JPH0641648B2 - 潜在嵩高性マルチフイラメントの製造法及びその紡糸口金 - Google Patents

潜在嵩高性マルチフイラメントの製造法及びその紡糸口金

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JPH0641648B2
JPH0641648B2 JP59036097A JP3609784A JPH0641648B2 JP H0641648 B2 JPH0641648 B2 JP H0641648B2 JP 59036097 A JP59036097 A JP 59036097A JP 3609784 A JP3609784 A JP 3609784A JP H0641648 B2 JPH0641648 B2 JP H0641648B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は潜在崇高性マルチフィラメントの製造法及びそ
の紡糸口金に関し、更に詳しくは断面方向及び長手方向
に収縮差を有するフィラメントから成る潜在崇高性マル
チフィラメントの製造法及びその紡糸口金に関する。
(従来技術) 熱処理を施すことによって崇高性を呈し得る潜在崇高性
マルチフィラメントは、収縮差を有するフィラメント同
志を混繊することによって得ることができる(例えば、
米国特許第 3,200,576号明細書参照)。
かかるマルチフィラメントは、熱処理時に高収縮フィラ
メントが収縮し、これにより低収縮フィラメントが張り
出すことによって崇高性を付与するものである。
そして、この際に高収縮フィラメントを太デニールと
し、低収縮フィラメントを細デニールとすると、熱処理
後の崇高マルチフィラメントの風合は腰があると共に、
柔かなタッチを呈するものとなる。
ところで、かかる収縮差を有するフィラメントから成る
マルチフィラメントを得るには、予め収縮差を付与され
た複数の糸条を混繊する方法が多く採用されており、例
えば特開昭54-82423号公報(米国特許第 4,153,660号明
細書)には次の様な方法が提案されている。
即ち、この方法は、同一紡糸口金から吐出された重合体
流を急冷して得られる紡出糸条を2つの糸束に分割し
て、その1つの糸束には水が主体である紡糸仕上剤を付
与し、他の1つの糸束には水よりも高温の沸点を有する
剤を付与してから、両糸束を別々に同一条件下で熱処理
しつつ延伸を施してから混線するものである。
かかる方法は紡糸仕上剤の沸点差を利用して糸束間に収
縮差を付与するものであるが、この様に2種類の紡糸仕
上剤を付与する等の極めて繁雑な操作を施す必要があ
る。
また、この様な同一紡糸口金から吐出される紡出糸条に
おいて糸条を構成するフイラメント間にデニール差を付
与せんとすると、糸揺れによるフィラメントの密着、或
いは断糸等のトラブルが発生し易く、ドラフト率,冷却
風量等の紡糸条件を厳密に管理することが必要である。
これに対して、かかる繁雑な操作を施すことなく潜在崇
高性マルチフィラメントを製造する方法が特開昭54-424
15号公報及び特開昭55-51809号公報(米国特許第 4,33
2,757号及び米国特許第 4,349,604号)にて提案されて
いる。
この方法は単一の紡糸口金に配置されている或る角度で
対向し、且つ吐出断面積が異る1対の吐出孔を通して2
つの流通差を有するポリエステルの流れを吐出し、口金
面直下で、前記1対の吐出孔の吐出断面積が大なる吐出
孔から吐出した低速重合体流に、吐出断面積が小なる吐
出孔から吐出した高速重合体流を衝突・振動させつつ接
合せしめてから、これを急冷して巻き取るものであっ
て、得られるマルチフィラメント(以下、パルシングヤ
ーンと称することがある)は断面方向及び長手方向に収
縮差を有しているフィラメントから成る。
しかしながら、この様な潜在崇高性マルチフィラメント
は織編物と成してから熱処理を施されることが一般的で
あるが、前記パルシングヤーンは織編物、特に織物での
崇高性が不足すると言う欠点を有している。
即ち、織物の織組織による拘束力が強く、しかもパルシ
ングヤーンの有する収縮力が低いため、パルシングヤー
ンの収縮が制限されて崇高性が不足することに因る。
また、かかるパルシングヤーンは紡糸してから更に延伸
を施すと、前記収縮差が消失する欠点を有しているの
で、極めて大きな収縮率のものでも延伸を施すことなく
使用せざるを得ない。このため、パルシングヤーンを用
いた織編物ではシボ状の収縮斑や染色斑が発生すること
があり、染色条件及び仕上条件が大巾に制約を受けるた
め実用に供し得なかった。
(発明の目的) 本発明の第1の目的は織編物、特に織物において収縮斑
や染色斑のない、均一で且つ充分な崇高性を呈し得る潜
在崇高性マルチフィラメントの製造法及び紡糸口金を提
供することにある。
本発明の第2の目的は延伸を施して実用に供し得る力学
的性質を付与しても充分な崇高性(収縮差)を呈し得る
潜在崇高性マルチフィラメントの製造法及びその紡糸口
金を提供することにある。
本発明の第4の目的は異デニールフィラメントが混繊さ
れたマルチフィラメントの如き腰のある柔かなタッチを
呈し得る潜在崇高性マルチフィラメントの製造法及びそ
の紡糸口金を提供することにある。
(発明の構成) 本発明者はかかる目的を達成すべく検討を重ねたとこ
ろ、従来のパルシングヤーンの製造において採用されて
いる紡糸口金の吐出孔、即ち互いに或る角度で対向し、
且つ吐出断面積が異る1対の吐出孔から吐出される重合
体流の流速差が不充分であり、しかも紡糸口金面直下で
前記吐出孔から吐出される1対の重合体流を衝突,振動
させつつ接合せしめる際に発生する振動周期も小さい。
このため、得られるパルシングヤーンを構成するフィラ
メント内及びフィラメント間の収縮差が小さく、かかる
フィラメントから成るパルシングヤーンの収縮力も劣る
ことを知った。
本発明者はかかる知見に基き更に検討を重ねた結果、紡
糸口金の1対の吐出孔をスリットで連結せしめ、且つ吐
