JPS6353282B2 - - Google Patents
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Description
(産業上の利用分野)
本発明は潜在嵩高性マルチフイラメント及びそ
の製造法に関し、更に詳しくは断面方向及び長手
方向に収縮差を有するフイラメントから成る潜在
嵩高性マルチフイラメント及びその製造法に関す
る。 (従来技術) 熱処理を施すことによつて嵩高性を呈し得る潜
在嵩高性マルチフイラメントは、収縮差を有する
フイラメント同志を混繊することによつて得るこ
とができる(例えば、米国特許第3200576号明細
書参照)。 かかるマルチフイラメントは、熱処理時に高収
縮フイラメントが収縮し、これにより低収縮フイ
ラメントが張り出すことによつて嵩高性を付与す
るものである。 そして、この際に高収縮フイラメントを太デニ
ールとし、低収縮フイラメントを細デニールとす
ると、熱処理後の嵩高マルチフイラメントの風合
は腰があると共に、柔かなタツチを呈するものと
なる。 ところで、かかる収縮差を有するフイラメント
から成るマルチフイラメントを得るには、予め収
縮差を付与された複数の糸条を混繊する方法が多
く採用されており、例えば特開昭54−82423号公
報(米国特許第4153660号明細書)には次の様な
方法が提案されている。 即ち、この方法は、同一紡糸口金から吐出され
た重合体流を急冷して得られる紡出糸条を2つの
糸束に分割して、その1つの糸束には水が主体で
ある紡糸仕上剤を付与し、他の1つの糸束には水
よりも高温の沸点を有する剤を付与してから、両
糸束を別々に同一条件下で熱処理しつつ延伸を施
してから混線するものである。 かかる方法は紡糸仕上剤の沸点差を利用して糸
束間に収縮差を付与するものであるが、この様に
2種類の紡糸仕上剤を付与する等の極めて繁雑な
操作を施す必要がある。 また、この様な同一紡糸口金から吐出される紡
出糸条において糸条を構成するフイラメント間に
デニール差を付与せんとすると、糸揺れによるフ
イラメントの密着、或いは断糸等のトラブルが発
生し易く、ドラフト率、冷却風量等の紡糸条件を
厳密に管理することが必要である。 これに対して、かかる繁雑な操作を施すことな
く潜在嵩高性マルチフイラメントを製造する方法
が特開昭54−42415号公報及び特開昭55−51809号
公報(米国特許第4332757号及び米国特許第
4349604号)にて提案されている。 この方法は単一の紡糸口金に配置されている或
る角度で対向し、且つ吐出断面積が異る1対の吐
出孔を通して2つの流速差を有するポリエステル
の流れを吐出し、口金面直下で、前記1対の吐出
孔の吐出断面積が大なる吐出孔から吐出した低速
重合体流に、吐出断面積が小なる吐出孔から吐出
した高速重合体流を衝突・振動させつつ接合せし
めてから、これを急冷して巻き取るものであつ
て、得られるマルチフイラメント(以下、パルシ
ングヤーンと称することがある)は断面方向及び
長手方向に収縮差を有しているフイラメントから
成る。 しかしながら、この様な潜在嵩高性マルチフイ
ラメントは織編物と成してから熱処理を施される
ことが一般的であるが、前記パルシングヤーンは
織編物、特に織物での嵩高性が不足すると言う欠
点を有している。 即ち、織物の織組織による拘束力が強く、しか
もパルシングヤーンの有する収縮力が低いため、
パルシングヤーンの収縮が制限されて嵩高性が不
足することに因る。 また、かかるパルシングヤーンは紡糸してから
更に延伸熱セツトを施して実用に供し得る力学的
性質を付与すると、前記収縮差が消失する欠点を
有しているので、極めて大きな収縮率のものでも
延伸熱セツトを施すことなく使用せざるを得な
い。このため、パルシングヤーンを用いた織編物
ではシボ状の収縮斑や“笑い”等の欠点が発生す
ることがあり、染色条件及び仕上条件が大巾に制
約を受けるため実用に供し得なかつた。 尚、ここで言う“笑い”とは、織編物に応力が
作用したときに、前記織編物を構成するフイラメ
ントが部分的に塑性変形することによつて生じる
織編物の欠点である。 (発明の目的) 本発明の第1の目的は織編物、特に織物におい
て収縮斑や“笑い”等の欠点のない、均一で且つ
充分な嵩高性を呈し得る潜在嵩高性マルチフイラ
メントの製造法及び紡糸口金を提供することにあ
る。 本発明の第2の目的は延伸を施して実用に供し
得る力学的性質を付与しても充分な嵩高性(収縮
差)を呈し得る潜在嵩高性マルチフイラメント及
びその製造法を提供することにある。 本発明の第3の目的は独特な光沢を呈し得る潜
在嵩高性マルチフイラメント及びその製造法を提
供することにある。 本発明の第4の目的は異デニールフイラメント
が混繊されたマルチフイラメントの如き腰のある
柔かなタツチを呈し得る潜在嵩高性マルチフイラ
メント及びその製造法を提供することにある。 (発明の構成) 本発明者等は、かかる目的を達成すべく検討を
重ねたところ、従来のパルシングヤーンの製造に
おいて採用されている紡糸口金の吐出孔、即ち互
いに或る角度で対向し、且つ吐出断面積が異る1
対の吐出孔から吐出される重合体流の流速差が不
充分であり、しかも紡糸口金面直下で前記吐出孔
から吐出される1対の重合体流を衝突、振動させ
つつ接合せしめる際に発生する振動周期も小さい
ため、得られるパルシングヤーンを構成するフイ
ラメント内及びフイラメント間の収縮差が小さ
く、かかるフイラメントから成るパルシングヤー
ンの収縮力も劣ることを知つた。 本発明者等は、かかる知見に基き更に検討を重
ねた結果、紡糸口金の1対の吐出孔をスリツトで
連結せしめ、且つ吐出断面積が大なる吐出孔を複
数のスリツトで中空部を形成する中空吐出孔と
し、他方の吐出断面積が小なる吐出孔を単一吐出
孔とした紡糸口金から流速差を有する1対の重合
体流を吐出せしめて衝突・バウンドさせることに
よつて、長手方向に太さ斑を有する偏平中空フイ
ラメントが得られ、かかるフイラメントから成る
マルチフイラメントでは、フイラメント間及びフ
イラメント内の収縮差を大きくすることができる
ために充分な収縮力を呈し得ることを見い出し、
本発明に到達した。 即ち、本発明は溶融紡糸可能な単一重合体から
成るフイラメントで構成されているマルチフイラ
メントにおいて、構成フイラメントが偏平で且つ
長軸方向の外周部に該長軸を挾んで互いに対向す
る1対の凹部を有していると共に、前記1対の凹
部間に在る短軸に対して非対称である断面形状
と、フイラメントの長手方向に太さ斑とを有する
偏心中空フイラメントであつて、該中空部が前記
フイラメント断面において短軸に平行な直線が最
大になる側に在り、且つ該短軸によつて分割され
る前記中空部存在部分の配向度がこれに隣接する
中実部分の配向度よりも大であることを特徴とす
る潜在嵩高性マルチフイラメントであり、更に
は、吐出断面積が異る一対の吐出孔をスリツトに
より互いに連結せしめると共に、吐出断面積の大
なる吐出孔を複数のスリツトにより中空部を形成
した中空吐出孔とし、他方の吐出面積の小なる吐
出孔を単一吐出孔とした紡糸口金を通して、溶融
状態にある単一重合体を吐出し、その降下記〜
の条件を満足する吐出孔を用い、前記1対の吐
出孔のうち吐出断面積が大なる吐出孔から吐出し
た重合体流の吐出速度を、他方の吐出断面積が小
なる吐出孔から吐出した重合体流のそれよりも低
速に維持することにより、前記低速重合体流に高
速重合体流を衝突、バウンドさせつつ接合させ、
次いで冷却固化せしめてから引取ることを特徴と
する潜在嵩高性マルチフイラメントの製造法であ
る。 1.5≦S1/S2≦15 …… S1>S2>S3 …… 0.04≦lA1−lB1/2≦0.30 …… 0.10≦lA2<lB1<lA1≦1.5 …… 0.05≦l≦1.30 …… 0.03≦W<lA2≦1.0 …… 〔但し、 S1:中空吐出孔の断面積(mm2) S2:単一吐出孔の吐出断面積(mm2) S3:中空吐出孔と単一吐出孔とを連結するスリツ
トの吐出断面積(mm2) lA1:中空吐出孔の外径(mm) lB1: 〃 内径(〃) lA2:単一吐出孔の内径(〃) l:連結スリツトの長さ(〃) W: 〃 の巾(〃)〕 本発明を図面により説明する。 第1図は本発明のマルチフイラメントを構成す
るフイラメントの断面図、第2図は本発明によつ
て得られるマルチフイラメントを構成するフイラ
メントの長手方向の側面図及び前記側面図を90゜
回転せしめた正面図、第3図のa及びcは夫々後
述する実施例1及び比較例2で得られた本発明の
マルチフイラメント及び従来のパルシングヤーン
のウースター斑を夫々示すグラフ、第4図は本発
明のマルチフイラメントの断面図、第5図は本発
明のマルチフイラメントの応力(St)−伸度(El)
曲線、第6図は本発明のマルチフイラメントを得
るために紡糸口金の吐出孔断面図、第7図は第6
図aに示す吐出孔からフリーフオールで重合体を
吐出した直後のフイラメントを横断面に沿つて切
断した際のフイラメント斜視図(電子顕微鏡写
真)を夫々示す。 第1図において、nは長軸、cは短軸、x,
x′は長軸(n)を挾んで互いに対向する1対の凹
部、eは中空部、mはフイラメント断面で短軸(c)
に平行な直線のうちで最大値を示す直線の長さ、
gは中空部(e)を含む断面において短軸(c)で分割さ
れる中空部分、hは同じく短軸(c)で分割される中
実部分であつて、gの部分の断面積はh部分のそ
れよりも常に大である。 本発明のマルチフイラメントにおいて、その構
成するフイラメントの断面形状が第1図a,bに
示す如く偏平であつて長軸(n)を挾み互いに対
向する1対の凹部(x、x′)結ぶことによつて形
成される短軸(c)に対して非対称で、且つg部分、
即ち最大直線長(m)を有する側に中空部(e)が存
在するものである。 そして、前記断面形状を有するフイラメント断
面のg部分の配向度がh部分の配向度よりも高い
と共に、フイラメントの長手方向に第2図に示す
様な太さ斑を有している。 第2図a,bは本発明のマルチフイラメントを
構成するフイラメントの側面図及び前記側面図を
90゜回転せめた正面図を夫々示す。 本発明のマルチフイラメントを構成するフイラ
メントの長手方向の太さ斑は、第2図a,bに示
す様に、長手方向に対してh部分の断面がg部分
の断面積よりも大巾に変化しつつ接合しているの
である。 この様に、本発明のマルチフイラメントを構成
するフイラメントは、その断面において第1図に
示す如く中空部を含むg部分の断面積がh部分よ
りも大きいと共にg部分の配向度がh部分よりも
高く、且つ後述する様に紡糸時に大きな剪断力を
受けるためにg部分が中実である場合よりも極め
て高い配向度となるので、長手方向の太さ斑と相
俟つて従来のパルシングヤーンよりも大きな収縮
力を有することができる。その結果、織組織によ
る拘束力が強い織物でも本発明のマルチフイラメ
ントを用いた織物では均一で充分な嵩高性を呈し
得るのである。 本発明において、フイラメント断面形状の好ま
しい態様としては、第1図aに示す様な略まゆ形
を呈するもの、或いは第1図bに示す様な略二等
辺三角形を呈するものが好ましい。特に、略二等
辺三角形の断面形状を有するフイラメントでは独
特な光沢を呈することができ好ましい。 そして、かかる偏平中空フイラメントにおける
g部分の中空率は2〜30%、特に好ましくは5〜
15%であつて、g部分の中空部(e)を含む断面積
Sgとh部分の断面積Shとの比(Sg/Sh)は1.2〜
3、特に、1.3〜1.8であることが好ましい。 但し、前記中空率及び断面積Sg及びShはフイ
ラメント断面の顕微鏡写真から求めたものであ
る。 また、第2図a,bに示す如く、フイラメント
の長手方向にh部分がg部分に巻付くことなく接
合しているフイラメントは、その長手方向の変形
度、即ち太さ斑が大きく好ましいものである。 そして、この様な長手方向に大きな太さ斑を有
するフイラメントで構成されている本発明のマル
チフイラメントは当然その長手方向にも大きな太
さ斑を有している。 このことは、第3図aに示す後述の実施例1で
得れたマルチフイラメントのウースター斑のグラ
フから明らかであり、第3図bに示す後述の比較
例1で得られた従来のパルシングヤーンのウース
ター斑のグラフと比較しても、本発明によつて得
らるマルチフイラメントの長手方向の太さ斑は大
きい。 尚、かかるウースター斑はツエルベーガーウー
スター社製のウースターイブネステスターモデル
Cにより測定したものである。 また、本発明によつて得られるマルチフイラメ
ントを構成するフイラメントの長手方向には第2
