジメチルスルホキシド溶液500μlを加え、40℃で10分間インキュベートした。その後、10mMのヨードアセトアミドを含む酢酸緩衝液(pH5.0)を加えて酵素反応を停止させ、380nmで励起される460nmの蛍光強度(F)を測定した。対照として、本発明化合物を含まないジメチルスルホキシド溶液100μlを化合物溶液の代わりに加え、同様に蛍光強度(F)を測定した。酵素阻害活性は下記式によって算出した。
酵素阻害活性(%)=[1−(F/F)]×100
試験結果を表1に示す。
Figure 2003042237
表1より、本発明化合物はKGP及びRGPの両酵素に対して優れた阻害活性を有することが判明した。
本発明化合物は、グラム陰性嫌気性桿菌のポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingibvalis)が産生するリジル−ジンジパイン(KGP)及びアルグ−ジンジパイン(RGP)の両酵素活性を阻害することにより、例えば、歯周病の予防薬又は治療薬として有用である。

Claims (19)

  1. 一般式(I)
    Figure 2003042237
    [式中、Xは、−CH(OH)−又は−CO−を示す。Rは、水素原子であるか又はアミノ基の保護基を示す。Rは、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。R及びRの一方はアミノ基が保護基で保護されていてもよいリジンのR基側鎖を示し、R及びRの他方はグアニジノ基が保護基で保護されていてもよいアルギニンのR基側鎖を示す。R及びRは、同一又は相異なって、水素原子、低級アルキル基又はアラルキル基を示す。]で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩。
  2. 一般式(I)において、Xが−CO−である請求項1に記載のペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩。
  3. 一般式(I)において、Xが−CO−であり、Rが水素原子又は置換基を有してもよいアラルキルオキシカルボニル基であり、Rが水酸基又は低級アルコキシ基であり、R及びRの一方がリジンのR基側鎖で、R及びRの他方がグアニジノ基がニトロ基で保護されていてもよいアルギニンのR基側鎖であり、R及びRが、同一又は相異なって、水素原子又はアラルキル基である請求項2に記載のペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩。
  4. 一般式(I)において、Xが−CO−であり、Rがベンジルオキシカルボニル基であり、Rが水酸基又はt−ブトキシ基であり、RがリジンのR基側鎖であり、Rがグアニジノ基がニトロ基で保護されたアルギニンのR基側鎖であり、Rが水素原子であり、Rがフェネチル基である請求項3に記載のペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩。
  5. 一般式(I)
    Figure 2003042237
    [式中、Xは、−CH(OH)−又は−CO−を示す。Rは、水素原子であるか又はアミノ基の保護基を示す。Rは、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。R及びRの一方はアミノ基が保護基で保護されていてもよいリジンのR基側鎖を示し、R及びRの他方はグアニジノ基が保護基で保護されていてもよいアルギニンのR基側鎖を示す。R及びRは、同一又は相異なって、水素原子、低級アルキル基又はアラルキル基を示す。]で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩を製造する方法であって、下記工程(i)で示される製造方法。
    (i)一般式(II)
    Figure 2003042237
    (式中、R及びRは前記に同じ。R2aは低級アルコキシ基を示す。)で表される化合物と、一般式(III)
    Figure 2003042237
    (式中、R、R及びRは前記に同じ。)で表される化合物を、縮合反応させることによる、一般式(I−a)
    Figure 2003042237
    (式中、R、R2a、R、R、R及びRは前記に同じ。)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩の製造法。
  6. 前記一般式(I)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩を製造する方法であって、下記工程(ii)で示される製造方法。
    (ii)上記一般式(I−a)で表される化合物を、酸化することによる、一般式(I−b)
    Figure 2003042237
    (式中、R、R2a、R、R、R及びRは前記に同じ。)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩の製造法。
  7. 前記一般式(I)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩を製造する方法であって、下記工程(iii)で示される製造方法。
    (iii)上記一般式(I−a)で表される化合物又は一般式(I−b)で表される化合物を、酸処理することによる、一般式(I−c)
    Figure 2003042237
    (式中、X、R、R、R、R及びRは前記に同じ。)で表されるペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩の製造法。
  8. 請求項1に記載の一般式(I)で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を有効成分とするアルグ−ジンジパイン及びリジル−ジンジパインの阻害剤。
  9. 請求項1に記載の一般式(I)で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を有効成分とする歯周病用薬剤。
  10. 請求項1に記載の一般式(I)で表されるペプチド誘導体およびその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種及び薬学的に許容される担体を含有する口腔用組成物。
  11. ヒトを含む哺乳動物に、請求項8に記載のアルグ−ジンジパイン及びリジル−ジンジパインの阻害剤の有効量を投与する歯周病の予防方法。
  12. ヒトを含む哺乳動物に、請求項9に記載の歯周病用薬剤の有効量を投与する歯周病の予防方法。
  13. ヒトを含む哺乳動物に、請求項10に記載の口腔用組成物の有効量を投与する歯周病の予防方法。
  14. 歯周病を有するヒトを含む哺乳動物に、請求項8に記載のアルグ−ジンジパイン及びリジル−ジンジパインの阻害剤の有効量を投与する歯周病の治療方法。
  15. 歯周病を有するヒトを含む哺乳動物に、請求項9に記載の歯周病用薬剤の有効量を投与する歯周病の治療方法。
  16. 歯周病を有するヒトを含む哺乳動物に、請求項10に記載の口腔用組成物の有効量を投与する歯周病の治療方法。
  17. 請求項8に記載のアルグ−ジンジパイン及びリジル−ジンジパインの両酵素阻害剤の製造のための請求項1に記載のペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の使用。
  18. 請求項9に記載の歯周病用薬剤の製造のための請求項1に記載のペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の使用。
  19. 請求項10に記載の口腔用組成物の製造のための請求項1に記載のペプチド誘導体及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の使用。
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