出断面積が大なる吐出孔を複数のスリットで中空部を形
成する中空吐出孔とし、他方の吐出断面積が小なる吐出
孔を単一吐出孔(中実孔)とし、単一吐出孔の内径を該
連結スリットの幅よりも大きくすることが、得られるマ
ルチフィラメントのフィラメント内及びフィラメント間
の収縮差を大きくし、かかるフィラメントから成るマル
チフィラメントの収縮力を向上せしめるうえで有効であ
ることを見い出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、単一重合体を溶融して紡糸口金の吐出
断面積が異る1対の吐出孔から流速差を有する1対の重
合体流として吐出し、紡糸口金直下で前記1対の吐出孔
の吐出断面積が大なる吐出孔から吐出した低速重合体流
に、他方の吐出断面積が小なる吐出孔から吐出した高束
重合体流を衝突・パウンドさせつつ接合せしめ、次いで
冷却固化させた後に引取るマルチフィラメントの製造法
において、該1対の吐出孔をスリットにより互いに連結
せしめ、且つその吐出断面積の大なる吐出孔を複数のス
リットで中空部を形成する中空吐出孔とし、他方の吐出
断面積の小なる吐出孔を単一吐出孔とすると共に、2500
m/分以上で引取ることを特徴とする潜在崇高性マルチ
フィラメントの製造法であり、吐出断面積が異なる1対
の吐出孔を配置した紡糸口金において、該1対の吐出孔
をスリットで互に連結せしめ、且つその吐出断面積の大
なる吐出孔を複数のスリットで中空部を形成する中空吐
出孔とし、他方の吐出断面積の小なる吐出孔を単一吐出
孔とし、該単一吐出孔の内径を該連結スリットの幅より
も大きくすることを特徴とする潜在崇高性マルチフィラ
メントの紡糸口金である。
本発明を図面により説明する。
第1図は本発明の紡糸口金の吐出孔断面図、第2図は本
発明の製造法及び紡糸口金を採用して得られるマルチフ
ィラメントを構成するフィラメントの断面図、第3図は
本発明によって得られるマルチフィラメントを構成する
フィラメントの長手方向の斜視図、第4図の(a)及び(b)
は夫々後述する本発明の具体例である実施例−1及び比
較例−2で得られるマルチフィラメント及び従来のパル
シングヤーンのウースター斑を夫々示すグラフ、第5図
は本発明によって得られるマルチフィラメントの断面
図、第6図は本発明によって得られるマルチフィラメン
トの応力(St )−伸度(E1 )曲線、第7図は第1図
(a)の吐出孔からフリーフォールで重合体を吐出した直
後のフイラメントを横断面に沿って切断した際のフィラ
メント斜視図(電子顕微鏡写真)を夫々示す。
第1図において、1a 〜1c ,2,3は夫々重合体流を
吐出する吐出孔であって、4は1a 〜1c で示される複
数のスリットで形成される中空部、2は単一吐出孔、3
は1a 〜1c のスリット及び中空部(4)からなる中空吐
出孔と、単一吐出孔(2)とを連結するスリット、lA
は単一吐出孔の内径、l及びWはスリット(3)の幅及び
長さ、lA及びlBは第1図(a)の中空吐出孔の外
径及び内径を夫々示す。
本発明のマルチフィラメントの製造法及び紡糸口金にお
いて、溶融重合体を吐出する吐出孔として第1図に示す
吐出孔を採用することが肝要である。
かかる吐出孔の特徴は、吐出断面積が異なる1対の吐出
孔として、吐出断面積の大なる吐出孔に複数のスリット
(1a 〜1c )で構成される中空吐出孔を、他方の吐出
断面積の小なる吐出孔に単一吐出孔(2)を夫々採用した
ことと、中空吐出孔と単一吐出孔(2)とをスリット(3)で
連結したこと、および単一吐出孔の内径を連結スリット
の幅よりも大きくしたことにある。
そして、本発明のマルチフィラメントの製造法では、紡
糸口金直下で第1図の吐出孔の中空吐出孔から吐出され
た重合体流に、前記重合体流の流速よりも高速である単
一吐出孔(2)から吐出された重合体流を衝突、バウンド
させつつ接合せしめ、次いで冷却固化後に2500m/分で
引取ることが必要である。
この様な本発明のマルチフィラメントの製造法及び紡糸
口金を採用することによって、得られるマルチフィラメ
ント内及びフィラメント間の収縮差を大にすることがで
き、かかるフィラメントから成るマルチフィラメントの
収縮力を向上せしめることができるのである。
ここで、前記第1図の吐出孔において、中空吐出孔のス
リット(1a 〜1c )の合計吐出断面積(S)と単一
吐出孔(2)の吐出断面積(S)とを等しくすると、紡
糸口金直下での重合体流の衝突・バウントがあまりにも
激しくなるため安全な紡糸が困難となる。
また、中空吐出孔と単一吐出孔(2)とがスリット(3)で連
結されてない吐出孔を用いた場合、或いは紡糸引取速度
を2500m/分未満とする場合には、いずれも得られるマ
ルチフィラメントのフィラメント内及びフィラメント間
の収縮差は不充分となる。
本発明によって得られるマルチフィラメントを構成する
フィラメントは、第2図に示す断面形状を有する偏平中
空フィラメントであって、断面方向には、第1図の中空
吐出孔から吐出された重合体流に単一吐出孔(3)から吐
出された重合体流が接合した接合部で分割される中空部
存在部分の配向度がこれに隣接する中実部分の配向度よ
るも大であると共に、長手方向には太さ斑を併せ有して
いるのである。
第2図において、第2図(a)(b)は夫々第1図(a)(b)の吐
出孔を用いて得られるフィラメントの断面形状を示し、
図中のn は長軸,c は短軸,x,x′は長軸(n )を挾
んで互いに対向する1対の凹部,e は中空部,m はフィ
ラメント断面で短軸(c )に平行な直線のうちで最大値
を示す直線の長さ,g は中空部(e )を含む断面におい
て短軸(c )で分割される中空部分,h は同じく短軸
(c )で分割される中実部分であって、g の部分の断面
積はh 部分のそれよりも常に大である。
また、x,x′で示される1対の凹部は第1図の中空吐
出孔から吐出される重合体流に単一吐出孔(2)から吐出
される重合体流が接合した接合部である。
そして、かかるフィラメント断面において、断面積がh