図に示す様な大きな太さ斑[山から山の長さ(L)が
0.5〜3m]がランダムに存在するため、かかる
フイラメントから成るマルチフイラメントの任意
断面においては、第4図に示す様に、あたかもデ
ニール差を有するフイラメントが混繊されている
のと同様な効果を呈する。 つまり、第5図において、Aは一本のマルチフ
イラメント断面での最大断面積であるフイラメン
ト断面を示し、n1及びm1はフイラメント断面A
の長軸及び短軸に平行な最大直線長を夫々示す。
また、Bは第4図に示す一本のマルチフイラメン
ト断面での最小断面積のフイラメント断面を示
し、n2及びm2はフイラメント断面Bの長軸及び
短軸に平行な最大直線長を夫々示す。 一般的に、第4図に示す様な断面積が異るフイ
ラメント、即ち、デニール差を有するフイラメン
トが混繊されている場合、断面積の大きい(太デ
ニール)フイラメントは断面積の小さい(細デニ
ール)フイラメントよりも収縮率が大きいため、
熱処理によつて、太デニールフイラメントは収縮
して張力担持体となり、細デニールフイラメント
はマルチフイラメントの外側に張り出すので、腰
があり且つ柔なタツチの風合を呈することができ
る。 本発明で得られるマルチフイラメントにおい
て、前記最大断面積のフイラメントA及び最小断
面積のフイラメントBが下記[]を満足するも
のは腰があり且つ柔なタツチの風合を呈し得るこ
とができ好ましい。 n1×m1/n2×m2≧1.5 ……[] 更に、本発明で得られるマルチフイラメントは
その断面方向及び長手方向に前述した様に大きな
斑、即ち大きな収縮差を有しているため、あたか
もフイラメント間及びフイラメント内に収縮差を
有するフイラメントを混繊した構造となつてい
る。このために、本発明で得られるマルチフイラ
メントの応力−伸度曲線は第5図に示すものとな
る。 ここで、第5図aは本発明の製造法で得られた
未延伸マルチフイラメントの応力(St)−伸度
(El)曲線であり、第5図bは紡糸後、更に延伸
熱セツトを施して得られたマルチフイラメントの
応力(St)−伸度(El)曲線である。 第5図において、L1は最終破断伸度、L2は最
大応力を示すときの伸度を夫々示す。 この様に、L1及びL2の伸度が見られるのは前
述した収縮差を有するフイラメントを混繊せしめ
た混繊糸の特徴であつて、かかる収縮差の極めて
小さい、或いは収縮差のないフイラメントから成
るマルチフイラメントでは通常L2のみが見られ
るに過ぎないのである。 この点、本発明で得られるマルチフイラメント
では、混繊等の操作を行うことなく、あたかも収
縮差のあるフイラメントから成る混繊糸と同等の
効果を呈することができる。 そして、(L1−L2)の値が大である程、前記収
縮差が大であることを示し、かかる(L1−L2)
の値が下記[]式を満足するマルチフイラメン
トが充分な嵩高性を呈す織編物を得ることができ
好ましい。 L−L2≧20% ……[] 本発明で得られるマルチフイラメントにおいて
は、未延伸糸の状態では勿論のこと、延伸し熱セ
ツトを施して実用に耐え得る力学的性質を付与し
ても充分に上記[]式を満足するものを得るこ
とができる。 以上、述べてきた本発明のマルチフイラメント
は、第6図に示す吐出孔を有する紡糸口金を用い
て紡糸することによつて得ることができる。 第6図において、1a〜1c,2,3は夫々重
合体流を吐出する吐出孔であつて、4は1a〜1
cで示される複数のスリツトで形成される中空
部、2は単一吐出孔、3は1a〜1cのスリツト
及び中空部4からなる中空吐出孔と、単一吐出孔
2とを連結するスリツト、lA2は単一吐出孔2の
内径、l及びWはスリツト3の長さ及び幅、lA1
及びlB1は第6図aの中空吐出孔の外径及び内径
を夫々示す。 かかる吐出孔の特徴は、吐出断面積が異なる1
対の吐出孔として、吐出断面積の大なる吐出孔に
複数のスリツト1a〜1cで構成される中空吐出
孔を、他方の吐出断面積の小なる吐出孔に単一吐
出孔2を夫々採用したことと、中空吐出孔と単一
吐出孔2とをスリツト3で連結したことにある。 そして、本発明のマルチフイラメントの製造法
では、紡糸口金面直下で第6図の吐出孔の中空吐
出孔から吐出された重合体流に、前記重合体流の
流速より高速である単一吐出孔2から吐出された
重合体流を衝突、バウンドさせつつ接合せしめ、
次いで冷却固化せしめてから引取ることが必要で
ある。 この様な本発明のマルチフイラメントの製造法
を採用することによつて、第1図に示す断面形状
であつて、g部分の配向度がh部分の配向度より
も高く、且つg部分が中実である場合よりも極め
て高い配向度となり、しかも長手方向に太さ斑を
併せ有するフイラメントが得られるのである。 尚、第1図において、x,x′で示される1対の
凹部は第6図の中空吐出孔から吐出される重合体
流に単一吐出孔2から吐出される重合体流が接合
した接合部である。 本発明によつて、かかるフイラメントが得られ
る理由は次の様に考えられる。 即ち、一般的に、中空吐出孔を構成している各
スリツト、及び単一吐出孔を通過する重合体流の
流速が互いに等しいならば、中空吐出孔の複数ス
リツトの合計圧力損失は単一吐出孔よりも大とな
る。 しかしながら、中空吐出孔と単一吐出孔2とを
スリツト3を介して同一吐出孔内に併有している
第6図に示す吐出孔においては、両孔の圧力損失
が等しくなる様に両孔を通過する重合体流間に流
速差が生じる。このため、中空吐出孔のスリツト
巾、単一吐出孔2の内径(lA2)等を前記〜
のように調整することによつて、中空吐出孔の1
a〜1cのスリツトよりも単一吐出孔2から吐出
される重合体流の流速が速くなる様に流速差を付
与すると共に、その流速差を容易に大きくするこ
とができるのである。 この様に、中空吐出孔のスリツト1a〜1cを
通過する重合体流の流速は単一吐出孔2を通過す
る重合体流よりも遅いため、紡糸ドラフトは中空
吐出孔のスリツト1a〜1cから吐出された重合
体流に主に集中する。特に、紡糸引取速度2500
m/分以上の高速紡糸では、500以上の高ドラフ
トが中空吐出孔のスリツト1a〜1cから吐出さ
れた重合体流に集中するため、かかる重合体流が
形成する中空部分は中空吐出孔が単一吐出孔であ
る場合よりも大きな剪断力を受けて、重合体流が
中実である場合よりも極めて高い配向度となるの
である。 また、単一吐出孔2の吐出断面積(S2)は中空
吐出孔のスリツト1a〜1cの合計吐出断面積
(S1)よりも小さいため、中空部を含むg側の断
面積よりもh側の断面積が小さくなるのである。 この様にして得られるフイラメント断面では、
第1図に示す如く、中空部cを含む断面積がh部
分よりも大きなg部分がh部分よりも高配向度と
なる。 更に、中空吐出孔及び単一吐出孔2から吐出さ
れる重合体流流速が異なると共に、スリツト3か
ら吐出される重合体流で前記2つの重合体流が連
結されているために、中空吐出孔から吐出された
重合体流に単一吐出孔2から吐出された重合体流
が衝突・バウンドしつつ接合する結果、第2図に
示す如く長手方向に太さ斑を有するフイラメント
が得られるのである。 本発明において採用する中空吐出孔のスリツト
の配列形状、及び単一吐出孔2の断面形状は特に
限定する必要はなく、三角形、四角形、Y字形等
の斯界に知られている形状のものが使用できる。 例えば、中空吐出孔のスリツトの配列形状とし
ては、英国特許第853062号明細書に記載されてい
る非円形状のものを採用でき、中でも第1図bに
示す三角形状の配列のものが好ましい。 かかる、三角形状の中空吐出孔を用いた第6図
bの吐出孔によると、第1図bに示す略二等辺三
角形の断面形状を有するフイラメントが得られ、
このフイラメントから成るマルチフイラメントは
独特な光沢を呈することができる。 また、中空吐出孔のスリツト配列形状及び単一
吐出孔の断面形状を第6図aの如く円形状とする
と、第1図aに示す略まゆ型の断面形状となる。
第6図aの吐出孔は工作が容易で好ましい。 更に、第6図において、単一吐出孔2と中空吐
出孔とを単一スリツト3で連結することによつ
て、驚くべきことに単一吐出孔2から吐出される
重合体流は中空吐出孔から吐出される重合体流の
片側で衝突・バウンドしつつ接合するので、中空
部分gに中実部分hがまきつくことなく接合して
いる第2図に示すフイラメントが得られ、フイラ
メントの長手方向に大きな太さ斑を付与すること
ができる。 この様に、フイラメントの断面方向に大きな配
向度差を有すると共に、フイラメントの長手方向
に太きな太さ斑を有するフイラメントから成るマ
ルチフイラメントは、紡糸後、更に延伸し熱セツ
トを施して実用に供し得る力学的特性を付与して
も、充分な収縮力を呈することができ好ましい。
かかるスリツト3の形状は第6図に示す直線状の
他に、カギ形、或いは湾曲していてもよい。要は
中空吐出孔と単一吐出孔2とがスリツトで連結さ
れていることである。 これに対して、本発明者の実験によると、特開
昭55−51809号公報(米国特許第4332757号及び米
国特許第4349604号明細書)に記載されている紡
糸口金を用いてパルシングヤーンを得る場合に
は、吐出面積の大なる吐出孔から吐出された重合
体流に、吐出断面積の小なる吐出孔から吐出され
た重合体流が巻付きつつ接合したフイラメントか
ら成るマルチフイラメントしか得られず、フイラ
メントの長手方向に大きな太さ斑を付与すること
は困難であつた。 また、スリツト3の長さを、得られるフイラメ
ント断面において第1図に示す凹部(x、x′)が
形成されるよう設定することによつても、中空吐
出孔及び単一吐出孔2から吐出される両重合体流
の衝突・バウンドによる振動周期をより大きくす
ることができ、得られるフイラメントの長手方向
に極めて大きな太さ斑を付与することができる。
その結果、かかるフイラメントから成るマルチフ
イラメントの任意断面は第4図に示す様なフイラ
メント断面積差を有するものとなり、その際のn1
×m1/n2×m2の値は1.5以上となると共に、前記
マルチフイラメントの応力(St)−伸度(El)曲
線においても、(L1−L2)の値は20%以上とな
る。 尚、第6図に示す吐出孔は、中空吐出孔に1個
の単一吐出孔2が連結されているが、複数個の単
一吐出孔2が連結されていてもよい。 また、得られるフイラメント断面において、中
空部が複数個となる様に第6図に示す吐出孔の形
状を変更してもよく、例えば中空吐出孔の中空部
を複数個設けてもよい。 これまで述べてきた本発明にて用いる吐出孔の
具体的な寸法を第6図aの吐出孔と対比させて下
記に示す。 1.5≦S1/S2≦15 …… S1>S2>S3 …… 0.04≦lA1−lB1/2≦0.30 …… 0.10≦lA2<lB1<lA1≦1.5 …… 0.05≦l≦1.30 …… 0.03≦W<lA2≦1.0 …… 但し、 S1:中空吐出孔の断面積(mm2) S2:単一吐出孔の吐出断面積(mm2) S3:中空吐出孔と単一吐出孔とを連結するスリツ
トの吐出断面積(mm2) lA1:中空吐出孔の外径(mm) lB1: 〃 内径(〃) lA2:単一吐出孔の内径(〃) l:連結スリツトの長さ(〃) W: 〃 の巾(〃) そして、この様な吐出孔から成る紡糸口金を採
用することによつて、あたかも異デニールフイラ
メントが混繊された如きマルチフイラメントを容
易に得ることができる。 また、本発明のマルチフイラメントの製造法に
おいて、中空吐出孔から吐出される重合体流の流
速(v1)と、単一吐出孔2から吐出される重合体
流の流速(v2)との吐出速度比(v1/v2)を1/
7〜1/1.5、特に1/3.4〜1/2.3に設定するこ
とが好ましく、この時の重合体の吐出量比[中空
吐出孔の吐出量(Q1)/単一吐出孔2の吐出量
(Q2)]は3/1〜1/5、特に1.5/1〜1/3.3
に設定することが好ましい。 今、第6図aに示す吐出孔であつて、前記寸法
の範囲内にある吐出孔を有する紡糸口金面直下で
得られる紡出フイラメントの形状を第7図に示
す。 第7図はフリーフオールで得たものであり、中
空吐出孔から吐出された側の断面積はほとんど変
化せずに、単一吐出孔から吐出された側の断面積
が変化していることを示している。また、第7図
より単一吐出孔から吐出された重合体流は中空吐
出孔から吐出された重合体流に捲き付くことなく
一方向で振動していることも併せて示している。 唯、第7図に示す紡出フイラメントは紡出ドラ
フトの作用受けないフリーフオールで得られたも
のであるため、本発明で得られるマルチフイラメ
ントを構成するフイラメントの断面形状と差異が
認められるが、紡糸ドラフト作用下では中実部分