部分よりも大であるg 部分の配向度をh 部分の配向度よ
りも大とできることが本発明の製造法の特徴の1つであ
り、この様なフィラメントに熱処理が施されると、断面
積の大なるg 部分の収縮がh 部分の収縮よりも大となる
結果、大きな収縮力を呈することができるものである。
本発明によって、かかるフィラメントが得られる理由は
次の様に考えられる。
即ち、一般的に、中空吐出孔を構成している各スリッ
ト、及び単一吐出孔を通過する重合体流の流速が互いに
等しいならば、中空吐出孔の複数スリットの合計圧力損
失は単一吐出孔よりも大となる。
しかしながら、中空吐出孔と単一吐出孔(2)とをスリツ
ト(3)を介して同一吐出孔内に併有している大1図に示
す本発明の吐出孔においては、両孔の圧力損失が等しく
なる様に両孔を通過する重合体流間に流速差が生じる。
このため、中空吐出孔のスリット巾、単一吐出孔(2)の
内径(lA)等を調整することによって、中空吐出孔
の1a 〜1c のスリットよりも単一吐出孔(2)から吐出
される重合体流の流速が速くなる様に流速差を付与する
と共に、その流速差を容易に大きくすることができるの
である。
この様に、中空吐出孔のスリット(1a 〜1c )を通過
する重合体流の流速は単一吐出孔(2)を通過する重合体
流よりも遅いため、紡糸ドラフトは中空吐出孔のスリッ
ト(1a 〜1c )から吐出された重合体流に主に集中す
る。特に、紡糸引取速度2500m/分以上の高速紡糸で
は、 500以上の高ドラフトが中空吐出孔のスリット(1
a 〜1c )から吐出された重合体流に集中する結果、か
かる重合体流が形成する中空部分は中空吐出孔が単一吐
出孔である場合よりも大きな剪断力を受けて、重合体流
が中実である場合よりも極めて高い配向度となるのであ
る。
また、単一吐出孔(2)の吐出断面積(S)は中空吐出
孔のスリット(1a 〜1c )の合計吐出断面積(S
よりも小さいため、得られるフィラメント断面において
中空部を含むg 側の断面積よりもh 側の断面積が小さく
なるのである。
この様にして得られるフィラメント断面では、第2図に
示す如く、中空部(e)を含む断面積がh 部分よりも大き
なg 部分がh 部分よりも高配向度となる。
更に、中空吐出孔及び単一吐出孔(2)から吐出される重
合体流流速が異なると共に、スリット(3)から吐出され
る重合体流で前記2つの重合体流が連結されているため
に、中空吐出孔から吐出された重合体流に単一吐出孔
(2)から吐出された重合体流が衝突・バウンドしつつ接
合する結果、第3図に示す如く長手方向に太さ斑を有す
るフィラメントが得られるのである。
第3図(a)は本発明によって得られるフィラメントの長
手方向の斜視図を示し、第3図(b)は第3図(a)を90゜回
転せしめたフィラメント長手方向の斜視図を示す。ま
た、Lはフィラメント長手方向の太さ斑の間隔を示す。
本発明で得られるフィラメントの長手方向の太さ斑は、
第3図(a)(b)に示す様に、長手方向にもh 部分の断面積
がg 部分の断面積よりも、大きく変化しつつ接合してい
る。
この様に、本発明によって得られるマルチフィラメント
を構成するフィラメントは、その断面において、第2図
に示す如く中空部を含む断面積がh 部分よりも大きいg
部分の配向度が高く、且つg 部分が中実である場合より
も極めて高い配向度となるので、長手方向の太さ斑と相
俟って従来のパルシングヤーンを構成するフィラメント
よりも大きな収縮差を有することができる。その結果、
織組織による拘束力が強い織物でも本発明で得られるマ
ルチフィラメントを用いた織物では均一で充分な崇高性
を呈し得るのである。
本発明において採用する中空吐出孔のスリットの配列形
状、及び単一吐出孔の断面形状は特に限定する必要はな
く、目的に応じて最適なものを採用すればよい。
例えば、中空吐出孔のスリットの配列形状としては、英
国特許第 853,062号明細書に記載されている非円形状の
ものを採用でき、中でも第1図(b)に示す三角形状の配
列のものが好ましい。
かかる、三角形状の中空吐出孔を用いた第1図(b)の吐
出孔によると、第2図(b)に示す略二等辺三角形の断面
形状を有するフィラメントが得られ、このフィラメント
から成るマルチフィラメントは独特な光沢を呈すること
ができる。
また、中空吐出孔のスリツト配列形状及び単一吐出孔の
断面形状を第1図(a)の如く円形状とすると、第2図(a)
に示す略まゆ型の断面形状となる。第1図(a)の吐出孔
は工作が容易で好ましい。
更に、第1図において、単一吐出孔(2)と中空吐出孔と
を単一スリット(3)で連結し、かつ単一吐出孔の内径を
連結スリットの幅よりも大きくすることによって、驚く
べきことに単一吐出孔(2)から吐出される重合体流は中
空吐出孔から吐出される重合体流の片側で衝突・バウン
ドしつつ接合するので、中空部分(g)に中実部分(h)がま
きつくことなく接合している第3図に示すフィラメント
が得られ、フィラメントの長手方向に大きな太さ斑を付
与することができる。
この様に、フィラメントの断面方向に大きな配向度差を
有すると共に、フィラメントの長手方向に大きな太さ斑
を有するフィラメントから成るマルチフィラメントは、
紡糸後、更に延伸し熱セットを施して実用に供し得る力
学的特性を付与しても、充分な収縮力を呈することがで
き好ましい。かかるスリット(3)の形状は第1図に示す
直線状の他に、カギ形、或いは湾曲していてもよい。要
は中空吐出孔と単一吐出孔(2)とがスリットで連結され
ていることである。
これに対して、本発明者の実験によると、特開昭55-518
09号公報(米国特許第 4,332,757号及び米国特許第 4,3
49,604号明細書)に記載されている紡糸口金を用いてパ
ルシングヤーンを得る場合には、吐出面積の大なる吐出
孔から吐出された重合体流に、吐出断面積の小なる吐出
孔から吐出された重合体流が巻付きつつ接合したフィラ
メントから成るマルチフィラメントしか得られず、フィ
ラメントの長手方向に大きな太さ斑を付与することは困
難であった。
また、スリット(3)の長さを、得られるフィラメント断
面において第2図に示す凹部(x,x′)が形成される
よう設定することによっても、中空吐出孔及び単一吐出
孔(2)から吐出される両重合体流の衝突・バウンドによ
る振動周期をより大きくすることができ、得られるフィ
ラメントの長手方向に極めて大きな太さ斑を付与するこ
とができる。
そして、第1図の吐出孔を用いて第2図の断面形状を有
する偏平中空フィラメントを得ることができるが、その
際にかかるフィラメント断面の顕微鏡写真から求めたg
部分の中空率を2〜30%、特に好ましくは10〜15%と
し、g 部分の中空部(e)を含む断面積Sg とh 部分の断
面積Sh との比(Sg /Sh )を 1.2〜3、特に 1.5〜
2とすることが好ましい。
尚、本発明で採用する吐出孔では第1図に示す単一吐出
孔(2)が1ケ以上中空吐出孔に連結されていてもよく、
単一吐出孔(2)の形状も三角形,四角形,Y字形等の非
円形であってもよい。この場合、単一吐出孔の内径は当
該形状の最大内接円の直径をいう。
これまで述べてきた本発明の吐出孔の具体的な寸法を、
第1図(a)の吐出孔について下記に示す。
1.5≦S/S≦15 0.04≦(lA−lB)/2≦ 0.30 0.10≦lA<lB<lA≦ 1.5 0.05≦l≦ 1.30 0.03≦W<lA≦ 1.0 [但し、lA,lB,lA,l,Wの夫々の単位
は(mm)である。] そして、この様な吐出孔から成る紡糸口金を採用するこ
とによって、あたかも異デニールフィラメントが混繊さ
れた如きマルチフィラメントを容易に得ることができ
る。
また、本発明のマルチフィラメントの製造法において、
中空吐出孔から吐出される重合体流の流速( v)と、
単一吐出孔(2)から吐出される重合体流の流速( v
との吐出速度比( v/ v)を1/ 1.5〜1/7、特
に1/ 2.3〜1/ 3.4に設定することが好ましく、この
時の重合体の吐出量比[中空吐出孔の吐出量/単一吐出
孔(2)の吐出量]は3/1〜1/5、特に 1.5/1〜1
/ 3.3に設定することが好ましい。
今、第1図(a)に示す吐出孔であって、前記寸法の範囲
内にある吐出孔を有する紡糸口金直下で得られる紡出フ
ィラメントの形状を第7図に示す。
第7図はフリーフォールで得たものであり、中空吐出孔
から吐出された側の断面積はほとんど変化せずに、単一
吐出孔から吐出された側の断面積が変化していることを
示している。また、第7図より単一吐出孔から吐出され
た重合体流は中空吐出孔から吐出された重合体流に捲き
付くことなく一方向で振動していることも併せて示して
いる。
唯、第7図に示す紡出フィラメントは紡出ドラフトの作
用受けないフリーフォールで得られたものであるため、
本発明で得られるマルチフィラメントを構成するフィラ
メントの断面形状と差異が認められるが、紡糸ドラフト
作用下では中実部分が中空部分にバウンドしつつ接合し
ているために中実部分の長さは中空部分よりも長くなる
ので、第2図(a)に示すフィラメント断面形状を有する
フィラメントが得られるのである。
この様にして吐出,接合せしめた重合体流を冷却固化し
た後に2500m/分以上の速度で引取り、更に延伸し 100
℃以上の温度で熱セットを施すことによって、得られる
マルチフィラメントの力学的特性を実用に供し得る程度
までに高めることができる。この様にしても本発明で得
られるマルチフィラメントでは依然として断面方向及び
長手方向に大きな収縮差を有しているため、熱処理によ
って充分な崇高性を低すことができる。
また、紡糸引取速度が4000m/分以上、特に4500〜5500
m/分では、得られるマルチフィラメントをそのまま実
用に供し得るものであり、かかるマルチフィラメントは
熱処理によって充分な崇高性呈し得ることは言うまでも
ない。
以上、述べてきた本発明のマルチフィラメントの製造法
において、通常の溶融紡糸の如く紡糸口金から吐出した
重合体流を冷却風により冷却して引取っても、冷却して
から更に加熱を施してから引取ってもよい。
また、溶融紡糸の後に延伸し熱セットを施す方法として
は、溶融紡糸してから一旦捲き取ってから別工程で延伸
し熱セットを施しても、或いは溶融紡糸してから一旦捲
き取ることなく延伸し熱セットを施してもよい。
本発明のマルチフィラメントの製造法及び紡糸口金によ
って得られるマルチフィラメントは、前述した様に、そ
の構成するフィラメントの断面方向に大きな配向度差を
有していると共に、長手方向にも大きな太さ斑を有して
いる。
この様な長手方向に大きな太さ斑を有するフィラメント
で構成されている本発明で得られるマルチフィラメント
は当然その断面方向にも大きな太さ斑を有している。
このことは、第4図(a)に示す後述の実施例−1で得れ
たマルチフィラメントのウースター斑のグラフから明ら
かであり、第4図(b)に示す後述の比較例−2で得られ
た従来のパルシングヤーンのウースター斑のグラフと比
較しても、本発明によって得られるマルチフィラメント
の断面方向の太さ斑は大きい。
尚、かかるウースター斑はツエルベーガーウースター社
製のウースターイブネステスターモデルCにより測定し
たものである。
また、本発明によって得られるマルチフィラメントを構
成するフィラメントの長手方向には第3図に示す様な大
きな太さ斑[山から山の長さ(L)が 0.5〜3m]がラ
ンダムに存在するため、かかるフィラメントから成るマ
ルチフィラメントの任意断面においては、第5図に示す
様に、あたかもデニール差を有するフィラメントが混繊
されているのと同様な効果を呈する。
つまり、第5図において、Aは一本のマルチフィラメン
ト断面での最大断面積であるフィラメント断面を示し、
n 及びm はフィラメント断面(A)の長軸及び最大
直線長を夫々示す。また、Bは第5図に示す一本のマル
チフィラメント断面での最小断面積のフィラメント断面
を示し、n 及びm はフィラメント断面(B)の長軸