が中空部分にバウンドしつつ接合しているために
中実部分の長さは中空部分よりも長くなるので、
第1図aに示すフイラメント断面形状を有するフ
イラメントが得られるのである。 この様にして吐出、接合せしめた重合体流を冷
却固化した後に2500m/分以上で引取ることが第
1図で示すフイラメント断面でのg側の配向度を
h側よりも大とするうえで好ましい。 ここで、紡糸引取速度が2500m/分未満であれ
ば得られるフイラメントの長手方向には太さ斑が
存在するのの、フイラメントの断面方向の配向度
差は不充分なものとなる傾向がある。 かかる紡糸引取速度が4000m/分以下のもの
は、更に延伸し100℃以上の温度で熱セツトを施
すことによつて、得られるマルチフイラメントの
力学的特性を実用に供し得る程度までに高めるこ
とができる。この様にしても本発明で得られるマ
ルチフイラメントでは依然として断面方向及び長
手方向に大きな収縮差を有しているため、熱処理
によつて充分な嵩高性を低すことができる。 また、紡糸引取速度が4000m/分以上、特に
4500〜5500m/分では、得られるマルチフイラメ
ントをそのまま実用に供し得るものであり、かか
るマルチフイラメントは熱処理によつて充分な嵩
高性呈し得ることは言うまでもない。 この様にして得られるマルチフイラメントの任
意断面における各フイラメントの断面形状は第1
図に示すものとなるが、中には断面形状が偏平で
あつても、第1図に示すフイラメント断面におけ
る凹部(x、x′)のない形状のフイラメントが存
在している。かかる断面形状のフイラメントが存
在していてもその数が小数本であるマルチフイラ
メントでは、本発明の目的を充分に達成すること
ができる。 以上、述べてきた本発明のマルチフイラメント
を得るための溶融紡糸において、通常の溶融紡糸
の如く、紡糸口金から吐出した重合体流を冷却風
により冷却固化して引取つても、冷却固化してか
ら更に加熱を施してから引取つてもよい。 特に、紡糸口金から吐出した重合体流を冷却固
化してから更に加熱せしめてから引取る、所謂、
紡糸走行域加熱方法は、引取速度3000〜5500m/
分で引取ることによつて延伸糸並みの物性を有す
る潜在嵩高マルチフイラメントを1段で得ること
ができるために好ましい方法である。かかる方法
における加熱は、冷却固化せしめたマルチフイラ
メントを、冷却域の下端から50〜300cmの位置に
設置され、且つ50〜100cmの長さに亘つて150℃以
上、好ましくは200〜350℃に保持されている加熱
雰囲気中を走行せしめることによつて達成でき
る。そして、かかる加熱雰囲気を形成する手段と
しては、電気ヒータ等による加熱筒方式、加熱ス
チームを吹き込むスチームジエツト方式等の任意
の方式を採用できる。 また、溶融紡糸の後に延伸し熱セツトを施す方
法としては、溶融紡糸してから一旦捲き取つてか
ら別工程で延伸し熱セツトを施しても、或いは溶
融紡糸してから一旦捲き取ることなく延伸し熱セ
ツトを施してもよい。 尚、本発明において対象とする溶融紡糸可能な
単一重合体とは、実質的に繰返し単位の85モル%
以上がエチレンテレフタレートから構成されるポ
リエチレンテレフタレートであり、該重合体には
艶消、染色性向上、帯電防止等各目的の添加物質
を共重合体又は、ブレンド体として含んでいても
差支えない。ポリエチレンテレフタレートの固有
粘度(35℃オルソクロルフエノール中で測定)
は、0.45〜1.20が好ましく、特に0.50〜1.00が好
ましい。固有粘度が0.45未満のときは、得られる
マルチフイラメントの強度レベルが低くなる傾向
があり、固有粘度が1.20を越えるときは、紡糸時
の溶融粘度が高過ぎて溶融温度を高くしなければ
ならず、紡糸時の熱分解が大きくなる傾向があ
る。 また、本発明にて用いる溶融紡糸装置は、通常
用いられている装置を使用できることができ、得
られるマルチフイラメントを衣料用として使用す
るためには、フイラメントのデニールを0.5〜
8de、特に好ましくは1.0〜5.0de、総デニールを
30〜200de、特に好ましくは40〜150deに設定す
ることが風合上好ましい。 (作用) 従来のパルシングヤーンを得るための紡糸口金
の吐出孔は吐出断面積が異る1対の吐出孔が或る
角度で対向して設けられていると共に、吐出断面
積の小さい吐出孔のポリマー導孔の長さ(ランド
長)が吐出断面積の大きい吐出孔のポリマー導孔
の長さ(ランド長)よりも短く設定されている。
かかる設定によつて、吐出断面積の小さい吐出孔
から吐出される重合体流の流速は他方の吐出孔か
ら吐出される重合体流よりも速くなるのである。 この様に、流速差を有する1対の重合体流が紡
糸口金面直下で衝突・振動しつつ接合するために
フイランメトの断面方向及び長手方向に一応の収
縮差を付与することができるのである。 しかしながら、前述した様にかかるパルシング
ヤーンの収縮力は不充分であるため、フイラメン
ト断面方向の収縮力を大にすべく、吐出断面積の
差を大として得られるフイラメントの高配向度側
の断面積を大にせんとしても、両孔から吐出され
る重合体流の流速差は吐出孔のランド長等を調整
することによつて付与しているものであるため、
吐出断面積の差が大になる程流速差を付与するこ
とは困難になるので、かかる1対の吐出孔では限
界がある。 また、両重合体流の衝突による振動を激しくし
てフイラメントの長手方向の太さ斑を大にせんと
しても、両孔の設置距離を大にすると逆に振動は
減少、或いは消滅してしまうのである。 これに対し、本発明のマルチフイラメントの溶
融紡糸に当つては、第6図に示す如き吐出孔を有
する紡糸口金を採用するため、重合体流の衝突・
バウンドによる大きな振動の発生と、中空吐出孔
から吐出された重合体流に紡糸ドラフトの作用点
が遍在化する効果を併せ奏することができる結
果、フイラメントの長手方向に大きな太さ斑と、
第1図に示す如くフイラメント断面において、g
側の配向度がh側よりも高くなる断面方向の配向
度差とを併せ有するフイラメントから成るマルチ
フイラメントが得られるのである。 即ち、中空吐出孔を構成する複数スリツトのス
リツト巾及び単一吐出孔の孔径等を調整すること
によつて、かかる1対の吐出孔から吐出される重
合体流の流速差を充分に大きくすることができ
る。このため、紡糸ドラフトを中空吐出孔から吐
出される重合体流に集中せしめることができ、中
空吐出孔から吐出された重合体流に大きな剪断力
が作用するので中空部分の配向度が中実部分の配
向度よりも高く、且つ前記中空部分が中実である
場合よりも極めて高い配向度とすることができる
のである。 しかも、中空吐出孔を構成する複数スリツトの
合計吐出断面積が単一吐出孔の吐出断面積よりも
大きいため、得られるフイラメントの断面におい
て中実部分よりも中空部分の断面積が大きいので
ある。 また、両孔間の距離を大にしても、スリツトで
両孔を連結しているために、両重合体流は衝突・
バウンドによる大きな振動を発生しつつ接合せし
めることができる。 この様にして得られるマルチフイラメントを構
成するフイラメントは、その断面において、中空
部を有する断面積が中実部分よりも大きい中空部
分の配向度が極めて高いため、中空部分が中実部
分よりも大きな収縮率を有していると共に、フイ
ラメントの長手方向にも大きな太さ斑を有してい
るので、かかるフイラメントから成るマルチフイ
ラメントではフイラメント間、フイラメント内に
大きな収縮差を有しており、熱処理の際に大きな
収縮力を呈し得るのである。 かかるマルチフイラメントを用いた織物では、
熱処理によつて均一で且つ充分な嵩高性を呈する
ことができる。また、溶融紡糸で得られる未延伸
糸に更に延伸し熱セツトを施して実用に供し得る
力学的特性を付与したマルチフイラメントでも、
依然として充分な収縮差を有しているため、かか
るマルチフイラメントを用いた織物も熱処理によ
つて充分な嵩高性を呈することができる。 更に、本発明において、中空吐出孔のスリツト
を三角形に配置した第6図bに示す吐出孔を用い
ると、得られるフイラントの断面形状を第1図b
に示す様に略二等辺三角形とすることができ、か
かるフイラメントから成るマルチフイラメントは
独特な光沢を呈することができる。 また、本発明で得られるマルチフイラメントを
構成するフイラメントは長手方向に大きな太さ斑
をランダムに有していることから、異デニールフ
イラメントが混繊された混繊糸の如き腰のある良
好な風合を呈することもできる。 (発明の効果) 本発明で得られるマルチフイラメントは単に熱
処理を施すだけで大きな嵩高性を呈し得るので、
織編工程ではフラツトヤーンの状態で扱うことが
できるため良好な工程通過性を有する。 しかも、単一重合体から繁雑な操作を施すこと
なく得られるので、その工業的意義は極めて大き
いものである。 (実施例) 以下、本発明を実施例にて更に説明するが、本
実施例で用いる物性は下記の方法で測定したもの
である。 (1) n1、m1、及びn2、m2 マルチフイラメントの任意断面について、
560部の倍率で断面写真をとり、中空部を服け
断面積が最大となるフイラメント断面の長軸
(n1)及び短軸に平行な最大直線長(m1)、及
び前記断面積が最小とするフイラメント断面の
長軸(n2)及び短軸に平行な最大直線長(m2)
とを夫々実測した。 (2) 最大応力を呈するときの伸度(L2)及び最
終破断伸度(L1) 通常の引つ張り型試験機にて、温室25℃、湿
度60%で、試料長10cm、引つ張り速度200mm/
mmの条件で応力−伸度曲線を求め、応力が最大
となる伸度(L2)、応力が零となる伸度を最終
破断伸度(L1)とした。測定は5回繰り返し
て行ない、その平均値を求めた。 (3) 収縮率 (i) 120℃乾熱収縮率 マルチフイラメントの「カセ」を作り、こ
の「カセ」に2.5mg/dに相当する荷重をか
け、120℃で5分間乾熱処理した時の収縮率
を以下の式より求めた。 [l0−l1/l0]×100=収縮率(%) (l0:処理前の「カセ」の長さ) (l1:処理後の「カセ」の長さ) (ii) 沸水収縮率 マルチフイラメント「カセ」を作り、この
「カセ」に0.7mg/dに相当する荷重をかけ、
沸騰水中で30分間処理した時の収縮率を以下
の式より求めた。 [l0−l1/l0]×100=収縮率(%) (l0:処理前の「カセ」の長さ) (l1:処理後の「カセ」の長さ) (5) 風合い(嵩高感) 得られた潜在嵩高性マルチフイラメントを筒
編みし、分散染料を使用して常法で染色し、水
洗乾燥後、180℃で1分間セツトし風合い(嵩
高感)評価用の試料とした。風合い(嵩高感)
は、肉眼観察並びに触感によつて評価した。 実施例 1 極限粘度[η]が0.64のポリエチレンテレフタ
レート(艶消剤としてTiO2を0.3重量%含有)を
溶融してから更に300℃に昇温し、第6図aに示
す吐出孔から37.5g/分の吐出量で吐出した。 ここで使用した吐出孔の各部の寸法を第1表に
示す。
の製造法に関し、更に詳しくは断面方向及び長手
方向に収縮差を有するフイラメントから成る潜在
嵩高性マルチフイラメント及びその製造法に関す
る。 (従来技術) 熱処理を施すことによつて嵩高性を呈し得る潜
在嵩高性マルチフイラメントは、収縮差を有する
フイラメント同志を混繊することによつて得るこ
とができる(例えば、米国特許第3200576号明細
書参照)。 かかるマルチフイラメントは、熱処理時に高収
縮フイラメントが収縮し、これにより低収縮フイ
ラメントが張り出すことによつて嵩高性を付与す
るものである。 そして、この際に高収縮フイラメントを太デニ
ールとし、低収縮フイラメントを細デニールとす
ると、熱処理後の嵩高マルチフイラメントの風合
は腰があると共に、柔かなタツチを呈するものと
なる。 ところで、かかる収縮差を有するフイラメント
から成るマルチフイラメントを得るには、予め収
縮差を付与された複数の糸条を混繊する方法が多
く採用されており、例えば特開昭54−82423号公
報(米国特許第4153660号明細書)には次の様な
方法が提案されている。 即ち、この方法は、同一紡糸口金から吐出され
た重合体流を急冷して得られる紡出糸条を2つの
糸束に分割して、その1つの糸束には水が主体で
ある紡糸仕上剤を付与し、他の1つの糸束には水
よりも高温の沸点を有する剤を付与してから、両
糸束を別々に同一条件下で熱処理しつつ延伸を施
してから混線するものである。 かかる方法は紡糸仕上剤の沸点差を利用して糸
束間に収縮差を付与するものであるが、この様に
2種類の紡糸仕上剤を付与する等の極めて繁雑な
操作を施す必要がある。 また、この様な同一紡糸口金から吐出される紡