及び最大直線長を夫々示す。
一般的に、第5図に示す様な断面積が異るフィラメン
ト、即ち、デニール差を有するフィラメントが混繊され
ている場合、断面積の大きい(太デニール)フィラメン
トは断面積の小さい(細デニール)フィラメントよりも
収縮率が大きいため、熱処理によって、太デニールフィ
ラメントは収縮して張力担持体となり、細デニールフィ
ラメントはマルチフィラメントの外側に張り出すので、
腰があり且つ柔なタッチの風合を呈することができる。
本発明で得られるマルチフィラメントにおいて、前記最
大断面積のフィラメント(A)及び最小断面積のフィラ
メント(B)が下記[I]式を満足するものは腰があり
且つ柔なタッチの風合を呈し得ることができ好ましい。
n ×m /n ×m ≧ 1.5 ……[I] 更に、本発明で得られるマルチフィラメントはその断面
方向及び長手方向に前述した様に大きな斑、即ち大きな
収縮差を有しているため、あたかもフィラメント間及び
フィラメント内に収縮差を有するフィラメントを混繊し
た構造となっている。このために、本発明で得られるマ
ルチフィラメントの応力−伸度曲線は第6図に示すもの
となる。
ここで、第6図(a)は本発明の製造法で得られた未延伸
マルチフィラメントの応力(St )−伸度(E1)曲線
であり、第6図(b)は紡糸後、更に延伸を施して得られ
たマルチフィラメントの応力(St )−伸度(E1)曲
線である。
第6図において、Lは最終破断伸度,Lは最大応力
を示すときの伸度を夫々示す。
この様に、L及びLの伸度が見られるのは前述した
収縮差を有するフィラメントを混繊せしめた混繊糸の特
徴であって、かかる収縮差の極めて小さい、或いは収縮
差のないフィラメントから成るマルチフィラメントでは
通常Lのみが見られるに過ぎないのである。
この点、本発明で得られるマルチフィラメントでは、混
繊等の操作を行うことなく、あたかも収縮差のあるフィ
ラメントから成る混繊糸と同等の効果を呈することがで
きる。
そして、(L−L)の値が大である程、前記収縮差
が大であることを示し、かかる(L−L)の値が下
記[II]式を満足するマルチフィラメントが充分な崇高
性を呈す織編物を得ることができ好ましい。
L−L≧20% ……[II] 本発明で得られるマルチフィラメントにおいては、未延
伸糸の状態では勿論のこと、延伸し熱セットを施して実
用に耐え得る力学的性質を付与しても充分に上記[II]
式を満足するものを得ることができる。
かかるマルチフィラメントの任意断面における各フィラ
メントの断面形状は第2図に示すものとなるが、中には
断面形状が偏平であっても、第2図に示すフィラメント
断面における凹部(x ,x ′)のない形状のフィラメン
トが存在している。かかる断面形状のフィラメントが存
在していてもその数が小数本であるマルチフィラメント
では、本発明の目的を充分に達成することができる。
また、本発明で得られるマルチフィラメントを衣料用と
して使用するためには、フィラメントのデニールを 0.5
〜8de、特に好ましくは 1.0〜 5.0de、総デニールを30
〜200de 、特に好ましくは40〜150de に設定することが
風合上好ましい。
尚、本発明において対象とする単一重合体とは、実質的
に繰返し単位の85モル%以上がエチレンテレフタレート
から構成されるポリエチレンテレフタレートであり、該
重合体には艶消,染色性向上,帯電防止等各目的の添加
物質を共重合体又は、ブレンド体として含んでいても差
支えない。ポリエチレンテレフタレートの極限粘度(35
℃オルソクロルフェノール中で測定)は、 0.45 〜 1.2
0 が好ましく、特に 0.50 〜 1.00 が好ましい。極限粘
度が 0.45 未満のときは、得られるマルチフィラメント
の強度レベルが低く好ましくない。また、極限粘度が
1.20 を越えるときは、紡糸時の溶融粘度が高過ぎて、
溶融温度を高くすることが必要のため、好ましくない。
また、本発明にて用いる溶融紡糸装置は、通常用いられ
ている装置を使用できることは言うまでもない。
(作 用) 従来のパルシングヤーンを得るための紡糸口金の吐出孔
は吐出断面積が異る1対の吐出孔が或る角度で対向して
設けられていると共に、吐出断面積の小さい吐出孔のポ
リマー導孔の長さ(ランド長)が吐出断面積の大きい吐
出孔のポリマー導孔の長さ(ランド長)よりも短く設定
されている。かかる設定によって、吐出断面積の小さい
吐出孔から吐出される重合体流の流速は他方の吐出孔か
ら吐出される重合体流よりも速くなるのである。
この様に、流速差を有する1対の重合体流が紡糸口金直
下で衝突・振動しつつ接合するためにフィラメントの断
面方向及び長手方向に一応の収縮差を付与することがで
きるのである。
しかしながら、前述した様にかかるパルシングヤーンの
収縮力は不充分であるため、フィラメント断面方向の収
縮力を大にすべく、吐出断面積の差を大として得られる
フィラメントの高配向度側の断面積を大にせんとして
も、両孔から吐出される重合体流の流速差は吐出孔のラ
ンド長等を調整することによって付与しているものであ
るため、吐出断面積の差が大になる程流速差を付与する
ことは困難になるのでかかる1対の吐出孔では限界があ
る。
また、両重合体流の衝突による振動を激しくしてフィラ
メントの長手方向の太さ斑を大にせんとしても、両孔の
設置距離を大にすると逆に振動は減少、或いは消滅して
しまうのである。
これに対し、本発明のマルチフィラメントの製造法及び
紡糸口金においては、第1図に示す如き吐出孔に有する
紡糸口金を採用するため、重合体流の衝突・バウンドに
よる大きな振動の発生と、中空吐出孔から吐出された重
合体流に紡糸ドラフトの作用点が遍在化する効果を併せ
奏することができる結果、フィラメントの長手方向に大
きな太さ斑と、第2図に示す如くフィラメント断面にお
いて、g 側の配向度がh 側よりも高くなる断面方向の配
向度差とを併せ有するフィラメントから成るマルチフィ
ラメントが得られるのである。
即ち、中空吐出孔を構成する複数スリットのスリット巾
及び単一吐出孔の孔径等を調整することによって、かか
る1対の吐出孔から吐出される重合体流の流速差を充分
に大きくすることができる。このため、紡糸ドラフトを
中空吐出孔から吐出される重合体流に集中せしめること
ができ、中空吐出孔から吐出された重合体流に大きな剪
断力が作用するので中空部分の配向度が中実部分の配向
度よりも高く、且つ前記中空部分が中実である場合より
も極めて高い配向度とすることができるのである。
しかも、中空吐出孔を構成する複数スリットの合計吐出
断面積が単一吐出孔の吐出断面積よりも大きいため、得
られるフィラメントの断面において中実部分よりも中空
部分の断面積が大きいのである。
また、両孔間の距離を大にしても、スリットで両孔を連
結しているために、両重合体流は衝突・バウンドによる
大きな振動を発生しつつ接合せしめることができる。
この様にして得られるマルチフィラメントを構成するフ
ィラメントは、その断面において、中空部を有する断面
積が中実部分よりも大きい中空部分の配向度が極めて高
いため、中空部分が中実部分よりも大きな収縮率を有し
ていると共に、フィラメントの長手方向にも大きな太さ
斑を有しているので、かかるフィラメントから成るマル
チフィラメントではフィラメント間、フィラメント内に
大きな収縮差を有しており、熱処理の際に大きな収縮力
を呈し得るのである。
かかるマルチフィラメントを用いた織物では、熱処理に
よって均一で且つ充分は崇高性を呈することができる。
また、溶融紡糸で得られる未延伸糸に更に延伸し熱セッ
トを施して実用に供し得る力学的特性を付与したマルチ
フィラメントでも、依然として充分な収縮差を有してい
るため、かかるマルチフィラメントを用いた織物も熱処
理によって充分な崇高性を呈することができる。
更に、本発明において、中空吐出孔のスリットを三角形
に配置した第1図(b)に示す吐出孔を用いると、得られ
るフィラメントの断面形状を第2図(b)に示す様に略二
等辺三角形とすることができ、かかるフィラメントから
成るマルチフィラメントは独特な光沢を呈することがで
きる。
また、本発明で得られるマルチフィラメントを構成する
フィラメントは長手方向に大きな太さ斑をランダムに有
していることから、異デニールフィラメントが混繊され
た混繊糸の如き腰のある良好な風合を呈することもでき
る。
(発明の効果) 本発明で得られるマルチフィラメントは単に熱処理を施
すだけで大きな崇高性を呈し得るので、織編工程ではフ
ラットヤーンの状態で扱うことができるため良好な工程
通過性を有する。
しかも、単一重合体から繁雑な操作を施すことなく得ら
れるので、その工業的意義は極めて大きいものである。
(実施例) 以下、本発明を実施例にて更に説明するが、本実施例で
用いる物性は下記の方法で測定したものである。
(1) n ,m ,及びn ,m マルチフィラメントの任意断面について、 560部の倍率
で断面写真をとり、中空部を服け断面積が最大となるフ
ィラメント断面の長軸(n )及び最大直線長(m
)、及び前記断面積が最小とするフィラメント断面
の長軸(n )及び最大直線長(m )とを夫々実測し
た。
(2) 最大応力を呈するときの伸度(L)及び最終破
断伸度(L) 通常の引っ張り型試験機にて、温室25℃、湿度60%で、
試料長10cm、引っ張り速度 200mm/mmの条件で応力−伸
度曲線を求め、応力が最大となる伸度(L)、応力が
零となる伸度を最終破断伸度(L)とした。
(3) 収縮率 マルチフィラメントの「カセ」を作り、この「カセ」に
2.5mg/d の相当する荷重をかけ、 120℃で5分間乾熱
処理した時の収縮率を以下の式より求めた。
[(l−l)/l]× 100(%)=収縮率(%) (l:処理前の「カサ」の長さ) (l:処理後の「カサ」の長さ) (5) 風合い(崇高感) 得られた潜在崇高性マルチフィラメントを筒編みし、分
散染料を使用して常法で染色し、水洗乾燥後、 180℃で
1分間セットし風合い(崇高感)評価用の試料とした。
風合い(崇高感)は、肉眼観察並びに触感によって評価
した。
[実施例−1] 極限粘度[η]が 0.64のポリエチレンテレフタレート
(艶消剤としてTi Oを 0.3重量%含有)を溶融して
から更に 300℃に昇温し、第1図(a)に示す吐出孔から3
7.5g /分の吐出量で吐出した。
ここで使用した吐出孔の各部の寸法を第1表に示す。
かかる吐出孔において、中空吐出孔及び単一吐出孔(2)
から吐出されるポリエチレンテレフタレート(以下、P
ETと示す)の吐出量比及び吐出速度比は夫々1/ 1.7
及び1/ 3.3であった。
そして、紡糸口金直下で中空吐出孔から吐出された重合
体流の片面に、単一吐出孔(2)から吐出された重合体流
が衝突・バウンドしつつ接合する。
次いで、接合したPET流には温度26℃湿度60%の冷却
風を30cm/秒の線速度で吹きつけて冷却固化後、オイリ
ングローラーで油剤を付与してから引取速度4500m/mm
で捲き取って75de/36filのマルチフィラメントを得
た。
かかるマルチフィラメントを構成するフィラメントは第
2図(a)に示す断面形状であって且つg 部分の中空率は1
2%であった。しかも、フィラメントの長手方向にも大
きな太さ斑を有しており、このマルチフィラメントのウ
ースター斑は第4図(a)に示す如く大きなものであっ
た。
そして、得られたマルチフィラメントについて、その任
意断面におけるフィラメント断面積の最大及び最小値の
比(n ×m /n ×m )、g 部分の中空部(e)を
含む断面積Sg と、h 部分の断面積Sh との比(Sg /
Sh )、応力−伸度曲線、及び糸物性を測定し第2表に
示した。
このマルチフィラメントのLは75%と低い値であるた
め、更に延伸熱セットを施すことなくそのまま実用に供
し得るものである。
このため、前記マルチフィラメントを筒編みにして、下
記条件下で分散染料で染色を施した。