出糸条において糸条を構成するフイラメント間に
デニール差を付与せんとすると、糸揺れによるフ
イラメントの密着、或いは断糸等のトラブルが発
生し易く、ドラフト率、冷却風量等の紡糸条件を
厳密に管理することが必要である。 これに対して、かかる繁雑な操作を施すことな
く潜在嵩高性マルチフイラメントを製造する方法
が特開昭54−42415号公報及び特開昭55−51809号
公報(米国特許第4332757号及び米国特許第
4349604号)にて提案されている。 この方法は単一の紡糸口金に配置されている或
る角度で対向し、且つ吐出断面積が異る1対の吐
出孔を通して2つの流速差を有するポリエステル
の流れを吐出し、口金面直下で、前記1対の吐出
孔の吐出断面積が大なる吐出孔から吐出した低速
重合体流に、吐出断面積が小なる吐出孔から吐出
した高速重合体流を衝突・振動させつつ接合せし
めてから、これを急冷して巻き取るものであつ
て、得られるマルチフイラメント(以下、パルシ
ングヤーンと称することがある)は断面方向及び
長手方向に収縮差を有しているフイラメントから
成る。 しかしながら、この様な潜在嵩高性マルチフイ
ラメントは織編物と成してから熱処理を施される
ことが一般的であるが、前記パルシングヤーンは
織編物、特に織物での嵩高性が不足すると言う欠
点を有している。 即ち、織物の織組織による拘束力が強く、しか
もパルシングヤーンの有する収縮力が低いため、
パルシングヤーンの収縮が制限されて嵩高性が不
足することに因る。 また、かかるパルシングヤーンは紡糸してから
更に延伸熱セツトを施して実用に供し得る力学的
性質を付与すると、前記収縮差が消失する欠点を
有しているので、極めて大きな収縮率のものでも
延伸熱セツトを施すことなく使用せざるを得な
い。このため、パルシングヤーンを用いた織編物
ではシボ状の収縮斑や“笑い”等の欠点が発生す
ることがあり、染色条件及び仕上条件が大巾に制
約を受けるため実用に供し得なかつた。 尚、ここで言う“笑い”とは、織編物に応力が
作用したときに、前記織編物を構成するフイラメ
ントが部分的に塑性変形することによつて生じる
織編物の欠点である。 (発明の目的) 本発明の第1の目的は織編物、特に織物におい
て収縮斑や“笑い”等の欠点のない、均一で且つ
充分な嵩高性を呈し得る潜在嵩高性マルチフイラ
メントの製造法及び紡糸口金を提供することにあ
る。 本発明の第2の目的は延伸を施して実用に供し
得る力学的性質を付与しても充分な嵩高性(収縮
差)を呈し得る潜在嵩高性マルチフイラメント及
びその製造法を提供することにある。 本発明の第3の目的は独特な光沢を呈し得る潜
在嵩高性マルチフイラメント及びその製造法を提
供することにある。 本発明の第4の目的は異デニールフイラメント
が混繊されたマルチフイラメントの如き腰のある
柔かなタツチを呈し得る潜在嵩高性マルチフイラ
メント及びその製造法を提供することにある。 (発明の構成) 本発明者等は、かかる目的を達成すべく検討を
重ねたところ、従来のパルシングヤーンの製造に
おいて採用されている紡糸口金の吐出孔、即ち互
いに或る角度で対向し、且つ吐出断面積が異る1
対の吐出孔から吐出される重合体流の流速差が不
充分であり、しかも紡糸口金面直下で前記吐出孔
から吐出される1対の重合体流を衝突、振動させ
つつ接合せしめる際に発生する振動周期も小さい
ため、得られるパルシングヤーンを構成するフイ
ラメント内及びフイラメント間の収縮差が小さ
く、かかるフイラメントから成るパルシングヤー
ンの収縮力も劣ることを知つた。 本発明者等は、かかる知見に基き更に検討を重
ねた結果、紡糸口金の1対の吐出孔をスリツトで
連結せしめ、且つ吐出断面積が大なる吐出孔を複
数のスリツトで中空部を形成する中空吐出孔と
し、他方の吐出断面積が小なる吐出孔を単一吐出
孔とした紡糸口金から流速差を有する1対の重合
体流を吐出せしめて衝突・バウンドさせることに
よつて、長手方向に太さ斑を有する偏平中空フイ
ラメントが得られ、かかるフイラメントから成る
マルチフイラメントでは、フイラメント間及びフ
イラメント内の収縮差を大きくすることができる
ために充分な収縮力を呈し得ることを見い出し、
本発明に到達した。 即ち、本発明は溶融紡糸可能な単一重合体から
成るフイラメントで構成されているマルチフイラ
メントにおいて、構成フイラメントが偏平で且つ
長軸方向の外周部に該長軸を挾んで互いに対向す
る1対の凹部を有していると共に、前記1対の凹
部間に在る短軸に対して非対称である断面形状
と、フイラメントの長手方向に太さ斑とを有する
偏心中空フイラメントであつて、該中空部が前記
フイラメント断面において短軸に平行な直線が最
大になる側に在り、且つ該短軸によつて分割され
る前記中空部存在部分の配向度がこれに隣接する
中実部分の配向度よりも大であることを特徴とす
る潜在嵩高性マルチフイラメントであり、更に
は、吐出断面積が異る一対の吐出孔をスリツトに
より互いに連結せしめると共に、吐出断面積の大
なる吐出孔を複数のスリツトにより中空部を形成
した中空吐出孔とし、他方の吐出面積の小なる吐
出孔を単一吐出孔とした紡糸口金を通して、溶融
状態にある単一重合体を吐出し、その降下記〜
の条件を満足する吐出孔を用い、前記1対の吐
出孔のうち吐出断面積が大なる吐出孔から吐出し
た重合体流の吐出速度を、他方の吐出断面積が小
なる吐出孔から吐出した重合体流のそれよりも低
速に維持することにより、前記低速重合体流に高
速重合体流を衝突、バウンドさせつつ接合させ、
次いで冷却固化せしめてから引取ることを特徴と
する潜在嵩高性マルチフイラメントの製造法であ
る。 1.5≦S1/S2≦15 …… S1>S2>S3 …… 0.04≦lA1−lB1/2≦0.30 …… 0.10≦lA2<lB1<lA1≦1.5 …… 0.05≦l≦1.30 …… 0.03≦W<lA2≦1.0 …… 〔但し、 S1:中空吐出孔の断面積(mm2) S2:単一吐出孔の吐出断面積(mm2) S3:中空吐出孔と単一吐出孔とを連結するスリツ
トの吐出断面積(mm2) lA1:中空吐出孔の外径(mm) lB1: 〃 内径(〃) lA2:単一吐出孔の内径(〃) l:連結スリツトの長さ(〃) W: 〃 の巾(〃)〕 本発明を図面により説明する。 第1図は本発明のマルチフイラメントを構成す
るフイラメントの断面図、第2図は本発明によつ
て得られるマルチフイラメントを構成するフイラ
メントの長手方向の側面図及び前記側面図を90゜
回転せしめた正面図、第3図のa及びcは夫々後
述する実施例1及び比較例2で得られた本発明の
マルチフイラメント及び従来のパルシングヤーン
のウースター斑を夫々示すグラフ、第4図は本発
明のマルチフイラメントの断面図、第5図は本発
明のマルチフイラメントの応力(St)−伸度(El)
曲線、第6図は本発明のマルチフイラメントを得
るために紡糸口金の吐出孔断面図、第7図は第6
図aに示す吐出孔からフリーフオールで重合体を
吐出した直後のフイラメントを横断面に沿つて切
断した際のフイラメント斜視図(電子顕微鏡写
真)を夫々示す。 第1図において、nは長軸、cは短軸、x,
x′は長軸(n)を挾んで互いに対向する1対の凹
部、eは中空部、mはフイラメント断面で短軸(c)
に平行な直線のうちで最大値を示す直線の長さ、
gは中空部(e)を含む断面において短軸(c)で分割さ
れる中空部分、hは同じく短軸(c)で分割される中
実部分であつて、gの部分の断面積はh部分のそ
れよりも常に大である。 本発明のマルチフイラメントにおいて、その構
成するフイラメントの断面形状が第1図a,bに
示す如く偏平であつて長軸(n)を挾み互いに対
向する1対の凹部(x、x′)結ぶことによつて形
成される短軸(c)に対して非対称で、且つg部分、
即ち最大直線長(m)を有する側に中空部(e)が存
在するものである。 そして、前記断面形状を有するフイラメント断
面のg部分の配向度がh部分の配向度よりも高い
と共に、フイラメントの長手方向に第2図に示す
様な太さ斑を有している。 第2図a,bは本発明のマルチフイラメントを
構成するフイラメントの側面図及び前記側面図を
90゜回転せめた正面図を夫々示す。 本発明のマルチフイラメントを構成するフイラ
メントの長手方向の太さ斑は、第2図a,bに示
す様に、長手方向に対してh部分の断面がg部分
の断面積よりも大巾に変化しつつ接合しているの
である。 この様に、本発明のマルチフイラメントを構成
するフイラメントは、その断面において第1図に
示す如く中空部を含むg部分の断面積がh部分よ
りも大きいと共にg部分の配向度がh部分よりも
高く、且つ後述する様に紡糸時に大きな剪断力を
受けるためにg部分が中実である場合よりも極め
て高い配向度となるので、長手方向の太さ斑と相
俟つて従来のパルシングヤーンよりも大きな収縮
力を有することができる。その結果、織組織によ
る拘束力が強い織物でも本発明のマルチフイラメ
ントを用いた織物では均一で充分な嵩高性を呈し
得るのである。 本発明において、フイラメント断面形状の好ま
しい態様としては、第1図aに示す様な略まゆ形
を呈するもの、或いは第1図bに示す様な略二等
辺三角形を呈するものが好ましい。特に、略二等
辺三角形の断面形状を有するフイラメントでは独
特な光沢を呈することができ好ましい。 そして、かかる偏平中空フイラメントにおける
g部分の中空率は2〜30%、特に好ましくは5〜
15%であつて、g部分の中空部(e)を含む断面積
Sgとh部分の断面積Shとの比(Sg/Sh)は1.2〜
3、特に、1.3〜1.8であることが好ましい。 但し、前記中空率及び断面積Sg及びShはフイ
ラメント断面の顕微鏡写真から求めたものであ
る。 また、第2図a,bに示す如く、フイラメント
の長手方向にh部分がg部分に巻付くことなく接
合しているフイラメントは、その長手方向の変形
度、即ち太さ斑が大きく好ましいものである。 そして、この様な長手方向に大きな太さ斑を有
するフイラメントで構成されている本発明のマル
チフイラメントは当然その長手方向にも大きな太
さ斑を有している。 このことは、第3図aに示す後述の実施例1で
得れたマルチフイラメントのウースター斑のグラ
フから明らかであり、第3図bに示す後述の比較
例1で得られた従来のパルシングヤーンのウース
ター斑のグラフと比較しても、本発明によつて得
らるマルチフイラメントの長手方向の太さ斑は大
きい。 尚、かかるウースター斑はツエルベーガーウー
スター社製のウースターイブネステスターモデル
Cにより測定したものである。 また、本発明によつて得られるマルチフイラメ
ントを構成するフイラメントの長手方向には第2
図に示す様な大きな太さ斑[山から山の長さ(L)が
0.5〜3m]がランダムに存在するため、かかる
フイラメントから成るマルチフイラメントの任意
断面においては、第4図に示す様に、あたかもデ
ニール差を有するフイラメントが混繊されている
のと同様な効果を呈する。 つまり、第5図において、Aは一本のマルチフ
イラメント断面での最大断面積であるフイラメン
ト断面を示し、n1及びm1はフイラメント断面A
の長軸及び短軸に平行な最大直線長を夫々示す。
また、Bは第4図に示す一本のマルチフイラメン
ト断面での最小断面積のフイラメント断面を示
し、n2及びm2はフイラメント断面Bの長軸及び
短軸に平行な最大直線長を夫々示す。 一般的に、第4図に示す様な断面積が異るフイ
ラメント、即ち、デニール差を有するフイラメン
トが混繊されている場合、断面積の大きい(太デ
ニール)フイラメントは断面積の小さい(細デニ
ール)フイラメントよりも収縮率が大きいため、
熱処理によつて、太デニールフイラメントは収縮
して張力担持体となり、細デニールフイラメント
はマルチフイラメントの外側に張り出すので、腰
があり且つ柔なタツチの風合を呈することができ
る。 本発明で得られるマルチフイラメントにおい
て、前記最大断面積のフイラメントA及び最小断
面積のフイラメントBが下記[]を満足するも
のは腰があり且つ柔なタツチの風合を呈し得るこ
とができ好ましい。 n1×m1/n2×m2≧1.5 ……[] 更に、本発明で得られるマルチフイラメントは
その断面方向及び長手方向に前述した様に大きな
斑、即ち大きな収縮差を有しているため、あたか
もフイラメント間及びフイラメント内に収縮差を
有するフイラメントを混繊した構造となつてい
る。このために、本発明で得られるマルチフイラ
メントの応力−伸度曲線は第5図に示すものとな
る。 ここで、第5図aは本発明の製造法で得られた
未延伸マルチフイラメントの応力(St)−伸度
(El)曲線であり、第5図bは紡糸後、更に延伸
熱セツトを施して得られたマルチフイラメントの
応力(St)−伸度(El)曲線である。 第5図において、L1は最終破断伸度、L2は最
大応力を示すときの伸度を夫々示す。 この様に、L1及びL2の伸度が見られるのは前
述した収縮差を有するフイラメントを混繊せしめ
た混繊糸の特徴であつて、かかる収縮差の極めて
小さい、或いは収縮差のないフイラメントから成
るマルチフイラメントでは通常L2のみが見られ
るに過ぎないのである。 この点、本発明で得られるマルチフイラメント
では、混繊等の操作を行うことなく、あたかも収
縮差のあるフイラメントから成る混繊糸と同等の
効果を呈することができる。 そして、(L1−L2)の値が大である程、前記収
縮差が大であることを示し、かかる(L1−L2)
の値が下記[]式を満足するマルチフイラメン
トが充分な嵩高性を呈す織編物を得ることができ
好ましい。 L−L2≧20% ……[] 本発明で得られるマルチフイラメントにおいて
は、未延伸糸の状態では勿論のこと、延伸し熱セ
ツトを施して実用に耐え得る力学的性質を付与し
ても充分に上記[]式を満足するものを得るこ
とができる。 以上、述べてきた本発明のマルチフイラメント
は、第6図に示す吐出孔を有する紡糸口金を用い
て紡糸することによつて得ることができる。 第6図において、1a〜1c,2,3は夫々重
合体流を吐出する吐出孔であつて、4は1a〜1
cで示される複数のスリツトで形成される中空
部、2は単一吐出孔、3は1a〜1cのスリツト
及び中空部4からなる中空吐出孔と、単一吐出孔
2とを連結するスリツト、lA2は単一吐出孔2の
内径、l及びWはスリツト3の長さ及び幅、lA1
及びlB1は第6図aの中空吐出孔の外径及び内径
を夫々示す。 かかる吐出孔の特徴は、吐出断面積が異なる1
対の吐出孔として、吐出断面積の大なる吐出孔に
複数のスリツト1a〜1cで構成される中空吐出
孔を、他方の吐出断面積の小なる吐出孔に単一吐
出孔2を夫々採用したことと、中空吐出孔と単一
吐出孔2とをスリツト3で連結したことにある。 そして、本発明のマルチフイラメントの製造法
では、紡糸口金面直下で第6図の吐出孔の中空吐
出孔から吐出された重合体流に、前記重合体流の
流速より高速である単一吐出孔2から吐出された
重合体流を衝突、バウンドさせつつ接合せしめ、
次いで冷却固化せしめてから引取ることが必要で
ある。 この様な本発明のマルチフイラメントの製造法
を採用することによつて、第1図に示す断面形状
であつて、g部分の配向度がh部分の配向度より
も高く、且つg部分が中実である場合よりも極め
て高い配向度となり、しかも長手方向に太さ斑を
併せ有するフイラメントが得られるのである。 尚、第1図において、x,x′で示される1対の
凹部は第6図の中空吐出孔から吐出される重合体
流に単一吐出孔2から吐出される重合体流が接合
した接合部である。 本発明によつて、かかるフイラメントが得られ
る理由は次の様に考えられる。 即ち、一般的に、中空吐出孔を構成している各
スリツト、及び単一吐出孔を通過する重合体流の
流速が互いに等しいならば、中空吐出孔の複数ス
リツトの合計圧力損失は単一吐出孔よりも大とな
る。 しかしながら、中空吐出孔と単一吐出孔2とを
スリツト3を介して同一吐出孔内に併有している
第6図に示す吐出孔においては、両孔の圧力損失
が等しくなる様に両孔を通過する重合体流間に流
速差が生じる。このため、中空吐出孔のスリツト
巾、単一吐出孔2の内径(lA2)等を前記〜
のように調整することによつて、中空吐出孔の1
a〜1cのスリツトよりも単一吐出孔2から吐出
される重合体流の流速が速くなる様に流速差を付
与すると共に、その流速差を容易に大きくするこ
とができるのである。 この様に、中空吐出孔のスリツト1a〜1cを
通過する重合体流の流速は単一吐出孔2を通過す
る重合体流よりも遅いため、紡糸ドラフトは中空
吐出孔のスリツト1a〜1cから吐出された重合
体流に主に集中する。特に、紡糸引取速度2500
m/分以上の高速紡糸では、500以上の高ドラフ
トが中空吐出孔のスリツト1a〜1cから吐出さ
れた重合体流に集中するため、かかる重合体流が
形成する中空部分は中空吐出孔が単一吐出孔であ
る場合よりも大きな剪断力を受けて、重合体流が
中実である場合よりも極めて高い配向度となるの
である。 また、単一吐出孔2の吐出断面積(S2)は中空
吐出孔のスリツト1a〜1cの合計吐出断面積
(S1)よりも小さいため、中空部を含むg側の断
面積よりもh側の断面積が小さくなるのである。 この様にして得られるフイラメント断面では、
第1図に示す如く、中空部cを含む断面積がh部
分よりも大きなg部分がh部分よりも高配向度と
なる。 更に、中空吐出孔及び単一吐出孔2から吐出さ
れる重合体流流速が異なると共に、スリツト3か
ら吐出される重合体流で前記2つの重合体流が連
結されているために、中空吐出孔から吐出された
重合体流に単一吐出孔2から吐出された重合体流
が衝突・バウンドしつつ接合する結果、第2図に
示す如く長手方向に太さ斑を有するフイラメント
が得られるのである。 本発明において採用する中空吐出孔のスリツト
の配列形状、及び単一吐出孔2の断面形状は特に
限定する必要はなく、三角形、四角形、Y字形等
の斯界に知られている形状のものが使用できる。 例えば、中空吐出孔のスリツトの配列形状とし
ては、英国特許第853062号明細書に記載されてい
る非円形状のものを採用でき、中でも第1図bに
示す三角形状の配列のものが好ましい。 かかる、三角形状の中空吐出孔を用いた第6図
bの吐出孔によると、第1図bに示す略二等辺三
角形の断面形状を有するフイラメントが得られ、
このフイラメントから成るマルチフイラメントは
独特な光沢を呈することができる。 また、中空吐出孔のスリツト配列形状及び単一
吐出孔の断面形状を第6図aの如く円形状とする
と、第1図aに示す略まゆ型の断面形状となる。
第6図aの吐出孔は工作が容易で好ましい。 更に、第6図において、単一吐出孔2と中空吐
出孔とを単一スリツト3で連結することによつ
て、驚くべきことに単一吐出孔2から吐出される
重合体流は中空吐出孔から吐出される重合体流の
片側で衝突・バウンドしつつ接合するので、中空
部分gに中実部分hがまきつくことなく接合して
いる第2図に示すフイラメントが得られ、フイラ
メントの長手方向に大きな太さ斑を付与すること
ができる。 この様に、フイラメントの断面方向に大きな配
向度差を有すると共に、フイラメントの長手方向
に太きな太さ斑を有するフイラメントから成るマ
ルチフイラメントは、紡糸後、更に延伸し熱セツ
トを施して実用に供し得る力学的特性を付与して
も、充分な収縮力を呈することができ好ましい。
かかるスリツト3の形状は第6図に示す直線状の
他に、カギ形、或いは湾曲していてもよい。要は
中空吐出孔と単一吐出孔2とがスリツトで連結さ
れていることである。 これに対して、本発明者の実験によると、特開
昭55−51809号公報(米国特許第4332757号及び米
国特許第4349604号明細書)に記載されている紡
糸口金を用いてパルシングヤーンを得る場合に
は、吐出面積の大なる吐出孔から吐出された重合
体流に、吐出断面積の小なる吐出孔から吐出され
た重合体流が巻付きつつ接合したフイラメントか
ら成るマルチフイラメントしか得られず、フイラ
メントの長手方向に大きな太さ斑を付与すること
は困難であつた。 また、スリツト3の長さを、得られるフイラメ
ント断面において第1図に示す凹部(x、x′)が
形成されるよう設定することによつても、中空吐
出孔及び単一吐出孔2から吐出される両重合体流
の衝突・バウンドによる振動周期をより大きくす
ることができ、得られるフイラメントの長手方向
に極めて大きな太さ斑を付与することができる。
その結果、かかるフイラメントから成るマルチフ
イラメントの任意断面は第4図に示す様なフイラ
メント断面積差を有するものとなり、その際のn1
×m1/n2×m2の値は1.5以上となると共に、前記
マルチフイラメントの応力(St)−伸度(El)曲
線においても、(L1−L2)の値は20%以上とな
る。 尚、第6図に示す吐出孔は、中空吐出孔に1個
の単一吐出孔2が連結されているが、複数個の単
一吐出孔2が連結されていてもよい。 また、得られるフイラメント断面において、中
空部が複数個となる様に第6図に示す吐出孔の形
状を変更してもよく、例えば中空吐出孔の中空部
を複数個設けてもよい。 これまで述べてきた本発明にて用いる吐出孔の
具体的な寸法を第6図aの吐出孔と対比させて下
記に示す。 1.5≦S1/S2≦15 …… S1>S2>S3 …… 0.04≦lA1−lB1/2≦0.30 …… 0.10≦lA2<lB1<lA1≦1.5 …… 0.05≦l≦1.30 …… 0.03≦W<lA2≦1.0 …… 但し、 S1:中空吐出孔の断面積(mm2) S2:単一吐出孔の吐出断面積(mm2) S3:中空吐出孔と単一吐出孔とを連結するスリツ
トの吐出断面積(mm2) lA1:中空吐出孔の外径(mm) lB1: 〃 内径(〃) lA2:単一吐出孔の内径(〃) l:連結スリツトの長さ(〃) W: 〃 の巾(〃) そして、この様な吐出孔から成る紡糸口金を採
用することによつて、あたかも異デニールフイラ
メントが混繊された如きマルチフイラメントを容
易に得ることができる。 また、本発明のマルチフイラメントの製造法に
おいて、中空吐出孔から吐出される重合体流の流
速(v1)と、単一吐出孔2から吐出される重合体
流の流速(v2)との吐出速度比(v1/v2)を1/
7〜1/1.5、特に1/3.4〜1/2.3に設定するこ
とが好ましく、この時の重合体の吐出量比[中空
吐出孔の吐出量(Q1)/単一吐出孔2の吐出量
(Q2)]は3/1〜1/5、特に1.5/1〜1/3.3
に設定することが好ましい。 今、第6図aに示す吐出孔であつて、前記寸法
の範囲内にある吐出孔を有する紡糸口金面直下で
得られる紡出フイラメントの形状を第7図に示
す。 第7図はフリーフオールで得たものであり、中
空吐出孔から吐出された側の断面積はほとんど変
化せずに、単一吐出孔から吐出された側の断面積
が変化していることを示している。また、第7図
より単一吐出孔から吐出された重合体流は中空吐
出孔から吐出された重合体流に捲き付くことなく
一方向で振動していることも併せて示している。 唯、第7図に示す紡出フイラメントは紡出ドラ
フトの作用受けないフリーフオールで得られたも
のであるため、本発明で得られるマルチフイラメ
ントを構成するフイラメントの断面形状と差異が
認められるが、紡糸ドラフト作用下では中実部分
が中空部分にバウンドしつつ接合しているために
中実部分の長さは中空部分よりも長くなるので、
第1図aに示すフイラメント断面形状を有するフ
イラメントが得られるのである。 この様にして吐出、接合せしめた重合体流を冷
却固化した後に2500m/分以上で引取ることが第
1図で示すフイラメント断面でのg側の配向度を
h側よりも大とするうえで好ましい。 ここで、紡糸引取速度が2500m/分未満であれ
ば得られるフイラメントの長手方向には太さ斑が
存在するのの、フイラメントの断面方向の配向度
差は不充分なものとなる傾向がある。 かかる紡糸引取速度が4000m/分以下のもの
は、更に延伸し100℃以上の温度で熱セツトを施
すことによつて、得られるマルチフイラメントの
力学的特性を実用に供し得る程度までに高めるこ
とができる。この様にしても本発明で得られるマ
ルチフイラメントでは依然として断面方向及び長
手方向に大きな収縮差を有しているため、熱処理
によつて充分な嵩高性を低すことができる。 また、紡糸引取速度が4000m/分以上、特に
4500〜5500m/分では、得られるマルチフイラメ
ントをそのまま実用に供し得るものであり、かか
るマルチフイラメントは熱処理によつて充分な嵩
高性呈し得ることは言うまでもない。 この様にして得られるマルチフイラメントの任
意断面における各フイラメントの断面形状は第1
図に示すものとなるが、中には断面形状が偏平で
あつても、第1図に示すフイラメント断面におけ
る凹部(x、x′)のない形状のフイラメントが存
在している。かかる断面形状のフイラメントが存
在していてもその数が小数本であるマルチフイラ
メントでは、本発明の目的を充分に達成すること
ができる。 以上、述べてきた本発明のマルチフイラメント
を得るための溶融紡糸において、通常の溶融紡糸
の如く、紡糸口金から吐出した重合体流を冷却風
により冷却固化して引取つても、冷却固化してか