[染色染件] 染 料:Polyestr Eastman Blue 染 料 比:筒編み重量に対して4% 助 剤:モノゲン( 0.5%/) 浴 比:1/ 100 温度×時間: 100℃×60分 染色した試料を水洗,乾燥後、 180℃で1分間熱セット
した。
この様にして得られた試料は、均一で染色性の良いもの
であり、又、風合いは腰があり且つ通常のウーリー糸を
用いた試料と同等のすぐれた崇高感があった。
このことは、かかるマルチフィラメントのフィラメント
間及びフィラメント内に大きな収縮差を有しており、こ
れらフィラメントから成るマルチフィラメントは大きな
収縮力を有していることを示す。
[実施例−2] 引取速度を3000m/分とした他は実施例−1と同様に紡
糸して未延伸糸を得、次いで、この未延伸糸を予熱し延
伸を行ないつつスリットヒータで熱セットしてから引取
る延伸熱セットを下記条件で行ない、75de/36fil のマ
ルチフィラメントを得た。
[延伸熱セット条件] 予熱温度 80℃ 熱セット温度 180℃ (スリットヒーター温度) 延伸倍率 1.4 延伸引取速度 500m/分 このマルチフィラメントの特性を第3表に示す。
この様に本発明によって得られるマルチフィラメントは
延伸熱セットを施しても依然として大きな収縮差を有し
ている。
そして、かかるマルチフィラメントを用いた筒編を実施
例−1と同様な染色条件下で染色を施して、得られる試
料の染色性及び崇高感について評価した結果、均一で染
色性良好なもので、且つ通常のウーリー糸を用いた試料
と同等の崇高感があった。
また、前記延伸熱セット条件の中で熱セット温度を第4
表の如く変更して得られるマルチフィラメントの崇高性
評価を実施例−1と同様に行なった結果を第4表に併せ
て示す。
この様に本発明によって得られるマルチフィラメントで
は延伸熱セットにより沸水収縮率を20%以下としても、
依然として充分な崇高感を呈し得るものである。このこ
とは、本発明で得られるマルチフィラメントのフィラメ
ント間及びフィラメント内に大きな収縮差を有してお
り、かかるフィラメントは大きな収縮力を有しているこ
とを意味する。
[比較例−1] 極限粘度 0.64 のポリエチレンテレフタレート(艶消剤
としてTi Oを、 0.3%含有する)を溶融して、更に
300℃に昇温し、特開昭55-51809号公報(米国特許第
4,332,757号及び米国特許第 4,349,604号)に記載され
ている吐出孔から37.5g g/分の吐出量で吐出した。
かかる吐出孔は、孔径 0.15 mm,ランド長 0.30 mmの丸
孔(1)と、孔径 0.27 mm,ランド長 1.3mmの丸孔(2)と
が、紡糸口金面直下で両孔の中心線が5゜で交差する様
に設けられている。
また、かかる丸孔(1)と丸孔(2)との吐出量比及び吐出速
度比を夫々 1.9及び 1.6とするのが限界であった。
この吐出孔から吐出されたPET流は紡糸口金面直下で
丸孔(1)から吐出されたPET流に丸孔(2)から吐出され
たPET流が巻付つつ衝突・振動して接合する。引き続
き、接合したPET流は実施例−2同様に冷却し3000m
/分の引取速度で巻き取った。次いで、この未延伸糸を
実施例−2の延伸熱セット条件(但し、熱セット温度は
180℃)で延伸熱セットを施した。
この様にして得られたマルチフィラメントを構成するフ
ィラメントは偏平ではあるものの、中空部が存しなく、
且つ長手方向の太さ斑も小さなものであった。
次に、このマルチフィラメントの特性を第5表に示す。
このマルチフィラメントを用いた筒編を実施例−2と同
様な染色条件で染色して得られた試料は、崇高感が極め
て少なく、フラットヤーンを用いて筒網・染色を施した
如きペーパーライクな風合であった。
このことは、かかるパルシングヤーンのフィラメント間
及びフィラメント内の収縮差が小さく、この様なフィラ
メントから成るマルチフィラメントの収縮力は小さいこ
とを意味するものである。
[比較例−2] 引取速度を4500m/分とした他は比較例−1と同様紡糸
して、第6表に示す特性を有する75de/36fil のマルチ
フィラメントを得た。
かかるマルチフィラメントを構成するフィラメントの断
面は偏平であるものの、中空部が存しない形状で且つ長
手方向の太さ斑は小さいものであった。このマルチフィ
ラメントのウースター斑は第4図(b)に示す如く小さな
ものであった。次に、このマルチフィラメントを用いて
筒網みし、実施例−1と同様な条件で染色を施したとこ
ろ、ある程度の崇高感を呈するものであった。
しかしながら、かかる崇高性の堅牢性は乏しく、張力等
の外力の付与によって容易に崇高感が消滅する。このこ
とは、かかるマルチフィラメントのフィラメント間及び
フィラメント内の収縮差が小さく、この様なフィラメン
トから成るマルチフィラメントの収縮力は小さいことを
意味する。
[実施例−3] 実施例−1及び比較例−2で得られたマルチフィラメン
トを夫々3000デニールの「カセ」にし、この「カセ」を
0, 2.5, 5.0, 7.5,10, 15mg/deの荷重を付与し
つつ 120℃の乾熱下で熱処理を施した。この熱処理後に
マルチフィラメントの呈する崇高感を肉眼で判定し、そ
の結果を第7表に示した。
第7表からも明らかな様に、本発明によって得られるマ
ルチフィラメントの有する崇高性の堅牢性は従来のパル
シングヤーンに比較して優れており大きな収縮力を有し
ていることが判る。
[実施例−4] 第1図(a)に示す吐出孔を用いて、吐出孔の寸法及び紡
糸引取速度を第8表に変更する他は実施例−2と同様に
紡糸し延伸熱セットを行ない、75de/36fil のマルチフ
ィラメントを得た。かかる延伸熱セットの条件を第8表
に併せて示す。
また、紡糸における重合体流の衝突・バウンドの運動状
態、紡糸断糸の有無、得られるマルチフィラメントの特
性を第9表に示す。かかるマルチフィラメントを用いた
筒編を実施例−1と同様な染色条件下で染色を施して、
得られる試料の崇高感においても第9表に併せて示す。
第8〜第9表から明らかな様に、本発明によってフィラ
メント内及びフィラメント間の収縮差が大きく、収縮力
が大きなマルチフィラメントを容易に得られることが判
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の紡糸口金の吐出孔断面図、第2図は本
発明の製造法及び紡糸口金を採用して得られるマルチフ
ィラメントを構成するフィラメントの断面図、第3図は
本発明によって得られるマルチフィラメントを構成する
フィラメントの長手方向の断視図、第4図の(2)及び(b)
は夫々後述する本発明の具体例である実施例−1で得ら
れるマルチフィラメント及び比較例−2で得られる従来
のパルシングヤーンのウースター斑を夫々示すグラフ、
第5図は本発明によって得られるマルチフィラメントの
断面図、第6図は本発明によって得られるマルチフィラ
メント応力(At )−伸度(E1)曲線、第7図は第1
図(a)の吐出孔からフリーフオールで重合体を吐出した
直後のフイラメント(単繊維)を横断面に沿つて切断し
た際のフイラメント(単繊維)斜視図(電子顕微鏡写
真)を夫々示す。

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】単一重合体を溶融して紡糸口金の吐出断面
    積が異なる1対の吐出孔から流速差を有する1対の重合
    体流として吐出し、紡糸口金面直下で前記1対の吐出孔
    の吐出面積が大なる吐出孔から吐出した低速重合体流
    に、他方の吐出断面積が小なる吐出孔から吐出した高速
    重合体流を衝突、バウンドさせつつ接触せしめ、次いで
    冷却固化させた後に引取るマルチフィラメントの製造法
    において、該1対の吐出孔をスリットにより互いに連結
    せしめ、且つその吐出断面積の大なる吐出孔を複数のス
    リットで中空部を形成する中空吐出孔とし、他方の吐出
    断面積の小なる吐出孔を単一吐出孔とすると共に、2500
    m/分以上で引取ることを特徴とする潜在嵩高性マルチ
    フィラメントの製造法。
  2. 【請求項2】中空吐出孔を構成する複数のスリットの配
    列、及び単一吐出孔の断面形状が共に円形である特許請
    求の範囲第(1)項記載の潜在嵩高性マルチフィラメント
    の製造法。
  3. 【請求項3】中空吐出孔を構成する複数のスリットの配
    列が非円形である特許請求の範囲第(1)項記載の潜在嵩
    高性マルチフィラメントの製造法。
  4. 【請求項4】中空吐出孔を構成する複数のスリットの配
    列が三角形である特許請求の範囲第(1)項、又は第(3)項
    記載の潜在嵩高性マルチフィラメントの製造法。
  5. 【請求項5】スリットにより互いに連結せしめた1対の
    吐出孔から成る紡糸口金である特許請求の範囲第(1)項
    記載の潜在嵩高性マルチフィラメントの製造法。
  6. 【請求項6】1対の吐出孔を互いに連結するスリットが
    単一である特許請求の範囲第(1)項、又は第(5)項記載の
    潜在嵩高性マルチフィラメントの製造法。
  7. 【請求項7】中空吐出孔から吐出される重合体流の流速
    (v)及び単一吐出孔から吐出される重合体流の流速
    (v)が下記[I]式を満足する流速である特許請求
    の範囲第(1)項記載の潜在嵩高性マルチフィラメントの
    製造法。 1/1.5 ≦v/v≦1/7 ……[I]
  8. 【請求項8】冷却固化させた後に引取って一旦巻取る
    か、或いは一旦巻取ることなく延伸を施す特許請求の範
    囲第(1)項記載の潜在嵩高性マルチフィラメントの製造
    法。
  9. 【請求項9】4000m/分以上で引取り延伸を施すことな
    く巻取る特許請求の範囲第(1)項記載の潜在嵩高性マル
    チフィラメントの製造法。
  10. 【請求項10】重合体がポリエステルである特許請求の
    範囲第(1)項、又は第(7)項記載の潜在嵩高性マルチフィ
    ラメントの製造法。
  11. 【請求項11】吐出断面積が異なる1対の吐出孔を配置
    した紡糸口金において、該1対の吐出孔をスリットによ
    り互いに連結せしめ、且つその吐出断面積の大なる吐出
    孔を複数のスリットで中空部を形成する中空吐出孔と
    し、他方の吐出断面積の小なる吐出孔を単一吐出孔と
    し、該単一吐出孔の内径を該連結スリットの幅よりも大
    きくすることを特徴とする潜在嵩高性マルチフィラメン
    トの紡糸口金。
  12. 【請求項12】中空吐出孔を構成する複数のスリットの
    配列、及び単一吐出孔の断面形状が共に円形である特許
    請求の範囲第(11)項記載の潜在嵩高性マルチフィラメン
    トの紡糸口金。
  13. 【請求項13】中空吐出孔を構成する複数のスリットの
    配列が非円形である特許請求の範囲第(11)項記載の潜在
    嵩高性マルチフィラメントの紡糸口金。
  14. 【請求項14】中空吐出孔を構成する複数のスリットの
    配列が三角形である特許請求の範囲第(11)項、又は第(1
    3)項記載の潜在嵩高性マルチフィラメントの紡糸口金。
  15. 【請求項15】スリットにより互いに連結せしめた1対
    の吐出孔から成る紡糸口金である許請求の範囲第(11)項
    記載の潜在嵩高性マルチフィラメントの紡糸口金。
  16. 【請求項16】1対の吐出孔をスリットにより互いに連
    結するスリットが単一である特許請求の範囲第(11)項、
    又は第(15)項記載の潜在嵩高性マルチフィラメントの紡
    糸口金。
JP59036097A 1984-01-18 1984-02-29 潜在嵩高性マルチフイラメントの製造法及びその紡糸口金 Expired - Lifetime JPH0641648B2 (ja)

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