ら更に加熱を施してから引取つてもよい。 特に、紡糸口金から吐出した重合体流を冷却固
化してから更に加熱せしめてから引取る、所謂、
紡糸走行域加熱方法は、引取速度3000〜5500m/
分で引取ることによつて延伸糸並みの物性を有す
る潜在嵩高マルチフイラメントを1段で得ること
ができるために好ましい方法である。かかる方法
における加熱は、冷却固化せしめたマルチフイラ
メントを、冷却域の下端から50〜300cmの位置に
設置され、且つ50〜100cmの長さに亘つて150℃以
上、好ましくは200〜350℃に保持されている加熱
雰囲気中を走行せしめることによつて達成でき
る。そして、かかる加熱雰囲気を形成する手段と
しては、電気ヒータ等による加熱筒方式、加熱ス
チームを吹き込むスチームジエツト方式等の任意
の方式を採用できる。 また、溶融紡糸の後に延伸し熱セツトを施す方
法としては、溶融紡糸してから一旦捲き取つてか
ら別工程で延伸し熱セツトを施しても、或いは溶
融紡糸してから一旦捲き取ることなく延伸し熱セ
ツトを施してもよい。 尚、本発明において対象とする溶融紡糸可能な
単一重合体とは、実質的に繰返し単位の85モル%
以上がエチレンテレフタレートから構成されるポ
リエチレンテレフタレートであり、該重合体には
艶消、染色性向上、帯電防止等各目的の添加物質
を共重合体又は、ブレンド体として含んでいても
差支えない。ポリエチレンテレフタレートの固有
粘度(35℃オルソクロルフエノール中で測定)
は、0.45〜1.20が好ましく、特に0.50〜1.00が好
ましい。固有粘度が0.45未満のときは、得られる
マルチフイラメントの強度レベルが低くなる傾向
があり、固有粘度が1.20を越えるときは、紡糸時
の溶融粘度が高過ぎて溶融温度を高くしなければ
ならず、紡糸時の熱分解が大きくなる傾向があ
る。 また、本発明にて用いる溶融紡糸装置は、通常
用いられている装置を使用できることができ、得
られるマルチフイラメントを衣料用として使用す
るためには、フイラメントのデニールを0.5〜
8de、特に好ましくは1.0〜5.0de、総デニールを
30〜200de、特に好ましくは40〜150deに設定す
ることが風合上好ましい。 (作用) 従来のパルシングヤーンを得るための紡糸口金
の吐出孔は吐出断面積が異る1対の吐出孔が或る
角度で対向して設けられていると共に、吐出断面
積の小さい吐出孔のポリマー導孔の長さ(ランド
長)が吐出断面積の大きい吐出孔のポリマー導孔
の長さ(ランド長)よりも短く設定されている。
かかる設定によつて、吐出断面積の小さい吐出孔
から吐出される重合体流の流速は他方の吐出孔か
ら吐出される重合体流よりも速くなるのである。 この様に、流速差を有する1対の重合体流が紡
糸口金面直下で衝突・振動しつつ接合するために
フイランメトの断面方向及び長手方向に一応の収
縮差を付与することができるのである。 しかしながら、前述した様にかかるパルシング
ヤーンの収縮力は不充分であるため、フイラメン
ト断面方向の収縮力を大にすべく、吐出断面積の
差を大として得られるフイラメントの高配向度側
の断面積を大にせんとしても、両孔から吐出され
る重合体流の流速差は吐出孔のランド長等を調整
することによつて付与しているものであるため、
吐出断面積の差が大になる程流速差を付与するこ
とは困難になるので、かかる1対の吐出孔では限
界がある。 また、両重合体流の衝突による振動を激しくし
てフイラメントの長手方向の太さ斑を大にせんと
しても、両孔の設置距離を大にすると逆に振動は
減少、或いは消滅してしまうのである。 これに対し、本発明のマルチフイラメントの溶
融紡糸に当つては、第6図に示す如き吐出孔を有
する紡糸口金を採用するため、重合体流の衝突・
バウンドによる大きな振動の発生と、中空吐出孔
から吐出された重合体流に紡糸ドラフトの作用点
が遍在化する効果を併せ奏することができる結
果、フイラメントの長手方向に大きな太さ斑と、
第1図に示す如くフイラメント断面において、g
側の配向度がh側よりも高くなる断面方向の配向
度差とを併せ有するフイラメントから成るマルチ
フイラメントが得られるのである。 即ち、中空吐出孔を構成する複数スリツトのス
リツト巾及び単一吐出孔の孔径等を調整すること
によつて、かかる1対の吐出孔から吐出される重
合体流の流速差を充分に大きくすることができ
る。このため、紡糸ドラフトを中空吐出孔から吐
出される重合体流に集中せしめることができ、中
空吐出孔から吐出された重合体流に大きな剪断力
が作用するので中空部分の配向度が中実部分の配
向度よりも高く、且つ前記中空部分が中実である
場合よりも極めて高い配向度とすることができる
のである。 しかも、中空吐出孔を構成する複数スリツトの
合計吐出断面積が単一吐出孔の吐出断面積よりも
大きいため、得られるフイラメントの断面におい
て中実部分よりも中空部分の断面積が大きいので
ある。 また、両孔間の距離を大にしても、スリツトで
両孔を連結しているために、両重合体流は衝突・
バウンドによる大きな振動を発生しつつ接合せし
めることができる。 この様にして得られるマルチフイラメントを構
成するフイラメントは、その断面において、中空
部を有する断面積が中実部分よりも大きい中空部
分の配向度が極めて高いため、中空部分が中実部
分よりも大きな収縮率を有していると共に、フイ
ラメントの長手方向にも大きな太さ斑を有してい
るので、かかるフイラメントから成るマルチフイ
ラメントではフイラメント間、フイラメント内に
大きな収縮差を有しており、熱処理の際に大きな
収縮力を呈し得るのである。 かかるマルチフイラメントを用いた織物では、
熱処理によつて均一で且つ充分な嵩高性を呈する
ことができる。また、溶融紡糸で得られる未延伸
糸に更に延伸し熱セツトを施して実用に供し得る
力学的特性を付与したマルチフイラメントでも、
依然として充分な収縮差を有しているため、かか
るマルチフイラメントを用いた織物も熱処理によ
つて充分な嵩高性を呈することができる。 更に、本発明において、中空吐出孔のスリツト
を三角形に配置した第6図bに示す吐出孔を用い
ると、得られるフイラントの断面形状を第1図b
に示す様に略二等辺三角形とすることができ、か
かるフイラメントから成るマルチフイラメントは
独特な光沢を呈することができる。 また、本発明で得られるマルチフイラメントを
構成するフイラメントは長手方向に大きな太さ斑
をランダムに有していることから、異デニールフ
イラメントが混繊された混繊糸の如き腰のある良
好な風合を呈することもできる。 (発明の効果) 本発明で得られるマルチフイラメントは単に熱
処理を施すだけで大きな嵩高性を呈し得るので、
織編工程ではフラツトヤーンの状態で扱うことが
できるため良好な工程通過性を有する。 しかも、単一重合体から繁雑な操作を施すこと
なく得られるので、その工業的意義は極めて大き
いものである。 (実施例) 以下、本発明を実施例にて更に説明するが、本
実施例で用いる物性は下記の方法で測定したもの
である。 (1) n1、m1、及びn2、m2 マルチフイラメントの任意断面について、
560部の倍率で断面写真をとり、中空部を服け
断面積が最大となるフイラメント断面の長軸
(n1)及び短軸に平行な最大直線長(m1)、及
び前記断面積が最小とするフイラメント断面の
長軸(n2)及び短軸に平行な最大直線長(m2)
とを夫々実測した。 (2) 最大応力を呈するときの伸度(L2)及び最
終破断伸度(L1) 通常の引つ張り型試験機にて、温室25℃、湿
度60%で、試料長10cm、引つ張り速度200mm/
mmの条件で応力−伸度曲線を求め、応力が最大
となる伸度(L2)、応力が零となる伸度を最終
破断伸度(L1)とした。測定は5回繰り返し
て行ない、その平均値を求めた。 (3) 収縮率 (i) 120℃乾熱収縮率 マルチフイラメントの「カセ」を作り、こ
の「カセ」に2.5mg/dに相当する荷重をか
け、120℃で5分間乾熱処理した時の収縮率
を以下の式より求めた。 [l0−l1/l0]×100=収縮率(%) (l0:処理前の「カセ」の長さ) (l1:処理後の「カセ」の長さ) (ii) 沸水収縮率 マルチフイラメント「カセ」を作り、この
「カセ」に0.7mg/dに相当する荷重をかけ、
沸騰水中で30分間処理した時の収縮率を以下
の式より求めた。 [l0−l1/l0]×100=収縮率(%) (l0:処理前の「カセ」の長さ) (l1:処理後の「カセ」の長さ) (5) 風合い(嵩高感) 得られた潜在嵩高性マルチフイラメントを筒
編みし、分散染料を使用して常法で染色し、水
洗乾燥後、180℃で1分間セツトし風合い(嵩
高感)評価用の試料とした。風合い(嵩高感)
は、肉眼観察並びに触感によつて評価した。 実施例 1 極限粘度[η]が0.64のポリエチレンテレフタ
レート(艶消剤としてTiO2を0.3重量%含有)を
溶融してから更に300℃に昇温し、第6図aに示
す吐出孔から37.5g/分の吐出量で吐出した。 ここで使用した吐出孔の各部の寸法を第1表に
示す。
【表】
尚、第1表に示す中空吐出孔、単一吐出孔2、
及びスリツト3のランド長は全て0.6mmである。 かかる吐出孔において、中空吐出孔及び単一吐
出孔2から吐出されるポリエチレンテレフタレー
ト(以下、PETと示す)の吐出量比(Q1/Q2)
及び吐出速度比(V1/V2)は夫々1.2/1及び
1/3.4であつた。 そして、紡糸口金直下で中空吐出孔から吐出さ
れた重合体流の片面に、単一吐出孔2から吐出さ
れた重合体流が衝突・バウンドしつつ接合する。 次いで、接合したPET流には温度26℃湿度60
%の冷却風を30cm/秒の線速度で吹きつけて冷却
固化後、オイリングローラーで油剤を付与してか
ら引取速度4500m/mmで捲き取つて75de/36fil
のマルチフイラメントを得た。 かかるマルチフイラメントを構成するフイラメ
ントは第1図aに示す断面形状であつて且つg部
分の中空率は8%であつた。しかも、フイラメン
トの長手方向にも大きな太さ斑を有しており、こ
のマルチフイラメントのウースター斑は第3図a
に示す如く大きなものであつた。 そして、得られたマルチフイラメントについ
て、その任意断面におけるフイラメント断面積の
最大及び最小値の比(n1×m1/n2×m2)、g部分
の中空部eを含む断面積Sgと、h部分の断面積
Shとの比(Sg/Sh)、応力−伸度曲線、及び糸
物性を測定し第2表に示した。 尚、応力−伸度曲線のパターンは第5図aに示
すものであつた。
及びスリツト3のランド長は全て0.6mmである。 かかる吐出孔において、中空吐出孔及び単一吐
出孔2から吐出されるポリエチレンテレフタレー
ト(以下、PETと示す)の吐出量比(Q1/Q2)
及び吐出速度比(V1/V2)は夫々1.2/1及び
1/3.4であつた。 そして、紡糸口金直下で中空吐出孔から吐出さ
れた重合体流の片面に、単一吐出孔2から吐出さ
れた重合体流が衝突・バウンドしつつ接合する。 次いで、接合したPET流には温度26℃湿度60
%の冷却風を30cm/秒の線速度で吹きつけて冷却
固化後、オイリングローラーで油剤を付与してか
ら引取速度4500m/mmで捲き取つて75de/36fil
のマルチフイラメントを得た。 かかるマルチフイラメントを構成するフイラメ
ントは第1図aに示す断面形状であつて且つg部
分の中空率は8%であつた。しかも、フイラメン
トの長手方向にも大きな太さ斑を有しており、こ
のマルチフイラメントのウースター斑は第3図a
に示す如く大きなものであつた。 そして、得られたマルチフイラメントについ
て、その任意断面におけるフイラメント断面積の
最大及び最小値の比(n1×m1/n2×m2)、g部分
の中空部eを含む断面積Sgと、h部分の断面積
Shとの比(Sg/Sh)、応力−伸度曲線、及び糸
物性を測定し第2表に示した。 尚、応力−伸度曲線のパターンは第5図aに示
すものであつた。
【表】
このマルチフイラメントのL2は75%と低い値
であるため、更に延伸熱セツトを施すことなくそ
のまま実用に供し得るものである。 このため、前記マルチフイラメントを筒編みに
して、下記条件下で分散染料で染色を施した。 [染色染件] 染 料:Polyester Eastman Blue 染料比:筒編み重量に対して4% 助 剤:モノゲン(0.5%/) 浴 比:1/100 温度×時間:100℃×60分 染色した試料を水洗、乾燥後、180℃で1分間
熱セツトした。 この様にして得られた試料は、均一で染色性の
良いものであり、又、風合いは腰があり且つ通常
のウーリー糸を用いた試料と同等のすぐれた嵩高
感があつた。 このことは、かかるマルチフイラメントのフイ
ラメント間及びフイラメント内に大きな収縮差を
有しており、これらフイラメントから成るマルチ
フイラメントは大きな収縮力を有していることを
示す。 実施例 2 引取速度を3000m/分及び吐出量を35g/分と
した他は実施例1と同様に紡糸して未延伸糸を
得、次いで、この未延伸糸を予熱し延伸を行ない
つつスリツトヒータで熱セツトしてから引取る延
伸熱セツトを下記条件で行ない、75de/36filの
マルチフイラメントを得た。 [延伸熱セツト条件] 予熱温度 85℃ 熱セツト温度 180℃ (スリツトヒーター温度) 延伸倍率 1.4 延伸引取速度 500m/分 このマルチフイラメントの特性を第3表に示
す。
であるため、更に延伸熱セツトを施すことなくそ
のまま実用に供し得るものである。 このため、前記マルチフイラメントを筒編みに
して、下記条件下で分散染料で染色を施した。 [染色染件] 染 料:Polyester Eastman Blue 染料比:筒編み重量に対して4% 助 剤:モノゲン(0.5%/) 浴 比:1/100 温度×時間:100℃×60分 染色した試料を水洗、乾燥後、180℃で1分間
熱セツトした。 この様にして得られた試料は、均一で染色性の
良いものであり、又、風合いは腰があり且つ通常
のウーリー糸を用いた試料と同等のすぐれた嵩高
感があつた。 このことは、かかるマルチフイラメントのフイ
ラメント間及びフイラメント内に大きな収縮差を
有しており、これらフイラメントから成るマルチ
フイラメントは大きな収縮力を有していることを
示す。 実施例 2 引取速度を3000m/分及び吐出量を35g/分と
した他は実施例1と同様に紡糸して未延伸糸を
得、次いで、この未延伸糸を予熱し延伸を行ない
つつスリツトヒータで熱セツトしてから引取る延
伸熱セツトを下記条件で行ない、75de/36filの
マルチフイラメントを得た。 [延伸熱セツト条件] 予熱温度 85℃ 熱セツト温度 180℃ (スリツトヒーター温度) 延伸倍率 1.4 延伸引取速度 500m/分 このマルチフイラメントの特性を第3表に示
す。
【表】
尚、応力−伸度曲線のパターンは第5図bに示
すものであつた。 この様に本発明によつて得られるマルチフイラ
メントは延伸熱セツトを施しても依然として大き
な収縮差を有している。 そして、かかるマルチフイラメントを用いた筒
編を実施例1と同様な染色条件下で染色を施し
て、得られる試料の染色性及び嵩高感について評
価した結果、均一で染色性良好なもので、且つ通
常のウーリー糸を用いた試料と同等の嵩高感があ
つた。 また、前記延伸熱セツト条件の中で熱セツト温
度を第4表の如く変更して得られるマルチフイラ
メントの嵩高性評価を実施例1と同様に行なつた
結果を第4表に併せて示す。
すものであつた。 この様に本発明によつて得られるマルチフイラ
メントは延伸熱セツトを施しても依然として大き
な収縮差を有している。 そして、かかるマルチフイラメントを用いた筒
編を実施例1と同様な染色条件下で染色を施し
て、得られる試料の染色性及び嵩高感について評
価した結果、均一で染色性良好なもので、且つ通
常のウーリー糸を用いた試料と同等の嵩高感があ
つた。 また、前記延伸熱セツト条件の中で熱セツト温
度を第4表の如く変更して得られるマルチフイラ
メントの嵩高性評価を実施例1と同様に行なつた
結果を第4表に併せて示す。
【表】
(注) ◎:標準と同等の嵩高感
○:標準よりやや劣るが満足し得る嵩
高感
この様に本発明によつて得られるマルチフイラ
メントでは延伸熱セツトにより沸水収縮率を20%
以下としても、依然として充分な嵩高感を呈し得
るものである。このことは、本発明で得られるマ
ルチフイラメントのフイラメント間及びフイラメ
ント内に大きな収縮差を有しており、かかるフイ
ラメントは大きな収縮力を有していることを意味
する。 比較例 1 極限粘度0.64のポリエチレンテレフタレート
(艶消剤としてTiO2を0.3%含有する)を溶融し
て、更に300℃に昇温し、特開昭55−51809号公報
(米国特許第4332757号及び米国特許第4349604号)
に記載されている吐出孔から37.5g/分の吐出量
で吐出した。 かかる吐出孔は、孔径0.15mm、ランド長0.30mm
の丸孔1と、孔径0.27mm、ランド長1.3mmの丸孔
2とが、紡糸口金面直下で両孔の中心線が5゜で交
差する様に設けられている。 また、かかる丸孔1と丸孔2との吐出量比を
1/2.4及び吐出速度比を1.3/1とするのが限界
であつた。 この吐出孔から吐出されたPET流は紡糸口金
面直下で丸孔1から吐出されたPET流に丸孔2
から吐出されたPET流が巻付つつ衝突・振動し
て接合する。引き続き、接合したPET流は実施
例2同様に冷却し3000m/分の引取速度で巻き取
つた。次いで、この未延伸糸を実施例2の延伸熱
セツト条件(但し、熱セツト温度は180℃)で延
伸熱セツトを施した。 この様にして得られたマルチフイラメントを構
成するフイラメントは偏平ではあるものの、中空
部が存しなく、且つ長手方向の太さ斑も小さなも
のであつた。 次に、このマルチフイラメントの特性を第5表
に示す。
○:標準よりやや劣るが満足し得る嵩
高感
この様に本発明によつて得られるマルチフイラ
メントでは延伸熱セツトにより沸水収縮率を20%
以下としても、依然として充分な嵩高感を呈し得
るものである。このことは、本発明で得られるマ
ルチフイラメントのフイラメント間及びフイラメ
ント内に大きな収縮差を有しており、かかるフイ
ラメントは大きな収縮力を有していることを意味
する。 比較例 1 極限粘度0.64のポリエチレンテレフタレート
(艶消剤としてTiO2を0.3%含有する)を溶融し
て、更に300℃に昇温し、特開昭55−51809号公報
(米国特許第4332757号及び米国特許第4349604号)
に記載されている吐出孔から37.5g/分の吐出量
で吐出した。 かかる吐出孔は、孔径0.15mm、ランド長0.30mm
の丸孔1と、孔径0.27mm、ランド長1.3mmの丸孔
2とが、紡糸口金面直下で両孔の中心線が5゜で交
差する様に設けられている。 また、かかる丸孔1と丸孔2との吐出量比を
1/2.4及び吐出速度比を1.3/1とするのが限界
であつた。 この吐出孔から吐出されたPET流は紡糸口金
面直下で丸孔1から吐出されたPET流に丸孔2
から吐出されたPET流が巻付つつ衝突・振動し
て接合する。引き続き、接合したPET流は実施
例2同様に冷却し3000m/分の引取速度で巻き取
つた。次いで、この未延伸糸を実施例2の延伸熱
セツト条件(但し、熱セツト温度は180℃)で延
伸熱セツトを施した。 この様にして得られたマルチフイラメントを構
成するフイラメントは偏平ではあるものの、中空
部が存しなく、且つ長手方向の太さ斑も小さなも
のであつた。 次に、このマルチフイラメントの特性を第5表
に示す。
【表】
このマルチフイラメントを用いた筒編を実施例
2と同様な染色条件で染色して得られた試料は、
嵩高感が極めて少なく、フラツトヤーンを用いて
筒網・染色を施した如きペーパーライクな風合で
あつた。 このことは、かかるパルシングヤーンのフイラ
メント間及びフイラメント内の収縮差が小さく、
この様なフイラメントから成るマルチフイラメン
トの収縮力は小さいことを意味するものである。 比較例 2 引取速度を4500m/分とした他は比較例1と同
様紡糸して、第6表に示す特性を有する75de/
36filのマルチフイラメントを得た。
2と同様な染色条件で染色して得られた試料は、
嵩高感が極めて少なく、フラツトヤーンを用いて
筒網・染色を施した如きペーパーライクな風合で
あつた。 このことは、かかるパルシングヤーンのフイラ
メント間及びフイラメント内の収縮差が小さく、
この様なフイラメントから成るマルチフイラメン
トの収縮力は小さいことを意味するものである。 比較例 2 引取速度を4500m/分とした他は比較例1と同
様紡糸して、第6表に示す特性を有する75de/
36filのマルチフイラメントを得た。
【表】
かかるマルチフイラメントを構成するフイラメ
ントの断面は偏平であるものの、中空部が存しな
い形状で且つ長手方向の太さ斑は小さいものであ
つた。このマルチフイラメントのウースター斑は
第4図bに示す如く小さなものであつた。次に、
このマルチフイラメントを用いて筒網みし、実施
例1と同様な条件で染色を施したところ、ある程
度の嵩高感を呈するものであつた。 しかしながら、かかる嵩高性の堅牢性は乏し
く、張力等の外力の付与によつて容易に嵩高感が
消滅する。このことは、かかるマルチフイラメン
トのフイラメント間及びフイラメント内の収縮差
が小さく、この様なフイラメントから成るマルチ
フイラメントの収縮力は小さいことを意味する。 実施例 3 実施例1及び比較例2で得られたマルチフイラ
メントを夫々3000デニールの「カセ」にし、この
「カセ」を0、2.5、5.0、7.5、10、15mg/deの荷
重を付与しつつ120℃の乾熱下で5分間熱処理を
施した。この熱処理後にマルチフイラメントの呈
する嵩高感を肉眼で判定し、その結果を第7表に
示した。
ントの断面は偏平であるものの、中空部が存しな
い形状で且つ長手方向の太さ斑は小さいものであ
つた。このマルチフイラメントのウースター斑は
第4図bに示す如く小さなものであつた。次に、
このマルチフイラメントを用いて筒網みし、実施
例1と同様な条件で染色を施したところ、ある程
度の嵩高感を呈するものであつた。 しかしながら、かかる嵩高性の堅牢性は乏し
く、張力等の外力の付与によつて容易に嵩高感が
消滅する。このことは、かかるマルチフイラメン
トのフイラメント間及びフイラメント内の収縮差
が小さく、この様なフイラメントから成るマルチ
フイラメントの収縮力は小さいことを意味する。 実施例 3 実施例1及び比較例2で得られたマルチフイラ
メントを夫々3000デニールの「カセ」にし、この
「カセ」を0、2.5、5.0、7.5、10、15mg/deの荷
重を付与しつつ120℃の乾熱下で5分間熱処理を
施した。この熱処理後にマルチフイラメントの呈
する嵩高感を肉眼で判定し、その結果を第7表に
示した。
【表】
第7表からも明らかな様に、本発明によつて得
られるマルチフイラメントの有する嵩高性の堅牢
性は従来のパルシングヤーンに比較して優れてお
り大きな収縮力を有していることが判る。 実施例 4 第1図aに示す吐出孔を用いて、吐出孔の寸法
及び紡糸引取速度を第8表に変更する他は実施例
2と同様に紡糸し延伸熱セツトを行ない、
75de/36filのマルチフイラメントを得た。かか
る延伸熱セツトの条件を第8表に併せて示す。 また、紡糸における重合体流の衝突・バウンド
の運動状態、紡糸断糸の有無、得られるマルチフ
イラメントの特性を第9表に示す。かかるマルチ
フイラメントを用いた筒編を実施例1と同様な染
色条件下で染色を施して、得られる試料の嵩高感
についても第9表に併せて示す。 第8〜第9表から明らかな様に、本発明によつ
てフイラメント内及びフイラメント間の収縮差が
大きく、収縮力が大きなマルチフイラメントを容
易に得られることが判る。
られるマルチフイラメントの有する嵩高性の堅牢
性は従来のパルシングヤーンに比較して優れてお
り大きな収縮力を有していることが判る。 実施例 4 第1図aに示す吐出孔を用いて、吐出孔の寸法
及び紡糸引取速度を第8表に変更する他は実施例
2と同様に紡糸し延伸熱セツトを行ない、
75de/36filのマルチフイラメントを得た。かか
る延伸熱セツトの条件を第8表に併せて示す。 また、紡糸における重合体流の衝突・バウンド
の運動状態、紡糸断糸の有無、得られるマルチフ
イラメントの特性を第9表に示す。かかるマルチ
フイラメントを用いた筒編を実施例1と同様な染
色条件下で染色を施して、得られる試料の嵩高感
についても第9表に併せて示す。 第8〜第9表から明らかな様に、本発明によつ
てフイラメント内及びフイラメント間の収縮差が
大きく、収縮力が大きなマルチフイラメントを容
易に得られることが判る。
【表】
【表】
実施例 5
極限粘度[η]が0.64のポリエチレンテレフタ
レート(艶消剤としてTiO2を0.3重量%含有)を
溶融してから更に300℃に昇温し、第6図aに示
す吐出孔から37.5g/分の吐出量で吐出した。 ここで使用した吐出孔の各部の寸法を第10表に
示す。
レート(艶消剤としてTiO2を0.3重量%含有)を
溶融してから更に300℃に昇温し、第6図aに示
す吐出孔から37.5g/分の吐出量で吐出した。 ここで使用した吐出孔の各部の寸法を第10表に
示す。
【表】
そして、紡糸口金面直下で中空吐出孔から吐出
された重合体流の片面に、単一吐出孔2から吐出
された重合体流が衝突・バウンドしつつ接合す
る。 次いで、接合したPET流には、長さ1mに亘
つて温度26℃湿度60%の冷却風を60cm/秒の線速
度で吹きつけて冷却固化させ、更に紡糸口金面か
ら3m下方に設置されている長さ1mの密閉式加
熱筒(雰囲気温度200℃)を走行せしめた後、オ
イリングローラーで油剤を付与してから引取速度
4500m/minで捲き取つて75de/36filのマルチフ
イラメントを得た。 このマルチフイラメントの特性を第11表に示
す。
された重合体流の片面に、単一吐出孔2から吐出
された重合体流が衝突・バウンドしつつ接合す
る。 次いで、接合したPET流には、長さ1mに亘
つて温度26℃湿度60%の冷却風を60cm/秒の線速
度で吹きつけて冷却固化させ、更に紡糸口金面か
ら3m下方に設置されている長さ1mの密閉式加
熱筒(雰囲気温度200℃)を走行せしめた後、オ
イリングローラーで油剤を付与してから引取速度
4500m/minで捲き取つて75de/36filのマルチフ
イラメントを得た。 このマルチフイラメントの特性を第11表に示
す。
【表】
尚、応力−伸度曲線のパターンは第5図bに示
すものであつた。次いで、かかるマルチフイラメ
ントを用いた筒編を実施例1と同様な染色条件下
で染色を施して、得られる試料の染色性及び嵩高
感について評価した結果、均一で染色性良好なも
ので、且つ通常のウーリー糸を用いた試料と同等
の嵩高感があつた。
すものであつた。次いで、かかるマルチフイラメ
ントを用いた筒編を実施例1と同様な染色条件下
で染色を施して、得られる試料の染色性及び嵩高
感について評価した結果、均一で染色性良好なも
ので、且つ通常のウーリー糸を用いた試料と同等
の嵩高感があつた。
第1図は本発明のマルチフイラメントを構成す
るフイラメントの断面図、第2図は本発明のマル
チフイラメントを構成するフイラメントの長手方
向の側面図及び該側面図を90゜回転した正面図、
第3図のa及びbは夫々後述する実施例1及び比
較例2で得られた本発明のマルチフイラメント及
び従来のパルシングヤーンのウースター斑を夫々
示すグラフ、第4図は本発明のマルチフイラメン
トの断面図、第5図は本発明のマルチフイラメン
ト応力(St)−伸度(El)曲線、第6図は本発明
のマルチフイラメントを得るための紡糸口金の吐
出孔断面図、第7図は第6図aに示す吐出孔から
フリーフオールで重合体を吐出した直後のフイラ
メントを横断面に沿つて切断した際のフイラメン
ト斜視図(電子顕微鏡写真)を夫々示す。
るフイラメントの断面図、第2図は本発明のマル
チフイラメントを構成するフイラメントの長手方
向の側面図及び該側面図を90゜回転した正面図、
第3図のa及びbは夫々後述する実施例1及び比
較例2で得られた本発明のマルチフイラメント及
び従来のパルシングヤーンのウースター斑を夫々
示すグラフ、第4図は本発明のマルチフイラメン
トの断面図、第5図は本発明のマルチフイラメン
ト応力(St)−伸度(El)曲線、第6図は本発明
のマルチフイラメントを得るための紡糸口金の吐
出孔断面図、第7図は第6図aに示す吐出孔から
フリーフオールで重合体を吐出した直後のフイラ
メントを横断面に沿つて切断した際のフイラメン
ト斜視図(電子顕微鏡写真)を夫々示す。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1 溶融紡糸可能な単一重合体から成るフイラメ
ントで構成されているマルチフイラメントにおい
て、構成フイラメントが偏平で且つ長軸方向の外
周部に該長軸を挟んで互いに対向する1対の凹部
を有していると共に、前記1対の凹部間に在る短
軸に対して非対称である断面形状と、フイラメン
トの長手方向に太さ斑とを有する偏心中空フイラ
メントであつて、該中空部が前記フイラメント断
面において短軸に平行な直線が最大になる側に在
り、且つ該短軸によつて分割される前記中空部存
在部分の配向度がこれに隣接する中実部分の配向
度よりも大であることを特徴とする潜在嵩高性マ
ルチフイラメント。 2 該フイラメントの断面形状が略まゆ型の且つ
短軸に対して非対称である特許請求の範囲第1項
記載の潜在嵩高性マルチフイラメント。 3 該フイラメントの断面形状が略二等辺三角形
で且つ互いに対向する長辺部に1対の凹部を有し
ていると共に、前記1対の凹部間に在る短軸に対
して非対称である特許請求の範囲第1項記載の潜
在嵩高性マルチフイラメント。 4 該フイラメントの中空部が複数個存在する特
許請求の範囲第1項記載の潜在嵩高性マルチフイ
ラメント。 5 該フイラメントの長手方向において、中空存
在部分に中実部分が巻付くことなく接合している
特許請求の範囲第1項記載の潜在嵩高性マルチフ
イラメント。 6 該マルチフイラメントの任意断面におけるフ
イラメントが下記[]式を満足する特許請求の
範囲第1項記載の潜在嵩高性マルチフイラメン
ト。 n1×m1/n2×m2≧1.5 ……[] 但し、n1×m1、n2×m2はマルチフイラメント
の任意断面において、各フイラメント断面につい
てその長軸と、短軸に平行な最大直線長との積で
あつて、夫々最大、最小の値を示す。 7 該マルチフイラメントが下記[]式を満足
する特許請求の範囲第1項記載の潜在嵩高性マル
チフイラメント。 L1−L2≧20% ……[] 但し、L1はマルチフイラメントの最終破断伸
度、L2は最大応力を呈するときの伸度を夫々示
す。 8 溶融紡糸可能な重合体がポリエステルである
特許請求の範囲第1項記載の潜在嵩高性マルチフ
イラメント。 9 吐出断面積が異る一対の吐出孔をスリツトに
より互いに連結せしめると共に、吐出断面積の大
なる吐出孔を複数のスリツトにより中空部を形成
した中空吐出孔とし、他方の吐出面積の小なる吐
出孔を単一吐出孔とした紡糸口金を通して、溶融
状態にある単一重合体を吐出し、その際下記〜
の条件を満足する吐出孔を用い、前記1対の吐
出孔のうち吐出断面積が大なる吐出孔から吐出し
た重合体流の吐出速度を、他方の吐出断面積が小
なる吐出孔から吐出した重合体流のそれよりも低
速に維持することにより、前記低速重合体流に高
速重合体流を衝突、バウンドさせつつ接合させ、
次いで冷却固化せしめてから引取ることを特徴と
する潜在嵩高性マルチフイラメントの製造法。 1.5≦S1/S2≦15 …… S1>S2>S3 …… 0.04≦lA1−lB1/2≦0.30 …… 0.10≦lA2<lB1<lA1≦1.5 …… 0.05≦l≦1.30 …… 0.03≦W<lA2≦1.0 …… 〔但し、 S1:中空吐出孔の断面積(mm2) S2:単一吐出孔の吐出断面積(mm2) S3:中空吐出孔と単一吐出孔とを連結するスリツ
トの吐出断面積(mm2) lA1:中空吐出孔の外径(mm) lB1: 〃 内径(〃) lA2:単一吐出孔の内径(〃) l:連結スリツトの長さ(〃) W: 〃 の巾(〃)〕 10 中空吐出孔から吐出される重合体流の流速
(V1)及び単一吐出孔から吐出される重合体流の
流速(V2)が下記[]式を満足する流速であ
る特許請求の範囲第9項記載の潜在嵩高性マルチ
フイラメントの製造法。 1/7≦V1/V2≦1/1.5 ……[] 11 冷却固化後のマルチフイラメントを、再び
加熱せしめてから引取る特許請求の範囲第9項記
載の潜在嵩高性マルチフイラメントの製造法。 12 引取り速度が2500m/分以上である特許請
求の範囲第9項又は第11項記載の潜在嵩高性マ
ルチフイラメントの製造法。 13 重合体がポリエステルである特許請求の範
囲第9項又は第11項記載の潜在嵩高性マルチフ
イラメントの製造法。
Priority Applications (6)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP59005699A JPS60151310A (ja) | 1984-01-18 | 1984-01-18 | 潜在嵩高性マルチフィラメント及びその製造法 |
US06/692,386 US4546043A (en) | 1984-01-18 | 1985-01-17 | Hollow irregular multifilament yarn and process and spinneret for producing the same |
EP85100479A EP0150778B1 (en) | 1984-01-18 | 1985-01-18 | Hollow irregular multifilament yarn and process for producing the same |
DE8585100479T DE3562281D1 (en) | 1984-01-18 | 1985-01-18 | Hollow irregular multifilament yarn and process for producing the same |
US06/745,268 US4631162A (en) | 1984-01-18 | 1985-06-14 | Process for producing a hollow irregular multifilament yarn |
PCT/JP1985/000444 WO1987000871A1 (en) | 1984-01-18 | 1985-08-08 | Multifilament having high latent bulkiness |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP59005699A JPS60151310A (ja) | 1984-01-18 | 1984-01-18 | 潜在嵩高性マルチフィラメント及びその製造法 |
PCT/JP1985/000444 WO1987000871A1 (en) | 1984-01-18 | 1985-08-08 | Multifilament having high latent bulkiness |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS60151310A JPS60151310A (ja) | 1985-08-09 |
JPS6353282B2 true JPS6353282B2 (ja) | 1988-10-21 |
Family
ID=26339682
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP59005699A Granted JPS60151310A (ja) | 1984-01-18 | 1984-01-18 | 潜在嵩高性マルチフィラメント及びその製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPS60151310A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH04187069A (ja) * | 1990-11-22 | 1992-07-03 | Kisaku Suzuki | 冷凍食品の解凍装置 |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS61239009A (ja) * | 1985-04-11 | 1986-10-24 | Teijin Ltd | 太細糸及びその製造方法 |
JPS62133111A (ja) * | 1985-12-02 | 1987-06-16 | Teijin Ltd | ポリエステル斑糸 |
JPS62133118A (ja) * | 1985-12-04 | 1987-06-16 | Teijin Ltd | ポリエステル複合斑糸 |
-
1984
- 1984-01-18 JP JP59005699A patent/JPS60151310A/ja active Granted
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH04187069A (ja) * | 1990-11-22 | 1992-07-03 | Kisaku Suzuki | 冷凍食品の解凍装置 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS60151310A (ja) | 1985-08-09 |
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